(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】廃液処理制御装置、廃液処理制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20220829BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220829BHJP
【FI】
C02F1/00 D
C02F1/00 W
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2019041468
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】宮ノ下 友明
(72)【発明者】
【氏名】原田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】中村 大祐
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和女
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-236569(JP,A)
【文献】特開2017-170274(JP,A)
【文献】特開2006-281159(JP,A)
【文献】特開昭60-225693(JP,A)
【文献】特開昭60-172396(JP,A)
【文献】米国特許第6270677(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C02F 1/66- 1/68
C02F 1/70- 1/78
G06Q 10/00-10/10
G06Q 30/00-30/08
G06Q 50/00-50/20
G06Q 50/26-99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の事業所それぞれにおける廃液データと前記複数の事業所間で廃液を移動させる場合にかかる負担を示す移動負担データとを取得する取得部と、
少なくとも2種類の前記廃液を互いに混合して、該混合した廃液の性質があらかじめ設定された基準値を満たす組み合わせを示す組み合わせデータをあらかじめ記憶するデータベースと、
前記複数の事業所それぞれにおける廃液を互いに組み合わせることで、前記データベースに記憶されている組み合わせを実現することができる場合、該廃液を互いに混合した場合の処理負担を示す第1の処理負担と、該複数の事業所それぞれ単独で前記廃液を処分した場合の処理負担を示す第2の処理負担とを、前記組み合わせデータと前記廃液データと前記移動負担データとに基づいて算出する算出部と、
前記算出部が算出した結果を出力する出力部とを有する廃液処理制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の廃液処理制御装置において、
前記算出部は、前記第1の処理負担および前記第2の処理負担として、処理にかかる費用と時間と発熱量との少なくとも1つを算出する廃液処理制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の廃液処理制御装置において、
前記出力部は、前記第1の処理負担と前記第2の処理負担とのうち、負担の小さな方を選択し、該選択した処理負担の処理を行うことを促す画面を表示する廃液処理制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の廃液処理制御装置において、
前記出力部は、前記第1の処理負担および前記第2の処理負担と、前記データベースにあらかじめ設定された条件とを比較し、前記条件を満たした前記第1の処理負担および前記第2の処理負担の処理を行うことを促す画面を表示する廃液処理制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の廃液処理制御装置において、
前記算出部は、前記複数の事業所における廃液を互いに混合した場合に生成される廃棄物の量を前記第1の処理負担に含めて算出する廃液処理制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の廃液処理制御装置において、
前記出力部は、前記算出部が算出した結果を表示する廃液処理制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の廃液処理制御装置において、
前記出力部は、前記算出部が算出した結果を他の装置へ送信する廃液処理制御装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の廃液処理制御装置において、
前記取得部は、前記廃液データとして、前記廃液の性質、流量および処分に係るコストを取得する廃液処理制御装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の廃液処理制御装置において、
