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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】液体加熱装置及び洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 648K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018035652
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019153617
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 和弘
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-067636(JP,A)
【文献】特開2016-157852(JP,A)
【文献】特開2017-208418(JP,A)
【文献】特開2012-057904(JP,A)
【文献】特開2008-096057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/027
B08B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に供給される第1液体が流れる分岐流路と接続される循環流路と、
前記循環流路に配置され、前記循環流路を流れる前記第1液体を加熱する加熱装置と、
前記対象に対する前記第1液体の供給が停止されている状態で前記循環流路を流れる前記第1液体を冷却する冷却装置と、を備え
前記冷却装置は前記循環流路と独立して配置され、前記加熱装置が加熱中に前記冷却装置から第2液体を前記循環流路に供給し、前記第1液体を冷却する、
液体加熱装置。
【請求項2】
前記循環流路は、タンクを含み、
前記冷却装置は、供給源から前記タンクに供給される第2液体の流量を調整する第1バルブ装置を含む、
請求項1に記載の液体加熱装置。
【請求項3】
前記タンクから排出される前記第1液体の流量を調整する第2バルブ装置を備える、
請求項2に記載の液体加熱装置。
【請求項4】
前記タンクの上部に設けられ前記タンクに収容されている前記第1液体の少なくとも一部が流出する排出口を備える、
請求項2に記載の液体加熱装置。
【請求項5】
前記冷却装置は、前記加熱装置が作動している状態で、前記第1液体を冷却する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体加熱装置。
【請求項6】
前記加熱装置は、ランプヒータを含む、
請求項5に記載の液体加熱装置。
【請求項7】
前記第1液体は、純水である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の液体加熱装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の液体加熱装置を備え、
前記対象は、洗浄装置を含み、前記液体加熱装置から供給された前記第1液体で洗浄対象を洗浄する、
洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体加熱装置及び洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、半導体ウエハを洗浄する洗浄処理、半導体ウエハにフォトレジストを塗布する塗布処理、フォトレジストが塗布された半導体ウエハを露光する露光処理、及び露光後の半導体ウエハをエッチングするエッチング処理のような複数の処理を経て製造される。
【0003】
半導体ウエハの洗浄処理において、半導体ウエハは、加熱された純水で洗浄される。純水は、加熱装置によって加熱された後、半導体ウエハを洗浄する洗浄装置に供給される。加熱された純水のうち半導体ウエハの洗浄に使用されなかった純水は加熱装置に戻される場合がある。洗浄に使用されなかった純水が加熱装置を含む循環流路において循環することにより、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-067636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱装置を停止後に再起動させると、目標温度まで温度上昇させるのに時間を要し、不要なエネルギーを消費してしまう。そのため、洗浄装置から液体が要求されなくても、循環流路において液体を循環させながら加熱装置の作動を維持することが好ましい。一方、加熱装置が作動している状態で循環流路において純水を循環し続けると、純水の温度が過度に高くなってしまう可能性がある。
