(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】プローブ及び太陽電池セル用測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20220829BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
G01R31/26 J
G01R1/067 B
G01R1/067 C
(21)【出願番号】P 2019102660
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】599015722
【氏名又は名称】共進電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】小島 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】中道 裕二
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-101091(JP,A)
【文献】特開2013-213795(JP,A)
【文献】特開2012-093127(JP,A)
【文献】特開2003-317888(JP,A)
【文献】特開2012-021804(JP,A)
【文献】特開平08-086812(JP,A)
【文献】特開2017-215342(JP,A)
【文献】特開2008-122356(JP,A)
【文献】特開2010-181293(JP,A)
【文献】特開2012-242178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
G01R 1/06-1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルに対して接離させて、当該太陽電池セルの電気的特性の測定に用いられるプローブであって、
厚み方向に積層された複数の薄板体と、
前記複数の薄板体を外側から厚み方向に挟み込む一対のカバーと、を備え、
前記薄板体が、
長尺薄板状の本体部と、
前記本体部の長手方向に所定幅を有するとともに、前記太陽電池セルへの接離方向に対して延びる薄板であり、幅方向が前記本体部の長手方向に沿って揃うように並べて設けられる複数の接触子と、
前記本体部と前記複数の接触子との間をそれぞれ接続する細線で形成されたばね要素と、を具備し、
前記一対のカバーが、
薄板である前記複数の接触子をそれぞれ厚み方向に対して挟む一対の平面を具備することを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記一対の
平面が、薄板である前記接触子を厚み方向に挟むように配置された一対の平行板
における内側の各平面であり、前記一対の平行板における内側の各平面と薄板である前記接触子の各面板部の平面とがそれぞれ対向するとともに、
前記一対の平行板における内側の各平面と前記面板部と各平面との間に隙間が形成されている請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
前記一対の平行板間に介在して前記一対の平行板の離間間隔を所定値に保つスペーサ構造を具備し、前記スペーサ構造が、前記長手方向に沿って隣り合って並ぶ2つの前記接触子の間に形成されている請求項2記載のプローブ。
【請求項4】
前記スペーサ構造が、一対の平行板から互いの対向面に対して突出する一対の凸部であり、前記一対の凸部同士が接触することで前記一対の平行板の離間間隔が所定値に保たれるように構成されている請求項3記載のプローブ。
【請求項5】
前記複数の接触子の少なくとも一部に、前記凸部が挿通される穴、又は、前記凸部を迂回するための切り欠きが形成された請求項4記載のプローブ。
【請求項6】
前記ばね要素が、前記本体部よりも外側に突出するように前記薄板体の厚み方向に対して湾曲しており、
前記一対のカバーが、
前記ばね要素の少なくとも一部を露出する開口部をさらに具備する請求項1記載のプローブ。
【請求項7】
前記複数の接触子が、前記本体部の長手方向に沿って所定間隔ごとに設けられており、
少なくとも2つの薄板体における前記複数の接触子の設けられている周期がずれている請求項1記載のプローブ。
【請求項8】
