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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】シートベルト誤操作防止具
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/48 20060101AFI20220829BHJP
   A44B 11/26 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B60R22/48
A44B11/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018181573
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020050140
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】518344391
【氏名又は名称】佐々木 綱柄
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 綱柄
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第3017583(FR,A1)
【文献】英国特許出願公開第2335228(GB,A)
【文献】米国特許第6769157(US,B1)
【文献】米国特許第9199604(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0101558(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0036687(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/48
A44B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体に取り付けられたタングプレートを、車体側に取り付けられたバックルに差し込んで、着座者の身体をシートに拘束するようにしたシートベルトのバックルに設けられ、バックルの解除ボタンを誤って押すことがないようにしたシートベルト誤操作防止具であって、
このシートベルト誤操作防止具は、バックルの解除ボタンを覆うようにカバーし、解除ボタンの押込み操作を阻む偏平状の誤操作防止本体と、この誤操作防止本体を通して解除ボタンを押し込み、シートベルトによる拘束を解除する解除ボタン押込具とを具えるものであり、
また前記誤操作防止本体には、前記タングプレートの先端部を挿通させるタング挿通孔と、誤操作防止本体の外部に連通するベルト係止開口を有したベルト係止孔と、解除ボタン押込具を差し込むための押込具挿通孔とが形成され、
誤操作防止本体の非使用時には、前記ベルト係止開口を通してベルト本体をベルト係止孔に収め、誤操作防止本体をシートベルトに係止させ得る構成であることを特徴とするシートベルト誤操作防止具。

【請求項2】
前記誤操作防止本体には、複数のタング挿通孔が形成され、そのうち少なくとも一つが押込具挿通孔と兼用され、且つ複数のタング挿通孔のうち少なくとも一つがベルト係止孔と兼用されることを特徴とする請求項1記載のシートベルト誤操作防止具。

【請求項3】
前記解除ボタン押込具には、非使用時にシートベルトのベルト本体に取り付けるための被取付部が設けられることを特徴とする請求項1または2記載のシートベルト誤操作防止具。

【請求項4】
前記偏平状の誤操作防止本体には、周端縁に垂れ下げ状の返しが設けられ、この返しによってバックルの上方が取り囲まれるように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のシートベルト誤操作防止具。

【請求項5】
前記偏平状の誤操作防止本体には、バックルの正面側を閉塞する正面閉塞板が設けられることを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項記載のシートベルト誤操作防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載されるシートベルト用の安全器具に関するものであり、特にシートベルト装着時にバックルをカバーするように設け、バックルに嵌め込んだタングプレートの不用意な解除を防止するようにした新規なシートベルト誤操作防止具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
