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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】クラッチ付き駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/10 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
F16D27/10 Z
F16D27/10 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017246337
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019113100
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】小見山 和敏
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-242770(JP,A)
【文献】特開2009-174581(JP,A)
【文献】特開平10-136606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 27/10,27/118
H01F 7/06, 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータから動力が伝達されて軸周りに回転することにより外部に対する動作を行う出力軸と、
前記モータの回転の前記出力軸への伝達の切断及び接続を行うクラッチと、
前記クラッチの切断と接続の動作を実行するソレノイドと、
前記モータ、前記出力軸、前記クラッチ及び前記ソレノイドを収容するハウジングと、を備えるクラッチ付き駆動装置であって、
前記ハウジングに第1リブが設けられ、
前記第1リブは、
前記ハウジングの対を成す2つの保持部に保持された状態にある前記ソレノイドに対して前記保持部とは別の位置であって、前記2つの保持部を結ぶ線が作る方向に対して交差する方向に位置し、前記保持された状態のソレノイドに対する他の保持部となるものであり、且つ
前記ソレノイドのコイルの一方の端部が電気的に接続される第1接続部を有する第1接続金具が取り付けられるものである
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記モータのコイルと前記ソレノイドのコイルに給電する第1のリード線と第2のリード線を備える
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記第1接続金具は、前記第1リブに圧入して取り付ける構造である、
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記保持部は2か所であり、
前記他の保持部は1か所である、
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記保持部は、前記ソレノイドをスナップフィット構造で保持し、
前記他の保持部は、前記保持された状態のソレノイドの側面に沿って配置されている、
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記保持部は、前記ソレノイドを平面視における両側から挟んで保持する第1保持部と第2保持部との対で構成され、
前記他の保持部は、前記第1保持部と第2保持部を結ぶ線が作る方向に対して交差する方向に位置する、
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記第1リブは、前記保持された状態のソレノイドのコイルの一方の端部の位置に対応する位置に設けられている、
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記第1リブに取り付けられた状態の前記第1接続金具には第1弾性スイッチ片が電気的に接続され、
前記モータのコイルの一方の端部には前記第1弾性スイッチ片に接するON状態と接しないOFF状態とを取り得る第2弾性スイッチ片が電気的に接続され、
前記出力軸に取り付けられたスイッチカムにより前記第1弾性スイッチ片と第2弾性スイッチ片とのON状態とOFF状態の切り換えが行われて前記モータへの通電及び非通電が切り換わる、
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記ハウジングに第2リブが設けられ、
前記第2リブは、リード線の前記ハウジング内を引き回される部分と前記保持された状態のソレノイドの側面との間に設けられている、
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項10】
請求項9に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記第1リブは前記リード線のハウジング内を引き回される部分に対応する位置に前記引き回されているリード線の位置より側面視における上方に突出する突出部を備え、
前記リード線のハウジング内を引き回される部分は、前記突出部及び前記第2リブに対して前記ソレノイドと反対側の位置に配置されている
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記第2リブの前記ソレノイドと反対側の位置となる前記ハウジング内にコンデンサー等の電気素子を配置する場所を有する、
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のクラッチ付き駆動装置において、
前記出力軸は、プーリと前記プーリに巻き取り可能及び繰り出し可能なワイヤと、を備え、
前記ワイヤの巻き取りは前記モータの動力が前記出力軸に伝達されて行われ、
前記ワイヤの繰り出しは前記モータの動力とは別の動力により行われる、
ことを特徴とするクラッチ付き駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気扇のダンパ開閉用等に用いられるクラッチ付き駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のクラッチ付き駆動装置として、特許文献1に記載されている装置が挙げられる。この装置は、モータから動力が伝達されて軸周りに回転することにより外部に対する動作を行う出力軸と、前記モータの回転の前記出力軸への伝達の切断及び接続を行うクラッチと、前記クラッチの切断と接続の動作を実行するソレノイドと、前記モータ、前記出力軸、前記クラッチ及び前記ソレノイドを収容するハウジングとを備えている。
【0003】
