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特許7130395多重網目スクリーンによるミッシングノズルの修正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】多重網目スクリーンによるミッシングノズルの修正
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 201
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018046530
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2018154128
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-15
(31)【優先権主張番号】10 2017 204 320.2
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアント シュトリッツェル
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054453(JP,A)
【文献】特開2013-169760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0360491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ(6)による非正常な印刷ノズル(8)の補整を伴って、インクジェット印刷機(7)において印刷プロセスを実施する方法であって、
印刷されるべき印刷像に対して網目スクリーン像(10)を作成する網目スクリーン化プロセスの後に、非正常な印刷ノズル(8)を、隣接している印刷ノズル(12)の増大したインク塗布によって補整する方法において、
前記隣接している印刷ノズル(12)に対して、前記コンピュータ(6)によって、少なくとも1つの修正網目スクリーン像(13)が前記網目スクリーン化プロセスの間に事前に計算され、前記修正網目スクリーン像(13)が、前記隣接している印刷ノズル(12)の少なくとも1つのコラムにおいて、前記網目スクリーン化プロセスにおいて作成された前記網目スクリーン像(10)と置き換わり、前記印刷プロセスが前記インクジェット印刷機(7)において修正された網目スクリーン(16)によって実施される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記網目スクリーン像(10)において、前記非正常な印刷ノズル(8)の印刷方向において、左側でも右側でも、前記隣接している印刷ノズル(12,15)の少なくとも2つのコラムが、少なくとも2つの異なる事前に計算された修正網目スクリーン像(13,14)によって置き換えられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記非正常な印刷ノズルの印刷方向において、左側でも右側でも、前記非正常な印刷ノズル(8)に直接的に隣接している少なくとも1つのコラム(12)は、増大したインク塗布を伴う少なくとも1つの第1の修正網目スクリーン像(13)によって、前記非正常な印刷ノズル(8)を補整し、
前記非正常な印刷ノズルから離れて位置する少なくとも1つのコラム(15)は、低減したインク塗布を伴う少なくとも1つの第2の修正網目スクリーン像(14)によって、生じ得る過度の補整を阻止する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ずれている印刷点を伴う非正常な印刷ノズル(8)と
全く印刷しないまたは印刷が著しく低減されている非正常な印刷ノズル(8)と
に対してそれぞれ、これらに対応して整合されている、事前に計算された修正網目スクリーン像が使用される、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記非正常な印刷ノズルの印刷方向においてそれぞれ左側に位置するコラムと右側に位置するコラム(12,15)とが補整を実行し、当該コラムに対して、異なる事前に計算された修正網目スクリーン像(13,14)が使用される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記事前に計算された修正網目スクリーン像(13,14)における、増大したまたは低減した各前記インク塗布は、前記隣接している印刷ノズル(12,15)の増大したまたは低減したインク滴量によって実現される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の発明は、事前に計算された修正網目スクリーン像を使用することによる非正常な印刷ノズルの修正を伴って、インクジェット印刷機において印刷プロセスを実施する方法に関する。
