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  • 特許-プロバイオティクス組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】プロバイオティクス組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20220829BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220829BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20220829BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20220829BHJP
   A61K 36/064 20060101ALI20220829BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20220829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220829BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220829BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20220829BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P29/00
A61P3/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/48
A61K35/744
A61K35/745
A61K36/064
A61P37/00
A61P43/00 111
A23L33/135
A23K10/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021526475
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2018120722
(87)【国際公開番号】W WO2020118576
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-13
【微生物の受託番号】CGMCC  CGMCC 13008
(73)【特許権者】
【識別番号】519067862
【氏名又は名称】生合生物科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ ▲啓▼彰
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 文▲経▼
(72)【発明者】
【氏名】林 金生
(72)【発明者】
【氏名】李 孟謙
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 可沁
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1500974(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0053445(KR,A)
【文献】特表2009-511470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/055893(US,A1)
【文献】J. Agric. Food Chem.,2015年,Vol. 63,pp. 7333-7342
【文献】JOURNAL OF FUNCTIONAL FOODS,2013年,Vol. 5,pp. 395-405
【文献】Nutrients,2016年,Vol. 8, 205,pp. 1-15
【文献】J Sci Food Agric,2013年,Vol. 93,pp. 1219-1225
【文献】Chinese Journal of Physiology,2018年01月01日,Vol. 61, No. 3,pp. 163-170
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/747
A23L 33/135
A23K 10/16
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
PubMed
Mintel GNPD