前記データベースは、前記組み合わせとして、酸性廃液とアルカリ性廃液との組み合わせと、酸化剤廃液と還元剤廃液との組み合わせと、の少なくとも一方を記憶する廃液処理制御装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の廃液処理制御装置において、
前記移動負担データは、混合機能付き車両もしくは船舶または混合機能付き連絡配管を用いて前記複数の事業所間で前記廃液を移動させる場合にかかる負担を示すデータである廃液処理制御装置。
【請求項11】
複数の事業所それぞれにおける廃液データと前記複数の事業所間で廃液を移動させる場合にかかる負担を示す移動負担データとを取得する処理と、
前記複数の事業所それぞれにおける廃液を互いに組み合わせることで、データベースにあらかじめ記憶されている組み合わせデータが示す、少なくとも2種類の前記廃液を互いに混合して、該混合した廃液の性質があらかじめ設定された基準値を満たす組み合わせを実現することができる場合、該廃液を互いに混合した場合の処理負担を示す第1の処理負担と、該複数の事業所それぞれ単独で前記廃液を処理した場合の処理負担を示す第2の処理負担とを、前記組み合わせデータと前記廃液データと前記移動負担データとに基づいて算出する処理と、
前記算出した結果を出力する処理とを行う廃液処理制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、
複数の事業所それぞれにおける廃液データと前記複数の事業所間で廃液を移動させる場合にかかる負担を示す移動負担データとを取得する手順と、
前記複数の事業所それぞれにおける廃液を互いに組み合わせることで、データベースにあらかじめ記憶されている組み合わせデータが示す、少なくとも2種類の前記廃液を互いに混合して、該混合した廃液の性質があらかじめ設定された基準値を満たす組み合わせを実現することができる場合、該廃液を互いに混合した場合の処理負担を示す第1の処理負担と、該複数の事業所それぞれ単独で前記廃液を処理した場合の処理負担を示す第2の処理負担とを、前記組み合わせデータと前記廃液データと前記移動負担データとに基づいて算出する手順と、
前記算出した結果を出力する手順とを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液処理制御装置、廃液処理制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、事業所等で発生する排水(以下、廃液と称する)は、当該事業所内で所定の廃液処理が行われた後に下水あるいは河川等に放流される、または、産業廃棄物処分業者に委託されて処分されている。処分を委託された産業廃棄物処分業者は、各事業所から回収した廃液を自身の事業所内で処理する、または、埋立地へ輸送して埋め立て処理を行っている。事業所内で廃液処理を行う場合、その廃液を放流可能か判定するための基準値を満たす水質とするために薬品を注入しているケースが多い。原水の水質や、処理後の水質に基づいて、最適な薬品の注入率を取得する技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術においては、注入する薬品のコストがかかってしまったり、薬品を注入することで廃液全体の量が増えてしまったりする一方で、その他の処理方法を選択する余地がないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、適切な処理方法の選択を支援することができる廃液処理制御装置、廃液処理制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の事業所それぞれにおける廃液データと前記複数の事業所間で廃液を移動させる場合にかかる負担を示す移動負担データとを取得する取得部と、
少なくとも2種類の前記廃液を互いに混合して、該混合した廃液の性質があらかじめ設定された基準値を満たす組み合わせを示す組み合わせデータをあらかじめ記憶するデータベースと、
前記複数の事業所それぞれにおける廃液を互いに組み合わせることで、前記データベースに記憶されている組み合わせを実現することができる場合、該廃液を互いに混合した場合の処理負担を示す第1の処理負担と、該複数の事業所それぞれ単独で前記廃液を処分した場合の処理負担を示す第2の処理負担とを、前記組み合わせデータと前記廃液データと前記移動負担データとに基づいて算出する算出部と、
前記算出部が算出した結果を出力する出力部とを有する廃液処理制御装置である。
【0007】
前記算出部は、前記第1の処理負担および前記第2の処理負担として、処理にかかる費用と時間と発熱量との少なくとも1つを算出することが好ましい。
【0008】
前記出力部は、前記第1の処理負担と前記第2の処理負担とのうち、負担の小さな方を選択し、該選択した処理負担の処理を行うことを促す画面を表示することが好ましい。
【0009】
前記出力部は、前記第1の処理負担および前記第2の処理負担と、前記データベースにあらかじめ設定された条件とを比較し、前記条件を満たした前記第1の処理負担および前記第2の処理負担の処理を行うことを促す画面を表示することが好ましい。
【0010】
前記算出部は、前記複数の事業所における廃液を互いに混合した場合に生成される廃棄物の量を前記第1の処理負担に含めて算出することが好ましい。