【0006】
本発明の態様は、加熱装置を含む循環流路を流れる液体を適正な温度に維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に従えば、対象に供給される第1液体が流れる分岐流路と接続される循環流路と、前記循環流路に配置され、前記循環流路を流れる前記第1液体を加熱する加熱装置と、前記対象に対する前記第1液体の供給が停止されている状態で、前記循環流路を流れる前記第1液体を冷却する冷却装置と、を備える液体加熱装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、加熱装置を含む循環流路を流れる液体を適正な温度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る洗浄システムを模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る洗浄システムを模式的に示す図である。
図3図3は、実施形態に係る洗浄システムの動作を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る洗浄システムを模式的に示す図である。
図5図5は、液体の温度と加熱装置の操作量との関係を示す図である。
図6図6は、液体の温度と加熱装置の操作量との関係を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る洗浄システムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
[洗浄システム]
図1は、本実施形態に係る洗浄システムCSを模式的に示す図である。図1において、洗浄システムCSは、洗浄用の液体LQ1(第1液体)を加熱する液体加熱装置100と、液体加熱装置100で加熱された液体LQ1が供給される洗浄装置30とを備える。洗浄装置30は、液体加熱装置100からの液体LQ1が供給される対象である。洗浄装置30は、液体加熱装置100から供給された液体LQ1で洗浄対象を洗浄する。本実施形態において、洗浄対象は、半導体ウエハである。液体LQ1は、純水である。
【0012】
液体加熱装置100は、タンク1を含む循環流路10と、循環流路10に配置されるポンプ5と、循環流路10を流れる液体LQ1を加熱する加熱装置2と、タンク1に接続される供給流路7と、タンク1に接続される排出流路9と、供給流路7に配置される第1バルブ装置3と、排出流路9に配置される第2バルブ装置4と、液体加熱装置100を制御する制御装置20とを備える。
【0013】
また、液体加熱装置100は、加熱装置2で加熱された液体LQ1の温度を示す出口温度を検出する温度センサ6と、タンク1に収容される液体LQ1の量を検出する液面センサ8とを備える。
【0014】
循環流路10は、分岐流路31と接続される分岐部DPを有する。分岐流路31は、分岐部DPにおいて循環流路10から分岐する。洗浄装置30に供給される液体LQ1は、分岐部DPにおいて循環流路10から分岐して、分岐流路31を流れる。
【0015】
循環流路10は、タンク1と、タンク1と加熱装置2の入口とを接続する流路10Aと、加熱装置2の出口と分岐部DPとを接続する流路10Bと、分岐部DPとタンク1とを接続する流路10Cとを含む。
【0016】
ポンプ5は、流路10Aに配置される。ポンプ5の作動により、液体LQ1は、循環流路10を流れる。タンク1に収容されている液体LQ1は、流路10Aを介して加熱装置2に供給され、加熱装置2によって加熱された後、流路10Bを流れる。流路10Bを流れた液体LQ1は、流路10Cを介してタンク1に戻される。
【0017】
液面センサ8は、タンク1に設けられる。液面センサ8は、タンク1に収容されている液体LQ1の表面の高さを検出して、タンク1に収容されている液体LQ1の量を検出する。
【0018】
温度センサ6は、流路10Bに配置される。温度センサ6は、加熱装置2で加熱された後の液体LQ1の温度を示す出口温度を検出する。温度センサ6は、加熱装置2の出口の近傍における流路10Bに配置される。
【0019】
加熱装置2は、循環流路10に配置される。加熱装置2は、ハロゲンランプのようなランプヒータを含む。ランプヒータは、輻射熱で液体LQ1を加熱する。ランプヒータは、液体LQ1の汚染を抑制して、液体LQ1を加熱することができる。
【0020】
