(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】耐屈曲線材及び耐屈曲線材を加工するための方法
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20220829BHJP
D02G 3/12 20060101ALI20220829BHJP
D02G 3/26 20060101ALI20220829BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
D07B1/06 Z
D02G3/12
D02G3/26
D02G3/36
(21)【出願番号】P 2021547624
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 CN2019105410
(87)【国際公開番号】W WO2021042408
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】201910829209.1
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521185723
【氏名又は名称】深▲せん▼市金泰科環保線纜有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】張 海斌
(72)【発明者】
【氏名】金 涛
(72)【発明者】
【氏名】劉 燦
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-123409(JP,U)
【文献】特開2010-225571(JP,A)
【文献】実公昭51-005720(JP,Y1)
【文献】特開2013-101823(JP,A)
【文献】特開2005-122937(JP,A)
【文献】特開2012-184521(JP,A)
【文献】特開昭60-021991(JP,A)
【文献】特開2002-173882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00-9/00
D02G 1/00-3/48
H01B 5/00-7/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材の表面に巻き回された複数の導線とを含む耐屈曲線材であって、前記芯材の表面に巻き回された前記複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位を形成し、前記最小巻回単位で
は各導線が
芯材に対して30~60度の同じ角度で並列に巻き回され、且つ、
隣接する導線間のピッチが単一導線の直径の0.1~2倍であり、隣接する前記最小巻回単位間の間隔が、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍である、耐屈曲線材。
【請求項2】
前記芯材は、導体芯材又は不導体芯材である、請求項1に記載の耐屈曲線材。
【請求項3】
前記導線は、エナメル線又は素線である、請求項1に記載の耐屈曲線材。
【請求項4】
前記複数の導線は、複数層に巻き回され、隣り合う層の導線間に絶縁層が設けられている、請求項1に記載の耐屈曲線材。
【請求項5】
前記複数の導線は、2層又は3層に巻き回される、請求項
4に記載の耐屈曲線材。
【請求項6】
前記絶縁層は、絶縁性接着剤である、請求項
4に記載の耐屈曲線材。
【請求項7】
芯材と、前記芯材の表面に巻き回された複数の導線とを含み、前記芯材の表面に巻き回された前記複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位を形成し、前記最小巻回単位で
は各導線が
芯材に対して30~60度の同じ角度で並列に巻き回され、且つ、
隣接する導線間のピッチが単一導線の直径の0.1~2倍であり、隣接する前記最小巻回単位間の間隔が、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍である耐屈曲線材を加工するための方法であって、
芯材が継続的に移動するように制御することと、
巻付けられた複数の導線を引き出し、前記複数の導線を、継続的に移動する芯材の表面に並列に巻き回すことと、
芯材の移動速度及び/又は導線の巻回速度を制御することによって、前記芯材の表面に巻き回された複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位を形成するようにすると共に、前記最小巻回単位で
は各導線を
芯材に対して30~60度の角度で並列に巻き回し、且つ、
隣接する導線間のピッチを単一導線の直径の0.1~2倍にし、さらに隣接する前記最小巻回単位間の間隔を、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍にすることと、
