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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】蓋の開閉構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
B60R7/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018174010
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020044940
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆典
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-178841(JP,A)
【文献】特開2016-055654(JP,A)
【文献】実開昭53-077534(JP,U)
【文献】実開平02-017444(JP,U)
【文献】実開昭51-085931(JP,U)
【文献】特開昭61-200281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内で搬送物を固定するための、前記車両のベルトの収納ボックスの蓋の開閉構造であって、
前記収納ボックスの内部に設けられ、前記収納ボックスの本体部と前記蓋とを開閉可能に接続し、単一の回転中心を有するヒンジと、
前記収納ボックスの内部に設けられ、前記ヒンジを保護するカバーと、を備える、蓋の開閉構造。
【請求項2】
前記カバーは、側壁部を有し、且つ、底面側に開口部を有する、請求項1に記載の蓋の開閉構造。
【請求項3】
前記ヒンジの回転軸は、前記車両の幅方向に延びるように配置される、請求項1又は2に記載の蓋の開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のベルトの収納ボックスの蓋の開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両内で用いられる収納ボックスが示されている。この収納ボックスは、箱の本体部と、本体部の開口部を開閉する蓋と、本体部と蓋とを回転可能に支持するヒンジと、を備える。収納ボックスに収納物を収納する場合、ヒンジを介して蓋を回転させることで蓋を開け、収納が完了したら、蓋を閉めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-240343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両内では、搬送物を固定するためのベルトが用いられることがある。従って、当該ベルトを収納するための収納ボックスが用いられることがある。ベルトは、帯状の柔らかく不定型な紐部と、固定金具として硬い材料で構成されるバックルと、を備える。このように、ベルトは、不定型な部材でありながら、硬い部材も備えているため、作業者は、バックルとヒンジとが干渉しないように、バックルを底面側に配置し、紐部を上面側に配置する。このとき、作業者は、不定形な部材である紐部とヒンジとの位置関係などを考慮しながら、収納作業を行う必要があった。その一方、収納ボックスの容量を小さくする必要性が生じる場合もある。そのような場合は、ヒンジと干渉させないようにベルトを収納ボックスに収納する作業が困難となっていた。
【0005】
本発明は、収納ボックスの容量に関わらず、車両のベルトを容易に収納ボックスへ収納することができる、蓋の開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蓋の開閉構造は、車両のベルトの収納ボックスの蓋の開閉構造であって、収納ボックスの内部に設けられ、収納ボックスの本体部と蓋とを開閉可能に接続するヒンジと、収納ボックスの内部に設けられ、ヒンジを保護するカバーと、を備える。
【0007】
