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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 7/00 20060101AFI20220829BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
E02F7/00 D
F01N3/18 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019121679
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008716
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】大南 有正
(72)【発明者】
【氏名】清水 剛
(72)【発明者】
【氏名】柴 好美
(72)【発明者】
【氏名】高野 宏明
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134569(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076271(WO,A1)
【文献】特開2005-052788(JP,A)
【文献】特開2010-131573(JP,A)
【文献】特開2008-297812(JP,A)
【文献】特開2007-321671(JP,A)
【文献】特開2013-160104(JP,A)
【文献】国際公開第2016/110955(WO,A1)
【文献】特開2000-136527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 7/00
F01N 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を走行させる走行体と、
供給側から材料を取り入れ、前記材料を加工し、前記加工がされた材料を排出側に排出する作業機関と、
前記作業機関の駆動力を生成する内燃機関と、
前記内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置と、
前記排ガス浄化装置が前記排ガスを浄化する際に用いる還元剤を貯留する還元剤タンクと、
前記還元剤タンクに貯留される前記還元剤の残量を検出する還元剤残量検出部と、
コントローラと、を備えた作業機械において、
前記作業機関は、前記材料を加工する加工装置と、前記材料を前記供給側から前記加工装置に取り入れる供給装置と、前記加工装置によって加工がされた材料を前記排出側に排出する排出装置と、を有し、
前記コントローラは、
前記作業機関の稼働態様を選択する稼働態様選択部と、
前記作業機関を制御する作業制御部と、を含み、
前記稼働態様選択部は、前記還元剤の残量が所定量以下のとき前記供給装置の停止または動作速度を遅くした後に前記加工装置の停止または動作速度を遅くする稼働態様を選択し、
前記作業制御部は前記稼働態様に応じて前記作業機関を制御する作業機械。
【請求項2】
前記稼働態様選択部は、前記作業機関の動作速度を遅くする稼働態様を選択する際、前記内燃機関の出力を低下させ、該出力の低下度合いに従って前記作業機関の動作速度を遅くする稼働態様を選択する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記材料は、土砂であり、
前記加工装置は、
前記土砂に土質改良材を添加するために供給する土質改良材供給装置と、
前記土質改良材と前記土砂とを混合する混合機と、を含む、請求項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械に係り、特に排ガス浄化装置を搭載することによる弊害を是正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、供給された材料を加工等して排出する作業装置を備えた自走式の作業機械においては、作業装置や走行体の稼働に利用するポンプを駆動するべく、軽油を燃焼することで稼働するディーゼルエンジンが搭載されている。
【0003】
このディーゼルエンジンは、軽油を燃焼する際に窒素化合物であるNOxを生成するため、排ガス中に含まれるNOxを除去することが課題となっている。