【0011】
前記出力部は、前記算出部が算出した結果を表示することが好ましい。
【0012】
前記出力部は、前記算出部が算出した結果を他の装置へ送信することが好ましい。
【0013】
前記取得部は、前記廃液データとして、前記廃液の性質、流量および処分に係るコストを取得することが好ましい。
【0014】
前記データベースは、前記組み合わせとして、酸性廃液とアルカリ性廃液との組み合わせと、酸化剤廃液と還元剤廃液との組み合わせと、の少なくとも一方を記憶することが好ましい。
【0015】
前記移動負担データは、混合機能付き車両もしくは船舶または混合機能付き連絡配管を用いて前記複数の事業所間で前記廃液を移動させる場合にかかる負担を示すデータであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、複数の事業所それぞれにおける廃液データと前記複数の事業所間で廃液を移動させる場合にかかる負担を示す移動負担データとを取得する処理と、
前記複数の事業所それぞれにおける廃液を互いに組み合わせることで、データベースにあらかじめ記憶されている組み合わせデータが示す、少なくとも2種類の前記廃液を互いに混合して、該混合した廃液の性質があらかじめ設定された基準値を満たす組み合わせを実現することができる場合、該廃液を互いに混合した場合の処理負担を示す第1の処理負担と、該複数の事業所それぞれ単独で前記廃液を処理した場合の処理負担を示す第2の処理負担とを、前記組み合わせデータと前記廃液データと前記移動負担データとに基づいて算出する処理と、
前記算出した結果を出力する処理とを行う廃液処理制御方法である。
【0017】
また、本発明は、コンピュータに、
複数の事業所それぞれにおける廃液データと前記複数の事業所間で廃液を移動させる場合にかかる負担を示す移動負担データとを取得する手順と、
前記複数の事業所それぞれにおける廃液を互いに組み合わせることで、データベースにあらかじめ記憶されている組み合わせデータが示す、少なくとも2種類の前記廃液を互いに混合して、該混合した廃液の性質があらかじめ設定された基準値を満たす組み合わせを実現することができる場合、該廃液を互いに混合した場合の処理負担を示す第1の処理負担と、該複数の事業所それぞれ単独で前記廃液を処理した場合の処理負担を示す第2の処理負担とを、前記組み合わせデータと前記廃液データと前記移動負担データとに基づいて算出する手順と、
前記算出した結果を出力する手順とを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、適切な処理方法の選択を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の廃液処理制御装置が適用されたシステムの一形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した廃液処理制御装置の内部構成の一例を示す図である。
【
図3】
図2に示したデータベースに記憶された対応付けの一例を示す図である。
【
図4】
図1に示した廃液処理制御装置における廃液処理制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図2に示したデータベースに記憶されている薬品データベースの一例を示す図である。
【
図6】
図2に示したデータベースに記憶されている薬品反応データベースの一例を示す図である。
【
図7】
図2に示したデータベースに記憶されている法規データベースの一例を示す図である。
【
図8】
図2に示したデータベースに記憶されている客先要望データベースの一例を示す図である。
【
図9】
図2に示したデータベースに記憶されている原水性状データベースの一例を示す図である。
【
図10】
図5に示した薬品データベースと
図6に示した薬品反応データベースと
図9に示した廃液条件とから算出された推定処理水の性状の一例を示す図である。
【
図11】
図1に示した廃液処理制御装置におけるさらなる詳細な廃液処理制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図2に示した出力部が表示する表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の廃液処理制御装置が適用されたシステムの一形態を示す図である。本形態は
図1に示すように、本発明の廃液処理制御装置100と、事業所装置200-1~200-m(mは、自然数)とが接続された形態となっている。
