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特許7130243二重特異性抗体を用いた抗体薬物複合体プラットホーム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】二重特異性抗体を用いた抗体薬物複合体プラットホーム
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220829BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220829BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20220829BHJP
   C07K 16/44 20060101ALI20220829BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220829BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220829BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A61K39/395 L
A61K47/54 ZNA
A61P35/00
A61K31/407
C07K16/44
C07K16/46
C12N15/113 110Z
C07K16/30
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018566900
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 KR2017006552
(87)【国際公開番号】W WO2017222310
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】62/352,804
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョリ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ゴンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,スヒョン
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗コチニン一本鎖可変切片を含む二重特異性抗体と、
ペプチドと架橋結合した二価のコチニン及び薬物の接合体と、を含み、
二価のコチニンと架橋結合した前記ペプチドは、グリシン(G)、セリン(S)及びリシン(K)からなるGSKGSKGSKGSKKであり、
前記薬物が、デュオカルマイシンであることを特徴とする抗体薬物複合体。
【請求項2】
前記抗コチニン一本鎖可変切片が、前記二価のコチニンと結合したことを特徴とする請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【請求項3】
前記二価のコチニンは、二つのコチニンが各々GSKGSKGSKGSKKのN末端及びC末端に架橋結合したことを特徴とする請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【請求項4】
前記薬物が、二価のコチニンと架橋結合したGSKGSKGSKGSKKにおけるリシン残基と接合したことを特徴とする請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【請求項5】
前記二重特異性抗体が、C3ドメインと抗コチニン一本鎖可変切片との間にペプチドリンカー(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)が挿入されたことを特徴とする請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【請求項6】
前記二重特異性抗体が、セツキシマブ、トラスツズマブ、オレゴボマブ、エドレコロマブ、アレムツズマブ、ラベツズマブ、ベバシズマブ、イブリツモマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、イピリムマブ、ゲムツズマブ、ブレンツキシマブ、バダスツキシマブ、グレムバツムマブ、デパツキシズマブ、ポラツズマブ、デニンツズマブ、エンフォーツマブ、テリソツズマブ、チソツマブ、ピナツズマブ、リファスツズマブ、インデュサツマブ、バンドルツズマブ、ソフィツズマブ、ボルセツズマブ、トラスツズマブ、ミルベツキシマブ、コルツキシマブ、ナラツキシマブ、インダツキシマブ、アネツマブ、ロルボツズマブ、カンツズマブ、ラプリツキシマブ、ビバツズマブ、バダスツキシマブ、ロバルピツズマブ、イノツズマブ、サシツズマブ、ラベツズマブ、ミラツズマブ、ルパルツマブ及びアプルツマブからなる群より選択されたいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体薬物複合体を含むことを特徴とする癌治療用の薬学的組成物。
【請求項8】
前記癌が、KRAS突然変異を有する肺腺癌であることを特徴とする請求項に記載の癌治療用の薬学的組成物。
【請求項9】
(s1)抗コチニン一本鎖可変切片を含む二重特異性抗体を製造する段階と、
(s2)ペプチドと架橋結合した二価のコチニン及び薬物の接合体を製造する段階と、
(s3)(s1)段階で生成した二重特異性抗体と(s2)段階で生成した接合体とを混合する段階と、を含み、
二価のコチニンと架橋結合した前記ペプチドは、グリシン(G)、セリン(S)及びリシン(K)からなる群より選択された一種以上からなるGSKGSKGSKGSKKであり、
前記薬物が、デュオカルマイシンであることを特徴とする抗体薬物複合体の製造方法。
【請求項10】
前記(s3)段階は、抗コチニン一本鎖可変切片と二価のコチニンとが特異的に結合することを特徴とする請求項に記載の抗体薬物複合体の製造方法。
【請求項11】
前記二価のコチニンは、二つのコチニンが各々GSKGSKGSKGSKKのN末端及びC末端に架橋結合したことを特徴とする請求項に記載の抗体薬物複合体の製造方法。
【請求項12】
前記薬物が、二価のコチニンと架橋結合したGSKGSKGSKGSKKにおけるリシン残基と接合したことを特徴とする請求項に記載の抗体薬物複合体の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体薬物複合体の有効量を含む癌治療用の薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の抗体薬物複合体を含む、薬物の半減期を増進させるための薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、二重特異性抗体を用いた抗体薬物複合体及びその用途に関する。
【0002】
本出願は、2016年6月21日出願の米国仮出願第62/352,804号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
[背景技術]
抗体薬物複合体(ADC)は、抗癌剤の新たな種類として抗原発現腫瘍細胞に細胞毒性製剤を選択的に伝達するために開発された。従来のADCは、高い適用性及び部位特異的な結合方法を使用するといった多くの長所がある。しかし、抗体に細胞毒性製剤を連結するためには多段階の結合法が必要となり、個々の抗体を最適化する過程が求められ、ADCの使用に困難がある。
【0003】
上皮成長因子受容体(EGFR)は、ErbB系に属する受容体チロシンキナーゼである。EGFRの過発現は、頭頸部がん、結腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、膵がん、卵巣がん、脳腫瘍または膀胱がんなどの多様な人間の癌から頻繁に観察される。癌治療の目的としてEGFR信号を遮断するために、下記の二つの薬理学的接近法が用いられてきた:単一クローン抗体であるセツキシマブ(cetuximab)(Erbitux)及びパニツムマブ(panitumumab)(Vectibix)と、小分子チロシンキナーゼ抑制剤であるゲフィチニブ(gefitinib)(Iressa)及びエルロチニブ(erlotinib)(Tarceva)。しかし、EGFR及びこのダウンストリームシグナリング分子のいくつかの突然変異は、EGFR標的治療における臨床反応が低く、治療が困難であった。例えば、KRAS突然変異は、EGFR陽性癌へのEGFR標的治療において一次抵抗性に重要な役割を果たす。KRAS突然変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)の25%及び結腸がんの39%で発見される。KRASが人間の癌のうち最もよく発病する癌遺伝子異常の一つであることがよく知られているが、KRAS突然変異を有するEGFR陽性癌を効果的に診断及び治療する方法の開発は充分でない実情である。
【0004】
一方、ADCは、KRAS変異を有するEGFR陽性癌にも効果的であり得る。ADCは、リンカーによって単一クローン抗体に細胞毒性製剤を架橋結合することで製造することができる。ADCは、従来の抗体または非特異的細胞毒性製剤が有する治療の限界を乗り越えることができる。例えば、二つのADCであるブレンツキシマブベドチン(brentuximab vedotin)(Adcetris)及びトラスツズマブエムタンシン(trastuzumab emtansine)(Kadcyla)は、食品医薬品局(FDA)からリンパ腫及びヒト上皮細胞増殖因子受容体2型(Her2)陽性転移性乳がんの治療剤として各々承認を得た。
【0005】
小分子と抗体との通常の結合は、リシン残基のε-アミノ酸鎖またはシステイン残基上の酸素が除去された鎖間のジスルフィド結合を用いる。非特異的な結合は、可変薬物に対する抗体の割合(DAR)及び接合部位の位置を有するADCの異種混合を生成する。このような異質性は、ADCの溶解度、安定性、薬物動態及び配置変化に影響を及ぼす。
【0006】
このようなADCの異質性を回避するために、システインまたは非天然アミノ酸残基を意図的に導入するか、または酵素接合方法を用いた部位特異的な結合方法が研究された。また、ADCの結合活性、安全性及び結合効率は、結合部位によって影響を受ける。そこで、前記ADCの特性を最大化するためには、適切な結合残基を探し、これを各抗体に最適化させる段階が必要である。通常、ADCは、多段階の複合体結合過程、または、最終生産物の検証のための精巧な分析が求められる。その結果、部位特異的結合を用いる従来のADCの開発が容易でなかった。