そこで、排ガスに尿素水溶液(尿素水)等の還元剤を噴射してNOxを除去するSCR(Selective Catalytic Reduction)装置やEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置等の排気処理装置を作業機械に搭載する技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/110955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作業装置は、材料を加工している途中で停止すると、装置内に材料が残留するような場合が考えられる。このように作業装置が停止してから再稼働するまでの間に材料が固化する等により、再稼働する際の作業装置にかかる負担が増大する虞や、再稼働させるために作業装置内に残留する材料を排出する作業が生じる虞がある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、還元剤の残量がなくなることにより排気処理装置が停止し、それに伴いエンジンが停止することで作業装置が停止する場合については何ら考慮されておらず、さらなる改善の余地があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、還元剤の残量がなくなることに起因して排気処理装置(排ガス処理装置)及びエンジン(内燃機関)が停止した場合であっても作業装置(作業機関)の再稼働を容易に行うことができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の作業機械は、機体を走行させる走行体と、供給側から材料を取り入れ、前記材料を加工し、前記加工がされた材料を排出側に排出する作業機関と、前記作業機関の駆動力を生成する内燃機関と、前記内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置と、前記排ガス浄化装置が前記排ガスを浄化する際に用いる還元剤を貯留する還元剤タンクと、前記還元剤タンクに貯留される前記還元剤の残量を検出する還元剤残量検出部と、コントローラと、を備えた作業機械において、前記作業機関は、前記材料を加工する加工装置と、前記材料を前記供給側から前記加工装置に取り入れる供給装置と、前記加工装置によって加工がされた材料を前記排出側に排出する排出装置と、を有し、前記コントローラは、前記作業機関の稼働態様を選択する稼働態様選択部と、前記作業機関を制御する作業制御部と、を含み、前記稼働態様選択部は、前記還元剤の残量が所定量以下のとき前記供給装置の停止または動作速度を遅くした後に前記加工装置の停止または動作速度を遅くする稼働態様を選択し、前記作業制御部は前記稼働態様に応じて前記作業機関を制御することを特徴とする。
【0009】
これにより、還元剤の残量が所定量以下のとき、供給装置の停止または動作速度を遅くした後に加工装置を停止または動作速度を遅くすることで、材料を加工装置に取り入れないようにしまたは取り入れられる材料の量を減らしてから加工装置を停止または動作速度を遅くすることが可能とされ、還元剤の残量がなくなり作業機関が停止したときに作業機関に材料が残留することを軽減することが可能とされる。
【0014】
その他の態様として、前記稼働態様選択部は、前記作業機関の動作速度を遅くする稼働態様を選択する際、前記内燃機関の出力を低下させ、該出力の低下度合いに従って前記作業機関の動作速度を遅くする稼働態様を選択するのが好ましい。
【0015】
これにより、作業機関の動作速度を遅くする稼働態様を選択する際、内燃機関の出力を低下させ、該出力の低下度合いに従って作業機関の動作速度を遅くすることで、内燃機関が消費する燃料の消費量を低減させるとともに排ガスの排出量を低減させて還元剤の消費量を低減することが可能とされる。
【0016】
その他の態様として、前記材料は、土砂であり、前記加工装置は、前記土砂に土質改良材を添加するために供給する土質改良材供給装置と、前記土質改良材と前記土砂とを混合する混合機と、を含むのが好ましい。
【0017】
これにより、還元剤の残量に応じて、供給装置の停止または動作速度を遅くした後に、土砂に土質改良材を添加するために供給する土質改良材供給装置と土質改良材と土砂とを混合する混合機とを含む加工装置を停止または動作速度を遅くすることで、土砂が混合機に残留することや、土質改良材供給装置によって土砂に土質改良材が過剰に供給されることを抑制することが可能とされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の作業機械によれば、還元剤の残量が所定量以下のとき、供給装置の停止または動作速度を遅くした後に加工装置を停止または動作速度を遅くすることで、材料を加工装置に取り入れないようにしまたは取り入れられる材料の量を減らしてから加工装置を停止または動作速度を遅くすることが可能となり、還元剤の残量がなくなり作業機関が停止したときに作業機関に材料が残留することを軽減することができる。これにより、還元剤の残量がなくなることに起因して排ガス処理装置及び内燃機関が停止した場合であっても作業機関の再稼働を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】作業機械の側面図である。
図2】作業機械の制御に係るコントローラの接続構成がブロック図である。
