(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】コンタクトチップ再生装置及びコンタクトチップの再生方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/26 20060101AFI20220829BHJP
B23K 9/32 20060101ALI20220829BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B23K9/26 D
B23K9/32 Z
B21J5/06 F
(21)【出願番号】P 2021503639
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009285
(87)【国際公開番号】W WO2020179853
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2019042021
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508107618
【氏名又は名称】株式会社チップマン
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】フィン ヒュー ティン
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-209529(JP,A)
【文献】特開2001-246472(JP,A)
【文献】特開2009-66604(JP,A)
【文献】特開2001-300732(JP,A)
【文献】特開2015-205311(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32
B21J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤを案内するガイド孔の先端側内周面が使用により摩耗したアーク溶接用のコンタクトチップを再生させるコンタクトチップ再生装置であって、
上記コンタクトチップを固定可能な第1金型と、
該第1金型に固定された上記コンタクトチップの先端側に対向配置された第2金型と、
上記第1及び第2金型を互いに接近離間させるプレス機とを備え、
上記第2金型は、上記第1金型に固定された上記コンタクトチップに対応する位置に形成され、上記第1金型から離れるにつれて次第に縮径する塑性加工孔と、該塑性加工孔の孔中心線上に配設され、且つ、断面が上記ガイド孔の断面に対応する円形状
をなし、上記第1及び第2金型が接近した状態で上記第2金型に固定された上記コンタクトチップのガイド孔に挿入される芯金とを備え、
上記塑性加工孔の内周面には、当該塑性加工孔の内方に突出するとともに上記孔中心線に沿って延び、且つ、当該孔中心線の周方向に等間隔に位置する3つ以上の突条部と、上記塑性加工孔における隣り合う2つの上記突条部の間の内周面により構成され、上記孔中心線の周方向に等間隔に位置する上記突条部と同数の凹条面部とが設けられ、
上記各突条部は、上記プレス機による上記第1及び第2金型の接近動作で上記コンタクトチップを上記塑性加工孔に挿入すると、上記コンタクトチップが上記各凹条面部に接触しない状態において上記コンタクトチップの先端側外周面に摺接しながら当該コンタクトチップの先端側を上記芯金に接触するまで上記孔中心線側に押圧して塑性変形させるよう構成されていることを特徴とするコンタクトチップ再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンタクトチップ再生装置において、
上記突条部における上記塑性加工孔のコンタクトチップ挿入開口側には、当該コンタクトチップ挿入開口周縁に近づくにつれて次第に上記孔中心線から離間するように傾斜するガイド面が形成されていることを特徴とするコンタクトチップ再生装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンタクトチップ再生装置において、
上記突条部は、上記孔中心線の周方向に3つ設けられていることを特徴とするコンタクトチップ再生装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のコンタクトチップ再生装置において、
上記コンタクトチップをその中心線が上下に向く状態で第1領域へと供給するチップ供給手段と、
上記コンタクトチップを挟持可能なチップ挟持手段と、
上記第1領域と当該第1領域の側方で、且つ、上記第1及び第2金型の間に設定された第2領域との間において上記チップ挟持手段を水平移動させる水平移動手段と、
上記第2領域において上記チップ挟持手段を昇降させる昇降手段とを備えていることを特徴とするコンタクトチップ再生装置。
【請求項5】
請求項4に記載のコンタクトチップ再生装置において、
上記チップ挟持手段は、回転軸心が中央に設定された挟持作業空間を有し、複数の嵌合部を上記回転軸心周りに等間隔に有する第1回転体と、
当該第1回転体に対して上記回転軸心周りに互いに相対回転可能に構成された第2回転体と、
上記第1及び第2回転体の少なくとも一方を回転させる回転駆動手段と、
上記各嵌合部にそれぞれ対応する位置に配設され、且つ、上記回転軸心と同方向に延びる回動軸周りに回動可能に上記第2回転体に軸支され、先端に爪部が上記回転軸心を中心とした周方向に離間して一対形成される一方、基部が対応する上記嵌合部に遊嵌する挟持体とを備え、
上記回転駆動手段の駆動動作により、上記第1及び第2回転体が基準位置から一方側に相対的に回転すると、上記嵌合部の上記基部への一方側への押圧動作で上記挟持体が一方側に回動して上記一方の爪部が上記挟持作業空間にセットされた上記コンタクトチップに接触可能に上記挟持作業空間に前進して上記コンタクトチップを挟持する一方、上記第1及び第2回転体が基準位置から他方側に相対的に回転すると、上記嵌合部の上記基部への他方側への押圧動作で上記挟持体が他方側に回動して上記他方の爪部が上記挟持作業空間にセットされた上記コンタクトチップに接触可能に上記挟持作業空間に前進して上記コンタクトチップを挟持するよう構成されていることを特徴とするコンタクトチップ再生装置。
【請求項6】
請求項5に記載のコンタクトチップ再生装置において、
上記第1金型は、上記コンタクトチップの基端側に形成された雄螺子部に対応する雌螺子部を備え、上記コンタクトチップをその中心線周りの一方側に回転させることにより、上記雄螺子部を上記雌螺子部に螺進させて上記第1金型に固定させる一方、上記コンタクトチップをその中心線周りの他方側に回転させることにより、上記雄螺子部を上記雌螺子部から螺退させて上記第1金型から取り外すよう構成されていることを特徴とするコンタクトチップ再生装置。
【請求項7】
請求項
4から6のいずれか1つに記載のコンタクトチップ再生装置において、
上記チップ供給手段は、上記コンタクトチップをその中心線が斜め下方に延びる状態で自重により斜め下方に案内する傾斜面部と、
該傾斜面部の下流側の側方に設けられ、上端に上記傾斜面部の延長方向の寸法が上記コンタクトチップの雄螺子部を除く本体部の長手方向の寸法に対応する上端開口を有する一方、下端に上記コンタクトチップの幅寸法に対応する寸法の開口を有するガイド穴部と、
上記傾斜面部の下流端に設けられ、当該傾斜面部の延長方向と直交する水平方向で、且つ、上記ガイド穴部側に延びてその延長側が上記ガイド穴部における上端開口の下側縁部の下方に連続する位置となる形状をなし、上記コンタクトチップが上記傾斜面部によって先端側が下方を向くように案内される際、上記コンタクトチップの先端に接触する一方、上記コンタクトチップが上記傾斜面部によって基端側が下方を向くように案内される際、上記雄螺子部に接触せずに上記本体部に接触する形状に設定されたストッパ部とを備えていることを特徴とするコンタクトチップ再生装置。
【請求項8】
溶接ワイヤを案内するガイド孔の先端側内周面が使用により摩耗したアーク溶接用のコンタクトチップを再生させるコンタクトチップ再生方法であって、
上記コンタクトチップを固定可能な第1金型と、
孔中心線に沿って延びる突条部が上記孔中心線の周方向に等間隔に3つ以上設けられるとともに、隣り合う2つの上記突条部の間の内周面により構成された当該突条部と同数の凹条面部からなる塑性加工孔
と、該塑性加工孔の孔中心線上に配設され、且つ、断面が上記ガイド孔の断面に対応する円形状をなす芯金とを有する第2金型とを用意し、
上記第1及び第2金型を互いに接近させて
上記芯金を上記第1金型に固定された上記コンタクトチップのガイド孔に挿入するとともに、上記コンタクトチップを上記塑性加工孔に挿入した後、さらに上記第1及び第2金型を接近させて上記各凹条面部を上記コンタクトチップの外周面に接触させないように上記各突条部を上記コンタクトチップの外周面に摺接させることにより、上記各突条部が上記コンタクトチップの先端側を上記芯金に接触するまで上記孔中心線側に押圧して塑性変形させて上記コンタクトチップを再生させることを特徴とするコンタクトチップの再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク溶接を繰り返し行った後、溶接ワイヤを案内するガイド孔の先端側内周面が摩耗した状態であるコンタクトチップを再生させるコンタクトチップ再生装置及びコンタクトチップの再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アーク溶接時には、アーク溶接用の溶接トーチが用いられ、該溶接トーチには、被溶接物に対して溶接ワイヤを介して溶接電流を供給する銅製のコンタクトチップが取り付けられている。該コンタクトチップは、細長い棒状をなしており、その中心線上には、溶接時に溶接ワイヤを案内するガイド孔が貫通形成されている。
【0003】
ところで、アーク溶接を繰り返し行うと、コンタクトチップにおけるガイド孔の先端側内周面が溶接ワイヤとの間における摩擦で摩耗してしまい、ガイド孔におけるコンタクトチップ先端側の穴径が大きくなってしまう。すると、ガイド孔内における溶接ワイヤの位置がアーク溶接時に変わり易くなってしまい、溶接ワイヤとガイド孔内周面との間の接触状態が不安定になるので、コンタクトチップから溶接ワイヤを介して被溶接物に流れる溶接電流が不安定になり、ひいては、溶接品質が低下してしまうことになる。したがって、繰り返しアーク溶接を行ったコンタクトチップを定期的に溶接トーチから取り外して交換することが一般的に行われるが、部品コストが嵩んでしまうという問題があった。
