(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】加熱速度を調節可能なバッテリーシステム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20220826BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220826BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20220826BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20220826BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220826BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20220826BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20220826BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20220826BHJP
H01M 10/637 20140101ALI20220826BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20220826BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20220826BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/00 P
H02J7/10 Q
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6571
H01M10/6554
H01M10/637
B60L50/64
B60L58/27
(21)【出願番号】P 2020519682
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2018119302
(87)【国際公開番号】W WO2020107507
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-04-01
(31)【優先権主張番号】201811424616.6
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520114856
【氏名又は名称】ライズサン メングーリ ニュー エナジー サイエンス アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RISESUN MENGGULI NEW ENERGY SCIENCE&TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】18 Baifuquan Road, Changping District Beijing 102200 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー ニンニン
(72)【発明者】
【氏名】マオ ヨンチー
(72)【発明者】
【氏名】グオ チャンシン
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/056162(WO,A1)
【文献】特開2013-077452(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074330(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107512180(CN,A)
【文献】国際公開第2018/092315(WO,A1)
【文献】特許第5665246(JP,B1)
【文献】特開平10-062453(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006152(WO,A1)
【文献】特開2016-004680(JP,A)
【文献】特開2016-160667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H02J 7/00
H02J 7/10
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/633
H01M 10/6571
H01M 10/6554
