(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】メタマテリアルコンタクトを備えるマイクロ電気機械スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 59/00 20060101AFI20220829BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H01H59/00
B81B3/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018042929
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-03-02
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503019176
【氏名又は名称】シナジー マイクロウェーブ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Synergy Microwave Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】シバン・ケイ・カウル
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・クマール・ポダー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ・エル・ローデ
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105742124(CN,A)
【文献】特開2010-061976(JP,A)
【文献】米国特許第06650527(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 51/00 - 59/00
B81B 1/00 - 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電気機械スイッチであって、
入力ポート及び出力ポートのそれぞれを有し、基板上に形成された第1の接地面と第2の接地面との間の前記基板上に形成された信号線と、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の可撓性中央部とを有する第1可撓性ビームであって、前記第1の端部は前記第1の接地面の上方に形成された第1のポストにより支持され、前記第2の端部は前記第2の接地面の上方に形成された第2のポストにより支持され、前記第1可撓性ビームの中央部は、前記入力ポートの少なくとも一部及び前記出力ポートの少なくとも一部の上方に位置し、前記可撓性中央部は、下方に撓むと、前記入力ポート及び前記出力ポートのそれぞれと接触するものである、第1可撓性ビームと、
前記第1の接地面及び前記第2の接地面のそれぞれに形成された1つ以上の欠陥接地構造と、
各欠陥接地構造と対応し、当該欠陥接地構造の上方に位置する第2可撓性ビームと
を備え、
前記スイッチは、好ましくは、
前記第1可撓性ビームに接続され、前記第1可撓性ビームに第1のバイアス電圧を印加する第1のアクチュエータであって、前記第1のバイアス電圧により、前記第1可撓性ビームが前記信号線に向かって下方に撓む、第1のアクチュエータと、
1つ以上の前記第2可撓性ビームのそれぞれに接続され、前記第2可撓性ビームのそれぞれに第2のバイアス電圧を印加する第2のアクチュエータであって、前記第2のバイアス電圧により、各第2可撓性ビームが、その対応する欠陥接地構造に向かって下方に撓む、第2のアクチュエータと
を更に備えるものである、マイクロ電気機械スイッチ。
【請求項2】
前記接地面にエッチングにより形成され、らせんを形成することにより欠陥接地面を形成する複数のスロットと、
各接地面における第1の欠陥接地構造及び第2の欠陥接地構造であって、前記第2の欠陥接地構造の長さ及び幅は、前記第1の欠陥接地構造の長さ及び幅より短い、第1の欠陥接地構造及び第2の欠陥接地構造と、
前記第2可撓性ビームに対して平行かつ前記第1可撓性ビームに対して垂直な方向に形成されている前記入力ポート及び前記出力ポートと
のうちの1つ又は任意の組み合わせを更に備える請求項1に記載のマイクロ電気機械スイッチ。
【請求項3】
複数の前記第2可撓性ビームはそれぞれ、第1の副ポストによって支持される第1の端部と、第2の副ポストによって支持される第2の端部とを有し、各第2可撓性ビームの底面が、前記第1の副ポスト及び前記第2の副ポストにより、前記接地面及び対応する前記欠陥接地構造の上方に架けられ、好ましくは、
前記第1可撓性ビームの上面は、前記信号線の表面よりも4ミクロン未満だけ高く、
各第2可撓性ビームの上面は、前記接地面の表面よりも2.5ミクロン未満だけ高い、
請求項1又は2に記載のマイクロ電気機械スイッチ。
【請求項4】
前記第1可撓性ビームの中央部は、格子構造を形成する複数の目打ち部を有し、前記目打ち部は前記第1可撓性ビームの柔軟性を高めるためのものであり、前記中央部の各角部は前記第1の端部又は前記第2の端部に向かって蛇行パターンで外向きに延びており、前記中央部の一方の側の前記延びている複数の角部は前記第1の端部において合流し、前記中央部の他方の側の前記延びている複数の角部は前記第2の端部において合流し
、好ましくは、
各第2可撓性ビームは格子構造を形成する複数の目打ち部を有し、前記目打ち部は前記第2可撓性ビームの柔軟性を高めるためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロ電気機械スイッチ。
【請求項5】
前記スイッチは、75GHzと130GHzとの間において-2dBよりも小さい挿入損失及び-20dBよりも大きいアイソレーションを達成し、好ましくは、前記第1可撓性ビームが作動し、前記第2可撓性ビームが作動しない結果として、75GHzと130GHzとの間において前記入力ポートと前記出力ポートとの間のアイソレーションが約-24dB又はそれよりも良好となる一方、前記第2可撓性ビームが作動し、前記第1可撓性ビームが作動しない結果として、75GHzと130GHzとの間において挿入損失が-1.5dB又はそれよりも良好となる、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ電気機械スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線周波数(RF)スイッチ、又はより具体的には、RFマイクロ電気機械システム(MEMS)スイッチに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年3月10日に出願された米国仮特許出願第62/469,752号の出願日の利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その開示内容を引用することにより、本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
RF MEMSスイッチは、これまで、送受信の用途における信号ルーティング、フェーズドアレイアンテナにおける交換回線(switched-line)の移相器、及び現在の通信システムにおける広帯域同調ネットワーク等の、マイクロ波及びミリメートル波の通信システムにおいて利用されている。MEMSは通常、シリコン酸化膜犠牲層をエッチングすることによってリリースされる可動機械部品を伴うシリコンベースの集積回路技術である。
【0004】
図1A~
図1Cに、カンチレバー式面外RF MEMSスイッチ100の例示的な回路設計を示す。
図1Aはスイッチの平面図であり、
図1BはX軸に沿ったスイッチの断面図であり、
図1CはY軸に沿ったスイッチの断面図である。
【0005】
本例のスイッチ100は、共平面導波路(又はコプレーナ導波路)(coplanar waveguide)101の上に形成される。基板105の接地面(ground plane)102と接地面104との間には、信号線110が形成される。信号線110は、基板105の両端部に形成されている入力ポート112及び出力ポート114を有する。カンチレバー式スイッチは、基板105に固定されたポスト120又はアンカーを有し、信号線110に対して垂直な方向において基板の上方にわたって延びている延長部を有する。カンチレバーの延長部は、ケイ酸塩等の誘電体材料の下層125と、金等の導電性材料130の上層130とを有する。カンチレバーは更に、下部誘電体層120の下に位置し、信号線ポート112、114と位置合わせされたコンタクトバンプ又はディンプル135を有する。したがって、カンチレバーが下方に曲げられると、ディンプル135が信号線110と接触し、それにより、入力ポート112と出力ポート114とが接続される。
【0006】
また、スイッチ100は、共平面導波路101のカンチレバーと接地102、104との間にDCバイアス電圧を印加するか、又はDCバイアス電圧を除去することによりカンチレバーを作動させる静電アクチュエータ(不図示)をも有する。アクチュエータからの印加電圧に応じて、カンチレバーは、信号線に向かう方向及び信号線から離れる方向にそれぞれ、下方及び上方に曲がる。他のRF MEMSスイッチは、カンチレバー式スイッチの可動部品をコンタクトに引き寄せるか、又はコンタクトから引き離すために、横方向への動きに頼る場合がある。可動部品及びコンタクトはそれぞれ金属とすることができるか(抵抗性スイッチ)、又は一方を金属、他方を誘電体とすることができる(容量性スイッチ)。
【0007】
RF MEMSスイッチは、ソリッドステートの半導体同等品に比べて、優れた線形性、小さい挿入損失及び高いアイソレーション等の幾つかの重要な利点を示す。詳細には、ミリメートル波周波数におけるRF MEMSスイッチは、最新の電気通信システムにおいて使用するのに適しており、特に、自動車レーダシステム、5Gワイヤレス通信、短距離屋内マイクロ波リンク、広帯域トランシーバ、フェーズドアレイシステム、及び高精度計測への適用例に関して適している。
【0008】
PINダイオード及び電界効果トランジスタ(FET)スイッチに比べて、RF MEMSスイッチは、より低いコストにおいて、より低い電力消費量、より高いアイソレーション、より低い挿入損失及びより高い線形性をもたらすことがわかっている。
【0009】
RF MEMSスイッチは、高い作動電圧、大きい挿入損失及び不十分な反射減衰量を含む、幾つかの欠点に直面する可能性がある。これらの欠点は、ミリメートル波周波数範囲において動作させるためのMEMSスイッチを設計する上での課題である。
【0010】
