(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ナノゲルによるポリマーネットワーク構造の制御
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20220829BHJP
C08F 20/18 20060101ALI20220829BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20220829BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20220829BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20220829BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F20/18
C08F220/18
C08L33/06
C08K5/101
C08F2/38
(21)【出願番号】P 2018567105
(86)(22)【出願日】2017-06-23
(86)【国際出願番号】 US2017039111
(87)【国際公開番号】W WO2017223511
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-23
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508128082
【氏名又は名称】ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・コロラド、ア・ボデイー・コーポレイト
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ダブリュー. スタンスベリー
(72)【発明者】
【氏名】デヴァサ ピー. ナイル
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン エイチ. ルイス
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09138383(US,B1)
【文献】MORAES R.R. et al.,Control of polymerization shrinkage and stress in nanogel-modified monomer and composite materials,Dental Materials,2011年,27,509-519
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F、C08L、A61K6
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーラジカル重合反応速度が遅いベースモノマー組成物の重合反応速度を高める方法であって、該方法は、前記ベースモノマー組成物に有効量のナノゲルを組み合わせることにより、同一条件下で行われる同一のフリーラジカル重合反応に供した際の前記ベースモノマー組成物の重合反応速度よりも高い重合反応速度を有するモノマー-ナノゲル混合物を形成させることを含み、
前記ベースモノマー組成物は、
メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーを1種または複数種含み、
前記ナノゲルは、前記ベースモノマー組成物に
均一に分散可能であり、かつ前記ナノゲルは、
少なくとも1種のモノビニルモノマーと、
少なくとも1種のジビニルモノマーと、
連鎖移動剤と、
開始剤と
を含むナノゲル形成性モノマー混合物に由来する、方法。
【請求項2】
前記ナノゲルは、
5kDa~200kDaの範囲内の分子量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ナノゲルの有効量は、少なくとも1重量%のナノゲル
添加量に相当する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ナノゲルは、非反応性ナノゲルである、請求項
1記載の方法。
【請求項5】
前記ナノゲルは、反応性ナノゲルである、請求項
1記載の方法。
【請求項6】
前記連鎖移動剤は、単官能性チオール、二官能性チオール、三官能性チオール、四官能性チオール、五官能性チオール、六官能性チオール、八官能性チオールおよびビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメート)コバルテート(II)からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレートおよびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーを1種または複数種含むベースモノマー組成物と、
前記ベースモノマー組成物に均一に分散可能であり、かつ少なくとも1種のモノビニルモノマーと、少なくとも1種のジビニルモノマーと、連鎖移動剤と、開始剤とを含むナノゲル形成性モノマー混合物に由来するナノゲルと、
を含み、
前記少なくとも1種のモノビニルモノマーは、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、スチレン誘導体、酢酸ビニル、無水マレイン酸、イタコン酸、N-アルキル(アリール)マレイミド、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、オキシラン含有(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレートおよびポリエトキシエチルメタクリレートからなる群より選択され
、
前記ナノゲルは、前記ベースモノマー組成物が含む前記モノマー中で膨潤可能であり、
前記ナノゲルの含有量が、15重量%~50重量%である、
モノマー-ナノゲル混合物。
【請求項8】
ポリマーの製造方法であって、請求項
7記載のモノマー-ナノゲル混合物の重合を含む、方法。
【請求項9】
請求項
7記載のモノマー-ナノゲル混合物
から重合された、ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年6月23日に出願された米国仮特許出願第62/354,049号の利益を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
合衆国政府の助成による研究または開発に関する陳述
本発明は、政府の支援を受け、米国国立衛生研究所により契約DE022348での助成を受けて成されたものである。政府は、本発明の一定の権利を保有する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)は、建築材料から消費者向けエレクトロニクスや医療用機器に及ぶ用途において、世界中で最も広範に使用されている熱可塑性樹脂のうちの1つである。PMMAやその他の線状ポリマー、例えばn-ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレートなどは、通常はモノマーのフリーラジカル重合により大量生産されている。PPMAの場合には、モノマーはメチルメタクリレート(MMA)であり、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)のような熱開始剤またはペルオキシド系開始剤が用いられる。(例えばPLEXIGLAS(登録商標)のような)光学品質の有機ガラスの製造には、モノマーMMAの塊状重合およびセルキャスト法が用いられる。通常は、「MMAシロップ」の部分重合スラリー(粘度を増大させかつ加工を補助するために使用される、溶解したPMMAを含有するMMA)を、フロート板ガラスの間に流し込み、熱水に浸して≦40℃の温度で硬化させることで、発熱重合によって生じるモノマーの沸騰による気泡形成を回避する。メタクリレート基の重合は一般的に遅く、PMMAの硬化プロセスには10時間以上を要することがあるため、該プロセスは著しくエネルギー集約的となる。硬化時間を短縮するために、しばしばMMAとPMMAのプレポリマーとの混合物が利用される。
【0004】
熱により開始されるMMAからPMMAへの硬化は、工業的製造に向けて確立された方法であるが、MMAからPMMAへの反応速度が遅いことが欠点であり、これによって、歯科材料や3D印刷といった最新の製造法などの用途でのその利用が制限または排除されてしまう。MMAからPMMAへの著しくエネルギー集約的でかつ非効率な重合反応速度は10時間以上を要することがあるため、MMAの代替的かつ効率的な硬化機序が探索されるべきである。ここ10年間に、紫外線や可視光を照射して機能分子のフリーラジカル重合によるMMAからPMMAへの光開始について試験が行われ、これは限定された用途で用いられている。光開始反応により提供される空間的および時間的な制御(「キュア・オン・コマンド(cure on command)」)に加えて、適切な波長(例えばGaN LEDの場合には405nm)の発光ダイオード(LED)光線を利用して、反応の開始に必要な強度の近紫外線を効率的に生成することができる。熱開始剤よりもラジカル光開始剤を使用した場合の方が、PMMAの重合に必要なエネルギー量を著しく減少させることができ、PMMAが利用可能な用途の範囲が拡張される可能性がある。しかし、PMMAの熱開始重合と光開始重合のどちらにおいても、メタクリレート重合の反応速度が本質的に遅いことが制限因子となっている。これまでに、MMAの光重合反応速度の向上にはあまり成功していない。添加剤およびコンポジットによって重合反応速度が高まることが知られているが、通常は、所望の機械的特性を犠牲にして効率が達成される。
【0005】
しかし、PMMAの熱開始重合と光開始重合のいずれの制限因子も、依然としてメタクリレート重合の反応速度が本質的に遅いことにある。これまでに、MMAの光重合反応速度の改善には限定的にしか成功していない(Charlot, 2014)。種々のコモノマー添加剤やコンポジットによって重合速度が高まることが知られているが、通常は所望の機械的特性が犠牲となっている。
【0006】
したがって、ベースポリマーの他の物理的特性(例えば機械的および/または光学的特性)に悪影響を与えることなくPMMAのような反応速度の遅いポリマーの重合反応速度を高めることが、依然として求められている。
【0007】
発明の概要
本発明の一実施形態は、フリーラジカル重合反応速度が遅いベースモノマー組成物の重合反応速度を高める方法であって、該方法は、前記ベースモノマー組成物に有効量のナノゲルを組み合わせることにより、同一条件下で行われる同一のフリーラジカル重合反応に供した際の前記ベースモノマー組成物の重合反応速度よりも高い重合反応速度を有するモノマー-ナノゲル混合物を形成させることを含み、
前記ベースモノマー組成物は、反応速度が遅いモノマーを1種または複数種含み、その際、前記モノマーは、フリーラジカル重合反応速度が遅く、前記反応の最初の10分以内に転化される二重結合は25%未満であり、
前記ナノゲルは、前記ベースモノマー組成物に可溶であり、かつ前記ナノゲルは、
少なくとも1種のモノビニルモノマーと、
少なくとも1種のジビニルモノマーと、
連鎖移動剤と、
開始剤と
を含むナノゲル形成性モノマー混合物に由来する方法に関する。
【0008】
前記方法の一実施形態において、ナノゲルは、約1.5nm~約50nm、約1nm~約200nm、約1nm~約100nmおよび約1nm~約50nmからなる群から選択される範囲内の有効直径を有する。
【0009】
前記方法の一実施形態において、ナノゲルは、約5kDa~約200kDaの範囲内の分子量を有する。
【0010】
前記方法の一実施形態において、ナノゲルの有効量は、少なくとも1重量%のナノゲル負荷量に相当する。
【0011】
前記方法の一実施形態において、フリーラジカル重合反応を、光もしくは熱により開始させるか、または光により開始させる。
【0012】
前記方法の一実施形態において、反応速度が遅いモノマーは、メチルメタクリレート(MMA)、n-ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレートおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0013】