シートベルトSBは、一例として図1(a)に示すように、自動車等に搭乗した着座者Mの身体をシートSに拘束(固定)することで、万一の事故等による激しい衝撃を受けても、着座者(搭乗者)Mが座席外へ投げ出されてしまうことがないようにしたベルト状の安全装置である。また、この種のシートベルトSBは、繰出し長さが調整可能なベルト本体Rと、このベルト本体Rに取り付けられるタングプレート(掛止金具)Tと、車体側に固定設置されるバックルUとを具えて成り、シートベルト装着時には、タングプレートTの先端部をバックルUに差し込んで両者の保持固定を図り(ロックし)、着座者Mの身体をシートSに拘束するものである。もちろん、シートベルトSBによる拘束を解除するには、バックルUに設けられた解除ボタンU2(図1(b)参照)を押して前記ロックを解除し、タングプレートTをバックルUから取り外すものである。
【0003】
ところで、例えば自動車等に乗る人は種々想定され、例えば児童や痴呆症患者あるいは知的障がい者なども乗車することがあり、このような人達が、走行中に誤ってシートベルトSB(バックルU)の解除ボタンU2を押してしまい、バックルUに嵌め込んでいたタングプレートTが外されてしまう(シートベルトSBによる拘束が解除されてしまう)ことがあった。
このため、このような誤操作(誤解除)を防止するための器具が既に提案されている(例えば特許文献1・2参照)。
ここで上記特許文献1・2は、基本的にタングプレートTを差し込むバックルUの底部以外をケーシング状のカバー体で覆い、解除ボタンU2を誤って押させないようにする着想であり、操作を阻むために当該解除ボタンU2を閉塞(隠蔽)するという思想は極めて分かり易く、且つ合理的な考え方と言える。
【0004】
しかしながら、バックルUの外形を全体的に覆うようなケーシング状のカバー体では、実用上はカバー体が嵩張ってしまい、狭い車内等では非使用時における収納場所に困ることがあった。
また、このような誤操作防止器具(上記カバー体)は、シートベルト装着時には、すぐ使いたいことから、収納場所としても直ぐに取り出せることが求められる。具体的には、例えば、誤操作防止器具をダッシュボードに収納することは容易に想到し得るが、小型の乗用車でも4、5人が乗車定員であるため、この定員数分の誤操作防止器具(しかも嵩張るもの)を常にダッシュボードに収納しておくのは、限られたダッシュボード空間を考えると現実的でない。
また、フロント側にあるダッシュボードに定員数分の誤操作防止器具を収容する形態では、後部座席に座る人は、乗降の都度(シートベルトSBの装着・解除の都度)、フロント側のダッシュボードに収納したり、ここから取り出したりすることになり、使い勝手としては好ましくない。
このようなことから、器具自体において嵩張ることがなく、より使い勝手のよいシートベルト誤操作防止具の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-287620号公報
【文献】特開2010-207256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、シートベルト装着時においては容易に使用でき、且つ非使用時には容易に収納できるようにした、極めて使い勝手のよいシートベルト誤操作防止具の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず請求項1記載のシートベルト誤操作防止具は、
ベルト本体に取り付けられたタングプレートを、車体側に取り付けられたバックルに差し込んで、着座者の身体をシートに拘束するようにしたシートベルトのバックルに設けられ、バックルの解除ボタンを誤って押すことがないようにしたシートベルト誤操作防止具であって、
このシートベルト誤操作防止具は、バックルの解除ボタンを覆うようにカバーし、解除ボタンの押込み操作を阻む偏平状の誤操作防止本体と、この誤操作防止本体を通して解除ボタンを押し込み、シートベルトによる拘束を解除する解除ボタン押込具とを具えるものであり、
また前記誤操作防止本体には、前記タングプレートの先端部を挿通させるタング挿通孔と、誤操作防止本体の外部に連通するベルト係止開口を有したベルト係止孔と、解除ボタン押込具を差し込むための押込具挿通孔とが形成され、
