(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】昇降式足場の過傾斜補正装置
(51)【国際特許分類】
E04G 1/20 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
E04G1/20 A
E04G1/20 Z
(21)【出願番号】P 2018104655
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義宣
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0000003(US,A1)
【文献】特開昭55-098079(JP,A)
【文献】特開平07-292959(JP,A)
【文献】特開2016-121014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/18、1/20、3/28
B66F 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて立設される第1のマスト部及び第2のマスト部と、
前記両マスト部に沿ってそれぞれ移動自在な第1の移動部及び第2の移動部と、
前記両移動部に掛け渡されるように支持されるとともに作業者が搭乗する搬器部と、を備える昇降式足場であって、
前記各マスト部に上下方向の等間隔にそれぞれ設けられた複数の被検出体と、
前記各移動部にそれぞれ設けられ、前記いずれかの被検出体の位置を検出する検出手段と、
前記両移動部の移動によって前記搬器部がほぼ水平の状態から昇降したとき、前記それぞれの検出手段が前記被検出体を同時に検出する状態では、前記搬器部の昇降を継続するとともに、
前記いずれか一方の検出手段が前記被検出体のいずれかを検出したとき、当該検出手段が設けられた方の前記一方の移動部の移動を一時的に停止させる移動制御手段と、
を備えることを特徴とする、昇降式足場の過傾斜補正装置。
【請求項2】
前記移動制御手段は、
前記一方の移動部の移動を一時的に停止させた後、
前記いずれか他方の検出手段が前記被検出体のいずれかを検出したとき、前記一方の移動部の移動を再開させる、請求項1に記載の昇降式足場の過傾斜補正装置。
【請求項3】
前記各移動部を上下方向にそれぞれ移動させる第1の駆動機構及び第2の駆動機構を備え、
前記両駆動機構は、それぞれ電動工具による回転力により駆動される、請求項1または2に記載の昇降式足場の過傾斜補正装置。
【請求項4】
前記検出手段は、リミットスイッチであり、
前記被検出体は、ドグである、請求項1ないし3のいずれかに記載の昇降式足場の過傾斜補正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業床の昇降が可能な昇降式足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設足場は、例えばビル等の建築工事において建築物に沿うようにして設けられ、高所作業時の作業床として用いられる。近年では、仮設足場として作業床が上下方向に昇降移動することが可能な昇降式足場が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記昇降式足場の中には、例えば2本のマストを備え、これらのマスト間に作業床を有する足場部が連結され、この足場部がほぼ水平状態を維持したまま昇降するものが知られている。すなわち、この昇降式足場は、地盤に例えば2本のマストが所定の間隔を隔てて並設され、各マストに沿って摺動可能な昇降部がそれぞれ備えられている。各昇降部は、例えばモータの回転駆動によってそれぞれ昇降される。そして、足場部は、両昇降部を連結するように設けられ、かつ各昇降部の側方方向に延びている。
【0004】
この昇降式足場によれば、各昇降部が同じタイミングで昇降されるので、足場部がほぼ水平を維持したまま上昇及び下降する。これにより、足場部に搭乗している作業者は、足場部が所定の高さまで上昇すると、その高さ位置で高所作業を行うことができる。
【0005】
しかしながら、この昇降式足場では、各昇降部はそれぞれモータの回転駆動によって昇降されるため、各モータの回転速度にばらつきがあると、足場部がいずれかの方向に傾く場合がある。足場部が傾いた状態では、それに搭乗している作業者の作業に支障をきたしたり、高所作業に使用する工具等が足場部から落下したりするおそれがある。
【0006】
そこで、この昇降式足場では、各モータに各昇降部の高さ位置を検出するエンコーダをそれぞれ備えさせ、両昇降部の高さ位置がずれた場合、すなわち足場部が傾いた場合に、いずれかのモータの回転を一時的に停止させて足場部がほぼ水平になるようにし、足場部の昇降時の水平状態を維持するようにしている。
【0007】
