IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼロックス コーポレイションの特許一覧

特許7130530可変データ平版印刷システムのインク分離マルチロール清掃機
<>
  • 特許-可変データ平版印刷システムのインク分離マルチロール清掃機 図1
  • 特許-可変データ平版印刷システムのインク分離マルチロール清掃機 図2
  • 特許-可変データ平版印刷システムのインク分離マルチロール清掃機 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】可変データ平版印刷システムのインク分離マルチロール清掃機
(51)【国際特許分類】
   B41F 35/02 20060101AFI20220829BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20220829BHJP
   B41F 31/06 20060101ALI20220829BHJP
   B41F 7/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B41F35/02
B41M1/06
B41F31/06
B41F7/02 454
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018218952
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2019107886
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】15/847,010
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】チュ-ヘン・リウ
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-096533(JP,A)
【文献】特開2017-081157(JP,A)
【文献】特開2016-193615(JP,A)
【文献】特開2015-208995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 35/02
B41M 1/06
B41F 31/06
B41F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に再作像可能な作像面を有する作像部材と、
前記作像面に湿し溶液の層を塗布するための湿し溶液サブシステムと、
前記湿し溶液中に潜像を生成するように、前記湿し溶液層の一部を選択的に除去するためのパターニングサブシステムと、
インクが、前記パターニングサブシステムによって湿し溶液が除去された領域を選択的に占め、それによりインクが塗られた潜像を形成するように、前記作像面上に前記インクを塗布するためのインク塗りサブシステムと、
前記インクが塗られた潜像を基材に転写するための画像転写サブシステムと、
前記作像部材の前記表面から残留インクを除去するための清掃サブシステムと、を備え、前記清掃サブシステムが、
清掃ローラ列と、
前記残留インクを除去するために前記作像部材と物理的に接触し、平滑で薄いインク層を表面上に有する清掃部材と、
を備え、
前記平滑で薄いインク層と前記残留インクの間の凝着が前記作像部材から前記残留インクを除去するものであり、
前記平滑で薄いインク層が前記清掃部材の前記表面上で所定の厚さに維持されるように前記清掃部材と物理的に接触する移送部材、
をさらに備え、
前記清掃ローラ列が、清掃部材と、前記清掃部材と物理的に接触している前記移送部材と、回収部材とを含み、
前記移送部材のプロセス方向の下流に位置付けられ、かつ前記回収部材表面の前記残留インクを硬化させて硬化残留インクを生成するように構成されている粘度制御部をさらに含む、可変データ平版印刷システム。
【請求項2】
前記清掃部材が、平滑なロールおよび/または硬質ロールを含む、請求項1に記載の可変データ平版印刷システム。
【請求項3】
前記作像部材への前記残留インクの付着が、前記清掃部材での前記薄くて平滑なインク層への前記残留インクの凝着よりも少ない、請求項1に記載の可変データ平版印刷システム。
【請求項4】
前記清掃部材が、ローラである、請求項3に記載の可変データ平版印刷システム。
【請求項5】
前記回収部材が、消耗部品であり、かつ前記清掃ローラ列内に交換可能であるように配設されている、請求項1に記載の可変データ平版印刷システム。
【請求項6】
