(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】光コネクタ構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/38 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
G02B6/38
(21)【出願番号】P 2019035330
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦松 知史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩一
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028638(JP,A)
【文献】特開2010-026176(JP,A)
【文献】特開2018-081127(JP,A)
【文献】国際公開第2012/098456(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104317009(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、前記光ファイバの端部を覆うように設けられた筒状の光コネクタと、を備えた光コネクタ構造であって、
前記光ファイバは、裸光ファイバと、前記裸光ファイバを被覆するジャケットと、を有し、
前記光コネクタは、筒状部材のコネクタ本体と、前記コネクタ本体に内嵌めされた筒状部材のファイバ保持スリーブと、を有し、
前記光ファイバの端部は、前記ジャケットが剥がされて前記裸光ファイバが突出して露出した先端側部分と、その後方の前記ジャケットで被覆された後方側部分と、を含み、且つ前記先端側部分が前記光コネクタの前記コネクタ本体内を軸方向に延びるように設けられているとともに、前記後方側部分が前記光コネクタの前記ファイバ保持スリーブ内を軸方向に延びるように設けられており、
前記ファイバ保持スリーブは、スリーブ先端側部分と、前記スリーブ先端側部分の後方側に設けられたスリーブ中間部分と、前記スリーブ中間部分の後方側に設けられたスリーブ後端側部分と、を含み、且つ前記スリーブ中間部分に、前記光ファイバの端部の前記後方側部分が設けられた部分に連通する放熱用接着剤注入用の接着剤注入部が穿孔されているとともに、前記スリーブ先端側部分及び前記スリーブ後端側部分に、それぞれ前記光ファイバの端部の前記後方側部分が設けられた部分に連通する先端側接着剤流入孔及び後方側接着剤流入孔が穿孔されており、
前記光コネクタ
の前記ファイバ保持スリーブ内において、
前記スリーブ後端側部分における前記後方側接着剤流入孔よりも後方側の部分には、前記光ファイバ
の端部の前記後方側部分と前記ファイバ保持スリーブとの間に介在
して前記後方側部分を埋めるように固定接着層が設けられているとともに、前記固定接着層
よりも先端側の前記スリーブ先端側部分の前記先端側接着剤流入孔と前記スリーブ後端側部分の前記後方側接着剤流入孔との間の部分には、前記光ファイバ
の端部の前記後方側部分と
前記ファイバ保持スリーブとの間に介在
して前記後方側部分を埋めるように放熱接着層が設けられている光コネクタ構造。
【請求項2】
請求項1に記載された光コネクタ構造において、
前記放熱接着層は、液状の樹脂接着剤の硬化物で構成されている光コネクタ構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光コネクタ構造において、
前記放熱接着層は、前記固定接着層よりも熱伝導率が高い光コネクタ構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された光コネクタ構造において、
前記放熱接着層は、前記光ファイバのジャケットよりも屈折率が高い光コネクタ構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された光コネクタ構造において、
前記放熱接着層は、熱伝導性フィラーが分散している光コネクタ構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された光コネクタ構造において、
前記光ファイバの端部の前記先端側部分における前記裸光ファイバの外周面には、クラッドモードストリッパが設けられている光コネクタ構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された光コネクタ構造において、
前記先端側接着剤流入孔及び/又は前記後方側接着剤流入孔は、前記着剤注入部の穿孔方向と周方向にずれた方向に延びるように形成されている光コネクタ構造。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された光コネクタ構造において、
