(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】クロス捲きパッケージを生産する繊維機械のワークステーションにおける綾振り三角形領域に配置された機械式糸貯留装置用糸ガイドプーリー
(51)【国際特許分類】
B65H 57/14 20060101AFI20220829BHJP
B65H 54/06 20060101ALI20220829BHJP
D01H 13/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B65H57/14
B65H54/06
D01H13/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017218133
(22)【出願日】2017-11-13
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】10 2016 121 746.8
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリーザベト クラツィンスキー
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10354588(DE,A1)
【文献】実公昭48-21144(JP,Y1)
【文献】実開昭58-114262(JP,U)
【文献】実開平01-126375(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00 - 54/553
B65H 57/00 - 57/28
B65H 59/00 - 59/40
D01H 1/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロス捲きパッケージ(19)の捲き取りに際して、綾振りによって発生する糸の捲き取り速度の変化を補償する、クロス捲きパッケージ製造用繊維機械のワークステーション(10)における綾振り三角形(9)の領域に配置された機械式糸貯留装置(4)であって、
前記機械式糸貯留装置(4)は、入口側の固定式糸ガイドプーリー(38)、可動式糸ガイドプーリー(36)および出口側の固定式糸ガイドプーリー(39)を有し、
前記入口側の固定式糸ガイドプーリー(38)および前記可動式糸ガイドプーリー(36)は、それぞれV字形に設計された糸走行面を有し、
かつ、通過する糸から横方向の力を受けず、
前記出口側の固定式糸ガイドプーリー(39)が、U字形に形成された糸ガイド溝(32)が設けられた糸走行面(7)を有し
、前記糸ガイド溝(32)の上部には、垂直に立つサイドエッジが形成されており、該サイドエッジは、通過する糸が綾振り中に前記糸ガイド溝(32)から外れることを防止するものであって、前記出口側の固定式糸ガイドプーリー(39)が、前記綾振り三角形(9)の頂点となることを特徴とする、機械式糸貯留装置(4)。
【請求項2】
U字形の糸ガイド溝(32)の幅(B)と深さ(T)が等しくなるように構成されている、請求項1に記載された機械式糸貯留装置(4)。
【請求項3】
U字形の糸ガイド溝(32)の幅(B)と深さ(T)が異なっている、請求項1に記載された機械式糸貯留装置(4)。
【請求項4】
糸ガイド溝(32)の幅(B)が糸ガイド溝(32)の深さ(T)よりも大きい、請求項3に記載された機械式糸貯留装置(4)。
【請求項5】
糸ガイド溝(32)の幅(B)が糸ガイド溝(32)の深さ(T)よりも小さい、請求項3に記載された機械式糸貯留装置(4)。
【請求項6】
糸ガイド溝(32)の幅(B)が3~8mmである、請求項1に記載された機械式糸貯留装置(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロス捲きパッケージの捲き取りにおいて、綾振りによって発生する糸の捲き取り速度の変化を補正するために、クロス捲きパッケージ製造用繊維機械のワークステーションにおける綾振り三角形領域に配置された機械式糸貯留装置用糸ガイドプーリーに関するものです。
【0002】