誤操作防止本体の非使用時には、前記ベルト係止開口を通してベルト本体をベルト係止孔に収め、誤操作防止本体をシートベルトに係止させ得る構成であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載のシートベルト誤操作防止具は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記誤操作防止本体には、複数のタング挿通孔が形成され、そのうち少なくとも一つが押込具挿通孔と兼用され、且つ複数のタング挿通孔のうち少なくとも一つがベルト係止孔と兼用されることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載のシートベルト誤操作防止具は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記解除ボタン押込具には、非使用時にシートベルトのベルト本体に取り付けるための被取付部が設けられることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載のシートベルト誤操作防止具は、前記請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記偏平状の誤操作防止本体には、周端縁に垂れ下げ状の返しが設けられ、この返しによってバックルの上方が取り囲まれるように構成されることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載のシートベルト誤操作防止具は、前記請求項1、3、4のいずれか1項記載の要件に加え、
前記偏平状の誤操作防止本体には、バックルの正面側を閉塞する正面閉塞板が設けられることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0012】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
すなわち請求項1記載の発明によれば、誤操作防止本体は、解除ボタンの押込み操作を阻む偏平状部材が主となり、例えば一枚の板材で形成することができる。このため誤操作防止本体として、極めてシンプルな構成が採れ、収納場所としても大きなスペースを必要としない。
また、誤操作防止本体にはベルト係止孔が形成されるため、非使用時に誤操作防止本体をシートベルト(ベルト本体)に係止させておくことができ、収納場所を別途確保する必要もない。
また、本発明では解除ボタン押込具を具えるとともに、誤操作防止本体には押込具挿通孔が形成されるため、誤操作防止本体で解除ボタンをカバーした状態でも解除ボタン押込具を押込具挿通孔から差し込むことで確実にシートベルトの解除操作が行える。
【0013】
また請求項2記載の発明によれば、誤操作防止本体には複数のタング挿通孔が形成され、このタング挿通孔をベルト係止孔や押込具挿通孔と兼用にするため、誤操作防止本体には同じ大きさの孔(タング挿通孔)を複数形成すればよく、またどの孔(タング挿通孔)をどの孔(ベルト係止孔・押込具挿通孔)と兼用にするのかという選択により、一種の誤操作防止本体でも色々なバックル(シートベルト)に適用することができる。
【0014】
また請求項3記載の発明によれば、解除ボタン押込具は、被取付部を具えるため、非使用時には、この被取付部を利用してベルト本体に取り付けておくことができる。このため解除ボタン押込具の収納場所が明確になり(収納場所を別途確保する必要がなく)、また非使用時(収納時)における紛失の心配もほとんどない。
【0015】
また請求項4記載の発明によれば、偏平状の誤操作防止本体には、周端縁に垂れ下げ状の返しが設けられるため、シートベルトの誤操作(誤解除)をより確実に防止することができる。すなわち、一定厚さの板部材のみで誤操作防止本体を形成した場合、このものでバックル上部を塞ぐようにカバーしても、バックルの大きさや形状あるいはタングプレートの嵌込状況等によっては、誤操作防止本体が多少傾倒しまい(ガタ付いてしまい)、この隙間から指先が解除ボタンに届いてしまうことが考えられるが、上記返しの存在により、誤操作防止本体が多少傾倒しても、指先の進入を防止することができる。
【0016】
また請求項5記載の発明によれば、偏平状の誤操作防止本体には、バックルの正面側を閉塞する正面閉塞板が設けられるため、例えば解除ボタンがバックルの正面側に存在するシートベルト(バックル)でも、シートベルトの誤操作(誤解除)を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のシートベルト誤操作防止具(一例)を適用したシートベルトをシートとともに示す斜視図(a)、並びにシートベルト誤操作防止具の誤操作防止本体周辺を拡大して示す斜視図(b)である。
図2】同上シートベルト誤操作防止具の一例を、シートベルトの装着状態(タングプレートをバックルに嵌め込んだ状態)で示す斜視図である。
図3】誤操作防止本体の一例を示す平面図及び断面図(a)、並びに誤操作防止本体の種々の改変例を示す平面図(b)~(c)である。
図4】誤操作防止本体の周端縁に垂れ下げ状の返しを設けた改変例を示す斜視図(a)、並びに断面図(b)、並びに誤操作防止本体が浮き上がった状態を示す断面図(c)、並びに返しを誤操作防止本体の平板部(天面部)とは異なる素材で形成した改変例を示す断面図(d)である。
