(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20220829BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220829BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 F
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2019015521
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】金森 正樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】李 志剛
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/158916(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/163451(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124073(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/079762(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を整流する整流回路と、
リアクタ、オン時にこのリアクタを介して前記整流回路の出力端を短絡する第1スイッチ素子、この第1スイッチ素子のオフ時に前記リアクタから放出されるエネルギにより充電されるコンデンサ、このコンデンサへの通電路に設けられた低耐圧MOSFET及び高耐圧MOSFETの直列回路、この直列回路に並列接続されたダイオードを含み、前記第1スイッチ素子のスイッチングとそのスイッチングとは逆位相の前記低耐圧MOSFET及び前記高耐圧MOSFETのスイッチングにより前記整流回路の出力電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、
前記リアクタに流れる電流のピーク値が閾値以上の場合に、前記昇圧回路の出力が供給される負荷の消費電力を低減する制御手段と、
を備え
、
前記閾値は、前記高耐圧MOSFETの寄生ダイオードに逆回復電流が流れない値に設定した
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
交流電圧を整流する整流回路と、
リアクタ、オン時にこのリアクタを介して前記整流回路の出力端を短絡する第1スイッチ素子、この第1スイッチ素子のオフ時に前記リアクタから放出されるエネルギにより充電されるコンデンサ、このコンデンサへの通電路に設けられた低耐圧MOSFET及び高耐圧MOSFETの直列回路、この直列回路に並列接続されたダイオードを含み、前記第1スイッチ素子のスイッチングとそのスイッチングとは逆位相の前記低耐圧MOSFET及び前記高耐圧MOSFETのスイッチングにより前記整流回路の出力電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、
前記高耐圧MOSFETの温度が設定値以上の場合に、前記昇圧回路の出力が供給される負荷の消費電力を低減する制御手段と、
を備え
、
前記設定値は、前記高耐圧MOSFETの寄生ダイオードに逆回復電流が流れない値に設定した
ことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
交流電圧を整流する整流回路と、
リアクタ、オン時にこのリアクタを介して前記整流回路の出力端を短絡する第1スイッチ素子、この第1スイッチ素子のオフ時に前記リアクタから放出されるエネルギにより充電されるコンデンサ、このコンデンサへの通電路に設けられた低耐圧MOSFET及び高耐圧MOSFETの直列回路、この直列回路に並列接続されたダイオードを含み、前記第1スイッチ素子のスイッチングとそのスイッチングとは逆位相の前記低耐圧MOSFET及び前記高耐圧MOSFETのスイッチングにより前記整流回路の出力電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、
前記リアクタに流れる電流のピーク値が閾値以上でかつ前記高耐圧MOSFETの温度が設定値以上の場合に、前記昇圧回路の出力が供給される負荷の消費電力を低減する制御手段と、
を備え
、
前記閾値は、前記高耐圧MOSFETの寄生ダイオードに逆回復電流が流れない値に設定し、
前記設定値は、前記高耐圧MOSFETの寄生ダイオードに逆回復電流が流れない値に設定した
ことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
交流電圧を整流する整流回路と、
