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  • 特許-月面基地供給方法及び着陸補助装置 図1
  • 特許-月面基地供給方法及び着陸補助装置 図2
  • 特許-月面基地供給方法及び着陸補助装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】月面基地供給方法及び着陸補助装置
(51)【国際特許分類】
   B64G 99/00 20090101AFI20220829BHJP
   B64G 1/62 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B64G99/00
B64G1/62
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018049543
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019156341
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】596058085
【氏名又は名称】株式会社イーエムイー
(74)【代理人】
【識別番号】100110777
【弁理士】
【氏名又は名称】宇都宮 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】今城 綾太
(72)【発明者】
【氏名】今城 鳳太
(72)【発明者】
【氏名】今城 啓隆
(72)【発明者】
【氏名】今城 康隆
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0200033(US,A1)
【文献】米国特許第07681840(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第102730200(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 99/00
B64G 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
月面に基地を供給する方法であって、
地球の周回軌道に沿って周回している構造物に一端が接続されたワイヤーロープを、着陸補助装置に設けられた巻き上げ機を用いて巻き上げて、前記構造物と前記着陸補助装置とを連結するステップ(a)と、
前記構造物に設けられた少なくとも1つのブースターを動作させて、前記構造物及び前記着陸補助装置を地球の周回軌道から月に向けて移動させ、月の周回軌道に沿って周回させるステップ(b)と、
前記少なくとも1つのブースターを動作させると共に、前記巻き上げ機から前記ワイヤーロープを送り出すことにより、前記構造物が前記着陸補助装置よりも月面に近くなるように前記構造物と前記着陸補助装置との距離を所定の距離に広げるステップ(c)と、
前記少なくとも1つのブースターを動作させて、前記構造物及び前記着陸補助装置の周回速度を低下させることにより、前記構造物及び前記着陸補助装置を月面に向けて落下させるステップ(d)と、
前記構造物が月面に第1の距離まで近付いたときに、前記巻き上げ機を用いて前記ワイヤーロープの巻き上げを開始することにより、前記構造物と前記着陸補助装置との距離を縮めて前記構造物の落下速度を低下させるステップ(e)と、
前記構造物が月面に第2の距離まで近付いたときに、前記構造物から前記着陸補助装置を切り離すステップ(f)と、
前記構造物を月面に軟着陸させて基地として利用可能とするステップ(g)と、
を備える月面基地供給方法。
【請求項2】
構造物を月面に軟着陸させて基地として利用可能とするために用いられる着陸補助装置であって、
所定の長さを有するワイヤーロープと、
地球の周回軌道において、前記構造物に一端が接続された前記ワイヤーロープを巻き上げて前記構造物と前記着陸補助装置とを連結し、月の周回軌道において、前記ワイヤーロープを送り出して前記構造物と前記着陸補助装置との距離を所定の距離に調節し、前記構造物が月面に向けて落下する際に、前記ワイヤーロープを巻き上げることにより、前記構造物と前記着陸補助装置との距離を縮めて前記構造物の落下速度を低下させるための巻き上げ機と、
を備える着陸補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、月面に基地を供給する月面基地供給方法、及び、それに用いられる着陸補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙船が地球以外の惑星(例えば、火星)に航行するためには、引力が地球の引力の1/6程度である月に基地を設けて、宇宙船が月の基地と火星との間で航行することが考えられる。また、月には大気が存在しないので、大量の宇宙線(放射線)を被曝するおそれがあるが、月の基地を利用することにより、宇宙線から身を守ることができる。