事業所装置200-1~200-mそれぞれは、水処理を行う複数の事業所それぞれを管理する装置であって、その事業所内における水処理に関する廃液データを所有する。この廃液データは、当該事業所内で生じた廃液に含まれる物質の種類や、当該物質の濃度やpH値を含めた性状、廃液の温度、廃液の量である。廃液データは、性状等の実測値でも良いが、廃液性状の推定値の算出を可能にする情報(例えば、当該事業所内で使用された水量、使用された薬品の種類、薬品の使用量)でも良い。また、廃液データは、さらに、当該事業所内で使用した廃液を当該事業所単独で放流可能なレベルに処理する場合にかかる処理費用・時間・発熱量等を示す情報を含んでいても良い。事業所装置200-1~200-mそれぞれは、このような廃液データを所有するため、内部の処理で生じた廃液の各パラメータを測定する機能を具備することは言うまでも無い。また、事業所装置200-1~200-mそれぞれは、通信機能を具備し、廃液処理制御装置100と通信可能に接続されている。事業所装置200-1~200-mそれぞれと廃液処理制御装置100との接続形態は、通信ネットワークであるインターネットを介して接続されているものであっても良いし、直接接続されているものであっても良い。なお、事業所装置200-1~200-mそれぞれは、管理する事業所の内部に設置されていても良いし、事業所の外部に設置されていても良い。また、1つの事業所装置が複数の事業所を管理するものであっても良い。
【0022】
図2は、
図1に示した廃液処理制御装置100の内部構成の一例を示す図である。
図1に示した廃液処理制御装置100は
図2に示すように、取得部110と、データベース120と、算出部130と、出力部140とを有する。なお、
図2には
図1に示した廃液処理制御装置100が具備する構成要素のうち、本実施の形態における主要な要素を示している。
【0023】
取得部110は、事業所装置200-1~200-mから、それぞれが管理する事業所それぞれにおける廃液データを取得する。また、取得部110は、事業所装置200-1~200-mが管理する事業所間で廃液を移動させる場合にかかる負担を示す移動負担データを取得する。この移動負担データは、事業所装置200-1~200-mが所有している、事業所装置200-1~200-mが管理する事業所それぞれの位置に基づいて算出される事業所間の距離および高低差、事業所間を移動させる移動手段(混合機能付き車両、混合機能付き船舶、混合機能付き連絡配管等)、運搬する廃液の量等に基づいて算出された負担を示すデータであって、事業所装置200-1~200-mが算出して保有しているものであっても良いし、廃液処理制御装置100が算出して保有しているものであっても良い。
データベース120は、少なくとも2種類の廃液を混合して廃液に含まれる物質同士が反応することで、混合した廃液の性質があらかじめ設定された基準値を満たすまたは基準値に近づく可能性がある、物質の組み合わせを示す組み合わせデータをあらかじめ記憶する。組み合わせデータは、例えば、酸性物質とアルカリ性物質との組み合わせを示すデータや、酸化性物質と還元性物質との組み合わせを示すデータであっても良い。さらに、組み合わせデータは、物質の組み合わせに加え、当該組み合わせの物質同士による化学反応に関する情報を含んでいても良い。例えば、組み合わせデータは、当該組み合わせの物質同士が化学反応を起こしたときの、反応熱に関する情報を含んでいても良い。また、データベース120は、このような基準値をあらかじめ記憶する。この基準値は、法令に基づく基準値でも自主的な基準でも良い。また、この基準値は、廃液を外部へ放流可能なレベルを示す値であっても良いし、廃液を微量な他の薬品と混合させることで外部へ放流可能なレベルとなる値であっても良い。
【0024】
図3は、
図2に示したデータベース120に記憶された対応付けの一例を示す図である。
図2に示したデータベース120には
図3に示すように、2つの廃液(廃液1と廃液2)と、混合の比率とが対応付けられて記憶されている。例えば、
図3に示すように、廃液1に含まれる物質「a」と廃液2に含まれる物質「b」と混合比率「1:1」とが対応付けられている。これは、「a」という物質と「b」という物質とを「1:1」の比率で混合すれば、物質「a」と物質「b」との反応により、廃液1の「a」の濃度および廃液2の「b」の濃度があらかじめ設定された基準値を満たすまたは基準値に近づけることができる反応がおきることを示している。また、廃液1に含まれる物質「c」と廃液2に含まれる物質「d」と混合比率「1:2」とが対応付けられている。これは、「c」という物質と「d」という物質とを「1:2」の比率で混合すれば、物質「c」と物質「d」との反応により、廃液1の「c」の濃度および廃液2の「d」の濃度があらかじめ設定された基準値を満たすまたは基準値に近づけることができる反応がおきることを示している。
【0025】
算出部130は、事業所装置200-1~200-mが管理する事業所から排出される廃液がデータベース120に記憶されている基準値を単独で満たすものかどうかを判定する。算出部130は、事業所装置200-1~200-mが管理する事業所それぞれにおいて基準値を満たしていない廃液を互いに組み合わせることで、データベース120に記憶されている組み合わせを実現することができる場合、それらの廃液を互いに混合した場合の処理負担(第1の処理負担)を算出する。また、算出部130は、事業所装置200-1~200-mが管理する事業所それぞれ単独でそれらの基準値を満たしていない廃液を処分した場合の処理負担(第2の処理負担)を算出する。これらの第1の処理負担および第2の処理負担は、データベース120に記憶されている組み合わせデータおよび取得部110が取得した廃液データと移動負担データとに基づいて算出される。また、算出部130は、第1の処理負担および第2の処理負担として、水処理にかかる費用と時間と発熱量との少なくとも1つを算出する。また、算出部130は、事業所装置200-1~200-mが管理する事業所それぞれにおける廃液を互いに混合した場合に生成される廃棄物の量を第1の処理負担に含めて算出するものであっても良い。
