(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】パイプルーフと発進側トンネルの接続構造及び接続方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20220826BHJP
E21D 11/15 20060101ALI20220826BHJP
E21D 11/36 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D11/15
E21D11/36
(21)【出願番号】P 2021198556
(22)【出願日】2021-12-07
(62)【分割の表示】P 2018005169の分割
【原出願日】2018-01-16
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 直俊
(72)【発明者】
【氏名】大石 憲寛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 知博
(72)【発明者】
【氏名】井櫻 潤示
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-353377(JP,A)
【文献】特開2008-75385(JP,A)
【文献】特開2008-111227(JP,A)
【文献】特開2013-53416(JP,A)
【文献】特開平5-231094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04
E21D 11/15
E21D 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなるパイプルーフと発進側トンネルの接続構造であって、
前記発進側トンネルを構成するセグメントに形成されている、前記パイプルーフを構成する前記鋼管の端部を収容する収容開口部であって、無端状フランジを有している収容開口部と、
前記無端状フランジに嵌め込まれている中空のキャップ部材であって、該無端状フランジと相補的な線形を有して該無端状フランジとの間で止水構造を形成する相手側無端状フランジを備え、前記鋼管側の端面において該鋼管の内部に入り込むせん断キー部材をさらに備えたキャップ部材と、
少なくとも前記鋼管の内部から前記キャップ部材に亘って介在するコンクリート体と、を備えていることを特徴とする、パイプルーフと発進側トンネルの接続構造。
【請求項2】
地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなるパイプルーフと発進側トンネルを接続する、パイプルーフと発進側トンネルの接続方法であって、
前記発進側トンネルを構成するセグメントに形成されている、前記パイプルーフを構成する前記鋼管の端部を収容する収容開口部であって、前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置において無端状フランジを有している収容開口部に対応する位置にあるスキンプレートを撤去して前記鋼管の発進口を準備する、鋼管発進口準備工程と、
前記発進側トンネルの前記発進口から前記到達側トンネルの手前まで鋼管を推進してパイプルーフを施工し、該パイプルーフを形成する該鋼管の端部を該収容開口部内に留める鋼管推進工程と、
前記収容開口部の有する前記無端状フランジと相補的な線形を有して該無端状フランジとの間で止水構造を形成する相手側無端状フランジを備え、前記鋼管側の端面にせん断キー部材をさらに備えているキャップ部材を該収容開口部に取り付け、該キャップ部材を前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置に配設する、キャップ部材設置工程と、
前記キャップ部材にはプレート材が取り付けられており、該プレート材の有する充填孔を介して前記発進側トンネル内から少なくとも前記鋼管内にコンクリートを充填してコンクリート体を造成し、少なくとも前記鋼管の前記端部と、前記キャップ部材と、をコンクリート体で一体化するコンクリート体造成工程と、を備えることを特徴とする、パイプルーフと発進側トンネルの接続方法。
【請求項3】
前記コンクリート体造成工程において、前記到達側トンネル側の先端の鋼管までコンクリートを充填することを特徴とする、請求項2に記載のパイプルーフと発進側トンネルの接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、軟弱な地盤が分布する都市部で道路トンネルを施工する場合、開削工法の適用が一般的であるものの、開削工法は、工事中の騒音や振動、交通規制等の課題を内在している。また、都市部の道路下空間は、複数の地下鉄や共同溝等の埋設物が輻輳していることから、新たに施工しようとするトンネルの設置深度は往々にして深くなる傾向にあり、設置深度の深層化は建設費の高騰に直結する。このような背景の下、道路トンネルの施工に際してシールド工法を適用するケースが増加している。ところで、この道路トンネルの施工に当たり、一般の道路トンネルの施工では、例えば一台のシールド掘進機の掘進によって断面円形の本線トンネルが施工されることで足りる。一方、道路トンネルの分合流部の施工では、本線トンネルとランプトンネルの各断面を包括する、極めて大規模な地中拡幅が必要になり、その施工方法には様々な工夫を講じる必要がある。施工方法の一例として、本線トンネルとランプトンネルの2つのトンネル間に円弧状もしくは直線状のパイプルーフを架け渡して先受け支保工を施工する方法が挙げられる。この先受け支保工を施工した後、必要に応じてトンネル内を支保工にて支持し、上方のパイプルーフ直下を掘削しながらトンネルの一部を撤去することにより、例えば多連円弧状の大断面空間が形成される。そして、このように形成された大断面空間において、上記する道路トンネルの分合流部等の構造物を構築することができる。