オープンエンドロータ紡績機として設計されている、クロス捲きパッケージ製造用繊維機械のワークステーションには、知られているように、一定の供給速度で糸を生成するオープンエンド紡績装置、生成された糸がパッケージとして捲き取られ、クロス捲きパッケージとなるように綾振りさせる捲き取り装置、そして綾振りによって発生する糸の捲き取り速度および張力の変動を補正する糸貯留装置がそれぞれ搭載されています。
【0003】
これに関連して、繊維機械の構成においては、空圧式および機械式に作動する糸貯留装置が知られていますが、機械式糸貯留装置にはその形態において部分的に大きな違いがあります。
【0004】
機械式糸貯留装置は、例えば、定義により作用させることができ、比較的複雑な制御手段を採用することができます。しかし、機械的な糸貯留装置は、糸の捲き取り速度の変化に応じて糸によって偏向されるばねエレメントを有するに過ぎません。
【0005】
例えばDE 24 54 917 C2に記載されているように、制御可能な機械式糸貯留装置は、通常、円すい形クロス捲きパッケージにおいて採用されています。すなわち、そのような糸貯留装置によって、円すい形のクロス捲きパッケージの捲き取りの際に発生する、部分的には非常に大きな糸の捲き取り速度の変動は、オープンエンドロータ紡績装置の一定の糸供給速度に対して補正されます。
【0006】
これらの知られた糸貯留装置には、通常、糸経路に配置された糸ガイドプーリーがそれぞれ3個搭載されており、それらの2つは固定式に配置され、第3のプーリーは可動式としてスイベルレバーに取り付けられています。すなわち、第3の糸ガイドプーリーは、紡糸工程中に必要に応じて移動し、通常の糸経路の長さを一時的に延長します。
【0007】
この知られた糸貯留装置の糸ガイドプーリーの回転軸は、捲き取られる糸の綾振れ面に対して垂直に配置されており、その走行面にV字型の糸ガイド溝をそれぞれ有しています。
【0008】
綾振りによって発生する糸の捲き取り速度の変化を板ばねエレメントによって補正する機械式糸貯留装置は、例えばDE 28 03 378 C2に記載されています。
特に円筒形クロス捲きパッケージにおいて採用されるこの知られた糸貯留装置は、それぞれ板ばねエレメントが搭載されており、そしてその端部には捲き取られる糸の経路に配置された糸ガイドプーリーが固定されています。
【0009】
例えばDE 28 03 378 C2に記載された糸貯留装置においては、2つのスチール製クランプをホルダーとして繊維装置のフレームに固定され、ローラキャリアを介して糸ガイドプーリーと接続された板ばねが提案されています。
さらに、ホルダーとローラキャリアとの間の中央部では、板バネは、制御不能な振動の発生を防止するためのゴム製エレメントに組み込まれています。
これらの機械式糸貯留装置においても、糸ガイドプーリーの回転軸は、捲き取られる糸の綾振れ面に対して垂直に配置されていますが、DE 28 03 378 C2には糸ガイドプーリー走行面の設計については記載されていません。
【0010】
さらに、DE 10 2009 021 066 A1には、同様に機械式糸貯留装置が搭載されたオープンエンドロータ紡績機のワークステーションが記載されています。
この知られた糸貯留装置にも、糸経路領域に配置された3つの糸ガイドプーリーが搭載されています。
糸ガイドプーリーのうち2つは固定式であり、例えばパラフィン加工装置のハウジングに設置されており、板ばねを支持する第3のプーリーは可動式としてスイベルレバーに取り付けられています。
糸切れ後の糸貯留装置への糸通しを容易にするため、この知られた糸貯留装置においては、糸ガイドプーリーの回転軸は捲き取られる糸の綾振り面に対して平行になっています。
糸ガイドプーリーの走行面は、どれもV字形の糸ガイド溝となっています。
【0011】
この知られた機械式糸貯留装置は、例えば着色パッケージのような、糸張力が比較的低いクロス捲きパッケージでも、そして捲き取り工程における糸張力がはるかに高い、いわゆる粗紡においても採用することができます。
【0012】