【0004】
これに対応するために、例えば、特許文献1では、使用済みのコンタクトチップを再生させるコンタクトチップ再生装置が開示されている。該コンタクトチップ再生装置は、筒状をなすコレットホルダを備え、該コレットホルダの外周面は、先端側に行くにしたがって緩やかに、且つ、直線的に縮径するテーパ面になっている。コレットホルダには、当該コレットホルダの筒中心線に沿って延びてその先端開口部分に開放するスリットが筒中心線の周方向に等間隔に複数形成され、各スリットにより分けられた分割部分が筒中心線と交差する方向に撓むようになっている。また、コンタクトチップ再生装置は、コレットホルダをその先端側から嵌挿可能な嵌挿穴を有するロッドヘッドを備えている。嵌挿穴の内周面は、コレットホルダの外周面に対応する形状をなしており、当該コレットホルダから離れるにつれて緩やかに、且つ、直線的に縮径するテーパ面になっている。そして、断面が六角形状をなす芯金をガイド孔に挿入した使用済みのコンタクトチップをコレットホルダの基端側開口部分から嵌合させた状態で当該コレットホルダをロッドヘッドの嵌合穴に押し込んでコレットホルダの外周面を嵌合穴内周面に摺接させることにより、コレットホルダの各スリットにより分けられた分割部分を筒中心線側に移動させてコンタクトチップの先端側を芯金に接触させるまで筒中心線側に押圧して塑性変形させるようになっている。これにより、ガイド孔におけるコンタクトチップ先端側の穴形状を小さくしてコンタクトチップを再生させるだけでなく、ガイド孔の断面形状が六角形状になるので、溶接ワイヤがガイド孔の内周面に2点で接触するようになり、再生後のコンタクトチップを用いてアーク溶接を実施する際の溶接品質を安定させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のコンタクトチップ再生装置は、再生作業時においてコレットホルダの隣り合う分割部分がスリットが無くなるように互いに接近しながらコンタクトチップの先端部を押圧するので、コンタクトチップの塑性変形する部分の逃げ場がほとんど無くなる。したがって、コレットホルダをロッドヘッドの嵌合穴に押し込む際に大きな力が必要になるので、装置の能力を高く設定する必要が生じてコストが嵩むおそれがある。
【0007】
また、コンタクトチップの先端側を塑性変形させた際、芯金の外周面にガイド孔の内周面を沿わせることにより、当該ガイド孔の断面を六角形状にするようになっているので、コンタクトチップを塑性変形させたときにガイド孔の内周面に芯金の外周面が密着してしまい、ガイド孔から芯金を引き抜けなくなって装置が停止してしまうおそれがある。さらに、芯金は断面が六角形状をなしているので、コンタクトチップの再生作業を繰り返し行うと、外周面の角部が摩耗により変形してしまい、次第にガイド孔の断面が六角形状となるように再生されなくなってしまう。したがって、芯金の角部が変形する前に芯金を変える必要があり、メンテナンス周期が短くなるというおそれもある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置の稼働停止を少なくすることができ、且つ、メンテナンス周期を長くすることができる低コストなコンタクトチップ再生装置及びコンタクトチップの再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、コンタクトチップを塑性変形させる部分とコンタクトチップに接触しない部分とをコンタクトチップの中心軸の周方向に交互に複数設けるようにしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、溶接ワイヤを案内するガイド孔の先端側内周面が使用により摩耗したアーク溶接用のコンタクトチップを再生させるコンタクトチップ再生装置において、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、上記コンタクトチップを固定可能な第1金型と、該第1金型に固定された上記コンタクトチップの先端側に対向配置された第2金型と、上記第1及び第2金型を互いに接近離間させるプレス機とを備え、上記第2金型は、上記第1金型に固定された上記コンタクトチップに対応する位置に形成され、上記第1金型から離れるにつれて次第に縮径する塑性加工孔と、該塑性加工孔の孔中心線上に配設され、且つ、断面が上記ガイド孔の断面に対応する円形状をなし、上記第1及び第2金型が接近した状態で上記第2金型に固定された上記コンタクトチップのガイド孔に挿入される芯金とを備え、上記塑性加工孔の内周面には、当該塑性加工孔の内方に突出するとともに上記孔中心線に沿って延び、且つ、当該孔中心線の周方向に等間隔に位置する3つ以上の突条部と、上記塑性加工孔における隣り合う2つの上記突条部の間の内周面により構成され、上記孔中心線の周方向に等間隔に位置する上記突条部と同数の凹条面部とが設けられ、上記各突条部は、上記プレス機による上記第1及び第2金型の接近動作で上記コンタクトチップを上記塑性加工孔に挿入すると、上記コンタクトチップが上記各凹条面部に接触しない状態において上記コンタクトチップの先端側外周面に摺接しながら当該コンタクトチップの先端側を上記芯金に接触するまで上記孔中心線側に押圧して塑性変形させるよう構成されていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、上記突条部における上記塑性加工孔のコンタクトチップ挿入開口側には、当該コンタクトチップ挿入開口周縁に近づくにつれて次第に上記孔中心線から離間するように傾斜するガイド面が形成されていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記突条部は、上記孔中心線の周方向に3つ設けられていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記コンタクトチップをその中心線が上下に向く状態で第1領域へと供給するチップ供給手段と、上記コンタクトチップを挟持可能なチップ挟持手段と、上記第1領域と当該第1領域の側方で、且つ、上記第1及び第2金型の間に設定された第2領域との間において上記チップ挟持手段を水平移動させる水平移動手段と、上記第2領域において上記チップ挟持手段を昇降させる昇降手段とを備えていることを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、第4の発明において、上記チップ挟持手段は、回転軸心が中央に設定された挟持作業空間を有し、複数の嵌合部を上記回転軸心周りに等間隔に有する第1回転体と、当該第1回転体に対して上記回転軸心周りに互いに相対回転可能に構成された第2回転体と、上記第1及び第2回転体の少なくとも一方を回転させる回転駆動手段と、上記各嵌合部にそれぞれ対応する位置に配設され、且つ、上記回転軸心と同方向に延びる回動軸周りに回動可能に上記第2回転体に軸支され、先端に爪部が上記回転軸心を中心とした周方向に離間して一対形成される一方、基部が対応する上記嵌合部に遊嵌する挟持体とを備え、上記回転駆動手段の駆動動作により、上記第1及び第2回転体が基準位置から一方側に相対的に回転すると、上記嵌合部の上記基部への一方側への押圧動作で上記挟持体が一方側に回動して上記一方の爪部が上記挟持作業空間にセットされた上記コンタクトチップに接触可能に上記挟持作業空間に前進して上記コンタクトチップを挟持する一方、上記第1及び第2回転体が基準位置から他方側に相対的に回転すると、上記嵌合部の上記基部への他方側への押圧動作で上記挟持体が他方側に回動して上記他方の爪部が上記挟持作業空間にセットされた上記コンタクトチップに接触可能に上記挟持作業空間に前進して上記コンタクトチップを挟持するよう構成されていることを特徴とする。
【0016】
第6の発明は、第5の発明において、上記第1金型は、上記コンタクトチップの基端側に形成された雄螺子部に対応する雌螺子部を備え、上記コンタクトチップをその中心線周りの一方側に回転させることにより、上記雄螺子部を上記雌螺子部に螺進させて上記第1金型に固定させる一方、上記コンタクトチップをその中心線周りの他方側に回転させることにより、上記雄螺子部を上記雌螺子部から螺退させて上記第1金型から取り外すよう構成されていることを特徴とする。
【0017】
第7の発明では、第4から第6のいずれか1つの発明において、上記チップ供給手段は、上記コンタクトチップをその中心線が斜め下方に延びる状態で自重により斜め下方に案内する傾斜面部と、該傾斜面部の下流側の側方に設けられ、上端に上記傾斜面部の延長方向の寸法が上記コンタクトチップの雄螺子部を除く本体部の長手方向の寸法に対応する上端開口を有する一方、下端に上記コンタクトチップの幅寸法に対応する寸法の開口を有するガイド穴部と、上記傾斜面部の下流端に設けられ、当該傾斜面部の延長方向と直交する水平方向で、且つ、上記ガイド穴部側に延びてその延長側が上記ガイド穴部における上端開口の下側縁部の下方に連続する位置となる形状をなし、上記コンタクトチップが上記傾斜面部によって先端側が下方を向くように案内される際、上記コンタクトチップの先端に接触する一方、上記コンタクトチップが上記傾斜面部によって基端側が下方を向くように案内される際、上記雄螺子部に接触せずに上記本体部に接触する形状に設定されたストッパ部とを備えていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、溶接ワイヤを案内するガイド孔の先端側内周面が使用により摩耗したアーク溶接用のコンタクトチップを再生させるコンタクトチップ再生方法をも対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0019】