H01M 10/637
B60L 50/64
B60L 58/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱速度を調節可能なバッテリーシステムであって、バッテリーパック(1)と、加熱板(2)と、電力制御モジュール(3)と、バッテリー管理システム(6)とを備え、
前記バッテリーパック(1)がそれぞれ加熱板(2)及び電力制御モジュール(3)に電気的に接続され、前記電力制御モジュール(3)がそれぞれバッテリーパック(1)、加熱板(2)及びバッテリー管理システム(6)に電気的に接続され、
バッテリーパック(1)の温度がプリセットの自動加熱の起動温度より低いと、電力制御モジュール(3)を起動し、バッテリー管理システム(6)が収集されたバッテリーパック(1)の状態情報を電力制御モジュール(3)に伝送し、電力制御モジュール(3)がPWM信号によって加熱板(2)の電流オンオフ時間及びスイッチ周波数を調節することで加熱電力と加熱速度を調節し、バッテリーパック(1)の温度がプリセットの自動加熱閉じ温度に達すると、電力制御モジュール(3)を閉じて、加熱を停止させ、
前記電力制御モジュール(3)は、電流調節モジュール(4)と、電流収集モジュール(5)と、加熱制御モジュール(7)とを更に含み、
前記加熱制御モジュール(7)は、電流収集モジュール(5)、電流調節モジュール(4)及びバッテリー管理システム(6)に電気的に接続され、バッテリー管理システム(6)と情報を交換し、電流調節モジュール(4)に電流調節命令を送信し、電流収集モジュール(5)の収集された加熱電流を読み取り、閉ループ制御を実現
し、
前記バッテリー管理システム(6)が加熱制御モジュール(7)と情報を交換することは、具体的には、バッテリー管理システム(6)が加熱制御モジュール(7)に車両状態情報及び加熱運転モードニーズを送信することであり、前記加熱運転モードは駐車加熱モード、走行加熱モード、直流充電加熱モード、及び交流充電加熱モードを含み、加熱プロセスで、バッテリー管理システム(6)が加熱制御モジュール(7)にバッテリーパック(1)の現在状態情報をリアルタイムに送信することを特徴とする加熱速度を調節可能なバッテリーシステム。
【請求項2】
前記電流調節モジュール(4)は、スイッチ電子部品と、絶縁駆動ユニットと、絶縁型電源とを含み、PWM信号によって加熱電流のオンオフ時間を制御し、スイッチ電子部品はIGBT、MOSFET、サイリスター又はリレーのうちのいずれかであることを特徴とする請求項
1に記載の加熱速度を調節可能なバッテリーシステム。
【請求項3】
前記電流収集モジュール(5)は、ホールセンサと、LDOと、ポート保護回路と、信号調節回路とを含み、ホールセンサが収集された電流信号をポート保護回路と信号調節回路を介して電流収集モジュールインターフェースに伝送することを特徴とする請求項
1に記載の加熱速度を調節可能なバッテリーシステム。
【請求項4】
前記加熱制御モジュール(7)は、PWM信号によって電流調節モジュール(4)を制御し、MCUコントローラと、電源回路と、クロックと、CAN通信チップと、電流調節モジュールインターフェースと、電流収集モジュールインターフェースと、バッテリー管理システムインターフェースとを含み、MCUコントローラがCAN通信チップを介してバッテリー管理システムインターフェースに接続され、MCUコントローラがPWM生成モジュールを介して電流調節モジュールインターフェースに接続され、MCUコントローラがADCチャンネルを介して電流収集モジュールインターフェースに接続されることを特徴とする請求項
1に記載の加熱速度を調節可能なバッテリーシステム。
【請求項5】
前記加熱板(2)は、ニッケル板、銅板、アルミニウム板、鉄板、グラファイト板、PTCヒーター又は加熱薄膜のうちの1種または複数種であることを特徴とする請求項
1に記載の加熱速度を調節可能なバッテリーシステム。
【請求項6】
前記加熱板(2)は、独立した複数の加熱板ユニットを直列接続、並列接続又は直並列ハイブリッド接続して構成され、バッテリーセルの内部、バッテリーセルの外部、バッテリーパック(1)モジュールの底部、バッテリーパック(1)モジュールの頂部又はバッテリーパック(1)モジュールの側面に設けられることを特徴とする請求項
5に記載の加熱速度を調節可能なバッテリーシステム。
【請求項7】
前記バッテリーパック(1)は複数のバッテリーセルを直列接続、並列接続又は直並列ハイブリッド接続して構成され、前記バッテリーセルはリン酸鉄リチウムバッテリー、三元リチウムバッテリー、マンガン酸リチウムバッテリー、固体リチウムバッテリー、ニッケル水素バッテリー、ニッケルカドミウムバッテリー、銀亜鉛バッテリー、燃料バッテリー又は鉛バッテリーのうちの1種であることを特徴とする請求項