前記薄いインク層が前記清掃部材の前記表面部分上に残っている間に、前記移送部材が、前記清掃部材に接触し、そのような残留インクの第1の部分をそこから捕捉する、請求項3に記載の可変データ平版印刷システム。
【請求項7】
前記移送部材および/または前記回収部材を制御するための少なくとも1つのモータをさらに含む、請求項6に記載の可変データ平版印刷システム。
【請求項8】
前記回収部材が、前記移送部材の前記残留インクの前記捕捉された第1の部分を蓄積する、請求項7に記載の可変データ平版印刷システム。
【請求項9】
レオロジー制御サブシステムをさらに備える、請求項7に記載の可変データ平版印刷システム。
【請求項10】
前記回収部材が、前記移送部材の前記残留インクの前記捕捉された第1の部分を蓄積するために、前記移送部材に直接的に接触するように配置されている清掃ウェブである、請求項7に記載の可変データ平版印刷システム。
【請求項11】
可変データ平版印刷システムの作像部材の表面から残留インクを除去するための清掃サブシステムであって、
前記作像部材と物理的に接触し、表面上に平滑で薄いインク層を有する清掃部材を有する清掃ローラ列と、
前記平滑で薄いインク層が前記清掃部材の前記表面上で所定の厚さに維持されるように前記清掃部材と物理的に接触する移送部材と、を備え、
前記平滑で薄いインク層と前記残留インクの間の凝着が前記作像部材から前記残留インクを除去するものであり、
前記作像部材への前記残留インクの付着が、前記清掃部材での前記平滑で薄いインク層への前記残留インクの前記凝着よりも少なく、
前記清掃ローラ列が、前記清掃部材と物理的に接触している前記移送部材と、前記移送部材と物理的に接触している回収部材とを含み、
前記移送部材のプロセス方向の下流に位置付けられ、かつ前記回収部材表面の前記残留インクを硬化させて硬化残留インクを生成するように構成されている粘度制御部をさらに含む、清掃サブシステム。
【請求項12】
前記清掃部材および前記移送部材が、2つ以上のロールを含む、請求項11に記載の清掃サブシステム。
【請求項13】
前記回収部材が、前記移送部材に直接的に接触するように配置されている清掃ウェブである、請求項12に記載の清掃サブシステム。
【請求項14】
前記粘度制御部が、前記回収部材が前記移送部材に接触する前に、蓄積された残留インクの粘度を増加させるように構成された線源である、請求項11に記載の清掃サブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、インクベースのデジタル印刷システムに関し、より詳細には、作像部材から残留インクを除去するための清掃ローラ列を有する可変平版作像部材の清掃システムに関する。
【0002】
従来の平版印刷技術は、例えば、デジタル印刷システムによって可能になるように、印刷される画像が印象から印象に変化する真の高速可変データ印刷プロセスに対応することができない。しかしながら、平版印刷プロセスは、使用されるインクの品質および色域により、非常に高品質の印刷を提供するので、しばしば信頼される。平版インクは、他のインク、トナー、および他の多くのタイプの印刷材料またはマーキング材料よりも安価でもある。
【0003】
インクベースのデジタル印刷は、可変データ平版印刷システム、またはデジタルオフセット印刷システム、あるいはデジタル高度平版作像システムを使用する。「可変データ平版印刷システム」は、平版様インクを使用する平版印刷用に構成され、1つの画像から次の画像まで可変であり得るデジタル画像データに基づくシステムである。「可変データ平版印刷」、または「デジタルインクベースの印刷」、あるいは「デジタルオフセット印刷」、またはデジタル高度平版作像は、画像形成プロセスで基材上に画像を次々にレンダリングするときに変更可能である、基材上に画像を生成するための可変画像データの平版印刷である。
【0004】
例えば、デジタルオフセット印刷プロセスは、可変画像データによって湿し流体層で選択的に被覆されている、(例えば、フルオロシリコーン含有作像部材、作像表層、および印刷版などの)作像部材の一部上に線硬化性インクを転写することを含んでもよい。可変データ平版印刷と呼ばれる平版技術によれば、作像部材のパターン化されていない再作像可能な表面は、最初に湿し流体層で均一に被覆される。湿し流体の領域は、ポケットを形成するために集束された線源(例えば、レーザ光源)への露出によって除去される。これにより、湿し流体中の一時的なパターンが印刷版上に形成される。その上に塗布されたインクは、湿し流体の除去によって形成されたポケット内に保持される。次に、インクが塗られた表面は、転写ニップで基材と接触させられ、このインクは湿し流体層中のポケットから基材に転写される。次いで、湿し流体を除去し、湿し流体の新しい均一な層を印刷版に塗布し、このプロセスを繰り返す。
