(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】乗物用内装材のポケット構造
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20220829BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B60R7/04 Z
B60N3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019013369
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 定一
(72)【発明者】
【氏名】ハーベスト タロウ
(72)【発明者】
【氏名】大河内 裕子
(72)【発明者】
【氏名】水井 雅量
(72)【発明者】
【氏名】工藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成倫
(72)【発明者】
【氏名】水野 憲明
(72)【発明者】
【氏名】井元 聖二
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-076549(JP,U)
【文献】実開昭61-006437(JP,U)
【文献】特開平07-329643(JP,A)
【文献】実開昭61-165242(JP,U)
【文献】登録実用新案第3147383(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用内装材においてポケットを形成するための乗物用内装材のポケット構造であって、
可撓性を有するシート状のものとされ、前記ポケットにおける乗物室内側の面をなすポケット前面部と、前記ポケット前面部から左右方向の各々に向かって延び出した少なくとも一対の側方延出部と、前記ポケット前面部から下方に向かって延び出した少なくとも1つの下方延出部と、を備えたポケット部材と、
前記乗物用内装材に設けられ、前記少なくとも一対の側方延出部および前記少なくとも1つの下方延出部を挿通させる複数のスリットと、
を含んで構成され、
前記少なくとも一対の側方延出部および前記少なくとも1つの下方延出部を乗物室内側から前記複数のスリットに挿入し、前記乗物用内装材の乗物室外側において、前記少なくとも1つの下方延出部と前記少なくとも一対の側方延出部とを互いに固定することで、前記乗物用内装材の乗物室内側の面と前記ポケット部材との間に前記ポケットを形成する乗物用内装材のポケット構造。
【請求項2】
前記ポケット部材には、前記少なくとも一対の側方延出部の端部と前記少なくとも1つの下方延出部の端部との各々に、面ファスナーが設けられ、
前記少なくとも1つの下方延出部と前記少なくとも一対の側方延出部とを、前記面ファスナーによって互いに固定するように構成された請求項1に記載の乗物用内装材のポケット構造。
【請求項3】
前記ポケット部材は、2つの面のうちの前記ポケット前面部の乗物室内側の面を含む表面に、前記面ファスナーを構成するループが配されるとともに、2つの面のうちの前記表面とは反対側の面である裏面における前記一対の側方延出部の両者の端部に、前記面ファスナーを構成するフックが配されたものである請求項2に記載の乗物用内装材のポケット構造。
【請求項4】
前記ポケット部材は、一対の前記側方延出部と単一の前記下方延出部とを備えるものとされた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用内装材のポケット構造。
【請求項5】
前記乗物用内装材は、乗物のフロアに敷設されるカーペットである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用内装材のポケット構造。
【請求項6】
前記カーペットが敷設される乗物のフロアには、上方に向かって立ち上がる立ち上がり面が形成されており、
前記カーペットは、前記立ち上がり面を覆う箇所に前記複数のスリットが形成された 請求項5に記載の乗物用内装材のポケット構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用内装材においてポケットを形成するための乗物用内装材のポケット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乗物用内装材としての車両用ドアトリムにポケットを形成するための構造が記載されている。その構造は、上部が開口する箱型のポケットを、アッパーサイド部とロアサイド部との間において、それらの各々に溶着加締めあるいはネジ等の締着手段を用いて固着する構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているようなポケット構造では、ネジ等の別部品が必要であったり、その取付部を配する位置に制約等があってポケットの取り付けの自由度が低かったりする等の問題がある。また、その他にも、ポケットを形成するための構造として、ポケットを乗物用内装材と一体的に形成する構造も考えられる。しかしながら、このポケット構造のようにポケットが基材から突出して形成されていると、表皮材に深絞り加工が必要となったり、表皮材をその形状に合わせたものとするために裏打ち材が必要となったりする等の問題が生じる。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、乗物用内装材において簡便な作業によってポケットを形成可能なポケット構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の乗物用内装材のポケット構造は、