RF MEMSスイッチの性能に関する別の問題は、特に高温のスイッチング条件下において、数回のスイッチングサイクル後に電気機械的な故障を起こしやすいことである。例えば、そのスイッチは、静止摩擦(static friction)(すなわち静摩擦(stiction))の蓄積に起因して作動しなくなる場合がある。スイッチの可動部品が引き寄せられてシステムの別の構成要素(例えば、信号線)と接触すると、静止摩擦により、スイッチが動かなくなる可能性がある。静止摩擦力に勝つために高い電圧を必要とする場合がある。しかし、低電圧では、スイッチはその構成要素に「くっついた(welded)」ままになる可能性がある。
【発明の概要】
【0011】
本開示の一態様は、
入力ポート及び出力ポートのそれぞれを備える信号線であって、信号線は、基板上に形成される第1の接地面と第2の接地面との間の基板上に形成される、信号線と、
第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間の可撓性中央部分とを有するプライマリ可撓性ビーム(又は第1可撓性ビーム)であって、第1の端部は第1の接地面の上方に形成される第1のポストによって支持され、第2の端部は第2の接地面の上方に形成される第2のポストによって支持され、プライマリ可撓性ビームの中央部分は、入力ポートの少なくとも一部及び出力ポートの少なくとも一部の上方に位置決めされ、それにより、可撓性中央部分は、下方に撓むときに、入力ポート及び出力ポートのそれぞれと接触する、プライマリ可撓性ビームと、
第1の接地面及び第2の接地面のそれぞれの中に形成される1つ以上の欠陥接地構造(defected ground structures)と、欠陥接地構造ごとに、その欠陥接地構造の上方に位置決めされる対応するセカンダリ可撓性ビーム(又は第2可撓性ビーム)と
を備えるマイクロ電気機械スイッチに関する。スイッチは、好ましくは、プライマリ可撓性ビームに接続され、プライマリ可撓性ビームに第1のバイアス電圧を印加するように構成される第1のアクチュエータであって、第1のバイアス電圧によって、プライマリ可撓性ビームが信号線に向かって下方に撓む、第1のアクチュエータと、1つ以上のセカンダリ可撓性ビームのそれぞれに接続され、セカンダリ可撓性ビームのそれぞれに第2のバイアス電圧を印加するように構成される第2のアクチュエータであって、第2のバイアス電圧によって、各セカンダリ可撓性ビームが、その対応する欠陥接地構造に向かって下方に撓む、第2のアクチュエータとを更に備えることができる。
【0012】
幾つかの例において、欠陥接地構造はそれぞれ、接地面にエッチングにより形成され、らせんを形成する複数のスロットを含むことができる。また、幾つかの例において、各接地面は、第1の欠陥接地構造及び第2の欠陥接地構造を含むことができ、第2の欠陥接地構造の長さ及び幅は第1の欠陥接地構造の長さ及び幅より短い。また、幾つかの例において、入力ポート及び出力ポートはスイッチの第1の軸に沿って形成することができ、プライマリ可撓性ビームが第1の軸に対して垂直な第2の軸に沿って第1のポストから第2のポストまで延在し、セカンダリ可撓性ビームが第1の軸に対して平行な方向に延在する。
【0013】
幾つかの例において、セカンダリ可撓性ビームはそれぞれ、第1のセカンダリポスト(又は副ポスト)によって支持される第1の端部と、第2のセカンダリポストによって支持される第2の端部とを有することができる。各セカンダリ可撓性ビームの底面は、第1のセカンダリポスト及び第2のセカンダリポストによって、接地面及び対応する欠陥接地構造の上方に架け渡すことができる。プライマリ可撓性ビームの上面は、信号線の表面より4ミクロン未満だけ高くすることができる。各セカンダリ可撓性ビームの上面は、接地面の表面より2.5ミクロン未満だけ高くすることができる。
【0014】
幾つかの例において、プライマリ可撓性ビームの中央部分は、格子構造を形成する複数の目打ちを有することができる。目打ちはプライマリ可撓性ビームの柔軟性を高めることができる。中央部分の各角部は、蛇行パターンにおいて第1の端部又は第2の端部に向かって外向きに延在することができる。中央部分の一方の側の延在する角部は第1の端部において合流することができ、一方、中央部分の他方の側の延在する角部は第2の端部において合流する。これに関連して、プライマリ可撓性ビームは150μm長未満とすることができ、それでも中央部分が1μm以上だけ下方に撓むほど十分柔軟にすることができる。約17ボルト以下の電圧等のバイアス電圧を印加するのに応答して、下方に撓むことができる。それに加えて、又はその代わりに、各セカンダリ可撓性ビームは、格子構造を形成する複数の目打ちを含むことができる。目打ちは、セカンダリ可撓性ビームの柔軟性を高めることができる。
【0015】
幾つかの例において、スイッチは75GHz~130GHzにおいて-2dBより低い挿入損失及び-20dBより高いアイソレーションを達成することができる。また、幾つかの例において、プライマリ可撓性ビームが作動し、セカンダリ可撓性ビームが作動しない結果として、75GHz~130GHzにおいて入力ポートと出力ポートとの間のアイソレーションが約-24dB以上になることができる。同様に、セカンダリ可撓性ビームが作動し、プライマリ可撓性ビームが作動しない結果として、75GHz~130GHzにおいて挿入損失が-1.5dB以下になることができる。
【0016】
本開示の別の態様は、入力ポート及び出力ポートのそれぞれを備える信号線であって、信号線は基板上に形成される第1の接地面と第2の接地面との間の基板上に形成される、信号線と、信号線の上方に位置決めされるビームであって、ビームは信号線及び接地面に対して面外方向に動くように構成され、信号線と接触するように構成される上側コンタクトを含む、ビームと、上側コンタクト及び信号線のうちの1つに含まれるメタマテリアル構造とを含むマイクロ電気機械スイッチに向けられる。幾つかの例において、メタマテリアル構造は同心スプリットリングを含むことができる。また、幾つかの例において、メタマテリアル構造は、少なくとも50GHzの帯域幅にわたって0.05以下の実効誘電率を有する。さらに、幾つかの例において、メタマテリアル構造は、100GHz未満の帯域幅内で主に反射性(primarily-reflective)の特性及び主に伝送性(primarily-transmissive)の特性のそれぞれの特性を示す。またさらに、幾つかの例において、メタマテリアル構造は、ビーム及び信号線を切り離すための反発性カシミール力(repulsive Casimir force)を生成することができる。
【0017】
幾つかの例において、スイッチは抵抗性スイッチとすることができる。そのような例において、メタマテリアル構造は、上側コンタクトに含まれる場合がある。信号線の入力ポート及び出力ポートの上面は導電性とすることができる。ビームは、ビームが作動するときに、入力ポート及び出力ポートのそれぞれと接触する底部導電層を更に含むことができる。メタマテリアル構造は底部導電層に埋め込まれる場合がある。また、幾つかの例において、ビームは更に、底部導電層の上方に形成される誘電体層と、誘電体層の上方に形成される上部導電層とを含むことができる。底部導電層は、誘電体層の誘電率より低い誘電率を有することができる。上部導電層は、誘電体層の誘電率より高い誘電率を有することができる。上部導電層及び底部導電層はそれぞれ金から形成することができる。誘電体層は、窒化シリコン又は一窒化シリコンのうちの1つから形成することができる。また、幾つかの例において、スイッチは更に、上部導電層に埋め込まれる第2のメタマテリアル構造、及び上部導電層と底部導電層との間の誘電体層と共通の組成を有する上部導電層の上方にわたる上部誘電体層のうちの1つ、又はその組み合わせを含むことができる。上部誘電体層、上部導電層及び誘電体層はそれぞれ、ビームの長さに等しい長さを有することができ、一方、底部導電層は信号線の幅に等しい長さを有する。幾つかの例において、スイッチは、スイッチがオフであるときに80GHz~100GHzにおいて約-15dBより高いアイソレーションを有することができ、スイッチがオンであるときに80GHz~100GHzにおいて約-1dB未満の挿入損失を有することができる。
【0018】
他の例において、スイッチは容量性シャントスイッチとすることができる。メタマテリアル構造は信号線に含まれる場合がある。スイッチは、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間の可撓性中央部分とを有する可撓性ビームを更に含むことができ、第1の端部は第1の接地面の上方に形成される第1のポートによって支持される。第2の端部は、第2の接地面の上方に形成される第2のポートによって支持することができ、可撓性ビームの中央部分は、信号線内のメタマテリアル構造の上方に位置決めすることができる。可撓性中央部分は、下方に撓むときに、信号線と接触することができる。
【0019】
幾つかの例において、スイッチは、第1の接地面から信号線に向かって延在する導電性ストリップを備えることができる。導電性ストリップは、メタマテリアル構造の上に少なくとも部分的に位置決めされるように、信号線の反対に位置する端部まで延在することができる。場合によっては、第1の導電性ストリップは第1の接地面から第2の接地面まで延在することができる。
【0020】
幾つかの例において、信号線は、入力ポートに隣接する第1のメタマテリアル構造と、出力ポートに隣接する第2のメタマテリアル構造とを含むことができる。スイッチは更に、第1の接地面から第2の接地面に向かって延在し、第1のメタマテリアル構造の上に少なくとも部分的に位置決めされる第1の導電性ストリップと、第1の接地面から第2の接地面に向かって延在し、第2のメタマテリアル構造の上に少なくとも部分的に位置決めされる第2の導電性ストリップとを含むことができる。
【0021】
幾つかの例において、スイッチは、基板上に形成される底部誘電体層であって、接地面及び信号線はそれぞれ、底部誘電体層上に形成される、底部誘電体層と、接地面のうちの1つから底部誘電体層の中に下方に延在する導電性ポストと、導電性ポストから信号線に向かって外向きに延在する導電性ビームとのそれぞれを更に備えることができる。導電性ビームは、メタマテリアル構造の下方に少なくとも部分的に位置決めされるように、信号線の反対に位置する端部まで延在することができる。さらに、幾つかの例において、スイッチは、スイッチがオフであるときに30GHz~100GHzにおいて約-15dBより高いアイソレーションを有することができ、スイッチがオンであるときに30GHz~100GHzにおいて約-1dB未満の挿入損失を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】従来のRF MEMSスイッチの平面図である。
