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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】子宮マニピュレータ用チップユニット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/42 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61B17/42
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018236287
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020096713
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504444658
【氏名又は名称】ケン・メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 則仁
(72)【発明者】
【氏名】米谷 研一
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06773418(US,B1)
【文献】実開昭55-072908(JP,U)
【文献】特表2015-522340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータ本体に取り付けられる基部、前記基部の先端側に設けられた環状部、及び、前記基部と前記環状部とを連結する連結部とを備え、前記基部、前記環状部、及び前記連結部が樹脂で一体成形されたカップと、前記カップの基部から先端側に突出し、子宮口部の内周に挿入される突出部、及び、前記突出部の先端に開口した液体流路を有するチップとを備えた子宮マニピュレータ用チップユニットにおいて、
前記チップの突出部の先端が、前記カップの先端部よりも基端側に配され
前記チップユニットが子宮口部まで達したら、前記カップが変形することなく、前記カップの内周に子宮口部が挿入されると共に、この子宮口部の内周に前記チップの突出部が挿入される子宮マニピュレータ用チップユニット。
【請求項2】
前記連結部が、周方向に離隔した複数の柱部で構成され、
前記複数の柱部の間に形成された窓部のうち、少なくとも一つの窓部の周方向の開口角が130°以上である請求項1に記載の子宮マニピュレータ用チップユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮マニピュレータに設けられるチップユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡下子宮摘出手術は、例えば下記の特許文献1に示された子宮マニピュレータを用いて行われる。この子宮マニピュレータ100は、図10に示すように、ロッド101と、ロッド101の基端に設けられた操作部102と、ロッド101の先端に回動可能に設けられた回動ロッド103と、回動ロッド103に取り付けられたカップ104及びチップ105とを有する。カップ104及びチップ105を膣内に挿入し、膣外に配された操作部102を操作して回動ロッド103、カップ104及びチップ105を回動させることにより、子宮を所望の姿勢で保持することができる。こうして膣の内周にカップ104を挿入することで膣の外面が部分的に盛り上がり、この盛り上がり部が、膣を切断する際の切断箇所の目印となる。
【0003】
この子宮マニピュレータ100では、チップ105がカップ104から先端側に突出している。このような子宮マニピュレータ100を用いて子宮癌患者の子宮摘出手術を行うと、カップ104から突出したチップ105の先端が子宮内の癌細胞と接触し、癌細胞を周囲に拡散させてしまう恐れがある。
【0004】
例えば下記の特許文献2には、図11に示すように、チップを省略してカップ201の底部202をプレート状とした子宮マニピュレータ200が示されている。このカップ201を膣内に挿入し、子宮300の子宮口部301がカップ201内に入り込んだ状態でカップ201を回動することにより、子宮300の姿勢を調整することができる。このとき、子宮マニピュレータ200が、子宮300内に挿入される部位(チップ等)を有さないことで、この部位が子宮癌に接触する事態を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表平10-507384号公報
【文献】特許第5945362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示す子宮マニピュレータ100には、子宮内に注入する液体(例えば造影剤)を供給するためのチューブ106が設けられる。このチューブ106から供給された液体が、チップ105の先端に設けられた供給口105aから吐出され、子宮内に注入される。
【0007】