巻き回された耐屈曲線材を巻き取ることとを含む、耐屈曲線材を加工するための方法。
【請求項8】
芯材が継続的に移動するように制御する前に、複数の導線を予めリールに巻き付けておくことを含み、
芯材が継続的に移動するように制御することは、
芯材がリールを通過して所定方向に移動するように制御することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記芯材は、導体芯材又は不導体芯材である、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記導線は、エナメル線又は素線である、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の導線は、複数層に巻き回され、隣り合う層の導線間に絶縁層が設けられている、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の導線は、2層又は3層に巻き回される、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記絶縁層は、絶縁性接着剤である、請求項1
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年9月3日に中国特許庁に提出された出願番号201910829209.1、「耐屈曲線材及びその加工方法」という出願名の中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容は、援用により本出願に組み込まれる。
(技術分野)
本発明は、線材の分野に関し、特に耐屈曲線材及びその加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の技術機械、電子系製品等の分野における接続線には、一定の耐屈曲性が求められ、複数回の屈曲後も接続状態を保持することが一般的に求められている。しかしながら、従来技術のこれらの接続線は、複数回使用した後に断線しやすいという大きな問題があった。
【0003】
上記問題を解決するために、出願番号201220609213.0の中国特許は、断線防止導体の外側に銅線をネジ回転式で巻き付けてなる新しい超強力な耐屈曲性及び耐引張性を有する導電線を提供している。上記構成により、導電線の耐屈曲性を向上させることができ、折り返し、屈曲の繰り返しを百万回以上達成することができる。上記従来技術は、耐屈曲性の向上効果をある程度達成したが、実際の製品では、その使用環境が複雑で多様に変化し、屈曲の仕方や回数が千差万別であるため、実際の製品が実際の環境で示す耐屈曲性と、試験環境で示す耐屈曲性との間には大きな差が生じる。
【0004】
従って、複雑且つ多様に変化する使用環境及び条件下で線材を断線させないように、耐屈曲性をいかに向上させ続けるかは、当業者によって現在解決しなければならない技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、耐屈曲性の向上によって線材が複雑且つ多様に変化する使用環境及び条件下で断線しないことを実現可能な耐屈曲線材及びその加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様として、本願の実施例は、芯材と、前記芯材の表面に巻き回された複数の導線とを含む耐屈曲線材を提供し、前記芯材の表面に巻き回された前記複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位を形成し、前記最小巻回単位では各導線が芯材に対して30~60度の同じ角度で並列に巻き回され、且つ、隣接する導線間のピッチが単一導線の直径の0.1~2倍であり、隣接する前記最小巻回単位間の間隔が、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍である。
【0007】
第2態様として、本願の実施例は、上記第1態様の耐屈曲線材を加工するための方法を提供し、芯材が継続的に移動するように制御することと、巻付けられた複数の導線を引き出し、前記複数の導線を、継続的に移動する芯材の表面に並列に巻き回すことと、芯材の移動速度及び/又は導線の巻回速度を制御することによって、前記芯材の表面に巻き回された複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位を形成するようにすると共に、前記最小巻回単位では各導線を芯材に対して30~60度の同じ角度で並列に巻き回し、且つ、隣接する導線間のピッチを単一導線の直径の0.1~2倍にし、さらに隣接する前記最小巻回単位間の間隔を、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍にすることと、巻き回された耐屈曲線材を巻き取ることとを含む。
【0008】