加熱装置2は、ノイズの発生が少ないサイクル制御によって制御される。加熱装置2を起動するとき、加熱装置2に突入電流が入力されることを抑制するために、ソフトスタートが実施される。ソフトスタートとは、ランプヒータに与える電圧を一定の変化率で増加させることによって、ランプヒータの温度を徐々に上昇させる起動方法をいう。ソフトスタートにより、ランプヒータの温度が徐々に上昇し、ランプヒータに対する突入電流の入力が抑制される。
【0021】
加熱装置2は、液体LQ1を目標温度に加熱する。目標温度は、例えば80[℃]である。加熱装置2は、流路10Aから供給された液体LQ1を加熱して、流路10Bに送る。加熱装置2によって加熱され、流路10Bを流れる液体LQ1は、流路10C及び分岐流路31の少なくとも一方に供給される。
【0022】
供給流路7は、タンク1と接続される。タンク1は、供給流路7を介して液体LQ2(第2液体)の供給源と接続される。供給源は、洗浄システムCSが設置される工場の設備として工場に設けられる。供給源は、規定温度の液体LQ2を送出する。規定温度は、目標温度よりも低い。規定温度は、例えば23[℃]である。供給源から送出された液体LQ2は、供給流路7を介してタンク1に供給される。液体LQ2は、純水である。
【0023】
第1バルブ装置3は、供給流路7に配置される。第1バルブ装置3は、供給源からタンク1に供給される液体LQ2の流量を調整する。第1バルブ装置3は、循環流路10を流れる液体LQ1を冷却する冷却装置として機能する。
【0024】
第1バルブ装置3は、供給源から供給された液体LQ2をタンク1に送ることによって、循環流路10を流れる液体LQ1を冷却する。加熱装置2で加熱された液体LQ1は、流路10B及び流路10Cを介してタンク1に供給される。供給源から送出された液体LQ2の温度は、加熱装置2で加熱された液体LQ1の温度よりも低い。そのため、第1バルブ装置3は、供給源から送出された液体LQ2をタンク1に送ることによって、タンク1の液体LQ1を冷却することができる。
【0025】
また、第1バルブ装置3は、タンク1に供給される液体LQ2の流量を調整することによって、循環流路10を流れる液体LQ1の温度を調整することができる。また、第1バルブ装置3は、供給源からタンク1に対する液体LQ2の供給を停止することができる。
【0026】
第1バルブ装置3は、ノーマルポートと、絞りポートと、クローズポートとを含む。供給流路7と第1バルブ装置3のノーマルポートとが接続されることにより、供給源から送出された液体LQ2は、第1流量でタンク1に供給される。供給流路7と第1バルブ装置3の絞りポートとが接続されることにより、供給源から送出された液体LQ2は、第1流量よりも少ない第2流量でタンク1に供給される。供給流路7と第1バルブ装置3のクローズポートとが接続されることにより、供給源からタンク1に対する液体LQ2の供給が停止される。
【0027】
排出流路9は、タンク1と接続される。タンク1の液体LQ1は、排出流路9を介して排出される。排出流路9を介してタンク1から排出された液体LQ1は、廃棄される。
【0028】
第2バルブ装置4は、排出流路9に配置される。第2バルブ装置4は、タンク1から排出される液体LQ1の流量を調整する。
【0029】
第2バルブ装置4は、ノーマルポートと、絞りポートと、クローズポートとを含む。排出流路9と第2バルブ装置4のノーマルポートとが接続されることにより、タンク1の液体LQ1は、第1流量でタンク1から排出される。排出流路9と第2バルブ装置4の絞りポートとが接続されることにより、タンク1の液体LQ1は、第1流量よりも少ない第2流量でタンク1から排出される。排出流路9と第2バルブ装置4のクローズポートとが接続されることにより、タンク1からの液体LQ1の排出が停止される。
【0030】
流量調整バルブ32が分岐流路31に配置される。流量調整バルブ32は、分岐流路31を流れる液体LQ1の流量を調整可能な可変流量調整バルブである。流量調整バルブ32は、分岐流路31を介して洗浄装置30に供給される液体LQ1の流量を調整する。流量調整バルブ32が開くと、洗浄装置30に液体LQ1が供給される。流量調整バルブ32が閉じると、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止される。
【0031】
流量調整バルブ33が流路10Cに配置される。流量調整バルブ33は、循環流路10を流れる液体LQ1の流量を調整可能な可変流量調整バルブである。流量調整バルブ33は、流路10Cを介してタンク1に供給される液体LQ1の流量を調整する。流量調整バルブ33が開くと、タンク1に液体LQ1が供給され、液体は循環流路10を循環する。流量調整バルブ33が閉じると、タンク1に対する液体LQ1の供給が停止される。