図5】ベルト係止開口(ベルト係止孔)を異ならせた誤操作防止本体の改変例を種々示す平面図である。
図6】押込具挿通孔を専用孔とし、タング挿通孔と兼用しないようにした誤操作防止本体の改変例を示す平面図(a)、並びに兼用孔(タング挿通孔)を複数形成した場合、使用しない兼用孔をダミープラグで閉鎖するようにした改変例を示す斜視図(b)である。
図7】バックルの正面側を閉塞する板状部材を設けた誤操作防止本体の改変例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
【実施例
【0019】
以下、本発明のシートベルト誤操作防止具1の説明に先立ち、本発明が適用されるシートベルトSBから説明する。
シートベルトSBは、例えば自動車等においてシートSに座った着座者Mを、シートSに拘束(固定)するようにした安全装置であり、着座者Mの肩と腰で身体を拘束するタイプの三点式シートベルトが一般に多く採用されている。
このものは、一例として図1に示すように、繰出し長さが適宜調整し得るベルト本体Rと、このベルト本体Rに取り付けられるタングプレート(掛止金具)Tと、車体側に固定設置されるバックルUとを具えて成り、シートベルト装着時には、タングプレートTをバックルUに差し込んでロックし、身体をシートSに拘束するものである。また、シートベルトSBによる拘束を解除するには、例えばバックルUのバックル本体U1内に設けられた解除ボタンU2を着座者Mが下方等に押し込んで(操作して)前記ロック状態を解除し、タングプレートTをバックルUから取り外すものである。
ここで、図中符号U3は、タングプレートT(特に先端部)を嵌め入れるためのタング受入孔である。また、図中符号Fは、バックル本体U1を車体側に固定設置するためのプレート状やロッド状またはバンド状等のバックル固定杆であり、バックル本体U1は、このバックル固定杆Fに対し回動自在に取り付けられることが好ましい。
【0020】
また、バックルU(バックル本体U1)は、全体的な外形状が、図示のように直方体状を成し、この内側上部に解除ボタンU2が上下動自在に組み込まれた構造である。また、解除操作は、上述したように着座者Mがこの解除ボタンU2を上方から下方に押し込むようにして行うものであり、以下の説明では、このようなバックルUを基本的構造として説明する。また、解除ボタンU2はバックル本体U1の一側面(シートベルトSBで固定される着座者Mから視て外側面がわ)に寄った位置に設けられ、この面をバックルUの正面側とする(右ハンドル車の場合、運転席に座ったドライバーから視ると、ドライバーの左外側面、つまり助手席を向いた面が、バックルUの正面となり、助手席に座った搭乗者から視ると、その搭乗者の右外側面、つまり運転席を向いた面が、バックルUの正面側となる)。
【0021】
そして、本発明のシートベルト誤操作防止具1は、このようなシートベルトSBに適用されるものであり、シートベルト装着時に、バックルUの解除ボタンU2、特にその操作方向となる上方をカバーする(閉鎖する)ように設けられ、このシートベルト誤操作防止具1を通してタングプレートTをバックルU(タング受入孔U3)に差し込むことで、解除ボタンU2の上方に載せたシートベルト誤操作防止具1を保持固定するようにしている。すなわち、タングプレートTをバックルUのタング受入孔U3に差し込むことにより、両者の間に設けられたシートベルト誤操作防止具1が、ガタつきがほとんどない安定した状態となり、解除ボタンU2の押し込み操作を阻むものである。このように、タングプレートTをタング受入孔U3に差し込んだ状態では、シートベルト誤操作防止具1によって、解除ボタンU2の押し込み操作(不用意な操作)が行えなくなり(指先が解除ボタンU2に届かなくなり)、このために特に児童、痴呆症患者、知的障がい者等が走行中に誤ってシートベルトSBを外してしまうのを防止するものである。
【0022】
以下、シートベルト誤操作防止具1について更に説明する。
シートベルト誤操作防止具1は、一例として図1図2に示すように、バックルUの解除ボタンU2を実質的にカバーするように設置される誤操作防止本体2と、この誤操作防止本体2を貫通させて解除ボタンU2を押し込むようにする解除ボタン押込具3とを具えて成る。
以下、各部材毎に説明する。
まず誤操作防止本体2は、一例として図1図3(a)に示すように、ほぼ一定厚さの板材から形成され、平面から視た外形状は、ほぼ矩形状に形成される。この誤操作防止本体2には、前記タングプレートTの差込先端部を挿通させるタング挿通孔21と、誤操作防止本体2をシートベルトSBのベルト本体Rに係止させるためのベルト係止孔22と、解除ボタン押込具3を貫通させるための押込具挿通孔23とが形成される。