前記方法の一実施形態において、ナノゲルは、非反応性ナノゲル、反応性ナノゲル、部分反応性ナノゲルおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0014】
前記方法の一実施形態において、ナノゲルは、非反応性ナノゲルである。その一実施形態において、非反応性ナノゲルは、約50重量%を超えないナノゲル負荷量で存在する。そのもう1つの実施形態において、非反応性ナノゲルは、約5重量%~約25重量%の範囲内のナノゲル負荷量で存在する。そのもう1つの実施形態において、非反応性ナノゲルは、約50重量%~約75重量%の範囲内のナノゲル負荷量で存在する。
【0015】
直前の段落に記載した実施形態とは異なる一実施形態において、ナノゲルは、反応性ナノゲルである。その一実施形態において、反応性ナノゲルは、25重量%を超えないナノゲル負荷量で存在する。そのもう1つの実施形態において、反応性ナノゲルは、約1重量%~約10重量%の範囲内のナノゲル負荷量で存在する。そのもう1つの実施形態において、反応性ナノゲルは、約25重量%~約50重量%の範囲内のナノゲル負荷量で存在する。
【0016】
2つ前の段落に記載した実施形態とは異なる一実施形態において、ナノゲルは、部分反応性ナノゲルである。
【0017】
一実施形態において、ナノゲルは、チオール官能化ナノゲルからなる群から選択される反応性ナノゲルである。
【0018】
前記方法の一実施形態において、連鎖移動剤は、単官能性チオール、二官能性チオール、三官能性チオール、四官能性チオール、五官能性チオール、六官能性チオール、八官能性チオールおよびビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメート)コバルテート(II)からなる群から選択される。
【0019】
前記方法の一実施形態において、連鎖移動剤は、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデカンチオール、チオグリコール酸、メチルベンゼンチオール、ドデカンチオール、メルカプトプロピオン酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、オクチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプトウンデカン酸、チオ乳酸、チオ酪酸、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリトリトールテトラチオラクテート、ペンタエリトリトールテトラチオブチレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサチオグリコレート;トリペンタエリトリトールオクタ(3-メルカプトプロピオネート)およびトリペンタエリトリトールオクタチオグリコレートからなる群から選択される。
【0020】
本発明の一実施形態は、前記方法のいずれか1つによるモノマー-ナノゲル混合物に関する。
【0021】
本発明の一実施形態は、ポリマーの製造方法であって、前記方法のいずれか1つによるモノマー-ナノゲル混合物の重合を含む方法に関する。
【0022】
本発明の一実施形態は、前記方法のいずれか1つによるモノマー-ナノゲル混合物に由来するポリマーに関する。
【0023】
発明の詳細な説明
導入
本開示は、モノマー系において反応性添加剤として使用できる、分散性または相溶性を示すナノゲルを得る方法を提供する。用途に応じて、該ナノゲルは、親水性であっても疎水性であっても両親媒性であってもよい。より具体的には本開示は、ナノゲルをフリーラジカル重合反応速度が遅いベースモノマー組成物に含めて使用することによって、ベースモノマー組成物の反応速度を高めることに関する。有利なことに、硬化ポリマーの物理的特性にほとんどまたはまったく影響を与えることなく反応速度の向上を達成することができる。しかし所望の場合には、より高反応性の傾向を示すナノゲル組成物を選択してもよく、かつ/または硬化ポリマーの1つもしくは複数の物理的特性(例えば靭性、ガラス転移温度(Tg)、曲げ強さ、曲げ弾性率、屈折率など)に影響を与えるべく、ベースモノマーに応じてナノゲルの量を選択してもよい。この技術の具体的な一用途は、メチルメタクリレート(MMA)モノマーの重合速度を高めることであり、これを、例えば歯科用接着剤、シーラントおよびワニス、骨セメント、粘着剤および他のイン・サイチュ(in situ)で形成されるバイオメディカルデバイス、水性UV硬化性コーティング;マイクロエレクトロニクスで使用される既存のUV硬化性コーティング用の変性剤、ディスプレー、ソーラーパネルなどの様々な用途で使用することができる。特に、UDMA/JMAAナノゲルは、湿潤強さが高い用途に有用であることが判明した。
【0024】
専門用語
「ポリマー」とは、マクロ分子から構成される物質である。ポリマーマクロ分子とは、相対分子量が高い分子であり、その構造は、相対分子量が低い分子に由来する単位の複数の繰返しを含む。
【0025】
「分岐状ポリマー」とは、繰返し単位の主鎖に連結する繰返し単位の側鎖(モノマー内に既に存在する側鎖とは異なる)を含むポリマーである。分岐状ポリマーとは非線状ポリマー構造を指すが、通常はネットワーク構造を指さない。したがって、分岐点から先へのトレースが元の主鎖に戻って架橋することはない(すなわち、骨格架橋は最小限しか存在しないかまたは存在しない)。分岐状ポリマーは一般的に、適切な溶媒に可溶である。
【0026】
「架橋ポリマー」とは、鎖の間での相互作用を含むポリマーであり、重合の間に(モノマーの選択により)形成されるか、または重合後に(特定の試薬の添加により)形成される。架橋ポリマーネットワーク中には、分岐点として作用する架橋を用いて、骨格に戻る連続したループをトレースすることができる。架橋ネットワークは、いずれの溶媒にも不溶である。
【0027】
「ネットワークポリマー」とは、鎖の間に平均して2つ以上の連結を含む架橋ポリマーであって、試料全体が単一の分子となっているかまたは単一の分子と考えられるものをいう。わずかに架橋している架橋連結は鎖1つあたり限定的であると考えられ、多くの架橋が高度に(または重度に)架橋していると考えられる。
【0028】
「コポリマー」とは、2種以上の出発化合物の混合物の重合により作出される材料である。得られたポリマー分子は、出発混合物中のモノマーのモル分率と反応機序との双方に関連する割合でモノマーを含有する。
【0029】
「充填剤」とは、機械的特性、光学的特性、電気的特性、熱的特性、可燃特性を変更するためか、または単に増量剤として作用させるためにポリマーに添加することができる固体の増量剤である。充填剤は、重合の際に反応性であってもよいし不活性であってもよい。
【0030】
「増量剤」とは、ポリマーの所望の特性を実質的に変更せずに、ポリマーに添加してその体積を増大させるための物質である。
【0031】
「不活性マトリックス」という用語は、例えば水、不活性溶媒、または水と不活性溶媒の組合せを含む。
【0032】
本明細書中で使用する場合の「アルキル」、「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、完全に飽和であるかもしくは1つもしくは複数の不飽和単位を含む線状もしくは分岐状のC1~20炭化水素鎖か、または完全に飽和であるかもしくは1つもしくは複数の不飽和単位を含む単環式C3~8炭化水素もしくは二環式C8~12炭化水素であって芳香族でないもの(本明細書では「炭素環」または「シクロアルキル」とも称する)を意味し、これは、分子の基への単一の結合点を有し、その際、前記二環式の環系中の個々の環は、3~7つの構成員を有する。例えば適切なアルキル基には、線状または分岐状のアルキル、アルケニル、アルキニル基およびそれらのハイブリッド体、例えば(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0033】
「アルコキシ」、「ヒドロキシアルキル」、「アルコキシアルキル」および「アルコキシカルボニル」という用語は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用され、該用語には、1~12個の炭素原子を含む線状鎖および分岐状鎖のいずれも含まれる。単独でまたはより大きな部分の一部として使用される「アルケニル」と「アルキニル」という用語には、2~12個の炭素原子を有する線状鎖および分岐状鎖のいずれも含まれるものとする。
【0034】
「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素または硫黄を意味し、かつ窒素および硫黄のすべての酸化形態、ならびにすべての塩基性窒素の四級化形態を含む。単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「アリール」という用語は、合計で5~14の環員を有する単環式、二環式または三環式の炭素環式の環系を指し、その際、該系における少なくとも1つの環は芳香族であり、その際、該系中の各環は、3~8の環員を有する。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と互換的に用いることができる。「アラルキル」という用語は、アリールにより置換されたアルキル基を指す。「アラルコキシ」という用語は、アリールにより置換されたアルコキシ基を指す。
【0035】
本発明の実施形態に適したビニルまたは「-エン(-ene)」官能基には、1つまたは複数のビニル官能基、すなわち反応性「-C=C-」基を有するモノマーが含まれる。ビニル官能基の同義語には、オレフィン基、アルケニル基およびエチレン性基という用語が含まれる。
【0036】
ナノゲル
慣例上、「ナノゲル」という用語は、およそ数nm~100nmの相当直径を有する任意の形状のポリマーゲル粒子を意味する。「ナノゲル」とは、相互に連結した局在化ネットワーク構造を表すとともに、ポリマーゲル粒子の物理的寸法を適切に表す。ナノゲルは通常は、中で該ゲルを製造する溶媒に可溶であるが、ナノゲルをさらに、該ゲルの製造に使用するモノマーに応じて適宜様々な液体に可溶となるようにすることができる。しかし、(多量の)溶媒なしでナノゲルを製造し、次いでこれを適切な溶媒またはモノマー組成物に溶解させることも可能である。
【0037】
本明細書中で使用する場合に、可溶性ポリマー粒子である(またはおそらくより正確には、安定なコロイド様分散液を形成すると説明される)「ナノゲル」という用語は、約1nm~約200nmまたはそれより大きい範囲内の相当直径を有する任意の形状の可溶性多孔質ポリマーゲル粒子として定義付けられるが、ただしこれは、該粒子が、目的の溶媒またはナノゲルを一緒に使用する予定のモノマー組成物に可溶のままであることを条件とする。ナノゲルは、該ゲルが水、水溶液、目的の溶媒またはモノマー組成物に、単一の離散したマクロ分子構造として均一に分散し得るという点で、可溶性である。
【0038】
ナノゲルの製造
ナノゲルに関する情報およびナノゲルの製造方法は、例えば米国特許第9,138,383号明細書(US 9,138,383)に記載されており、その内容全体を参照により本明細書に援用する。さらに、
図24はナノゲルの合成を説明する概略図である。
【0039】
「ゲル化時間」とは、重合の間にゲル化点に到達する時間(連続した架橋ネットワークが最初に成長する時点)である。
【0040】
モノビニルモノマー
本明細書中で使用する場合に、「モノビニルモノマー」とは、重合可能な二重結合を1分子あたり1つ有するモノマーである。モノビニルモノマーは、フリーラジカル機序により重合可能な任意のモノマーを含むことができ、例えば(メタ)アクリレートおよびアクリレート、スチレンおよびそれらの誘導体(スチレン系物質)、酢酸ビニル、無水マレイン酸、イタコン酸、N-アルキル(アリール)マレイミドおよびN-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミドおよびアクリロニトリルを含むことができる。ビニルモノマー、例えばスチレン系物質、アクリレートおよび(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドおよびアクリロニトリルは、有利なモノマーである。複数のモノビニルモノマーの混合物を使用してもよい。