【0032】
流量調整バルブ32の開度及び流量調整バルブ33の開度に基づいて、循環流路10を流れる液体LQ1の少なくとも一部が洗浄装置30に供給される。流量調整バルブ32が開くと、循環流路10を流れている液体LQ1の少なくとも一部が分岐部DPにおいて分岐流路31に分岐して、洗浄装置30に供給される。
【0033】
また、流量調整バルブ32の開度及び流量調整バルブ33の開度に基づいて、分岐部DPから洗浄装置30に供給される液体LQ1の流量と、分岐部DPからタンク1に供給される液体LQ1の流量とが調整される。
【0034】
流量調整バルブ32は、洗浄装置30の要求流量に基づいて、液体LQ1の流量を調整する。要求流量とは、洗浄装置30が要求する液体LQ1の流量をいう。循環流路10の分岐部DPにおける液体LQ1の流量が要求流量よりも多い場合、余剰な液体LQ1は、流路10Cを介してタンク1に戻され、循環流路10を循環する。
【0035】
制御装置20は、液体加熱装置100を制御する作動指令を出力する。制御装置20は、少なくとも第1バルブ装置3及び第2バルブ装置4を制御する作動指令を出力する。第1バルブ装置3及び第2バルブ装置4のそれぞれにソレノイドが接続される。制御装置20は、ソレノイドに作動指令を出力して、第1バルブ装置3及び第2バルブ装置4のそれぞれを作動させることができる。第1バルブ装置3及び第2バルブ装置4は、制御装置20から出力された作動指令に基づいて作動する。
【0036】
図1は、供給流路7と第1バルブ装置3のノーマルポートとが接続され、排出流路9と第2バルブ装置4のクローズポートとが接続されている状態を示す。また、流量調整バルブ32及び流量調整バルブ32のそれぞれが開き、循環流路10を流れる液体LQ1の一部が分岐流路31を流れて洗浄装置30に供給され、余剰な液体LQ1が流路10Cを介してタンク1に戻されて循環流路10を循環している状態を示す。
【0037】
洗浄装置30は、加熱装置2で加熱され、分岐流路31を介して供給された液体LQ1で半導体ウエハを洗浄する。洗浄に使用された液体LQ1は、廃棄される。
【0038】
[動作]
次に、本実施形態に係る洗浄システムCSの動作について説明する。
【0039】
タンク1に液体LQ1が収容されていない状態で液体加熱装置100を起動させる動作について説明する。図2は、本実施形態に係る洗浄システムCSを模式的に示す図である。
【0040】
タンク1に液体LQ1が収容されていない状態で液体加熱装置100を起動させるとき、制御装置20は、供給流路7と第1バルブ装置3のノーマルポートとを接続する。これにより、供給源から送出された液体LQ2が供給流路7を介してタンク1に供給される。また、制御装置20は、供給源から送出された液体LQ2が供給流路7を介してタンク1に供給されているとき、排出流路9と第2バルブ装置4のクローズポートとを接続する。
【0041】
制御装置20は、液面センサ8の検出データに基づいて、タンク1に収容された液体LQ1が上限値に到達したと判定したとき、供給流路7と第1バルブ装置3のクローズポートとを接続する。これにより、供給源からタンク1に対する液体LQ2の供給が停止する。
【0042】
流量調整バルブ32が閉じ、流量調整バルブ33が開いている状態で、制御装置20は、ポンプ5を起動する。これにより、図2に示すように、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止されている状態で、液体LQ1は循環流路10を循環する。
【0043】
循環流路10における液体LQ1の循環が開始された後、制御装置20は、加熱装置2を起動する。制御装置20は、温度センサ6の検出データに基づいて、加熱装置2で加熱された液体LQ1の出口温度が目標温度になるように、加熱装置2を制御する。
【0044】
次に、加熱装置2で加熱された液体LQ1を洗浄装置30に供給する動作について説明する。液体LQ1の出口温度が目標温度になった後、流量調整バルブ32が開く。これにより、図1に示したように、加熱装置2により加熱され循環流路10を循環している液体LQ1の少なくとも一部が、分岐流路31を介して洗浄装置30に供給される。洗浄装置30において洗浄に使用された液体は、廃棄される。
【0045】
洗浄装置30に対する液体LQ1の供給及び洗浄装置30における液体LQ1の廃棄により、循環流路10を循環する液体LQ1の量は減少し、タンク1に収容されている液体LQ1の量は減少する。
【0046】
