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特許7130402鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置および加速度センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置および加速度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/03 20060101AFI20220829BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20220829BHJP
   B61L 25/06 20060101ALI20220829BHJP
   B61K 13/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
G01P15/03 A
G01P15/18
B61L25/06 Z
B61K13/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018064730
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019174355
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 真一
(72)【発明者】
【氏名】成嶋 崇
(72)【発明者】
【氏名】保坂 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】石橋 祐輔
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-284450(JP,A)
【文献】特開2014-71097(JP,A)
【文献】米国特許第8490487(US,B1)
【文献】実開昭54-165407(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-21/02
B61L25/06-25/08
B61K13/00-13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の地上設備に取り付けられて、前記地上設備に異常振動が発生しているか否かを検出する装置であって、
受ける加速度に応じた慣性力により移動可能に設けられた可動子と、
前記可動子を定位置に保持するための保持手段と、
前記可動子を付勢して前記保持手段によって前記可動子を前記定位置に保持するとともに、設定値以上の加速度を受けることにより前記可動子が前記定位置から離脱するのを許容する付勢手段と、
前記可動子が前記定位置に保持されているか、または、前記定位置から離脱しているかを表示する表示手段と、
を備えており、
前記可動子は、
一端部に設けられた先端部と、
他端部に設けられた錘部と、
中間部に設けられて前記先端部および前記錘部を搖動可能に支持する支持部と
を備えており、
前記保持手段は、
軸周りに回動可能に支持され、前記先端部と係合可能な係合部が周面に形成された軸部材と、
前記係合部が前記先端部に向かう位置から外れるように前記軸部材を軸周りに回動付勢する回動手段と
を備えており、
前記付勢手段は、前記可動子と前記軸部材とを相対的に近接移動させるよう付勢して、前記回動付勢手段に抗して前記軸部材の前記係合部が前記先端部に向いた状態で前記係合部と前記先端部とを係合させて、前記可動子を前記定位置に保持するとともに、設定値以上の加速度を受けることにより前記錘部が搖動して前記軸部材の係合部と前記可動子の前記先端部との係合が解除されて、前記回動手段により軸周りに回動付勢された前記軸部材が復帰するのを許容するよう構成されており、
前記表示手段は、前記軸部材の軸周りの回動位置を目視可能に構成されている
ことを特徴とする鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置。
【請求項2】
さらに、前記可動子の先端部が前記定位置に位置するよう前記錘部を弾性支持する弾性支持手段を備えていることを特徴とする請求項に記載の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置。
【請求項3】
前記可動子の先端部と前記保持手段の軸部材の係合部との互いに係合する先端面はそれぞれ、前記可動子の軸方向と直交する面に対して傾斜する錐傾斜面または半球状のいずれかに形成されていることを特徴とする請求項またはのいずれかに記載の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置。
【請求項4】
防水または防滴機能を有するケース内に配置されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置。
【請求項5】
前記ケースは、前記地上設備に固定するための固定手段を有していることを特徴とする請求項に記載の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置。
【請求項6】
樹脂に封入されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置。
【請求項7】
加速度検出対象に取り付けられて、前記加速度検出対象が設定値以上の加速度を受けるか否かを検出する加速度センサであって、
受ける加速度に応じた慣性力により移動可能に設けられた可動子と、
前記可動子を定位置に保持するための保持手段と、
前記可動子を前記定位置に保持するとともに、設定値以上の加速度を受けることにより前記可動子が前記定位置から離脱するのを許容する付勢手段と、
前記可動子が前記定位置に保持されているか、または、前記定位置から離脱しているかを表示する表示手段とを備えており、
