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特許7130088関節形成術のための駆動される位置決め装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】関節形成術のための駆動される位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20220826BHJP
   A61F 2/44 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/44
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021079680
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2019142718の分割
【原出願日】2014-10-15
(65)【公開番号】P2021137593
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】61/891,397
(32)【優先日】2013-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/891,398
(32)【優先日】2013-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/990,476
(32)【優先日】2014-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516109428
【氏名又は名称】エクスパンドーソ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ドリマ,ダリル ディー
(72)【発明者】
【氏名】コルウェル,ジュニア,クリフォード ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】マツウラ,デイビッド ジー.
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン,フィリップ ジェー.
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-513274(JP,A)
【文献】特表2012-511408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0172762(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0249533(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0182343(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0149277(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/46
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器であって、
関節の第1の骨構造体と接合するように構成されるトッププレートであって、前記トッププレートは、前記第1の骨構造体と接合するように構成される上面を含み、前記トッププレートは、前記上面とは反対側にある底面を含む、トッププレートと、
前記第1の骨構造体とは反対側にある、前記関節の第2の骨構造体と接合するように構成されるボトムプレートであって、前記ボトムプレートは、前記第2の骨構造体と接合するように構成される底面を含み、前記ボトムプレートは、前記ボトムプレートの底面とは反対側にあり、かつ前記トッププレートの方に面する上面を含む、ボトムプレートと、
前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に配置され、かつ、前記トッププレート及び前記ボトムプレートを互いから離れさせるべく、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に牽引力をかけるように構成される少なくとも1つの駆動装置と、
(a)前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の空間的関係性を示すデータ、(b)前記少なくとも1つの駆動装置によって印加される力を示すデータ、及び(c)それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを取り込むように構成される1つ以上のセンサと、
前記1つ以上のセンサに通信的に結合され、かつ前記1つ以上のセンサからのデータを受信するように構成されるプロセッサと、
を備える、機器であり、
前記機器は、
(1)前記プロセッサが、前記少なくとも1つの駆動装置が前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に所定の力である牽引力をかけるべく、前記少なくとも1つの駆動装置を制御するように構成され、前記所定の力がかけられた後に、前記プロセッサが、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の少なくとも1つの距離を示すデータを前記1つ以上のセンサから受信するようにさらに構成される、第1のモードと、
(2)前記プロセッサが、牽引力が前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の少なくとも1つの所定の距離を生じさせるのに十分である十分な力であるように、前記少なくとも1つの駆動装置が前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に前記牽引力をかけるべく、前記少なくとも1つの駆動装置を制御するように構成され、前記十分な力がかけられた後に、前記プロセッサが、前記十分な力を示すデータを前記1つ以上のセンサから受信するようにさらに構成される、第2のモードと、
のうちの選択されるものにおいて選択的に動作可能であるように構成される、機器。
【請求項2】
前記プロセッサは、2つの軸において前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の傾きを求めるようにさらに構成される、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの駆動装置のそれぞれは、少なくとも1つのベローズを含み、前記少なくとも1つのベローズのそれぞれは、互いに直接流体連通する複数の区画を含み、前記複数の区画は、前記ボトムプレートの上面にわたりかつ前記トッププレートの底面にわたり互いから離間される、請求項1に記載の機器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの駆動装置は、複数のベローズを備える、請求項3に記載の機器。
【請求項5】
前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に配置され、かつ前記トッププレートが前記ボトムプレートに対して回転することを可能にするように構成されるベアリングをさらに備える、請求項1に記載の機器。
【請求項6】
前記ベアリングは、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間で10度までの回転を提供するように構成される、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
少なくとも1つのトッププレートは、前記少なくとも1つのトッププレートの上面上の少なくとも1つの溝、及び前記少なくとも1つの溝内の少なくとも1つの関節接触面を含み、前記少なくとも1つの関節接触面のそれぞれは、前記関節に関する骨の顆と接合するように構成される、請求項1に記載の機器。
【請求項8】
少なくとも1つのトッププレートは、前記少なくとも1つの駆動装置に隣接するプレート部、及び前記プレート部に締結される間節部を含み、前記関節部は、前記関節に関する骨の少なくとも1つの顆と接合するように構成される、請求項1に記載の機器。
【請求項9】
機器であって、
トッププレートであって、
プレート部と、
前記プレート部に締結される間節部であって、前記間節部は、前記プレート部とは反対側にある溝、及び関節の第1の骨構造体と接合するように構成される関節接触面を含む、間節部と、
を含む、トッププレートと、
前記関節の第2の骨構造体と接合するように構成されるボトムプレートと、
前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に配置され、かつ、前記トッププレート及び前記ボトムプレートを互いから離れさせるべく、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に牽引力をかけるように構成される少なくとも1つの駆動装置と、
(a)前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の空間的関係性を示すデータ、(b)前記少なくとも1つの駆動装置によって印加される力を示すデータ、及び(c)それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを取り込むように構成される1つ以上のセンサと、
前記1つ以上のセンサに通信的に結合され、かつ前記1つ以上のセンサからのデータを受信するように構成されるプロセッサと、
を備える、機器であり、
前記機器は、
(1)前記プロセッサが、前記少なくとも1つの駆動装置が前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に所定の力である牽引力をかけるべく、前記少なくとも1つの駆動装置を制御するように構成され、前記所定の力がかけられた後に、前記プロセッサが、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の少なくとも1つの距離を示すデータを前記1つ以上のセンサから受信するようにさらに構成される、第1のモードと、
(2)前記プロセッサが、牽引力が前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の少なくとも1つの所定の距離を生じさせるのに十分である十分な力であるように、前記少なくとも1つの駆動装置が前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に前記牽引力をかけるべく、前記少なくとも1つの駆動装置を制御するように構成され、前記十分な力がかけられた後に、前記プロセッサが、前記十分な力を示すデータを前記1つ以上のセンサから受信するようにさらに構成される、第2のモードと、
のうちの選択されるものにおいて選択的に動作可能であるように構成される、機器。
【請求項10】
前記1つ以上のセンサは、前記1つ以上のセンサから空間データを得るように構成される電子装置基板に結合され、前記ボトムプレートは、前記少なくとも1つの駆動装置に隣接しかつ前記1つ以上のセンサと位置合わせされる1つ以上の磁石凹部を含む、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
前記少なくとも1つの駆動装置のそれぞれは、少なくとも1つのベローズを含み、前記少なくとも1つのベローズのそれぞれは、互いに直接流体連通する複数の区画を含み、前記複数の区画は、前記ボトムプレートの上面にわたりかつ前記トッププレートの底面にわたり互いから離間される、請求項9に記載の機器。