ところが、各昇降部の高さ位置を検出するためのエンコーダは一般に高価であり、従来の昇降式足場では装置全体のコストが増大するといった問題点がある。また、従来の昇降式足場では、エンコーダが検出した高さ位置のずれを制御するためにシーケンサ等を用いる必要があり、このこともコストが増大する一因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、容易な構成でかつ低コストで昇降時における作業床の過度の傾斜を補正する、昇降式足場の過傾斜補正装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって提供される昇降式足場の過傾斜補正装置は、所定の間隔を隔てて立設される第1のマスト部及び第2のマスト部と、前記両マスト部に沿ってそれぞれ移動自在な第1の移動部及び第2の移動部と、前記両移動部に掛け渡されるように支持されるとともに作業者が搭乗する搬器部と、を備える昇降式足場であって、前記各マスト部に上下方向の等間隔にそれぞれ設けられた複数の被検出体と、前記各移動部にそれぞれ設けられ、前記いずれかの被検出体の位置を検出する検出手段と、前記両移動部の移動によって前記搬器部がほぼ水平の状態から昇降したとき、前記それぞれの検出手段が前記被検出体を同時に検出する状態では、前記搬器部の昇降を継続するとともに、前記いずれか一方の検出手段が前記被検出体のいずれかを検出したとき、当該検出手段が設けられた方の前記一方の移動部の移動を一時的に停止させる移動制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の昇降式足場の過傾斜補正装置において、前記移動制御手段は、前記一方の移動部の移動を一時的に停止させた後、前記いずれか他方の検出手段が前記被検出体のいずれかを検出したとき、前記一方の移動部の移動を再開させるとよい。
【0012】
本発明の昇降式足場の過傾斜補正装置において、前記各移動部を上下方向にそれぞれ移動させる第1の駆動機構及び第2の駆動機構を備え、前記両駆動機構は、それぞれ電動工具による回転力により駆動されるとよい。
【0013】
本発明の昇降式足場の過傾斜補正装置において、前記検出手段は、リミットスイッチであり、前記被検出体は、ドグであるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬器部の昇降中に検出手段(例えば第1リミットスイッチ)がいずれかの被検出体(例えばドグ)を検出した場合に、第1リミットスイッチが設けられた第1の移動部の移動を一時的に停止させる。この場合、他の検出手段(例えば第2リミットスイッチ)が設けられた第2の移動部の移動は継続されるので、搬器部は徐々に水平状態に戻るようになり、搬器部における過度の傾斜を補正することができる。このように、本発明によれば、搬器部における過度の傾斜の補正をリミットスイッチ及びドグといった容易な構成でかつ低コストで行うことができるとともに、シーケンサ等の制御装置を用いる必要がなくコストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る過傾斜補正装置が適用される昇降式足場を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図2】
図1に示す昇降式足場の搬器支持機構を示す斜視図である
【
図3】電動ドライバがギアボックスに接合された状態を示す図である。
【
図6】リミットスイッチとドグの位置関係を示す斜視図である。
【
図7】移動制御部とそれに接続される機器構成を示す図である。
【
図8】移動制御部の電気的接続構成を示すシーケンス図である。
【
図9】搬器部が傾斜したときの各リミットスイッチとドグの位置関係を示す図である。
【
図10】移動制御部の制御を示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る過傾斜補正装置が適用される昇降式足場を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図2は、
図1に示す昇降式足場の搬器支持機構を示す斜視図である。なお、以下の説明では、構成が共通する部材については同符号で示す。
【0018】
この昇降式足場は、例えば建築物の外装面を補修等するときに用いられるものであり、特に作業床が昇降する昇降式のものである。昇降式足場は、
図1に示すように、所定間隔を隔てて配置された一対の第1マスト部1及び第2マスト部2と、各マスト部1,2をそれぞれ支持するための一対の第1ベース部3及び第2ベース部4と、各マスト部1,2に沿ってそれぞれ上下動自在とされた一対の第1移動部5及び第2移動部6と、両移動部5,6に架け渡されるようにして支持される搬器部7とによって概略構成されている。
【0019】