【0026】
出力部140は、算出部130が算出した結果を出力する。出力部140の出力態様は、ディスプレイへの表示であっても良いし、他の装置への送信であっても良い。また、出力部140は、算出部130が算出した第1の処理負担と第2の処理負担とのうち、負担の小さな方を選択し、選択した処理負担の処理を行うことを促す画面を表示するものであっても良い。また、出力部140は、算出部130が算出した第1の処理負担および第2の処理負担と、データベースにあらかじめ設定された条件とを比較し、その条件を満たした第1の処理負担および第2の処理負担の処理を行うことを促す画面を表示するものであっても良い。
【0027】
以下に、
図1に示した廃液処理制御装置100における廃液処理制御方法について説明する。
図4は、
図1に示した廃液処理制御装置100における廃液処理制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0028】
まず、取得部110が、事業所装置200-1~200-mから廃液データを取得する(ステップS1)。続いて、算出部130が、取得部110が取得した廃液データに基づいて、事業所装置200-1~200-mの廃液について処理が必要かどうかを判定する(ステップS2)。具体的には、算出部130は、取得部110が取得した廃液データがデータベース120に記憶されている基準値を満たしているかどうかを判定し、基準値を満たしていない場合、事業所装置200-1~200-mの廃液について何らかの処理が必要であると判定する。
算出部130が事業所装置200-1~200-mの廃液について処理は不要であると判定した場合、出力部140は、その廃液を放流する指示を示す情報を出力する(ステップS3)。
【0029】
一方、算出部130が事業所装置200-1~200-mの廃液について何らかの処理が必要であると判定した場合、算出部130は、事業所装置200-1~200-mが管理する事業所それぞれにおける廃液を互いに組み合わせることで、データベース120に記憶されている組み合わせを実現することができることができるかどうかを判定する(ステップS4)。具体的には、例えば、データベース120に
図3に示したような対応付けが記憶されている場合、事業所装置200-1から取得した廃液データに廃液中の物質aを示す情報が含まれており、事業所装置200-2から取得した廃液データに廃液中の物質bを示す情報が含まれていると、物質aと物質bとの組み合わせがデータベース120に記憶されているため、算出部130は、事業所装置200-1が管理する事業所の廃液と事業所装置200-2が管理する事業所からの廃液とで、データベース120に記憶されている組み合わせを実現することができると判定する。
【0030】
事業所装置200-1~200-mが管理する事業所それぞれにおける廃液を互いに組み合わせることで、データベース120に記憶されている組み合わせを実現することができることができると判定された場合、判定された組み合わせについて、取得部110は、組み合わせる事業所間で廃液を移動させるための移動負担データを取得する(ステップS5)。すると、算出部130は、組み合わせる事業所間で廃液を混合した場合の負担(第1の処理負担)を算出する(ステップS6)。この廃液を混合した場合の負担とは、移動負担データに基づいて算出された事業所間の廃液の移動にかかる負担(時間やコスト)に加えて、例えば、廃液を混合すると生じる廃棄物の種類や量、発熱量、混合にかかる時間やコスト等である。以下に説明する他の「負担」についても同様である。また、これらは、組み合わせる事業所の事業所装置から取得した廃液データおよびデータベース120にあらかじめ記憶されている混合処理を行う際のデータに基づいて算出される。また、算出部130は、組み合わせる事業所が事業所ごとに廃液を処理した場合の負担(第2の処理負担)を算出する(ステップS7)。事業所ごとに廃液を処理した場合の負担は、その事業所から取得した廃液データに基づいて算出部130が算出する。
【0031】
算出部130が第1の処理負担と第2の処理負担とを算出すると、出力部140は、算出部130が算出した結果を出力する(ステップS8)。
【0032】
一方、ステップS4にて、事業所装置200-1~200-mが管理する事業所それぞれにおける廃液を互いに組み合わせても、データベース120に記憶されている組み合わせを実現することができることができないと判定された場合、算出部130は、その事業所が事業所単独で廃液を処理した場合の負担(第2の処理負担)を算出する(ステップS9)。そして、ステップS8にて、出力部140は、算出部130が算出した結果を出力する。
【0033】