【請求項12】
前記少なくとも1つのベローズは、互いと直接流体連通する4つの第1の区画を有する第1のベローズを備え、前記第1の区画のそれぞれは、前記第1のベローズの四分の一の中に位置し、前記少なくとも1つのベローズは、互いと直接流体連通しない4つの第2の区画を有する第2のベローズを備え、前記第2の区画のそれぞれは、前記第1の区画のうちの対応するものに隣接して位置しかつ流体連通する、請求項11に記載の機器。
【請求項13】
前記少なくとも1つの駆動装置は、少なくとも6mmの最小高さ変化を提供する、請求項9に記載の機器。
【請求項14】
システムであって、
インサートであって、
関節の骨構造体と接合するように構成されるトッププレートであって、前記トッププレートは、基板受け入れ特徴を含む、トッププレートと、
前記トッププレートから離間され、かつ前記関節の対向する骨構造と接合するように構成されるボトムプレートと、
前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に配置され、かつ、前記トッププレート及び前記ボトムプレートを互いから離れさせるべく、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に牽引力をかけるように構成される少なくとも1つの駆動装置と、
前記基板受け入れ特徴の中にかつ前記少なくとも1つの駆動装置に隣接して位置する電子装置基板と、
(a)前記電子装置基板に結合され、かつ前記電子装置基板と前記少なくとも1つの駆動装置との間に位置する少なくとも1つのセンサであって、前記少なくとも1つのセンサは、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の空間的関係性、(b)前記少なくとも1つの駆動装置によって印加される力、及び(c)それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを感知するように構成される、センサと、
を含む、インサートと、
コントローラ組立体であって、
コントローラであって、
電子装置チャンバ及びアキュムレーションチャンバと共に形成されるハウジング本体と、
前記電子装置チャンバ内に位置し、かつ前記電子装置基板と電子通信するハウジング電子装置基板と、
を含む、コントローラ
を含む、コントローラ組立体と、
を備える、システムであり、
前記システムは、
(1)前記コントローラが、前記少なくとも1つの駆動装置が前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に所定の力である牽引力をかけるべく、前記少なくとも1つの駆動装置を制御するように構成され、前記所定の力がかけられた後に、前記コントローラが、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の少なくとも1つの距離を示すデータを前記少なくとも1つのセンサから受信するようにさらに構成される、第1のモードと、
(2)前記コントローラが、牽引力が前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の少なくとも1つの所定の距離を生じさせるのに十分である十分な力であるように、前記少なくとも1つの駆動装置が前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に前記牽引力をかけるべく、前記少なくとも1つの駆動装置を制御するように構成され、前記十分な力がかけられた後に、前記コントローラが、前記十分な力を示すデータを前記少なくとも1つのセンサから受信するようにさらに構成される、第2のモードと、
のうちの選択されるものにおいて選択的に動作可能であるように構成される、システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの駆動装置のそれぞれは、少なくとも1つのベローズを含み、前記少なくとも1つのベローズのそれぞれは、互いに直接流体連通する複数の区画を含み、前記複数の区画は、前記ボトムプレートの上面にわたりかつ前記トッププレートの底面にわたり互いから離間される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのベローズは、第2のベローズに隣接しかつ流体連通する第1のベローズを有する複数のベローズを備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、2つの軸において前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間の傾きを測定するようにさらに構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記少なくとも1つの駆動装置内の流体の圧力を求めるための圧力センサを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間に配置され、かつ前記トッププレートが前記ボトムプレートに対して回転することを可能にするように構成されるベアリングをさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記ベアリングは、前記トッププレートと前記ボトムプレートとの間で10度までの回転を提供するように構成される、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明される種々の実施形態は、一般に、人工関節形成術中に関節のバランス調整をするための装置及び方法、並びに、関節形成術中に人工コンポーネントを位置決めする及び関節のバランス調整をするための駆動される位置決め及び感知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関節形成術は、痛みをなくし、運動を改善するべく関節の1つ以上の部分を置換することによる関節の修復を含む。例えば、元の関節に類似した運動範囲を可能にしながら骨表面及び軟骨と置換するように設計された1つ以上のプロテーゼを含む人工関節を挿入することによって、軟骨の欠損又は骨表面間の摩擦を治療することができる。
【0003】
膝関節形成術は、通常、大腿骨(femur)(thigh bone)の下端、脛骨(tibia)(shin bone)の上端、及び膝蓋骨(patella)(knee cap)の関節面の疾患のある損傷した表面を切除すること(切り取ること)に関係する。次いで、これらの表面が人工物で置換される。大腿骨コンポーネント又はプロテーゼは、通常、コバルトクロム合金から作製され、基礎をなす骨に大腿骨プロテーゼを結合するために、くぎなどの固定装置で、しばしば骨セメントを使用して、大腿骨に取り付けられる。脛骨コンポーネントは、通常、2つの部分、すなわち、金属トレイ(チタン又はコバルトクロム合金)とポリエチレンインサートからなり、これらは手術中に一緒に組み立てられる。金属トレイは、ねじ、くぎ、又はステムで骨に固定され、一方、インサートは、金属トレイにロックされ、大腿骨コンポーネントと関節する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膝関節形成術における技術的課題は、腰及び足首に対する膝の自然な位置合わせを回復すること、膝の可動域を取り戻すこと、及び人工的に移植された膝が正常な膝と同様に動くようにすることである。これらの目標は、残りの骨に対して正確な位置及び向きで骨切りを行い、適切なサイズ及び形状の人工コンポーネントを選択し、プロテーゼを骨上の及び互いに対して適切な位置に置き、膝関節が緩すぎたりきつすぎたりしないように適切な厚さのインサートを選択することによって達成される。
【0005】
人工関節の設計及び製造並びに手術器具における継続的な改善にもかかわらず、実際の関節形成術は、主として、手技を行う外科医のスキルと経験に依拠する。関節形成術は、人工関節の運動が正常な可動域にできる限り確実に類似しているようにするために、外科医が人工関節を挿入するだけでなく関節の「バランス調整」も必要とする。関節のバランス調整は、しばしば、骨、靱帯、及び他の組織の慎重な測定及び切断を必要とするとともに、骨によって関節にかかる力が確実に均等に分配されるようにするために荷重のバランス調整を必要とし、人工関節が正常な運動に必要とされる方向及び距離に運動できるかどうかを判定するために可動域テストを必要とする。バランス調整プロセスは、しばしば、外科医が関節を単純に物理的に保持し、関節の運動及び関節にかかる力が適正であるかどうかを「感じる」ことを必要とする。結果として、人工関節の運動が「大体正しい」かどうかを外科医が理解することは経験及び知識に依拠するので、関節のバランス調整プロセスは大いに主観的である。これらのパラメータのいずれかの調整不良は、結果的に、限られた関節の可動域、継続する関節での痛み、及び過度に大きな荷重の分配又は摩擦に起因する人工関節の早期の故障をもたらす場合がある。
【0006】
関節形成術中に人工関節のバランス調整を支援するために、外科医が関節のバランス調整中にいくつかのパラメータを測定するのを助ける測定装置が開発されている。最も一般的なバランス調整装置は、本質的に機械的であり、関節の骨を牽引するのに外科医が装置に手で力をかけ、骨間の距離が視覚的に測定される。一部の測定装置は、関節のバランス調整を試みるときに有用な荷重分布についての測定値を提供するために人工関節に挿入することができるセンサを組み込んでいる。これらの測定装置をもってしても、外科医は、依然として、関節のバランスがとれているかどうかを判定するために手で未知の又は不正確な力を関節にかける必要がある。かけられた力の量が実際の使用中に実際に関節にかかる力と一致しない場合、関節が適切に動かない場合があり、時期尚早に摩耗し、限られた運動、痛み、最終的には置換又はさらなる外科的修復につながる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示されるのは、人工関節形成術などの外科的手技中に関節のバランス調整をするための装置及び方法である。いくつかの実施形態では、装置は、1つ以上のプレート、1つ以上のセンサ、及び関節の1つ以上の部分に対して装置を駆動するための少なくとも1つの駆動される機構を有するインサートである。1つ以上のプレートは、膝関節の大腿骨及び脛骨などの関節を画定する骨構造体間に配置される。1つ以上のセンサは、駆動される機構の運動から導出されるかかった力データと共に、関節の運動についての力データ、位置データ、及び角度データを提供し、関節の非常に的確かつ動的な調整を提供する。一実施形態では、少なくとも1つの駆動される機構は、ばねにより駆動される機構である。別の実施形態では、少なくとも1つの駆動される機構は、空気圧により駆動される機構である。空気圧により駆動される機構を加圧するために加圧装置が用いられる。駆動される機構の制御及び関節のバランス調整に関係する多くのパラメータの測定を提供するために、ばね構成及び空気圧構成又はこれらの組合せなどの種々のタイプの駆動構成及びセンサが、インサート内又はインサート上で実装されてもよい。調整のリアルタイム制御及び視覚化されたフィードバックのためにカスタマイズされたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)が提供される。センサデータはまた、調整推奨を提供し、ヒストリカルデータに基づくより良好な結果を達成するために、収集され、期待される又は好ましいデータセットと比較されてもよい。添付図と併せて読まれる好ましい実施形態の以下の説明から他の特徴及び利点が明らかとなるであろう。