乗物用内装材においてポケットを形成するための乗物用内装材のポケット構造であって、
可撓性を有するシート状のものとされ、前記ポケットにおける乗物室内側の面をなすポケット前面部と、前記ポケット前面部から左右方向の各々に向かって延び出した少なくとも一対の側方延出部と、前記ポケット前面部から下方に向かって延び出した少なくとも1つの下方延出部と、を備えたポケット部材と、
前記乗物用内装材に設けられ、前記少なくとも一対の側方延出部および前記少なくとも1つの下方延出部を挿通させる複数のスリットと、
を含んで構成され、
前記少なくとも一対の側方延出部および前記少なくとも1つの下方延出部を乗物室内側から前記複数のスリットに挿入し、前記乗物用内装材の乗物室外側において、前記少なくとも1つの下方延出部と前記少なくとも一対の側方延出部とを互いに固定することで、前記乗物用内装材の乗物室内側の面と前記ポケット部材との間に前記ポケットを形成することを特徴とする。
【0007】
この構成のポケット構造は、複数の延出部をスリットに挿入し、それら複数の延出部を乗物室外側において中央に向かって折り返して先端を重ね合わせ、その重ね合わせた部分において互いに固定することで、乗物室内側にポケットを形成することができる。したがって、この構成のポケット構造によれば、ポケット部材の取り付けに別部材が必要なく、そのポケット部材の乗物用内装材への取付作業は簡便なものとなり、乗物用内装材におけるポケットを容易に形成することができる。なお、複数の延出部同士の固定方法は、特に限定されないが、接着テープや面ファスナーを用いれば、ポケット部材の取付作業をより簡便なものとすることができる。
【0008】
このポケット構造は、例えば、樹脂性の基材に対してポケット部材を取り付ける構成であってもよく、基材を被覆する表皮に対してポケット部材を取り付けるような構成であってもよい。なお、このポケット構造において、ポケットの開口側を上方として記載しているが、このポケット構造は、上下に延びる壁部のような箇所に採用することに限定されず、例えば、乗物の天井やフロア等の平面状の箇所に採用することもできる。
【0009】
また、このポケット構造は、側方延出部は少なくとも一対あればよく、下方延出部は少なくとも1つあればよい。例えば、上下方向に長いポケットを形成する場合に、複数対の側方延出部を設けたり、左右方向に長いポケットを形成する場合に、複数の下方延出部を設けたりすることができる。ただし、ポケット部材の取付作業の簡便化という観点からすれば、側方延出部は一対のみ、下方延出部は1つのみであることが望ましい。
【0010】
上記構成において、前記ポケット部材には、前記少なくとも一対の側方延出部の端部と前記少なくとも1つの下方延出部の端部との各々に、面ファスナーが設けられ、前記少なくとも1つの下方延出部と前記少なくとも一対の側方延出部とを、前記面ファスナーによって互いに固定するように構成することができる。
【0011】
この構成のポケット構造は、複数の延出部同士の固定方法が面ファスナーに限定されている。つまり、この構成のポケット構造は、面ファスナーのループ(オスファスナー)とフック(メスファスナー)とを重ね合わせるだけで、ポケット部材の取り付けが完了するため、ポケット部材の取付作業がより簡便なものとなる。
【0012】
また、上記構成において、前記ポケット部材は、2つの面のうちの前記ポケット前面部の乗物室内側の面を含む表面に、前記面ファスナーを構成するループが配されるとともに、2つの面のうちの前記表面とは反対側の面である裏面における前記一対の側方延出部の両者の端部に、前記面ファスナーを構成するフックが配されたものである構成とすることができる。
【0013】
この構成のポケット構造においては、側方延出部および下方延出部をスリットに挿通させた後、まず、下方延出部を折り返すと、面ファスナーのループが乗物室外側に向くことになる。その状態で、一対の側方延出部の一方を折り返すことで、その端部裏面側に配されたフックを下方延出部のループに重ね合わせて結合させることができる。そして、その状態においては、一対の側方延出部の一方の端部表面側が、つまり、ループが乗物室外側に向いているため、最後に、一対の側方延出部の他方を折り返すことで、側方延出部の一方の端部表面側(ループ)に対して他方の端部裏面側(フック)を結合させることができる。したがって、この構成のポケット構造によれば、一対の側方延出部をいずれから折り返しても取り付けることができ、ポケット部材の取付作業の簡便化が図られている。
【0014】
また、上記構成において、前記ポケット部材は、一対の前記側方延出部と単一の前記下方延出部とを備えるものとされた構成とすることができる。
【0015】
この構成のポケット構造は、ポケット部材が概してT字形状のものとされている。この構成のポケット構造は、側方延出部が一対のみであり、かつ、下方延出部が1つのみであるため、ポケット部材の取付作業がより簡便なものとなる。