【
図2】本開示の一態様による、RF MEMSシャントスイッチの側面図である。
【
図3】本開示の一態様による、例示的なRF MEMSシャントスイッチの平面図である。
【
図4】
図3のスイッチのアイソレーションのグラフ表示である。
【
図5】本開示の一態様による、別の例示的なRF MEMSシャントスイッチの平面図である。
【
図6】
図5のスイッチのアイソレーションのグラフ表示である。
【
図7】本開示の一態様による、欠陥接地面構造を有するスイッチの平面図である。
【
図9】
図7のスイッチの反射減衰量及び挿入損失のグラフ表示である。
【
図10】
図7のスイッチのアイソレーションのグラフ表示である。
【
図11】本開示の一態様による、欠陥接地面構造を有するスイッチと、セカンダリスイッチとの部分平面図である。
【
図13】欠陥接地面構造を用いないスイッチのコプレーナ線路に関する伝送位相及び反射位相のグラフ表示である。
【
図14】欠陥接地面構造を用いるスイッチのコプレーナ線路に関する伝送位相及び反射位相のグラフ表示である。
【
図15】欠陥接地面構造を用いるスイッチのコプレーナ線路に関する伝送位相及び反射位相のグラフ表示である。
【
図16】可変空隙高を有する
図10のスイッチのアイソレーション特性のグラフ表示である。
【
図17】本開示の一態様による、欠陥接地面構造を有するスイッチと、セカンダリスイッチとの平面図である。
【
図21】セカンダリスイッチが起動した状態の
図17のスイッチの反射減衰量及び挿入損失のグラフ表示である。
【
図23】セカンダリスイッチが起動していない状態の、異なる欠陥接地面構造を有する、
図17のスイッチのアイソレーション特性のグラフ表示である。
【
図24】セカンダリスイッチが起動していない状態の、異なる欠陥接地面構造を有する、
図17のスイッチのアイソレーション特性のグラフ表示である。
【
図25】セカンダリスイッチが起動していない状態の、異なる欠陥接地面構造を有する、
図17のスイッチのアイソレーション特性のグラフ表示である。
【
図26】可変空隙高を有する
図17のスイッチのアイソレーション特性のグラフ表示である。
【
図27】本開示の一態様による、スイッチに関するアイソレーションのグラフ表示である。
【
図28】本開示の一態様による、スイッチに関する挿入損失のグラフ表示である。
【
図29】金属-メタマテリアル界面の斜視図である。
【
図30A.30B】
図30Aは、金属-金属コンタクトの側面図である。
図30Bは、金属・メタマテリアルコンタクトの側面図である。
【
図31】本開示の一態様による、金属-メタマテリアルコンタクトの側面図である。
【
図32A】本開示の一態様による、メタマテリアル構造を有するRF MEMS抵抗性スイッチの上面図である。
【
図33】本開示の一態様による、メタマテリアル構造の平面図である。
【
図34】本開示の一態様による、異なるメタマテリアル構造を有する例示的なRF MEMS抵抗性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図35】本開示の一態様による、異なるメタマテリアル構造を有する例示的なRF MEMS抵抗性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図36】本開示の一態様による、異なるメタマテリアル構造を有する例示的なRF MEMS抵抗性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図37】本開示の一態様による、異なるメタマテリアル構造パラメータを有する例示的なRF MEMS抵抗性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる反射特性のグラフ表示である。
【
図38】本開示の一態様による、異なる金属プレートコンタクト厚を有する例示的なRF MEMS抵抗性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図39】本開示の一態様による、異なる誘電体層厚を有する例示的なRF MEMS抵抗性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図40】本開示の一態様による、異なる金属プレート厚を有する例示的なRF MEMS抵抗性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図41】本開示の一態様による、例示的なRF MEMS抵抗性スイッチの或る周波数範囲にわたる抽出された誘電率パラメータ及び透磁率パラメータのグラフ表示である。
【
図42】本開示の一態様による、オフ状態にある例示的なRF MEMSスイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図43】本開示の一態様による、オン状態にある例示的なRF MEMSスイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図44】本開示の態様による、異なるメタマテリアル構造を有する例示的なRF MEMS容量性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図45】本開示の態様による、異なるメタマテリアル構造を有する例示的なRF MEMS容量性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図46】本開示の態様による、異なるメタマテリアル構造を有する例示的なRF MEMS容量性スイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図47A】本開示の一態様による、メタマテリアル構造を有する例示的なRF MEMS容量性スイッチの上面図である。
【
図48】
図47A~
図47Cのスイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図49】
図47A~
図47Cのスイッチの或る周波数範囲にわたる抽出された誘電率パラメータ及び透磁率パラメータのグラフ表示である。
【
図50】本開示の一態様による、容量性シャント及びメタマテリアル構造を有する例示的なRF MEMS容量性スイッチの斜視図である。
【
図51】伝送(オン)状態にある
図50のスイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【
図52】反射(オフ)状態にある
図50のスイッチに関する、或る周波数範囲にわたる伝送特性及び反射特性のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、信号特性が改善され、静摩擦を受けにくくするRF MEMSスイッチを提供するものである。
【0024】
図2に、基板201に形成された共平面導波路の上方に形成された二重支持カンチレバービーム210を用いるRFシャントスイッチ200を示す。ビーム210の第1の端部212及び第2の端部214は、共平面導波路内に形成されるそれぞれの接地面202及び204によって支持される。ビーム210の中央部は、共平面導波路に形成されている信号線220の上方に架け渡されている。ビーム210は、ビーム210と、接地面202、204とに直流(DC)バイアス電圧を印加するアクチュエータ(不図示)に接続される。DCバイアス電圧により、ビーム210が下方に撓む。
【0025】
図2の例において、信号線220は、窒化ケイ素等の薄い誘電体層224により覆われた導電層222を有する。誘電体層は約0.2μm厚とすることができる。ビーム210が下方に撓み、信号線220と接触すると、大きなシャントキャパシタンスが得られる。大きなシャントキャパシタンスは、共平面導波路の信号線220に沿ってRF信号が伝搬するのを阻止する(オン状態)。DCバイアスが除去されると、ビーム220は上方に撓み、その元の位置に戻り、シャントキャパシタンスが降下して、RF信号が、減衰しない形で再び伝搬し始める(オフ状態)。
【0026】
図2の例において、ビーム210は、モリブデンから形成され、約325μmの長さ、約60μmの幅及び約1.2μmの厚さを有する。信号線220は、共平面導波路の中を通って延在し、約60μmの幅(ビーム長の方向)を有する。ビーム210は、信号線220の上方約2.5μmに架け渡され、それにより2.5μmの空隙を形成する。誘電体層は約0.2μmの厚さを有する。
【0027】
図3は、
図2のスイッチ200の平面図である。ビーム210は目打ちされ、中央部に小さな目打ち部(perforation)301のグリッドを有し、各端部に大きな目打ち302、303を有する。目打ちは、ビーム210が下方に撓むのを改善させる。
図3は、DCバイアス電圧が印加されるとビーム210が垂直に変位することを更に示し、その変位は、ビームの各端部212、214において変位がない状態から、ビーム210の中央部において約0.91μmに達する。
図2のスイッチのためのDCバイアスは、約37Vになることがわかっている。
【0028】
図4は、75GHz~130GHzのミリメートル波信号の帯域にわたる、スイッチが開いているときの
図2のスイッチのアイソレーション特性を示す。アイソレーションは、75GHzにおいて約-12.4dBであり、130GHzにおいて約-19.7dBである。閉じたときのスイッチの挿入損失は約0.74dBであり、反射減衰量は約10.04dBである。
【0029】
異なる目打ち配列を与えることによって、作動電圧を37V未満まで更に減らすことができる。
図5の例において、スイッチ500は、金から形成され、目打ちされた構造を有する長方形ビーム510を含む。ビーム510の中央部516は目打ちされたグリッド又は格子を形成する。格子構造の各角部は、その後、ビーム510の第1の端部512及び第2の端部514に向かって蛇行パターンで延びている。いずれの端部の蛇行パターンも、その後、互いに接続され、それにより、ビーム510の両端部に第1の蛇行構造及び第2の蛇行構造が形成される。蛇行構造は、より低いバイアス電圧でビームが撓むのを可能にする。
【0030】
図5に示すスイッチの寸法は、
図5のビームがわずかに長く(約345μm)、わずかに幅が広い(約65μm)ことを除けば、
図2の寸法と概ね同等である。ビームはそれでも、わずか17Vのバイアス電圧で0.9μmまで下方に撓む。
【0031】
また、
図5のスイッチは、改善されたアイソレーション特性を有する。
図6は、75GHz~130GHzの帯域にわたる、スイッチが開いているときの