【0008】
本明細書で開示される種々の実施形態は、以下の図面を参照して詳細に説明される。図面は、典型的な又は例示的な実施形態をただ例示する及び単に描画する目的で提供される。これらの図面は、読者の理解を容易にするために提供され、実施形態の広さ、範囲、又は適用可能性を制限すると考えられるものではない。例示を明確及び容易にするために、これらの図面は必ずしも原寸に比例して描かれていないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る関節バランス調整システムの機能ブロック図である。
図2】膝関節内に配置される図1のインサートの実施形態を例示する図である。
図3】変位センサを有する図1のインサートの実施形態の斜視図である。
図4】空気圧駆動装置を有する図1のインサートの実施形態の斜視図である。
図5図4のインサートの分解図である。
図6図4及び図5の空気圧駆動装置の斜視図である。
図7図6のベローズ182の上面図である。
図8図4及び図5の電子装置基板の斜視図である。
図9】複数のばね駆動装置を有する図1のインサートの実施形態の分解図である。
図10】駆動装置を有さない図9のインサートの代替的な分解図である。
図11】単顆構成を有する図1のインサートの実施形態の斜視図である。
図12】インサートに接続される図1のコントローラ組立体の実施形態の斜視図である。
図13図12のコントローラ組立体のコントローラの斜視図である。
図14図13のコントローラの分解図である。
図15】関節のバランス調整中に骨及び組織の切断をガイドするのに用いられるインサートに接続される切断ガイド組立体の実施形態を例示する図である。
図16】関節のバランス調整中に骨及び組織の切断をガイドするのに用いられるインサートに接続される切断ガイド組立体の実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記の種々の実施形態が、例示的な実施形態の上述の図面及び以下の詳細な説明を参照してさらに詳細に説明される。
【0011】
本明細書で開示されるのは、人工関節形成術などの関節の外科的手技中に関節のバランス調整をするためのシステム、装置、及び方法である。図1は、本発明の一実施形態に係る関節バランス調整システム50の機能ブロック図である。関節バランス調整システム50は、試用インサート(「インサート」)100、コントローラ組立体200、及びディスプレイシステム300を含んでもよい。関節バランス調整システム50は、図2図11に例示されるように、1つ以上のプレート、1つ以上のセンサ、及び関節の1つ以上の部分に対して装置を駆動するための少なくとも1つの駆動装置/駆動される機構を有するインサート100を含む。駆動される機構は、空気、電気機械、電磁気、機械、圧電、又はこれらの組合せなどによって動力を与えられる流体であってもよい。他の駆動される機構が用いられてもよい。1つ以上のプレートは、膝関節の大腿骨及び脛骨などの関節を画定する骨構造体間に配置される。1つ以上のセンサは、駆動機構からかかった力のデータと共に、関節の運動についての力データ、位置データ、及び角度データを提供し、関節の非常に的確かつ動的な調整を提供してもよい。インサート100の制御及び関節のバランス調整に関係する多くのパラメータの測定を提供するために、種々の構成の駆動装置及びセンサがインサート100内に又はインサート100上に実装されてもよい。駆動される機構をインサートに追加することは、関節形成術などの外科的手技中に関節のバランス調整プロセスに多くの利点を与える。外科医は、既知の制御された量の力を関節にかけ、調整が行われるべきかどうかをより正確に判断するために測定した荷重データ、運動データ、及び角度データをかけられた力と相互に関連付けることができる。駆動される機構はまた、インサート上の種々の異なる駆動点からの動的駆動が可能であってもよく、関節の運動をより正確にシミュレートし、結果を測定するために、異なる量の荷重、異なる量の運動、及び異なる角度の運動を適用する能力を提供する。荷重は、荷重バランス調整の著しい改善を提供するために任意の可動域にわたって測定することができる。
【0012】
インサート100は、電子装置基板140を含んでもよい。電子装置基板140は、基板モジュール141及び基板通信モジュール143を含んでもよい。基板モジュール141は、基板通信モジュール143を介してセンサからデータを取得し、データをコントローラ組立体200に送信するように構成されてもよい。基板モジュール141はまた、コントローラ組立体200からの信号を駆動装置にリレーするように構成されてもよい。基板モジュール141はまた、駆動装置の力、若しくは牽引又は変位の大きさを、安全性を優先して制御するように構成されてもよい。基板モジュール141は、インサート100のバランスがとれていないときに信号を通信し、インサートのバランスがとれているときに別の信号を通信するようにさらに構成されてもよい。信号は、電子装置基板140に取り付けられた電子ハードウェアによって及び/又はディスプレイシステムから提供される聴覚警告又は視覚警告などの警告をもたらしてもよい。聴覚警告は、スピーカ又は圧電音発生器などの音源によって提供されてもよい。視覚警告は、発光ダイオードなどの光源によって提供されてもよい。基板モジュール141は、手術中にドリル及び鋸などの手術器具に位置合わせのためのガイダンスを提供するようにさらに構成されてもよい。通信モジュール143は、有線接続又は無線接続によりコントローラ組立体との間で電気信号を送信/受信するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、通信モジュール143は、ドリル及び鋸などの他の手術器具と通信するように構成される。
【0013】
コントローラ組立体200は、インサート100内の駆動装置を手動で又は遠隔的に制御するのに用いられてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ組立体200は、駆動装置を物理的に又は機械的に制御し、これは、外科医又は医療技術者による駆動装置の運動の手動操作を可能にする場合がある。他の実施形態では、コントローラ組立体200は、駆動装置を電子的に制御し、これは、プロセッサ及びメモリを有するコンピューティング装置として監視及びプログラムすることができる。
【0014】
コントローラ組立体200は、コントローラ240を含んでもよい。コントローラ240は、コントローラ通信モジュール259を含んでもよい。コントローラ通信モジュール259は、有線接続及び/又は無線接続によりインサート100からの信号及びディスプレイシステム300からの信号を送信/受信するように構成される。いくつかの実施形態では、コントローラ通信モジュール259は、ドリル及び鋸などの他の手術器具と通信するように構成される。コントローラ通信モジュール259は、基板モジュール141によって提供されたガイダンスを手術器具にリレーしてもよい。
【0015】
コントローラ組立体200は、マウス、キー基板、容量性ボタン、又は対話型ディスプレイなどの1つ以上の入力装置を通じて操作されてもよい。対話型ディスプレイは、ディスプレイシステム300の一部であってもよく、関節のバランス調整中の容易な比較のために、関連する値及び他の測定したパラメータと共に、各駆動装置の制御を表示してもよい。単一のコントローラ240は、すべての駆動装置に同じ圧力をかけるように構成されてもよい。これは、設計を簡単にし、各駆動装置に確実に等しい力/圧力がかかるようにすることができる。
【0016】
ディスプレイシステム300は、GUIを表示するのに用いられてもよいコンピュータ、タブレット、スマートフォン、又は他の電子装置などのプロセッサ及びメモリを有するコンピューティング装置であってもよい。ディスプレイシステム300は、ディスプレイ通信モジュール310、ディスプレイモジュール320、及びモニタなどのディスプレイ330を含んでもよい。ディスプレイ通信モジュール310は、コントローラ組立体200との間で有線通信又は無線通信を送信/受信するように構成される。
【0017】
ディスプレイモジュール320は、ディスプレイ330上で閲覧するためのカスタマイズされたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供してもよい。GUIは、すべての測定したパラメータが好ましい範囲内にあるときを示す視覚位置合わせガイドを通じて、調整のリアルタイム制御及び視覚化されたフィードバックのための関連するデータを表示してもよい。GUIはまた、種々のセンサによって測定されるパラメータの値を提示してもよい。
【0018】
センサデータはまた、調整推奨を提供し、ヒストリカルデータに基づくより良好な結果を達成するために、収集され、期待される又は好ましいデータセットと比較されてもよい。GUIは、測定したパラメータを既知の容認される値の範囲と比較することによって関節のバランスがとれているかどうかについての視覚又は音響表示を提供してもよい。いくつかの実施形態では、GUIは、トッププレート110及びボトムプレート150にかかった力を提供してもよい。力は、センサによって提供される高さ及び圧力測定値を用いて求められてもよい。力は、ディスプレイモジュール320などのディスプレイシステム300によって又は別のシステム/モジュールによって求められてもよい。
【0019】
関節バランス調整システムはまた、データストア90を含んでもよい。データストア90は、ディスプレイシステム300か又はコントローラ組立体200のいずれかに接続される別個のシステムであってもよく、又は、ディスプレイシステム300か又はコントローラ組立体200のいずれか内に存在してもよい。いくつかの実施形態では、データストア90の中のデータは、分析のために中央サーバにアップロードされてもよい。
【0020】
一実施形態では、関節内の2つのプレートの位置合わせ及び駆動装置の運動をリアルタイムでグラフィカルに示す視覚位置合わせガイドが提示されてもよい。視覚位置合わせガイドは、外科医が所望の位置合わせを達成するのを助けることになるガイドライン又は円形目標を提供してもよい。位置合わせガイドはまた、位置合わせが良好である(緑)か又は不良である(赤)かを示すために色分けされた視覚グラフィックスを提供してもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、GUIは、インサート100の位置決めに関係した1つ以上の図を表示する。図は、センサ位置のうちの1つ以上におけるトッププレートとボトムプレートとの間の相対変位を表示してもよい。GUIはまた、トッププレートとボトムプレートとの間の傾きを表示してもよい。GUIは、複数のグラフを含んでもよい。1つのグラフは、内外(左右)方向の傾きのヒストリを表示してもよい。別のグラフは、前後方向の傾きを表示してもよい。GUIはまた、膝の屈曲角度、圧力、力、及びバッテリ電圧を表示してもよい。GUIはまた、将来の参照のためにデータを保存する又は画面取り込みを生成するボタンを提供してもよい。このデータ及び情報は、データストア90にアーカイブされてもよい。第3のグラフは、トッププレートとボトムプレートとの間の距離のヒストリを表示してもよい。GUIはまた、リアルタイムデータと比較することができる以前に記録したデータを表示してもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、GUIは3つの図を表示する。1つの図は、膝が屈曲していない状態で収集されるデータを表示し、別の図は、膝が90度屈曲している状態で収集されるデータを表示し、第3の図は、リアルタイムのデータを表示する。
