IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社寺岡製作所の特許一覧

<>
  • 特許-粘着テープ 図1
  • 特許-粘着テープ 図2
  • 特許-粘着テープ 図3
  • 特許-粘着テープ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/26 20180101AFI20220829BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220829BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C09J7/26
C09J7/38
C09J133/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019532251
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2017026870
(87)【国際公開番号】W WO2019021371
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-01-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145079
【氏名又は名称】株式会社寺岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸
(72)【発明者】
【氏名】土屋 靖史
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033274(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052556(WO,A1)
【文献】特開平09-239882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面又は両面に粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記基材がエチレン-酢酸ビニル共重合体と他のポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなり、発泡倍率が1.1~3.5倍であり、かつ0.3mm~2.0mmのサイズのボイドを排除した発泡体であり、
前記基材がエチレン-酢酸ビニル共重合体を30質量%以上含み、
前記粘着剤層の厚さが、5~100μmであり、
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体架橋剤及びシランカップリング剤を含有するアクリル系粘着剤組成物を含み、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体を含み、
前記粘着剤層が、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に前記架橋剤を配合して形成した架橋構造を有し、
前記粘着テープの0.3~5.0MPaの範囲内で圧縮した際の接着時圧縮変形率が0~-10%である
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
0.3~5.0MPaの範囲内で圧縮した後の接着時圧縮変形率の維持率が±3%以内である請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
最低損失正接が50~100℃の範囲内にあり、最低損失正接と150℃損失正接の差が1.5×10-1以下である請求項1記載の粘着テープ。
【請求項4】
貯蔵弾性率変化点αが100℃以上である請求項1記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記基材が、球状の気泡を含む請求項1または4に記載の粘着テープ。
【請求項6】
毎分1mmで引っ張った際の荷重-変位曲線において、基材の層間破壊がなく、最大荷重値が40N/cm以上であり、剥離変位が2.0mm以下である請求項1記載の粘着テープ。
【請求項7】
JIS K-7181に準じた圧縮強度測定で測定される40%圧縮強度が2MPa以上である請求項1記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記他のポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物である請求項に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着剤層が粘着付与樹脂を含有しない請求項1記載の粘着テープ。
【請求項10】
JIS K7161 2014に準じて測定される前記基材の引張弾性率が30N/mm以上である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記基材が独立気泡を含む請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項12】
構造接着用粘着テープである請求項1記載の粘着テープ。
【請求項13】