【0041】
適切なアクリレートモノマーの例には、アルキルアクリレート、例えばメチルアクリレートおよびエチルアクリレート(EA)が含まれる。適切なモノビニル(メタ)アクリレートモノマーの例には、C1~C20-アルキル(メタ)アクリレート、有利にはC1~C8-アルキル(メタ)アクリレート、より有利にはC1~C4-アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート(EMA)、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシルメタクリレート(IDMA)、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート(BPAEDA)、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、ブチルメタクリレート(BMA)およびエチルメタクリレート(EMA)、ヒドロキシエチルアクリレートとイソシアナトエチルメタクリレート(HEA+IEM)との反応により製造されるハイブリッド体アクリレート/メタクリレートが含まれる。
【0042】
例には、(メタ)アクリルアミドモノビニルモノマーも含まれる。他の適切なモノビニルモノマーには、芳香族(メタ)アクリレートが含まれる。これには、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、p-t-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、p-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p-トリル(メタ)アクリレート、p-シクロヘキシルフェニル(メタ)アクリレート、p-ニトフェニル(メタ)アクリレートおよびベンゾイル(メタ)アクリレートが含まれるが、それらに限定されるわけではない。また、多環式芳香族(メタ)アクリレート、例えば2-ナフチル(メタ)アクリレートも適している。さらに、(メタ)アクリル酸は、適切なモノビニルモノマーである。
【0043】
本明細書中で使用する場合に、「官能性モノマー」とは、ナノゲル粒子のさらなる重合または反応に利用可能な1つまたは複数のさらなる反応性基を有するモノマーである。このようなモノマーには、メタクリル酸およびアクリル酸または他の-COOH含有モノマー(それらの実施形態は、歯科用接着剤、シーラントおよび他の歯科用材料での使用に特に適している);ヒドロキシアルキルアクリレート、例えばヒドロキシエチルアクリレート(HEA);ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、ポリエトキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;オキシラン含有(メタ)アクリレート(エポキシ(メタ)アクリレート)、例えばグリシジル(メタ)アクリレートおよびジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートおよびノルボニル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0044】
一態様において、水分散性ナノゲルは、ポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエトキシエチルメタクリレート(EHEMA)および(メタ)アクリルアミドから選択される官能性モノマーを含む親水性モノマー組成物を利用することによって、1段階で製造される。
【0045】
特定の一態様において、水分散性ナノゲルは、組成物中の全モノマーのモル数に対して50モル%~90モル%のEHEMAを使用することにより1段階で製造される。
【0046】
有利な一態様において、ポリエトキシ(10)エチルメタクリレート(E10HEMA
、HEMA10)は、親水性モノマーとして使用される。
【0047】
本明細書中で使用する場合に、反応性オレフィン化合物は、少なくとも1つのオレフィン基と少なくとも1つのさらなる反応性官能基、例えばハロゲン、イソシアナトまたは無水基を含む。例示的な反応性オレフィン化合物には、(メタ)アクリロイルクロリド、無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートビニルベンゼンクロリド、クロロエチルビニルエーテル、アリルクロリドおよびイソシアナトメチル(メタ)アクリレートが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0048】
明示も暗示もされない限り、「(メタ)アクリレート」という用語には、メタクリレートとしても知られている(メタ)アクリレート(CH2=C(CH3)C(=O)-)および類似のアクリレート(CH2=CHC(=O)-)の双方が含まれる。
【0049】
ジビニルモノマー
本明細書中で使用する場合に、「ジビニルモノマー」とは、重合可能な二重結合を1分子あたり2つ有するモノマーである。適切なジビニルモノマーの例には:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(TTEGDMA)、ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの縮合生成物、2,2’-ビス[4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)-フェニル]プロパン(ビス-GMA)、エトキシル化ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリレート(BisEMA)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンおよび1,3-ジグリセロレートジアクリレートおよびそれらの誘導体が含まれる。N,N-メチレンビスアクリルアミドのようなビス(メタ)アクリルアミドをジビニル成分として使用することもできよう。場合により、ジビニルモノマーは、複数のジビニル化合物の混合物を含み得る。
【0050】
分岐状ポリマーは、ジビニルモノマーとして、またはジビニルモノマーのうちの1つとして、フリーラジカル機序により重合可能な少なくとも二重結合を1分子あたり2つ有する反応性オリゴマーまたは反応性ポリマーまたはプレポリマーを使用して形成されてもよい。通常の反応性オリゴマーには、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびウレタン(メタ)アクリレートが含まれるが、それらに限定されるわけではない。通常の反応性ポリマーには、付加ポリマーもしくは縮合ポリマー、例えば重合可能なペンダント(メタ)アクリレート基を含むスチレンもしくはアクリルコポリマー、または不飽和ポリエステルが含まれる。オリゴマーまたは反応性ポリマーの分子量範囲は、500~500,000g/モルで変動してもよく、より有利には約5,000~10,000MWで変動してもよい。さらに、トリビニルモノマー(トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート)が架橋剤として首尾よく使用された。トリ、テトラおよび多価(メタ)アクリレートは、本発明の実施形態において適切であると予想される。しかし、これらの化合物を用いた場合には、むしろマクロゲル化の回避が問題になると予想される。
【0051】
ジビニルまたは多価ビニルモノマー成分は、ナノゲルにおいて形成される架橋が狙い通りに可逆的となり得るように選択することができる。加水分解し易い結合または架橋性モノマー中の重合可能な基を連結する結合を取り込むことによって、得られたポリマー中で初期に形成された共有架橋を、引き続き制御可能な様式で切断することができ、この切断は、ナノゲル粒子を湿分に曝すことにより行われる。架橋ナノゲル粒子を、主にナノゲル合成で使用される連鎖移動剤に基づいて制御された分子量を有する個々の線状ポリマー鎖に分解することができる。加水分解による分解機序の他に、分解可能な代替的な架橋剤を、温度、pH、光、酵素または他のアプローチに応じて分解されるように設計することができる。
【0052】
合成ポリマーは、分子量分布(Mw、グラム/モル)を有する。多分散度は、様々な鎖長および分子量を有する分子からなるポリマーを説明するものである。ポリマーの分子量分布の幅は、その多分散度(Mw/Mn)を算出することにより推定される。このアプローチが1の数値に近いほど、ポリマーの分子量分布は狭くなる。重量平均分子量(Mw)は、より大きな分子に対して高度に統計的重みづけをして平均をとって、Mw=SUM(Mi2 Ni)/SUM(Mi Ni)のように算出される多分散ポリマー試料の平均分子量である。ポリマー分子量の測定に使用される技術の1つに、光散乱が挙げられる。極めて希薄なポリマー溶液を通る光輝は、ポリマー分子により散乱される。所与の角度での散乱強度は、分子量の二乗の関数である。したがって、この「二乗」関数のため、大きな分子は小さな分子よりも我々の算出する分子量に遥かに寄与するであろう。
【0053】
数平均分子量(Mn)は、各分子に等しい統計的重みづけをして平均をとって、Mn=SUM(Mi Ni)/SUM(Ni)として算出される多分散ポリマー試料の平均分子量である。
【0054】
流体力学的半径は、例えば粘度または動的光散乱の実験において易動度または拡散の測定値から求められる溶液中の粒子またはポリマー分子の半径である。拡散係数Dは、粘度と流体力学的半径RHと相関関係にあり:D=kBT/6π ηRH;ここで、kBはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。
【0055】
ナノゲル組成物
モノビニルと多価ビニルモノマーとの共重合によって通常は、巨視的に架橋したポリマーネットワークが生じ、これはしばしばマクロゲルと称される。それらの架橋重合の極めて早い段階で連続的なネットワーク構造が形成され、このポリマーは、いずれの溶媒にも不溶となる。本発明の実施形態は、連鎖移動剤の使用によって比較的短いポリマー鎖が生じ、これによって、モノマー転化率が高レベルであっても、マクロゲル化が著しく遅延するかまたはこれが完全に回避されることにより重合プロセスを制御する方法を提供する。一態様において、連鎖移動剤の量が減少するにつれてナノゲルの分子量が増加する。得られたナノゲルは、内部環化および架橋した構造を有してはいるものの、離散粒子間での巨視的な連結性を有しておらず、適切な溶媒に可溶である。
【0056】
ナノゲルは、デンドリティックポリマーまたはハイパーブランチポリマーとして近似させることができる。それというのも、ナノゲルは連続的に分岐した連結構造を有することができるためである。ネットワークが形成されるフリーラジカル連鎖重合において、一時的なナノゲルの段階(該段階は、マクロゲル化よりも前に生じる)は、遊離およびペンダントビニル基の環化反応および微分形の反応性を含む不均一系重合プロセスを示している。ナノゲルは、ジ-もしくは多価ビニルの重合において、またはそれらの多官能性モノマーとモノビニルモノマーとの共重合において生じる。重合におけるジビニルモノマーの取り込みは、一般的に架橋ポリマーが形成した結果として生じる。架橋またはマクロゲルポリマーは、いずれの溶媒にも不溶性である無限の分子量構造により定義付けられる。マクロゲルポリマーは、鎖1つあたりの架橋の平均数が2を超える場合に存在する。モノビニル/ジビニル共重合では、ゲル化が生じる臨界的な転化率(pc)を予測することができる。実際には、このように増加する架橋密度を低下させる環化反応に起因して、通常は、観察されるゲル化点は理論上の算出値よりも高くなる。連鎖移動剤には、成長するナノゲルの領域の間の架橋が排除され、かつ得られる高分子量のポリマーナノゲルが可溶となるように、成長する鎖の長さを、制御された様式で制限することが求められる。
【0057】