すなわち、第8の発明では、上記コンタクトチップを固定可能な第1金型と、孔中心線に沿って延びる突条部が上記孔中心線の周方向に等間隔に3つ以上設けられるとともに、隣り合う2つの上記突条部の間の内周面により構成された当該突条部と同数の凹条面部からなる塑性加工孔と、該塑性加工孔の孔中心線上に配設され、且つ、断面が上記ガイド孔の断面に対応する円形状をなす芯金とを有する第2金型とを用意し、上記第1及び第2金型を互いに接近させて上記芯金を上記第1金型に固定された上記コンタクトチップのガイド孔に挿入するとともに、上記コンタクトチップを上記塑性加工孔に挿入した後、さらに上記第1及び第2金型を接近させて上記各凹条面部を上記コンタクトチップの外周面に接触させないように上記各突条部を上記コンタクトチップの外周面に摺接させることにより、上記各突条部が上記コンタクトチップの先端側を上記芯金に接触するまで上記孔中心線側に押圧して塑性変形させて上記コンタクトチップを再生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1及び第8の発明では、コンタクトチップの先端側における各突条部に対応する領域がガイド孔側に塑性変形するので、ガイド孔におけるコンタクトチップ先端側の穴形状が小さくなり、コンタクトチップを再生させることができる。また、コンタクトチップの先端側における各突条部に対応する領域がガイド孔側に塑性変形する一方、コンタクトチップの先端側における各凹条面部に対応する領域が塑性変形せずに当該各凹条面部に留まった状態になるので、コンタクトチップの先端側のガイド孔が各凹条面部に対応する領域に頂点が位置する多角形の断面形状をなすようになる。したがって、再生後のコンタクトチップを用いてアーク溶接を行うと、溶接ワイヤがガイド孔の内周面に2点で接触するようになり、溶接品質を安定させることができる。また、各突条部によりコンタクトチップを塑性変形させる際に各凹条面部にコンタクトチップが接触しないので、特許文献1のようにコンタクトチップの塑性変形する部分の逃げ場が無くなるといったことを回避させることができる。したがって、コンタクトチップを塑性変形させる際の力が小さくなるので、装置の能力を必要以上に高くする必要が無くなって、低コストな装置にすることができる。さらに、コンタクトチップの先端側を塑性変形させた際、芯金の外周面にコンタクトチップの各突条部に対応する箇所が線接触するようになるので、塑性変形後のガイド孔内周面と芯金外周面との間の接触領域が特許文献1の如き構成に比べて少なくなり、ガイド孔から芯金を引き抜けなくなって装置が停止してしまうのを防ぐことができる。それに加えて、芯金は断面が円形状をなしているので、特許文献1のようにコンタクトチップの再生作業を繰り返し行った際に外周面の角部が摩耗により変形してしまうといったことが無く、メンテナンス周期を長くすることができる。
【0021】
第2の発明では、第1及び第2金型を互いに接近させた際、各ガイド面によってコンタクトチップの中心軸を塑性加工孔の孔中心線に一致させながらコンタクトチップが塑性加工孔内にスムーズに案内されるようになるので、それぞれ再生するコンタクトチップのガイド孔の断面形状を同じにすることができる。
【0022】
第3の発明では、各突条部を孔中心線の周方向に4つ以上設ける場合に比べて、再生後のコンタクトチップ先端側におけるガイド孔の断面積が広くなる。したがって、アーク溶接を行う際においてガイド孔にスパッタやヒューム、或いは、銅メッキ等の粉末が溜まり難くなり、溶接ワイヤの供給停止を少なくすることができる。
【0023】
第4の発明では、チップ供給手段により第1領域に供給されるコンタクトチップは、中心線が上下に延びる状態でチップ挟持手段に挟持され、その状態で水平移動手段により第2領域まで運搬されるようになる。第2領域まで運搬されたコンタクトチップは、第2領域において昇降手段により第1金型まで運搬可能になるので、運搬したコンタクトチップを第1金型に固定すると、コンタクトチップが再生準備状態になる。このように、再生前のコンタクトチップを効率良く再生準備状態にすることができる。また、再生後のコンタクトチップが固定された第1金型までチップ挟持手段を昇降手段及び水平移動手段により移動させ、その後、昇降手段及び水平移動手段によりチップ挟持手段を第1及び第2金型から退避させると、再生後のコンタクトチップを第2領域から簡単に取り出すことができる。このように、チップを再生する第2領域に対して再生前及び再生後のコンタクトチップを効率良く搬出入することができる。
【0024】
第5の発明では、第1及び第2回転体が基準位置の状態においてコンタクトチップを挟持作業空間にセットした後、第1及び第2回転体を一方側に相対回転させると、各挟持体の一方の爪部が挟持作業空間に前進してコンタクトチップを挟持するとともにその中心線周りの一方側に第1及び第2回転体が回転一体になる一方、第1及び第2回転体が基準位置においてコンタクトチップを挟持作業空間にセットした後、第1及び第2回転体を他方側に相対回転させると、各挟持体の他方の爪部が挟持作業空間に前進してコンタクトチップを挟持するとともにその中心線周りの他方側に第1及び第2回転体が回転一体になる。このように、第1及び第2回転体をどちらの方向に相対回転させても、コンタクトチップを挟持可能であるとともに、コンタクトチップを挟持した状態でその中心線周りに回転させることができる。
【0025】
第6の発明では、第1及び第2回転体を基準位置から一方側に相対回転させて各挟持体の一方の爪部でコンタクトチップを挟持するとともにその中心線周りの一方側に回転させながら昇降手段を昇降させて第1金型に接近させると、コンタクトチップの雄螺子部が第1金型の雌螺子部に螺進して、コンタクトチップが第1金型に固定される。コンタクトチップが第1金型に固定された後、第1及び第2回転体を他方側に相対回転させると、各挟持体の一方の爪部が挟持作業空間から退避するので、チップ挟持手段がコンタクトチップを解放するようになる。一方、第1金型に固定されたコンタクトチップを第1及び第2回転体を基準位置から互いに他方側に相対回転させて各挟持体の他方の爪部でコンタクトチップを挟持するとともにその中心線周りの他方側に回転させながら昇降手段を昇降させて第1金型から離間させると、コンタクトチップの雄螺子部が第1金型の雌螺子部から螺退してコンタクトチップが第1金型から外れるようになる。このように、第1及び第2回転体の各回転動作によりコンタクトチップの挟持及び解放、さらには、第1金型への固定と取外しとが可能になるので、コンタクトチップの再生作業前及び再生作業後の段取りを効率良く行うことができる。
【0026】
第7の発明では、傾斜面部がコンタクトチップをその先端側が斜め下方に向く状態で案内する際、コンタクトチップの先端がストッパ部に接触する。この状態においてコンタクトチップをその中心線と交差する方向にスライドさせると、当該コンタクトチップがガイド穴部に落下するが、雄螺子部がガイド穴部における上端開口の上側縁部に乗り上げた状態のままコンタクトチップの先端側がガイド穴部に落下し始めるので、コンタクトチップは雄螺子部を支点に先端側が下方に回動しながら落下するようになる。したがって、ガイド穴部の下端開口を通過する際には、必ず、先端側が下側に向くとともに中心線が上下方向に延びる状態で通過するようになる。一方、傾斜面部がコンタクトチップをその雄螺子部側が斜め下方に向く状態で案内する際、コンタクトチップの雄螺子部がストッパ部に乗り上げるとともに、コンタクトチップの雄螺子部を除く本体部がストッパ部に接触する。この状態においてコンタクトチップをその中心線方向と交差する方向にスライドさせると、当該コンタクトチップがガイド穴部に落下するが、雄螺子部がストッパ部に乗り上げた状態のままコンタクトチップの先端側がガイド穴部に落下し始めるので、コンタクトチップは雄螺子部を支点に先端側が下方に回動しながら落下するようになる。したがって、ガイド穴部の下端開口を通過する際には、必ず、先端側が下側に向くとともに中心線が上下方向に延びる状態で通過するようになる。このように、傾斜面部に供給されるコンタクトチップの先端の向きが異なる場合であっても第1領域に供給されるコンタクトチップの先端の向きを常に同じにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態1に係るコンタクトチップ再生装置の断面概略図である。
【
図5】
図1の後、コンタクトチップを再生している途中の状態を示す図である。
【
図7】
図5の後、コンタクトチップを再生した直後の状態を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態1に係るコンタクトチップ再生装置を用いて再生したコンタクトチップを先端側から見た図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係るコンタクトチップ再生装置の斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態2に係るコンタクトチップ再生装置の保護カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図17】
図12のA-A線における断面図であり、挟持ユニット周りを示す図である。
【
図18】
図12のA-A線における断面図であり、第1及び第2金型周りを示す図である。
【
図19】
図12のA-A線における断面図であり、排出スロープ周りを示す図である。
【
図22】
図20のXXII-XXII線における断面図である。
【
図23】
図20のXXIII-XXIII線における断面図である。
【
図24】先端側が下方を向く状態のコンタクトチップをチップ挟持ユニットへと案内し始めた直後の状態を示す
図16相当図である。
【
図25】
図24の後、コンタクトチップをチップ挟持ユニットに案内している途中の状態を示す図である。
【
図26】
図25の後、コンタクトチップをチップ挟持ユニットに案内し終える直前の状態を示す図である。
【
図27】
図26のXXVII-XXVII線における断面図である。
【
図28】基端側が下方を向く状態のコンタクトチップをチップ挟持ユニットへと案内し始めた直後の状態を示す
図16相当図である。
【
図29】
図28の後、コンタクトチップをチップ挟持ユニットに案内している途中の状態を示す図である。
【
図30】
図29の後、コンタクトチップをチップ挟持ユニットに案内し終える直前の状態を示す図である。
【
図31】
図30のXXXI-XXXI線における断面図である。
【
図32】
図12のA-A線における断面図であり、チップ挟持ユニットにコンタクトチップが供給される直前の状態を示す図である。
【
図33】
図32の後、チップ挟持ユニットにてコンタクトチップを挟持した直後の状態を示す図である。
【
図34】
図33のXXXIV-XXXIV線における断面図である。