電子機器接着用粘着テープである請求項1記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧された場合の厚さの寸法安定性が優れ、例えばスマートフォン、タブレット端末等の電子機器、車載表示機、TV等の構造接着の用途において好適に使用できる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレット端末等のポータブル電子機器は、一般にタッチパネルと液晶モジュールを収容する筐体を組み合わせた構造になっている。そして、例えばタッチパネルと筐体を固定する為に、粘着テープが用いられている。更に、車載表示機やTVの液晶ディスプレイ(LCD)パネル及び有機ELパネルと筐体を固定する為にも使用されている。
【0003】
近年、これら電子機器の薄型化、小型化が進んでいる。これに伴い、例えばFPC(Flexible Printed Circuits)は機器内部でより鋭角に折り曲げられ、常時強い反発力がかかる内部構造になっている。また、LCDの表示領域をより大きくする為に液晶パネルを囲む枠(額縁)の幅を狭くする、いわゆる狭額縁化が進んでいる。したがって、筐体とトップパネルを固定する粘着テープも細幅化する必要がある。ただし内部からのFPC等の反発力や外部からの衝撃に耐える為には、粘着剤層の接着強度だけでなく、基材の強さも必要である。
【0004】
細幅の粘着テープを筐体に貼る際には、プレス機による加圧工程を実施することが一般的である。その際、粘着テープに掛かる圧力は0.1MPa~5.0MPaと広範囲に渡る。そして、その圧力範囲における粘着テープの厚さ変化が大きい場合は、図4(A)に示すように、両面粘着テープ41の寸法変化によってカバーパネル42と筐体43にギャップGが生じ、一体感が低下し、本来の外観が大幅に損なわれる。更に、圧力の変動による両面粘着テープ41の厚さ変化の差が大きい場合は、ギャップGを予測してカバーパネル42と筐体43を設計することは困難であり、設計自体が難しくなる。また、加圧工程後に時間の経過と共に両面粘着テープ41の寸法が復元する場合は、図4(B)に示すように、カバーパネル42が筐体43から飛び出し、落下時にカバーパネル42が破損する恐れがある。
【0005】
ところで、この種の粘着テープの基材としては、ポリエチレンを主成分としたポリオレフィン系発泡体や、アクリル樹脂に様々なフィラーを添加したアクリルフォームを使用することが一般的である。例えば特許文献1には、発泡体基材の両面にアクリル系粘着剤層が設けられた両面粘着テープが記載されている。そして、この発泡体基材の具体例として、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体等のポリオレフィン系樹脂発泡体が記載されている。この発泡体基材の厚さは50~150μm、30%圧縮荷重は5~200kPaである。
【0006】
特許文献2には、携帯電子機器の部品固定を目的とする、ポリオレフィン系発泡体基材と粘着剤層とからなる防水用両面粘着テープが記載されている。そして、このポリオレフィン系発泡体基材の厚さは70~300μm、25%圧縮強度は40~160kPa、引張強度は300~1500N/cm、厚さ方向の平均気泡径は1~100μm、流れ方向及び幅方向の平均気泡径は1.2~700μmである。
【0007】
特許文献3には、発泡体基材の少なくとも一面に粘着剤層を有する粘着テープが記載されている。そして、発泡体基材の具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系発泡体基材が記載されている。この発泡体基材の厚さは300μm以下、層間強度は6~50N/cm、25%圧縮強度は30kPa以上、引張強さは300N/cm以上、厚さ方向の平均気泡径は10~100μm、流れ方向及び幅方向の平均気泡径は10~700μmである。
【0008】
特許文献4には、高い衝撃吸収性と静電気耐性を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートが記載されている。この発泡シートの発泡倍率は1.1~2.8cm3/g、気泡のMDの平均気泡径は150~250μm、CDの平均気泡径は120~300μm、厚みは0.02~1.9mm、25%圧縮強度は250~1500kPaである。
【0009】
特許文献5には、細幅化による性能低下が少ない粘着シートが記載されている。この粘着シートの100%モジュラスM[N/mm基材]と発泡体の密度D[g/cm]との関係は9.0≦(M/D)であり、100%モジュラスMは4.0[N/mm基材]よりも高い。
【0010】
特許文献6には、携帯電子機器の表示部又は表示部保護材を筐体に固定する為の固定部材(発泡体基材を有する粘着テープ)が記載されている。この固定部材の細幅部の平均幅W[mm]と、固定部材の100%モジュラスM[N/mm基材]と、発泡体基材の厚さHs[mm]は、0.4/(M×Hs)≦Wの式を満たす。
【0011】
しかし特許文献1~6では、プレス機による加圧工程によるテープ厚さの変化とプレス工程後のテープ厚さの維持率に関しては十分検討されていない。さらに本発明者らの知見によれば、特許文献1~4に記載の従来の物性評価法では、その基材が細幅粘着テープに適するか否かを十分に評価できない。例えば、特許文献1~4に記載の「圧縮強度」又は「圧縮荷重」は単に厚さ方向の硬さの指標に過ぎず、圧縮後の厚さの変化に対する指標ではない。特許文献2及び3に記載の「引張強度」、「引張強さ」又は「層間強度」は、単に基材が破壊するときの強度である。特許文献3及び4に記載の「平均気泡径」又は「発泡倍率」は、発泡の程度を表す指標に過ぎない。特許文献5に記載の「100%モジュラス」は単にテープの引張強さを示すものである。特許文献6に記載の式「0.4/(M×Hs)≦W」は、単に引張強さとテープ厚さとテープ幅の関係式である。