図3】コントローラが実行する、第1実施形態に係る稼働態様判定制御の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図4】第1作動態様における作業機関制御部の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図5】第1警告態様における警告制御部の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図6】第2作動態様における作業機関制御部の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図7】第2警告態様における警告制御部の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図8】第3警告態様における警告制御部の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図9】コントローラが実行する、第2実施形態に係る稼働態様判定制御の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図10】第3作動態様における作業機関制御部の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図11】第4作動態様における作業機関制御部の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、図面に基づき本発明の第1実施形態について説明する。
図1を参照すると、作業機械1の側面図が示されている。作業機械1は、供給側から供給された土砂(材料)101に固化材(土質改良材)102を混合させることで硬度等を調整した改良土(加工がされた材料)104を生成し、排出側に排出する所謂自走式土質改良機である。
【0021】
この作業機械1は、機体2、走行体3、駆動機関4及び作業機関5を備えている。機体2は、作業機械1の本体であり、下部に設けられた例えばクローラ式の走行体3によって走行することが可能である。駆動機関4は、走行体3の駆動力や後述する作業機関5の駆動力を生成する機関であり、エンジン(内燃機関)6及び油圧ポンプ7を有している。
【0022】
エンジン6は、図示しない燃料タンクに貯留された軽油を燃焼して稼働することで駆動力を生成する内燃機関である。油圧ポンプ7は、エンジン6によって生成された駆動力により稼働する作動油用の油圧式のポンプであり、図示しない斜板の傾転角を制御することで作動油の吐出量を調整することが可能である。
【0023】
この油圧ポンプ7は、走行体3や後述する作業機関5の各装置に、図示しない油圧ホースや開閉弁によって構成された開回路によって作動油を流通可能に接続されている。したがって、各開閉弁を開閉制御することで、走行体3や作業機関5の各装置を適宜制御することができる。以下、説明の便宜上、各開閉弁の開閉度合いに応じて駆動を制御する装置については、開閉弁の説明はせず、各装置を直接的に制御するものとして説明する。
【0024】
作業機関5は、供給装置11、加工装置13及び排出装置15を有しており、供給装置11から供給される土砂を加工装置13によって加工し、排出装置15から排出することが可能な機関である。
【0025】
供給装置11は、機体前後方向前側、すなわち供給側に設けられた装置であり、土砂ホッパ21、土砂フィーダ23、揺動ゲート25及び均しローラ27を含んでいる。土砂ホッパ21は、供給装置11の上側に形成され、例えば油圧ショベル100から供給される土砂101を仮受けすることが可能なホッパである。
【0026】
土砂フィーダ23は、土砂ホッパ21の下側に配設されるコンベヤであり、土砂ホッパ21が仮受けした土砂101を機体前後方向後方、すなわち加工装置13に向かって搬送することが可能である。揺動ゲート25は、土砂フィーダ23の機体上下方向上方であって、土砂ホッパ21より後側、すなわち排出側に配設された可動壁である。この揺動ゲート25は、土砂フィーダ23の上方に位置しており、揺動ゲート25の下端より上側の土砂101を土砂ホッパ21に押し戻すようにして土砂101を必要量だけ切り出すことが可能である。
【0027】
均しローラ27は、土砂フィーダ23の機体上下方向上方であって、揺動ゲート25より後側、すなわち排出側に配設され、揺動ゲート25によって切り出された土砂101の上表面の凹凸に追従して上下動しつつ土砂101の上表面に倣って回転する加圧ローラである。これにより、均しローラ27を通過する土砂101は、均しローラ27の自重により所定の力で適度に加圧されるため、嵩密度を均一にすることができる。
【0028】
加工装置13は、機体前後方向中央に設けられた装置であり、固化材ホッパ31、固化材フィーダ(土質改良材供給装置)33及び混合室35を含んでいる。固化材ホッパ31は、機体前後方向中央の上側に配設され、例えば生石灰等の固化材102を貯留することが可能なタンクである。
【0029】
固化材フィーダ33は、固化材ホッパ31の下側に配設されたスクリュであり、回転することで固化材ホッパ31の下側に位置する固化材102を固化材フィーダ33の下方に排出することが可能である。これにより、固化材フィーダ33は、土砂フィーダ23によって供給側から加工装置13に向かって搬送される土砂101に固化材102を添加するために供給することで、混合土103を生成することができる