6に記載の加熱速度を調節可能なバッテリーシステム。
【請求項8】
加熱速度を調節可能なバッテリーシステムを初期化し、バッテリー管理システム(6)によって現在のバッテリーパック(1)の情報をリアルタイムに収集し、収集されたバッテリーパック(1)の情報を計算し、駐車加熱モード、走行加熱モード、直流充電加熱モード、及び交流充電加熱モードの4種に分けられる現在のバッテリーパック(1)の加熱運転モードを選択し、バッテリー管理システム(6)が加熱制御モジュール(7)に必要なバッテリーパック(1)の状態情報及び加熱運転モードを加熱制御モジュール(7)に送信するステップ1)と、
加熱制御モジュール(7)を受信されたバッテリーパック(1)の加熱運転モード情報に基づいて、対応する加熱運転モードに切り替え、加熱制御モジュール(7)が現在の加熱運転モードで設定されたパラメータに基づいて、対応するPWM信号を電流調節モジュール(4)に送信し、加熱回路の電流値をリアルタイムに調節し、加熱制御モジュール(7)が電流収集モジュール(5)によりフィードバックされた電流値を受信し、PWM信号を調節することで、実際の電流値が設定値に達し、閉ループ制御を実現し、同時に加熱回路に故障が発生したか否かを診断し、故障が存在すると、故障レベルに応じて現在の加熱運転モードを停止させるか否か又は加熱電力を低下させるか否かを判断し、故障がないと、現在の加熱運転モードを継続するステップ2)と、
バッテリーパック(1)におけるバッテリーセルの温度、温度差、圧力差、加熱時間がプリセット閾値に達し、又はバッテリーセルの電圧、絶縁抵抗がプリセット閾値より低いと、警報し、加熱制御モジュール(7)が電流調節モジュール(4)に加熱電力がゼロの制御命令を送信するステップ3)と、
バッテリー管理システム(6)に加熱運転モードを閉じる要求を送信し、確認した後、現在の加熱運転モードを終了させ、ステップ1)に戻るステップ4)とを含むことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の加熱速度を調節可能なバッテリーシステムの制御方法。
【請求項9】
加熱制御モジュール(7)は加熱板(2)、電流調節モジュール(4)、電流収集モジュール(5)に故障が生じたか否かを判断し、電流調節モジュール(4)が加熱制御モジュール(7)の故障操作に応答することを特徴とする請求項
8に記載の加熱速度を調節可能なバッテリーシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気自動車のバッテリー技術分野に属し、特に加熱速度を調節可能なバッテリーシステム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、新エネルギー産業の急速な発展に伴って、世界中に広がっている。電気自動車の核心はバッテリーシステムであり、バッテリーシステムの充放電性能が電気自動車の動力性、経済性に大きく影響している。低温条件において電気自動車のバッテリーシステムの充放電電力が低いため、電気自動車の動力性、航続距離や充電時間などに大きく影響しており、使用者からの苦情が多い。一方、低温地域に適用される電気自動車は、バッテリーシステムが加熱システム及び保温システムを備えたが、加熱電力が低く、速度が遅く、保温効果が低いといった問題が存在する。
【0003】
上記2つの原因のため、電気自動車の低温地域における使用や普及に深刻に影響し、クライアントの使用体験に深刻に影響する。従って、上記2つの問題を解決するために、自動急速加熱機能と加熱速度を調節可能な機能を有する、安全かつ確実なバッテリーシステムの開発は十分に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記不備に対して、従来技術でバッテリーシステムの加熱電力を調節できず、加熱速度が遅いといった問題を解決し、バッテリーシステムの加熱レートが速く、故障率が低く、メインテナンス難度が低く、安全性が高いといった有益な効果を実現するように、加熱速度を調節可能なバッテリーシステム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術案は以下のように実現される。
加熱速度を調節可能なバッテリーシステムを提供し、前記バッテリーシステムは、バッテリーパックと、加熱板と、電力制御モジュールと、バッテリー管理システムとを備え、前記バッテリーパックがそれぞれ加熱板及び電力制御モジュールに電気的に接続され、前記電力制御モジュールがそれぞれバッテリーパック、加熱板及びバッテリー管理システムに電気的に接続され、