【0005】
デジタル印刷は、一般に、画像が、連続的に印刷された画像またはページの間で変化し得る可変データ平版印刷のシステムおよび方法を指すと理解されている。「可変データ平版印刷」または「インクベースのデジタル印刷」あるいは「デジタルオフセット印刷」は、一般に、複数の受像媒体基材上に画像を生成するための可変画像データの印刷を指す用語であり、これらの画像は、画像形成プロセスで受像媒体基材上に画像を次々にレンダリングするときに変更可能である。「可変データ平版印刷」は、特別に配合された平版インクを一般に使用するインク画像のオフセット印刷を含み、これらの画像は、例えば、再作像可能な表面を有する作像部材のサイクル間など画像間で変化し得るデジタル画像データに基づいている。
【0006】
デジタルオフセット印刷のインクは、システム構成要素の材料と互換性があり、一度しか印刷されず、その後リフレッシュされる画像を、作像部材の表面が支持する湿潤および転写を含むサブシステム構成要素の機能要件を満たす一方で、可変データ平版印刷プロセスによって課される、要求の厳しいレオロジー要件を満たさなければならないので、従来のインクとは異なる。作像部材が、その画像を印刷媒体または基材に転写するたびに、作像部材の表面上に残っているその画像のすべての履歴を消去して焼き付きを回避しなければならない。必然的に、転写ニップにおいてインクのフィルム分離が起こり、その結果、残留インクが残っているために印刷媒体への完全なインク転写を保証することができない。この問題は、デジタルオフセット印刷業界で長い間感じられている必要性であり、これらのシステムは、次の印刷画像の形成に先立って、転写ニップが作像部材の再作像可能な表面から転写後残留インクを連続的に除去した後に清掃サブシステムを必要とする。既知の清掃サブシステムは、清掃ウェブまたは清掃パッドでの拭き取り、ブレード掻き取り、および残留インクを除去するための化学的方法を使用することが知られている。しかしながら、これらの清掃サブシステムは、表層を清掃すること、または表層上の残留インクを除去することでは不十分である。加えて、化学的方法は、化学廃棄物では非常に複雑である傾向があり、堅牢な清掃サブシステムとしてのそれらの実現可能性をいまだ示していない。
【0007】
本発明者は、慎重な実験的試験および材料分析により、より効率的かつ効果的な残留インク除去のための特定の材料およびシステムレイアウトの指標を見出し、規定した。
【0008】
可変データ平版印刷システム用の清掃サブシステムは、作像部材から基材へのインクが塗られた潜像の転写後のような作像部材上に残留する残留インクを、凝縮性により清掃部材に付着させ、それにより作像部材から除去されるようにした作像部材と物理的に接触する清掃部材を有する清掃ローラ列を含む。清掃ローラ列は、インク分離機構を使用してインク廃棄物を除去し、移送し、回収する。この清掃ローラ列の重要な構成要素は、凝着により残留インクを除去させる、作像部材に接触させる清掃部材上の薄くて均一なインク層である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
開示されたシステムおよび方法の様々な例示的な実施形態を、以下の図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1】一実施形態によるコントローラを備えた関連技術の可変平版印刷システムの側面図である。
図2】一実施形態による、粘度制御部と共に使用可能なローラベースの清掃ステーションを備えた可変平版印刷システムの側面図である。
図3】一実施形態による、複数の部材および廃棄物回収ウェブを含むローラベースの清掃ステーションを備えた可変平版印刷システムを示す。
【0011】
例示的な実施形態は、以下に記載される組成物、方法、およびシステムの精神および範囲内に含まれ得る代替物、改変物、および等価物を包含することを意図する。
【0012】
一態様では、可変データ平版印刷システムであって、任意に再作像可能な作像面を有する作像部材と、この作像面に湿し溶液の層を塗布するための湿し溶液サブシステムと、湿し溶液中に潜像を生成するように、湿し溶液層の一部を選択的に除去するためのパターニングサブシステムと、インクが、パターニングサブシステムによって湿し溶液が除去された領域を選択的に占め、それによりインクが塗られた潜像を形成するように、作像面上にインクを塗布するためのインク塗りサブシステムと、インクが塗られた潜像を基材に転写するための画像転写サブシステムと、作像部材の表面から残留インクを除去するための清掃サブシステムと、を備え、この清掃サブシステムは、画像転写サブシステムで基材にインクが塗られた潜像を転写した後、作像部材上に残留する残留インクが清掃部材に付着するように、作像部材と物理的に接触している、表面上に平滑で薄いインク層を有する清掃部材を有する清掃ローラ列を備える。
