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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】床吹出し空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20220829BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20220829BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20220829BHJP
   A62C 2/12 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
F24F13/02 F
F24F13/02 Z
F24F13/14 J
F24F7/10 Z
A62C2/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018211120
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020076553
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】越田 聡
(72)【発明者】
【氏名】中川 滋
(72)【発明者】
【氏名】西本 真道
(72)【発明者】
【氏名】原田 健治
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-061244(JP,U)
【文献】特開2001-182179(JP,A)
【文献】特開平04-008981(JP,A)
【文献】実開昭49-029519(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F24F 13/14
F24F 7/10
A62C 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階に空調ダクトを備えた床吹出し用の空調システムであって、
床スラブの貫通孔内に設置されて、前記床スラブの下側から上側へ通風させる、防火ダンパーを有するベント装置と、
当該ベント装置に接続される前記空調ダクトと、
飛散物の落下防止材と、を備え、
前記ベント装置は、円筒状の管部と、当該管部の上端部から半径方向外側に突出するつば部とを備え、前記つば部が前記床スラブに係止され
前記落下防止材は、上下方向に延びる筒状のガード筒部と、前記ガード筒部の下端から径方向外側に広がる取付フランジ部と、を備え、
前記取付フランジ部が、前記ベント装置にビスにより固定されている
ことを特徴とする床吹出し空調システム。
【請求項2】
前記防火ダンパーは、前記管部内に設けられて火災時に当該管部を遮蔽する、板状の扉を備え、
前記管部の外周面に保温材が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の床吹出し空調システム。
【請求項3】
前記落下防止材は、前記管部内に飛散物が侵入するのを防止するように前記つば部の上取り付けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の床吹出し空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の床スラブを挟んだ下階側に空調装置に接続された空調ダクトが設けられた床吹出し空調システムである。
【背景技術】
【0002】
オフィス用途のビルディング等においては、床スラブと、床スラブの上方に間隔をあけて設けられた床パネルと、を備える二重床が多用されている。床パネルは、床スラブ上に立設した複数本の支柱上に支持されている。これにより、床スラブと床パネルとの間に床下空間が形成され、この床下空間に、各種の配線等を収容可能となっている。また、床下空間に、空調システムが設けられることもある。
【0003】
例えば特許文献1には、床スラブと床パネルとの間の床下空間に、空調機器からの空調空気が流れるダクトを設け、床パネルに設けられた吹出口を通じて、ダクト内を流れる空気を室内に吹き出す構成が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されたような構成では、床スラブの上面に沿って連続するダクトが設けられることで、床下空間に収容する配線等と干渉し、床下空間内のメンテナンス等を行いにくいという課題があった。
【0004】
これに対し、特許文献2には、床スラブと床パネル(OAフロア)との間の床下区間に、空調機より送られてくる空調空気(冷気または暖気)が供給され、床パネルに設けられた床吹出口から、床下空間の空調空気が室内に吹き出す構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、下階の天井裏空間に配置された空調室内機から、ダクトを通して、床スラブと床パネルとの間の床下空間に空調空気が供給される構成が開示されている。床下空間の空調空気は、床パネルに設けられた吐出口から室内に吹き出す。
