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特許7130382物品、金属樹脂接合体、金属樹脂接合体の製造方法、コールドプレートおよび冷却装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】物品、金属樹脂接合体、金属樹脂接合体の製造方法、コールドプレートおよび冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20220829BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20220829BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20220829BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20220829BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H05K7/20 N
H01L23/46 Z
B29C65/48
B32B3/30
B32B15/08 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018019064
(22)【出願日】2018-02-06
(65)【公開番号】P2019136872
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 知記
(72)【発明者】
【氏名】野本 恭平
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019115(JP,A)
【文献】特開2017-155981(JP,A)
【文献】特開2009-114279(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117711(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/037718(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/076264(WO,A1)
【文献】特開平07-186273(JP,A)
【文献】ケミブラスト(R)処理 「金属の接着用下地表面処理」,日本パーカライジング株式会社 加工事業本部,p.1,https://sales.parker.co.jp/catalog/_pdf/Treatment/prc019.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 63/00-63/48
65/00-65/82
H01L 23/34-23/46
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドプレートを形成することが可能な物品であって、
少なくとも一部分に透光性を有する樹脂部材(A)と、光硬化性層(B)と、表面の少なくとも一部分に微細凹凸構造を有する金属部材(C)と、を備える物品であって、
前記樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、前記金属部材(C)の前記微細凹凸構造の少なくとも一部分とが、前記光硬化性層(B)を介して接しており、
前記樹脂部材(A)と前記金属部材(C)との間に中空部分を有する物品。
【請求項2】
請求項1に記載の物品において、
前記金属部材(C)が、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材および銅合金製部材から選択される少なくとも一種を含む物品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物品において、
前記少なくとも一部分に透光性を有する樹脂部材(A)が透明性樹脂を含む物品。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の物品において、
前記樹脂部材(A)がポリカーボネート系樹脂を含む物品。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物品において、
前記光硬化性層(B)が光硬化性接着剤により構成される物品。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の物品における前記光硬化性層(B)を硬化してなる金属樹脂接合体であって、
前記樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、前記金属部材(C)の前記微細凹凸構造の少なくとも一部分とが、前記光硬化性層(B)の硬化体を介して接合している金属樹脂接合体。
【請求項7】
請求項に記載の金属樹脂接合体を製造するための製造方法であって、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の物品を準備する工程と、
前記物品に光を照射することにより前記光硬化性層(B)を硬化させる工程と、
を含む金属樹脂接合体の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の金属樹脂接合体を備えるコールドプレート。
【請求項9】
請求項に記載のコールドプレートにおいて、
当該コールドプレートは、金属製プレートと、前記金属製プレート上に設けられた樹脂製ケースと、を備え、
前記樹脂製ケースは、冷媒が流通可能な空間を形成するように前記金属製プレート上に設けられており、かつ、少なくとも一部分が透光性を有し、
前記金属製プレートが前記金属部材(C)であり、
前記樹脂製ケースが前記樹脂部材(A)であり、
前記冷媒が流通可能な空間が前記中空部分であるコールドプレート。
【請求項10】
請求項に記載のコールドプレートにおいて、
前記金属製プレートが、アルミニウム製プレート、アルミニウム合金製プレート、銅製プレートおよび銅合金製プレートから選択される少なくとも一種を含むコールドプレート。
【請求項11】
請求項乃至10のいずれか一項に記載のコールドプレートを備える冷却装置。
【請求項12】
請求項11に記載の冷却装置において、
