(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C21D 1/773 20060101AFI20220826BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20220826BHJP
C21D 6/00 20060101ALI20220826BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20220826BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20220826BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20220826BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20220826BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
C21D1/773 D
C21D1/00 119
C21D6/00 B
C22C38/00 303D
C22C38/00 304
C21D9/00 S
B22F3/00 F
C22C33/02 K
B22F3/24 B
B22F3/24 K
(21)【出願番号】P 2020517088
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(86)【国際出願番号】 CN2018113970
(87)【国際公開番号】W WO2019148918
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-03-24
(31)【優先権主張番号】201810100874.2
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810306660.0
(32)【優先日】2018-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519091753
【氏名又は名称】福建省長汀金龍希土有限公司
【氏名又は名称原語表記】Fujian Changting Golden Dragon Rare-Earth Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Industrial New Developed Zone, Changting, Fujian Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】王 清江
(72)【発明者】
【氏名】リャオ ゾンボ
(72)【発明者】
【氏名】林 玉麟
(72)【発明者】
【氏名】黄 長庚
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/043061(WO,A1)
【文献】特開2009-200180(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103996521(CN,A)
【文献】国際公開第2009/104640(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018291(WO,A1)
【文献】特開平03-082707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/773
C21D 1/00
C21D 6/00
C22C 38/00-38/60
C21D 9/00
B22F 3/00
C22C 33/02
B22F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nd-Fe-B系焼結磁石が拡散源と共に密閉ケースである処理箱内に配置され、
気密装置により順次設けられた
第1昇温室、第2昇温室、粒界拡散室、第1冷却室、
第3昇温室、熱処理室、及び第2冷却室を含み、
前記第1昇温室、前記第2昇温室、前記粒界拡散室、前記第1冷却室、
前記第3昇温室、前記熱処理室、及び前記第2冷却室の間には前記処理箱を搬送するための搬送システムが設けられ、
前記第1冷却室及び前記第2冷却室は、いずれも空冷システムを採用し、
前記第1冷却室の冷却風の温度は25℃以上で、前記粒界拡散室の粒界拡散温度とは少なくとも550℃の差があり、
前記第2冷却室の冷却風の温度は25℃以上で、前記熱処理室の熱処理温度とは少なくとも300℃の差があり、
前記第1冷却室及び前記第2冷却室の圧力は50kPa~100kPaであり、
前記粒界拡散室での粒界拡散処理及び前記熱処理室での熱処理において、異なる領域での前記Nd-Fe-B系焼結磁石の温度差は±5℃以下である
粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置。
【請求項2】
前記密閉ケースは互いに係合したケース及びカバーを含む
請求項1に記載の粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置。
【請求項3】
前記空冷システムは、不活性ガスを採用した空冷システムである
請求項1に記載の粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置。
【請求項4】