【0002】
このように、パイプルーフを用いて地中に並設された2つのトンネルを繋ぐ施工方法が提案されており、より詳細には、パイプルーフとパイプルーフが発進する発進側トンネルとを接続する施工方法や接続構造が提案されている。パイプルーフの施工方法に関しては、地中に複数のトンネルを併設させながら施工する第1のステップ、パイプルーフ用の鋼管を地中に挿入する発進側トンネルにおいて、その内空側に該鋼管を案内するための案内部材を取付け、案内部材を介して鋼管を地中に挿入して到達側トンネルに到達させて双方のトンネル間にパイプルーフを架け渡して先受け支保工を形成し、案内部材から発進側トンネルの内空側に突出する鋼管の端部を支持部材で支持させながら該支持部材を発進側トンネルの内空面に固定する第2のステップ、からなるパイプルーフの施工方法(パイプルーフと発進側トンネルの接続方法)である(例えば、特許文献1参照)。一方、パイプルーフの接続構造に関しては、鋼管を地中に挿入するための案内部材が、地中に併設する複数のトンネル間にパイプルーフ用鋼管を架け渡して先受け支保工を形成させる発進側トンネルの内空側に取り付けられ、案内部材から発進側トンネルの内空側に突出する鋼管の端部がトンネルの内空面に固定された支持部材で支持され、トンネルの内空側に突出する鋼管の端部が開口を具備する箱体の該開口に挿入され、該箱体を跨ぐようにして支持部材を配して箱体と支持部材が固定され、該支持部材がトンネルの内空面に固定されるとともに箱体内に充填材が注入されて鋼管と箱体が固定されている、パイプルーフの接続構造(パイプルーフと発進側トンネルの接続構造)である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5685507号公報
【文献】特許第5684416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載のパイプルーフと発進側トンネルの接続方法や接続構造によれば、地中に併設された例えば2つのトンネル間にパイプルーフを架け渡すに当たり、地中に双方のトンネルを構築した後に発進側トンネルの内側に案内部材(いわゆるエントランス部材)を後付けすることにより、パイプルーフの施工に際してトンネルの施工誤差を前提として案内部材を発進側トンネルの適所に取り付けることができる。そのため、パイプルーフの施工においてトンネルの施工誤差を許容(もしくは施工誤差に追随)しながら、パイプルーフを精度よく施工することができる。しかしながら、パイプルーフを構成する鋼管の端部がセグメントの主桁の内側端部よりもトンネル内に入り込んでおり、さらにその端部に案内部材が後付けされていてこれも主桁の内側端部よりもトンネル内に存在していることから、これらのトンネル内突出部材がトンネル内の本設構造物の建築限界を侵す可能性が十分にある。そのため、本設トンネルの完成後に、これらトンネル内に突出している仮設部材を撤去する必要があり、撤去後にトンネル内空面の表面仕上げを必要とし得ることから、この仮設部材の撤去施工が工期の長期化や工費の高騰に繋がる。また、仮設部材の撤去は、本設構造物における変形や出水の要因リスクを伴っている。そしてこの課題は、発進側トンネルの延長(従ってパイプルーフの延長)が長くなるにつれて一層顕著になる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発進側トンネル内における本設構造物の完成後に撤去を要する仮設部材を生じさせないパイプルーフと発進側トンネルの接続構造及び接続方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成すべく、本発明によるパイプルーフと発進側トンネルの接続構造の一態様は、地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなるパイプルーフと発進側トンネルの接続構造であって、
前記発進側トンネルを構成するセグメントに形成されている、前記パイプルーフを構成する前記鋼管の端部を収容する収容開口部であって、前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置において無端状フランジを有している収容開口部と、
前記無端状フランジと相補的な線形を有して該無端状フランジとの間で止水構造を形成する相手側無端状フランジを備えており、前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置に配設されて、前記鋼管からの軸力を前記収容開口部に伝達する伝達部材と、
少なくとも前記鋼管の内部から枠状の前記伝達部材に亘って介在するコンクリート体と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、鋼管からの軸力をセグメントに設けられた収容開口部に伝達する伝達部材がセグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置に配設されている(主桁の桁高内に配設されている)ことにより、発進側トンネル内における本設構造物の施工完成後に仮設部材がトンネル内部に突出することが解消され、仮設部材の撤去を不要にできる。従って、この伝達部材を仮設部材としてのみならず、本設部材としても兼用させることができる。ここで、セグメントに形成されている収容開口部も無端状フランジを有し、この無端状フランジと伝達部材の相手側無端状フランジが枠状に面接触し、この面接触箇所にて十分な止水構造を形成することができる。