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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】電気外科装置及び電気外科器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61B18/18 100
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019535273
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018053097
(87)【国際公開番号】W WO2018146159
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】1702252.6
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】バーン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マルコム
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ルイス
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-088884(JP,A)
【文献】特表2011-509813(JP,A)
【文献】特開2011-041799(JP,A)
【文献】特表2015-521873(JP,A)
【文献】特表2017-500958(JP,A)
【文献】特表2003-505112(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波電磁(EM)エネルギーを生体組織内に送出するための電気外科器具であって、
マイクロ波EMエネルギーを伝えるための同軸ケーブルであって、内部導体と、外部導体と、前記内部導体と前記外部導体とを分離する第1の誘電体材料と、を有する前記同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルからマイクロ波EMエネルギーを受け取る前記同軸ケーブルの遠位端に配置された放射先端部であって、前記第1の誘電体材料とは異なる第2の誘電体材料を含む前記放射先端部と、を含み、
前記放射先端部の電気長は、マイクロ波EMエネルギーの3つ以上の周波数における共振をサポートするように、マイクロ波EMエネルギーの前記3つ以上の周波数におけるその誘電特性とともに選択され、
前記放射先端部は、前記マイクロ波EMエネルギーを前記3つ以上の周波数において交互にまたは同時に送出するように構成され、
マイクロ波EMエネルギーの前記3つ以上の周波数は、第1の周波数と、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数と、前記第1の周波数及び前記第2の周波数よりも低い第3の周波数とを含み、
前記第2の誘電体材料の長さは、
前記第2の誘電体材料内の前記第1の周波数における前記マイクロ波EMエネルギーの2.5波長と、
前記第2の誘電体材料内の前記第2の周波数における前記マイクロ波EMエネルギーの1波長と、
前記第2の誘電体材料内の前記第3の周波数における前記マイクロ波EMエネルギーの半波長と、にほぼ等しく、
前記放射先端部の電気長は、前記第2の誘電体材料の長さに依存する、電気外科器具。
【請求項2】
前記第1の周波数、第2の周波数、及び第3の周波数はそれぞれ14.5GHz、5.8GHz、及び2.45GHzである、請求項1に記載の電気外科器具。
【請求項3】
前記第2の誘電体材料の物理長Lは実質的に、
L=nλ/2を満たし、
ここで、nは正の整数であり、λは、マイクロ波EMエネルギーの前記3つ以上の周波数のそれぞれにおける前記第2の誘電体材料内のマイクロ波EMエネルギーの波長である、請求項1または2に記載の電気外科器具。
【請求項4】
前記第2の誘電体材料は、前記同軸ケーブルから離れて遠位に延びる細長いプローブを構成し、前記細長いプローブは円柱形状を有し、直径は前記同軸ケーブルの直径以下である請求項1~3のいずれか1項記載の電気外科器具。
【請求項5】
前記外部導体は前記第1の誘電体材料の遠位端を越えて延びて、前記第2の誘電体材料の近位部分を囲む請求項1~4のいずれか1項記載の電気外科器具。
【請求項6】
前記内部導体は前記外部導体の遠位端を越えて前記第2の誘電体材料内に延びる請求項1~5のいずれか1項記載の電気外科器具。
【請求項7】
前記第2の誘電体材料は、マイクロ波EMエネルギーの前記3つ以上の周波数のそれぞれにおいて、前記第1の誘電体材料よりも低いインピーダンスを有する請求項1~6のいずれか1項記載の電気外科器具。
【請求項8】
前記放射先端部の前記遠位端はテーパ状になって尖っている請求項1~7のいずれか1項記載の電気外科器具。
【請求項9】
マイクロ波電磁(EM)エネルギーを生体組織内に送出するための電気外科装置であって、
3つ以上の異なる周波数でマイクロ波EMエネルギーを発生させるように配設された発生器と、
請求項1~8のいずれか1項記載の電気外科器具であって、前記同軸ケーブルは、前記発生器からマイクロ波EMエネルギーを受け取るように前記発生器に接続された近位端を有する前記電気外科器具と、を含む、電気外科装置。
【請求項10】
前記発生器は、前記3つ以上の異なる周波数のうちの対応する1つにおいてマイクロ波EMエネルギーを発生させるための3つ以上の別個のマイクロ波源を含む、請求項9に記載の電気外科装置。
【請求項11】
前記発生器は、前記3つ以上の別個のマイクロ波源のそれぞれから信号を受け取るためのマルチプレクサを含み、前記マルチプレクサは前記同軸ケーブルに接続された共通の信号経路に各信号を伝えるように配設されている、請求項9に記載の電気外科装置。