【0012】
すなわち、特許文献1~6に記載の従来の物性評価法は、特に極細幅の粘着テープに対してそのまま適用することは必ずしも適当ではない。一方、本発明者らの知見によれば、極細幅の粘着テープを用いてカバーパネルと筐体をプレス機により加圧する工程においては、加圧後圧縮変形率が重要となり、さらに加圧後経時変形率の維持率、カバーガラスと筐体の剥れ難さにおいて、荷重-変位曲線における高荷重と低変位も重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第5947870号公報
【文献】特許第4623198号公報
【文献】特許第5517015号公報
【文献】国際公開第2015/046526号
【文献】特開2017-2292公報
【文献】特開2017-2293公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上のような従来技術の課題を解決する為されたものである。すなわち、本発明の目的は、好ましくは極細幅の粘着テープであり、厚さの寸法安定性が優れ、例えばカバーパネルと筐体をプレスする工程等の加圧工程において生じるギャップGが小さく、ギャップGによる製品外観が損なわれ難く、また、製品の落下時のギャップGによる破損が生じ難い粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の物性を示す基材を用いることが非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、
基材の片面又は両面に粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記基材がエチレン-酢酸ビニル共重合体と他のポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなり、発泡倍率が1.1~3.5倍であり、かつ0.3mm~2.0mmのサイズのボイドを排除した発泡体であり、
前記基材がエチレン-酢酸ビニル共重合体を30質量%以上含み、
前記粘着剤層の厚さが、5~100μmであり、
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体架橋剤及びシランカップリング剤を含有するアクリル系粘着剤組成物を含み、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体を含み、
前記粘着剤層が、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に前記架橋剤を配合して形成した架橋構造を有し、
前記粘着テープの0.3~5.0MPaの範囲内で圧縮した際の接着時圧縮変形率が0~-10%である
ことを特徴とする粘着テープである。
【発明の効果】
【0017】
先に述べた用途においては、一般に、独立気泡を含むポリエチレン系発泡基材が用いられる。圧縮強度が高い発泡基材と圧縮強度が低い発泡基材を比較すると、圧縮強度が低い発泡基材の方が圧力により大きく変形する。また、圧縮強度が高い発泡基材であっても、0.1~5.0MPaという非常に高い圧力で加圧すると、塑性変形により本来の厚さから大きく変化することがある。一方、本発明の粘着テープは、厚さの寸法安定性が優れ、例えばカバーパネルと筐体をプレスする工程等の加圧工程において生じるギャップGが小さく、ギャップGによる製品外観が損なわれ難く、また、製品の落下時のギャップGによる破損が生じ難い。したがって、そのような特性が必要な分野において、様々な用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例の曲げモーメントの測定方法を説明する為の模式的断面図である。
図2】実施例の動的粘弾性測定により得られるマスターカーブを説明する為のグラフである。
図3】実施例の荷重-変位曲線の測定方法を説明する為の模式的断面図である。
図4】従来技術においてカバーパネルと筐体にギャップが生じる問題を説明する為の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<基材>
本発明に用いる基材は、この基材を有する粘着テープの0.3~5.0MPaの範囲内で圧縮した際の接着時圧縮変形率が0~-10%となる基材であれば良く、その種類は限定されない。例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体を30質量%以上含有し、且つ基材の引張弾性率が30N/mm以上である基材が好ましい。
【0020】
基材は、エチレン-酢酸ビニル共重合体と他のポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなることが好ましい。他のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。特に、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)や、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が好ましい。