【0002】
本発明は、デジタル印刷の技術領域に関する。
【0003】
インクジェット印刷では、インクジェット印刷機の印刷ヘッド内の個々の印刷ノズルの故障は、一般的な問題である。個々の印刷ノズルのこのような故障は、種々の原因を有し得る。これらの個々の印刷ノズルのインク供給部等における一般的な機能障害の他に、印刷ノズルの目詰まりが極めて頻繁に問題になる。各印刷ノズルの印刷点が側方へずれてしまう、傾いて印刷する印刷ノズルも、頻繁に発生する問題である。これらの、傾いて印刷する印刷ノズルも、非正常な印刷ノズルと称される。非正常な印刷ノズルは、印刷像において、いわゆる空白行という結果をもたらす。すなわち、印刷像内の、相応のインク塗布が予期される箇所において、印刷方向において、相応に、非正常な印刷ノズルによってインクが塗布されず、また、非正常でない隣接している印刷ノズルは相応にインクを塗布することができる。この結果、印刷方向において、印刷基材がのぞくライン、すなわち空白行が生じてしまう。多色印刷の場合には、これは色のずれとなる。例えばノズル開口部内の乾燥した残留インクによって生じ得る、斜めに噴射する印刷ノズルの場合には、該当する印刷ノズルのインク噴射のずれの度合に応じて、空白行の他に、さらに、付加的ないわゆる黒線が生じてしまう。この黒線は、次のことによって生じる。すなわち、斜めに噴射する印刷ノズルが、機能している、隣接している印刷ノズルの印刷領域内へ印刷し、これによって、この箇所で、二倍の、または少なくとも増大したインク塗布が行われることによって生じる。すなわち、非正常な印刷ノズルのオリジナルの印刷点での少なすぎるインク塗布の他に、斜めに噴射する印刷ノズルが誤って印刷を行う箇所で、増大したインク塗布が生じてしまう。
【0004】
非正常な印刷ノズルの形態のこの種のエラーを修正するために、従来技術において種々のアプローチが公知である。非正常な印刷ノズルを補整する、最も一般的なアプローチは、生じている空白行を補整するために、隣接している印刷ノズルに、対応して増大したインク塗布で印刷させることである。ここで、付加的に塗布されたインクは、隣接している印刷ノズルの箇所から、非正常な印刷ノズルの印刷領域内へ流れ、白色のまま残っているこの領域をインクで覆う。斜めに噴射している印刷ノズルは、従来技術においては、通常、次のように補整される。すなわち、斜めに噴射している印刷ノズルが停止され、次に非正常な印刷ノズルの補整と同じように補整される。
【0005】
しかしこの補償方法は、幾つかの欠点を有している。1つの欠点は、この補償方法が、極めて限定的にしか使用可能でない、ということである。例えば、複数の隣接している印刷ノズルが故障している場合には、この補償方法は、生じている相応に幅の広い空白行を完全には覆うことができない。別の重要な欠点は、隣接している印刷ノズルの増大したインク塗布による非正常な印刷ノズルの補整が、過度に多くの量のインクを塗布してしまう危険を常に孕んでいるということである。これは次に、相応する黒線を生じさせてしまう。このことは特に、印刷されるべき印刷像の相応するベタ領域において問題になる。この領域ではこのような黒線は特に著しく目立ってしまう。
【0006】
さらにインクジェット印刷では、標準的なオフセット印刷と全く同様に、印刷像は対応して網目スクリーン化されるので、隣接している印刷ノズルのインク量の増大はさらに、既に網目スクリーン化されている像の構造を変えてしまう。例えばより高いまたはより低いグレースケール値への網目スクリーンの変化時には、特定の規則が考慮されるべきである。例えばグレースケール値を上げる際に、既に、より低いグレースケール値の網目スクリーンにおいて設定されていたピクセルが除去されてはならない、もしくはこのピクセルのインク量が低減されてはならない。相応のことがグレースケール値を下げる際に、その逆で当てはまる。これらの規則が破られると、これは結果として、ノイズを有している印刷像を生じさせてしまう。従来技術から公知の、隣接している印刷ノズルのインク塗布を増大させることによって非正常な印刷ノズルを補整するアプローチは、通常、印刷像の網目スクリーン化後に実行され、これによって、この種の、ノイズを有している印刷像が結果として生じ得る。