【請求項12】
前記マルチプレクサは、前記共通の信号経路上で伝えるべき信号を選択するための切替ユニットとして動作可能である、請求項11に記載の電気外科装置。
【請求項13】
前記マルチプレクサは、前記信号のうちの2つ以上を同時または準同時に前記共通の信号経路上で伝える信号結合器として動作可能である、請求項11または12に記載の電気外科装置。
【請求項14】
前記マルチプレクサは時間領域マルチプレクサとして動作可能である、請求項11または12に記載の電気外科装置。
【請求項15】
前記マルチプレクサはフィルタマルチプレクサとして動作可能である、請求項11または12に記載の電気外科装置。
【請求項16】
治療部位に非侵襲性挿入するための柔軟な器具コードを有する外科スコープ装置を含み、前記器具コードは器具チャネルを含み、前記電気外科器具は前記器具チャネル内に挿入できるように寸法取りされている、請求項9~15のいずれか1項に記載の電気外科装置。
【請求項17】
前記発生器は、前記マイクロ波EMエネルギーを前記3つ以上の異なる周波数で送出するためのエネルギー送出プロファイルを選択するように動作可能である、請求項9~15のいずれか1項に記載の電気外科装置。
【請求項18】
前記発生器は、前記選択されたエネルギー送出プロファイル下で、
第1の切除時間の間に第1の信号を送出することであって、前記第1の信号は、主に前記第1の周波数を有するマイクロ波EMエネルギーを含む、前記送出することと、
第2の切除時間の間に第2の信号を送出することであって、前記第2の信号は、主に前記第2の周波数を有するマイクロ波EMエネルギーを含む、前記送出することと、
第3の切除時間の間に第3の信号を送出することであって、前記第3の信号は、主に前記第3の周波数を有するマイクロ波EMエネルギーを含む、前記送出することと、を行うように動作可能である、請求項17に記載の電気外科装置。
【請求項19】
前記第2の周波数は前記第1の周波数の半分未満である、請求項18に記載の電気外科装置。
【請求項20】
前記第3の周波数は前記第2の周波数の半分未満である、請求項18または19に記載の電気外科装置。
【請求項21】
前記第1の周波数は14.5GHzであり、前記第2の周波数は5.8GHzであり、前記第3の周波数は2.45GHzである、請求項18~20のいずれか1項に記載の電気外科装置。
【請求項22】
前記発生器は、前記同軸ケーブルから受け取った反射電力を検出するように配設された検出器を含み、前記発生器は、前記検出した反射電力に基づいてある切除時間から次の切除時間に切り替わるように配設されている、請求項18~21のいずれか1項に記載の電気外科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生体組織内に電磁(EM)エネルギーを複数の周波数で送出するための電気外科装置に関する。詳細には、本出願は、治療部位に非侵襲性または経皮的挿入するための電気外科器具であって、複数のマイクロ波周波数において組織にEMエネルギーを効率的に送出するように構成された電気外科器具に関する。
【背景技術】
【0002】
体内組織にEMエネルギーを供給するための電気外科デバイス及び装置が知られている。
【0003】
典型的に、体内組織にEMエネルギーを送出ための装置は、EMエネルギー源を含む発生器と、発生器に接続された電気外科器具であって、組織にエネルギーを送出するための電気外科器具と、を含む。
【0004】
EMエネルギー(詳細には、マイクロ波及び無線周波数(RF)エネルギー)は、体内組織を切断し、凝固し、切除する能力があることから、電気外科手術において有用であることが分かっている。
【0005】
さらに、マイクロ波放出プローブを用いて肺内の種々の状態を処置することが知られている。たとえば、マイクロ波放射を用いてぜんそくを処置し、肺内の腫瘍または損傷を切除することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
最も概略的には、本発明によって、複数の周波数(たとえば、1GHzよりも大きい3つ以上の周波数)におけるマイクロ波電磁(EM)エネルギーの共振をサポートすることができる電気外科器具が提供される。3つ以上の周波数においてマイクロ波エネルギーを効果的に結合して生体組織内に入れることができる単一デバイスを提供することによって、組織切除を精度良く迅速に行うことができる。
【0007】
本発明によれば、マイクロ波電磁(EM)エネルギーを生体組織内に送出するための電気外科器具であって、マイクロ波EMエネルギーを伝えるための同軸ケーブルであって、内部導体と、外部導体と、内部導体と外部導体とを分離する第1の誘電体材料と、を有する同軸ケーブルと、同軸ケーブルからマイクロ波EMエネルギーを受け取る同軸ケーブルの遠位端に配置された放射先端部であって、第1の誘電体材料とは異なる第2の誘電体材料を含む放射先端部と、を含み、放射先端部の電気長は、マイクロ波EMエネルギーの3つ以上の周波数における共振をサポートするように、マイクロ波EMエネルギーの3つ以上の周波数におけるその誘電特性とともに選択されている電気外科器具が提供され得る。本発明は、異なる周波数のマイクロ波EMエネルギーは生体組織内に異なる深さまで進入し、詳細には、EMエネルギーの周波数が高くなると、体内組織の加熱が高速化及びより局部的になるという原理を用いて作用する。従来の組織切除技術では、より大量の体内組織を加熱するが、所望の温度上昇を起こすのにより長い時間がかかる周波数を用いる傾向がある。そのため、切除サイズと処置速度との間に必要なトレードオフが現れる。
【0008】