前記粒界拡散室の粒界拡散温度は800℃~1000℃、
前記第1冷却室の冷却風の温度は25℃~150℃、
前記熱処理室の熱処理温度は400℃~650℃、
前記第2冷却室の冷却風の温度は25℃~100℃である
請求項1に記載の粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置。
【請求項5】
前記粒界拡散室は方形構造を有し、当該方形構造の内壁に対向して設けられた2つの加熱領域を含み、前記処理箱が前記粒界拡散室の前記方形構造の中央部の第1ラック上に置かれ、
前記熱処理室は方形構造を有し、当該方形構造の内壁に対向して設けられた2つの加熱領域を含み、前記処理箱が前記熱処理室の前記方形構造の中央部の第2ラック上に置かれる
請求項1に記載の粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置。
【請求項6】
前記粒界拡散室において、前記処理箱は、対向して設けられた前記粒界拡散室の前記2つの加熱領域から同じ距離にあり、その距離が5cm~20cmであり、
前記熱処理室において、前記処理箱は、対向して設けられた前記熱処理室の前記2つの加熱領域から同じ距離にあり、その距離が5cm~20cmである
請求項5に記載の粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置。
【請求項7】
前記Nd-Fe-B系焼結磁石は、28.8wt%~30.5wt%のTRE(希土類の総含有量)を有するNd-Fe-B系焼結磁石である
請求項1に記載の粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置。
【請求項8】
Nd-Fe-B系焼結磁石を拡散源と共に密閉ケースである処理箱内に配置し、
前記処理箱に対し、
第1段階目の昇温処理、第2段階目の昇温処理、粒界拡散処理、第1段階目の空冷処理、
第3段階目の昇温処理、熱処理、及び第2段階目の空冷処理を、互いに気密に仕切られた室で順次行い、
前記第1段階目の空冷処理の冷却風の温度は25℃以上で、前記粒界拡散処理の温度とは少なくとも550℃の差があり、
前記第2段階目の空冷処理の冷却風の温度は25℃以上で、前記熱処理の温度とは少なくとも300℃の差があり、
前記粒界拡散処理及び前記熱処理において、異なる領域での前記Nd-Fe-B系焼結磁石の温度差は±5℃以下である
粒界拡散と熱処理を連続的に行う方法。
【請求項9】
前記第1段階目の空冷処理における前記Nd-Fe-B系焼結磁石の最初の10分の平均冷却速度は5℃/分~12℃/分であり、
前記第2段階目の空冷処理における前記Nd-Fe-B系焼結磁石の最初の10分の平均冷却速度は5℃/分~12℃/分である
請求項8に記載の粒界拡散と熱処理を連続的に行う方法。
【請求項10】
前記第2ラックは、
前記処理箱を取り付けたまま前記粒界拡散室から前記熱処理室まで搬送された前記第1ラックである
請求項5に記載の粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金ワーク又は金属ワークに用いられる粒界拡散と熱処理を連続的に行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Nd-Fe-B(ネオジム鉄ホウ素)系希土類永久磁石材料は、最高の磁気エネルギーを備えた工業量産化された磁石であって、風力発電、サーボモータ、家電用コンプレッサ、及び新エネルギー自動車用モータなどの領域で広く適用されており、他の磁石に比べて体積が小さく、効率が高いなどの長所がある。
Nd-Fe-B系材料は、通常、高性能磁石を得るために、溶解、粉砕、プレス、焼結、粒界拡散等のプロセスを必要とする。
【0003】
特許文献1には、上面に開口を有する直方体状の箱部と、開口した箱部の上面に着脱可能な蓋部とで構成される処理箱を粒界拡散プロセスにて用いる装置が記載されている。蓋部の外周縁の全周には、下向きに湾曲したフランジが形成されている。蓋部が箱部の上面に取り付けられ、フランジが箱部の外壁と係合されることにより(ここでは金属ガスケットなどの真空シールが設けられていない)、真空室と離れて処理室を分離することができる。そして、真空排気手段を作動させることにより、真空室を所定の圧力(例えば、1×10-5Pa)まで減圧して、処理室を真空室よりも高い圧力(例えば、5×10-4Pa)まで減圧する。焼結磁石Sと蒸発材料とは、互いに接触しないように処理箱の箱部内に置かれ、この両者が、仕切り板を挟んで上下に重なって収容される。このように、従来技術では、通常、焼結磁石(受容体)と蒸発材料(供与体)を相対的に独立した空間に置くことが必要である。
【0004】
粒界拡散後、焼結磁石の表面に希土類元素が相対的に集積されているので、熱処理が必要となる。ここで、熱処理プロセスの均質性を向上させつつ昇温速度と冷却速度を向上させるためには、粒界拡散プロセスにて処理箱内に置かれていた焼結磁石を取り出し、貫通孔のある処理箱に置いてから再び熱処理する必要がある。この過程にて、焼結磁石の表面に集積された希土類元素が空気と接触することにより酸化されて黒化されるので、要求を満たす焼結磁石製品を得るためには、熱処理後に焼結磁石の表面を表面洗浄する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第102177271号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題に鑑みて、本発明は、冷却速度と生産効率を向上させると共に、製品の均質性を向上させることができる粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用する技術態様は次の通りである。