【0007】
しかし、網目スクリーン化の前に、非正常な印刷ノズルの箇所の近隣においてグレースケール値を対応して増大させ、その後印刷像を新たに網目スクリーン化することによって、隣接している印刷ノズルによって非正常な印刷ノズルの補整を実行することも従来技術から公知である。ここでは、当然ながら、網目スクリーン化規則が守られる。しかし非正常な印刷ノズルは通常、印刷プロセスが始まってはじめて検出されるので、これは常に、印刷像の新たな網目スクリーン化を必要とする。この新たな網目スクリーン化は、相応するコストの原因となり、さらに、新たな網目スクリーン化の時間中、印刷タスクを継続することができない。
【0008】
従来技術は、この問題に対して、さらなるアプローチを有している。例えば、米国特許出願公開第20150202876号明細書から、印刷方法および印刷コントロール機器が公知であり、ここでは、非正常な印刷ノズルの補整のために、この非正常な印刷ノズルの位置が、印刷像において識別され、データ生成ユニットによって、全ての印刷像データが特定の印刷ノズルに割り当てられ、次に、データ修正ユニットによって、非正常な印刷ノズルが、印刷ができるだけ少ない画像領域に割り当てられるように、印刷像データが印刷ノズルに配分される。すなわちここでは、印刷像が対応して整合される。これは相応に、同様に、印刷像の新たな網目スクリーン化を必要とする。
【0009】
さらなる解決策は、米国特許第6010205号明細書に記載されている。ここでは、インクジェット印刷のための方法が提示されており、非正常な印刷ノズルが、目下の印刷プロセスに必要とされていない、機能している印刷ノズルによって置き換えられる。
【0010】
別のアプローチは、米国特許第9375964号明細書から公知である。ここでは、隣接している印刷ノズルの強すぎるインク塗布によって生じ得る過度の補整が次のことによって防止される。すなわち、隣接している印刷ノズルの網目スクリーン値に対してランダムテーブルが使用されることによって防止される。ここでは、隣接している印刷ノズルの増大したインク塗布を表す、増大した網目スクリーン値が、所望の補償強度に関連する確率によってランダムに分配される。例えば、P=0.8の所望の補整確率の場合には、高い網目スクリーンピクセル値の分配は、0.8の相応する確率によって、ランダムに行われる。したがってランダム要素の導入によって、過度なノイズを有する印刷像が発生することが阻止される。なぜなら、隣接している印刷ノズルの補整のランダム分配は、観察者にとって目立つ、系統的な構造の出現を低減させるからである。しかし、ここでの欠点は、過度の補整の回避のために、補整の確率が常に、目下の各印刷像に整合されなければならないということである。さらに、ここでも、既に作成されている網目スクリーンの操作の欠点が当てはまり、これはさらに、ノイズを有する印刷像を結果としてもたらし得る。
【0011】
したがって本発明の課題は、従来技術から公知の方法よりも効率が良く、かつ印刷像に悪影響を及ぼさない、インクジェット印刷における非正常な印刷ノズルの補整方法を提示することである。
【0012】
上述の課題の本発明の解決策は、コンピュータによる非正常な印刷ノズルの修正を伴って、インクジェット印刷機において印刷プロセスを実施する方法であって、ここでは、印刷されるべき印刷像に対して網目スクリーン像を作成する網目スクリーン化プロセスの後に、非正常な印刷ノズルが、隣接している印刷ノズルの増大したインク塗布によって補整される。この方法は、隣接している印刷ノズルに対して、コンピュータによって、少なくとも1つの修正網目スクリーン像が事前に計算され、この修正網目スクリーン像が、隣接している印刷ノズルの少なくとも1つのコラムにおいて、網目スクリーン化プロセスにおいて作成された網目スクリーン像と置き換わり、印刷プロセスがインクジェット印刷機において、この修正された網目スクリーンによって実施されることを特徴とする。
【0013】