【0013】
別の態様では、清掃ローラ列は、清掃部材と、清掃部材と物理的に接触する移送部材と、回収部材とを含む。
【0014】
別の態様では、清掃部材は、平滑なロールおよび/または硬いロールを含む。
【0015】
別の態様では、作像部材への残留インクの付着は、清掃部材での薄く平滑なインク層への残留インクの凝着よりも少ない。
【0016】
別の態様では、清掃部材はローラである。
【0017】
さらに別の態様では、清掃部材は消耗部品であり、清掃ローラ列内に容易に交換可能であるように配設されている。
【0018】
別の態様では、薄いインク層が清掃部材の表面部分上に残っている間に、移送部材が清掃部材に接触してそのような残留インクの第1の部分をそこから捕捉する。
【0019】
別の態様では、清掃部材の表面上の薄いインク層は、移送部材によって所定の厚さに維持されている。
【0020】
別の態様では、移送部材および/または回収部材を独立して制御するための少なくとも1つのモータをさらに含む。
【0021】
さらに別の態様では、回収部材は、捕捉された残留インクの第1の部分を移送部材に蓄積する。
【0022】
さらに別の態様では、レオロジー改質剤をさらに含む。
【0023】
さらに別の態様では、レオロジー改質剤は、回収部材が移送部材に接触する前に、蓄積された残留インクの粘度を増加させるように構成された線源である。
【0024】
別の態様では、回収部材は、移送部材に直接的に接触して、移送部材で捕捉された残留インクの第1の部分を蓄積するように並進可能であり、かつ配置されている清掃ウェブである。
【0025】
さらなる態様では、残留インクを可変データ平版印刷システムの作像部材の表面から除去するための清掃サブシステムは、基材へのインクが塗られた潜像の転写後、作像部材上に残留する残留インクを清掃部材に付着させるように、作像部材と物理的に接触するその表面上に平滑で薄いインク層を備えた清掃部材を有する清掃ローラ列を含み、作像部材への残留インクの付着は、清掃部材での薄くて平滑なインク層への残留インクの凝着よりも少ない。
【0026】
任意の量または特徴に関連して使用されるとき、「約」および/または「実質的に」という修飾語は、任意の記載された値を含み、文脈によって必要とされる意味を有するものと意図される。例えば、これらの修飾語は、特定の文脈で妥当であると考えられる任意の測定値または特徴に関連する少なくとも誤差の度合いを含めるために使用されてもよい。特定の値で使用するとき、「約」という修飾語の使用はまた、その特定の値を開示するものと見なすべきである。
【0027】
「湿し流体」、「湿し溶液」、または「湿し水」という用語は、一般に、表面エネルギーの変化をもたらす流体などの物質を指す。溶液または流体は、水蒸気によって、または部材を湿し流体で均一に濡らすための一連のローラを通る作像部材との直接的な接触によってなど、空中を浮遊する状態で一般に適用される水または水性の湿し水であってもよい。溶液または流体は、例えばシリコーン流体(D3、D4、D5、OS10、OS20など)、およびポリフッ素化エーテルまたはフッ素化シリコーン流体からなる非水性であってもよい。
【0028】
本発明の実施形態はこの点に限定されないが、本明細書で使用する「複数」および「複数」という用語は、例えば「複数」または「2つ以上」を含んでもよい。「複数」または「複数」という用語は、2つ以上の構成要素、装置、要素、部、パラメータなどを記述するために明細書全体にわたって使用されてもよい。例えば、「複数のローラ」は、2つ以上のローラを含むことができる。
【0029】
「プリント基材」または「基材」という用語は、一般に、プレカットまたはウェブのいずれかで供給される、通常フレキシブルで、時にはカールした物理的な紙シート、マイラー材料、プラスチック、または画像用の他の適切な物理的な基材を指す。
【0030】