【
図35】
図33の後、チップ挟持ユニットを第1及び第2金型の間まで移動させた直後の状態を示す図である。
【
図36】
図35の後、第1金型にコンタクトチップを固定した直後の状態を示す図である。
【
図37】
図36の後、チップ挟持ユニットを第1及び第2金型の間から退避させた状態を示す図である。
【
図38】
図37の後、コンタクトチップを再生している途中の状態を示す図である。
【
図39】
図38の後、第1金型からコンタクトチップを取り外している途中の状態を示す図である。
【
図41】
図39の後、再生したコンタクトチップを排出している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0029】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るコンタクトチップ再生装置1の概略断面図である。該コンタクトチップ再生装置1は、アーク溶接用の溶接トーチ(図示せず)に取り付けられて使用される銅製コンタクトチップ10を使用後に再生させるものであり、当該コンタクトチップ10を固定可能な第1金型2と、該第1金型の上方に対向配置された第2金型3と、該第2金型3を第1金型2に対して昇降させることにより第1金型2と第2金型3とを接近離間させるプレス機4とを備えている。
【0030】
コンタクトチップ10は、細長い棒状をなし、その外周面は、中途部から先端に行くにしたがって緩やかに、且つ、直線的に縮径する本体部10cを備えている。
【0031】
コンタクトチップ10の基端側には、略円柱状をなす雄螺子部10bが突設され、コンタクトチップ10の中心線上には、溶接ワイヤ11(
図10参照)を案内する断面円形状のガイド孔10aが貫通形成されている。
【0032】
ガイド孔10aの内周面は、図示しない溶接トーチによりアーク溶接作業を繰り返すと、溶接ワイヤ11を案内する際に発生する摩擦によって摩耗し、
図2に示すように、ガイド孔10aにおけるコンタクトチップ10の先端側が当該コンタクトチップ10の先端に行くにつれて次第に拡径する形状に変形するようになっている。
【0033】
第1金型2の上面には、
図1に示すように、上方に開放する凹状をなす雌螺子部2aが形成され、該雌螺子部2aには、コンタクトチップ10の雄螺子部10bを螺合可能になっている。
【0034】
そして、コンタクトチップ10は、雄螺子部10bを雌螺子部2aに螺合させることにより、上方に向く姿勢で第1金型2に固定されるようになっていて、当該第1金型2に固定されたコンタクトチップ10の先端側に第2金型3が対向するようになっている。
【0035】
第2金型3における第1金型2に固定されたコンタクトチップ10に対応する位置には、下方に開口する塑性加工孔3aが形成され、該塑性加工孔3aは、第1金型2から離れるにつれて次第に縮径する略擂鉢状をなしている。
【0036】
塑性加工孔3aの内周面には、
図3に示すように、当該塑性加工孔3aの内方に突出するとともに孔中心線C1に沿って延びる突条部3bが孔中心線C1の周方向に等間隔に3つ設けられている。
【0037】
突条部3bの突出端は、孔中心線C1方向に見て当該孔中心線C1から離れるように緩やかに窪む湾曲面3cとなっている。
【0038】
突条部3bにおける塑性加工孔3aのコンタクトチップ10挿入開口側には、
図4に示すように、当該コンタクトチップ10挿入開口周縁に近づくにつれて次第に孔中心線C1から離間するように傾斜するガイド面3dが形成されている。
【0039】
隣り合う2つの突条部3bの間には、塑性加工孔3aの内側に開口するとともに孔中心線C1に沿って延びる凹条面部3eが設けられ、該凹条面部3eは、孔中心線C1の周方向に等間隔に突条部3bと同数である3つ設けられている。
【0040】
すなわち、各凹条面部3eは、塑性加工孔3aにおける隣り合う2つの突条部3bの間の内周面により構成されている。
【0041】
塑性加工孔3aの孔中心線C1上には、断面がガイド孔10aの断面に対応する円形状をなす芯金3fが配設されている。
【0042】
そして、芯金3fは、
図4に示すように、プレス機4により第1金型2及び第2金型3を接近させると第2金型3に固定されたコンタクトチップ10のガイド孔10aに挿入されるようになっている。
【0043】
また、各突条部3bは、プレス機4による第1金型2及び第2金型3の接近動作でコンタクトチップ10を塑性加工孔3aに挿入すると、
図5乃至
図7に示すように、コンタクトチップ10が各凹条面部3eに接触しない状態においてコンタクトチップ10の先端側外周面に摺接しながらコンタクトチップ10の先端側を芯金3fに接触するまで孔中心線C1側に押圧して塑性変形させるよう構成され、これにより、コンタクトチップ10が再生するようになっている。
【0044】
コンタクトチップ再生装置1にて再生されたコンタクトチップ10の先端側におけるガイド孔10aは、
図8乃至
図10に示すように、当該コンタクトチップ10の先端側から見て略三角形状をなすように塑性変形している。具体的には、ガイド孔10aの三角形状をなす部分の各辺は、溶接ワイヤ11の断面の曲率半径よりも大きな曲率半径を有するよう緩やかに湾曲している。一方、コンタクトチップ10の先端側外周面は、コンタクトチップ10の中心軸に沿って延びる凹条溝10dがガイド孔10aの三角形状をなす部分の各辺に対応する位置にそれぞれ3つ形成されるようになっている。したがって、再生させたコンタクトチップ10にてアーク溶接を行う際、
図10に示すように、溶接ワイヤ11の外周面がコンタクトチップ10の先端側におけるガイド孔10aの内周面に2点P1,P2で接触するようになるので、コンタクトチップ10から溶接ワイヤ11に電流が流れ易くなるようになっている。
【0045】
次に、コンタクトチップ再生装置1を用いた使用済みコンタクトチップ10の再生作業について詳述する。
【0046】
まず、
図1に示すように、第1金型2の雌螺子部2aに使用済みコンタクトチップ10の雄螺子部10bを螺合して使用済みコンタクトチップ10を第1金型2に固定する。
【0047】
次いで、プレス機4を作動させて第2金型3を下降させる。すると、第1金型2に第2金型3が接近して芯金3fが使用済みコンタクトチップ10のガイド孔10aに挿入されるとともに、コンタクトチップ10の先端側が塑性加工孔3a内に入り始める。このとき、塑性加工孔3aにおける各突条部3bに設けられたガイド面3dがコンタクトチップ10の中心軸を塑性加工孔3aの孔中心線C1に一致させるようコンタクトチップ10を塑性加工孔3a内にスムーズに案内する。
【0048】
しかる後、第2金型3をさらに下降させる。すると、
図5及び
図6に示すように、各突条部3bがコンタクトチップ10の先端側外周面に摺接しながら当該コンタクトチップ10の先端側を芯金3fに接触するまで孔中心線C1側に押圧して塑性変形させる。その際、コンタクトチップ10の先端側外周面は、各凹条面部3eに接触しない。
【0049】
その後、
図7に示すように、第2金型3を上昇させて第1金型2から離間させる。すると、
図8に示すように、ガイド孔10aにおけるコンタクトチップ10先端側の穴形状が小さくなり、コンタクトチップ10を再生させることができる。
【0050】
再生させたコンタクトチップ10は、当該コンタクトチップ10の先端側における各突条部3bに対応する領域がガイド孔10a側に塑性変形する一方、コンタクトチップ10の先端側における各凹条面部3eに対応する領域が塑性変形せずに当該各凹条面部3eに留まった状態で形成されるので、
図9に示すように、コンタクトチップ10を先端側から見ると、当該コンタクトチップ10の先端側のガイド孔10aが各凹条面部3eに対応する領域に頂点が位置する三角形の断面形状をなすようになる。したがって、再生後のコンタクトチップ10を用いてアーク溶接を行うと、溶接ワイヤ11がガイド孔10aの内周面に2点で接触するようになり、溶接品質を安定させることができる。
【0051】
以上より、本発明の実施形態1によると、各突条部3bによりコンタクトチップ10を塑性変形させる際に各凹条面部3eにコンタクトチップ10が接触しないので、特許文献1のようにコンタクトチップ10の塑性変形する部分の逃げ場が無くなるといったことを回避させることができる。したがって、コンタクトチップ10を塑性変形させる際の力が小さくなるので、コンタクトチップ再生装置1の能力を必要以上に高くする必要が無くなって、低コストなコンタクトチップ再生装置1にすることができる。
【0052】
また、コンタクトチップ10の先端側を塑性変形させた際、芯金3fの外周面にコンタクトチップ10の各突条部3bに対応する箇所が線接触するようになるので、塑性変形後のガイド孔10a内周面と芯金3f外周面との間の接触領域が特許文献1の如き構成に比べて少なくなり、ガイド孔10aから芯金3fを引き抜けなくなってコンタクトチップ再生装置1が停止してしまうのを防ぐことができる。
【0053】
さらに、芯金3fは断面が円形状をなしているので、特許文献1のようにコンタクトチップ10の再生作業を繰り返し行った際に外周面の角部が摩耗により変形してしまうといったことが無く、メンテナンス周期を長くすることができる。
【0054】
また、各突条部3bにおける塑性加工孔3aのコンタクトチップ10挿入開口側にガイド面3dが設けられているので、第1金型2及び第2金型3を互いに接近させた際、各ガイド面3dによってコンタクトチップ10の中心軸を塑性加工孔3aの孔中心線C1に一致させながらコンタクトチップ10が塑性加工孔3a内にスムーズに案内されるようになり、それぞれ再生するコンタクトチップ10のガイド孔10aの断面形状を同じにすることができる。
【0055】
また、実施形態1の塑性加工孔3aには、突条部3bが孔中心線C1の周方向に等間隔に3つ設けられているので、各突条部3bを孔中心線C1の周方向に4つ以上設ける場合に比べて、再生後のコンタクトチップ10先端側におけるガイド孔10aの断面積が広くなる。したがって、
図10に示すように、アーク溶接を行う際においてガイド孔10aにスパッタやヒューム、或いは、銅メッキ等の粉末12が溜まり難くなり、溶接ワイヤ11の供給停止を少なくすることができる。
【0056】