前記ファイバ保持スリーブは、前記コネクタ本体に対して、前記スリーブ先端側部分が内嵌めされるとともに、前記スリーブ後端側部分が後方に突出するように設けられている光コネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの端部に光コネクタ等の光学部材を取り付けて固定する際、それらの間に接着剤等の液体材料を介在させて硬化させることが行われている。例えば、特許文献1には、光ファイバの外周面にシリカミクロ多孔体溶液をコーティングして光学部材に挿通し、それを焼成してシリカミクロ多孔体層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、レーザ光伝送用の光ファイバケーブルでは、通常、光ファイバの端部に光コネクタが設けられ、それらの光ファイバと光コネクタとは、それらの間に接着層が介在されて固定されている。ところが、光ファイバケーブルでレーザ光を伝送した際、光ファイバが温度上昇し、それに伴って接着層が軟化するので、光ファイバと光コネクタとの間の固定度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、温度上昇による光ファイバと光コネクタとの間の固定度の低下を抑制することができる光コネクタ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光ファイバと、前記光ファイバの端部を覆うように設けられた筒状の光コネクタとを備えた光コネクタ構造であって、前記光ファイバは、裸光ファイバと、前記裸光ファイバを被覆するジャケットとを有し、前記光コネクタは、筒状部材のコネクタ本体と、前記コネクタ本体に内嵌めされた筒状部材のファイバ保持スリーブとを有し、前記光ファイバの端部は、前記ジャケットが剥がされて前記裸光ファイバが突出して露出した先端側部分と、その後方の前記ジャケットで被覆された後方側部分とを含み、且つ前記先端側部分が前記光コネクタの前記コネクタ本体内を軸方向に延びるように設けられているとともに、前記後方側部分が前記光コネクタの前記ファイバ保持スリーブ内を軸方向に延びるように設けられており、前記ファイバ保持スリーブは、スリーブ先端側部分と、前記スリーブ先端側部分の後方側に設けられたスリーブ中間部分と、前記スリーブ中間部分の後方側に設けられたスリーブ後端側部分とを含み、且つ前記スリーブ中間部分に、前記光ファイバの端部の前記後方側部分が設けられた部分に連通する放熱用接着剤注入用の接着剤注入部が穿孔されているとともに、前記スリーブ先端側部分及び前記スリーブ後端側部分に、それぞれ前記光ファイバの端部の前記後方側部分が設けられた部分に連通する先端側接着剤流入孔及び後方側接着剤流入孔が穿孔されており、前記光コネクタの前記ファイバ保持スリーブ内において、前記スリーブ後端側部分における前記後方側接着剤流入孔よりも後方側の部分には、前記光ファイバの端部の前記後方側部分と前記ファイバ保持スリーブとの間に介在して前記後方側部分を埋めるように固定接着層が設けられているとともに、前記固定接着層よりも先端側の前記スリーブ先端側部分の前記先端側接着剤流入孔と前記スリーブ後端側部分の前記後方側接着剤流入孔との間の部分には、前記光ファイバの端部の前記後方側部分と前記ファイバ保持スリーブとの間に介在して前記後方側部分を埋めるように放熱接着層が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光コネクタ内において、光ファイバと光コネクタとの間に介在するように固定接着層が設けられているとともに、その固定接着層の先端側に、光ファイバと光コネクタとの間に介在するように放熱接着層が設けられていることにより、温度上昇による光ファイバと光コネクタとの間の固定度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る光コネクタ構造の縦断面図である。
【
図6A】実施形態に係る光コネクタ構造の組立方法を示す第1の図である。
【
図6B】実施形態に係る光コネクタ構造の組立方法を示す第2の図である。
【
図6C】実施形態に係る光コネクタ構造の組立方法を示す第3の図である。
【
図6D】実施形態に係る光コネクタ構造の組立方法を示す第4の図である。
【
図7】実施形態に係る光コネクタ構造の第1の変形例の縦断面図である。
【
図8】実施形態に係る光コネクタ構造の第2の変形例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る光コネクタ構造Cを示す。実施形態に係る光コネクタ構造Cは、例えばレーザ加工機等に装着されるレーザ光伝送用の光ファイバケーブルの端部に設けられるものである。