[発明が解決しようとする課題]
本発明は、従来の抗体薬物複合体の短所を解消した新たな抗体薬物複合体プラットホームを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、前記抗体薬物複合体プラットホームを含む薬学的組成物及びこれを用いた疾病の治療方法を提供することを他の目的とする。
[課題を解決するための手段]
本発明は、抗コチニン一本鎖可変切片 (scFv)を含む二重特異性抗体と、ペプチドと架橋結合した二価のコチニン及び薬物の接合体と、を含む抗体薬物複合体プラットホームを提供する。
【0008】
本発明の発明者は、従来の抗体薬物複合体(ADC)が多段階の結合過程及び抗体の最適化を要する短所を解決するための鋭意研究の結果、ヒトEGFR及びハプテン(hapten)が結合した細胞毒性製剤にともに同時結合する4価の二重特異性抗体を用いる新しい抗体薬物複合体プラットホームを開発した。
【0009】
先ず、本発明者は、従来に報告された4価の二重特異性抗体フォーマットを選択し、ヒトEGFR及びコチニン(cotinine)に反応する二重特異性抗体を開発した。本発明の二重特異性抗体は、コチニンとの複合体の形成のために抗コチニンscFvを用いた。コチニンは、ニコチンの主要代謝産物であり、これは、外因性、生理学的不活性及び非毒性のため、臨床接近法において理想的なハプテンとして用いられ得る。
【0010】
本発明の一実施例において、本発明二重特異性抗体(ERC6)は、ヒトEGFR結合抗体であるセツキシマブ(cetuximab)を含んで形成される。その後、デュオカルマイシン(duocarmycin)が架橋結合した二価のコチニン結合ペプチド(コチニン-デュオカルマイシン)を製造し、前記二重特異性抗体との混合によって抗体薬物複合体を形成した。結果的に、本発明の発明者は、二重特異的セツキシマブ×抗コチニン抗体を含む四価の複合体及びデュオカルマイシンで架橋結合した二価のコチニン結合ペプチド(コチニン-デュオカルマイシン)からなる抗体薬物複合体プラットホームを開発した(図1a)。前記本発明の抗体薬物複合体プラットホームは、インビトロ(in vitro)及びインビボ(in vivo)モデルの両方ともKRAS突然変異を有するEGFR-陽性セツキシマブ難治性肺腺がん(lung adenocarcinoma)に対して著しい抗腫瘍活性を示した。このような実験結果は、二重特異性抗体を用いる本発明のADCプラットホームが、癌のような疾病の治療に有用な伝達道具になれることを意味する。
【0011】
本発明の二重特異性抗体の抗コチニンscFvは、薬物が接合した二価のコチニン-ペプチドの二価のコチニンと特異的に結合して抗体薬物複合体を成し得る。前記抗コチニンscFvのヌクレオチド配列は、配列番号1の重鎖及び配列番号2の軽鎖からなり得る。また、前記抗コチニンscFvのアミノ酸配列は、配列番号3の重鎖及び配列番号4の軽鎖からあり得る。また、前記抗コチニンscFvの重鎖と軽鎖配列との間にはアミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)(nは、1~5の整数である。)、望ましくは、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)が挿入され得る。これによって、発現された抗コチニンscFvが抗原抗体反応を適切に行うように助けることができる。
【0012】
望ましくは、本発明の二重特異性抗体は、グリシン及びセリンが豊富なペプチドリンカー(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)(nは、1~5の整数である。)、望ましくは、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)をC3ドメインと抗コチニンscFvとの間に挿入し得る。これによって、本発明の二重特異性抗体は、柔軟性が向上する。
【0013】
本発明において、前記二価のコチニンは、二つのコチニンが6~18mer ペプチドのN末端及びC末端に各々架橋結合したものであり得る。望ましくは、前記コチニン及びペプチドの結合時、コチニンは、カルボキシコチニン(トランス-4-コチニンカルボキシル酸)であってもよく、そのカルボキシル基によって前記ペプチドとの架橋結合が効果的に行われ得る。
【0014】
本発明において、前記二つのコチニンと架橋結合するペプチドは、6~18mer長さのペプチドが使われ得る。前記ペプチドは、グリシン(G)、セリン(S)及びリシン(K)などからなる群より選択されたいずれか一種以上からなり得る。望ましくは、前記ペプチドは、GSKGSK、GGGGSKGGGGSK、GSKGSKGSKGSKK、またはGGGSGGGSKGGGSGGGSKなどが使われ得る。より望ましくは、前記ペプチドは、GSKGSKGSKGSKKが使われ得、これは本発明の薬物、例えば、デュオカルマイシンと安定的に接合し得る。
【0015】
本発明において、前記二価のコチニンと薬物との接合は、二価のコチニンと架橋結合した6~18merペプチドにおいて、リシン残基のε-アミノ基と薬物との接合によって行われ得る。
【0016】
本発明の抗体薬物複合体に用いられ得る薬物は、細胞毒性製剤であるデュオカルマイシン(Duocarmycin)、アウリスタチン(Auristatin)、コルヒチン(Colchicine)、アントラサイクリン(Anthracycline)、カリケアマイシン(Calicheamicin)、メイタンシノイド(Maytansinoid)、ピロロベンゾジアゼピン(Pyrrolobenzodiazepine)、ドラスタチン(Dolastatin)、ツブリシン(Tubulysin)、メイタンシノイド(Maytansinoid)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、クリプトフィシン(Cryptophycin)、エポチロン(Epothilone)、サフラニン(Safranin)、デアセチルコルヒチン(Deacetyl colchicine)、メイタンシノール(Maytansinol)、ベドチン(Vedotin)、マホドチン(Mafodotin)、エムタンシン(Emtansine)、メルタンシン(Mertansine)、ラブタンシン(Ravtansine)、ソラブタンシン(Soravtansine)、タリリン(Talirine)、テシリン(Tesirine)、インドリノベンゾジアゼピン(Indolinobenzodiazepines)、イリノテカンプロドラッグ(Irinotecan prodrug)、エキサテカン誘導体(Exatecan derivative)及びツブリン阻害剤(Tubulin inhibitor)などからなる群より選択されたいずれか一種であり得る。望ましくは、本発明の抗体薬物複合体は、デュオカルマイシンまたはエムタンシンを含み得る。前記デュオカルマイシンは、強力なDNAアルキル化活性によって癌細胞の死滅に効果的な細胞毒性薬物として用いられ得る。例えば、デュオカルマイシンがペプチドと結合して薬物接合体をなすとき、四つのバリン(valine)-シトルリン(citrulline)PAB連結されたジメチルアミノエチルデュオカルマイシンの形態で用いられ得る。また、例えば、エムタンシンがペプチドと結合して薬物接合体をなすとき、MCC(maleimidomethyl cyclohexane-1-carboxylate)リンカーを介して連結され得る。本発明の実験例においては、デュオカルマイシン(図3e)またはエムタンシン(図6b)が含まれた抗体-薬物複合体の癌細胞に対する細胞毒性を実験した結果、二つの場合ともA549細胞に対して著しい抑制活性を示した。このような結果から、本発明の抗体薬物複合体プラットホームは、前記のような多様な薬物と結合可能な多用性(versatility)を有することが分かる。
【0017】
また、本発明の抗体薬物複合体に使用可能な薬物は、癌を発生させる遺伝子の発現を抑制するsiRNAであり得る。例えば、前記siRNAは、Mcl-1、Wnt-1、Hec1、Survivin、Livin、Bcl-2、XIAP、Mdm2、EGF、EGFR、VEGF、VEGFR、GASC1、IGF1R、Akt1、Grp78、STAT3、STAT5a、β-catenin、WISP1、c-myc、RRM2、KSP、PKN3、PLK1、KRAS、MYC及びEPHA2などからなる群より選択されたいずれか一種以上の遺伝子の発現を抑制するsiRNAより選択され得る。本発明において、siRNAは、リボ核酸媒介の干渉現象(RNA-mediated interference,RNAi)によって癌細胞で発現される特定遺伝子の発現を抑制して癌細胞を死滅するため、これを含む抗体薬物複合体は、優れた抗癌剤として用いることができる。
【0018】
本発明において、siRNA及びコチニン-ペプチドの接合は、リンカーを介して行われ得る。これによって、本発明の抗体-薬物複合体は、多様な種類のsiRNAを複合体に結合できる多用性を有する。例えば、前記リンカーは、SMCC(succinimidyl trans-4-(maleimidylmethyl)cyclohexane-1-carboxylate) リンカーまたはバリン-シトルリンPABリンカーであり得る。具体的に、siRNAがSMCCリンカーを介してコチニン-ペプチドに結合する場合、siRNAの5’または3’末端を変形してSMCCリンカーに架橋結合させ、これをコチニン-GSCGSCGSCGSCK-コチニンに接合することができる(C=システイン)。または、siRNAがバリン-シトルリンPABリンカーを介してコチニン-ペプチドに結合する場合、siRNAを前記リンカーを介してコチニン-GSKGSKGSKGSKK-コチニンに接合することができる。
【0019】