バッテリーパックの温度がプリセットの自動加熱の起動温度より低いと、電力制御モジュールを起動し、バッテリー管理システムが収集されたバッテリーパックの状態情報を電力制御モジュールに伝送し、電力制御モジュールがPWM(パルス幅変調)信号によって加熱板の電流オンオフ時間及び周波数を調節することで加熱電力と加熱速度を調節し、それにより、バッテリーの自動加熱を実現し、バッテリーパックの温度がプリセットの自動加熱閉じ温度に達すると、電力制御モジュールを閉じて、加熱を停止させ、
前記電力制御モジュールは、電流調節モジュールと、電流収集モジュールと、加熱制御モジュールとを更に含み、前記電流調節モジュールは加熱板、電流収集モジュール、加熱制御モジュールに電気的に接続され、加熱板を流れる電流を調節することで、システムの加熱電力を調節し、前記加熱制御モジュールは電流収集モジュール、電流調節モジュール及びバッテリー管理システムに電気的に接続され、バッテリー管理システムと情報を交換し、電流調節モジュールに電流調節命令を送信し、電流収集モジュールにより収集された加熱電流を読み取る。
【0006】
バッテリー管理システムにより収集されたバッテリーパックの状態情報は、具体的には、バッテリーセルの最高電圧、バッテリーセルの平均電圧、バッテリーセルの最低電圧、バッテリーセルの最高温度、バッテリーセルの最低温度、バッテリーセルの圧力差、バッテリーパックの全体電圧、バッテリーパックの全体温度、バッテリーパックの絶縁状態、バッテリー加熱運転モードなどであり、電流調節モジュールに対して加熱電力を設定することに用いられる。
【0007】
更に、前記バッテリー管理システムが加熱制御モジュールと情報を交換することは、具体的には、バッテリー管理システムが加熱制御モジュールに車両状態情報及び加熱運転モードニーズを送信することであり、前記加熱運転モードは駐車加熱モード、走行加熱モード、直流充電加熱モード、及び交流充電加熱モードを含み、直流充電加熱モード、及び交流充電加熱モーは充電器を介して充電加熱を実現するものであり、充電器を介して加熱板のみに高電圧を提供して加熱する方式、充電器がバッテリーパックと加熱板両方に高電圧を提供して給電する方式といった2種の選択可能な運転方式を有する。
【0008】
バッテリー管理システムは、収集されたバッテリーパックの状態情報を計算して、現在の加熱運転モードを選択し、現在の加熱運転モードを加熱制御モジュールに送信する。加熱プロセスで、バッテリー管理システムが加熱制御モジュールにバッテリーパックの現在状態情報をリアルタイムに送信する。
【0009】
更に、前記電流調節モジュールは、スイッチ電子部品と、絶縁駆動ユニットと、絶縁型電源とを含み、PWM信号によって加熱電流のオンオフ時間とスイッチ周波数を制御し、
そのうち、スイッチ電子部品は、オンオフ機能を有する又は調節可能な導通角を有する、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(金属-酸化物半導体電界効果トランジスタ)、サイリスター、リレーなどのうちのいずれの電子部品である。好ましくは、電流調節モジュールがIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)である場合、その回路が具体的には、絶縁駆動ユニット、絶縁型電源及びIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を含み、プロセッサ電力制御モジュールがPWM信号を出力して絶縁駆動ユニットに通過させた後、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の制御信号を生成し、絶縁駆動ユニットが絶縁型電源により給電される。
【0010】
更に、前記電流収集モジュールは、ホールセンサと、LDO(低ドロップアウトリニアレギュレータ)と、ポート保護回路と、信号調節回路とを含み、ホールセンサが収集された電流信号をポート保護回路と信号調節回路を介して電流収集モジュールインターフェースに伝送する。ホールセンサは収集された電流信号の伝送チャンネルをハイレンジチャンネルとローレンジチャンネルに分け、ハイレンジチャンネルは高周波電流信号をポート保護回路1と信号調節回路1に通過させて電流収集モジュールインターフェース1に伝送し、ローレンジチャンネルは低周波電流信号をポート保護回路2と信号調節回路2に通過させて電流収集モジュールインターフェース2に伝送する。
【0011】