従来の上記装置においては、前記ソレノイドは3か所の保持部(符号56の位置)によって保持されて前記ハウジングに固定されている。具体的には、前記ソレノイドの3か所に保持用の嵌合部を設け、前記ハウジングの3か所に保持用の被嵌合部を設け、ソレノイドの3か所の保持用の前記嵌合部をハウジングの3か所の保持用の前記被嵌合部に嵌めるスナップフィット構造により、前記ソレノイドは前記ハウジングに保持されている。
そして、前記ソレノイド及び前記モータとの電気的接続を取るために設けられる接続金具は、ハウジング内において、前記保持部とは別の場所に設けられた被取付部位に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-242770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の上記装置は、前記ソレノイドが3か所の保持部によるスナップフィット構造によりハウジングに保持されている。そのため、前記ソレノイドの3か所に設ける保持用の嵌合部と、前記ハウジングの3か所に設ける保持用の被嵌合部との互いの位置は、両者が歪無く嵌るように高い位置精度で作る必要がある。しかし、前記3か所の嵌合部と同じく3か所の被嵌合部とを高い位置精度で作ることは容易ではない。その結果、前記3か所の嵌合部と3か所の被嵌合部とが歪んだ状態で嵌り合う場合があり、その場合は無理な力が加わった状態となって保持部(嵌合部と被嵌合部)が壊れやすくなる問題がある。
【0006】
本発明の目的は、ソレノイドをハウジングに保持する保持部が壊れにくいクラッチ付き駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様のクラッチ付き駆動装置は、モータと、前記モータから動力が伝達されて軸周りに回転することにより外部に対する動作を行う出力軸と、前記モータの回転の前記出力軸への伝達の切断及び接続を行うクラッチと、前記クラッチの切断と接続の動作を実行するソレノイドと、前記モータ、前記出力軸、前記クラッチ及び前記ソレノイドを収容するハウジングとを備えるクラッチ付き駆動装置であって、前記ハウジングに第1リブが設けられ、前記第1リブは、前記ハウジングの保持部に保持された状態にある前記ソレノイドに対して前記保持部とは別の位置に設けられ、前記保持された状態のソレノイドに対する他の保持部となるものであり、且つ前記ソレノイドのコイルの一方の端部が電気的に接続される第1接続部を有する第1接続金具が取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
ここで、「ソレノイドに対する他の保持部」における「他の保持部」とは、前記「保持部」に対する補助的な保持を基本的な役割とするものであることを意味する。従って、「他の保持部」は、前記「保持部」の保持力より小さい保持力であり、また保持構造もスナップフィット構造とは異なり、単に接している程度の構造を基本とする。
【0009】
本態様によれば、前記第1リブは、前記ハウジングに前記保持部により保持された状態にあるソレノイドを前記「保持部」とは別の「他の保持部」として保持する役割を成している。従って、このような他の保持部(第1リブ)を設けたことにより、ソレノイドをハウジングに保持する状態を作る前記保持部は、前記「他の保持部(第1リブ)」を前提にして設計することが可能になるので、簡単な構造を採用することができる。言い換えると、ソレノイドを保持する保持部は、例えば2か所にするという簡単な構造を採用することが可能となる。
これにより、ソレノイドをハウジングに保持する保持部に歪などの無理な力が加わる虞が少なくなって、前記保持部が壊れにくくなる効果が得られる。
【0010】
本発明の第2の態様のクラッチ付き駆動装置は、第1の態様において、前記モータのコイルと前記ソレノイドのコイルに給電する第1のリード線と第2のリード線を備えることを特徴とする。
【0011】
前記第1のリード線と第2のリード線を備えるクラッチ付き駆動装置においては、前記リード線の一部又は他の接続用のリード線がハウジング内を引き回される場合がある。
本態様によれば、前記第1リブの前記兼用構造によって生じるスペースを、前記リード線のハウジング内における配設場所として利用できるので、リード線を備えるクラッチ付き駆動装置において装置全体のコンパクト化を実現することができる。
【0012】
本発明の第3の態様のクラッチ付き駆動装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記第1接続金具は、前記第1リブに圧入して取り付ける構造であることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記第1接続金具は前記第1リブに圧入して取り付ける構造であるので、第1接続金具の取付け作業が容易である。
【0014】
本発明の第4の態様のクラッチ付き駆動装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記保持部は2か所であり、前記他の保持部は1か所であることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記保持部は2か所であるので、従来の3か所の保持部(スナップフィット構造)に比して、前記ソレノイドの前記ハウジングへの取付け作業がしやすくなる。また、前記他の保持部は1か所であり、前記保持部で保持されている状態のソレノイドに対する保持であるので、その構造を単純化して前記ソレノイドの前記ハウジングへの取付け作業をしやすくすることが可能となる。
【0016】
本発明の第5の態様のクラッチ付き駆動装置は、第4の態様において、前記保持部は前記ソレノイドをスナップフィット構造で保持し、前記他の保持部は前記保持された状態のソレノイドの側面に沿って配置されていることを特徴とする。
ここで、「スナップフィット構造」とは、弾性力に抗して押し込むことにより押し込まれた位置で前記弾性力を作用した部分によって押さえつけられて前記位置に保持される構造を意味する。また、「前記保持された状態のソレノイドの側面に沿って配置」における「沿って配置」とは、前記スナップフィット構造のような嵌合構造ではなく、単に接する程度の単純な構造であることを意味する。
【0017】
本態様によれば、保持部は2か所のスナップフィット構造であり、前記他の保持部は1か所であって前記保持された状態のソレノイドの側面に沿って配置されている構造である。従って、2か所のスナップフィット構造の「保持部」によって、従来の3か所の保持部(スナップフィット構造)に比して、前記ソレノイドの前記ハウジングへの取付け作業がしやすくなる。
そして、「他の保持部」は、前記の如く強固に保持された状態のソレノイドの側面に対して単に沿って配置されている構造であるので、この「他の保持部」に前記第1接続金具を取り付けるための設計がしやすくなり、その製造もしやすい。