前記合金ワーク又は金属ワークが拡散源と共に相対的に独立した処理箱内に配置され、気密装置により順次設けられた粒界拡散室、第1冷却室、熱処理室、第2冷却室を含み、各室の間には前記処理箱を搬送するための搬送システムが設けられ、前記第1冷却室及び前記第2冷却室は、いずれも空冷システムを採用し、前記第1冷却室の冷却風の温度は25℃以上で、前記粒界拡散室の粒界拡散温度とは少なくとも550℃の差があり、前記第2冷却室の冷却風の温度は25℃以上で、前記熱処理室の熱処理温度とは少なくとも300℃の差があり、前記冷却室の圧力は50kPa~100kPaである粒界拡散と熱処理を連続的に行う装置。
【0008】
本発明は、粒界拡散室、熱処理室、及び冷却室を別々に設けて(空冷システム方式を用いて)、合金ワーク又は金属ワークを拡散源と共に相対的に独立した処理箱内に配置すると共に、冷却室の冷却風の温度を制限し、材料の熱処理が終了した後、必要な冷却プロセスに従って、熱処理後の高温部を迅速かつ均一に冷却することにより、合金ワーク又は金属ワークの粒界微細構造の相成分と分布を最適化する。
【0009】
空冷システムは、対流熱伝達を強制することで材料の熱を迅速に除去する方式でもよく、ファンの速度変化に応じて冷却速度を制御してもよい。相対的に独立した処理箱は、ケースの内外部との迅速な熱交換において不利であって、合金ワーク又は金属ワークの冷却速度を遅くし、合金ワーク又は金属ワークの粒界微細構造に影響を与え、更には合金ワーク又は金属ワークのそれぞれの性能に影響を与える可能性があるが、出願人は、試験を通じて、合金ワーク又は金属ワークを相対的に独立した処理箱内に設けた後に粒界拡散室及び熱処理室に入れることにより、合金ワーク又は金属ワークの他の性能を向上させることができるばかりか、更に合金ワークの均質性を著しく向上させることができることを驚きをもって発見した。
【0010】
本発明において、冷却室の圧力が50kPa~100kPaであることは、本業界の通常の選択であるので、実施例では、この範囲に含まれる部分に対する試験及び検証を行っていない。
【0011】
本発明の別の目的は、粒界拡散と熱処理を連続的に行う方法を提供することである。かかる連続熱処理方法は、冷却速度と生産効率を向上させると共に、製品の性能と均質性を向上させることができる。
【0012】
本発明が採用する技術態様は次の通りである。
前記合金ワーク又は金属ワークを拡散源と共に相対的に独立した処理箱内に配置し、前記処理箱を互いに気密に仕切られた室で順次行われる粒界拡散処理、第1段階目の空冷処理、熱処理、及び第2段階目の空冷処理を含み、前記第1段階目の空冷処理の冷却風の温度は25℃以上で、前記粒界拡散処理の温度とは少なくとも550℃の差があり、前記第2段階目の空冷処理の冷却風の温度は25℃以上で、前記熱処理の温度とは少なくとも300℃の差がある粒界拡散と熱処理を連続的に行う方法。
なお、本発明で開示される数値範囲は、この範囲内の全てのポイント値を含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、実施例を参照しながら更に詳細に説明する。
好ましい実施形態では、前記合金ワークは、Nd-Fe-B系焼結磁石である。これは、Nd-Fe-B系焼結磁石を相対的に独立した処理箱に置いてから粒界拡散室及び熱処理室に入れて粒界拡散処理及び熱処理を行うことにより、貫通孔のある処理箱に置かれて粒界拡散処理及び熱処理を行って作成された磁石と比べて、粒界拡散後のNd-Fe-B系焼結磁石の均質性及び方形性を著しく向上させることができ、両者の保磁力、残留磁気、及び最大磁気エネルギーが基本的に一貫性を保持できる。現段階では、この作用メカニズムはまだ明白とは言えない。
【0014】
好ましい実施形態では、前記相対的に独立した処理箱は密閉ケースであり、前記密閉ケースは互いに係合したケース及びカバーを含む。前記密閉ケースは、高温環境で用いられるので、一般的に、前記ケースとカバーとの接合部にはストリップが設けられていない。例えば、前記密閉ケースは、上面が開口した直方体状の箱部と、開口した箱部の上面に着脱可能な蓋部とで構成されてもよい。蓋部の外周縁の全周には、下向きに湾曲したフランジが形成されている。蓋部が箱部の上面に取り付けられて、フランジが箱部の外壁と係合され(ここでは金属ガスケットなどの真空シールが設けられていない)、粒界拡散室及び熱処理室を離れている処理空間として分離することができる。
【0015】
好ましい実施形態では、前記空冷システムは、不活性ガスを採用した空冷システムである。ここで、不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン又は窒素などから選ばれる、前記粒界拡散処理、冷却処理及び熱処理において、合金ワーク又は金属ワークと反応しない気体である。
【0016】
好ましい実施形態では、前記粒界拡散室の粒界拡散温度は800℃~1000℃、前記第1冷却室の冷却風の温度は25℃~150℃、前記熱処理室の熱処理温度は400℃~650℃、前記第2冷却室の冷却風の温度は25℃~100℃である。これにより、Nd-Fe-B系材料が共晶点を迅速に通過するようにして、良好な方形性と保磁力を得ることができる。
