(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】温度センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01K 7/18 20060101AFI20220826BHJP
G01K 7/02 20210101ALI20220826BHJP
【FI】
G01K7/18 A
G01K7/02 A
(21)【出願番号】P 2021509209
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 CN2019100679
(87)【国際公開番号】W WO2020042913
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】201810989109.0
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512154998
【氏名又は名称】無錫華潤上華科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CSMC TECHNOLOGIES FAB2 CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.8 Xinzhou Road Wuxi New District,Jiangsu 214028 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スー ジャレ
(72)【発明者】
【氏名】ヂォウ グオピン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シァ チャンフェン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-177064(JP,A)
【文献】特開2007-266613(JP,A)
【文献】特開2007-103525(JP,A)
【文献】特開平08-068700(JP,A)
【文献】特開平03-094401(JP,A)
【文献】特開2012-068116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサのための製造方法であって、
シリコンウエハー上に複数のトレンチを形成するステップと、
前記複数のトレンチを変形させるために熱焼鈍を実施するステップであって、空洞を形成するように前記複数のトレンチを互いに連通させ、前記空洞を封止するようにシリコンによって前記トレンチの上部を閉じる、ステップと、
酸化シリコン膜を得るために前記空洞の上方のシリコンを酸化するステップと、
前記酸化シリコン膜上に温度測定ユニットを形成するステップであって、前記温度測定ユニットは周囲温度を感知するように構成される、ステップと
を備え
、
前記酸化シリコン膜を得るために前記空洞の上方のシリコンを酸化させる前記ステップは、具体的には、900°から1200℃の高温度環境における熱酸化プロセスを通じて、前記酸化シリコン膜を形成するために前記空洞の上側部分の前記シリコンウエハーを酸化させるステップを備え、
前記酸化シリコン膜を得るために前記空洞の上方のシリコンを酸化させる前記ステップは、
第1の熱酸化を実施することによって酸化シリコン膜を生成するステップであって、残りの酸化していないシリコンおよび前記シリコン上に生成された前記酸化シリコン膜が前記空洞の上方にある、ステップと、
エッチングプロセスによって最上部の前記酸化シリコン膜を除去するとともに前記空洞の上方に前記シリコンを残すステップであって、このときに前記シリコンの厚さは減少している、ステップと、
熱酸化、エッチングおよび熱酸化の循環的なプロセスを通じて、前記空洞の上方の全ての前記シリコンが最後の熱酸化の後に前記酸化シリコン膜を形成するまで、前記空洞の上方の前記シリコンの前記厚さを継続して徐々に減じるステップと