しかしながら、特許文献3に開示されたような構成では、ダクトは、床スラブを上下方向に貫通して設けられている。このため、火災発生時に、ダクトを介して床スラブを挟んだ上下階が連通してしまうので、防災計画の面から、上階と下階との間に防火区画を形成する必要があった。
そこで、ダクトに対し、ダクトの上方または下方に防火ダンパーが設けられていた。具体的には、ダクトの上方側または下方側に設ける防火ダンパーは、床スラブの上側の床下空間、又は床スラブの下側の下階の天井裏空間に位置することになり、床下空間、天井裏空間の有効利用やメンテナンスの妨げとなる場合があった。また、床下空間や天井裏空間に設けられた他の機器や部材との干渉を避けるため、床下空間、または天井裏空間を高くする必要があり、かつ防火ダンパーの設置位置が制限される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2011/013743号
【文献】特開2008-32255号公報
【文献】特開2015-7335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、防火ダンパーを備えつつも設置自由度の高い、床吹出し空調システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、建物の下階側に空調機や空調ダクトが設けられた空調方式を対象に、床スラブの躯体内部に防火ダンパーを設置することで、床スラブの上面側の床下空間、または下面側の天井裏空間に防火ダンパーを設置することなく、床組や天井構造が簡素化でき、かつ建物の下階側と当該階とを防火区画(水平区画)できる点に着眼して、床吹出し用空調システムを発明するに至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の床吹出し空調システムは、下階に空調ダクトを備えた床吹出し用の空調システムであって、床スラブの貫通孔内に設置されて、前記床スラブの下側から上側へ通風させる、防火ダンパーを有するベント装置と、当該ベント装置に接続される前記空調ダクトと、飛散物の落下防止材と、を備え、前記ベント装置は、円筒状の管部と、当該管部の上端部から半径方向外側に突出するつば部とを備え、前記つば部が前記床スラブに係止され、前記落下防止材は、上下方向に延びる筒状のガード筒部と、前記ガード筒部の下端から径方向外側に広がる取付フランジ部と、を備え、前記取付フランジ部が、前記ベント装置にビスにより固定されていることを特徴とする。
このような構成によれば、床スラブに形成された貫通孔内に、防火ダンパーを有するベント装置を設けることで、床スラブの上側や下側に防火ダンパーを設置することなく、上階と下階とを区切る床スラブ内に防火区画を形成することができる。これにより、床スラブの上側の床下空間や、床スラブの下側の天井裏空間に防火ダンパーが配置する必要がなくなる。したがって、防火ダンパーを配置するに際し、他の部材等との干渉を避ける必要も無く、防火ダンパーを有するベント装置の設置位置の自由度が高まる。また、防火ダンパーが床スラブの上側や下側に突出することはなく、床下空間や天井裏空間の有効利用やメンテナンス性の向上を図ることが可能となる。
また、ベント装置の管部に設けられたつば部を床スラブに係止させることで、床スラブの貫通孔内にベント装置の設置を容易かつ確実に行うことが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の床吹出し空調システムは、前記防火ダンパーが、前記管部内に設けられて火災時に当該管部を遮蔽する、板状の扉を備え、前記管部の外周面に保温材が設けられている。
このような構成によれば、火災発生時には、板状の扉を閉じることで、防火区画(水平区画)を形成することができる。また、通常時は、板状の扉を開くことで、空調装置から送り出される空調空気を、空調ダクト及びベント装置を通して床下空間に供給することができる。管部の内側には、空調ダクトから送り込まれる空調空気が通るが、管部の外周面に保温材が設けられることで、空調空気の保温を図ることができる。
【0010】
本発明の一態様においては、前記落下防止材は、前記管部内に飛散物が侵入するのを防止するように前記つば部の上取り付けられている。
このような構成によれば、ベント装置の管部に設けられたつば部の上に落下防止材を設けることで、床スラブの上側の床下空間からベント装置内に飛散物が侵入するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防火ダンパーを備えつつも設置自由度の高い、床吹出し空調システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る床吹出し空調システムの構成を示す断面図である。