リアクタ、オン時にこのリアクタを介して前記整流回路の出力端を短絡する第1スイッチ素子、この第1スイッチ素子のオフ時に前記リアクタから放出されるエネルギにより充電されるコンデンサ、このコンデンサへの通電路に設けられた低耐圧スイッチ素子及び高耐圧スイッチ素子の直列回路、この直列回路に並列接続されたダイオードを含み、前記第1スイッチ素子のスイッチングとそのスイッチングとは逆位相の前記低耐圧MOSFET及び高耐圧MOSFETのスイッチングにより前記整流回路の出力電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、
前記高耐圧MOSFETの両端電圧が所定値以上の場合に、前記昇圧回路の出力が供給される負荷の消費電力を低減する制御手段と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
前記直列回路は、前記低耐圧MOSFET及び前記高耐圧MOSFETをそれぞれの極性が互いに逆向きとなる状態に直列接続したもので、その低耐圧MOSFET及び高耐圧MOSFETのオン時の導通抵抗が前記還流ダイオードの順方向の導通抵抗より小さい、
ことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記第1スイッチ素子のスイッチングおよび前記低耐圧MOSFET及び前記高耐圧MOSFETのスイッチングが共にオフとなるデッドタイムにおいて、前記高耐圧MOSFETに逆電圧を印加するプリチャージ手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記負荷は、前記昇圧回路の出力電圧を交流変換するインバータに接続され、
前記制御手段は、前記インバータの出力を低下させることで前記負荷の消費電力を低減する
ことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクルを有する空気調和機や熱源機等に搭載される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源を昇圧する装置として、交流電圧を整流する整流回路とこの整流回路の出力電圧を昇圧する昇圧回路を備えた電源装置がある。冷凍サイクルを有する空気調和機や熱源機等では、このような電源装置を直流電源として使用し、その出力電圧を交流変換して圧縮機を駆動するインバータを備える。
【0003】
上記昇圧回路は、リアクタ、オン時にこのリアクタを介して前記整流回路の出力端を短絡する第1スイッチ素子、この第1スイッチ素子のオフ時にリアクタから放出されるエネルギにより充電されるコンデンサ(キャパシタ)、このコンデンサからリアクタ側への逆流を防止する逆流防止用ダイオードを含み、第1スイッチ素子のオン,オフにより整流回路の出力電圧を昇圧して出力する。この逆流防止用ダイオードは、順方向に流れる電流に対して小さいながらも電圧降下を有する。この電圧降下は、昇圧回路の電力損失につながり、省エネルギー性の面で無視できない。
【0004】
そこで、逆流防止用ダイオードよりも導通抵抗の小さい第2スイッチ素子を逆流防止用ダイオードに並列接続し、この第2スイッチ素子を第1スイッチ素子のオン時にオフして第1スイッチ素子のオフ時にオンするように第1スイッチ素子に対して相補的に動作させることにより、つまり第1スイッチ素子のオフ時は第2スイッチ素子をオンして逆流防止用ダイオードへの電流の流れをバイパスすることにより、逆流防止用ダイオードに順方向電流が流れる期間を縮小して逆流防止用ダイオードによる電力損失を低減する制御が採用される。
【0005】
第1スイッチ素子および第2スイッチ素子として、通常、オン時に双方向に電流を流すことができる双方向性のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられる。この場合、第1スイッチ素子および第2スイッチ素子が同時にオンすると逆流防止用ダイオードをバイパスする経路で出力側にあるコンデンサから両スイッチ素子を通して短絡電流が流れてしまうため、いずれかのスイッチ素子をオフからオンに変化させる際には両スイッチが共にオフ状態となるいわゆるデッドタイムが確保される。このデッドタイムの期間だけ、リアクタから逆流防止用ダイオードを通る経路でコンデンサに電流が流れる。
【0006】
ただし、第2スイッチ素子のターンオンに際し、第2スイッチ素子に流入する電流は素子本体を通るだけでなく寄生ダイオードにも分流し、この分流に伴い、寄生ダイオードに電荷(逆回復電荷)が蓄えられる。この状態で第2スイッチ素子がターンオフした後、第1スイッチ素子がターンオンすると、第2スイッチ素子の逆回復電荷による逆回復電流が第2スイッチ素子から第1スイッチ素子を通って流れる。この逆回復電流の発生は、結局は昇圧回路の電力損失を招くとともに、第1スイッチ素子および第2スイッチ素子のスイッチング速度の高速化を阻む大きな要因となる。さらに、逆回復電流が大きくなると各素子の破壊を招く恐れもある。