本発明の方法の中心となるポイントは、修正網目スクリーンの事前に計算である。この修正網目スクリーンは、ここで、非正常な印刷ノズルの補整のために必要な増大したインク塗布を実行する。修正網目スクリーン像はここで、印刷像データに関連して、オリジナルの網目スクリーン化された印刷像に対して付加的に作成されてもよい。しかし、1つまたは複数の標準的な修正網目スクリーン像が使用されてもよい。この場合には、それぞれ印刷像に適している修正網目スクリーン像が対応して選択されなければならない。これは、印刷前段階における網目スクリーン化プロセスの間に行われてもよい。ここで両方の場合、すなわち修正網目スクリーン像の事前に計算の場合と選択の場合において、相応する網目スクリーン化規則の遵守が留意されなければならない。選択された修正網目スクリーンは、次に、隣接している印刷ノズルの少なくとも1つのコラムにおいて、オリジナルの網目スクリーンの代わりに使用される。したがって、修正網目スクリーンの増大したインク塗布によって、非正常な印刷ノズルを補整することができる。修正網目スクリーンが既に事前に計算されていることによって、非正常な印刷ノズルの発生時には、オリジナルの網目スクリーンが、隣接している印刷ノズルの箇所で、修正網目スクリーンによって置き換えられるだけでよい。これによって、網目スクリーンの補助的な計算はもはや不要になる。修正網目スクリーンがさらに、網目スクリーン規則と一致して作成されている場合には、網目スクリーン像に相応に悪影響を与えてしまう付加的な構造ももたらされない。その後、このように修正された網目スクリーン像によって印刷プロセスを継続することができる。
【0014】
本発明の方法の中心的な発展形態では、網目スクリーン像において、非正常な印刷ノズルの印刷方向において、左側でも右側でも、隣接している印刷ノズルの少なくとも2つのコラムが、少なくとも2つの異なる事前に計算された修正網目スクリーン像によって置き換えられる。ここでは、それぞれ直接的に隣接しているコラムが、最初の段階において、第1の修正網目スクリーン像によって置換され、また、それぞれ1つのコラムぶん離れて位置する、隣接しているコラムが、第2の事前に計算された修正網目スクリーン像によって置換される。2つよりも多くの修正網目スクリーン像が事前に計算されてもよい。これはここでは、どのような修正幅で、非正常な印刷ノズルを補整したいのかに関連する。修正幅5は、例えば、それぞれ左側および右側に隣接している2つの印刷ノズルが、対応して事前に計算された修正網目スクリーン像によって置換されることを意味している。第1の修正網目スクリーンによって、直接的に隣接している印刷コラムだけを置換するのではなく、例えばそれぞれ、左側および右側で、はじめの2つの印刷コラムを置換することも可能である。第2の修正網目スクリーンは、この場合には、相応にさらに離れて位置する印刷コラムに対して使用される。修正網目スクリーン毎の印刷コラムの数は、与えられた状況に関連して、自由に選択可能である。常に合理的なわけではないが、少なくとも2つの修正網目スクリーンの混合も可能である。すなわち、例えば、はじめの2つの直接的に隣接している印刷コラムに対して第1の修正網目スクリーンが使用され、次に第3の印刷コラムに対して第2の修正網目スクリーンが使用され、次に第4の印刷コラムに対して再び第1の修正網目スクリーンが使用される。
【0015】
本発明の方法の別の有利な発展形態では、非正常な印刷ノズルの印刷方向において、左側でも右側でも、この非正常な印刷ノズルに直接的に隣接している少なくとも1つのコラムが、増大したインク塗布を伴う少なくとも1つの第1の修正網目スクリーン像によって、非正常な印刷ノズルを補整し、また、この非正常な印刷ノズルから離れて位置する少なくとも1つのコラムが、低減したインク塗布を伴う少なくとも1つの第2の修正網目スクリーン像によって、生じ得る過度の補整を阻止する。増大したインク塗布を伴う第1の修正網目スクリーン像によって、非正常な印刷ノズルが補整される。第2の修正網目スクリーン像もしくは一般的に異なる修正網目スクリーン像を使用する意図は、第2の修正網目スクリーン像が低減したインク塗布を実現し、これによって、増大したインク塗布を伴う第1の修正網目スクリーン像によって生じ得る過度の補整を阻止するということである。これによって、この補整によって、新たなエラーが印刷像内にもたらされないということが保証される。
【0016】
本発明の方法の別の有利な発展形態では、ずれている印刷点を伴う非正常な印刷ノズルと、全く印刷しないまたは印刷が著しく低減されている非正常な印刷ノズルとに対してそれぞれ、このために相応に整合されている、事前に計算された修正網目スクリーン像が使用される。斜めに噴射する印刷ノズルに対して、固有の相応に整合された、事前に計算された修正網目スクリーン像を使用するのは完全に合理的である。特に、低減したインク塗布を伴う修正網目スクリーン像の使用は、ここでより重要である。なぜなら、このようにして、これによって依然として存在する、まさしく誤って塗布されるインクが補整されるからである。これは、斜めに噴射している印刷ノズルを単に動作停止し、次に、非正常な印刷ノズルとして補整する、これまでの従来技術のアプローチに対する択一的な手法である。