制御装置20は、液面センサ8の検出データに基づいて、タンク1に収容されている液体LQ1が下限値よりも少ないと判定したとき、供給流路7と第1バルブ装置3のノーマルポートとを接続する。これにより、供給源から送出された液体LQ2が供給流路7を介してタンク1に供給される。供給源からの液体LQ2がタンク1を含む循環流路10に補充されることにより、タンク1に収容される液体LQ1は増量される。
【0047】
次に、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止されたときの動作について説明する。図3は、本実施形態に係る洗浄システムCSの動作を示す図である。図4は、本実施形態に係る洗浄システムCSを模式的に示す図である。
【0048】
洗浄装置30による洗浄処理が実施されないとき、洗浄装置30の要求流量はゼロになる。洗浄装置30による洗浄処理が実施されないとき、流量調整バルブ32が閉じられる。洗浄装置30は、液体加熱装置100の制御装置20に、液体LQ1の供給停止を要求する要求信号を出力する(ステップS1)。
【0049】
流量調整バルブ32が閉じられ、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止されると、液体LQ1は、循環流路10を循環する。
【0050】
洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止された状態においても、加熱装置2の作動は維持される。加熱装置2の作動を一旦停止させてしまうと、加熱装置2を再起動するとき、目標温度まで昇温させるのに時間を要し、不要なエネルギーを消費してしまう。また、加熱装置2を再起動するとき、上述のソフトスタートが必要となる。ソフトスタートが実施されている期間において、ソフトスタートによる外乱が入り、無制御状態となる。そのため、本実施形態においては、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止された状態で、循環流路10において液体LQ1が循環している状態においても、加熱装置2は停止されず、加熱装置2の作動が維持される。
【0051】
洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止された状態で、加熱装置2の作動を維持する場合、制御装置20は、加熱装置2を最低出力で作動させる(ステップS2)。これにより、加熱装置2の温度低下を抑制しつつ、エネルギー消費量を抑制することができる。
【0052】
加熱装置2の作動が維持されている状態で、循環流路10において液体LQ1が循環し続けると、液体LQ1の温度が過度に高くなってしまう可能性がある。
【0053】
そこで、制御装置20は、第1バルブ装置3を制御して、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止されている状態で、供給源からの液体LQ2をタンク1に供給して、循環流路10を流れる液体LQ1を冷却する。
【0054】
図4に示すように、制御装置20は、第1バルブ装置3を制御して、供給流路7と第1バルブ装置3の絞りポートとを接続する。これにより、規定温度の液体LQ2がタンク1に供給されるため、循環流路10を流れる液体LQ1の温度が低下する。また、供給源から送出された液体LQ2が第1バルブ装置3を介してタンク1に供給されることにより、加熱装置2が最低出力で作動している状態で、循環流路10を流れる液体LQ1は冷却される。
【0055】
また、図4に示すように、制御装置20は、第2バルブ装置4を制御して、排出流路9と第2バルブ装置4の絞りポートとを接続する。これにより、供給流路7を介してタンク1を含む循環流路10に液体LQ2が供給されても、タンク1から液体LQ1があふれてしまうことが抑制される。本実施形態においては、第1バルブ装置3の絞りポートを介してタンク1に供給される液体LQ2の流量と、第2バルブ装置4の絞りポートを介してタンク1から排出される液体LQ1の流量とは、同じ量である。
【0056】
なお、制御装置20は、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止された後、供給流路7と第1バルブ装置3のクローズポートとが接続されている状態を維持してもよい。制御装置20は、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止された後、温度センサ6の検出データに基づいて、循環流路10を流れる液体LQ1の温度が予め規定されている閾値を超えたと判定したとき、供給流路7と第1バルブ装置3のクローズポートとが接続されている状態から、供給流路7と第1バルブ装置3の絞りポートとが接続されている状態に変化させてもよい。
