(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】フィン付きベース
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
(21)【出願番号】P 2018216104
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中里 典生
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-005673(JP,A)
【文献】特開平02-168697(JP,A)
【文献】特開2009-188387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィンベース部と、
前記フィンベース部に接続部を介して繋がるストレートフィンと、
前記ストレートフィンに沿って流れる冷媒の流れ方向を変更させる流れ変更部材と、を備え、
前記流れ変更部材は、前記フィンベース部から前記ストレートフィンの端部に近づく方向に形成され
さらに前記冷媒の流れ方向から見た場合、
前記接続部から離れかつ前記フィンベース
部に沿う方向を幅方向と、
前記接続部から前記ストレートフィンの端部に向かう方向を高さ方向と、定義し、
前記流れ変更部材は、前記幅方向及び前記高さ方向において、前記ストレートフィンに
遠い側が当該ストレートフィンに
近い側よりも前記流れ方向の奥側となるように形成されるフィン付きベース。
【請求項2】
請求項1に記載のフィン付きベースであって、
前記流れ変更部材は、前記ストレートフィンの前記端部の近傍を形成する頂面と接続されるフィン付きベース。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィン付きベースであって、
前記ストレートフィンは、前記冷媒の流れ方向の直角方向の断面形状において前記接続部が頂面より大きい台形となるように形成され、
前記流れ変更部材は、前記台形を形成する斜面と接触するフィン付きベース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィン付きベースに関し、特にパワー半導体モジュールの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱体である半導体素子を搭載したパワーモジュールの冷却装置が従来から知られている。パワーモジュールは、放熱用のベース板を備え、パワー半導体は当該ベース板上に配置される。パワー半導体の発生熱は、当該パワー半導体の一方の主面を介して、前述のベース板へ放熱される。また、前述のベース板には、パワー半導体の配置面とは反対側の面にフィンが形成され、当該フィンに冷却媒体が直接接触する。
【0003】
このようなパワーモジュールの冷却装置は、例えば特許文献1や特許文献2に示されている。特許文献1(特開2007-5673号公報)には、パワーモジュール用ヒートシンクの内部に設けられた冷媒流路内にコルゲートフィンが配設され、コルゲートフィンは冷却媒体の流通方向に波状のフィンとして形成され、ルーバを形成することにより旋回する流れをおこして攪拌し冷却効果を改善するものとして提案されている。
【0004】
特許文献2(特開2010-21311号公報)には、パワーモジュール用ヒートシンクの内部に設けられた冷媒流路内において冷媒流路を規定する複数のフィン間のフィン根本側のみに設けられ、流路の方向と交差方向に延び、冷却面からフィン先端に向かって突出する突起を備えることによって乱流板とし温度が高めになっている層流境界層の更新を促進させるものとして提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-5673号公報
【文献】特開2010-21311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、放熱性能をさらに向上するためには、とくにルーバ付近の流速を増大させて旋回効果を導き出さなくてはならず、ポンプ動力の増大が必要でポンプの消費電力量が増えてしまう。また、切り起こし加工によりルーバーを形成するとフィン面全域における熱の伝搬を阻害してしまい、フィン効率が低下してしまう。低流量下での放熱性確保に課題がある。
【0007】
特許文献2においては、放熱性をさらに向上するためには流速を上げて旋回流の大きさを確保する必要があり、ポンプ動力の増大となり、低流量下での放熱性確保に課題がある。
【0008】
本発明は、パワーモジュール用冷却装置において、冷却効率を向上させることを目的とする。
【0009】
しかし、更なる冷却性能の向上には、パワー半導体の放熱面積の拡大が求められる。パワー半導体の放熱面積の拡大は、パワーモジュールの構造の複雑化を招き、当該パワーモジュールの生産性の低下を惹き起こし、ひいては搭載されるシステムのコスト上昇の要因となる。また、バッテリー電源のみの電動車両においては、冷却媒体のポンプ動力は抑制方向にあり、さらに車両の小型軽量化に対応するために冷却装置の設置自由度が要求されている。搭載車両に合わせた、少量多品種対応で設置可能な冷却装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィン付きベースは、フィンベース部と、前記フィンベース部に接続部を介して繋がるストレートフィンと、前記ストレートフィンに沿って流れる冷媒の流れ方向を変更させる流れ変更部材と、を備え、前記流れ変更部材は、前記フィンベース部から前記ストレートフィンの端部に近づく方向に形成され、さらに前記冷媒の流れ方向から見た場合、前記接続部から離れかつ前記フィンベース部に沿う方向を幅方向と、前記接続部から前記ストレートフィンの端部に向かう方向を高さ方向と、定義し、前記流れ変更部材は、前記幅方向及び前記高さ方向において、前記ストレートフィンに遠い側が当該ストレートフィンに近い側よりも前記流れ方向の奥側となるように形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、低流速条件下においても流れ変更部材によって流路内にらせん状に旋回する流れが誘導され、攪拌作用により流路内における温度ムラを抑制し、放熱性能を向上させることができ、少量多品種生産に適した冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係るパワー半導体モジュールに用いられる冷却フィン構造1の外観斜視図である。