図5のスイッチのアイソレーション特性を示す。アイソレーションは75GHzにおいて約-22.0dB、130GHzにおいて約-14.7dBであり、86GHzにおいて約-24.8dBまで降下する。さらに、閉じたときのスイッチの挿入損失はわずか約0.6dBであり、反射減衰量はわずか約15.15dBである。
【0032】
それにもかかわらず、
図2及び
図5のシャントスイッチのアイソレーション特性は、75GHz~130GHzのミリメートル波周波数帯において特に、更に改善することができる。
図7の例示的なスイッチ700は、
図5のビーム510と同じ構造的配列を有し、約320μm長×約400μm幅の寸法を有する接地面構造701上に形成されるビーム710を含む。接地面構造701は、2つの接地面702と704との間に信号線720を含む。スイッチ700の接地面702及び704のそれぞれに2次元の接地欠陥構造(defected ground structure, DGS)が形成される。DGSは基本的にバンドストップフィルタとして機能し、それにより、スイッチ700の伝送特性に影響を及ぼす。
図7の例において、DGSは、2×2のグリッドをなし、信号線720の縦軸に沿って鏡面対称を有する4つのらせん形のスロット731、732、733、734を形成する。
【0033】
らせん形スロットの特性を、
図8に更に詳細に示す。
図8の例示的なDGS800において、らせん形スロットはそれぞれ共通の均一な幅Wを有する。第1のスロット810が、信号線を接地面から分離するチャネル802から延在する。それぞれの後続のスロットは、先行するスロットに直角に接続する。それゆえ、
図8において、第2のスロット820は第1のスロット810に直角に接続し、第3のスロット830は第2のスロットに直角に接続し、同じ角度方向に曲がり、それにより、らせんが形成される。
図8のDGSは、上記のらせんパターンを用いて形成された全部で7つのスロットを有する。
【0034】
また、DGS構造は、第1のスロットの始点を第4のスロットの終点に接続する開口部も含む。このようにして、
図8のDGS構造の最初の4つのスロットは、第2のスロットによって規定される長さと、第3のスロットによって規定される幅とを有する長方形のボックスも形成する。長方形ボックスの長さ及び幅は距離「a」及び「b」の観点から規定することができ、「a」は第3のスロットの長さであり、「b」は、第2のスロットと第3のスロットとの間の長さの差である(それゆえ、第2のスロットの長さはa+bに等しい)。
【0035】
図7のスイッチは更に改善された減衰特性を有する。
図9は、スイッチを閉じたときのスイッチ700の挿入損失及び反射減衰量を示す。挿入損失は、75GHzにおいて約-2.2dB、130GHzにおいて約-10.4dBであり、105GHzにおいて-16.6dBまで降下する。反射減衰量は、75GHzにおいて約-24.0dB、130GHzにおいて約-11.2dBであり、105GHzにおいて約-9.5dBまで上昇する。
【0036】
図10は、スイッチが開いているときのスイッチ700に関するアイソレーションを示す。アイソレーションは、75GHzにおいて約-17.1dB、130GHzにおいて約-11.5であり、82GHzにおいて約-32.5dBまで降下する。
【0037】
図7のスイッチのアイソレーション特性が改善されたにもかかわらず、
図9は、スイッチの接地面内にDGSを含む結果として、挿入損失が高くなることを示す。挿入損失を克服するために、
図7のスイッチのDGS構造に対する改善を
図11に示す。
【0038】
図11のスイッチ1100は、
図7のスイッチに構造が概ね類似している。スイッチ1100は、信号線1120によって二分される2つの接地面1102、1104を有し、接地面内に形成された4つのDGS構造1131、1132、1133、1134を有する。接地面及び信号線の長さは約340μmであり、スイッチの累積的な幅は約404μmである。スイッチ1100は、DGS構造がそれぞれ、DGS構造の上方に位置決めされるセカンダリMEMSスイッチ1141、1142、1143、144を含む点で、
図7とは異なる。セカンダリスイッチ及びDGSの形状はいずれも長方形とすることができるが、セカンダリスイッチの方を長くすることができ、その一方で、DGS構造の幅を広くすることができる。
図11の例において、各DGS構造は目打ちされた格子であり、長さが約105μm、幅が約85μmであり、長さが約139μm、幅が65μmであるセカンダリスイッチにより覆われる。
【0039】
スイッチ1100の単一のDGS構造の側面図を
図12に示すが、DGS構造自体は示されていない。スイッチ1100は基板1101を含み、基板上に接地面1102が形成される。接地面1102は約2μmの厚さ又は高さを有する。図示されないが、DGS構造1131のスロットは接地面内に形成され、接地面1102の高さに等しい深さを有することができる。DGS構造1131の上方にセカンダリスイッチ1141が形成される。セカンダリスイッチ1141は、2つの脚部1162、1164によって支持されるビーム1151を含む。支持用脚部は約1μmの高さを有し、それにより、ビーム1151をDGS及び接地面の上方約1μmに持ち上げる。したがって、撓んでいないビームと、下方に位置決めされたDGSとの間に約1μmの空隙が存在する。ビーム1151のビーム厚又はビーム高は、約1.2μmとすることができる。
【0040】
ビーム1151は、バイアス電圧を供給するアクチュエータ(図示せず)に接続され、アクチュエータはビーム1151から脚部1162、1164を介して接地面1102まで延びている。バイアス電圧を印加することによって、ビーム1151は接地面1102に向かって下方に撓み、それにより、DGS構造1131の容量特性に影響を及ぼす。スイッチ1101に印加される電圧の量は絶えず変更可能とすることができ、それにより、DGS構造の容量特性(及びデバイスのメインMEMSスイッチに及ぼすその影響)を変更又は調整することができる。
【0041】
図11のスイッチ配列は、メタマテリアルのように機能することがわかっている。これは、
図11のDGS構造を用いない共平面導波路内に形成される信号線の伝送位相及び反射位相を最初に解析し、その後、
図11のDGS構造を用いて同じ信号線の伝送位相及び反射位相を解析することによって確認することができる。
【0042】
図13に、50GHz~140GHzのミリメートル波周波数の帯域における、DGS構造を用いない共平面導波路にわたって伝送される信号の伝送位相及び反射位相を示す。
図13に示すように、信号の伝送位相内のあらゆるシフトが、反射位相内の実質的に等しい(約20度内の)シフトに対応する。
【0043】
図14は、同じ共平面導波路であるが、2.2μmの高さにおいて導波路内にDGS構造が組み込まれている場合の周波数の同じ帯域にわたる信号の伝送位相及び反射位相を示しており、その高さは、基板の上面(DGS構造のスロットのくぼみ(basin))からDGS構造の上方に位置決めされるセカンダリスイッチの底面までの距離である。
図14に示すように、伝送位相及び反射位相は、周波数の帯域にわたって等しくシフトせず、それどころか反対方向にシフトし、最終的には、85GHzにおいて交差し、その後、96GHzにおいて再び交差する。
【0044】
図15に、同じ共平面導波路であるが、2.6μmの高さにおいてDGS構造を用いる場合の伝送位相及び反射位相を示す。
図15において、伝送位相及び反射位相は、約110GHzまで実質的に等しくシフトするが、その後、115GHzより高い周波数において反対方向にシフトし始め、更には、約128GHzにおいて交差する。
【0045】
DGS構造の特定の共振周波数は、接地面とビームとの間の空隙の高さに応じて異なり得る。
図16に、様々な高さにおいてDGS構造の上方に位置決めされる5つのセカンダリスイッチに関するアイソレーション特性のプロットを示す。その構造の共振周波数は、接地面とビームとの間の空隙が増加するにつれて、高い方の周波数にシフトすることが示される。
【0046】
DGS構造と、その上を覆うセカンダリスイッチとを用いる例示的なMEMSシャントスイッチをより完全な形で
図17に示す。スイッチ1700は、第1の接地面1702と第2の接地面1704との間に位置決めされる信号線1720を含み、信号線は、第1の空間1703及び第2の空間1705だけ、各接地面から離間される。プライマリシャントスイッチ1710は、第1の接地面1702及び第2の接地面1704の上に位置決めされ、それらの接地面に接続され、それらの接地面の橋渡しをする。プライマリシャントスイッチ1710は、信号線1720に対して垂直に延び、信号線1720の上方に架け渡される。プライマリシャントスイッチ1710にバイアス電圧が印加されると、スイッチ1710は、信号線1720に向かって下方に撓む。バイアス電圧が印加されないと、スイッチ1710は、上方に撓んで、その元の位置に戻る。
【0047】
第1のDGS構造1731及び第2のDGS構造1732が、第1の接地面1702内に形成される。第3のDGS構造1733及び第4のDGS構造1734が、第2の接地面1704内に形成される。第1のDGS構造1731及び第3のDGS構造1733は、プライマリスイッチ1710の縦軸Xに沿って鏡面対称性を有し、類似した形状を有する。第2のDGS構造1732及び第4のDGS構造1734も、プライマリスイッチ1710の縦軸Xに沿って鏡面対称性を有し、類似した形状を有する。
【0048】
図17の例において、第1のDGS構造1731及び第3のDGS構造1733は、第2のDGS構造1732及び第4のDGS構造1734とはサイズが異なる。詳細には、第1のDGS構造1731及び第3のDGS構造1733の第2のスロットは約85μm長であるのに対し、第2のDGS構造1732及び第4のDGS構造1734の第2のスロットは約100μm長である。また、第1のDGS構造1731及び第3のDGS構造1733の第3のスロットも、第2のDGS構造1732及び第4のDGS構造1734の第3のスロットより短い。これは、全てが同じ寸法を有する
図7及び
図11にそれぞれ示される4つのDGS構造とは対照的である。
【0049】
幾つかの例において、異なるDGS構造の寸法は、長さ「a」、「a1」及び「b」に関して特徴付けることができる。ただし、aは、一方のDGS構造内の第3のスロットの長さであり、a1は、他方のDGS構造内の第3のスロットの長さであり、bは、一方又は両方のサイズのDGS構造内の第2のスロットと第3のスロットとの間の長さの差である。幾つかの例において、構造が異なるサイズである場合であっても、第2のスロット長と第3のスロット長との間の差が構造ごとに同じであるように、異なるサイズのDGS構造を、同じ値「b」を有するように設計することができる。
【0050】