発熱体をさらに備え、前記発熱体が前記コールドプレートに熱的に接続されており、
前記コールドプレート内を冷媒が流通または循環する構造を有する冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品、金属樹脂接合体、金属樹脂接合体の製造方法、コールドプレートおよび冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に冷媒を流通し、発熱体に熱的に接続してその発熱体を冷却する冷却装置が種々提案されている。
例えば、電子装置の冷却装置では、システムボード上のCPU等の電子部品と熱的に接続されたコールドプレートに冷媒を循環させることによって電子部品の熱を放熱している。ここで、コールドプレートのうち、ベースプレートや放熱用フィンは、銅のような熱伝導率の高い金属で構成することが好ましい。しかし、ベースプレートおよび放熱用フィン以外のケース部分や、隣り合うコールドプレート間を接続する配管は材料特性として熱伝導性が求められない。そのため、軽量化を目的としてケースや配管部分の材料を樹脂に置き換えることが検討されている。
【0003】
従来のコールドプレートにおいて、金属製ベースプレートと樹脂製ケースとの接合部は、ネジやボルトを用いた機械的な締結手段が用いられてきた。しかし、このような機械的な接合は、ネジやボルト等の多数の部品の製造を要し、接合工数も嵩むことから、コストが高くなるという問題があった。
【0004】
ここで、樹脂部材と金属部材とを接合する方法として、例えば、特許文献1(特開2010-158885号公報)、特許文献2(国際公開第2016/076264号)および特許文献3(特開2017-510477号公報)に記載のものが挙げられる。
【0005】
特許文献1には、樹脂部材と金属部材とを重ね合わせた後、回転させた回転ツールを上記金属部材側から押圧し、摩擦熱によって上記樹脂部材を溶融させて上記樹脂部材と上記金属部材とを接合することを特徴とする樹脂部材と金属部材の接合方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、銅と樹脂との接合体であって、上記銅は、上記樹脂との接合面において、素地面にはトリアジンチオール誘導体又はトリアジンチオール誘導体及びシランカップリング剤が、上記接合面の一部に形成された酸化膜にはシランカップリング剤がそれぞれ結合しており、上記銅と上記樹脂とが分子接合していることを特徴とする接合体が記載されている。
【0007】
特許文献3には、金属層と、樹脂層、及び上記金属層と上記樹脂層との間に備えられる特定の接着層を含む樹脂金属複合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-158885号公報
【文献】国際公開第2016/076264号
【文献】特開2017-510477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1~3に開示されているような方法で得られた、樹脂部材と金属部材(特に銅製部材および銅合金製部材)との接合体は接合強度が不十分であり、樹脂部材と金属部材との接合部分から内容物(例えば、冷媒等)が漏れてしまう場合があることが明らかになった。
特に、冷却装置における冷媒の漏洩は深刻な問題であり、冷却装置の軽量化を実現する上で、冷媒漏れを起こさないよう強固に密着接合した金属と樹脂との接合体が求められている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、金属部材と樹脂部材とが強固に接合し、強度および信頼性に優れた金属と樹脂の接合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、樹脂部材と金属部材(特に銅製部材および銅合金製部材)との接合性に優れた金属樹脂接合体を提供するために鋭意検討した。その結果、少なくとも一部分に透光性を有する樹脂部材と、金属部材と、を光硬化性層の硬化体を介して接合させることによって、樹脂部材と金属部材との間の接合性に優れた金属樹脂接合体が得られることを見出し本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明によれば、以下に示す物品、金属樹脂接合体、金属樹脂接合体の製造方法、コールドプレートおよび冷却装置が提供される。
【0013】
[1]
コールドプレートを形成することが可能な物品であって、
少なくとも一部分に透光性を有する樹脂部材(A)と、光硬化性層(B)と、表面の少なくとも一部分に微細凹凸構造を有する金属部材(C)と、を備える物品であって、
前記樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、前記金属部材(C)の前記微細凹凸構造の少なくとも一部分とが、前記光硬化性層(B)を介して接しており、
前記樹脂部材(A)と前記金属部材(C)との間に中空部分を有する物品。
[2]
上記[1]に記載の物品において、
前記金属部材(C)が、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材および銅合金製部材から選択される少なくとも一種を含む物品。
[3]
上記[1]または[2]に記載の物品において、
前記少なくとも一部分に透光性を有する樹脂部材(A)が透明性樹脂を含む物品。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の物品において、
前記樹脂部材(A)がポリカーボネート系樹脂を含む物品。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の物品において、
前記光硬化性層(B)が光硬化性接着剤により構成される物品。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の物品における前記光硬化性層(B)を硬化してなる金属樹脂接合体であって、
前記樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、前記金属部材(C)の前記微細凹凸構造の少なくとも一部分とが、前記光硬化性層(B)の硬化体を介して接合している金属樹脂接合体。
[7]
上記[6]に記載の金属樹脂接合体を製造するための製造方法であって、