本発明の抗体薬物複合体に含まれる二重特異性抗体は、セツキシマブ(Cetuximab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、オレゴボマブ(Oregovomab)、エドレコロマブ(Edrecolomab)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、ラベツズマブ(Labetuzumab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、イブリツモマブ(Ibritumomab)、オファツムマブ(Ofatumumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、リツキシマブ(Rituximab)、トシツモマブ(Tositumomab)、イピリムマブ(Ipilimumab)、ゲムツズマブ(Gemtuzumab)、ブレンツキシマブ(Brentuximab)、バダスツキシマブ(Vadastuximab)、グレムバツムマブ(Glembatumumab)、デパツキシズマブ(Depatuxizumab)、ポラツズマブ(Polatuzumab)、デニンツズマブ(Denintuzumab)、エンフォーツマブ(Enfortumab)、テリソツズマブ(Telisotuzumab)、チソツマブ(Tisotumab)、ピナツズマブ(Pinatuzumab)、リファスツズマブ(Lifastuzumab)、インデュサツマブ(Indusatumab)、バンドルツズマブ(Vandortuzumab)、ソフィツズマブ(Sofituzumab)、ボルセツズマブ(Vorsetuzumab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、ミルベツキシマブ(Mirvetuximab)、コルツキシマブ(Coltuximab)、ナラツキシマブ(Naratuximab)、インダツキシマブ(Indatuximab)、アネツマブ(Anetumab)、ロルボツズマブ(Lorvotuzumab)、カンツズマブ(Cantuzumab)、ラプリツキシマブ(Laprituximab)、ビバツズマブ(Bivatuzumab)、バダスツキシマブ(Vadastuximab)、ロバルピツズマブ(Rovalpituzumab)、イノツズマブ(Inotuzumab)、サシツズマブ(Sacituzumab)、ラベツズマブ(Labetuzumab)、ミラツズマブ(Milatuzumab)、ルパルツマブ(Lupartumab)及びアプルツマブ(Aprutumab)などからなる群より選択されたいずれか一種を含み得る。望ましくは、本発明の抗体薬物複合体は、ヒトEGFR結合抗体であるセツキシマブを含み得る。セツキシマブは、非小細胞肺がん、転移性結腸がんまたは頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)の治療のためにFDAによって臨床的に承認された単一クローン抗体である。セツキシマブのヌクレオチド配列は、配列番号5の重鎖配列及び配列番号6の軽鎖配列からなり得る。また、セツキシマブのアミノ酸配列は、配列番号7の重鎖配列及び配列番号8の軽鎖配列からなり得る。
【0020】
また、本発明は、前記抗体薬物複合体を含む癌治療用の薬学的組成物を提供する。本発明の抗体薬物複合体が治療効果を示す癌は、頭頸部がん、結腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、膵がん、卵巣がん、脳腫瘍または膀胱がんなどのうちいずれか一つ以上であり得る。望ましくは、本発明の二重特異的セツキシマブ×抗コチニン抗体を含む四価の複合体及びデュオカルマイシンによって架橋結合した二価のコチニン結合ペプチド(コチニン-デュオカルマイシン)からなる抗体薬物複合体は、セツキシマブのEGFR標的治療に対する一次抵抗性を有するKRAS突然変異肺腺がん(lung adenocarcinoma)に著しい治療効果を示す。望ましくは、前記二重特異的セツキシマブ×抗コチニン抗体を含む四価の複合体及びコチニン-デュオカルマイシンからなる抗体薬物複合体の全体アミノ酸配列は、配列番号9の軽鎖配列及び配列番号10の重鎖配列からなり得る。
【0021】
本発明の薬学的組成物は、当業界における公知の多様な方法によって投与され得る。投与経路または方式は、希望する結果によって変わり、静脈内、筋肉内、腹膜内または皮下投与、または標的部位に近接して投与され得る。本発明の抗体薬物複合体は、当業者に公知の通常の方法によって製薬上許容される投与の形態で製剤化され得る。
【0022】
また、本発明は、(s1)抗コチニンscFvを含む四価の二重特異性抗体を製造する段階と、(s2)ペプチドと架橋結合した二価のコチニン及び薬物の接合体を製造する段階と、(s3)(s1)段階で生成した二重特異性抗体と(s2)段階で生成した接合体とを混合する段階と、を含む抗体薬物複合体の製造方法を提供する。前記(s3)段階は、抗コチニンscFvと二価のコチニンとが特異的に結合することで抗体薬物複合体が製造され得る。また、前記二価のコチニンは、二つのコチニンが6~18merペプチドのN末端及びC末端に架橋結合したものを用い得る。また、前記薬物は、二価のコチニンと架橋結合した6~18merペプチドにおいて、リシン残基と接合し得る。また、前記製造方法は、a)抗コチニンscFvが結合した二重特異性抗体をコーディングする核酸分子をベクターに挿入する段階と、b)前記ベクター宿主細胞に導入する段階と、c)前記宿主細胞を培養する段階と、を含み得る。
【0023】
また、本発明の抗体薬物複合体の有効量を、癌を有する動物に処理する段階を含む癌治療方法を提供する。また、本発明の癌治療用の薬学的組成物の製造のための本発明の抗体薬物複合体の用途を提供する。
【0024】
本発明の癌治療方法は、本発明の抗体薬物複合体を含む組成物を治療学的に有効な量で投与することを含み得る。本発明において、「治療学的に有効な量」とは、癌関連疾患の予防または治療に有効な本発明の抗体薬物複合体またはこれを含む組成物の量を意味する。
【0025】
本発明の薬学的組成物のうち抗体薬物複合体の実際投与量の水準は、患者に毒性でなく、かつ特定の患者、組成物及び投与方式に対して希望する治療反応の達成に効果的な活性成分の量となるよう変わり得る。投与量の水準は、多様な 薬力学的因子、例えば、使用された本発明の抗体薬物複合体の活性、投与経路、投与時間、使用された複合体の排出速度、処置期間、複合体と共に使用された他の薬物、化合物または物質、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康及び過去の医学的病歴またはその他の因子などによって変わり得る。
【0026】
本発明において、薬学的組成物の治療投与量は、安全性及び効能が最適化するように適正に変り得る。本発明の抗体薬物複合体を全身投与する場合、投与量の範囲は、宿主の体重1kg当たり約0.0001~100mg、より一般的には0.01~15mgの範囲であり得る。例えば、治療方法は、2週ごとに一回、または1ヶ月ごとに1回、または3ヶ月~6ヶ月ごとに1回の全身投与を伴い得る。
【0027】
また、本発明の前記抗体薬物複合体によって薬物の半減期を増進させる方法を提供する。本発明の実験例3においては、ERC6との複合体を形成するとき、コチニンペイロード(payload)の安全性を評価するために薬物動態分析を行った。実験結果、コチニンペイロードは、分子量が低くて血流で迅速に除去される一方、これがERC6に結合する場合、半減期が延長されることを確認した。ひいては、本発明の抗体薬物複合体は、ペプチドと架橋結合した二価のコチニンを使うことで、単一コチニン-薬物接合体に比べて複合体の安定性を大幅増進させることができる。
【0028】
本発明において「抗体」とは、免疫系内で抗原の刺激によって作られる物質を意味し、その種類は特に制限されない。本明細書において、抗体は、動物抗体、キメリック(chimeric)抗体、ヒト化抗体または完全ヒト抗体を全て含み得る。また、本明細書において、抗体とは、抗原結合能を保有した抗体の断片、例えば、Fabも含み得る。前記キメリック抗体とは、抗体可変領域またはこの相補性決定領域(CDR)が抗体の残り部分と相違した動物由来の抗体を言う。このような抗体は、例えば、抗体可変領域は人間以外の動物(例えば、マウス、ウサギ、家禽類など)から由来し、抗体不変領域は人間から由来した抗体であり得る。このようなキメリック抗体は、当業界における公知の遺伝子再組合などの方法によって製造され得る。
【0029】
本発明において、「重鎖」とは、抗原に特異性を付与するために十分な可変領域のアミノ酸配列を含む可変領域ドメインV及び三つの不変領域ドメインであるC1、C2及びC3を含む全長重鎖及びこの断片を総称する。また、「軽鎖」とは、抗原に特異性を付与するために十分な可変領域のアミノ酸配列を含む可変領域ドメインV及び不変領域ドメインCを含む全長軽鎖及びこの断片を総称する。
【0030】
本発明において、「接合体」とは、異種性分子であって、ポリマー分子、親油性化合物、炭水化物部分または誘導体化剤(derivatizing)のような一つ以上の非ポリペプチド部分、特に、ポリマー部分に、一つ以上のポリペプチド、典型的には一つのポリペプチドを共有的に付着することで作ることができる。さらに、接合体は、一つ以上の炭水化物部分に、特にN-またはO-グリコシル化を用いて付着し得る。「共有的に付着する」というのは、ポリペプチド及び非ポリペプチド部分を直接互いに共有結合するか、連結橋、スペース、連結部分、または部分のような仲介部分または部分などを介して互いに間接的に共有結合して連結されることを意味する。例えば、本発明に開示の薬物をコチニンと接合した接合体が本定義に含まれる。
【0031】
また、本発明は、インビトロ(in vitro)生物学的分析方法において、コチニンと薬物との接合体を分析道具として使用することを特徴とする方法を提供する。前記インビトロ生物学的分析方法は、流動細胞分析法、ウエスタンブロット分析法、免疫沈降法及び酵素免疫測定法(ELISA)などより選択され得る。
【0032】
本発明による薬物及びコチニンの接合体に抗コチニン抗体が結合した複合体は、コチニンをハブテンとして用いることで薬物及び抗体固有の特性を全て保有することができる。具体的に、本発明の抗体薬物複合体は、分子の特異的反応性及び機能と、抗体の特性である補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び長い生体内半減期を保有することができる。
[発明の効果]
本発明の抗体薬物複合体は、抗体が特異的に結合する標的に薬物を効果的に伝達することができ、体内薬物の半減期を増進させて治療効果を向上させることができる。特に、本発明の二重特異性セツキシマブ×抗コチニン抗体及びデュオカルマイシンと接合された二価のコチニン-ペプチドの複合体は、KRAS突然変異を有するEGFR陽性セツキシマブ難治性肺腺癌に著しい抗腫瘍活性を示す。
【0033】