【0003】
一般に、宇宙船等の飛行物体における燃料の消費は、飛行物体の速度が大きく変化する際に著しい。即ち、飛行物体が離陸するために加速する際や、飛行物体が着陸するために減速するに、大量の燃料が消費される。また、飛行物体の全体質量が大きいほど、大量の燃料が消費される。従って、飛行物体が着陸のために大量の燃料を搭載すると、それによって飛行物体の全体質量が大きくなり、離陸のためにさらに大量の燃料を搭載しなければならなくなるという雪だるま現象を生じている。
【0004】
関連する技術として、特許文献1には、火星を探査するような惑星間ミッションのために、搭載燃料の質量を節約することを可能にする方法が開示されている。この方法は、探査する目標の惑星に向かう第1の惑星間軌道上に第1の軌道宇宙船を地球から打ち上げることと、集合スポットに向かう第2の惑星間軌道上に第2の軌道宇宙船を地球から打ち上げることと、運搬される積荷を回収し、それを第1の軌道宇宙船に積み込むことと、第1の軌道宇宙船及び積荷を目標の惑星から集合スポットに帰還させることと、2つの軌道宇宙船のドッキングを行うことと、少なくとも第2の軌道宇宙船及び積荷を集合スポットから地球軌道に帰還させることとからなる。
【0005】
特許文献1によれば、第1の軌道宇宙船が地球に向けて帰還する途中で、第1の軌道宇宙船が集合スポットにおいて第2の軌道宇宙船と合流し、2つの軌道宇宙船が一緒につながれ、次に、2つの宇宙船が一緒に地球に帰還する際に、第2の軌道宇宙船が、2つのつながれた宇宙船の帰還、制動、及び、地球周りの軌道への進入に必要な燃料を提供する。従って、第1の軌道宇宙船は、着陸のために大量の燃料を搭載しなくても済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-18271号公報(段落0006-0007、0025、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているように、火星を探査する場合に、集合スポットにおいて2つの宇宙船が合流することにより、火星に到達する宇宙船に搭載される燃料を削減することができる。月への着陸や月からの離陸は、地球への着陸や地球からの離陸よりも燃料を消費しないので、月の基地を集合スポットとして利用することも考えられる。
【0008】
しかしながら、月と地球とは約38万kmも離れているので、月に基地を設ける場合に、基地を建設するために用いられる資材を地球から月に搬送して月面で基地を組み立てると、基地を組み立てる人員も地球と月との間を往復しなければならないので負担が大きい。また、基地を組み立てる人員を宇宙船で搬送するために、大量の燃料も必要になる。
【0009】
そこで、上記の点に鑑み、本発明の第1の目的は、資材を地球から月に搬送して月面で基地を組み立てるよりも容易に月面に基地を供給することが可能な月面基地供給方法を提供することである。また、本発明の第2の目的は、着陸時における燃料の消費を抑えながら月面に基地を供給することが可能な月面基地供給方法を提供することである。さらに、本発明の第3の目的は、そのような月面基地供給方法において用いられる着陸補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る月面基地供給方法は、構造物を組み立てるために用いられる資材を地球の上空に搬送して、地球の周回軌道に沿って周回させるステップ(a)と、地球の周回軌道において、前記資材を用いて構造物を組み立てるステップ(b)と、組み立てられた構造物を地球の周回軌道から月に向けて移動させ、月面に軟着陸させて基地として利用可能とするステップ(c)とを備える。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、資材を地球の周回軌道に沿って周回させながら構造物を組み立てるので、資材に作用する地球の力と周回運動による遠心力とが釣り合うことによって無重力状態が作り出され、資材の移動や組み立てに要する力を低減することができる。また、地球の周回軌道は月よりも遥かに地球に近いので、資材を地球から月に搬送して月面で基地を組み立てるよりも容易に月面に基地を供給して、宇宙開発費の大幅な削減及び作業時間の大幅な短縮が可能となる。
【0012】