なお、無端状フランジと相手側無端状フランジの接触面において、定型のシール材が介在していてもよい。本態様の接続構造では、コンクリート体が、鋼管の内部から伝達部材に亘って連続して造成されていることにより、パイプルーフを構成する鋼管の端部から作用する軸力はコンクリート体を介して伝達部材に伝達され、伝達部材からセグメントに固定されている収容開口部を介してセグメントの主桁に伝達される。また、鋼管の端部がセグメント内(の収容開口部内)に収容されていることから、収容開口部を介して作用するせん断力を主桁にて対抗させることができる。なお、コンクリート体は、少なくとも収容開口部内にある鋼管の端部の内部から伝達部材に亘って造成されていれば、パイプルーフの軸力をセグメントの主桁に伝達することできる。しかしながら、例えばコンクリート体が、パイプルーフの到達側トンネル側の先端から伝達部材に亘って造成されていてもよい。このようにパイプルーフの全域に亘って鋼管内にコンクリート体が造成されていることにより、高剛性のパイプルーフを有する接続構造が得られる。
【0008】
また、本発明によるパイプルーフと発進側トンネルの接続構造の他の態様は、地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなるパイプルーフと発進側トンネルの接続構造であって、
前記発進側トンネルを構成するセグメントに形成されている、前記パイプルーフを構成する前記鋼管の端部を収容する収容開口部であって、前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置において無端状フランジを有している収容開口部と、
前記無端状フランジに嵌め込まれている中空のキャップ部材であって、該無端状フランジと相補的な線形を有して該無端状フランジとの間で止水構造を形成する相手側無端状フランジを備え、前記鋼管側の端面において該鋼管の内部に入り込むせん断キー部材をさらに備えており、前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置に配設されて、鋼管からの軸力を前記収容開口部に伝達するキャップ部材と、
少なくとも前記鋼管の内部から前記キャップ部材に亘って介在するコンクリート体と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、収容開口部の無端状フランジに嵌め込まれているキャップ部材の有するせん断キー部材がパイプルーフを形成する鋼管の内部に入り込んでいることにより、鋼管から作用する軸力に起因するせん断力をせん断キー部材にても対抗させることができる。従って、上記するように、鋼管の端部がセグメント内の収容開口部内に収容されていることにより、収容開口部を介して作用するせん断力を主桁に対抗させることに加えて、このせん断力をせん断キー部材にても対抗させることができることから、より一層せん断耐力の高い接続構造を提供することができる。また、このキャップ部材においても、セグメントに形成されている収容開口部の有する無端状フランジと、キャップ部材の有する相手側無端状フランジが枠状に面接触し、この面接触箇所にて十分な止水構造を形成することができる。また、キャップ部材が収容開口部の無端状フランジに嵌め込まれて固定されている状態において、このキャップ部材がセグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置に配設されている(主桁の桁高内に配設されている)ことから、発進側トンネル内における本設構造物の施工完成後に仮設部材がトンネル内部に突出することが解消され、仮設部材の撤去を不要にできる。従って、このキャップ部材も伝達部材と同様に、仮設部材としてのみならず、本設部材としても兼用させることができる。
【0010】
また、本発明によるパイプルーフと発進側トンネルの接続方法の一態様は、地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなるパイプルーフと発進側トンネルを接続する、パイプルーフと発進側トンネルの接続方法であって、
前記発進側トンネルを構成するセグメントに形成されている、前記パイプルーフを構成する前記鋼管の端部を収容する収容開口部であって、前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置において無端状フランジを有している収容開口部に対して、前記無端状フランジと相補的な線形を有して該無端状フランジとの間で止水構造を形成する相手側無端状フランジを備え、前記鋼管からの軸力を前記収容開口部に伝達する伝達部材が取り付けられ、該伝達部材が前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置に配設されている、前記鋼管の発進口を準備する、鋼管発進口準備工程と、
前記発進側トンネルの前記発進口から前記到達側トンネルの手前まで鋼管を推進してパイプルーフを施工し、該パイプルーフを形成する該鋼管の端部を該収容開口部内に留める鋼管推進工程と、