【0021】
基材を構成する樹脂組成物は、公知の方法により製造できる。例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体30質量%以上と他のポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂組成物に電子線を照射して架橋させることにより、基材を構成する樹脂組成物が得られる。この架橋と同時又は異時に発泡させても良い。
【0022】
基材を構成する樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において他の添加剤を含んでいても良い。その具体例としては、増量剤、架橋剤、酸化防止剤、安定剤、エラストマー、カップリング剤が挙げられる。更に、遮光性フィラー、顔料を含んでいても良い。遮光性フィラーの具体例としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒色無機フィラーが挙げられる。顔料の具体例としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックが挙げられる。
【0023】
基材の幅は、好ましくは0.4~2.0mm、より好ましくは0.45~1.5mm、特に好ましくは0.6~1.2mmである。基材の厚さは、好ましくは0.05mm~1.0mm、より好ましくは0.05~0.4mmである。
【0024】
基材は発泡体であり、その発泡倍率は、好ましくは1.1~3.5倍、より好ましくは1.5~3.0倍である。発泡体の気泡形状は球状であることが好ましい。さらに基材が独立気泡を含むことは、防水性等の特性の点から好ましい。本発明においては、基材中に含まれるボイド径が0.3mm~2.0mmのサイズを排除するように管理した基材が好ましく、より好ましくは0.4mm~1.4mmのサイズを排除するように管理された基材であることが望ましい。また、管理された気泡径とは著しくサイズの異なるボイド(不良気泡)を含んでいない基材であることが好ましい。
【0025】
<粘着剤層>
本発明に用いる粘着剤層は特に限定されない。粘着剤層を構成する粘着剤組成物としては、例えばアクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系等公知の様々な粘着剤組成物を使用できる。中でも、耐熱性、耐衝撃性、接着力、防水性の点からアクリル系粘着剤組成物が好ましく、粘着剤層は(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むことが好ましい。
【0026】
アクリル系粘着剤組成物の構成成分は特に限定されない。アクリル系粘着剤組成物は、通常、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体の主成分として用いて得られるアクリル系ポリマーを含む。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸C2-10アルキルエステルがより好ましい。
【0027】
アクリル系ポリマーを構成する単量体として、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステルを適当量用いることが好ましい。この(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステルは、狭額縁接着性、耐荷重性、加工性、狭額縁耐湿熱荷重性を向上する。(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステルの量は、アクリル系ポリマー100質量%中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3~15質量%である。この範囲の下限値は、狭額縁接着性、耐荷重性、加工性、狭額縁耐湿熱荷重性の点で意義がある。また上限値は、各種評価を実施する際の粘着テープの初期貼付け性の点で意義がある。
【0028】
アクリル系ポリマーを構成する単量体として、接着力向上又は凝集力向上の為に、極性基含有単量体や多官能性単量体等の各種共重合性単量体を用いても良い。2種以上の共重合性単量体を組み合わせて用いても良い。更に、極性基含有単量体や多官能性単量体と反応し得る架橋剤を配合して架橋構造を形成させても良い。また、シランカップリング剤や酸化防止剤等の添加剤を配合しても良い。
【0029】
極性基含有単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有単量体又はその無水物(無水マレイン酸等);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等のアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のグリシジル基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有単量体;2-ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート等のリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有単量体;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有単量体;が挙げられる。中でも、アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体、アクリル酸ヒドロキシブチル等の水酸基含有単量体が好ましい。