しかしながら、現実においては、そのように構成された糸貯留装置においては、糸が捲き取り時に綾振りガイドによって、糸貯留装置の出口側糸ガイドプーリーの領域において糸はその進行方向に対して横方向の影響を受けることがわかりました。すなわち、そのような糸貯留装置では、V字形糸ガイド溝にある糸が綾振りによって大きく横方向にずれるか、または出口側糸ガイドプーリーのV字形糸ガイド溝から外れてしまうリスクがあります。
【0013】
そのような場合は、捲き取る対象の糸が、糸貯留装置の出口側糸ガイドプーリーの糸ガイド溝で正しくガイドされておらず、多くの場合、糸は隣接する部品に接触し、これらの部品が経時的に破損し、交換が必要となります。
【0014】
前述の現在における最新技術を出発点として、本発明の課題は、その糸ガイドプーリーの回転軸が糸の綾振り面に平行に配置され、捲き取られる糸が横方向の力に影響される場合でも、綾振りされる糸が糸ガイドプーリーの糸ガイド溝に確実にガイドされる、機械式糸貯留装置を開発することです。
【0015】
この課題は、本発明によれば、U字形に設計された糸ガイド溝が組み込まれた糸走行面を有する糸ガイドプーリーによって解決できます。
【0016】
本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項の内容となっています。
【0017】
本発明に基づく糸ガイドプーリーには、そのような形態の糸ガイド溝は、綾振りの間においても通過する糸が確実にガイドされるという長所があります。つまり、U字形に設計された糸ガイド溝によって、U字形糸ガイド溝によって、綾振りに起因する横方向の力の影響下においても、
通過する糸が糸ガイドプーリーの糸ガイド溝から外れ、捲き取り装置の取付部品に当たることを防止できます。
糸ガイドプーリーの本発明に基づくの構成により、移動中の糸が容易に走行糸が常に機械式糸貯留装置の出口側糸ガイドプーリーのU字形糸ガイド溝に適切にガイドされることを簡単に保証することができます。
【0018】
有利な実施形態では、U字形の糸ガイド溝の幅と深さが等しくなるように設計されます。
【0019】
まず、糸切れの後、比較的容易に糸を糸ガイド溝に通すことが可能で、さらに捲き取り工程中に、通された糸が確実に糸ガイド溝にとどまるような、容易に実現可能な実施形態を達成することができます。
【0020】
ただし、別の実施形態においては、U字形糸ガイド溝の幅と深さが異なるようにすることも可能です。
つまり、糸ガイド溝の幅と深さは、使用される糸の素材およびそれが処理される紡糸条件に応じて、常に要件に適した条件となるように調整することができます。
【0021】
例えば毛足の長い糸等、困難を伴う糸では、糸ガイドプーリーの糸走行面に組み込まれた糸ガイド溝の幅は、その深さよりも大きく設定することができます。
ただし、糸ガイド溝は、その幅がその深さよりも小さくなるように構成することもできます。
【0022】
U字形糸ガイド溝の有利な形態は、結局のところは、既に説明した通り、クロス捲きパッケージを製造する繊維装置で加工される素材に応じて決定することが望ましいと言えます。
【0023】
有利な実施形態においては、プーリーの糸走行面組み込まれた糸ガイド溝の幅が3~8mmになっています。
そのような形態により、走行する糸がいつでも容易にかつ確実に糸ガイド溝に収まるようになります。
すなわち、糸切れの後には、糸貯留装置の糸ガイドプーリーの領域において、新しい糸が常に迅速かつ確実に再配置され、その際、特に移動する糸を糸貯留装置の出口側糸ガイドプーリーのU字形糸ガイド溝へ問題なく通すことができます。
【0024】
本発明は、次の図に示される実施例を基に詳細に説明されます。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下のものが示されます。
【
図1】プーリーの回転軸が糸の横断面に平行に配置された綾振り三角形の前に配置され、その糸ガイドプーリーの回転軸が糸の綾振り面に対し平行に配置された、機械式糸貯留装置を有するオープンエンドロータ紡績機のワークステーションの簡略化された正面斜視図。
【
図2】機械式糸貯留装置を有するオープンエンドロータ紡績機において、排出側の糸ガイドプーリー本発明に基づき構成された、ワークステーションの捲き取り装置の正面図。