を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、前記トレンチの幅は0.6μmから1μmの範囲内であり、前記トレンチの深さは1μmから10μmの範囲内であり、隣接する前記トレンチの間の間隔は0.6μmから1μmの範囲内であることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法であって、最も外側の前記トレンチの間の間隔は、内側の前記トレンチの間の間隔よりも大きいことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法であって、前記熱焼鈍は具体的には水素環境における熱焼鈍を指し、前記熱焼鈍の温度は1000℃であることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法であって、前記熱焼鈍の持続期間は20分を超えないことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法であって、前記酸化シリコン膜を得た後に、前記酸化シリコン膜上に窒化シリコン膜またはポリイミド膜を形成するステップを更に備えることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法であって、前記酸化シリコン膜上に前記温度測定ユニットを形成する前記ステップは、
前記酸化シリコン膜上に第1の金属層を堆積するステップであって、前記第1の金属層は金属白金層であり、前記金属白金層は連続的な弓形状構造を有する、ステップと、
前記温度センサの出力端子を導出するために、前記金属白金層の2つの最も外側の端部の各々の上に第2の金属層を堆積するステップと
を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の製造方法であって、前記酸化シリコン膜上に前記温度測定ユニットを形成する前記ステップは、具体的には、
前記酸化シリコン膜上に多結晶シリコン層を堆積するステップであって、前記多結晶シリコン層は、並列して配置されるとともに離間されたN型多結晶シリコンストリップおよびP型多結晶シリコンストリップを備える、ステップと、
前記多結晶シリコン層上に第3の金属層を堆積するステップであって、前記第3の金属層は、隣接する多結晶シリコンストリップの間に位置する第1の金属構造を備え、前記N型多結晶シリコンストリップおよび前記P型多結晶シリコンストリップは前記第1の金属構造を通じて直列に接続され、前記第3の金属層は、前記温度センサの出力端子を導出するために、前記多結晶シリコン層の2つの最も外側の端部に位置する第2の金属構造を更に備える、ステップと
を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項
7または
8に記載の製造方法であって、
前記金属層上に不活性化層を形成し、前記温度センサのために前記出力端子が導出される場所に対応する場所において前記不活性化層に貫通孔を画定するステップ
を更に備えることを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項
8に記載の製造方法であって、前記N型多結晶シリコンストリップおよび前記P型多結晶シリコンストリップは長尺のストリップ形状であり、前記多結晶シリコンストリップは平行に配置され、同一の間隔を有することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、温度センサの分野に関し、特には、温度センサのための製造方法および温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、その全体を本願に引用して援用する、2018年8月28日出願の「TEMPERATURE SENSOR PREPARATION METHOD AND TEMPERATURE SENSOR」という名称の中国特許出願第201810989109.0号の優先権を主張する。
【0003】
温度センサは、温度測定ユニットと、温度測定ユニットを搭載する基板とを含む。温度センサの基板は、通常、熱伝導率の低い材料から作られ、例えば、温度測定材料を二酸化シリコンの上に堆積して温度センサを形成する。製造プロセスにおいて、シリコンウエハーを酸化させることによって、二酸化シリコンの層がシリコンウエハーの表面に作り出される。二酸化シリコンの熱伝導率は低いが、シリコンの熱伝導率は高い。基板の底部のシリコンを介して熱が伝導することを回避するために、通常、水酸化カリウムエッチング液を用いたウェットエッチングまたはディープ反応性イオンエッチングプロセスを用いたドライエッチングなどのディープトレンチエッチングによって、酸化シリコン層の裏のシリコンをエッチングすることが必要である。ウェットエッチングであろうとドライエッチングであろうと、そのプロセス時間は長く、コストは高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、温度センサのための製造方法、および温度センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