また、本発明の抗体薬物複合体プラットホームは、抗体の最適化を要せず、単純培養によって細胞毒性製剤を関心抗体に結合することで多段階複合体の結合段階を大幅減らすことができる。即ち、本発明の抗体薬物複合体プラットホームは、従来のADCの限界を乗り越え、究極的にさらに効果的な治療剤の開発に使用することができる。
[図面の簡単な説明]
図1a~図1dは、二重特異性(セツキシマブ×抗コチニン)抗体(ERC6)の生成及び特性を示す。図1aは、二重特異性抗体を用いた抗体薬物複合体(ADC)プラットホームの概略図である。二重特異性(セツキシマブ×抗コチニン)抗体(ERC6)は、ヒトEGFR及びコチニンペイロードへの結合特異性を共に有するように設計される。図1bは、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)の結果を示す。精製されたERC6を4~12%(w/v)SDS-PAGEに投入した。クマシーブリリアントブルーでゲルを染色することでバンドを視覚化した。一番または二番レーンは、各々還元剤があるか、またはないサンプルである。図1cは、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)である。高性能の液体クロマトグラフィーを用いたSEC(SEC-HPLC)によって精製されたERC6を分析した。図1dは、ERC6の薬物動態の分析結果を示す。200μgのERC6をBalb/cマウス(n=4)の静脈内に注射し、血液サンプルを眼窩内の静脈から収集した。ERC6の循環血清水準を酵素免疫測定法(ELISA)によって分析した。結果は、3回の実験から得た平均±SDで示した。
【0034】
図2a~図2dは、ヒトEGFR及びコチニンへのERC6の結合反応性を示す。図2aは、酵素免疫測定法による結果を示す。セツキシマブ、抗コチニンIgG及びERC6を、ヒトEGFRまたはコチニンがコーティングされたマイクロタイタープレートのウェルに添加した。ウェルをHRP複合の抗ヒトIgG(Fab-特異的)抗体で探知した(probed)。図2bは、架橋結合したdPEG6ビオチンと二価のコチニン接合したペプチドの化学的構造を示す (コチニン-ビオチン)。図2cは、セツキシマブ、抗コチニンIgG及びERC6をヒトEGFRでコーティングされたマイクロタイタープレートの他のウェルに添加した後、コチニン-ビオチンを添加し、ウェルをHRP結合のストレプトアビジンで探知した結果である。バックグラウンド信号(background signal)は、BSAでコーティングされた対照群のウェルで測定した。吸光度は、650nmにて測定した。図2dは、ERC6複合のコチニン-ビオチンの薬物動態の分析結果を示す。100μLの滅菌PBSに溶解した1.85μgのコチニン-ビオチンと共に、事前培養した200μgのERC6をBalb/cマウス(n=4)の静脈に注射した。血液サンプルを眼窩内の静脈から収集し、ERC6複合のコチニン-ビオチンの循環血清水準をELISAによって測定した。結果を、3回の実験から得た平均±SDで示した。
【0035】
図3a~図3eは、EGFR陽性肺腺癌の細胞株にERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。図3aは、流動細胞分析結果である。コチニン-ビオチンが存在するか、存在しない場合、セツキシマブ、抗コチニンIgGまたはERC6と共にA549細胞を培養した。分析のために、細胞をPE接合したストレプトアビジン及びFITC接合した抗ヒトFcで探知した。図3bは、自由デュオカルマイシン(free duocarmycin)の構造を示す。図3cは、四つのデュオカルマイシンと架橋結合した二価のコチニン接合したペプチドの化学的構造を示す(コチニン-デュオカルマイシン)。Rは、バリン-シトルリンPAB連結されたジメチルアミノエチルデュオカルマイシンを示す。図3dは、自由デュオカルマイシンの細胞生存力の分析結果である。図3eは、コチニン-デュオカルマイシンの細胞生存力の分析結果である。A549細胞株をパリビズマブ及びDMSO(●);セツキシマブ及びDMSO(塗りつぶしの四角);ERC6及びDMSO(塗りつぶしの三角);パリビズマブ及びデュオカルマイシン(○);セツキシマブ及びデュオカルマイシン(□);ERC6及びデュオカルマイシン(△)で処理した。パリビズマブは、二重特異性抗体の同型の対照群として用いられた。DMSOは、コチニン-デュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いられた。細胞を72時間培養した後、Cell Titer-Glo試薬を用いて細胞のATP含量を測定することで相対的な細胞生存力を測定した。結果は、3回の実験から得た平均±SDで示した。
【0036】
図4a~図4eは、マウス異種移植腫瘍モデルにおいてERC6複合のコチニンデュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。A549細胞を各々の Balb/cヌードマウスの左側及び右側のわき腹の皮下に注射した。腫瘍の体積が150mmに至ったとき、マウスを三つのグループにランダムで分けて(n=4/グループ)5週間処理した。各グループを、パリビズマブ及びコチニン-デュオカルマイシン、ERC6及びビヒクルまたはERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンで腹腔内に注射した。パリビズマブは、二重特異性抗体の同型対照群として用いた。DMSOは、コチニンデュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いた。図4aは、腫瘍の体積を32日間測定した結果である。図4bは、体重を処理期間の間に観察した結果である。図4cは、32日目の平均腫瘍体積である。図4dは、マウスが犠牲されたとき、解剖された腫瘍の平均質量である。図4eは、終点(end point)で三つの処理グループの腫瘍の写真を示す。結果は、平均±SDで示した;グループと比較*P<0.05、**P<0.01、スチューデントt検定(Student’s t test)。
【0037】
図5は、ERC6複合のコチニン-ビオチンの薬物動態の分析結果である。(a)100μLの滅菌PBSに1:1モル比で溶解された964pmoleのコチニン-ビオチンで事前培養した200μgのERC6を、Balb/c マウス(n=4)の静脈内に注射した。ペプチドは、二つのコチニン分子の間に、6mer、12merまたは18merの多様な長さを有する。血液サンプルを眼窩内の静脈から収集し、ERC6複合のコチニン-ビオチンの循環血清水準をELISAによって決定した。(b)総ERC6の循環血清水準をELISAによって測定した。結果は、平均±SDで示した;グループと比較*P<0.05、**P<0.01、スチューデントt検定(Student’s t test)。
【0038】
図6は、EGFR-陽性肺腺癌の細胞株にERC6複合のコチニン-DM1(emtansine)の抗増殖効果を示す。図6aは、四つのDM1と架橋結合した二価のコチニン接合したペプチドの化学的構造を示す(コチニン-DM1)。Rは、MCC連結されたDM1を示す。図6bは、コチニン-DM1の細胞生存力の分析結果である。A549細胞株をパリビズマブ及びDMSO(●);セツキシマブ及びDMSO(塗りつぶしの四角);ERC6及びDMSO(塗りつぶしの三角);パリビズマブ及びコチニン-DM1(○);セツキシマブ及びコチニン-DM1(□);ERC6及びコチニン-DM1(△)で処理した。パリビズマブを二重特異性抗体の同型対照群として用いた。DMSOをコチニン-デュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いた。細胞を72時間培養した後、相対的な細胞生存率をCell Titer-Glo試薬を用いて細胞ATP含量を測定することで決定した。結果は、3回の実験から得た平均±SDで示した。
[発明を実施するための形態]
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0039】
実施例1:細胞培養
A549(ヒト肺腺癌)細胞を韓国細胞株銀行から得て、5%のCO及び湿った環境で37℃で10%熱非活性化したウシ胎児血清(GIBCO,Grand Island,NY,USA)、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンで補充したRPMI-1640培地(WELGENE,韓国)に培養した。HEK293F細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)は、オービタルシェーキング培養基(Minitron,INFORS HT,Bottmingen,Switzerland)を用いて、135rpmで7%のCO及び70%の湿度で37℃にてベントキャップ(vent cap)付きErlenmeyer組織培養フラスコ(Corning Inc.,NY,USA)で、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを含むFreeStyleTM 293発現培地(GIBCO)で生長させた。
【0040】
実施例2:二重特異性セツキシマブ×抗コチニン抗体(ERC6)の製造及び精製
二重特異性セツキシマブ×抗コチニン抗体(ERC6)発現ベクターを製造するために、セツキシマブ軽鎖及びセツキシマブ重鎖-リンカー(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)-抗コチニンscFvをコーディングする遺伝子を化学的に合成した(Genscript,Picataway,NJ,USA)。制限部位、AgeI及びXbaIを、セツキシマブの軽鎖をコーディングする遺伝子の5’及び3’末端に各々挿入した。追加的な制限部位、NheI及びBsiWIを、セツキシマブの重鎖をコーディングする遺伝子の5’末端及び抗コチニンscFvの遺伝子の3’末端に各々挿入した。[Park S, Lee DH,Park JG,Lee YT,Chung J.A sensitive enzyme immunoassay for measuring cotinine in passive smokers.Clin Chim Acta 2010;411(17-18):1238-42]に開示の方法のように、軽鎖及び重鎖-リンカー-抗コチニンscFvを、再組合タンパク質の分泌のために設計された哺乳動物発現ベクターでサブクローンした。
【0041】