図2図1の床吹出し空調システムにおいて、床スラブに設けられたベント装置を示す部分断面図である。
図3図2に示すベント装置のI-I矢視断面図である。
図4図3に示すベント装置の扉が開いた状態(貫通孔を閉塞した状態)を示す部分断面図である。
図5図4に示すベント装置のII-II矢視断面図である。
図6】ベント装置を構成するアウター部材の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、建物の床スラブを挟んだ下階側に設けられた空調ダクトと、当該空調ダクトに接続される床スラブの躯体内部に設けられた防火ダンパーを有するベント装置と、で構成される床吹出し空調システムである。
以下、添付図面を参照して、本発明による床吹出し空調システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明に係る床吹出し空調システムの構成を示す断面図を図1に示す。
図1に示されるように、床吹出し空調システム10は、オフィス用のビルディング等の建物1に設けられる。建物1は、上下方向に間隔をあけて複数の床スラブ2を有する。床スラブ2は、例えば鉄筋コンクリート等から形成され、上下方向に所定の厚さを有して水平面内に設けられている。
床スラブ2の上方には、上下方向に間隔をあけて、上階Faの床面を形成する床パネル3が設けられている。床パネル3は、床スラブ2上に立設された複数本の支柱4上に支持されている。これにより、建物1の各階には、床スラブ2と床パネル3とからなる二重床5が設けられている。床スラブ2の上側には、床スラブ2と床パネル3との間に、上階Faの床下空間Saが形成されている。
また、床スラブ2の下方には、上下方向に間隔をあけて、下階Fbの天井面を形成する天井パネル6が設けられている。天井パネル6は、床スラブ2の下面に設けられた複数の吊金具7の下端に支持されている。床スラブ2の下側には、床スラブ2と天井パネル6との間に、下階Fbの天井裏空間Sbが形成されている。
【0014】
床吹出し空調システム10は、空調装置(図示無し)と、空調ダクト21と、ベント装置11と、通風管25と、を主に備えている。
空調装置(図示無し)は、冷房運転、暖房運転等を実行し、所定の温度に調整された空調空気を、空調ダクト21に送り込む。空調ダクト21は、天井裏空間Sb内に設けられている。空調ダクト21は、例えば断面矩形の角管状で、床スラブ2の下面に、図示しない吊金具等を介して支持されている。空調ダクト21が配置された天井裏空間Sbは、配線レイアウト変更等のために度々作業が行われる可能性のある床下空間Saに比較すると、メンテナンス等の作業が行われる頻度が少ない。このため、空調ダクト21を天井裏空間Sb内に配置することで、床下空間Saに懐(空間)高さを低く抑えた床構造(特に、2重床構造)を設置でき、かつ床構造の改修作業も容易に行うことができる。
【0015】
図1の床吹出し空調システム10において、床スラブに設けられたベント装置を示す断面図を図2に示す。図2のI-I矢視断面図を図3に示す。図3のベント装置の扉が開いた状態(貫通孔を閉塞した状態)を示す断面図を図4に示す。図4のII-II矢視断面図を図5に示す。本実施形態においてベント装置が備えるアウター部材の斜視図を図6(a)に、平面図を図6(b)に示す。
図2図3に示されるように、ベント装置11は、床スラブ2を上下に貫通するよう形成された貫通孔2h内に設置されている。ベント装置11は、アウター部材12と、防火ダンパー13と、保温材14と、を備えている。
アウター部材12は、図6(a)に示すように上下方向に延びる円筒状の管部12aと、管部12aの上端部から半径方向外側に突出する円環状のつば部12bと、を一体に備えている。管部12aは、貫通孔2hの内径よりも所定寸法小さな外径を有し、貫通孔2h内に挿入されて床スラブ2を上下に貫通するよう設けられている。つば部12bは、貫通孔2hの内径よりも所定寸法大きな外径を有している。つば部12bは、その外周部を、貫通孔2hの半径方向外側で床スラブ2の上面に突き当て、ビス等の固定部材12cを、図6(a)、(b)に示されるつば部12bに形成された固定用孔12hを挿通させて、床スラブに固定されている。これにより、アウター部材12は、つば部12bが床スラブ2に係止されて設けられている。
【0016】
保温材14は、アウター部材12の管部12aの外側に設けられている。保温材14は、管部12aの外周面を周方向全体で覆うように設けられている。このような保温材14は、例えば、断熱性、耐熱性、耐燃性を有したロックウール等によって形成されている。保温材14は、管部12aの内側を通る空調空気の保温を図る。保温材14は、管部12aの外周面に予め装着しておくのが好ましい。
【0017】