前記複数の接触子の配列方向の長さ寸法が、各フィンガー電極の設置間隔の2倍よりも小さく設定されている請求項7記載のプローブ。
【請求項9】
前記所定間隔が、複数の前記接触子が1又は2のフィンガー電極と接触するように設定されている請求項7記載のプローブ。
【請求項10】
厚み方向に対して重ね合わされた前記複数の薄板体のうち、少なくとも1つの前記薄板体が電圧測定用の薄板体であり、その他の前記薄板体が電流測定用の薄板体であり、
電圧測定用の前記薄板体と、電流測定用の前記薄板体との間に形成された絶縁層をさらに備えた請求項1記載のプローブ。
【請求項11】
請求項1記載のプローブと、
前記プローブに接続された電流電圧測定機構と、を備えた太陽電池セル用測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池セルの出力測定に用いられるプローブ及びそのプローブを用いた太陽電池セル用測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルの品質チェックや分類は、太陽電池セルがソーラシミュレータから光を照射された際に発電する電流、電圧特性の測定結果に基づいて行われている。
【0003】
例えばバスバーレスの太陽電池セルの場合、従来バスバー電極があった位置にバー型のプローブを配置して複数のフィンガー電極に接触させ、太陽電池セルからの出力を測定する。
【0004】
ところで、スクリーン印刷により太陽電池セルの表面に形成されるフィンガー電極には高さに微小なばらつきが生じている。このため、従来のプローブでは各フィンガー電極の接触状態が不安定となり、測定のたびに電気抵抗も大きく変化し、測定の再現性に問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために本出願人は、金属の細線で形成された線状の多数の接触子と、各接触子を弾性的に支持するためのばね要素とを備えた概略櫛歯状のバー型プローブを提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなバー型プローブについて本願発明者らが鋭意検討を行ったところ、各接触子の姿勢変化をより小さくすることで、太陽電池セルの出力測定の再現性や耐久性をさらに向上させられることを初めて見出した。
【0008】
本発明は、上述したような発見に基づいてなされたものであり、太陽電池セルの出力測定の再現性や耐久性をさらに改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係るプローブは、太陽電池セルの電気的特性の測定に用いられるプローブであって、厚み方向に積層された複数の薄板体と、前記複数の薄板体を外側から厚み方向に挟み込む一対のカバーと、を備え、前記薄板体が、長尺薄板状の本体部と、前記本体部の長手方向に所定幅を有する薄板であり、幅方向が前記本体部の長手方向に沿って揃うように並べて設けられる複数の接触子と、前記本体部と前記複数の接触子との間をそれぞれ接続する細線で形成されたばね要素と、を具備し、前記一対のカバーが、前記接触子を厚み方向に対して挟み込み、当該接触子の倒れを規制する一対の倒れ規制部を具備することを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、各接触子をばね要素によって非常に柔らかく支持することができ、太陽電池セルの各フィンガー電極間に高さの違いあったとしてもプローブを太陽電池セルに対して押し付けた際に前記ばね要素の弾性によってその違いを吸収できる。
【0011】
さらに、前記一対の倒れ規制部によって各接触子の倒れが規制されているため、プローブを太陽電池セルに押し付けた際に各接触子の姿勢をほぼ揃えることができる。このため、各接触子において姿勢の違いによる接触状態の変化が生じにくくなる。
【0012】
これらのことから、太陽電池セルの出力特性の測定における再現性を従来よりもさらに向上させることができる。また、接触子において大きな姿勢変化や変形が生じにくくなるので、プローブとしての耐久性も向上させることができる。
【0013】
前記接触子の倒れを所定範囲内に規制するとともに、前記ばね要素によるフィンガー電極における凹凸の吸収のために押圧方向に前記接触子が自由に動けるようにするには、前記一対の倒れ規制部が、一対の平行板を具備し、それらの内側面と前記接触子の面板部との間に隙間が形成されていればよい。