【0030】
混合室35は、固化材フィーダ33の下方であって土砂フィーダ23の排出側下方に配設された筐体である。この混合室35は、供給側上端に土砂フィーダ23から混合土103を取り入れる取り入れ口が形成されている。また、混合室35には、パドルミキサ(混合機)37が配設されており、パドルミキサ37を駆動することで混合室35に取り入れられた混合土103をむらなく混ぜ合わせ、改良土104を生成するとともに、混合室35の供給側から排出側に向かって移動させ、下方に排出することが可能である。ここで、パドルミキサ37は、混合土103をかき混ぜる作業をするため、作業機関5のうち最も稼働に負荷を必要とする装置である。
【0031】
排出装置15は、加工装置13の下方から機体前後方向後方、すなわち排出側に向かって延びる搬送装置である。この排出装置15は、混合室35から下方に排出される改良土104を仮受けしたあと排出側に搬送することが可能である。
【0032】
機体2の駆動機関4には、SCR装置(排ガス浄化装置)41、尿素水タンク(還元剤タンク)43及びEGR装置45等の排ガス浄化装置が配設されている。
【0033】
SCR装置41は、エンジン6が軽油を燃焼して排出する排ガスに尿素水(還元剤)を噴射することで、排ガス中に含まれるNOxを還元して取り除くことが可能な排ガス浄化装置である。尿素水タンク43は、SCR装置41が排ガスに噴射する尿素水を貯留するタンクである。したがって、SCR装置41は、尿素水タンク43に貯留される尿素水を消費しつつ排ガスを浄化することが可能である。
【0034】
EGR装置45は、排ガスの一部を取り入れ、再びエンジン6に吸気させ、燃焼温度を下げて排ガス中に含まれるNOxを低減する装置である。これにより、EGR装置45は、排ガス中に含まれるNOxを抑制することで排ガスを浄化することが可能である。
【0035】
機体2には、操作パネル51、警告灯53、スピーカ55、残量センサ(還元剤残量検出部)57及びコントローラ59が配設されている。操作パネル51は、作業機械1の各種操作をする操作ボタンや作業機械1の状態を表示するモニタを備えている。
【0036】
警告灯53は、固化材ホッパ31の上部及び駆動機関4の上部に配設されたランプであり、黄色の光を発する黄ランプ53a及び赤色の光を発する赤ランプ53bを含んでいる。スピーカ55は、クラクション音を発することが可能な所謂ホーンであり、例えば固化材ホッパ31の上部に配設されている。
【0037】
残量センサ57は、尿素水タンク43に設けられた例えばレベルセンサであり、尿素水タンク43内に貯留される尿素水の量が満タン時と比較してどの程度残っているか(残量)を検出することが可能である。
【0038】
コントローラ59は、エンジン6の運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。
【0039】
図2を参照すると、作業機械1の制御に係るコントローラ59の接続構成がブロック図で示されている。このコントローラ59の入力側には、残量センサ57が電気的に接続されており、尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量に関する情報が入力される。
【0040】
また、コントローラ59の出力側には、エンジン6、油圧ポンプ7、SCR装置41、土砂フィーダ23、揺動ゲート25、均しローラ27、固化材フィーダ33、パドルミキサ37、排出装置15、操作パネル51、警告灯53及びスピーカ55がそれぞれ電気的に接続されており、後述するように適宜コントローラ59によって制御することができる。
【0041】
ここで、コントローラ59は、駆動制御部61、稼働態様判定部(稼働態様選択部)63、作業機関制御部(作業制御部)65及び警告制御部67を有している。駆動制御部61は、エンジン6、油圧ポンプ7及びSCR装置41を制御する制御部である。
【0042】
したがって、駆動制御部61は、エンジン6を制御して油圧ポンプ7に対する出力を増減することやエンジン6の軽油を燃焼する量及び排出する排ガスの量を調整すること、油圧ポンプ7を制御して作業機関5に供給する作動油の量を調整すること並びにSCR装置41を制御して排ガスの排出量に基づいて尿素水を噴射する量を制御することができる。
【0043】
稼働態様判定部63は、残量センサ57から入力される尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量に関する情報に基づいて後述する稼働態様判定制御を実行する判定部である。この稼働態様判定部63は、判定結果次第では、駆動制御部61を介してエンジン6、油圧ポンプ7及びSCR装置41を制御することもできる。
【0044】
