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  • 特許-試料保持具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】試料保持具
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018225130
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020088327
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 剛
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-354473(JP,A)
【文献】特開2002-246160(JP,A)
【文献】特開2013-055089(JP,A)
【文献】特表2001-525997(JP,A)
【文献】特開2004-296532(JP,A)
【文献】特開2002-043399(JP,A)
【文献】特開2002-151406(JP,A)
【文献】特開2004-327079(JP,A)
【文献】特開2006-231784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状のセラミック体と、
該セラミック体の内部または一方の主面に位置する発熱抵抗体と、
前記セラミック体の前記一方の主面に対向して位置するベースプレートと、
該ベースプレートに固定され前記セラミック体を支持する支持部材と、
前記ベースプレートに固定された複数の支持ピンと、を備えており、
前記セラミック体は、前記支持ピンが挿入される貫通孔を複数有しており、
該貫通孔
前記セラミック体の径方向に伸びた形状であり、
前記セラミック体の中心側に、前記支持ピンの中心と前記セラミック体の中心を結ぶ直線に垂直な直線部と、該直線部に続く両側に丸みを帯びた角部とを有し、
前記セラミック体の平面視において、前記セラミック体の中心に対して点対称に位置している部分を有することを特徴とする試料保持具。
【請求項2】
円板状のセラミック体と、
該セラミック体の内部または一方の主面に位置する発熱抵抗体と、
前記セラミック体の前記一方の主面に対向して位置するベースプレートと、
該ベースプレートに固定され前記セラミック体を支持する支持部材と、
前記支持部材に固定された複数の支持ピンと、を備えており、
前記セラミック体は、前記支持ピンが挿入される貫通孔を複数有しており、
該貫通孔
前記セラミック体の径方向に伸びた形状であり、
前記セラミック体の中心側に、前記支持ピンの中心と前記セラミック体の中心を結ぶ直線に垂直な直線部と、該直線部に続く両側に丸みを帯びた角部とを有し、
前記セラミック体の平面視において、前記セラミック体の中心に対して点対称に位置している部分を有することを特徴とする試料保持具。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記セラミック体の側面に開口する切り欠きであることを特徴とする請求項1または2に記載の試料保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体集積回路の製造工程または液晶表示装置の製造工程等において用いられる、半導体ウエハ等の試料を保持する試料保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の試料を保持する試料保持具として、半導体集積回路の製造工程等においては、その上側のウエハ等の載置面(本開示では、他方の主面という)に、断熱性と熱の拡散・均一性に優れた円板状のセラミックス製の平板(以下、セラミック体)を使用した試料保持具が用いられる(特許文献1を参照)。
【0003】
この円板状のセラミック体は、その底面である下側の主面(一方の主面)側に立ち並ぶよう配置された、支柱となる柱状の支持部材を介して、該セラミック体から距離を空けた下方に位置する、ベースプレートと呼ばれる金属製の基板または基体、基台等に支持・支承されている。
【0004】
そして、前述の円板状のセラミック体は、その外周縁部または縁部近傍に形成された貫通孔に挿通された、ねじ状もしくはボルト状の支持ピンを用いて、ネジ穴またはナット穴を有する前述の支持部材に固定されるか、あるいは、この支持部材の中に設けられた貫通穴を通して前記ベースプレートに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-141399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述の半導体ウエハ等の試料保持具は、製造工程において繰り返し使用されるため、経時で何度も、加熱と冷却(放冷)とが繰り返される。そのため、セラミックス製のセラミック体と、それを固定・支持する金属製のベースプレートとの線膨張係数(熱膨張率)の差に起因して、セラミック体が反ったり、セラミック体にひび割れや亀裂・欠け等の損傷が発生したりする場合がある。