更に、前記加熱制御モジュールはパルス幅変調信号によって電流調節モジュールを制御する。前記加熱制御モジュールは、MCUコントローラと、電源回路と、クロックと、CAN通信チップと、電流調節モジュールインターフェースと、電流収集モジュールインターフェースと、バッテリー管理システムインターフェースとを含み、MCUコントローラがCAN通信チップを介してバッテリー管理システムインターフェースに接続され、MCUコントローラがPWM生成モジュールを介して電流調節モジュールインターフェースに接続され、MCUコントローラがADCチャンネルを介して電流収集モジュールインターフェースに接続される。
【0012】
更に、前記加熱板は、ニッケル板、銅板、アルミニウム板、鉄板、グラファイト板、PTCヒーター又は加熱薄膜のうちの1種または複数種である。
【0013】
更に、前記加熱板は、独立した複数の加熱板ユニットを直列接続、並列接続又は直並列ハイブリッド接続して構成され、バッテリーセルの内部、バッテリーセルの外部、バッテリーパックモジュールの底部、バッテリーモジュールの頂部又はバッテリーパックモジュールの側面に設けられる。
【0014】
更に、前記バッテリーパックは、複数のバッテリーセルを直列接続、並列接続又は直並列ハイブリッド接続して構成され、前記バッテリーセルはリン酸鉄リチウムバッテリー、三元リチウムバッテリー、マンガン酸リチウムバッテリー、固体リチウムバッテリー、ニッケル水素バッテリー、ニッケルカドミウムバッテリー、銀亜鉛バッテリー、燃料バッテリー又は鉛バッテリーのうちの1種であり、好ましくは、バッテリーセルの数が1~9999である。
【0015】
本発明は、さらに、熱速度を調節可能なバッテリーシステムの制御方法に関し、前記制御方法は、
加熱速度を調節可能なバッテリーシステムを初期化し、バッテリー管理システムによって現在のバッテリーパック情報をリアルタイムに収集し、収集されたバッテリーパック情報を計算し、駐車加熱モード、走行加熱モード、直流充電加熱モード、及び交流充電加熱モードの4種に分けられる現在のバッテリーパックの加熱運転モードを選択し、バッテリー管理システムが加熱制御モジュールに必要なバッテリーパックの状態情報及び加熱運転モードを加熱制御モジュールに送信するステップ1)、
受信されたバッテリーパック加熱運転モード情報に基づいて、加熱制御モジュールを対応する加熱運転モードに切り替え、加熱制御モジュールが現在の加熱運転モードで設定されたパラメータに基づいて、対応するPWM信号を電流調節モジュールに送信し、加熱回路の電流値をリアルタイムに調節し、加熱制御モジュールが電流収集モジュールによりフィードバックされた電流値を受信し、PWM信号を調節することで、実際の電流値が設定値に達し、閉ループ制御を実現し、同時に加熱回路に故障が発生したか否かを診断し、故障が存在すると、故障レベルに応じて現在の加熱運転モードを停止させるか否か又は加熱電力を低下させるか否かを判断し、故障がないと、現在の加熱運転モードを継続するステップ2)と、
バッテリーパックにおけるバッテリーセルの温度、温度差、圧力差がプリセット閾値に達し、又はバッテリーセルの電圧、絶縁抵抗がプリセット閾値より低いと、警報し、加熱制御モジュールが電流調節モジュールに加熱電力がゼロの制御命令を送信するステップ3)と、
バッテリー管理システムに加熱運転モードを閉じる要求を送信し、現在の加熱運転モードを終了させ、ステップ1)に戻るステップ4)とを含む。
【0016】
更に、加熱制御モジュールは、加熱板、電流調節モジュール、電流収集モジュールに故障が生じたか否かを判断し、電流調節モジュールが加熱制御モジュールの故障操作に応答する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は従来技術に比べて、以下の有益な効果を有する。
加熱板、電流調節モジュール、電流収集モジュール、加熱制御モジュール、及びバッテリー管理システムを適宜に設け、且つ加熱運転モードを駐車加熱モード、走行加熱モード、直流充電加熱モード、及び交流充電加熱モードの4種に分けることで、従来技術でバッテリーパックの加熱効率が低く、加熱方式が単一であり、加熱電力を調節できないといった問題を解決し、低温で加熱レートが速く、航続距離が長く、低温で急速に充電できるといったパワーバッテリーシステムの有益な効果を実現する。
【0018】
本発明の他の特徴と利点は以下の明細書で説明され、その一部は明細書から明らかになるか、又は本発明を実施することにより把握する。
【0019】
以下、図面と実施例を参照しながら、本発明の技術案について更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は本発明の加熱速度を調節可能なバッテリーシステムの概略図である。
【