前記伝達部材にプレート材を取り付けるとともに、該プレート材の有する充填孔を介して前記発進側トンネル内から少なくとも前記鋼管内にコンクリートを充填してコンクリート体を造成し、少なくとも前記鋼管の前記端部と、前記伝達部材と、をコンクリート体で一体化するコンクリート体造成工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置に伝達部材を配設し、パイプルーフを構成する鋼管の端部と伝達部材とをコンクリート体で一体化することにより、発進側トンネル内における本設構造物の施工完成後に伝達部材やパイプルーフを構成する鋼管等の仮設部材がトンネル内部に突出することを解消でき、仮設部材の撤去を不要にできる。なお、鋼管推進工程において、パイプルーフを形成する鋼管の端部を収容開口部内に留める方法は、鋼管の端部が収容開口部内に位置決めされるように予め各鋼管の長さ(弧長)を調整することで足りる。しかしながら、このような設定方法以外にも、パイプルーフの施工が完了した際に発進側トンネル内に鋼管が突出している場合に、この突出部を切断して、鋼管の端部を収容開口部内に位置決めするような施工を行ってもよい。鋼管推進工程において止水性を確保しながら鋼管の推進を行う場合、例えば鋼管の発進口周りに止水部材を配設しておき、この止水部材に鋼管を摺動させながら鋼管の推進を行う施工方法が挙げられる。このような施工方法においては、パイプルーフの施工が完了した際に、発進側トンネル内に鋼管が突出している状態となり易い。従って、このような施工方法においては、発進側トンネル内に突出している鋼管の突出部を切断して、鋼管の端部を収容開口部内に位置決めする施工を行うのがよい。
【0012】
また、本発明によるパイプルーフと発進側トンネルの接続方法の他の態様は、地中に並設された発進側トンネルと到達側トンネルとの間に架け渡された鋼管からなるパイプルーフと発進側トンネルを接続する、パイプルーフと発進側トンネルの接続方法であって、
前記発進側トンネルを構成するセグメントに形成されている、前記パイプルーフを構成する前記鋼管の端部を収容する収容開口部であって、前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置において無端状フランジを有している収容開口部に対応する位置にあるスキンプレートを撤去して前記鋼管の発進口を準備する、鋼管発進口準備工程と、
前記発進側トンネルの前記発進口から前記到達側トンネルの手前まで鋼管を推進してパイプルーフを施工し、該パイプルーフを形成する該鋼管の端部を該収容開口部内に留める鋼管推進工程と、
前記収容開口部の有する前記無端状フランジと相補的な線形を有して該無端状フランジとの間で止水構造を形成する相手側無端状フランジを備え、前記鋼管側の端面にせん断キー部材をさらに備えているキャップ部材を該収容開口部に取り付け、該キャップ部材を前記セグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置に配設する、キャップ部材設置工程と、
前記キャップ部材にプレート材を取り付けるとともに、該プレート材の有する充填孔を介して前記発進側トンネル内から少なくとも前記鋼管内にコンクリートを充填してコンクリート体を造成し、少なくとも前記鋼管の前記端部と、前記キャップ部材と、をコンクリート体で一体化するコンクリート体造成工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、鋼管の内部に入り込むせん断キー部材を備えているキャップ部材をセグメントに固定されている収容開口部に嵌め込んで固定し、このキャップ部材と鋼管の端部をコンクリート体で一体化することにより、鋼管から作用する軸力に起因するせん断力に対してより一層せん断耐力の高い接続構造を形成することができる。また、このキャップ部材もセグメントの主桁の内側端面よりも地山側の位置に配設されることから、発進側トンネル内における本設構造物の施工完成後にキャップ部材やパイプルーフを構成する鋼管等の仮設部材がトンネル内部に突出することを解消でき、仮設部材の撤去を不要にできる。
【0014】
また、本発明によるパイプルーフと発進側トンネルの接続方法の他の態様は、前記コンクリート体造成工程において、前記到達側トンネル側の先端の鋼管までコンクリートを充填することを特徴とする。
本態様によれば、パイプルーフを構成する全鋼管がコンクリート体で補強された、高剛性のパイプルーフを備えた接続構造を形成することができる。
【0015】
また、本発明によるパイプルーフと発進側トンネルの接続方法の他の態様において、前記鋼管推進工程では、複数段折れ機構を有して曲線施工対応の掘進機で地山を掘進しながら前記鋼管の推進を実行し、
前記コンクリート体造成工程に先んじて前記掘進機を縮径させて前記鋼管を介して前記発進側トンネル内に引き戻して回収することを特徴とする。
本態様によれば、パイプルーフ用の鋼管を推進させる折れ機構を有している掘進機を、鋼管の推進完了後に縮径させ、コンクリートの充填前の段階で発進側トンネル側にて掘進機を回収することにより、回収された掘進機を次に施工するパイプルーフの鋼管の推進施工に転用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパイプルーフと発進側トンネルの接続構造及び接続方法によれば、発進側トンネル内における本設構造物の完成後に仮設部材の撤去を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造を有する、道路トンネルの分合流部の仮設構造を説明する断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造の一例を、発進側トンネルの内空側から見た斜視図である。
【
図3】鋼管からの軸力に起因して作用するせん断力に対して、収容開口部と主桁が対抗することを説明した模式図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造の一例を、発進側トンネルの内空側から見た斜視図である。
【