温度センサのための製造方法は、
【0006】
シリコンウエハー上に複数のトレンチを形成するステップと、
【0007】
複数のトレンチを変形させるために熱焼鈍を実施するステップであって、複数のトレンチは空洞を形成するように互いに連通し、空洞を封止するようにシリコンによって前記トレンチの上部を閉じる、ステップと、
【0008】
酸化シリコン膜を得るために空洞の上方のシリコンを酸化させるステップと、
【0009】
酸化シリコン膜上に温度測定ユニットを形成するステップであって、温度測定ユニットは周囲温度を感知するように構成される、ステップとを含む。
【0010】
温度センサは、
【0011】
シリコンウエハーとシリコンウエハー上に形成された酸化シリコン膜とを含む基板であって、シリコンウエハーと酸化シリコン膜との間に空洞が形成される、基板と、
【0012】
空洞の上方において酸化シリコン膜上に形成された温度測定ユニットであって、周囲温度を感知するように構成される温度測定ユニットとを含む。
【0013】
本出願の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明において記載される。本出願の他の特徴、目的および利点は、説明、添付の図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0014】
本明細書において開示される本出願の実施形態および/または実施例をより良好に説明し、示すために、1つ以上の添付の図面が参照され得る。添付の図面を説明するために使用される追加的な詳細または実施例は、開示される本出願、現在説明される実施形態および実施例、ならびに本出願の現在理解される好ましい態様のいずれかの範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態における温度センサのための製造方法の方法フローチャートである。
【0016】
【
図2a】一実施形態における温度センサのための製造方法のステップに対応する構造の断面図である。
【
図2b】一実施形態における温度センサのための製造方法のステップに対応する構造の断面図である。
【
図2c】一実施形態における温度センサのための製造方法のステップに対応する構造の断面図である。
【0017】
【
図3】一実施形態における温度センサの側面図である。
【0018】
【0019】
【
図5】別の実施形態における温度センサの側面図である。
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願の理解を促すために、本出願は、以下において、関連する添付の図面を参照してより完全に説明される。本出願の好ましい実施形態は、添付の図面において提示される。しかしながら、本出願は多くの異なる形態において具現化され得るものであり、本明細書において説明される実施形態に限定されるものではない。むしろ、これらの実施形態は、本出願の内容の理解がより完全なものになるように提供される。
【0022】
本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、別に定めのない限り、本出願が適用される技術の当業者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。本明細書における本出願の仕様において使用される用語は、単に具体的な実施形態を説明することを目的とするものであり、本出願を限定することを意図するものではない。本明細書において使用される「および/または」という用語は、関連する列記されたアイテムのうちの1つ以上のものの任意のおよび全ての組合せを含む。
【0023】
本出願を完全に理解するために、本出願によって提案される技術的解決策を説明するために、詳細なステップおよび構造が以下の説明において記載される。本出願の好ましい実施形態は以下に詳細に説明されるが、この詳細な説明に加えて、本出願は他の実施形態を有し得る。
【0024】
本出願は、
図1において図示されるように、温度センサのための製造方法を提供し、この方法のステップは以下のステップを含む。
【0025】
ステップS110:シリコンウエハー上に複数のトレンチを形成するステップ。
【0026】