【0030】
カルボキシル基含有単量体は、狭額縁接着性、耐荷重性、加工性、狭額縁耐湿熱荷重性等の特性を向上する。カルボキシル基含有単量体の量は、アクリル系ポリマー100質量%中、好ましくは10~20質量%、より好ましくは10~12質量%である。これら範囲の下限値は、狭額縁接着性、耐荷重性、加工性、狭額縁耐湿熱荷重性の点で意義がある。また上限値は、各種評価を実施する際の粘着テープの初期貼付け性の点で意義がある。
【0031】
水酸基含有単量体は、狭額縁接着性、耐荷重性、加工性、狭額縁耐湿熱荷重性等の特性を向上する。水酸基含有単量体の量は、アクリル系ポリマー100質量%中、好ましくは0.01~2.0質量%、より好ましくは0.05~0.15質量%である。これら範囲の上限値は、粘着テープの加熱・湿熱雰囲気下での経時変化を抑制して、十分な狭額縁接着性、耐荷重性、加工性、狭額縁耐湿熱荷重等の特性を維持する点で意義がある。
【0032】
粘着剤層の厚さは、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~100μmである。
【0033】
粘着剤層は、例えば、粘着剤組成物を架橋反応させることにより形成できる。すなわち粘着剤組成物を基材上に塗布し、加熱により架橋反応させて基材上に粘着剤層を形成出来る。また、粘着剤組成物を離型紙又はその他のフィルム上に塗布し、加熱により架橋反応させて粘着剤層を形成し、この粘着剤層を基材の片面又は両面に貼り合せることも出来る。粘着剤組成物の塗布には、例えば、ロールコーター、ダイコーター、リップコーター等の塗布装置を使用できる。塗布後に加熱する場合は、加熱による架橋反応と共に粘着剤組成物中の溶剤も除去できる。なお、粘着剤層は粘着付与樹脂を含有しないことが好ましい。
【0034】
<粘着テープ>
本発明の粘着テープは、基材の片面又は両面に粘着剤層を有する。粘着剤層は基材の片面だけに形成しても良いが、両面に形成して両面粘着テープとすることが好ましい。
【0035】
本発明の粘着テープの0.3~5.0MPaの範囲内で圧縮した際の接着時圧縮変形率は0~-10%であり、好ましくは0~-8%である。また、0.3~5.0MPaの範囲内で圧縮した後の接着時圧縮変形率の維持率は、好ましくは±3%以内、より好ましくは±2%以内である。
【0036】
本発明の粘着テープは、最低損失正接が50~100℃の範囲内にあり、最低損失正接と150℃損失正接の差が1.5×10-1以下であることが好ましい。最低損失正接が50~100℃の範囲内にあることは、動的接着力と剥離変位の点で意義がある。また、最低損失正接と150℃損失正接の差が1.5×10-1以下であることは、接着時圧縮変形率と動的接着力と剥離変位の点で意義がある。
【0037】
本発明の粘着テープの貯蔵弾性率変化点αは、好ましくは100℃以上である。また、毎分1mmで引っ張った際の荷重-変位曲線において、基材の層間破壊がなく、最大荷重値が40N/cm以上であり、剥離変位が2.0mm以下であることが好ましい。
【0038】
本発明の粘着テープのJIS K-7181に準じた圧縮強度測定で測定される40%圧縮強度は、好ましくは2MPa以上、より好ましくは2~5MPaである。
【0039】
以上説明した各物性値の具体的な測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0040】
本発明の粘着テープは、0.1~5.0MPaと非常に高い圧力でプレスすることが可能である。特に、その寸法安定性から細幅粘着テープに適している。したがって、そのような特性が必要な分野において様々な用途に有用である。具体的には、構造接着用粘着テープ、電子機器接着用粘着テープとして非常に有用である。
【実施例
【0041】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。以下の記載において「部」は質量部、「%」は質量%を意味する。
【0042】
<粘着剤層の製造例1~3>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた反応装置に、表1に示す量(%)の成分(A1)~(A5)と、酢酸エチル、連鎖移動剤としてn-ドデカンチオール及び過酸化物系ラジカル重合開始剤としてラウリルパーオキサイド0.1部を仕込んだ。反応装置内に窒素ガスを封入し、攪拌しながら窒素ガス気流下で68℃、3時間、その後78℃、3時間で重合反応させた。次いで、室温まで冷却し、酢酸エチルを添加した。これにより、固形分濃度30%のアクリル系共重合体(A)を得た。
【0043】
各アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び理論Tgを表1に示す。この重量平均分子量(Mw)は、GPC法により、アクリル系共重合体の標準ポリスチレン換算の分子量を以下の測定装置及び条件にて測定した値である。