一方、図11に示す子宮マニピュレータ200は、チップを有しておらず、液体を供給するための供給口も設けられていない。例えば、カップ201のプレート状の底部202に開口部を設け、この開口部から液体を供給することが考えられる。しかし、子宮300の子宮口部301をカップ201の内部に入り込ませた状態では、子宮口がほぼ塞がった状態となっているため、カップ201の底部202に設けた開口部から液体を供給しても、液体がほとんど子宮内に注入されない恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、子宮内の癌細胞を周囲に拡散することを回避すると共に、造影剤等の液体を子宮内に確実に注入可能な子宮マニピュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、マニピュレータ本体に取り付けられる基部、前記基部の先端側に設けられた環状部、及び、前記基部と前記環状部とを連結する連結部とを備えたカップと、前記カップの基部から先端側に突出し、子宮口部の内周に挿入される突出部、及び、前記突出部の先端に開口した液体流路を有するチップとを備えた子宮マニピュレータ用チップユニットにおいて、前記チップの突出部の先端が、前記カップの先端部よりも基端側に配されたことを特徴とする子宮マニピュレータ用チップユニットを提供する。
【0010】
このチップユニットによれば、チップの突出部を子宮口部の内周に挿入し、液体流路を介して突出部の先端から液体を供給することで、液体が子宮内に入りやすい。このとき、突出部の先端がカップの先端部よりも基端側に配されている(すなわち、突出部がカップ内に収められている)ことで、突出部が子宮の子宮口部付近のみに挿入されるため、子宮内の癌細胞に接触する事態を回避できる。
【0011】
上記カップの環状部と基部とを連結する連結部は、例えば周方向に離隔した複数の柱部で構成することができる。これにより、カップを膣内に挿入する際、複数の柱部の間の窓部から鉗子等を挿入して膣の奥部を広げながら、カップの挿入を進めることができる。特に、複数の柱部の間に形成された窓部のうち、少なくとも一つの窓部の開口角を130°以上とすれば、この窓部を介して鉗子等を挿入しやすくなるため、カップを膣に挿入する作業がさらに容易になる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のチップユニットを用いれば、子宮内の癌細胞を周囲に拡散することを回避すると共に、造影剤等の液体を子宮内に確実に注入可能な子宮マニピュレータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】子宮マニピュレータの側面図である。
図2】カップの斜視図である。
図3】カップの側面図である。
図4】カップの平面図である。
図5】チップユニットの断面図である。
図6】チップの側面図である。
図7】子宮マニピュレータの使用状態を示す断面図である。
図8】子宮マニピュレータの使用状態を示す断面図である。
図9】他の実施形態に係るカップの平面図である。
図10】従来の子宮マニピュレータの側面図である。
図11】従来の他の子宮マニピュレータの使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示す子宮マニピュレータ1は、マニピュレータ本体2と、本発明の一実施形態に係るチップユニット3とを備える。チップユニット3は、マニピュレータ本体2に対して着脱可能である。
【0016】
マニピュレータ本体2は、ロッド4と、ロッド4の基端に設けられた操作部5と、ロッド4の先端にピン7を介して回動可能に取り付けられた回動ロッド6とを備える。操作部5は、回動ロッド6を回動させるものであり、図示例では、操作部5を矢印Bで示すように自身の軸心周りに回転させることで、回動ロッド6を矢印Aで示すように回動させることができる。図示例では、回動ロッド6及びチップユニット3が、図中実線で示すように、チップユニット3の軸心とロッド4の長手方向との間の角度θが小さい位置(例えばθ=30°程度)と、図中点線で示すように上記の角度θを約90°とした位置との間で回動可能とされる。
【0017】
チップユニット3は、カップ10と、チップ20と、バルーン30とを備える。
【0018】
カップ10は、図2~4に示すように、基部11と、基部11の先端側に設けられた環状部12と、基部11と環状部12とを連結する連結部としての複数の柱部13とを備える。本実施形態では、基部11,環状部12,及び複数の柱部13が樹脂で一体成形される。
【0019】
図5に示すように、基部11は、基端側(図中下側)及び先端側(図中上側)に開口した中空筒状を成している。基部11の内周面には、円筒面11aと、その先端側に連続したテーパ面11bとが設けられる。環状部12は、例えば円筒状を成し、基部11の外径よりも大きな外径を有する。柱部13は、例えばカップ10の軸心方向に延びる軸方向部13aと、カップ10の半径方向に延びる半径方向部13bとを有する。本実施形態では、図4に示すように、3本の柱部13が周方向等間隔ではなく、偏在している。具体的には、3本の柱部13の周方向間に形成された3つの窓部のうちの一つの窓部14aの開口角αを、他の二つの窓部14bの開口角βよりも大きくすることにより、窓部14aの開口角αを130°以上、好ましくは150°以上としている。
【0020】
チップ20は、図6に示すように、チップ本体21と、チップ本体21に固定されたチューブ22とを備える。チップ本体21は、基部23と、基部23の先端面の軸心から先端側に突出する突出部24とを有する。本実施形態では、基部23及び突出部24がシリコーン等の樹脂で一体成形される。基部23の外周面には、円筒面23aと、テーパ面23bとが設けられる。図5に示すように、基部23には、基端側に開口した孔23cが設けられる。孔23cの中間部には、他の部分よりも大径な大径部23c1が設けられる。チップ本体21には、造影剤等の液体が流通するための液体流路25が設けられる。液体流路25の一端は、突出部24の先端に開口している。液体流路25の他端は、基部23の基端側の端面に開口し、チューブ22と連通している。
【0021】