本発明によれば、より高濃度のジビニルモノマーを、ナノゲル合成においてジビニルモノマーのみを使用した場合の限度まで使用し尽くすことができる。これによって、従来のフリーラジカル重合化学および従来の(メタ)アクリレートモノマーを使用してハイパーブランチポリマー構造を製造するための固有の方法が提供される。
【0058】
モノマー混合物の重合は、いずれのフリーラジカル重合法を使用して実施してもよく、例えば溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法および塊状重合法のいずれを使用して実施してもよい。本発明の分岐状ポリマーの多くの用途には、材料が固体の形態である必要がある。そうした用途に関しては、溶液重合により製造されるポリマーから使用前に溶媒を除去する必要がある。これによってコストが増大し、また溶媒のすべてを除去することは困難であるため、該ポリマーの利用において不足が生じる。あるいは、溶液の形態でポリマーを使用する必要がある場合には、重合を溶媒中で行う必要があるが、ポリマーの単離ステップを回避すべき場合には、該溶媒が最終用途に存在することになる。したがって、分岐状ポリマーを、溶液によらない方法、例えば懸濁重合または塊状重合により製造することが有利である。
【0059】
連鎖移動剤
「連鎖移動剤」とは、あるポリマー鎖の成長を停止させ、次に重合を再び開始して新たな鎖を作出するために意図的に添加される化合物である。連鎖移動剤は、鎖長を制限する手法として使用される。
【0060】
一実施形態において、連鎖移動剤は、アルキルチオール、アリールチオール、モノビニルチオール、ジビニルチオール、二官能性チオール、三官能性チオール、四官能性チオール、五官能性チオール、六官能性チオール、八官能性チオールおよびビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメート)コバルテート(II)のうちから選択される。
【0061】
一実施形態において、連鎖移動剤は、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデカンチオール、チオグリコール酸、メチルベンゼンチオール、ドデカンチオール、メルカプトプロピオン酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、オクチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプトウンデカン酸、チオ乳酸、チオ酪酸、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリトリトールテトラチオラクテート、ペンタエリトリトールテトラチオブチレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサチオグリコレート、トリペンタエリトリトールオクタ(3-メルカプトプロピオネート)、トリペンタエリトリトールオクタチオグリコレートおよびシステインから選択される。
【0062】
一実施形態において、連鎖移動剤は、1-ドデカンチオールおよびメルカプトエタノール(ME)から選択される。
【0063】
一実施形態において、連鎖移動剤は、二官能性連鎖移動剤であり、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、2-メルカプト-3-ブタノール、3-メルカプト-2-メチルブタン-1-オール、3-メルカプト-3-メチルヘキサン-1-オール、3-メルカプトヘキサノールおよび3-メルカプトプロピオン酸から選択される。
【0064】
一実施形態において、ナノゲルは、メルカプトエタノール(15モル%)を連鎖移動剤として用いて製造される。
【0065】
連鎖移動剤は、単官能性および多官能性チオールを含むチオール化合物の範囲から選択されてもよい。多官能性チオールには、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール、DDT)、チオグリコール酸、メチルベンゼンチオール、ドデカンチオール、メルカプトプロピオン酸、アルキルチオグリコレート、例えば2-エチルヘキシルチオグリコレートまたはオクチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプトウンデカン酸、チオ乳酸、チオ酪酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。多官能性チオールには、三官能性化合物、例えばトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、四官能性化合物、例えばペンタエリトリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリトリトールテトラチオラクテート、ペンタエリトリトールテトラチオブチレート、五官能性化合物、例えばジペンタエリトリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサチオグリコレート;八官能性チオール、例えばトリペンタエリトリトールオクタ(3-メルカプトプロピオネート)、トリペンタエリトリトールオクタチオグリコレートが含まれる。多官能性チオールの使用は、ポリマーの分岐度を増大させる有効な方法である。二官能性連鎖移動剤は、少なくとも1つのチオールおよび少なくとも1つのヒドロキシル基を含む。二官能性連鎖移動剤の例には、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、2-メルカプト-3-ブタノール、3-メルカプト-2-メチル-ブタン-1-オール、3-メルカプト-3-メチル-ヘキサン-1-オールおよび3-メルカプトヘキサノールが含まれる。場合により、連鎖移動剤は複数種の化合物の混合物を含んでもよい。
【0066】
存在する連鎖移動剤の量は、全初期モノマー濃度の50重量%までであってよい。第一の実施形態において、存在する連鎖移動剤の量は、モノマー混合物中の全モノマーに対して0.1~20重量%であり、例えば0.5~10重量%である。不溶性の架橋ポリマーが相当な量で形成されるのを防ぐため、分岐状ポリマーは、適量の連鎖移動剤を使用して製造される。製造されるポリマーの大部分は、モノマーからポリマーへの転化率が高い場合でも可溶性である。少量の架橋ポリマーが形成されてもよいが、有利には、形成される架橋ポリマーの量が最大でも約10重量%未満、より有利には約5重量%未満、より有利には約2.5重量%未満、最適には約0重量%となるように反応条件および連鎖移動剤のレベルが選択されることが望ましい。特定の重合系では、第二のメルカプタン連鎖移動剤の使用が有利であり得る。第二のメルカプタン含有連鎖移動剤は、重合が塊状重合法または懸濁重合法で実施される場合に特に有利である。
【0067】
また連鎖移動剤は、ビニルモノマーの通常のフリーラジカル重合において分子量を低下させることが知られているいずれの種類のものであってもよい。例には、スルフィド、ジスルフィド、ハロゲン含有種が含まれる。また、触媒作用を有する連鎖移動剤、例えばコバルト錯体、例えばコバルト(II)キレート、例えばコバルトポルフィリン化合物は、本発明に有用な連鎖移動剤である。適切なコバルトキレートは当業者に公知であり、国際公開第98/04603号(WO 98/04603)に記載されている。特に適切な化合物は、CoBFとしても知られているビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメート)コバルテート(II)である。触媒作用を有する連鎖移動剤は、一般的に低濃度で高効率であるため、通常のチオール連鎖移動剤と比べて比較的低濃度で使用することができ、例えば(モノビニルモノマーに対して)0.5重量%未満、有利には0.1重量%未満で使用することができる。
【0068】
開始剤
モノマーの重合は、例えばアゾ化合物、ペルオキシドまたはペルオキシエステルのような熱開始剤が熱により誘発されて分解されることによってフリーラジカルが生じる、適切ないずれの方法により開始されてもよい。あるいはレドックス開始または光開始を使用して、反応性のフリーラジカルを生じさせることも可能である。したがって、重合混合物は有利には重合開始剤をも含み、これは、フリーラジカル重合反応において知られておりかつ通常使用されているいずれのものであってもよく、例えばアゾ開始剤、例えばアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(4-シアノ吉草酸)、ペルオキシド、例えばジラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジベンゾイルペルオキシド、クミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシジエチルアセテートおよびt-ブチルペルオキシベンゾエートである。特定の一態様において、熱開始剤はAIBNである。
【0069】
もう1つの態様において、開始剤は、開始剤のレドックス(酸化還元)ペアである。レドックス開始剤系では、第一の開始剤と化学還元剤の双方が使用される。いくつかのレドックス開始剤ペアの種類が知られており、例えばペルスルファイト-ビスルファイト、ペルスルフェート-チオスルフェート、ペルスルフェート-ホルムアルデヒドスルホキシレート、ペルオキシド-ホルムアルデヒドスルホキシレート、ペルオキシド-金属イオン(還元)、ペルフルフェート-金属イオン(還元)、ベンゾイルペルオキシド-ベンゼンホスフィン酸およびベンゾイルペルオキシド-アミン(ここで、アミンは還元剤として作用する)が知られている。レドックスペアは、公知のいずれのレドックスペアから選択されてもよく、例えばベンゾイルペルオキシドとジメチル-p-トルイジン、AMPS(過硫酸アンモニウム)とTEMED(テトラメチルエチレンジアミン)、二酸化硫黄とt-ブチルヒドロペルオキシド、過硫酸カリウムとアセトン重亜硫酸ナトリウムの組合せから選択されてもよい。特定の一態様において、レドックス開始剤ペアは、1重量%のベンゾイルペルオキシドおよび1.5重量%のジメチル-p-トルイジンアミン補助開始剤である。
【0070】
一実施形態において、開始剤は、光開始剤である。光開始剤は、1種または複数種の公知の光開始剤から選択することができる。例えば開始剤は、アミン補助開始剤と一緒にまたはアミン補助開始剤なしで、α-ヒドロキシケトン、アシルホスフィンオキシド、ベンゾイルペルオキシドのうちの1種または複数種から選択できる。公知のいずれの光開始剤を用いてもよく、1種または複数種の光開始剤の組合せを用いてもよい。例えば光開始剤は、1種または複数種のアシルホスフィンオキシド、例えばBAPO(ビス-アシルホスフィンオキシド)、フェニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)、ビス-トリメトキシベンゾイル-フェニルホスフィンオキシド、TPO-L(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート)、またはMAPO(トリス[1-(2-メチル)アジリジニル]ホスフィンオキシド)から選択することができる。