【0011】
実施形態に係る光コネクタ構造Cは、光ファイバ10と、その端部を覆うように設けられた筒状の光コネクタ20とを備える。
【0012】
図2は、光ファイバ10を示す。光ファイバ10は、裸光ファイバ11と、それを被覆するジャケット12とを有する。光ファイバ10の外径は、例えば1.3mmである。
【0013】
裸光ファイバ11は、相対的に高屈折率なコア111と、それを被覆する相対的に低屈折率のクラッド112とを含む。裸光ファイバ11は、例えば、コア111がノンドープの純粋石英で形成されており、クラッド112が屈折率を低下させるドーパント(F、B等)がドープされた石英で形成されている。裸光ファイバ11の外径は、例えば500μmである。コア111の直径は、例えば100μmである。なお、裸光ファイバ11は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバであってもよい。
【0014】
ジャケット12は、PFAなどのフッ素樹脂や紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等で形成された単一層で構成されていてもよく、また、例えばシリコーン樹脂の内側バッファ層と、それを被覆するナイロン樹脂やフッ素樹脂の外側被覆層との2層で構成されていてもよい。ジャケット12の厚さは、例えば400μmである。
【0015】
光ファイバ10は、端部において、ジャケット12が剥がされて裸光ファイバ11が突出して露出している。そして、この光ファイバ10の端部に露出した裸光ファイバ11の外周面に、クラッドモード光を外部に放射して除去するためのクラッドモードストリッパ13が設けられている。
【0016】
光コネクタ20は、コネクタ本体21と、ファイバ保持スリーブ22と、ナット部材23と、スカート部材24とを有する。
【0017】
コネクタ本体21は、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属材料で形成された筒状部材で構成されている。コネクタ本体21は、先端側の外径が大きい外形円柱状の本体先端側部分211と、その後方側に連続して設けられた本体先端側部分211よりも外径が小さい外形円柱状の本体中間部分212と、その後方側に連続して設けられた本体中間部分212よりも更に外径が小さい外形円柱状の本体後方側部分213とを含む。本体先端側部分211の後端部には、スカート部材24を取り付けるための段差が設けられている。本体後方側部分213の外周面には、ナット部材23を取り付けるための雄ネジが設けられている。
【0018】
コネクタ本体21の内部孔には、先端側に軸方向に延びるように形成された円筒孔の裸ファイバ挿通部214が構成されているとともに、その後方側に連続してスリーブ収容部215が構成されている。スリーブ収容部215は、先端側の裸ファイバ挿通部214の後端から後方側に向かうに従って内径が漸次拡大するように形成された円錐孔部分215aと、その後方側に連続して円錐孔部分215aの後端から同一内径で後方側に延びるように形成された円筒孔部分215bとを含む。コネクタ本体21には、本体中間部分212にスリーブ収容部215の円錐孔部分215aに連通するように穿孔された本体側接着剤注入部216が設けられている。
【0019】
図3A及びBは、ファイバ保持スリーブ22を示す。ファイバ保持スリーブ22は、例えば、高弾性で熱伝導率の高い無酸素銅、りん青銅、真鍮等の金属材料で形成された筒状部材で構成されている。ファイバ保持スリーブ22は、光ファイバ10の熱を効率的に放熱する観点から、これらのうちの無酸素銅で形成されていることが好ましい。ファイバ保持スリーブ22の熱伝導率は、好ましくは80W/m・K以上、より好ましくは200W/m・K以上、更に好ましくは300W/m・K以上である。
【0020】
ファイバ保持スリーブ22は、先端側の外径が小さい外形円柱状のスリーブ先端側部分221と、その後方側に連続して設けられ、スリーブ先端側部分221の後端から後方側に向かうに従って外径が漸次拡大するように形成された外形円錐状のスリーブ第1中間部分222と、その後方側に連続して設けられたスリーブ先端側部分221よりも外径が大きい外形円柱状の第2スリーブ中間部と、その後方側に連続して設けられたスリーブ先端側部分221よりも外径が大きく且つ第2スリーブ中間部よりも外径が小さい外形円柱状のスリーブ後端側部分224とを含む。なお、スリーブ先端側部分221、スリーブ第1中間部分222、及び第2スリーブ中間部の形状は、それぞれコネクタ本体21の裸ファイバ挿通部214、スリーブ収容部215の円錐孔部分215a、及びスリーブ収容部215の円筒孔部分215bの形状に対応する。
【0021】