本発明に係る蓋の開閉構造は、収納ボックスの内部に設けられ、収納ボックスの本体部と蓋とを開閉可能に接続するヒンジを備えている。従って、収納ボックスにベルトを収納するとき、作業者は、蓋をヒンジを介して開けて収納ボックスの中にベルトを収納し、収納後、蓋を閉める。ここで、蓋の開閉構造は、収納ボックスの内部に設けられ、ヒンジを保護するカバーを備える。従って、収納ボックスにベルトが収納される時や、蓋を閉める時には、カバーがヒンジを保護することができる。すなわち、ベルトがヒンジに近付こうとしても、カバーがベルトのヒンジ側への進入を規制することで、ベルトとヒンジとが干渉することを抑制することができる。収納ボックスの容量が小さい場合などであっても、作業者は、収納ボックスにベルトを収納するときに、ヒンジの位置関係を過度に考慮することなく、ベルトを収納することが可能となる。以上により、収納ボックスの容量に関わらず、車両のベルトを容易に収納ボックスへ収納することができる。
【0008】
本発明に係る蓋の開閉構造において、カバーは、側壁部を有し、且つ、底面側に開口部を有する。カバーは、側壁部を有しているため、収納時にベルトがヒンジへ向かって側方から近付いて来た場合に、側壁部にて当該ベルトの移動を規制することができる。その一方、カバーが底面側に開口部を有することで、カバー内部に異物が入り込んだ場合に、当該異物を開口部から排出することができる。また、製造時には、カバーを容易に加工することができる。
【0009】
本発明に係る蓋の開閉構造において、ヒンジの回転軸は、車両の幅方向に延びるように配置される。このような構成の場合、作業者は、収納ボックスの正面側(車両の前後方向)からベルトを入れた後、ベルトがヒンジと接触しないように、車両の上下方向における下方側へベルトを押し付けるような動作を行う。この場合、ベルトの帯状の柔らかく不定形な紐部の折り曲げられた部分が、ループ部の復元力でヒンジに近付きやすくなる場合があるため、ヒンジをカバーで保護することの効果がより顕著となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収納ボックスの容量に関わらず、車両のベルトを容易に収納ボックスへ収納することができる、蓋の開閉構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る蓋の開閉構造が適用された収納ボックスを備える車両の室内構造を示す概略平面図である。
図2】収納ボックスを正面から見たときの概略断面図である。
図3】収納ボックスを横側からみたときの概略断面図である。
図4】上側から見た場合の蓋の開閉構造の斜視図である。
図5】下側から見た場合の蓋の開閉構造の斜視図である。
図6】比較例に係る収納ボックス及び蓋の開閉構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る蓋の開閉構造が適用された収納ボックスを備える車両の室内構造を示す概略平面図である。本実施形態での車両150は、多数の乗員が搭乗するための乗員搭乗用の大型車両を示している。図1に示すように、本実施形態においては、車両150としてバスが例示されている。従って、車両150の室内空間は、前後方向に長手方向を有する長方形状をなしている。
【0014】
図1に示すように、車両150は、前側に設けられた出入口101Aと、前後方向における中央位置付近に設けられた出入口101Bと、を備える。車両150は、室内の最前部に設けられた運転席102と、複数の座席103と、収納ボックス1と、を主に備える。座席103の配列は特に限定されるものではないが、図1に示すレイアウトの例では、室内の左側の領域に前後方向に沿って複数の座席103が配列されており、室内の右側の領域に前後方向に沿って複数の座席103が配列されている。左側の座席103の列と、右側の座席103の列との間にはスペースが設けられている。当該スペースは、乗客が移動するための通路、又は乗客が立ち上がった状態で乗車するためのスペースとして用いられる。
【0015】
運転席102は、室内の最前部における右側に設けられている。右側の座席103の列のうち、最も前側に位置する座席103を「座席103A」とし、二番目~四番目の座席103を「座席103B」とし、五番目の座席103を「座席103C」とする。座席103Bは室外側へ可撓可能な折り畳み式構造を有する。座席103Aは、仕切り部104を介して運転席102の真後ろに設けられている。座席103Aの後側には、車椅子などを配置するためのスペースSP、及び収納ボックス1が配置されている。このとき、スペースSPは、座席103Bを室外側へ折り畳むことにより確保される。すなわち、座席103Aと座席103Cとの間には、スペースSP及び収納ボックス1が配置される。