図2】
図2は本発明の電流調節モジュールの回路概略図である。
【
図3】
図3は本発明の電流収集モジュールの関連回路概略図である。
【
図4】
図4は本発明の加熱制御モジュールの回路概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明について詳細に説明する。以下の実施例は当業者が本発明を把握するためのものであり、いかなる形態で本発明を制限するものではない。
【0022】
図1~4に示されるように、加熱速度を調節可能なバッテリーシステムであって、前記バッテリーシステムはバッテリーパック1と、加熱板2と、電力制御モジュール3と、バッテリー管理システム6とを備え、前記バッテリーパック1がそれぞれ加熱板2及び電力制御モジュール3に電気的に接続され、前記電力制御モジュール3がそれぞれバッテリーパック1、加熱板2及びバッテリー管理システム6に電気的に接続される。
【0023】
バッテリーパック1の温度がプリセットの自動加熱の起動温度より低いと、電力制御モジュール3を起動し、バッテリー管理システム6が収集されたバッテリーパック1状態情報を電力制御モジュール3に伝送し、電力制御モジュール3がPWM(パルス幅変調)信号によって加熱板2の電流オンオフ時間及び周波数を調節することで加熱電力と加熱速度を調節し、それにより、バッテリーの自動加熱を実現し、バッテリーパック1の温度がプリセットの自動加熱閉じ温度に達すると、電力制御モジュール3を閉じて、加熱を停止する。
【0024】
前記電力制御モジュール3は、更に、電流調節モジュール4と、電流収集モジュール5と、加熱制御モジュール7とを含み、前記電流調節モジュール4は加熱板2、電流収集モジュール5、加熱制御モジュール7に電気的に接続され、加熱板2を流れる電流を調節することで、システムの加熱電力を調節することに用いられ、前記加熱制御モジュール7は電流収集モジュール5、電流調節モジュール4及びバッテリー管理システム6に電気的に接続され、バッテリー管理システム6と情報を交換し、電流調節モジュール4に電流調節命令を送信し、電流収集モジュール5が収集された加熱電流を読み取る。
【0025】
バッテリー管理システム6により収集されたバッテリーパック1の状態情報は、具体的には、バッテリーセルの最高電圧、バッテリーセルの平均電圧、バッテリーセルの最低電圧、バッテリーセルの最高温度、バッテリーセルの最低温度、バッテリーセルの圧力差、バッテリーパック1の全体電圧、バッテリーパック1の全体温度、バッテリーパック1の絶縁状態、バッテリーの加熱運転モードなどであり、電流調節モジュール4に対して加熱電力を設定することに用いられる。
【0026】
前記バッテリー管理システム6が加熱制御モジュール7と情報を交換することは、具体的には、バッテリー管理システム6が加熱制御モジュール7に車両状態情報及び加熱運転モードニーズを送信することであり、前記加熱運転モードは駐車加熱モード、走行加熱モード、直流充電加熱モード、及び交流充電加熱モードを含み、直流充電加熱モード、及び交流充電加熱モードは、充電器を介して加熱板2のみに高電圧を提供して加熱する方式、充電器がバッテリーパック1と加熱板2両方に高電圧を提供して給電する方式といった2種の選択可能な運転方式を有する。
【0027】
バッテリー管理システム6は、収集されたバッテリーパック1の状態情報を計算して、現在の加熱運転モードを選択し、現在の加熱運転モードを加熱制御モジュール7に送信する。加熱プロセスで、バッテリー管理システム6は加熱制御モジュール7にバッテリーパック1の現在状態情報をリアルタイムに送信する。
【0028】
前記電流調節モジュール4は、スイッチ電子部品と、絶縁駆動ユニットと、絶縁型電源とを含み、PWM信号によって加熱電流のオンオフ時間を制御し、そのうち、スイッチ電子部品は、オンオフ機能を有する又は調節可能な導通角を有する、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(金属-酸化物半導体電界効果トランジスタ)、サイリスター、リレーなどのうちのいずれの電子部品である。好ましくは、電流調節モジュール4のスイッチ電子部品がIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)である場合、電流調節モジュール4が具体的には、絶縁駆動ユニット、絶縁型電源及びIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を含み、加熱制御モジュール7がPWM信号を出力して絶縁駆動ユニットに通過させた後、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の制御信号を生成し、絶縁駆動ユニットが絶縁型電源により給電される。
