IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 イマテックの特許一覧

<>
  • 特許-協力補助システム及び協力補助方法 図1
  • 特許-協力補助システム及び協力補助方法 図2
  • 特許-協力補助システム及び協力補助方法 図3
  • 特許-協力補助システム及び協力補助方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】協力補助システム及び協力補助方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20180101AFI20220829BHJP
【FI】
G06Q50/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018110189
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019016348
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2017132020
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511104509
【氏名又は名称】株式会社 イマテック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】友枝 敦
(72)【発明者】
【氏名】今関 剛
(72)【発明者】
【氏名】青木 保一
(72)【発明者】
【氏名】山本 晴久
(72)【発明者】
【氏名】三宅 琢
【審査官】玉木 宏治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-098953(JP,A)
【文献】特開2006-042239(JP,A)
【文献】宮木 洋 外1名,BLE Beaconを用いた視覚障がい者歩行支援法,電子情報通信学会技術研究報告,一般社団法人電子情報通信学会,2017年01月19日,Vol.116 No.428,pp.17-22
【文献】Sharada Murali et al.,Smart Walking Cane for the Visually Challenged,2016 IEEE Region 10 Humanitarian Technology Conference,IEEE,2016年12月23日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが保持するデバイスの動きを検知するセンサと、
前記ユーザの所在地を特定して所在履歴情報を所在履歴記憶部に記録し、前記所在履歴記憶部に記録された所在履歴情報に応じて、現在の所在地に対する前記ユーザの習熟度を推定し、 前記センサで検知した検知情報に基づいて、前記習熟度に応じたユーザ状況を特定する本人状況特定部と、
前記ユーザの周囲状況に関する情報を取得する周囲状況特定部と、
前記ユーザ状況及び前記周囲状況に基づいて、前記ユーザの存在を知らせる要件を保持する要件記憶部と、
前記要件に基づいて通知先を特定し、情報を発信する情報発信部とを備えたことを特徴とする協力補助システム。
【請求項2】
前記周囲状況特定部は、情報サーバから前記所在地におけるイベント情報、混雑情報、災害情報及び事故情報の少なくともいずれか一つを含む情報を、前記所在地の状況として取得することを特徴とする請求項1に記載の協力補助システム。
【請求項3】
前記要件には、ユーザを支援可能な協力者候補に関する協力者情報が記録され、
前記情報発信部は、前記ユーザの進行方向を特定し、前記協力者情報を用いて協力者候補を特定し、前記進行方向に所在する協力者候補に対して、前記情報を発信することを特徴とする請求項1又は2に記載の協力補助システム。
【請求項4】
センサ、本人状況特定部、周囲状況特定部、所在履歴記憶部、要件記憶部、情報発信部を備えた協力補助システムを用いて、配慮を要するユーザへの協力を支援する方法であって、
前記センサが、配慮を要するユーザが保持するデバイスの動きを検知し、
前記本人状況特定部が、前記ユーザの所在地を特定して所在履歴情報を前記所在履歴記憶部に記録し、前記所在履歴記憶部に記録された所在履歴情報に応じて、現在の所在地に対する前記ユーザの習熟度を推定し、前記センサで検知した検知情報に基づいて、前記習熟度に応じたユーザ状況を特定し、
前記周囲状況特定部が、前記ユーザの周囲状況に関する情報を取得し、