マイクロ波周波数(すなわち、1GHzよりも大きい)において生体組織内にエネルギーが伝達される通常のメカニズムは誘電加熱であり、マイクロ波EMエネルギーによって組織内の分子振動が駆動される。典型的に、誘電加熱ゾーンに隣接する生体組織も温度の上昇を受ける。これに対するメカニズムは伝導性、すなわち誘電加熱ゾーンからの熱エネルギーの散逸である。発明者らの観察によれば、これら2つの加熱メカニズムを複数の周波数において組み合わせると、マイクロ波EMエネルギーによって、マイクロ波エネルギー周波数に典型的に付随するものより広い処置ゾーンの温度上昇を起こすことができる。また、このゾーン内で加熱することは、より低い(非マイクロ波)EMエネルギーを用いた場合に可能なものよりも短い時間枠内で実現することができる。
【0009】
本発明の処置技術では、部分的には複数の周波数を用いて、加熱によって生じる生体組織の物理及び誘電特性の変化に適応する。詳細には、誘電特性の変化は放射先端部、同軸ケーブル、及び組織間の相対的インピーダンス整合に影響する可能性がある。低周波数側での生体組織へのエネルギー送出の効率は、最初に高周波数側で組織を加熱することによって改善することができる。
【0010】
本明細書では、マイクロ波EMエネルギーに言及した場合、周波数が1GHzよりも大きい(たとえば、1GHzと300GHzとの間の範囲の)電磁エネルギーを意味する。好ましい周波数は2.45GHz、5.8GHz、及び14.5GHzである。なぜならば、それらは、腫瘍(特に、肺腫瘍)を切除するのに特に望ましい加熱効果を生成することが分かっているからである。これら3つの周波数を組み合わせると、痔及び/または瘻孔の処置において効果的な加熱効果を得ることができ、本発明はさらに痔及び瘻孔を処置するために利用できることが想定される。
【0011】
放射先端部が共振をサポートする周波数は前述した3つの周波数に限定しなくてもよい。たとえば、放射先端部は4つの周波数における共振をサポートしてもよい。好ましくは、放射先端部は5つの周波数における共振をサポートしてもよい。より好ましくは、放射先端部は6つの周波数における共振をサポートしてもよい。
【0012】
優位なことに、放射先端部はさらに、他の周波数(たとえば、433MHz及び/または915MHz)におけるエネルギーの送出をサポートしてもよい。これらの周波数は、肺腫瘍を切除することに対して、また痔及び/または瘻孔を処置することに対して特に効果的であることも知られている。
【0013】
高周波(RF)EMエネルギーを用いて、抵抗加熱によって組織を加熱して、所望の治療効果を生成することが知られている。したがって、いくつかの実施形態では、電気外科器具をさらに、RFEMエネルギー(周波数が3kHz~300MHzである)を送出するために配設してもよい。組織にRFエネルギーを送出することを助けるために、たとえば、内部導体の最遠位点が第2の誘電体材料の最遠位点を過ぎて延びて、放射先端部の最遠位点が内部導体の露出部分を含んでいてもよい。優位なことに、放射先端部はさらに、周波数400kHzにおけるエネルギーの送出をサポートしてもよい。この周波数は、肺腫瘍を切除することに対して、また痔及び/または瘻孔を処置することに対して特に効果的であることも知られている。
【0014】
同軸ケーブルの遠位端とは、本出願の目的に対して、同軸ケーブルにEMエネルギーを供給する概念上の発生器から遠位であると、すなわち、発生器からEMエネルギーを受け取るように構成された同軸ケーブルの端部から遠位であると定義されることに注意されたい。
【0015】
本出願の目的上、共振とは、放射先端部で反射される電力の大きさ(すなわち、同軸ケーブルの近位端で測定した反射電力S1,1)が-10dB、またはそれ以上である状況として規定する。好ましくは、放射先端部で反射される電力は-12dBまたはそれよりも良好である。より好ましくは、放射先端部で反射される電力は-15dBまたはそれよりも良好である。
【0016】
複数の周波数において共振をサポートすることができる遠位の放射先端部を提供することによって、エネルギーは組織内に効果的に送出される。
【0017】
共振は、内部で波が振動する共振器の長さが波の波長の半整数倍数にほぼ等しいときに生じる。その結果、共振器の各端部に変位ノードを伴って、定常波が存在することができる。したがって、同軸ケーブルの第1の誘電体材料とは異なる第2の誘電体材料を放射先端部に有することによって、第1の誘電体と第2の誘電体との間の界面は、変位ノードが存在することができる明確な境界となり、第2の誘電体材料を、内部で共振がサポートされ得る共振器と考えることができる。したがって、以下を実質的に満たす第2の誘電体材料の物理長Lを選択することによって、放射先端部が共鳴する周波数を選択することができる。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、nは正の整数であり、λは、マイクロ波EMエネルギーの3つ以上の周波数のうちの1つにおいて第2の誘電体材料内を伝搬するマイクロ波EMエネルギーの波長である。3つ以上の周波数それぞれにおいて第2の誘電体材料の適切な長さを選択する(すなわち、この式を満たすようにする)ことは、自明でない場合がある。これは、放射先端部内でのEMエネルギーの波長(λ)自体が多くの要因に依存しているからである。たとえば、エネルギーの周波数、放射先端部の周波数依存性の透磁率、放射先端部の周波数依存性の誘電率、放射先端部の幾何学的形状、及び先端が挿入される材料である。
【0020】
第2の誘電体材料の長さは、2.45GHzにおける第2の誘電体材料内の波長(すなわちn=1)の半分にほぼ等しくてもよく、5.8GHzにおける第2の誘電体材料内の1波長(すなわちn=2)にほぼ等しくてもよく、また14.5GHzにおける第2の誘電体材料内の2.5波長(すなわちn=5)にほぼ等しくてもよい。