図5】鋼管からの軸力に起因して作用するせん断力に対して、キャップ部材のせん断キー部材が対抗することを説明した模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続方法の一例を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造と接続方法について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0019】
[実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造]
<道路トンネルの分合流部の仮設構造>
はじめに、
図1を参照して、実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造を備える、道路トンネルの分合流部の仮設構造について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造を有する、道路トンネルの分合流部の仮設構造を説明する断面図である。
図1に示すように、道路トンネルの分合流部の仮設構造は、地中に間隔を置いて併設施工された、相対的に小断面のランプトンネル100と、相対的に大断面の本線トンネル200と、ランプトンネル100と本線トンネル200の上方において双方のトンネル間に架け渡されたパイプルーフ300と、を有する。また、ランプトンネル100と本線トンネル200の下方位置には、双方のトンネル間に跨る先行仮設下部受け400をさらに有する。また、ランプトンネル100と本線トンネル200はともに、トンネル内において、パイプルーフ300との交差位置を起点として鉛直方向に延設する鉛直支保工60を有し、以上で説明した各構成が仮設構造の基本構成となる。なお、ランプトンネル100と本線トンネル200の下方位置においても、一点鎖線で示す下方のパイプルーフ300Aを必要に応じて施工してもよく、下方のパイプルーフ300Aが施工される場合はこれも仮設構造の構成要素となる。
【0020】
仮設構造ではないが、ランプトンネル100と本線トンネル200にはそれぞれ、上方斜め支保工70と下方斜め支保工80が仮設段階で施工される。これらの部材はいずれも、図中の建築限界の外周側に位置しており、この建築限界の外周側に施工されるコンクリート等に埋設される部材となり得る。上方斜め支保工70は、図中の一点鎖線で示す本設トンネルの本設天井湾曲受け700の軸線に沿う方向に延びて、本設トンネル供用後に本設天井湾曲受け700から作用する軸力を逃がす部材である。一方、下方斜め支保工80は、図中の一点鎖線で示す本設トンネルの本設下方湾曲受け800の軸線に沿う方向に延びて、本設トンネル供用後に本設下方湾曲受け800から作用する軸力を逃がす部材である。
【0021】
本線トンネル200とランプトンネル100はいずれも、シールド工法にて施工され、複数のセグメント20がリング方向に接続されてセグメントリングを形成するとともに、複数のセグメントリングがトンネルの軸線方向に接続されることにより所定延長に亘るトンネルを形成している。各セグメント20は、周方向に延びる湾曲した複数の主桁21と、主桁21の外周面に溶接にて接続されたスキンプレート24と、主桁21の周方向端部において当該主桁21とスキンプレート24に溶接にて接続された継手板22と、主桁21同士を繋いでセグメント20を補強する縦リブ23と、を有する。
【0022】
本線トンネル200とランプトンネル100のうち、先行仮設下部受け400の端部が嵌め込まれる箇所には予めセグメント20に対して凹陥部25が設けられ、例えばこの凹陥部25は、トンネル施工当初はコンクリート等で閉塞されている。その施工方法の詳細は省略するが、例えば、ランプトンネル100の凹陥部25(発進部)から折れ機構を有して曲線施工対応の掘進機を発進させ、地山を掘進しながら鋼管50の推進を実行して鋼管50同士を繋ぐことにより、先行仮設下部受け400が施工される。この施工において、鋼管の推進に適用された掘進機は、本線トンネル200の凹陥部25まで到達して先行仮設下部受け400の施工を完了した後、例えば縮径して、先行仮設下部受け400を構成する複数の鋼管50の内部を介して発進側トンネル100内に引き戻されて回収されるのが好ましい。
【0023】
また、本線トンネル200とランプトンネル100において、本設天井湾曲受け700と本設下方湾曲受け800の端部が接続される箇所のセグメント20においても、それぞれ凹陥部26,27が予め設けられている。
【0024】
パイプルーフ300は、ランプトンネル100を発進側トンネルとし、ランプトンネル100から鋼管30を順次推進させながら到達側トンネルである本線トンネル200の手前まで湾曲線形を有して延設している。なお、ランプトンネル100が到達側トンネルであり、本線トンネル200が発進側トンネルであってもよい。また、直線状のパイプルーフが施工されてもよい。ここで、「到達側トンネルの手前」とは、図示例では、パイプルーフ300を形成する先頭の鋼管30の先端31が到達側トンネル200に到達せずにトンネルの背面地山G内に留まっている形態を示しているが、この形態以外にも、先頭の鋼管30の先端31が到達側トンネル200に接触している形態であってもよい。いずれの形態であっても、パイプルーフ300を形成する先頭の鋼管30の先端31が到達側トンネル200を貫通していないことを要する。
【0025】