図2aと組み合わされて図示されるように、シリコンウエハー20が取得され、シリコンウエハー20の上面から下方へと垂直に複数の平行トレンチ21が定められ、トレンチアレイを形成する。一実施形態において、アレイパターンを有する感光性耐食膜層がシリコンウエハー20上に先ず形成され、次いで、複数のトレンチ21を形成するために、感光性耐食膜をマスクとして使用してシリコンウエハー20に対してエッチングが実施される。この実施形態において、エッチングは、従来のドライエッチング、具体的には、ディープイオンエッチングでよい。ドライエッチングはエッチング精度がより高く、より良好な異方性性能を有し、その精度はミクロン以下のレベルに達し得る。ドライエッチングを通じて、より良好な形状のトレンチを得ることができ、特にはトレンチのサイズが小さいときに、ドライエッチングの使用はより良好な効果を達成し得る。トレンチの異なる形状は、マスクのパターンを調節すること、およびエッチングのパラメータを制御することによって得ることができる。トレンチ21の幅は0.6μm~1μmであってよく、トレンチ21の深さは1μm~10μmであってよく、隣接するトレンチ21の間の間隔は0.6μm~1μmであってよい。トレンチ21の上から見た形状は、円形状、正方形状または他の形状であってよい。トレンチの幅は、トレンチの側壁の間の最大距離である。トレンチが円形状であるなら、トレンチの幅はトレンチの直径である。トレンチが正方形状であるなら、トレンチの幅はトレンチの対角線距離である。
【0027】
ステップS120:複数のトレンチを変形させるために熱焼鈍を実施するステップであって、複数のトレンチは空洞を形成するように互いに連通し、空洞を封止するようにシリコンによって前記トレンチの上部を閉じる、ステップ。
【0028】
トレンチ21が定められたシリコンウエハー20に対して適切な熱処理が実施される。特定の温度までシリコンウエハーが熱せられると、シリコン原子の振動エネルギーが比較的大きくなり、結果として原子の運動エネルギーの増強をもたらし、シリコン原子が移動する。シリコンウエハーにはトレンチが定められており、トレンチの側壁の間の距離は小さいので、シリコン原子の移動が特定のレベルに達すると、シリコン原子はトレンチ21内に入り、シリコンウエハーの内側のトレンチ21は変形する。トレンチ21の上側部分はシリコンによって閉ざされ、複数のトレンチ21の中間部分は互いに連通して(
図2bにおいて図示されるように)空洞22を形成する。すなわち、空洞22はシリコンウエハーの中間にあり、空洞22の上側および下側部分はシリコン構造を有し、上側および下側のシリコン構造は空洞22によって分離される。一実施形態において、熱焼鈍の温度は1000℃であってよい。トレンチ21の間の間隔を変化させることによって、異なる形状の空洞を得ることができ、間隔が大きいほど、より高温の焼鈍が必要とされるが、焼鈍の持続期間が20分を超えることはない。この実施形態において、トレンチアレイでは、最も外側のトレンチの間の間隔は、内側のトレンチの間の間隔よりも大きく、このようにして、空洞の縁部におけるギャップの形成が回避され得る。同時に、熱焼鈍プロセス中にシリコンが環境における物質と化学反応しないことを確実にするために、熱焼鈍は、真空環境または不活性ガス環境などの隔離環境において実施される必要がある。この実施形態においては、熱焼鈍は水素環境において実施される。
【0029】
ステップS130:酸化シリコン膜を得るために空洞の上側部分のシリコンウエハーを酸化させるステップ。
【0030】
酸化シリコン膜23(
図2cにおいて図示される)を形成するために、空洞の上側部分のシリコンウエハーは熱酸化プロセスによって酸化される。900℃から1200℃の高温度環境において、シリコンと化学反応させるために酸素または水蒸気を外部から供給することによって、熱的に成長した酸化物層を空洞の上方に得ることができる。酸化物層が特定の厚さに達すると酸化反応はほとんど停止してしまうので、ただ一度の酸化プロセスを通じて空洞の上方の全てのシリコンを酸化シリコンへと酸化させるのが困難であるときは、複数の酸化ステップを通じて空洞の上方の全てのシリコンを酸化させることが必要である。具体的には、第1の熱酸化を実施することによって酸化シリコン膜が生成され、残りの酸化していないシリコンおよびシリコン上に生成された酸化シリコン膜が空洞の上方にある。次いで、エッチングプロセスによって最上部の酸化シリコン膜が除去され、空洞の上方のシリコンが残り、このときにシリコンの厚さは減少している。次いで、熱酸化、エッチングおよび熱酸化の上記の循環的なプロセスを通じて、空洞の上方の全てのシリコンが最後の熱酸化の後に酸化シリコン膜を形成するまで、空洞の上方のシリコンの厚さが継続して徐々に減じられる。こうして、上側の酸化シリコン膜は、空洞によって下側のシリコンから離間され得る。このときに温度センサの基板の製造が終了する。