ファイバ保持スリーブ22の内部には、スリーブ先端側部分221の先端から、スリーブ第1中間部分222を経由して、スリーブ第2中間部分223の先端側の部分まで軸方向に延びるように形成された断面円形のファイバ挿通孔225が構成されている。ファイバ挿通孔225の内径は、光ファイバ10の外径よりもやや大きい。スリーブ第2中間部分223には、ファイバ挿通孔225に連通するように穿孔されたスリーブ側接着剤注入部226が設けられている。スリーブ第2中間部分223の後方側の部分及びスリーブ後端側部分224には、スリーブ側接着剤注入部226と周方向の同じ向きに開口するように、ファイバ挿通孔225に連続して軸方向に延びるように形成されたファイバ案内溝227が設けられている。ファイバ案内溝227の断面形状は、コの字型の他、溝底が光ファイバ10の形状に対応する円弧に形成されたU字型等であってもよい。
【0022】
スリーブ先端側部分221には、各々、外周面からファイバ挿通孔225に連通するように穿孔された一対の先端側接着剤流入孔228が、ファイバ挿通孔225を介して対向して設けられている。先端側接着剤流入孔228は、スリーブ側接着剤注入部226の穿孔方向と異なる方向(例えば周方向に90°ずれた方向)に延びるように形成されていることが好ましい。スリーブ後端側部分224には、各々、外周面からファイバ案内溝227に連通するように穿孔された一対の後方側接着剤流入孔229が、ファイバ案内溝227を介して対向して設けられている。後方側接着剤流入孔229は、スリーブ側接着剤注入部226の穿孔方向と異なる方向(例えば周方向に90°ずれた方向)に延びるように形成されていることが好ましい。なお、先端側接着剤流入孔228及び後方側接着剤流入孔229は、ファイバ挿通孔225に開口した有底孔であってもよい。
【0023】
ファイバ保持スリーブ22は、コネクタ本体21に対して、スリーブ先端側部分221が裸ファイバ挿通部214、スリーブ第1中間部分222がスリーブ収容部215の円錐孔部分215a、及びスリーブ第2中間部分223の先端側の大部分がスリーブ収容部215の円筒孔部分215bにそれぞれ内嵌めされるとともに、スリーブ第2中間部分223の後方側の一部分及びスリーブ後端側部分224が後方に突出するように設けられ、且つスリーブ側接着剤注入部226が本体側接着剤注入部216に連通するように位置合わせされている。
【0024】
ナット部材23は、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属材料で形成されたネジ部材で構成されている。ナット部材23は、先端側の円筒部分231と、その後端に一体に設けられた環状板部分232とを含む。円筒部分231の内周面には、コネクタ本体21における本体後方側部分213の雄ネジが螺合する雌ネジが設けられている。環状板部分232の中央には、内径が、ファイバ保持スリーブ22のスリーブ第2中間部分223の外径とスリーブ後端側部分224の外径との中間であるスリーブ挿通孔233が形成されている。
【0025】
ナット部材23は、コネクタ本体21及びファイバ保持スリーブ22に対して、円筒部分231がコネクタ本体21の本体後方側部分213を覆って、前者の雌ネジに後者の雄ネジが螺合するとともに、環状板部分232のスリーブ挿通孔233にファイバ保持スリーブ22のスリーブ後端側部分224が挿通されて後方に突出し、且つ環状板部分232のスリーブ挿通孔233の周縁部にスリーブ第2中間部分223の後方端が当接するように設けられている。
【0026】
スカート部材24は、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属材料で形成された円筒状部材で構成されている。スカート部材24は、コネクタ本体21等に対して、その先端部がコネクタ本体21における本体先端側部分211の後端部の段差に外嵌めされるとともに、それよりも後方側の部分を収容するように設けられている。
【0027】
実施形態に係る光コネクタ構造Cでは、光ファイバ10は、ジャケット12の端面が光コネクタ20のファイバ保持スリーブ22の先端に位置付けられるとともに、その先端側の裸光ファイバ11が露出した部分が、コネクタ本体21の裸ファイバ挿通部214を軸方向に延び、且つ後方側のジャケット12で被覆された部分が、ファイバ保持スリーブ22内を軸方向に延びるように設けられている。なお、光ファイバ10は、先端側では、光コネクタ20の先端部に設けられた図示しない石英ブロックに融着接続されており、また、後方側では、光コネクタ20の後方端から外部に引き出されている。
【0028】
