(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】フィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 13/10 20060101AFI20220829BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20220829BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20220829BHJP
B05B 1/04 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
F26B13/10 D
B05C13/02
B05C9/14
B05B1/04
(21)【出願番号】P 2020109688
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019189484
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592037077
【氏名又は名称】クリーン・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】西澤 和夫
(72)【発明者】
【氏名】早川 智康
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-242991(JP,A)
【文献】特開昭63-012376(JP,A)
【文献】特開2008-070114(JP,A)
【文献】実開昭58-002592(JP,U)
【文献】特開2001-004274(JP,A)
【文献】特開2000-230782(JP,A)
【文献】特表2007-532857(JP,A)
【文献】特開2019-184222(JP,A)
【文献】特開2019-120466(JP,A)
【文献】米国特許第5370289(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 13/10
B05C 13/02
B05C 9/14
B05B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜が塗布され浮揚搬送されるフィルム状の基材を熱風により乾燥させるフィルム状基材の熱風式縦型乾燥装置であって、乾燥室内において上方に向かって垂直浮揚搬送される前記基材の両側に該基材に沿って交互配設され、前記基材に向かって熱風を吹き出す熱風吹き出し部を備え、この熱風吹き出し部は、前記熱風を吹き出す傾斜ノズル部と、この傾斜ノズル部
の吹き出し口から吹き出された熱風の流動をガイドするガイド板とを備え、前記傾斜ノズル部
の吹き出し口は、前記基材に対して45°~70°の角度で斜め上方若しくは斜め下方に向かって前記熱風を吹き出すように構成され、また、前記ガイド板は、前記傾斜ノズル部
の吹き出し口の先端に連設される第一ガイド面部と、この第一ガイド面部の先端に連設される第二ガイド面部と、この第二ガイド面部の先端に連設される補助ガイド板とからなり、前記第一ガイド面部は、前記熱風吹き出し部の前記天面部にして前記基材と平行に設けられ、また、前記第二ガイド面部は、前記第一ガイド面部と同
一長さに設定され、さらに、前記第一ガイド面部に対して前記基材側に2°~8°傾斜した状態で前記熱風吹き出し部に対して突出状態に設けられ、また、前記補助ガイド板は、前記第二ガイド面部よりも短い長さに設定され、前記基材と平行に設けられていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置。
【請求項2】
請求項1記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記傾斜ノズル部
の吹き出し口は、前記基材に対して45°の角度で斜め上方若しくは斜め下方に向かって前記熱風を吹き出すように構成されていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記第二ガイド面部は、前記第一ガイド面部に対して前記基材側に5°傾斜した状態で設けられていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記傾斜補助ガイド板は、前記第二ガイド面部の1/5の長さに設定されていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記傾斜ノズル部は、