前記ユーザ状況及び周囲状況と、前記要件記憶部に保持された要件とに基づいて、前記ユーザの存在を知らせる通知先を特定し、前記情報発信部が情報を発信することを特徴とする協力補助方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配慮や援助が必要なユーザへの協力を補助するための協力補助システム及び協力補助方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
身体の不自由な人が、生活を支援する各種道具を利用することがある。例えば、視覚障害者は、歩行時に補助器具として白杖を利用する。この白杖を用いることにより、身の回りの障害物を検出し、これを避けながら歩行することができる。この白杖を使用しての歩行では、地面にスライドさせる「スライドテクニック」や、離れた2点をタッチしながら歩く「タッチテクニック」、両者を組み合わせた「タッチ・アンド・スライド」等がある。また、誘導者を同伴しての歩行や、視覚障害者であることを周囲に知らせるために、グリップを腰の高さで持ち、杖の先を少し浮かせて左右に振らず、グリップと反対側の肩の前方に出す「IDテクニック」等の使い方もある。
【0003】
更に、視覚障害者に周囲の障害物情報を伝達するための視覚障害者用歩行支援装置が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。この文献に記載された技術においては、白杖は視覚障害者用歩行支援装置を備え、センサ、3つの振動子が取り付けられている。センサは、指向性と距離測定の機能を有し、設定範囲に障害物があるかを検知する。振動子は、それぞれ、白杖のグリップを握ったときに小指が触れる位置、人差指が触れる位置、親指が触れる位置に取り付けられている。そして、センサが設定範囲に障害物があるかを検知し、設定範囲に対応させた振動子を振動させて、視覚障害者に障害物の情報を通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-158472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、身体の不自由な人等の社会的・環境的弱者でも生活しやすいバリアフリーな環境の検討が進められている。白杖を持つ人を見かけた時は、まず、白杖を持つ人や周辺に問題がないかを見守る。問題があることが明らかな場合、困っている様子が見られる場合、助けを求めている場合には、協力が望ましい。
【0006】
しかしながら、社会的・環境的弱者にとって困る状況やニーズは多様であり、画一的な対応は手助けにならないこともある。特に、社会的・環境的弱者におけるニーズは、本人や周囲の状況によって異なる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための協力補助システムは、ユーザが保持するデバイスの動きを検知するセンサと、前記センサで検知した検知情報に基づいて、ユーザ状況を特定する本人状況特定部と、前記ユーザの周囲状況に関する情報を取得する周囲状況特定部と、前記ユーザ状況及び周囲状況に基づいて、ユーザの存在を知らせる要件を保持する記憶部と、前記要件に基づいて通知先を特定し、情報を発信する情報発信部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配慮や援助が必要なユーザへの協力を効率的に補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のシステム概略図。
図2】本実施形態で用いる辞書の説明図であって、(a)は第1辞書、(b)は第2辞書、(c)は第3辞書の説明図。
図3】本実施形態の処理手順の説明図。
図4】本実施形態で用いる情報の説明図であって、(a)は本人状況、(b)は周囲状況、(c)は要配慮者を支援するためのアクションを決定するために用いる情報の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図4を用いて、協力補助システム及び協力補助方法を具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態の協力補助システムでは、白杖10(デバイス)を用いて、ユーザ(例えば、視覚障害者等の社会的・環境的弱者。以下、「要配慮者」という。)を支援する。更に、この白杖10は、ピア・ツー・ピアネットワークやインターネット等を介して、モバイル端末20、支援サーバ30、情報サーバ40に接続される。
【0011】