本明細書で使用されるように、「プロセッサ」という用語は、本明細書で説明される様々な機能を実行するために、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされ得る1つ以上のマイクロプロセッサを用いるコントローラの一例である。コントローラは、プロセッサを用いて、または用いずに実装することができ、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つまたは複数のプログラムされたマイクロプロセッサおよび関連回路)の組み合わせとして実装されてもよい。本開示の様々な実施形態で用いられ得るコントローラの構成要素例には、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むが、これらに限定されない。プロセッサは、そこに格納されたコンピュータ実行可能命令またはデータ構造を実行することができる。
【0031】
可変データデジタル平版(VDDL)画像形成またはVDDL印刷は、作像部材の特殊な再作像可能な表面形状が、画像形成スキームを実施する装置システムの各作像サイクルで画像が変更可能である/変更される平版画像形成動作をもたらすために設けられている、および/または各インクが塗られた画像が形成され、転写ニップを通過して、再作像可能な表面から受像媒体基材に、または画像受容媒体基材へのさらなる転写のための中間転写またはオフセット成分に転写されるにつれて、独自のクラスの画像形成動作を対象とする用語である。VDDLでは、部材上に画像を形成するための領域は、作像スキームに基づいて任意に選択または設置することができる。
【0032】
図1に示すように、例示的なシステム100は、作像部材110を含むことができる。図1に示す実施形態の作像部材110は、ドラムとして描かれているが、そのような装置の実施形態が必ずしもドラム型作像部材を含むことに限定されていることを意図するものではない。例示的なシステム100の作像部材110は、インクが塗られた画像を、転写ニップ112で目標受像媒体基材114に適用するために使用される。転写ニップ112は、画像転写機構160の一部として、作像部材110の方向に圧力を加える印象ローラ118によって生成される。
【0033】
例示的なシステム100は、広範囲の受像媒体基材114上に画像を生成するために使用されてもよい。異なるカラーインクを製造するために溶液中に懸濁された色素材の濃度を増加させることは、一般に、画質および彩度を増加させることが理解される。しかしながら、これらの増加した濃度は、例えば、打ち込まれたインク画像形成用途を含む可変データデジタル平版画像形成を容易にするために従来使用されている特定の画像形成用途において、そのようなインクの使用で、しばしば重要な制約、または完全な除外さえももたらす。例示的なシステム100の開発をもたらし、最適な結果を達成するための広範な実験を継続する可変データデジタル平版画像形成システムにおいて、高められた画像品質を撮像することが望まれている。
【0034】
上述したように、作像部材110は、例えば、円筒形のコア、または円筒形のコア上の1つ以上の構造層であってもよい構造的取付層の上に形成された再作像可能な表面(層またはプレート)からなり得る。湿し溶液サブシステム120は、一般に、作像部材110の再作像可能な表面を、一般に均一な厚さを有する湿し流体または湿し水の層で均一に濡らすための湿しローラまたは湿し部とみなすことができる一連のローラを備えて設けられ得る。湿し流体または湿し水が再作像可能な表面上に計量されると、湿し流体または湿し水の層の厚さは、湿し流体または湿し水の計量を制御するためのフィードバック(コントローラ300)を再作像可能な表面上に提供するセンサ125を使用して測定することができる。
【0035】
コントローラ300は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、埋め込みプロセッサ、ハンドヘルド通信装置、または別のタイプの計算装置などのような装置内で実施することができる。コントローラ300には、メモリ、プロセッサ、入力/出力装置、ディスプレイ、およびバスを含むことができる。バスは、コントローラ300または計算装置の構成要素間の信号の通信および転送を可能にすることができる。
【0036】
光学パターニングサブシステム130は、例えばレーザエネルギーを使用して湿し流体層を画像式パターニングすることによって、均一な湿し流体内に潜像を選択的に形成するために使用されてもよい。作像部材110の再作像可能な表面を、再作像可能な表面の近くの光学パターニングサブシステム130から放出されるレーザエネルギーの大部分を理想的に吸収すべき材料から形成することが有利である。このような材料の再作像可能な表面を形成することは、有利には、湿し流体を加熱する際に浪費されるエネルギーを実質的に最小限に抑え、同時に高い空間解像度能力を維持するために熱の横方向の広がりを最小限に抑えるのを助ける。簡単に説明すると、光学パターニングサブシステム130からの光学パターニングエネルギーの適用は、潜像を生成する方法で均一な湿し流体層の一部を選択的に蒸発させる。よく理解されるように、そのような選択的な蒸発は、湿し流体を通して、かつ少なくとも再作像可能な表面で、300°Fを超える温度への局部加熱をもたらす比較的強い光学エネルギーの目的の用途を必要とする。