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動後炎症を改善するとともに、体脂肪を低減させるためのプロバイオティクス組成物の製造方法であって、ラクトバシラス・プランタラムTWK10は、中国普通微生物菌種保存管理センターに保存され、保存番号がCGMCC 13008であり、前記ラクトバシラス・プランタラムTWK10が熱致死菌であり、用量は、3×10 10 CFU/日以上である製造方法。
【請求項2】
前記プロバイオティクス組成物は、薬学的に許容可能なキャリアと、賦形剤と、希釈剤とを含む、請求項1に記載の製造方法
【請求項3】
前記プロバイオティクス組成物の剤形は、溶液、懸濁液、乳剤、粉末、タブレット、丸剤、シロップ剤、ロゼンジ、トローチ、チューインガム、濃厚スラリー、及びカプセルで構成されるグループから選択される、請求項1に記載の製造方法
【請求項4】
前記プロバイオティクス組成物は、さらに、流体乳製品、濃縮牛乳、ヨーグルト、サワーミルク、フローズンヨーグルト、ラクトバチルス発酵飲料、乳粉、アイスクリーム、チーズ、フォンデュ、豆乳、発酵豆乳、青果ジュース、ジュース、スポーツ飲料、デザート、ゼリー、キャンディ、乳児用食品、健康食品、動物飼料、漢方薬組成物、及び食事補助食品に製造される、請求項1に記載の製造方法
【請求項5】
前記プロバイオティクス組成物は、さらに、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、ロイコノストック属、エンテロコッカス属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、及びイーストを含むプロバイオティクスグループのうちの一つ又は任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の製造方法
【請求項6】
運動後炎症を改善するとともに、体脂肪を低減させるための医薬品又は食品組成物の製造方法であって、保存番号がCGMCC 13008であるラクトバシラス・プランタラムTWK10を含み、前記ラクトバシラス・プランタラムTWK10が熱致死菌であり、用量は、3×10 10 CFU/日以上である製造方法
【請求項7】
好中球/リンパ球細胞の比値、及び血小板/リンパ球細胞の比値が高すぎることによる疾患又は症状を改善するとともに、体脂肪を低減させるためのプロバイオティクス組成物の製造方法であって、保存番号がCGMCC 13008であるラクトバシラス・プランタラムTWK10を含み、前記ラクトバシラス・プランタラムTWK10が熱致死菌であり、用量は、3×10 10 CFU/日以上である製造方法
【請求項8】
前記体脂肪を低減させることは、全身体脂肪を低減させることである、請求項6または7に記載の製造方法
【請求項9】
前記プロバイオティクス組成物は、薬学的に許容可能なキャリアと、賦形剤と、希釈剤とを含む、請求項に記載の製造方法
【請求項10】
前記プロバイオティクス組成物の剤形は、溶液、懸濁液、乳剤、粉末、タブレット、丸剤、シロップ剤、ロゼンジ、トローチ、チューインガム、濃厚スラリー、及びカプセルで構成されるグループから選択される、請求項に記載の製造方法
【請求項11】
前記プロバイオティクス組成物は、さらに、流体乳製品、濃縮牛乳、ヨーグルト、サワーミルク、フローズンヨーグルト、ラクトバチルス発酵飲料、乳粉、アイスクリーム、チーズ、フォンデュ、豆乳、発酵豆乳、青果ジュース、ジュース、スポーツ飲料、デザート、ゼリー、キャンディ、乳児用食品、健康食品、動物飼料、漢方薬組成物、及び食事補助食品に製造される、請求項に記載の製造方法
【請求項12】
前記プロバイオティクス組成物は、ラクトバチルス属菌種、ストレプトコッカス属菌種、ビフィドバクテリウム属菌種、及びイーストを含むプロバイオティクスグループのうちの一つ又は任意の組み合わせを含む、請求項に記載の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティクスの応用分野に属し、特に、ラクトバシラス・プランタラムが抗運動後炎症又は体脂肪低減に用いることができることを説明する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスは、天然由来で、人体に危害がなく、服用制限が低く、且つ、各種の健康維持、調節の効能を備え、ゆえに、健康食品の市場において非常に人気がある。そのうち、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)は、通常のプロバイオティクスであり、グラム陰性細菌であり、発酵した食物又は動物の唾液中に見られ、乳酸菌の中で最も大きな遺伝子を有し、且つ、変異が多く、ゆえに、常に、変異程度と適応条件が異なるので、同種菌株の間には異なる特徴と効能が現れている。