【
図2】比較例として、本実施形態の流れ変更部材3を除いた冷却フィン構造部の外観斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る冷却フィン構造1の冷却フィン構造1の上面図である。
【
図4】
図1の矢印D方向から見た冷却フィン構造1の側面図である。
【
図5(a)】本実施形態に係る冷却フィン構造1における冷媒の流れを示す外観斜視図である。
【
図5(b)】本実施形態に係る冷却フィン構造1における冷媒の流れを示す側面図である。
【
図6(a)】本実施形態に係る冷却フィン構造1における数値流体解析により推定した冷媒の流れを示す外観斜視図である。
【
図6(b)】本実施形態に係る冷却フィン構造1における数値流体解析により推定した冷媒の流れを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る冷却フィン構造の実施形態について説明する。なお、各図において同一要素については同一の符号を記し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本実施形態に係るパワー半導体モジュールに用いられる冷却フィン構造1の外観斜視図である。
図2は、比較例として、本実施形態の流れ変更部材3を除いた冷却フィン構造部の外観斜視図である。
図3は、本実施形態に係る冷却フィン構造1の冷却フィン構造1の上面図である。
図4は、
図1の矢印D方向から見た冷却フィン構造1の側面図である。
図1の矢印D方向は、冷媒の流入方向または流れ方向である。
【0015】
高温となるスイッチング素子を有するパワー半導体モジュールは、冷却フィン構造1の下面側に配置されるが省略される。
【0016】
図1に示されるように、ベース6の下面側からパワー半導体モジュールで発生した熱が伝播する。流路4は、ベース6の上面側に設けられる。ストレートフィン5は、接続部6Cを介してベース6に繋がる。さらにベース6からストレートフィン5に熱が伝搬され、冷媒に接して熱伝達により熱を放散する。フィン付ベース2は、ベース6とストレートフィン5とにより構成される。フィン付ベース2は、例えば、アルミ押し出し成型技術などで安価に製造可能である。
【0017】
図1に示されるように、流れ変更部材3は、ベース6からストレートフィン5の端部に近づく方向に形成される。
【0018】
さらに
図4に示されるように、接続部6Cから離れかつベース6に沿う方向を幅方向7と定義される。接続部6Cからストレートフィン5の端部に向かう方向を高さ方向8と定義される。
【0019】
そして
図1及び
図4に示されるように、流れ変更部材3は、幅方向7及び高さ方向8において、ストレートフィン5に
遠い側がストレートフィン5に
近い側よりも冷媒の流れ方向の奥側となるように形成される。
【0020】
ストレートフィン5およびベース6には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金が材料として用いられる。表面に腐食防止用としてNiめっき膜を形成することもある。
【0021】
流れ変更部材3には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金が材料として用いられる。表面に腐食防止用としてNiめっき膜を形成することもある。
【0022】
また流れ変更部材3は、ストレートフィン5の端部の近傍を形成する頂面と接続される。流れ変更部材3とストレートフィン5およびベース6との接続には、例えば、リボンボンディング技術の応用による超音波接合、レーザ溶接、プラズマ溶射、めっき成膜など方法があげられる。
【0023】
またストレートフィン5は、冷媒の流れ方向の直角方向の断面形状において、接続部6Cを形成する面が頂面より大きくなる台形となるように形成される。そして、流れ変更部材3は、当該台形を形成する斜面と接触するようにしてもよい。発生した温度境界層を剥離して境界層の更新を促進できる。
【0024】
さらに変更部材3は、当該台形を形成する斜面と接合あるいは接着することとしてもよい。流れ変更部材3に熱が伝搬して放熱面として寄与させることができる。
【0025】
さらに流れ変更部材3は、当該台形を形成する斜面近傍において屈曲形状を有することとよい。流れの誘導方向の制御性が向上できる。屈曲形状の形成は、例えば、リボンボンディング技術であれば、リボンのクランプ機構のタイミングを操作しながらクランパーを相対的に移動することでリボンの軌跡を形成して折り目や変曲点を形成することができる。また、レーザ溶接技術であれば、スポット溶接と送り出しを連動させることで実現できる。さらに流れ変更部材3における流れの誘導制御性を向上するために、流れ変更部材3の一部に切り込みや穴加工を前工程で実施したり、搭載する際に実施したりしてもよい。
【0026】
図5(a)は、本実施形態に係る冷却フィン構造1における冷媒の流れを示す外観斜視図である。
図5(b)は、本実施形態に係る冷却フィン構造1における冷媒の流れを示す側面図である。
図6(a)は、本実施形態に係る冷却フィン構造1における数値流体解析により推定した冷媒の流れを示す外観斜視図である。
図6(b)は、本実施形態に係る冷却フィン構造1における数値流体解析により推定した冷媒の流れを示す側面図である。
【0027】
図5(a)ないし及び
図6(b)に示されるように、低流速条件下においても流れ変更部材3によって流路内にらせん状に旋回する流れが誘導され、攪拌作用により流路内における温度ムラを抑制し、放熱性能を向上させることができ、少量多品種生産に適した冷却装置を提供することができる。
【0028】
本実施形態により、冷媒送液用ポンプの消費電力を抑えることが可能となり、バッテリー消耗を抑えつつ、パワーモジュールの性能向上に貢献できる。
【符号の説明】
【0029】
1…冷却フィン構造、2…フィン付ベース、3…流れ変更部材、4…流路、5…ストレートフィン、6…ベース、6C…接続部、7…幅方向、8…高さ方向