作業機関制御部65は、稼働態様判定部63の判定結果に沿って土砂フィーダ23、揺動ゲート25、均しローラ27、固化材フィーダ33、パドルミキサ37及び排出装置15を制御する制御部である。警告制御部67は、作業機関制御部65と同様に稼働態様判定部63の判定結果に沿って操作パネル51、警告灯53及びスピーカ55を制御する制御部である。
【0045】
図3を参照すると、コントローラ59が実行する、第1実施形態に係る稼働態様判定制御の制御手順を示すルーチンがフローチャートで示されており、以下、同フローチャートに沿い説明する。
【0046】
ステップS10では、残量センサ57から入力される尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量が10%以下か否かを判別する。ステップS10の判別結果が偽(No)で尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量が10%より多いと判別すると、ステップS40に移行し、作業機関5の作業態様を通常態様と判定(選択)し、本ルーチンを終了する。ここで、通常態様とは、例えば単位時間当たりの作業機関5の作業効率が最も高い作業機関5の稼働態様である。
一方、ステップS10の判別結果が真(Yes)で尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量が10%以下であると判別すると、ステップS20に移行する。
【0047】
ステップS20では、尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量が5%以下か否かを判別する。ステップS20の判別結果が偽(No)で尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量が5%より多いと判別すると、ステップS50に移行する。一方、ステップS20の判別結果が真(Yes)で尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量が5%以下であると判別すると、ステップS30に移行する。
【0048】
ステップS30では、尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量が0%か否か、すなわち尿素水タンク43が空か否かを判別する。ステップS30の判別結果が偽(No)で尿素水タンク43は空ではないと判別すると、ステップS90に移行する。一方、ステップS40の判別結果が真(Yes)で尿素水タンク43が空であると判別すると、ステップS110に移行する。
【0049】
これにより、ステップS10~S30では、尿素水タンク43内に貯留される尿素水の残量が10%より多い場合(ステップS10でNo)、5~10%の場合(ステップS10でYesかつステップS20でNo)、0~5%の場合(ステップS10でYes、ステップS20でYesかつステップS30でNo)及び尿素水タンク43が空の場合(ステップS10~S30すべてYes)の4つの場合に判別することができる。
【0050】
また、尿素水の残量が10%より多い場合には、作業機関5の作業態様を通常態様を選択することで(ステップS40)、尿素水の残量が10%以下になるまでは作業効率が最も高い作業機関5の稼働態様で作業機関5を稼働することができる。以下、尿素水の残量が5~10%の場合(第1段階)、0~5%の場合(第2段階)及び尿素水タンク43が空の場合(第3段階)の3つの場合について、それぞれフローに沿って説明する。
【0051】
<第1段階>
ステップS50では、操作パネル51のモニタに、例えば「尿素水の残量が10%以下のため作業停止」といった警告表示をしてステップS60に移行し、警告表示から1秒経過するまでステップS60を繰り返したあと、ステップS70に移行する。
【0052】
これにより、例えば作業機械1のオペレータが操作パネル51によって作業機関5を操作しているときに尿素水の残量が10%以下となり、後述するステップS70、S80によって供給装置11の稼働が停止し、警告灯53が点灯する前にオペレータに予め作業を停止する理由を提示することができる。
ステップS70では、作業機関5の作業態様を第1作業態様と判定(選択)し、作業機関制御部65によって土砂フィーダ23、揺動ゲート25及び均しローラ27を制御する。
【0053】
図4を参照すると、第1作動態様における作業機関制御部65の制御手順のルーチンがフローチャートで示されている。ステップS210では、土砂フィーダ23の作動を停止したあとステップS220に移行し、揺動ゲート25の作動を停止したあとステップS230に移行し、均しローラ27の作動を停止して第1作動態様における作業機関制御部65の制御を終了する。
【0054】
これにより、稼働態様判定部63が作業機関5の作業態様を第1作業態様と判定すると、作業機関制御部65によって土砂フィーダ23、揺動ゲート25及び均しローラ27を停止、すなわち、作業機関5のうち最も稼働に負荷を必要とする装置であるパドルミキサ37より上流の供給装置11の作動を停止することで、尿素水タンク43が空になりエンジン6を停止してパドルミキサ37が停止するような場合に混合土103が混合室35に残留することを防止することができる。