発進側トンネル100側においては、パイプルーフ300を構成する複数の鋼管30のうち、後端に位置する鋼管30の端部32と、セグメント20に固定されている鋼製の収容開口部に固定されている伝達部材10もしくはキャップ部材17と、鋼管30の端部32と伝達部材10もしくはキャップ部材17とを接続するコンクリート体40と、により、パイプルーフと発進側トンネルの接続構造600が形成される。なお、この接続構造600については、以下で詳説する。一方、到達側トンネル200側においては、到達側トンネル200の手前で先端31が止まっている鋼管30と、セグメント2から地山G内に突出している鋼製の突出部と、鋼管30の先端31と鋼製の突出部とを巻き込んで一体化しているコンクリート体40と、により、パイプルーフと到達側トンネルの接続構造500が形成される。なお、本明細書においては、パイプルーフと到達側トンネルの接続構造500の詳細な説明は省略する。
【0026】
図示例の道路トンネルの分合流部の仮設構造では、ランプトンネル100と本線トンネル200の背面地山G内において地盤改良を行っていない。それは、パイプルーフと発進側トンネルの接続構造600等の構築において、背面地山G内に作業員が進入して施工する必要性がないからであるが、地盤条件や地下水条件、施工性や工費等を勘案して、ランプトンネル100と本線トンネル200の背面地山G内にて適宜の地盤改良施工が行われてもよく、本実施形態に係る接続方法は地盤改良施工を完全に排除するものではない。
【0027】
<第1の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造>
次に、
図2及び
図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造を説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造の一例を、発進側トンネルの内空側から見た斜視図である。また、
図3は、鋼管からの軸力に起因して作用するせん断力に対して、収容開口部と主桁が対抗することを説明した模式図である。なお、
図2は、接続構造の理解を容易とするべく、コンクリート体40を透視した図である。
【0028】
発進側トンネル100のうち、接続構造600を形成する領域においては、パイプルーフ300を構成する鋼管30の推進の発進口24aに対応する位置のスキンプレート24が撤去されており、セグメント20を構成する主桁21に対して鋼製で筒状の収容開口部28が溶接にて接続されている。収容開口部28のトンネル内部側の端部には鋼製の無端状フランジ29が収容開口部28の外側に張り出すように固定されている。
図2に示すように、収容開口部28の軸線はパイプルーフ300の軸線に一致しており、無端状フランジ29は、これらの軸線に対して直交する方向に延びている。収容開口部28の下端に配設されている無端状フランジ29は、セグメント20の主桁21の内側端面よりも地山側(主桁21の桁高内)に配設されている。
【0029】
収容開口部28の無端状フランジ29には、伝達部材10が溶接やボルトにて固定されている。伝達部材10は、収容開口部28の無端状フランジ29と相補的な線形を有して無端状フランジ29との間で止水構造を形成する相手側無端状フランジ11を備えており、端部に補剛リブ12を備えている。伝達部材10も、セグメント20の主桁21の内側端面よりも地山側の位置に配設されている。伝達部材10の相手側無端状フランジ11の開口11aを介して鋼管30が地山G内に推進されるが、パイプルーフ300が施工された後、開口11aに鋼製のプレート材13が溶接固定される。このプレート材13にはコンクリート体40造成用のフレッシュコンクリートを鋼管30内に充填する際に適用される充填ホース(もしくは充填管)が装着される充填孔13aが開設されており、コンクリート体40造成後は、
図2に示すように充填孔13aが閉塞される。
【0030】
収容開口部28の無端状フランジ29と伝達部材10の相手側無端状フランジ11とは面接触しており、例えば双方の接触面において、不図示の枠状の定型止水材が介在されて止水構造が形成されている。
【0031】
このように、セグメント20の主桁21に固定されている収容開口部28と、収容開口部28の無端状フランジ29に固定される伝達部材10と、パイプルーフ300を構成する鋼管30の端部32と、この鋼管30の内部から伝達部材10に亘って介在するコンクリート体40と、により、パイプルーフと発進側トンネルの接続構造600が形成される。
【0032】
図3に示すように、接続構造600において、角鋼管30の端部32から作用するパイプルーフ300からの軸力Nは、コンクリート体40を介してY1方向に伝達部材10に伝達され、伝達部材10から収容開口部28を介して収容開口部28が固定されている主桁21に伝達される。また、この軸力Nに対して、無端状フランジ29と相手側無端状フランジ11が直交する方向に延びて相互に面接触していることから、軸力Nに起因する押圧力N1にて面接触部が押圧され、高い止水構造が形成される。さらに、鋼管30の端部32が、セグメント20の主桁21に固定されている収容開口部28内に収容されていることから、軸力Nに起因して作用するせん断力Sは、収容開口部28を介して主桁21にて対抗させることができる。
【0033】
また、鋼管30からの軸力Nをセグメント20に設けられた収容開口部28に伝達する伝達部材10が、セグメント20の主桁21の内側端面よりも地山側の位置に配設されていることにより、発進側トンネル100内における本設構造物の施工完成後に仮設部材がトンネル内部に突出することが解消され、仮設部材の撤去を不要にできる。そのため、伝達部材10等を仮設部材としてのみならず、本設部材としても兼用させることができる。
【0034】
<第2の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造>
次に、
図4及び