【0018】
本発明の第6の態様のクラッチ付き駆動装置は、第5の態様において、前記保持部は、前記ソレノイドを平面視における両側から挟んで保持する第1保持部と第2保持部との対で構成され、前記他の保持部は、前記第1保持部と第2保持部を結ぶ線が作る方向に対して交差する方向に位置することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記保持部は、前記ソレノイドを両側から挟んで保持する第1保持部と第2保持部との対で構成され、前記他の保持部は、前記第1保持部と第2保持部を結ぶ線が作る方向に対して交差する方向に位置する。従って、前記「他の保持部」は単純な沿う構造であっても、その3か所の相対配置により、前記ソレノイドを押えて保持することができる。
【0020】
本発明の第7の態様のクラッチ付き駆動装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つの態様において、前記第1リブは、前記保持された状態のソレノイドのコイルの一方の端部の位置に対応する位置に設けられていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記第1リブは、前記保持された状態のソレノイドのコイルの一方の端部の位置に対応する位置に設けられている。従って、クラッチ付き駆動装置のコンパクト化が実現しやすくなる。また、前記ソレノイドのコイルの端部と前記第1接続金具の第1接続部との距離が近くなるので半田付け作業がしやすくなる。
【0022】
本発明の第8の態様のクラッチ付き駆動装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つの態様において、前記第1リブに取り付けられた状態の前記第1接続金具には第1弾性スイッチ片が電気的に接続され、前記モータのコイルの一方の端部には前記第1弾性スイッチ片に接するON状態と接しないOFF状態とを取り得る第2弾性スイッチ片が電気的に接続され、前記出力軸に取り付けられたスイッチカムにより前記第1弾性スイッチ片と第2弾性スイッチ片とのON状態とOFF状態の切り換えが行われて前記モータへの通電及び非通電が切り換わることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、前記出力軸に取り付けられたスイッチカムにより前記第1弾性スイッチ片と第2弾性スイッチ片とのON状態とOFF状態の切り換えが行われて前記モータへの通電及び非通電が切り換わる。これにより、必要とする状態なったら出力軸の回転を止めることが可能になり、例えば換気扇のダンパ開閉動作を容易に行うことができる。
【0024】
本発明の第9の態様のクラッチ付き駆動装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか一つの態様において、前記ハウジングに第2リブが設けられ、前記第2リブは、リード線の前記ハウジング内を引き回される部分と前記保持された状態のソレノイドの側面との間に設けられていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、前記第2リブは、前記リード線の前記ハウジング内を引き回される部分と前記保持された状態のソレノイドの側面との間に設けられている。これにより、ハウジング内をリード線が引き回されて配設されても、前記第2リブによってソレノイドのボビンケースに巻かれたコイル部分に前記リード線が触れないようにすることができ、以って断線の発生、ショート等の虞を低減することができる。
【0026】
本発明の第10の態様のクラッチ付き駆動装置は、第9の態様において、前記第1リブは、前記リード線のハウジング内を引き回される部分に対応する位置に前記引き回されているリード線の位置より側面視における上方に突出する突出部を備え、前記リード線のハウジング内を引き回される部分は、前記突出部及び前記第2リブに対して前記ソレノイドと反対側の位置に配置されていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、前記リード線のハウジング内を引き回される部分は、第1リブの前記突出部及び第2リブに対して前記ソレノイドと反対側の位置に配置されている。即ち、第1リブと第2リブの両方によって前記リード線の引き回しをガイドするので、前記ソレノイドのボビンケースに巻かれたコイル部分に前記リード線が触れないようにすることの確実性を高めることができ、以って断線の発生、ショート等の虞を一層低減することができる。
【0028】
本発明の第11の態様のクラッチ付き駆動装置は、第9の態様又は第10の態様において、前記第2リブの前記ソレノイドと反対側の位置となる前記ハウジング内にコンデンサー等の電気素子を配置する場所を有することを特徴とする。
【0029】
クラッチ付き駆動装置は、その性能等によってコンデンサーや抵抗等の電気素子を電気回路に設ける場合がある。
本態様によれば、第2リブを設けたことにより前記コンパクト化が可能となり、そのコンパクト化によって生じるスペースを前記電気素子の設置場所として有効に利用することができる。
【0030】
本発明の第12の態様のクラッチ付き駆動装置は、第1の態様から第11の態様のいずれか一つの態様において、前記出力軸は、プーリと前記プーリに巻き取り可能及び繰り出し可能なワイヤとを備え、前記ワイヤの巻き取りは前記モータの動力が前記出力軸に伝達されて行われ、前記ワイヤの繰り出しは前記モータの動力とは別の動力により行われることを特徴とする。
ここで、「モータの動力とは別の動力」とは、繰り出し方向への弾性力が作用する引っ張りバネや、換気扇のダンパ開閉等の場合における前記ダンパの自重等のように、初期位置に戻ろうとする力を意味する。
【0031】
本態様によれば、例えば換気扇のダンパに前記ワイヤを繋げることで、前記ダンパの開閉を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態を示す図で、クラッチ付き駆動装置の全体構成を表す側断面図。
図2】同実施形態を示す図で、ハウジングカバーを取り外した状態のクラッチ付き駆動装置を表す平面図。
図3】同実施形態を示す図で、ハウジングカバーを取り外した状態のクラッチ付き駆動装置を表す斜視図、
図4】同実施形態を示す図で、ハウジングカバーを取り外した状態のクラッチ付き駆動装置を表す図3中のA-A断面図。
図5】同実施形態を示す図で、図3の状態から内在リード線を取り外した状態を表す斜視図。
図6】同実施形態を示す図で、図5の状態から反時計方向に45°回転させた状態を表す斜視図。
図7】同実施形態を示す図で、クラッチ付き駆動装置のハウジング本体を表す斜視図。
図8】同実施形態を示す図で、クラッチ付き駆動装置のハウジング本体を表す平面図。