【0021】
実際には、第2の誘電体材料の長さは、上の等式で規定された長さと最大で10%異なる長さであってもよい。好ましくは、長さは、前述で規定された長さと最大で5%異なるだけである。
【0022】
第2の誘電体材料は、同軸ケーブルから離れて遠位に延びる細長いプローブを構成していてもよく、細長いプローブは円柱形状を有し、直径は同軸ケーブルの直径以下である。
【0023】
第2の誘電体材料のインピーダンスは、マイクロ波EMエネルギーの3つ以上の周波数のそれぞれにおいて第1の誘電体材料より低くてもよい。また、第2の誘電体材料のインピーダンスは、ケーブルのインピーダンス(典型的に50Ω)と、先端が挿入される組織のインピーダンス(典型的に体内組織の場合は50Ωよりもはるかに小さい)との間にあってもよい。次に放射先端部の幾何学的形状は、インピーダンス変成器として働くとともに共振をサポートして組織内へのエネルギーの送出を促進するように選択してもよい。詳細には、放射先端部は、半径方向(すなわち内部導体から離れて半径方向に延びる方向)にインピーダンス変成器として形成してもよい。
【0024】
第2の誘電体材料は、たとえば3つ以上のマイクロ波周波数において低損失を示すセラミック誘電体材料であってもよい。好ましくは、Macor(登録商標)セラミックから形成してもよい。(剛性の)セラミック材料を与えることによって、器具は身体内への経皮的挿入(すなわち切開部を通した人体への挿入)に特にとても適している場合がある。Macor(登録商標)セラミックは特に望ましい。なぜならば、インピーダンスが低く、無孔で、化学的に不活性だから(生体適合性があるから)である。
【0025】
対照的に、第1の誘電体材料はPTFEであってもよい。第1及び第2の誘電体材料がそれぞれPTFE及びMacor(登録商標)セラミックであるとき、PTFEと比べてMacor(登録商標)セラミックのインピーダンス値は低いため、放射先端部は効果的なインピーダンス変成器を形成する。その結果、組織へのEMエネルギーの送出はさらに改善される。
【0026】
放射先端部の遠位端がテーパ状になって尖っていて、体内組織への経皮的アクセスを助けてもよい。好ましくは、テーパ状になって鋭く尖った先になってもよい。鋭い/テーパ状端部を有することによって、身体内への経皮的挿入がさらに助けられる。
【0027】
代替的に、同軸ケーブル及び放射先端部を、体内組織への非経皮アクセス(たとえば、患者の身体内の自然開口部を通して)を可能にするように寸法取りしてもよい。器具を非経皮的に用いる実施形態では、放射先端部の遠位端が丸みを帯びていて、すなわち、器具を通すべき身体内の気道または他の自然通路を突き刺すことがないようにしてもよい。
【0028】
同軸ケーブル及び放射先端部を、気管支鏡または内視鏡の器具チャネルに沿って挿入できるように構成してもよい。詳細には、このような実施形態では、同軸ケーブルは好ましくは柔軟で、たとえば気道内への挿入を助ける。
【0029】
外部導体は、第1の誘電体材料の遠位端を越えて延びて、第2の誘電体材料の近位部分を囲んでもよい。これは、放出電磁場の形状に影響を与える可能性がある。したがって、切除パターンの制御を、選択可能なエネルギー送出プロファイルに従って、器具に送出するエネルギーの周波数を単純に変えることにより、すなわち、複数の周波数において器具にエネルギーを供給することができる発生器を用いることにより行うことができる。
【0030】
同軸ケーブルの内部導体は、外部導体の最遠位点を越えて、第1の誘電体材料の最遠位点を越えて、放射部分の最遠位点の方に延びてもよい。また、内部導体は第2の誘電体材料内に延びて誘電体材料の最遠位端に向かって延びてもよい。この構造を有する放射先端部はダイポールアンテナとして放射するため、放射先端部から半径方向外側にエネルギーを放射することが促進され、深い切除が得られる。
【0031】
第1の誘電体材料の最遠位点、外部導体の最遠位点、及び放射先端部の最遠位点は、同軸ケーブルの遠位端の場合と同じように(すなわち、器具にEMエネルギーを供給する概念的な発生器に対して)規定される。
【0032】
好ましくは、内部導体は第2の誘電体材料の最遠位点を越えて延びてはおらず、放射先端部に沿ったどこにも露出していない。
【0033】
放射先端部の外径は同軸ケーブルの外径に実質的に等しくてもよい。外部導体によって覆われる第2の誘電体材料の部分は実際には、たとえば製造を簡単にするために、また器具の端部内に流体が進入することを防ぐ良好なシールを得るために、外径が外部導体の内径に等しくてもよい。
【0034】
外部導体は、第2の誘電体材料を第2の誘電体材料の長さの少なくとも半分だけ覆っていてもよい。好ましくは、外部導体は第2の誘電体をその長さの最大で4分の3だけ覆っていてもよい。このように第2の誘電体材料を覆うことによって、電磁場成形効果が生じて、放射先端部によって作り出される切除パターン/形状が、高周波数側において放射先端部の遠位端に向かって集中する。
【0035】
また発明者らが見出したところによれば、第2の誘電体材料が外部導体によって覆われる放射先端部の部分は、同軸ケーブルと放射先端部の遠位端との間のインピーダンス変成器として働き、その結果、組織内へのEMエネルギーの送出がさらに改善される。
【0036】
いくつかの実施形態では、同軸ケーブルは、中空の内腔が内部を通っており、すなわち同軸ケーブルの長手軸に平行に走行している。このような中空の内腔を、放射先端部を囲む空間に流体を送出し及び/または取り除くために用いてもよい。
【0037】
別の態様では、マイクロ波電磁(EM)エネルギーを生体組織内に送出するための電気外科装置であって、3つ以上の異なる周波数でマイクロ波EMエネルギーを発生させるように配設された発生器と、前述した電気外科器具であって、同軸ケーブルは、発生器からマイクロ波EMエネルギーを受け取るように発生器に接続された近位端を有する電気外科器具と、を含む電気外科装置が提供される。