尚、本発明の実施形態1では、塑性加工孔3aに突条部3bを孔中心線C1の周方向に等間隔に3つ設けるとともに各突条部3bの間に凹条面部3eを3つ設けているが、これに限らず、例えば、突条部3bを孔中心線C1の周方向に等間隔に4つ以上設けるとともに突条部3bと同数の凹条面部3eを孔中心線C1の周方向に等間隔に設けるようにしてもよい。
【0057】
また、本発明の実施形態1では、プレス機4にて第1金型2に対して第2金型3を接近離間させているが、第2金型3に対して第1金型2を接近離間させてもよい。
【0058】
《発明の実施形態2》
図11は、本発明の実施形態2のコンタクトチップ再生装置1を示す。この実施形態2では、第1金型2及び第2金型3以外の装置の詳細を開示しており、第1金型2及び第2金型3は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0059】
実施形態2のコンタクトチップ再生装置1は、
図11及び
図12に示すように、当該コンタクトチップ再生装置1の骨格をなす本体フレーム5と、該本体フレーム5の全体を覆う保護カバー1aとを備えている。
【0060】
該保護カバー1aは、装置前面側が断面略半円形状をなすとともに上下に延びるボックス形状をなしており、その上部には、コンタクトチップ再生装置1を操作する操作盤1bが設けられている。
【0061】
本体フレーム5は、上下に対向配置された上側ベースプレート51及び下側ベースプレート52を有し、上側ベースプレート51の中央には連通孔51aが形成されている。
【0062】
上側及び下側ベースプレート51,52の対応する四隅は、それぞれ上下方向に延びる連結シャフト53で連結され、上側及び下側ベースプレート51,52と各連結シャフト53とで略直方体形状に枠組みされている。
【0063】
上側及び下側ベースプレート51,52の間には、大型の流体圧シリンダ54(プレス機)が固定され、該流体圧シリンダ54は、上下に伸縮可能なピストンロッド54aを備えている。
【0064】
該ピストンロッド54aは、連通孔51aを介して上側ベースプレート51の上方に延びていて、その先端には、略円盤状をなす第2金型3が固定されている。
【0065】
上側ベースプレート51の上面には、上下に延びる円柱状をなす第1ガイド棒55がピストンロッド54aを挟んで一対設けられ、両第1ガイド棒55の上端には、平面視で略T字状をなす支持プレート56が両第1ガイド棒55に跨るように固定されている。
【0066】
支持プレート56におけるピストンロッド54aに対向する位置には、
図18及び
図22に示すように、上下に貫通する第1取付孔56aが形成され、該第1取付孔56aには、上下に延びる略円筒状をなす第1金型2がスリーブ57aを介して上下にスライド可能に取り付けられている。
【0067】
第1金型2の下部には、コンタクトチップ10が第1金型2に上下に延びる状態で固定されるように雄螺子部10bが螺合可能な雌螺子部2aが形成されている。
【0068】
支持プレート56上面の第1取付孔56aに対応する位置には、筒中心線が上下方向に延びる略円筒状をなす筒カバー57bが第1取付孔56aを覆うように固定され、該筒カバー57bの内方には、コイルバネ57cが収容されている。
【0069】
該コイルバネ57cは、上端が筒カバー57bの内面に当接する一方、下端が第1金型2に当接していて、当該第1金型2を下方に付勢している。
【0070】
支持プレート56の第1取付孔56aよりも装置前面側には、第2取付孔56bが形成されている。
【0071】
該第2取付孔56bには、ベアリングBeを介して第1従動ギア58aが上下に延びる回転軸心周りに回転可能に取り付けられ、第1従動ギア58aには、当該第1従動ギア58a下端中央から下方に延びる第1螺子軸58bが回転一体に取り付けられている。
【0072】
支持プレート56の装置前面側端部には、回転軸59aが上方に延びる第1駆動モータ59が固定されている。
【0073】
回転軸59aには、第1従動ギア58aに噛み合う第1駆動ギア59bが回転一体に取り付けられ、回転軸59aが正逆回転することにより、第1駆動ギア59b及び第1従動ギア58aを介して第1螺子軸58bが正逆回転するようになっている。
【0074】
支持プレート56上面の略中央には、正面視で下方に開放する略U字形状をなすとともに側面視で略L字形状をなす取付ブラケット50が固定され、該取付ブラケット50には、再生前の複数のコンタクトチップ10を1つずつ装置下流側へと供給するチップ供給ユニット6(チップ供給手段)が設けられている。
【0075】
チップ供給ユニット6は、
図13及び
図14に示すように、漏斗形状をなすホッパ61を備え、該ホッパ61は、再生前の複数のコンタクトチップ10を内部に貯留可能になっている。
【0076】
ホッパ61は、斜めに延びる中心線T1周りに回転可能に取付ブラケット50の上部に支持され、ホッパ61の下端側には、中心軸が中心線T1に一致する第2従動ギア62が回転一体に固定されている。
【0077】
また、取付ブラケット50の上部には、
図13に示すように、回転軸63aが中心線T1と同方向に延びる第2駆動モータ63が固定され、回転軸63aには、第2従動ギア62に噛み合う第2駆動ギア64が回転一体に取り付けられている。
【0078】
そして、回転軸63aが回転することにより、第2駆動ギア64及び第2従動ギア62を介してホッパ61が回転するようになっていて、ホッパ61の回転動作により、当該ホッパ61の内部に貯留する各コンタクトチップ10がその中心軸が中心線T1に沿う状態で1つずつ下端開口から装置下流側へと送り出されるようになっている。
【0079】
また、チップ供給ユニット6は、
図15及び
図16に示すように、順次下流側に供給する各コンタクトチップ10をその先端が同じ方向に向く状態に整理するチップ方向整理ユニット65を備えている。
【0080】
該チップ方向整理ユニット65は、取付ブラケット50下部の装置背面側に延びる部分に固定されたブロック体66と、該ブロック体66の上部に取り付けられ、ホッパ61の下端開口から供給されるコンタクトチップ10を斜め下方に案内するチップガイド機構67とを備えている。
【0081】
ブロック体66は、上下に延び、且つ、装置幅方向の厚みが薄いボックス形状をなし、ブロック体66の上面66aは、ホッパ61の下端部分に対応する位置から斜め下方に直線状に延びる形状をなしている。
【0082】
ブロック体66の内部には、上下に貫通するとともに、下方に行くにつれて上面66aの延長方向の寸法が次第に狭くなる形状のガイド穴部66bが形成されている。
【0083】
該ガイド穴部66bの上端開口は、ブロック体66の上面66aにおける下側領域の一側方に形成され、ガイド穴部66bの上端開口における上面66aの延長方向の寸法D1は、コンタクトチップ10の本体部10cの長手方向の寸法d1に対応している。
【0084】
一方、ガイド穴部66bの下端開口の寸法D2は、コンタクトチップ10の幅寸法d2に対応している。
【0085】
ブロック体66におけるガイド穴部66bの下端開口に対応する位置には、筒中心線が上下方向に延びるとともにコンタクトチップ10をその中心線が上下方向に延びる状態で下方に案内するガイド筒66cが取り付けられている。
【0086】
チップガイド機構67は、
図13にも示すように、上側に開放する断面略U字状をなすとともに上面66aに沿って斜め下方に直線状に延びる下側フレーム67aと、該下側フレーム67aの上方に配置され、下側に開放する断面略U字状をなすとともに下側フレーム67aに沿って斜め下方に直線状に延びる上側フレーム67bと、該上側フレーム67bの上端側側方に配設され、当該上側フレーム67bを装置幅方向にスライドさせる電動シリンダ67cとを備え、下側フレーム67aは、ホッパ61から供給されるコンタクトチップ10をその中心線が斜め下方に延びる状態で自重により斜め下方に案内するようになっている。
【0087】
下側フレーム67aは、ブロック体66の上面66aに沿って延びる傾斜面部67dを備え、該傾斜面部67d上端縁部の一側半分がホッパ61の下端に対応する位置となっている。
【0088】
下側フレーム67aの中途部における一側半分には、ブロック形状の第1ストッパ部67eが設けられ、
図16に示すように、ホッパ61から供給されるとともに傾斜面部67dの一側半分において斜め下方に案内されるコンタクトチップ10が第1ストッパ部67eに接触することにより、コンタクトチップ10の斜め下方への案内が一時的に停止されるようになっている。
【0089】
傾斜面部67dの他側縁部における略上半部分には、傾斜面部67dに沿って斜め下方に延びる第1ガイド壁部67fが設けられている。
【0090】
また、傾斜面部67dの下半部分における一側方には、ガイド穴部66bの上端開口に対応する形状をなす切欠部67gが形成されている。
【0091】
さらに、傾斜面部67dの下半部分には、側面視で略L字状をなす第2ストッパ部67hが設けられ、傾斜面部67dは、ブロック体66の上面66aに沿うように配置された第1板部67qと、該第1板部67qの板厚方向に延びる第2板部67jとを備えている。
【0092】
第1板部67qは、傾斜面部67dの延長方向と直交する水平方向で、且つ、ガイド穴部66b側に延びてその延長側がガイド穴部66bにおける上端開口の下側縁部の下方に連続する位置となる形状をなしている。
【0093】
第1板部67qは、
図25に示すように、コンタクトチップ10がその先端側が下方を向くように傾斜面部67dにおける他側半分によって案内される際、コンタクトチップ10の先端に接触してコンタクトチップ10のそれ以上の斜め下方への案内を停止させるようになっている。
【0094】
また、第1板部67qは、
図29に示すように、コンタクトチップ10がその基端側が下方を向くように傾斜面部67dにおける他側半分によって案内される際、コンタクトチップ10の雄螺子部10bに接触せずに本体部10cに接触する形状に設定されている。
【0095】
上側フレーム67bは、傾斜面部67dに沿って斜め下方に延びるカバー面部67kを備え、該カバー面部67kの一側縁部における略上半部分には、カバー面部67kに沿って斜め下方に延びる第1押圧壁部67mが設けられている。
【0096】
また、カバー面部67kにおける下半部分は、上半部分に比べて装置幅方向の寸法が狭くなっていて、該カバー面部67kの一側縁部における略下半部分には、カバー面部67kに沿って斜め下方に延びる第2ガイド壁部67nが第1押圧壁部67mの延長線上に設けられている。