図9】同実施形態を示す図で、クラッチをON状態にした場合のクラッチ付き駆動装置を表す側断面図。
図10】同実施形態を示す図で、クラッチをOFF状態にした場合のクラッチ付き駆動装置を表す側断面図。
図11】同実施形態を示す図で、追加の電気素子を配置する場合の配置状態を表す平面図。
図12】同実施形態を示す図で、クラッチ付き駆動装置の回路構成の一例を示す配線図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明のクラッチ付き駆動装置を図示の実施形態を例にとって、添付図面に基づいて詳細に説明する。
尚、以下の説明では最初に主として図1及び図2に基づいて本発明の実施形態に係るクラッチ付き駆動装置1の全体構成について説明する。次に、図2及び図12に基づいて前記クラッチ付き駆動装置1の回路構成の一例について説明する。次に、図2から図8に基づいて本発明の特徴的構成となるソレノイド保持部の具体的構成について説明した後、図1図2及び図9図10に基づいてクラッチ付き駆動装置1の作動態様とソレノイド保持部の作用、効果について説明する。
【0034】
続いて、図11に基づいて追加の電気素子を配置する場合の配置形態について説明し、最後に、前記実施形態とは部分的構成を異にする他の実施形態について、前記実施形態との差異を中心にクラッチ付き駆動装置1の構成に言及する。
【0035】
(1)クラッチ付き駆動装置の全体構成(図1及び図2参照)
本実施形態に係るクラッチ付き駆動装置1は、例えば換気扇のダンパの開閉動作等に使用され、駆動源となるモータ2と、このモータ2から動力が伝達されて軸周りに回転することにより外部に対する動作、例えば換気扇のダンパの開閉動作等を行う出力軸9と、モータ2の回転の出力軸9への伝達の切断及び接続を行うクラッチ20と、このクラッチ20の切断と接続の動作を実行するソレノイド50と、モータ2と出力軸9とクラッチ20とソレノイド50とを収容するハウジング100と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0036】
<リード線>
本実施形態では、モータ2のコイル6とソレノイド50のコイル51に給電する第1のリード線72と第2のリード線73を備えている。
第1のリード線72は、その一端が前記ソレノイド50のコイル51の一方の端部7aが電気的に接続される第1接続金具84の第1接続点41に接続され、この第1接続点41からハウジング100の外部に引き出されている。第1のリード線72とモータ2のコイル6の一方の端部2aとの接続については後述する。
また、ソレノイド50のコイル51の他方の端部7bが電気的に接続される第2接続部86cを有する第2接続金具86が、図2に表したように、ハウジング100内の対応する被取付け箇所に取り付けられている。第2のリード線73は、第2接続金具86の第2接続点42に接続され、この第2接続点42からハウジング100の外部に引き出されている。
【0037】
更に、本実施形態では、ハウジング100内に存在する内在リード線71が設けられている。この内在リード線71は、モータ2のコイル6の一方の端部2aと、後述するスイッチ機構10(弾性スイッチ片12A,12B)を介して第1のリード線72とを電気的に接続するためのものである。即ち、内在リード線71は、スイッチ機構10(弾性スイッチ片12A,12B)を介して第1接続金具84に接続されることで、第1のリード線72と電気的につながっている。
モータ2のコイル6の他方の端部2bは、第2接続金具86に直接接続されて第2のリード線72と電気的につながっている。
【0038】
ハウジング100は、上面が開放された略矩形容器状のハウジング本体101と、このハウジング101の開放された上面を閉塞するハウジングカバー102と、ハウジング本体101の下方に配置され、内部にモータ2とクラッチ20とギヤ輪列8等を収容できる空間を備えた駆動部ケーシング103と、を具備することによって一例として構成されている。
ハウジング本体101の内部には、ソレノイド50とスイッチ機構10が収容されている。
【0039】
<ソレノイド>
ソレノイド50は、中心部に軸方向Zに沿うように挿入される鉄芯51aを備えている。鉄芯51aの周りに、外周にコイル51が巻回され、軸方向Zの両端にフランジ部を有するボビンケース51bと、ボビンケース51bの軸方向Zの一端部(図示の実施形態では上端部)に固定される、一例としてL字形をした固定ヨーク52と、固定ヨーク52に対して揺動支点52cを介して揺動自在に接続される、一例として平板状をした可動ヨーク53と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0040】
このうち、固定ヨーク52は、ボビンケース51bの一端部に固定される水平部52a(図9図10)と、水平部52aの一端から図1中、下方に向けて延びる垂直部52b(図9図10)とを有している。垂直部52bの下端には、ハウジング本体101の底面から立ち上げられている段部54(図9図10)の孔54aに差し込まれる挿入片52dが形成されている。
また、固定ヨーク52の垂直部52bは、図示を省いた支持部材によって支持されている。尚、支持部材の下部には可動ヨーク53の揺動を可能にするための開口56aが形成されている。
一方、可動ヨーク53は、前述したように揺動支点52cを中心に揺動する部材である。可動ヨーク53は、ソレノイド50の鉄芯51a側に延びる一端53aの上面は、ソレノイド50の鉄芯51aの下面に臨み、後述するクラッチ20側に延びる他端53bの下面はクラッチ20における上クラッチ体22の上面に臨むように配置されている。
【0041】
<スイッチ機構>
また、スイッチ機構10は、円筒状のカム面11a(図2)の一部に凹部11bが形成されたスイッチカム11と、スイッチカム11のカム面11aに当接する第1弾性スイッチ片12Aと、第1弾性スイッチ12Aに接触することで通電状態になる第2弾性スイッチ片12Bと、を備えることによって基本的に構成されている。
そして、スイッチカム11の駆動は前述した出力軸9の回転によって実行される。また、第1弾性スイッチ片12Aと第2弾性スイッチ片12Bの先端部には、U字状に折曲げられた部分と平板部によって構成される接点15A、15Bが各別に設けられている。
【0042】
<出力軸>
また、出力軸9は、図1に表したような段差軸状の部材によって構成されている。即ち、出力軸9は、下部に駆動部ケーシング103に設けられる軸受部に内嵌する小径軸部9aと、その上部にギア輪列8の終端の第4伝達ギヤ27の小径ギアに噛み合って動力が得られる大径の出力ギヤ9bと、その上部にハウジング本体101に設けられる軸受部に内嵌する大径軸部9cと、その上部にスイッチカム11と、その基部において係合する取付け軸部9dと、を備えている。