前記可動子は、
一端部に設けられた先端部と、
他端部に設けられた所定の質量を有する錘部と、
中間部に設けられて前記先端部および前記錘部を搖動可能に支持する支持部と
を備えており、
前記保持手段は、
軸周りに回動可能に支持され、前記先端部と係合可能な係合部が周面に形成された軸部材と、
前記係合部が前記先端部に向かう位置から外れるように前記軸部材を軸周りに回動付勢する回動手段と
を備えており、
前記付勢手段は、前記可動子と前記軸部材とを相対的に近接移動させるよう付勢して、前記回動付勢手段に抗して前記軸部材の前記係合部が前記先端部に向いた状態で前記係合部と前記先端部とを係合させて、前記可動子を前記定位置に保持するとともに、設定値以上の加速度を受けることにより前記錘部が搖動して前記軸部材の係合部と前記可動子の前記先端部との係合が解除されて、前記回動手段により軸周りに回動付勢された前記軸部材が復帰するのを許容するよう構成されており、
前記表示手段は、前記軸部材の軸周りの回動位置を目視可能に構成されている
ことを特徴とする加速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばATS(自動列車停止装置(Automatic Train Stop))などの保安装置の地上子や転てつ装置などのように、鉄道の地上側に設置される設備に異常な(すなわち許容される値よりも過大な)振動が発生しているか否かを検出するための装置と、特にこの装置に使用することができる加速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の地上設備として、たとえばATSの地上子に内蔵されているリレーは、加速度150Gまでを許容している。この振動許容以上の加速度が加わった場合に過大な加速度(衝撃)が加わる、すなわち異常振動が発生したと判断している。そのため、ATS地上子などの鉄道の地上設備について、異常振動が発生していないかを検知する必要がある。
【0003】
本発明に関連する従来の技術として、たとえば特許文献1が知られている。特許文献1は、鉄道車輪踏面の異常検出装置に関するもので、鉄道車両の車輪の踏面異常を検出するために、半導体ひずみゲージ式の加速度センサを枕木に設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-231858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1にあっては、鉄道車両車輪踏面の異常を検出するために、半導体ひずみゲージ式の加速度センサを用いている。すなわち、特許文献1に記載された発明では、電気的に鉄道車両車輪踏面の変化を測定し、その測定結果から異常を判定するものであった。そのため、半導体ひずみゲージや、その出力信号を処理して解析するなどのためのCPU等に電力を供給し、また、電気的な信号を半導体ひずみゲージ式の加速度センサからCPUに送るために配線接続する必要があることから、装置の構成が大掛かりなものとなり、コストがかかるなどの問題があった。また、特許文献1に記載された発明では、半導体ひずみゲージの出力信号をCPUで処理して解析する必要があり、異常を検出するために手間がかかるなどの問題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、鉄道の地上設備に規定値以上の振動が発生していないか否かを容易に検出することができる安価でコンパクトな鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、規定値以上の加速度が発生していないか否かを容易に検出することが可能な安価でコンパクトな、鉄道の地上設備に取り付けるのに適した加速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置に係る発明は、上記目的を達成するため、鉄道の地上設備に取り付けられて、前記地上設備に異常振動が発生しているか否かを検出する装置であって、受ける加速度に応じた慣性力により移動可能に設けられた可動子と、前記可動子を定位置に保持するための保持手段と、前記可動子を付勢して前記保持手段によって前記可動子を前記定位置に保持するとともに、設定値以上の加速度を受けることにより前記可動子が前記定位置から離脱するのを許容する付勢手段と、前記可動子が前記定位置に保持されているか、または、前記定位置から離脱しているかを表示する表示手段と、を備えていることを特徴とする。
さらに、請求項の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置に係る発明は、上記目的を達成するため、前記可動子は、一端部に設けられた先端部と、他端部に設けられた錘部と、中間部に設けられて前記先端部および前記錘部を搖動可能に支持する支持部とを備えており、前記保持手段は、軸周りに回動可能に支持され、前記先端部と係合可能な係合部が周面に形成された軸部材と、前記係合部が前記先端部に向かう位置から外れるように前記軸部材を軸周りに回動付勢する回動手段とを備えており、前記付勢手段は、前記可動子と前記軸部材とを相対的に近接移動させるよう付勢して、前記回動付勢手段に抗して前記軸部材の前記係合部が前記先端部に向いた状態で前記係合部と前記先端部とを係合させて、前記可動子を前記定位置に保持するとともに、設定値以上の加速度を受けることにより前記錘部が搖動して前記軸部材の係合部と前記可動子の前記先端部との係合が解除されて、前記回動手段により軸周りに回動付勢された前記軸部材が復帰するのを許容するよう構成されており、前記表示手段は、前記軸部材の軸周りの回動位置を目視可能に構成されていることを特徴とする。
請求項の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項に記載の発明において、さらに、前記可動子の先端部が前記定位置に位置するよう前記錘部を弾性支持する弾性支持手段を備えていることを特徴とする。