【0016】
また、上記構成において、前記乗物用内装材は、乗物のフロアに敷設されるカーペットである構成とすることができる。
【0017】
この構成のポケット構造は、ポケット部材を取り付ける対象がカーペットに限定されている。例えば、乗物のシートを起こした状態において必要となる部品(車椅子を固定するための部品等)を収納するためのポケットを、シート下のフロアに形成するような場合に、この構成のポケット構造を採用することができる。
【0018】
また、上記構成において、前記カーペットが敷設される乗物のフロアには、上方に向かって立ち上がる立ち上がり面が形成されており、前記カーペットは、前記立ち上がり面を覆う箇所に前記複数のスリットが形成された構成とすることができる。
【0019】
この構成のポケット構造において、立ち上がり面は、鉛直方向に延びる面であることに限定されず、傾斜面であってもよい。この構成のポケット構造は、ポケットの開口が上方を向いているため、水平方向の動きが大きな(加減速が大きな)乗物のポケットに好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、乗物用内装材において簡便な作業によってポケットを形成可能なポケット構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例であるポケット構造が採用された車両の車室内を示す図である。
【
図2】
図1に示した車両の車室内を示す側面図である。
【
図3】車椅子に乗った乗員を、
図1に示した車両に乗せた状態を示す側面図である。
【
図4A】本発明の実施例であるポケット構造の主体となる第1ポケット部材の表面の展開図である。
【
図4B】本発明の実施例であるポケット構造の主体となる第1ポケット部材の裏面の展開図である。
【
図5A】本発明の実施例であるポケット構造の主体となる第2ポケット部材の表面の展開図である。
【
図5B】本発明の実施例であるポケット構造の主体となる第2ポケット部材の裏面の展開図である。
【
図6】
図5A,
図5Bに示した第2ポケット部材をフロアカーペットに取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図7】第2ポケット部材のフロアカーペットへの組み付け手順を示す図である。
【
図8】第2ポケット部材をフロアカーペットに組み付けた状態を、フロアカーペットの背面側からの視点において示す斜視図である。
【
図9】第2ポケット部材をフロアカーペットに組み付けた状態を拡大して示す側面断面図である。
【
図10】他の実施形態のポケット構造を示す斜視図である。
【
図11】さらに他の実施形態のポケット構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0023】
本発明の実施例であるポケット構造は、
図1および
図2に示す車両の車室内に形成された3つのポケット10a,10b,10cに採用されている。本実施例のポケット構造は、
図1および
図2に示すように、車両のフロア11に敷設された車両用内装材(乗物用内装材)としてのフロアカーペット12に対して各ポケット10a,10b,10cを形成するためのものである。それら3つのポケット10a,10b,10cは、リアシート13の下側に配されている。詳しく言えば、リアシート13は、車幅方向において左側リアシート(中間部分を含む)13Lと右側リアシート13Rとに2分割されており、3つのポケット10a,10b,10cは、左側リアシート13Lの下側に配されている。そして、フロア11には、リアシート13の下側において、上方に向かって傾斜して立ち上がる立ち上がり面11aが形成されており、その立ち上がり面11aに、3つのポケット10a,10b,10cが車幅方向に並んで配されている。
【0024】
本実施例のポケット構造が採用された車両は、
図1に示すように、リアシート13のシートクッション14を、車両後方側を基点して跳ね上げて、シートバック15に対して接する状態とすることが可能な構成とされている。また、助手席は、シートバックを前側に倒した状態でシートバックとシートクッションとを、車両前方側を基点として立ち上げることができるように構成されており、車室内に前後方向に広いスペースを形成することができる。そして、当該車両は、
図3に示すように、そのスペースに車椅子20に乗ったまま乗車することが可能な車両となっている。
【0025】
乗員が車椅子20に乗ったまま乗車する際には、その車椅子20を車両に固定するための複数の固縛ベルト21(本実施例においては車椅子20が有する4つの車輪に対応する4本の固縛ベルト)や、車椅子20に座っている乗員がシートベルトをするために、シートベルトの延長ベルト22が必要となる。3つのポケット10a,10b,10cは、それら複数の固縛ベルト21および延長ベルト22を収容するためのものとなっている。そのため、それらポケット10a,10b,10cは、車椅子20を乗せる場合に利用できるよう、リアシート13の下側に配されているのである。
【0026】