【0003】
従来の報道には、ラクトバシラス・プランタラムは、呼吸管をウイルス感染から保護することができ、化学治療薬に混合されることで癌細胞の薬物に対する感受性を増加させることもできるなどの複数の医療用途、及び、トウモロコシに成長した有毒真菌を防止できるなどの複数の食品添加物の用途を有するということが指摘された。
【0004】
炎症とは、血管系を備える生体組織が炎症誘発因子及び局所損傷に対して発生した防御性を主とする反応であり、急性炎症と慢性炎症とに分けられる。急性炎症は、生命体が有害な刺激に直面したときの予備的反応であり、より多くの血漿と白血球(特に顆粒球)とが血液から損傷組織へ移り、一連の連鎖反応が発生し、その中には、局所血管系、免疫系及び損傷組織内の各細胞が関わっている。慢性炎症は、炎症部位の細胞タイプを変更させ、組織の破壊と修復とを同時に行わせる。なお、人体脂肪は、炎症ホルモンを分泌する能力を備えているので、体脂肪が多過ぎることも、体の慢性炎症を引き起こす要素となる。いくつかの特別な状況では、炎症は、人体自身の免疫系のアレルギーを引き起こし、さらに自己の組織及び細胞を攻撃することもあり、例えばリウマチ性関節炎及びエリテマトーデス等の免疫系アレルギー病症である。長期的な慢性炎症は、一連の疾患を引き起こし、器官及び組織に機能を徐々に失わせ、疲労、老化、ホルモン不調を招きやすいだけでなく、さらに肝炎、肺炎、腎臓炎症、自己免疫疾患、リウマチ、糖尿病、アルツハイマー病、心血管疾患、ひいては、がんを含む様々な重度疾患を引き起こす。
【0005】
運動による筋肉繊維又は結合組織上の損傷は、筋肉炎症を引き起こし、それに伴う酸、痛み、様々な不快感、及び、長期的な蓄積による慢性炎症は、人々の運動意欲と生活品質とを低減させるだけでなく、さらに、運動傷害、姿勢変更を引き起こすこともある。特に、スポーツ選手にとって、いかに運動後の炎症状況を効果的に低減させることができるのかは、さらに、練習及び試合効率を向上させ、運動による損傷を低減させるキーファクタとなる。
【0006】
市場には、健康食品が数多くあるが、台湾では、抗炎症効果を有すると台湾衛生福祉部によって認証される物が5つしかなく(表1)、これらの物の目的は、いずれもアレルギー体質調節、抗アレルギーである。しかし、そのアレルギーのメカニズムは、アレルギーが誘発するため、免疫グロブリンが肥大細胞を過剰に刺激するという感作作用であり、運動後炎症(主に腱や靱帯が損傷される)に対応する急性又は慢性炎症とちょっと異なる。現在では、プロバイオティクスの運動後炎症の改善における応用については、まだ関連研究を必要とする。
【0007】
【表1】
衛生福祉部食品薬物管理署の審査を通過する抗炎症健康食品一覧
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の関連文献は、ラクトバシラス・プランタラムが抗炎症などの関連疾患を改善するために用いることができることを開示したが、運動後炎症を改善できるプロバイオティクスについてはまだ発表されていない。
【0009】
そのため、いかに運動後炎症を改善するプロバイオティクスの新たな用途を提供するかは、本発明が解決しようとする問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、運動後炎症を改善するためのプロバイオティクス組成物の製造におけるラクトバシラス・プランタラムTWK10の用途を提供し、該ラクトバシラス・プランタラムTWK10は、台湾食品工業発展研究所で保存され、保存番号がBCRC910734であり、それとともに、中国普通微生物菌種保存管理センター(CGMCC)で保存され、保存番号がCGMCC 13008である。この微生物の寄託は、ブダペスト条約に基づく国際寄託である。
【0011】
前記発明の目的を達成するために、該ラクトバシラス・プランタラムTWK10が運動後炎症を改善することは、好中球/リンパ球細胞の比値(NLR)及び血小板/リンパ球細胞の比値(PLR)を低減させることである。
【0012】
前記発明の目的を達成するために、該ラクトバシラス・プランタラムTWK10は、生菌又は不活性化菌であり、不活性化菌は、熱致死、物理的、又は、化学的に処理されたものである。該ラクトバシラス・プランタラムTWK10が生菌である場合、用量は、3×10 10 CFU/日以上であり、そのうち、用量が1×10 11 CFU/日よりも多い場合に、好ましい運動後炎症を改善する効果を有する。