更に、芯材が継続的に移動するように制御する前に、複数の導線を予めリールに巻き付けておくことを含み、芯材が継続的に移動するように制御することは、芯材がリールを通過して所定方向に移動するように制御することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明するが、以下の説明における図面は、本願の実施例の一部であり、当業者にとって、創造的な労働をすることなくこれらの図面から他の図面も得られることは明らかである。
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係る耐屈曲線材の構造図である。
【
図2】本発明の実施例に係る耐屈曲線材の加工方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の実施例における技術手段を、本願の実施例における図面と併せて、明確且つ完全に説明するが、記載された実施例は、本願の一部の実施例であり、全ての実施例ではないことは明らかである。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をすることなく得られる全ての他の実施例は、本願の保護範囲に属する。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「含む」及び「からなる」は、記載された特徴、全体、ステップ、動作、要素及び/又は構成要素の存在を示すが、1つ又は複数の他の特徴、全体、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの集合の存在又は追加を排除するものではないことを理解されたい。
【0013】
また、本願明細書で使用される用語は、特定の実施例を説明する目的のためのものに過ぎず、本願を限定するものではないことを理解されたい。本願明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つ」、「一個」、及び「該」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形を含むことが意図される。
【0014】
更に、本願明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「及び/又は」という用語は、関連付けて列挙されたアイテムのうちの1つ以上の任意の組み合わせ、及び、あらゆる可能な組み合わせを指し、これらの組み合わせを含むことが理解されるべきである。
【0015】
図1を参照してください。
図1は、本願の実施例による耐屈曲線材の構造図である。図示のように、前記耐屈曲線材は、芯材101と、前記芯材101の表面に巻き回された複数の導線(
図1では、具体的には、導線a、導線b、導線c及び導線dを含む)とを含み、前記芯材101の表面に巻き回された前記複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位102(
図1では、点線枠部分)を形成し、前記最小巻回単位102で各導線が同じ角度で並列に巻き回され、且つ、隣接する前記最小巻回単位102の間の間隔(
図1では、fで示す)が、単一の前記最小巻回単位102の幅(
図1では、eで示す)の2~4倍である。
【0016】
本願の実施例において、前記最小巻回単位102とは、前記芯材101の表面に巻き回された繰り返し可能な最小単位を意味する。前記最小巻回単位102で各導線が並列に且つ同じ角度で巻き回されることにより、規則的な巻回体を形成する。
【0017】
本願のコアとなる改良点は、従来技術に対し、隣接する前記最小巻回単位102の間の間隔が単一の前記最小巻回単位102の幅の2~4倍であることにある。これにより、各隣接する最小巻回単位102間に十分な屈曲スペースが存在することになる。前記耐屈曲線材を屈曲させる際に、隣接する最小巻回単位102間に大きな屈曲スペースが存在するため、最終的には、前記耐屈曲線材は、前記屈曲スペースを基に最小巻回単位102の実際の幅を大きくする。換言すれば、前記耐屈曲線材に対して屈曲作業を行う際に、屈曲作業による最小巻回単位102の幅を増加させる要求を相殺するために、前記耐屈曲線材は、十分な屈曲の余地がある。
【0018】
前記耐屈曲線材は、前記最小巻回単位102が繰り返し且つ連続しており、且つ、隣接する最小巻回単位102間の間隔が単一の最小巻回単位102の幅の2~4倍であるため、全体として耐屈曲性を有する。一般的に言えば、最小巻回単位102は、実際のサイズが小さい導線を並列に巻き回して構成されるため、最小巻回単位102の実際のサイズも小さい。そのため、隣接する最小巻回単位102間の間隔が単一の最小巻回単位102の幅の2~4倍であるが、隣接する最小巻回単位102間の間隔も小さい。最小巻回単位102に対して耐屈曲線材は全体として非常に長いため、最終的に得られる耐屈曲線材は、実際には、上述した屈曲スペースを各箇所に有する。これは、耐屈曲線材にとって意味が大きく、全体として見ると、耐屈曲線材が実際に耐屈曲性を各箇所に有することを意味する。耐屈曲線材は、耐屈曲線材のどの部分を屈曲させても、最小巻回単位102の幅の増大を緩衝するだけの屈曲スペースを有することになる。