図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造を説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続構造の一例を、発進側トンネルの内空側から見た斜視図である。また、
図5は、鋼管からの軸力に起因して作用するせん断力に対して、キャップ部材のせん断キー部材が対抗することを説明した模式図である。なお、
図4も
図2と同様に、接続構造の理解を容易とするべく、コンクリート体40を透視した図である。
【0035】
本実施形態では、伝達部材10に換わり、鋼製のキャップ部17が収容開口部28の無端状フランジ29に嵌め込まれ、固定されている。キャップ部材17は、中空を有する筒部14と、無端状フランジ29と相補的な線形を有して無端状フランジ29との間で止水構造を形成する相手側無端状フランジ15と、補剛リブ16とを有する。キャップ部材17はさらに、
図5に示すように、鋼管30側の端面において鋼製の端部プレート材18を有し、この端部プレート材18には、鋼管30の内部に入り込むせん断キー部材19が溶接にて固定されている。このせん断キー部材19は、鋼管キー部材19Aと、鋼管キー部材19A内に配設されている形鋼キー部材19Bとを有する。そして、収容開口部28の無端状フランジ29にキャップ部材17が嵌め込まれて固定されている状態において、キャップ部材17はセグメント20の主桁21の内側端面よりも地山側(主桁21の桁高内)に配設されている。
【0036】
キャップ部材17の筒部14の中空を介して鋼管30が地山G内に推進されるが、パイプルーフ300が施工された後、筒部14のトンネル側端面に鋼製のプレート材13が溶接固定される。このプレート材13にはコンクリート体40造成用のフレッシュコンクリートを鋼管30内に充填する際に適用される充填ホース(もしくは充填管)が装着される充填孔13aが開設されており、コンクリート体40造成後は、
図4に示すように充填孔13aが閉塞される。
【0037】
このように、セグメント20の主桁21に固定されている収容開口部28と、収容開口部28の無端状フランジ29に嵌め込まれて固定されるキャップ部材17と、パイプルーフ300を構成する鋼管30の端部32と、この鋼管30の内部からキャップ部材17に亘って介在するコンクリート体40と、により、パイプルーフと発進側トンネルの接続構造600が形成される。
【0038】
図5に示すように、接続構造600において、角鋼管30の端部32から作用するパイプルーフ300からの軸力Nは、コンクリート体40を介してY2方向にキャップ部材17に伝達され、キャップ部材17から収容開口部28を介して収容開口部28が固定されている主桁21に伝達される。また、この軸力Nに対して、無端状フランジ29と相手側無端状フランジ15が直交する方向に延びて相互に面接触していることから、軸力Nに起因する押圧力N1にて面接触部が押圧され、高い止水構造が形成される。
【0039】
さらに、せん断キー部材19を構成する鋼管キー部材19Aと形鋼キー部材19Bが、鋼管30の端部32から鋼管30内に配設されてコンクリート体40に埋設されていることから、パイプルーフ300を形成する鋼管30からの軸力Nに起因するせん断力Sを、せん断キー部材19にても対抗させることができる。すなわち、第1の実施形態でも説明したように、鋼管30の端部32が収容開口部28内に収容されていることから、せん断力Sを収容開口部28を介して主桁21にて対抗させることができることに加えて、せん断キー部材19にても対抗させることができるため、より一層高いせん断耐力を有する接続構造600が形成される。
【0040】
また、鋼管30からの軸力Nをセグメント20に設けられた収容開口部28に伝達するキャップ部材17が、セグメント20の主桁21の内側端面よりも地山側の位置に配設されていることにより、発進側トンネル100内における本設構造物の施工完成後に仮設部材がトンネル内部に突出することが解消され、仮設部材の撤去を不要にできる。そのため、キャップ部材17等を仮設部材としてのみならず、本設部材としても兼用させることができる。
【0041】
[実施形態に係るパイプルーフと到達側トンネルの接続方法]
次に、
図6乃至
図9を参照して、本発明の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続方法の一例を説明する。ここで、
図6乃至
図9は順に、本発明の実施形態に係るパイプルーフと発進側トンネルの接続方法の一例を説明する工程図である。なお、本実施形態では、既述する
図4,5に示す第2の実施形態に係る接続構造600を形成する方法を取り上げて説明するが、
図2,3に示す第1の実施形態に係る接続構造600を形成する方法であってもよい。この接続方法に当たり、
図1に示すように、シールド工法による、発進側トンネル100と到達側トンネル200の施工は完了しているものとする。ここで、
図1における発進側トンネル100と到達側トンネル200の周辺地盤において、地盤改良施工は必須ではないが、これら発進側トンネル100や到達側トンネル200の施工に前後し、かつパイプルーフ300の施工前の段階において、適宜の地盤改良施工が実施されてもよい。
【0042】
図6に示すように、発進側トンネル100を構成するセグメント20に発進口24aを形成し、この発進口24aを介して、パイプルーフ300を形成する鋼管30を地山G内にZ方向に推進させる。より具体的には、パイプルーフ300を構成する鋼管30の端部32を収容する収容開口部28であって、セグメント20の主桁21の内側端面よりも地山側の位置において無端状フランジ29を有している収容開口部28に対して、取り外し自在の無端状フランジ29Aを有してトンネル内まで延びる収容開口部28Aを装着する。鋼管30が推進自在に切り込みのある止水材29Bを無端状フランジ29から収容開口部28Aに亘って取り付け、収容開口部28に対応する位置にあるスキンプレート24を撤去する(鋼管発進口準備工程)。