[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の物品を準備する工程と、
前記物品に光を照射することにより前記光硬化性層(B)を硬化させる工程と、
を含む金属樹脂接合体の製造方法。
[8]
上記[6]に記載の金属樹脂接合体を備えるコールドプレート。
[9]
上記[8]に記載のコールドプレートにおいて、
当該コールドプレートは、金属製プレートと、前記金属製プレート上に設けられた樹脂製ケースと、を備え、
前記樹脂製ケースは、冷媒が流通可能な空間を形成するように前記金属製プレート上に設けられており、かつ、少なくとも一部分が透光性を有し、
前記金属製プレートが前記金属部材(C)であり、
前記樹脂製ケースが前記樹脂部材(A)であり、
前記冷媒が流通可能な空間が前記中空部分であるコールドプレート。
[10]
上記[9]に記載のコールドプレートにおいて、
前記金属製プレートが、アルミニウム製プレート、アルミニウム合金製プレート、銅製プレートおよび銅合金製プレートから選択される少なくとも一種を含むコールドプレート。
[11]
上記[8]乃至[10]のいずれか一つに記載のコールドプレートを備える冷却装置。
[12]
上記[11]に記載の冷却装置において、
発熱体をさらに備え、前記発熱体が前記コールドプレートに熱的に接続されており、
前記コールドプレート内を冷媒が流通または循環する構造を有する冷却装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属部材と樹脂部材とが強固に接合し、強度および信頼性に優れた金属と樹脂の接合体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、軽量で、かつ、内容物の漏洩を防止できる金属樹脂接合体、コールドプレートおよび冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施形態の物品、金属樹脂接合体またはコールドプレートの構造の一例を模式的に示した外観図である。
図2】本発明に係る実施形態の冷却装置の構造の一例を模式的に示した外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0017】
図1は、本発明に係る実施形態の物品10、金属樹脂接合体20またはコールドプレート30の構造の一例を模式的に示した外観図である。図2は、本発明に係る実施形態の冷却装置100の構造の一例を模式的に示した外観図である。
本実施形態に係る物品10は、少なくとも一部分に透光性を有する樹脂部材(A)と、光硬化性層(B)と、表面の少なくとも一部分に微細凹凸構造11を有する金属部材(C)と、を備える物品であって、樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、金属部材(C)の微細凹凸構造11部分の少なくとも一部分とが、光硬化性層(B)を介して接している。
また、本実施形態に係る金属樹脂接合体20は、本実施形態に係る物品10における光硬化性層(B)を硬化して、樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、金属部材(C)の微細凹凸構造11部分の少なくとも一部分とを、光硬化性層(B)の硬化体(B’)を介して接合させることによって得ることができる。
【0018】
本実施形態に係る金属樹脂接合体20によれば、少なくとも一部分に透光性を有する樹脂部材(A)と、金属部材(C)と、を光硬化性層(B)の硬化体(B’)を介して接合することによって、樹脂部材(A)と金属部材(C)との間の接合性が向上し、強度および信頼性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る金属樹脂接合体20は、図1に示すように樹脂部材(A)と金属部材(C)との間に中空部分13を設けることによって、内容物の視認が容易な中空物品とすることもできる。
さらに、本実施形態に係る金属樹脂接合体20を用いることによって、金属製プレートと樹脂製ケースとの強固な接合を実現し、軽量で、かつ、冷媒の漏洩を効果的に防止できるコールドプレート30を得ることができる。
さらに、このようなコールドプレート30を用いることによって、長期にわたって冷媒が漏洩することのない冷却装置100すなわち信頼性の高い冷却装置100を得ることができる。また、本実施形態に係る冷却装置100によれば、樹脂製ケースに透明性を付与し、着色した冷媒を用いることによって、万が一冷媒が漏洩した場合の視認による検知が容易な冷却装置とすることもできる。
【0019】
以下、本実施形態に係る物品10、金属樹脂接合体20およびコールドプレート30を構成する樹脂部材(A)、光硬化性層(B)および金属部材(C)、金属樹脂接合体20、コールドプレート30並びに冷却装置100について順次説明する。
【0020】
1.樹脂部材(A)
以下、本実施形態に係る樹脂部材(A)について説明する。
樹脂部材(A)は、例えば、透光性を有する樹脂(A1)を含む。さらに、樹脂部材(A)は必要に応じてその他の配合剤を含む。
【0021】
(樹脂(A1))
透光性を有する樹脂(A1)は、光硬化性接着剤を硬化させるための条件を阻害しないものであれば特に限定されないが、好ましくはUV透過性を有する樹脂であり、さらに好ましくはUVだけでなく可視光も透過するいわゆる透明性樹脂である。
透光性を有する樹脂(A1)としては少なくとも一部分に透光性を有する樹脂部材(A)が得られる樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリケトン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0022】
これらの中でも、透光性を有する樹脂(A1)としては透明性樹脂が好ましく、透明性および機械的強度のバランスに優れる樹脂部材(A)を効果的に得ることができる観点から、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0023】
(その他の配合剤)
樹脂部材(A)は、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。このような配合剤としては、充填材、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0024】