モバイル端末20は、要配慮者の周囲に存在する周辺者や、要配慮者を支援する協力者が利用するコンピュータ端末である。このモバイル端末20は、制御部、出力部、通信部を備える。制御部は、通信部を介して取得した情報を、出力部において、光、文字表示、バイブレーション、音等での通知を行なう処理を実行する。そして、モバイル端末20は、白杖10や支援サーバ30から受信したメッセージを出力する。
【0012】
支援サーバ30は、要配慮者を支援するコンピュータシステムである。この支援サーバ30は、白杖10から支援要請を受信した場合、協力者のモバイル端末20に対して支援要請メッセージを出力する。
【0013】
情報サーバ40は、各種情報を発信するコンピュータシステムである。例えば、情報サーバ40は、所定地域のイベント情報、混雑情報、災害情報、事故情報を、インターネットを介して発信する。
【0014】
要配慮者が利用するデバイスとしての白杖10は、制御部11、記憶部12、センサ部13、場所特定部14、通知部15、通信部16を備える。
制御部11は、本人状況特定部111、周囲状況特定部112、情報発信部113を備える。
本人状況特定部111は、センサ部13やネットワーク等から各種情報を取得し、各種情報に基づいて、要配慮者の本人状況を特定する。
【0015】
周囲状況特定部112は、ピア・ツー・ピアネットワークやインターネット等から各種情報を取得し、各種情報に基づいて、要配慮者の周囲状況を特定する。
情報発信部113は、ユーザ状況(本人状況)や周囲状況に基づいて、通知先を特定し、各種情報を発信する。このため、情報発信部113は、要配慮者を支援可能な協力者に関する連絡先に関する情報を保持している。
【0016】
センサ部13は、要配慮者の状況を検出する。本実施形態では、センサ部13に印加された加速度を検出することにより、白杖10の動き(方向や速さ、衝撃等)を検出する。
場所特定部14は、要配慮者の所在地を特定する処理を実行する。例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を用いることができる。
【0017】
通知部15は、白杖10を保持する要配慮者本人に通知を出力する処理を実行する。通知部15は、例えば、振動子によるバイブレーションによる注意喚起や音声合成等を利用したメッセージを出力する。
通信部16は、各種情報の取得や送信処理を実行する。この通信部16は、基地局、インターネット等を介してのデータの送受信や、ピア・ツー・ピアネットワークによるデータの送受信を行なう。
【0018】
記憶部12には、要配慮者の所在履歴情報(図示せず)が記録される。所在履歴情報は、要配慮者の移動に伴って、定期的に記録される。この所在履歴情報には、要配慮者の所在に応じて、タイミング(所在日時、曜日等)、所在地に関する情報が記録されている。この所在履歴情報に基づいて、要配慮者の経験頻度を算出し、この経験頻度に基づいて、現況(現在のタイミング、現在地)に対する要配慮者の習熟度を算定することができる。
【0019】
更に、記憶部12には、要配慮者の本人状況や意図を判定し、要配慮者を支援するためのアクションを決定するための辞書が記録されている。本実施形態では、記憶部12には、第1辞書~第3辞書が記録されている。
【0020】
図2(a)に示すように、第1辞書には、検出パターンに対して、モーションが記録されている。
検出パターンデータ領域には、センサ部13において検出する値のパターンが記録される。例えば、白杖10の連続的な動きにおける動き方向や加速度の変化のパターンが記録される。
【0021】
モーションデータ領域には、検出パターンによって特定される動きに関するデータが記録される。モーションとしては、例えば、「使用中」の基本操作としての「スライド」や「タッチ」、「ラップ」、「ID」、インシデントとしての「衝突」、「落下」、「激突」、「転倒」、「身構え」、「振り回し」、「放り投げ」、各種コマンド等がある。
【0022】
以下に、検出パターンとモーションとの関係を例示するが、これらに限定されるものではない。
「スライド」は、白杖10を下向きに保持しながら、左右方向の周期的な振動の加速度の検出パターンと関連付けられている。
【0023】
「タッチ」は、白杖10を下向きに保持しながら、左右の離れた2点の周期的にコツコツと叩く加速度の検出パターンと関連付けられている。
「衝突」は、白杖10を保持しながら、所定値以上の加速度の検出パターンと関連付けられている。
「ラップ」は、白杖10の側面でコツコツと叩く加速度の検出パターンと関連付けられている。