【0055】
図3に戻り、第1作動態様における作業機関制御部65の制御を終了すると、ステップS80に移行する。ステップS80では、警告態様を第1警告態様と判定し、警告制御部67によって警告灯53及びスピーカ55を制御する。
【0056】
図5を参照すると、第1警告態様における警告制御部67の制御手順のルーチンがフローチャートで示されている。ステップS310では、スピーカ55からクラクション音を例えば1秒間吹鳴してステップS320に移行し、ステップS320では、警告灯53の黄ランプ53aを点灯して第1警告態様における警告制御部67の制御を終了する。
【0057】
これにより、稼働態様判定部63が警告態様を第1警告態様と判定すると、スピーカ55からクラクション音を吹鳴することで(ステップS310)、オペレータが作業機械1から離間した場所に位置している場合であっても、尿素水の残量が10%以下であることを警告することができる。また、警告灯53の黄ランプ53aを点灯することで(ステップS320)、スピーカ55から吹鳴したクラクション音がオペレータの耳に届かないような場合であっても、光による警告をすることができる。
【0058】
このように、第1段階の場合は、供給装置11を停止する第1作動態様を実行し、警告灯53及びスピーカ55によってオペレータに警告する第1警告態様を実行したあと、本ルーチンを終了し、再びステップS10から本ルーチンを繰り返し実行する。
【0059】
<第2段階>
第1段階が継続すると、エンジン6の駆動により尿素水タンク43内の尿素水が消費されて尿素水の残量が5%以下となり(ステップS10でYes、ステップS20でYesかつステップS30でNo)、ステップS90に移行する。
【0060】
図6を参照すると、第2作動態様における作業機関制御部65の制御手順のルーチンがフローチャートで示されている。ステップS410では、固化材フィーダ33の作動を停止したあとステップS420に移行し、パドルミキサ37の作動を停止してステップS430に移行する。
【0061】
ステップS430では、パドルミキサ37の作動を停止してから例えば6秒経過するまでステップS430を繰り返したあと、ステップS440に移行し、排出装置15を停止して第2作動態様における作業機関制御部65の制御を終了する。
【0062】
これにより、稼働態様判定部63が作業機関5の作業態様を第2作業態様と判定(選択)すると、作業機関制御部65によって固化材フィーダ33、パドルミキサ37及び排出装置15を停止、すなわち、作業機関5のうちの加工装置13及び排出装置15を停止することで、作業機関5の各装置をすべて停止することができる。したがって、作業機械1を走行させるために走行体3を駆動する際に消費する尿素水を良好に保つことができる。
【0063】
図3に戻り、第2作動態様における作業機関制御部65の制御を終了すると、ステップS100に移行する。ステップS100では、警告態様を第2警告態様と判定し、警告制御部67によって警告灯53及びスピーカ55を制御する。
【0064】
図7を参照すると、第2警告態様における警告制御部67の制御手順のルーチンがフローチャートで示されている。ステップS510では、スピーカ55からクラクション音を例えば4秒に1回、1秒間吹鳴するようにしてステップS520に移行し、ステップS520では、警告灯53の黄ランプ53a及び赤ランプ53bを点灯してステップS530に移行する。
【0065】
そしてステップS530では、操作パネル51のモニタに例えば「至急、尿素水を補給してください」といったアラートを点滅表示して第2警告態様における警告制御部67の制御を終了する。
【0066】
これにより、稼働態様判定部63が警告態様を第2警告態様と判定すると、スピーカ55からクラクション音を第1警告態様のときより多く吹鳴することで(ステップS510)、オペレータが第1警告態様に気づかない場合であっても、尿素水の残量が5%以下であることを第1警告態様より強調して警告することができる。また、警告灯53の黄ランプ53a及び赤ランプ53bを点灯することで(ステップS520)、第1警告態様より強調して光による警告をすることができる。
【0067】
このように、第2段階の場合は、作業機関5の各装置すべてを停止する第2作動態様を実行し、警告灯53及びスピーカ55によってオペレータに第1警告態様より強調して警告する第2警告態様を実行したあと、本ルーチンを終了し、再びステップS10から本ルーチンを繰り返し実行する。
【0068】
<第3段階>
第2段階が継続すると、エンジン6の駆動により尿素水タンク43内の尿素水がさらに消費されて尿素水タンク43が空となり(ステップS10~S30すべてYes)、ステップS110に移行する。
【0069】
図8を参照すると、第3警告態様における警告制御部67の制御手順のルーチンがフローチャートで示されている。なお、第3警告態様については、第2警告態様と共通の構成、作用効果については説明を省略し、ここでは第2警告態様と異なる部分について説明する。