各DGS構造は、それぞれのセカンダリシャントスイッチ1741、1742、1743、1744によって覆われている。各セカンダリシャントスイッチはそれぞれの接地線に接続され、各DGS構造の上方に、DGS構造との間に空隙を有するようにして架け渡されている。セカンダリシャントスイッチは長方形であり、セカンダリスイッチはそれぞれ、縦方向において、信号線1720に対して平行に、かつプライマリシャントスイッチ1710に対して垂直に位置決めされている。第1のDGS構造1731及び第3のDGS構造1733の上方に位置決めされるセカンダリスイッチは、プライマリスイッチ1710の縦軸Xに沿って、第2のDGS構造1732及び第4のDGS構造1734の上方に位置決めされるセカンダリスイッチと鏡面対称性を有する。さらに、第1のDGS構造1731及び第2のDGS構造1732の上方に位置決めされるセカンダリスイッチは、信号線1720の縦軸Yに沿って、第3のDGS構造1733及び第4のDGS構造1734の上方に位置決めされるセカンダリスイッチと鏡面対称性を有する。また、セカンダリシャントスイッチ1741、1742、1743、1744は目打ちされている。
図17の例において、スイッチは、グリッドのような格子状の目打ちを有する。
【0051】
図18は、
図17のいずれかの側に沿った視点からの
図17のスイッチの側面図を示す。スイッチ1700は、基板1701上に形成される。接地面1702が基板1701の上方にわたって形成され、プライマリスイッチ1710が接地面1702の上に形成される。プライマリスイッチ1710は、ビーム1716を支持する2つの脚部1712を有する(第2の脚部は
図18において脚部1712によって遮られる)。2つのセカンダリスイッチ1731、1732がプライマリスイッチ1710の両側に位置決めされる。セカンダリスイッチもそれぞれ、ビーム1756を支持する2つの脚部1752、1754を含む。セカンダリスイッチ1731、1732の下方のそれぞれの位置において接地面1702内にDGS構造(図示せず)が形成される。
【0052】
図17及び
図18の例において、基板及び接地面は約404μmの長さ及び約340μmの幅を有する。接地面は約2μmの厚さを有する。プライマリスイッチ1710は、基板の長さに沿って延在し、プライマリスイッチ脚部1712及びビーム1716は約65μmの幅を有する。脚部1712は約2.5μmの高さを有し、ビーム1716は約1.2μmの厚さを有する。セカンダリスイッチ1731は約139μmの長さを有し、セカンダリスイッチ脚部1752、1754及びビーム1756は約65μmの幅を有する。脚部1752は約1μmの高さを有し、ビーム1756は約1.2μmの厚さを有する。したがって、スイッチ1700全体を、基板1701の上の5.7μmの空間内に形成することができる。
【0053】
図19はスイッチ1900の例示的なレイアウトを示しており、プライマリスイッチ1910及びセカンダリスイッチ1941~1944、第1のアクチュエータ1962及び第2のアクチュエータ1964の間の接続を示す。第1のアクチュエータ1962はプライマリスイッチ1910に接続され、プライマリスイッチにバイアス電圧を与えるように構成される。第2のアクチュエータ1964はセカンダリスイッチ1941~1944のそれぞれに接続され、セカンダリスイッチにバイアス電圧を与えるように構成される。
【0054】
動作時に、プライマリスイッチ1910はオン(バイアス電圧が第1のアクチュエータ1962から与えられる)か、オフ(バイアス電圧が第1のアクチュエータ1964から与えられない)かのいずれかとすることができる。プライマリスイッチがオンであるとき、プライマリスイッチのビームが下方に撓み、結果として大きなシャントキャパシタンスが生じ、それにより、RF信号が信号線1920に沿って伝搬するのを阻止する。プライマリスイッチがオフであるとき、プライマリスイッチのビームが上方に撓んで戻り(静止し)、シャントキャパシタンスが減少し、RF信号が信号線1920に沿って伝搬できるようになる。
【0055】
プライマリスイッチ1910がオフであるとき、挿入損失及び反射減衰量に対するDGS構造の影響を無効にするために、セカンダリスイッチ1941~1944をオンに切り替えることができる。第2のアクチュエータ1964からセカンダリスイッチ1941~1944のそれぞれにバイアス電圧が印加され、それにより、スイッチがDGS構造に向かって下方に撓み、DGS構造の影響を阻止するシャントキャパシタンスを生成する。
図20は、セカンダリスイッチが作動するときの、セカンダリスイッチの幾つかの点における下方への撓みの量(μm単位で測定される)を示す。
【0056】
図21は、プライマリスイッチがオフであり、セカンダリスイッチがオンであるときのスイッチ1900に関する反射減衰量特性及び挿入損失特性を示す。75GHzにおいて、挿入損失は約-0.6dBまで低く、反射減衰量は約-21.1dBまで低い。130GHzにおいて、挿入損失は依然として相対的に低い約-1.5dBであり、反射減衰量も相対的に低い-14.5dBである。
【0057】
図19に戻ると、プライマリスイッチ1910がオンであるとき、アイソレーションに関してDGS構造の恩恵を受けるために、セカンダリスイッチ1941~1944をオフに切り替えることができる。第2のアクチュエータからセカンダリスイッチ1941~1944にバイアス電圧が印加されないので、スイッチは下方のDGS構造から空隙分だけ分離されたままである。
図22は、プライマリスイッチが作動するときの、プライマリスイッチの幾つかの断面における下方への撓みの量(μm単位で測定される)を示す。スイッチの長さに沿った任意の所与の点の場合に、プライマリスイッチの全幅に沿った撓みは均一である。
【0058】
図23~
図25は、プライマリスイッチがオンであり、セカンダリスイッチがオフであるときのスイッチ1900に関するアイソレーション特性を示す。
図23の例では、同じDGS構造が使用される。これは、相対的に狭い帯域(例えば、90GHzと100GHzとの間の約10GHz未満)において、アイソレーションの著しい改善につながる。75GHzにおいて、アイソレーションは約-23.1dBであり、130GHzにおいて約-23.9dBである。しかし、約95GHzにおいて、アイソレーションは約-52dBまで改善される。
【0059】
図24及び
図25の例では、異なるDGS構造が使用される。これは、より広い周波数帯域にわたるアイソレーションの全体的な改善につながる。
図24において表される構造は、約84GHz(約-51dB)及び約112GHz(約-59dB)において改善されたアイソレーションをもたらし、75GHz~130GHzにおいて約-24dB以下である。
図25に示す構造は、約98GHz(約-41.5dB)においてその最良のアイソレーションを達成するが、改善されたアイソレーション特性は、急峻には低下しない。これに関連して、約85GHz~約110GHzまでの広い周波数帯域にわたって、-30dB又はそれよりも良いアイソレーションを達成することができる。
【0060】
図21及び
図23の減衰特性からわかるように、DGS構造の上方に容量性シャントスイッチを備えるDGS構造を設けることは、RF信号が伝搬しているときにDGSによって挿入損失及び反射減衰量に引き起こされる損失を無効にしながら、同時に、RF信号が遮断されるときの改善されたアイソレーションに関するDGSの利点を組み込む実効的な方法である。これに関連して、DGS構造及び対応するシャントスイッチを組み込むことは、RF MEMS設計及び動作に対する改善である。
【0061】
以下の表1に、約2.5μmの空隙(及びカンチレバービームの高さ)を有する上記のスイッチ設計の場合の作動電圧、アイソレーション特性及び挿入損失特性の概要を示す。
【0062】
【0063】
上記の例示的なスイッチ及び設計の場合の測定値が与えられる。しかしながら、本開示の中心概念から逸脱することなく、RF MEMSスイッチ、構造及び導波路構成要素の特定の寸法を変更できることは容易に理解されよう。例えば、基板、接地面及び信号線は、より長く又は短く、より広く又は狭く、そしてより厚く又は薄くすることができる。さらに、プライマリスイッチ及びセカンダリスイッチは、所望の量だけ撓むことができるようにする等のために、異なる長さ、異なる幅又は異なるパターンを有する異なる形状に設計することができる。同様に、スイッチと下方に位置決めされる構成要素との間の空隙も変更することができる。そして、DGS構造の形状及びサイズも変更することができる。
【0064】
上記のスイッチ動作は、プライマリスイッチを作動させるが、セカンダリスイッチを作動させないこと、又はセカンダリスイッチを作動させるが、プライマリスイッチを作動させないことのいずれかを考える。しかしながら、他の動作形態も可能であることは容易に理解されよう。例えば、場合によっては、プライマリスイッチ及びセカンダリスイッチの全てにバイアス電圧を与えることによって、改善されたアイソレーション特性を達成することができる。
図26は、両方のスイッチが作動する、異なるDGS及びセカンダリスイッチ配列を有する幾つかのスイッチに関するアイソレーション特性を示す。セカンダリスイッチを作動させる結果として、狭い周波数帯域にわたる改善されたアイソレーション特性がもたらされる。改善されたアイソレーションが生じる特定の帯域は、スイッチとDGS構造との間の空隙高に応じて異なる。空隙が増加するにつれて、スイッチに関する最良のアイソレーションが生じる周波数帯域が高い方にシフトする。詳細には、2.2μmの空隙の場合に約85GHzにおいて約-52dBのアイソレーションが達成され、2.3μmの空隙の場合に約85GHzにおいて約-52dBのアイソレーションが達成され、2.4μmの空隙の場合に約85GHzにおいて約-52dBのアイソレーションが達成され、2.5μmの空隙の場合に約85GHzにおいて約-52dBのアイソレーションが達成され、2.6μmの空隙の場合に約85GHzにおいて約-52dBのアイソレーションが達成され、2.7μmの空隙の場合に約85GHzにおいて約-52dBのアイソレーションが達成され、3.0μmの空隙の場合に約85GHzにおいて約-52dBのアイソレーションが達成される。これは、高い周波数の広い範囲にわたって改善されたアイソレーションを与える場合の、DGS構造とセカンダリスイッチとの提案される組み合わせの相対的な柔軟性を実証する。
【0065】
全体的に、DGS構造及びセカンダリスイッチの両方を設けることによって、挿入損失及びアイソレーションの両方に関する改善を達成できることが示される。これらの二重の改善は、シャントスイッチのみを使用するか(挿入損失は良好であるが、アイソレーションが不良である)、DGS構造のみを使用するか(アイソレーションは改善されるが、挿入損失が劣化する)のいずれかのときに従来見られたトレードオフとは対照的である。これらの発見が更に