【
図3】大規模な形態で本発明に基づき大規模に構成された機械式糸貯留装置の糸ガイドプーリー。
【
図4】従来技術に基づく機械式糸貯留装置のプーリー。
【0026】
図1は、クロス捲き(綾巻き)パッケージを製造する繊維装置、この例においてはオープンエンドロータ紡績機のワークステーション10の非常に簡略化された正面の見取り図です。
よく知られているように、このようなオープンエンドロータ紡績機には、一列に配置された同じ構造のワークステーション10を多数有しています。ワークステーション10においては、オープンエンドロータ紡績装置12を用いて、紡糸缶(図示せず)に備蓄されたいわゆるスライバーから糸17が紡糸され、その後、捲き取り装置18によってクロス捲きパッケージ19が作成されます。
【0027】
そのようなワークステーション10の巻き取り装置18には、この目的のために、それぞれクロス捲きパッケージ19の回転可能なホルダーへの捲き取りフレーム8、例えば個別のモータによって駆動される、クロス捲きパッケージに捲き取られる糸17の綾振りをおこなうための綾振りガイド1を有する綾振り装置22、そしてクロス捲きパッケージ19を摩擦によって回転させための捲き取り駆動装置23を搭載しています。その際、ボビン駆動装置23は、モーター駆動装置27に接続されたボビン駆動ローラ14を有しています。
【0028】
捲き取り工程中において綾振りによって発生する糸の捲き取り張り力および速度の変化を補正するために、ワークステーション10にはそれぞれ糸貯留装置4が搭載されています。示されたケースにおいては、糸貯留装置4は、機械的糸貯留装置として設計され、パラフィン加工装置5の直前に配置されます。
【0029】
そのようなオープンエンドロータ紡績機の個々のワークステーション10には、ワークステーション10の適切な稼動を可能にするために必要な、様々な糸ハンドリングおよび糸処理装置が搭載されています。
【0030】
例えば、ワークステーション10には、いわゆる糸監視装置3と糸引出し装置20が搭載されています。
ワークステーション10には、さらに、例えば糸切れの際にクロス捲きパッケージ19に捲き取られた糸17を空圧式に取り上げ、紡糸を継続するためにオープンエンドロータ紡績装置12へ差し出すように設計された吸引ノズル21が搭載されています。
【0031】
図1に示されるように、糸引出し装置20、吸引ノズル21、綾振りガイド1、および捲き取り装置駆動ローラー14は、それぞれ個別の駆動装置24、25、26、27によって駆動されます。ここでは、個々の駆動装置24、25、26、27は、それぞれ制御ケーブル28、29、30、31を介してワークステーション用コンピュータ6に接続されており、そして好ましくはこれがさらにバスシステム7を介して、オープンエンドロータ紡績機の中央制御ユニット(図示せず)に接続されています。
【0032】
図からも分かるように、糸経路においてパラフィン加工装置5の直前に配置された機械式糸貯留装置4には、例えばパラフィン加工装置5のハウジングに取り付けられた、2つの固定式糸ガイドプーリー38、39のハウジング、および可動式の紡糸行程中、糸17によって影響を受ける糸ガイドプーリー36が搭載されています。
ここで、糸ガイドプーリー36は、板ばねエレメント34を介して、例えばスラストピストントランスミッション37等の駆動手段によって一定範囲での回転が可能な可動式調整レバー35と接続されています。すなわち、調整レバー35および糸貯留装置4の糸ガイドプーリー36を、選択に基づき、糸継ぎ位置(図示せず)または
図1に示す作動位置Iに配置することができます。
【0033】
図2は、
図1において非常に簡略化されて示されたオープンエンド紡績機のワークステーション10の捲き取り装置18の正面図です。
【0034】
図からも分かるように、オープンエンド紡績装置12で生成され、糸引出し装置20から一定の速度で糸送り方向Fに供給される糸17は、クロス捲きパッケージ19への経路において、まず糸貯留装置4と通り、次にパラフィン加工装置5のパラフィン11の上を滑ります。
【0035】