【0038】
発生器は、3つ以上の異なる周波数の個々の1つにおいてマイクロ波EMエネルギーを発生させるために3つ以上の別個のマイクロ波源を含んでいてもよい。発生器はさらに、同軸ケーブルに接続された共通の信号経路に各信号を伝えるために配設された信号結合器を含んでいてもよい。信号結合器はマルチプレクサであってもよい。マルチプレクサは、共通の信号経路上で伝えるべき信号を選択するための切替ユニットとして動作可能であってもよい。その代わりにまたはそれに加えて、マルチプレクサは、信号のうちの2つ以上を同時にまたは準同時に共通の信号経路上で伝えるように動作可能であってもよい。たとえば、マルチプレクサは時間領域マルチプレクサまたはフィルタマルチプレクサであってもよい。
【0039】
装置は、治療部位に非侵襲性挿入するための柔軟な器具コードを有する外科スコープ装置(たとえば気管支鏡など)を含んでいてもよく、器具コードは器具チャネルを含み、電気外科器具は器具チャネル内に挿入できるように寸法取りされている。
【0040】
発生器は、所定のエネルギー送出プロファイルにより3つ以上の異なる周波数においてマイクロ波EMエネルギーを送出するように動作可能であってもよい。エネルギー送出プロファイルは、所望の切除深さ、及び/または所望の切除ゾーン形状により選択してもよい。いくつかの実施形態では、エネルギー送出プロファイルを、放射先端部から反射されるエネルギーの測定された特性に基づいて選択してもよい。
【0041】
一実施例では、発生器は、所定のエネルギー送出プロファイル下で、第1の切除時間の間に第1の信号を送出することであって、第1の信号は、主に第1の周波数を有するマイクロ波EMエネルギーを含む、送出することと、第2の切除時間の間に第2の信号を送出することであって、第2の信号は、主に第1の周波数よりも低い第2の周波数を有するマイクロ波EMエネルギーを含む、送出することと、第3の切除時間の間に第3の信号を送出することであって、第3の信号は、主に第1の周波数及び第2の周波数よりも低い第3の周波数を有するマイクロ波EMエネルギーを含む、送出することと、を行うように動作可能であってもよい。発生器は、3つの時間の間で切り替わってもよいしまたは交互に変わってもよい。詳細には、エネルギーを3つの周波数の間で(急速に)交互に変えてもよい。代替的に、エネルギーを3つの周波数で同時に供給してもよい。
【0042】
第2の周波数は第1の周波数の半分未満であってもよい。第3の周波数は第2の周波数の半分未満であってもよい。たとえば、第1の周波数は14.5GHzであり、第2の周波数は5.8GHzであり、及び第3の周波数は2.45GHzである。
【0043】
上記で概略した送出プロファイルを用いてEMエネルギーを供給することによって、14.5GHzにおける迅速で局部的な加熱効果を用いて、放射先端部に近い組織を迅速に切除することができる。この組織が好適に切除されたら(たとえば、所定時間が経過した後で)、次に、低周波数側におけるエネルギーによって切除ゾーンを広げて、放射先端部と組織との間の改善された誘電体整合を利用することができる。したがって、より大きい切除ゾーンを加熱する時間が、第1の周波数のみで動作した場合にかかったであろう時間と比べたときに短くなる。
【0044】
交互に替わるプロファイルにより加熱するさらなる優位点は、同軸ケーブル内で加熱効果(14.5GHzにおいてより顕著である)が起きても、同軸ケーブル内で著しい温度上昇が生じないことである。なぜならば、低周波数側でエネルギーが供給される時間により、ケーブルの長さに沿って生じる任意の局部的な加熱効果の散逸が可能だからである。
【0045】
発生器は、患者の呼吸周期に合わせてマイクロ波エネルギーのパルスを送出するように構成してもよい。したがって、肺が収縮したときにエネルギーを供給することができ、同軸ケーブル、放射先端部、及び組織間のより良好な相対的インピーダンス整合を得ることができる。
【0046】
発生器は、同軸ケーブルから受け取った反射電力を検出するように配設された検出器を含んでいてもよく、発生器は、検出した反射電力に基づいてある切除時間から次の切除時間に切り替わるように配設されている。本発明の実施例について、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施形態である電気外科装置の概略図である。
図2】本発明の実施形態である電気外科器具の放射先端部の断面図である。
図3図2の器具を卵白内に挿入した場合の2.45GHzにおける放射電力吸収密度を示すシミュレートしたプロットである。
図4図2の器具を卵白内に挿入した場合の5.8GHzにおける放射電力吸収密度を示すシミュレートしたプロットである。
図5図2の器具を卵白内に挿入した場合の14.5GHzにおける放射電力吸収密度を示すシミュレートしたプロットである。
図6】ある範囲の周波数上での図2の器具のシミュレートしたS1,1共振特徴を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、本発明の実施形態である電気外科装置100の概略図である。装置100は、複数の周波数を有するEMエネルギーを、治療部位における生体組織内に選択的に局部的に供給するように動作可能である。装置100は、複数の周波数を有するEMエネルギーを発生させるための発生器102を含む。発生器102は、同軸ケーブル104が接続された出力ポート120を有する。同軸ケーブル104は、EMエネルギーを発生器102から離れて電気外科器具118の方に伝える。この実施形態では、同軸ケーブル104が、器具チャネルを通して気管支鏡114の挿入ケーブル106内に挿入されている。挿入ケーブル106は、患者の肺内に非侵襲性挿入することができる柔軟で操縦可能なシャフトである。したがって、この実施形態では器具118の非経皮挿入が可能である。しかし、他の実施形態では、器具118の遠位先端部が、経皮的挿入に対して、すなわち患者の身体内に形成された切開部を通して肺組織にアクセスするように構成されていてもよい。このような実施例では、器具を組織内に直接挿入してもよいしまたは好適なカテーテルを介してもよい。