【0017】
この内、第1熱処理室の温度が800℃~1000℃、及び第2熱処理室の温度が400℃~650℃であることなどの温度の範囲は、Nd-Fe-B系焼結磁石分野における熱処理プロセスの通常の選択であるので、実施例では、かかる範囲に含まれる部分に対する試験及び検証を行っていない。
一般的に、第1冷却室及び第2冷却室の初期温度は、対応する冷却風の温度と同じである。
【0018】
好ましい実施形態では、前記第1熱処理室は方形構造を有し、前記方形構造の内壁に対向して置かれた2つの加熱領域を含み、前記筐体を前記方形構造の中央部のラック上に置き、同様に、前記第2熱処理室は方形構造を有し、前記方形構造の内壁に対向して置かれた2つの加熱領域を含み、前記筐体を前記方形構造の中央部のラック上に置く。かかる構造により、材料温度の高い均一性が達成され、温度変動が抑制される。
【0019】
好ましい実施形態では、前記加熱領域の面積は、前記ラックの縦断面の面積を超える。これにより、全ての筐体を均一に熱処理できることが保証され、熱処理後の合金ワーク又は金属ワーク性能が一定になる傾向がある。
【0020】
好ましい実施形態では、前記第2熱処理室において、前記処理箱は、対向して設けられた2つの前記加熱領域から同じ距離にあり、その距離は2cm~30cmであるが、好ましくは5cm~20cmである。出願人は、製造過程において、粒界拡散のNd-Fe-B系磁石は、二次焼戻しの温度差に極めて敏感で、二次焼戻し温度差の制御が、Nd-Fe-B系磁石の性能と各領域でのNd-Fe-B系磁石の均質性を著しく向上させることを発見した。本出願では、筐体を加熱領域に接近して設け、特に距離を5cm~20cmに制御した後、最も好ましい実施形態では、各領域での筐体又は各領域での合金ワーク又は各領域での金属ワーク又は筐体が異なる領域での温度差を±5℃以内に制御して、材料温度の高均一性を達成し、同じバッチのNd-Fe-B系磁石の性能の均質性を大幅に向上させることができる。
【0021】
好ましい実施形態では、前記Nd-Fe-B系磁石は、28.8wt%~34.0wt%のTRE(希土類の総含有量)を有するNd-Fe-B系磁石であり、28.8wt%~30.5wt%のTREを有するNd-Fe-B系磁石であることが好ましい。研究過程において、28.8wt%~30.5wt%のTRE(希土類の総含有量)を有する磁石は、熱処理温度差に最も敏感で、熱処理温度の制御への要求がより高いことが明らかとなった。
本発明で言及したNd-Fe-B系磁石は、Nd2Fe14B型の主相を含む磁石である。
【0022】
好ましい実施形態では、気密装置により順次設けられた第1昇温室、第2昇温室、粒界拡散室、第1冷却室、第3昇温室、熱処理室及び第2冷却室を含む。これは、800℃~1000℃への温度上昇が室粒界拡散時間の約2倍であるためであり、2つの昇温室を設けることで、2つの昇温室の処理時間を粒界拡散室の熱処理時間と同等になるように調整して、タイミングを一致させることにより、規則的に生産することができる。
【0023】
好ましい実施形態では、前記第2段階目の熱処理において、異なる領域での前記合金ワーク又は金属ワークの温度差が±5℃以下である。
好ましい実施形態では、前記第1段階目の冷却処理における前記合金ワーク又は前記金属ワークの最初の10分の平均冷却速度は5℃/分~12℃/分であり、前記第2段階目の冷却処理における前記合金ワーク又は前記金属ワークの最初の10分の平均冷却速度は5℃/分~12℃/分である。
【0024】
本発明では、連続する試験検証を通じて、最初の10分の平均冷却速度を選択して監視するが、もちろん、製品の必要性に応じて、最初の5分~30分の平均冷却速度を選択してもよい。
【0025】
各実施例で得られた焼結磁石は、いずれも以下の検出方法により測定した。
磁石性能評価プロセス:焼結磁石は、中国計量科学研究院のNIM-10000H型BH大型状希土類永久磁石非破壊測定システムを使用して磁石性能を検出した。
【0026】
実施例1
連続熱処理装置は、順次連続して設けられた第1昇温室、第2昇温室、粒界拡散室、第1冷却室、第3昇温室、熱処理室及び第2冷却室を含み、第1昇温室、第2昇温室、粒界拡散室、第1冷却室、第3昇温室、熱処理室及び第2冷却室の間には気密バルブが設けられ、各室の間にはNd-Fe-B系焼結磁石を搬送するための搬送システムが設けられている。
【0027】
連続熱処理プロセスは次の通りである。
(1)投入
質量パーセントwt%にて、組成は、Prが6.5%、Ndが21.8%、Dyが1.0%、Feがbal.(残部)、Bが0.99%、Cuが0.3%、Gaが0.1%、Nbが0.3%、Coが1.0%である原料を使用し、溶解、ストリップキャスティング、水素粉砕、ガス流粉砕、プレス、及び焼結を採用して、Nd-Fe-B系焼結磁石を製作する。
【0028】
加工プロセス:熱処理された焼結体は、15mm×10mm、厚さが5mmである磁石製品に加工され、厚さ方向は磁場配向方向である。
検出した結果、磁石製品の性能は、Hcj=14kOe、Br=14.4kGs、方形性は、99%である。
【0029】
磁石製品とDyプレートとは互いに接触しないように処理箱内に置かれ、両者が仕切り板を挟んで上下に重なって収容されており、仕切り板は直径0.5mmの複数のワイヤーを格子状に編んで形成され、筐体を2列に積み重ねるようにラックに置かれ、第1昇温室内に送られる。
筐体は互いに係合したケース及びカバーを含むが、ケースとカバーとの係合部には、ストリップが設けられていない。