【0070】
ステップS515では、スピーカ55からクラクション音を例えば2秒に1回、1秒間吹鳴するようにしてステップS520に移行する。これにより、スピーカ55からクラクション音を第2警告態様のときより多い頻度で吹鳴することで(ステップS515)、オペレータが第2警告態様に気づかない場合であっても、尿素水タンク43が空であることを第2警告態様より強調して警告することができる。
【0071】
ステップS110の第3警告態様を実行したあと、ステップS120では、エンジン6を強制停止して本ルーチンを終了する。
【0072】
このように、尿素水の残量が10%以下の場合について、第1~3段階に分けて各作動態様及び各警告態様を適宜実行することで、尿素水タンク43の尿素水の貯留量に応じて作業機関5を段階的に停止することができる。特に、供給側から順に停止することで、尿素水タンク43が空となりエンジン6を強制停止して(ステップS120)パドルミキサ37が停止したあと、尿素水タンク43に尿素水を補給して作業機関5を再稼働する際に、混合土103及び混合室35から排出する前の改良土104が固化して作業機関5を再稼働することができなくなることを防止することができる。
【0073】
以上説明したように、第1実施形態に係る作業機械は、機体2を走行させる走行体3と、供給側から土砂101を取り入れ、土砂101を加工した改良土104を排出側に排出する作業機関5と、作業機関5の駆動力を生成するエンジン6と、エンジン6から排出される排ガスを浄化するSCR装置41と、SCR装置41が排ガスを浄化する際に用いる尿素水を貯留する尿素水タンク43と、尿素水タンク43に貯留される尿素水の残量を検出する残量センサ57と、作業機械1を制御するコントローラ59と、を備えた作業機械1である。
【0074】
このコントローラ59は、作業機関5の稼働態様を判定(選択)する稼働態様判定部63と、作業機関5を制御する作業機関制御部65とを含み、稼働態様判定部63は、尿素水の残量に応じて、作業機関5の供給側から順に停止する第1作業態様及び第2作業態様を判定(選択)し、作業機関制御部65は第1作業態様及び第2作業態様に応じて作業機関5を制御する。
【0075】
従って、尿素水の残量に応じて、作業機関5の供給側から順に停止したので、尿素水の残量がなくなり作業機関5が停止したときに作業機関5に土砂101が残留することを軽減することができる。
【0076】
そして、作業機関5は、土砂101を加工する加工装置13と、土砂101を供給側から加工装置13に取り入れる供給装置11と、加工装置13によって加工がされた土砂101を排出側に排出する排出装置15とを有し、稼働態様判定部は、尿素水の残量が所定量として例えば10%以下のとき、供給装置11を停止する第1作業態様と判定した後に加工装置13を停止する第2作業態様と判定するようにしたので、土砂101を加工装置13に取り入れないようにしてから加工装置13を停止することができる。
【0077】
特に、加工装置13は、土砂101に固化材102を添加するために供給する固化材フィーダ33と、固化材102と土砂101とを混合するパドルミキサ37と、を含む。
従って、尿素水の残量に応じて、供給装置11の停止した後に、固化材フィーダ33とパドルミキサ37とを含む加工装置13を停止するようにしたので、土砂101がパドルミキサ37に残留することや、固化材フィーダ33によって土砂101に固化材102が過剰に供給されることを抑制することができる。
【0078】
<第2実施形態>
以下、図9~11に基づき第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と共通の構成、作用効果については説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0079】
図9を参照すると、コントローラ59が実行する、第2実施形態に係る稼働態様判定制御の制御手順のルーチンがフローチャートで示されている。第2実施形態では、尿素水の残量が5~10%の場合(ステップS10でYesかつステップS20でNo、第1段階)のとき、ステップS50での警告表示から1秒経過するまでステップS60を繰り返したあと、作業機関5の作業態様を第3作動態様と判定(選択)し、ステップS670に移行する。
【0080】
図10を参照すると、第3作動態様における作業機関制御部65の制御手順のルーチンがフローチャートで示されている。ステップS710では、土砂フィーダ23の駆動速度を低(例えば通常態様の3分の1)にしたあとステップS720に移行し、揺動ゲート25の駆動速度を低にしたあとステップS730に移行し、均しローラ27の駆動速度を低にしたあとステップS740に移行する。すなわち、ステップS710~S730では、供給装置11の各装置の駆動速度を低にしてステップS740に移行する。
【0081】