【0049】
発生器102は、3つの別個のマイクロ波源122a、122b、122cを含む。別個のマイクロ波源122a、122b、122cはそれぞれ、異なる周波数を有する信号を発生させる。この実施例では、周波数は2.45GHz、5.8GHz、及び14.5GHzである。別個のマイクロ波源122a、122b、122cはそれぞれ、個々の信号を使用に適した電力レベルに増幅する対応する電力増幅器を含んでいてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、3つの供給源を単一部品(たとえばGaNパワー素子)に一体化してもよい。GaNパワー素子(たとえば、GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)ベースのデバイス)を用いれば、発生器セットアップの小型化を可能にすることができる。他方では、状況によっては、別個の供給源を用いた方が費用対効果が高い場合がある。
【0051】
発生器102は、別個のマイクロ波源122a、122b、122cそれぞれから出力信号を受け取るように接続されたマルチプレクサ124を含む。マルチプレクサ124は、共通の出力経路125上で別個の信号を伝達するように動作する。出力経路125は出力ポート120に接続されている。マルチプレクサ124は、別個のマイクロ波源122a、122b、122cの出力間で切り替わってもよいし、または出力のうちの2つ以上を組み合わせてそれらが同時に伝送されるようにしてもよい。マルチプレクサ124は切替器及び信号結合器の両方として動作可能であってもよい。
【0052】
発生器102は、マルチプレクサ124と別個のマイクロ波源122a、122b、122cのそれぞれとに動作可能に接続されたコントローラ126を含む。コントローラ126は発生器102の動作を制御して所望の信号を出力することができる。後述するように、所望の出力信号は所定のフォーマットまたはプロファイルを、たとえば治療部位の性質(たとえば、形状またはサイズ)に応じて有していてもよい。コントローラ126は、1つ以上の送出プロファイルによりEMエネルギーを送出するように動作してもよい。ユーザは、所望のプロファイルを複数の記憶されたプロファイルから、たとえば発生器102に付随するユーザインターフェース128を介して選択できてもよい。たとえば、発生器をWO2012/076844と同様の方法で構成してもよい。この文献では、RF及びマイクロ波エネルギーを同じ器具から組織に送出することを、フィードバック情報に基づいて設定して自動的に制御可能なエネルギー送出プロファイルにより行う電気外科装置が開示されている。
【0053】
ユーザインターフェース128は、選択したプロファイル及び/またはステージまたは処置または処置している組織の特性を示すためのディスプレイ130を含んでいてもよい。
【0054】
マルチプレクサ124が切替ユニットとして動作する場合、発生器102は、器具に供給されるエネルギーを、所望のエネルギー送出プロファイルにより3つの周波数の間で切り替えることができる。たとえば、切り替えは、最初に14.5GHz供給源を選択して、エネルギーが14.5GHzで送出されるようにし、次に5.8GHz供給源に切り替えて、エネルギーが5.8GHzで送出されるようにし、次に2.45GHz供給源に切り替えて、エネルギーが2.45GHzで送出されるように行ってもよい。
【0055】
マルチプレクサ124は時間領域マルチプレクサであってもよい。この場合、マルチプレクサは、器具に供給されるエネルギーを所望のエネルギー送出プロファイルにより3つの周波数の間で迅速に交互に変えることができる。代替的に、マルチプレクサ124はフィルタマルチプレクサであってもよく、それによって、器具に3つの周波数を同時に供給することが、すなわち所望の混合比を有するエネルギー送出プロファイルにより可能である。
【0056】
したがって、エネルギーを送出するときに用いるエネルギー送出プロファイルを、マルチプレクサ124の動作状態を制御することと、別個のマイクロ波源122a、122b、122cの出力との組み合わせによって制御することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、発生器102は、器具118から受け取った反射電力を測定するように配設された1つ以上の反射信号検出器を含んでいてもよい。器具の放射先端部204。反射信号を発生器から放射先端部に送出された信号と比べることによって、発生器は、器具118と接触している材料(たとえば生体組織)の誘電特性を決定することができる。コントローラは、検出した反射電力に基づいて、マルチプレクサ124及び別個のマイクロ波源122a、122b、122cの動作を調整することができてもよい。こうして、発生器102は、処置されている組織の検出された誘電特性に基づいてエネルギー送出を動的に制御してもよい。
【0058】
装置100はさらに、組織負荷が変化したときに組織との良好なインピーダンス整合を確実にするのを助けるために、信号発生器102と放射先端部118との間にチューニングネットワーク(図示せず)を含んでいてもよい。たとえば、3重のスタブチューナを用いてもよい。チューナが発生器102と放射先端部118との間に含まれている場合、放射先端部が組織に対する良好なインピーダンス整合をチューニング範囲の中程に確実に有するようにすることによって、組織内へのエネルギーの送出をさらに改善することができる。