図27及び
図28のグラフに要約されており、それらの図は、上記で論じられたそれぞれの構造のアイソレーション特性及び挿入損失特性を示す。
【0066】
上記で言及されたように、プライマリシャントスイッチ、DGS構造及びセカンダリシャントスイッチの提案される組み合わせは、メタマテリアルのように機能することがわかっている。この解決策に加えて、本明細書において更に詳細に説明されるように、スイッチコンタクトの設計の中でメタマテリアル層を用いてMEMSスイッチの張りつき(stiction)を改善することも提案される。
【0067】
スイッチに印加されるバイアス電圧を上げることによって張りつきの可能性を下げることができる。代替的には、バイアス電圧を上げる代わりに、上部電極を接地から離して配置することによって、スイッチの電界を高めることができる。これは、例えば、2つの誘電体層(例えば、酸窒化シリコン)間に導電層(例えば、金)を挟むことによって成し遂げることができる。
【0068】
更なる代替形態として、バイアス電圧を上げることなく、その復元力を最大化するようにビームを変更することができる。改善された復元力は、大きなプレートサイズ、短いビーム長又は厚い誘電体厚等のパラメータによって影響を及ぼされる。
【0069】
電極と接地との間の距離を制御すること、及びスイッチコンタクトの構造パラメータを制御することに加えて、本開示において、スイッチコンタクトを近接させることに起因して、スイッチコンタクトに加えられる力を弱くするか、又は反転させることも考えられる。これらの力が、
図29及び
図30に示される構成を用いて更に詳細に説明される。
【0070】
図29は、金属2910の或る平面がメタマテリアル2920に平行に位置決めされる実験構成2900の示力図である。金属及びメタマテリアルは、距離「d」だけ互いに離間して位置決めされる。構成2900に示される力は矢印2930を用いて示される。金属2910及びメタマテリアル2920に加えられる第1の力は、2つの平面を互いに接近させる。しかしながら、この第1の力を加えることは、実験構成2900の特定の条件下で観測され、結果として、2つの平面を互いに分離させる第2の反対向きの力「F」が生成される。
【0071】
互いに近接して、かつ平行に位置決めされる2つの帯電していない金属プレートの場合、2つのプレートを互いに向かって移動させる力が観測された。この力はカシミール力と呼ばれる。カシミール力は表面と周囲の電磁スペクトルとの相互作用から生じ、表面及び表面間の媒質の誘電特性への依存性を示す。巨視的な表面間のカシミール力は、原子-表面相互作用及び2つの原子又は分子間の相互作用(ファンデルワールス力)と同じ物理的起源を有する。なぜなら、それらが量子ゆらぎから生じるためである。
【0072】
カシミール力は、金属プレートの実効誘電率に比例することが知られている。それゆえ、金属プレーン上の実効誘電率を下げることによって、カシミール力も下げることができる。この結果として、プレートが互いから離れるのを防ぐ力を小さくすることができ、それにより、MEMSスイッチにみられる張りつきの問題を少なくとも部分的に軽減することができる。
【0073】
しかしながら、プレート間の誘電率を下げることによってカシミール力を下げることに加えて、メタマテリアルを使用する等によって実効誘電率が十分に下げられる場合には、プレーン間に実際には斥力を生成することができる。この斥力は「反発性カシミール力(repulsive Casimir force)」と呼ばれる場合もあり、本出願では、コンタクトを互いに反発させることによって、張りつきの問題を解決するために更に使用することができる。したがって、反発性カシミール力を生成する結果として、静摩擦に起因してコンタクトが実際に互いに「張りつく」傾向を更に下げることができる。
【0074】
カシミール相互作用(引力及び斥力の両方)は、浮上、マイクロ波スイッチ、MEMS発振器及びジャイロスコープのために使用することができる、シリコン結晶等の工学材料において実現することができる。カシミール相互作用は、非磁性メタ原子から形成される磁性メタマテリアルでは引力である。対照的に、本来磁性のメタ原子は潜在的にカシミール斥力を引き起こすことができる。金属メタ原子及び誘電体メタ原子から形成されるキラルメタマテリアルは、カシミール斥力を得るための良好な候補である。1つの手法は、カシミール斥力を引き起こす材料の組み合わせを工学的に設計することである。例えば、トポロジカル絶縁体(TI)及び通常の絶縁体の交互層から形成される多層壁間でカシミール斥力が観測されている。TI層表面上の磁性コーティング内の磁化配向、層厚、及びトポロジカル磁気電気分極率(topological magnetoelectric polarizability)の影響下でのカシミール斥力が実証されている。TI層表面上の平行磁化を伴う多層構造の場合、TI層数を増やすことによって斥力を高めることが実現可能であり、それは、各TI層表面上で生じる分極回転効果(polarization rotation effect)からの斥力への寄与の累積に起因する。一般に、半無限TI間にカシミール引力が存在する距離領域において、力がTI多層構造内の斥力に変化する場合があり、半無限TIの場合の斥力の領域において、斥力の大きさを増強することができ、その増強は、構造が十分に多くの層を含むときに最大値に至る。
【0075】
一般に、遅延が実質的な役割を果たす場合に、巨視的表面間のカシミール力が、通常0.1μmを超える引き離しを引き起こし、一方、遅延がわずかである場合に、ファンデルワールス力が0.01μm未満の引き離しの原因となる。理論研究及び実験技法の進歩が、2つの平行な完全な金属プレートの構成を越えて、カシミール力を試験するのを可能にした。相互作用する物体の新規の材料及び形状が、複数の適用例への新たな機会を可能にし、同時に、新たな未決の問題を提起する。理論的な面では、MTMから着想した構造(MTM-Inspired structure)は、物質の輸送を可能にする強力なカシミール効果を引き起こすことができ、これは、原理的には、その効果を用いて、物質を引き付けるか、又は押し戻すことができることを意味する。カシミール力の更なる複雑さが、潜在的には、ファンデルワールス力を部分的に相殺するために、中和又はカシミール力の使用の大きな機会を与える。ポラリトンの関与が金属構造とMTM構造との間に反発性カシミール力を引き起すことに留意されたい。例えば、結合TMポラリトンが、より短い距離において支配的であり、非結合TM及びTEポラリトンに起因する複合斥力(joint repulsion)によって圧倒される。したがって、ハイブリッド構成の場合、表面プラズモンが、カシミール力の強さ及び符号を示すことができる。
【0076】
図30A及び
図30Bは浮上ミラー(levitating mirror)の典型的な例を示す。メタマテリアルの反発性カシミール力がミラーのうちの1つのミラーの重量と均衡することができ、それにより、ミラーをゼロ点ゆらぎによって浮上させることができる。
【0077】
図30Aは、第2の金属プレート3040又はミラーから距離dだけ離間された第1の金属プレート3010又はミラーを示す。2つの金属プレートは、MEMSスイッチ内の対向するコンタクトと見なすことができ、十分に小さい距離「d」において、互いに永久に張りつくのを免れない可能性がある。対照的に、
図30Bは、第1の金属プレート3010の表面に固定され、金属プレート3010と3040との間に位置決めされるメタマテリアル3020の薄い層を示す。メタマテリアル3020と第2の金属プレート3040との間の境界においてカシミール力3030が生成され、それにより、第2の金属プレートが、距離d’だけ、第1の金属プレート3010から更に離間する。この更なる離間は、重力に更に対抗することができ、それにより、第2の金属プレート3040が浮上することができる。場合によっては、メタマテリアルは金箔から形成することができる。
【0078】
RF MEMSスイッチ構造の適用例において、スイッチは、ビームの表面上に位置決めされ、信号線のコンタクトと位置合わせされる短絡バーを有する可撓性ビームを含むことができる。短絡バーは、配置された金箔の薄い層等の金属から形成することができる。短絡バーが信号線と接触するとき、金属-金属接触面が、強い接着の形で互いに張りつく場合がある。この接着は望ましくない張りつきの問題を引き起こし、それにより、スイッチが電気的に短絡する場合があり、短絡バーを信号線から切り離すのに、かなりの量の力を要する場合がある。接着力に対抗し、ビームをその静止位置又は平衡位置に戻すために、RF MEMSスイッチは一般に、ビームが撓む結果としてビーム内に累積する応力に頼る。この対抗力は、ビーム内の応力の和であり、ビームをその静止位置に「復元する」復元力と呼ばれる。しかしながら、この力は、金属コンタクト間の接着力に対抗するのに必ずしも十分であるとは限らない。金属コンタクト間にメタマテリアル構造を設けることによって、短絡バーが信号線と接触するか、又は信号線への近接範囲内に入るときに生成される反発性カシミール力を用いて、ビームの復元力を補完することができる。
【0079】
可撓性ビームのコンタクト内に誘電率勾配を設けることによって、カシミール力を制御することができる。誘電率勾配は、誘電率の減少順又は増加順のいずれかにおいて3つの媒質層を接合することによって設けることができる。
図31において、3つの媒質層が設けられ、第1の層3110は誘電率ε
1を有し、第2の層3120は誘電率ε
2を有し、第3の層3130は誘電率ε
3を有する。第1の層及び第3の層は金属層とすることができ、第2の層は誘電体層とすることができる。層はε
1<ε
2<ε
3又はε
1>ε
2>ε
3のいずれかになるように接合することができる。これは、正の誘電率を有する1つの金属層と、負の誘電率を有する別の金属層とを設けることによって可能にすることができる。例えば、第1の層3110は金から形成し、無限の誘電率を有することができ、第2の層3120は誘電体(例えば、一窒化ケイ素(SiN))から形成し、小さいが、正の誘電率(例えば、7)を有することができ、第3の層3130は、メタマテリアル単位セル3135を含むことができ、0、更には負の誘電率を有することができる。他の例において、第1の層3110は、所望の誘電率を得るために、メタマテリアル単位セル3115を含むこともできる。
【0080】
図32A~
図32Eは、スイッチのコンタクト間に反発性カシミール力を与えるために、メタマテリアルセルを組み込む例示的なRF MEMSスイッチ3200の図である。
図32Aはスイッチの上面図であり、