その他の光開始剤を単独で使用しても組み合わせて使用してもよく、これには、DMPA(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、BDK(ベンジルジメチルケタール)、CPK(シクロヘキシルフェニルケトン)、HDMAP(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン)、ITX(イソプロピルチオキサントロン)、HMPP(ヒドロキシエチル置換α-ヒドロキシケトン)、MMMP(2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン)、BDMB(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1)、BP(ベンゾフェノン)、TPMK(メチルチオフェニル-モルホリノケトン)、4-メチルベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-144-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ジフェニルインドニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p-トリル)インドニウムヘキサフルオロホスフェート、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニル-プロパン-1-オン、1,7-ビス(9-アクリジニル)ヘプタン、2-ヒドロキシ-4’-ヒドロキシエトキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,21-ビス(o-クロロフェニル-4,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ジイミダゾール、9-フェニルアクリジン、N-フェニルグリシジン、2-(4-メトキシフェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、p-トルエンスルホニルアミン、トリス-(4-ジメチルアミノフェニル)メタン、トリブロモメチルフェニルスルホン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(p-メトキシ)スチリル-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(3,4-ジメトキシ)スチリル-s-トリアジン、4-(2-アミノエトキシ)メチルベンゾフェノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)メチルベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-メチルアセトフェノン、4-(4-メチルフェニルチオフェニル)-フェニルメタノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、カンファーキノン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-ジメチル-アミノエチルベンゾエート、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-イソプロピルチオキサントン、メチルo-ベンゾイルベンゾエート、メチルフェニルグリオキシレート、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-およびエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0071】
光重合開始剤は、硬化放射線の存在下で重合を開始させるのに有効な量で使用され、通常は組成物の全重量に対して約0.01~約10重量%、より具体的には約0.05~約7重量%、より具体的には約0.1~約5重量%の量で使用される。
【0072】
光開始剤組成物は、場合によりさらに補助開始剤を含んでよく、例えばEHA(2-エチルヘキシルアクリレート)またはアミン補助開始剤、例えばエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-エチルヘキシルジメチルアミノベンゾエート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを含むことができる。反応性アミン重合補助開始剤、例えばSartomer社より市販されている補助開始剤CN386(トリプロピレングリコールジアクリレートの反応性アミン付加物)、またはCiba社より市販されているDarocure EHAなどを使用することができる。補助開始剤は、組成物の全重量に対して約0.25重量%~約20重量%、特に約1~約10重量%、より具体的には約1~約5重量%の量で組成物中に存在することができる。特定の一態様では、開始剤は、例えばCiba社よりIrgacureとして市販されているBAPOビス-アシルホスフィンオキシドである。
【0073】
ナノゲルの例示的な特性
小球状の球構造;短鎖/鎖末端が多い;内部分岐が多い;膨潤可能なネットワーク;104~106g/モル;膨潤直径約10nm。
【0074】
ベースモノマー中のナノゲル負荷量
分散した5~10nmのドメインから、共連続的なまたは密集したナノゲルのドメイン形態まで調節可能である。
【0075】
ナノサイズ規模の各段階間で、微分による重合反応速度および機械的特性を操作することも可能である。
【0076】
パーコレーション閾値は、通常はナノゲル-ポリマー混合物の約10重量%~約15重量%の範囲内のナノゲル濃度である。パーコレーション閾値よりも高い濃度では、分散したナノゲルが、ナノゲル、ベースポリマーおよび混合物中のナノゲル濃度に応じて、ポリマーネットワークの構造および/または特性に影響を与えるか、またはその上これらを左右する場合もある。例えば
図8を参照すると、
図8は、この構造によって、MMA中の10重量%および50重量%のIBMA/UDMAナノゲルを用いて形成されたポリマーフィルムが得られたことを示しており、その際、このIBMA/UDMA分散ナノゲルは、約20nmの膨潤直径を有していた。
【0077】
密集状態を達成するための閾値は、通常はナノゲル-ポリマー混合物の約40重量%以上の範囲内のナノゲル濃度である。
【0078】
ナノゲルの膨潤
ナノゲルの膨潤レベルは、分散媒(すなわち、溶媒またはポリマー)によって変化する。
【0079】
ナノゲル負荷量の関数としての粘度プロフィールは、ナノゲルサイズに著しく影響を受け、粒子が比較的小さいと影響が少なくなる。例えば
図9を参照のこと。結果として、ナノゲル負荷量が比較的高レベルである混合物の製造が望ましい場合には、粒径が比較的小さいナノゲルが使用される傾向にあるものと考えられる。
【0080】
ナノゲルのガラス転移温度(Tg)
こうしたナノゲルは、広範囲のバルクナノゲルTgを用いて設計できる。例えば
図10を参照のこと。これによって、十分に制御されたナノドメインの形成が可能となり、その際、Tgは、ナノゲル構造に完全に浸透しているマトリックスポリマーのTgより低いことも、同等であることも、それを上回ることもある。ナノゲルのTgとベースポリマーのTgとに応じて、ナノゲル負荷量の関数として種々の構造効果を実現することができる。例えば
図11に示すように、低Tgナノゲル、高Tgポリマーマトリックス系の場合には、ナノゲル負荷量が相対的に低くても靭性をかなり増大させることができ、これは続いてさらに増大し、ナノゲル負荷量が相対的に中程度および高くなるとプラトーに達する。対照的に、
図12に示すように、高Tgナノゲル、高Tgポリマーマトリックス系の場合には、ナノゲル負荷量の関数として、靭性が相対的に線形的に増大した。さらに
図13は、高Tgナノゲル、低Tgポリマーマトリックス系を示す。これは、ナノゲルの各負荷量に関して、重合反応速度が増大したにもかかわらず、ナノゲル負荷量が比較的高い密集レベルとなるまでナノゲルの構造効果が得られなかった。これらの結果は、合成してベースモノマー組成物に添加してモノマー-ナノゲル混合物を形成することができる広範なナノゲル、およびこうしたモノマー-ナノゲル混合物の重合に際して得ることができる、用途に応じた広範なバルク特性を示唆している。
【0081】
ナノゲル添加剤によって、MMAのようなモノビニルモノマーの反応性を大幅に高めることができるとともに、さらにはMMAの揮発性を最小限に抑え、ベースモノマーおよび/またはナノゲル-モノマー混合物の極めて望ましい特性を扱い、向上させかつ/または保持することができる。
【0082】
高Tgマトリックスを用いた場合、低Tgナノゲルによって優れた可塑化が得られ、それによって、靭性および強さを示す高転化率のポリマーが得られる。
【0083】
低Tgマトリックスを用いた場合、高Tgナノゲルの添加によって転化率は向上したが、ナノゲル負荷量が密集状態を下回る場合には強化が得られなかった。
【0084】
線状ポリマーを生じるモノビニルモノマーから安定な架橋構造を生成させるためには、パーコレーション閾値を上回る反応性ナノゲルが必要である。
【0085】
ナノゲルの構造
モノビニル/ジビニル比(モル比9:1~1:1)により制御される内部ナノゲルネットワーク密度が、膨潤可能性に影響を与える。
【0086】
ナノゲル群の濃度
モノマーよりも大幅に低い濃度で、多官能性を示す。
【0087】
反応性ナノゲル
非反応性ナノゲルは、ベースモノマーの官能基と反応し得ない(0%)。
【0088】
反応性ナノゲルは、最大限まで(100%)表面官能化されており、これによってベースモノマーと完全に反応することができる。
【0089】
部分反応性ナノゲルは、選択的に(>100%)表面官能化されており、したがってベースマトリックスと部分的に結合することも可能である。
【0090】
ナノゲルサイズ
表面:体積比を変化させると、膨潤および粘度効果に影響が生じる。
【0091】
他の特性
官能基の種類:メタクリル酸、アクリル酸、マレイミド、ビニルスルホン、イソシアネート、アルコール、エポキシ。官能基数:0~25。分岐密度:1~100nm。溶解性:極性溶媒、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、非極性溶媒。
【0092】
様々な実施形態において、ナノゲル合成は、(メタ)アクリレートから採用されたモノ-およびジビニルモノマーの中程度の濃度ないし濃縮された溶液の、ラジカルにより誘発される(光、熱、レドックスおよびRAFT開始アプローチが使用された)重合を含む(これにより、利用可能な構造/特性の膨大な多様性が得られる)。
【0093】
特定の態様において、連鎖移動剤を使用してポリマー鎖長を制御可能な様式で短くすることによってマクロゲル化が回避され、これを溶媒と併用することで、高分子量の離散ナノゲル構造を製造する有効な手段が提供される。
【0094】
特定の実施形態において、ナノゲル合成は総じて高転化率(>85%)まで行われ、次いで中赤外分光分析または近赤外分光分析(NIR)が行われる。
【0095】
一態様において、残りの出発材料からのナノゲルの単離は、簡便かつ効率的な沈殿により達成される。
【0096】
バルクナノゲルを溶液状態のNMR分光法により分析することで組成が求められ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって粒子の構造および寸法に関する詳細な情報が得られる。我々の研究所では、トリプル検出(示差屈折率、粘度、光散乱)GPCを用いた。これによって、次のものを含む広範なポリマーの特性決定情報が得られる:絶対分子量(高分岐状構造にとって重要である)、多分散度、分岐密度、流体力学的半径および固有粘度数。我々によるGPC実験により、分子量104~>107、多分散度約2~>10および膨潤粒径5~50nm(THF中での光散乱に基づくGPCにより求めたもの)のナノゲルを、再現性よく製造できることが実証された。
【0097】
他の実施形態において、ナノゲルは容易に再分散され、適切な溶媒または液体モノマー中で、さらには粘性の歯科用レジン中でさえも、光学的に透明な安定したナノ粒子の懸濁液が得られる。
【0098】
一態様において、本開示は、使用するナノゲル負荷量のレベルに基づいて、付加する反応性基の濃度、およびナノゲルと該ナノゲルを添加するレジンとの間の反応性部位の分配の完全な制御を提供する。
【0099】
一実施形態において、固有のナノゲル材料は、内部共有架橋および環により互いに密に結合した短いポリマー鎖の、離散したナノスケール(10~50nm)の球形または小球状の束である(Moraes, 2011a)。各粒子は単一のマクロ分子を示し、その際、ナノゲル内の通常の個々のポリマー鎖は、約15~30個のビニルモノマー単位のみの付加に基づく場合もあるが、10個以上の分岐点を含んでいてもよく、これによって、同様に隣接した鎖が生じる。ナノゲル分子量が10,000,000Daを上回る場合であっても、粒子をモノマー中に安定的に分散させて、透明なコロイド状懸濁液を生成させることができる。ナノゲルは、最初は溶液中で形成されるため、モノマーまたは溶媒により再膨潤して、ポリマーネットワークに寄与することも、またその唯一の供給源となることも可能である。