【0057】
また、制御装置20は、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止された後、供給流路7と第1バルブ装置3のクローズポートとが接続されている状態及び供給流路7と第1バルブ装置3の絞りポートとが接続されている状態の一方から他方に交互に変化させてもよい。すなわち、制御装置20は、供給源からの液体LQ2をタンク1に断続的に供給してもよい。
【0058】
[液体の流量]
次に、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止されている状態で、第1バルブ装置3を介してタンク1に供給される液体LQ2の流量Qsについて説明する。
【0059】
循環流路10を流れる液体LQ1の循環流量をQc[L/min]、第1バルブ装置3の絞りポートを通過する液体LQ2の流量及び第2バルブ装置4の絞りポートを通過する液体LQ1の流量をQs[L/min]、液体LQ1の目標温度をSV[℃]、供給源から供給される液体LQ2の温度をTw[℃]、加熱装置2の最低出力をPmin[kW]、循環流路10における自然放熱量をΔT[℃]、熱量換算係数をKとする。
【0060】
最低出力Pminは、加熱装置2の性能(スペック)に基づいて定められる値である。自然放熱量ΔTは、加熱装置2が最低出力Pminで作動し、目標温度SVの液体LQ1が循環流路10を流れているときの流路10B及び流路10Cにおける自然放熱量である。熱量換算係数Kは、液体の固有値である。
【0061】
加熱装置2が最低出力Pminで作動しているときの加熱装置2の入口における液体LQ1の入口温度Tin_mは、以下の(1)式から導出される。
【0062】
【数1】
【0063】
タンク1において供給源から供給された液体LQ2と加熱装置2で加熱された液体LQ1とが混合される。そのため、液体LQ2が混合された後の液体LQ1の入口温度Tin_mは、以下の(2)式から導出される。
【0064】
【数2】
【0065】
自然放熱量ΔTが無い最悪条件(ΔT=0)を仮定すると、入口温度Tin_mは、以下の(3)式から導出される。
【0066】
【数3】
【0067】
以上より、供給源からタンク1に供給される必要な液体LQ2の流量Qsは、以下の(4)式から導出される。
【0068】
【数4】
【0069】
(4)式の条件を満足する絞りポートを有する第1バルブ装置3が供給流路7に配置されることにより、加熱装置2の作動を維持した状態で、循環流路10において液体LQ1を循環させても、循環流路10を循環する液体LQ1の温度が過度に上昇することが抑制される。
【0070】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止されたとき、循環流路10を流れる液体LQ1が冷却される。これにより、加熱装置2の作動を維持した状態で、循環流路10を循環する液体LQ1の温度が過度に上昇することが抑制される。
【0071】
図5及び図6は、加熱装置2が作動しているときの加熱装置2の入口における液体LQ1の入口温度Tinと、加熱装置2の出口における液体LQ1の出口温度PVと、加熱装置2の操作量MVとの関係を示す。
【0072】
図5に示すように、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止されている状態で、加熱装置2による液体LQ1の加熱が継続されると、入口温度Tinと出口温度PVとの差が徐々に小さくなる。出口温度PVが目標温度SVに到達したとき、入口温度Tinは出口温度PVよりもΔT[℃]だけ低い温度で定常状態となる。
【0073】
このとき、加熱装置2の操作量MVssは、加熱装置2の最低出力に対応する操作量MVminよりも大きい。ΔTは循環流路10の自然放熱量であり、定常状態において、
[自然放熱量]>[加熱装置2の最低出力] …(5)
であれば、目標温度SVでバランスさせることができる。
【0074】
ところが、図6に示すように、自然放熱量ΔTとバランスできる加熱装置2の操作量MVssが加熱装置2の最低出力に対応する操作量MVminよりも小さい場合、すなわち、
[自然放熱量]<[加熱装置2の最低出力] …(6)
である場合、加熱装置2の加熱能力が、循環流路10の自然放熱能力よりも勝るので、液体LQ1の温度が目標温度SVを過ぎても冷却しきれずに制御不能となってしまう。
【0075】
また、加熱装置2を停止した場合、上述のように、加熱再開時にはソフトスタートが必要となり、その間はソフトスタートによる外乱が入りかつ無制御状態となってしまう。
【0076】