【0023】
いくつかの実施形態では、GUIは、患者及び/又はインサート100に固有のカスタム又は患者に特異的なバランスを設定するために手術の前に用いることができる。GUIはまた、関節内のどこに問題があるかについての指示のリストを含むことができ、問題をどのようにして補正するかの推奨を外科医に提供することができる。GUIはまた、コンピュータナビゲーションシステム、手術ロボット、ドリル及び鋸などの器具、止血器センサなどの他の装置又は器具からの情報を表示することができる。
【0024】
図2は、膝関節内に配置される図1のインサート100の実施形態の図である。例示される実施形態では、インサート100は、トッププレート110の内側面及びボトムプレート150の内側面上の種々のポイントに配置される駆動装置180によって分離されるトッププレート110及びボトムプレート150を含む。トッププレート110は、大腿骨8に接して配置され、一方、ボトムプレート150は、脛骨10に接して配置される。インサート100はさらに、トッププレート110及び/又はボトムプレート150に沿って配置される1つ以上のセンサ(図3に示される)と共に構成される。センサは、本明細書で説明されるように関節のバランス調整に関係した種々のパラメータを測定する及び求めるように構成される。
【0025】
インサート100は、関節のバランス調整が完了すると類似の形状及びサイズの恒久的インサートに置換されるように、関節のバランス調整手技中にのみ関節の中に入れられる一時的インサートとして設計されてもよい。別の実施形態では、インサート100は、関節のバランスがとられると隣接する骨間の位置にとどまることになるように、恒久的であってもよい。
【0026】
インサート100は、関節への挿入前は独立した装置であってもよい。トッププレート110及びボトムプレート150は、形状及びサイズを変えてもよく、平行な平面内に位置合わせされてもよい。トッププレート110及び対応するボトムプレート150の全体的な形状は、膝関節内に嵌り、隣接する大腿骨8及び脛骨10の骨表面と接触することなどによって接合するのに大きい表面積を提供するように設計される。例示される実施形態では、インサート100は、トッププレート110とボトムプレート150との間に配置される合計4つの駆動装置180(3つが見えている)を含む。駆動装置180は、各駆動装置での動的荷重バランス調整及びインサート100の異なる角度の駆動を可能にすることになるインサート内の異なるポイントからの駆動を提供するために等間隔に離間してインサート100の異なる四分の一区分内に配置されてもよい。例えば、2つの隣接する駆動装置180が駆動される場合、インサートは、インサート100の一方の側部から他方の側部にかけて傾斜する角度をなして配置されてもよい。駆動装置180の数は、変えてもよく、たった1つであってもよい。駆動装置180は、三角形、円形、又は不規則な配置などの他の構成に置かれてもよい。駆動装置はまた、剪断力又は回転力(トルク)を生じるように傾けられ又は角度をつけられてもよい。
【0027】
本発明の一実施形態に係るインサート100を用いて関節のバランス調整方法がここで説明される。関節のバランスは、外科的手技のいくつかのステージで測定されてもよい。例えば、測定値は、切らない大腿骨表面に対して脛骨の骨切りを行う前に又は骨切りを行った後で、若しくは切る大腿骨表面に対して又は試用大腿骨プロテーゼに対して大腿骨の骨切りを行った後で、若しくは試用大腿骨プロテーゼ又は脛骨プロテーゼが定位置にある状態で、若しくは最終的な大腿骨プロテーゼ及び脛骨プロテーゼが定位置にある状態でとられてもよい。第1のステップ中に、インサートは、膝関節の大腿骨8と脛骨10との間の開口部などの2つの対向する骨構造体間の関節の間隙又は開口部の中に入れられる。いくつかの実施形態では、インサート100を開口部に挿入するのに挿入/抜き取りツールが用いられる。次に、大腿骨8及び脛骨10の骨構造体に荷重をかけるために駆動装置180のうちの1つ以上がアクティブ化される。センサは、運動、圧力、角度、位置、可動域、間隙、各駆動装置によってかかる荷重などの関節に関係する1つ以上のパラメータを測定する。測定値は、関節のバランスがとれているかどうか、すなわち、対向する骨構造体によってインサートに圧力が均等にかかっているかどうか、関節が所望の可動域内で動くことができるかどうか、大腿骨8及び脛骨10の表面間の間隙の大きさ及び膝が屈曲又は伸展されるときの間隙の変化、関節の周りの靱帯が過度に大きな張力下にあるかどうかなどについての表示を提供してもよい。測定値はまた、骨切りが最適ではないことを示す場合があり、例えば、脛骨10が、過度に内反又は外反して切断されている場合があり、大腿骨8が、過度に内反又は外反して、若しくは外旋又は内旋して切断されている場合があり、又は大腿骨の遠位切断が過度に深くなされていて、結果的に、異なる屈曲角度での大腿骨及び脛骨の表面間の間隙の不適合が生じる場合がある。測定値及び測定値の分析が、関節のバランスが適正にとれていない又は骨切りが適切ではないことを示す場合、外科医は、関節のバランスを改善するべく関節の特定の部分への1つ以上の調整を行うことになる。調整は、骨の再切断、靱帯の弛緩又は引締め、人工物又はインサート100の位置又は回転の調整、骨、靱帯、又は軟骨の一部の切り取り、又は関節の間隙により良好に嵌るようにインサート100の高さを増加又は減少することを含んでもよい。関節は、駆動装置のうちの1つ以上を駆動し、改善がなされているかどうかを判定するためにパラメータを測定することによって再びテストされてもよい。このプロセスは、外科医が測定値に満足するまで繰り返されてもよい。流体により動力を与えられる駆動装置を含むいくつかの実施形態では、流体により動力を与えられる駆動装置の圧力を変化させながらの牽引の測定は、軟組織の生体機械的特性を特徴付け、最適なバランスの選択を支援するのに用いられてもよい。
【0028】
測定値が特定の容認可能な範囲内に入るポイントで、関節はバランスがとれると考えられる。インサート100が恒久的人工物として機能するように設計される場合、これは関節開口部内の定位置に残される。インサート100が単なる測定及びテストツールとして構成される場合、これは、除去され、次いで、同一の寸法の恒久的プロテーゼと置換される。いくつかの実施形態では、センサ(単数又は複数)によって収集されるデータは、オンデマンドでカスタムインプラントを生み出すのに用いられる。
【0029】
インサート100の特性及び機能のさらなる詳細が、駆動装置、センサ、装置の形状及び構成、コントローラ及びユーザインターフェース、及び関節のバランス調整をするためのさらなるツールに関して以下で説明される。
【0030】
センサ
インサート100上に又はインサート100内に配置されるセンサは、関節のバランス調整に関係した多くの異なるパラメータを測定するように構成し、求めるのに用いることができる。例えば、センサは、駆動装置によってかかる力又は荷重、及び結果的に生じる、隣接する骨によってトッププレート又はボトムプレートの種々の区域が受ける圧力を測定するように構成し、求めるのに用いることができる。これらのセンサの例は、ロードセル、歪みゲージ、圧力センサなどである。ばね駆動装置に関して、ばねの力は、例えば、既知のばね剛性と、変位センサを用いて測定したばねの長さを用いて間接的に計算してもよい。センサはまた、トッププレートとボトムプレートとの間のすべての運動か又は各個々の駆動装置の運動のいずれかの運動の距離を監視するように構成することができる。これらのセンサの例は、磁気センサ、光電センサ、及び駆動装置機構(例えば、ねじにより作動される駆動装置)のストロークの監視である。センサはまた、加速度計、磁力計、及びジャイロスコープの使用を通じて動きの角度、さらには角度位置を測定してもよい。
【0031】
インサート100は、インサート100上の異なる位置で異なるタイプのパラメータを測定する又は同じタイプのパラメータを測定するために、複数の異なるセンサを組み込んでもよい。センサは、有線接続又は無線接続により通信し、外部電源又は各センサ内の内部電源又はインサート100内に存在する電源によって電力を与えられてもよい。
【0032】
図3は、センサ102を有する図1のインサート100の実施形態の斜視図である。駆動装置180は明確にするために図示されない。センサ102は、トッププレート110とボトムプレート150との間の距離及び角度を含む空間的関係性などのトッププレート110とボトムプレート150との間の関係性、及びトッププレート110とボトムプレート150との間の圧力を判定するのに用いられてもよい。例示される実施形態では、センサ102は、対応する磁石104を有する変位センサである。センサ102及び磁石104は、トッププレート110及びボトムプレート150の対向する内側面上に存在してもよい。インサート100は、任意の数及び構成のセンサ102及び磁石104を含んでもよい。例示される実施形態では、インサート100は、ボトムプレート150の内側面上の4つのセンサ102と、2つのプレートを一緒に保持するためのトッププレート110の内側面上に構成される4つの対応する磁石104を有する。センサ118は、トッププレート110とボトムプレート150との間の変位を複数の位置で測定し、二方向の傾きを計算する。センサ102は、ホール効果センサであってもよい。センサ102及び磁石104は、トッププレート110とボトムプレート150との間に位置合わせされてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、トッププレート110及びボトムプレート150がセンサ102及び対応する磁石104の周りでピボットするように、単一のセンサ102がインサート100の中央領域に配置される。単一のセンサ102は、したがって、トッププレート110とボトムプレート150との間の変位、並びに三方向の回転移動を測定することができる。一実施形態では、単一のセンサ102は三次元磁力計である。
【0034】
いくつかの実施形態では、センサ102は圧力センサである。これらの実施形態では、センサ102は、トッププレート110又はボトムプレート150の表面の大部分を覆ってもよく、該表面に隣接してもよい。これらの実施形態では、圧力センサは、膝のバランス調整中の大腿骨顆の相対位置を含む圧力マップをGUIが判定及び提供することができるように構成されてもよい。一実施形態では、センサは、ボトムプレート150の内側面の大部分よりも上に配置される。別の実施形態では、センサ102は、ボトムプレート150の外側面上に配置される。さらに別の実施形態では、センサ102は、トッププレート110の内側面上に配置される。さらなる実施形態では、センサ102は、トッププレート110の関節外側面上に配置される。センサ102は、隣接する表面の全表面積にわたる圧力分布を測定することができ、大腿骨8と脛骨10との間の接触圧力を測定するように構成されてもよい。
【0035】
加えて、センサ102のうちの1つ以上は、脚、腿、又は体のあらゆる他の部分に対する並びに地面に対するインサートの角度を測定するように構成される角度測定センサ(加速度計、磁力計、及びジャイロスコープを含む)であってもよい。この情報は、関節に不均衡が存在するかどうかを判定し、不均衡が靱帯の不均衡又は不適正な骨切りに起因するかどうかを評価するのに用いることができる。
【0036】
空気圧により駆動される機構
いくつかの実施形態では、インサート100は、空気圧又は油圧などの流体の力によって駆動されてもよい。空気、生理食塩水などの流体、又はゲルなどのより粘稠な流体が、駆動流体として用いられてもよい。図4図7は、インサート100が空気圧インサートである場合のインサート100の実施形態を例示する。図4は、空気圧駆動装置180を有する図1のインサートの実施形態の斜視図である。