そのようなパラフィン加工装置5は、すでに以前から様々な実施形態として知られており、それらの構造と機能に関する詳細な説明は、ここでは省略します。
【0036】
パラフィン加工装置5に続き、綾振りガイド1によって向きが調整された糸17は、糸ガイド2の上を滑り、パッケージ駆動用ローラー14からの摩擦によって回転するクロス捲きパッケージ19によって捲き取られます。
【0037】
図からも分かるように、機械式糸貯留装置4には、パラフィン加工装置のハウジングに取り付けられた2つの固定式糸ガイドプーリー38、39およびは板ばねエレメント34を介して調整レバー35に接続された可動式糸ガイドプーリー36が搭載されています。
【0038】
ここでは、固定式糸ガイドプーリー38は、糸貯留装置4の入り口側部品となり、同じく固定式の糸ガイドプーリー39は糸貯留装置4の出口側部品として機能し、同時にいわゆる綾振り三角形9の頂点ともなります。すなわち、糸17が、クロス捲きパッケージ19への捲き取りの際に、綾振りガイド1によってクロス捲きパッケージ19の両端の間を交互に移動し、これにより
図2に示されるような綾振り三角形9が形成されます。
【0039】
その際、綾振り三角形9は、糸ガイドプーリー39をその起点とし、糸17がクロス捲きパッケージ19に捲き取られる箇所をその終点とします。
容易に想像が可能なように、糸17の綾振りによって、糸ガイドプーリー39とクロス捲きパッケージ19における糸17の捲き取り箇所の間の距離の変化が連続的に発生し、結果として糸の張力および糸の捲き取り速度が定常的に変化します。
この糸捲き取り速度の変化は、糸貯留装置4の糸ガイドプーリー36によって補償されますが、それは、糸ガイドプーリー36が前方または後方にずれ、それにより糸の捲き取り速度が補償されることによります。
【0040】
糸ガイドプーリー38、36は紡糸中、通過する糸17から横方向の力は受けず、回転軸15、16に直交する糸の力のみがかかるため、それぞれV字形に設計された糸の走行面を有します。すなわち、糸ガイドプーリー38および36においては、糸17はV字形に設計された溝によってガイドされます。
【0041】
糸ガイドプーリー39は、すでに説明した通り、綾振り三角形9の頂点であり、さらに、移動する糸17は回転軸13に対して垂直の糸による力のみならず、クロス捲きパッケージ19への捲き取り時に糸17の綾振りによって発生する横方向の力が加わります。すなわち、紡糸中の、綾振りガイド1によって綾振りされる糸17は、糸ガイドプーリー39の中心から左または右へ交互に移動する傾向があり、その際、例えば糸ガイドプーリー39の側から外れるか、または隣接する部品に当たります。
【0042】
糸17を糸貯留装置4の糸ガイドプーリー39の領域で確実にガイドするためには、糸ガイドプーリー39は本発明に基づき、U字形に設計された糸ガイド溝32を有する、糸走行面7が設けられています。
【0043】
すなわち、糸ガイドプーリー39には、糸ガイド溝32の上部に垂直に立つサイドエッジが形成されており、これにより通過する糸17が綾振り中に糸ガイドプーリー39の糸ガイド溝32から外れ、隣接する部材に当たるのを防止します。
【0044】
図4に、機械式糸貯留装置に従来から組み込まれている、ただし、糸の横方向の力に敏感な糸ガイドプーリー40が示されています。つまり、
図4が示しているのは、現時点での技術水準に基づく糸ガイドプーリーと言えます。
示されるように、回転軸が41で示された糸ガイドプーリー40には、紡糸行程中、最も深い領域を糸17が通過するV字形の糸走行面が形成されています。
容易に想像できるように、そのような糸ガイドプーリー40では、横方向の力が加わると、糸17がV字形の糸走行面から横方向にずれるか、または外れてしまうリスクが常にあります。
【0045】
図3には、本発明に基づく形態の糸ガイドプーリー39が詳細に示されています。
図からも分かるように、糸ガイドプーリー39では、回転軸13および回転軸13に平行となっている糸走行面7を確認することができます。
糸走行面7には、U字形の糸ガイド溝32が形成されており、示されるように、その底部において糸17が確実にガイドされます。