【0031】
一実施形態において、上記の酸化シリコン膜が得られた後、酸化シリコン膜上に窒化シリコン膜またはポリイミド膜が更に形成され得る。酸化シリコンの内側に存在する大きな応力に起因して、酸化シリコン膜は容易に破断する。酸化シリコン膜上に窒化シリコン膜またはポリイミド膜を堆積することによって、酸化シリコンの内側の応力が均衡させられ得、酸化シリコン膜の構造がより安定し得る。
【0032】
ステップS140:酸化シリコン膜上に温度測定ユニットを形成するステップであって、温度測定ユニットは周囲温度を感知するように構成される、ステップ。
【0033】
温度センサの基板の製造が終了した後、基板上に温度測定ユニットが形成される必要がある。温度測定ユニットは温度センサの動作ユニットである。温度センサは、温度測定ユニットを通じて温度を感知し、電気信号を形成し、これを出力する。
【0034】
一実施形態において、温度測定ユニットは、熱抵抗感知構造であり、その具体的な形成プロセスは、以下のステップを含む。
【0035】
ステップS141:酸化シリコン膜上に第1の金属層を堆積するステップであって、第1の金属層は金属白金層であり、金属白金層は連続的な弓形状構造を有する、ステップ。
【0036】
図3を参照すると、第1の金属層30が、酸化シリコン膜23上に堆積される。第1の金属層30は金属白金層であってよく、すなわち、熱抵抗感知構造は、白金熱抵抗器になるように選択される。別の実施形態において、ニッケル、鉄など、より高い抵抗温度係数を有する他の材料が選択されてもよい。温度センサのサイズを低減するために、白金熱抵抗器の接触面積は、小サイズの基板上で増加され、白金熱抵抗器(
図4において図示されるように)は連続的な弓形状構造に作られる。
【0037】
ステップS142:温度センサの出力端子を導出するために、白金金属層の2つの最も外側の端部の各々の上に第2の金属層を堆積するステップ。
【0038】
引き続き
図3および
図4を参照すると、第2の金属層40が、白金金属層30の2つの最も外側の端部の各々の上に堆積される。第2の金属層40は金属アルミニウム層であってよく、温度センサの出力端子が金属アルミニウムから導出される。すなわち、温度センサの出力ワイヤは、金属白金層にアルミニウム層を通じて接続されるように、アルミニウム層に接続される。
【0039】
上記の白金熱抵抗センサは、温度が変化するにつれて金属白金の抵抗値が変化するという特性を使用することによって温度を測定する。温度センサの出力端子は、表示器具に接続され、表示器具は、得られた白金抵抗に対応する温度値を表示し、この白金抵抗は温度に影響されている。
【0040】
通常、温度測定ユニットを形成するステップは、不活性化ステップ、すなわち、以下のステップを更に含む。
【0041】
ステップS143:金属層上に不活性化層を形成し、温度センサのために出力端子が導出される場所に対応する場所において不活性化層に貫通孔を画定するステップ。
【0042】
熱抵抗センサの上側層は、金属アルミニウムまたは金属白金などの金属構造を有し、空気に直接的に晒されたときに容易に酸化される金属層上に不活性化層が更に形成されるので、金属層は保護され得る。同時に、温度センサのために端子が導出される場所に対応する場所に貫通孔が画定される必要があり、出力端子は貫通孔を通って導出され得る。この実施形態において、貫通孔は、2つの端部において金属アルミニウムの上方で不活性化層に画定される。不活性化層は、酸化シリコン層もしくは窒化シリコン層、または積層された酸化シリコン層および窒化シリコン層であってよい。
【0043】
一実施形態において、温度測定ユニットは熱電対感知構造であり、その具体的な形成プロセスは以下のものである。
【0044】
ステップS144:酸化シリコン膜上に多結晶シリコン層を堆積するステップであって、多結晶シリコン層は、並列して配置されるとともに離間されたN型多結晶シリコンストリップおよびP型多結晶シリコンストリップを含む、ステップ。
【0045】
図5および
図6において図示されるように、多結晶シリコン層50が、酸化シリコン膜23上に堆積される。多結晶シリコン層50は、並列して配置されるとともに離間されたN型多結晶シリコンストリップ51およびP型多結晶シリコンストリップ52を含む。N型多結晶シリコンは、多結晶シリコンの内側に第五族元素をドープすることによって形成されたN型の導電タイプを有する多結晶シリコンであってよく、多結晶シリコンの内部は均一にドープされる。P型多結晶シリコンは、多結晶シリコンの内側に第三族元素をドープすることによって形成されたP型の導電タイプを有する多結晶シリコンであってよく、多結晶シリコンの内部は均一にドープされる。N型多結晶シリコンストリップの形状は、P型多結晶シリコンストリップの形状と同一である。この解決策において、N型多結晶シリコンストリップおよびP型多結晶シリコンストリップは、長尺のストリップ形状であり、多結晶シリコンストリップは平行に配置され、同一の間隔を有する。