【0007】
対策として、導通抵抗の小さい第3スイッチ素子(MOSFET)をリアクタと第2スイッチ素子との間の通電路に挿入し、その第3スイッチ素子と第2スイッチ素子との直列回路に高速還流ダイオードを並列接続する構成の高効率スイッチング回路が採用される。この高効率スイッチング回路により、デッドタイムにおいて、第2スイッチ素子の寄生ダイオードへの通流を防止し、逆回復電流を抑制する。更なる効率向上のため、電圧印加回路を設け、デッドタイム中に第2スイッチ素子に逆電圧を印加して同スイッチ素子における電圧依存性のある容量成分を低減させ、第1スイッチ素子のターンオン時のスイッチング損失を抑制する回路も考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、整流回路から昇圧回路に流入する電流が増加したり、温度上昇すると、第2スイッチ素子の寄生ダイオードに電流が流れ易くなる。この場合、第2スイッチ素子のターンオンに際し、第2スイッチ素子の寄生ダイオードに分流する電流によって寄生ダイオードに残る電荷が増えて逆回復電流が発生してしまう。電圧印加回路を設けた場合は、寄生ダイオードの残留電荷の解消に寄与するが、さらに寄生ダイオードに流れる電流が増加すると、電圧印加回路を設けても、容量成分の低減及び寄生ダイオードの残留電荷の解消ができなくなり、最終的に逆回復電流を抑制できなくなる。
【0010】
本発明の実施形態の目的は、逆回復電流の発生を防止することができる電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の電源装置は、交流電圧を整流する整流回路と;リアクタ、オン時にこのリアクタを介して前記整流回路の出力端を短絡する第1スイッチ素子、この第1スイッチ素子のオフ時に前記リアクタから放出されるエネルギにより充電されるコンデンサ、このコンデンサへの通電路に設けられた低耐圧MOSFET及び高耐圧MOSFETの直列回路、この直列回路に並列接続されたダイオードを含み、前記第1スイッチ素子のスイッチングとそのスイッチングとは逆位相の前記低耐圧MOSFET及び前記高耐圧MOSFETのスイッチングにより前記整流回路の出力電圧を昇圧して出力する昇圧回路と;この昇圧回路の出力電圧を交流変換して負荷へ供給するインバータと;前記リアクタに流れる電流のピーク値が閾値以上の場合に、前記昇圧回路の出力が供給される負荷の消費電力を低減する制御手段と;を備える。前記閾値は、前記高耐圧MOSFETの寄生ダイオードに逆回復電流が流れない値に設定した。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】第1実施形態の通常時のリアクタ電流の波形を示す図。
【
図3】各実施形態の高効率スイッチング回路オン時の電流の流れを示す図。
【
図4】各実施形態のデッドタイムにおける電流の流れを示す図。
【
図5】各実施形態のプリチャージ時の電流の流れを示す図。
【
図6】各実施形態の短絡用のMOSFETオン時の電流の流れを示す図。
【
図7】第1実施形態におけるリアクタ電流のピーク値の上昇を示す図。
【
図8】
図7のリアクタ電流により生じる逆回復電流を示す図。
【
図10】第1実施形態におけるリアクタ電流と出力周波数Fとの関係を示す図。
【
図11】第2実施形態の要部の構成を示すブロック図。
【
図12】第2実施形態の高耐圧MOSFETの通常温度域における逆方向通流特性を示す図。
【
図13】第2実施形態の高耐圧MOSFETの高温度域における逆方向通流特性を示す図。
【
図14】第4実施形態の要部の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1]第1実施形態
冷凍サイクルを有する空気調和機に搭載される電源装置を例に説明する。
図1に示すように、3相交流電源1にダイオードブリッジの全波整流回路2が接続され、その全波整流回路2の出力端に昇圧回路10が接続されている。
【0014】
昇圧回路10は、全波整流回路2の正側出力端(+)に一端が接続されたリアクタ11、このリアクタ11の他端と全波整流回路2の負側出力端(-)との間に接続された短絡用の第1スイッチたとえばMOSFET12、このMOSFET12のオフ時にリアクタ11から放出されるエネルギにより充電される電解コンデンサ(キャパシタ)18、この電解コンデンサ18への通電路に設けられた低耐圧MOSFET14及び高耐圧MOSFET15の直列回路、この直列回路に並列接続された高速還流ダイオード(還流ダイオード)16を含み、MOSFET12のスイッチングとそのスイッチングとは逆位相の低耐圧MOSFET14及び高耐圧MOSFET15のスイッチングにより、全波整流回路2の出力電圧を昇圧して出力する(昇圧モード)。すなわち、MOSFET12が、オン時にはリアクタを介して整流回路の出力端を短絡する。その後、MOSFET12のオフ時にリアクタ11から放出されるエネルギによりコンデンサ18が充電され、昇圧される。この際の昇圧電圧は、MOSFET12のオン,オフデューティーで調整される。