[Boussif O,Lezoualc’h F,Zanta MA,Mergny MD, Scherman D, Demeneix B et al. A versatile vector for gene and oligonucleotide transfer into cells in culture and in vivo:polyethylenimine.Proc Natl Acad Sci USA 1995;92(16):7297-301]に開示の方法のように、ERC6をコーディングする発現ベクターを、25-kDa線状ポリエチレンイミン(Polyscience,Warrington,PA,USA)を用いてHEK293F(Invitrogen)に形質注入した。[Kim H,Park S,Lee HK,Chung J.Application of bispecific antibody against antigen and hapten for immunodetection and immunopurification.Exp Mol Med 2013;45:e43]に開示の方法のように、ERC6を、タンパク質Aアガロースビーズ(RepliGen,Waltham,MA,USA)を用いて親和性クロマトグラフィーによって培養上澄液から精製した。
【0042】
実施例3:ソジウムドデシルサルフェート-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
精製されたERC6を製造者の指示に従ってNuPage4~12%のBis-Trisゲル(Invitrogen)を用いてソジウムドデシルサルフェート-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分析した。前記ゲルは、クマシーブリリアントブルーR-250(Amresco,Colon,OH,USA)で染色した。
【0043】
実施例4:サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
300Åの気孔を含む3μm粒子で包装されたBio SEC-3 カラム(7.8×300mm)が装着されたAgilent 1260 Infinity高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)システム(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を用いて、精製されたERC6を、SEC-HPLCによって分析した。移動相は、pH7.0の50mMソジウムホスフェート及び150mMソジウムクロライドを含む。20μLのERC6(1mg/ml)を注入し、30分間1mL/分の流速でイソクラティック溶出した。カラム流出物を280nmにて紫外線検出器でモニターし、mAUで示した。単量体、凝集体及び切片の百分率をピーク面積を基準にして定量化した。
【0044】
実施例5:コチニン複合体の合成
本実験に用いられた全てのペプチドは、Fmocペプチド固相合成(Peptron、韓国)を用いて合成した。二つのトランス-4’-コチニンカルボックシル酸(Sigma-Aldrich,St Louis,MO,USA)を、GGGGSKGGGGSK及びGSKGSKGSKGSKKペプチドのN末端及びC末端に自由アミン基で架橋結合した。トリフェニルホスフィン(tetrakis)パラジウムでペプチドの中間でリシン上のアリルオキシカルボニル(alloc)基を除去した後、dPEG6(Peptide international Inc.,Louisville,KY,USA)を、GGGGSKGGGGSKペプチドの自由アミン基に結合した。その後、ビオチンをdPEG6結合したペプチド(Peptron社、韓国)上の自由アミンに架橋結合した。単純化のために、ビオチンと架橋結合した二価のコチニン接合したペプチド(コチニン-GGGGSK[(dPEG6)-ビオチン]GGGGSK-コチニン)を、コチニン-ビオチンとして略称する。
【0045】
四つのバリン-シトルリンPAB連結されたジメチルアミノエチルデュオカルマイシンを二価のコチニン架橋結合したGSKGSKGSKGSKKペプチド(Concortis,San Diego,CA,USA)内の四つのリシンに存在する自由アミノ基に結合した。単純化のために、四つのデュオカルマイシンと架橋結合した二価のコチニン接合したペプチド(コチニン-[GSK(デュオカルマイシン)]K-コチニン)を、コチニン-デュオカルマイシンとして略称する。
【0046】
コチニン-ビオチン及びコチニン-デュオカルマイシンをC18カラムを用いて逆相HPLCを用いて精製した。精製後、これらをCapcell Pak C18 カラム(4.6×50mm,120Å)(Shiseido,Tokyo,Japan)付きのAgilent 1100 capillary LC及びHPLCシステム(Shimadzu Corp.,Kyoto,Japan)を用いた質量分析によって分析及び検証した。
【0047】
実施例6:ERC6とコチニンペイロード(payloads)との複合化
ERC6とコチニン接合したペイロードの複合体を生成するために、コチニンペイロード及びERC6をピペッティング(pipetting)アップ及びダウンによって1:1のモル比で混合した。その後、混合物を室温で30分間培養した。その後、複合体を追加的な変更なくインビトロ(in vitro)またはインビボ(in vivo)で使用した。
【0048】
実施例7:酵素免疫測定法(ELISA)による分析
96ウェルマイクロタイタープレートのウェル(Corning社)を、コーティングバッファー(蒸留水内に0.1M重炭酸ナトリウム、pH8.6)内のヒトEGFR(Sigma)またはBSA結合したコチニンで4℃で一晩中コーティングし、37℃で1時間の間PBS内の3%[w/v]ウシ胎児血清(BSA)で遮断した。50μL遮断バッファー内の1μg/mL濃度の抗体を各ウェルに添加し、37℃で2時間培養した。PBS内の0.05%[v/v]Tween20(PBST)で洗浄した後、遮断バッファー内に希釈されたHRP結合の抗ヒトIgG(Fab特異的)抗体(Sigma)を37℃で1時間培養した。その後、プレートを0.05%PBSTでさらに洗浄し、50μLの3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン基質溶液(TMB)(GenDEPOT,Barker,TX,USA)を各ウェルに添加し、吸光度をMultiskan Ascentマイクロプレートリーダー(Labsystems,Helsinki,Finland)を用いて650nmで測定した。
【0049】
ERC6の二重特異性を確認するために、ヒトEGFRコーティングされたウェルを前記のように抗体と共に培養した。0.05%PBSTで洗浄した後、コチニン-ビオチンを各ウェルに添加し、37℃で1時間培養した。遮断バッファー内に希釈されたHRP結合のストレプトアビジン(Thermo Scientific Pierce,Rockford,IL,USA)を後で添加し、37℃で1時間培養した。洗浄後、TMBを各ウェルに添加し、吸光度を650nmで測定した。
【0050】
実施例8:薬物動態分析(Pharmacokinetic analysis)
本実験に用いられた全ての実験動物は、韓国国立癌センター研究所の動物実験倫理委員会によって検討され承認された(許可番号:NCC-15-267)。動物は、AAALAC国際動物保護政策によって国立癌センターの動物施設で管理した。
【0051】
8週齢の雄のBalb/cマウスに1:1のモル比で100μL滅菌PBSに溶解されたERC6(200μg)及びコチニン-ビオチン(1.85μg)の複合体を静脈に注射した(n=4/グループ)。注射後、0、1、24、48、72、96及び168時間に眼窩内の静脈から血液サンプルを収集した。血液が凝固するまでサンプルを室温で2時間維持した。その後、4℃で15分間3500rpmで遠心分離によって血清を収集した。全体ERC6及びERC6複合のコチニンビオチンの循環血清の水準は、酵素免疫測定法(ELISA)によって測定した。
【0052】
血清サンプル内の総ERC6は、下記のようにして測定した:96-ウェルマイクロタイタープレートのウェル(Corning社)は、4℃で一晩中コーティングバッファー内でヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)捕獲抗体(EMD Millipore,Darmstadt,Germany)でコーティングし、PBS内の3%BSAで遮断した。遮断バッファー及び標準溶液内に希釈された血清サンプルを各ウェルに添加し、37℃で2時間培養した。0.05%PBSTで洗浄した後、遮断バッファー内に希釈されたHRP結合の抗ヒトCkappa抗体(Chemicon-Milipore,Billerica,MA,USA)を添加し、37℃で1時間培養した。洗浄した後、TMB(GenDEPOT)を各ウェルに添加し、吸光度を650nmで測定した。
【0053】
血清サンプル内のERC6及びコチニン-ビオチンの複合体を下記のように測定した:ヒトEGFR(Sigma)コーティングされたウェルを上述したように血清サンプルと共に培養した。0.05%PBSTで洗浄した後、HRP結合したストレプトアビジン(Thermo Fisher Scientific Pierce)を添加し、37℃で1時間培養した。洗浄した後、TMBを各ウェルに添加し、吸光度を650nmで測定した。
【0054】
実施例9:流動細胞分析(Flow cytometry)
各サンプル当り4×10細胞の最終濃度でA549細胞をv-bottom96-ウェルプレート(Corning社)にシードした(seeded)。30分間37℃で流動細胞分析バッファー(PBS内に1%[w/v]BSAを含む0.1%[w/v]アジ化ナトリウム)内に希釈されたERC6及びコチニン-ビオチンの0または100nMで細胞を処理した。対照群の実験として、ERC6の代わりにパリビズマブ(palivizumab)(Synagis,Boehringer Ingelheim Pharma,Biberach an der Riss,Germany)、抗コチニンIgGまたはセツキシマブ(Erbitux,Merck K GaA,Darmstadt,Germany)を用いた。流動細胞分析バッファーで洗浄した後、暗い所で37℃で1時間の間、ピコエリスリン(PE)結合したストレプトアビジン(BD Biosciences Pharminogen,San Diego,CA,USA)及びFITC結合した抗ヒトIgG(Fc特異的)抗体(Thermo Fisher Scientific Pierce)と共に細胞を培養した。同じバッファーで追加洗浄をした後、細胞を200μLのPBSに再懸濁し、488nmのレーザーが装着されたFACS Canto II instrument(BD Bioscience,San Jose,CA,USA)を用いて流動細胞分析を行った。測定当り1万個の細胞が検出されており、FlowJo ソフトウェア(TreeStar,Ashland,OR,USA)を用いてデータを分析した。