【0037】
作像部材110の再作像可能な表面上に潜像を含む湿し流体のパターン化された層は、次に、インク塗り機サブシステム140に提示または導入される。インク塗り機サブシステム140は、湿し流体および再作像可能な表面のパターン化された層の上に均一なインク層を塗布するために使用可能である。実施形態では、インク塗り機サブシステム140は、アニロックスローラを使用して、再作像可能な表面と接触している1つ以上のインク形成ローラ上にインクを計量することができる。他の実施形態では、インク塗り機サブシステム140には、再作像可能な表面へのインクの正確な供給速度を提供する一連の計量ローラなどの他の従来の要素を含むことができる。インク塗り機サブシステム140は、再作像可能な表面の作像された部分を表すポケットにインクを堆積させることができ、一方、湿し液体層の未フォーマット部分に堆積したインクはそれらの部分に付着しない。
【0038】
再作像可能な表面上に存在するインクの凝着性および粘度は、レオロジー制御サブシステム150の何らかの方法の使用を含む複数の機構によって改質することができる。実施形態では、レオロジー制御サブシステム150は、例えば、インクと再作像可能な表面との間の付着強度に対するインク凝着強度を高めるために、再作像可能な表面上にインクの部分的な架橋コアを形成することができる。実施形態では、例えば、光学硬化または光硬化、熱硬化、乾燥、または様々な形態の化学硬化を含むことができる特定の硬化機構を採用することができる。冷却は、複数の物理的、機械的、または化学的冷却機構を介して、転写されたインクのレオロジーを改質するために使用されてもよい。
【0039】
基材のマーキングは、転写サブシステム160を使用して、インクが再作像可能な表面から画像受容媒体114の基材に転写されるときに生じる。レオロジー制御システム150によって改質されたインクの付着および/または凝着により、インクは、転写ニップ112で再作像可能な表面から分離する際に基材114に実質的に完全に優先的に付着する。転写ニップ112での温度および圧力条件の慎重な制御は、インクのレオロジー調節と組み合わせて、再作像可能な表面から基材114へのインクの転写効率が95%を超えるようにすることができる。若干の湿し流体が基材114を濡らす可能性もあるが、このような移動した湿し流体の量は、基材114によって急速に蒸発させるか、さもなければ吸収されるように、一般に最小限となっている。
【0040】
最後に、再作像可能な表面からの未転写残留インクおよび/または残留湿し溶液を含む残留生成物を除去するために、例示的なシステム100での可変データデジタル平版画像形成動作における画像転写に上記サイクルを繰り返すために、再作像可能な表面を準備し、調整するように意図された方法で、清掃サブシステムまたは清掃システム170が設けられている。清掃システム170は、複数のロールまたは表面からなり、組み合わせて清掃インク列としての機能を果たす。清掃表面は、残ったインクを表層110から引き離す。動作中、この表面は表層110と接触する前に完全にきれいな状態である必要はない。清掃インク列の最後の表面は、インク廃棄物が処分されるまで蓄積する回収表面である。インク分離機構を通る真ん中の1つ以上のローラ/表面が清掃表面のインク層を平滑にし、表層(入力)から回収部材(出力)にインクを移送する。
【0041】
作像部材110の再作像可能な表面は、(1)湿し流体または湿し水の表面湿潤および表面ピンニング、(2)レーザまたは他の光学パターニング装置からの光学的放射を効率的に吸収すること、(3)再作像可能な表面の離散的に作像された領域内のインクを濡らし、ピニングすること、および(4)好ましくは95%を超える効率でインクを放出させることを含む、しばしば競合する要件の範囲を満たさなければならない。インクの放出は、受像媒体基材114への最高レベルのインク転写効率を促進して、高品質画像を生成し、廃棄物を制限し、かつ転写ニップ112の出口で実質的にきれいな作像表面をもたらすことにより下流にある清掃システムの負担を最小限に抑えるように制御される。
【0042】