【0037】
例示される実施形態では、トッププレート110は、プレート部120及び関節部130を含む。関節部130は、プレート部120に取り付けられ、天然又は人工大腿骨と直接又は間接的に接触することなどによって接合するように構成される。トッププレート110又はボトムプレート150は、1つ以上の溝138を含んでもよい。溝は、隣接する骨の顆の自然な形状に適合するように卵形に形状設定されてもよい。例示される実施形態では、溝138は、トッププレート110の外面上に存在し、この場合、溝138は、トッププレート110の各側で大腿骨8の対応する顆114(図2参照)を受け入れることになる。
【0038】
溝138は、天然又は人工大腿骨の関節面と関節する関節接触面139を含んでもよい。例示される実施形態では、溝138及び関節接触面139は、関節部130の外面上に存在し、上部120及びボトムプレート150とは反対側に存在する。溝138及び関節接触面139を含む関節部130は、任意の大腿骨関節のサイズ又は形状に適応するように形状設定することができる。
【0039】
図5は、図4のインサート100の分解図である。駆動装置180は、トッププレート110とボトムプレート150との間に存在する。トッププレート110及びボトムプレート150は、組み合わされて又は個々に、脛骨の自然な形状に適合してもよく、又は脛骨トレイなどのインプラントの形状に適合してもよい。空気圧駆動装置180は、1つ以上のベローズで形成されてもよい。駆動装置は、第1のベローズ181及び第2のベローズ182などの複数の構成のベローズを含んでもよい。例示される実施形態では、駆動装置180は、1つの第1のベローズ181と3つの第2のベローズ182との4層のベローズを含む。いくつかの実施形態では、第1のベローズ181と第2のベローズ182は、トッププレート110とボトムプレート150との間に積み重ねられる。駆動装置180は、流体供給ライン70に接続され、流体的に結合される。流体供給ライン70は、トッププレート110をボトムプレート150に対して位置決めするために空気などの流体が1つ以上のベローズに追加又は除去されることを可能にする。
【0040】
プレート部120は、プレート本体121、基板受け入れ特徴124、接続特徴128、及び接続穴129を含んでもよい。プレート本体121は、プレート本体接続端122、プレート本体挿入端123、プレート本体第1側部124、及びプレート本体第2側部125を含んでもよい。プレート本体接続端122は、概して凸形の形状を有してもよい。凸形の形状の湾曲は、楕円のより平坦な部分の湾曲と類似していてもよい。プレート本体挿入端123は、プレート本体接続端122とは反対側である。プレート本体挿入端123は、凹形部を含んでもよく、卵形と連珠形との間の概してカッシーニの卵形の一部の形状を有してもよい。プレート本体第1側部124とプレート本体第2側部125は、対称であってもよく、それぞれ円形の形状を有してもよい。プレート本体接続端122、プレート本体挿入端123、プレート本体第1側部124、及びプレート本体第2側部125は、プレート部120の辺縁を形成してもよい。
【0041】
基板受け入れ特徴126は、プレート本体121から関節部130の方に、ボトムプレート150から離れる方に突き出てもよい。基板受け入れ特徴126は、概してT字形状を含んでもよい。基板受け入れ特徴126はまた、電子装置基板140を受け入れるためのキャビティを含んでもよい。基板受け入れ特徴126は、1つ以上の電子装置受け入れ特徴127をさらに含んでもよい。電子装置受け入れ特徴127は、電子装置基板140に結合された電子ハードウェア142を受け入れるように構成された凸部又は凹部であってもよい。
【0042】
接続特徴128は、プレート本体接続端122のプレート部120から概してボトムプレート150の方に延びてもよい。接続特徴128は、基板受け入れ特徴124に対して反対方向に延びてもよい。接続穴129は、電子装置基板140へのアクセスを提供するために接続特徴128を通して延びてもよい。
【0043】
関節部130は、関節部本体131、凹部137、及び接続端ベベル136、並びに、溝138及び関節面138を含んでもよい。関節部本体131は、その辺縁のまわりにプレート本体121と概して同じ形状を含んでもよい。関節部本体131は、関節部本体接続端132、関節部本体挿入端133、関節部本体第1側部134、及び関節部本体第2側部135を含んでもよい。関節部本体接続端132は、概して凸形の形状を有してもよい。凸形の形状の湾曲は、楕円のより平坦な部分の湾曲と類似していてもよい。関節部本体挿入端133は、関節部本体接続端132とは反対側である。関節部本体挿入端133は、凹形部を含んでもよく、卵形と連珠形との間の概してカッシーニの卵形の一部の形状を有してもよい。関節部本体第1側部134と関節部本体第2側部135は、対称であってもよく、それぞれ円形の形状を有してもよい。関節部本体接続端132、関節部本体挿入端133、関節部本体第1側部134、及び関節部本体第2側部135は、関節部130の辺縁を形成してもよい。
【0044】
凹部137は、溝138及び関節面139とは反対側に存在してもよい。凹部137は、T字形状を含んでもよく、基板受け入れ特徴126を受け入れるように構成されてもよい。接続端ベベル136は、接続端132に存在してもよく、溝138間の接続端132の中央に位置してもよい。
【0045】
インサート100は、取付機構112を含んでもよい。取付機構112は、戻り止めポストなどのファスナであってもよい。関節部130は、取付機構112を用いて上部120に取り付けられてもよい。ねじ113は、基板受け入れ特徴126を通して上に延びてもよい。取付機構112は、プレート部120を関節部130に保持するためにねじ113に結合するように構成されてもよい。
【0046】
ボトムプレート150は、ボトムプレート本体151、1つ以上の磁石凹部156、コネクタ凹部157、及び拘束穴158を含んでもよい。ボトムプレート本体151は、その辺縁のまわりにプレート部本体121及び関節本体部131と概して同じ形状を含んでもよい。
【0047】
ボトムプレート本体151は、ボトムプレート本体接続端152、ボトムプレート本体挿入端153、ボトムプレート本体第1側部134、及びボトムプレート本体第2側部155を含んでもよい。ボトムプレート本体接続端152は、概して凸形の形状を有してもよい。凸形の形状の湾曲は、楕円のより平坦な部分の湾曲と類似していてもよい。ボトムプレート本体挿入端153は、ボトムプレート本体接続端152とは反対側である。ボトムプレート本体挿入端153は、凹形部を含んでもよく、卵形と連珠形との間の概してカッシーニの卵形の一部の形状を有してもよい。ボトムプレート本体第1側部154とボトムプレート本体第2側部155は、対称であってもよく、それぞれ円形の形状を有してもよい。ボトムプレート本体接続端152、ボトムプレート本体挿入端153、ボトムプレート本体第1側部154、及びボトムプレート本体第2側部155は、プレート部120の辺縁を形成してもよい。
【0048】
各磁石凹部156は、ボトムプレート本体151の内側面からボトムプレート本体151の中に延びてもよく、1つ以上の磁石104を保持するように構成されてもよい。例示される実施形態では、インサート100は、各磁石凹部156内に1つの磁石を含む。各磁石凹部156は、駆動装置180に隣接してもよい。例示される実施形態は、三角形パターンに配列された3つの磁石凹部156を含む。他の実施形態では、異なる数の磁石凹部156及び磁石104が用いられ、異なるパターンに配列される。各磁石凹部156及びその中の磁石104は、センサ102と位置合わせされてもよい。
【0049】
コネクタ凹部157は、ボトムプレート本体接続端152からボトムプレート本体151の中に延びてもよい。例示される実施形態では、コネクタ凹部157は、立方形の凹部である。コネクタ凹部157は、ベローズ182がないときなどの駆動装置180がその最も狭い構成にあるときに、ボトムプレート150がコネクタ特徴128に干渉しないように構成される。
【0050】
拘束穴158は、ボトムプレート150をトッププレート110に固定するのに用いられてもよい。インサート100は拘束装置115を含んでもよい。拘束装置115は、トッププレート110とボトムプレート150を一緒に保持するように構成される。拘束装置115はまた、トッププレート110及びボトムプレート150が所望の距離を超えて離れるのを防ぐように構成され、駆動装置180が所定の量まで拡張することを可能にするように構成される。例示される実施形態では、拡張の所定の量は6ミリメートルであり、これは、インサート100が8ミリメートルから14ミリメートルに拡張することを可能にする場合がある。例示される実施形態では、拘束装置115は、医療用縫合糸材料で作製される。他の実施形態では、拘束装置115は空気圧駆動装置180の各チャンバと一体である。他の実施形態では、拘束装置115は、トッププレート110とボトムプレート150との間に延びる辺縁を取り巻くスカートである。いくつかの実施形態は、14ミリメートルを超えて拡張するように構成されてもよい。他の実施形態は、牽引を増加させるためにボトムプレート150にシムが追加されるように構成される。さらに他の実施形態では、インサート100の高さを14ミリメートルを超えてさらに拡張するために、より大きな厚さの関節部130がトッププレート110に取り付けられる。
【0051】
例示される実施形態では、インサート100は、インサート100の各側部に1つずつある、2つの拘束装置115を含む。拘束装置115は、ボトムプレート150の外面に接触し、拘束穴152を通り、トッププレート110に取り付けられてもよい。例示される実施形態では、各拘束装置115は、ねじなどの保持ファスナ124で上部120に取り付けられる。
【0052】
インサート100はまた、電子装置基板140を含んでもよい。電子装置基板140は、トッププレート110又はボトムプレート150内に収容されてもよい。例示される実施形態では、電子装置基板140は、基板受け入れ特徴126内に存在し、駆動装置180に隣接する。電子装置コネクタ60は、電子装置基板140に電子的に結合されてもよく、電子装置基板140からコネクタ穴129を通してコントローラ組立体200に延びてもよい。電子装置コネクタ60は、外側ケーシングを有する電線であってもよい。電子ハードウェア142が、電子装置基板140に結合され、隣接してもよい。電子ハードウェア142は、センサ、スピーカ及び圧電音発生器などの音源、及び発光ダイオードなどの光源を含んでもよい。
【0053】
図6は、図4及び図5の空気圧駆動装置180の斜視図である。図7は、図5及び図6の第1のベローズ181の上面図である。図6及び図7を参照すると、各ベローズは、区画境界188によって取り囲まれる1つ以上の空気圧区画187を含む可膨張性材料で作製される。ベローズ及び種々の区画187は一緒にマニホルドで結合される。例示される実施形態では、ベローズは、本明細書で説明されるように隣接するベローズの区画187間にいくつかのマニホルドを有する。他の実施形態では、各ベローズに別々に配管するのに1つのマニホルドを用いることができる。他の実施形態では、各ベローズが、別個の流体源に配管され、別々に駆動される。空気圧区画は、空気圧区画が拡張し、空気圧の力をトッププレート110及びボトムプレート150の異なる領域にわたって分配するように膨らむように構成される。駆動装置180内のベローズ182の形状、サイズ、及び層の数は、所与の圧力での所望の力に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、公称の力は20lbfである。いくつかの実施形態では、力は、15%より大きく変わるべきではない。いくつかの実施形態では、力は、3lbfより大きく変わるべきではない。