【0055】
実施例10:細胞生存能の分析
腫瘍細胞生存力に対するERC6及びコチニン-デュオカルマイシンの影響をCell Titer-Glo試薬(Promega Corp.,Madison,WI,USA)を用いて評価した。A549細胞を黒色壁の96-ウェルプレート(ウェル当り4,000個の細胞)においてRPMI-1640培地50μLにシードし、5%のCO及び湿った環境で37℃で一晩中接着した。その後、ERC6及びコチニン-デュオカルマイシンの複合体を新鮮な培養培地で10倍系列希釈した(0.02nM~2000nM)。対照群の実験において、ERC6の代わりにパリビズマブ(Boehringer Ingelheim Pharma)、またはセツキシマブ(Merck K GaA)を用いた。50μLの培地内のコチニン-デュオカルマイシン及び抗体希釈物を各ウェルに添加し、72時間培養した。各ウェルにCell Titer-Glo試薬(Promega Corp.)を添加した後、製造者の指示に従ってマイクロプレート発光測定器(microplate luminometer)(PerkinElmer,Waltham,MA,USA)を用いて発光信号を測定した。全ての実験は、3倍数で行った。相対的な細胞生存力は、対照群の発光信号で割ることで計算した[%生存力=(実験(Test)-背景(Background))/(対照群(Control)-背景)×100]。
【0056】
実施例11:異種移植(Xenograft)
6週齢の雌Balb/cヌードマウスの左側及び右側のわき腹の皮下にA549(1×10細胞)を注射した。腫瘍の体積が約150mmに到達するとき、全ての動物を三つのグループにランダムで分けて(n=4/グループ) 5週間処理した。初めの2週間は、一週に二回、適切な対照群をマウスの腹腔に注射した:グループIは、パリビズマブ(2.15mg/kg)及びコチニン-デュオカルマイシン(95μg/kg)を投与;グループIIは、ERC6(3mg/kg)及びジメチルスルホキシド(DMSO)を投与;グループIIIは、ERC6(3mg/kg)及びコチニン-デュオカルマイシン(95μg/kg)の複合体を投与。その後、前記薬物の3倍の投与量を、以後の3週間、週3回注射した。パリビズマブは、二重特異性抗体の同型(isotype)対照群として用いられた。DMSOは、コチニン-デュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いられた。腫瘍の体積は、注射してから32日後、一週間に二回、デジタルキャリパを用いて測定した。腫瘍の体積は、長さ×(幅)×0.5で計算し、前記長さは最も長い軸であり、幅は前記長さに垂直な距離である。全身毒性は、週二回、体重を測定して評価した。注射してから35日目にマウスを犠牲させ、腫瘍を切開して重さを測定した。
【0057】
実施例12:免疫蛍光法(Immunofluorescence)
A549(1×10細胞)をBalb/cヌードマウスの左側及び右側わき腹の皮下に注射した。平均腫瘍体積が500mmに到達したとき、腫瘍を有するマウスに、下記の単一腹腔内(i.p.)注射を投与した:グループIは、144μgのパリビズマブ及び1.85μgのコチニン-ビオチンを投与;グループIIは、200μgのERC6及びビヒクル(蒸留水)を投与;グループIIIは、ERC6(200μg)及びコチニン-ビオチン(1.85μg)の複合体を投与。注射してから24時間後にマウスをイソフルランで麻酔し、PBS内の4%[w/v]パラホルムアルデヒド10mlで経心腔的潅流(transcardial perfusion)で安楽死した。解剖された腫瘍を4℃で24時間の間、PBS中に30%[w/v]スクロースを含む凍結保存溶液中に平衡化し、最適切断温度(OCT)を有する内装培地(Sakura Finetek,Torrance,CA,USA)に入れて凍結し、切開するまで-80℃で保存した。免疫蛍光染色のために、4μmの厚さで凍結切片(cryosections)を準備し、PBS内の4%パラホルムアルデヒドで10分間室温で固定した。PBSで洗浄した後、前記切片(sections)を室温で1時間の間、IHC-Tek 抗体希釈液(pH7.4)(IHC WORLD,Woodstock,MD, USA)内の10%[v/v]正常ヤギ血清(normal goat serum)(CST,Danvers,MA,USA)で遮断した。前記組織切片をAlexa Fluor 488結合したストレプトアビジン(Molecular Probes Inc.,Eugene,OR,USA)と共に8時間培養し、Alexa Fluor 594結合した抗ヒトIgG抗体(Molecular Probes Inc.)で4℃の暗くて湿ったチャンバで16時間染色した。PBSで洗浄した後、製造者の指示に従って4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドル(DAPI;Pierce,Rockford,IL,USA)で核を染色した。前記切片を蛍光固定培地(DAKO,Glostrup,Denmark)と共にスライド上に固定し、FV1000レーザースキャニング顕微鏡(Olympus,Tokyo,Japan)を用いてFV10 ASWソフトウェアで40倍の拡大イメージを得た。放出及び励起フィルターは同時に3色イメージ化するように配列した。
【0058】
統計分析
実験に使用された統計は、GraphPad Prism version 5.0ソフトウェア(GraphPad Software Inc.,San Diego,CA,USA)を用いて行った。結果は、表示された独立的な測定回数に対する±標準偏差(SD)の平均値で示した。統計的有意性は、2標本スチューデントt検定(two tailed unpaired Student’s t-test)を用いて決定し、0.05未満のp値は統計的に重要なものとして看做した。P値は、図面及びその凡例で示した。
【0059】
実験例1:4価の二重特異性抗体フォーマットを用いた抗体薬物複合体プラットホームの設計
重鎖のC3ドメインに二つの一本鎖抗体(scFvs)を融合することでIgGに基づく4価のフォーマットで二重特異性抗体を設計した(図1a)。柔軟性のために、グリシン及びセリンの豊富なペプチドリンカー[(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)]をC3ドメインとscFvとの間に挿入した。これによって、二重特異性抗体の二つのFabアーム及び重鎖のC末端上における二つのsvFvを含む4価の抗体が生成され、各々上皮成長因子受容体(EGFR)とコチニンとを同時に標的化した。二重特異的セツキシマブ×抗コチニンscFv抗体(ERC6)を開発するために、セツキシマブIgG、リンカー及び抗コチニンscFvをコーディングする遺伝子構造を真核発現ベクターにクローニングした。ER6は、タンパク質A親和性カラムクロマトグラフィーを用いて一時的に形質導入された(transfected)HEK393F培養上澄液から精製した。
【0060】
従来の抗体薬物複合体(ADC)は、抗体に薬物を結合するとき、複合体に対する多段階の過程を要し、通常、最適化過程が必須となる。一方、コチニン結合の二重特異性抗体を使用する薬物の標的伝達は、コチニンと薬物との接合を要する。そこで、カルボキシコチニン(トランス-4-コチニンカルボキシル酸)化学架橋段階をよく確立すれば、従来のADCよりもプラットホームに利点がある。二つのカルボキシコチニンは、13個のアミノ酸長さのペプチドのN末端及びC末端で架橋結合した。二価のコチニン架橋結合したペプチドに対する二重特異性抗体の結合力は、原子価(valency)効果によってより安定した(図5)。目的に応じてペプチド内のリシンのε-アミノ酸鎖に多様なペイロードを結合することができる。本発明において、ビオチンまたはデュオカルマイシンを二価のコチニンが複合されたペプチドに結合させた(図2b、図3c)。
【0061】
実験例2:二重特異的セツキシマブ×抗コチニンscFv抗体(ERC6)の特徴
精製されたERC6の純度及び分子量を分析するために、ERC6をクマシーブリリアントブルーで染色されたソジウムドデシルサルフェート(SDS)ポリアクリルアミドゲルで視覚化した。206kDaの分子量を有する主要バンドは、非還元条件で観察されており、78kDa及び25kDaの二つの主要バンドが還元条件で観察された(図1b)。206kDaの分子量を有する再組合タンパク質は、ProtParamツール(ExPASy)によって予測された、完全に組み立てられたERC6に相応する。25kDaの非変形の軽鎖及び75kDaのC3ドメイン上における一つのscFvと融合した重鎖は、二硫化結合の減少によって視覚化した。したがって、データは、二重特異性抗体が純粋で損傷なく製造されたことを立証した。
【0062】
精製された再組合タンパク質の物理化学的性質を高圧液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)を用いたサイズ排除クロマトグラフィで分析した。ERC6は、正しく組み立てられた形態に相応する明確な分子量を有する単一主要ピークとして示された。このようなデータは、ERC6が切片を生産せず、凝集することなく、マルチマー(multi-mers)を生産することを示す(図1c)。
【0063】
また、薬物動態分析をインビボ(in vivo)でERC6の安定性を測定するために行った。ERC6の血清半減期をBalb/cマウス(n=4)から決定した。ERC6の循環血清水準は、眼窩内の静脈から得た血液サンプルを用いて酵素免疫測定法(ELISA)によって決定した。静脈内に注入されたERC6は、マウスの血清で5日目まで安定し、これは、セツキシマブIgGの結果と類似であった。
【0064】
実験例3:ヒトEGFR及びコチニンへのERC6結合反応性
EGFR及びコチニンに対してERC6の反応性を実験するために、酵素免疫測定による分析を適用した(図2a)。EGFRに対するERC6の結合活性が確認されることで、EGFRに対する反応性が追加的scFvとは関係ないことが立証された。また、コチニンに対する抗コチニンscFvモジュールの親和度が維持されたことが確認された(図2a)。