【0046】
ステップS145:多結晶シリコン層上に第3の金属層を堆積するステップ。第3の金属層は、隣接する多結晶シリコンストリップの間に位置する第1の金属構造を含み、N型多結晶シリコンストリップおよびP型多結晶シリコンストリップは第1の金属構造を通じて直列的に接続される。第3の金属層は、温度センサの出力端子を導出するために、多結晶シリコン層の2つの最も外側の端部に位置する第2の金属構造を更に含む。
【0047】
引き続き
図5および
図6を参照すると、第3の金属層60が多結晶シリコン層50上に堆積され、第3の金属層60は第1の金属構造61と第2の金属構造62とを含む。第1の金属構造61は、多結晶シリコンストリップを接続するように、隣接する多結晶シリコンストリップの間に位置し、具体的には隣接する多結晶シリコンストリップの端部に位置する。第1の金属構造61を通じて全てのN型多結晶シリコンストリップ51およびP型多結晶シリコンストリップ52が直列構造に形成される。したがって、M個の多結晶シリコンストリップが存在するとき、これらの多結晶シリコンストリップを直列的に接続するためにM-1個の第1の金属構造61が必要とされる。1つのN型多結晶シリコンストリップと1つのP型多結晶シリコンストリップとが直列的に接続されて、1つのゼーベック構造を形成する。この解決策において、複数のゼーベック構造が直列的に接続されて、温度測定ユニットを形成する。したがって、Mは偶数でなければならない。第2の金属構造62は、温度センサの出力端子の導出を容易にするために、多結晶シリコン層の2つの最も外側の端部に堆積される。この実施形態において、第3の金属層60は金属アルミニウム層である。
【0048】
上記の熱電対感知構造において、半導体の2つの端部における温度が同一でないとき、半導体の内側に熱起電力が生成されることが利用される。異なるタイプの半導体は異なる熱起電力を有する。2つのタイプの半導体の2つの端部が接続されて閉ループを形成するとき、ループに電流が生成され、半導体の2つの端部の間の温度差が異なると、生成される起電力が異なる。この解決策において、N型半導体およびP型半導体が、ゼーベック構造を形成するために使用され、複数のゼーベック構造が直列的に接続され、このことは、温度センサの感度を向上させ得る。一実施形態において、温度センサの2つの出力端子は、冷接点として使用され得、冷接点の温度は一定に保たれ、直列的に接続された多結晶シリコン層は、実際の周囲温度を感知するための熱接点として使用され得る。周囲温度が変化すると、冷接点と熱接点との間の温度差が変化し、冷接点の電位が変化する。表示器具に接続した後、表示器具は、現在の周囲温度に影響された熱電対の得られた電位に対応する熱接点の温度、すなわち現在の周囲温度を表示する。
【0049】
通常、温度測定ユニットを形成するステップは、不活性化ステップ、すなわち、以下のステップを更に含む。
【0050】
ステップS146:金属層上に不活性化層を形成し、温度センサのために出力端子が導出される場所に対応する場所において不活性化層に貫通孔を画定するステップ。
【0051】
熱電対センサの上側層は、金属アルミニウム層などの金属構造を有し、空気に直接的に晒されたときに容易に酸化される金属層上に不活性化層が更に形成されるので、金属構造は保護され得る。同時に、温度センサのために端子が導出される場所に対応する場所に貫通孔が画定される必要があり、出力端子は貫通孔を通って導出され得る。この実施形態において、貫通孔は、外側の多結晶シリコンの端部において金属アルミニウムの上方で不活性化層に画定される。不活性化層は、酸化シリコン層もしくは窒化シリコン層、または積層された酸化シリコン層および窒化シリコン層であってよい。
【0052】
上記の温度センサのための製造方法によって、酸化シリコン膜を得ることができ、酸化シリコン膜は空洞によってシリコンから離間される。空洞の下方のシリコンは、空洞の上方の酸化シリコン膜の隔離効果に影響せず、したがって、過剰なシリコンをディープトレンチエッチングプロセスを通じてエッチングする必要がなく、製造プロセスが簡略化され、製造時間が節約され、製造コストが節約される。酸化シリコン膜の低い熱伝導率に起因して、酸化シリコン膜上に温度測定ユニットが製造されると、より良好な温度測定効果を有し、温度センサの性能をより安定させる。