【0100】
特定の実施形態において、ナノゲル負荷量を約25%とすることで、反応性ナノゲル粒子の重なりが提供され、次に該粒子が一緒に連結して、ベースポリマーネットワークと互いに結合した第二の強化ネットワークが生成されることが確定した。
【0101】
歯科用コンポジット、接合クラウンまたはインレーの成功した機能の重要な態様は、歯科材料を歯に接着するために使用される接着剤である。特に、象牙質に接着させる場合には、結合性レジンの選択が重要である。歯科用コンポジット修復材の配置で使用される接着剤の大部分は、アセトンやエタノールのような揮発性溶媒に溶解された比較的親水性の高いモノマーに依存している。侵食された象牙質の酸により脱灰されたコラーゲンネットワークにこのモノマーが効果的に染みこむことができるようにするために親水性が必要である。結合性レジン組成物の一般的な一例はBis-GMAからなり、これは、親水特性は中程度ではあるものの機械的強度および架橋をも提供するが、一方で2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)も含まれ、これはレジン全般に対してかなりの親水性を提供する。HEMAおよび水と相溶性の溶媒は、Bis-GMAをコラーゲンネットワークへと移送する。次いで、大部分の溶媒がゆるやかな空気流により支援されて除去されることで、接着層が薄くなるとともに、蒸発が加速する。次に、接着剤の単一または複数のコーティングを通常は光重合させ、その後、歯科用コンポジットが配置される。次いで、接着剤の光硬化後に未反応のままである、酸素阻害された(メタ)アクリレート基が、コンポジットにより導入された(メタ)アクリレートモノマーと互いに反応することができる。次いでコンポジットを光重合させた際に、大部分が象牙質と物理的に連結している接着層がコンポジットレジンと共重合することで、コンポジット修復材と歯との間に強力な付着性が提供される。しかしその親水特性ゆえ、接着剤は著しい量の水を吸収する。これによってポリマーが著しく脆弱になり、また結合強度が低下する。接着層は、この界面領域に沿って開口した水路によって欠失してしまうことが多い。結合性レジンにおける吸水レベルを克服する手段として、そしてさらに重要なことには、歯科用接着剤の長期の完全性および強度を向上させるために、本発明者らは、疎水性の、高弾性でかつ反応性のナノゲル添加剤の使用を提案した。ナノゲル粒径は、互いに結合したコラーゲンの孔構造の寸法を十分に下回るため、ナノゲルは溶媒およびコモノマーと一緒に象牙質に浸透し得ることが予想される。通常の親水性の接着性モノマーと共重合させた場合、ナノゲルによって吸水能力を低下させることができるとともに、特に湿潤強さの点でネットワークのポリマーの機械的強度を高めることができる。
【0102】
他の実施形態において、本開示は、BisGMA/HEMAまたは他の接着剤モノマー系に添加することも、単独で使用することにより水(または他の不活性溶媒)中に分散された反応性ナノゲルのみから構成されたポリマーネットワークを形成することも可能である、水と相溶性の新規のナノゲル組成物を提供する。また、実験的な接着剤材料の性能をさらに高めることができる機能化された生物活性ナノゲルを用いた研究も含まれる。湿った象牙質に結合させる用途でのナノゲルの使用を提唱する重要な利点は、個別では水と相溶性でないモノマー成分(すなわち、著しく疎水性の高いモノマーであるBisEMA30~50モル%から構成されたナノゲル)を、完全に水と相溶性のナノゲルに転化できることにある。水に容易に分散し得る親水性および両親媒性の双方のナノゲルを用いた我々の予備的な研究によって、該ナノゲルがモデル接着剤レジンに組み込まれることで、(疎水性ナノゲルを用いた場合に得られる結果とは異なり)BisGMA/HEMA/ナノゲル/水混合物における相分離が著しく抑制されたことが判明した。追加の利点として、瞬時に水に分散し得るナノゲルを添加することで、以下に記載するように、酸素阻害を低減させることができる。
【0103】
一態様において、驚くべきことに、BisEMAとイソボルニルメタクリレート(IBMA)をベースとする中程度に疎水性の反応性ナノゲル25重量%のみによって、BisGMA/HEMA実験用接着剤の乾燥曲げ強さを33.8±1.3MPaから44.9±2.6MPaに増大できることが判明している(Moraes, 2011b)。しかし、この対照に関しては完全に水と平衡化させた場合の湿潤接着強さが15.7±2.0MPaまで半減したのに対して、ナノゲル変性接着剤の湿潤強さは変化しないまま46.7±1.2MPaであったという、決定的に重要な結果が得られた。ナノゲル接着剤については、さらに弾性率も乾燥条件(0.80±0.01GPa)と湿潤条件(0.80±0.04GPa)との間で変化しなかったのに対して、対照では、水中での貯蔵時に0.45±0.01GPaから0.29±0.03GPaへと低下した。微小引張による象牙質の結合強度試験では、ナノゲル変性接着剤は、対照と比べて強度に耐久性の結合を生じた。脱灰された象牙質へのナノゲルの効果的な浸透を、蛍光タグを付した類似のナノゲルを使用することにより共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて評価した。本研究で使用したナノゲルは比較的疎水性が高く、(エタノールまたはアセトン)と溶媒和させた接着剤の使用を必要とした。象牙質への結合の優れた結果が得られたが、実際には該疎水性ナノゲルによって、ナノゲル不含の対照レジンと比べて水濃度がより低くても接着剤において相分離が促進された。
【0104】
ナノゲル合成の間に分子量および多分散度を制御する能力は、溶媒およびモノマー中での実際のナノゲル負荷量の限界を最大限にするための優れた補助的作用であると予想される。なぜなら、これによって界面の全表面積および粒子間の間隔のより良好な制御が提供されるためである。各ナノゲル粒子は、多く(10~100個)の共有結合によって互いに結合した鎖から構成されており、個々のポリマー鎖長をより均一にすることによって、それに応じて分子量および粒径分布の範囲がより狭いナノゲルが得られるものと予想される。必ずしもナノゲルの分子量と寸法との間に直接的な相関関係があるわけではない。それというのも、内部分岐密度は、膨潤直径に対して逆の影響を及ぼすためである。歯科用接着剤において使用するためのナノゲルの場合には、分子量および多分散度は、モノマーまたは溶媒で膨潤させたナノゲル構造のサイズおよびサイズ分布と相関関係がある。歯科用接着剤用途の場合には、脱灰されたコラーゲンマトリックスの空間的制約に適応するために、ナノゲル成分を適切なサイズにする必要がある。一態様において、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)「リビング」ラジカル重合機序を用いることで、多分散指数が極めて低いナノゲルが製造される(PDI=1.3)。この態様は、ナノゲルのサイズおよびサイズ分布を、使用する特定のナノゲル変性接着剤の可溶性パラメーターに基づいてコラーゲン原線維間の間隔に適合するように制御するために利用される(Pashley, 2007)。コラーゲンマトリックス中の間隙の架け橋にするのに必要な小球状のナノ粒子の直径については、約20~30nmの目的寸法がナノゲルテクノロジーによく適合する。より狭いナノゲルサイズ分布にすることについての、考えられるその他の利点は、所与のナノゲル負荷量での粘度が低下することにある。比較的疎水性の高いポリマー材料の水への分散を可能にする両親媒性ナノゲルの設計に関しては、RAFT重合を用いて比較的疎水性の高いナノゲル構造を形成させることができ、次いでこれを「リビング」鎖末端へのより親水性の高いモノマーの付加により続けることで、固有のコポリマーが得られる。この種のナノゲルは、「スマート」材料であると考えられ、その際、局所的な環境に応じて親水性基を後退させてもよいし拡張させてもよい。
【0105】
他の実施形態において、溶媒分散型ナノゲル(純粋に親水性であるナノゲルについては水であり、両親媒性ナノゲルについては水またはエタノール、アセトンなどのいずれか(混合溶媒を含む)である)を用いて、接着剤レジンの成分として重合させた特定のナノゲルが寄与する可能性のあるネットワーク構造および特性を明らかにする。不活性溶媒を分散媒として使用することにより、例えばナノゲル構造およびTg、反応性基の濃度、溶媒の極性、粒径およびナノゲル負荷量のレベルといった特徴が、最終的なネットワークの構造および特性にどのように影響を与えるかを調べることができる。効果的なナノゲルの凝集および3Dネットワーク構造の拡張を達成するのに必要なナノゲル負荷量の限界レベルを明らかにした。様々な制御パラメーターをシステマチックに変化させることで、同一のナノゲルから極めて様々なポリマー構造が生じることが判明した。溶媒中で形成されるナノゲルをベースとするポリマーの物理的解析(反応速度、ゲル分率、ゲルのSEM、架橋密度のDMA測定)とレオロジーデータを合わせて、ナノゲルパーコレーション閾値および緻密な充填の限界を特定することができる。
【0106】
溶媒分散型ナノゲルは、ナノゲル負荷量が比較的低い場合には多孔質3Dネットワークを生成するのに対して、負荷量が比較的高レベルである場合には、重合時にナノゲル構造が完全につながって重なって分布することから、同一の溶媒中での同一のナノゲルによって緻密なネットワークが生成されることが判明した(例えば
図8を参照)。(現在のところ80重量%までの)極めて高いナノゲル負荷量を達成することができており、これによって極めて緻密な新規のネットワーク構造が生じることが認識されるべきである。
【0107】
一態様において、驚くべきことに、極めて疎水性の高い構成単位(例えば>50モル%のBisEMAまたはUDMA)を使用して、水に自由に分散可能であるナノゲルを製造することができる。したがって、両親媒性ナノゲルによって、水が存在していても緻密で強くかつ均一なポリマーネットワークを製造することができる方法が提供される。BisGMA/HEMAのような接着剤レジンは、単一の溶媒よりも非常に複雑であるため、該コモノマーの水素化したバージョンを、不活性ナノゲル担体としての役割を果たすべく使用した。これによって、モノマー状態でのレオロジー解析および重合材料のDMA実験を用いて、あるモノマーが他のモノマーを越えて特定のナノゲル材料へと選択的に浸透する能力についても試験しながら、適切なナノゲル負荷量レベルを決定することができる。溶媒分散型ナノゲルは、我々の研究にモノマー中のナノゲル接着剤の知識を与えてくれるであろうが、しかしまた、反応性ナノゲルのみをベースとするモノマー不含の接着剤配合物にも非常に興味が持たれており、これによって、ある範囲の親水特性を示す水と相溶性の緻密なポリマーネットワークが提供される。
【0108】
水分散性またはほぼ水分散性の様々なナノゲルを使用して、水との相溶性を示す通常のポリマー、例えばHEMA-およびポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)の湿潤強さを向上させた。ナノゲルのモノビニルモノマー成分をHEMAからEHEMAへ、そしてE10HEMAへと変更する際に親水特性が増大し、これによって、水との相溶性を犠牲にすることなく、より疎水性の高いジビニルモノマーを組み込むことができるようになる。これらの両親媒性ナノゲル構造では、疎水性モノマーと親水性モノマーとの間の相溶性または均一性が、それらの予め形成された共有結合によって強化され、その結果、水中であっても比較的疎水性の高いナノゲルを首尾よく用いることができる。これを実証するため、負荷量50重量%の様々な反応性ナノゲルをHEMAモノマーに導入することにより、十分に分散した完全に透明な試料が生成され、次いでこれを塊状で光重合させた。乾燥弾性率は3点曲げモードであり、次に、平衡の吸水が達成されるまで追加の試料を水中で貯蔵した。吸水量および湿潤弾性率を調べ、HEMAホモポリマーから得られた結果と比較した。ナノゲル変性pHEMAの乾燥弾性率は、100倍まで劇的に向上した。しかし、湿潤状態での対照とナノゲル変性材料との差異は、さらにより明白であった。吸水結果に基づいて、実際にその湿潤弾性率を1000倍まで上昇させつつポリマーの吸水を増大させるE10HEMA/BisGMAまたはE101-1EMA/BisEMAのような水と相溶性のナノゲルの例があることは、注目に値する。