【0059】
図2に示すのは、電気外科器具118の遠位部分が通る断面図である。器具118は、同軸ケーブル202(発生器102に接続された同軸ケーブル104と同じであってもよい)と、同軸ケーブルの遠位端202に配置され、そこから離れて遠位に延びる放射先端部204とを含む。
【0060】
同軸ケーブル202は、内部導体206と、外部導体208と、内部及び外部導体を互いから電気的に絶縁するための第1の誘電体材料210とを含む。また外部導体208を保護スリーブ(図示せず)で覆って、外部導体と患者の組織との間の電気接触を防いでもよい。シースは生体適合性材料(たとえばPTFE)である。本発明で用いる典型的な同軸ケーブルはインピーダンスが50Ωである。
【0061】
外科的処置用に患者内に挿入することに器具が適するためには、ケーブルの外径は5mm未満でなければならない。器具が気管支鏡114の器具チャネルを通される実施形態では、同軸ケーブルの外径は1.5mm未満(たとえば1.2mm未満)でなければならない。同軸ケーブルは患者の身体内に挿入するのに十分な長さである。典型的に、その長さは1m以上であるが、このような長さに限定されない。
【0062】
本出願では、他に記載がない限り、構成部品の長さは、同軸ケーブルの長手軸に沿った(すなわち平行な)方向におけるその寸法を指す。
【0063】
この実施形態では、放射先端部204は、第1の誘電体材料210とは異なる第2の誘電体材料212からなる。第2の誘電体材料212は、細長いプローブ構造(たとえば略円柱形状を有する)であってもよい。第2の誘電体材料212はテーパ状、ドーム形、または尖った遠位先端部を有していてもよい。外科手術で用いるには円柱形状が優位である。第2の誘電体の尖った形状は身体内への経皮的挿入を助ける場合がある。
【0064】
第2の誘電体材料212は第1の誘電体材料210の遠位端に当接してもよい。代替的に、第2の誘電体212を、第1及び第2の誘電体材料の両方と異なる第3の誘電体材料から形成されたカラー214によって、第1の誘電体材料から分離してもよい。本実施形態における第3の誘電体は、第1及び第2の誘電体材料間の1mm空隙である。空隙によって、ケーブルまたは放射先端部上に内部応力を引き起こすことなく(そうでなければ、器具に損傷を生じさせ得る)、器具の構成要素が熱膨張するための余地が得られる。また、間隙1mm(同軸ケーブルの構成部品の寸法の予想変化よりも大きい)を有することによって、空隙のサイズの変動は無視することができ、放射先端部における共振がこのような変動によって特に影響されることはない。
【0065】
第2の誘電体212のインピーダンスは、別個のマイクロ波源122a、122b、122cによって出力されるマイクロ波EMエネルギーの周波数において肺組織のインピーダンスと厳密に一致するように選択される。たとえば、第2の誘電体をMacor(登録商標)セラミックから形成してもよい。Macor(登録商標)セラミックも剛性で、身体内への経皮的挿入をさらに助ける。前述した理由により、Macor(登録商標)セラミックが選択される。なぜならば、インピーダンスが同軸ケーブルのそれと放射先端部がエネルギーを送出すべき組織のそれとの間だからである。これは、放射先端部における反射を減らし、したがってエネルギーの送出を促進するのに役立つ。
【0066】
外部導体208は、第1の誘電体材料210の遠位端を越えて延びて、第2の誘電体材料212の近位部分を覆っている。第2の誘電体212をこのように同軸ケーブル202に固定することが、たとえばさらなる固定手段(たとえば、ボンディングなど)を用いてまたは用いずに可能である。第2の誘電体材料の外面に沿って外部導体208が存在することは、放射先端部によって放出される電磁場の形状に影響し得る。詳細には、放出電磁場は、同軸ケーブルの遠位端から離れるように遠位に送られる形状を有していてもよい。方向効果は高周波数側の場合にもっと顕著であり得る。
【0067】
外部導体208の遠位端を越えた所で、第2の誘電体材料212が露出される。内部導体206は第2の誘電体材料内を、第1の誘電体材料210の遠位端を越えて、及び外部導体208の遠位端を越えて延びて、放射先端部内に同軸ダイポールアンテナを形成する。内部導体206は、第2の誘電体材料212内で(たとえば、遠位端の直前で)終了してもよい。
【0068】
第2の誘電体材料212の長さは、放射先端部204が、体内組織内に放射先端部が挿入されたときに2.45GHz、5.8GHz、及び14.5GHzにおける共振をサポートすることができるように選択されている。その結果、体内組織に送出されるエネルギーが最大になる(本実施例で用いる長さに対しては以下を参照)。
【0069】
第2の誘電体材料212の長さは、放射すべきマイクロ波エネルギーの複数の周波数におけるその誘電特性と組み合わせて、以下の等式を満たすように選択される。
【0070】
【数2】
【0071】
ここで、Lは第2の誘電体材料の長さであり、nは正の整数であり、λは複数の周波数において第2の誘電体材料内を伝搬するエネルギーの波長である。第2の誘電体材料内を伝搬する波長は、周波数に以下のように依存する。
【0072】
【数3】
【0073】
ここで、cは真空中における光の速度であり、μ(f)は放射先端部の周波数依存性の比透磁率であり、ε(f)は第2の誘電体材料の周波数依存性の相対誘電率である。誘電率及び透磁率の周波数依存性は、放射先端部に対して好適な誘電体材料212を選択することによってある程度まで制御することができる。本実施形態が関係する周波数範囲にわたって、Macor(登録商標)セラミックの電気誘電率はほぼ一定であるが、誘電率の周波数依存性はより大きい周波数範囲上で役割を果たしてもよい。Macor(登録商標)セラミックの誘電損失(すなわち、誘電正接)も、本実施形態が関係する周波数範囲にわたってほぼ一定である。