【0015】
なお、昇圧回路10は、後述するように、すべてのMOSFET12,14,15をオフして、全波整流回路2の出力電圧を昇圧せずに出力する非昇圧モードも備えている。なお、この非昇圧モードにおいて、MOSFET12はオフさせるが、MOSFET14,15をオンさせて、できるだけダイオード16に流れる電流を減らし、効率を向上させてもよい。
【0016】
MOSFET12は、オン時にドレイン・ソース間の双方向に電流が流れる素子本体とこの素子本体に逆並列接続された寄生ダイオード(ボディーダイオードともいう)12dを含むスーパージャンクションMOSFETであり、制御部30から供給される駆動信号S1によってオン,オフ駆動される。
【0017】
低耐圧MOSFET14は、オン時にドレイン・ソース間の双方向に電流が流れる素子本体とこの素子本体に逆並列接続された寄生ダイオード14dを含み、制御部30から供給される駆動信号S2によってオン,オフ駆動される。高耐圧MOSFET15は、オン時にドレイン・ソース間の双方向に電流が流れる素子本体とこの素子本体に逆並列接続された寄生ダイオード15dを含み、制御部30から供給される上記駆動信号S2により低耐圧MOSFET14と同期してオン,オフ駆動される。高耐圧MOSFET15の本体素子の導通抵抗は、寄生ダイオード15dの順方向の導通抵抗よりも小さい。
【0018】
低耐圧MOSFET14及び高耐圧MOSFET15の直列回路は、低耐圧MOSFET14及び高耐圧MOSFET15をそれぞれの極性が互いに逆向きとなる状態に直列接続したものである。低耐圧MOSFET14及び高耐圧MOSFET15のオン時の導通抵抗は、高速還流ダイオード16の順方向の導通抵抗より小さい。
【0019】
低耐圧MOSFET14、高耐圧MOSFET15、および高速還流ダイオード16により、高耐圧MOSFET15の寄生ダイオード15dの残留電荷による逆回復電流を抑制する高効率スイッチング回路13が構成される。この低耐圧MOSFET14及び高耐圧MOSFET15は同期してオン,オフされるものである。そして、高効率スイッチング回路13において、低耐圧MOSFET14と並列にプリチャージ回路(電荷注入手段)17が接続されている。プリチャージ回路17は、直流電源17a、半導体スイッチ17s、および逆流防止用ダイオード17dの直列接続により構成され、すべてのMOSFET12、14、15が共にオフとなるデッドタイムにおいて半導体スイッチ17sが一時的にオンすることで、直流電源17aから半導体スイッチ17s、逆流防止用ダイオード17d、および高速還流ダイオード16を通して高耐圧MOSFET15に逆電圧を印加し、高耐圧MOSFET15の容量成分を低減させる。これにより、MOSFET12がオンする際のターンオン損失を低下させる。
【0020】
以上のような昇圧回路10の出力端である電解コンデンサ18の両端にインバータ20が接続されている。インバータ20は、昇圧回路10の出力電圧をスイッチングにより所定周波数の交流電圧に変換し、その交流電圧を負荷である圧縮機モータ21の駆動電力として出力する。圧縮機モータ21は、圧縮機22を駆動するブラシレスDCモータである。
【0021】
圧縮機22は、冷媒を吸込んで圧縮し吐出する。この圧縮機22の冷媒吐出口に四方弁23を介して室外熱交換器24の一端が接続され、その室外熱交換器24の他端が膨張弁25を介して室内熱交換器26の一端に接続される。室内熱交換器26の他端は、四方弁23を介して圧縮機22の冷媒吸込口に接続される。これら圧縮機22、四方弁23、室外熱交換器24、膨張弁25、室内熱交換器26により、空気調和機のヒートポンプ式冷凍サイクルが構成されている。冷房時は、図示矢印の方向に冷媒が流れ、室外熱交換器24が凝縮器として機能し室内熱交換器26が蒸発器として機能する。暖房時は、四方弁23の流路が切換わることにより冷房時と逆の方向に冷媒が流れ、室内熱交換器26が凝縮器として機能し室外熱交換器24が蒸発器として機能する。
【0022】
昇圧回路10におけるリアクタ11と高効率スイッチング回路13との間の通電路に流れる電流、すなわちリアクタ11に流れる電流(リアクタ電流ともいう)Irを検知する電流センサ19が配置されている。また、インバータ20と圧縮機モータ21との間の通電路に、圧縮機モータ21に流れる電流(相巻線電流)を検知する電流センサ27が配置されている。これら電流センサ19,27の検知結果が制御部30に通知されるとともに、昇圧回路10の出力電圧(電解コンデンサ18の電圧)が制御部30で検出される。