2.光硬化性層(B)
以下、本実施形態に係る光硬化性層(B)について説明する。
光硬化性層(B)は、例えば、光硬化性接着剤により構成される。
本実施形態に係る光硬化性接着剤としては特に限定されないが、例えば、紫外線(UV)硬化性接着剤が挙げられる。UV硬化性接着剤は可視光に感度があってもよい。
【0025】
UV硬化性接着剤としては特に限定されないが、例えば、アクリレート系UV硬化性ポリマー、シアノアクリレート系UV硬化性ポリマー、ウレタン系UV硬化性ポリマー、ウレタン(メタ)アクリレート系UV硬化性ポリマー、シラン系UV硬化性ポリマー、シリコーン系UV硬化性ポリマー、エポキシ系UV硬化性ポリマー、エポキシ(メタ)アクリレート系UV硬化性ポリマー、トリエチレングリコールジアセテート、ビニルエーテル系UV硬化性ポリマー等の公知のUV硬化性ポリマーを用いることができる。
これらのUV硬化性ポリマーの具体例としては、脂肪族アクリレートオリゴマー、芳香族アクリレートオリゴマー、アクリレートエポキシモノマー、アクリレートエポキシオリゴマー、脂肪族エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンメタクリレート、アルキルメタクリレート、アミン変性オリゴエーテルアクリレート、アミン変性ポリエーテルアクリレート、芳香族酸アクリレート、芳香族エポキシアクリレート、芳香族ウレタンメタクリレート、ブチレングリコールアクリレート、ステアリルアクリレート、脂環式エポキシド、シクロヘキシルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エポキシメタクリレート、エポキシ大豆アクリレート、グリシジルメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オリゴエーテルアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、ポリエステルアクリレートモノマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ステアリルメタクリレート、トリエチレングリコールジアセテート、ビニルエーテル等が挙げられる。
また、市販のUV硬化性接着剤を用いてもよい。市販のUV硬化性接着剤としては、例えば、Dymax社製に代表されるUV硬化性接着剤がある。
【0026】
本実施形態に係る光硬化性層(B)の厚みは特に限定されないが、例えば0.001mm~1mmであり、好ましくは0.01~0.1mmである。
【0027】
3.金属部材(C)
以下、本実施形態に係る金属部材(C)について説明する。
本実施形態に係る金属部材(C)は、表面の少なくとも一部分に微細凹凸構造11を有する。
金属部材(C)を構成する金属は特に限定されないが、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、コバルト、亜鉛、鉛、スズ、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、マンガン、またはこれらの合金(例えば、ステンレス,真鍮,リン青銅等)等が挙げられる。これらの金属は単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、軽量で、かつ、高強度である点からアルミニウム系金属が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
また、金属部材(C)には、メッキや蒸着膜、塗膜等が付与されていてもよい。
【0028】
金属樹脂接合体20をコールドプレート30に用いる場合は、金属部材(C)としては、熱伝導性に優れる点から、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材および銅合金製部材から選択される少なくとも一種が好ましく、銅製部材および銅合金製部材が特に好ましい。
【0029】
また、本実施形態に係る金属部材(C)は、微細凹凸構造11上に官能基が付加されていてもよい。このような官能基としては、例えば、メルカプト基、チオカルボニル基、シアノ基、イソシアナート基、アミノ基、アンモニウム基、ピリジニウム基、アジニル基、カルボキシル基、ベンゾトリアゾール基、トリアジンチオール基等が挙げられる。
微細凹凸構造11上に官能基が付加されている場合、金属部材(C)と樹脂部材(A)とがより強固に接合し、強度および信頼性により一層優れた金属と樹脂の接合体を得ることができる。これにより、内容物の漏洩をより一層防止できる金属樹脂接合体、コールドプレートおよび冷却装置を得ることができる。
【0030】
金属部材(C)の形状は、樹脂部材(A)と接合できる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状等とすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。
また、樹脂部材(A)と接合する接合部表面の形状は、特に限定されないが、平面、曲面等が挙げられる。
【0031】
金属部材(C)は、金属材料を切断、プレス等による塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工によって上述した所定の形状に加工された後に、後述する粗化処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。
必要な形状に加工された金属部材(C)は、長期間の自然放置で表面に酸化皮膜である錆の存在が明らかなものは研磨、化学処理等でこれを取り除くことが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る金属部材(C)は、表面の少なくとも一部分に微細凹凸構造11を有する。微細凹凸構造11は、例えば、金属部材(C)の表面を粗化処理することによって得られる粗化処理部である。
本実施形態に係る金属部材(C)が微細凹凸構造11を有することにより、光硬化性層(B)が金属部材(C)表面の微細凹凸構造11に入り込むため、光硬化性層(B)と金属部材(C)との密着性が高まり、その結果、樹脂部材(A)と金属部材(C)との接合強度をより向上させることができる。
【0033】