【0109】
もう1つの実施形態において、本開示は、モノマー不含の巨視的ポリマーネットワークを提供する方法であって、
(i)少なくとも1種の官能性モノマーと、少なくとも1種のジビニルモノマーと、二官能性連鎖移動剤と、開始剤とを含む第一のモノマー混合物を混合すること、
(ii)前記の第一のモノマー混合物を重合させて、官能化ナノゲルを形成させること、
(iii)前記官能化ナノゲルと反応性オレフィン化合物とを反応させて、ペンダントオレフィン基を有する反応性ナノゲルを形成させること、
(iv)前記反応性ナノゲルを不活性マトリックスに加えて、第二の混合物を生成すること、および
(v)ナノゲル負荷量がパーコレーション閾値を超えている前記第二の混合物を重合させることにより、モノマー不含の巨視的ポリマーネットワークを提供し、ここで前記ポリマーネットワークは、ナノゲル構造および不活性マトリックス内の負荷量レベルのみに依存する強度を有すること
を含む方法に関する。一態様において、ペンダントオレフィン基は、スチリル基、アリル基、ビニルエーテル基および(メタ)アクリレート基から選択される。一態様において、反応性オレフィン化合物は、(メタ)アクリロイルクロリド、無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートビニルベンゼンクロリド、クロロエチルビニルエーテル、アリルクロリドおよびイソシアナトメチル(メタ)アクリレートから選択される。もう1つの態様において、二官能性連鎖移動剤は、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、2-メルカプト-3-ブタノール、3-メルカプト-2-メチル-ブタン-1-オール、3-メルカプト-3-メチル-ヘキサン-1-オール、3-メルカプトヘキサノール、3-メルカプトプロピオン酸およびシステインから選択される。一態様において、反応性ナノゲルは、不活性マトリックスの重量に対して約10重量%~約80重量%添加される。一態様において、反応性ナノゲルは、不活性マトリックスの重量に対して約50重量%~約80重量%添加される。一態様において、反応性ナノゲルは、不活性マトリックスの重量に対して約5重量%~約35重量%添加される。一態様において、反応性ナノゲルは、不活性マトリックスの重量に対して約15重量%~約50重量%添加される。
【0110】
我々のグループの近年の研究は、ナノゲル(NG)を合成して架橋ネットワークに組み込み、かつ重合反応速度の効率について妥協することなく、固有の有利な材料特性を向上および/または保持しつつ特定のバルクネットワーク特性を変化させる該ナノゲルの能力について特性決定を行うことに専心している。汎用性のあるNGを反応性部位で官能化させることもでき、それによってホストポリマーマトリックス内で共有結合させることができ、一方で、官能化されていないNGはポリマー内で不活性な充填剤として挙動し得る。各NGが互いに緻密に結合した鎖を形成している離散的な短いポリマー鎖の形成を実行できるモノマーの無制限の選択を考慮すると、他の所望のネットワークを保持しつつ、そのガラス転移温度、収縮応力またはその親水性といった特定のネットワーク特性を選択的に変更し得るこうしたナノスケールの光学的に透明な粒子を合成できる能力がある。NGは、溶液重合反応により合成された小球状で小型でかつ高度に架橋したポリマーナノ粒子(通常は5~50nmのサイズ)であり、したがって適切な溶媒またはモノマーに分散させた際に、予測通り膨潤する能力を保持している。NGをMMAのような線状ポリマーネットワークに組み込むことにより、モノマーと一緒に膨潤するNGの能力を利用して、モノマーを局所的に含有し、かつ局所的な重合「ホットスポット」を生成することにより重合速度を高めることができる。この「ホットスポット」は、粘度を増大させるとともに、系の全反応速度の向上に寄与する。他の添加剤とは異なり、不活性NGを組み込むことにより達成される反応速度の向上を、ペアレントネットワークの線形性に影響を与えない様式で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1】
図1は、例1で詳説する、反応性および非反応性ナノゲルの双方についての、種々のナノゲル濃度でのMMA-ナノゲル混合物に関するメチルメタクリレート(MMA)の重合度を時間の関数として示す(すなわち光重合反応速度の)グラフである。
【
図2】
図2は、例1で詳説する、種々のUDMA濃度でのMMA-UDMA混合物に関するメチルメタクリレート(MMA)の重合度を時間の関数として示す(すなわち光重合反応速度の)グラフである。
【
図3】
図3は、例1で記載する、種々のナノゲル濃度での、MMAフィルムにおける反応性ナノゲル(上方プロット群)およびMMAフィルムにおける非反応性ナノゲル(下方プロット群)のDMA引張り測定値のグラフである。
【
図4】
図4は、例1で記載する、種々のUDMA濃度での、MMAフィルムにおけるUDMAのDMA引張り測定値のグラフである。
【
図5】
図5は、例1で記載する、FTIRピーク面積から求めた初期二重結合濃度をナノゲル濃度の関数として示すグラフである。
【
図6】
図6は、例1に記載する、透過率%を、種々の濃度のナノゲルおよびUDMAを含有するMMAフィルムの波長の関数として示すグラフ(すなわちUV-Visスペクトル)である。
【
図7】
図7は、非連続的、パーコレーション閾値、共連続的および密集と称する、ナノゲル濃度または負荷量のレベルを示す概略図を含む。
【
図8(a)】
図8(a)は、フリーラジカル溶液重合による70/30 IMBA/UDMA反応性ナノゲル(R2)の製造を示す図である。
【
図8(b)】
図8(b)は、フリーラジカル溶液重合による70/30 IMBA/UDMA非反応性ナノゲル(R5)の製造を示す図である。
【
図9】
図9は、BisGMA/TEGDMA(重量比7:3)中に分散させた80/20 IBMA/BisEMAナノゲルの粘度を、ナノゲル負荷量およびナノゲルサイズの関数として示すグラフである。ナノゲル分子量の増加にともなってレジン粘度が増加することが見てとれる。
【
図10】
図10は、様々なナノゲル組成物のガラス転移温度(Tg)のグラフである。ナノゲル合成において使用されるモノマー:イソデシルメタクリレート(IDMA)、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート(BisEA)、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、エチルメタクリレート(EMA)、ヒドロキシエチルアクリレート+イソシアナトエチルメタクリレート(HEA+IEM)。
【
図11】
図11は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における低Tgナノゲル(-15℃のTgを有する1:1の比でのIBMA/BisEA)に関するポリマーの靭性を、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。対照および低Tgナノゲル変性線状ポリマーの平均靭性;ナノゲル濃度(重量%)の増加にともなって、靭性が増大することが見てとれる。
【
図12】
図12は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における低Tgナノゲル(-15℃のTgを有する1:1の比でのIBMA/BisEA)の応力-ひずみを、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。機械的試験(MTS):3点曲げ、クロスヘッド速度1mm/分、試料寸法:2mm×2mm×25mm。
【
図13】
図13は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における低Tgナノゲル(-15℃のTgを有する1:1の比でのIBMA/BisEA)に関する平均曲げ強さを、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。
【
図14】
図14は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における低Tgナノゲル(-15℃のTgを有する1:1の比でのIBMA/BisEA)に関する平均曲げ弾性率を、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。低Tgナノゲル濃度の増加によって、曲げ弾性率が低下する。
【
図15】
図15は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における低Tgナノゲル(-15℃のTgを有する1:1の比でのIBMA/BisEA)に関する転化率パーセンテージを、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。低Tgナノゲル濃度の増加によって、全転化率が向上する。
【
図16】
図16は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における高Tgナノゲル(80℃のTgを有する7:3の比でのIBMA/UDMA)に関するポリマーの靭性を、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。ナノゲル濃度(重量%)の増加にともなって、靭性が増大することが見てとれる。
【
図17】
図17は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における高Tgナノゲル(80℃のTgを有する7:3の比でのIBMA/UDMA)に関する応力-ひずみを、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。機械的試験(MTS):3点曲げ、クロスヘッド速度1mm/分、試料寸法:2mm×2mm×25mm。
【
図18】
図18は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における高Tgナノゲル(80℃のTgを有する7:3の比でのIBMA/UDMA)に関する平均曲げ強さを、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。
【
図19】
図19は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における高Tgナノゲル(80℃のTgを有する7:3の比でのIBMA/UDMA)に関する平均曲げ弾性率を、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。
【
図20】
図20は、高Tgポリマーマトリックス(約85~95℃のTgを有するイソボルニルアクリレートモノマー)における高Tgナノゲル(80℃のTgを有する7:3の比でのIBMA/UDMA)に関する平均最終転化率パーセンテージを、ナノゲル負荷量の関数として示すグラフである。低Tgナノゲル濃度の増加によって、全転化率が低下する。
【
図21】
図21は、低Tgポリマーマトリックス(-54℃のTgを有するブチルアクリレートモノマー)における高Tgナノゲル(80℃のTgを有する7:3の比でのIBMA/UDMA)に関する平均曲げ弾性率を示すグラフである。
【
図22】
図22は、低Tgポリマーマトリックス(-54℃のTgを有するブチルアクリレートモノマー)における高Tgナノゲル(80℃のTgを有する7:3の比でのIBMA/UDMA)に関する平均最終転化率パーセンテージを示すグラフである。低Tgナノゲル濃度の増加によって、全転化率が向上する。
【
図23】
図23は、IBMA/UDMAナノゲル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ホモポリマーおよびPMMA+1重量%IBMA/UDMAナノゲルに関する保持体積の関数としての屈折率のグラフを含む。転化率が5%となるまで光硬化させ、残留MMAモノマーを蒸発させ、沈殿により単離した高分子量種をTD-GPCにより特性決定した。低ナノゲル濃度の増加によって、ゆるく架橋した高分子量のポリマーが得られる。