・装置:LC-2000シリーズ(日本分光株式会社製)
・カラム:Shodex KF-806M×2本、Shodex KF-802×1本
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/分
・カラム温度:40℃
・注入量:100μL
・検出器:屈折率計(RI)
・測定サンプル:アクリル系ポリマーをTHFに溶解させ、アクリル系ポリマーの濃度が0.5質量%の溶液を作製し、フィルターによるろ過でゴミを除去したもの。
【0044】
理論Tgは、FOXの式により算出した値である。
【0045】
【表1】
【0046】
表1中の略号は、以下の通りである。
「MA」:メチルアクリレート
「2-EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート
「BA」:n-ブチルアクリレート
「AA」:アクリル酸
「4-HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート
「Vac」:酢酸ビニル
【0047】
そして、各アクリル系共重合体(A)の固形分100部に対し、架橋剤(B)として東ソー株式会社製のイソシアネート系架橋剤(コロネート(登録商標)L-45E、45%溶液)0.04部、シランカップリング剤(C)として信越化学工業社製のシランカップリング剤(商品名KBM-403)0.1部、酸化防止剤(D)としてBASF社製の酸化防止剤(イルガノックス(登録商標)1010)0.1部を加えて混合し、粘着剤組成物を調製した。次いで、110℃で溶媒を除去・乾燥すると共に架橋反応させて、粘着剤組成物をシリコーン処理された離型紙上に乾燥後の厚みが0.075mmになるように塗布した。
【0048】
<実施例1>
まず、エチレン-酢酸ビニル共重合体含むポリエチレン(PE)系発泡体からなる基材(厚さ=0.15mm、引張弾性率=46.1N/mm、曲げモーメント(MD方向)=16gf/cm、(TD方向)=17gf/cm、発泡倍率=1.9、密度=544kg/m)であって、ボイド(不良気泡)を含んでいない基材を用意した。そして、この基材の両面をコロナ放電処理し、基材の両面に製造例1で得た離型紙上の粘着剤層を貼り合せ、40℃で3日間養生して、両面粘着テープを得た。
【0049】
<実施例2及び3>
粘着剤層として、製造例2及び3で得た粘着剤層を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0050】
<比較例1>
基材として、PE系発泡体(厚さ=0.2mm、引張弾性率=21.0N/mm、曲げモーメント(MD方向)=3gf/cm、(TD方向)=4gf/cm、発泡倍率=3、密度=330kg/m)を使用し、粘着剤層の乾燥後の厚みが0.05mmであること以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0051】
<比較例2>
基材として、PE系発泡体(厚さ=0.15mm、引張弾性率=23.7N/mm、曲げモーメント(MD方向)=7gf/cm、(TD方向)=8gf/cm、発泡倍率=1.8、密度=560kg/m)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0052】
実施例及び比較例の基材の引張弾性率、並びに基材及び粘着テープの曲げモーメントは、以下の方法により測定した値である。各測定値を表2に示す。
【0053】
(引張弾性率)
基材を幅(W)10mm、長さ70mmの短冊状(長辺がMD方向)に裁断し、これを試験片とした。そして、厚さを1/100ダイヤルゲージ(N=5)で測定し、5点の平均値を厚さ(t)とし、以下の式から試験片の断面積(S)を求めた。
断面積S(mm)=t×W
t:厚さ(mm)
W:幅(mm)
【0054】
JIS K7161 2014に基づき、市販の引張試験装置(東洋精機製作所社製、装置名ストログラフV-10C、フルスケール50N)のチャック間隔(L)を20mmに設定し、試験片の上端及び下端をチャックした。その後、引張速度10mm/分で引張り、引張荷重-変位曲線を得た。得られた引張荷重-変位曲線の変位が0.05mm及び0.25mmの引張荷重から直線式を求めた。得られた直線式から引張荷重F=10Nの時の変位x(mm)を求め、下記の式より基材の腰の指標となる引張弾性率を求めた。
引張弾性率(N/mm)=(F/S)/(x/L)
F:引張荷重=10(N)
S:断面積(mm
x:引張荷重=10Nの時の変位(mm)
L:チャック間隔=20(mm)
【0055】
なお、各直線式及び引張弾性率は以下の通りである。
実施例1~3:直線式 y=3.6667x+0.0767、引張弾性率 46.1N/mm
比較例1:直線式 y=1.2632x-0.0432、引張弾性率 21.0N/mm
比較例2:直線式 y=2.1026x+0.1349、引張弾性率 23.7N/mm
【0056】
(曲げモーメント)
基材(又は両面粘着テープ)11を幅38mm、長さ50mmの短冊状に裁断し、これを試験片とした。得られた試験片を図1に示すように4本の端子12に挟み込んだ。そして、JIS P8125に基づき、市販のテーバー剛性度試験機(東洋精機製作所社製)の試験時に稼働する部分に設置し、上下10gの重りを振り子へ取り付け、曲げ速度3°/sec、曲げ角度15°の時の目盛を読み、これを測定値とした。そして、この測定値を以下の計算式に代入し、MD方向及びTD方向の曲げモーメント(M)を算出した。