【0030】
(2)第1段階目の昇温
第1昇温室の真空度が200Paに達すると、加熱プログラムを起動して、室温から150分昇温し、温度が400℃~420℃に達した後、30分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを第1昇温室から第2昇温室に搬送する。
【0031】
(3)第2段階目の昇温
筐体が取り付けられたラックが第2昇温室に入った後、真空度が200Paに達すると、150分加熱昇温して、温度が830℃~850℃に達した後、30分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを第2昇温室から粒界拡散室に搬送する。
【0032】
(4)粒界拡散処理
粒界拡散室は、方形構造を有し、方形構造の内壁に対向して設けられた2つの加熱領域を含み、加熱領域の面積は、ラックの縦断面の面積を超える。筐体は、粒界拡散室に入った後、2つの加熱領域からいずれも15cmの距離に置かれる。
【0033】
真空度が0.5×10-3Paに達すると、10分加熱昇温して、粒界拡散室の粒界拡散温度(異なる筐体内の異なる位置で検出される)が880℃~895℃になると、170分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを粒界拡散室から第1冷却室に搬送する。
【0034】
(5)第1段階目の冷却
筐体が取り付けられたラックが真空状態にある第1冷却室に入った後、冷却室に80kPaの不活性ガスを充填させた後、ファンによって循環冷却され、冷却時間は180分である。第1冷却室の不活性ガス温度は表1に示す通りである。冷却終了後、筐体が取り付けられたラックを第1冷却室から第3昇温室に搬送する。不活性ガス温度は吸気式循環空気の空気出口で検出された。
【0035】
(6)第3段階目の昇温
2列に積み重ねられた筐体が第3昇温室に入った後、真空度が200Paに達すると、150分加熱昇温して、温度が480℃~500℃に達した後、30分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを第3昇温室から熱処理室に搬送する。
【0036】
(7)熱処理
熱処理室は、方形構造を有し、方形構造の内壁に対向して設けられた2つの加熱領域を含み、加熱領域の面積は、ラックの縦断面の面積を超える。筐体は、熱処理室に入った後、2つの加熱領域からいずれも15cmの距離に置かれる。
【0037】
真空度が200Paに達すると、15分加熱昇温して、熱処理温度(異なる筐体内の異なる位置で検出される)が500℃~515℃になると、165分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを熱処理室から第2冷却室に搬送する。
【0038】
(8)第2段目の冷却
筐体が取り付けられたラックが真空状態にある前記第2段冷却室に入った後、冷却室に80kPaの不活性ガスを充填させた後、ファンによって循環冷却され、冷却時間は180分である。筐体が取り付けられたラックを炉から取り出す。第2冷却室の不活性ガス温度は表1に示す通りである。不活性ガス温度は吸気式循環空気の空気出口で検出された。
【0039】
このようにして、筐体が取り付けられたラックは、第1昇温室で温度上昇と短時間の保温が行われた後、第2昇温室に入って温度上昇と短時間の保温が行われる。その後、粒界拡散室に入って短時間の温度上昇と保温が行われる。粒界拡散室での拡散が終了した後、第1冷却室に入って冷却される。第1冷却室での冷却が終了した後、第3昇温室に入って温度上昇と短時間の保温が行われる。第3昇温室での保温が終了した後、熱処理室に入って短時間の温度上昇と保温が行われる。保温終了後、第2冷却室に入って冷却される。冷却終了後に排出される。
【0040】
比較例1.5において、(4)粒界拡散処理後の筐体を格子状の筐体に交換した以外の残り詳細は実施例1.2と同様である。
【0041】
前記処理後の磁石性能は表1に示す通りである。
【表1】
【0042】
検出した結果、相対的に独立した処理箱内に位置する磁石について、実施例1.4、実施例1.5及び実施例1.6の第1段階目の冷却処理における磁石製品の最初の10分の平均冷却速度は5℃/分~12℃/分であり、実施例1.3、実施例1.4、実施例1.5及び実施例1.6の第2段階目の冷却処理における磁石製品の最初の10分の平均冷却速度は5℃/分~12℃/分であった。実施例1.1、実施例1.2及び実施例1.3の第1段階目の冷却処理においける磁石製品の最初の10分の平均冷却速度は5℃/分未満であり、実施例1.1及び実施例1.2の第2段階目の冷却処理における磁石製品の最初の10分の平均冷却速度も同様に5℃/分未満であった。
【0043】
表1からわかるように、相対的に独立した処理箱内に位置する磁石について、第1冷却室の冷却風の温度は25℃よりも高く、粒界拡散室の熱処理温度よりも少なくとも550℃低く、同時に第2冷却室の冷却風の温度は25℃よりも高く、熱処理室の熱処理温度よりも少なくとも300℃低いことで、熱処理後の磁石の磁石性能が向上され、特にHcjが著しく向上され、SQが改善された。これは、前記温度範囲内では、磁石の熱処理後の高温部の冷却速度の改善が進むことにより、粒界微細構造の相成分と分布を最適化するためである。
【0044】