【0053】
本出願は更に、温度センサに関し、温度センサは、
【0054】
シリコンウエハーとシリコンウエハー上に形成された酸化シリコン膜とを含む基板であって、シリコンウエハーと酸化シリコン膜との間に空洞が形成される、基板と、
【0055】
空洞の上方において酸化シリコン膜上に形成された温度測定ユニットであって、周囲温度を感知するように構成される温度測定ユニットとを含む。
【0056】
図2cにおいて図示されるように、基板は、シリコンウエハー20と酸化シリコン膜23とを含み、空洞22がシリコンウエハー20と酸化シリコン膜23との間に形成される。温度測定ユニットは温度センサの動作ユニットである。温度センサは、温度測定ユニットを通じて温度を感知し、電気信号を形成し、これを出力する。この解決策において、温度測定ユニットは、酸化シリコン膜23上に形成され、空洞の上方に位置する。
【0057】
一実施形態において、温度測定ユニットは熱抵抗感知構造であり、
【0058】
第1の金属層であって、第1の金属層は金属白金層であり、金属白金層は連続的な弓形状構造を有する、第1の金属層と、
【0059】
温度センサの出力端子を導出するために、白金金属層の2つの最も外側の端部に位置する第2の金属層とを含む。
【0060】
図3および
図4に図示されるように、第1の金属層30が、酸化シリコン膜23上に堆積される。第1の金属層30は金属白金層であり、すなわち、熱抵抗感知構造は、白金熱抵抗器になるように選択される。別の実施形態において、ニッケル、鉄など、より高い抵抗温度係数を有する他の材料が選択されてもよい。温度センサのサイズを低減するために、白金熱抵抗器の接触面積は小サイズの基板上で増加され、白金熱抵抗器(
図4において図示されるように)は連続的な弓形状構造を有する。第2の金属層40が、白金金属層30の2つの最も外側の端部の各々の上に堆積される。第2の金属層40は、温度センサの出力端子を金属アルミニウムから導出するための金属アルミニウム層であってよい。すなわち、温度センサの出力ワイヤは、金属白金層にアルミニウム層を通じて接続されるように、アルミニウム層に接続される。
【0061】
上記の白金熱抵抗センサは、温度が変化するにつれて金属白金の抵抗値が変化するという特性を使用することによって温度を測定する。温度センサの出力端子は、表示器具に接続され、表示器具は、得られた白金抵抗に対応する温度値を表示し、この白金抵抗は温度に影響されている。
【0062】
一実施形態において、熱抵抗センサの上側層は、金属アルミニウムおよび金属白金などの金属構造を有し、空気に直接的に晒されたときに容易に酸化される金属層上に不活性化層が更に形成されるので、金属層は保護され得る。同時に、温度センサのために端子が導出される場所に対応する場所に貫通孔が画定される必要があり、出力端子は貫通孔を通って導出され得る。この実施形態において、貫通孔は、2つの端部において金属アルミニウムの上方で不活性化層に画定される。不活性化層は、酸化シリコン層もしくは窒化シリコン層、または積層された酸化シリコン層および窒化シリコン層であってよい。
【0063】
一実施形態において、温度測定ユニットは熱電対感知構造であり、
【0064】
並列して配置されるとともに離間されたN型多結晶シリコンストリップおよびP型多結晶シリコンストリップを含む多結晶シリコン層と、
【0065】
隣接する多結晶シリコンストリップの間に位置する第1の金属構造を含む第3の金属層であって、N型多結晶シリコンストリップおよびP型多結晶シリコンストリップは第1の金属構造を通じて直列的に接続される、第3の金属層とを含む。第3の金属層は、温度センサの出力端子を導出するために、多結晶シリコン層の2つの最も外側の端部に位置する第2の金属構造を更に含む。
【0066】
図5および