このうちベルト係止孔22には、誤操作防止本体2の外部に連通するベルト係止開口22aが設けられ、シートベルト誤操作防止具1の非使用時には、このベルト係止開口22aを通してベルト本体Rをベルト係止孔22に収め、誤操作防止本体2をベルト本体Rに係止保持させ得る構造となっている(図1参照)。
【0023】
なお、タング挿通孔21については、少なくともタングプレートTの差込部(平面視断面)よりも大きな寸法に形成され、このものの貫通を許容する寸法設定となっている。
またベルト係止孔22については、少なくともベルト本体Rを収容し得る寸法設定となっている。具体的には、長孔状を成すベルト係止孔22の長手方向寸法は、ベルト本体Rの幅寸法よりも大きな寸法に形成される。
更にまた押込具挿通孔23については、少なくとも解除ボタン押込具3の貫通を許容する大きさに形成されるものの、人(特に児童)の指先が通らない大きさに形成される。因みに、本実施例では、押込具挿通孔23も長孔状に形成しているが(後述するように本実施例ではタング挿通孔21と兼用としたため長孔状として図示)、押込具挿通孔23そのものの形状は必ずしも長孔状である必要はなく、例えば円形等でも構わない。
【0024】
因みに、本実施例では、図示のように、タング挿通孔21・ベルト係止孔22・押込具挿通孔23が、全てほぼ同じ長孔状として形成されており、これは各孔を兼用するためである(このため兼用孔と称することがある)。これは換言すれば、誤操作防止本体2に、複数のタング挿通孔21を形成し(ここでは三カ所)、そのうちの少なくとも一つを押込具挿通孔23と兼用し、且つ複数のタング挿通孔21のうちの少なくとも一つをベルト係止孔22と兼用する思想とも言える。もちろん、このような兼用思想では、シートベルトSBの解除操作を行う際には、複数存在する兼用孔(タング挿通孔21)のうちタングプレートTを挿通していないタング挿通孔21を押込具挿通孔23として利用することになる(図2参照)。また、シートベルトSBの装着時、上記図1では、ベルト係止孔22にタングプレートTを嵌め込むように図示しており、タング挿通孔21とベルト係止孔22とが兼用となっている。
そして、このような兼用孔の思想によって、誤操作防止本体2には同じ大きさの孔(タング挿通孔21)を複数形成すればよく、またどの孔(タング挿通孔21)をどの孔(ベルト係止孔22・押込具挿通孔23)と兼用にするのかという選択により、一種の誤操作防止本体2でも色々なバックルU(シートベルトSB)に適用することができるものである。
【0025】
また、誤操作防止本体2としては、ステンレス等の金属素材や合成樹脂素材の適用が可能である。因みにステンレス等の金属素材を適用した場合には、タング挿通孔21等の孔開け加工は、レーザーによる孔開け加工で行うことができる。また合成樹脂素材の場合には、金型による型成形によってタング挿通孔21等の孔を形成することができる。
【0026】
次に、解除ボタン押込具3について説明する。
解除ボタン押込具3は、上記のようにシートベルトSBによる拘束(固定)を解除するために、押込具挿通孔23(ここではタング挿通孔21と兼用であるため、タングプレートTが挿通されていないタング挿通孔21)に先端を押し込み、解除ボタンU2を押し下げる器具である。この解除ボタン押込具3は、一例として図2に示すように、ほぼ一定の厚み寸法を有する細長い舌片状を呈し、先端で解除ボタンU2を押し込むものである(ここを押込先端部31とする)。
もちろん、解除ボタン押込具3(少なくとも押込先端部31)は、前記押込具挿通孔23(ここでは兼用のタング挿通孔21)を貫通可能な寸法に形成される。なお、解除ボタン押込具3も、適宜の金属素材や合成樹脂素材によって形成され得る。
【0027】
また、解除ボタン押込具3も解除ボタンU2を押し込むとき以外は使用しないため、例えば図2に示すように、押込先端部31の対向側にクリップ部等の被取付部32を設けてておくことが好ましく、例えばこのクリップ部(被取付部32)でベルト本体Rを挟むようにしておくことで、使用にあたって直ぐにベルト本体Rから取り外すことができ、且つ非使用時において無くしてしまう心配もないものである。
なお、被取付部32は、クリップ部以外にも種々の形態が採り得、例えば面ファスナーの利用が可能である。具体的には、例えばベルト本体Rと解除ボタン押込具3の双方に面ファスナーを設けておき、これを利用して解除ボタン押込具3をベルト本体Rに着脱自在に取り付けることができる。
また、これ以外にもマグネットを利用した形態が可能である。具体的には、例えばベルト本体Rと解除ボタン押込具3の双方に、互いに吸着し合うマグネットを設けておき、この磁力を利用して解除ボタン押込具3をベルト本体Rに着脱自在に取り付けることが可能である。