【0097】
一方、カバー面部67kの他側縁部における略下半部分には、カバー面部67kに沿って斜め下方に延びる第2押圧壁部67pが設けられ、第2ガイド壁部67nと第2押圧壁部67pとの間の寸法D3は、コンタクトチップ10の幅寸法d2に対応している。
【0098】
そして、
図24及び
図28に示すように、コンタクトチップ10が第1ストッパ部67eにより一時的に停止する状態の際、電動シリンダ67cにより上側フレーム67bを水平方向一側にスライドさせると、
図25及び
図29に示すように、第1押圧壁部67mがコンタクトチップ10を第1ガイド壁部67fに接触するまで水平方向一側に移動させるので、コンタクトチップ10の第1ストッパ部67eとの接触が解除され、コンタクトチップ10が傾斜面部67dにおける他側半分により斜め下方に案内されるようになっている。
【0099】
傾斜面部67dの他側半分において斜め下方に案内されるコンタクトチップ10は、第2ガイド壁部67nと第2押圧壁部67pとの間に入り込むとともに第2ストッパ部67hに接触してそれ以上の斜め下方への案内が停止されるようになっていて、その状態において電動シリンダ67cにより上側フレーム67bを水平方向他側にスライドさせると、
図26及び
図30に示すように、第2押圧壁部67pがコンタクトチップ10を水平方向他側に移動させ、
図27及び
図31に示すように、コンタクトチップ10が切欠部67gを介してガイド穴部66bに落下するようになっている。
【0100】
そして、ガイド穴部66bを落下するコンタクトチップ10は、
図17に示すように、その中心線が上下に向く姿勢で第1領域R1にガイド筒66cを介して供給されるようになっている。
【0101】
第1領域R1には、チップ供給ユニット6から供給されるコンタクトチップ10を受け止めて位置決めするチップ位置決めユニット9が配設されている。
【0102】
該チップ位置決めユニット9は、
図20及び
図23にも示すように、上側ベースプレート51上面の各第1ガイド棒55よりも装置後側に設けられ、上下に延びる細長い円柱状をなす一対の第3ガイド棒91を備え、該各第3ガイド棒91には、上下にスライド可能にスライダ92がそれぞれ取り付けられている。
【0103】
両第3ガイド棒91の間には、装置幅方向に延びる帯状プレート93が設けられ、該帯状プレート93の各端部は、各スライダ92に固定されている。
【0104】
帯状プレート93の中央には、筒中心線が上下に延びる略円筒状をなすチップ支持体94が固定されている。
【0105】
該チップ支持体94は、上端開口側内周面がコンタクトチップ10の先端側外周面に対応する形状をなしており、当該コンタクトチップ10をその先端側が下方に向くとともに中心線が上下方向に延びる状態で支持可能になっている。
【0106】
上側ベースプレート51と支持プレート56との間には、
図20及び
図22に示すように、平面視で略U字状をなす第1スライドボディ7が配設されている。
【0107】
該第1スライドボディ7は、装置後側に開放するとともに第2金型3に対応する位置に形成された略半円形状の切欠凹部7aと、装置幅方向両側に対称に張り出す一対の張出部7bとを備えている。
【0108】
各張出部7bには、上下方向に貫通するスライド孔7cが形成され、該各スライド孔7cには、各第1ガイド棒55がスライド可能に嵌挿している。
【0109】
第1スライドボディ7の装置前側には、上下に貫通する第1雌螺子孔7dが形成され、該第1雌螺子孔7dには、第1螺子軸58bが螺合している。つまり、第1スライドボディ7と第1螺子軸58bとは、ボールネジ構造になっている。
【0110】
また、第1スライドボディ7の装置幅方向一側における切欠凹部7aとスライド孔7cとの間には、装置前後方向に直線状に延びる回転支持孔7eが貫通形成され、該回転支持孔7eには、装置後側に直線状に延びる第2螺子軸7fがその中心線周りに回転可能に取り付けられている。
【0111】
一方、第1スライドボディ7の装置幅方向他側における切欠凹部7aとスライド孔7cとの間には、装置前後方向に直線状に延びる第2ガイド棒7gが設けられている。
【0112】
該第2ガイド棒7gは、第2螺子軸7fと所定の間隔をあけて平行に延びていて、第2螺子軸7fの延出端と第2ガイド棒7gの延出端とは、正面視で下方に開放する略U字状をなす連結プレート7hで連結されている。
【0113】
また、第1スライドボディ7における装置幅方向他側の張出部7b近傍には、
図12及び
図22に示すように、側面視で略L字状をなす吊下フレーム7jが下方に延びるように取り付けられ、該吊下フレーム7jの下端部分には、回転軸7mが装置後側に向かって水平に延びるように第3駆動モータ7kが固定されている。
【0114】
第2螺子軸7fにおける装置前側に位置する端部と第3駆動モータ7kの回転軸7mとの間には、無端状ベルト7pが掛け渡されていて、回転軸7mが正逆回転すると、無端状ベルト7pを介して第2螺子軸7fがその中心線周りに正逆回転するようになっている。
【0115】
第2螺子軸7fと第2ガイド棒7gとの間には、
図17及び
図20に示すように、コンタクトチップ10を第1領域R1にて挟持可能なチップ挟持ユニット8(チップ挟持手段)が配設されている。
【0116】
チップ挟持ユニット8は、厚みを有する長方形板状をなす第2スライドボディ81を備え、該第2スライドボディ81の装置前面側は、切欠凹部7aに対応する形状をなしている。
【0117】
第2スライドボディ81の装置後側には、一側方に突出する第1ガイドブロック88が設けられ、該第1ガイドブロック88には、第2ガイド棒7gがスライド可能に嵌挿するガイド孔88aが装置前後方向に貫通形成されている。
【0118】
一方、第2スライドボディ81の装置後側には、他側方に突出する第2ガイドブロック89が設けられている。
【0119】
該第2ガイドブロック89と第2螺子軸7fとは、ボールネジ構造になっていて、第2ガイドブロック89には、第2螺子軸7fに螺合する第2雌螺子孔89aが装置前後方向に貫通形成されている。
【0120】
そして、第3駆動モータ7k、無端状ベルト7p、第2螺子軸7f、第2ガイド棒7g、第1ガイドブロック88及び第2ガイドブロック89が本発明の水平移動手段14を構成していて、第3駆動モータ7kを駆動させることにより無端状ベルト7pを介して第2螺子軸7fを回転させると、第2ガイドブロック89が第2螺子軸7fに沿って螺進螺退するとともに第1ガイドブロック88が第2ガイド棒7gに沿ってスライド移動することにより、チップ挟持ユニット8が第1領域R1と当該第1領域R1の側方で、且つ、第1及び第2金型2,3の間に設定された第2領域R2との間を水平移動するようになっている。
【0121】
また、第1駆動モータ59、第1駆動ギア59b、第1従動ギア58a、第1螺子軸58b、第1ガイド棒55及び第1スライドボディ7は、本発明の昇降手段13を構成していて、第1駆動モータ59を駆動させることにより第1駆動ギア59b及び第1従動ギア58aを介して第1螺子軸58bを回転させると、第1スライドボディ7が第1螺子軸58bに沿って螺進螺退するとともに各第1ガイド棒55に沿ってスライド移動することにより、チップ挟持ユニット8が昇降するようになっている。
【0122】
第2スライドボディ81の装置前側上面には、
図17に示すように、平面視で略円形状をなす上側貫通孔81aが第2スライドボディ81の内部に連通するように形成されている。
【0123】
また、第2スライドボディ81下面の上側貫通孔81aに対応する箇所には、下側貫通孔81bが第2スライドボディ81の内部に連通するように形成され、上側貫通孔81aと下側貫通孔81bとの間にコンタクトチップ10の挟持作業を行う位置となる挟持作業空間V1が設定されている。
【0124】
さらに、第2スライドボディ81下面の装置後側には、当該第2スライドボディ81の内部に連通する開口部81cが形成されている。
【0125】
第2スライドボディ81の内部には、当該第2スライドボディ81の装置前側半分に位置する収容空間S1と装置後側に位置する収容空間S2とが形成され、収容空間S1と収容空間S2とは、第2スライドボディ81の中央部分で繋がっている。
【0126】
第2スライドボディ81下面の装置後側には、第4駆動モータ82が固定され、該第4駆動モータ82の回転軸82aは、開口部81cを介して収容空間S2に臨んでいる。
【0127】
収容空間S2には、回転軸心が上下方向に延びる第3駆動ギア83がベアリングBeを介して第2スライドボディ81に回転可能に支持されている。
【0128】
収容空間S1には、上下方向に延びる回転軸心C2が挟持作業空間V1の中央に設定された第3従動ギア84(第1回転体)及び回転ディスク85(第2回転体)が設けられている。
【0129】
第3従動ギア84及び回転ディスク85は、回転軸心C2周りに互いに相対回転可能に構成されている。
【0130】
第3従動ギア84は、第3駆動ギア83に噛み合っていて、
図21に示すように、第4駆動モータ82が正転すると、第3駆動ギア83を介して一方側(X1方向)に回転する一方、第4駆動モータ82が逆転すると、第3駆動ギア83を介して他方側(X2方向)に回転するようになっている。
【0131】
すなわち、第4駆動モータ82及び第3駆動ギア83は、本発明の回転駆動手段15を構成しており、当該回転駆動手段15は、第3従動ギア84を回転させるようになっている。
【0132】
第3従動ギア84は、略リング形状をなしていて、その内周面には、第3従動ギア84の内側面に開放する凹状をなす4つの嵌合部84aが回転軸心C2周りに等間隔に設けられている。
【0133】
回転ディスク85は、
図17に示すように、第3従動ギア84の上側と下側とにそれぞれ位置する円盤状の上側ディスク85a及び下側ディスク85bを備えている。
【0134】
上側ディスク85aは、円板形状をなし、その中央には、挟持作業空間V1に対応する円形状の上側チップ通過孔85cが形成されている。
【0135】
一方、下側ディスク85bは、厚みを有する円板形状をなし、第3従動ギア84の下半部分内方にベアリングBeを介して回転可能に支持されている。
【0136】
下側ディスク85bの中央には、上側チップ通過孔85c及び挟持作業空間V1に対応する下側チップ通過孔85dが形成されている。
【0137】