本実施形態に係る微細凹凸構造11における凹部の平均孔径は、例えば5nm以上250μm以下、好ましくは10nm以上150μm以下、より好ましくは15nm以上100μm以下である。
本実施形態に係る微細凹凸構造11における凹部の平均孔深さ、例えば5nm以上250μm以下、好ましくは10nm以上150μm以下、より好ましくは15nm以上100μm以下である。
微細凹凸構造11における凹部の平均孔径および/または平均孔深さが上記下限値以上であると、微細凹凸構造11の凹部に光硬化性層(B)が十分に進入することができ、光硬化性層(B)と金属部材(C)との密着性がより一層高まり、その結果、樹脂部材(A)と金属部材(C)との接合強度をより向上させることができる。また、微細凹凸構造11における凹部の平均孔径および/または平均孔深さが上記上限値以下であると、得られる金属樹脂接合体20の金属―樹脂界面に隙間が生じるのをより抑制できる。その結果、内容物の漏洩をより一層抑制することができる。
【0034】
ここで、凹部の孔径および孔深さは電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡を用いることによって求めることができる。具体的には、金属部材(C)の表面および表面の断面を撮影する。得られた写真から、例えば、任意の凹部を50個選択し、それらの凹部の孔径および孔深さから、凹部の平均孔径および平均孔深さをそれぞれ算出することができる。
【0035】
金属部材(C)における微細凹凸構造11を形成する方法としては様々な公知の方法を使用できる。例えば、特許第4020957号に開示されているようなレーザー加工を用いる方法;NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等の無機酸水溶液に金属部材を浸漬する方法;特許第4541153号に開示されているような陽極酸化法により金属部材を処理する方法;国際公開第2015-8847号に開示されているような酸系エッチング剤、好ましくは、無機酸、第二鉄イオン、第二銅イオンおよび必要に応じてマンガンイオンや塩化アルミニウム六水和物、塩化ナトリウム等を含む酸系エッチング剤水溶液によってエッチングする置換晶析法;国際公開第2009/31632号に開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に金属部材を浸漬する方法(以下、NMT法と呼ぶ場合がある);特開2008-162115号公報に開示されているような温水処理法;ブラスト処理等が挙げられる。これらの方法は、使用する金属材料の金属種類や、微細凹凸構造11の孔構造によって上記エッチング方法を任意に使い分けることが可能である。
【0036】
金属部材(C)における微細凹凸構造11の表面上に官能基を付加してもよい。金属部材(C)における微細凹凸構造11の表面上への官能基付加処理は、粗面化処理と同時、又は粗面化処理の後に行うことができる。
金属部材(C)における微細凹凸構造11の表面上に官能基を付加する方法としては、公知の方法のいずれでもよく、特に限定されないが、例えば、官能基を持つ化学物質の水溶液中、もしくはメチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、アセトン、トルエン、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアルデヒド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ベンゼン、酢酸エチルエーテル等の有機溶剤を溶媒とした溶液中に金属部材を浸漬する方法:官能基を持つ化学物質を金属部材表面にコーティングもしくはスプレーする方法;官能基を持つ化学物質からなるフィルムを金属部材表面上に積層する方法等が挙げられる。
例えば、官能基を持つ化学物質を含有する液体を用いてウェットエッチング処理、化成処理、陽極酸化処理等を行うことにより、粗面化と官能基付加を同時に行うこともできる。
また、金属部材(C)における微細凹凸構造11の表面上にさらに官能基を付加した場合、官能基によって接合面での光硬化性層(B)との化学的な結合が増え、光硬化性層(B)との密着性や、樹脂部材(A)との接合強度がより向上するものと考えられる。
【0037】
4.金属樹脂接合体
本実施形態に係る金属樹脂接合体20は、本実施形態に係る物品10における光硬化性層(B)を硬化してなり、樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、金属部材(C)の微細凹凸構造11部分の少なくとも一部分とが、光硬化性層(B)の硬化体(B’)を介して接合している。
【0038】
本実施形態に係る金属樹脂接合体20の製造方法は、以下の(i)および(ii)の工程を含むことが好ましい。
(i)本実施形態に係る物品10を準備する工程
(ii)本実施形態に係る物品10に光を照射することにより光硬化性層(B)を硬化させる工程
以下、具体的に説明する。
【0039】
まず、本実施形態に係る物品10は、例えば、表面の少なくとも一部分に微細凹凸構造11を有する金属部材(C)上に光硬化性層(B)を付与し、次いで、光硬化性層(B)上に樹脂部材(A)を配置することにより得ることができる。
【0040】
ここで、表面の少なくとも一部分に微細凹凸構造11を有する金属部材(C)上に光硬化性層(B)を付与する方法としては、例えば、金属部材(C)上に光硬化性接着剤をコーティングまたはスプレーする方法や、金属部材(C)上にフィルム状の光硬化性接着剤を貼り付ける方法等が挙げられる。
【0041】
また、光硬化性層(B)に樹脂部材(A)を配置する方法としては、例えば、事前に成形しておいた樹脂部材(A)を光硬化性層(B)上に配置する方法や、樹脂部材(A)を形成するための、溶融または溶液状態の樹脂組成物を光硬化性層(B)上に付与し、次いで、上記樹脂組成物を固化させることによって樹脂部材(A)を光硬化性層(B)上に形成する方法等が挙げられる。樹脂部材(A)の特定の一部分のみを金属部材(C)と接合させる場合は、事前に成形しておいた樹脂部材(A)を光硬化性層(B)上に配置する方法が望ましい。
【0042】
次いで、準備した物品10に光を照射することにより光硬化性層を硬化させる。これにより、樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、金属部材(C)の微細凹凸構造11部分の少なくとも一部分とが、光硬化性層(B)の硬化体(B’)を介して接合し、本実施形態に係る金属樹脂接合体20が得られる。