【0013】
本発明は、プロバイオティクス組成物を有効量服用するという、運動後炎症を改善する方法をさらに提供し、該プロバイオティクス組成物は、保存番号がCGMCC 13008であるラクトバシラス・プランタラムTWK10を含む。
【0014】
本発明は、プロバイオティクス組成物を有効量服用するという、好中球/リンパ球細胞の比値及び血小板/リンパ球細胞の比値が高すぎることによる疾患を改善する方法をさらに提供し、該プロバイオティクス組成物は、保存番号がCGMCC 13008であるラクトバシラス・プランタラムTWK10を含む。
【0015】
本発明は、体脂肪を低減させるためのプロバイオティクス組成物の製造におけるラクトバシラス・プランタラムTWK10の用途を提供し、該ラクトバシラス・プランタラムTWK10は、台湾食品工業発展研究所で保存され、保存番号がBCRC910734であり、それとともに、中国普通微生物菌種保存管理センター(CGMCC)で保存され、保存番号がCGMCC 13008である。
【0016】
前記目的を達成するために、該ラクトバシラス・プランタラムTWK10が体脂肪を低減させることは、全身体脂肪を低減させることである。
【0017】
前記目的を達成するために、該プロバイオティクス組成物に含まれるプロバイオティクスは、生菌、不活性化菌又は前記両者の組み合わせであり、該ラクトバシラス・プランタラムTWK10の服用用量は3×10 10 CFU/日以上である。
【0018】
本発明は、プロバイオティクス組成物を有効量服用するという、体脂肪を低減させる方法をさらに提供し、該プロバイオティクス組成物は、保存番号がCGMCC 13008であるラクトバシラス・プランタラムTWK10を含む。
【0019】
本発明は、プロバイオティクス組成物を有効量服用するという、体脂肪が多すぎることによる疾患を改善する方法をさらに提供し、該プロバイオティクス組成物は、保存番号がCGMCC 13008であるラクトバシラス・プランタラムTWK10を含む。
【0020】
前記プロバイオティクス組成物は、いずれも薬学的に許容可能なキャリアと、賦形剤と希釈剤とを含んでもよく、剤形は、溶液、懸濁液、乳剤、粉末、トローチ、丸剤、シロップ剤、ロゼンジ、トローチ、チューインガム、濃厚スラリー、及び、カプセルで構成されるグループから選択される。
【0021】
前記プロバイオティクス組成物は、さらに、流体乳製品、濃縮牛乳、ヨーグルト、サワーミルク、フローズンヨーグルト、ラクトバチルス発酵飲料、乳粉、アイスクリーム、チーズ、フォンデュ、豆乳、発酵豆乳、青果ジュース、ジュース、スポーツ飲料、デザート、ゼリー、キャンディ、乳児用食品、健康食品、動物飼料、漢方薬組成物、及び、食事補助食品として製造することができる。
【0022】
前記プロバイオティクス組成物は、ラクトバチルス属種、ラクトコッカス属種、ペディオコッカス属種、ロイコノストック属種、エンテロコッカス属種、ストレプトコッカス属種、ビフィドバクテリウム属種、及び、イーストのようなプロバイオティクスグループのうちの一つ又は任意の組み合わせを含む。
【0023】
本発明の一実施例によれば、TWK10生菌高用量グループ(3×10 11 CFU/日)及び熱致死菌群は、いずれも炎症指標の数値(NLR及びPLR)を低減させることができ、運動後炎症を改善することに役立つとともに、NLR、PLRが高すぎることによる疾患又は症状に応用できることが証明される。他の実施例によれば、TWK10は、生菌又は非活性化菌の形態に拘わらず、いずれも体脂肪を低減させる効果を有し、且つ、生菌群は、用量の上昇に伴って、体脂肪の低減が顕著になり、体脂肪が多すぎることによる疾患又は症状に応用でき、慢性炎症を改善する潜在力があることが証明される。
【0024】
本発明によって提供されるプロバイオティクスの新たな用途は、以下のような優位性を有する。
(1)目標が明確かつ新規である。
TWK10は、炎症による疾病に対する抑制については、他のプロバイオティクスとは異なり、運動後炎症の症状を改善できる効果が初めて得られ、且つ、厳密な人体臨床データ証拠が提供され、なお、体脂肪を低減させる効果がさらに提供され、スポーツ選手にとって、抗運動後炎症と体脂肪低減とを結び付けて、身体機能を増進させることを全面的に補助することができる。
(2)応用範囲が広い。
炎症、体脂肪は、いずれも一般的な疾患又は症状の原因又は評価因子となり、ゆえに、本発明のプロバイオティクスは、炎症又は体脂肪が多すぎることによる疾患、症状の改善に役立つ。