作像部材の再作像可能な表面は、広範かつ継続的な実験を通して、図1の例示された様式で示されたようなシステムに従って効果が発揮されるインクベースの可変データデジタル平版印刷プロセスのステップを有利に支持すると決定される材料で形成される。上述したように、このような再作像可能な表面は、例えば、先に述べた理由によりシリコーンおよびフルオロシリコーンエラストマーで形成することができる。
【0043】
図1に示す例に従って実質的に構成されている画像形成システムを用いる独自の可変データデジタル平版画像形成プロセスは、高品質のデジタル平版印刷を高速で可能にするために、特にインク供給サブシステムおよび作像サブシステムを含む異なるサブシステムに適合するように特別に設計され、最適化されたオフセットタイプのインクを必要とする。
【0044】
図面を参照して、アニロックスローラインク塗りサブシステムを含むインク塗サブシステム、および画像システム、特に、その構成が図1に例として示されている可変データデジタル平版画像形成システム内の作像構成要素の再作像可能な表面または他の表面と相互作用するための開示されたインクの例示的、物理的用途の理解に適応する。
【0045】
開示された実施形態は、作像部材110でインク廃棄物または残留インクを除去、移送および回収するために主にインク分離機構を使用する清掃機を提案する。設計の性質上、可変データデジタル平版印刷インクは、インク分離機構に完全に適している。インク分離の重要な構成要素は、表層110と接触する第1の表面上に薄いが均一なインク層を保持することであり、凝着力はインクを表層から清掃インク列の部材の薄層上に引っ張る。
【0046】
図2は、一実施形態による、粘度制御部と共に使用可能なローラベースの清掃ステーションを備えた可変平版印刷システムの側面図である。清掃サブシステム170または清掃ローラ列は、清掃部材171、移送部材173、回収部材175、およびオプションのレオロジー剤、または粘度制御部178および部材に作用するモータを含む。これらの部材、特に回収部材は、消耗部品とすることができ、清掃ローラ列170内に容易に交換可能に配設することができる。
【0047】
清掃ローラ列を形成する部材は、硬いまたは柔らかいロールから選択することができ、ポリエステルなどのプラスチック、規則的で平滑なゴム、アルミニウム、ステンレススチールおよびクロムロールなどの金属ローラ、ならびにウェブまたはカートリッジなどの可撓性コーティング基材または非コーティング基材から製造することができる。
【0048】
清掃部材171は初期清掃動作を行う。清掃部材171の表面は、画像転写サブシステム160で基材にインクが塗られた潜像を転写した後、作像部材上に残留する残留インク210が清掃部材171に付着するように、作像部材110と物理的に接触している。この動作の重要な特徴は、清掃部材171が、その表面上に薄くて平滑なインク層172を有するVDDL表層110と接触している215ことである。正常な動作では、表面は決してきれいに、すなわちインクがない状態にはならない。この動作は、清掃部材171へのインクの付着およびインクの凝着が表層110へのインクの付着よりも著しく大きいという原理に基づいている。接触点215から離れると、もともと清掃表面上にあったすべてのインクおよび表層110上の残留インクが清掃表面上に留まることになる。凝着引っ張り力を維持するために、清掃部材171上のインク層172は、清掃部材の表面上の0.25μm~3.00μmの範囲内の所定の厚さ(Δ)に維持される。実験的に最良の性能のために、清掃部材171の表面上の所定の厚さは、1μmをわずかに上回り、通過回数に基づいて変化することが判明した。
【0049】
良好な清掃性能を維持するために、このインク層172は平滑でなければならず、さもなければ、濃いインクの局所的なスポットがオフセットし、インクを表層に逆転写する。
【0050】
移送部材173は、清掃部材上の薄層172を清掃し、平滑にする機能を果たす。移送部材173は、清掃表面が平滑であり、清掃表面上のインク層172が約1μmで所定の厚さ(Δ)を超えるレベルまで増加しないことを保証する。繰り返されるインク分離により、オプションの振動運動モータ220(ロールがプロセス横断方向に移動する)により、インク層は平滑になる。
【0051】
VDDL印刷または清掃インク列170の協働部材の動きの間に、清掃部材171上のインク膜(層172)は、例えば、スジ、谷、溝、山または隆起を示す不均一になり得、したがって、清掃部材171上の不均一なインク膜は、移送部材173の表面部分によって加えられる力の圧力下で平滑化される。この圧力は、コントローラ300のような調整装置の制御下で、ばね、カム、およびモータ220の使用によって調節することができる。移送部材173は、モータ220の案内によって軸方向に往復動するので、清掃部材173上のインク膜のあらゆる凹凸は平滑になり、かつ均一になる。部材の圧力は、移送部材173が清掃部材からインクを搾り取らないように調節されるべきである。したがって、清掃部材171には、均一な厚さのインクがその上に塗布される。