請求項の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項またはのいずれかに記載の発明において、前記可動子の先端部と前記保持手段の軸部材の係合部との互いに係合する先端面はそれぞれ、前記可動子の軸方向と直交する面に対して傾斜する錐傾斜面または半球状のいずれかに形成されていることを特徴とする。
参考形態の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1の前半部分に記載の発明において、異常振動発生検出装置の加速度を検出する方向がX、Y方向の平面方向である場合に、複数の異常振動発生検出装置を、互いにZ方向の加速度を補完して検出することができるよう配設することを特徴とする。
請求項の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1~のいずれか1項に記載の発明において、防水または防滴機能を有するケース内に配置されていることを特徴とする。
請求項の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1~のいずれか1項に記載の発明において、前記ケース内で樹脂により封入されていることを特徴とする。
請求項の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項に記載の発明において、前記ケースは、前記地上設備に固定するための固定手段を有していることを特徴とする。
また、請求項の加速度センサに係る発明は、上記目的を達成するため、加速度検出対象に取り付けられて、前記加速度検出対象が設定値以上の加速度を受けるか否かを検出する加速度センサであって、受ける加速度に応じた慣性力により移動可能に設けられた可動子と、前記可動子を定位置に保持するための保持手段と、前記可動子を前記定位置に保持するとともに、設定値以上の加速度を受けることにより前記可動子が前記定位置から離脱するのを許容する付勢手段と、前記可動子が前記定位置に保持されているか、または、前記定位置から離脱しているかを表示する表示手段とを備えており、前記可動子は、一端部に設けられた先端部と、他端部に設けられた所定の質量を有する錘部と、中間部に設けられて前記先端部および前記錘部を搖動可能に支持する支持部とを備えており、前記保持手段は、軸周りに回動可能に支持され、前記先端部と係合可能な係合部が周面に形成された軸部材と、前記係合部が前記先端部に向かう位置から外れるように前記軸部材を軸周りに回動付勢する回動手段とを備えており、前記付勢手段は、前記可動子と前記軸部材とを相対的に近接移動させるよう付勢して、前記回動付勢手段に抗して前記軸部材の前記係合部が前記先端部に向いた状態で前記係合部と前記先端部とを係合させて、前記可動子を前記定位置に保持するとともに、設定値以上の加速度を受けることにより前記錘部が搖動して前記軸部材の係合部と前記可動子の前記先端部との係合が解除されて、前記回動手段により軸周りに回動付勢された前記軸部材が復帰するのを許容するよう構成されており、前記表示手段は、前記軸部材の軸周りの回動位置を目視可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明では、異常振動発生検出装置を鉄道の地上設備に取り付けた初期の状態において、可動子は、付勢手段により付勢されて、保持手段によって定位置に保持されている。このとき、表示手段は、可動子が定位置に保持されていることを表示している。ここで、定位置は、可動子が保持手段によって保持されており、設定値以上の加速度を受けて離脱する前の位置をいう。鉄道車両が通過することにより地上設備が振動を受けるとき、かかる振動が予め設定された規定値以内であれば、付勢手段により付勢された可動子は、保持手段によって定位置に保持されている状態を維持する。そして、表示手段は、可動子が定位置に保持されていることの表示を維持している。一方、鉄道車両が通過することにより地上設備の受ける振動が予め設定された規定値を超える場合には、保持手段によって定位置に保持されていた可動子が振動による加速度に応じた慣性力によって移動しようとし、付勢手段が可動子の移動を許容するため、その結果、可動子が定位置から離脱する。そして、表示手段は、可動子が定位置から離脱していることを表示する。
さらに、請求項の発明では、可動子は、全体が所定の長さを有しており、一端部に先端部を、他端部に錘部を有しており、中間部の支持部が可動子全体を搖動可能に支持されている。保持手段は、軸部材と、回動手段と弾性支持手段とを備えている。軸部材は、軸周りに回動可能に支持されており、その周面には、可動子の先端部と係合可能な係合部が形成されている。回動手段は、係合部が可動子の先端部に向かう位置から外れるように軸部材を軸周りに回動付勢する。付勢手段は、可動子の先端部と軸部材の係合部とを近づけるように、可動子と軸部材とを相対的に近接移動させるよう付勢するもので、回動付勢手段に抗して軸部材の係合部が可動子の先端部に向いた状態で係合部と先端部とを係合させて、可動子を定位置に保持し、また、設定値以上の加速度を受けることにより振動による加速度に応じて錘部がその慣性力によって搖動して軸部材の係合部と可動子の先端部との係合が解除されて回動手段により軸周りに回動付勢された前記軸部材が復帰するのを許容する。そして、付勢手段が可動子と軸部材とを相対的に近接移動させるよう付勢しているため、可動子は、その中心軸線が搖動するだけでなく、その中心軸線方向にも移動することができる。鉄道車両が通過することにより地上設備が振動を受ける場合に、かかる振動が予め設定された規定値を超える場合には、可動子の加速度に応じて錘部に慣性力が働き、可動子が搖動または軸方向に移動して先端部が軸部材の係合部と係合した状態から離脱する。したがって、地上設備に発生する全ての方向に振動に対して、かかる振動が予め設定された規定値を超えるか否かを検出することができる。表示手段は、軸部材の回動位置を目視することができるように構成されており、軸部材の係合部が可動子の先端部と係合されているか、係合が解除されて回動手段により軸部材が回動復帰した状態であるかを確認することができる。