【0054】
ベローズ182の形状はまた、力の伝達並びに牽引の大きさを最大にするように構成されてもよい。ベローズ182の形状の変化は表面積を変化させる場合があり、これは(同じ圧力に関する)力の大きさを変化させる場合がある。ベローズ182の形状の変化はまた、力の適用の中心の位置に影響することがある。
【0055】
例示される実施形態では、第1のベローズ181と第2のベローズ182は概して同じイヌ骨形状を有する。第1のベローズ181は4つの区画187を有し、この場合、各区画187は、第1のベローズ181の四分の一にある。各区画187はイヌ骨形状の1/4である。第1のベローズ181では、4つの区画187は直接流体連通する。各区画に関する区画境界188は、イヌ骨形状のネックに沿って他の区画187に通じる。第1のベローズ181は、各区画187の上部を通る、各区画187の底部上の、又はこの両方を通る流体連通穴184を含んでもよい。
【0056】
第1のベローズ181はまた、流体接続タブ189及び流体供給コネクタ183を有する。流体接続タブ189は、イヌ骨形状のネックから外に延び、流体供給コネクタ183と流体連通してもよい。流体供給コネクタ183は、第1のベローズ181を流体供給ライン70に流体接続するように構成される。
【0057】
第2のベローズ182は4つの区画187を有し、この場合、各区画187は、第2のベローズ182の四分の一にある。各区画187はイヌ骨形状の1/4である。第2のベローズ182では、4つの区画187は直接流体連通しない。各区画に関する区画境界188は、区画を他の区画187から完全に閉じる。第2のベローズ182は、各区画187の上部を通る、各区画187の底部上の、又はこの両方を通る流体連通穴184を含んでもよい。
【0058】
駆動装置180は、複数の環状シール186及び複数のシール185を含んでもよい。例示される実施形態では、環状シール186は接着剤リングであり、シール185は接着剤ディスクである。他の実施形態では、環状シール186及びシール185は、ベローズを隣接するベローズ、トッププレート110、又はボトムプレート150などの隣接する構造体に結合することによって形成される。いくつかの実施形態では、環状シール186及びシール185は、RF溶接を用いて形成される。環状シール186は、第1のベローズ181及び第2のベローズ182又は2つの隣接するベローズ182などの隣接するベローズの隣接する区画187間に存在してもよい。環状シール186は、隣接する区画187が流体連通する状態で一緒にマニホルドで結合されるように、隣接する流体連通穴184の周りの隣接する区画187をシールする。いくつかの実施形態では、環状シール186及びこれにより形成されるマニホルドは、真空に耐えることができる。シール185は、別の区画187に隣接しない区画187の外面に存在する。シール185は、流体連通穴184をシールするように構成されてもよく、第1のベローズ181又は第2のベローズ182をトッププレート110か又はボトムプレート150のいずれかに取り付けてもよい。
【0059】
図8は、図4及び図5の電子装置基板の斜視図である。電子装置基板140は、それらの間に駆動装置180を有する状態(図5及び図6に示すように)で、ボトムプレート150に面する基板表面731を含んでもよい。1つ以上のセンサ102が電子装置基板140に接続されてもよい。センサ102の位置及び数は、ボトムプレート150に存在する1つ以上の磁石104の数及び位置に対応してもよい(図7Bに示される)。センサ102は、磁石104からの距離を検出してもよく、これは、トッププレート110とボトムプレート150との間の距離及び角度が求められることを可能にする場合がある。
【0060】
ばねにより駆動される機構
いくつかの実施形態では、インサート100は、プレート及び関節の隣接する骨構造体に荷重をかける定荷重ばね又は変動荷重ばねなどの1つ以上の機械的駆動装置180と共に構成される。駆動装置180の数及びタイプは、装置の意図される機能及び駆動プロセスにわたって必要とされる制御の量を含む多くの因子に応じて変えてもよい。
【0061】
図9は、複数のばね駆動装置を有する図1のインサートの実施形態の分解図である。図9を参照すると、駆動装置180は、ばねである。駆動装置180は、トッププレート110及びボトムプレート150に恒久的に取り付けられず、したがって、それらを異なる剛性を有する異なる駆動装置と交換するために容易に除去することができる。加えて、取り付けられていない駆動装置180はまた、インサート100が配置されている領域の必要とされる寸法に最良に適合させるために、トッププレート110及び/又はボトムプレート150を異なるサイズ、形状、及び厚さのプレートと交換することを可能にする。取り付けられていない駆動装置180は、次いで、トッププレート110に上側駆動装置凹部111を設け、ボトムプレート150に下側駆動装置凹部161を設けることによってインサート100内に固定されてもよい。トッププレート110及びボトムプレート150はまた、インサート組立体全体を一緒に保持する可撓性又は弾性テザーによって互いに接続されてもよい。
【0062】
代替的に、駆動装置180は、1つ以上の取付機構によってトッププレート110又はボトムプレート150(又はこの両方)に(恒久的に又は取り外し可能に)取り付けられてもよい。一例では、駆動装置180の端は、シアノアクリレートなどの種々のグルーでトッププレート110及びボトムプレート150に結合されてもよく、又はエポキシ、ポリウレタンなどでプレートに付着されてもよい。駆動装置180はまた、それぞれのトッププレート110及びボトムプレート150上の対応する保持機構に嵌め込まれ、駆動装置180の端を定位置にロックする、カスタマイズされた端を有するように製造することもできる。駆動装置180はまた、トッププレート110及びボトムプレート150の一方又は両方内に製造及び形成することもできる。
【0063】
ばねにより駆動される機構の形状及び寸法はまた、大いに変えてもよいが、本明細書で説明及び例示されるいくつかの実施形態では、駆動装置180は、およそ4~8ミリメートル(mm)の直径及びおよそ6~10mmの伸長可能な高さの、円筒形に形状設定されるばねである。駆動装置180は、1つの駆動装置につき1~50ポンドの範囲内の力をかけ、およそ1パーセントの力精度及びおよそ0.2mmの変位精度を有するように構成されてもよい。複数の駆動装置180が用いられるときに、各駆動装置180は、前述のように、角度をつけられた又は傾けられたトッププレート110又はボトムプレート150を得るべく独立して制御され、伸長又は収縮されてもよい。用いられる駆動装置180の数は、1から4までの間で又はそれ以上に変えてもよく、駆動装置180のサイズと、それらが配置されるトッププレート110及びボトムプレート150の表面積に依存する場合がある。駆動装置180は、様々なストローク長さ、形状、寸法、及び耐力を有してもよい。
【0064】
一実施形態では、駆動装置180は、圧縮されたときに力を発生する巻きばね又はコイルばねである。別の実施形態では、駆動装置180は、円すいコイルばね又は竹の子ばねであり、この場合、コイルが互いの上にスライドし、したがって、ばねの同じ静止長に対してより多くの移動を可能にする。さらに別の実施形態では、駆動装置180は、圧縮されたときに曲がる片持ちばねである。ばねは、金属(スチール、チタン、アルミニウム)、ポリマー、又はゴムなどの一般的な材料で作製することもできる。図9に例示される実施形態では、4つのコイルばねが、トッププレート110とボトムプレート150との間に存在する。ボトムプレート150は、力、変位、及び角度測定センサ、バッテリによって電力供給されるマイクロプロセッサ、及び無線通信のための無線装置を含んでもよい。
【0065】
駆動装置180の異なる構成が利点及び欠点を与える。したがって、駆動装置180の特定の構成の選択は、特定の意図される使用並びに駆動及び測定の所望の特徴に依存する場合があり、これは、外科医によって異なることもある。駆動装置としての機械的ばねの使用は、インサートが完全にワイヤレスの装置となることを可能にするであろう。定荷重ばねと結合されるワイヤレスセンサは、どのような物理的接続も必要としないインサートを提供し、したがって、バランス調整プロセス中に容易に除去及び置換することもできる。加えて、ばねにより駆動される装置を関節に恒久的に移植することもでき、一方、他のインサートは、除去され、次いで、同一に形状設定された恒久的プロテーゼと置換される必要があるであろう。さらなる実施形態では、駆動装置は、最終位置にロックされ、次いで、外部コントローラ及び電源から接続解除されてもよい。
【0066】
図10は、駆動装置を有さない図9のインサート100の代替的な分解図である。例示される実施形態では、ボトムプレート150は、ボトム駆動装置凹部161とは反対側のボトムプレート本体151の外面から延びる電子装置凹部162を含む。電子装置凹部162は、電子装置基板140及び任意のセンサ、マイクロプロセッサ、パワーモジュール、又は感知したデータを通信する無線装置などの他の電子装置を収容してもよい。インサート100は、ボトムプレート本体151に接続され、かつ、電子装置凹部162を覆う、ボトムプレートカバー163を含んでもよい。
【0067】
材料、形状、及び構成
インサート100は、当業者には公知の生物適合性又は医療グレードのポリマー又は金属合金の任意の組み合わせから作製されてもよい。生物適合性材料は、限られた接触用とみなされてもよい。材料は、圧力、温度、流体、及びインサートの他のコンポーネント及び任意の隣接する骨表面、軟骨、靱帯、及び他の組織との摩擦を維持することを必要とする構造的及び機械的仕様を満たすことが要求されるであろう。トッププレート110、特に、関節接触面139の材料は、大腿骨又は大腿骨コンポーネントの関節面を損傷しない材料であるべきである。インサート100はまた、手術中の感染のリスクを最小にするために滅菌可能な材料から作製されるべきである。特に滅菌及び耐久性要件に関する材料要件はまた、駆動装置、一部の態様ではセンサにもあてはまるであろう。いくつかの実施形態では、インサート100は、X線透視検査で用いるための放射線不透過性マーカ又は材料を含んでもよい。
【0068】
インサート100のサイズは、患者又は関節のタイプに応じて変えてもよい。インサートは、考えられる限りでは、小オプション、中オプション、及び大オプションなどの異なるサイズの関節に関するいくつかの異なるサイズに製造することもできる。一実施形態では、中サイズのインサートは、およそ70ミリメートル(mm)×45mmとなり、8~14mmの調節可能な高さを有することになる。インサートの高さは、対向する骨構造体間の関節のスペース内に最初に嵌めるために駆動機構とは別に調整される必要がある場合がある。これは、シムを用いて達成されてもよい。いくつかの実施形態では、シムは、1~6mmの高さを含み、1mmの増分で提供されてもよい。いくつかの実施形態では、インサート100を関節のスペース内に最初に嵌めるために関節部130を異なる高さをもつものに切り換えてもよい。次いで、駆動装置180が、少なくとも最大高さ変化のさらなる運動及び間隔を提供することもできる。一実施形態では、インサートの最大高さ変化は4~8mmである。別の実施形態では、最大高さ変化は5~7ミリメートルである。さらに別の実施形態では、最大高さ変化は少なくとも6mmである。装置の他の寸法も、所望の形状及びサイズの関節及び隣接する骨、靱帯、又は軟骨により良好に嵌るように調節可能であってもよい。インサート100はまた、膝の可動域の全体にわたってトッププレート110とボトムプレート150との間の剪断において安定であるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、膨張下にあるベローズの剛性は、剪断に耐えるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、インサートは、5lbfの横荷重に耐えることができる。いくつかの実施形態では、インサート100の動的な膝の屈曲角度測定範囲は、過伸展の10度から屈曲の140度までであってもよい。