【0023】
制御部30は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、主要な機能として次の第1~第3制御手段を有する。
【0024】
第1制御手段は、昇圧回路10の出力電圧が目標値となるように昇圧回路10のスイッチングをパルス幅変調(PWM)制御する。とくに、第1制御手段は、MOSFET12がオフからオンに切換わる前にMOSFET14,15がオンからオフに切換わるように、つまりMOSFET12がオフからオンに切換わるタイミングとMOSFET14,15がオンからオフに切換わるタイミングとの間にMOSFET12,14,15が共にオフ状態となるデッドタイムが確保されるように、かつMOSFET12がオンからオフに切換わった後でMOSFET14,15がオフからオンに切換わるように、つまりMOSFET12がオンからオフに切換わるタイミングとMOSFET14,15がオフからオンに切換わるタイミングとの間にMOSFET12,14,15が共にオフ状態となるデッドタイムが確保されるように、駆動信号S1,S2を生成する。
【0025】
第2制御手段は、電流センサ27の検知電流(モータ電流)から圧縮機モータ21の速度(回転速度)を推定し、その推定速度が空調負荷の大きさに対応する目標速度となるように、インバータ20の出力周波数Fを制御するとともに昇圧回路10の昇圧モードと非昇圧モードを切換える。具体的には、インバータ20の出力周波数Fが低い場合、すなわち圧縮機モータ21の速度が低い場合には、非昇圧モードで運転することで昇圧回路10中のすべてのMOSFET12,14,15をオフしてこれらの素子のスイッチングに伴う損失を低減する。この場合、昇圧回路10は動作せず、全波整流された直流電圧がコンデンサ18に供給される。一方、インバータ20の出力周波数Fが高い場合、すなわち圧縮機モータ21の速度が高い場合には、昇圧回路10を昇圧モードとして、直流電圧を昇圧することで、圧縮機モータ21であるDCブラシレスモータの誘起電圧に打ち勝って圧縮機モータ21を高速回転させることを可能とする。昇圧モード中の昇圧回路10の出力電圧の目標値は、インバータ20の出力電流または出力周波数Fの目標値等に基づき決定され、通常、インバータ20の出力が大きくなれば、昇圧電圧が高くなるように設定される。
【0026】
第3制御手段は、昇圧回路10の昇圧モードにおいてリアクタ電流Irのピーク値が閾値Irs以上の場合に、昇圧回路10の出力が供給される負荷の消費電力を低減する。負荷の消費電力の低減は、上記第2制御手段により制御されるインバータ20の出力周波数Fを所定値ΔFだけ一定時間t1にわたり強制的に低下させることで実現する。ここで、閾値Irsは、高耐圧MOSFET15の寄生ダイオード15dに逆回復電流が流れない値に設定している。
【0027】
上記全波整流回路2、昇圧回路10、高効率スイッチング回路13、プリチャージ回路17、電流センサ19、インバータ20、電流センサ27、制御部30などにより、本実施形態の電源装置が構成されている。
【0028】
つぎに、上記のように構成された電源装置の動作について説明する。
リアクタ電流Irは、3相交流電源1の各相電圧に歪や不平衡がない通常時、
図2に示すように、各相電圧の変化に合わせて脈動しながら、MOSFET12のオン,オフに伴い細かく振動する波形となる。
【0029】
昇圧回路10の昇圧モードの動作を
図3~
図6を参照しながら説明する。
[MOSFET14,15オン]
MOSFET12がオンからオフへの変化に続いて設けられる後述のデッドタイムの経過後にMOSFET14,15がオンする時、
図3に示すように、リアクタ11に蓄えられたエネルギによるリアクタ電流Irがリアクタ11から低耐圧MOSFET14の本体素子および高耐圧MOSFET15の本体素子を通って電解コンデンサ18に流れ、その電解コンデンサ18を経た電流が全波整流回路2の負側出力端(-)に向かって流れる。これにより、電解コンデンサ18が充電される。高耐圧MOSFET15の本体素子の導通抵抗は寄生ダイオード15dの順方向の導通抵抗よりも小さいので、通常の状態においては高耐圧MOSFET15に流入する電流は、すべて高耐圧MOSFET15の本体素子を通って流れる。
【0030】
[デッドタイム]
続いて、MOSFET12がオフしたままMOSFET14,15がターンオフすると、つまりMOSFET14,15オン時からデッドタイムに移ると、
図4に示すように、リアクタ11に蓄えられたエネルギに基づくリアクタ電流IrがMOSFET14,15を通る経路から高速還流ダイオード16を順方向に通る経路に変化する。
【0031】
[プリチャージ]
デッドタイム中の所定のタイミングで、