【0029】
前記電流収集モジュール5は、ホールセンサと、LDO(低ドロップアウトリニアレギュレータ)と、ポート保護回路と、信号調節回路とを含み、ホールセンサは収集された電流信号をポート保護回路と信号調節回路を介してADCチャンネルに伝送する。具体的には、ホールセンサは収集された電流信号の伝送チャンネルをハイレンジチャンネルとローレンジチャンネルに分け、ハイレンジチャンネルは高周波電流信号をポート保護回路1と信号調節回路1を通過させて電流収集モジュールインターフェース1に伝送し、ローレンジチャンネルは低周波電流信号をポート保護回路2と信号調節回路2を通過させて電流収集モジュールインターフェース2に伝送する。
【0030】
前記加熱制御モジュール7はPWM信号によって電流調節モジュール4を制御する。前記加熱制御モジュール7は、MCUコントローラと、電源回路と、クロックと、CAN通信チップと、電流調節モジュールインターフェースと、電流収集モジュールインターフェースと、バッテリー管理システムインターフェースとを含み、MCUコントローラがCAN通信チップを介してバッテリー管理システムインターフェースに接続され、MCUコントローラがPWM生成モジュールを介して電流調節モジュールインターフェースに接続され、MCUコントローラがADCチャンネルを介して電流収集モジュールインターフェースに接続される。
【0031】
前記加熱板2は、ニッケル板、銅板、アルミニウム板、鉄板、グラファイト板、PTCヒーター又は加熱薄膜のうちの1種または複数種である。
【0032】
前記加熱板2は、独立した複数の加熱板ユニットを直列接続、並列接続又は直並列ハイブリッド接続して構成され、バッテリーセルの内部、バッテリーセルの外部、バッテリーパック1モジュール1の底部又はバッテリーパック1モジュールの側面に設けられる。
【0033】
前記バッテリーパック1は、複数のバッテリーセルを直列接続、並列接続又は直並列ハイブリッド接続して構成され、前記バッテリーセルは、リン酸鉄リチウムバッテリー、三元リチウムバッテリー、マンガン酸リチウムバッテリー、固体リチウムバッテリー、ニッケル水素バッテリー、ニッケルカドミウムバッテリー、銀亜鉛バッテリー、燃料バッテリー又は鉛バッテリーのうちの1種であり、好ましくは、バッテリーセルの数が1~9999でる。
【0034】
以上による加熱速度を調節可能なバッテリーシステムの制御方法であって、
加熱速度を調節可能なバッテリーシステムを初期化し、バッテリー管理システム6によって現在のバッテリーパック1の情報をリアルタイムに収集し、収集されたバッテリーパック1の情報を計算して、駐車加熱モード、走行加熱モード、直流充電加熱モード、及び交流充電加熱モードの4種に分けられる現在のバッテリーパック1の加熱運転モードを選択し、バッテリー管理システム6が加熱制御モジュール7に必要なバッテリーパック1の状態情報及び加熱運転モードを加熱制御モジュール7に送信するステップ1)と、
受信されたバッテリーパック1の加熱運転モード情報に基づいて、加熱制御モジュール7を対応する加熱運転モードに切り替え、加熱制御モジュール7が現在の加熱運転モードで設定されたパラメータに基づいて、対応するPWM信号を電流調節モジュール4に送信し、加熱回路の電流値をリアルタイムに調節し、加熱制御モジュール7が電流収集モジュール5によりフィードバックされた電流値を受信し、PWM信号を調節することで、実際の電流値が設定値に達し、閉ループ制御を実現し、同時に加熱回路に故障が発生したか否かを診断し、故障が存在すると、故障レベルに応じて現在の加熱運転モードを停止させるか否か又は加熱電力を低下させるか否かを判断し、故障がないと、現在の加熱運転モードを継続するステップ2)と、
バッテリーパック1におけるバッテリーセルの温度、温度差、圧力差がプリセット閾値より高く、又はバッテリーセルの電圧、絶縁抵抗がプリセット閾値より低いと、警報し、加熱制御モジュール7が電流調節モジュール4に加熱電力がゼロの制御命令を送信するステップ3)と、
バッテリー管理システム6に加熱運転モードを閉じる要求を送信し、確認した後、現在の加熱運転モードを終了させ、ステップ1)に戻り、次の加熱運転モードを待つステップ4)とを含む。
【0035】
更に、加熱制御モジュール7が加熱板2、電流調節モジュール4、電流収集モジュール5に故障が生じたか否かを判断し、電流調節モジュール4が加熱制御モジュール7の故障操作に応答する。
【0036】
本発明の技術的効果を検証するために、以下のいくつかの具体的な実施例を参照しながら説明する。
【0037】