「ID」は、白杖10を下方垂直に保持しながら、上方向に動かす加速度の検出パターンと関連付けられている。
【0024】
「落下」は、白杖10が地面に落下し、カラカラと跳ねる加速度の検出パターンと関連付けられている。「激突」は、「落下」と同様ながら所定値以上の加速度の検出パターン、または白杖10が折れる加速度の検出パターンと関連付けられている。
「転倒」は、白杖10を持った状態での転倒時の加速度の検出パターンと関連付けられている。
「身構え」は、白杖10を上向けた状態を一定時間維持する加速度の検出パターン、または白杖10のグリップを通常とは異なる所定以上の力で握りしめる圧力と関連付けられている。
「振り回し」は、白杖10を保持した状態で振り回した時の加速度の検出パターンと関連付けられている。
「放り投げ」は白杖10を空中に投げた加速度の検出パターンと関連付けられている。
【0025】
また、各種コマンドを設定するために、予め定められた操作の動き(モーション)の検出パターンと関連付けてもよい。
「タップ」は、白杖10を下方垂直にして、地面を叩くまたは地面を押す操作時の加速度の検出パターンと関連付けられている。
「ダブルタップ」は、所定の時間間隔で同じ位置で地面を叩く操作時の加速度の検出パターンと関連付けられている。
【0026】
「円動作」は、停止した状態で所定の大きさの円を描く操作時の加速度の検出パターンと関連付けられている。
「三角形動作」は、タッチ後に所定の大きさの三角形を描く操作時の加速度の検出パターンと関連付けられている。
【0027】
「W動作」は、タッチ後にW字を描く操作時の加速度の検出パターンと関連付けられている。
【0028】
図2(b)に示すように、第2辞書には、モーションに対して、本人状況が記録されている。
モーションデータ領域には、第1の辞書の各モーションに関するデータが記録される。
本人状況データ領域には、要配慮者の状況や意図を特定するための情報が記録される。
【0029】
以下に、モーションと本人状況との関係を例示するが、これらに限定されるものではない。
モーション「スライド」と「タッチ」に対しては、本人状況として「歩行による移動」が関連付けられている。
モーション「ラップ」に対しては、本人状況として「障害物の確認(意図)」が関連付けられている。
モーション「ID」に対しては、コマンドとして、支援要請(意図)が関連付けられている。
【0030】
モーション「身構え」と「振り回し」に対しては、本人状況として「防衛(意図)」が関連付けられている。
モーション「衝突」と「転倒」に対しては、本人状況として「事故(リスク事象)」が関連付けられている。
モーション「激突」と「放り投げ」に対しては、本人状況として「事件(リスク事象)」が関連付けられている。
モーション「タップ」と「ダブルタッチ」に対しては、コマンドとして、施設スタッフ優先での支援要請(意図)が関連付けられている。
【0031】
モーション「円動作」に対しては、コマンドとして、周囲の協力者の存在確認が関連付けられている。
モーション「三角形動作」に対しては、コマンドとして、施設案内要請が関連付けられている。
【0032】
モーション「W動作」に対しては、コマンドとして、トイレ案内要請が関連付けられている。
【0033】
図2(c)に示すように、第3辞書には、状況・意図に対して、アクションが記録されている。
状況・意図データ領域には、第2の辞書の本人状況や、白杖10が取得した周囲状況等に基づいて、要配慮者の存在を知らせる要件に関するデータが記録される。本人状況において、所在地やタイミングに応じた要配慮者の経験頻度を算出し、この経験頻度に基づいて予測した「現況に対する習熟度」を加えることも可能である。この場合、現況に対する習熟度に応じて、アクションを変更する。例えば、経験頻度が少なく、習熟度が低い場合には、習熟度が高い場合よりも、早期通知や広い周囲範囲への通知等、アクション実行を積極的に行なう。
アクションデータ領域には、本人状況や周囲状況に対応して行なうアクションに関するデータが記録される。このアクションには、要配慮者を支援する場合の要件(支援可能者の条件等)や、支援方法が含まれる。
【0034】
以下に、本人状況とアクションとの関係を例示するが、これらに限定されるものではない。
本人状況として「歩行による移動」に対しては、アクションとして、周囲への存在通知が関連付けられている。
本人状況として「防衛」と「事故」に対しては、アクションとして、周囲への救援要請(事故)が関連付けられている。
本人状況として「事件」に対しては、アクションとして、周囲への救援要請(事件)が関連付けられている。