この昇降式足場では、搬器部7に作業を行う作業者が搭乗し、第1及び第2移動部5,6によって搬器部7がそれぞれ第1及び第2マスト部1,2に沿うように昇降移動される。これにより、作業者は、好適な高さ位置で作業を行うことができる。なお、第1及び第2マスト部1,2、第1及び第2ベース部3,4、並びに第1及び第2移動部5,6は、それぞれ互いに同様の構成とされ、以下の説明において一方の構成のみを説明している場合、特に断りがない限り他方の構成も同様とされる。
【0020】
第1及び第2マスト部1,2は、それぞれ複数の支柱8からなり、それらが順次連結されることによって上下方向に延びている。支柱8同士の連結は、搬器部7に搭乗した作業者によって行われ、これにより、作業者は、第1及び第2マスト部1,2の高さを所望の高さに調整することができる。なお、支柱8の詳細については後述する。
【0021】
第1及び第2ベース部3,4は、
図2に示すように、支柱8を支持するためのベースフレーム9を備えている。ベースフレーム9は、平面視で略矩形状に形成された枠体からなり、その上面に支柱8の支持受けとなる支柱受け10を複数備えている。
【0022】
ベースフレーム9の4つの角には、放射状に延びるように配置された4本のアウトリガー11が連結されている。アウトリガー11は、この昇降式足場をグランド(地面)に対して安定保持するためのものであり、その先端部には、アウトリガー11の高さを調整可能なジャッキ部材12が設けられている。アウトリガー11は、そのベースフレーム9に対する取付方向が所定の角度範囲で変更自在とされている。
【0023】
ベースフレーム9の長手方向中央部にも、ジャッキ部材12が設けられている。ベースフレーム9の下面側には、例えば作業者がこの昇降式足場を手押しで移動させるためのキャスター13がそれぞれ設けられており、各キャスター13はストッパ付きとされている。
【0024】
第1及び第2移動部5,6は、搬器部7を支持しつつそれを昇降移動させるためのものであり、上下方向に延びかつ断面視で略コの字状に形成された移動プレート14を備えている。移動プレート14は、支柱8の側面に沿って摺動自在に配され、その正面下部には、搬器部7を支持するためのサポート部材15が連結されている。サポート部材15は、搬器部7の幅方向の長さよりやや大の長さを有しており、その先端には、搬器部7の本体を巻き込むようにして係止する係止片16が取付自在に備えられている。
【0025】
移動プレート14の正面上部には、ギアボックス17が取付けられている。ギアボックス17は、内部に複数のギア(図略)を備えており、後述するように、ギアボックス17に接合される電動ドライバDによる回転動作を第1及び第2移動部5,6の昇降方向への進行動作に変換するものである。
【0026】
ギアボックス17の上面には、
図3に示すように、ドライバ受け18が設けられ、ドライバ受け18には、作業者によって電動ドライバDの回転軸が接合される。電動ドライバDには、例えばAC100Vの電源電圧が供給されるが、その供給途中で後述する移動制御部31が介在されている。移動制御部31は、電動ドライバDに対する電源供給のオン、オフ制御を行うものである。
【0027】
支柱8は、
図4に示すように、所定長さを有する略角柱状に形成されており、本実施形態の昇降式足場では、複数の支柱8を順次上方向に連結しながら積み上げて用いられる。支柱8の4つの側面には、上下方向に延びる凹部がそれぞれ形成されており、4つの側面のうちの正面側の一側面には、長板状のトラック20が嵌め込まれている。トラック20には、長手方向に沿って複数の係合孔21が形成されている。
【0028】
トラック20の係合孔21には、上述したギアボックス17のギアが係合される。すなわち、ギアボックス17のギアが係合孔21に嵌合されながら電動ドライバDの回転動作により回転されることにより、移動プレート14は、支柱8に沿って上下動され、これにより、第1及び第2移動部5,6は昇降移動される。なお、ギアボックス17及び支柱8のトラック20の構成は、「特許請求の範囲」に記載の第1の駆動機構及び第2の駆動機構として機能する。
【0029】
また、支柱8の左右側面の上端部には、
図4に示すように、他の支柱8を連結するための連結レバー22が設けられている。連結レバー22は、下方の支柱8の上端と上方の支柱8の下端とが合わさったとき、上方の支柱8の下端に設けられた図示しないレバーロックと接続され、これにより、上方の支柱8は下方の支柱8に連結される。また、支柱8の上面の角部近傍には、他の支柱8の下端に形成された突起(図略)が嵌合する4つの凹部23が形成されている。
【0030】
搬器部7は、
図5に示すように、長尺状に形成されており、作業者が立位するための作業床24と、作業床24の周囲に配置され作業者の墜落を防止するための手摺25とを備えている。搬器部7は、並行に配置された第1及び第2移動部5,6のサポート部材15の上面に載置される。搬器部7は、