【0007】
特に、セラミック体を固定するための貫通孔周りには、支持ピンを介して、ベースプレートの伸び縮みによる応力が加わるため、支持ピンに押される開口縁部の一部において、そこを始点(起点)とする亀裂等が発生する可能性がある。このような亀裂等が発生すると、試料保持具は使い続けることができず、セラミック体もしくは試料保持具全体を交換する必要が生じる。
【0008】
本開示の目的は、長期にわたり使い続けることのできる試料保持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の試料保持具は、円板状のセラミック体と、該セラミック体の内部または一方の主面に位置する発熱抵抗体と、前記セラミック体の前記一方の主面に対向して位置するベースプレートと、該ベースプレートに固定され前記セラミック体を支持する支持部材と、前記ベースプレートに固定される複数の支持ピンと、を備えており、
前記セラミック体は、前記支持ピンが挿入される貫通孔を複数有しており、
該貫通孔
前記セラミック体の径方向に伸びた形状であり、
前記セラミック体の中心側に、前記支持ピンの中心と前記セラミック体の中心を結ぶ直線に垂直な直線部と、該直線部に続く両側に丸みを帯びた角部とを有し、
前記セラミック体の平面視において、前記セラミック体の中心に対して点対称に位置している部分を有することを特徴とする。
【0010】
また、本開示の試料保持具は、円板状のセラミック体と、該セラミック体の内部または一方の主面に位置する発熱抵抗体と、前記セラミック体の前記一方の主面に対向して位置するベースプレートと、該ベースプレートに固定され前記セラミック体を支持する支持部材と、前記支持部材に固定された複数の支持ピンと、を備えており、
前記セラミック体は、前記支持ピンが挿入される貫通孔を複数有しており、
該貫通孔
前記セラミック体の径方向に伸びた形状であり、
前記セラミック体の中心側に、前記支持ピンの中心と前記セラミック体の中心を結ぶ直線に垂直な直線部と、該直線部に続く両側に丸みを帯びた角部とを有し、
前記セラミック体の平面視において、前記セラミック体の中心に対して点対称に位置している部分を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、固定用の貫通孔を始点とする亀裂や損傷等の発生が抑制される。したがって、同一構成で長期にわたり使い続けることのできる、低ランニングコストの試料保持具とすることができる。また、その結果、製造工程全体のコストダウンに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は第1実施形態の試料保持具を側方から見た断面図であり、(b)は第2実施形態の試料保持具の断面図である。
図2】(a)は第1,第2実施形態の試料保持具のセラミック体を上方から見下ろした平面図、(b)はセラミック体に形成されたピン挿通用の貫通孔の開口形状を示す平面図であり、(c)は参考として従来の貫通孔の開口形状を示す平面図である。
図3】第3実施形態の試料保持具を側方から見た端面図である。
図4】(a)は第3実施形態の試料保持具のセラミック体の平面図であり、(b),(c),(d)はそれぞれ、セラミック体に形成されたピン挿通用の切り欠きの形状例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態の試料保持具について、図面を参照しつつ説明する。なお、図2(c)に示す従来の貫通孔の開口形状の例は、参考例であって本開示のものではない。
【0014】
以下で説明する第1実施形態〔図1(a)〕と第2実施形態〔図1(b)〕および第3実施形態(図3)の試料保持具10,20,30は、試料を載置可能な保持面1aを含むセラミック体1と、試料を加熱・昇温させるための発熱抵抗体2と、セラミック体1を位置決めして支承する基台であるベースプレート3とを備える。
【0015】
また、試料保持具10,30は、各部材間の連結のために、図1(a)および図3に示すように、セラミック体1をベースプレート3に対して距離を開けて支持・懸架する筒(スリーブ)状の支持部材4Aと、支持部材4Aに支持されたセラミック体1を、ベースプレート3に対して固定するためのボルト様の支持ピン5Aとを備える。支持ピン5Aは、それを締結固定するナット部材5bとばね部材5cとを含んでいてもよい。