【0065】
ERC6がヒトEGFR及びコチニンに同時に結合するか否かを決定するために、ストレプトアビジン-ビオチン検出システムを用いて追加的な酵素免疫測定を行った。ヒトEGFRコーティングされたマイクロタイタープレートをERC6と共に培養した後、ビオチンと架橋結合した二価のコチニン結合したペプチド(コチニン-ビオチン)(図2b)を各ウェルに添加した後、HRP結合したストレプトアビジンを添加した。ERC6は、EGFRとコチニンとに同時に結合した(図2c)。
【0066】
ERC6との複合体を形成するとき、コチニンペイロードの安全性を評価するために、薬物動態分析を行った。コチニン-ビオチンで予め培養されたERC6をマウス(n=4)の静脈に注射して循環血清水準をELISAによって測定した。コチニンペイロードは、その低い分子量(t1/2=0.557h)によってマウス血流で迅速に除去される。一方、コチニン-ビオチンの循環半減期は、ERC6に結合することで延長される(t1/2=18時間)(図2d)。コチニンに対するERC6の二元性は、増加した結合力によってERC6の複合コチニン-ビオチンの安定性を向上させる(図6)。また、コチニン-ビオチンのクリアランス(clearance)パターンは、ERC6の分解パターンと一致し、これは、複合体の半減期が主にERC6の薬物動態に依存することを意味する(図2d)。
【0067】
実験例4:KRAS変異を有する肺腺癌細胞に力強い細胞毒性効果を誘発するERC6複合のコチニン-デュオカルマイシン
A549は、セツキシマブのようなEGFR標的治療に対する一次抵抗性を示すKRAS突然変異と共に野生型EGFRを発現する肺腺癌細胞株である。したがって、野生型のEGFR及びKRAS突然変異を有する癌細胞にERC6結合したコチニン細胞毒性剤の効能をテストするために前記細胞株を使用した。
【0068】
細胞毒性分析に先立ち、A549細胞の表面におけるEGFRの発現は流動細胞分析(flow cytometry analysis)によって確認した(図3a)。ERC6は、セツキシマブと類似の水準で原形質膜に発現したEGFRと類似の結合活性を示した。予想のとおり、コチニン-ビオチンは、ERC6が存在するときのみにA549細胞に結合活性を示した。コチニン-ビオチン及び抗コチニンIgGまたはセツキシマブの混合物は、ストレプトアビジン-PEに起因した有意味な信号を生成しなかった。さらに、コチニン-ビオチンは、EGFRに対するERC6の結合能力に影響を及ぼさなかった。このようなデータは、ERC6が同時結合活性によって標的特異的方式でEGFR 陽性細胞にコチニン-ビオチンの伝達を媒介することを立証する。
【0069】
A549細胞に対する細胞毒性活性は、細胞生存能分析によって調査した(図3e)。相対的な細胞生存力は生存可能な細胞数と直接的に関連する細胞ATP含量を測定することで決定した。ペイロードのないデュオカルマイシン(自由デュオカルマイシン)は、コチニン-デュオカルマイシンよりも強力な抗腫瘍効果を示した(図3d、図3e)。コチニン-デュオカルマイシンの毒性が自由デュオカルマイシンよりも低ければ、細胞質膜を介した浸透が余り効率的ではない。
【0070】
ERC6またはセツキシマブもA549細胞のEGFR標的治療に対する一次抵抗性のため、A549細胞の増殖を有意味に抑制できなかった(図3e)。しかし、ERC6とコチニン-デュオカルマイシンとを組み合わせた場合、セツキシマブまたは陰性対照群の抗体と比較するとき、コチニン-デュオカルマイシン混合物に比べて細胞毒性効果が大幅向上した。
【0071】
最大抑制濃度の半分(IC50)は、0.3nMである。実験結果は、ERC6が受容体を介した飲食作用(endocytosis)によって、EGFR陽性細胞へのコチニン-デュオカルマイシンの内在化(internalization)を効率的に促進することを立証した。結果的に、ERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンは、セツキシマブのKRAS媒介の一次抵抗性を克服することができた。
また、追加実験によってERC6とコチニン-エムタンシン(Cot-DM1)とが組み合わされた抗体薬物複合体の細胞毒性効果を実験した。このような抗体薬物複合体も、前記コチニン-デュオカルマイシンが組み合わせられた複合体と同様に、A549細胞株に対して著しく高い細胞毒性効果を示した(図6b)。
【0072】
実験例5:肺腺癌を有する動物モデルにおいて腫瘍の成長を抑制するERC6複合のコチニン-デュオカルマイシン
ERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンのインビボ(in vivo)効能を評価するために、セツキシマブ-難治性(refractory)A549細胞をマウス(n=4/グループ)に移植した。腫瘍の体積が150mmに至ったとき、パリビズマブ及びコチニン-デュオカルマイシン、ERC6及びビヒクルまたはERC6複合のデュオカルマイシンを5週間腹腔内に注射した。マウスに薬物を2週間は週2回、その後、3週間は週3回投与した。
【0073】
ERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンを投与したマウスは、コチニン-デュオカルマイシンまたはERC6単独で処理した動物に比べて腫瘍の成長が抑制されることが示された(図4a)。コチニン-デュオカルマイシンがインビトロでA549に強力な抗増殖効果を示したが、二重特異性抗体の同型(isotype)対照群は、インビボで腫瘍の成長を抑制することができなかった。このような観察結果は、インビボの条件下でコチニン-デュオカルマイシンのみが選択的に腫瘍部位に伝達され、腫瘍の成長を抑制することができないことを示す。非特異性及び低い分子量によるマウスの血流からの迅速な除去は、このような効能不足を説明することができる。一方、ERC6は、コチニンデュオカルマイシンの循環半減期を延長し、EGFR発現腫瘍組織に伝達されるようにする。したがって、ERC6及びコチニン-デュオカルマイシンは、インビボにおけるEGFR陽性セツキシマブ-難治性腫瘍において抗増殖効能を相乗的に向上させる。
【0074】
また、5週間の処理期間の間、マウスの有意味な体重減少はなかった(図4b)。このような観察結果は、間接的にERC6及びコチニン-デュオカルマイシンには全身毒性がないことを意味する。結果的に、このようなデータは、ERC6が薬物伝達体として作用し、全身毒性なく標的特異的な方式でコチニン結合細胞毒性薬物をEGFR発現腫瘍組織に選択的に伝達することができることを示す。
【0075】
実験例6:マウス異種移植腫瘍モデルにおけるERC6複合のコチニンペイロードの組織分布
薬物動態分析は、ERC6複合されたペイロードの循環半減期がERC6に結合することで延長されることを立証した。抗原発現腫瘍組織へのコチニンペイロードの特異的伝達を調査するために、A549異種移植マウスモデルにおいて免疫蛍光分析を行った。A549細胞を、各Balb/cヌードマウスの左側わき腹の皮下に注射した。腫瘍が500mmに至ったとき、腫瘍保有マウスにパリビズマブ及びコチニン-ビオチン、セツキシマブ及びビヒクルまたはERC6複合のコチニン-ビオチンを腹腔内に注射した。注射してから24時間後に動物を犠牲させ、解剖した腫瘍組織をエクスビボ(ex vivo)イメージ化した。腫瘍組織上のコチニンペイロード及び抗体を蛍光標識された二次抗体を通じて検出した。抗体は、Alexa 594標識された抗ヒトFc(赤色)によって検出され、コチニン-ビオチンは、Alexa 488標識されたストレプトアビジン(緑色)によって検出された。参照までに、核はDAPI(青色)で染色し、イメージ倍率は×40であった。共焦点顕微鏡によってERC6複合コチニン-ビオチンの組織分布を観察した。
【0076】
二重特異性抗体の同型(isotype)対照群で使われたパリビズマブと比較するとき、ヒトEGFR陽性腫瘍組織にERC6の蓄積が観察された。また、コチニン-ビオチンの腫瘍内における位置は、ERC6を注射した場合のみに観察された。ERC6のないコチニン-ビオチンは、その低い分子量のため血流から速く除去される。このような観察結果は、ERC6が標的特異的方式でインビボで希望する腫瘍部位に選択的にコチニンペイロードを伝達するということを証明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1a図1aは、二重特異性(セツキシマブ×抗コチニン)抗体(ERC6)の生成及び特性を示す。図1aは、二重特異性抗体を用いた抗体薬物複合体(ADC)プラットホームの概略図である。二重特異性(セツキシマブ×抗コチニン)抗体(ERC6)は、ヒトEGFR及びコチニンペイロードへの結合特異性を共に有するように設計される。
図1b図1bは、二重特異性(セツキシマブ×抗コチニン)抗体(ERC6)の生成及び特性を示す。図1bは、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)の結果を示す。精製されたERC6を4~12%(w/v)SDS-PAGEに投入した。クマシーブリリアントブルーでゲルを染色することでバンドを視覚化した。一番または二番レーンは、各々還元剤があるか、またはないサンプルである。
図1c図1cは、二重特異性(セツキシマブ×抗コチニン)抗体(ERC6)の生成及び特性を示す。図1cは、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)である。高性能の液体クロマトグラフィーを用いたSEC(SEC-HPLC)によって精製されたERC6を分析した。
図1d図1dは、二重特異性(セツキシマブ×抗コチニン)抗体(ERC6)の生成及び特性を示す。図1dは、ERC6の薬物動態の分析結果を示す。200μgのERC6をBalb/cマウス(n=4)の静脈内に注射し、血液サンプルを眼窩内の静脈から収集した。ERC6の循環血清水準を酵素免疫測定法(ELISA)によって分析した。結果は、3回の実験から得た平均±SDで示した。
図2a図2aは、ヒトEGFR及びコチニンへのERC6の結合反応性を示す。図2aは、酵素免疫測定法による結果を示す。セツキシマブ、抗コチニンIgG及びERC6を、ヒトEGFRまたはコチニンがコーティングされたマイクロタイタープレートのウェルに添加した。ウェルをHRP複合の抗ヒトIgG(Fab-特異的)抗体で探知した(probed)。