【0014】
前記一対の平行板と前記接触子の面板部との間に微小な隙間を形成し、その隙間を一定に保てるようにするには、前記一対の倒れ規制部が、前記一対の平行板間に介在して前記一対の平行板の離間間隔を所定値に保つスペーサ構造を具備するものであればよい。
【0015】
前記スペーサ構造の具体的な実施の態様としては、一対の平行板から互いの対向面に対して突出する一対の凸部であり、前記一対の凸部同士が接触することで前記一対の平行板の離間間隔が所定値に保たれるように構成されているものが挙げられる。
【0016】
多数の前記接触子を密集させて前記本体部の長手方向に配列させつつ、前記凸部と前記接触子とを干渉させずに前記一対の凸部同士を接触させることができるようにするには、前記複数の接触子の少なくとも一部に、前記凸部が挿通される穴、又は、前記凸部を迂回するための切り欠きが形成されたものであればよい。
【0017】
前記カバーが設けられていても、前記ばね要素を大きく変形可能にして前記接触子が非常に柔らかく支持されるようにするには、前記ばね要素が、前記本体部よりも外側に突出するように前記薄板体の厚み方向に対して湾曲しており、前記一対のカバーが、前記ばね要素の少なくとも一部を露出する開口部をさらに具備するものであればよい。
【0018】
本発明に係るプローブによって太陽電池セルの各フィンガー電極に対していずれかの接触子が接触しやすくするには、前記複数の接触子が、前記本体部の長手方向に沿って所定間隔ごとに設けられており、少なくとも2つの薄板体における前記複数の接触子の設けられている周期がずれていればよい。
【0019】
例えば連続する3つのフィンガー電極において両端の2つのフィンガー電極に対して1つの接触子が橋渡しされてしまい、真ん中のフィンガー電極に接触子が接触しなくなってしまうのを防ぐには、前記複数の接触子の配列方向の長さ寸法が、各フィンガー電極の設置間隔の2倍よりも小さく設定されていればよい。
【0020】
前記複数の接触子を設置する間隔の具体例としては、前記所定間隔が、複数の前記接触子が1又は2のフィンガー電極と接触するように設定されているものが挙げられる。
【0021】
例えば太陽電池セルのI-V特性を四端子法等による測定に適したプローブとするには、厚み方向に対して重ね合わされた前記複数の薄板体のうち、少なくとも1つの前記薄板体が電圧測定用の薄板体であり、その他の前記薄板体が電流測定用の薄板体であり、電圧測定用の前記薄板体と、電流測定用の前記薄板体との間に形成された絶縁層をさらに備えたものであればよい。
【0022】
本発明に係るプローブと、前記プローブに接続された電流電圧測定機構と、を備えた太陽電池セル用測定装置であれば、太陽電池セルの出力測定において再現性と、装置としての耐久性を従来よりも向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明に係るプローブであれば、前記接触子を具備する前記薄板体の外側から挟み込む前記カバーによって前記倒れ規制部が形成されるので、プローブを太陽電池セルに押し付ける際に前記接触子が倒れて姿勢変化してしまうのを防ぐことができる。この結果、各測定において複数の接触子の姿勢をほぼ一定に保つことができるので、従来よりも太陽電池セルの出力測定における再現性とプローブとしての耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプローブ及び太陽電池セル用測定装置を示す模式図。
【
図2】同実施形態における太陽電池セルに対するプローブの配置を示す模式図。
【
図3】同実施形態におけるプローブの模式的斜視図。
【
図4】同実施形態における各薄板体の一部を拡大した模式的平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係るプローブ3、及び、それを用いた太陽電池セル測定装置100について
図1乃至
図5を参照しながら説明する。本実施形態の太陽電池セル測定装置100は、太陽電池セルSCのI-V特性を測定するためのものであり、例えば、製造された太陽電池セルSCについて評価し、その特性ごとに分類するために用いられるものである。この実施形態では、太陽電池セルSCとして、例えばヘテロ接合型太陽電池等の高効率太陽電池のI-V特性の測定対象としている。
【0026】
次に太陽電池セル測定装置100を構成する各部の概略について説明すると、当該太陽電池セル測定装置100は、