【0069】
インサートの形状はまた、装置の意図される使用に応じて変えてもよい。インサート100は、三顆設計、二顆設計、又は単顆設計を有してもよい。図2図10に例示される実施形態は、三顆設計を有する。図11は、単顆構成を有する図1のインサートの実施形態の斜視図である。単顆設計のインサート100は、装置の長手方向の中央で二分される、三顆設計の本質的に半分であってもよい。単顆設計のインサート100は、1つ以上の駆動装置によって分離されるトッププレート110及びボトムプレート150を依然として含む。単顆設計のインサート100は、関節形成術、特に、膝関節の半分だけが置換される部分的膝置換術などの種々のタイプの外科的手技に有利な場合がある。部分的膝置換関節形成術は、膝の靱帯のうちのいくつかを温存し、インサート100を関節の半分だけに置いて、膝の靱帯をさらに除去する必要性を同様になくす駆動装置で関節のバランス調整をすることができるようにする。部分的膝置換術での駆動装置の数は、膝関節の一部だけが置換されるときのユーザの好み又は関節バランス調整プロセスの仕様に従って変えてもよい。
【0070】
単顆設計の複数のインサート100はまた、各インサート100を膝関節の横側からスライドさせることによって中央の十字靱帯が温存されることになる場合の全膝置換に用いられてもよい。
【0071】
トッププレート110とボトムプレート150は、異なるタイプのセンサ及び駆動装置の容易な配置を可能にするべくモジュラであってもよい。プレートの例示される実施形態は実質的に平坦であるが、プレートは、特定のタイプのセンサ、駆動装置、及び隣接する骨又は他の組織に適応するように異なる形状をとってもよい。一実施形態では、プレートは、隣接する骨(大腿骨顆など)から荷重がかかるときにそれらが僅かに変形できるようにするために弾性特性を有してもよい。弾性プレートは、ゴム、ポリウレタン、silastic(商標)、ゲル充填又は空気充填コンテナから作製されてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、インサートは、トッププレートとボトムプレートとの間のスペースの中央部に配置される回転ベアリングと共に構成されてもよい。ベアリングは、トッププレートにボトムプレートに対する回転を与えることになり、関節のより良好なバランスをとることができるようにするさらなる調整を提供する。ベアリングは、トッププレートの、ボトムプレートに対するおよそ5~10度の(又はベアリングの構成に応じてこの逆の)回転、又は左右及び前後の平行移動を提供するように構成されてもよい。
【0073】
インサートはまた、本発明の一実施形態では、単一のプレートと、対向する骨表面と接合する駆動装置の組と共に構成されてもよい。
コントローラ
【0074】
図12は、インサート100に接続される図1のコントローラ組立体200の実施形態の斜視図である。例示される実施形態では、インサート100は、図4及び図5のインサート100などの空気圧インサートである。コントローラ組立体200は、コントローラ240、コントローラマウント230、及び流体供給装置220を含んでもよい。コントローラマウント230は、コントローラ240を腿などの患者の手足上にマウントするためのストラップ又は類似の機構であってもよい。いくつかの実施形態では、コントローラマウント230は、コントローラ240の長さである幅を有する。コントローラマウント230は、フック・ループファスナなどのファスナを用いて患者の手足に取り付けられてもよい。インサート100は、インサート接続部55によってコントローラ240に接続されてもよい。インサート接続部55は、図4図7に示される流体供給ライン70及び電子装置コネクタ60を含んでもよい。
【0075】
流体供給装置220は、自動流体動力源であってもよく、又は図12に例示される空気圧シリンジなどの手動流体動力源であってもよい。流体供給装置220は、インサート100のベローズ182(図4図6に示される)を駆動するために、ガスなどの流体をコントローラ240及びインサート100に供給するように構成されてもよい。ガスは、室内気などの空気、二酸化炭素、窒素、又はヘリウムであってもよい。流体供給装置220は、コントローラ供給ライン225によってコントローラ240に接続されてもよい。コントローラ供給ライン225は、コントローラ240から流体供給装置220に延びるチューブであってもよい。いくつかの実施形態では、圧力逃がし弁226が、コントローラ240に隣接するコントローラ供給ライン225の端に存在してもよい。圧力逃がし弁226は、空気圧駆動装置180が30psiなどの所定の最大圧力以上に充填されないことを保証することができる。
【0076】
図13は、図12のコントローラ組立体200のコントローラ240の斜視図である。コントローラ240は、ハウジング本体241、ハウジング側部243、及びハウジングカバー242を含んでもよい。ハウジング本体241は、コントローラ240のハウジングの背部と3つの側部を含んでもよい。ハウジング側部243は、ハウジングの第4の側部を形成するハウジング本体241の端に取り付けてもよい。ハウジングカバー242は、ハウジングの包囲体を形成するべくハウジング本体241及びハウジング側部243に締結されてもよい。ボタン膜244が、ハウジングカバー242を通してアクセス可能ないくつかのボタン251(図15に示される)を覆ってもよい。バッテリカバー249を、ハウジング側部243とは反対側のハウジング本体241の端に取り付けてもよく、バッテリ248(図14に示される)へのアクセスを提供してもよい。
【0077】
図14は、図13のコントローラ240の分解図である。ハウジング本体241は、電子装置チャンバ253及びアキュムレータチャンバ252と共に構成されてもよい。バッテリ248及びコントローラ電子装置245が電子装置チャンバ253内に収容されてもよい。いくつかの実施形態では、バッテリ248は、コントローラ240が少なくとも1時間動作するのに十分なパワーを有する。コントローラ電子装置245は、特に、コントローラ電子装置基板250、ボタン251、伝送無線装置、及び角度センサ254などのセンサを含んでもよい。コントローラ電子装置基板250は、無線通信又は有線通信などで電子装置基板140と電子通信する。いくつかの実施形態では、電子装置コネクタ60が、コントローラ電子装置基板250及び電子装置基板140に電子的に接続及び結合される。ボタン251は、コントローラ電子装置基板250に取り付けられてもよい。角度センサ254は、膝の屈曲の角度を示すことができる、腿の角度を提供してもよい。角度センサ254は、加速度計、傾斜計、又は類似の装置であってもよい。
【0078】
アキュムレーションチャンバ252は、インサート100の空気圧駆動装置が圧縮及び拡張を経験する際の圧力変動を平滑化してもよい。ハウジング側部243は、アキュムレーションチャンバ252からの漏れを防ぐためにハウジング本体241とシールを形成してもよい。
【0079】
コントローラ240はまた、アキュムレーションチャンバ252内の駆動流体の圧力を検出するための圧力センサ247、及び圧力センサ247を定位置に保持するように構成されたセンサマウント246を含んでもよい。センサマウント246は、ハウジング側部243によってハウジング本体241内に保持されるように寸法及び形状設定されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ240はまた、発光ダイオード(LED)を含む。LEDは、特に、コントローラ240がアクティブ化されるときに点灯してもよい。
【0080】
コントローラ240は、マウンティングファスナ260でコントローラマウント230に締結されてもよい。例示される実施形態では、マウンティングファスナは、フック・ループファスナである。他の実施形態では、他のタイプのファスナが用いられてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、コントローラは、無線リモートとして機能し、種々のセンサを含むインサート100からのデータ及び圧力センサ247を含むコントローラ240からのデータをディスプレイシステムに伝送するように構成されてもよい。他の実施形態では、コントローラ240はまた、適切なディスプレイ画面がコントローラ240の一部として含まれるときにディスプレイ装置として役立ってもよい。さらなる実施形態では、コントローラ240は、ディスプレイ装置に直接配線接続される。
【0082】
関節バランス調整システム50を用いるときに、インサート100は、適切な関節(この例では膝関節など)内に置かれてもよい。コントローラ240は、圧力をポンプアップするために空気圧シリンジなどの流体供給装置220を用いる外科医/オペレータによってチャージされてもよい。いくつかの実施形態では、空気圧シリンジは20mLシリンジである。圧力は、圧力センサ247によって監視されてもよい。圧力は、ディスプレイ画面上のグラフィックユーザインターフェースにおけるディスプレイモジュール320によって表示されてもよい。いくつかの実施形態では、最適な圧力は20から30psiまでの間である。いくつかの実施形態では、圧力は、定義された力を及ぼすように修正されてもよい。最適な力は40から200Nまでの間であってもよい。関節バランス調整システム50は、用途に応じて異なる範囲で圧力を供給するように構成されてもよい。インサート100が膨らんだ(すなわち、インサート100を駆動するためにベローズが圧力下で拡張した)状態で、膝が、利用可能な全可動範囲を通じて屈曲される(曲げられる)。膝が屈曲される際に、センサが、膝の屈曲角度、インサートのトッププレートとボトムプレートとの間の距離、及びインサートのトッププレートとボトムプレートとの間の傾きを測定してもよい。この情報は、ディスプレイへの有線伝送又は無線伝送によってグラフィカルに描画されてもよい。
【0083】
外科医は、患者にとって最も望ましい牽引間隙及び傾きを生じるように人工コンポーネントの位置、膝の骨になされる切断、又は靱帯に適切な変更を加えることができる。
【0084】
関節バランス調整システム50は、全膝関節形成術又は部分的膝関節形成術などの外科的手技中に膝のバランス調整に用いられてもよい。コントローラマウント1030は、下腿などの患者の腿の周りに巻きつけ、しっかりと締めつけてもよい。コントローラマウント230のフック・ループファスナは、腿上の前方に位置してもよい。コントローラ240は、バッテリキャップ249及び圧力弁226が近位に面し、インサート接続部が遠位に面する状態で、患者の腿の長軸と位置合わせされてもよい。
【0085】