また、取付け軸部9dには、スイッチカム11の上部にプーリ13が取り付けられている。プーリ13の外周にワイヤ14の一端部が固定されると共に、プーリ13を引き戻すための図示しないスプリングや並列的に設けられる図示しない別のワイヤ等を取り付けるための接続部13aが設けられている。尚、ワイヤ14の他端部は例えば換気扇のダンパの操作端に連結される。
【0043】
次に、駆動部ケーシング103内に収容されているモータ2とクラッチ20とギヤ輪列8について説明する。
モータ2は、ロータシャフト3と、ロータサポート4と、マグネット5と、コイル6と、を備えている。ロータサポート4には、次に述べるクラッチ20の下クラッチ体23に設けられる大径の入力ギヤ23aと噛み合うピンオンギヤ4aが形成されている。
【0044】
<クラッチ>
クラッチ20は、駆動部ケーシング103から鉛直方向に立ち上げられているガイドロッド21と、ガイドロッド21の下部に外嵌して回転する下クラッチ体23と、下クラッチ体23の上方に位置し、ガイドロッド21の上部に外嵌して回転すると共に、下クラッチ体23と接続する接続位置P1(図9)と下クラッチ体23との接続を解除する切断位置P2(図10)との間で軸方向Zに移動し得る上クラッチ体22と、下クラッチ体23と上クラッチ体22との間に縮設される圧縮コイルバネ24と、を備えている。
また、下クラッチ体23には、入力ギヤ23aと接続凹部23b(図9図10)とが設けられている。上クラッチ体22には接続凹部23bと係合する接続凸部22b(図9図10)と、ギヤ輪列8の一部をなす小径の第1伝達ギヤ22aと、可動ヨーク53の他端53bの下面に当接するボス部22c(図9図10)が設けられている。
【0045】
また、ギヤ輪列8は、上クラッチ体22に設けられる第1伝達ギヤ22aと、第1伝達ギヤ22aに噛み合う大径ギヤと小径ギヤを備える第2伝達ギヤ25と、第2伝達ギヤ25の小径ギヤに噛み合う大径ギヤと小径ギヤを備える第3伝達ギヤ26と、第3伝達ギヤ26の小径ギヤと噛み合う大径ギヤと小径ギヤを備える第4伝達ギヤ27と、の4枚の伝達ギヤを備えることによって一例として構成されている。そして、第4伝達ギヤ27の小径ギヤが前述した出力軸9に設けられている大径の出力ギヤ9bに噛み合うことで、モータ2の回転が減速された状態で出力軸9に伝達されるように構成されている。
【0046】
<ハウジング>
この他、ハウジング本体101の底面には、一例としてスナップフィット構造の前述した二つの保持部91、92(図2)と、これら二つの保持部91、92と一体のソレノイドホルダ31と、ソレノイドホルダ31近傍の二つの保持部91、92とは別の位置に設けられる他の保持部となる第1リブ81とを備えている。
更に、第1弾性スイッチ片12Aを保持する第1スイッチホルダ33Aと、第2の弾性スイッチ片12Bを保持する第2スイッチホルダ33Bと、第2弾性スイッチ片12Bの第1弾性スイッチ片12A側への移動範囲を規制するストッパ片35と、モータ2の一方の端部2aを保持する第1接続部ホルダ37Aと、モータ2の他方の端部2bを保持する第2接続部ホルダ37Bとを備えている。
更に、ソレノイドホルダ31近傍の第1リブ81とは別の位置に設けられる第2リブ82と、ハウジング本体101内において一端が接続され、他端がハウジング本体101外へ引き出される第1のリード線72を保持するリード線ホルダ39と、同じく他端がハウジング本体101外へ引き出される第2のリード線73を保持するリード線ホルダ40とを備えている。
【0047】
(2)クラッチ付き駆動装置の回路構成(図2及び図12参照)
次に、このようにして構成されるクラッチ付き駆動装置1の回路構成の一例を図2に表す具体的構造の平面図と図12に表す配線図に基づいて説明する。
図12の配線図に表れているように、第1外部接続端子61、第1のリード線72、第1接続金具84、ソレノイド50のコイル51、第2接続金具86、第2のリード線74及び第2外部接続端子の接続ラインにより、電源がONされるとソレノイド50に給電される。これによりクラッチ20が所定の動作を実行する。
一方、第1接続金具84と第2接続金具86の間に位置するモータ2のコイル6は、図12に表したように、第1弾性スイッチ12Aと第2弾性スイッチ片12Bを介して接続されているので、電源ON状態において、第1弾性スイッチ12Aと第2弾性スイッチ片12Bの接点15A、15Bが接触しているときには給電されてモータが回転するが、接点15A、15Bが非接触になったときは遮断されてモータは回転を停止する。これにより、電源がONされた状態において、ソレノイド50には給電状態のままで、モータ2は回転状態と停止状態が切り換わる。
【0048】
図2の具体的構造と図12の配線図に基づいて、モータ2の位置を起点して回路構造を具体的に説明する。
先ず、モータ2のコイル6における一方の端部2aは、第1接続部ホルダ37Aによって被われた位置で一方の端子2a(ここで、「一方の端子」は前記「一方の端部」と同じ符号2aを用いる)に接続されている。そして、モータ2の一方の端子2aには、内在リード線71の一端が接続されている。内在リード線71の他端は接続点43において第2弾性スイッチ片12Bに接続されている。
【0049】
また、第2弾性スイッチ片12Bは、接点15B、15Aを介して前記第1弾性スイッチ12Aに接続されて第1接続金具84上の第1接続点41につながっている。
尚、第1接続点41からは、ハウジング本体101の外部にある第1外部接続端子61に向けて第1のリード線72が延びている。一方、第1接続点41から第1接続金具84の第1接続部84cを介してソレノイド50のコイル51の一方の端部7aにつながっている。ソレノイド50のコイル51の他方の端部7bは第2接続部86cにつながっている。
【0050】
第2接続部86cは、第2接続金具86を介して第2接続部ホルダ37Bに被われているモータ2のコイル6における他方の端部2bが接続されている他方の端子2b(ここで、「他方の端子」は前記「他方の端部」と同じ符号2bを用いる)に接続されている。
また、第2接続金具86には、更に第2接続点42が設けられており、第2接続点42から、ハウジング本体101の外部に設けられる第2外部接続端子62に向けて第2のリード線73が延びている。
【0051】
<第1リブ>
ハウジング100に上記したように第1リブ81が設けられている。本実施形態では、第1リブ81は、ハウジング100の保持部91、92に保持された状態にあるソレノイド50に対して、これら保持部91、92とは別の位置に設けられている。この第1リブ81は、前記保持された状態のソレノイド50に対する他の保持部となるものであり、且つソレノイド50のコイル51の一方の端部7aが電気的に接続される第1接続部84cを有する第1接続金具84が取り付けられている。