【0016】
収納ボックス1は、座席103Aと後側に隣り合う位置に配置されている。ここで、座席103Aは、前輪のタイヤハウスの上方に配置される座席103に該当する。従って、当該座席103Aと隣り合う収納ボックス1も、タイヤハウスの上方に配置される。スペースSPは、収納ボックス1の後側に隣り合う位置に形成されている。スペースSPは、車椅子に乗った乗客が搭乗する際に、車椅子を配置するためのエリアとして用いられる。当該スペースSPでは、車椅子は、ベルトで固定されることによって、運転中の移動が防止される。車椅子の固定がなされない場合、ベルトは収納ボックス1に収納される。すなわち、作業者は、車椅子をスペースSPに固定する場合は、収納ボックス1からベルトを取りだして、当該ベルトで車椅子を固定する。また、固定を解除する場合は、車椅子からベルトを外し、収納ボックス1へベルトを入れる。
【0017】
次に、図2及び図3を参照して、収納ボックスの構造についてより詳細に説明する。図2は、収納ボックスを正面から見たときの概略断面図である。図3は、収納ボックスを横側からみたときの概略断面図である。図3ではヒンジ10B、カバー20Bのみが示されているが、ヒンジ10A、カバー20Aも同様の構成を有する。なお、以降の説明においては、XYZ座標系を用いて説明を行う場合がある。X軸方向は、車両150の幅方向に対応する方向である。X軸方向の正側は幅方向の外側(室外側)を示し、X軸方向の負側が幅方向の内側(室内側)を示す。Y軸方向は、車両150の前後方向に対応する方向である。Y軸方向の正側は車両150の後側を示し、Y軸方向の負側は車両150の前側を示す。Z軸方向は、上下方向を示す。図2及び図3に示すように、収納ボックス1は、本体部2と、蓋3と、ヒンジ10A,10Bと、カバー20A、20Bと、を備える。また、本実施形態に係る蓋3の開閉構造100は、ヒンジ10A,10Bと、カバー20A、20Bによって構成される。
【0018】
本体部2は、内部空間を有しており、当該内部空間にベルト50を収納している。本体部2は、車両150の床面110上に配置される。本体部2は、X軸方向を長手方向とする直方体の箱状部材である。本体部2は、X軸方向に対向する側壁部2a、2b(図2参照)と、Y軸方向に対向する側壁部2d,2e(図3参照)と、底壁部2cと、を備える。本体部2の上面側は上方へ向かって開口している。
【0019】
ここで、燃料電池を搭載したバスなどにおいては、従来のバスに対して新たな制御システムが追加される。従って、車両150の室内には制御ユニット111が、追加で設けられる。しかしながら、大きな制御ユニット111は、美的観点から、また乗客に触れられることを防止するため、乗客の目に付く位置に露出した状態で配置することは好ましくない。また、車両の室外の底部側に制御ユニット111を配置する場合は、低い位置に存在することにより、水などの浸入の可能性があるため、好ましくない。一方、収納ボックス1が設けられている位置は、タイヤハウスの上方に配置されているため、水の浸入を回避しながらスペースを確保し易い位置である。従って、室内には、X軸方向において本体部2の一部と重なる領域に、制御ユニット111が配置される。
【0020】
本体部2は、側壁部2bの下端側に凹部を有しており、制御ユニット111は、当該凹部に対応する位置に配置される。具体的に、本体部2は、側壁部2bの下端部からX軸方向の正側へ向かって水平に広がる底壁部2fと、底壁部2fのX軸方向の正側の端部から下方へ向かって延びる側壁部2gと、を備える。底壁部2fは、底壁部2cから上方へ離間した位置に配置される。側壁部2gは、側壁部2bからX軸方向の正側へ離間した位置に配置される。制御ユニット111は、本体部2の外部であって、底壁部2fと下側で対向し、側壁部2gとX軸方向の負側で対向する位置に設けられている。なお、制御ユニット111の周囲は図示されないブラケットカバーで覆われている。本体部2の底壁部2fは、当該ブラケットカバーに取り付けられることで、支持される。
【0021】