図5に示すようにプリチャージ回路17の半導体スイッチ17sがオンする。半導体スイッチ17sがオンすると、直流電源17aから半導体スイッチ17s、逆流防止用ダイオード17d、および高速還流ダイオード16を介して高耐圧MOSFET15に逆電圧が印加される。この電圧印加により、高耐圧MOSFET15の容量成分を低下させる。半導体スイッチ17sは、デッドタイム中に一時的にオンするだけで、デッドタイムが終了する前にオフする。
【0032】
[MOSFET12オン]
デッドタイムが終了し、MOSFET14,15がオフしたままMOSFET12がターンオンすると、
図6に示すように、全波整流回路2の正側出力端(+)からリアクタ11に電流が流れ、そのリアクタ11を経た電流がMOSFET12の本体素子を通って全波整流回路2の負側出力端(-)に流れる。リアクタ11にエネルギが蓄えられる。
【0033】
[デッドタイム]
続いて、MOSFET12がターンオフすると、各素子の短絡を防止するためにMOSFET14,15がオンする前に一時的にすべてのMOSFET12,14,15がオフの状態となるデッドタイムに移り、このデッドタイム終了後にMOSFET14,15がオンに変化する。こちらのデッドタイムでは、プリチャージ回路17の半導体スイッチ17sは動作せず、オフ状態のままである。
【0034】
[リアクタ電流Irの上昇]
3相交流電源1の各相電圧に歪や不平衡が生じると、
図7に示すように、リアクタ電流Ir(瞬時値)のピーク値が大きく上昇することがある。また、圧縮機モータ21の負荷が極端に重くなると、リアクタ電流Irのピーク値が通常よりも大きくなる。このようにリアクタ電流Irが大きく増加すると、高耐圧MOSFET15に流入する電流の一部が寄生ダイオード15dにも分流して流れるようになり、寄生ダイオード15dに電荷が蓄えられる。この場合、デッドタイム中に高耐圧MOSFET15に逆電圧を印加するプリチャージ回路17が、寄生ダイオード15dの電荷を解消する電荷注入手段としても機能することになる。すなわち、寄生ダイオード15dに蓄えられた電荷が少なければ、プリチャージ回路17による逆電圧印加によって寄生ダイオード15dの電荷を解消して、逆回復電流の発生を防止できる。
【0035】
しかしながら、寄生ダイオード15dに蓄えられた電荷が多い場合には、プリチャージ回路17からの電荷の注入が不足し、寄生ダイオード15dに残る電荷を打ち消すことができないままデッドタイムが終わってMOSFET12がオンに移ることになる。この場合には、
図8に示すように、全波整流回路2の正側出力端(+)からリアクタ11に電流が流れ、そのリアクタ11を経た電流がMOSFET12の本体素子を通って全波整流回路2の負側出力端(-)に流れる。これと同時に、寄生ダイオード15dに残る電荷に基づく逆回復電流が寄生ダイオード15dから低耐圧MOSFET14の寄生ダイオード14dを順方向に通り、さらにMOSFET12の本体素子に流れる。このような逆回復電流が流れている間、寄生ダイオード15dの本来の逆流防止機能が働かないため、電解コンデンサ18の正側端子から寄生ダイオード15d、寄生ダイオード14d、MOSFET12を通って電解コンデンサ18の負側端子へと大きな短絡電流が流れる。
【0036】
このような逆回復電流の発生は、電力損失を招くとともに、大きな短絡電流が発生したり、短絡電流の発生が繰り返されたりすると、高耐圧MOSFET15、低耐圧MOSFET14、MOSFET12が破壊されてしまうこともある。通常は高耐圧MOSFET15が一番初めに破壊される。
【0037】
[制御部30の制御]
制御部30は、このような逆回復電流および短絡電流を防ぐため、
図9のフローチャートに示す制御を実行する。フローチャート中のステップS1,S2…については、単にS1,S2…と略称する。
【0038】
圧縮機22の運転中、制御部30は、電流センサ27により検知されるモータ電流から圧縮機モータ21の速度(回転速度)を推定し、その推定速度が空調負荷の大きさに対応する目標速度となるように、インバータ20の出力周波数Fを制御するとともに昇圧回路10の昇圧モードと非昇圧モードを切換える(S1)。
【0039】
昇圧回路10が昇圧モードの場合、制御部30は、電流センサ19により検知されるリアクタ電流Irのピーク値が閾値Irs以上であるか否かを判定する(S2)。リアクタ電流Irのピーク値が閾値Irs未満の場合(S2のNO)、制御部30は、上記S1の処理を繰り返す。
【0040】
3相交流電源1の各相電圧に歪や不平衡が生じるなどして、
図10に示すようにリアクタ電流Irのピーク値が閾値Irs以上に上昇した場合(S2のYES)、制御部30は、インバータ20の出力周波数Fを所定値ΔFだけ強制的に低下させる(S4)。この出力周波数Fの低下により、圧縮機モータ21の速度が低下して圧縮機モータ21の消費電力が低減し、この消費電力の低減に伴い全波整流回路2から昇圧回路10への入力電流が低下する。この入力電流の低下に伴い、リアクタ電流Irが低下する。