前記吹き出し口の先端から前記基材までの間隔が10mm程度となるように設けられていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記第二ガイド面部は、先端部から前記基材までの間隔が5mm程度となるように設けられていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜が塗布された浮揚搬送される長尺のフィルム状の基材を熱風により乾燥させるフィルム状基材用熱風式乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浮揚搬送タイプの熱風式(送風式)乾燥装置としては、例えば特許文献1に示されるもの(以下、従来例という。)のように、浮揚搬送される基材の両側に位置ずれた状態(千鳥状)で配置される熱風吹き出し部(特許文献1においてはノズル)を備え、この熱風吹き出し部から基材に向かって熱風を吹き出し、この熱風により基材上に塗工された塗膜(塗工液)を乾燥させる構成が一般的なものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来例のような浮揚搬送タイプのものは、ローラで基材を支承搬送するローラ搬送タイプに比べて基材に対する振動抑制力が低いため、この特許文献1にも記載されるように、熱風の風量を上げると基材の振動(バタツキ)が大きくなり基材が熱風吹き出し部に接触して破損する不具合が生じるおそれがある。
【0005】
また、基材の振動を低減すべく基材のテンションを上げる対策案も考えられるが、近年は基材の薄膜化が進み、テンションを掛けることで延びたり変形したりする不具合が生じるものがあり、テンションを掛けながらの搬送ができない基材も多くあり、このような点からテンションアップの対策は恒久的な対策にはなっておらず、現状は、基材の振動を低減すべく風量を抑えた条件で乾燥を行わざるを得ず、これにより乾燥時間が長くなり、生産性を低下させる要因の一つとなっている。
【0006】
また、塗工乾燥処理においては、基材の片面に塗膜が塗布されている場合、塗膜側の加熱量を小さくし、塗膜の裏側からの加熱量を大きくすると、塗膜表面の皮張りや膨らみが防止され、さらに塗膜中の結着材が均一に分散され、均一で密着性が強い塗膜を形成することができることが知られている。
【0007】
しかしながら、従来例のような浮揚搬送タイプのものは、基材の両側から同じ風量で熱風を吹きつけないと、基材が風量の弱い側に押され、熱風吹き出し部に接触して破損する不具合が生じるおそれがあるため、常に基材の両側から同じ強さ(同量)の熱風を吹きつけなければならず、前述のような基材の表側と裏側とで風量を変えて加熱量を変えて、良質な塗膜形成を行うことができなかった。
【0008】
本発明は、このような現状に鑑みなされたものであり、熱風の風量アップによる基材の振動の増加を抑制し、風量アップによる乾燥効率の向上を可能とすると共に、基材の表側と裏側とで風量を変えても基材に対する押動作用が生じず良質な塗膜形成を行うことができる従来にない画期的なフィルム状基材用熱風式乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
塗膜が塗布され浮揚搬送されるフィルム状の基材1を熱風により乾燥させるフィルム状基材の熱風式縦型乾燥装置であって、乾燥室10内において上方に向かって垂直浮揚搬送される前記基材1の両側に該基材1に沿って交互配設され、前記基材1に向かって熱風を吹き出す熱風吹き出し部2を備え、この熱風吹き出し部2は、前記熱風を吹き出す傾斜ノズル3部と、この傾斜ノズル3部の吹き出し口から吹き出された熱風の流動をガイドするガイド板4とを備え、前記傾斜ノズル部3の吹き出し口は、前記基材1に対して45°~70°の角度で斜め上方若しくは斜め下方に向かって前記熱風を吹き出すように構成され、また、前記ガイド板4は、前記傾斜ノズル部3の吹き出し口の先端に連設される第一ガイド面部5と、この第一ガイド面部5の先端に連設される第二ガイド面部6と、この第二ガイド面部6の先端に連設される補助ガイド板7とからなり、前記第一ガイド面部5は、前記熱風吹き出し部2の前記天面部にして前記基材1と平行に設けられ、また、前記第二ガイド面部6は、前記第一ガイド面部5と同一長さに設定され、さらに、前記第一ガイド面部5に対して前記基材1側に2°~8°傾斜した状態で前記熱風吹き出し部2に対して突出状態に設けられ、また、前記補助ガイド板7は、前記第二ガイド面部6よりも短い長さに設定され、前記基材1と平行に設けられていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記傾斜ノズル部3の吹き出し口は、前記基材1に対して45°の角度で斜め上方若しくは斜め下方に向かって前記熱風を吹き出すように構成されていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記第二ガイド面部6は、前記第一ガイド面部5に対して前記基材1側に5°傾斜した状態で設けられていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1~3いずれか1項に記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記傾斜補助ガイド板7は、前記第二ガイド面部6の1/5の長さに設定されていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1~4いずれか1項に記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記傾斜ノズル部3は、前記吹き出し口の先端から前記基材1までの間隔が10mm程度となるように設けられていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置に係るものである。