【0074】
したがって、第2の誘電体材料212の長さは、放射先端部を挿入すべき材料と、第2の誘電体材料の周波数依存性の磁気及び誘電特性とを、以下の等式を満たすように考慮することによって選択しなければならない。
【0075】
【数4】
【0076】
Macor(登録商標)セラミックを肺組織内に挿入して、2.45GHz、5.8GHz、及び14.5GHzでエネルギーを供給した場合、第2の誘電体材料212として、全軸方向長さが14.1mm(その平行断面218の軸方向長さが10mm、曲線状の先端部分220の軸方向長さが4.1mm、外部導体208は第2の誘電体212を平行断面の最初の9mmに対して覆う)のものがこの等式を満たし、放射先端部204がこれらの周波数における共振をサポートする。
【0077】
本出願の目的上、軸方向は同軸ケーブルの長手方向である。
前述の等式から、第2の誘電体材料212として、大きな比誘電率(自由空間における誘電率に対する材料の誘電率の比として規定される)を有するものを選択することによって、放射先端部204部分の長さを小さくできることが分かる。
【0078】
図3~5は、放射先端部204を卵白内に挿入したときの、2.45GHz、5.8GHz、及び14.5GHzそれぞれにおける放射電力吸収密度を示すシミュレートしたプロットである。これらのシミュレーションによって、種々の周波数において放射先端部によって放出される電磁場の異なるサイズ及び形状が例示される。
【0079】
放射線の進入深さは周波数に依存することが知られている。下表1に、別個のマイクロ波源122a、122b、122cの周波数に対して、切除深さ(表中では皮膚深さと言う)がどのように変化するかを示す。
【0080】
【表1】
【0081】
図3に示すのは、2.45GHzの場合のシミュレートされた電磁場形状である。電磁場は、第2の誘電体材料の露出部の側面から離れるように半径方向に延びる。図4に示すのは、5.8GHzの場合のシミュレートされた電磁場形状である。予想されたように、電磁場の半径方向サイズは2.45GHzの場合よりもはるかに小さい。しかし電磁場の遠位部分は近位部分よりも遠くに半径方向に延びる。図5に示すのは、14.5GHzの場合のシミュレートされた電磁場形状である。この場合もやはり、予想されたように、電磁場の半径方向サイズは2.45GHz及び5.8GHzの場合よりもはるかに小さい。事実上、第2の誘電体材料の露出部の側面のすぐ近くに予想される電磁場はない。
【0082】
前述した電磁場のサイズ及び形状を特定の送出プロファイルにおいて有効に組み合わせることができる。
【0083】
たとえば、第1のプロファイルでは、エネルギー供給を最初は14.5GHzのみにおいて行い、放射先端部に近い組織の急速加熱を起こす。所定の時間が経過した後で、すなわち所望の量だけ組織が加熱された後で、発生器102を次に、5.8GHzでエネルギーを供給するように、すなわち、わずかにさらに遠くまで組織を加熱するように切り替える。優位なことに、放射先端部に隣接する組織の誘電特性は、14.5GHzにおいて加熱することによって変わったため、5.8GHzにおける組織に対するEMエネルギーのカップリングはさらに改善されて、5.8GHzにおける加熱は急速に起こる。別の所定の時間の後で、すなわち組織が所望の量だけわずかにさらに遠くまで加熱された後で、発生器を次に、2.45GHzでエネルギーを供給するように再び切り替えて、切除深さをさらに増加させる。したがって、このようなエネルギー送出プロファイルにより発生器102から信号を供給することによって、切除時間を短くして深い切除が実現される。
【0084】
3つの周波数におけるエネルギーが供給される時間を、たとえば処置する前に、経験的に決定してもよい。代替的に、信号発生器は、たとえば放射先端部における組織の誘電特性が必要量だけ変化したと判定したときに周波数を切り替える最適な時間を決定してもよい。
【0085】
供給するエネルギーを交互に変えるか、またはフィルタ/時間領域マルチプレクサ(必要に応じて)を用いてエネルギーを同時にまたは準同時に供給することによって同様の効果が得られる。これは、14.5GHzエネルギーを用いて放射先端部に最も近い組織の迅速な切除を可能にすることと、他の2つの周波数を用いて放射先端部からさらに遠い組織を切除することとによる。
【0086】
図6に示すのは、卵白内に挿入したときの、20GHzまでの周波数において器具の放射先端部204から反射される電力のS1,1プロット(dB)である。プロットの落下は、反射して同軸ケーブルに沿って発生器に戻るよりもむしろ、EMエネルギーが先端内に貯蔵される(すなわち、先端における共振定常波内に貯蔵される)点を示す。したがって、落下は、反射エネルギーが減少する点に対応する。反射エネルギーが減少する場合、放射先端部を囲む組織にエネルギーが効果的に送出される。したがって、反射損失が良好なほど、エネルギーの送出が良好である。プロット上に標示したのは2.45GHz(A)、5.8GHz(B)、及び14.5GHz(C)である。したがって、図6は、3つの説明した周波数において肺組織に対するエネルギーが図2の器具によって効果的に結合されていることを示している。また、これら3つの周波数において、放射先端部204から反射される電力は-15dBまたはそれよりも良好である。図2の器具はまた、周波数8.2GHz及び11.7GHzのマイクロ波エネルギーを効果的に送出し得ることに注意してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6