なお、出力部140が、算出部130が算出した結果として、第1の処理負担と第2の処理負担との双方を表示することで、その表示を閲覧した利用者が処理方法を選択するための比較要素を提示することができる。また、出力部140が、第1の処理負担のうちのコストと、第2の処理負担のうちのコストとを比較し、コストがより安価である方の処理を行うことを促す画面を表示することで、コストを優先した処理方法を選択したい場合に、適切な選択を支援することができる。コストだけではなく、処理(混合)にかかる時間や、発熱量、使用される薬品の量を含めた生成される廃液の総量についても、その優先する要素について比較を行い、その結果、負担の小さな方の処理を行うことを促す画面を出力部140が表示する。
【0034】
以下に、さらなる詳細な例を挙げて、本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
図5は、
図2に示したデータベース120に記憶されている薬品データベースの一例を示す図である。
図5に示すようにデータベース120には、廃液の処理に用いる薬品の薬品名、化学式、CAS番号、価数、分子量、濃度/比重/温度が、その薬品ごとに記憶されている。
図5には、主にアルカリ性の廃液を処理するために用いられる塩酸と、主に酸性の廃液を処理するために用いられる水酸化ナトリウムとがデータベース120に記憶されている例を示している。
図6は、
図2に示したデータベース120に記憶されている薬品反応データベースの一例を示す図である。
図6に示すようにデータベース120には、塩酸と水酸化ナトリウムとの化学反応式および硫酸と水酸化ナトリウムとの化学反応式が記憶されている。さらに、それぞれの化学反応における中和発生熱が化学反応式と対応付けて記憶されている。
図7は、
図2に示したデータベース120に記憶されている法規データベースの一例を示す図である。
図7に示すようにデータベース120には、廃液を放流可能とするpHの値や温度の条件が記憶されている。この条件が廃液を放流可能とする基準値となる。
図7に示すように、基準値が上限と下限とで2つある場合は、それぞれの値があらかじめ記憶されている。
図8は、
図2に示したデータベース120に記憶されている客先要望データベースの一例を示す図である。
図8に示すようにデータベース120には、事業所を所有するそれぞれの利用者(客先)が要望している、処理方法を選択するための選択基準が客先ごとに記憶されている。この客先要望データベースに従えば、客先が優先する比較要素に応じた処理方法の提示を行うことができる。
図9は、
図2に示したデータベース120に記憶されている原水性状データベースの一例を示す図である。この原水性状は廃液条件となる。
図9に示すようにデータベース120には、各事業所(客先)において使用水量、使用薬品、想定廃液濃度および排水温度の項目の廃液条件が記憶されている。
【0036】
図10は、
図5に示した薬品データベースと
図6に示した薬品反応データベースと
図9に示した廃液条件とから算出された推定処理水の性状の一例を示す図である。
図10に示すように、薬品とその反応式や中和発生熱および廃液条件から、水量、pH値および温度が算出されている。
【0037】
以下に、
図1に示した廃液処理制御装置100におけるさらなる詳細な廃液処理制御方法について説明する。
図11は、
図1に示した廃液処理制御装置100におけるさらなる詳細な廃液処理制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、事業所装置200-1の事業所の廃液Aの処理を行う場合を例に挙げて説明する。
【0038】
まず、取得部110が、事業所装置200-1~200-mから廃液データを取得する(ステップS11)。続いて、算出部130が、取得部110が取得した廃液データに基づいて、事業所装置200-1~200-mの廃液について処理が必要かどうかを判定する(ステップS12)。具体的には、算出部130は、取得部110が取得した廃液データがデータベース120に記憶されている基準値を満たしているかどうかを判定し、基準値を満たしていない場合、事業所装置200-1~200-mの廃液について何らかの処理が必要であると判定する。または、算出部130は、取得部110が取得した廃液データに基づき廃液の性状の推定値を算出し、当該推定値がデータベース120に記憶されている基準値を満たしているかどうかを判定し、基準値を満たしていない場合、事業所装置200-1~200-mの廃液について何らかの処理が必要であると判定する。
算出部130が事業所装置200-1~200-mの廃液について処理は不要であると判定した場合、出力部140は、その廃液を放流する指示を示す情報を出力する(ステップS13)。
【0039】