即ち、第1リブ81は、ハウジング100に保持部91、92により保持された状態にあるソレノイド50に対して、「保持部91、92」とは別の「他の保持部」として保持する役割に加えて、ソレノイド50のコイル51の一方の端部7aが電気的に接続される第1接続金具84を取り付けるための取付け部を兼用する構造である。
【0052】
ここで、前記「他の保持部」とは、「保持部91、92」に対する補助的な保持を基本的な役割とするものである。従って、「他の保持部」は、「保持部91、92」の保持力より小さい保持力であり、また保持構造もスナップフィット構造とは異なり、単に接している程度の構造を基本とする。
【0053】
上記従来の構造では、前記保持部と前記被取付部位とを「別個に」且つ「別の場所」に設けることになるので、クラッチ付き駆動装置のコンパクト化を図る場合に妨げとなる。また、前記ソレノイドのコイルの一方の端部と前記接続金具とを半田付けする場合に、両者の間は、前記「別の場所」となる分だけ離間距離が長くなる。そのため、ソレノイドのコイルを前記接続金具上の半田付けする位置まで延ばすことになる。半田付けする際には両者の位置をずれないように保持する必要があるが前記延ばした分だけ位置が不安定となり、半田付けの作業性が低いという問題がある。
本実施例の構造によれば、第1リブ81の前記「兼用構造」によってクラッチ付き駆動装置1のコンパクト化が実現しやすくなる。また、前記「兼用構造」によって、ソレノイド50のコイル51の一方の端部7aと第1接続金具84の第1接続部84cとの距離が近くなるので半田付け作業がしやすくなる。
【0054】
(3)ソレノイド保持部の具体的構成(図2図8参照)
第1リブ81は、本実施形態では、内在リード線71と第1のリード線72のハウジング100内を引き回される部分に対応する位置に、前記引き回されているリード線の位置より平面視における上方に突出する突出部81b(図3)を備えている。
そして、内在リード線71と第1のリード線72のハウジング100内を引き回される部分は、第1リブ81の突出部81b及び後述する第2リブ82に対してソレノイド50と反対側の位置に配置されている。
これにより、第1リブ81と第2リブ82の両方によってリード線71、72の引き回しをガイドするので、ソレノイド50のボビンケース51bに巻かれたコイル51部分にリード線71、72が触れないようにすることの確実性を高めることができる。以って、断線の発生、ショート等の虞を一層低減することができる。
【0055】
第1リブ81に取り付けられる第1接続金具84は、水平状態で配置される本体部84aと、本体部84aから側面視において上方に突出するように設けられる突出部84bとを備えている。そして、第1接続金具84は、その本体部84aの下方の部分が第1リブ81の対応する部位に圧入されて取り付けられている。
ここで、前記圧入による取り付けの具体的構造は、第1接続金具84を第1リブ81の対応する部位に押し込んで外れない構造であればよく、公知の圧入構造を採用することが可能である。第1接続金具84は、第1リブ81に圧入して取り付ける構造であるので、その取付け作業が容易である。
【0056】
第2接続金具86も、水平状態で配置される本体部86aと、本体部86aから側面視において上方に突出するように設けられる突出部86bとを備えている。
そして、第1接続金具84の突出部84bには、溝状の第1接続部84cが形成されている。同じく、第2接続金具86の突出部86bには、溝状の第2接続部86cが形成されている。
ソレノイド50のコイル51の一方の端部7aは、第1接続金具84の突出部84bに形成されている第1接続部84cの溝内に挿入され、その状態で半田付けされている。同様に、ソレノイド50のコイル51の他方の端部7bは、第2接続金具86の突出部86bに形成されている第2接続部86cの溝内に挿入され、その状態で半田付けされている。
【0057】
また、本実施形態では、前述したように保持部91、92は2か所に設けられており、他の保持部81は一か所に設けられている。
そして、前記2か所に設けられている保持部91、92として、弾性力に抗して押し込むことにより前記押し込まれた位置で前記弾性力を作用させた部分によって押さえ付けられて前記位置に保持される構造であるスナップフィット構造が採用されている。
一方、他の保持部となる第1リブ81は、前記スナップフィット構造の保持部91、92によって保持された状態のソレノイド50の外側面に沿って、一例として単に接する程度の単純な保持構造で配置されている。
【0058】
このように、保持部91、92は2か所のスナップフィット構造であり、前記他の保持部は1か所であって前記保持された状態のソレノイド50の側面に沿って配置されている構造である。従って、2か所のスナップフィット構造の保持部91、92によって、従来の3か所の保持部(スナップフィット構造)に比して、ソレノイド50のハウジング100への取付け作業がしやすい。
また、「他の保持部」となる第1リブ81は、前記の如く強固に保持された状態のソレノイド50の側面に対して単に沿って配置されている構造であるので、この第1リブ81に第1接続金具84を取り付けるに際しての設計がしやすく、その製造もしやすい。
この保持構造により、ソレノイド50をハウジング100に保持する状態を作る保持部91、92と、他の保持部となる第1リブ81に歪などの無理な力が加わる虞が少なくなる。従って、ソレノイド50を保持した状態において保持部(保持部91、92及び第1リブ81)が壊れにくくなっている。
【0059】
また、保持部91、92は、ソレノイド50を平面視における両側(図2の実施形態ではソレノイド50の左右の両側面)から挟んで保持する第1保持部91と第2保持部92との対で構成されている。
一方、前記他の保持部である第1リブ81は、第1保持部91と第2保持部92を結ぶ線が作る方向に対して交差する方向、本実施形態では略直交する方向に位置する構成である。
この構造により、第1リブ81である前記「他の保持部」は、ソレノイド50の側面に単純に沿う構造であっても、その3か所(第1保持部91と第2保持部92と第1リブ81)の相対配置により、ソレノイド50を効果的に押えて保持することができる。
【0060】
本実施形態では、第1接続金具84が取り付けられた第1リブ81は、前記保持された状態のソレノイド50のコイル51の一方の端部7aの位置と対応する位置に設けられている。そして、ソレノイド50のコイル51の一方の端部7aは、第1接続金具84の突出部84bに形成されている第1接続部84cの溝内に挿入され、その状態で半田付けされている。
この構造により、ソレノイド50のコイル51の端部7aと第1接続金具84の突出部84bに形成されている溝状の第1接続部84cとの距離が近くなるので半田付け作業がしやすくなる。更に、クラッチ付き駆動装置1のコンパクト化が実現しやすくなる。
尚、第2接続金具86は、保持部92とは別個の位置に設けられている。具体的には、第2接続金具86は、前記保持された状態のソレノイド50のコイル51の他方の端部7bの位置と対応する位置に存するようにハウジング100に取り付けられている。