そして、実施形態に係る光コネクタ構造Cでは、光コネクタ20内において、光ファイバ10と光コネクタ20との間に介在するように固定接着層31が設けられている。具体的には、固定接着層31は、ファイバ保持スリーブ22のスリーブ後端側部分224におけるナット部材23から後方に突出した部分のファイバ案内溝227内に、
図4に示すように、光ファイバ10を埋めるように設けられている。この固定接着層31により、光ファイバ10に光コネクタ20が接着固定されている。固定接着層31は、液状接着剤の硬化物で構成されていることが好ましい。固定接着層31を形成する液状接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤やアクリル系接着剤などの光硬化性接着剤、エポキシ系接着剤やフェノール系接着剤などの熱硬化性接着剤等が挙げられる。
【0029】
また、固定接着層31の先端側には、光ファイバ10と光コネクタ20のファイバ保持スリーブ22との間に介在するように放熱接着層41が設けられている。具体的には、放熱接着層41は、ファイバ保持スリーブ22のスリーブ先端側部分221における先端側接着剤流入孔228からスリーブ後端側部分224における後方側接着剤流入孔229までの部分のファイバ挿通孔225内及びファイバ案内溝227内に、
図5に示すように、光ファイバ10を埋めるように設けられている。
【0030】
実施形態に係る光コネクタ構造Cによれば、このように光コネクタ20内において、固定接着層31の先端側に、光ファイバ10と光コネクタ20との間に介在するように放熱接着層41が設けられていることにより、光源からの入力光の伝搬により光ファイバ10が発熱しても、また、光源からの入力光や光照射対象からの反射光のうち、光ファイバ10のクラッド112に入射して先端側から後方側に伝搬するクラッドモード光により光ファイバ10が発熱しても、それらの熱が放熱接着層41によりファイバ保持スリーブ22に効率的に放熱され、それがコネクタ本体21を介して水冷や空冷により放熱されることとなり、その結果、固定接着層31に高熱が伝わらずに軟化が規制されるので、温度上昇による光ファイバ10と光コネクタ20との間の固定度の低下を抑制することができる。
【0031】
放熱接着層41は、固定接着層31に接触していても、固定接着層31に非接触であっても、どちらでもよいが、光ファイバ10の熱を効率的に放熱する観点から、空気層を介在せずに固定接着層31に接触していることが好ましい。放熱接着層41は、固定接着層31よりも熱伝導率が高く、その熱伝導率は、好ましくは0.20W/m・K以上、より好ましくは3W/m・K以上である。この熱伝導率は、ホットディスク方法に基づいて測定されるものである。放熱接着層41は、高い放熱性を得る観点から、光ファイバ10のジャケット12よりも屈折率が高いことが好ましく、その屈折率は、好ましくは1.42以上、より好ましくは1.50以上である。この屈折率は、アッベ式屈折計に基づいて測定されるものである。放熱接着層41の1.06μm帯の光透過率は、高い放熱性を得る観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。この光透過率は、分光特性に基づいて測定されるものである。
【0032】
放熱接着層41は、液状接着剤の硬化物で構成されていることが好ましい。放熱接着層41を形成する液状接着剤としては、例えば、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤等の熱伝導率の高い液状樹脂接着剤が挙げられる。放熱接着層41は、固定接着層31よりも、光ファイバ10と光コネクタ20との接着性能が低くてもよい。放熱接着層41は、高い放熱性を得る観点から、熱伝導性フィラーが分散していることが好ましい。熱伝導性フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛などの金属酸化物粉;アルミニウムや銅の金属粉;炭素繊維;グラファイト等が挙げられる。
【0033】
次に、実施形態に係る光コネクタ構造Cの組立方法について説明する。
【0034】
まず、光ファイバ10を、スカート部材24、ナット部材23、ファイバ保持スリーブ22、及びコネクタ本体21に順に通す。このとき、ファイバ保持スリーブ22の一部分をコネクタ本体21に挿入して仮装着するとともに、ナット部材23に、ファイバ保持スリーブ22のコネクタ本体21から後方に突出した部分を挿通させ、ナット部材23の円筒部分231でコネクタ本体21の本体後方側部分213を覆って、前者の雌ネジに後者の雄ネジを軽く螺合させて締めることにより、ナット部材23をコネクタ本体21に仮装着することが好ましい。
【0035】
次いで、コネクタ本体21の先端から突出した光ファイバ10の先端に石英ブロックを融着接続し、その後、
図6Aに示すように、光ファイバ10を後方側に引き戻してコネクタ本体21に対して位置決めする。