【0019】
具体的には、隣接する最小巻回単位102間の間隔が小さすぎても大きすぎても好ましくない。隣接する最小巻回単位102間の間隔が小さすぎると、屈曲スペースが小さくなり、求められた耐屈曲性を達成できない場合がある。隣接する最小巻回単位102間の間隔が大きすぎると、隣接する最小巻回単位102間を接続する導線自体が横方向への配置となり、横方向への導線の配置距離が長くなりすぎる。屈曲作業時に隣接する最小巻回単位102間を接続する導線が断線する危険性が高く、この部分で断線が生じると、耐屈曲線材全体として信号が伝達されなくなり、信号伝達機能が損なわれる。本願出願人が多数の実験を行ったところ、隣接する最小巻回単位102間の間隔が最小巻回単位102の幅の2~4倍である場合に、屈曲スペースを大きく確保して十分な耐屈曲性を達成できるとともに、隣接する最小巻回単位102間の導線の、横方向への角度が大きくなり過ぎず、且つ長さが長くなり過ぎず、その結果、複数回の屈曲時における断線の問題を回避できることが確認された。
【0020】
具体的な応用場面では、隣接する最小巻回単位102間の間隔が最小巻回単位102の幅の3倍である。この場合、線材全体の耐屈曲性が最も良好であり、十分な屈曲スペースを確保しつつ、隣接する最小巻回単位102間の導線が断線する危険性も少ない。
【0021】
本願の実施例による耐屈曲線材は、隣接する最小巻回単位102間に適当な間隔を設けて、耐屈曲線材全体に耐屈曲性を有するようにしたので、耐屈曲線材のある位置を複数回屈曲させても断線の問題がなく、耐屈曲線材の全体的な耐屈曲性が向上する。本願の実施例による耐屈曲線材は、特にイヤホンコード、ロボットの接続線、データライン等の屈曲作業を頻繁に行う製品に好適である。
【0022】
更に、前記最小巻回単位102の巻回角度は、芯材101に対して30~60度の角度をなす。前記最小巻回単位102は、複数の導線が芯材101に並列に巻き回されたものであるため、最小巻回単位102の巻回角度は、導線の巻回角度を指してもよい。前記最小巻回単位102の巻回角度とは、芯材101に対してなす角度である。芯材101を水平にすると、最小巻回単位102の各導線を芯材101に巻き回す際に、各導線が水平線となす角度(鋭角)が芯材101となす角度となる。本願では、前記最小巻回単位102の巻回角度は、大きすぎても小さすぎても好ましくない。最小巻回単位102の巻回角度が大きすぎると、隣接する最小巻回単位102間の導線が芯材101の方向に寄ってしまう。これにより、隣接する最小巻回単位102を結ぶ導線が水平方向に傾いてしまい、この部分の導線の耐屈曲性に影響を与える。最小巻回単位102の巻回角度が小さすぎると、最小巻回単位102自体の導線が水平方向に傾いてしまい、最小巻回単位102自体の導線の耐屈曲性に影響を与える。従って、巻回角度の設定に際しては、最小巻回単位102自体の導線の耐屈曲性のみならず、最小巻回単位102間の導線の耐屈曲性にも注目すべきである。本願実施例では、出願人が多数の実験を行ったところ、巻回角度を芯材101に対して30~60度の角度に設定することにより、ある部分の耐屈曲性を低下させることなく、耐屈曲線材全体として耐屈曲性を高く保つことができることが確認された。
【0023】
更に、上記実施例では、隣接する最小巻回単位102間の間隔を規定しているので、線材のこの部分に耐屈曲性を持たせることができる。しかし、線材を屈曲させる際に具体的な屈曲位置が不定であるため、隣接する導線間のピッチが小さいと、最小巻回単位102は、まず両端の導線から緩む(隣接する最小巻回単位102間に屈曲スペースがあるため)。最小巻回単位102の中間の導線は、ピッチが小さすぎるため、タイムリーに緩むことができず、そのままとなり、屈曲による作用力が緩衝されず、断線する恐れがある。従って、本願実施例では、最小巻回単位102の構成を最適化する必要がある。換言すれば、最小巻回単位102は、線材を屈曲させる際に、各導線の幅を大きくする必要があり、最小巻回単位102自体に一定の耐屈曲性を持たせる必要がある。この効果を実現するために、本願実施例では、隣接する導線間のピッチを規定している。具体的には、前記最小巻回単位102は、隣接する導線間のピッチが単一導線の直径の0.1~2倍である。このことから、最小巻回単位102自体に屈曲スペースを持たせている。即ち、最小巻回単位102では、隣接する導線間に一定の隙間があるため、線材を屈曲させる際に、その屈曲スペースが確保され、最小巻回単位102自体に一定の屈曲性が付与される。
【0024】