【0017】
本発明の方法の別の有利な発展形態では、非正常な印刷ノズルの印刷方向において、それぞれ左側に位置するコラムと右側に位置するコラムとが補整を実行し、これらに対して、異なる事前に計算された修正網目スクリーン像が使用される。斜めに噴射する印刷ノズルに関連せずに、非正常な印刷ノズルのそれぞれ左側に位置する印刷コラムと右側に位置する印刷コラムとに対して、異なる修正網目スクリーンを使用することも合理的であり得る。適用ケースは例えば、それぞれ左側と右側に、印刷像の領域が異なって構造化されている場合であり、したがって相応にこれに対して、適している修正網目スクリーン像が合理的である。しかし、当然ながら、修正のために事前に計算される異なる修正網目スクリーン像が多いほど、本発明の方法の総体的なコストが高くなる、ということも考えられるべきである。コストと利益との間で正確な考慮が行われるべきである。
【0018】
本発明の方法の別の有利な発展形態では、事前に計算された修正網目スクリーン像における、それぞれ増大したまたは低減したインク塗布は、隣接している印刷ノズルの増大したまたは低減したインク滴量によって実現される。これは、隣接している印刷ノズルによる補整に対する前提条件であり、本発明の方法もこれを用いる。すなわち、インクジェット印刷機は、異なる大きさのインク滴を作成することができなければならない。ここで、どの位の数の異なる大きさが作成可能であるのかは、本発明の方法にとってそれほど重要ではない。しかし、少なくとも2つの異なる大きさが存在していなくてはならない。印刷機がもたらすインク滴の大きさの数が多くなるほど、補整は正確になるが、補整の複雑さも増す。
【0019】
本発明自体ならびに本発明の構造的かつ/または機能的に有利な発展形態を以下で、属する図面を参照して、少なくとも1つの有利な実施例に基づいて、詳細に説明する。図面では、相応する要素にそれぞれ同じ参照符号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】例示的なインクジェット印刷機
図2】非正常な印刷ノズルによる網目スクリーン像
図3】網目スクリーンにおける、想定される修正幅5
図4】増大したインク塗布を伴う第1の修正網目スクリーン
図5】低減したインク塗布を伴う第2の修正網目スクリーン
図6】修正された網目スクリーン像
図7】本発明による方法の概略的なフロー
【0021】
適用領域は、有利な実施形態では、インクジェット印刷機7である。このような印刷機7の基本的な構造の例が、図1に示されている。このような印刷機7は、印刷ヘッド5による印刷が行われる印刷ユニット4内へ印刷基材2を供給するためのフィーダ1から、デリバリ3までである。ここでこれは、枚葉インクジェット印刷機7であり、これは、制御コンピュータ6によってコントロールされる。このような印刷機7の動作時には、既に冒頭に記載したように、印刷ユニット4内の印刷ヘッド5内の個々の印刷ノズル8が故障することがある。この結果、空白行が生じる。もしくは多色印刷の場合には、色値がずれてしまう。
【0022】
有利な実施例は以下のようなものである。図2は、非正常な印刷ノズル8による相応する網目スクリーン像10を示している。相応する網点が相応する印刷方向においてどのように欠落し、これによって相応する空白行が生じるのかが良く見て取れる。この有利な実施例は、5の修正幅11を使用する。すなわち、中央の非正常な印刷ノズル8の隣に、それぞれこの印刷ノズルの左側および右側で、隣接している印刷ノズル12の2つのコラムが補整のために使用される。これは極めて明確に図3に示されている。非正常なこれらの印刷ノズル8を補整するために、直接的に隣接している印刷ノズル12による増大したインク塗布が必要である。このために、別の網目スクリーン13が使用される。この別の網目スクリーンは、本発明の方法において、既に印刷前段階における網目スクリーン化プロセスの間に事前に計算され、これによって、非正常な印刷ノズル8の発生時の印刷像の新たな網目スクリーン化を回避することができる。事前に計算された修正網目スクリーン13、14の使用は同様に、オリジナルの画像網目スクリーン10に合わせることができるという利点を有している。これによって、合わせられていない、網目スクリーン規則を守っていない修正網目スクリーンによって、新たなアーチファクトが印刷像内に発生してしまうことが回避される。増大したインク塗布を伴う、このような修正網目スクリーン13は例示的に図4に示されている。ここでは、増大したインク塗布がどのように、網目スクリーン化のための規則と一致して行われるのかが良く見て取れる。例えば、オリジナルの網目スクリーン像10においてピクセルが設定されていた箇所では、第1の修正網目スクリーン像13においても、同じまたはより大きいインク滴の大きさのピクセルが設定されている。図4に示されているように、第1の修正網目スクリーン像13はここで、直接的に隣接している印刷ノズル12もしくはこの印刷ノズルによって印刷される印刷コラム12に対してのみ使用される。