【0016】
なお、セラミック体1とベースプレート3との連結・接続は、別の構成としてもよい。たとえば、第2実施形態の試料保持具20においては、図1(b)に示すように、上述の支持ピンは、ボルト様の1本の支持ピン5Aに代えて、間隔を空けて上下に配置された2本のねじ状の支持ピン6A,6Bで構成されている。
【0017】
また、試料保持具20の支持部材は、貫通穴を有するスリーブ状の支持部材4Aに代えて、上下にネジ穴を有する柱状の支持部材4Bが配設されている。この構成によっても、試料保持具20は、ねじ状の支持ピン6A,6Bを、柱状の支持部材4Bの上下に締結固定することにより、試料保持具10,30と同様、セラミック体1を、ベースプレート3に対向して距離を開けた状態で固定することができる。
【0018】
なお、前述の試料保持具10,30と、上述の試料保持具20とは、試料保持具の機能や動作、あるいは、セラミック体1およびベースプレート3の動きや伸縮挙動において差異がないことから、以降は、試料保持具10を用いた第1実施形態と、試料保持具30を用いた第3実施形態について説明する。
【0019】
また、以下では、支持部材4Aと4Bの両方の態様を総称して支持部材4と呼ぶ。さらに、後記するセラミック体1の貫通孔1cに、その軸部(a1)を挿通してセラミック体1の固定に用いられる支持ピン5A,6Aを総称して固定ピンAと表記する。
【0020】
なお、支持ピン5Aの軸部a1が棒状(シャフト状)〔図1(a)参照〕であるのに対して、支持ピン6Aの軸部a1は、ねじ軸〔図1(b)参照〕)である。しかしながら、図2図4においては、軸のねじ山の記載を省略している。
【0021】
試料保持具10,30の基礎部分を構成するベースプレート3は、試料保持面1aを有するセラミック体1を、支持部材4を介して略水平に支持(支承)するための基台となるものであり、基板あるいは基体とも呼ばれる。ベースプレート3は、セラミック体1の真下の、セラミック体1の一方の主面である下面(底面)1bと対向する位置に配置される。
【0022】
また、ベースプレート3は、セラミック体1と同様の外形形状の金属板から構成されている。構成材料としては、たとえばステンレススチール等が用いられる。そして、ベースプレート3の上側(上面)に配設された複数本の支持部材4を介して、上方のセラミック体1を支持している。
【0023】
支持部材4は、先にも述べたように、固定ピンAの軸部a1を挿通できる貫通穴を有する場合(支持部材4A)と、貫通穴がなく、上下に、固定ピンAの軸部a1をねじ留めできるネジ穴を有する場合(支持部材4B)とがある。いずれの場合も、支持部材4の構成材料としては、たとえばステンレススチール等の金属が、好適に用いられる。
【0024】
支持部材4は、下側のベースプレート3および上側のセラミック体1の外周縁部に沿って複数本(実施形態においては8本)設けられている。支持部材4は、ベースプレート3およびセラミック体1の周方向に均等な間隔を空けて配置(周方向等配)されている。
【0025】
下側のベースプレート3と上側のセラミック体1との間を接続して固定する、ナット部材5bおよびばね部材5cを含む固定ピンA(支持ビン5A,6A,6B)も、ステンレススチール等の金属を用いて、構成されている。
【0026】
発熱抵抗体2は、たとえば、金、銀、パラジウムまたは白金等の金属材料で構成され、通電により、ジュール熱を発生させて、試料保持面1aに保持されたシリコンウエハ等の試料(被保持物)を、加熱し昇温させる。実施形態の試料保持具10,20,30において、発熱抵抗体2は、ベースプレート3の上面と対向する、セラミック体1の下面1bに配設されている。
【0027】
支持部材4により支持されたセラミック体1は、セラミック材料からなる、円板状の多孔質体である。その円板状の上面(他方の主面)は、試料保持面1aとされており、この試料保持面1aに載置または保持された試料が、前述の発熱抵抗体2の発熱により加熱される。
【0028】
セラミック体1は、セラミック材料からなる。セラミック材料としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素または窒化アルミニウムを主成分とするセラミック材料を用いることができる。セラミック体1の寸法は、全体が円板状の場合、上面(試料保持面1a)および下面1bの直径が200~500mmφであり、厚さが1~7mmである。
【0029】
そして、セラミック体1は、試料保持具10を上から見下ろした、図2の平面図に示すように、前述の各支持部材4の周方向位置に対応して形成された、各貫通孔1cに固定ピンAの軸部(a1)を挿通させ、ボルトまたはネジを締め付けることによって、下側のベースプレート3に固定されている。