一方、上記に記載したように、前記隣接する導線間のピッチが小さ過ぎるのも好ましくない。小さ過ぎると、適時且つ適切な緩衝が得られず、最小巻回単位102の中間の導線が破断する危険性が高まる。また、前記隣接する導線間のピッチが大きすぎるのも好ましくない。大きすぎると、各導線の巻回角度が小さくなりすぎて、芯材101方向への導線の傾きが生じ、同様に破断の危険性が高まる。本願実施例では、出願人が多数の実験したところ、隣接する導線間のピッチを単一導線の直径の0.1~2倍とすることにより、最小巻回単位102の耐屈曲性を良好にすることができることを発明的に見出した。しかしながら、特定の応用場面では、前記隣接する導線間のピッチは、単一導線の直径の1倍に設定され、最適な耐屈曲性を示す。
【0025】
本願の実施例において、前記最小巻回単位102では、各導線の直径が同一であり、又は大きく異ならない。前記単一導線の直径とは、任意の導線の直径を意味し、全ての導線の直径の平均値を意味することもできる。
【0026】
当然のことながら、前記導線は、その断面が通常円形であるため、上記のピッチの大きさも、直径を基準としている。前記導線の断面は、多角形構造などの他の変形構造を採用することもでき、又は、実際の応用場面に応じて他の構造に置き換えることが容易に想到できる。このような変形構造を導線断面に採用する場合、前記導線間のピッチを単一導線の幅の0.1~2倍とすることができることがわかる。
【0027】
更に、前記導線は、エナメル線又は素線である。同様に、応用場面によっては、前記導線は、エナメル線の構成であっても、素線の構成であってもよい。前記エナメル線は、導体と絶縁層の2部からなり、具体的には素線を焼鈍して軟化させた後、複数回の塗装を経て焼付けにより形成される。前記素線とは、導体のみで絶縁層を有しないものをいい、具体的には銅、アルミニウム等の各種金属又は複合金属材料の丸素線を挙げることができる。本願実施例では、各導線は、原則として同一構成の導線を採用しており、例えば共にエナメル線の構成を採用し、又は共に素線の構成を採用する。共に素線の構成を採用すれば、複数の導線が互いに接続されて、同一の信号が共通に伝送される。エナメル線の構成を採用すれば、複数の導線同士が互いに干渉することなく、それぞれ異なる信号を伝送する。もちろん、特定の場合には、個々の導線は、ハイブリッド構成の導線を採用してもよく、即ち、複数の導線のうち、1つ又は複数の導線がエナメル線構成であり、1つ又は複数が素線構成であってもよい。
【0028】
更に、前記複数の導線は、複数層に巻き回され、隣り合う層の複数の導線の間に絶縁層が設けられている。
【0029】
具体的には、前記複数の導線を巻き回す場合、一層のみに巻き回すか、複数の層に巻き回す。異なる巻回方式には、異なる長所を有する。例えば一層のみに巻き回す場合、線材全体が強い耐屈曲性を維持することができるが、伝送できる信号路の数が制限される。複数の層に巻き回す場合、同時に多重信号の伝送は確保できるが、線材全体の耐屈曲性が低下することは避けられず、巻き回す層数が多いほど耐屈曲性が低下する。従って、本願実施例では、導線を多くの層に巻き回すことを推奨せず、通常は3層、好ましくは2層に巻き回すことによって、十分な耐屈曲性を確保する。導線を多層に巻き回す場合、隣接する層の複数の導体間に絶縁層を設けることで、異なる層間で複数の導線が互いに干渉しないようにする。具体的には、複数の導線を一層に巻き回した後、その層を形成する複数の導線の表面を絶縁性接着剤等の絶縁層で被覆する。次に、引き続き絶縁層の上に新たな複数の導線を巻き回す。第2層の巻回方式は、第1層の巻回方式と同じであるが、最終的に得られる巻回構成によっては、完全に同じであってもよいし、若干異なったものであってもよい。例えば巻回角度が異なっていてもよいし、隣接する最小巻回単位102間の間隔と、単一の最小巻き付け単位102の幅との倍数も異なっていてもよい。巻回ピッチが異なっていてもよい。また、巻き回される導線の種類が異なっていてもよい。しかしながら、いずれの巻回構成であっても、その巻回方式は、「複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位102を形成し、前記最小巻回単位102で各導線が同じ角度で並列に巻き回され、且つ、隣接する前記最小巻回単位102間の間隔が、単一の前記最小巻回単位102の幅の2~4倍である」という点では同じである。
【0030】
更に、前記導線は、4本設けられ、好ましくは、
図1の導線a、導線b、導線c、及び導線dなどの素線であり、これら4本の素線は、信号を一緒に伝送する。しかしながら、異なる応用場面において、実際の必要に応じて、導線の設置数を調節することができ、例えば、具体的には、2本、3本、4本、5本、6本などの数に設定することができる。線材全体が十分な耐屈曲性を有するように、導線の配置及び巻回方式は、いくつ使用されても同じである。また、前記導線を1本とし、1つの最小巻回単位102内に1本の導線のみを配置し、隣接する最小巻回単位102間の間隔が実際に隣接する導線間のピッチである。この場合、最終的に作製される線材は、良好な耐屈曲性を有する。