比較例1.5は、実施例1.2と比較すると、高温部の冷却速度は速くなるものの、冷却速度に一定の変動が生じる可能性があり、最終性能の変動もこれに伴って増加することとなり、予想とは異なり、密閉式の筐体を用いた拡散処理及び熱処理の磁石の性能は、格子状の筐体を用いたものと同等のものである。
【0045】
また、粒界拡散後の磁石製品は、従来の筐体(密閉式の筐体)を貫通孔のある筐体に交換する必要がなく、熱処理プロセスに直接入るので、粒界拡散と熱処理後に排出された磁石製品は、表面が滑らかで、黒化層がない。
【0046】
比較例1.5の磁石は、粒界拡散後の筐体交換過程において、磁石のRリッチ面が酸素に接触されて、熱処理後に黒化層が現れた。
【0047】
実施例2
連続熱処理装置は、順次連続して設けられた第1昇温室、第2昇温室、粒界拡散室、第1冷却室、第3昇温室、熱処理室及び第2冷却室を含み、第1昇温室、第2昇温室、粒界拡散室、第1冷却室、第3昇温室、熱処理室及び第2冷却室の間には気密バルブが設けられ、各室の間にはNd-Fe-B系焼結磁石を搬送するための搬送システムが設けられている。
【0048】
連続熱処理プロセスは次の通りである。
(1)投入
質量パーセントwt%にて、組成は、Prが8.6%、Ndが21.4%、Feがbal.(残部)、Bが0.96%、Cuが0.2%、Gaが0.3%、Alが0.2%、Coが0.5%である原料を使用し、溶解、ストリップキャスティング、水素粉砕、ガス流粉砕、プレス、及び焼結を採用して、Nd-Fe-B系焼結磁石を製作する。
【0049】
加工プロセス:熱処理された焼結体は、20mm×10mm、厚さが5mmである磁石製品に加工され、厚さ方向は磁場配向方向である。
検出した結果、磁石製品の性能は、Hcj=14.5kOe、Br=14.4kGs、方形性は、99%である。
【0050】
磁石製品とDyプレートとは、互いに接触しないように処理箱内に置かれ、両者が仕切り板を挟んで上下に重なって収容されており、仕切り板は直径1.0mmの複数のワイヤーを格子状に編んで形成され、筐体を1列に積み重ねるようにラックに置かれ、第1昇温室内に送られている。
筐体は互いに係合したケース及びカバーを含むが、ケースとカバーとの係合部には、ストリップが設けられていない。
【0051】
(2)第1段階目の昇温
第1昇温室の真空度が100Paに達すると、加熱プログラムを起動して、室温から160分昇温し、温度が360℃~380℃に達した後、20分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを第1昇温室から第2昇温室に搬送する。
【0052】
(3)第2段階目の昇温
筐体が取り付けられたラックが第2昇温室に入った後、真空度が100Paに達すると、160分加熱昇温して、温度が840℃~860℃に達した後、20分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを第2昇温室から粒界拡散室に搬送する。
【0053】
(4)粒界拡散処理
粒界拡散室は、方形構造を有し、方形構造の内壁に対向して設けられた2つの加熱領域を含み、加熱領域の面積は、ラックの縦断面の面積を超える。筐体は、粒界拡散室に入った後、2つの加熱領域からいずれも2cm~30cmの距離に置かれる。
【0054】
真空度が10-2Paに達すると、10分加熱昇温して、各領域の異なる筐体内の異なる位置での熱処理温度が検出されており、具体的には、表2に示すように、170分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを粒界拡散室から第1冷却室に搬送する。
【0055】
(5)第1段階目の冷却
筐体が取り付けられたラックが真空状態にある第1冷却室に入った後、冷却室に40℃~50℃の78kPaの不活性ガスを充填させた後、ファンによって循環冷却され、冷却時間は180分である。磁石製品の最初の10分の平均冷却速度は11.7℃/分である。冷却終了後、筐体が取り付けられたラックを第1冷却室から第3昇温室に搬送する。不活性ガス温度は吸気式循環空気の空気出口で検出された。
【0056】
(6)第3段階目の昇温
筐体が取り付けられたラックが第3昇温室に入った後、真空度が100Paに達すると、155分加熱昇温して、温度が400℃~420℃に達した後、25分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを第3昇温室から熱処理室に搬送する。
【0057】
(7)熱処理
熱処理室は、方形構造を有し、方形構造の内壁に対向して設けられた2つの加熱領域を含み、加熱領域の面積は、ラックの縦断面の面積を超える。筐体は、熱処理室に入った後、2つの加熱領域からいずれも2cm~30cmの距離に置かれる。具体的には、表2に示す通りである。
【0058】
真空度が100Paに達すると、20分加熱昇温して、各領域の異なる筐体内の異なる位置での熱処理温度が検出されており、具体的には、表2に示すように、160分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを熱処理室から第2冷却室に搬送する。
【0059】
(8)第2段階目の冷却
筐体が取り付けられたラックが真空状態にある前記第2段冷却室に入った後、冷却室に40℃~50℃の78kPaの不活性ガスを充填させた後、ファンによって循環冷却され、冷却時間は180分である。最初の10分の平均冷却速度は6.8℃/分である。不活性ガスの温度は吸気式循環空気の空気出口で検出された。筐体が取り付けられたラックを炉から取り出す。
【0060】