【0041】
出力周波数Fの低下に伴い、制御部30は、タイムカウントtを開始し(S5)、そのタイムカウントtが一定時間t1に達したかどうかを監視する(S6)。タイムカウントtが一定時間t1に満たない場合(S6のNO)、制御部30は、上記S5に戻ってタイムカウントtを継続する。タイムカウントtが一定時間t1に達した場合(S6のYES)、制御部30は、インバータ20の出力周波数Fを空調負荷に応じて制御する上記S1の処理に戻る。
【0042】
このように、リアクタ電流Irのピーク値が閾値Irs以上に上昇した場合はインバータ20の出力周波数Fを低下させ、これにより圧縮機モータの消費電力を低減することにより、リアクタ電流Irのピーク値を抑えて高耐圧MOSFET15の寄生ダイオード15dへ分流する電流をなくす、もしくはその量を減らすことができる。リアクタ電流Irのピーク値を低くして寄生ダイオード15dへ分流する電流をなくせば、逆回復電流の発生は防止できる。また、寄生ダイオード15dへ分流する電流の量を低い範囲に抑えれば、寄生ダイオード15dに蓄えられる電荷の量をプリチャージ回路17による逆電圧印加によって解消できる電荷量と同じまたはそれより少ない状態に抑制することができ、これにより寄生ダイオード15dに残る電荷をデッドタイム中の電荷の注入によって十分に打ち消すことができる。この打ち消しにより、高耐圧MOSFET15の寄生ダイオード15dから低耐圧MOSFET14の寄生ダイオード14dを通ってMOSFET12の本体素子へと流れる逆回復電流の発生を回避できる。逆回復電流が発生しないので、電解コンデンサ18の正側端子から高耐圧MOSFET15、低耐圧MOSFET14、MOSFET12を通って電解コンデンサ18の負側端子へと流れる大きな短絡電流の発生を回避できる。この回避により、MOSFET12、14、15の破壊を防ぐことができる。
【0043】
[2]第2実施形態
第2実施形態では、
図11に示すように、高耐圧MOSFET15の温度Tを検知する温度センサ31が高耐圧MOSFET15の近傍に配置され、その温度センサ31の検知温度Tが制御部30に通知される。
【0044】
制御部30の第1~第3制御手段のうち、第3制御手段のみが第1実施形態と異なる。
すなわち、第3制御手段は、温度センサ31の検知温度Tが設定値Ts以上の場合に、昇圧回路10の出力が供給される負荷の消費電力を低減する。負荷の消費電力の低減は、第2制御手段により制御されるインバータ20の出力周波数Fを所定値ΔFだけ一定時間t1にわたり強制的に低下させることで実現する。設定値Tsは、高耐圧MOSFET15の寄生ダイオード15dに逆回復電流が流れない値に設定している。
【0045】
MOSFET14、15オン時にMOSFET15に流れる電流IsとMOSFET15のソース・ドレイン間に生じる電圧Vsdとの関係いわゆる逆方向通流特性を
図12および
図13に示す。
図12は高耐圧MOSFET15の温度Tが所定値(例えば45℃)未満の通常温度域にあるときの逆方向通流特性、
図13はMOSFET15の温度Tが所定値以上の高温度域にあるときの逆方向通流特性である。
【0046】
通常温度域では、電流Isが所定値Is2未満の領域において電流Isのすべてが高耐圧MOSFET15の素子本体に流れ、電流Isが所定値Is2以上の領域において電流Isが素子本体に流れる電流Imosと寄生ダイオード15dに流れる電流Idとに分かれる。
【0047】
高温度域では、高耐圧MOSFET15の素子本体の導通抵抗が増加し、MOSFET15の寄生ダイオード15dの順方向の導通抵抗が減少するため、電流Isが上記所定値Is2より低い所定値Is1(<Is2)未満の領域において電流Isのすべてが高耐圧MOSFET15の素子本体に流れ、電流Isが所定値Is1以上の領域において電流Isが素子本体に流れる電流Imosと寄生ダイオード15dに流れる電流Idとに分かれる。つまり、高温度域では、MOSFET15の寄生ダイオード15dに電流が流れ易くなり、逆回復電流が発生し易くなる。そこで、制御部30は、温度センサ31の検知温度Tが設定値Ts以上の場合に、インバータ20の出力周波数Fを所定値ΔFだけ一定時間t1にわたり強制的に低下させる。
【0048】
インバータ20の出力周波数Fを低下させ、これにより圧縮機モータの消費電力を低減することにより、リアクタ電流Irが低下する。リアクタ電流Irが低下するので、寄生ダイオード15dへ分流する電流を減らすことができる。寄生ダイオード15dへ分流する電流が減るので、寄生ダイオード15dに蓄えられる電荷の量をプレチャージ回路17による電荷の注入量と同じまたはそれより少ない状態に抑制することができる。この抑制により、寄生ダイオード15dに残る電荷をデッドタイム中の電荷の注入によって打ち消すことができる。よって、逆回復電流の発生を回避できる。