一方、算出部130が事業所装置200-1~200-mの廃液について何らかの処理が必要であると判定した場合、算出部130は、廃液n(nは自然数)のpH値が廃液Aを中和することができるかどうかを判定する(ステップS14)。中和が可能である場合、算出部130は、廃液Aの性状と廃液nの性状とに基づいて、廃液Aと廃液nとを混合した後のpH値を算出する(ステップS15)。このとき、算出部130は、取得部110が取得した廃液データに含まれる廃液Aの温度と廃液nの温度とに基づいて、廃液Aと廃液nとを混合した後の温度を算出するものであっても良い。続いて、算出部130は、算出したpH値が法令上放流可能な値であるかどうかを判定する(ステップS16)。具体的には、算出部130は、算出したpH値とデータベース120に記憶されている法規データベースとを比較し、算出したpH値が法規データベースの条件を満たしているかどうかを判定する。また、算出部130が廃液Aと廃液nとを混合した後の温度を算出している場合、算出部130は、算出した温度が法令上放流可能な値であるかどうかを判定する。具体的には、算出部130は、算出した温度とデータベース120に記憶されている法規データベースとを比較し、算出した温度が法規データベースの条件を満たしているかどうかを判定する。なお、ステップS14~S16の処理は、
図3に示すようなデータベース120に記憶されている対応付けに、廃液Aと廃液nとの対応付けがあるかどうかを判定するものであっても良い。
算出したpH値またはpH値と温度との双方が法令上放流可能な値である場合、算出部130は、その事業所が事業所単独で廃液を処理した場合の負担を廃液データに基づいて算出する。また、算出部130は、廃液Aと廃液nとを混合した場合の負担を、各事業所装置200-1~200-mから取得した廃液データや、上述したような移動負担データに基づいて算出する。そして、算出部130は、事業所装置200-1が事業所単独で廃液を処理した場合と比較して混合した場合の負担低減効果を算出する(ステップS17)。この効果は、コスト的な効果や、時間的な効果、発熱量の低減の効果、発生する廃棄物量の低減の効果等、廃液を事業所単独で処理した場合よりも混合した場合の方が優位となる点である。すると、算出部130は、算出した負担低減効果が客先条件を満たすかどうかを判定する(ステップS18)。このとき、算出部130は、算出した負担低減効果とデータベース120に記憶されている客先要望データベースとを比較して、算出した負担低減効果が客先要望データベースの条件を満たしているかどうかを判定する。例えば、算出部130は、算出した負担低減効果が
図8に示したような各社ごとの条件を満たしているかどうかや、各社ごとに優先された条件(コスト、時間、発熱温度等)を満たしているかどうかを判定する。
算出部130が、算出した負担低減効果が客先条件を満たすと判定した場合、出力部140は、混合の処理を促す表示を行う(ステップS19)。
【0040】
図12は、
図2に示した出力部140が表示する表示画面の一例を示す図である。
図2に示した出力部140は
図12に示すように、算出部130が、算出した負担低減効果が客先条件を満たすと判定すると、他の事業所の廃液との混合を促す表示を行う。
図12に示した例では、出力部140は、混合内容として、混合する廃液を保有する事業所名、位置(地図)、廃液名、混合の比率を表示する。
【0041】
一方、ステップS14にて廃液nのpH値が廃液Aを中和することができないと判定された場合、または、ステップS16にて廃液nと廃液Aとを混合した後のpH値またはpH値と温度との双方が法令上放流可能な値ではないと判定された場合、または、ステップS18にて負担低減効果が客先条件を満たすものではないと判定された場合、(n=n+1)としてnの値を1つインクリメントして(ステップS20)、ステップS14の処理が行われる。この「n」は、データベース120に記憶されている廃液にそれぞれ固有にあらかじめ付与しておいた番号であり、その番号を用いて順番に上述した判定処理を行うものである。
【0042】
このように、本発明の廃液処理制御装置は、複数の事業所の廃液を互いに混合して、混合した水質が排水(廃棄)可能なレベルを満たす場合、それら廃液を混合することを廃液処理の選択肢として提示する。そのとき、本発明の廃液処理制御装置は、その処理方法や条件が事業所ごとの要望を満たすかどうかに基づいて、その処理の選択肢を提示するものであっても良い。そのため、適切な処理方法の選択を支援することができる。
【0043】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。
【0044】
上述した各構成要素が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を廃液処理制御装置100にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを廃液処理制御装置100に読み込ませ、実行するものであっても良い。廃液処理制御装置100にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、廃液処理制御装置100に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、廃液処理制御装置100に設けられたCPU(不図示)にて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0045】
100 廃液処理制御装置
110 取得部
120 データベース
130 算出部
140 出力部
200-1~200-m 事業所装置