【0036】
次いで、
図6Bに示すように、ナット部材23の円筒部分231の雌ネジとコネクタ本体21の本体後方側部分213の雄ネジとの螺合を更に締めることにより、ナット部材23の環状板部分232のスリーブ挿通孔233の周縁部に、ファイバ保持スリーブ22のスリーブ第2中間部分223の後方端に当接させ、本体側接着剤注入部216とスリーブ側接着剤注入部226とが連通するまで、ファイバ保持スリーブ22をナット部材23とともに先端側に移動させる。このとき、コネクタ本体21の裸ファイバ挿通部214の後端部にファイバ保持スリーブ22のスリーブ先端側部分221が嵌まる。また、スリーブ収容部215の円錐孔部分215aに、外形円錐状のスリーブ第1中間部分222が嵌まり、それにより広い面接触が形成されるので、コネクタ本体21とファイバ保持スリーブ22との間の高い放熱性を得ることができる。
【0037】
続いて、
図6Cに示すように、ナット部材23のスリーブ挿通孔233から後方に突出したファイバ保持スリーブ22のスリーブ後端側部分224のファイバ案内溝227に、固定接着層31を形成する液状の固定用接着剤31’を注入した後に硬化させて固定接着層31を形成する。このとき、固定接着剤31’が後方側接着剤流入孔229に流入し、それにより固定接着剤31’の後方側接着剤流入孔229よりも先端側への流動が規制される。
【0038】
そして、
図6Dに示すように、本体側接着剤注入部216及びスリーブ側接着剤注入部226に、放熱接着層41を形成する液状の放熱用接着剤41’を注入した後に硬化させて放熱接着層41を形成する。このとき、放熱用接着剤41’が先端側接着剤流入孔228に流入し、それにより放熱用接着剤41’の先端側接着剤流入孔228よりも先端側への流動が規制され、放熱用接着剤41’がファイバ保持スリーブ22の先端から流出して硬化するのを阻止することができる。また、放熱用接着剤41’が後方側接着剤流入孔229に流入し、それにより放熱用接着剤41’の後方側接着剤流入孔229よりも後方側への流動が規制され、放熱用接着剤41’が固定接着層31に接触するのを阻止することができる。さらに、先端側接着剤流入孔228及び後方側接着剤流入孔229が、スリーブ側接着剤注入部226の穿孔方向と異なる方向に延びるように形成されているので、放熱用接着剤41’が光ファイバ10の周方向に沿うように回り込んで流動する流動路が形成され、それにより放熱用接着剤41’を光ファイバ10の全周を覆うように行き渡らせることができる。
【0039】
最後に、コネクタ本体21の本体先端側部分211の後端部の段差にスカート部材24の先端部を外嵌めして固定する。
【0040】
なお、
図7に示すように、固定接着層31の後方側にも、光ファイバ10と光コネクタ20との間に介在するように第2の放熱接着層42が設けられていてもよい。すなわち、固定接着層31の先端側及び後方側の両側に放熱接着層41が設けられていてもよい。このような第2の放熱接着層42が設けられていれば、後方側から先端側に伝搬するクラッドモード光により光ファイバ10が発熱しても、それらの熱を放熱接着層41によりファイバ保持スリーブ22に効率的に放熱させることができる。この場合も、第2の放熱接着層42は、固定接着層31に接触していても、固定接着層31に非接触であっても、どちらでもよいが、光ファイバ10の熱を効率的に放熱する観点から、空気層を介在せずに固定接着層31に接触していることが好ましい。第2の放熱接着層42のその他の構成は、固定接着層31の先端側の放熱接着層41と同一である。
【0041】
また、
図8に示すように、ファイバ保持スリーブ22が、第2スリーブ中間部とスリーブ後端側部分224との間に、第2スリーブ中間部の後端から後方側に向かうに従って外径が漸次縮小するように形成された外形円錐状のスリーブ第3中間部分233aを含むとともに、ナット部材23の環状板部分232のスリーブ挿通孔233が、後方側に向かうに従って内径が漸次縮小するように形成されており、ファイバ保持スリーブ22のスリーブ第3中間部分233aがナット部材23の環状板部分232のスリーブ挿通孔233に嵌合した構成であってもよい。このようにファイバ保持スリーブ22の円錐状のスリーブ第3中間部分233aがナット部材23の環状板部分232のスリーブ挿通孔233に嵌合して広い面接触が形成されるので、ファイバ保持スリーブ22とナット部材23の間の高い放熱性を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、光コネクタ構造の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0043】
C 光コネクタ構造
10 光ファイバ
20 光コネクタ
31 固定接着層
41 放熱接着層