チップ本体21の基部23は、カップ10の基部11の内周に配される。チップ本体21の基部23の外周面の円筒面23a及びテーパ面23bは、カップ10の基部11の内周面の円筒面11a及びテーパ面11bとそれぞれ嵌合している。チップ本体21の突出部24は、カップ10の基部11の先端側の開口部11cに挿通され、基部11よりも先端側に突出している。チップ本体21の突出部24の先端は、カップ10の先端部(環状部12の先端部12a)よりも基端側に配されている。すなわち、チップ本体21の突出部24は、カップ10の内周に収められており、カップ10から先端側に突出していない。図示例では、チップ本体21の突出部24が、環状部12の基端部12bよりも基端側に配されている。
【0022】
バルーン30は、図1に示すように、カップ10の基端側に設けられたバルーン本体31と、カップ10及びチップ20に取り付けられる取付部32とを有する。バルーン本体31は、ロッド4の外周に周回され、内部に環状の中空部31aを有する。バルーン本体31には、チューブ33が取り付けられ、チューブ33からバルーン本体31の中空部31aに液体(例えば食塩水)を注入することで、バルーン本体31がドーナツ状に膨らむ。
【0023】
チップ20は、マニピュレータ本体2の回動ロッド6に取り付けられる。具体的には、回動ロッド6の先端に設けられた取付具8(図5の鎖線参照)を、チップ本体21の孔23cに挿入し、取付具8の大径部8aをチップ本体21の孔23cの大径部23c1に嵌合させることで、チップ20が回動ロッド6に固定される。こうして回動ロッド6に固定されたチップ20のチップ本体21と、カップ10の基部11との間に、バルーン30の取付部32の先端を挟み込むことにより、バルーン30がカップ10及びチップ20に固定される。図示例では、チップ本体21を、カップ10の基部11及びバルーン30の取付部32の内周に圧入することで、バルーン30をチップ本体21とカップ10の基部11との間に挟み込むと同時に、カップ10の基部11をチップ本体21に固定している。
【0024】
以下、上記の子宮マニピュレータ1の使用方法を説明する。
【0025】
まず、子宮マニピュレータ1の先端に設けられたチップユニット3を、膣内に挿入する。このとき、カップ10の柱部13の間に設けられた窓部14a(図4参照)に基端側から鉗子(図示省略)を挿入して、チップユニット3よりも先端側(子宮側)の膣を広げることにより、チップユニット3の挿入作業が進められる。本実施形態では、カップ10の3本の柱部13を偏在させて、一つの窓部14aの開口角を130°以上まで広げることで、鉗子を操作しやすくなるため、チップユニット3の挿入作業が容易化される。また、チップ20の突起24が、カップ10から先端側に突出していないため、カップ10の窓部14aから挿入した鉗子の先端とチップ20の突起24とが干渉しにくくなり、鉗子の操作がさらに容易化される。
【0026】
そして、図7に示すように、チップユニット3が子宮口部301まで達したら、カップ10の内周に子宮口部301が挿入されると共に、この子宮口部301の内周にチップ20の突出部24が挿入される。尚、図7では、上側が腹部側、下側が背部側である。
【0027】
卵管造影を行う際には、図7に示す状態で、チューブ22から液体(造影剤)を供給し、この液体が、チップ本体21内の液体流路25(図5参照)を介して、チップ20の突出部24の先端の開口部から供給される。このとき、チップ20の突出部24の先端が、子宮口部301の内周に挿入されていることで、突出部24の先端の開口部から供給された造影剤が子宮300の内部に確実に注入されるため、造影剤を卵管まで確実に到達させることができる。
【0028】
子宮摘出を行う際には、チューブ33からバルーン30のバルーン本体31の内部に液体を注入し、バルーン本体31をドーナツ状に膨らませ、膣を密閉する(図8参照)。これにより、腹腔に充填されたガスが、切断された膣から漏れ出すことを防止できる。そして、膣の奥部まで挿入されたカップ10の環状部12で膣が内側から圧迫されることにより、膣の外面が部分的に盛り上がり、この盛り上がり部が、腹腔鏡下手術による切断部の目印となる。
【0029】
このとき、操作部5を操作することで、子宮300を所望の姿勢に配することができる。例えば、バルーン30を膨らませた状態で、子宮300を図7に示す姿勢に配し、膣の奥部の前側部分Xを切断する(尚、図7は、バルーン30が膨らんでいない状態を示している。)。その後、操作部5を操作して回動ロッド6及びチップユニット3を上側に回動させ、子宮300を図8に示す姿勢に配した状態で、膣の奥部の後側部分Yを切断する。こうして、腹腔鏡下手術により、膣の奥部の全周を切断して子宮300を切り離した後、子宮を摘出して、膣の切断痕(膣断端)を縫合する。
【0030】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、図9に示す実施形態では、カップ10の柱部13を2本とした場合を示している。これらの柱部13は直径方向に配されており、柱部13間の窓部14の開口角が略180°となっている。この場合、図4に示すように3本の柱部13を設けた場合と同等の強度を確保するために、各柱部13の幅を図4の柱部13よりも太くすることが好ましい。
【符号の説明】
【0031】
1 子宮マニピュレータ
2 マニピュレータ本体
3 チップユニット
4 ロッド
5 操作部
6 回動ロッド
10 カップ
11 基部
12 環状部
13 柱部
20 チップ
21 チップ本体
22 チューブ
23 基部
24 突出部
30 バルーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11