【0028】
本発明のシートベルト誤操作防止具1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、その作動態様について説明する。なお、説明にあたっては、シートベルトSBの装着動作とシートベルトSBの解除動作に分けて説明する。
〈シートベルトの装着動作〉
(1)シートベルト装着前
まず、シートベルト装着前の状態は、例えば図1(b)に示すように、誤操作防止本体2がベルト本体Rに係止されているものとする。この状態では、ベルト係止孔22(ここではタング挿通孔21と兼用のため、ベルト係止開口22aが形成されたタング挿通孔21とも言える)にベルト本体Rが通されており、上記係止状態が実現されている。
そして、このような状態から、まず誤操作防止本体2をベルト本体Rから取り外すものであり、これにはベルト係止開口22aを利用してベルト係止孔22(タング挿通孔21)からベルト本体Rを外し、係止状態を解除する。
なお、本発明においては、ベルト係止孔22には少なくともベルト係止開口22aを設けるものの、必ずしも非使用時に誤操作防止本体2をベルト本体Rに係止する必要はない。要は、長時間(長期)にわたって非使用状態が続くときに、誤操作防止本体2を無くしてしまわないように、また破損してしまわないようにすべく、誤操作防止本体2をベルト本体Rに係止しておくことができるようにしたものである。
【0029】
(2)シートベルト装着
その後、ベルト本体Rから取り外した誤操作防止本体2をバックルUの上方に載置するようにあてがい、解除ボタンU2をカバーする(隠す)。この誤操作防止本体2によって、当然ながら解除ボタンU2の操作が阻まれるものであり、なお且つ押込具挿通孔23とと解除ボタンU2とが平面視状態でほぼ合致するように誤操作防止本体2が設けられる(少なくとも、その後に行う解除操作において、解除ボタン押込具3を押し込んだときに、解除ボタンU2の押し込みが成されるように両者を合わせる)。
【0030】
(3)タングプレートの差し込み
次いで、誤操作防止本体2のタング挿通孔21(図1図2では兼用のためベルト係止孔22)を通してタングプレートTを差し込む。この操作は、タングプレートTの先端部が、バックルUのタング受入孔U3に嵌め込まれるまで行われる。そして、この嵌め込みによってタングプレートTがバックルUに保持・ロックされ、シートベルトSBによる着座者Mの拘束(固定)が成される。
また、タングプレートTをタング受入孔U3に嵌め込むことによって誤操作防止本体2は、上記のようにバックルUの上部で、ほぼガタ付きのない安定した取付状態となる。
なお、図1(b)では、ベルト係止開口22aが形成されたベルト係止孔22にタングプレートTを挿通するように示したが、タングプレートTを挿通する孔としては、他の孔(タング挿通孔21)でも構わない。要は、誤操作防止本体2を通してタングプレートTをタング受入孔U3に嵌め込んだ際に、押込具挿通孔23と解除ボタンU2とがほぼ合致するような位置を選んで、タングプレートTの差込み孔を選定するものである。
因みに、通常ドライバーは、運転中、無意識のうちに解除ボタンU2を押してしまうことはないため(シートベルトSBによる拘束を解除してしまうことはないため)、ドライバーについては本誤操作防止本体2をバックルUに装着する必要はないかも知れない。しかしながら、児童、痴呆症患者、知的障がい者などを搭乗させる場合には、これらドライバー以外の搭乗者が運転席の解除ボタンU2を不用意に操作してしまうことも想定されるため、ドライバーの運転席についても、本誤操作防止本体2を装着して他者による誤操作を防ぐことが好ましい。
【0031】
〈シートベルトの解除動作〉
(1)シートベルト解除前
シートベルト解除前の状態は、一例として図2に示すように、タングプレートTが誤操作防止本体2を通してバックルU(タング受入孔U3)に嵌め込まれ、ロックされた状態である。この状態では、誤操作防止本体2が、タングプレートTとバックルUとの間に挟み込まれ、保持された安定状態となっている。
一方、解除ボタン押込具3は、上記図2に示すように、クリップ部(被取付部32)によってベルト本体Rに係止された(取り付けられた)状態となっている。
【0032】
(2)シートベルト解除
このような状態からシートベルトSBによる拘束を解除するには、まず解除ボタン押込具3をベルト本体Rから取り外し(係止状態を解除させ)、この解除ボタン押込具3を、解除ボタンU2の上方に位置する押込具挿通孔23(ここでは兼用のタング挿通孔21)に差し込む。これにより解除ボタンU2が下方に押し込まれ、タングプレートTがバックルUから分離し、シートベルトSBによる拘束が解除される。