上側ディスク85aと第3従動ギア84との間には、当該上側ディスク85aと第3従動ギア84との間の抵抗値を高める板バネ87が配置されている。
【0138】
第3従動ギア84の内方で、且つ、上側ディスク85a及び下側ディスク85bの間には、
図20及び
図21に示すように、平面視で略矢印形状をなす4つの挟持体86が配設され、各挟持体86は、各嵌合部84aにそれぞれ対応する位置に設けられている。
【0139】
各挟持体86の略中央には、挿通孔86aが形成され、当該挿通孔86aには、回転軸心C2と同方向に延びる回動軸86bが挿通されている。
【0140】
回動軸86bの各端部は、上側ディスク85aと下側ディスク85bとにそれぞれ固定され、挟持体86は、回動軸86b周りに回動可能に回転ディスク85に軸支されている。
【0141】
挟持体86の先端には、一対の爪部86cが第1領域R1側に向けて突設され、該各爪部86cは、回転軸心C2を中心とした周方向に離間している。
【0142】
一方、挟持体86の基端側中央には、挟持作業空間V1の反対側に突出する突起形状の基部86dが設けられ、該基部86dは、対応する嵌合部84aに遊嵌している。
【0143】
そして、
図21に示すように、挟持作業空間V1にコンタクトチップ10がセットされた状態で、且つ、第3従動ギア84及び回転ディスク85が基準位置B1の状態において第4駆動モータ82を正転させると、
図33及び
図34に示すように、第3従動ギア84が回転ディスク85に対して一方側(X1方向)に相対的に回転し、それに連動する嵌合部84aの基部86dへの一方側への押圧動作で挟持体86が一方側(Z1方向)に回動して一方の爪部86cが挟持作業空間V1に前進してコンタクトチップ10を挟持するようになっている。
【0144】
また、
図35に示すように、各挟持体86の一方の爪部86cでコンタクトチップ10を挟持する状態でチップ挟持ユニット8を第2領域R2に移動させるとともに、第4駆動モータ82をさらに正転させながらチップ挟持ユニット8を上昇させると、
図36に示すように、当該チップ挟持ユニット8が挟持するコンタクトチップ10の雄螺子部10bを第1金型2の雌螺子部2aに螺進させてコンタクトチップ10を第1金型2に固定させるようになっている。
【0145】
さらに、コンタクトチップ10を第1金型2に固定した後、
図37に示すように、第4駆動モータ82を逆転させると、第3従動ギア84が回転ディスク85に対して他方側(X2方向)に相対的に回転し、それに連動する嵌合部84aの基部86dへの他方側への押圧動作で挟持体86が他方側(Z2方向)に回動して一方の爪部86cが挟持作業空間V1から後退してコンタクトチップ10の挟持状態を解除するようになっている。
【0146】
一方、
図39に示すように、第1金型2に固定されたコンタクトチップ10が挟持作業空間V1にセットされた状態で、且つ、第3従動ギア84及び回転ディスク85が基準位置B1の状態において第4駆動モータ82を逆転させると、
図40に示すように、第3従動ギア84が回転ディスク85に対して他方側(X2方向)に相対的に回転し、それに連動する嵌合部84aの基部86dへの他方側への押圧動作で挟持体86が他方側に回動して他方の爪部86cが挟持作業空間V1に前進してコンタクトチップ10を挟持するようになっている。
【0147】
また、
図41に示すように、各挟持体86の他方の爪部86cでコンタクトチップ10を挟持する状態で第4駆動モータ82をさらに逆転させると、チップ挟持ユニット8が挟持するコンタクトチップ10の雄螺子部10bが第1金型2の雌螺子部2aから螺退してコンタクトチップ10が第1金型2から取り外されるようになっている。
【0148】
さらに、コンタクトチップ10を第1金型2から取り外した後、各挟持体86の他方の爪部86cでコンタクトチップ10を挟持する状態でチップ挟持ユニット8を第1領域R1に移動させるとともに、第4駆動モータ82を正転させると、第3従動ギア84が回転ディスク85に対して一方側(X1方向)に相対的に回転し、それに連動する嵌合部84aの基部86dへの一方側への押圧動作で挟持体86が一方側に回動して他方の爪部86cが挟持作業空間V1に退避してコンタクトチップ10を挟持作業空間V1から落下させるようになっている。
【0149】
上側ベースプレート51上面のピストンロッド54aより装置後側には、第1領域R1から落下させた再生後のコンタクトチップ10を装置後側に案内する排出スロープ16が設けられている。
【0150】
次に、実施形態2のコンタクトチップ再生装置1によるコンタクトチップ10の再生作業について詳述する。
【0151】
まず、作業者は、
図14に示すように、使用済みの複数のコンタクトチップ10をホッパ61の内部に投入した状態で操作盤1bを操作し、コンタクトチップ再生装置1を起動させる。すると、第2駆動モータ63が作動してホッパ61が回転し、ホッパ61の内部に溜まる各コンタクトチップ10が1つずつホッパ61の下端からチップ方向整理ユニット65へと送り出される。このとき、チップ方向整理ユニット65に送り出される各コンタクトチップ10は、先端側が下側に向く状態か、或いは、基端側が下側に向く状態かのどちらか分からないが、コンタクトチップ10の中心軸が斜め下方に向く状態になっている。
【0152】
チップ方向整理ユニット65に送り出されるコンタクトチップ10の先端側が下側に向く場合、
図24に示すように、コンタクトチップ10は、チップガイド機構67における傾斜面部67dの一側半分において斜め下方に案内されるとともに、コンタクトチップ10の先端が第1ストッパ部67eに接触してコンタクトチップ10が一時的に停止する。
【0153】
コンタクトチップ10の先端が第1ストッパ部67eに接触すると、電動シリンダ67cが作動して上側フレーム67bが水平方向一側にスライドする。すると、
図25に示すように、第1押圧壁部67mがコンタクトチップ10を第1ガイド壁部67fに接触するまで水平方向一側に移動させるので、コンタクトチップ10の第1ストッパ部67eとの接触が解除され、コンタクトチップ10が傾斜面部67dにおける他側半分によって斜め下方に案内される。
【0154】
傾斜面部67dの他側半分において斜め下方に案内されるコンタクトチップ10は、第2ガイド壁部67nと第2押圧壁部67pとの間に入り込む。このとき、コンタクトチップ10はその先端側が下側に向く状態になっているので、コンタクトチップ10の先端が第2ストッパ部67hの第1板部67qに接触してコンタクトチップ10のそれ以上の斜め下方への案内が停止される。
【0155】
コンタクトチップ10の先端が第2ストッパ部67hに接触すると、電動シリンダ67cが作動して上側フレーム67bが水平方向他側にスライドする。すると、
図26に示すように、第2押圧壁部67pがコンタクトチップ10を水平方向他側に移動させる。このとき、コンタクトチップ10は、ガイド穴部66bに落下するが、コンタクトチップ10の雄螺子部10bがガイド穴部66bにおける上端開口の上側縁部に乗り上げた状態のままコンタクトチップ10の本体部10cがガイド穴部66bに落下し始めるので、
図27に示すように、コンタクトチップ10は雄螺子部10bを支点に先端側が下方に回動しながら落下するようになる。したがって、コンタクトチップ10がガイド穴部66bの下端開口を通過する際には、必ず、先端側が下側に向くとともに中心線が上下方向に延びる状態で通過するようになる。
【0156】
一方、ホッパ61からチップ方向整理ユニット65に送り出されるコンタクトチップ10の基端側が下側に向く場合、
図28に示すように、コンタクトチップ10は、チップガイド機構67における傾斜面部67dの一側半分において斜め下方に案内されるとともに、コンタクトチップ10の基端が第1ストッパ部67eに接触してコンタクトチップ10が一時的に停止する。
【0157】
コンタクトチップ10の基端が第1ストッパ部67eに接触すると、電動シリンダ67cが作動して上側フレーム67bが水平方向一側にスライドする。すると、
図29に示すように、第1押圧壁部67mがコンタクトチップ10を第1ガイド壁部67fに接触するまで水平方向一側に移動させるので、コンタクトチップ10の第1ストッパ部67eとの接触が解除され、コンタクトチップ10が傾斜面部67dにおける他側半分によって斜め下方に案内される。
【0158】
傾斜面部67dの他側半分において斜め下方に案内されるコンタクトチップ10は、第2ガイド壁部67nと第2押圧壁部67pとの間に入り込む。このとき、コンタクトチップ10はその基端側が下側に向く状態になっているので、コンタクトチップ10の雄螺子部10bが第2ストッパ部67hの第1板部67qを乗り上げるとともにコンタクトチップ10の本体部10cが第1板部67qに接触してコンタクトチップ10のそれ以上の斜め下方への案内が停止される。
【0159】
コンタクトチップ10の本体部10cが第2ストッパ部67hの第1板部67qに接触すると、電動シリンダ67cが作動して上側フレーム67bが水平方向他側にスライドする。すると、
図30に示すように、第2押圧壁部67pがコンタクトチップ10を水平方向他側に移動させる。このとき、コンタクトチップ10は、ガイド穴部66bに落下するが、雄螺子部10bが第2ストッパ部67hの第1板部67qに乗り上げた状態のままコンタクトチップ10の本体部10cがガイド穴部66bに落下し始めるので、
図31に示すように、コンタクトチップ10は雄螺子部10bを支点に先端側が下方に回動しながら落下するようになる。したがって、ガイド穴部66bの下端開口を通過する際には、必ず、先端側が下側に向くとともに中心線が上下方向に延びる状態で通過するようになる。このように、傾斜面部67dに供給されるコンタクトチップ10の先端の向きが異なる場合であっても第1領域R1に供給されるコンタクトチップ10の先端の向きを常に同じにすることができる。
【0160】
ブロック体66におけるガイド穴部66bの下端開口を通過するコンタクトチップ10は、
図32及び
図33に示すように、ガイド筒66cを通過した後、上側ディスク85aの上側チップ通過孔85c、挟持作業空間V1、及び、下側ディスク85bの下側チップ通過孔85dに順に入り込むとともに、コンタクトチップ10の先端側がチップ位置決めユニット9のチップ支持体94の上端開口部分に入り込む。すると、コンタクトチップ10がその中心軸が上下方向に延びる状態で、かつ、本体部10cが挟持作業空間V1に位置する状態で位置決めされる。