インサート100は、脛骨と大腿骨表面との間に位置決めされてもよい。ボトムプレート150の底面は、平坦であってもよく、脛骨の骨切り部と直接又は間接的に接触してもよい。トッププレート110の上面は、湾曲していてもよく、大腿骨表面と直接又は間接的に接触してもよい。インサート100は、無理なく嵌るべきであり、脛骨切断面上の中央に位置してもよい。外科医は、湾曲した上面が大腿骨顆と関節することを検証してもよい。インサート100を容易に挿入することができない場合、外科医は、脛骨切断面と大腿骨顆との間の間隙が8mmなどの少なくともインサート100の高さであることを検証してもよい。インサート100が膝にとって大きすぎる又は小さすぎる場合、外科医は、異なるサイズのインサートを選択してもよい。
【0086】
次いで、駆動装置が流体供給装置220によって20psi~25psiなどの所定の圧力に加圧されてもよく、ディスプレイモジュール320が現在の圧力をGUIに表示してもよい。インサート100は、8mmなどの第1の所定の高さから拡張されてもよく、この場合、インサート100は、14mmなどの第2の所定の高さまで膨らまされず、空気圧駆動装置は十分に膨らませられる。シムは、脛大腿骨間隙が第2の所定の高さよりも大きいときに用いられてもよい。他の実施形態では、関節部130は、脛大腿骨間隙が第2の所定の高さよりも大きいときに、より厚い関節部130と交換されてもよい。
【0087】
インサート100が脛大腿骨間隙の中に入れられ、膨らまされると、膝を0°の屈曲に保ち、制御モジュールによってGUI上に表示される校正ボタンを選択することによって、関節バランス調整システム50が校正されてもよい。
【0088】
ディスプレイモジュール320はまた、脛骨表面と大腿骨表面との間の真の間隙をリアルタイムで表示してもよい。屈曲及び伸展における間隙をチェックするために、膝を0°に保ち、ディスプレイで間隙を読み取る。次いで、膝を90°に屈曲し、ディスプレイで間隙を読み取る。このプロセスは、必要な限り多くの回数繰り返すことができる。外科医が骨を再切断する又はコンポーネントを再配置することを望む場合、(コントローラが収縮した後で)インサート100を除去することができる。外科医が軟組織の弛緩を行うことを望み、十分なアクセスが存在する場合、外科医は、インサートが定位置にある状態で軟組織の弛緩を行い、ディスプレイ上でリアルタイムに変化する間隙を監視することができる。
【0089】
関節バランス調整システム50はまた、全伸展と全屈曲との間で膝を徐々に屈曲することによって動的な膝のバランスを測定するのに用いられてもよい。ディスプレイモジュール320は、脛骨表面と大腿骨表面との間の真の間隙をGUIにリアルタイムで表示すると共に、間隙を記録し、膝の屈曲に対する脛大腿骨間隙のプロットをGUIに示してもよい。
【0090】
膝のバランスは、インサート100が定位置にある状態で靱帯を弛緩させることによって変化し、弛緩が行われている間の脛大腿骨の間隙及び傾きの変化を監視することによってリアルタイムで監視することができる。膝のバランスはまた、コンポーネントを再位置合わせするべく大腿骨又は脛骨の切断に適切な変更を加えることによって変化し、リアルタイムで監視することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、関節バランス調整システム50はまた、補正モジュールを含んでもよい。補正モジュールは、インサート100及びコントローラ240から受信したデータを解釈し、任意の知覚される不均衡を補正するべく外科的手技のための推奨を提供してもよい。補正モジュールは、術前のCT又はMRIスキャンなどのイメージングモダリティからの骨の幾何学的形状、大腿骨軸と脛骨軸との間の角度などの隣接する骨構造体間の角度、及び靱帯付着部を含む他の入力を受信してもよく、これは、手術ナビゲーション器具を用いる目印のデジタル処理に基づいていてもよい。
【0092】
補正モジュールは、骨及びインサート210を表すのに剛性体を用いること及び靱帯を表すのにばねを用いることなどによって、インサート210の関節面にわたる力を計算してもよい。補正モジュールは、靱帯付着部、長さ、及び剛性を、関節バランス調整システム50のセンサによって収集される又は求められる力変位データに適合するようにリファインしてもよい。補正モジュールはまた、長さ、剛性、骨切りの現在の角度、及び脛大腿骨シャフトの角度に基づいて骨切り及び靱帯への補正を計算してもよい。
【0093】
力が内外方向にバランスがとれているが、屈曲及び伸展がきつい場合、補正モジュールは、伸展及び屈曲において収集した力変位データに基づいて近位の脛骨から切断されるべき骨の量を計算してもよい。力が容認可能であり、屈曲において内外方向にバランスがとれているが伸展がきつい場合、補正モジュールは、伸展において収集した力対変位データに基づいて遠位の大腿骨から切断されるべき骨の量を計算してもよい。補正モジュールは、測定したデータに基づいて靱帯への修正などの他の推奨を提供してもよい。
【0094】
切断ガイド及び研削面
図15及び図16は、関節のバランス調整中に骨及び組織の切断をガイドするのに用いられるインサート100に接続される切断ガイド組立体400の実施形態を例示する。切断ガイド組立体400は、関節のバランス調整中に骨、軟骨、又は靱帯のいくつかの区域を切断するためのガイドを外科医に提供するためにインサート100にマウントされてもよい。
【0095】
例示される実施形態では、切断ガイド組立体400は、切断ガイドマウント402、切断ガイド406、及びねじ又はボルトなどのマウンティングファスナ408を含む。切断ガイドマウント402は、ボトムプレート150又はトッププレート110でインサート100に取り付けられてもよい。
【0096】
切断ガイド406は、マウンティングファスナ408を用いて切断ガイドマウント402に取り付けられる。切断ガイド406は1つ以上のガイディングスロット410を含む。例示される実施形態では、切断ガイド406は、2つの平行なガイディングスロット410を含む。ガイディングスロット410は、関節のバランス調整及び人工関節プロテーゼを位置決めするプロセス中に、骨、軟骨、靱帯、又は他の組織と位置合わせし、切断するのに用いることができる。
【0097】
ガイディングスロット410は、外科医が骨を切断している間に切断装置又は切断鋸のブレードを保持及びガイドする平坦面を有する。外科医は、切断鋸を切断ガイドのスロットに挿入し、これはガイドの位置及び角度を維持するのを助ける。本明細書で説明される実施形態では、切断ガイドは、靱帯に適切に張力がかかっている状態で切断がなされるようにバランス調整インサートのプレート上にマウントされる。
【0098】
特定の実施形態では、トッププレート又はボトムプレートの表面は、対応する骨構造体に接して研削する及び骨表面をプレートとより容易に嵌るより平滑な表面に研削するべく動作するように、研削(又はミリング又は平削り)面又は研磨面として構成されてもよい。
【0099】
本明細書で開示される実施形態と組み合わせて説明された種々の例示的な論理ブロック、モジュール、及びアルゴリズムステップを、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はこの両方の組合せとして実装することができることが当業者には分かるであろう。このハードウェアとソフトウェアの互換性を明瞭に例示するために、種々の例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、及びステップが、概してそれらの機能に関して上記で説明されている。こうした機能がハードウェア又はソフトウェアのいずれとして実装されるかは、システム全体に課される設計制約に依存する。当業者は、説明される機能を各特定の用途のために様々な方法で実装することができるが、こうした実装の決定は、本発明の範囲からの逸脱をもたらすと解釈されるべきではない。加えて、モジュール、ブロック、又はステップ内の機能のグループ化は、説明を簡単にするためのものである。特定の機能又はステップを本発明から逸脱することなく1つのモジュール又はブロックから移動することができる。
【0100】
本明細書で開示される実施形態と組み合わせて説明された種々の例示的な論理ブロック及びモジュールは、本明細書で説明される機能を行うように設計される汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又は他のプログラム可能論理装置、離散型ゲート又はトランジスタ論理、離散型ハードウェアコンポーネント、又はその任意の組合せと共に実装又は実行することができる。汎用プロセッサはマイクロプロセッサとすることができるが、代替では、プロセッサは、任意のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又は状態マシンとすることができる。プロセッサはまた、コンピューティング装置の組合せ、例えば、1つのDSPと1つのマイクロプロセッサ、複数のマイクロプロセッサとの組合せ、1つのDSPコアと併せて1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のこうした構成として実装することができる。
【0101】
本明細書で開示される実施形態と組み合わせて説明された方法又はアルゴリズムのステップは、ハードウェア、プロセッサ(例えば、コンピュータの)によって実行されるソフトウェアモジュール、又はこの2つの組合せにおいて直接具体化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、又は任意の他の形態の記憶媒体に存在することができる。例示的な記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み出す、及び記憶媒体に情報を書き込むことができるようにプロセッサに結合することができる。代替では、記憶媒体はプロセッサと一体化することができる。プロセッサと記憶媒体は、ASICに存在することができる。
【0102】
種々の実施形態が上記で説明されているが、それらは限定するものではなく単なる例として提示されていることを理解されたい。その広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても制限されるべきではない。この文書が当業者には明らか又は公知であろう技術を言及する場合、こうした技術は、現在又は将来の任意の時点で当業者には明らかな又は公知の技術を包含する。加えて、説明された実施形態は、例示された例示的なアーキテクチャ又は構成に制約されないが、種々の代替的なアーキテクチャ及び構成を用いて所望の特徴を実装することができる。この文書を読んだ後の当業者には明らかなように、例示される実施形態及びそれらの種々の代替的な実施形態は、例示された例に限定されずに実装することができる。当業者はまた、説明された実施形態の所望の特徴を実装するのにどのようにして代替的な機能的、論理的、又は物理的パーティショニング及び構成を用いることができるかを理解するであろう。したがって、本開示は、説明の便宜のために、膝関節のバランス調整をするためのインサートを描画及び説明するが、本開示に係るインサートは、種々の他の構成で実装することができ、腰関節、肩関節、足首関節、肘関節、及び脊椎関節などの種々の他のタイプの関節のバランス調整に用いることができることが理解されるであろう。
【0103】
さらに、アイテム、要素、又はコンポーネントは単数形で説明又は特許請求される場合があるが、単数形への限定が明示的に表記されない限り、複数形がその範囲内となることが意図される。いくつかの場合の「1つ以上の」、「少なくとも」、「限定はされないが」、又は他の同様の文言などの広い言葉及び文言の存在は、こうした広い文言が存在しない場合により狭い事例が意図又は必要とされることを意味すると読解されるものではない。
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