実施例1:
バッテリーセルはリチウムイオンバッテリーを用い、容量が70Ah、定格電圧が3.7Vであり、バッテリーシステムが4並列36直列であり、バッテリー加熱板2はニッケル板を用い、抵抗値が80mΩであり、バッテリーの内部に内蔵され、接続方式が4並列36直列であり、環境温度を-20℃とし、バッテリー管理システム6が加熱制御モジュール7に駐車加熱モードを送信する。バッテリー管理システム6が加熱モードを加熱制御モジュール7に送信した後、PWM送信デューティサイクルを100%とし、加熱制御モジュール7が急速に起動し、IGBTが100%オンになり、最大速度で加熱し、最大の加熱電流が147Aであり、バッテリーシステムの温度が5℃/minの速度で急速に上がり、バッテリーの温度が設定された加熱停止温度10℃に達すると、加熱制御モジュール7が加熱動作を停止させ、加熱を停止させる。このとき、バッテリーの温度が10℃以上に達し、車両が起動して走行し、又は充電することができる。
【0038】
実施例2:
バッテリーセルはリチウムイオンバッテリーを用い、容量が70Ah、定格電圧が3.7Vであり、バッテリーシステムが4並列36直列であり、バッテリー加熱板2はニッケル板を用い、抵抗値が80mΩであり、バッテリーの内部に内蔵され、接続方式が4並列36直列であり、環境温度を-20℃とし、車両に直流充電器を挿入し、バッテリー管理システム6が直流充電加熱モードを加熱制御モジュール7に送信する。加熱制御モジュール7が「PWMデューティサイクルを60%とする」を送信し、加熱制御モジュール7が起動し、IGBTをパルスで動作させるように制御し、電流149Aで加熱始まり、充電器の出力電流を60Aとして設定し、バッテリーシステムの温度が5℃/minの速度で急速に上がり、バッテリーの温度が充電加熱停止温度10℃に達すると、加熱制御モジュール7が加熱動作を停止させ、加熱を停止させ、充電器が動作し続け、バッテリー管理システム6が「充電電流要求140A」を送信し、バッテリーが充電始まり、充電SOC(残存電力)が100%に達すると充電を停止させる。
【0039】
実施例3:
バッテリーセルはリチウムイオンバッテリーを用い、セルの容量が70Ah、定格電圧が3.7Vであり、バッテリーシステムが4並列36直列であり、バッテリー加熱板2はニッケル板を用い、抵抗値が80mΩであり、バッテリーの内部に内蔵され、接続方式が4並列36直列であり、環境温度を-20℃として、車両に交流充電ガンを挿入し、バッテリー管理システム6が交流充電加熱モードを加熱制御モジュール7に送信する。加熱制御モジュール7が「PWMデューティサイクルを90%とする」を送信し、加熱制御モジュール7が起動し、IGBTをパルスで動作させるように制御し、電流139Aで加熱始まり、充電器の出力電流を20Aとして設定し、バッテリーシステムの温度が5℃/minの速度で急速に上がり、バッテリーの温度が充電加熱停止温度10℃に達すると、加熱制御モジュール7が加熱動作を停止させ、加熱を停止させ、充電器が動作し続け、バッテリー管理システム6が「充電電流要求20A」を送信し、バッテリーが充電始まり、充電SOC(残存電力)が100%に達すると充電を停止させる。
【0040】
実施例4
バッテリーセルはリチウムイオンバッテリーを用い、セルの容量が70Ah、定格電圧が3.7Vであり、バッテリーシステムが4並列168直列であり、バッテリー加熱板2はニッケル板を用い、抵抗値が80mΩであり、バッテリーの内部に内蔵され、接続方式が4並列168直列であり、環境温度を-20℃として、運転者が車両を起動し、車両が10km/hの速度で走行し、バッテリー管理システム6が走行加熱モードを加熱制御モジュール7に送信する。加熱制御モジュール7が「PWMデューティサイクルを20%とする」を送信し、加熱制御モジュール7が起動し、IGBTをパルスで動作させるように制御し、電流29Aで加熱始まり、バッテリーシステムの温度が1℃/minの速度で上がり、バッテリーの温度が加熱停止温度10℃に達すると、加熱制御モジュール7が加熱動作を停止させ、加熱を停止させ、車両が走行し続け、100km/hの最高車速に達して走行することができ、制動エネルギー回収が正常である。
【0041】
以上は、本発明の好適な実施形態にすぎず、本発明の特許範囲はこれに限られず、当業者であれば、本発明に開示された技術範囲内において、本発明の技術案及びその発明発想に対する等価置換や変更は、すべて本発明の特許範囲内に属する。
【符号の説明】
【0042】
1 バッテリーパック、
2 加熱板、
3 電力制御モジュール、
4 電流調節モジュール、
5 電流収集モジュール、
6 バッテリー管理システム、
7 加熱制御モジュール。