【0061】
また、本実施形態では、前述したように第1リブ81に取り付けられた状態の第1接続金具84に対して第1弾性スイッチ片12Aの基部が電気的に接続されている。
また、モータ2のコイル6の一方の端部2aには、第1弾性スイッチ片に接するON状態と接しないOFF状態とを取り得る第2弾性スイッチ片12Bが電気的に接続されている。本実施形態では、第2弾性スイッチ片12Bは、内在リード線71によってモータ2のコイル6の一方の端部2aに接続されている。内在リード線71は接続点43を介して第2弾性スイッチ片12Bの基部が電気的に接続されている。
【0062】
また、前述したように、第1弾性スイッチ片12Aと第2弾性スイッチ片12Bは、それぞれの先端部に設けられている接点15Aと接点15Bが接するON状態と、接点15Aと接点15Bが離間して接しないOFF状態と、を取り得るように構成されている。
そして、第1弾性スイッチ片12Aと第2弾性スイッチ12Bとの前記ON状態とOFF状態の切り換えは、出力軸9の取付け軸部9dに取り付けられているスイッチカム11によって実行されている。
【0063】
具体的には、スイッチカム11が回転してスイッチカム11のカム面11aの一部に形成されている凹部11bに、第1弾性スイッチ片12Aの接点15Aが係合した状態になると、第1弾性スイッチ片12Aの接点15Aは凹部11bの深さ分、図2中、時計方向に回動する。
これに伴い、第2弾性スイッチ片12Bも同方向に回動するが、第2弾性スイッチ片12Bの接点15Bは、ストッパ片35に当接することで、それ以上の回動が規制されるため、接点15A、15Bは離間した状態になり、モータ2は非通電状態になる。
一方、スイッチカム11のカム面11aに第1弾性スイッチ片12Aの接点15Aが当接している状態では、第1弾性スイッチ片12Aの接点15Aは、図2に表すように第2弾性スイッチ片12Bの接点15Bと接触した状態になり、モータ2は通電状態になる。
【0064】
上記構造により、出力軸9に取り付けられたスイッチカム11により第1弾性スイッチ片12Aと第2弾性スイッチ片12BとのON状態とOFF状態の切り換えが行われてモータ2への通電及び非通電を切り換えることができる。これにより、必要とする状態なったら出力軸9の回転を止めることが可能となり、例えば換気扇のダンパ開閉動作を容易に行うことができる。
【0065】
<第2リブ>
また、本実施形態では、ハウジング本体101に第2リブ82が設けられている。そして、この第2リブ82は、内在リード線71と第1のリード線72のハウジング100内を引き回される部分と、保持部91、92によって保持された状態のソレノイド50の外側面との間に設けられている。
これにより、ハウジング100内を前記2本のリード線71、72が引き回されて配設されても、第2リブ82によってソレノイド50のボビンケース51bに巻かれたコイル51の部分に内在リード線71と第1のリード線72が触れないように両者を離間させることができる。以って内在リード線71と第1のリード線72の断線の発生やショート等の虞を低減することが可能になる。
【0066】
クラッチ付き駆動装置1は、その性能等によってコンデンサーや抵抗等の電気素子を電気回路に設ける場合がある。
本実施形態によれば、従来設けられていた3つ目の保持部に代わる前述した構成と配置の第1リブ81と前述した配置の第2リブ82によって、コンパクト化が可能になるので、その分だけ、ハウジング100内に新たスペースが生まれる。
例えば、図11に表すように、ハウジング本体101の側板内方の新たな空間が生まれるので、この空間を有効に利用して、第2リブ82のソレノイド50と反対側の位置となるハウジング100内に、コンデンサー95や固定抵抗器97等の他の電気素子を配置する場所を設けることが可能である。
これにより、電源起動時の突入電流等を防ぐためにコンデンサー95や固定抵抗器97等を内蔵した特別仕様のクラッチ付き駆動装置1に対しても対応できるようになる。
【0067】
この他、ソレノイド保持部の構成からは離れるが、本実施形態に係るクラッチ付き駆動装置1は、前述したように出力軸9の取付け軸部9dに対してプーリ13が設けられている。プーリ13には、プーリ13に巻き取り可能及び繰り出し可能なワイヤ14が取り付けられている。
そして、プーリ13へのワイヤ14の巻き取りは、例えばモータ2の動力がクラッチ20とギヤ輪列8とを介して出力軸9に伝達されることによって実行することが可能である。一方、ワイヤ14のプーリ13からの繰り出しは、モータ2の動力とは別の動力により実行するように構成することが可能である。
ここで「モータ2の動力とは別の動力」とは、ワイヤ14の繰出し方向への弾性力が作用するように配設した引っ張りバネや、換気扇のダンパの自重等を利用した初期位置に戻ろうとする力が一例として挙げられる。
【0068】
(4)クラッチ付き駆動装置の作動態様(図1図2及び図9図10参照)
次に、このようにして構成される本実施形態に係るクラッチ付き駆動装置1の作動態様を、(A)クラッチの接続と切断、(B)出力軸への動力伝達、(C)スイッチ機構ON、OFF動作、(D)ワイヤの巻き取りと繰り出しに分けて説明する。
【0069】
(A)クラッチの接続と切断(図9及び図10参照)
クラッチ20の接続と切断は、ソレノイド50によって実行される。即ち、クラッチ20を接続状態にする場合は、ソレノイド50のコイル51に電流を流して、図9に表すように鉄芯51aの下面に可動ヨーク53の一端53aの上面を吸着させる。これにより、可動ヨーク53は、揺動支点52cを中心にして図9中、時計方向に揺動し、可動ヨーク53の他端53bの下面に当接している上クラッチ体22のボス部22cを圧縮コイルバネ24の付勢力に抗して下方に押し下げる。
そして、図9に表すように上クラッチ体22の接続凸部22bが下クラッチ体23の接続凹部23bに係合してクラッチ20は接続状態になる。
【0070】
一方、クラッチ20を切断状態にする場合は、ソレノイド50のコイル51に流れていた電流を停止して、図10に表すように鉄芯51aの下面に対する可動ヨーク53の一端53aの上面の吸着を解除する。
この状態では圧縮コイルバネ24の付勢力によって上クラッチ体22が上方に持ち上げられて上クラッチ体22の接続凸部22bと下クラッチ体23の接続凹部23bとの係合が解除されてクラッチ20は切断状態になる。
【0071】
(B)出力軸への動力伝達(図1参照)
モータ2に電源が供給されると、ロータサポート4が回転を始める。そして、ロータサポート4に形成されているピニオンギヤ4aから前記下クラッチ体23に形成されている入力ギヤ23aに動力が伝達されて下クラッチ体23が回転を開始する。