曲げモーメント(gf/cm)=38.0nk/w
n:目盛の読み(10gの重りの時は1)
k:一目盛当りのモーメント(gf/cm)
w:試験片の幅
【0057】
【表2】
【0058】
<評価試験>
実施例及び比較例で得た両面粘着テープを、以下の方法で評価した。結果を表3~6に示す。
【0059】
(接着時圧縮変形率)
実施例及び比較例で得た両面粘着テープを、10mm×10mmの正方形状に加工し、厚さ75μmの白色PETフィルムで両側から挟み込み、プレス機にて加圧した。この際、粘着テープへ実際に加わる圧力が、0.3MPa、0.5MPa、1.0MPa、1.5MPa、2.0MPa、4.0MPa、5.0MPaとなる各条件で加圧した。この加圧後5分以内に、キーエンス社製レーザーマイクロスコープVK-X260にてテープ断面を観察し厚さを測定した。そして下記式により、接着時圧縮変形率を算出した。
(接着時圧縮変形率)=(加圧前の厚さ-加圧後の厚さ)/(加圧前の厚さ)×100[%]
【0060】
(接着時圧縮変形率の維持率)
接着時圧縮変形率を測定した各両面粘着テープを23℃、50%RH下にて24時間保存した。その後、キーエンス社製レーザーマイクロスコープVK-X260にてテープ断面を観察し厚さを測定した。そして下記式により、接着時圧縮変形率の維持率を算出した。
(接着時圧縮変形率の維持率)=(加圧後24時間保存した際の厚さ-加圧直後の厚さ)/(加圧直後の厚さ)×100[%]
【0061】
(貯蔵弾性率変化点α、最低損失正接、150℃損失正接)
実施例及び比較例で得た両面粘着テープを、厚さが2mmになるまで重ね合せ、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメントジャパン(株)製、RDA-III)を用いて、冶具はパラレルプレートφ8mm、周波数10Hz、測定温度-50℃~150℃、昇温速度10℃/分の条件で動的粘弾性を測定し、図2に示すようなマスターカーブを得、貯蔵弾性率変化点α、最低損失正接、150℃損失正接を得た。
【0062】
(荷重-変位曲線の最大荷重と変位)
実施例及び比較例で得た両面粘着テープを10mm×10mmのサイズに裁断し、一方の離型紙を剥離した。そして図3に示すように、SUS304製T字治具32に両面粘着テープ31を貼り合せ、次いでもう一方の離型紙を剥離し、長さ125mm、幅50mm、2.0mm厚のガラス板33に貼り合せた。0.5MPaで10秒間加圧し、その後5分以内に23℃、50%RHの雰囲気下で、上方向に1mm/分の速度で引張り、荷重-変位曲線を得た。得られた曲線から最大荷重と、貼り合せ部分がはがれた時の変位mmを測定した。
【0063】
(40%及び50%圧縮強度)
実施例及び比較例で得た両面粘着テープを、厚さが12mmになるまで重ね合せ、圧縮強度測定装置((株)島津製作所製、AG-20kNX)を用い、測定(解析)ソフトはトラペジウムX、測定モードはシングルの条件で、JIS K-7181に準じ0~50%の圧縮強度を測定し、マスターカーブを作成し、40%及び50%圧縮強度を得た。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
<評価>
表3~6の評価結果から明らかなように、実施例1~3の両面粘着テープは、40%及び50%圧縮強度に関係なく全ての特性が優れていた。
【0068】
比較例1及び2の両面粘着テープは接着時圧縮変形率が大きいので、例えば図4(A)に示すように、加圧工程における両面粘着テープ41の厚さの寸法変化によってカバーパネル42と筐体43のギャップGが大きくなり、一体感が低下し、本来の外観が大幅に損なわれる恐れがある。また、比較例1及び2の両面粘着テープは0.1MPa~5.0MPaの各圧力における接着時圧縮変形率の差が大きいので、ギャップGを予測してカバーパネル42と筐体43を設計することは困難である。
【0069】
比較例1の両面粘着テープは接着時圧縮変形率の維持率が大きい(変形を維持できない)ので、ギャップGを予測してカバーパネル42と筐体43を設計しても、例えば図4(B)に示すようにカバーパネル42が筐体43から飛び出してしまう恐れがある。
【0070】
比較例1及び2の両面粘着テープは貯蔵弾性率変化点αが100℃以下なので、ギャップGを予測してカバーパネル42と筐体43を設計することがより困難である。また比較例1の両面粘着テープは引張力による荷重-変位曲線の最大荷重が低いので、引張り力によって剥がれ易い傾向にある。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の粘着テープは、40%及び50%圧縮強度に関係なく接着時圧縮変形率が小さいので、そのような特性が必要な分野において、様々な用途に利用可能である。特にスマートフォン、タブレット端末等の電子機器の用途において好適に使用できる。具体的には、筐体とカバーパネルとの固定や車載用LCDと筐体の固定等に使用できる。
【符号の説明】
【0072】
11 基材(又は両面粘着テープ)
12 端子
31 両面粘着テープ
32 SUS304製T字治具
33 ガラス板
41 両面粘着テープ
42 カバーパネル
43 筐体
G ギャップ
図1
図2
図3
図4