請求項の発明では、請求項に記載の発明において、弾性支持手段により錘部が弾性支持されて可動子の先端部が安定して定位置に位置する。なお、弾性支持手段による錘部の弾性支持力は、回動付勢手段による軸部材の回動付勢に応じて、設定することができる。
請求項の発明では、請求項またはのいずれかに記載の発明において、可動子の先端部と保持手段の軸部材の係合部との互いに係合する先端面は、両者が可動子の軸方向と直交する面に対して傾斜する錐傾斜面、または、半球状に成形することができ、また、いずれか一方が可動子の軸方向と直交する面に対して傾斜する錐傾斜面で、他方が半球状に成形することができる。このように構成することにより、鉄道車両が通過した際に地上設備が予め設定された規定値以内の振動を受けるとき、可動子の先端部および錘部が支持部を中心として搖動しようとするが、錐傾斜面、または、半球状に成形された可動子の先端部と軸部材の係合部の先端面が互いに係合しているため、地上設備の受ける振動が予め設定された規定値を超えない場合には、可動子の先端部と軸部材の係合部とが不用意に離脱することがなく復帰して係合した状態を維持し、また、地上設備の受ける振動が予め設定された規定値を超える場合には、可動子の先端部と軸部材の係合部とが離脱することができる。
参考形態の発明では、請求項1の前半部分に記載の発明において、異常振動発生検出装置の加速度を検出する方向がX、Y方向の平面方向である場合に、複数の異常振動発生検出装置を、互いにZ方向の加速度を補完して検出することができるよう配設することにより、鉄道の地上設備のX、Y、Zの3方向の振動について設定値を超える異常が発生しているか否かを検出することができる。なお、X、Y、Z方向とは、特に限定されることはなく、X、Y方向が一平面上で直交する方向であるのに対して、かかる平面に対して鉛直に貫通する方向をZ方向と称する。
請求項の発明では、請求項1~のいずれか1項に記載の発明において、防水または防滴機能を有するケース内に配置することにより、異常振動発生検出装置は、取り付けられた地上設備における降雨などの天気や湿度など、気候等に影響されることなく、鉄道の地上設備に設定値を超える異常振動が発生しているか否かを検出することができる。
請求項の発明では、請求項1~のいずれか1項に記載の発明において、樹脂に封入されていることにより、異常振動発生検出装置は、取り付けられた地上設備における降雨などの天気や湿度など、気候に影響されることなく、鉄道の地上設備に設定値を超える異常振動が発生しているか否かを検出することができる。
請求項の発明では、請求項に記載の発明において、ケースは、前記地上設備に対して固定手段により固定される。
また、請求項の発明では、可動子は、全体が所定の長さを有しており、一端部に先端部を、他端部に錘部を有しており、中間部の支持部が可動子全体を搖動可能に支持されている。保持手段は、軸部材と、回動手段と弾性支持手段とを備えている。軸部材は、軸周りに回動可能に支持されており、その周面には、可動子の先端部と係合可能な係合部が形成されている。回動手段は、係合部が可動子の先端部に向かう位置から外れるように軸部材を軸周りに回動付勢する。付勢手段は、可動子の先端部と軸部材の係合部とを近づけるように、可動子と軸部材とを相対的に近接移動させるよう付勢するもので、回動付勢手段に抗して軸部材の係合部が可動子の先端部に向いた状態で係合部と先端部とを係合させて、可動子を定位置に保持し、また、設定値以上の加速度を受けることにより振動による加速度に応じて錘部がその慣性力によって搖動して軸部材の係合部と可動子の先端部との係合が解除されて回動手段により軸周りに回動付勢された前記軸部材が復帰するのを許容する。そして、付勢手段が可動子と軸部材とを相対的に近接移動させるよう付勢しているため、可動子は、その中心軸線が搖動するだけでなく、その中心軸線方向にも移動することができる。加速度センサを取り付けた加速度検出対象が受ける加速度が予め設定された規定値を超える場合には、可動子の加速度に応じて錘部に慣性力が働き、可動子が搖動または軸方向に移動して先端部が軸部材の係合部と係合した状態から離脱する。したがって、加速度センサを取り付けた加速度検出対象が受ける全ての方向の加速度に対して、かかる加速度が予め設定された規定値を超えるか否かを検出することができる。表示手段は、軸部材の回動位置を目視することができるように構成されており、軸部材の係合部が可動子の先端部と係合されているか、係合が解除されて回動手段により軸部材が回動復帰した状態であるかを確認することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成で、鉄道の地上設備に規定値以上の振動が発生していないか否かを容易に検出することが可能な安価でコンパクトな装置を提供することができる。
また、本発明によれば、簡単な構成で、加速度センサに規定値以上の加速度が発生していないか否かを容易に検出することが可能な安価でコンパクトな、鉄道の地上設備などの加速度検出対象に取り付けるのに適した加速度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】鉄道の地上設備としてATS地上子に異常振動発生検出装置を設けた場合を示す本発明の実施の一形態の斜視図である。
図2】本発明の加速度センサの実施の一形態における外観を示した斜視図である。
図3図2に示した加速度センサの構成を説明するために示した透視斜視図である。
図4図3に示した加速度センサの縦断正面図である。