3つのポケット10a,10b,10cのうち、右側のポケット10aと中央のポケット10bとは、同じ大きさとされ、左側のポケット10cは、それら右側ポケット10aおよび中央ポケット10bに比較して、車幅方向の寸法が小さなものとされている。そして、上記の合計5本のベルト21,22のうち、右側ポケット10aと中央ポケット10bとの各々に2本ずつ収容するとともに、左側ポケット10cに残りの1本を収容することが可能とされている。
【0027】
右側ポケット10aおよび中央ポケット10bは、
図4A,
図4Bに示す第1ポケット部材30を主体として構成され、それら第1ポケット部材30を、フロアカーペット12に取り付けることで、右側ポケット10aおよび中央ポケット10bが形成される。第1ポケット部材30は、
図4A,
図4Bに示すように、上下方向に長い布状(可撓性を有するシート状)の縦方向部材31と、車幅方向(左右方向)に長い布上の横方向部材32と、からなる。第1ポケット部材30は、縦方向部材31の上端部分と横方向部材32の中央部分とが縫い合わされて、概してT字形状のものとされている。
【0028】
第1ポケット部材30において、縦方向部材31と横方向部材32とが縫い合わされた部分30aは、
図1に示すように、右側ポケット10aおよび中央ポケット10bの車室内側の面をなす部分であり、ポケット前面部として機能する部分となっている。そして、横方向部材32におけるポケット前面部30aの車幅方向右側部分30bおよび左側部分30cが、ポケット前面部30aから左右方向の各々に延び出した一対の側方延出部として機能する部分となっている。また、縦方向部材31におけるポケット前面部30aの下側部分30dが、ポケット前面部30aから下方に延び出した下方延出部として機能する部分となっている。
【0029】
図4Aに示す、縦方向部材31および横方向部材32の各々の一方側の面は、ポケット前面部30aの車室内側(乗物室内側)の面を含む表面であり、この面全体が、不織布状のものとなっており、面ファスナーのループ(メスファスナー)を構成するものとなっている。一方、
図4Bに示すように、第1ポケット部材30の裏面には、横方向部材32の左右の両端の各々に、面ファスナーのフック(オスファスナー)33が縫い付けられている。
【0030】
また、左側ポケット10cは、
図5A,
図5Bに示す第2ポケット部材40を主体として構成され、その第2ポケット部材40を、フロアカーペット12に取り付けることで、左側ポケット10cが形成される。その第2ポケット部材40は、第1ポケット部材30と類似するものであり、車幅方向の寸法が異なるものとなっている。つまり、第2ポケット部材40は、縦方向部材41と横方向部材42とからなり、縦方向部材41の上端部分と横方向部材42の中央部分とが縫い合わされて、概してT字形状のものとされている。そして、第2ポケット部材40は、第1ポケット部材30と同様に、ポケット前面部40aと、一対の側方延出部40b,40cと、下方延出部40dと、を備えるものとなっている。さらに、
図5Aに示す、縦方向部材31および横方向部材32の各々の一方側の面が、不織布状のものとなっており、面ファスナーのループ(メスファスナー)を構成するとともに、
図5Bに示すように、第2ポケット部材40の裏面には、横方向部材42の左右の両端の各々に、面ファスナーのフック(オスファスナー)43が縫い付けられている。
【0031】
以上のように構成された2つのポケット部材30がフロアカーペット12に取り付けられることで、右側ポケット10aおよび中央ポケット10bが形成されるとともに、第2ポケット部材40がフロアカーペット12に取り付けられることで、左側ポケット10cが形成される。以下に、その取付方法について、
図6~
図9を参照しつつ詳しく説明する。なお、3つのポケット30,40の取付方法は、同一であるため、第2ポケット部材40を代表して説明することとする。
【0032】
上記のように構成されたポケット部材30,40を取り付けるために、フロアカーペット12には、3組の取付部が設けられている。それら3組の取付部は、
図1に示すように、フロアカーペット12におけるフロア11の立ち上がり面11aを覆う部分に設けられている。それら3組の取付部のうち第2ポケット部材40に対応する取付部50は、
図6に示すように、複数のスリット51,52,53(本実施例においては3本)からなる。そして、それらのうちの2本のスリット51,52(以下の説明において、「縦スリット51,52」と呼ぶ場合がある。)は、上下方向に延びて互いに平行に形成されている。また、もう1本のスリット53(以下の説明において、「横スリット53」と呼ぶ場合がある。)は、2本の縦スリット51,52の間で、かつ、それらの下端側において、車幅方向に延びる形状に形成されている。
【0033】
そして、フロアカーペット12に対するポケット部材30,40の取り付け作業は、フロアカーペット12をフロア11に敷設する前に行われる。上記のように形成された取付部50に対して、第2ポケット部材40を取り付ける際には、まず、第2ポケット部材40における一対の側方延出部40b,40cを折り曲げて、縦スリット51,52に挿入するとともに、下方延出部40dを折り曲げて、横スリット53に挿入する。そして、