本実施形態においては、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止され、且つ、加熱装置2が作動している状態で、循環流路10において液体LQ1を循環させるとき、供給源からの液体LQ2が循環流路10に投入される。これにより、
[自然放熱量]+[液体供給による冷却量]>[加熱装置2の最低出力] …(7)
を満たす状態が生成される。したがって、制御不能となる状態の発生が抑制される。
【0077】
[他の実施形態]
図7は、他の実施形態に係る洗浄システムCSを模式的に示す図である。図7に示す例において、第2バルブ装置4は、ノーマルポート及びクローズポートを有し、絞りポートを有しない。タンク1は、タンク1の上部に設けられた排出口11を有する。タンク1に収容される液体LQ1の表面の高さが規定高さ以上になると、タンク1に収容されている液体LQ1の少なくとも一部は、排出口11からタンク1の外部に流出する。
【0078】
循環流路10を流れる液体LQ1を冷却するとき、供給源からの液体LQ2が第1バルブ装置3を介してタンク1に供給される。供給源から送出された液体LQ2が第1バルブ装置3を介してタンク1に供給されることにより、加熱装置2が最低出力で作動している状態で、循環流路10を流れる液体LQ1は冷却される。
【0079】
供給源からタンク1に液体LQ2が供給され、タンク1に収容される液体LQ1の量が増えると、タンク1に収容されている液体LQ1の少なくとも一部が排出口11から排出される。本実施形態においては、第1バルブ装置3の絞りポートを介してタンク1に供給される液体LQ2の流量と、排出口11を介してタンク1から排出される液体LQ1の流量とは、同じ量である。
【0080】
なお、上述の実施形態においては、洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止されている状態で、供給源からの液体LQ2が第1バルブ装置3を介してタンク1に供給されることとした。循環流路10を流れる液体LQ1の少なくとも一部が洗浄装置30に供給されている状態で、供給源からの液体LQ2が第1バルブ装置3を介してタンク1に供給されてもよい。例えば、供給流路7と第1バルブ装置3のクローズポートとが接続されている状態で、循環流路10を流れる液体LQ1の少なくとも一部が洗浄装置30に供給されているときに、循環流路10を流れる液体LQ1の温度が上昇したとき、制御装置20は、温度センサ6の検出データに基づいて、循環流路10を流れる液体LQ1の温度が低下するように、供給流路7と第1バルブ装置3の絞りポートとを接続してもよい。これにより、第1バルブ装置3は、循環流路10を流れる液体LQ1の少なくとも一部が洗浄装置30に供給されている状態で、循環流路10の液体LQ1を冷却することができる。
【0081】
なお、上述の実施形態においては、冷却装置が第1バルブ装置3を含むこととした。洗浄装置30に対する液体LQ1の供給が停止されている状態で、循環流路10を流れる液体LQ1を冷却することができれば、冷却装置は第1バルブ装置3に限定されない。例えば、循環流路10がパイプ部材によって形成される場合、冷却装置が、パイプ部材の表面に接続されるペルチェ素子でもよい。
【0082】
上述の実施形態において、加熱装置2はランプヒータを含む。ランプヒータは、液体LQ1の汚染を抑制しつつ液体LQ1を効率良く加熱することができる。なお、加熱装置2は、ランプヒータでなくてもよい。
【0083】
上述の実施形態において、液体LQ1は水である。液体が水であることにより、半導体ウエハを洗浄することができる。なお、液体LQ1は水でなくてもよく、半導体製造工程に使用される薬液でもよい。
【0084】
上述の実施形態において、洗浄対象は半導体ウエハでなくてもよく、例えばガラス基板でもよい。
【0085】
上述の実施形態において、液体が供給される対象は洗浄装置でなくてもよく、例えば露光装置でもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…タンク、2…加熱装置、3…第1バルブ装置(冷却装置)、4…第2バルブ装置、6…温度センサ、7…供給流路、8…液面センサ、9…排出流路、10…循環流路、10A…流路、10B…流路、10C…流路、11…排出口、30…洗浄装置、31…分岐流路、32…流量調整バルブ、33…流量調整バルブ、20…制御装置、100…液体加熱装置、CS…洗浄システム、DP…分岐部、LQ1…液体(第1液体)、LQ2…液体(第2液体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7