本発明の第2の観点に係る月面基地供給方法は、地球の周回軌道に沿って周回している構造物に一端が接続されたワイヤーロープを、着陸補助装置に設けられた巻き上げ機を用いて巻き上げて、前記構造物と前記着陸補助装置とを連結するステップ(a)と、前記構造物に設けられた少なくとも1つのブースターを動作させて、前記構造物及び前記着陸補助装置を地球の周回軌道から月に向けて移動させ、月の周回軌道に沿って周回させるステップ(b)と、前記少なくとも1つのブースターを動作させると共に、前記巻き上げ機から前記ワイヤーロープを送り出すことにより、前記構造物が前記着陸補助装置よりも月面に近くなるように前記構造物と前記着陸補助装置との距離を所定の距離に広げるステップ(c)と、前記少なくとも1つのブースターを動作させて、前記構造物及び前記着陸補助装置の周回速度を低下させることにより、前記構造物及び前記着陸補助装置を月面に向けて落下させるステップ(d)と、前記構造物が月面に第1の距離まで近付いたときに、前記巻き上げ機を用いて前記ワイヤーロープの巻き上げを開始することにより、前記構造物と前記着陸補助装置との距離を縮めて前記構造物の落下速度を低下させるステップ(e)と、前記構造物が月面に第2の距離まで近付いたときに、前記構造物から前記着陸補助装置を切り離すステップ(f)と、前記構造物を月面に軟着陸させて基地として利用可能とするステップ(g)とを備える。
【0013】
また、本発明の第2の観点に係る着陸補助装置は、構造物を月面に軟着陸させて基地として利用可能とするために用いられる着陸補助装置であって、所定の長さを有するワイヤーロープと、地球の周回軌道において、前記構造物に一端が接続された前記ワイヤーロープを巻き上げて前記構造物と前記着陸補助装置とを連結し、月の周回軌道において、前記ワイヤーロープを送り出して前記構造物と前記着陸補助装置との距離を所定の距離に調節し、前記構造物が月面に向けて落下する際に、前記ワイヤーロープを巻き上げることにより、前記構造物と前記着陸補助装置との距離を縮めて前記構造物の落下速度を低下させるための巻き上げ機とを備える。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、構造物が月面に近付いたときに、着陸補助装置の巻き上げ機を用いてワイヤーロープを巻き上げることにより、構造物の落下速度を低下させることができる。従って、着陸時における燃料の消費を抑えながら月面に基地を供給して、宇宙開発費の大幅な削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る月面基地供給方法を示すフローチャート。
図2】本発明の第2の実施形態に係る月面基地供給方法に用いられる宇宙ステーション及び着陸補助装置を模式的に示す概略図。
図3】本発明の第2の実施形態に係る月面基地供給方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
<月面基地供給方法1>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る月面基地供給方法を示すフローチャートである。図1のステップS11において、構造物を組み立てるために用いられる資材を地球の上空に搬送して、地球の周回軌道に沿って周回させる。本願において、「構造物」は、月面に設置される基地施設又はその一部であっても良いし、新たに建設される宇宙ステーションであっても良い。
【0017】
例えば、構造物を組み立てるために用いられる資材が宇宙船に搭載され、飛行経路に沿った沿岸の打ち上げ地点から宇宙船が打ち上げられる。その後、宇宙船は、地球の周回軌道に乗るように制御され、地球の周回軌道に乗ったら、宇宙船のロケットエンジンが停止される。この周回軌道としては、地球の平均海洋面から計測して高度約160km~約20,000kmの範囲内の軌道が適しており、例えば、高度約400kmの円軌道が設定されても良い。宇宙船は、地球の力と周回運動による遠心力とが釣り合うような周回速度で地球の周りを周回する。
【0018】
ステップS12において、地球の周回軌道において、資材を用いて構造物を組み立てる。例えば、構造物を組み立てるために用いられる資材が、宇宙船から宇宙空間に運び出され、宇宙空間において構造物が組み立てられる。地球の周回軌道においては、資材に作用する地球の力と周回運動による遠心力とが釣り合うことによって無重力状態が作り出されるので、資材の移動や組み立てに要する力を低減することができる。
【0019】
ステップS13において、組み立てられた構造物を地球の周回軌道から月に向けて移動させ、破壊することなく月面に軟着陸させて基地として利用可能とする。そのためには、推進力又はブレーキ力を与える少なくとも1つのブースター(使用後に切り離し可能なロケットエンジン)を構造物自体に取り付けても良い。
【0020】
本発明の第1の実施形態によれば、資材を地球の周回軌道に沿って周回させながら構造物を組み立てるので、資材に作用する地球の力と周回運動による遠心力とが釣り合うことによって無重力状態が作り出され、資材の移動や組み立てに要する力を低減することができる。また、地球の周回軌道は月よりも遥かに地球に近いので、資材を地球から月に搬送して月面で基地を組み立てるよりも容易に月面に基地を供給して、宇宙開発費の大幅な削減及び作業時間の大幅な短縮が可能となる。