なお、上記図2では、解除ボタン押込具3を中央のタング挿通孔21(押込具挿通孔23)に差し込むように図示しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、平面から視て解除ボタン押込具3に合った位置のタング挿通孔21(押込具挿通孔23)に差し込めばよいものである。
【0033】
(3)シートベルト解除後
このようにしてシートベルトSBの拘束を解除した後、今度は、解除ボタン押込具3と誤操作防止本体2とをベルト本体Rに係止させるものである(図1図2参照)。
なお、解除ボタン押込具3をベルト本体Rに係止させるには、クリップ部(被取付部32)を利用するものであり、誤操作防止本体2をベルト本体Rに係止させるには、ベルト本体Rを多少変形させながら、このものをベルト係止開口22aからベルト係止孔22(ここでは兼用のタング挿通孔21)内に収めるようにするものである。因みに、本実施例では、ベルト係止開口22aが、ベルト係止孔22の端部寄りの位置に形成されるため、ベルト本体Rをベルト係止孔22に収容し易い構造となっている。すなわち、誤操作防止本体2をベルト本体Rに係止する際には、ベルト本体Rをそれほど変形させなくても(例えば、強固な力でベルト本体Rを二つ折り状態にしなくても)、ベルト本体Rをほぼ一方通行状態で移動させるだけでベルト係止孔22内に収めることができる。
【0034】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず上述した基本の実施例では、図3(a)に示すように、タング挿通孔21を三カ所形成したものを示したが(ベルト係止孔22や押込具挿通孔23と兼用)、タング挿通孔21の数はこれに限定されるものではなく、例えば図3(b)に示すように、四カ所以上形成することも可能である。なお、タング挿通孔21(兼用孔)の数を増やすことで、一基の誤操作防止本体2でもより多くのバックルU(車種)に適用することができるものである。
また、上述した基本の実施例では、複数のタング挿通孔21(タング挿通孔21・ベルト係止孔22・押込具挿通孔23)は、基本的に全て同じ大きさ及び形状に形成したが、例えば図3(c)に示すように、大きさや形状を異ならせることが可能であり、これもより多くのバックルUに適合させることを想定した構造である。
また、上述した基本の実施例では、誤操作防止本体2の平面視外形は、概ね矩形状を成すように示したが、例えば図3(d)に示すように、長円状(小判型)に形成することも可能である。
【0035】
また上述した基本の実施例では、誤操作防止本体2として、ほぼ一定の厚み寸法を有する板材で形成したものを図示しており、これ自体、極めてシンプルな構成となり、製作もし易く合理的である。
しかしながら、誤操作防止本体2を板材で形成した場合には、タングプレートTをバックルUに嵌め込んだ状態でも、バックルUの大きさや形状あるいはタングプレートTの嵌込状況等によって、誤操作防止本体2が幾らか浮き上がったり、傾いてしまうこと(いわゆるガタ付きの発生)が考えられる。このような状態になると、浮き上がった誤操作防止本体2とバックル本体U1の上端縁との隙間から、指先が入ってしまい、これが解除ボタンU2に届いてしまうことが懸念される。
そのため、このようなことを防止するために、一例として図4(a)・(b)に示すように、誤操作防止本体2の周端縁に垂れ下げ状の返し24を設け、この返し24によってバックルUの上方を取り囲むような構成が採り得る。すなわち、この返し24によって、例えば図4(c)に示すように、誤操作防止本体2が多少倒いても(浮き上がっても)、指先の進入を防止することができるものである。
【0036】
なお、返し24は、誤操作防止本体2とバックルUとの間に形成され得る隙間から、指先が入り、解除ボタンU2に届いてしまうことを防ぐためのものであるため、必ずしも誤操作防止本体2の全周囲に連続して設ける必要はなく、例えば解除ボタンU2の対向側には返し24を設けないようにすることも可能である。
因みに、請求項1に記載する「偏平状」とは、このような返し24を設けた誤操作防止本体2も含むものである。
また、誤操作防止本体2においてタング挿通孔21等の孔が形成される平板部(天面部)と上記返し24は、別の部材で形成することが可能であり、例えば図4(d)は、合成樹脂素材で形成した返し24の内側に、金属板材で形成した上記平板部を嵌め込んで誤操作防止本体2を形成した様子を示したものである。
【0037】