本体部2の内部には、ベルト50が折り畳まれた状態で収納される。ベルト50は、バックル51と、紐部52と、を備える。バックル51は、ベルトを固定するための金具に該当する部品である。紐部52は、バックル51同士を接続する長尺の部材である。バックル51は、金属や樹脂などの剛性の高い材料で構成される。紐部52は、繊維などの柔らかく変形可能な材料で構成される。従って、バックル51とヒンジ10A,10Bとの接触を回避するため、ベルト50は、バックル51が底側に配置され、紐部52が上側に配置されるように、本体部2内に収容される。なお、ベルト50は、座席103に設けられたシートベルトのように、車両150から取り外し不能に設けられたベルトとは異なり、車両150から独立した状態で取り外し可能なものである。
【0022】
蓋3は、本体部2の上端部に設けられ、本体部2の開口部を開閉可能に覆うように設けられる。蓋3は、閉じた状態において、XY平面と平行に広がる板状の部材である。蓋3は、本体部2の上端部側の開口部の略全体を覆う。ただし、本体部2の開口部は、ヒンジ10A,10Bが設けられるY軸方向の負側の端部においては、蓋3とは別の板部材8,9によって覆われる。
【0023】
ヒンジ10A,10Bは、収納ボックス1の内部に設けられ、収納ボックス1の本体部2と蓋3とを開閉可能に接続する部材である。ヒンジ10A,10Bは、本体部2及び蓋3のY軸方向の負側の端部に対して設けられる。当該位置において、ヒンジ10A,10Bは、X軸方向に並ぶように設けられる。また、ヒンジ10A,10Bの回転軸19は、X軸方向に平行に延びる。なお、図2では回転軸19が強調して示されている。ヒンジ10AがX軸方向の負側に設けられ、ヒンジ10BがX軸方向の正側に設けられる。すなわち、ヒンジ10A,10Bは車両150の幅方向に並ぶように設けられ、ヒンジ10Aが幅方向の内側に設けられ、ヒンジ10Bが幅方向の外側に設けられる。また、ヒンジ10A,10Bの回転軸19は、車両150の幅方向に延びる。
【0024】
図3に示すように、ヒンジ10A,10Bは、蓋3側に接続される可動部11と、本体部2側に接続される固定部12と、を備える。可動部11は、回転部15にて固定部12に対して回転可能に接続される。可動部11のY軸方向の正側の端部は、蓋3に接続される。従って、蓋3は、可動部11と共に回転部15の回転軸19周りに回転移動することで、開閉する。固定部12は、本体部2の側壁部2eの上端部のフランジ部に固定される。なお、固定部12の上側には板部材8,9が設けられている。板部材9は、蓋3を閉じた時に、当該蓋3がY軸方向の負側に連なるような態様で、本体部2を覆う。板部材8は、固定部12の上側に固定され、回転部15と蓋3との間に形成される隙間を埋めるように延びている。なお、ヒンジ10A,10Bの詳細な構成については、後述する。
【0025】
カバー20A、20Bは、収納ボックス1の内部に設けられ、ヒンジ10A,10Bを保護する部材である。カバー20Aは、ヒンジ10Aに対応する位置に設けられ、当該ヒンジ10Aの周囲を覆うように設けられる。カバー20Bは、ヒンジ10Bに対応する位置に設けられ、当該ヒンジ10Bの周囲を覆うように設けられる。カバー20A,20Bは、少なくとも、ヒンジ10A,10Bの稼働軌跡のうち、ベルト50が進入しうる部分を覆うように設けられる。稼働軌跡とは、ヒンジ10A,10Bが蓋3の開閉動作をおこなった時に、ヒンジ10A,10Bの構成部品が通過し得る領域である。また、稼働軌跡は、部品のがたつきなどの影響も考慮した領域である。本実施形態では、カバー20A,20Bは、稼働軌跡から若干の余裕を持たせた位置に配置される。
【0026】
カバー20A,20Bは、本体部2のY軸方向の負側の端部に対して設けられる。当該位置において、カバー20A,20Bは、X軸方向に並ぶように設けられる。カバー20AがX軸方向の負側に設けられ、カバー20BがX軸方向の正側に設けられる。すなわち、カバー20A,20Bは車両150の幅方向に並ぶように設けられ、カバー20Aが幅方向の内側に設けられ、カバー20Bが幅方向の外側に設けられる。
【0027】
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る蓋3の開閉構造100についてより詳細に説明する。図4は、上側から見た場合の蓋の開閉構造の斜視図である。図5は、下側から見た場合の蓋の開閉構造の斜視図である。なお、図4及び図5では、本体部2及び蓋3は省略されている。なお、図4及び図5では、ヒンジ10A及びカバー20Aのみが示されているが、ヒンジ10B及びカバー20Bも同趣旨の構成を有している。また、ヒンジ10Aについては、蓋3を閉じた状態における姿勢について説明するものとする。