【0031】
更に、前記芯材101は、導体芯材又は不導体芯材である。前記芯材101は、適用場面の違いに応じて、導体芯材を用いてもよく、不導体芯材を用いてもよい。
【0032】
また、前記芯材101は、引張性を有する芯材であってもよい。前記耐屈曲線材を引っ張ると、隣接する最小巻回単位102間に大きな屈曲スペースがあり、この屈曲スペースが実質的に引張スペースとなり、また、中央に位置する芯材101も引張性を有するので、最終的には、前記耐屈曲線材は、前記引張スペースを基に最小巻回単位102の実質的な幅を大きくする。
【0033】
なお、
図1は、説明の便宜上描いた構造図である。実際の製品では各導線の直径が非常に小さく、最小巻回単位102の幅及び隣接する最小巻回単位102間の間隔は非常に小さい。このため、隣接する最小巻回単位102間の導線は、芯材101方向にあまり傾くことなく、好ましい巻回角度に保たれる。
【0034】
本願の実施例は、前記耐屈曲線材を加工するための方法を更に提供し、
図2に示すように、以下のステップを含む。
【0035】
S201において、芯材が継続的に移動するように制御する。
【0036】
特定の適用場面では、芯材は、継続的に移動する状態に制御される。これにより、芯材の移動中に、その表面に導線を連続的に巻き回すことができる。具体的には、芯材を同一方向に移動させることにより連続加工を容易に行うことができる。
【0037】
好ましくは、前記S201の前に、複数の導線を予めリールに巻き付けておくことを更に含む。
【0038】
即ち、加工を行う際には、予めリールに巻かれた複数の導線を用意しておき、加工の便宜を図る。
【0039】
対応して、前記の芯材が継続的に移動するように制御することは、芯材がリールを通過して所定方向に移動するように制御することを含む。
【0040】
複数の導線を巻き付けるリールは、中空構造であり、その中央部を芯材が通過して所定方向に移行し、即ち、同一方向に移動可能となっている。
【0041】
S202において、リールに巻付けられた複数の導線を引き出し、引き出した複数の導線を、継続的に移動する芯材に並列に巻き回す。
【0042】
具体的には、巻付けられた複数の導線をリールの一端から引き出し、具体的には、複数の導線を芯材の移動方向の一端側に引き出し、その後、複数の導線を所定角度に順次引き出し、継続的に移動している芯材に巻き回すように制御する。これらにより、耐屈曲線材を継続的に加工する目的を達成する。
【0043】
S203において、芯材の移動速度及び/又は導線の巻回速度を制御することによって、前記芯材の表面に巻き回された複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位を形成するようにする。このとき、前記最小巻回単位で各導線を同じ角度で並列に巻き回し、且つ、隣接する前記最小巻回単位間の間隔が、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍にする。
【0044】
隣接する最小巻回単位間の間隔を単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍とするためには、2つの制御方式に基づいて実現することができる。1つは、芯材移動速度を制御することである。例えば、巻回速度を一定にしたまま、芯材移動速度を上げる制御を行うことにより、最小巻回単位間の間隔を大きくする。巻回速度を一定にしたまま、芯材移動速度を下げる制御を行うことにより、最小巻回単位間の間隔を小さくする。もう1つは、巻回速度を制御することである。例えば、芯材移動速度を一定にしたまま、巻回速度を遅くする制御を行うことにより、最小巻回単位間の間隔を小さくする。芯材移動速度を一定にしたまま、巻回速度を速くする制御を行うことにより、最小巻回単位間の間隔を大きくする。
【0045】
以上は、単一の制御方式に基づいて、最小巻回単位間の間隔の制御を実現するものである。本願実施例は、同様に、2つの制御方式を同時に採用して、上記間隔の制御を実現することができ、最終的に達成する効果として、隣接する最小巻回単位間の間隔を、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍とする。
【0046】
S204において、巻き回された耐屈曲線材を巻取る。
【0047】
芯材の表面に複数の導線を巻き回した後、芯材の移動方向の一端に設けられた巻取装置が、巻き回した後の製造された耐屈曲線材を巻き取る。これにより、耐屈曲線材を継続的に加工することができる。
【0048】
本明細書における各実施例は、漸進的に説明され、各実施例は、他の実施例との相違点を中心に説明され、各実施例間の同様の部分は、互いに参照されたい。実施例に開示の装置については、実施例に開示の方法に対応するため、説明が比較的簡単であり、関連する箇所は方法の項を参照して説明するとよい。本願の原理から逸脱することなく、本願の開示に対して幾つかの改良及び修飾を行うことができ、これらの改良及び修飾も本願の特許請求の範囲内に含まれることに留意されたい。