図5図4に示した加速度センサの、可動子の支持部と受け部の構成を説明するために示した断面図である。
図6図4の側面図である。
図7】可動子の先端部および軸部材の係合部の構成と、両者が離脱する過程を説明するために示した部分拡大断面図である。
図8】複数の二次元加速度センサを異なる方向に配置して、樹脂に封入した実施の形態における異常振動発生検出装置を示す斜視図である。
図9図8の側面図である。
図10】複数の二次元加速度センサを異なる方向に配置してケース内に収容し、さらに、ケース内に樹脂を注入した実施の形態における異常振動発生検出装置を示す斜視図である。
図11図10の縦断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の加速度センサ1の概略を、加速度検出対象として鉄道の地上設備F、より具体的にATSの蓋材に取り付ける場合で図1に基づいて説明する。本実施の形態の加速度センサ1は、鉄道の地上設備Fに取り付けられて、鉄道車両の通過により振動が発生して地上設備Fが設定値以上の加速度を受けるか否かを検出し、設定値以上の加速度が発生する場合には異常な振動が発生しており、設定値以上の加速度が発生していない場合には異常な振動が発生していないと、判定することができるよう表示するものである。加速度センサ1は、鉄道の地上設備に取り付けた場合、その地上設備に異常振動が発生するか否かを検出する異常振動発生検出装置を構成する。そのため、以下の説明では、加速度センサ1を異常振動発生検出装置1と記載する場合がある。また、異常振動発生検出装置について、実施の形態により符号1、1’、1”を付する。
【0012】
鉄道の地上設備Fに対する加速センサ1の取り付けは、後述する実施の形態で詳細に説明するが、タッピングねじ81等のねじ留めによる締結や、両面接着テープ60や接着剤などの接着手段を用いることができる。なお、本発明の加速度センサ1を取り付ける加速度検出対象は、鉄道の地上設備Fに限定されることはない。また、鉄道の地上設備Fには、ATS地上子に限定されることはなく、たとえばATS以外の保安装置、転てつ機、枕木等に取り付けて異常振動が発生するか否かを検出させることができる。
【0013】
次に、本発明の加速度センサ1の実施の一形態を、図2図7に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本実施の形態における加速度センサ1は、搖動可能に設けられた可動子2と、可動子2を定位置(後述する)に保持するための保持手段3と、可動子2を付勢して保持手段3によって可動子2を定位置に保持するとともに、設定値以上の加速度を受けることにより可動子2が定位置から離脱するのを許容する付勢手段4と、可動子2が定位置に保持されているか、または、定位置から離脱しているかを表示する表示手段5と、これらの可動子2、保持手段3、付勢手段4、および表示手段5を収容する筐体10とを備えている。ここで、定位置とは、可動子2の先端部20が軸部材31の係合部30と係合することができる位置をいう。
【0015】
可動子2は、全体が棒状に成形されており、その一端部に設けられた先端部20と、他端部に設けられた所定の質量を有する錘部21と、中間部に設けられて先端部20および錘部21を搖動可能に支持する支持部22とを備えている。図5および図6に示すように、支持部22は、略球状に成形されている。支持部22は、支持軸23のほぼ中央に設けられた受け部24に回動可能に支持されている。支持軸23は、その両端が筐体10の側壁11に形成された長孔15に挿通されており、抜け止めリング25が筐体10の側壁11の内側と接するように設けられている。筐体10の長孔15は鉛直方向に延びており、支持軸23は鉛直方向に移動可能となっている。長孔15の上端は、後述するように可動子2の先端部20を保持手段3の軸部材31の係合部30に係合させることができる位置に設定されており、また、長孔15の下端は可動子2の先端部20が保持手段3の軸部材31の係合部30に係合した状態から、加速度を受けることにより可動子2が軸部材31の係合部30から離れる方向に移動して係合状態を離脱することができる位置に設定されている。可動子2の支持部22を回動可能に支持する受け部24は、支持軸23のほぼ中央に設けられている。受け部24に支持部22が回動可能に支持されていることにより、可動子2は、その先端部20と錘部21が支持部22を中心として搖動することが可能となっている。
【0016】
保持手段3は、軸周りに回動可能に支持された軸部材31と、軸部材31の周面からその中心軸線と直交する径方向に突出するよう形成された係合部30と、係合部30が、定位置に位置している可動子2の先端部20に向かう位置(図6では下向きとなる位置)から外れるように軸部材31を回動付勢する回動手段32とを備えている。軸部材31は、筐体10の側壁11に回動可能に支持されている。図6に示すように、回動手段32は、たとえばゼンマイなどのコイルばねを、筐体10の側壁11と軸部材の一端側とに接続することにより構成することができる。軸部材31の係合部30と可動子2の先端部20は、定位置で互いに係合している状態のとき、両者30、20の中心軸線が略一直線上に延長するよう一致することとなる。
【0017】