【0028】
図4及び図5に示すように、ヒンジ10Aは、上述したように、可動部11と、固定部12と、を備える。本実施形態では、ヒンジ10Aとして、いわゆる「裏蝶番」と称されるタイプのヒンジが適用される。
【0029】
可動部11は、平板を折り曲げ加工することによって形成される部材である。可動部11は、Y軸方向の正側の端部から順に接続部13、湾曲部14、立ち上がり部16、及び円筒部15aを備える。接続部13は、蓋3と接続される部分である(図3参照)。接続部13は、XY平面と平行をなすと共に、X軸方向に長手方向を有するように延びる。湾曲部14は、回転部15付近を回避するように迂回するための部分である。湾曲部14は、接続部13のY軸方向の負側の端部から、下方へ向かって円弧を描きながら延びる。湾曲部14は、X軸方向から見て、回転部15を中心として90°の円弧を描くように延びる。湾曲部14は、当該湾曲形状にてX軸方向に延びる。立ち上がり部16は、湾曲部14の下端部から上方へ立ち上がる部分である。湾曲部14は、YZ平面と平行をなすと共に、X軸方向に長手方向を有するように延びる。円筒部15aは、回転部15の一部を構成する部分である。円筒部15aは、立ち上がり部16の上端部に設けられる。円筒部15aは、回転部15のX軸方向における中心付近の領域にて、円筒を形成している。円筒部15aは、X軸方向に延びる貫通部を有しており、当該貫通部内には回転軸19(図3参照)が挿入される。
【0030】
固定部12は、本体部17、及び円筒部15bを備える。本体部17は、本体部2の側壁部2eの上端部のフランジ部に接続される部分である(図3参照)。本体部17は、XY平面と平行をなすと共に、X軸方向に長手方向を有するように延びる。円筒部15bは、回転部15の一部を構成する部分である。円筒部15bは、本体部17のY軸方向における正側の端部に設けられる。円筒部15bは、回転部15のX軸方向における両端付近の領域にて、円筒を形成している。円筒部15bは、X軸方向に延びる貫通部を有している。円筒部15bの貫通部は、円筒部15aの貫通部とX軸方向から見て重なるように配置される。当該貫通部内には回転軸19(図3参照)が挿入される。
【0031】
なお、接続部13、すなわち蓋3のY軸方向の負側の端部と、回転部15と、はY軸方向に互いに離間しているため、隙間が形成される。図3に示すように、当該隙間は、板部材8で覆われる。湾曲部14は、板部材8を迂回するように湾曲している。従って、蓋3を開けることで可動部11が回転部15周りに回転しても、湾曲部14と板部材8との干渉は回避される。
【0032】
図4及び図5に示すように、カバー20Aは、正面側の側壁部21、横側の側壁部22,23、及び接続部24,25を備えている。また、カバー20Aは、上下方向に貫通しており、上面側に開口部30を有し、底面側に開口部31を有する。カバー20Aは、一枚の板部材を折り曲げ加工することによって構成される。また、カバー20Aの各折り目は、互いに平行(ここでは上下方向に対して平行)をなしている。従って、単一の折り曲げ装置によって、容易にカバー20Aを製造することができる。
【0033】
正面側の側壁部21は、ヒンジ10Aの正面側、すなわちY軸方向の正側を保護する。正面側の側壁部21は、主に、収納ボックス1内において、Y軸方向の正側から負側へ向かってくるベルト50の進入を防止する。正面側の側壁部21は、湾曲部14からY軸方向の正側へ離間する位置にて、XZ平面と平行をなし、且つ、X軸方向に長手方向を有するように延びる。
【0034】
横側の側壁部22は、ヒンジ10Aの横側、すなわちX軸方向の負側を保護する。横側の側壁部22は、主に、収納ボックス1内において、X軸方向の負側から正側へ向かってくるベルト50の進入を防止する。横側の側壁部22は、湾曲部14及び立ち上がり部16からX軸方向の負側へ離間する位置にて、YZ平面と平行をなし、且つ、Y軸方向に長手方向を有するように延びる。横側の側壁部23は、ヒンジ10Aの横側、すなわちX軸方向の正側を保護する。横側の側壁部23は、主に、収納ボックス1内において、X軸方向の正側から負側へ向かってくるベルト50の進入を防止する。横側の側壁部23は、湾曲部14及び立ち上がり部16からX軸方向の正側へ離間する位置にて、YZ平面と平行をなし、且つ、Y軸方向に長手方向を有するように延びる。