【0035】
また、周囲状況として、「(要配慮者の所在地における)災害や事件・事故の発生」に対しては、アクションとして本人通知、支援サーバ30への通知が関連付けられている。
【0036】
次に、図3を用いて、協力補助方法における処理の概略を説明する。
まず、白杖10の制御部11は、モーション検知処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、制御部11の本人状況特定部111は、センサ部13から、白杖10の動き(加速度の変化)を取得する。そして、制御部11の本人状況特定部111は、記憶部12に記録された第1辞書121を用いて、加速度の変化に応じた検出パターンを特定し、検出パターンに対応するモーションを特定する。
【0037】
次に、白杖10の制御部11は、本人状況特定処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、制御部11の本人状況特定部111は、場所特定部14から所在地や所在時刻を特定する。また、制御部11の本人状況特定部111は、記憶部12に記録された第2辞書122を用いて、モーションに対応する本人状況を特定する。
【0038】
図4(a)に示すように、例えば、本人状況501として、要配慮者の所在地、所在時間帯、滞在時間、モーション、意図を特定する。更に、所在履歴情報の所在地及び時刻や曜日・祝祭日での経験頻度から、現況に対する要配慮者の習熟度を推定し、本人状況に加える。なお、要配慮者の習熟度は、要配慮者の移動速度によって評価することも可能である。具体的には、移動速度が基準速度以上の場合に習熟度が高いと判定する。また、第2辞書122を用いて、モーションに対応する本人状況を特定する。
【0039】
更に、白杖10の制御部11は、周囲状況の取得処理を実行する(ステップS1-3)。具体的には、制御部11の周囲状況特定部112は、通信部16を介して、周囲状況に関する情報を取得する。
【0040】
図4(b)に示すように、例えば、制御部11は、近傍のモバイル端末20を検出することにより、要配慮者の近傍に所在する周辺者の存在を特定する。この場合には、ピア・ツー・ピアネットワークを利用して、モバイル端末20の有無を周囲状況502として取得する。また、制御部11は、場所特定部14において特定した所在地に基づいて、通信部16を介して、周囲状況に関する情報を取得する。例えば、制御部11は、要配慮者の所在地に関連する周囲情報を、インターネットを介して取得する。周囲情報としては、混雑情報、イベントの開催状況情報や開催イベントの終了(所定の時間後に駅が混雑することが予測される)等のイベント状況、災害情報や事件・事故情報を周囲状況として取得する。
【0041】
次に、白杖10の制御部11は、判定処理を実行する(ステップS1-4)。具体的には、制御部11の情報発信部113は、記憶部12に記録された第3辞書123を用いて、本人状況及び周囲状況に基づいて、アクションの要否を判定する。
【0042】
次に、白杖10の制御部11は、アクション処理を実行する(ステップS1-5)。具体的には、制御部11の情報発信部113は、第3辞書123において、本人状況及び周囲状況に関連付けられたアクション(通知)処理を実行する。
【0043】
図4(c)に示すように、通知内容には、存在通知や援助要請等がある。また、通知先には、他人(周囲の任意者や特定者、支援サーバ30等)や本人が含まれる。
例えば、要配慮者の所定範囲に、モバイル端末20を使用している他者(周辺者)が存在する場合には、アクション503として、ピア・ツー・ピアネットワークを介して、モバイル端末20に対して、要配慮者が近くにいること(存在通知)を送信する。この場合、モバイル端末20は、要配慮者が近づいていることを示すメッセージを出力する。
【0044】
また、周囲状況として災害情報や事件・事故情報を取得した場合には、アクションとして、支援サーバ30に、援助要請を送信したり、要配慮者本人に注意喚起情報を通知したりする。
周囲状況として混雑情報や混雑予測情報を取得した場合には、アクションとして、要配慮者に注意喚起情報を通知する。また、支援サーバ30は、要配慮者がいる施設のスタッフに、援助要請を送信する。施設スタッフが見当たらない場合は、要配慮者の近くにいる援助可能者を特定し、この援助可能者に対して、援助要請を送信する。また、白杖10の制御部11は、通知部15により、要配慮者に対する注意喚起メッセージを出力する。