(3)相乗効果を有する。
TWK10は、体脂肪を低減させることができるが、脂肪が炎症ホルモンを分泌するため、長期的に服用すれば、元の運動後炎症を改善するという効果の下で、体脂肪が持続的に低減するため、慢性炎症を相乗的に改善するという効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】Lactobacillus plantarum TWK10というプロバイオティクス組成物を服用した後に、運動後に、好中球/リンパ球細胞の比値の変化である。
図2】Lactobacillus plantarum TWK10というプロバイオティクス組成物を服用した後に、運動後に、血小板/リンパ球細胞の比値の変化である。
図3】Lactobacillus plantarum TWK10というプロバイオティクス組成物を服用した後に、運動後に、体脂肪の変化である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の意味及びその精神のみを表現して述べて、ゆえに、前記実施例などは、例示のために用いられ、限定的な説明として用いられるべきではなく、又は、本発明の実施を限定的に解釈すべきではなく、又は、これらの前記実施例又は形態に限定されるものではない。
【0027】
本発明の明細書及び特許請求の範囲に記載される全ての技術的及び科学的用語は、別途定義がない限り、以下の説明に従って定義される。そのうち、「一」、「一つ」、「該」という単数用語は、別途説明がない限り、いずれも複数の対象を表すことができ、別途説明がない限り、本発明を実施するために採用されている通常技術は、臨床検体収集と分析、高速液体クロマトグラフィ法、タンパク質化学、生物化学、DNA組み換え技術、薬理学技術を含んでもよい。なお、「含む」、「包含する」という用語は、いずれも開放的な接続語であり、別途説明がない限り、本発明に使われている材料は、市販のものであるので入手しやすい。
【0028】
「プロバイオティクス(probiotics)」という用語とは、適切に投与されるときに、服用者に生理的健康の利点を提供できる微生物であり、該微生物は、毒性がなく、腸管付着力、及び、利得効果を有する。コロニー形成単位(CFU、Colony forming unit)とは、単位体積における細菌、カビ、酵母などの微生物のコロニー総数の用語である。「組成物」という用語とは、一種類以上の活性成分を混合し又は組み合わせて生成した産物である。「キャリア(carrier)」、「賦形剤(vehicle)」とは、毒性のない化合物又は薬剤であり、それは、細胞又は組織の薬物吸収に協力する機能を有し、芳香剤(aromatics)、緩衝剤、接着剤(binders)、着色剤、崩壊剤、希釈剤、乳化剤、増量剤(extenders)、匂い改善剤、ゲル化剤、スライド剤(glidants)、防腐剤、皮膚浸透促進剤、助溶剤、安定剤、懸濁剤、甘味剤、張力剤(tonicity agents)、粘度増強剤又は上記任意の組み合わせであってもよい。「希釈剤」という用語とは、組み合わせ物を投与する前に希釈するための溶剤であり、化合物を安定させるために用いることができる。本発明は、塩類の緩衝液を溶解するとともに、pH値を調整するために用いられ、リン酸塩緩衝液(PBS)を含むが、それに限定されない。「有効量」という用語は、服用者が服用した後に、1つ又は複数の疾患症状又は生理的状況を軽減できる、化合物又は薬物の十分な量であり、例えば、治療の「有効量」は、本発明に提供される、臨床的に特定の生理的指標を顕著に低減させることができる用量を含む。「最大酸素摂取量(略称はVO2max)」という用語とは、人が海面上で最も激しい運動をするときに、組織細胞が消費又は利用できる最大の酸素値である。「固定強度と時間での持久力運動能力テスト」という用語とは、60%のVO2max以上の強度で、トレッドミル(又はペダル自転車)で運動テストを少なくとも30分間行うことである。
【0029】
以下の実施例は例示に過ぎず、本発明に用いられているプロバイオティクス組成物について、該プロバイオティクスは、生菌又は不活性化菌であってもよく、該不活性化菌は、熱致死、又は、他の物理的若しくは化学的方式に処理されたものである。
【0030】
本発明に使われているラクトバシラス・プランタラム菌株は、Lactobacillus plantarum TWK10(以下、「TWK10」と略称される。)であり、蔡宗佑博士によって台湾で発酵させたキャベツから分離して得られたものであり、中国普通微生物菌種保存管理センターで保存され、その保存番号がCGMCC 13008であり、それとともに、台湾財団法人食品工業発展研究所で保存され、その保存番号がBCRC910734である。