【0043】
光の照射による光硬化性層(B)を硬化させる方法は、公知のいずれの方法でもよい。
光硬化性接着剤として特にUV硬化性接着剤を用いる場合は、光としては、例えば10~400nm波長のUV光を用いることができ、好ましくは100~400nm波長のUV光、より好ましくは315~400nm波長のUVA光を用いることができる。
UV光は、適当な電圧、適当な強度及び適当な波長を有する公知のランプによって提供でき、UV光を用いた硬化は任意の適当な時間でよく、UVランプと光硬化性層(B)との距離は任意の適当な距離であってよい。これら硬化条件は当業者であれば適宜決定することができる。
【0044】
5.金属樹脂接合体の用途およびコールドプレート
本実施形態に係る金属樹脂接合体20は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属樹脂接合体20は、高い耐熱性、機械特性、耐摩擦性、摺動性、気密性、水密性が発現するので、これらの特性に応じた用途に好適に用いられる。
【0045】
例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
【0046】
より具体的には、樹脂だけでは強度が足りない部分を金属がサポートする様にデザインされた次のような部品である。車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ステアリングホイール、ECUボックス、電装部品、エンジン周辺部品、駆動系・ギア周辺部品、吸気・排気系部品、冷却系部品等が挙げられる。また、建材や家具類として、ガラス窓枠、手すり、カーテンレール、たんす、引き出し、クローゼット、書棚、机、椅子等が挙げられる。また、精密電子部品類として、コネクタ、リレー、ギア等が挙げられる。また、輸送容器として、輸送コンテナ、スーツケース、トランク等が挙げられる。
【0047】
また、金属部材(C)の高い熱伝導率と、樹脂部材(A)の断熱的性質とを組み合わせ、ヒートマネージメントを最適に設計する機器に使用される部品用途、例えば、各種家電にも用いることができる。具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカー等の家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器等が挙げられる。
【0048】
その他の用途として、玩具、スポーツ用具、靴、サンダル、鞄、フォークやナイフ、スプーン、皿等の食器類、ボールペンやシャープペン、ファイル、バインダー等の文具類、フライパンや鍋、やかん、フライ返し、おたま、穴杓子、泡だて器、トング等の調理器具、リチウムイオン2次電池用部品、ロボット等が挙げられる。
【0049】
本実施形態に係る金属樹脂接合体20の用途は特に限定されないが、その強固な密着性能から、内容物の漏洩防止を目的とした中空物品として好ましく用いることができ、内容物の漏洩防止を目的とした中空物品としては、例えば熱交換器、より具体的には、内部に冷媒の流路を有するコールドプレート等が挙げられる。
また、本実施形態に係る金属樹脂接合体20は、軽量化を目的として金属部位の一部を樹脂に置き換えた容器や電子機器筐体としても好適に用いることができ、特に本実施形態において透明樹脂を用いた場合は、視認性や外観に優れた容器や電子機器筐体を得ることができる。
【0050】
以下、本実施形態に係るコールドプレート30について説明する。
本実施形態に係るコールドプレート30の構造の一例を図1に模式的に示すが、本実施形態に係るコールドプレート30はこの形状に限定されるものではない。
本実施形態に係るコールドプレート30は、例えば、金属製プレートと、金属製プレート上に設けられた樹脂製ケースと、を備える。樹脂製ケースは、冷媒が流通可能な空間(中空部分13)を形成するように金属製プレート上に設けられており、かつ、少なくとも一部分が透光性を有する。また、本実施形態に係る金属樹脂接合体20を用いたコールドプレート30の場合、図1に示すように、金属製プレートが金属部材(C)に相当し、樹脂製ケースが樹脂部材(A)に相当する。また、図1において、中空部分13が、冷媒が流通可能な空間に相当する。
【0051】
金属製プレートとしては、熱伝導性に優れる点から、アルミニウム製プレート、アルミニウム合金製プレート、銅製プレートおよび銅合金製プレートから選択される少なくとも一種が好ましく、銅製プレートおよび銅合金製プレートが特に好ましい。
【0052】
以上、本実施形態に係る金属樹脂接合体20の用途について述べたが、これらは用途の例示であり、上記以外の様々な用途に用いることもできる。
【0053】
6.冷却装置
図2は、本発明に係る実施形態の冷却装置100の構造の一例を模式的に示した外観図である。
本実施形態に係る冷却装置100は、本実施形態に係るコールドプレート30を備えている。そのため、長期にわたって冷媒が漏洩することがなく、信頼性に優れている。
【0054】
本実施形態に係る冷却装置100は、発熱体をさらに備え、発熱体がコールドプレート30に熱的に接続されており、コールドプレート30内(例えば、図1における中空部分13)を冷媒Reが流通または循環する構造を有することが好ましい。また、ポンプの駆動力によって冷媒Reがライン103を循環しており、コールドプレート30によって発熱体が冷却されるような構造を有することが好ましい。こうすることにより、発熱体を効果的に冷却することができる。
冷却装置100におけるコールドプレート30は1つでもよいが、複数連結することが好ましい。また、図2に示すように、複数のコールドプレート30をマニホールド105やチューブ107によって連結することによって、冷却部101とすることができる。これにより、発熱体をより効果的に冷却することが可能となる。
マニホールド105は冷媒を分流するための部材である。マニホールド105としては特に限定されないが、例えば、銅製のマニホールドを用いることができる。
チューブ107は、マニホールド105から出た冷媒Reが通るチューブである。チューブ107としては特に限定されないが、例えば、樹脂製のチューブを用いることができる。
【0055】