前記熱処理及び冷却処理後の磁石性能は、表2に示す通りである。表2の距離は、1列に積み重ねられた筐体と加熱領域との間の距離である。
20ブロックのNd-Fe-B系焼結磁石を異なる領域から取り出し、そのBr、Hcj、BH(max)及びSQを測定して、均質性を測定する。均質性は、製品性能指標の変動性に沿って記述され、変動性は(最大値-最小値)/最小値と定義されている。変動性が小さいほど、均質性が向上する。
【0061】
【0062】
表2からわかるように、熱処理温度の変動が小さいほど、Brは基本的に安定性を維持し、HcjとSQの変動性はいずれも小さい。これは、熱処理温度が磁石の粒界微細構造の相成分と分布に密接に関連し、温度変動が大きいほど性能の変動が大きいためである。
粒界拡散と熱処理後に排出された磁石製品は、表面が滑らかで、黒化層がない。
【0063】
NdFeBは、微細構造の敏感な製品であり、微細構造の状態は、性能、特に粒界拡散処理後のサンプルに大きな影響を及ぼす。微細構造が規則的であり、粒界分布が連続かつ均一で、そして結晶粒が微細なサンプルは、より高い総合的な性能と均質性を有する。NdFeBの微細構造は温度に非常に敏感であり、温度は、元素の拡散に大きく影響を及ぼすことから、相の形成、分布、及び微細構造の外観に影響を与える。したがって、熱処理プロセスは、微細構造の形成に大きな影響を及ぼし、同じ炉による製品であっても、熱処理の温度の不均一によって性能が変動し、ひいては性能不良となってしまうこともある。本発明において、間隔及び連続熱処理室を設けることにより温度制御性及び均一性を改善し、製品の熱処理プロセスにより所望の微細構造が得られることを保証し、迅速で且つ制御可能な冷却速度によって、均一な構造を固化して、製品の構造を均一且つ均質化させることにより、材料の全体的な性能と均一性を改善するとの目的を達成する。
【0064】
実施例3
連続熱処理装置は、順次連続して設けられた第1昇温室、第2昇温室、粒界拡散室、第1冷却室、第3昇温室、熱処理室及び第2冷却室を含み、第1昇温室、第2昇温室、粒界拡散室、第1冷却室、第3昇温室、熱処理室及び第2冷却室の間には気密バルブが設けられ、各室の間にはNd-Fe-B系焼結磁石を搬送するための搬送システムが設けられている。
【0065】
連続熱処理プロセスは次の通りである。
(1)投入
質量パーセントwt%にて、組成は、Prが6%、Ndが20.5%~23%(表3のTREに基づいて調整する)、Dyが2.0%、Feがbal.(残部)、Bが0.99%、Cuが0.05%、Gaが0.2%、Nbが0.05%、Coが2%である原料を使用し、溶解、ストリップキャスティング、水素粉砕、ガス流粉砕、プレス、及び焼結を採用して、Nd-Fe-B系焼結磁石を製作する。TRE含有量の含有量配合比と磁石性能は、表3に示す通りである。
【0066】
加工プロセス:熱処理された焼結体は、15mm×10mm、厚さが3mmである磁石製品に加工され、厚さ方向は磁場配向方向である。
磁石製品とDyプレートとは、互いに接触しないように処理箱内に置かれ、両者が仕切り板を挟んで上下に重なって収容されており、仕切り板は直径0.3mmの複数のワイヤーを格子状に編んで形成され、筐体を2列に積み重ねるようにラックに置かれ、第1昇温室内に送られている。
筐体は互いに係合したケース及びカバーを含むが、ケースとカバーとの係合部には、ストリップが設けられていない。
【0067】
(2)第1段階目の昇温
第1昇温室の真空度が10PaPaに達すると、加熱プログラムを起動して、室温から130分昇温し、温度が360℃~400℃に達した後、20分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを第1昇温室から第2昇温室に搬送する。
【0068】
(3)第2段階目の昇温
筐体が取り付けられたラックが第2昇温室に入った後、真空度が10Paに達すると、130分加熱昇温して、温度が810℃~830℃に達した後、20分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを第2昇温室から粒界拡散室に搬送する。
【0069】
(4)粒界拡散
粒界拡散室は、方形構造を有し、方形構造の内壁に対向して設けられた2つの加熱領域を含み、加熱領域の面積は、ラックの縦断面の面積を超える。筐体は、粒界拡散室に入った後、2つの加熱領域からいずれも5cmの距離に置かれる。
【0070】
真空度が10-3Paに達すると、10分加熱昇温して、粒界拡散室の粒界拡散温度(異なる筐体内の異なる位置で検出される)が905℃~910℃になると、140分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを粒界拡散室から第1冷却室に搬送する。
【0071】
(5)第1段階目の冷却
筐体が取り付けられたラックが第1冷却室に入った後、真空度が10Paに達すると、冷却室に40℃~60℃の76kPaの不活性ガスを充填させた後、ファンによって循環冷却され、冷却時間は150分で、磁石製品の最初の10分の平均冷却速度は5.3℃/分である。不活性ガス温度は吸気式循環空気の空気出口で検出された。冷却終了後、筐体が取り付けられたラックを第1冷却室から第3昇温室に搬送する。
【0072】
(6)第3段階目の昇温
筐体が取り付けられたラックが第3昇温室に入った後、真空度が10Paに達すると、140分加熱昇温して、温度が420℃~440℃に達した後、10分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを第3昇温室から熱処理に搬送する。