【0031】
実施例1 ラクトバシラス・プランタラムTWK10の抗炎症効果
【0032】
(一)実験設計及びプロセス
【0033】
実験は、二重盲検交差設計を採用した。被検者は、20歳~40歳であり、2週間の洗濯期を経て、プロバイオティクスを6週間持続的に服用し、服用開始及び終了の当日に固定強度での耐力運動テストを実施し、最大酸素摂取量(VO2max、mL/kg/min)に従って5グループに分けた。各グループには16人が属し、血液を検査して生理因子の変化を測定した。各グループのプロバイオティクス組成物は、1日に3回、1回に1錠を服用し、各グループに投与される用量及び菌株は以下のとおりとした。
(1)プラセボグループ:TWK10を含まないプラセボカプセル(麦芽デキストリン、乳糖、微結晶状α-セルロースを含む)であり、1日に3錠、食後にぬるま湯で服用する。
(2)低用量グループ-TWK10 生菌1倍の用量グループ(TWK10-L):1錠のTWK10カプセルは、1×10 10 CFUを含み、1日に3錠、3×10 10 CFU/日、食後にぬるま湯で服用する。
(3)中用量グループ-TWK10 生菌3倍の用量グループ(TWK10-M):1錠のTWK10カプセルは、3×10 10 CFUを含み、1日に3錠、9×10 10 CFU/日、食後にぬるま湯で服用する。
(4)高用量グループ-TWK10 生菌10倍の用量グループ(TWK10-H):1錠のTWK10カプセルは、1×10 11 CFUを含み、1日に3錠、3×10 11 CFU/日、食後にぬるま湯で服用する。
(5)TWK10
菌グループ(TWK10-HK):1錠のTWK10の熱致死カプセルは、1×10 11 CFUを含み、1日に3錠、3×10 11 CFU/日、食後にぬるま湯で服用する。
【0034】
(二)結果
【0035】
6週間後に、各被検者が固定強度及び時間(120分間)での耐力運動テストの後に、各グループの好中球/リンパ球細胞の比値(NLR)、及び血小板/リンパ球細胞の比値(PLR)の変化を分析し、両者は、体内リンパ系の状態を表し、いずれも体内炎症を検出する指標となり、そのうちの一つの指標が低下すれば、炎症が改善されることを表し、さらに報道によれば、それは、癌移転又は他の疾患の観測因子とすることができることが指摘され、結果は図1図2に示すとおりであり、縦軸は、試験開始時に測定して得られたNLR又はPLRに対する変化量を表す。
【0036】
結果によると、高、中、低用量及び熱致死菌グループTWK10は、NLRを低減させることができ、そのうち、低用量及び熱致死菌グループは、プラセボグループと比べて約30~40倍低下するが、PLRについては、高用量及び熱致死菌グループは、プラセボグループと比べて約1.2~1.8倍低下し、全体としては、TWK10死菌を服用すれば、運動後炎症を改善することができ、一日に3×10 10 CFU以上のTWK10生菌を服用すれば、運動後炎症を改善する効果も有し、一日により高い用量、すなわち9×10 10 CFU以上の生菌、例えば1×10 11 又は3×10 11 CFUを服用すれば、より優れた効果を達成することができる。
【0037】
実施例2 ラクトバシラス・プランタラムTWK10の体脂肪低減効果
【0038】
脂肪細胞は、炎症ホルモンを分泌し、全身的炎症を引き起こすため、体脂肪が多いことは、慢性的炎症にも密接な関係がある。次に、TWK10は、運動後炎症の症状を改善できるほか、体脂肪を低減させるという効果も有するか否かを研究する。
【0039】
(一)実験設計及びプロセスは実施例1と同じである。
【0040】
実験は、二重盲検交差設計を採用した。被検者は、20歳~40歳であり、2週間の洗濯期及び1週間の休憩を経た後に、プロバイオティクスを6週間服用し、服用開始及び終了の当日に固定強度での耐力運動テストを実施し、最大酸素摂取量に従って5グループに分けた。各グループには16人が属し、全身体脂肪の変化を測定した。各グループのプロバイオティクス組成物は、1日に3回、1回に1錠を服用し、各グループに投与される用量と菌株は実施例1と同じである。
【0041】
(二)結果
【0042】
プロバイオティクスを6週間服用した後に、各被検者が固定強度及び時間での耐力運動テストの後に、体脂肪の変化を分析した。結果は図3に示すとおりであり、縦軸は、服用開始時に対して、服用終了時に測定して得られた体脂肪の変化百分率を表す。
【0043】