【0021】
<月面基地供給方法2>
次に、本発明の第2の実施形態に係る月面基地供給方法について説明する。第2の実施形態に係る月面基地供給方法は、地球の周回軌道に沿って周回している構造物を月面に移動させて軟着陸させる具体的な方法である。構造物としては、第1の実施形態に係る月面基地供給方法によって組み立てられた構造物(宇宙ステーションを含む)が用いられても良いし、既存の宇宙ステーションが用いられても良い。
【0022】
現在稼働中の宇宙ステーションは、多額の費用をかけて複数の国によって運営されているが、稼働を開始してから5年程度で退役する。退役した宇宙ステーションを月面に移動させて再利用すれば、資源を無駄にすることなく、月に基地を設けるためのコストや作業時間を大幅に低減することができる。以下においては、一例として、地球の周回軌道に沿って周回している既存の宇宙ステーションを月面に移動させて月の基地とする場合について説明する。
【0023】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る月面基地供給方法に用いられる宇宙ステーション及び着陸補助装置を模式的に示す概略図である。本実施形態において用いられる宇宙ステーション10は、地球の周回軌道(図中の一点鎖線)に沿って周回している。地球の平均海洋面から計測した周回軌道の高度H1は、約160km~約20,000kmの範囲内が適しており、例えば、高度約400kmの円軌道が設定されても良い。宇宙ステーション10は、高度約400kmの円軌道に沿って飛行する場合に、約90分で地球を一周する。
【0024】
宇宙ステーション10は、宇宙空間において宇宙ステーション10に推進力又はブレーキ力を与える少なくとも1つのブースター(図2には、一例として、2つのブースター11及び12を示す)と、宇宙ステーション10が月面に軟着陸する際に用いられる複数のエアーバッグ13とを備えている。
【0025】
この宇宙ステーション10を親機として、親機を月面に軟着陸させて基地として利用可能とするために、親機の着陸時に落下速度を低下させる着陸補助装置20が、子機(付属機)として用いられる。着陸補助装置20の質量は、宇宙ステーション10の質量の1/10以上かつ宇宙ステーション10の質量以下であることが望ましく、例えば、宇宙ステーション10の質量とほぼ等しくても良い。着陸補助装置20は、所定の長さ(例えば、5km~10km)を有するワイヤーロープ21と、ワイヤーロープ21を巻き上げたり送り出したりする巻き上げ機22とを備えている。
【0026】
巻き上げ機22は、着陸補助装置20に搭載された蓄電池から供給される直流電圧を交流電圧に変換するインバーター回路と、インバーター回路から供給される交流電圧に従って巻き上げリールを回転させるモーターとを含み、宇宙ステーション10から無線によって遠隔制御できるように構成されている。
【0027】
地球の周回軌道において、巻き上げ機22は、宇宙ステーション10に一端が接続されたワイヤーロープ21を巻き上げて宇宙ステーション10と着陸補助装置20とを連結する。例えば、ワイヤーロープ21の一端に固定された端子が、磁気的又は機械的に宇宙ステーション10に接続されている。
【0028】
一方、月の周回軌道において、巻き上げ機22は、ワイヤーロープ21を送り出して宇宙ステーション10と着陸補助装置20との距離を所定の距離(例えば、5km~10km)に調節し、宇宙ステーション10が月面に向けて落下する際に、ワイヤーロープ21を巻き上げることにより、宇宙ステーション10と着陸補助装置20との距離を縮めて宇宙ステーション10の落下速度を低下させる。
【0029】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る月面基地供給方法を示すフローチャートである。図3のステップS21において、地球の周回軌道に沿って周回している宇宙ステーション10に一端が接続されたワイヤーロープ21を、着陸補助装置20に設けられた巻き上げ機22を用いて巻き上げて、宇宙ステーション10と着陸補助装置20とを連結する。それにより、着陸補助装置20を宇宙ステーション10に密着させることができる。
【0030】
ステップS22において、宇宙ステーション10に設けられた少なくとも1つのブースター11及び/又は12を動作させて宇宙ステーション10を加速させ、宇宙ステーション10及び着陸補助装置20を地球の周回軌道から月に向けて移動させる。月に向けての移動は、数週間かけてゆっくり行われても良い。宇宙ステーション10及び着陸補助装置20が月に接近したら、少なくとも1つのブースター11及び/又は12を動作させて宇宙ステーション10を減速させ、宇宙ステーション10及び着陸補助装置20を月の周回軌道(図中の一点鎖線)に沿って周回させる。