防火ダンパー13は、アウター部材12の管部12aの内側に設けられている。防火ダンパー13は、上下方向に延びる円筒状のダンパーハウジング16と、ダンパーハウジング16内に設けられた扉17と、を備えている。
ダンパーハウジング16は、アウター部材12の管部12aの内側に挿入されている。ダンパーハウジング16とアウター部材12の管部12aとは、これらを径方向に、ダンパーハウジング16の内側から管部12aへ向けて貫通するビス16bによって連結されている。ダンパーハウジング16が内側からビス止めされることで、防火ダンパー13を容易に交換可能である。
扉17は、略半円形の扉板17aを二枚一対で備えている。二枚の扉板17aは、ダンパーハウジング16の中心を通って径方向に延びるよう設けられた支持軸17sを中心として回動可能に設けられている。二枚の扉板17aは、支持軸17sから上方に延びるように、互いに重ね合わせた状態で、温度ヒューズ18によって挟持されている。温度ヒューズ18は、雰囲気温度が予め定められた所定値以上となると溶融する。二枚の扉板17aは、図示しないスプリング等の付勢部材によって、互いに重ね合わせた状態から開く方向に付勢されている。
【0018】
図2図3に示されるように、防火ダンパー13は、通常時は、二枚の扉板17aが支持軸17sから上方に延びるように互いに重ね合わせた状態とされている。この状態で、ダンパーハウジング16内は、床スラブ2の上側の床下空間Saと床スラブ2の下側の天井裏空間Sbとが連通し、その内側を、空調ダクト21から通風管25を通して送り込まれる空調空気が通風可能となっている。
また、図4図5に示されるように、防火ダンパー13は、火災時に雰囲気温度が予め定められた所定値以上となると温度ヒューズ18が溶融し、二枚の扉板17aの挟持を解放する。温度ヒューズ18による挟持から解放された二枚の扉板17aは、付勢部材の付勢力によって支持軸17sを中心として開き、ダンパーハウジング16の内周面に設けられたストッパー部16sに突き当たる。二枚の扉板17aは、その外周部がストッパー部16sに突き当たって開いた状態で、ダンパーハウジング16内を遮蔽し、上階Faの床下空間Saと、下階Fbの天井裏空間Sbとを区画する。
【0019】
このような防火ダンパー13を有するベント装置11は、貫通孔2hに設けられたスリーブ部材15の内側に、上方から挿入することで設置されている。スリーブ部材15は、円筒状で、貫通孔2hの内周面に接するように設けられている。スリーブ部材15は、金属製のスパイラルダクト管からなり、アウター部材12の管部12a及び保温材14の外径よりも大きな内径を有している。スリーブ部材15は、床スラブ2を形成するコンクリートを打設する際に、コンクリート中に打ち込んで設けられている。
このように、貫通孔2h内の最外縁にスリーブ部材15を配置し、そのスリーブ部材15の内側にベント装置11を構成するアウター部材12を設けて、前記スリーブ部材15と前記アウター部材12との間に保温材14を配置する。貫通孔2h内の最外縁にスリーブ部材15を配置し、そのスリーブ部材15の内側に保温材14付きのベント装置11を設置することで、貫通孔2hのほぼ中央にベント装置11を確実に設置できる。また、ベント装置11は、外側にスリーブ部材15を配置した2重管構造とすることで、地震荷重に対する耐震強度を高めることができる。
また、防火ダンパー13のアウター部材12のつば部12b上には、飛散物の落下防止材19が設けられている。落下防止材19は、上下方向に延びる筒状のガード筒部19aと、ガード筒部19aの下端から径方向外側に広がる取付フランジ部19bと、を一体に備える。落下防止材19は、取付フランジ部19bを、アウター部材12のつば部12b上に設けたうえで、図6(a)、(b)に示されるつば部12bに形成された落下防止材固定用孔12iにビス19cを挿通させて、ビス19cを保温材14に固定することで設けられている。
【0020】
このようなベント装置11は、床スラブ2の複数個所に設けられている。図1に示されるように、各ベント装置11と空調ダクト21とは、通風管25を介して接続されている。通風管25は、蛇腹状でフレキシブル性を有し、その一端が空調ダクト21に設けられた分岐口21sに接続されている。通風管25の他端は、ベント装置11のアウター部材12の管部12aに接続されている。通風管25の外周面には、ロックウールの保温被覆材26が設けられている。保温被覆材26により、通風管25内を通る空調空気の保温が図られている。
【0021】
このような床吹出し空調システム10では、空調装置(図示無し)から吐出される空調空気が、空調ダクト21、通風管25を通して、ベント装置11の防火ダンパー13のダンパーハウジング16内に送り込まれる。ダンパーハウジング16内を通り抜けた空調空気は、床スラブ2の上側の床下空間Sa内に供給される。床下空間Sa内の空調空気は、床パネル3に形成された吹出口9を通り、床パネル3の上方の室内空間Scに送り込まれる。