図5に示す手前側がサポート部材15の係止片16によって係止され、奥行き側がサポート部材15に図略の係止片を用いて係止される。
【0031】
なお、作業床24及び手摺25は、複数の部材からなりそれらを組み合わせることによって、搬器部7は、例えば
図2及び
図5に示す搬器支持機構等と独立して組み立てることが可能である。搬器部7等を構成する各部材の材質は、例えばアルミ合金製とされ、これにより搬器部7の軽量化が図られている。
【0032】
次に、本実施形態の特徴である傾斜補正装置の構成について説明する。この傾斜補正装置は、搬器部7の昇降時にそれが傾斜した場合、その状態をほぼ水平状態になるよう補正するためのものである。傾斜補正装置は、後述するように、第1及び第2移動部5,6の移動プレート14のそれぞれに設けられた第1リミットスイッチ25及び第2リミットスイッチ26、各支柱8に設けられた複数のドグ28、及び移動制御部31によって構成されている。
【0033】
第1及び第2リミットスイッチ25,26は、搬器部4の傾斜状態を検出するためにいずれかのドグ28の位置を検出するものであ。
図6は、第1リミットスイッチ25とドグ28の位置関係を示す斜視図であるが、第1リミットスイッチ25は、移動プレート14の側面に設けられ、各支柱8に設けられたドグ28に対向するように配置されている。第2リミットスイッチ26は、第1リミットスイッチ25の構成と同様である。
【0034】
第1リミットスイッチ25は、検出体としてのアクチュエータ部27が上下方向であって円弧状に回動自在とされている。第1リミットスイッチ25は、アクチュエータ部27が支柱8側に取り付けられるいずれかのドグ28に当接されることによりオン動作する。第1リミットスイッチ25は、オン動作した場合にa接点信号及びb接点信号を移動制御部31に出力する。
【0035】
ドグ28は、第1リミットスイッチ25の被検出体として機能し、
図6に示すように、側面視で略台形状に形成されている。ドグ28は、各支柱8の一側面に面一にかつ上下方向に延びた延出片29に、等間隔に複数設けられている。この間隔としては、例えば約100~300mmの範囲内のいずれかの値でよく、望ましくは約200mmとされる。なお、ドグ28同士の間隔は、支柱8と他の支柱8とが連結された場合にも、同一となるように予め考慮されて設定されている。
【0036】
上記構成により、移動プレート14が支柱8に沿って移動すると、上方向または下方向にかかわらず第1リミットスイッチ25のアクチュエータ部27がいずれかのドグ28に当接し、第1リミットスイッチ25がオン動作する。
【0037】
図7は、移動制御部31とそれに接続される機器の構成を示す図である。移動制御部31は、第1及び第2リミットスイッチ25,26からの出力信号を入力する。移動制御部31は、2つの元電源からそれぞれ独立に電源電圧を入力し、それらの電源電圧は、2つの第1電磁開閉器33及び第2電磁開閉器34を介して2つの電動ドライバDにそれぞれ供給される。第1及び第2電磁開閉器33,34は、電源電圧の供給を許可または阻止するものである。
【0038】
また、移動制御部31は、タイマーTを有しており、タイマーTは、第1及び第2リミットスイッチ25,26がオン動作した後、ドグ28を乗り越えてオフ動作し初期の状態になるまでの時間を計時するためのものであり、3つのa接点信号を出力する(詳細は後述)。
【0039】
図8は、第1及び第2リミットスイッチ25,26を含む移動制御部31の電気的接続構成を示すシーケンス図である。移動制御部31では、第1電磁開閉器33のリレー(
図8の「R1」参照)に、第1リミットスイッチ25(
図8の「LS1」参照)のb接点とタイマーTのa接点とが接続されている。また、第2電磁開閉器34のリレー(
図8の「R2」参照)に、第2リミットスイッチ26(
図8の「LS2」参照)のb接点とタイマーTのa接点とが接続されている。さらに、タイマーTには、第1及び第2リミットスイッチ25,26のa接点が直列に接続されているとともに、自己のa接点が接続されている。
【0040】
次に、過傾斜補正装置の作用について、主に
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は、搬器部7が傾斜したときの第1及び第2リミットスイッチ25,26とドグ28の位置関係を示す図であり、
図10は、移動制御部31の制御を示すタイミングチャート図である。
【0041】
本昇降式足場では、2人の作業者が搬器部7に搭乗して第1及び第2移動部5,6近傍に位置し、それぞれギアボックス17に接合された電動ドライバDを動作させる。両電動ドライバDが回転駆動されると、その回転駆動力がギアボックス17内のギアに与えられ、ギアは支柱8の係合孔21に嵌合されているので、各移動部5,6が上下方向に移動されて搬器部7が昇降するようになる。
【0042】