コールドプレート30には冷媒の流入口および流出口が設けられており、コールドプレート30を複数連結する場合は、冷媒流れの上流側に位置するコールドプレート30の流出口と下流側に位置するコールドプレート30の流入口を管部品等で連結する。
冷媒としては、公知の液状冷媒を用いることができる。例えば、水や3M製NovecTM等の市販されている冷媒を用いることができる。
本実施形態に係るコールドプレート30を構成する樹脂部材(A)として透明性樹脂部材を用いる場合は、着色した液状冷媒を用いることが好ましい。
【0056】
本実施形態に係る冷却装置100は、いかなる発熱体の冷却装置として用いてもよいが、例えば、システムボード上のCPU等の電子部品等の電子装置の冷却装置として好適に用いることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
[1]
少なくとも一部分に透光性を有する樹脂部材(A)と、光硬化性層(B)と、表面の少なくとも一部分に微細凹凸構造を有する金属部材(C)と、を備える物品であって、
上記樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、上記金属部材(C)の上記微細凹凸構造部分の少なくとも一部分とが、上記光硬化性層(B)を介して接している物品。
[2]
上記[1]に記載の物品において、
上記金属部材(C)が、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材および銅合金製部材から選択される少なくとも一種を含む物品。
[3]
上記[1]または[2]に記載の物品において、
上記樹脂部材(A)が、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン系樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリケトン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種を含む物品。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の物品において、
上記樹脂部材(A)が透明性樹脂を含む物品。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の物品において、
上記光硬化性層(B)が光硬化性接着剤により構成される物品。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の物品において、
上記金属部材(C)の上記微細凹凸構造における凹部の平均孔径が5nm以上250μm以下であり、上記凹部の平均孔深さが5nm以上250μm以下である物品。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の物品における上記光硬化性層を硬化してなる金属樹脂接合体であって、
上記樹脂部材(A)における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、上記金属部材
(C)の上記微細凹凸構造部分の少なくとも一部分とが、上記光硬化性層(B)の硬化体を介して接合している金属樹脂接合体。
[8]
上記[7]に記載の金属樹脂接合体において、
上記樹脂部材(A)と上記金属部材(C)との間に中空部分を有する金属樹脂接合体。
[9]
上記[7]または[8]に記載の金属樹脂接合体を製造するための製造方法であって、
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の物品を準備する工程と、
上記物品に光を照射することにより上記光硬化性層を硬化させる工程と、
を含む金属樹脂接合体の製造方法。
[10]
上記[7]または[8]に記載の金属樹脂接合体を備えるコールドプレート。
[11]
上記[10]に記載のコールドプレートにおいて、
当該コールドプレートは、金属製プレートと、上記金属製プレート上に設けられた樹脂製ケースと、を備え、
上記樹脂製ケースは、冷媒が流通可能な空間を形成するように上記金属製プレート上に設けられており、かつ、少なくとも一部分が透光性を有し、
上記金属製プレートが上記金属部材であり、
上記樹脂製ケースが上記樹脂部材であるコールドプレート。
[12]
金属製プレートと、上記金属製プレート上に設けられた樹脂製ケースと、を備えるコールドプレートであって、
上記樹脂製ケースは、冷媒が流通可能な空間を形成するように上記金属製プレート上に設けられており、かつ、少なくとも一部分が透光性を有するコールドプレート。
[13]
上記[12]に記載のコールドプレートにおいて、
上記金属製プレートが、アルミニウム製プレート、アルミニウム合金製プレート、銅製プレートおよび銅合金製プレートから選択される少なくとも一種を含むコールドプレート。
[14]
上記[10]乃至[13]のいずれか一つに記載のコールドプレートを備える冷却装置。
[15]
上記[14]に記載の冷却装置において、
発熱体をさらに備え、上記発熱体が上記コールドプレートに熱的に接続されており、
上記コールドプレート内を冷媒が流通または循環する構造を有する冷却装置。
【実施例
【0057】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0058】
(金属部材(C)の微細凹凸構造の分析)
金属部材(C)の微細凹凸構造の平均孔径および平均孔深さは、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製VK-X100)を用いて測定した。具体的には、金属部材(C)の表面および表面の断面を撮影し、得られた写真から、任意の凹部を50個選択し、それらの凹部の孔径および孔深さから、凹部の平均孔径および平均孔深さをそれぞれ算出した。
【0059】
(金属樹脂接合体の接合強度の測定)
引張試験機「モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引張試験機に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件にて測定をおこなった。破断荷重(N)を金属/樹脂接合部分の面積で除することにより接合強度(引張りせん断強度)(MPa)を得た。
【0060】
(信頼性試験)