この結果によると、生菌及び熱致死菌グループは、いずれも体脂肪を低減させることができ、そのうち、低用量及び熱致死菌グループは、プラセボグループと比べて約0.5%低下するが、生菌グループは、用量の上昇に伴って、体脂肪の低減が益々顕著になり、高用量グループは、体脂肪低減率が1.5%に達し、TWK10は、生菌又は不活性化菌の形態に拘わらず、いずれも体脂肪を低減させるという効果を有する。
【0044】
以上を纏めると、TWK10は運動後炎症改善及び体脂肪低減の効果を有し、なお、TWK10は、NLR又は(及び)PLRを低減させることができるので、NLRとPLRは、多くの癌、疾患の移転、感染の診断指標と原因となり、且つ、体脂肪が多過ぎることは、全身的慢性炎症、慢性病、心血管疾患などの原因の一つとなり、ゆえに、本発明の結果を利用して、NLR、PLR、又は体脂肪が多過ぎることによる関連疾患又は症状を改善するいかなる実施は、いずれも本発明の請求の範囲内に含まれるとみなすべきである。
【0045】
体脂肪低減と炎症改善とは相乗効果を有するため、本発明のプロバイオティクス組成物を長期的に服用すれば、体脂肪を低減させることができるだけでなく、さらに全身的慢性炎症を同期に低減させ、二重かつ付加的な身体改善効果を達成することができる。
【0046】
本発明に使われているプロバイオティクス組成物は、その剤形は、溶液、乳剤、懸濁液、粉末、タブレット(tablet)、丸剤、ロゼンジ(lozenge)、トローチ(troche)、チューインガム(chewing gum)、カプセル、又は、他の類似した又は本発明に適用される剤形を含むが、それらに限定されない。
【0047】
本発明に用いられるプロバイオティクス組成物は、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)、ラクトコッカス属(Lactococcus sp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、ロイコノストック属(Leuconotoc sp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus sp.)、ストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)、イースト(yeasts、Saccharomyces sp.)のような、本発明の属する技術分野の通常の知識によって教えられる他の菌種を選択的に含む。
【0048】
本発明に用いられるプロバイオティクス組成物は、食品組成物であってもよく、さらに、カプセル、タブレット、飲料、粉末又は乳製品とされ、本発明に用いられる前記組成物は、さらに可食用材料を添加して、食品製品又は健康食品として製造することができる。そのうち、該可食用材料は、水、流体乳製品、牛乳、濃縮牛乳、ヨーグルト(yogurt)、サワーミルク(sour milk)、フローズンヨーグルト(frozen yogurt)、ラクトバチルス発酵飲料などの発酵乳製品、乳粉、アイスクリーム、チーズ、フォンデュ、豆乳、発酵豆乳、青果ジュース、ジュース、スポーツ飲料、デザート、ゼリー、キャンディ、乳児用食品、健康食品、動物飼料、漢方薬組成物、及び食事補助食品などを含むが、それらに限定されない。
【0049】
本発明に用いられる前記組成物は、食事補助食品であってもよく、水、ヨーグルト、牛乳又はジュースなどの適切な飲用可能な液体と混合するか、又は、固体若しくは液体食品と混合するなどの方式で服用者に投与することができる。食事補助食品の形態は、タブレット、丸剤、カプセル、ロゼンジ(lozenge)、粒子、粉剤、懸濁剤、カプレット剤、パステル剤、キャンディ、スティック、シロップ剤及び対応する投与形態であってもよく、一般的には単位用量の形態であり、且つ、食事補助食品を製造する通常の方法でよい。
【0050】
本発明の実施例において、有効用量の根拠は、組み合わせ治療に応じて変動する。組み合わせ治療は、周期的治療をさらに含んでもよく、共同に投与される組成物、疾患、生理的異常、生理的状況などの因子に応じて変動する。
【0051】
前記実施例は、本発明の技術思想及び特徴を説明するためだけのものであり、その目的は、当業者が本発明の内容を理解するとともにそれに基づいて実施することができるようにすることであるが、それは本発明の特許の範囲を限定することにならず、本発明に開示される精神に基づいて行われた均等な変化又は修飾は、依然として本発明の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3