【0043】
そして、この止水材29Aに鋼管30を摺動させながら鋼管30を順次地山内に推進させ、その先端31を到達側トンネル200の手前の背面地山Gで止めることにより、パイプルーフ300を発進側トンネル100と到達側トンネル200との間に架け渡す(鋼管推進工程)。
【0044】
このパイプルーフ300の施工においては、折れ機構を有して曲線施工対応の不図示の掘進機にて地山Gを掘進しながら鋼管30の推進を実行する。掘進機が到達側トンネル200の手前まで到達し、前方の鋼管30の先端31を到達側トンネル200の手前まで到達させた段階で、掘進機を縮径させ、パイプルーフ300を形成する各鋼管30を介して発進側トンネル100内へ縮径した掘進機を引き戻して回収する。このように、掘進機を発進側トンネル100内にて回収することにより、次に施工する鋼管30の推進施工に際して回収された掘進機を転用することができる。
【0045】
次に、
図7に示すように、トンネル内まで延びる収容開口部28Aを収容開口部28から取り外す。次いで、セグメント20に固定されている収容開口部28の有する無端状フランジ29と相補的な線形を有して無端状フランジ29との間で止水構造を形成する相手側無端状フランジ15を備え、鋼管30側の端面にせん断キー部材19をさらに備えているキャップ部材17を収容開口部28に嵌め込み、無端状フランジ29に対して相手側無端状フランジ15を溶接もしくはボルトを介して取り付ける。このキャップ部材17が取り付けられた状態において、キャップ部材17をセグメント20の主桁21の内側端面よりも地山側(主桁21の桁高内)に配設する(キャップ部材設置工程)。なお、図示するように、キャップ部材17のトンネル内空側の端面には鋼製のプレート材13が溶接にて固定され、このプレート材13は、コンクリート充填用のホースや配管が配設される充填孔13aを有している。
【0046】
次に、
図8に示すように、プレート材13の充填孔13aにホースHを取り付け、発進側トンネル100内からパイプルーフ300を形成する鋼管30内にコンクリートの充填を行う。ここで、端部プレート材18には複数の開口18aが開設されており、充填されたコンクリートは、この開口18aを介して鋼管30側へ流Y3方向に流入する。さらに、鋼管30の外側の地山G内へもY3方向に流入していく。
【0047】
コンクリートの充填は、パイプルーフ300を構成する複数の鋼管30のうち、例えば発進側トンネル100側に位置する一つの鋼管30内にのみ充填する方法であってもよいし、パイプルーフ300を構成する到達側トンネル200側の先端の鋼管30まで全域に亘って充填する方法であってもよい。前者の方法によれば、最小のコンクリート量で接続構造600を施工できる。一方、後者の方法によれば、全域に亘って高強度のパイプルーフ300を構築でき、また、パイプルーフと到達側トンネルの接続構造500も施工できる。いずれの方法であっても、少なくとも、発進側トンネル600を構成するコンクリート体40にて、鋼管30の端部32とキャップ部材17を一体に接続することができる。
【0048】
図9に示すように、充填されたコンクリートが硬化することにより、セグメント20の主桁21に固定されている収容開口部28と、収容開口部28の無端状フランジ29に嵌め込まれて固定されるキャップ部材17と、パイプルーフ300を構成する鋼管30の端部32と、この鋼管30の内部からキャップ部材17に亘って介在するコンクリート体40と、により、パイプルーフと発進側トンネルの接続構造600が施工される(コンクリート体造成工程)。
【0049】
図示する接続方法によれば、キャップ部材17がセグメント20の主桁21の内側端面よりも地山側の位置に配設されることから、発進側トンネル100内における本設構造物の施工完成後にキャップ部材17やパイプルーフ300を構成する鋼管30等の仮設部材がトンネル内部に突出することを解消でき、仮設部材の撤去を不要にできる。また、鋼管30の内部に入り込むせん断キー部材19を備えているキャップ部材17をセグメント20に固定されている収容開口部28の無端状フランジ29に嵌め込んで固定し、このキャップ部材17と鋼管30の端部32をコンクリート体40で一体化することにより、パイプルーフ300を形成する鋼管30から作用する軸力に起因するせん断力に対して、せん断耐力の高い接続構造600を形成することができる。
【0050】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0051】
10:伝達部材、11:相手側無端状フランジ、12:補剛リブ、13:プレート材、13a:充填孔、14:筒部、15:相手側無端状フランジ、16:補剛リブ、17:キャップ部材、18:端部プレート材、19:せん断キー部材、19A:鋼管キー部材、19B:形鋼キー部材、20:セグメント、21:主桁、22:継手板、23:縦リブ、24:スキンプレート、24a:発進口、28:収容開口部、29:無端状フランジ、30:鋼管(角鋼管)、31:先端、32:端部(後端)、40:コンクリート体、50:鋼管(角鋼管)、60:鉛直支保工、70:上方斜め支保工、80:下方斜め支保工、100:発進側トンネル(ランプトンネル)、200:到達側トンネル(本線トンネル)、300:パイプルーフ、400:先行仮設下部受け、500:接続構造(パイプルーフと到達側トンネルの接続構造)、600:接続構造(パイプルーフと発進側トンネルの接続構造)、700:本設天井湾曲受け、800:本設下方湾曲受け、G:地山(背面地山)