【0031】
月の平均地表面から計測した周回軌道の高度H2は、約40km~約5,000kmの範囲内が適しており、例えば、高度約100kmの円軌道が設定されても良い。宇宙ステーション10及び着陸補助装置20は、月の力と周回運動による遠心力とが釣り合うような周回速度で月の周りを周回する。
【0032】
ステップS23において、少なくとも1つのブースター11及び/又は12を動作させると共に、巻き上げ機22からワイヤーロープ21を送り出すことにより、宇宙ステーション10が着陸補助装置20よりも月面に近くなるように宇宙ステーション10と着陸補助装置20との距離を所定の距離(例えば、5km~10km)に広げる。ここで、宇宙ステーション10及び着陸補助装置20は、ほぼ鉛直線上に並ぶことが望ましい。
【0033】
ステップS24において、少なくとも1つのブースター11及び/又は12を動作させて、宇宙ステーション10及び着陸補助装置20の周回速度を低下させることにより、宇宙ステーション10及び着陸補助装置20を月面に向けて落下させる。宇宙ステーション10の落下速度と着陸補助装置20の落下速度とは、ほぼ等しくなる。
【0034】
ステップS25において、宇宙ステーション10が月面に第1の距離(例えば、数km~数十km)まで近付いたときに、巻き上げ機22を用いてワイヤーロープ21の巻き上げを開始することにより、宇宙ステーション10と着陸補助装置20との距離を縮めて宇宙ステーション10の落下速度を低下させる。
【0035】
ステップS26において、宇宙ステーション10が月面に第2の距離(例えば、500m程度)まで近付いたときに、宇宙ステーション10から着陸補助装置20を切り離す。例えば、ワイヤーロープ21の端子が磁気的又は機械的に宇宙ステーション10に接続されている場合に、宇宙ステーション10は、磁気的又は機械的な接続を解除することにより、着陸補助装置20をスムーズに切り離すことができる。
【0036】
磁気的な接続の場合には、ワイヤーロープ21の一端に固定された端子に含まれている磁石のN極(又はS極)側が宇宙ステーション10の電磁石に接続されているものとする。その場合に、宇宙ステーション10は、ワイヤーロープ21の端子側の電磁石の極性をS極(又はN極)からN極(又はS極)に反転させることにより、磁気的な接続を解除するようにしても良い。
【0037】
着陸補助装置20を切り離す際に、宇宙ステーション10は、少なくとも1つのブースター11及び/又は12を動作させることにより、宇宙ステーション10の位置と着陸補助装置20の位置とを水平方向にずらして、宇宙ステーション10と着陸補助装置20とが衝突しないようにすることが望ましい。
【0038】
着陸補助装置20は、宇宙ステーション10から切り離されると、月面に勢い良く衝突する。着陸補助装置20が、アルミニウム若しくはその合金又はステンレス等の金属の板材をボルト及びナット等で連結して組み立てることによって構成されていれば、着陸補助装置20が大破しても、着陸補助装置20の構成部品を建築物等の材料として再利用することができる。一方、宇宙ステーション10は、落下速度が低下されているので、比較的ゆっくり落下する。
【0039】
ステップS27において、宇宙ステーション10を月面に軟着陸させる。月の引力は地球の引力の1/6程度であり、宇宙ステーション10は比較的ゆっくり落下するが、少なくとも1つのブースター11及び/又は12を動作させることにより、さらにゆっくりと落下させることが望ましい。宇宙ステーション10は、着陸寸前に複数のエアーバッグ13を膨らませて、着陸の衝撃を緩和する。宇宙ステーション10は、月面に軟着陸すると、月の基地として利用可能となる。
【0040】
本発明の第2の実施形態によれば、宇宙ステーション10が月面に近付いたときに、着陸補助装置20の巻き上げ機22を用いてワイヤーロープ21を巻き上げることにより、宇宙ステーション10の落下速度を低下させることができる。従って、着陸時における燃料の消費を抑えながら月面に基地を供給して、宇宙開発費の大幅な削減が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、月面に基地を供給する月面基地供給方法、及び、それに用いられる着陸補助装置において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…宇宙ステーション、11、12…ブースター、13…エアーバッグ、20…着陸補助装置、21…ワイヤーロープ、22…巻き上げ機
図1
図2
図3