【0035】
正面側の側壁部21のX軸方向の負側の端部は、横側の側壁部22のY軸方向の正側の端部と接続される。また、当該接続部分は、円弧状に湾曲した湾曲部26をなしている。正面側の側壁部21のX軸方向の正側の端部は、横側の側壁部23のY軸方向の正側の端部と接続される。また、当該接続部分は、円弧状に湾曲した湾曲部27をなしている。
【0036】
接続部24は、本体部2の側壁部2eと接続される部分である。接続部24は、横側の側壁部22のY軸方向の負側の端部からX軸方向の正側へ屈曲する片部によって構成される。接続部25は、本体部2の側壁部2eと接続される部分である。接続部25は、横側の側壁部23のY軸方向の負側の端部からX軸方向の正側へ屈曲する片部によって構成される。
【0037】
ここで、カバー20Aの上端部20aと、下端部20b,20c,20dについて説明する。カバー20Aの上端部20aは、正面側の側壁部21、横側の側壁部22,23、湾曲部26,27、及び接続部24,25の高さ位置が一定の上端部によって構成されている。すなわち、各部分の上端部は、高さ位置が一定である。カバー20Aの下端部20bは、横側の側壁部22,23、及び接続部24,25の高さ位置が一定の下端部によって構成されている。カバー20Aの下端部20dは、正面側の側壁部21の高さ位置が一定の下端部によって構成されている。正面側の側壁部21の上下方向の寸法は、横側の側壁部22,23よりも小さく設定されている。従って、下端部20dは、下端部20bよりも高い位置に配置されている。カバー20Aの下端部20cは、湾曲部26,27の下端部によって構成されている。下端部20cは、下端部20bから下端部20dに向かって上方に位置するように傾斜している。
【0038】
次に、図3を参照して、ヒンジ10B及びカバー20Bと、他の構成要素との位置関係について説明する。なお、図3ではヒンジ10B及びカバー20Bのみ示されているが、ヒンジ10A及びカバー20Aについても同様の関係が成り立つ。図3に示すように、カバー20Bの上端部20aは、少なくとも蓋3、板部材8,9、固定部12などと干渉しないように、これらの部材より下方に位置する。また、上端部20aは、ヒンジ10Bの上側構造との間の隙間から、ベルト50や作業者の手などが入らないように、当該隙間を狭くできる位置に配置されることが好ましい。なお、カバー20Bの各部位のXY平面内における位置も、ヒンジ10Bの上側構造との間の隙間から、ベルト50や作業者の手などが入らないように、当該隙間を狭くできる位置に配置されることが好ましい。例えば、蓋3を開けた状態を上方から見たとき、カバー20Bの三方向の側壁部21,22,23(図4及び図5参照)とヒンジ10Bの三方向の各端部との間の隙間の大きさは、5mm~10mm程度の大きさに収まるようにしてよい。上端部20aは、立ち上がり部16の上下方向の中央位置よりも上方に配置され、少なくとも立ち上がり部16の下端よりも上方に配置される。
【0039】
カバー20Bの下端部20b,20c,20dは、ヒンジ10B側へ向かうベルト50の移動を、ヒンジ10Bの稼働軌跡から若干離間した位置にて規制することができる位置に配置される。下端部20b,20c,20dは、少なくとも立ち上がり部16の下端部及び湾曲部14の対応箇所よりも下方に配置される。なお、湾曲部14の位置では、ヒンジ10Bは円弧状に湾曲しているため、当該位置に対応する下端部20cが傾斜している。これにより、ベルト50が、湾曲部14から過剰に遠い位置で規制されることで、本体部2の内部空間が必要以上に狭くなることを防止できる。
【0040】
なお、カバー20Bの上下には開口部30,31(図4及び図5参照)が形成されている。ただし、ヒンジ10Bに対して下方から向かってくるベルト50に対しては、下端部20b,20c,20dが干渉することで、当該ベルト50の移動を規制できる。また、ヒンジ10Bに対して上方から向かってくるベルト50に対しては、上端部20aが干渉することで、当該ベルト50の移動を規制できる。
【0041】
次に、本実施形態に係る蓋3の開閉構造100の作用・効果について説明する。
【0042】