図1に示すように疑似太陽光を太陽電池セルSCに対して照射するソーラシミュレータ1と、ソーラシミュレータ1を制御する照射制御部13と、太陽電池セルSCが載置される試料台2と、太陽電池セルSCの表面に形成されたフィンガー電極Fと接触するプローブ3と、太陽電池セルSCのI-V特性を測定するI-Vテスタ5と、各部の制御及び各種演算を行う制御演算装置6(パソコン)を少なくとも備えたものである。
【0027】
ソーラシミュレータ1は、底面が開口した概略直方体形状の筺体11と、筺体11の内部の上面側に収容された光源12とから構成してある。光源12は、例えば概略リング状に形成されたロングアークキセノンランプであり、疑似太陽光をフラッシュ光(パルス光)として前記太陽電池セルSCに対して照射する。
【0028】
照射制御部13は、ソーラシミュレータ1が太陽電池セルSCに対して照射する疑似太陽光の照射状態を制御するものである。
【0029】
試料台2は、太陽電池セルSCの裏面を吸着保持できるように真空ポンプ22に接続されているとともに、I-V出力測定時において前記太陽電池セルSCの温度を測定条件として推奨される温度で一定に保つため、チラー21により冷却してある。
【0030】
I-Vテスタ5は、太陽電池セルSCが試料台2に対して載置されると当該太陽電池セルSCに電気的に接続されるとともに、太陽電池セルSCに対して印加電圧を掃引する負荷電源と、負荷電源が太陽電池セルSCに対して印加する電圧を制御する印加電圧制御部と、負荷電源により太陽電池セルSCに対して印加電圧の掃引が行われている間に当該太陽電池セルSCから出力される電流、電圧についてプローブ3を介して測定する電流計、電圧計からなる電流電圧測定機構と、を少なくとも備えたものである。I-Vテスタ5で測定された電流、電圧に基づいて制御演算装置6は、太陽電池セルSCのI-V特性、最大出力Pmax、短絡電流Isc、開放電圧Voc等を算出する。
【0031】
次にバー型のプローブ3の詳細について説明する。
【0032】
プローブ3は図示しない駆動機構に固定されており、試料台2に載置されている太陽電池セルSCに対して接離するように上下方向に駆動される。プローブ3は、I-Vテスタ5内の電流計、電圧計とケーブルを介して接続している。
【0033】
第1実施形態では
図2に示すように、1つの太陽電池セルSCに対して合計5本のプローブ3が各フィンガー電極Fに対して直交するように平行に配置される。すなわち、太陽電池セルSCはバスバーレス太陽電池セルであり,基板の各点から出力される電流を集めるための複数のフィンガー電極Fが銀ペースト等によって平行にスクリーン印刷されている。さらに別の表現をすると各フィンガー電極Fは所定間隔ごとに設けられており、この実施形態のプローブ3はその長手方向が各フィンガー電極Fの配列方向に沿って配置される。そして、プローブ3は各フィンガー電極Fと同時に接触するように配置される。ここで、プローブ3が配置されている場所は、後工程において複数の太陽電池セルSCから太陽光パネルが形成される際にワイヤ電極等が形成される場所でもある。
【0034】
スクリーン印刷により形成される各フィンガー電極Fは、基板の表面に形成されている反射構造等の微細な凹凸や、印刷精度の問題によって、その高さにはばらつきが発生している。具体的には、1つのフィンガー電極Fを延伸方向に沿って見た場合に高さが変化しているだけでなく、各フィンガー電極Fにおいてプローブ3が配置されている点での高さもそれぞれ微小に異なっている。
【0035】
したがって、プローブが剛体状のものであり、各フィンガー電極Fの高さの違いを吸収できないものの場合、基板表面に対して他のものよりも高く形成されているフィンガー電極Fのみでプローブ3が支持されてしまい、すべてのフィンガー電極Fと接触できない恐れがある。フィンガー電極Fのうちいくつかがプローブ3に接触指定ない状態でI-V特性が測定されると、電流又は電圧が過小に評価されることにより正しい測定ができないことになる。
【0036】
このため、この実施形態のプローブ3は、各フィンガー電極Fとの接触点において高さの違いがあったとしても全てのフィンガー電極Fと良好な接触状態を実現できるように高さの違いを吸収するように構成されている。
【0037】
具体的にはプローブ3は、
図3乃至