【0049】
また、本明細書では、第1及び第2などの関係用語は、1つのエンティティ又は動作を別のエンティティ又は動作から区別するためにのみ使用され、そのようなエンティティ又は動作間の任意のそのような実際の関係又は順序を必ずしも要求又は暗示するものではないことを更に説明する。更に、「含む」、「からなる」又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を包含することを意図しており、それにより、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含み、又はそのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有の要素も含む。「……を含む」という語句によって定義される要素は、これ以上の制限がない限り、その要素を含むプロセス、方法、物品、又は設備にさらなる同じ要素の存在を排除するものではない。
【0050】
(付記)
(付記1)
芯材と、前記芯材の表面に巻き回された複数の導線とを含む耐屈曲線材であって、前記芯材の表面に巻き回された前記複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位を形成し、前記最小巻回単位で各導線が同じ角度で並列に巻き回され、且つ、隣接する前記最小巻回単位間の間隔が、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍である、耐屈曲線材。
【0051】
(付記2)
前記最小巻回単位の巻回角度は、芯材に対して30~60度の角度をなす、付記1に記載の耐屈曲線材。
【0052】
(付記3)
前記最小巻回単位は、隣接する導線間のピッチが単一導線の直径の0.1~2倍である、付記1に記載の耐屈曲線材。
【0053】
(付記4)
前記芯材は、導体芯材又は不導体芯材である、付記1に記載の耐屈曲線材。
【0054】
(付記5)
前記導線は、エナメル線又は素線である、付記1に記載の耐屈曲線材。
【0055】
(付記6)
前記複数の導線は、複数層に巻き回され、隣り合う層の導線間に絶縁層が設けられている、付記1に記載の耐屈曲線材。
【0056】
(付記7)
前記複数の導線は、2層又は3層に巻き回される、付記6に記載の耐屈曲線材。
【0057】
(付記8)
前記絶縁層は、絶縁性接着剤である、付記6に記載の耐屈曲線材。
【0058】
(付記9)
芯材と、前記芯材の表面に巻き回された複数の導線とを含み、前記芯材の表面に巻き回された前記複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位を形成し、前記最小巻回単位で各導線が同じ角度で並列に巻き回され、且つ、隣接する前記最小巻回単位間の間隔が、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍である耐屈曲線材を加工するための方法であって、
芯材が継続的に移動するように制御することと、
巻付けられた複数の導線を引き出し、前記複数の導線を、継続的に移動する芯材の表面に並列に巻き回すことと、
芯材の移動速度及び/又は導線の巻回速度を制御することによって、前記芯材の表面に巻き回された複数の導線が、複数、繰り返し且つ連続した最小巻回単位を形成するようにすると共に、前記最小巻回単位で各導線を同じ角度で並列に巻き回し、且つ、隣接する前記最小巻回単位間の間隔を、単一の前記最小巻回単位の幅の2~4倍にすることと、
巻き回された耐屈曲線材を巻き取ることとを含む、耐屈曲線材を加工するための方法。
【0059】
(付記10)
芯材が継続的に移動するように制御する前に、複数の導線を予めリールに巻き付けておくことを含み、
芯材が継続的に移動するように制御することは、
芯材がリールを通過して所定方向に移動するように制御することを含む、付記9に記載の方法。
【0060】
(付記11)
前記最小巻回単位の巻回角度は、芯材に対して30~60度の角度をなす、付記9に記載の方法。
【0061】
(付記12)
前記最小巻回単位は、隣接する導線間のピッチが単一導線の直径の0.1~2倍である、付記9に記載の方法。
【0062】
(付記13)
前記芯材は、導体芯材又は不導体芯材である、付記9に記載の方法。
【0063】
(付記14)
前記導線は、エナメル線又は素線である、付記9に記載の方法。
【0064】
(付記15)
前記複数の導線は、複数層に巻き回され、隣り合う層の導線間に絶縁層が設けられている、付記9に記載の方法。
【0065】
(付記16)
前記複数の導線は、2層又は3層に巻き回される、付記15に記載の方法。
【0066】
(付記17)
前記絶縁層は、絶縁性接着剤である、付記15に記載の方法。