また上述した基本の実施例では、ベルト係止開口22aは、ベルト係止孔22の端部寄りの位置に形成されており、これによりベルト係止孔22にベルト本体Rを収め易い構造となっている。しかしながら、ベルト係止開口22aの位置は、必ずしもベルト係止孔22の端部寄りの位置に限定されるものではなく、例えば図5(a)に示すように、ベルト係止孔22のほぼ中央に形成することが可能である。この場合、ベルト本体Rをベルト係止孔22内に収容するにはベルト本体Rを強引に折り曲げ状態にする等、収め難いことが考えられるが、一旦、ベルト係止孔22内に収めてしまえば、このベルト本体Rが自然にベルト係止孔22から抜けてしまうことはほとんどなく、誤操作防止本体2の係止状態を確実に維持することができる。
もちろん、ベルト本体Rをベルト係止孔22に入れ易いことと、一旦ベルト係止孔22内に収めたベルト本体Rの抜けにくさとを両立させることも可能であり、例えば図5(b)に示すように、長孔状を成すベルト係止孔22の長手方向端部(軸方向先端)にベルト係止開口22aを形成するとともに、ここにベルト通過口を狭めるような突起状の抜け止め22bを形成することが可能である。
この場合、ベルト係止開口22aが、ベルト係止孔22の長手方向端部に形成されることで、ベルト本体Rをベルト係止孔22に入れる際には、ほぼ真っ直ぐに入れ込むだけで収めることができ、しかも抜け止め22bの存在によって、ここに収容したベルト本体Rが自然にベルト係止孔22から抜け出てしまうことを効果的に防止することができる。
また上述した基本の実施例では、ベルト係止孔22(ベルト係止開口22a)は、一基の誤操作防止本体2において一カ所のみ形成されるものを基本的に示したが、例えば図5(c)に示すように、ベルト係止孔22を二カ所形成することも可能である。
【0038】
また上述した基本の実施例では、押込具挿通孔23は、タング挿通孔21と兼用するものであったが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば図6(a)に示すように、押込具挿通孔23を専用孔とし(解除ボタン押込具3を差し込むための専用の孔とし)、タング挿通孔21よりも小さい孔として形成することが可能である。
もちろんベルト係止孔22についても、必ずしもタング挿通孔21と兼用する必要はなく、専用孔として形成することが可能である。
また上述した基本の実施例では、このような兼用孔の思想からタング挿通孔21を複数設けるものであり、特に上記図1では、三カ所のタング挿通孔21を並列に設けるものであった。しかしながら、実際にはユーザが使用する車種は通常一つに決まり、そのため使用しない兼用孔(タング挿通孔21)が存在する。このような場合には、例えば図6(b)に示すように、使用しないタング挿通孔21にダミープラグ26を嵌め込むことが好ましく、これによってユーザは必要なタング挿通孔21(ベルト係止孔22)と押込具挿通孔23とが明確になり、シートベルトSBの装着操作がより行い易くなるものである。
【0039】
また上述した基本の実施例では、解除ボタンU2がバックル本体U1の上方に位置し、解除操作としては、この解除ボタンU2を上方から下方に押し込む形態を基本的に説明した。しかしながら、バックルUとしては、例えば図7に示すように、解除ボタンU2がバックルUの正面側に位置するものも存在する。また、この場合の解除操作としては、この解除ボタンU2をバックルUの正面側から押し込む操作となる。
このような形態では、誤操作防止本体2として、例えば上記図7に示すように、バックルUの上部を閉鎖する偏平部材に対し、バックルUの正面側を閉塞する正面閉塞板25を設けるものである。もちろん、この際の押込具挿通孔23は、この正面閉塞板25に形成される。
なお、この場合の誤操作防止本体2は、図示のように断面L字状を呈するが、非使用時には上側の偏平部材に形成されたベルト係止孔22(兼用の場合は、ベルト係止開口22aを有するタング挿通孔21)を利用して、ベルト本体Rに係止しておくことが好ましい。また、ここでもタングプレートTをバックルUに嵌め込んだ状態で、誤操作防止本体2が多少ガタ付く場合には、正面閉塞板25の周端縁に立ち壁状の返し24を設けることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 シートベルト誤操作防止具
2 誤操作防止本体
3 解除ボタン押込具

2 誤操作防止本体
21 タング挿通孔
22 ベルト係止孔
22a ベルト係止開口
22b 抜け止め
23 押込具挿通孔
24 返し
25 正面閉塞板
26 ダミープラグ

3 解除ボタン押込具
31 押込先端部
32 被取付部(クリップ部)

SB シートベルト
S シート
M 着座者
R ベルト本体
T タングプレート
U バックル
U1 バックル本体
U2 解除ボタン
U3 タング受入孔
F バックル固定杆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7