まず、図6を参照して、比較例に係る収納ボックス201の蓋3の開閉構造200について説明する。図6に示すように、比較例に係る蓋3の開閉構造200は、ヒンジ10A,10Bを保護するカバーを有していない。また、比較例に係る収納ボックス201は、図2の収納ボックス1のように、制御ユニット111を配置するための凹部を有していない。従って、収納ボックス201は、ベルト50を収納するための容量を十分に確保できる。
【0043】
ここで、ベルト50は、帯状の柔らかく不定型な紐部52と、固定金具として硬い材料で構成されるバックル51と、を備える。このように、ベルト50は、不定型な部材でありながら、硬い部材も備えているため、作業者は、バックル51とヒンジ10A,10Bとが干渉しないように、バックル51を底面側に配置し、紐部52を上面側に配置する。このとき、作業者は、不定形な部材である紐部52とヒンジ10A、10Bとの位置関係などを考慮しながら、収納作業を行う必要があった。例えば、図6の領域E1は、ヒンジ10A,10Bの稼働軌跡、及び当該稼働軌跡と同じ高さ位置の領域である。また、領域E2は、稼働軌跡に近接しないための余裕代として確保された領域である。ベルト50の紐部52が領域E1,E2に配置された場合、ベルト50が水平方向に移動したときに、ヒンジ10A,10Bに近接してしまう。よって、作業者は、収納時には、領域E1,E2に紐部52が入らないように考慮しながら、収納作業を行う。
【0044】
しかしながら、図2に示すような収納ボックス1は、制御ユニット111のスペースを確保する分だけ、収納ボックス1の内部の容量が小さくなってしまう。特に、制御ユニット111の上側の空間は非常に小さくなるため、バックル51の上側に紐部52を置くことができなくなる。このような状況下において、比較例に係る開閉構造200のように、ヒンジ10A,10Bがカバーで保護されていない場合、作業者は、領域E1,E2(図6参照)に紐部52が入らないようにベルト50を収納することが困難となる。ヒンジ10A,10Bにベルト50が干渉すると、開閉不良、傷付き、異音発生などの問題が生じてしまう。また、領域E1,E2に紐部52が入らないようにすることが可能であったとしても、作業者は、時間をかけて慎重にベルト50の配置を調整しながら作業を行わなくてはならない。車椅子のベルト50を収納ボックス1に収納する作業は、他の乗客を待たせた状態で行われる場合もある。このような状況では、作業時間を短縮する事が求められる。
【0045】
これに対し、本実施形態に係る蓋3の開閉構造100は、収納ボックス1の内部に設けられ、収納ボックス1の本体部2と蓋3とを開閉可能に接続するヒンジ10A,10Bを備えている。従って、収納ボックス1にベルト50を収納するとき、作業者は、蓋3をヒンジ10A,10Bを介して開けて収納ボックス1の中にベルト50を収納し、収納後、蓋3を閉める。ここで、蓋3の開閉構造100は、収納ボックス1の内部に設けられ、ヒンジ10A、10Bを保護するカバー20A,20Bを備える。従って、収納ボックス1にベルト50が収納される時や、蓋3を閉める時には、カバー20A、20Bがヒンジ10A,10Bを保護することができる。すなわち、ベルト50がヒンジ10A,10Bに近付こうとしても、カバー20A,20Bがベルト50のヒンジ10A,10B側への進入を規制することで、ベルト50とヒンジ10A,10Bとが干渉することを抑制することができる。収納ボックス1の容量が小さい場合などであっても、作業者は、収納ボックス1にベルト50を収納するときに、ヒンジ10A,10Bの位置関係を過度に考慮することなく、ベルト50を収納することが可能となる。また、ベルト50がヒンジ10A,10Bと干渉することをより確実に抑制できるため、開閉不良、傷付き、異音発生などを抑制できる。
【0046】
例えば、図2に示すように、紐部52の一部が高い位置に配置され、ヒンジ10A、10Bと並ぶような位置関係(図6における領域E1,E2に該当する位置に紐部52が入り込んだ状態)になったとしても、カバー20A,20Bがヒンジ10A,10Bを保護するため、特に問題が生じない。これは、本実施形態に係る開閉構造100では、ベルト50を入れてはいけない領域E1,E2の範囲をカバー20A,20Bの内部だけに制限することができるためである。従って、作業者は、図6の比較例に係る開閉構造200のように、広い範囲にわたって広がる領域E1,E2に紐部52を入れないための調整などを行う必要がなくなる。作業者は、カバー20A,20Bにベルト50が入らない様にすればよい点にだけ注意すればよいので、カバー20A,20Bの位置さえ確認すれば、速やかにベルト50を収納ボックス1に収納できる。以上により、収納ボックス1の容量に関わらず、車両150のベルト50を容易に収納ボックス1へ収納することができる。