【0052】
インクの移送は、清掃部材および移送部材によって形成された第1のニップと(N)移送部材および回収部材によって形成された第2のニップ(N)との間の同等のインク厚勾配によって促進される。簡単な方法で説明すると、移送部材173上のインク厚は、移送部材173の上部の第1のニップから出て来るほど厚くなり、移送部材の第2のニップの底部から出て来るほど薄くなる。
【0053】
インク分離は、NおよびNのようなニップの出口でのインクの質量再分布に至らせる主要な物理学である。通常、インクは出口で半分(50/50)に分離される。しかしながら、インク粘度がNおよびNのようなニップ領域での厚さにわたって均一でない場合、より多くのインクがより高い粘度の側にとどまる。粘度の差は、レオロジー剤、または熱の形態をとり得る粘度制御部の注意深い位置決め、あるいは残留インクの化学組成または物理条件の変化によって製造され得る。
【0054】
回収部材175の機能は、移送部材によって清掃部材から捕捉された残留インク、すなわち廃棄物を回収表面に蓄積することである。この蓄積動作の鍵は、回収されたインクが移送部材173に戻ることを防止することである。インクを徐々に硬くさせる(粘度を増加させる)ために、回収部材上のインク廃棄物への微弱な紫外線露光のような粘度制御部を使用する。これは、所望の方向へのインク移送に好都合である非対称インク分離状況を作り出す。その結果、インクは、移送部材173上に低レベルのインクを維持しつつ、移送部材173から回収部材へと移動し、清掃部材171から移送部材173へのインク転写をさらに促進する。微弱な紫外線露光は、「X」回のサイクルごとに1回転などの選択された間隔で適用することができる。20回の通過ごと1回の低い紫外線量が、インクが移送部材173上に戻るのを防ぐのに有効であると判断されている。
【0055】
図2に示す粘度制御部178は、さらに徹底した1回の通過清掃を促進する状態に残留インクを重合させるために、回収部材の表面上の残留インクをある量の紫外光(例えば、光子放射線の数)に露光する紫外線硬化ランプ(例えば、標準的なレーザ、紫外線レーザ、高出力紫外線LED光源)を有する紫外線露光ステーションである。硬くなった残留インクはもはや分離されない。つまり、回収部材の表面上に留まるか完全に除去される。残留インクを硬くするのに十分な紫外光線量のレベルは、インク処方物(例えば、紫外線光開始剤のタイプ、濃度)、紫外線ランプスペクトル、VDDL処理速度、および回収部材175の表面上の残留インクの量などのいくつかの要因によって決まり得る。部材175は、消耗部品とすることができ、清掃ローラ列170内に容易に交換可能に配設することができる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上述した第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略することに留意されたい。
【0057】
図3は、一実施形態による、複数の部材および廃棄物回収ウェブを含むローラベースの清掃ステーションを備えた可変平版印刷システムを示す。
【0058】
図3の図示された実施形態では、性能を向上させるためにより多くのロールが使用される。この清掃ローラ列170は、インク廃棄物の急増、極端な画像の不均一性などのより多くの非常事態に対応することができる。加えて、ウェブ清掃システム310または廃棄物回収ウェブは、廃棄物回収のために提案されて、消耗品の交換間隔を増加させる。ウェブ清掃システム310の動作中、供給カートリッジおよび巻取りカートリッジは、ウェブを移送部材173cおよび回収部材175と物理的に接触させて、残留インクをコーティングされた紙などのウェブ材料に転写させる。この構成では、ウェブは、そのウェブ表面上に十分な廃棄物を回収する前に、複数のサイクルで使用される。
【0059】
開示された実施形態の利点は、デジタル平版印刷に使用される従来の清掃システムと比較して、作像部材110または他の部材を清掃するためのせん断応力の使用が必要とされないことである。上述したように、掻き取り、拭き取り、ブレードなどのせん断の清掃方法は、作像部材を完全に清掃することができず、使用可能な表面に限定される。開示された清掃インク列170はまた、表層から紙粉を除去もする。この清掃システムの堅牢性は、複数回の実行によって証明された。
図1
図2
図3