そして、クラッチ20が接続状態である場合には、下クラッチ体23の回転が接続凹部23bと接続凸部22bを介して上クラッチ体22に伝達され、上クラッチ体22を回転させる。
一方、クラッチ20が切断状態である場合には、下クラッチ体23が空回りするだけで、下クラッチ体23の回転は上クラッチ体22には伝達されない。
【0072】
接続状態のクラッチ20の上クラッチ体22が回転すると、上クラッチ体22に形成されている小径の第1伝達ギヤ22aからギヤ輪列8を構成している第2伝達ギヤ25、第3伝達ギヤ26、第4伝達ギヤ27と動力が伝達されて、第4伝達ギヤ27の小径ギヤから出力軸9に設けられている大径の出力ギヤ9bを介して出力軸9に回転が伝達されて、出力軸9が前記ギヤ輪列8によって減速された回転数で回転するようになる。
【0073】
(C)スイッチ機構のON、OFF動作(図2参照)
出力軸9が回転すると、その回転は取付け軸部9dからスイッチ機構10のスイッチカム11に伝達されてスイッチカム11を回転させる。第1弾性スイッチ片12Aの接点15Aが、図2に表すようにスイッチカム11のカム面11aに当接している状態では、接点15Aと接点15Bは接触した状態になる。これにより、第1弾性スイッチ片12Aと第2弾性スイッチ片12BはON状態になり、モータ2は通電状態になる。
【0074】
一方、スイッチカム11が回転して第1弾性スイッチ片12Aの接点15Aがスイッチカム11の凹部11bに嵌まると、第1弾性スイッチ片12Aの接点15Aと第2弾性スイッチ片12Bの接点15Bは離間した状態になる。これにより、第1弾性スイッチ片12Aと第2弾性スイッチ片12BはOFF状態になり、モータ2は非通電状態になる。
【0075】
(D)ワイヤ巻き取りと繰り出し(図1参照)
出力軸9が回転すると、出力軸9の取付け軸部9dに取り付けられているプーリ13が例えばワイヤ14を巻き取る方向に回転するようになってワイヤ14の巻き取りが実行される。
一方、プーリ13への動力伝達が停止されると、例えばプーリ13の接続部13に一端が係止されている図示しない引っ張りバネ等の付勢力が作用してプーリ13が逆方向に回転するようになってワイヤ14の繰り出しが実行される。
【0076】
(5)クラッチ付き駆動装置の作用、効果(図1及び図11参照)
このようにして構成される本実施形態に係るクラッチ付き駆動装置1によれば、従来の3か所のスナップフィット構造の保持部に代わる簡易な保持機能と端子(第1接続金具)の取付け機能を併せ持つ第1リブ81の採用により、ソレノイド50の必要な保持力を確保しつつ、半田付け作業等を容易にし、クラッチ付き駆動装置1のコンパクト化も実現しやすくなる。
【0077】
また、前記二つの機能を併せ持つ第1リブ81の採用により、ハウジング100内のスペースに余裕ができて内在リード線71と第1のリード線72の引き回しが容易になる。
更に、第2リブ82と第1リブ81に設けた突出部84bの採用により、ハウジング100内を引き回されて配設される内在リード線71と第1のリード線72がソレノイド50のコイル51に接触して断線したり、ショートする虞を低減することが可能になる。
この他、ハウジング本体101に設けた二つの端子ホルダ37A、37Bの採用により、モータ2の一方の端子2aと他方の端子2bの2か所の半田付け作業において生ずる半田の垂れが回路配設部分に落下することを効果的に抑制することができる。
【0078】
[他の実施形態]
本発明に係るクラッチ付き駆動装置1は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0079】
例えば、本発明のクラッチ付き駆動装置1は、換気扇のダンパ開閉用に使用されるものに限らず、同様の課題を有する種々の用途のクラッチ付き駆動装置に適用することが可能である。また、第1リブ81と第2リブ82の形状と大きさも、図示の実施形態のものに限らず、使用するソレノイド50の形状や大きさ或いは取付け位置や取付け角度等に応じて適宜変更することが可能である。
【0080】
また、ソレノイド50のコイル51とリード線71、72の接触を防止する目的で設けられている第2リブ82については、ソレノイド50やハウジング本体101に設ける絶縁を目的にするカバー状の部材やカード状の部材或いは突起状の部材等に置き換えたり、ソレノイド50のコイル51とリード線71、72の間に絶縁フィルム等を配置することで両者を仕切るようにすることも可能である。
【0081】
本発明は、例えば換気扇のダンパ開閉用等として、ケーシング内の狭隘な場所に取り付けられる駆動装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…クラッチ付き駆動装置、2…モータ、
2a…一方の端子(一方の端部:モータコイルの)、
2b…他方の端子(他方の端部:モータコイルの)、
3…ロータシャフト、4a…ピニオンギヤ、5…マグネット、6…コイル、
7a…一方の端部(ソレノイドコイルの)、7b…他方の端部(ソレノイドコイルの)、
8…ギヤ輪列、9…出力軸、9a…小径軸部、9b…出力ギヤ、9c…大径軸部、
9d…取付け軸部、10…スイッチ機構、11…スイッチカム、11a…カム面、
11b…凹部、12A…第1弾性スイッチ片、12B…第2弾性スイッチ片、
13…プーリ、13a…接続部、14…ワイヤ、
15…接点、20…クラッチ、21…ガイドロッド、22…上クラッチ体、
22a…第1伝達ギヤ、22b…接続凸部、22c…ボス部、23…下クラッチ体、
23a…入力ギヤ、23b…接続凹部、24…圧縮コイルバネ、
25…第2伝達ギヤ、26…第3伝達ギヤ、27…第4伝達ギヤ、
31…ソレノイドホルダ、33…スイッチホルダ、35…ストッパ片、
37…端子ホルダ、39…リード線ホルダ、40…リード線ホルダ、
41…第1接続点、42…第2接続点、43…接続点、50…ソレノイド、
51…コイル、51a…鉄芯、51b…ボビンケース、52…固定ヨーク、
52a…水平部、52b…垂直部、52c…揺動支点、52d…挿入片、
53…可動ヨーク、53a…一端、53b…他端、54…段部、
54a…穴、56a…開口、61…第1外部接続端子、
62…第2外部接続端子、71…内在リード線、72…第1のリード線、
73…第2のリード線、81…第1リブ(他の保持部)、81b…突出部、
82…第2リブ、84…第1接続金具、84a…本体部、
84b…突出部、84c…第1接続部(溝状)、86…第2接続金具、
86a…本体部、86b…突出部、86c…第2接続部(溝状)、
91…保持部(第1保持部)、92…保持部(第2保持部)、
95…コンデンサー(電気素子)、97…固定抵抗器(電気素子)、
100…ハウジング、101…ハウジング本体、102…ハウジングカバー、
103…駆動部ケーシング、Z…軸方向、P1…接続位置、P2…切断位置
図1
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