本実施の形態における付勢手段4は、筐体10の側壁11の内側面であって長孔15の上方に設けられたブラケット40と支持軸23との間に設けられた引張ばね41により構成されている。引張ばね41のばね乗数は、可動子2の支持部22から先端部20および錘部21までのそれぞれの長さ、保持手段3の軸部材31の中心軸から係合部の先端部20と係合する先端面までの長さ、錘部21および可動子2全体と支持軸23とを含めた質量等を考慮した上で、加速度検出対象である鉄道の地上設備において、許容できない異常な振動が発生しているものと判定される設定値で、後述するように可動子2の先端部20と軸部材31の係合部30とが係合状態から離脱するよう設定される。なお、付勢手段4は、上述した実施の形態に限定されることはなく、図示は省略するが、たとえばブラケット40を長孔15の下方に設けて、かかるブラケット40と支持軸23との間に圧縮ばねを設けるなど、長孔15に沿って支持軸23に支持された可動子2を保持手段3の軸部材31に近接させて先端部20を係合部30と係合させ、設定値以上の加速度を受けた場合に先端部20と係合部30が係合状態から離脱するのを許容することができるように付勢することができるものであれば、特に限定されることはない。
【0018】
表示手段5は、軸部材31の係合部30と反対側の位置に設けられた第1表示51と、この第1表示51と周方向に隣接する部分であって、可動子2の先端部20と軸部材31の係合部30とが離脱したときに回動手段32によって軸部材31の周面の上方に位置することとなる部分に設けられた第2表示52と、第1表示51と第2表示52のどちらかを視認することができるよう筐体10の上面12に設けられた窓部50とを備えている。窓部50は、筐体10の上面12に透孔を設けることにより構成することができるが、この透孔には、透明な部材を嵌め込むか、または、透明な板材により透孔を塞ぐことが望ましい。第1表示51は、設定値以上の加速度を受けていない状態を示し、第2表示52は、設定値以上の加速度を受けた状態を示すものである。第1表示51は、例えば白色に着色し、第2表示52は、例えば赤色または黄色など第1表示51と異なる色に着色したものとすることができる。第1表示51と第2表示52は、連続した色違いのテープにより構成することができ、また、軸部材31の一部を切り欠いてそれぞれ異なる色に着色された部材を切り欠いた部分に埋め込むことにより構成することもできる。第1表示51と第2表示52は、異なる色の着色されたものに限定されることはなく、例えば文字や、マルやバツなどのような幾何学模様により構成することもできる。第1表示51から第2表示52への切り替えは、係合部30が可動子2の先端部20と係合した状態から離脱したときに軸部材31を回動付記するよう付勢している回動手段32により行われる。
【0019】
さらに、可動子2の先端部20が安定して軸部材31の係合部30と係合することができる定位置に位置するよう錘部21を弾性支持する弾性支持手段45を備えている。本実施の形態における弾性支持手段45は、可動子2の錘部21の、筐体10の各側壁11と対向する四方の位置に水平方向に突出するようそれぞれ設けられた突部46と、この各突部46と筐体10の各側壁11との間にそれぞれ介装された圧縮ばね47とを備えている。しかしながら、弾性支持手段45は、図示は省略するが、例えば可動子2の錘部21の四方と筐体10の各側壁11との間に引張ばねを介装するなど、この実施の形態に限定されることはない。なお、図6に矢印Mで示すように軸部材が回動手段により回動付勢されていることにより、可動子2は、先端部20を矢印Y1方向に移動させようとする力を受け、その結果、錘部21を矢印Y2方向に移動させようとする力を受けることとなる。そのため、矢印Y2の前方(図6においては左方)に位置するばね47aと、後方(図6においては右方)に位置するばね47bとのばね係数を、先端部20を定位置に安定して位置させるよう、回動手段32による回動付勢の力を打ち消す関係となるように、ばね47aによる付勢力>ばねbによる付勢力に設定することが好ましい。
【0020】
図7に示すように、本実施の形態における可動子2の先端部20は、半球状に成形されており、軸部材31の係合部30の先端面は、その軸方向と直交する面に対して、中央部が凹となるよう傾斜する円錐傾斜面に成形されている。そのため、可動子2の先端部20が定位置にあり、軸部材31の係合部30と係合した状態では、半球状の先端部20が係合部30の円錐傾斜面に対してばね41の付勢により押し付けられて安定して定位置にロックされることとなる。また、受けた加速度が設定値以下である場合において、図7に示したように、可動子2が支持部22を中心に搖動するなどして先端部20が図3~6の左右方向(X、Y方向)または図3~6の上下方向(Z方向)に軸方向移動するものの、その移動量が軸部材31の係合部30から完全に離脱する程でないときには、付勢手段4のばね41による付勢力に加えて、弾性支持手段45のばね47による弾性支持力により、半球状の先端部20が係合部30の円錐傾斜面の凹状の中央に案内されて、先端部20が定位置に復帰することとなる。さらに、受けた加速度が設定値を超えて、錘部21の慣性力により可動子2が支持部22を中心に大きく搖動する場合は、付勢手段4のばね41による付勢力で半球状の先端部20が係合部30の円錐傾斜面を押して、先端部20が図7の左右方向(X、Y方向)に移動して確実に離脱することとなる。また、錘部21の慣性力により可動子2がその軸方向に移動するよう加速度を受ける場合には、付勢手段4のばね41による付勢力に抗して先端部20が図3~6の下方向に移動すると、先端部20が係合部30から離れて、係合部30が先端部20から離れるよう軸部材31が回動手段32により回動して確実に離脱することとなり、また、先端部20の下方向への移動の反動等で図3~6の上方向に移動すると、軸部材31が回動手段32により回動されて鉛直方向から移動した状態の係合部30の円錐傾斜面を押し上げてさらに係合部30の軸周りの移動を促し、係合部30が先端部20から確実に離脱することとなる。なお、可動子2の先端部20を、その軸方向と直交する面に対して、中央部が凹となるよう傾斜する円錐傾斜面に成形し、軸部材31の係合部30の先端面を、半球状に成形してもよい。
【0021】