図5に示すように導電体によって形成された2枚の薄板体3Aを厚み方向に対して重ねて貼り合わせるとともに、積層された薄板体3Aを厚み方向に対して外側から一対のカバー3Bで挟み込むことで形成されている。
【0038】
この薄板体3Aは、
図3及び
図4に示すように長尺薄板状の本体部31と、本体部31の長手方向に対して所定幅を有するとともに、本体部31の長手方向に沿って揃うように並べられた複数の接触子32と、本体部31と接触子32との間を接続する細線で形成されたばね要素33と、を具備している。
【0039】
ここで薄板体3Aは例えば銅合金の薄板を打ち抜き加工及び曲げ加工を施すことで、細線で形成されているばね要素33が形成される。ここで、薄板体3Aの厚みは例えば1mm以下のものであり、ばね要素33の直径も1mm以下にしてある。
【0040】
本体部31は、概略長尺長方形板状のものであり、図示しない駆動機構に対してその両端部が保持されている。また、この本体部31は、太陽電池セルSCから接触子32及びばね要素33を経由した電流又は電圧を電流計又は電圧計へと伝達するものである。各薄板体3Aの本体部31は接着されて一体とされる。本実施形態では一方の薄板体3Aが電流測定用のものであり、他方の薄板体3Aが電圧測定用のものである。電圧測定用の薄板体3Aと電流測定用の薄板体3Aとの間は例えば絶縁紙により絶縁層を形成した状態でそれぞれの間が接着剤により接着されている。すなわち、この実施形態のプローブ3は1つで電流測定と電圧測定の両方を行うことができるようにしてある。
【0041】
接触子32は、
図4及び
図5に示すようにこの実施形態では本体部31の長手方向に対して所定幅を有する長方形状の薄板部分であり、所定間隔ごとに周期的に配置されている。ここで、接触子32は太陽電池セルSCへの接離方向を長手方向、本体部31の長手方向を短手方向とする長方形状に形成されている。各接触子32の短手方向の長さ寸法である幅寸法はフィンガー電極Fの設置間隔の2倍よりも小さく設定されている。例えば接触子32の幅寸法、及び、設置間隔は接触子32に対して1本又は2本のフィンガー電極Fが接触し得るように構成されている。この実施形態では接触子32は、
図5に示すように、本体部31と接触子32は自然状態においてほぼ同一平面上に配置される。接触子32の一部には、後述する凸部38が挿通される穴、もしくは、凸部38を迂回するための切り欠きが形成されている。
図4に示すように2つの薄板体3Aにおける接触子32の設置間隔は同じであるが、その周期が半周期ずらしてある。
【0042】
ばね要素33は、
図3乃至
図5に示すように、本体部31と複数の接触子32との間をそれぞれ接続する細線である。ばね要素33は、1つの接触子32の両端をそれぞれ別々に本体部31に対して接続するように形成されている。言い換えると、各接触子32は独立に弾性支持されており、それぞれの接触子32において個別の変位が発生する。各ばね要素33は、同一形状であり、薄板体3Aの厚み方向に対して湾曲する概略正弦波状をなすものである。なお、この実施形態では各ばね要素33の振幅についてはほぼ一定としているが、場所によって振幅を異ならせてもよい。また、2つの薄板体3Aのそれぞれのばね要素33は、その向きが対称となっており、積層された状態において一方の薄板体3Aにおける隣接するばね要素33の間の空間に対して、他方の薄板体3Aのばね要素33が挿入される。また、
図5に示すように、それぞれの薄板体3Aの接触子32はばね要素33の弾性復帰力により内側へと押し合うように構成されている。
【0043】
カバー3Bは、
図3及び
図5に示すように本体部31に対して貼り付けられて固定される固定部34と、前記ばね要素33の少なくとも一部をカバー3Bの外側へと露出させる開口部35と、積層された薄板体3Aの接触子32を厚み方向に対して外側から挟み込み、接触子32の倒れを規制する倒れ規制部36と、を備えている。
【0044】
固定部34は、概略長尺長方形板状の部分であり、薄板体3Aに対して絶縁された状態で固定される。なお、この実施形態では固定部34は薄板体3Aに対して絶縁されているので、薄板体3Aに対して電流又は電圧を測定するための端子が接続されるが、例えば固定部34と薄板体3Aを導通させた状態で固定し、固定部34又は固定部34に設けられる導電体を介して太陽電池セルSCの電流又は電圧を測定できるようにしてもよい。
【0045】