【0047】
本実施形態に係る蓋3の開閉構造100において、カバー20A,20Bは、側壁部21,22,23を有し、且つ、底面側に開口部31を有する。カバー20A,20Bは、側壁部21,22,23を有しているため、収納時にベルト50がヒンジ10A,10Bへ向かって側方から近付いて来た場合に、側壁部21,22,23にて当該ベルトの移動を規制することができる。例えば、図2に示すように、高い位置に存在する紐部52が側方へ移動しても、カバー20A、20Bの側壁部は、側方から近付いてくる紐部52の移動を規制することができる。その一方、カバー20A,20Bが底面側に開口部31を有することで、カバー20A,20B内部に異物(道具など)が入り込んだ場合に、当該異物を開口部31から排出することができる。なお、ベルト50が底面側からヒンジ10A,10Bに近付くように移動する頻度は少ないため、底面側に開口部31を形成しても問題が生じにくい。また、製造時には、各側壁部の折り目が平行になるので、板金を折り曲げ加工する際の作業が容易となるため、カバー20A,20Bを容易に加工することができる。
【0048】
本実施形態に係る蓋3の開閉構造100において、ヒンジ10A,10Bの回転軸19は、車両150の幅方向に延びるように配置される。このような構成の場合、作業者は、収納ボックス1の正面側(車両の前後方向)からベルト50を入れた後、ベルト50がヒンジ10A,10Bと接触しないように、車両150の上下方向における下側(Z軸方向の負側)へベルト50を押し付けるような動作を行う。この場合、ベルト50の帯状の柔らかく不定形な紐部52の折り曲げられた部分が、ループ部の復元力でヒンジ10A,10Bに近付きやすくなる場合があるため、ヒンジ10A,10Bをカバー20A,20Bで保護することの効果がより顕著となる。
【0049】
なお、例えば、回転軸19が車両の前後方向に延びるような変形例も、本発明の請求項1の範囲から除外されるものではない。
【0050】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0051】
例えば、上述の実施形態では、収納ボックスに二つのヒンジが設けられていたが、ヒンジの数は限定されず、一つであっても三つ以上であってもよい。なお、複数のヒンジが設けられる場合、全てのヒンジに対してカバーを設けてもよいが、少なくとも一つのヒンジに対してカバーが設けられればよい。なお、図2に示す形態では、収納ボックスの室内側(X軸方向の負側)が、室外側(X軸方向の正側)より狭いスペースとなるため、ヒンジ10A,10Bの何れかのみにカバーを設ける場合は、ヒンジ10Aにカバーを設けることがより好ましい。
【0052】
上述の実施形態では、ヒンジの三方向の全てに対してカバーの側壁部21,22,23が設けられていた。これに代えて、いずれかの方向における側壁部21,22,23が省略されてもよい。なお、図2に示す形態では、ベルト50は、ヒンジ10Aとヒンジ10Bの中間付近から収納ボックスに入れる動作となるため、ヒンジ10Aについては、側壁部23を優先的に設けることがより好ましい。なお、カバーの底面側に開口部が形成されず、底壁部が設けられていてもよい。
【0053】
また、収納ボックスの形状は上述の実施形態に限定されず、様々な形状が採用されてよい。例えば、上述の実施形態では、本体部が制御ユニット111を配置するための凹部を有していたが、制御ユニット111が配置されない図6に示すような収納ボックスが採用されてもよい。
【0054】
また、ヒンジのタイプは特に限定されるものではなく、他のタイプのヒンジを用いてもよい。
【0055】
上述の実施形態では、車両としてバスを例示したが、車両は路面電車、福祉車両などであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…収納ボックス、2…本体部、3…蓋、10A,10B…ヒンジ、19…回転軸、20A,20B…カバー、21,22,23…側壁部、31…開口部、100…開閉構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6