図6において図示されるように、多結晶シリコン層50が、酸化シリコン膜23上に形成される。多結晶シリコン層50は、並列して配置されるとともに離間されたN型多結晶シリコンストリップ51およびP型多結晶シリコンストリップ52を含む。N型多結晶シリコンは、多結晶シリコンの内側に第五族元素をドープすることによって形成されたN型の導電タイプを有する多結晶シリコンであってよく、多結晶シリコンの内部は均一にドープされる。P型多結晶シリコンは、多結晶シリコンの内側に第三族元素をドープすることによって形成されたP型の導電タイプを有する多結晶シリコンであってよく、多結晶シリコンの内部は均一にドープされる。N型多結晶シリコンストリップの形状は、P型多結晶シリコンストリップの形状と同一である。この解決策において、N型多結晶シリコンストリップおよびP型多結晶シリコンストリップは、長尺のストリップ形状であり、多結晶シリコンストリップは平行に配置され、同一の間隔を有する。第3の金属層60が多結晶シリコン層50上に堆積され、第3の金属層60は第1の金属構造61と第2の金属構造62とを含む。第1の金属構造61は、隣接する多結晶シリコンストリップの間に位置し、多結晶シリコンストリップは第1の金属構造61を通じて接続され、第1の金属構造61は、具体的には隣接する多結晶シリコンストリップの端部に位置する。第1の金属構造61を通じて全てのN型多結晶シリコンストリップ51およびP型多結晶シリコンストリップ52が直列構造に形成される。したがって、M個の多結晶シリコンストリップが存在するとき、これらの多結晶シリコンストリップを直列に接続するためにM-1個の第1の金属構造61が必要とされる。1つのN型多結晶シリコンストリップと1つのP型多結晶シリコンストリップとが直列に接続されて、1つのゼーベック構造を形成する。この解決策において、複数のゼーベック構造が直列に接続されて、温度測定ユニットを形成する。したがって、Mは偶数でなければならない。第2の金属構造62は、温度センサの出力端子の導出を容易にするために、多結晶シリコン層の2つの最も外側の端部に堆積される。この実施形態において、第3の金属層60は金属アルミニウム層である。
【0067】
上記の熱電対感知構造において、2つの異なるタイプの半導体の2つの端部における温度が同一でないとき、半導体の内側に熱起電力が生成されることが利用される。異なるタイプの半導体は異なる熱起電力を有する。2つのタイプの半導体の2つの端部が接続されて閉ループを形成するとき、ループに電流が生成され、半導体の2つの端部の間の温度差が異なると、生成される起電力が異なる。この解決策において、N型半導体およびP型半導体が、ゼーベック構造を形成するために使用され、複数のゼーベック構造が直列に接続され、このことは、温度センサの感度を向上させ得る。一実施形態において、温度センサの2つの出力端子は、冷接点として使用され得、冷接点の温度は一定に保たれ、直列に接続された多結晶シリコン層は、実際の周囲温度を感知するための熱接点として使用され得る。周囲温度が変化すると、冷接点と熱接点との間の温度差が変化し、冷接点の電位が変化する。表示器具に接続した後、表示器具は、現在の周囲温度に影響された熱電対の得られた電位に対応する熱接点の温度、すなわち現在の周囲温度を表示する。
【0068】
熱電対センサの上側層は、金属構造を有し、空気に直接的に晒されたときに容易に酸化される金属層上に不活性化層が更に形成される必要があるので、金属構造は保護され得る。同時に、温度センサのために端子が導出される場所に対応する場所に貫通孔が画定される必要があり、出力端子は貫通孔を通って導出され得る。この実施形態において、貫通孔は、外側の多結晶シリコンの端部において金属アルミニウムの上方で不活性化層に画定される。不活性化層は、酸化シリコン層もしくは窒化シリコン層、または積層された酸化シリコン層および窒化シリコン層であってよい。
【0069】
上記の温度センサにおいて、温度測定ユニットは酸化シリコン膜上に配設され、酸化シリコン膜は比較的低い熱伝導率を有するので、温度測定ユニットの温度測定効果は影響されない。加えて、酸化シリコン膜とシリコンとの間に空洞が形成される。空洞の下方のシリコンは、空洞の上方の酸化シリコンの隔離効果に影響しない。温度センサの製造プロセス中に、ディープトレンチエッチングプロセスを通じて過剰なシリコンをエッチングする必要がなく、故に、温度センサの製造時間を著しく簡略化し、コストを節約する。
【0070】
上に説明された実施形態の技術的特徴は、任意に組み合わされ得る。説明を簡略化するために、上記の実施形態における技術的特徴の全ての可能な組合せが説明されてはいない。しかしながら、これらの技術的特徴の全ての組合せは、このような組合せが互いに矛盾しない限り、本出願の範囲内にあるものとみなされるべきである。
【0071】
上記の実施形態は、本出願のいくつかの実施形態を単に例示するものであり、その説明は具体的および詳細であるが、本出願の範囲を限定するものとして構築されるものではない。当業者にとって、本出願の概念から逸脱することなく、いくつかの変更および改良がなされ得ること、およびこれらは全て本出願の保護範囲内にあることが留意されるべきである。したがって、本出願の保護範囲は添付の特許請求の範囲に従う。