図7に示すように、まず、フロアカーペット12の背面側(下面側)において、横スリット53に挿入された下方延出部40dを、上方側(ポケット前面部40a側)に折り返す。次いで、一対の側方延出部40b,40cの一方(
図8においては、車幅方向左側の側方延出部40c)を、ポケット前面部40a側に折り返す。そして、下方延出部40dの表面側つまり面ファスナーのループと、側方延出部40cの裏面側に配された面ファスナーのフックとを、重なり合わせて、互いに結合させる。続いて、一対の側方延出部40b,40cの他方(
図8においては、車幅方向右側の側方延出部40b)を折り返す。その場合、側方延出部40cの表面側に配された面ファスナーのループと、側方延出部40bの裏面側に配された面ファスナーのフック43とを、重なり合わせて、互いに結合させる。それにより、
図9に示すように、フロアカーペット12の車室内側の面と第2ポケット部材40との間に、ポケット10cが形成されるのである。以上で、第2ポケット部材40のフロアカーペット12への取り付けが完了し、同様に、残り2つの第1ポケット部材30を取り付けることで、3つのポケット10,a,10b,10cが形成される。
【0034】
以上のように、本実施例のポケット構造は、複数の延出部40b,40c,40d(30b,30c,30d)をスリット51,52,53に挿入し、それら複数の延出部40b,40c,40dを乗物用内装材であるフロアカーペット12の背面側において中央に向かって(ポケット前面部40a側に)折り返して先端を重ね合わせ、その重ね合わせた部分において互いに固定することで、乗物室内側にポケット10a,10b,10cを形成することができる。したがって、本実施例のポケット構造によれば、ポケット部材30,40の取り付けに別部材が必要なく、そのポケット部材30,40のフロアカーペット12への取付作業は簡便なものとなり、フロアカーペット12におけるポケット10a,10b,10cを容易に形成することができる。なお、複数の延出部40b,40c,40d同士の固定方法は、特に限定されないが、本実施例のポケット構造は、固定方法に面ファスナーが採用されているため、ポケット部材30,40の取付作業がより簡便なものとなっている。
【0035】
また、本実施例のポケット構造は、フロアカーペット12においてフロア11の立ち上がり面11aを覆う箇所に複数のスリット51,52,53が形成されているため、ポケット10a,10b,10cの開口が上方を向いているため、車両の加減速によって、ポケット10a,10b,10cからの収容物の飛び出しが回避される。特に、車両は、急ブレーキ等の可能性があるが、ポケット10a,10b,10cの開口が車両後方に向いているため、そのような場合であっても、本実施例のポケット構造によれば、ポケット10a,10b,10cからの収容物の飛び出しが回避される。
【0036】
<他の実施形態>
上記実施例のポケット構造においては、ポケット部材30,40が側方延出部を一対のみ、下方延出部を1つのみ備えるものとされていたが、それに限定されない。例えば、
図10に示すポケット部材80は、下方延出部81は1つのみであるが、複数対の側方延出部82L,82R(
図10においては、三対)を備えるものとされている。つまり、このポケット部材80を用いたポケット85は、長手方向における一端に開口している。例えば、傘等の長手状のものを収容するような場合に利用することができる。また、例えば、
図11に示すポケット部材90は、側方延出部91L,91Rは一対のみであるが、複数の下方延出部92(
図11においては、三対)を備えるものとすることもできる。このポケット部材90を用いたポケット95は、短手方向(幅方向)における一端に開口しているため、例えば板状のものを収容するような場合に利用することができる。さらに、ポケット部材は、複数対の側方延出部と複数の下方延出部とを備えるものとすることもできる。
【0037】
また、上記実施例のポケット構造は、基材(フロア11)を被覆する表皮(フロアカーペット12)に対してポケット部材30,40を取り付けるような構成であったが、樹脂性の基材に対して直接ポケット部材を取り付けるような構成であってもよい。なお、上記実施例のポケット構造は、車両のフロア11に採用されていたが、天井や側壁部に採用することもできる。
【0038】
また、上記実施例のポケット構造は、車両用内装材に採用されていたが、それに限定されず、種々の乗物の内装材において採用可能である。本発明のポケット構造は、例えば、列車や遊戯用車両、飛行機やヘリコプター、船舶や潜水艇などの乗物用内装材のポケット構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10a,10b,10c…ポケット、11…フロア、11a…立ち上がり面、12…フロアカーペット、20…車椅子、21…固縛ベルト、22…延長ベルト、30…第1ポケット部材、30a…ポケット前面部、30b,30c…一対の側方延出部、30d…下方延出部、33…フック、40…第2ポケット部材、40a…ポケット前面部、40b,40c…一対の側方延出部、40d…下方延出部、43…フック、51,52…縦スリット、53…横スリット、80…ポケット部材、81…下方延出部、82L,82R…側方延出部、85…ポケット、90…ポケット部材、91L,91R…側方延出部、92…下方延出部、95…ポケット