その際、糸ガイド溝32の幅Bと深さTは、例えば、捲き取られる材料およびそれが処理される紡糸条件に応じて異なる設定を行うことができます。
例えば、糸ガイド溝32の幅Bと深さTが同じになるように、糸ガイド溝32を設計することが可能です。
【0046】
ただし、別の実施形態においては、U字形糸ガイド溝32の幅Bと深さTが異なるように設計ことも可能です。つまり、U字形糸ガイド溝32の幅Bは、糸ガイド溝の深さTよりも大きく設定されることも、または小さく設定されることも考えられます。
【0047】
本発明による装置の機能:
紡糸または捲き取り工程中においては、オープンエンドロータ紡績装置12によって製造された糸17は、糸引き出し装置20によって一定の糸送り速度でオープンエンドロータ紡績装置12から引き出され、さらに捲き取り装置18へ搬送され、そこで円筒形クロス捲きパッケージ19として完成します。クロス捲きパッケージ19はその際、捲き取り装置フレーム8に回転可能な状態で取り付けられ、その表面は個別に駆動可能な、一定速度で回転する捲き取り駆動ローラー14に接しており、これが摩擦力によってクロス捲きパッケージ19を駆動します。
すなわち、オープンエンドロータ紡績装置12で作製される糸17は、捲き取り装置18の領域に達すると、クロス捲きパッケージ19のクロスする表面として捲き取られるように綾振り装置22の綾振りガイド1によって綾振りされます。
【0048】
捲き取り工程の間に、綾振りに基づく糸捲き取り速度の変化が継続的に発生すると、糸引き出し装置20によって一定の糸送り速度で提供される糸17は、パラフィン加工装置5を通過する前に、機械式糸貯留装置4を通り、そこで糸捲き取り速度の変化が補償されます。
機械式糸貯留装置4には、固定式の入口側糸ガイドプーリー38、板ばねエレメント34に配置された可動式糸ガイドプーリー36、および固定式の出口側糸ガイドプーリー39が搭載されています。
【0049】
図1および
図2に示されたように、糸ガイドプーリー36は、板ばねエレメント34を介して旋回可能な調整レバーに接続されており、その作動位置Iにおいては糸17の経路に配置されており、その際、通過する糸17は糸ガイドプーリー36によって僅かに偏向され、糸17は板ばねエレメント34のばねの力によって、糸の引っ張り力に応じた調整がなされます。
【0050】
糸17は、捲き取り工程中、糸ガイドプーリー38、36の領域においては常に糸ガイドプーリー38、36の回転軸15、16に対して直角であり、そのため何ら横向きの力は発生しないため、糸ガイドプーリー38、36はV字形設計の糸走行面を有しており、この糸ガイドプーリー38、36の領域を通過する糸17は比較的確実にガイドされます。
【0051】
しかし、糸貯留装置4の出口側糸ガイドプーリー39の領域では、適正な糸のガイドは、はるかに難しくなります。これは、クロス捲きパッケージ19に捲き取られ、綾振りガイド1によって綾振りされる糸17には、糸ガイドプーリー39の糸走行面において著しい横向きの力がかかるからです。
【0052】
捲き取られる糸17が、知られたように綾振り三角9の起点でもある出口側の糸ガイドプーリー39の領域において、常に確実に糸走行面上でガイドされるために、糸ガイドプーリー39の糸走行面7は、U字形の糸ガイド溝32の形状となっています。
U字形糸ガイド溝32の垂直に立つエッジは、通過する糸17が横向きの力の影響により、糸ガイドプーリー39の糸走行面から外れ、隣接する部品に至ることを防止します。
機械式糸貯留装置4は、捲き取り工程中に綾振りによって発生する糸捲き取り速度の変化を、板ばねエレメント34の端部に配置された糸ガイドプーリー36の対応する移動によって自動的に補償し、クロス捲きパッケージ19に捲き取られる糸17の張力をほぼ一定に保ちます。すなわち、機械的な糸貯留装置4は、ほぼ一定の捲き取り条件を維持し、クロス捲きパッケージ19の端部に向かう綾振りの場合、糸17の捲き取り速度の増大により糸の張力が上昇したり、クロス捲きパッケージ19の中心方向に向かう綾振りの場合、糸17の捲き取り速度が低下により糸の張力が低下することも防止します。