(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】クッション体
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20220829BHJP
A61G 7/065 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A61H1/02 G
A61G7/065
(21)【出願番号】P 2018191516
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】594001801
【氏名又は名称】株式会社ミカサ
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】小川 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡原 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】明代 博史
(72)【発明者】
【氏名】松野 修三
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-118528(JP,A)
【文献】登録実用新案第3049661(JP,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2012-0003008(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61G 7/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
介護やリハビリテーションにおけるポジショニングにおいて使用されるクッション体であって、伸縮性のある袋内に複数の楕円体状のボールを直列又は並列に配設してなるクッション体。
【請求項2】
ボールを並列に配設する袋は、ボール出し入れ用のゴム弾性を有する開口部とその開口部に対向する窓部を有してなることを特徴とする請求項1に記載のクッション体。
【請求項3】
ボールを直列に配設する袋は、その長さを調整することによりボール間の隙間を調整することができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のクッション体。
【請求項4】
介護やリハビリテーションにおけるポジショニングにおいて使用されるクッション体であって、複数の楕円体状のボールをボールコネクタにより直列又は並列に連結してなるクッション体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護やリハビリテーションにおけるポジショニングにおいて使用されるボールを利用したクッション体に関する。
【背景技術】
【0002】
介護現場においては、要介護者の褥瘡の予防や治療、筋緊張の緩和と関節の変形拘縮の防止、あるいは食事をし易い姿勢や呼吸をし易い姿勢にする等のため、要介護者の体位を変えるポジショニングが行われている。また、日常の動作が困難な人や身体機能の維持・向上が必要な人のリハビリテーションにおいてポジショニングが行われている。このポジショニングには、ウレタンフォーム、綿又はビーズ等を詰めた各種クッションや枕が利用されており、また、体圧分散又は接触面積を拡大するための装置なども提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に、マットレス内又はマットレス下部には、流体の送給・排出によって膨張・収縮が可能なサポートセルを、当該マットレスの利用者の所定部位に対応する領域を取り囲む位置に設け、流体の送給によって当該サポートセルを膨張させたときに、マットレスの前記領域を取り囲む位置が上方に突出するように変形可能にしたことを特徴とするマットレス装置が提案されている。このマットレス装置は、マットレス上の利用者の体の所定領域上の部分、例えば腰部や背部等を包み込むことができ、マットレスと体の接触面積を増やして体にかかる圧力を減少させることができるとされる。
【0004】
特許文献2に、内部に一層又は複数並設された空気室を備えるシートと、該空気室の給排気のための給排気管とを備えた局所除圧用具であって、該シートは使用時における最大排気状態で厚みが10mm以下であることを特徴とする局所除圧用具が提案されている。この局所除圧用具は、間歇的空気圧迫を行うことにより効果的な褥瘡予防方法を提供することができ、給排気の周期を30秒以上120秒以内とし、内圧が、給気時に30mmHg以上50mmHg以下、排気時に0mmHg以上20mmHg以下となるよう給排気制御するのがよいとされる。
【0005】
特許文献3に、チューブの一端側に接続された手動ポンプと、他端側に接続された弾性体からなる袋体とを有する複数のクッション構成部が、区画線によって複数の収納室に区画された外カバーに収納されてなるクッションが提案されている。このクッションは、使用者が座ったままで手動ポンプを操作して袋体に所要の給排気をすることにより、下半身の褥瘡を予防することができる。また、使用者は、手動ポンプを操作する行為によって脳の活性化を図ることができるとされる。
【0006】
特許文献4に、治療対象となる関節部分の両側に位置する人体の近位部及び遠位部のうち、上記近位部に装着されるベース、上記遠位部に装着され、上記関節部を伸張する方向へ上記ベースに対して移動可能な可動体、及び上記関節部を伸張する方向へ上記可動体を上記ベースに対して移動させ、上記関節部に所定の伸張力を加えるアクチュエータを備えている伸張型関節拘縮治療装置が提案されている。この伸張型関節拘縮治療装置は、関節部位に所要の伸張力を長時間加えることができ、手関節、肘関節、肩関節、又は膝関節の拘縮治療を行うことができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-83140号公報
【文献】特開2016-198336号公報
【文献】国際公開第2017/021996号