他の構成および効果は第1実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0049】
[3]第3実施形態。
第3実施形態では、制御部30の第1~第3制御手段のうち、第3制御手段のみが第1実施形態と異なる。
すなわち、第3制御手段は、昇圧回路10の昇圧モードにおいてリアクタ電流Irのピーク値が閾値Irs以上でかつ温度センサ31の検知温度Tが設定値Ts以上の場合に、昇圧回路10の出力が供給される負荷の消費電力を低減する。負荷の消費電力の低減は、インバータ20の出力周波数Fを所定値ΔFだけ一定時間t1にわたり強制的に低下させることで実現する。
【0050】
リアクタ電流Irのピーク値が閾値Irs以上となる現象、および温度センサ31の検知温度Tが設定値Ts以上となる現象のうち、一方の現象が生じただけでは高耐圧MOSFET15、低耐圧MOSFET14、MOSFET12の破壊に直ちにつながるわけではないので、両方の現象が共に生じた場合のみ出力周波数Fを低下させるようにしている。これにより、空調能力の低下を最小限に留めることができる。
他の構成および効果は第1および第2実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0051】
[4]第4実施形態
第4実施形態では、
図14に示すように、高耐圧MOSFET15の両端に電圧センサ32が接続され、その電圧センサ32の検知電圧Vが制御部30に通知される。さらに、制御部30の第1~第3制御手段のうち、第3制御手段のみが第1実施形態と異なる。
すなわち、第3制御手段は、電圧センサ32の検知電圧Vが所定値Vs以上の場合に、昇圧回路10の出力が供給される負荷の消費電力を低減する。負荷の消費電力の低減は、インバータ20の出力周波数Fを所定値ΔFだけ一定時間t1にわたり強制的に低下させることで実現する。
【0052】
寄生ダイオード15dに電荷が残っていると、逆回復電流が流れる。このとき、高耐圧MOSFET15の両端に大きな電圧いわゆる逆回復サージ電圧が生じ、電圧センサ32の検知電圧Vが所定値Vs以上となる。
電圧センサ32の検知電圧Vが所定値Vs以上に上昇した場合、制御部30は、インバータ20の出力周波数Fを所定値ΔFだけ一定時間t1にわたり強制的に低下させる。
【0053】
インバータ20の出力周波数Fを低下させ、これにより圧縮機モータの消費電力を低減することにより、リアクタ電流Irが低下する。このリアクタ電流Irの低下により、寄生ダイオード15dへ分流する電流の量が減少し、高耐圧MOSFET15の寄生ダイオード15dに蓄えられる電荷の量が電荷注入回路17による電荷の注入量と同じまたはそれより少ない状態に抑制される。したがって、一回は逆回復電流が流れても、それ以降の逆回復電流の発生を回避できる。
【0054】
高耐圧MOSFET15の寄生ダイオード15dは本体チップ内に形成されるため、寄生ダイオード15dへの電流の流れ具合を直接的に検知することはできないが、高耐圧MOSFET15の両端電圧Vから逆回復現象の発生を検出することができる。
他の構成および効果は第1実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0055】
[5]変形例
以上の実施形態においては、プリチャージ回路17を備えた昇圧回路10を用いて説明したが、プリチャージ回路17を備えない昇圧回路においても同様に適用することができる。なお、プリチャージ回路17を備える場合には、この回路が寄生ダイオード15dに蓄積される電荷を低減する電荷注入手段としても機能するため、逆回復電流の発生を少し抑制する効果がある。このため、プリチャージ回路17を備えない昇圧回路においては、第1実施形態~第3実施形態においては、より低いリアクタ電流や高耐圧MOSFET15の温度においてリアクタ電流の抑制動作を開始する必要がある。具体的には、リアクタ電流の閾値Irsや温度の設定値Tsを低めに設定することになる。実際には、リアクタ電流の閾値Irsや温度の設定値Tsは、昇圧回路10において、逆回復電流が発生しない範囲においてできるだけ大きい値を選定することが望ましい。
【0056】
上記各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…3相交流電源、2…全波整流回路、10…昇圧回路、11…リアクタ、12…MOSFET(第1スイッチ素子)、13…高効率スイッチング回路、14…低耐圧MOSFET、14d…MOSFET14の寄生ダイオード、15…高耐圧MOSFET、15d…MOSFET15の寄生ダイオード、16…高速還流ダイオード(還流ダイオード)、17…プリチャージ回路(電荷注入手段)、17a…直流電源、17s…半導体スイッチ、17d…逆流防止用ダイオード、18…電解コンデンサ(コンデンサ)、19…電流センサ、20…制御部、31…温度センサ、32…電圧センサ