【0015】
また、請求項1~5いずれか1項に記載のフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置において、前記第二ガイド面部6は、先端部から前記基材1までの間隔が5mm程度となるように設けられていることを特徴とするフィルム状基材の縦型熱風式乾燥装置に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、熱風の風量アップによる基材の振動の増加を抑制し、風量アップによる乾燥効率の向上を可能とすると共に、基材の表側と裏側とで風量を変えても基材に対する押動作用が生じず良質な塗膜形成を行うことができる従来にない画期的なフィルム状基材用熱風式乾燥装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1の使用状態を示す概略説明図である。
【
図2】実施例1の熱風吹き出し部を示す説明正断面図である。
【
図3】実施例1の別例(横型タイプに構成した場合)の使用状態を示す概略説明図である。
【
図4】実施例2の熱風吹き出し部を示す説明正断面図である。
【
図5】実施例3の使用状態を示す概略説明図である。
【
図6】実施例3の熱風吹き出し部を示す説明正断面図である。
【
図7】実施例3の別例(横型タイプに構成した場合)の使用状態を示す概略説明図である。
【
図8】実施例4の熱風吹き出し部を示す説明正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
ノズル部3から吹き出された熱風は、基材1に向かって吹き出される。これにより基材1に効率的に熱風が作用し、基材1が効率的に乾燥される。
【0020】
また、ノズル部3から吹き出された熱風は、ガイド板4の第一ガイド面部5に沿って流動した後、この第一ガイド面部5と連設される第二ガイド面部6に沿って流動する。その際、本発明は、第一ガイド面部5が基材1と平行若しくは基材1に接近する方向に傾斜する傾斜状に設けられ、第二ガイド面部6が第一ガイド面部5にガイドされた熱風を前記基材1に接近する方向にガイドするように構成されているから、熱風は、基材1に対して平行に流動するか基材1に接近するように流動することとなり、基材1から遠ざかる方向(離反方向)に向かって流動することがない。これにより、熱風の風量を上げても基材1に大きな振動が生じず、従来の乾燥装置に比べて大きな風量(風速)で効率的に乾燥処理を行うことができ、スループットの向上を図ることができるものとなる。
【0021】
また、ガイド板4を前述のように構成することで、基材1に対する熱風の押動作用も低減される。これにより、基材1の表側と裏側とで風量を変えることができ、良質な塗膜形成を行うことができる従来にない画期的なフィルム状基材用熱風式乾燥装置となる。
【実施例1】
【0022】
本発明の具体的な実施例1について
図1~3に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、塗膜が塗布された浮揚搬送されるフィルム状の基材1を熱風により乾燥させる熱風式乾燥装置である。
【0024】
具体的には、
図1に示すような、塗工装置20の下流側に設けられ、この塗工装置20により表裏両面に塗膜が塗工(塗布)された上方に向かって走行する長尺のフィルム状の基材1を乾燥する縦型タイプに構成されるフィルム状基材用熱風式縦型乾燥装置である。なお、
図1において、符号30は未塗工の基材1を巻き出す基材巻出し装置であり、符号40は乾燥処理を終えた基材1を巻き取り回収する基材巻取り装置である。
【0025】
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。
【0026】
本実施例は、
図1に示すように、底面部に基材1が導入される基材導入口8が開口形成され、天面部に基材1が導出される基材導出口9が開口形成されている乾燥室10内に、浮揚搬送される基材1に沿って配設されこの基材1に向かって熱風を吹き出す複数の熱風吹き出し部2が設けられて成る構成とされている。
【0027】
熱風吹き出し部2は、乾燥室10内を走行する基材1の両側に設けられていて、具体的には、
図1に示すように、互いに位置ずれた状態(千鳥状)で基材1に沿って配設され、基材1に向けて熱風を吹き出すように構成されている。
【0028】
具体的には、熱風吹き出し部2は、基材1に近すぎると基材1が接触する可能性があり、また、基材1から離れすぎると乾燥効率が低下するため、この両者の問題が生じない適正な間隔、具体的には、熱風が吹き出されるノズル部3の先端と基材1との間隔が10mm程度となるように配設されている。なお、熱風吹き出し部2の設置数は、乾燥室10の形状や長さにより適宜設定されるものとする。