【文献】特開2005-73713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示すマットレス装置や特許文献2に示す局所除圧用具は、ベッドや車いすを使用する要介護者の体圧分散を機械的に行って褥瘡の予防や治療を行うことができるという利点がある。特許文献3に示すクッションは、要介護者がクッションへの給排気を自身で操作して体圧分散を図ることができ、手動ポンプの操作による身体の活性化という副次的な効果を得ることができるとされる。特許文献4に示す伸張型関節拘縮治療装置は、各種関節の治療に使用することができるとされる。
【0009】
しかし、上記マットレス装置などの器具・装置は特定のポジショニングに限定され使用範囲が比較的狭く、高価なものになりやすいという問題がある。一方、ウレタンフォームなどを詰めたクッションや枕などは、どの様に利用するかは介護者等の技能に依存し、広範なポジショニングに対応するためには詰物の素材や形状を含めて多種のものを用意しなければならないという問題がある。しかしながら、上記クッションのようなものであって、簡便かつ広範な用途が可能なものであれば、ポジショニングが広く行われるようになることが期待される。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点及び要請に鑑み、ボールを利用した簡便かつ広範なポジショニングに対応可能なクッション体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るクッション体は、介護やリハビリテーションにおけるポジショニングにおいて使用されるクッション体であって、伸縮性のある袋内に複数の楕円体状のボールを直列又は並列に配設してなるものである。
【0012】
上記発明において、ボールを並列に配設する袋は、ボール出し入れ用のゴム弾性を有する開口部とその開口部に対向する窓部を有してなるものがよい。
【0013】
ボールを直列に配設する袋は、その長さを調整することによりボール間の隙間を調整することができるようになっているのがよい。
【0014】
また、本発明に係るクッション体は、介護やリハビリテーションにおけるポジショニングにおいて使用されるクッション体であって、複数の楕円体状のボールをボールコネクタにより直列又は並列に連結してなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡便かつ広範なポジショニングに対応可能なクッション体を提供することができ、経済的で簡易な構造のクッション体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るクッション体の実施形態を示す模式図である。
【
図2】本発明に係るクッション体の他の実施形態を示す模式図(a)及びボール(b)の模式図である。
【
図3】本発明に係るクッション体の他の実施形態を示す模式図である。
【
図4】本発明に係るクッション体を使用したポジショニングの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。
図1又は
図2は、本発明に係るクッション体を示す斜視図である。
図1又は
図2に示すように、クッション体10は楕円体状のボール11が伸縮性のある袋15に複数個収容されてなる。その複数個のボール11は袋15に直列又は並列に配設されて収容されている。
図1に示すクッション体10は、3個のボール11が並列に配設されている。
図2(a)に示すクッション体10は、3個のボール11が袋15に直列に配設されて収容されている。かかるクッション体10は、これを使用する介護やリハビリテーションを受ける者の身体に馴染みやすく、種々の形に変形させて簡便にポジショニングを行うことができる。また、痛みを感じない程度の弱い矯正力を長時間かけることが可能になる。
【0018】
ボール11は、楕円体状で中空のものが使用される。また、ボール11は、その長軸の短軸に対する長さ比が1.5~2.0であるものがよい。そして、短軸の長さは50~200mmであるものがよい。また、ボール11は、弾力性のある軟質のものがよく、例えばブチルゴム製のものを使用することができる。ボール11の空気圧は1~10kPaであるのがよい。また、
図2(b)に示すように、ボール11の表面には凹凸を形成する模様11aがあるのがよい。このようなボール11は、位置安定に優れ、またクッション体10がこれを使用する者の身体に馴染みやすいからである。
【0019】
袋15は、伸縮性のある織物や編物を使用することができる。編物の場合は、所要の大きさ及び方向の伸縮性を持たせやすいという利点がある。袋15の形状は、収容するボールの数やボールをどの様に配列するか配設の仕方によって異なり、例えば、
図1に示すような山形状や
図2に示すような棒状にすることができる。山形状の袋15の場合は、ボールを出し入れする開口部15aが設けられるが、開口部15aの対向側に窓部15bを設けるのが好ましい。これによりボールの出し入れが容易になるとともにボールの位置安定性が増す。また、開口部15aの周囲はゴム弾性を有するとともに補強されているのがよい。
【0020】
袋15の形状が棒状である場合は一端部に開口部15aが設けられる。開口部15aはバンド16により閉じることができる。この場合、袋15は、所定数のボール11を収容してもさらに余裕空間を有するように余長部15cを有するのがよい。この余長部15cの長さを調整することによってボール間の隙間15dを調整することにより、多様なポジショニングに対応し易くすることができる。
【0021】
また、本発明に係るクッション体10は、
図3に示すように、複数の楕円体状のボール11をボールコネクタ17により直列又は並列に連結してなるものとすることができる。本例のボールコネクタ17は、伸縮性のある帯状のものからなっている。このコネクタ形のクッション体10は、2個程度のボール11を直列又は並列に連結して構成するクッション体に好ましい。
【0022】
図4は、クッション体10を使用してポジショニングを行っている説明図である。ポジショニングを受ける者の膝関節とベッドとの間に山形状のクッション体10Aを使用し、腕関節部にコネクタ形のクッション体10C(直列形)、10D(並列形)を使用している。ポジショニングを受ける者が抱え込んでいるのがクッション体10Cで、肘とベッドとの間に挟んでいるのがクッション体10Dである。
【符号の説明】
【0023】
10、10A、10C、10D クッション体
11 ボール
15 袋
16 バンド
17 ボールコネクタ