【0073】
(7)熱処理
熱処理室は、方形構造を有し、方形構造の内壁に対向して設けられた2つの加熱領域を含み、加熱領域の面積は、ラックの縦断面の面積を超える。筐体が取り付けられたラックは、熱処理室に入った後、2つの加熱領域からいずれも5cmの距離に置かれる。
【0074】
真空度が10Paに達すると、15分加熱昇温して、熱処理室の熱処理温度(異なる筐体内で検出される)が535℃~540℃に達した後、135分保温する。保温終了後、筐体が取り付けられたラックを熱処理室から第2冷却室に搬送する。
【0075】
(8)第2段階目の冷却
筐体が取り付けられたラックが前記第2段冷却室に入った後、真空度が10Paに達すると、冷却室に40℃~60℃の76kPaの不活性ガスを充填させた後、ファンによって循環冷却され、冷却時間は150分で、最初の10分の平均冷却速度は4.9℃/分である。不活性ガス温度は吸気式循環空気の空気出口で検出された。筐体が取り付けられたラックを炉から取り出す。
【0076】
前記熱処理及び冷却処理後の磁石性能は表3に示す通りである。
【表3】
【0077】
熱処理及び冷却処理前の磁石のBr変動性(%)、Hcj変動性(%)、及びSQ変動性(%)は0である。
従来の熱処理過程において、一般的に、30.5%を超えるTREの磁石は熱処理過程中の均質性が比較的よく、28.8wt%~30.5wt%のTREの磁石は熱処理過程中にBr変動性(%)、Hcj変動性(%)、及びSQ変動性(%)のうちの1つ又はいくつかが5%以上に達して、更に製品の均質性に影響を及ぼす。
【0078】
28.8wt%~30.5wt%のTREの磁石は、前記温度差が比較的小さく、最初の10分の平均冷却速度が制御された熱処理装置で熱処理され、Br変動性(%)、Hcj変動性(%)、及びSQ変動性(%)がいずれも低下し、均質性を著しく向上させることが分かった。
【0079】
表3からわかるように、平面熱処理装置の温度均一性を向上させると共に、その冷却速度を制御して、低希土類含有量のNd-Fe-B性能における均質性の向上に非常に重要なプラスの効果がある。
粒界拡散と熱処理後に排出された磁石製品は、表面が滑らかで、黒化層がない。
【0080】
比較例
連続熱処理装置は、順次連続して設けられた粒界拡散室及び熱処理室と、粒界拡散室及び熱処理室の間には気密バルブが設けられ、二つの室の間にはNd-Fe-B系焼結磁石を搬送するための搬送システムが設けられている。
【0081】
連続熱処理プロセスは次の通りである。
質量パーセントwt%にて、組成は、Prが6%、Ndが21.5%、Dyが2.0%、Feがbal.(残部)、Bが0.99%、Cuが0.05%、Gaが0.2%、Nbが0.05%、Coが2%である原料を使用し、溶解、ストリップキャスティング、水素粉砕、ガス流粉砕、プレス、及び焼結を採用して、具体的なプロセスパラメータは実施例3と同様にNd-Fe-B系焼結磁石を製作する。
【0082】
加工プロセス:熱処理された焼結体は、15mm×10mm、厚さが3mmである磁石製品に加工され、厚さ方向は磁場配向方向である。
磁石製品とDyプレートとは、互いに接触しないように処理箱内に置かれ、両者が仕切り板を挟んで上下に積み重なって収容されており、仕切り板は直径0.3mmの複数のワイヤーを格子状に編んで形成され、筐体を1列に積み重ねるようにラックに置かれ、粒界拡散室内に送られている。
【0083】
筐体が取り付けられたラックが粒界拡散室に入った後、2つの加熱領域からいずれも5cmの距離に置かれ、真空度が10-3Paに達すると、180分加熱昇温して、粒界拡散室の粒界拡散温度(異なる筐体内の異なる位置で検出される)が905℃~910℃に達した後、140分保温する。保温終了後、粒界拡散室に40℃~60℃の76kPaの不活性ガスを充填させた後、ファンによって循環冷却され、冷却時間は150分で、最初の10分の平均冷却速度は4.6℃/分である。不活性ガスの温度は吸気式循環空気の空気出口で検出された。筐体が取り付けられたラックを粒界拡散室から熱処理室に搬送する。
【0084】
筐体が取り付けられたラックが熱処理室に入った後、2つの加熱領域からいずれも5cmの距離に置かれ、真空度が10Paに達すると、90分加熱昇温して、熱処理室の熱処理温度(異なる筐体内の異なる位置で検出される)が535℃~540℃に達した後、135分保温する。保温終了後、熱処理室に40℃~60℃の76kPaの不活性ガスを充填させた後、ファンによって循環冷却され、冷却時間は150分で、磁石製品の最初の10分の平均冷却速度は3.6℃/分である。不活性ガスの温度は吸気式循環空気の空気出口で検出された。
【0085】
【0086】
粒界処理及び熱処理前の磁石のBr変動性(%)、Hcj変動性(%)、及びSQ変動性(%)は0である。
表3及び表4からわかるように、粒界拡散室又は熱処理室で熱処理及び冷却処理(単室処理)が連続して行われると、高温部の冷却速度が比較的低くなり、単室処理のBr、SQがわずかに減少し、Hcjの低下がより顕著となることから、3つの変動が明らかである。
【0087】
前記実施例は、本発明におけるいくつかの具体的な実施形態を更に説明するために使用されているだけで、本発明は実施例に限定されず、本発明の技術に基づいて、実質的に前記実施例に対してなされた任意の簡単な修正、同等の変更及び修正したものも、全て本発明の技術態様の保護範囲に含まれる。