図32Bはスイッチの斜視図であり、
図32Cはスイッチの二分された断面の斜視図であり、
図32Dは閉じた位置にあるスイッチの側面図であり、
図32Eは開いた位置にあるスイッチの側面図である。
【0081】
スイッチは、基板3205の上方にわたって形成される2つの接地面3202及び3204を有する位置決めされた共平面導波路3201内に形成される。接地面はチャネルによって分離され、チャネル内に縦方向に信号線3210が形成される。信号線3210は、そこを通って信号が受信される入力ポート3212(入る矢印)と、そこを通って信号が送信される出力ポート(出る矢印)とをそれぞれ含む。
【0082】
スイッチは、信号線3210と接触するように、そして接触を断つように動くために、共平面導波路の面内及び面外に動くカンチレバー式ビームを含む。ビームは複数の層を含む。
図32の例において、上から下に向かって、それらの層は、誘電体材料の上層3420と、第1の金属層3210と、誘電体層3220と、第2の金属層3230とを含む。第1の金属層3210及び第2の金属層3220はそれぞれ、
図32Cの断面図に示されるように、内部に収容されるメタマテリアルデバイス3215、3235を含むことができる。上層3210及び第1の金属層3220は、ビームの全長にわたって延在するように構成できるのに対して、挟まれる誘電体層3220及び第2の金属層3230の長さは信号線3210の上方のエリアに制限することができる。代替的には、誘電体層3220は、ビームの全長に延在することができ、一方、第2の金属層3230のみを信号線3210の上方のエリアに制限することができる。
【0083】
接地面3202、3204及び信号線ポート3212、3214は、SiN又はSiO2等の誘電体3250の薄い層によって基板3205から分離することができる。
【0084】
スイッチの動作は、ビームが取り付けられるアンカー3270を共平面導波路3201の面内及び面外に動かすことによって制御することができる。この場合、接地線3202は、ビームのポスト又はアンカー3270がそこを通して位置決めされる穴3260を含むことができる。ポスト3270を上下に動かす結果として、それぞれ、スイッチのコンタクトを互いに分離することができるか、又は接触させることができる。
図32Dは、閉じたスイッチを示しており、コンタクトが互いに接触している。
図32Eは、開いたスイッチを示しており、ビームの誘電体層及び金属層が信号線ポート3214の上方に持ち上げられ、それにより、所与の高さHの間隙3275を形成する。
【0085】
図32A~
図32Eの例において、図示される共平面導波路の部分は約100μmとすることができ、ビームは約75μmの幅とすることができる。ビームが取り付けられるアンカー3270は、約11.25μmの(ビーム長の方向における)長さと、約75μmの幅とを有することができる。ビームがその中に固定される開口部3260は、約80μm×30μm等の、より大きな長さ及び幅を有することができる。導波路の(ビーム長の方向における)全長は約330μmとすることができ、それにより、接地面及び信号線はそれぞれ、約75μmの(同じくビーム長の方向における)幅を有することができ、その間に38μmのチャネルを有する。ビームは約140μm(アンカー3270の長さを含まない)の長さを有することができる。
【0086】
閉じた位置にあるときのビームの全高は、接地面及び信号線がその上に形成される誘電体表面に対して、約5μmとすることができる。接地面及び信号線はそれぞれ2μm厚とすることができる。その際、ビームはスイッチの高さに対して更に3μm寄与することができ、それにより、金属層3210、3230はそれぞれ約1μm厚であり、その間に挟まれる誘電体層3220も約1μmとすることができる。上層3440は、スイッチの高さに対して更に約0.2μmを追加することができる。スイッチの高さは、
図32Eに示されるように、開いているときにHだけ高くなることができる。
【0087】
第2の金属層3230に含まれ、そして任意選択で第1の金属層3210にも含まれるメタマテリアル単位セルは、スプリットリング共振器の形状を有することができる。スプリットリングは、正方形の形状とすることができる。
図33は、層内に形成される、幅Lを有する第1のスプリットリング3322、及び第2のスプリットリング3324のそれぞれを有する例示的な金属層3310を示しており、それにより、リングを形成することは、その層からリングを切り抜くことを伴うことができる。リングはそれぞれ同心とすることができ、それぞれのリング内のスプリット部3330が層3310の反対側に位置決めされるように位置合わせすることができる。リングはそれぞれ均一な幅Wを有することができ、スプリット部3330は均一な幅Gを有することができる。リングは更に、幅Sを有する均一な分離部3332だけ、互いから分離することができる。
【0088】
異なる単位セル構造が、RF MEMSスイッチのための関連する周波数帯域(例えば、60GHz~130GHz)において異なるメタマテリアル特性を与えることができる。
図34~
図36はそれぞれ、それぞれの単位セル構造に関する伝送特性及び反射特性に関するシミュレートされた試験結果を与える。本明細書において提供される特定の例において、シミュレートされた試験結果は、Matlabコードを用いて収集されたが、他の場合には他のプログラムを用いてシミュレーションを実行することができる。
【0089】
図34のメタマテリアル構造3401は、ビーム3402の幅に等しい幅を有する金属層内に含まれる。この例において、単位セルは、低い周波数、約300GHz、そして再び約470GHzにおいて、伝送タイプである。単位セルは、約150GHz、そして再び約300GHzにおいて反射タイプであり、伝送の減衰が反射の減衰を超える。したがって、
図34の構造は、メタマテリアル特性を示すことがわかる。
【0090】
図35のメタマテリアル構造3501は、信号線の幅に等しい長さを有する金属層内に含まれ、金属層の幅よりはるかに狭い幅を有するビーム3502に更に取り付けられる。この例において、単位セルは、約54GHzにおいて伝送特性を、約150GHzにおいて反射特性を有することがわかる。それゆえ、
図35の構造もメタマテリアル特性を示すことがわかる。
【0091】
図36のメタマテリアル構造3601は信号線の幅に等しい長さを有する金属層内に含まれ、金属層の幅よりはるかに狭い幅をそれぞれ有する2つのブランチを有するU字形ビーム3602に更に取り付けられる。この例において、単位セルは、約80GHzにおいて伝送特性を、約163GHzにおいて反射特性を有することがわかる。それゆえ、
図36の構造もメタマテリアル特性を示すことがわかり、約83GHzの相対的に狭い帯域幅にわたってこれらの特性を示すことができる。
【0092】
さらに、メタマテリアルセル構造のパラメータを変更して、異なる伝送特性及び反射特性を生成することができる。例えば、
図37は、異なるパラメータG、S及びW(上記で
図33に関連して規定された)を有するメタマテリアルセルに関する反射特性をプロットするグラフを与える。
図37の特定の例において、反射が最も大きく減衰する周波数が、G、S及びWに応じて約80GHzから約90GHzまで変化したことを確認することができる。例えば、Gが2μmであり、Sが3μmであり、Wが9μmである場合、挿入損失は80GHzにおいて約-74dBまで降下する。それに比べて、G、S及びWの他のパラメータは、約90GHzにおいて約-60dBの反射をもたらす。
【0093】
異なるメタマテリアルセル構造及びセル構造パラメータを使用することに加えて、MEMSスイッチの金属層は、上記のそれらのパラメータ及び寸法と比べて、異なるパラメータ及び寸法を用いて形成することもできる。
図38は、第2の金属層の厚さ「d」(例えば、
図32A~
図32Eの3230)が0.5μmから2μmまで変化する場合のスイッチの伝送特性及び反射特性の両方のプロットである。
図39は、挟まれる誘電体層の厚さ(例えば、
図32A~
図32Eの3220)が1.5μmから5μmまで変化する場合のスイッチの伝送特性及び反射特性のプロットである。
図40は、第1の金属層の厚さ「d1」(例えば、
図32A~
図32Eの3210)が0.5μmから2μmまで変化する場合のスイッチの伝送特性及び反射特性のプロットである。種々のMEMSスイッチの伝送特性はこれらの条件のそれぞれにおいて概ね類似であるが、伝送が減衰する周波数は約160GHzから約180GHzまでばらつき、スイッチの反射特性は主に60GHzから150GHzまでばらつく。
【0094】
上記の伝送データ及び反射データを用いるとき、当該技術分野において既知のパラメータ抽出手順を用いて、メタマテリアルセルの透磁率及び誘電率を抽出することができる。パラメータ抽出が
図41に示される。
図41から明らかなように、メタマテリアル構造は、80GHzを中心にした周波数帯域において0に近い誘電率及び透磁率を示す。それゆえ、
図41から、これらの構造が、約60GHzから約130GHzに及ぶ周波数帯域において反発性カシミール力を生成することが明らかである。
【0095】
図42及び
図43はそれぞれ、そのオン状態及びオフ状態におけるRF MEMSスイッチの全体応答を更に示す。
図42において、スイッチがオフであり、それゆえ、入力ポートと出力ポートとの間で伝送される信号を通さないとき、反射特性は、130GHzまでの周波数であっても0dBよりわずかに低いだけであることがわかり、伝送特性は、約60GHz~約130GHzの動作周波数において約-20dB~約-15dBである。
図43において、スイッチがオンであり、それゆえ、入力ポートと出力ポートとの間で伝送される信号を通すとき、反射特性は80GHzにおいて約-73.5dBまで低く、その場合の伝送特性は-0.33dBまで高く、一方で、163GHzにおいて反射特性及び伝送特性はいずれも約-6.75dBである。
【0096】
図32~
図43の例は、静摩擦の影響を小さくするために、高周波抵抗性MEMSスイッチにメタマテリアルを組み込む可能性を実証する。しかしながら、上記の原理は容量性MEMSスイッチに同じく適用できることも理解されよう。抵抗性スイッチと同様に、無限の誘電率を有する金層、正であるが、低い誘電率を有する誘電体層、及び約0以下の範囲内の誘電率を有するメタマテリアル層を有する等のサンドイッチ状の金属層及び誘電体層を用いて、所望の誘電率界面を達成することができる。上記の例示的なスイッチとは異なり、容量性スイッチでは、メタマテリアル層は、ビームコンタクトの一部としてではなく、信号線コンタクトの一部として設けることができる。
【0097】