【
図25】
図25は、MMA-UDMA対照ネットワークと併せた、MMA-ナノゲル配合物のヤング率、最大強さ、破断伸びのパーセンテージおよび靭性のグラフを含む。このグラフは、二重結合濃度の減少が、ポリマーの機械的特性に著しい影響を及ぼすことを示している。
【0112】
実施例
この目的に向けて、官能化NGおよび非官能化NGの双方を種々の濃度で有するMMAネットワークを製造し、そのネットワークキネティクス、サーモメカニカル特性および機械的特性について決定した。種々の濃度のウレタンジメタクリレートUDMAを有する試料を対照として利用した。本試験で利用したNGは、108℃のガラス転移温度を有する十分に特性決定されたNGであり、ペアレントMMAマトリックスのサーモメカニカル特性がNG添加剤によって受ける影響が最小限となるように該NGを選択した。
【0113】
材料および試料の調製
MMA、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、Ciba(登録商標)IRGACURE(登録商標)819(Ir.819)、2-メルカプトエタノール(2-ME)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、メチルエチルケトン(MEK)およびテトラヒドロフラン(THF)を、すべて未処理のまま使用した。
図8を参照。
【0114】
厚さ1/32インチ(0.8mm)のシリコーンスペーサーを備えたRain-Xにて処理済みのガラススライドの間にモノマー配合物を流し込むことによりポリマーフィルムを製造した。該フィルムを、通常の重合ボックス内で水銀アークランプ(320~390nm、10mW/cm2)下で硬化させた。
【0115】
ナノゲル合成および特性決定
ナノゲルの分子量を、Viscotek-270二重検出器、VE3580 RI検出器に基づく、カラム温度35℃でテトラヒドロフラン(0.35mL/分)を移動相として使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。
【0116】
ポリマーの特性決定
試料の光重合を、NICOLET iS50FT-IR(Thermo Scientific, USA)にて取得したFTIRスペクトル(近赤外線モニター、波長6,125cm-1)を観察することによりモニタリングした。
【0117】
材料の動的分析
TA Instruments社製Q800 DMAを使用して、ガラス転移温度および弾性率を測定した。種々のナノゲル重量分率を有するポリマーフィルム(寸法16mm×4mm×0.8mm)を製造し、0~200℃で3℃/分の温度勾配速度にて周波数1Hzの正弦波応力を印加して、DMA多変形モードを利用した。ガラス転移温度Tgをtanδ曲線のピークとして求め、ゴム弾性率をTg+50℃で測定した。
【0118】
UV可視分光光度計(Evolution 201, Thermo Scientific)を使用して、種々のナノゲル重量分率でMMAフィルムを通過する光の透過率%を定量化した。フィルム(厚さ0.8mm)を石英キュベットの表面上に取り付け、分光計の試料コンパートメントに注意深く導入した。
【0119】
配合物の機械的試験を、万能試験機(Mini Bionix II, MTS, Eden Prairie, MN, USA)にて、スパン10mm、クロスヘッド速度1mm/分の3点曲げで行った。ガラススライドの間に挟まれた2mm×2mm×15mmの弾性体モールドから製造して光重合させた棒状試験片について試験を行った。
【0120】
結果
表1(以下)に、例1で使用したIBMA/UDMAナノゲルのGPCおよびDLSの結果を示す。非反応性ナノゲルを2-MEで処理して、ヒドロキシル基を有するすべての未反応部位を停止させた。反応性ナノゲルをさらに官能化させて、メタクリレート官能基をウレタン結合によりヒドロキシル部位に付加させた。
図8を参照。
【0121】
【0122】
表2に、MMA-NG-R2ナノゲル試料、MMA-NG-R5ナノゲル試料およびMMA-UDMA試料のサーモメカニカル特性決定を示す。ゴム弾性率の著しい増大により分かるように、これは、MMA-NG-R2試料およびMMA-UDMA試料がポリマーを架橋させていることを示している。
【0123】
【0124】
図1:反応性および非反応性ナノゲル(a)およびUDMA(b)を様々な重量負荷量で含有するMMAの、リアルタイムFTIR重合反応速度。いずれの配合物も、Ir.819光開始剤を2重量%含有する。メタクリレート転化率を、6,165cm
-1で炭素二重結合の倍音バンドの面積から算出した。実験開始後最初の10秒間で、試料に100mW/cm
2の強度で365nmのUV光を照射した。MMAにナノゲル、特に反応性ナノゲルを15重量%以上添加した場合には、さらに反応速度が高まる。自動的な加速は、反応性ナノゲルを用いた場合により早く生じる。非反応性ナノゲルを50重量%用いた場合、物理的に架橋した最終的なMMA/ナノゲルポリマーは、完全に可溶性である。MMAにおいて反応性ナノゲルを15重量%以上用いた場合には、不溶性ポリマーが著しく形成された。
【0125】
図2:直接的な共重合に基づくMMAの均一な架橋。反応性および非反応性ナノゲル(a)およびUDMA(b)を様々な重量負荷量で含有するMMAの、リアルタイムFTIR重合反応速度。いずれの配合物も、Ir.819光開始剤を2重量%含有する。メタクリレート転化率を、6,165cm
-1で炭素二重結合の倍音バンドの面積から算出した。実験開始後最初の10秒間で、試料に100mW/cm
2の強度で365nmのUV光を照射した。UDMAのような架橋コモノマーをMMAに添加することにより、ポリマー全体にわたって多少なりとも空間的に均一なネットワークが形成され、その際、ネットワーク密度は、使用する架橋剤の割合と直接的に相関関係にある。ネットワーク形成に付随して易動性が低下することによって、共重合反応速度が全体的に高まる。ナノゲルをベースとする架橋によって、不均一なネットワーク形成を導入することができ、その際、変化していない線状のPMMA構造を保持した領域も可能である。
図2は、ナノゲルではなくUDMAを添加した場合のDMAデータを示し、これは、添加したUDMAによって、反応速度は高まるものの、PMMAのサーモメカニカル特性が変化してしまい、DMAにおけるゴム弾性率により示されるとおり、PMMAはもはや線状ポリマーではないことを示している。それに対して、非反応性ナノゲルをMMAに添加した場合には、バルクモノマーは線状ポリマーのままで、反応速度の向上が観察された。
【0126】
表3は、光重合させたNG-R5-MMAポリマー試料のGPC分析を示す。これは、不活性NG-R5ナノゲルを用いた重合後にベースMMAポリマーの線形性が保持されていることを示している。
【0127】
【0128】
図3および4:反応性NG、非反応性NGおよびUDMAを負荷させたPMMAフィルムのガラス転移温度およびゴム弾性率の測定。温度を3℃/分の勾配とし、振幅振動は20μmであった。tanδ曲線のピークからガラス転移温度を求める。T
G+50℃での貯蔵弾性率のプラトーから架橋フィルムのゴム弾性率を求めた。MMA/PMMA対照において、あまり明確ではないゴム弾性率プラトーが認められ、負荷量が比較的低い反応性ナノゲルは、より熱可塑性の高い性質のポリマーであることを示している。
【0129】
図5:MMAへの反応性ナノゲルNGの負荷量に対する、FTIRピーク面積から求めた初期二重結合濃度(6,250cm
-1~6,100cm
-1、ビニル倍音ピーク)。いずれの測定物も、一定の厚さにするために同一のスペーサー材料を使用して作成した。n=3の実験についてデータの平均をとった。NGをMMAに代えて負荷させるにつれて、全二重結合濃度が低下する。
【0130】
図6:UV分光法により測定したNG-MMAフィルムおよびUDMA-MMAフィルムの光学的透過性の比較。いずれのフィルムも、光開始剤による強度のUV吸収の開始前に匹敵する透明性を示した。
【0131】
図23:ナノゲルの分子量が約10倍に増大し、サイズが3倍に増大しても、この低負荷量レベルのナノゲルでは、長いネットワークは形成されない。
【0132】
不活性ナノゲルおよび反応性ナノゲルのいずれによっても、MMAモノマーのTgを保持しつつMMAからPMMAへの光重合反応速度を著しく高めることができる。
【0133】
不活性ナノゲルによって、光重合反応速度を高めつつ、MMAポリマーの線形性を保持することができる。
【0134】
反応性ナノゲルによって、25%のナノゲル濃度まで材料の機械的特性が保持され、一方で、不活性ナノゲルの存在によってPMMAポリマーの強度が著しく変化する。
【0135】
不活性ナノゲルと反応性ナノゲルとの組合せを利用することで、最適な反応速度特性およびPMMAネットワークに必要な機械的強度を得ることができる。
【0136】
本発明の原理について図示および記載したが、このような原理から逸脱することなく本発明を配置構成および細部について変更してよいことは当業者には明らかである。
【0137】
様々な実施形態および説明のための例を用いて本発明の材料および方法を説明したが、本明細書に記載した材料および方法に、本発明の構想、趣旨および範囲から逸脱することなく修正を加えてよいことは、当業者には自明であろう。こうした類似の置換形態および変更形態はいずれも、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨、範囲および構想に包含されると考えられることは、当業者には自明である。
【0138】
記述的支持を提供する必要がある限り、添付の特許請求の範囲の主題および/または文面の内容全体を参照により本明細書に援用する。本明細書のいずれの読み手も、本明細書に具体的に開示されたまたは具体的には開示されていない記載された特徴、要素またはステップがなくても、本明細書に記載されたおよび特許請求された例示的実施形態を適切に実施できることを理解するであろう。
【0139】
本開示全体を通して、実体「1つの(a)」または「1つの(an)」なる用語は、1つまたは複数の該実体を意味する。例えば「1つのテルペン(a terpene)」とは、1つまたは複数の「テルペン(terpenes)」を示すと解釈される。したがって、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の(one or more)」および「少なくとも1つの(at least one)」なる用語は、本明細書中では互換的に使用することができる。
【0140】
さらに、本明細書中で使用する場合の「および/または」とは、2つの特定の特徴または成分のそれぞれが、他方のものの有無にかかわらずに特定して開示されているものとして解釈される。したがって、本明細書中の「Aおよび/またはB」などの語句において使用する場合の「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含むことを意図している。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの語句において使用する場合の「および/または」という用語は、以下の態様のそれぞれを包含することを意図している:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0141】
本明細書中で「含む(comprising)」という用語を用いて態様が説明されている場合にはいずれも、「からなる(consisting of)」および/または「主に~からなる(consisting essentially of)」により記載される他の類似の態様も提供されるものと解釈される。
【0142】
別段の記載がない限り、本明細書中で使用される技術用語および科学用語は、本開示に関連する通常の当業者により通常解釈されるのと同様の意味を有する。数値範囲は、範囲を画定する数を含む。本明細書中で提供される見出し語は、本開示の様々な態様を限定するものではなく、本明細書全体を参照して解釈することができる。したがって、下記で定義される用語は、本明細書の全体を参照することによってより完全に定義される。