また、火災発生時には、温度ヒューズ18が溶融することで二枚の扉板17aが開いてダンパーハウジング16内が上下に遮断される。これにより、ベント装置11の部分で、床スラブ2を挟んだ上階Faと下階Fbとが区画され、防火区画が形成される。
【0022】
以下に、上記床吹出し空調システムの作用効果を述べる。
床吹出し空調システム10は、下階Fbに空調ダクト21を備えた床吹出し空調システム10であって、床スラブ2の貫通孔2h内に設置されて、床スラブ2の下側から上側へ通風させる、防火ダンパー13を有するベント装置11と、ベント装置11に接続される空調ダクト21と、を備え、ベント装置11は、円筒状の管部12aと、管部12aの上端部から半径方向外側に突出するつば部12bを備え、つば部12bが床スラブ2に係止される。
このような構成によれば、床スラブ2に形成された貫通孔2h内に、防火ダンパー13を有するベント装置11を設けることで、床スラブ2の上側や下側に防火ダンパー13を設置することなく、上階Faと下階Fbとを区切る床スラブ2に防火区画を形成することができる。これにより、床スラブ2の上側の床下空間Saや、床スラブ2の下側の天井裏空間Sbにおいて、防火ダンパー13を設置するに際して、他の部材等との干渉を避ける必要も無く、ベント装置11の設置位置の自由度を高めることができる。また、防火ダンパー13が床スラブ2の上側や下側に突出することはなく、床下空間Saや天井裏空間Sbの有効利用や床上から床パネル3を外して容易にダンパー13周囲の空間やダンパー13本体のメンテナンスを行うことができる。したがって、防火ダンパー13を備えつつも設置自由度の高い、床吹出し空調システム10を提供することが可能となる。
また、ベント装置11の管部12aに設けられたつば部12bを床スラブ2に係止させることで、床スラブ2の貫通孔2h内にベント装置11の設置を容易かつ確実に行うことが可能となる。
【0023】
また、床吹出し空調システム10は、防火ダンパー13を有しており、当該防火ダンパー13は、管部12a内に設けられて火災時に管部12aを遮蔽する、板状の扉17を備え、管部12aの外周面に保温材14が設けられている。
このような構成によれば、火災発生時には、板状の扉17を閉じることで、防火区画(水平区画)を形成することができる。また、通常時は、板状の扉17を開くことで、空調装置から送り出される空調空気を、空調ダクト21及びベント装置11を通して床下空間Saに供給することができる。また、管部12aの外周面に保温材14が設けられることで、管部12aの内側を通る空調空気の保温を図ることができる。これにより、ベント装置11の部分において、空調空気の熱エネルギーが奪われるのを抑え、床吹出し空調システム10における空調効率を高めることが可能となる。
【0024】
また、床吹出し空調システム10は、つば部12bの上には、飛散物の落下防止材19が取り付けられている。
このような構成によれば、ベント装置11の管部12aに設けられたつば部12bの上に筒状のガード筒部19aを備えた落下防止材19を設けることで、床下空間Saを移動してくる飛散物を筒状のガード筒部19aで受け止めることが可能であり、床スラブ2の上側の床下空間Saからベント装置11内に、各種の作業時等に飛散物が侵入するのを防ぐことができる。
【0025】
なお、上記実施形態では、ベント装置11を構成するアウター部材12は、円筒状の管部12aと、当該管部12aの上端部から半径方向外側に突出する円環状のつば部12bとで形成されているが、つば部12bは、床スラブに係止できる形状であれば、図6(c)、(d)に斜視図と平面図を示すアウター部材12Aのように、円筒状の管部12aから連続する所定の間隔をあけて設けられた矩形板状材や棒状材12dであっても良い。
また、上記実施形態では、ベント装置11は、アウター部材12と、防火ダンパー13と、保温材14と、で構成されているが、建物によっては、保温材のないアウター部材12と、防火ダンパー13で構成されるベント装置11であっても良い。また、上記実施形態では、貫通孔2hの最外縁にスリーブ部材15を設置し、当該スリーブ部材15の内側に防火ダンパー13を有するベント装置11が設けられているが、スリーブ部材を設けることなく、貫通孔2h内にベント装置を設置しても良い。
また、上記実施形態では、落下防止材19は上部側が開放されているが、ベント装置の管部を覆うように小さな開口部を有する網材であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
2 床スラブ 17 扉
2h 貫通孔 19 落下防止材
10 床吹出し空調システム 21 空調ダクト
11 ベント装置 Fa 上階
12a 管部 Fb 下階
12b、12d つば部 Sa 床下空間
13 防火ダンパー Sb 天井裏空間
14 保温材
図1
図2
図3
図4
図5
図6