異なる単位セル構造が、RF MEMSスイッチのための関連する周波数帯域(例えば、60GHz~130GHz)において異なるメタマテリアル特性を与えることができる。
図44~
図46はそれぞれ、それぞれの単位セル構造に関する伝送特性及び反射特性に関するシミュレートされた試験結果を与える。本明細書において提供される特定の例において、シミュレートされた試験結果は、Matlabコードを用いて収集されたが、他の場合には他のプログラムを用いてシミュレーションを実行することができる。
【0098】
図44のメタマテリアル構造4401は(例えば、信号線コンタクトの)金属層内に含まれ、ビーム4402を接合する。この例において、ビームはメタマテリアル構造より薄く、信号線に隣接する接地面のうちの1つから延在する単一の支持体によって支持される。単位セルは、約34GHzにおいて伝送タイプである(-88.75dBの反射特性及び-0.29dBの伝送特性を有する)。単位セルは、約120GHzにおいて反射タイプである。したがって、
図44の構造は、メタマテリアル特性を示すことがわかる。
【0099】
図45のメタマテリアル構造4501は(例えば、信号線コンタクトの)金属層内に含まれ、ビーム4502を接合する。この例において、ビームはメタマテリアル構造より薄く、信号線の両側にあるポストによって二重に支持される。単位セルは約40GHzにおいて伝送タイプである(-54dBの反射特性及び-0.5dBの伝送特性を有する)。単位セルは約140GHzにおいて反射タイプである。したがって、
図45の構造は、メタマテリアル特性を示すことがわかる。
【0100】
図46は、信号線の反対に位置する入力側及び出力側に位置決めされる2つのメタマテリアル構造4601及び4603を含む。各メタマテリアル構造4601、4603は(例えば、信号線コンタクトの)金属層内に含まれる。さらに、それぞれの二重に支持されるビーム4602、4604が、メタマテリアル構造4601、4602のそれぞれの上方に位置決めされる。
図45の例と同様に、ビームはメタマテリアル構造より薄い。単位セルは約8GHzにおいて伝送タイプである(-60dBの反射特性及び-0.01dBの伝送特性を有する)。単位セルは約160GHzにおいて反射タイプに属する。したがって、
図45の構造は、メタマテリアル特性を示すことがわかる。
【0101】
【0102】
スイッチは、入力側4712及び出力側4714を有する信号線の上方にわたって形成される構造を含む。外側スプリットリング4722及び内側スプリットリング4724を有するメタマテリアル構造が、入力側4712と出力側4714との間の信号線コンタクトに形成されており、それを通じて信号が受信され(入る矢印)、それを通じて出力ポートから信号が送られる(出る矢印)。
【0103】
上記で説明されたスプリットリング構造と同様に、
図47A~
図47Cの構造は幅W、Gのスプリット幅を有し、リング間の空間は幅Sを有する。信号線は幅Lを有し、信号線をそれぞれの接地面から分離するチャネルは幅Cを有する。
【0104】
接地面4702、4704及び信号線はそれぞれ、金等の導電性材料から形成され、窒化ケイ素(Si
3N
4)等の誘電体材料4740の上に形成され、誘電体材料自体は基板4705の上に形成される。接地面4702のうちの1つが、接地面4702から誘電体材料4740の中に下方に延在するポスト4770と、ポスト4770から信号線4714の方向に延在するビーム4780とを含む。ビーム4780のエッジは、ビーム4780の端部が信号線4712、4714のメタマテリアル構造4722、4724の下方に位置決めされるように、信号線4712、4714の反対に位置するエッジと位置合わせされる。
図47A及び
図47Cにおいて、ポスト4770は、接地面4702内の開口部4760を通して見ることができる。
【0105】
図47A~
図47Cの例において、接地面及び信号線はそれぞれ、約73μmの(ビーム4780の長さの方向における)幅を有することができ、ビームは約168μmの長さを有することができる。信号線コンタクト上に形成されるメタマテリアル構造は、約15μmのリング幅Wと、約8μmのスプリット幅Gと、約5μmのリング間空間Sとを有することができる。
【0106】
或る周波数範囲にわたるスイッチ4700の伝送特性及び反射特性が
図48に示される。
図48から明らかであるように、メタマテリアルは約175GHzにおいて最も反射性が高く、約80GHzにおいて最も伝送性が高い。
【0107】
これらの結果に基づいて、メタマテリアル構造の誘電率及び透磁率を求めるために、材料パラメータ抽出を実行することができる。その抽出は、
図49において或る周波数範囲にわたって示される。
図49において見られるように、メタマテリアル構造は、約50GHz~150GHzにおいて0に近い誘電率及び透磁率を示す。これは、
図48の構造が、本開示の所望の周波数帯域においてカシミール力を小さくする(更には反発性カシミール力を生成する)のに適していることを示す。
【0108】
図50は、スイッチ内の張りつきを削減するために、メタマテリアル信号線コンタクトを利用する容量性シャントRF MEMSスイッチ5000の斜視図を示す。スイッチ5000の特徴の多くは
図47A~
図47Cにおけるスイッチ4700の特徴と同等とすることができる(接地面5002、5004及び基板5005は面4702、4704及び基板4705に相当し、信号線入力5012及び出力5014は4712及び4714に相当し、スプリットリングメタマテリアル構造5022及び5024は構造4722及び4724に相当し、誘電体層4740及び5040は同等であり、開口部4760及び5060は同等であり、ポスト4770及び5070は同等であり、ビーム4780及び5080は同等である)。スイッチ5000は可撓性ビーム5050を更に含む。ビーム5050は、
図5に関連して説明された長方形ビーム510と同等することができる(例えば、金から形成することができ、目打ちされたグリッド構造を有することができ、蛇行パターンにおいて延在することができる)。可撓性ビーム5050は、接地面5002及び5004の上にそれぞれ形成される一対のポストによって支持され、バイアス電圧によって作動するときに、信号線に向かって下方に撓むように構成される。
【0109】
動作時に、バイアス電圧によって、ビーム5050の中点が、信号線コンタクトと接触するまで下方に撓み、それにより、信号線がオフに切り替わる(又は他の場合にはオンに切り替わる)。バイアス電圧が除去されるとき、ビーム5050の中点が上方に撓んで戻る。ビームの中点が信号線コンタクトのメタマテリアル構造5022、5024と位置合わせされるので、ビームと信号線コンタクトとの間の界面におけるカシミール効果は減少するか、更には反発し、それにより、ビーム5050と信号線との間の張りつきの傾向を低減する。
【0110】
図50には示されないが、信号線コンタクトは更に、メタマテリアル構造を含む金属層の上方に誘電体材料の後を含むことができる。誘電体層はSiNから形成することができ、
図31に関連して上記で論じられたように、所望の誘電率勾配を達成するためにアイソレーション層として機能することができる。別の言い方をすると、ビーム5050は無限の誘電率を有することができ、アイソレーション層は正であるが、それより小さい誘電率を有することができ、信号線コンタクト内のメタマテリアル構造を含む金属層は0に近いか、0か、更には負の誘電率を有することができ、それにより、ε
1<ε
2<ε
3(又は逆)の条件を満たすことができる。
【0111】
スイッチ500の性能が
図51及び
図52に示されており、それらの図は、或る高いRF周波数範囲にわたるスイッチの反射特性及び伝送特性の両方のプロットである。
図51は、オン状態におけるスイッチの(信号を伝送する)動作を示し、
図52はオフ状態におけるスイッチの(信号の伝送を遮断する)動作を示す。
【0112】
図51において、最も注目すべきことに、10.3GHzにおいて、反射減衰量が-29.8dBまで高く、一方、挿入損失が約-0.07dBまで低い。100.2GHzにおいても、反射減衰量が-8.9dBまで高く、一方、挿入損失は約-1.23dBにすぎない。これは、10GHz~100GHzの高い周波数の広い範囲にわたるオン状態におけるスイッチの良好な動作を実証する。
【0113】
図52において、スイッチはオフであり、それゆえ、伝送性ではなく、反射性になるように変化している。29.3GHzにおいて、挿入損失は約-22.2dBまで高く、一方、反射減衰量は約-0.26dBまで低い。100.2GHzにおいても、挿入損失は-14.9dBまで高く、一方、反射減衰量は約-0.82dBにすぎない。これは、約20GHz~100GHzの概ね同じ高い周波数の広い範囲にわたるオフ状態におけるスイッチの良好な動作を実証する。
【0114】
要するに、30GHz~100GHzの周波数帯域にわたって、オン状態及びオフ状態におけるRF MEMSスイッチの良好な挿入損失特性及び反射減衰量特性が達成される。これにより、ここで説明されたスイッチは、広い周波数帯域幅にわたる高周波数スイッチング動作のための良好な候補になる。したがって、本開示において説明されたスイッチは、広い帯域幅にわたって、高い周波数(例えば、10GHz以上)を必要とする適用例の動作及び性能を改善することができる。そのような技術は、限定はしないが、5G通信、スイッチングネットワーク、移相器(例えば、電子走査式フェーズアレイアンテナ内にある)及びモノのインターネット(Internet of Things, IoT)の適用例を含むことができる。
【0115】
本開示において、説明されたメタマテリアル構造はスプリットリングである。しかしながら、他のメタマテリアル構造が所望の周波数範囲内で類似の誘電率特性及び透磁率特性を与えるなら、それらの構造を使用できることは、当業者は認識されたい。例えば、トポロジから着想したメビウス変換MTM(メタマテリアル)構造(自らの上に位置付けられる連続する閉じた経路を形成する構造を意味し、別の言い方をすると、その構造は、閉じた経路が完結される前に、閉じた経路が1つの軸(例えば、構造の中心にあるか、又はその近くにある)の周りを2回転以上しながら延在するトポロジを有することができる)は、反発性カシミール力を生成するのに有利であると考えることができる。
【0116】
本発明は特定の実施形態を参照しながら本明細書において説明されてきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び応用形態を例示するにすぎないことは理解されたい。それゆえ、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に数多くの変更を加えることができること、及び他の構成を考案することができることは理解されたい。