【0045】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、白杖10の制御部11は、モーション検知処理(ステップS1-1)、本人状況特定処理(ステップS1-2)を実行する。これにより、白杖10の動きにより、本人状況を特定し、援助が必要な要配慮者を効率的に支援することができる。
【0046】
(2)本実施形態においては、白杖10の制御部11は、周囲状況の取得処理を実行する(ステップS1-3)。これにより、要配慮者において発生するリスク事象(例えば、他人との衝突やトラブルの発生、混雑に入り込む等)を予測し、要配慮者を効率的に支援することができる。
【0047】
(3)本実施形態においては、白杖10の制御部11は、判定処理(ステップS1-4)、アクション処理(ステップS1-5)を実行する。これにより、要配慮者の周辺者や援助可能者や施設スタッフに対して協力を要請することができる。特に、周囲状況として災害情報や事件・事故情報を取得した場合には、アクションとして、支援サーバ30に、援助要請を送信したり、要配慮者本人に注意喚起情報を通知したりするので、要配慮者が災害や事件・事故等に巻き込まれることを抑制できる。
【0048】
(4)本実施形態においては、第3辞書には、状況・意図に応じたアクションが記録されている。そして、所在地やタイミングに応じた要配慮者の経験頻度を算出し、この経験頻度に基づいて予測した「現況に対する習熟度」に応じて、アクションを変更する。例えば、「自宅最寄り駅」や「習熟度の高い状況」では存在通知は行なわない等、所在位置や時間、現況に対する習熟度に関連付けて、アクションを記録することにより、要配慮者に対し、より適切かつ快適な支援を行なうことができる。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、白杖10(デバイス)を用いて、視覚障害者等の要配慮者を支援する場合を想定する。要配慮者は視覚障害者に限定されるものではなく、また要配慮者が用いるデバイスも白杖に限定されるものではない。例えば、障害や怪我等で身体が不自由な場合に使用する松葉杖や車椅子を用いるようにしてもよい。更に、他の障害者や外国人等の社会的環境的弱者が保持するユーザ端末(モバイル端末やウエアラブル端末)を用いるようにしてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、ピア・ツー・ピアネットワークを利用して、モバイル端末20と通信を行なう。この場合、通信方法は、ピア・ツー・ピアネットワークに限定されるものではない。例えば、「Wi-Fi(登録商標)」等の無線LANや携帯電話網を利用してもよい。
【0051】
・上記実施形態では、デバイスとしての白杖10は、制御部11、記憶部12、センサ部13、場所特定部14、通知部15、通信部16を備える。デバイスの構成は、これに限定されるものではない。例えば、白杖10と要配慮者が携帯しているスマートフォン等のユーザ端末とを連動させてもよい。この場合には、白杖10には、センサ部13、通信部16のみを設け、ユーザ端末には、制御部11、記憶部12、場所特定部14、通知部15、通信部16を備える。そして、ユーザ端末が、センサ部13から取得した検出パターンに基づいてモーションを特定し、本人状況を特定する。そして、ユーザ端末が、本人状況や周囲状況に基づいて、各種通知を行なう。
【0052】
また、白杖10(デバイス)が、要配慮者が保持するユーザ端末を経由して、モバイル端末20、支援サーバ30、情報サーバ40と通信を行なうようにしてもよい。例えば、白杖10(デバイス)から取得した情報と、ユーザ端末において特定した本人状況とを用いてアクションを決定し、モバイル端末20、支援サーバ30に対する通知処理を実行する。この場合には、ユーザ端末に第1辞書~第3辞書を保持させておく。また、ユーザ端末が情報サーバ40から情報を取得し、白杖10(デバイス)に通知するようにしてもよい。
【0053】
また、白杖10と支援サーバ30とを連動させてもよい。この場合には、支援サーバ30が、センサ部13から取得した検出パターンに基づいてモーションを特定し、本人状況を特定する。そして、支援サーバ30が、本人状況や周囲状況に基づいて、各種通知を行なう。この場合には、支援サーバ30に第1辞書~第3辞書を保持させておく。
【0054】
・上記実施形態では、白杖10の制御部11は、アクション処理を実行する(ステップS1-5)。この場合、通知先として、要配慮者を支援することができるスキルや能力を有する援助可能者を選択して、通知を送信するようにしてもよい。このため、例えば、周辺者のモバイル端末20に、スキルや能力に関する情報を記録しておく。そして、支援要請に対して、スキルや能力が記録されたモバイル端末20に、支援要請メッセージを出力する。