【0023】
ここで、増大したインク塗布による過度の補整を阻止するために、第2の修正網目スクリーン14が、相応に離れて位置している、隣接している印刷ノズル15もしくはその印刷コラム15に対して使用される。図5に、これが相応に示されている。ここでも網目スクリーン化規則が守られている。したがってここでは、例えば、オリジナルの網目スクリーン10においてピクセルが設定されていなかった点において、ここではピクセルが設定されていない。さらに、使用されている5の修正幅11において、それぞれ外側に隣接している印刷ノズル15がどのように、低減したインク塗布を伴う相応の修正網目スクリーン像14を使用するのかが示されている。
【0024】
図6は、ここで、結果として生じている、修正された網目スクリーン像16を示している。これは残りの印刷像に対してオリジナルの網目スクリーン10を使用している。非正常な印刷ノズル8の空白行の修正のために、第1の事前に計算された修正網目スクリーン13が、非正常な印刷ノズル8にそれぞれ直接的に左側および右側に隣接して、増大したインク塗布を伴って使用される。過度の補整を回避するために、第2の事前に計算された修正網目スクリーン像14がそれぞれ、修正幅11の外側の箇所15で、低減したインク塗布を伴って使用される。
【0025】
本発明の方法のフローが図7において再度、概略的に示されている。第1のステップでは、非正常な印刷ノズル8の検出が行われる。その位置が既知の場合には、生じている網目スクリーン像10内に、インクジェット印刷機7の制御コンピュータ6によって、調整された、すなわち事前に構築された修正幅11に従って、第1および第2の修正網目スクリーン像13、14が、既に網目スクリーン化されている像10内に挿入される。この修正された網目スクリーン像16で次に印刷過程が継続され、非正常な印刷ノズル8が対応して補整される。ここで、インクジェット印刷機7の制御コンピュータ6には、非正常な印刷ノズル8を補整するためのオリジナルの修正アルゴリズムの他に、非正常な印刷ノズル8のための、事前に計算された修正網目スクリーン像13、14も、対応して使用されるべき修正幅11も存在していなければならない。例えば、それぞれ左側および右側で隣接している印刷ノズル12、15に対する異なる網目スクリーンの使用に関する本発明の方法の可能なバリエーションも、これがいつ適用されるべきであるかの条件を含んで、制御コンピュータ6内で、構造毎に既知でなければならない。相応する修正網目スクリーン13、14の事前に計算はここで有利には、オリジナルの印刷像に対する網目スクリーン過程と同時に処理される。したがって事前に計算された修正網目スクリーン像13、14は、相応する印刷像に整合する。しかし、作成されるべき印刷像に関連していない一般的に有効な修正網目スクリーン像が使用されてもよい。この場合にこれは、相応に、インクジェット印刷機7の制御コンピュータ6にアクセスするメモリに格納されていなければならない。修正網目スクリーン像13、14の事前に計算は、オリジナルの網目スクリーン化プロセスと同様に、理論的に、インクジェット印刷機の制御コンピュータ自体によって処理されてもよい。しかし通常、これはコンピュータ内で、印刷プロセスの前段階において、ラスターイメージプロセッサにおいて処理され、この場合には網目スクリーン化された印刷像10も事前に計算された修正網目スクリーン像13、14も、印刷機7の制御コンピュータ6に、ネットワークを用いて、またはデータメモリによって提供される。
【符号の説明】
【0026】
1 フィーダ、 2 印刷基材、 3 デリバリ、 4 インクジェット印刷ユニット、 5 インクジェット印刷ヘッド、 6 コンピュータ、 7 インクジェット印刷機、 8 非正常な印刷ノズル、 10 オリジナルの網目スクリーン、 11 修正幅、 12 直接的に隣接している印刷ノズル、 13 第1の修正網目スクリーン、 14 第2の修正網目スクリーン、 15 離れて位置する、隣接している印刷ノズル、 16 修正された網目スクリーン像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7