【0030】
具体的には、前述の支持部材4の配設位置に対応する、セラミック体1の上面1aの外周縁部位置には、図2(b)に示すような、セラミック体1の中心から径方向外側に向かって、放射状に伸びる長孔(穴)形状の開口を有する貫通孔1cが、それぞれ設けられている。
【0031】
そして、これら貫通孔1cを透して下に見える各支持部材4の上端開口(スリーブ内周またはねじ穴)に、当該貫通孔1cを通して固定ピンAの軸部a1を嵌め入れ、上面1aより上側に突出するボルト頭またはネジ頭を工具等で回転させて締め付けることにより、セラミック体1は、支持部材4およびそれを支承するベースプレート3に固定される。
【0032】
ところで、セラミック体1の上面1aに形成される、固定ピンAの軸部a1挿通用の貫通孔1cの開口形状は、従来、図2(c)の参考断面図に示すように、円柱状の軸部a1の外周形状(断面円形)に沿った、円形の開口形状が採用されていた。
【0033】
これに対して、第1実施形態の試料保持具10は、セラミック体1に形成される貫通孔1cの形状を、その上面開口が、図2(b)に示すような、セラミック体1の中心から径方向に伸びる形状としたものである。
【0034】
この構成により、試料保持具10が加熱と冷却(放冷)とを繰り返す際、熱膨張または熱収縮の差が大きな金属製ベースプレート3側に固定された固定ピンAと、熱による相対膨張・相対収縮の小さなセラミック体1側に設けられた貫通孔1cとの間において、該貫通孔1c側に生じる応力を、緩和することができる。
【0035】
したがって、第1実施形態の試料保持具10は、製造工程において加熱と冷却とが繰り返されても、セラミック体1の固定用の貫通孔1cの周辺に、この貫通孔1cを始点とする亀裂や損傷等の発生が抑制される。その結果、長期にわたり使い続けることのできる、低ランニングコストの試料保持具とすることができる。
【0036】
なお、セラミック体1の貫通孔1cの開口形状は、図2(b)のセラミック体1径方向に伸びる長孔形状の他、楕円形や菱形等、同様に、開口形状の長軸の軸線が、セラミック体1の径方向に沿って伸びる形状であれば、他の開口形状とすることができる。しかしながら、亀裂等の始点となるのを避けるため、角部(入り隅)のない、丸みを帯びた形状とすることが望ましい。
【0037】
つぎに、図3および図4に示す第3実施形態は、前述の第1実施形態のセラミック体1の貫通孔1cを、さらに径方向外側に延長して外周まで到達させ、貫通孔1cを切り欠き1d形状としたものである。
【0038】
すなわち、図3における試料保持具30の側面図においては、固定ピン7(支持ピン6A)の軸部a1が、図示のように側面から見通せるようになっている。
【0039】
試料保持具30のセラミック体1の外周縁部に形成される切り欠き1dの形状例としては、図4(a)および図4(b)の平面図に示すような、切り欠き1dの内径側の壁(奥側壁)が直角に切り立った形状としてもよく、図4(c)および図4(d)に示すような、切り欠き1d奥側の角部(入り隅)が、丸みを帯びたR形状となるようにしてもよい。
【0040】
たとえば、図4(c)に示す切り欠き1dでは、その切り欠き奥側の縁部壁面の形状が、固定ピンAの軸部a1の外周形状に沿った半円形状に形成されている。
【0041】
また、図4(d)に示す切り欠き1dでは、その切り欠き奥側の中央に、固定ピンAの中心とセラミック体1の中心を結ぶ直線に垂直な直線部1eを有する形状に形成されている。なお、この形状においても、切り欠き1d奥側の角部(入り隅)の形状は、丸みを帯びたR形状とされる。
【0042】
以上の構成によっても、試料保持具30が加熱と冷却(放冷)とを繰り返す際、熱膨張または熱収縮の差が大きな金属製ベースプレート3側に固定された固定ピンAと、熱による相対膨張・相対収縮の小さなセラミック体1側に設けられた切り欠き1dとの間において、該切り欠き1dおよびセラミック体1側に生じる応力を、緩和することができる。
【0043】
したがって、第3実施形態の試料保持具30も、製造工程において加熱と冷却とが繰り返されても、セラミック体1の固定用の切り欠き1dの周辺に、この切り欠き1dを始点とする亀裂や損傷等の発生が抑制される。その結果、第1実施形態の試料保持具10と同様、長期にわたり使い続けることのできる、低ランニングコストの試料保持具とすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 セラミック体
2 発熱抵抗体
3 ベースプレート
4 支持部材
5A,6A,6B 支持ピン
10,20,30 試料保持具
A 固定ピン
図1
図2
図3
図4