このとき、両電動ドライバDの回転駆動力のばらつき等が原因で各移動部5,6の移動速度が異なり、搬器部7が傾斜する場合がある。例えば搬器部7が上昇中であって第1移動部5側が第2移動部6側より高くなるように傾斜すると、
図9に示すように、第1リミットスイッチ25が第2リミットスイッチ26より先にいずれかのドグ28に当接する。これにより、第1リミットスイッチ25がオン動作する。
【0043】
第1リミットスイッチ25がオン動作すると、第1リミットスイッチ25のb接点が開き(
図8参照)、これにより、第1電磁開閉器33のリレーR1への動作電圧(例えばDC24V)が遮断されるので、第1電磁開閉器33は開状態になる(
図10(a),(c)参照)。そのため、第1移動部5側の電動ドライバDへの電源供給が一時的に停止され、搬器部7の第1移動部5側の上昇が停止される。この場合、第2移動部6側の電動ドライバDへの電源供給は継続されているので、搬器部7は徐々に水平状態に近づいていく。
【0044】
その後、今度は第2リミットスイッチ26がドグ28に当接し、第2リミットスイッチ26がオン動作する。第2リミットスイッチ26がオン動作すると、第2リミットスイッチ26のb接点が開き(
図8参照)、これにより、第2電磁開閉器34のリレーR2への動作電圧が遮断されようとする。
【0045】
このとき、第1及び第2リミットスイッチ25,26は、ともにオン動作しているので両リミットスイッチ25,26のa接点は、ともに閉じられ、これにより、タイマーTが動作を開始する(
図8及び
図10(e)参照)。タイマーTは、a接点信号を出力するオフディレイタイマーであるので、タイマーTの動作により第1電磁開閉器33のリレーR1及び第2電磁開閉器34のリレーR2に動作電圧が供給される。よって、第1電磁開閉器33が閉状態になる一方(
図10(c)参照)、第2電磁開閉器34の閉状態は継続される(
図10(d)参照)。
【0046】
そのため、2つの電動ドライバDは、ともに電源電圧が供給され、搬器部7はほぼ水平状態で上昇する。電源電圧の供給が継続されると、第1及び第2リミットスイッチ25,26がドグ28を乗り越え、両者はオフ動作される。この場合、タイマーTのオン動作時間は、搬器部7が昇降中であるときに当接してからドグ28を乗り越えるまでの時間tより長く設定されている(
図10(b)参照)。よって、タイマーTの動作時間が終了したとしても、第1及び第2リミットスイッチ25,26は、オフ状態に既に戻っているので、リレーR1,R2には動作電圧が供給され、すなわち第1及び第2電磁開閉器33,34は閉状態を継続し、両電動ドライバDに電源電圧が供給される。
【0047】
以後、同様にして、先にドグ28に当接した一方のリミットスイッチが設けられた方の一方の移動部がその移動を停止され、他方の移動部の移動が継続されることにより、搬器部7の昇降中においてその傾斜が補正される。
【0048】
このような制御は、搬器部7が下降する場合も、同様に行われる。すなわち、搬器部7が下降しながら傾斜している場合、高さ位置の低い側の一方のリミットスイッチが高さ位置の高い側の他方のリミットスイッチより先にドグに当接し、当接した方の一方の移動部の電源ドライバDが回転停止される。これにより、搬器部7が下降する場合も、搬器部7の過度の傾斜を補正してほぼ水平状態を維持しながら搬器部7が下降される。
【0049】
上記のように、本実施形態によれば、リミットスイッチとドグといった容易な構成でかつ低コストで昇降時に搬器部7における過度の傾斜を補正することができる。この場合、従来の構成にようにエンコーダによる高さの検出ずれを制御するシーケンサ等を用いなくてもよいので、コストの低減化を図ることができる。
【0050】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態における過傾斜補正装置の各構成部材の形状、大きさ及び数量等は、上記実施形態に限るものではなく、適宜設計変更可能である。例えば、本実施形態では、搬器部7の傾き状態を検出する構成として、リミットスイッチとドグを用いたが、これに限らず、例えば非接触の光電式センサ等を用いてもよい。
【0051】
また、上記実施形態において搬器部7の検出される傾斜角度は、ドグ28同士の間隔に依存するので、例えばドグ28同士の配置間隔の異なる他の支柱を準備し、必要に応じて他の支柱に置き換えて用いてもよい。あるいは、配置間隔の異なるドグ28を備える他の延出片が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 第1マスト部
2 第2マスト部
3 第1ベース部
4 第2ベース部
5 第1移動部
6 第2移動部
7 搬器部
8 支柱
14 移動サポート
15 サポート部材
17 ギアボックス
25 第1リミットスイッチ
26 第2リミットスイッチ
28 ドグ
31 移動制御部
D 電動ドライバ