実施例および比較例で得られたコールドプレートの中空部分に対し、1MPaの空気圧を加え続け、空気圧を加えてから30分後の金属/樹脂接合部分の状態を観察し、以下の基準により金属樹脂接合体(コールドプレート)の信頼性を評価した。
○:接合部分に変化なし
×:接合部分から空気の漏れが発生
【0061】
[表面処理金属部材の調製例1]
銅板を薬液(メック社製の製品名:アマルファA-10201)に5分間浸漬させることによって銅板の表面をエッチングした。次いで、表面をエッチングした銅板について、水洗、アルカリ洗浄(5%のNaOH水溶液中に20秒間の浸漬処理)、水洗、中和処理(5%のHSO水溶液中に20秒間の浸漬処理)、水洗を連続的に行い、表面処理金属部材1を得た。
得られた表面処理金属部材1の微細凹凸構造の平均孔径および平均孔深さはそれぞれ5nm以上250μm以下の範囲内であった。
【0062】
[表面処理金属部材の調製例2]
銅板の代わりにアルミニウム板を用いた以外は表面処理金属部材の調製例1と同様にして表面処理金属部材2を得た。
得られた表面処理金属部材2の微細凹凸構造の平均孔径および平均孔深さはそれぞれ5nm以上250μm以下の範囲内であった。
【0063】
[表面処理金属部材の調製例3]
表面処理金属部材1を、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジンモノナトリウム塩(三協化成社製の製品名:サンチオールN-1)の0.1mol/Lの水溶液に5分間浸漬させた。次いで、得られた銅板を、シランカップリング剤である0.05mol/Lの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製の製品名:KBE903)水溶液に浸漬させた。その後、銅板を100℃で30分間乾燥させた。これにより、表面処理金属部材3を得た。
【0064】
[表面処理金属部材の調製例4]
表面処理金属部材1の代わりに表面処理金属部材2を用いた以外は表面処理金属部材の調製例3と同様にして表面処理金属部材4を得た。
【0065】
〔実施例1〕
表面処理金属部材1上にUV硬化性接着剤(DYMAX社製、製品名:1405M-T-UR-SC)を付与し、厚さ0.03mmの光硬化性層1を形成した。次いで、事前に板状に成形したポリカーボネート樹脂(LOTTE Advanced Materials社製、製品名:SC1100R)製の樹脂部材1を光硬化性層1上に配置した。
次いで、UV照射装置(Conveyor type、Han KOOK Ultra VIOLET社製)およびUVランプ(水銀ランプ、SAMIL UV HG-3000)を用いて、波長:UV-A、紫外線強度:3600mJ/cm(170mW/cm)、コンベア速度:11mm/秒、UV照射時間:90秒の条件で、光硬化性層1に紫外線を照射することによって光硬化性層1を硬化させ、その結果、表面処理金属部材1と樹脂部材1とを接合させ、金属樹脂接合体1を得た。得られた金属樹脂接合体1について接合強度の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0066】
また、表面処理金属部材1上にUV硬化性接着剤(DYMAX社製、製品名:1405M-T-UR-SC)を付与し、厚さ0.03mmの光硬化性層1を形成した。次いで、事前にケース状に成形したポリカーボネート樹脂(LOTTE Advanced Materials社製、製品名:SC1100R)製の樹脂製ケース1を光硬化性層1上に配置した。
次いで、UV照射装置(Conveyor type、Han KOOK Ultra VIOLET社製)およびUVランプ(水銀ランプ、SAMIL UV HG-3000)を用いて、波長:UV-A、紫外線強度:3600mJ/cm(170mW/cm)、コンベア速度:11mm/秒、UV照射時間:90秒の条件で、光硬化性層1に紫外線を照射することによって光硬化性層1を硬化させ、その結果、表面処理金属部材1と樹脂製ケース1とを接合させ、図1に示すコールドプレート200のようなコールドプレート1を得た。得られたコールドプレート1の信頼性の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0067】
〔実施例2〕
表面処理金属部材1の代わりに表面処理金属部材2を用いた以外は実施例1と同様にして金属樹脂接合体2およびコールドプレート2をそれぞれ得た。得られた金属樹脂接合体2およびコールドプレート2について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0068】
〔実施例3〕
表面処理金属部材1の代わりに表面処理金属部材3を用いた以外は実施例1と同様にして金属樹脂接合体3およびコールドプレート3をそれぞれ得た。得られた金属樹脂接合体3およびコールドプレート3について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0069】
〔実施例4〕
表面処理金属部材1の代わりに表面処理金属部材4を用いた以外は実施例1と同様にして金属樹脂接合体4およびコールドプレート4をそれぞれ得た。得られた金属樹脂接合体4およびコールドプレート4について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0070】
〔比較例1〕
表面処理金属部材1の代わりにエッチング処理をしていない銅板を用いた以外は実施例1と同様にして金属樹脂接合体5およびコールドプレート5をそれぞれ得た。得られた金属樹脂接合体5およびコールドプレート5について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0071】
〔比較例2〕
光硬化性層を形成しない以外は実施例1と同様にして金属樹脂接合体6およびコールドプレート6をそれぞれ得た。得られた金属樹脂接合体6およびコールドプレート6について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【符号の説明】
【0073】
A 樹脂部材
B 光硬化性層
B’ 光硬化性層の硬化体
C 金属部材
Re 冷媒
10 物品
11 微細凹凸構造
13 中空部分
20 金属樹脂接合体
30 コールドプレート
100 冷却装置
101 冷却部
103 ライン
105 マニホールド
107 チューブ
図1
図2