このように、本発明の加速度センサ1は、可動子2が搖動して先端部20および錘部21が図4~6におけるほぼ水平方向に移動することとなるX、Y方向への加速度だけでなく、垂直方向に移動することとなるZ方向への加速度も、検出することができる。そのため、加速度センサ1を鉄道の地上設備Fに取り付けて、鉄道の地上設備Fの異常振動発生検出装置を構成した場合に、鉄道車両の通過に伴い実際にはX、Y、Z方向の複合する方向に発生する地上設備Fの振動の異常を適切に検出することができる。
【0022】
そして、本発明の加速度センサ1は、所謂機械式の構成であることから、鉄道の地上設備Fに異常振動が発生しているか否かを検出するための異常振動発生検出装置として用いる場合に、従来の技術のように電気的に異常振動を測定して、その測定結果を解析して異常を判定する必要がないことから、容易に且つ確実に異常振動発生を検出することができる。そして、本発明の加速度センサ1は、従来の技術のように電気的に測定するセンサや電源、出力信号を処理するCPU、およびこれらを電位的に接続する配線を必要としないため、非常に簡単でコンパクトな構成とすることができ、したがって、鉄道の地上設備Fに異常振動が発生しているか否かを検出するために掛かるコストを大幅に削減することができ、そのために鉄道の地上設備Fの異常振動発生検出装置に用いるのに適している。
【0023】
なお、鉄道の地上設備Fの異常振動発生を検出するために、加速度センサ1を鉄道の地上設備Fに取り付けるのは、特に限定されることはないが、たとえば、その日における鉄道車両の運行を終了した後(終電後)から次の日の鉄道車両の運行を開始する前(始発前)までの間とすることができる。そして、加速度センサ1の表示部5を確認するのは、例えば加速度センサ1を地上設備Fに取り付けた次の日など、鉄道車両の所定の数の通過後であって、終電後から始発前までの間に行うことがでる。
【0024】
次に、本発明の鉄道の地上設備の異常振動発生検出装置の別の実施の形態を図8、および図9に基づいて説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同様または相当する部分について同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施の形態と異なる部分についてのみ説明することとする。この実施の形態における異常振動発生検出装置には、符号1’を付することとする。
【0025】
上述した実施の形態における加速度センサ1は、X、Y、およびZ方向への加速度を立体的な三次元で検出することができるもの(以下、この加速度センサ1を三次元加速度センサと称する)を用いる場合であったのに対して、本実施の形態で使用する加速度センサは、X、Y方向への加速度を平面的な二次元で検出することができるが、Z方向への加速度の検出ができないものを用いる場合を説明する(以下、この加速度センサを二次元加速度センサ101と称する)。なお、この実施の形態においても、X、Y方向により形成される仮想平面に対して直交する方向を示すために、かかる直交する方向をZ方向と称する。
【0026】
この二次元加速度センサ101は、図示は省略するが、たとえば、可動子2が球状に成形されており、保持手段が球状の可動子を筐体との間で挟むようにして保持し、付勢手段が球状の可動子を介して保持手段をZ方向に押圧するよう付勢するものであり、X、Y方向への設定値以上の加速度を受けると球状の可動子が保持手段と筐体との間からX,Y方向に離脱して保持手段がZ方向に移動し、表示手段500が保持手段のZ方向への移動を視認できるよう構成されたものとすることができる。二次元加速度センサ101は、受けた加速度に応じた慣性力で可動子が移動するか否かを表示手段500により視認することで、設定以上の加速度を受けたか否かを所謂機械的に検出する点で、上述した実施の形態における三次元加速度センサ1と共通する。
【0027】
このように構成された二次元加速度センサ101を用いて、Z方向への加速度も三次元的に検出することができるようにするために、本実施の形態の異常振動発生検出装置1’は、2つの二次元加速度センサ101A、101Bを用意し、図8に示すように、互いに補完してZ方向への加速度を検出することができるように配置する。すなわち、第1二次元加速度センサ101AのZ方向は第2二次元加速度センサ101BのX方向またはY方向となり、第2二次元加速度センサ101BのZ方向は第1二次元加速度センサ101AのX方向またはY方向となる位置関係に、第1二次元加速度センサ101Aと第2二次元加速度センサ101Bとを振り分けて配置する。
【0028】
さらに、本実施の形態における異常振動発生検出装置1’は、上述したように配置された第1二次元加速度センサ101Aと第2二次元加速度センサ101Bをたとえばエポキシなどからなる透明な樹脂6により封入する。これにより、2つの二次元加速度センサ101A、101Bは、その配置が固定されて、全体としてX、Y、Z方向の加速度を三次元的に検出することができる1つの所謂機械式の異常振動発生検出装置1’を構成することができる。
【0029】
そして、この実施の形態においては、透明の樹脂6により封入することで、第1二次元加速度センサ101Aと第2二次元加速度センサ101Bのそれぞれの表示手段500は、図示しない保持部が移動したか否かを樹脂の外部から視認することができるとともに、二次元加速度センサ101A、101Bを有する異常振動発生検出装置1’を、取り付けた鉄道の地上設備Fにおける降雨などの天気や湿度などの気候から保護することができる。
【0030】
また、樹脂6は、図9に示す底面60と上面61とを平坦に成形し、固定手段8として平坦な底面60に接着剤を塗布するか、または、両面テープ80を貼付することができる。
【0031】
なお、異常振動発生検出装置1’は、2つのX、Y方向加速度センサ101A、101Bを樹脂6の底面60から離れた位置(図9において、底部60から上方に離れた高さ)に配置し、各X、Y方向加速度センサ101A、101Bの上面に位置する表示手段500を樹脂6の平坦な上面61に近づけることが望ましい。また、樹脂6の底面60と上面61以外の側部部分については、通過する鉄道車両の風圧により、取り付けられた地上設備Fから容易に剥がれたり移動する可能性を低減するために、流線形に成形することが望ましい。