【0029】
また、本実施例の熱風吹き出し部2は、
図1,2に示すように、基材1に向かう方向にしてこの基材1の搬送方向と同方向、すなわち、基材1の搬送方向上流側(図中下側)から下流側(図中上側)に向かう斜め方向に向かって熱風を吹き出すノズル部3と、このノズル部3から吹き出された熱風の流動をガイドする先端側を基材1の搬送方向下流側に向けて設けられたガイド板4とを備える構成とされている。
【0030】
具体的には、ノズル部3は、このノズル部3から吹き出された熱風が効率的に基材1に向かって流動するように、45°~70°の角度に設定されるのが好ましく、本実施例においては45°に設定されている。
【0031】
また、このノズル部3の先端部には、このノズル部3から吹き出された熱風の流動をガイドするガイド板4が連設されている。
【0032】
ガイド板4は、ノズル部3から吹き出される熱風の吹き出し角度よりも小さい角度を成してノズル部3に連設される第一ガイド面部5と、この第一ガイド面部5に連設されこの第一ガイド面部5にガイドされた熱風を基材1に接近する方向にガイドする第二ガイド面部6とからなる構成とされている。
【0033】
具体的には、第一ガイド面部5は、基材1と平行若しくは基材1に接近する方向に傾斜する傾斜状に設けられる構成とされている。
【0034】
より具体的には、本実施例の第一ガイド面部5は、
図1,2に示すように、基材1と平行に設けられ、熱風吹き出し部2の天面部を兼用する構成とされている。
【0035】
また、第二ガイド面部6は、第一ガイド面部5に対する角度θが10°以下、好ましくは2°~8°に設定され基材1側に傾斜する傾斜状態で第一ガイド面部5に連設されている構成とされ、具体的には、本実施例の第二ガイド面部6は、長さL2が第一ガイド面部5の長さL1と同じ長さ(L1=L2=50mm)に設定され、第一ガイド面部5に対する傾斜角θが5°に設定され、基材1に最も接近する先端部が基材1に対して5mm程度離間するようにして第一ガイド面部5の先端に連設され、第一ガイド面部5と一体的に形成され、熱風がスムーズに流動するように構成されている。
【0036】
なお、第二ガイド面部6の角度θの設定範囲は実験により導出されたものである。
【0037】
具体的には、出願人は、基材1の振動には、熱風の流動状態が影響していると考え、この熱風の流動状態を変化させた場合の基材1の振動の状態を確認する実験を行った。
【0038】
この実験において、第二ガイド面部6の傾斜方向と角度を変えた実験を行ったところ、第二ガイド面部6を基材1と平行若しくは基材1から遠ざかる方向に傾斜させた場合、基材1から遠ざかる方向に向かって角度が大きくなるほど振動が大きくなり基材1が安定走行しなくなる結果が得られた。また、これと逆方向となる基材1に接近する方向に傾斜させた場合、振動が小さくなる結果が得られた。
【0039】
そして、この基材1に接近する方向に向かって傾斜させた場合の角度を変えて、夫々の角度における振動を確認したところ、前述のとおり、角度θが2°~8°の範囲において振動が小さく良好な基材1の安定走行が確認され、この結果から第二ガイド面部6の傾斜方向及び角度を前述のように決定した。
【0040】
この実験結果について、出願人は、熱風が第二ガイド面部6に沿って基材1から遠ざかる方向に流動することで、この熱風が基材1を熱風吹き出し部側に引っ張る吸引力が大きくなり、バランスが崩れることで振動が大きくなり、逆に、熱風が基材1に接近する方向に流動することで、熱風の基材1に対する押圧力と吸引力とのバランスがつり合い、その結果、振動が抑えられると共に、この熱風の基材1に対する押圧力と吸引力とのバランスのつり合いが基材1の表側と裏側の夫々の側で独立して成立することで、表側と裏側とで風量を変えても、基材1の風量の弱い側への押出し作用が殆ど生じないと推測する。
【0041】
また、本実施例の熱風吹き出し部2は、ガイド板4の先端部に補助ガイド板7が連設されている。
【0042】
具体的には、補助ガイド板7は、
図2に示すように、前述した第一ガイド面部5及び第二ガイド面部6よりも短い長さ(本実施例においては第二ガイド面部6の1/5、約10mm)に設定され、基材1に対して平行に設けられている。
【0043】
この基材1と平行な補助ガイド板7をガイド板4の先端部に設けることで、ガイド板4の先端部を過ぎた熱風の流動が安定し、より振動が抑えられる効果が得られる。
【0044】
なお、本発明のフィルム状基材用熱風式乾燥装置は、本実施例に示す縦型タイプに限らず、
図3に示すような横型タイプのフィルム状基材用熱風式横型乾燥装置として構成することも可能である。また、本実施例は、基材1の両側に熱風吹き出し部2が設けられている構成であるが、片側(例えば塗膜が塗布された面の反対(裏)側)だけに設ける構成としても良い。
【0045】