【0161】
コンタクトチップ10がチップ位置決めユニット9にて位置決めされると、第4駆動モータ82が作動して回転軸82aが正転し、それに伴って、第3従動ギア84が回転ディスク85に対して一方側(X1方向)に相対的に回転する。すると、
図34に示すように、第3従動ギア84の回転ディスク85に対する一方側への相対的な回転に連動して嵌合部84aが基部86dを一方側に押圧し、その押圧動作で挟持体86が一方側(Z1方向)に回動して一方の爪部86cが挟持作業空間V1に前進してコンタクトチップ10を挟持する。
【0162】
各挟持体86の一方の爪部86cがコンタクトチップ10を挟持すると、
図35に示すように、チップ位置決めユニット9の各スライダ92が下方にスライドしてチップ支持体94がコンタクトチップ10の先端から外れる。
【0163】
次いで、チップ支持体94がコンタクトチップ10の先端から外れると、第3駆動モータ7kが作動してチップ挟持ユニット8が第1領域R1から第2領域R2まで水平移動する。
【0164】
第2領域R2まで水平移動したチップ挟持ユニット8に挟持されているコンタクトチップ10の中心軸が第1金型2の筒中心線と一致すると、第1駆動モータ59及び第4駆動モータ82が作動して各挟持体86の一方の爪部86cに挟持されたコンタクトチップ10が一方側に回転しながらチップ挟持ユニット8が上昇し、
図36に示すように、コンタクトチップ10が第1金型2に接触する際の衝撃をコイルバネ57cが収縮することにより吸収しながらコンタクトチップ10の雄螺子部10bが第1金型2の雌螺子部2aに螺進してコンタクトチップ10が第1金型2に固定される。
【0165】
コンタクトチップ10が第1金型2に固定されると、第4駆動モータ82が作動して回転軸82aが逆転し、それに伴って、第3従動ギア84が回転ディスク85に対して他方側(X2方向)に相対的に回転する。すると、第3従動ギア84の回転ディスク85に対する他方側への相対的な回転に連動して嵌合部84aが基部86dを他方側に押圧し、その押圧動作で挟持体86が他方側(Z2方向)に回動して一方の爪部86cが挟持作業空間V1から後退してコンタクトチップ10の挟持状態を解除する。
【0166】
チップ挟持ユニット8によるコンタクトチップ10の挟持状態が解除されると、
図37に示すように、第1駆動モータ59及び第3駆動モータ7kが作動してチップ挟持ユニット8が下降しつつ第2領域R2から第1領域R1まで水平移動する。
【0167】
しかる後、
図38に示すように、流体圧シリンダ54のピストンロッド54aが伸長して第2金型3が上昇する。すると、第1金型2に第2金型3が接近して芯金3fが使用済みコンタクトチップ10のガイド孔10aに挿入されるとともに、コンタクトチップ10の先端側が塑性加工孔3a内に入り込んで再生される。
【0168】
その後、
図39に示すように、流体圧シリンダ54のピストンロッド54aが収縮して第2金型3が下降する。すると、第1駆動モータ59及び第3駆動モータ7kが作動してチップ挟持ユニット8が第1領域R1から第2領域R2まで水平移動するとともに上昇して第1金型2に固定された状態のコンタクトチップ10を上側ディスク85aの上側チップ通過孔85c、挟持作業空間V1、及び、下側ディスク85bの下側チップ通過孔85dに順に入り込ませる。
【0169】
コンタクトチップ10の本体部10cが挟持作業空間V1に位置する状態になると、第4駆動モータ82が作動して回転軸82aが逆転し、それに伴って、第3従動ギア84が回転ディスク85に対して他方側(X2方向)に相対的に回転する。すると、
図40に示すように、第3従動ギア84の回転ディスク85に対する他方側への相対的な回転に連動して嵌合部84aが基部86dを他方側に押圧し、その押圧動作で挟持体86が他方側(Z2方向)に回動して他方の爪部86cが挟持作業空間V1に前進してコンタクトチップ10を挟持する。
【0170】
各挟持体86の他方の爪部86cがコンタクトチップ10を挟持すると、第4駆動モータ82が作動して回転軸82aがさらに逆転し、それに伴って、コンタクトチップ10が他方側に回転する。すると、コンタクトチップ10の雄螺子部10bが第1金型2の雌螺子部2aから螺退してコンタクトチップ10が第1金型2から取り外される。
【0171】
コンタクトチップ10が第1金型2から取り外されると、
図41に示すように、第1駆動モータ59及び第3駆動モータ7kが作動してチップ挟持ユニット8が下降しつつ第2領域R2から第1領域R1まで水平移動する。そして、チップ挟持ユニット8が第1領域R1に到達すると、第4駆動モータ82が作動して回転軸82aが正転し、それに伴って、第3従動ギア84が回転ディスク85に対して一方側(X1方向)に相対的に回転する。すると、第3従動ギア84の回転ディスク85に対する一方側への相対的な回転に連動して嵌合部84aが基部86dを一方側に押圧し、その押圧動作で挟持体86が一方側(Z1方向)に回動して他方の爪部86cが挟持作業空間V1から後退してコンタクトチップ10の挟持状態を解除する。そして、各挟持体86の他方の爪部86cによる挟持状態が解除されたコンタクトチップ10は下方に落下して排出スロープ16に案内されて図示しない排出領域へと排出される。
【0172】
このように、本発明の実施形態2によると、チップ供給ユニット6により第1領域R1に供給されるコンタクトチップ10は、中心線が上下に延びる状態でチップ挟持ユニット8に挟持され、その状態で水平移動手段14により第2領域R2まで運搬されるようになる。第2領域R2まで運搬されたコンタクトチップ10は、第2領域R2において昇降手段13により第1金型2まで運搬可能になるので、運搬したコンタクトチップ10を第1金型2に固定すると、コンタクトチップ10が再生準備状態になる。このように、再生前のコンタクトチップ10を効率良く再生準備状態にすることができる。また、再生後のコンタクトチップ10が固定された第1金型2までチップ挟持ユニット8を昇降手段13及び水平移動手段14により移動させ、その後、昇降手段13及び水平移動手段14によりチップ挟持ユニット8を第1金型2及び第2金型3から退避させると、再生後のコンタクトチップ10を第2領域R2から簡単に取り出すことができる。このように、コンタクトチップ10を再生する第2領域R2に対して再生前及び再生後のコンタクトチップ10を効率良く搬出入することができる。
【0173】
また、第3従動ギア84及び回転ディスク85が基準位置B1の状態においてコンタクトチップ10を挟持作業空間V1にセットした後、第3従動ギア84及び回転ディスク85を一方側に相対回転させると、各挟持体86の一方の爪部86cが挟持作業空間V1に前進してコンタクトチップ10を挟持するとともにその中心線周りの一方側に第3従動ギア84及び回転ディスク85が回転一体になる一方、第3従動ギア84及び回転ディスク85が基準位置B1においてコンタクトチップ10を挟持作業空間V1にセットした後、第3従動ギア84及び回転ディスク85を他方側に相対回転させると、各挟持体86の他方の爪部86cが挟持作業空間V1に前進してコンタクトチップ10を挟持するとともにその中心線周りの他方側に第3従動ギア84及び回転ディスク85が回転一体になる。このように、第3従動ギア84及び回転ディスク85をどちらの方向に相対回転させても、コンタクトチップ10を挟持可能であるとともに、コンタクトチップ10を挟持した状態でその中心線周りに回転させることができる。
【0174】
さらに、第3従動ギア84及び回転ディスク85を基準位置B1から一方側に相対回転させて各挟持体86の一方の爪部86cでコンタクトチップ10を挟持するとともにその中心線周りの一方側に回転させながら昇降手段13を昇降させて第1金型2に接近させると、コンタクトチップ10の雄螺子部10bが第1金型2の雌螺子部2aに螺進して、コンタクトチップ10が第1金型2に固定される。コンタクトチップ10が第1金型2に固定された後、第3従動ギア84及び回転ディスク85を他方側に相対回転させると、各挟持体86の一方の爪部86cが挟持作業空間V1から退避するので、チップ挟持ユニット8がコンタクトチップ10を解放するようになる。一方、第1金型2に固定されたコンタクトチップ10を第3従動ギア84及び回転ディスク85を基準位置B1から互いに他方側に相対回転させて各挟持体86の他方の爪部86cでコンタクトチップ10を挟持するとともにその中心線周りの他方側に回転させながら昇降手段13を昇降させて第1金型2から離間させると、コンタクトチップ10の雄螺子部10bが第1金型2の雌螺子部2aから螺退してコンタクトチップ10が第1金型2から外れるようになる。このように、第3従動ギア84及び回転ディスク85の各回転動作によりコンタクトチップ10の挟持及び解放、さらには、第1金型2への固定と取外しとが可能になるので、コンタクトチップ10の再生作業前及び再生作業後の段取りを効率良く行うことができる。
【0175】
尚、本発明の実施形態2では、回転ディスク85に対して第3従動ギア84を相対回転させて各挟持体86でコンタクトチップ10を挟持するようにしているが、第3従動ギア84に対して回転ディスク85を相対回転させて各挟持体86でコンタクトチップ10を挟持するようにしてもよいし、第3従動ギア84及び回転ディスク85の両方を同時に相対的に回転させて各挟持体86でコンタクトチップ10を挟持するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明は、アーク溶接を繰り返し行った後、溶接ワイヤを案内するガイド孔の先端側内周面が摩耗した状態であるコンタクトチップを再生させるコンタクトチップ再生装置及びコンタクトチップの再生方法に適している。
【符号の説明】
【0177】
1 コンタクトチップ再生装置
2 第1金型
3 第2金型
3a 塑性加工孔
3b 突条部
3e 凹条面部
3f 芯金
4 プレス機
6 チップ供給ユニット(チップ供給手段)
8 チップ挟持ユニット(チップ挟持手段)
10 コンタクトチップ
10a ガイド孔
13 昇降手段
14 水平移動手段
15 回転駆動手段
66b ガイド穴部
67d 傾斜面部
67h 第2ストッパ部
84 第3従動ギア(第1回転体)
84a 嵌合部
85 回転ディスク(第2回転体)
86 挟持体
86b 回動軸
86c 爪部
86d 基部
C1 孔中心線
R1 第1領域
R2 第2領域