・上記実施形態では、白杖10の制御部11は、判定処理(ステップS1-4)、アクション処理(ステップS1-5)を実行する。ここで、周囲状況として災害情報や事件・事故情報、混雑情報や混雑予測情報を取得した場合には、アクションとして、支援サーバ30に、援助要請を送信したり、要配慮者本人に注意喚起情報を通知したりする。この場合、災害や事件・事故、混雑の状況に応じて、援助要請の方法を決定するようにしてもよい。例えば、災害情報や事件・事故情報に含まれる情報(例えば、キーワード)に対して危急レベルを決定する危急辞書を、白杖10に備えておく。そして、危急辞書を用いて決定した危急レベルに応じたアクション(通知先)を、第3辞書を用いて決定する。
また、上記実施形態では、要配慮者の所定範囲に、モバイル端末20を使用している他者(周辺者)が存在する場合には、アクションとして、ピア・ツー・ピアネットワークを介して、モバイル端末20に対して、要配慮者が近くにいること(存在通知)を送信する。ここで、通知方法は、無線通信に限定されるものではない。例えば、白杖10が、音や発光で存在通知や援助要請を出力するようにしてもよい。この場合には、白杖10に設けられた音出力部(スピーカ、ベル等)や、発光部(ライト等)を用いる。そして、第3辞書を用いて、周囲状況に応じて、通知方法(音や光等)、通知レベル(音量、リズムや発光量)を決定する。ここでは、危急辞書を用いて特定した危急レベルが高いほど、注意喚起しやすい大音量、リズムパターン、輝度、点滅パターン等を用いる。この場合、周囲者を通知先として特定し、音出力部や発光部が情報発信部として機能する。
【0055】
また、所定範囲(例えば進行方向)の周辺者のみのモバイル端末20に、メッセージを出力するようにしてもよい。この場合には、要配慮者の進行方向を特定し、この進行方向に所在する周辺者のモバイル端末20のみにメッセージを出力する。
【0056】
・上記実施形態では、白杖10のセンサ部13は、加速度により動きを検出する。要配慮者の状況を検出することができれば、加速度センサに限定されるものではない。
・上記実施形態では、白杖10の場所特定部14は、GPS機能を用いて、要配慮者の所在地を特定する。要配慮者の所在地を特定できる方法であれば、GPS機能に限定されるものではない。例えば、無線LANのアクセスポイントやビーコン、地磁気を用いた屋内測位システム等を用いて、所在地を特定することも可能である。
また、所在地は地点や位置だけでなく、駅、駅内の特定のホーム、ホーム内の特定のエレベータやドア付近等、施設や施設内の特定エリアによって区分することも可能である。
【0057】
・上記実施形態では、記憶部12には、第1辞書~第3辞書が記録される。第1辞書には、検出パターンに対して、モーションが記録されている。第2辞書には、モーションに対して、本人状況が記録されている。第3辞書には、状況・意図に対して、アクションが記録されている。各辞書の構成や使い方は、上記に限定されるものではない。例えば、モーションと周囲状況とを組み合わせてアクションを決定したり、本人状況・意図と周囲状況とを組み合わせてアクションを決定したりしてもよい。
・上記実施形態では、手続型処理にて実施した。これは「モーション検知」や「(予め規定された留意すべき)周囲状況検知」を起点としたイベントドリブン型処理であってもよい。また、状態遷移型処理や、これらを組み合わせて処理してもよい。
【0058】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記デバイスは白杖であることを特徴とする協力補助システム及び協力補助方法。
(b)前記ユーザの所在履歴情報に基づいて、ユーザの現況に対する習熟度を算出し、前記習熟度に基づいて、ユーザ状況を特定することを特徴とする(a)に記載の協力補助システム及び協力補助方法。
(c)前記ユーザの移動速度に基づいて、ユーザの現況に対する習熟度を算出し、前記習熟度に基づいて、ユーザ状況を特定することを特徴とする(a)、(b)に記載の協力補助システム及び協力補助方法。
【符号の説明】
【0059】
10…白杖、11…制御部、111…本人状況特定部、112…周囲状況特定部、113…情報発信部、12…記憶部、121…第1辞書、122…第2辞書、123…第3辞書、13…センサ部、14…場所特定部、15…通知部、16…通信部、20…モバイル端末、30…支援サーバ、40…情報サーバ。
図1
図2
図3
図4