開口部35は、カバー3Bの中央部分に開口する概略長方形状の部分であり、ばね要素33において外側に膨出している各部分をカバー3Bの外側に露出するものである。すなわち、開口部35が形成されているので、ばね要素33に変形が生じた場合でもばね要素33は阻害されない。
【0046】
倒れ規制部36は、
図5に示すように開口部35の下側に設けられた接触子32を厚み方向に対して挟み込む一対の平行板37と、平行板37間の離間間隔を一定に保つスペーサ構造と、を備えている。
【0047】
図5の断面図に示すように、一対の平行板37は接触子32の面板部に対して微小な隙間を保って接触子32を挟み込むように構成されている。すなわち、太陽電池セルSCへのプローブ3の接離方向に対して接触子32が変位してもその面板部が平行板37に対して接触することがなく、移動が阻害されない。また、平行板37と接触子32の面板部との間には僅かな隙間しか存在しないため、接触子32は変位の際にその姿勢変化範囲はごく限られた範囲内に規制される。したがって、実質的に接触子32をプローブ3の接離方向にのみ変位するようにできる。なお、平行板37と接触子32との間の隙間については許容できる接触子32の姿勢変化量に基づいて所定値に設定される。
【0048】
スペーサ構造は、一対の平行板37の内側面から互いの対向面に対して突出させた一対の凸部38からなる。薄板体3Aに対してカバー3Bを貼り付けた場合に、各凸部38が接触してそれ以上平行板37同士が近づけないようにし、平行板37の内側面と接触子32の面板部との間の隙間が所定値に保たれる。本実施形態では、各凸部38は本体部31の長手方向に所定間隔ごとに並べて設けられており、平行板37の場所によらずほぼ一定の離間間隔が保たれる。
【0049】
このように構成された本実施形態のプローブ3によれば、カバー3Bが接触子32の基端側から半分程度を覆って挟み込む平行板37により倒れ規制部36が構成されているので、プローブ3を太陽電池セルSCに対して押し付けた際に、接触子32に倒れをほとんど発生させずに、接離方向の変位のみを生じさせることができる。
【0050】
したがって、倒れが発生することによりファインガー電極に対する各接触子32の接触状態が姿勢変化によって変化してしまい、測定の再現性が低下してしまうといった自体が発生するのを防ぐことができる。また、
図5の断面図に示すように本実施形態では薄板体3Aの本体部31と、接触子32は同一平面上にあり、接離方向に対して一直線上に並ぶように配置されているので、プローブ3が太陽電池セル3Aに押圧された場合でも、接触子32に対して真っ直ぐに力がかかり、モーメントは発生しにくい。このことによっても接触子32の姿勢変化が生じにくくなっている。
【0051】
その他の実施形態について説明する。
【0052】
前記実施形態では、ばね要素は厚み方向に対して湾曲する正弦波状に形成された細線であったが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、ばね要素が正弦波状に形成されている場合には、その波の数は前記実施形態に示したものに限られず、ばね要素は概略S字状に形成されていてもよい。また、ばね要素の各部分において振幅が変化するものであっても構わない。さらに、ばね要素を本体部と接触子とを含む平面内でのみ形成し、変形もこの平面内で生じるようにしてもよい。具体的には、ばね要素は平面内で弾性変形する概略く形状の細線であっても構わない。
【0053】
上記のような形態のばね要素であれば、カバーは開口部を備えていなくてもよい。
【0054】
薄板体の積層については2枚に限られるものではなく、3枚以上であっても構わない。また、スペーサ構造を形成する凸部については前記実施形態に示した物に限られない。例えば一方の平行板から他方の平行板の面板部まで届くように片側だけに凸部を形成してもよい。
【0055】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士を組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0056】
100・・・太陽電池セル用測定装置
3 ・・・プローブ
3A ・・・薄板体
31 ・・・本体部
32 ・・・接触子
33 ・・・ばね要素
3B ・・・カバー
34 ・・・固定部
35 ・・・開口部
36 ・・・倒れ規制部
37 ・・・平行板
38 ・・・凸部