本実施例は、以上のように構成したから、熱風の風量を上げても基材1の振動の増大が抑制される。したがって、風量を増加しても振動による基材1の熱風吹き出し部2への接触のおそれが生じないので、安心して風量を上げることができ、乾燥効率を向上させることができるものとなる。
【0046】
また、本実施例は、熱風吹き出し部2のノズル部3から吹き出された熱風がガイド板4に沿って流動することで、この熱風の基材1に対する押圧力(押出し作用)と、熱風の流動によって生じる基材1に対する吸引力(引張作用)とのバランスがつり合った状態になるから、基材1の表側と裏側とで熱風吹き出し部2から吹き出される熱風の風量を異なる風量に設定しても、基材1の風量の弱い側への押出し作用が抑制される。したがって、片側に塗膜が塗布された基材1を乾燥する場合、塗膜側(表側)の熱風吹き出し部2から吹き出される熱風の風量を抑え、裏側の熱風吹き出し部2から吹き出される熱風の風量を大きくして、塗膜表面の皮張りや膨らみを防止すると共に、塗膜中の結着材が均一に分散した均一で密着性に優れた良好な膜質の塗膜を形成することができるものとなる。
【0047】
また、上述のように基材1の押出し作用が抑制されることで、基材1に張力が発生することも抑制されることになり、これにより、小さな張力でも伸びてしまう低張力タイプの基材1の搬送が可能になり、低張力タイプの基材1を効率的に乾燥することができる。
【0048】
言い換えると、本実施例は、前述のように構成することで、基材1を略無テンションに近い低張力状態で搬送することが可能となり、低張力タイプの基材(低張力フィルム)の浮揚搬送乾燥処理が容易に可能となる従来にない画期的なフィルム状基材用熱風式乾燥装置となる。
【実施例2】
【0049】
本発明の具体的な実施例2について
図4に基づいて説明する。
【0050】
本実施例は、
図4に示すように、実施例1のフィルム状基材用熱風式乾燥装置において、第一ガイド面部5及び第二ガイド面部6の双方が基材1に接近する方向に傾斜する傾斜状に設けられ、ガイド板4全体が基材1に対して傾斜する構成とした場合である。
【0051】
具体的には、ガイド板4は、所定の角度に設定された第一ガイド面部5と、この第一ガイド面部5と同一の角度に設定された前記第二ガイド面部6とが連設されてなる構成とされている。
【0052】
言い換えると、ガイド板4は、第一ガイド面部5と第二ガイド面部6とが一直線上に連設されてなる平板に形成され、所定の角度で傾斜状に設けられている構成とされている。
【0053】
より具体的には、ガイド板4は実施例1の1/2(約2.5°)の角度に設定され、第二ガイド面部6の先端位置が実施例1における第二ガイド面部6の位置と同じ位置になるように構成されている。
【0054】
その余の構成及び作用効果は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0055】
本発明の具体的な実施例3について
図5~7に基づいて説明する。
【0056】
本実施例は、
図5~7に示すように、実施例1のフィルム状基材用熱風式乾燥装置において、熱風吹き出し部2から吹き出される熱風の吹き出し方向を、実施例1と逆方向に設定した場合である。
【0057】
具体的には、本実施例の熱風吹き出し部2は、
図5,6に示すように、基材1に向かう方向にしてこの基材1の搬送方向と逆方向、すなわち、基材1の搬送方向下流側(図中上側)から上流側(図中下側)に向かう斜め方向に向かって熱風を吹き出すノズル部3と、このノズル部3から吹き出された熱風の流動をガイドする先端側を基材1の搬送方向上流側に向けて設けられたガイド板4とを備える構成とされている。
【0058】
その余の構成及び作用効果は実施例1と同様である。
【0059】
なお、本実施例も実施例1同様、
図7に示すような横型タイプのフィルム状基材用熱風式横型乾燥装置として構成することも可能である。
【0060】
このようにノズル部3及びガイド板4を基材1の搬送方向と逆方向、すなわち、基材1の搬送方向上流側に向けることで、基材1の搬送方向と同方向に設けた場合よりも乾燥室10内に搬送された基材1に早いタイミングで熱風が作用し、乾燥能力が向上する。
【実施例4】
【0061】
本発明の具体的な実施例4について
図8に基づいて説明する。
【0062】
本実施例は、
図8に示すように、実施例3のフィルム状基材用熱風式乾燥装置において、第一ガイド面部5及び第二ガイド面部6の双方が基材1に接近する方向に傾斜する傾斜状に設けられ、ガイド板4全体が基材1に対して傾斜する構成とした場合である。
【0063】
なお、本実施例のガイド板4の具体的な構成は、実施例2と同様であるため省略する。
【0064】
また、その余の構成及び作用効果は実施例3と同様である。
【0065】
なお、本発明は、実施例1~4に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0066】
1 基材
2 熱風吹き出し部
3 ノズル部
4 ガイド板
5 第一ガイド面部
6 第二ガイド面部
7 補助ガイド板
10 乾燥室