【0032】
さらに、異常振動発生検出装置1’は、樹脂6により二次元加速度センサ101A、101Bを封入することに限定されることはなく、図2~7に示した三次元加速度センサ1を樹脂6で封入することもできる。この場合、三次元加速度センサ1がX、Y、およびZ方向の加速度を検出することができるものであるため、単一の三次元加速度センサ1を樹脂6に封入するだけでよい。
【0033】
次に、本発明の鉄道の地上設備Fの異常振動検出装置1”の別の実施の形態を、図10および図11に基づいて説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同様または相当する部分について同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施の形態と異なる部分についてのみ説明することとする。なお、この実施の形態においては、図8および図9に示した実施の形態と同様に、2つの二次元加速度センサ101A、101Bを用いる場合で説明するが、上述したように単一の三次元加速度センサ1を用いることもできる。
【0034】
図8および図9に示した実施の形態においては加速度センサ101A、101Bを樹脂により封入していたのに対し、この実施の形態では、防滴又は防水機能を有するケース7内に加速度センサ101A、101Bを配置している。さらに、この実施の形態においては、加速度センサ101A、101Bが配置されたケース7内に樹脂6を注入して、ケース7内の加速度センサ101A、101Bを樹脂6でさらに封入している。
【0035】
ケース7は、平面視が略矩形で内部に加速度センサ101A、101Bを収容することができる内部空間を有するもので、加速度センサ101A、101Bの筐体の高さ以上の深さを有する本体70と、加速度センサ101A、101Bの表示手段500を外部から視認することが可能な透明の蓋71と、本体70と蓋71との間に介装されるOリングなどのシール部材72と、本体70にシール部材72を介して蓋71を固定るためのねじ75と備えている。
【0036】
本体70と蓋71の平面視における角部には、ねじ止め部70a、71aが前記角部の互いの対角線上外側に突出するよう設けられている。本体70と蓋71のねじ部70a、71aを外側に突設することで、加速度センサ101A、101Bを収容するのに十分な大きさの内部空間を確保することができる。
【0037】
このように構成するために、加速度センサ101A、101Bの筐体の底面に両面テープ(図示は省略する)を貼付し、本体70の底面に配置して、かかる両面テープにより本体70の底面に仮留めする。このとき、各加速度センサ101A、101Bは、それぞれの表示手段500が上面に向くよう配置される。続いて、樹脂6を本体70内に注入すると、加速度センサ101A、101Bは、本体70内で樹脂6により封入されるとともに、本体70に対して固定される。その後、シール部材72を介装して本体70に蓋71を被せ、蓋71のねじ止め部71aにねじ75を挿通して、本体70のねじ止め部70aにねじ75をそれぞれ締結することにより、本体70に対して蓋71が取り付けられて、ケース7が密閉される。加速度センサ101A、101Bは、密閉されたケース7に収容されており、さらにこの実施の形態では樹脂6により封入されているため、異常振動検出装置1”は、取り付けた鉄道の地上設備Fにおける降雨などの天気や湿度などの気候から保護される。
【0038】
さらに、図10および図11に示した実施の形態では、ケース7の本体70の対向する位置の少なくとも一対の側壁における外側下部には、タッピングねじ81に係合される固定部が形成されている。図10に示した実施の形態における固定部は、それぞれ、一対の突片82、82により構成されている。鉄道の地上設備Fにおける取付部位の、各固定部を構成する両突片82、82の間と対応する位置に下孔を形成し、取付部位にケース7を配置して突片82,82の間にタッピングねじ81を立てて下孔に締結することにより、加速度センサ101A、101Bが収容されたケース7を鉄道の地上設備Fに固定することができる。なお、固定部は、一対の突片82、82により構成される場合に限定されることはなく、たとえば、タッピングねじ81を挿通するための孔を備えた単一の突片により構成することもできる。
【0039】
特に上述した二次元加速度センサ101A、101Bは、極めて構造が単純であり、小型であるのに加えて、複数の二次元加速度センサ101A、101Bを、互いにZ方向の加速度を補完して検出することができるよう配設する必要がある。かかる二次元加速度センサ101A、101Bを個別にそれぞれ固定するのは非常に手間がかかる。しかしながら、本実施の形態における異常振動検出装置1”は、複数の二次元加速度センサ101A、101Bをケース7内に収容して、ケース7を地上設備Fに取り付けるため、複数配置された二次元加速度センサ101A、101Bを個々に取り付ける必要がない。しかしながら、上述した三次元加速度センサ1を用いる場合は、その筐体10に固定手段8を設けることもできる。
【符号の説明】
【0040】
F:鉄道の地上設備、 1、1’、1”:異常振動発生検出装置(三次元加速度センサ)、 2:可動子、 3:保持手段、 4:付勢手段、 5、500:表示手段、 6:樹脂、 7:ケース、 8:固定手段、 10:筐体、 20:先端部、 21:錘部、 22:支持部、 30:係合部、 31:軸部材、 32:回動手段、 41:引張ばね、 45:弾性付勢手段、 101A、101B:二次元加速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
図11