図2b図2bは、ヒトEGFR及びコチニンへのERC6の結合反応性を示す。図2bは、架橋結合したdPEG6ビオチンと二価のコチニン接合したペプチドの化学的構造を示す (コチニン-ビオチン)。
図2c図2cは、ヒトEGFR及びコチニンへのERC6の結合反応性を示す。図2cは、セツキシマブ、抗コチニンIgG及びERC6をヒトEGFRでコーティングされたマイクロタイタープレートの他のウェルに添加した後、コチニン-ビオチンを添加し、ウェルをHRP結合のストレプトアビジンで探知した結果である。バックグラウンド信号(background signal)は、BSAでコーティングされた対照群のウェルで測定した。吸光度は、650nmにて測定した。
図2d図2dは、ヒトEGFR及びコチニンへのERC6の結合反応性を示す。図2dは、ERC6複合のコチニン-ビオチンの薬物動態の分析結果を示す。100μLの滅菌PBSに溶解した1.85μgのコチニン-ビオチンと共に、事前培養した200μgのERC6をBalb/cマウス(n=4)の静脈に注射した。血液サンプルを眼窩内の静脈から収集し、ERC6複合のコチニン-ビオチンの循環血清水準をELISAによって測定した。結果を、3回の実験から得た平均±SDで示した。
図3a図3aは、EGFR陽性肺腺癌の細胞株にERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。図3aは、流動細胞分析結果である。コチニン-ビオチンが存在するか、存在しない場合、セツキシマブ、抗コチニンIgGまたはERC6と共にA549細胞を培養した。分析のために、細胞をPE接合したストレプトアビジン及びFITC接合した抗ヒトFcで探知した。
図3b図3bは、EGFR陽性肺腺癌の細胞株にERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。図3bは、自由デュオカルマイシン(free duocarmycin)の構造を示す。
図3c図3cは、EGFR陽性肺腺癌の細胞株にERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。図3cは、四つのデュオカルマイシンと架橋結合した二価のコチニン接合したペプチドの化学的構造を示す(コチニン-デュオカルマイシン)。Rは、バリン-シトルリンPAB連結されたジメチルアミノエチルデュオカルマイシンを示す。
図3d図3dは、EGFR陽性肺腺癌の細胞株にERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。図3dは、自由デュオカルマイシンの細胞生存力の分析結果である。
図3e図3eは、EGFR陽性肺腺癌の細胞株にERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。図3eは、コチニン-デュオカルマイシンの細胞生存力の分析結果である。A549細胞株をパリビズマブ及びDMSO(●);セツキシマブ及びDMSO(塗りつぶしの四角);ERC6及びDMSO(塗りつぶしの三角);パリビズマブ及びデュオカルマイシン(○);セツキシマブ及びデュオカルマイシン(□);ERC6及びデュオカルマイシン(△)で処理した。パリビズマブは、二重特異性抗体の同型の対照群として用いられた。DMSOは、コチニン-デュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いられた。細胞を72時間培養した後、Cell Titer-Glo試薬を用いて細胞のATP含量を測定することで相対的な細胞生存力を測定した。結果は、3回の実験から得た平均±SDで示した。
図4a図4aは、マウス異種移植腫瘍モデルにおいてERC6複合のコチニンデュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。A549細胞を各々の Balb/cヌードマウスの左側及び右側のわき腹の皮下に注射した。腫瘍の体積が150mmに至ったとき、マウスを三つのグループにランダムで分けて(n=4/グループ)5週間処理した。各グループを、パリビズマブ及びコチニン-デュオカルマイシン、ERC6及びビヒクルまたはERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンで腹腔内に注射した。パリビズマブは、二重特異性抗体の同型対照群として用いた。DMSOは、コチニンデュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いた。図4aは、腫瘍の体積を32日間測定した結果である。
図4b図4bは、マウス異種移植腫瘍モデルにおいてERC6複合のコチニンデュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。A549細胞を各々の Balb/cヌードマウスの左側及び右側のわき腹の皮下に注射した。腫瘍の体積が150mmに至ったとき、マウスを三つのグループにランダムで分けて(n=4/グループ)5週間処理した。各グループを、パリビズマブ及びコチニン-デュオカルマイシン、ERC6及びビヒクルまたはERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンで腹腔内に注射した。パリビズマブは、二重特異性抗体の同型対照群として用いた。DMSOは、コチニンデュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いた。図4bは、体重を処理期間の間に観察した結果である。
図4c図4cは、マウス異種移植腫瘍モデルにおいてERC6複合のコチニンデュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。A549細胞を各々の Balb/cヌードマウスの左側及び右側のわき腹の皮下に注射した。腫瘍の体積が150mmに至ったとき、マウスを三つのグループにランダムで分けて(n=4/グループ)5週間処理した。各グループを、パリビズマブ及びコチニン-デュオカルマイシン、ERC6及びビヒクルまたはERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンで腹腔内に注射した。パリビズマブは、二重特異性抗体の同型対照群として用いた。DMSOは、コチニンデュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いた。図4cは、32日目の平均腫瘍体積である。
図4d図4dは、マウス異種移植腫瘍モデルにおいてERC6複合のコチニンデュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。A549細胞を各々の Balb/cヌードマウスの左側及び右側のわき腹の皮下に注射した。腫瘍の体積が150mmに至ったとき、マウスを三つのグループにランダムで分けて(n=4/グループ)5週間処理した。各グループを、パリビズマブ及びコチニン-デュオカルマイシン、ERC6及びビヒクルまたはERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンで腹腔内に注射した。パリビズマブは、二重特異性抗体の同型対照群として用いた。DMSOは、コチニンデュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いた。図4dは、マウスが犠牲されたとき、解剖された腫瘍の平均質量である。
図4e図4eは、マウス異種移植腫瘍モデルにおいてERC6複合のコチニンデュオカルマイシンの増進した抗増殖効果を示す。A549細胞を各々の Balb/cヌードマウスの左側及び右側のわき腹の皮下に注射した。腫瘍の体積が150mmに至ったとき、マウスを三つのグループにランダムで分けて(n=4/グループ)5週間処理した。各グループを、パリビズマブ及びコチニン-デュオカルマイシン、ERC6及びビヒクルまたはERC6複合のコチニン-デュオカルマイシンで腹腔内に注射した。パリビズマブは、二重特異性抗体の同型対照群として用いた。DMSOは、コチニンデュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いた。図4eは、終点(end point)で三つの処理グループの腫瘍の写真を示す。結果は、平均±SDで示した;グループと比較*P<0.05、**P<0.01、スチューデントt検定(Student’s t test)。
図5a図5は、ERC6複合のコチニン-ビオチンの薬物動態の分析結果である。(a)100μLの滅菌PBSに1:1モル比で溶解された964pmoleのコチニン-ビオチンで事前培養した200μgのERC6を、Balb/c マウス(n=4)の静脈内に注射した。ペプチドは、二つのコチニン分子の間に、6mer、12merまたは18merの多様な長さを有する。
図5b図5は、ERC6複合のコチニン-ビオチンの薬物動態の分析結果である。(b)総ERC6の循環血清水準をELISAによって測定した。結果は、平均±SDで示した;グループと比較*P<0.05、**P<0.01、スチューデントt検定(Student’s t test)。
図6a図6は、EGFR-陽性肺腺癌の細胞株にERC6複合のコチニン-DM1(emtansine)の抗増殖効果を示す。図6aは、四つのDM1と架橋結合した二価のコチニン接合したペプチドの化学的構造を示す(コチニン-DM1)。Rは、MCC連結されたDM1を示す。
図6b図6は、EGFR-陽性肺腺癌の細胞株にERC6複合のコチニン-DM1(emtansine)の抗増殖効果を示す。図6bは、コチニン-DM1の細胞生存力の分析結果である。A549細胞株をパリビズマブ及びDMSO(●);セツキシマブ及びDMSO(塗りつぶしの四角);ERC6及びDMSO(塗りつぶしの三角);パリビズマブ及びコチニン-DM1(○);セツキシマブ及びコチニン-DM1(□);ERC6及びコチニン-DM1(△)で処理した。パリビズマブを二重特異性抗体の同型対照群として用いた。DMSOをコチニン-デュオカルマイシンのビヒクル対照群として用いた。細胞を72時間培養した後、相対的な細胞生存率をCell Titer-Glo試薬を用いて細胞ATP含量を測定することで決定した。結果は、3回の実験から得た平均±SDで示した。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5a
図5b
図6a
図6b
【配列表】
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