ステップS740では、固化材フィーダ33の駆動速度を中(例えば通常態様の3分の2)にしたあとステップS750に移行し、パドルミキサ37の駆動速度を中にしたあとステップS760に移行し、排出装置15の駆動速度を中にして第3作動態様における作業機関制御部65の制御を終了する。
【0082】
ここで、具体的には、駆動制御部61を介してエンジン6の回転数を低減することで、作業機関5における各装置の駆動速度を、エンジン6の出力の低下度合いに従って遅くし、供給装置11の稼働速度を図示しない各制御弁を制御してさらに遅くしている。
【0083】
これにより、第1段階のときであっても、作業機関5の稼働を停止はせずに駆動速度を遅くすることで、尿素水タンク43に貯留される尿素水の消費量を低減しつつ、作業を続行することができる。
また、尿素水の残量が0~5%の場合(ステップS10でYes、ステップS20でYesかつステップS30でNo、第2段階)、作業機関5の作業態様を第4作動態様と判定(選択)し、ステップS690に移行する。
【0084】
図11を参照すると、第4作動態様における作業機関制御部65の制御手順のルーチンがフローチャートで示されている。ステップS810では、土砂フィーダ23の作動を停止したあとステップS820に移行し、揺動ゲート25の作動を停止したあとステップS830に移行し、均しローラ27の作動を停止してステップS840に移行する。
【0085】
すなわち、ステップS810~S830では、第1実施形態に係る第1作動態様における作業機関制御部65の制御手順と同様に供給装置11の作動を停止してステップS840に移行する。
【0086】
ステップS840では、固化材フィーダ33の駆動速度を低にしたあとステップS850に移行し、パドルミキサ37の駆動速度を低にしたあとステップS860に移行し、排出装置15の駆動速度を低にして第4作動態様における作業機関制御部65の制御を終了する。
【0087】
ここで、具体的には、駆動制御部61を介してエンジン6の回転数を第3作動態様より低減することで、作業機関5における各装置の駆動速度を、エンジン6の出力の低下度合いに従って遅くし、さらに供給装置11の作動を停止している。これにより、第2段階のときであっても、作業機関5のうち加工装置13及び排出装置15の稼働は停止せずに駆動速度を第3作動態様より遅くすることで、尿素水タンク43に貯留される尿素水の消費量を低減しつつ、加工装置13及び排出装置15に混合土103や改良土104が残留することを抑制することができる。
【0088】
そして、尿素水タンク43が空の場合(ステップS10~S30すべてYes、第3段階)、作業機関5の作業態様を第2作動態様と判定(選択)し、ステップS90に移行する。なお、ステップS90についての詳細な説明は、第1実施形態と同様のため省略する。
【0089】
これにより、固化材フィーダ33、パドルミキサ37及び排出装置15の駆動速度を低(ステップS840~ステップS860)にしたのち、第2作動態様(ステップS90)で固化材フィーダ33、パドルミキサ37及び排出装置15の駆動を停止することで、作業機関5を稼働するためのエンジン6の稼働を防止することができる。
【0090】
以上説明したように、第2実施形態に係る作業機械1では、稼働態様判定部63は、作業機関5の動作速度を遅くする稼働態様を判定(選択)する際、作業機関5のうち最も稼働に負荷を必要とする装置、すなわちパドルミキサ37より供給側の動作速度を遅くする稼働態様である第3作動態様を判定(選択)したので、パドルミキサ37に土砂101が残留することを軽減することができる。
【0091】
そして、稼働態様判定部63は、作業機関5の動作速度を遅くする稼働態様を判定(選択)する際、エンジン6の出力を低下させ、該出力の低下度合いに従って作業機関5の動作速度を遅くするようにしたので、エンジン6が消費する燃料の消費量を低減させるとともに排ガスの排出量を低減させて尿素水の消費量を低減することができる。
【0092】
以上で本発明に係る作業機械の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0093】
例えば、本実施形態では、自走式土質改良機を例に説明したが、供給された石材等の固形物を細かく砕く作業をするクラッシャ、供給された木材をチップ状にする作業をする木材破砕機、供給された土砂の中に含まれる大小様々な礫を大きさに応じて選別する作業をするスクリーン、供給された金属等をせん断してチップ状にする作業をする二軸せん断機等であってもよく、作業機械は供給された材料に対し何かしらの作業(加工)をする機械であればよい。
【0094】
また、本実施形態では、図3~11のフローを用いて制御態様を説明したが、同フローの順番は一例であり、本発明を実施可能な程度に順番を入れ替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 作業機械
2 機体
3 走行体
5 作業機関
6 エンジン(内燃機関)
11 供給装置
13 加工装置
15 排出装置
33 固化材フィーダ(土質改良材供給装置)
37 パドルミキサ(混合機)
41 SCR装置(排ガス浄化装置)
43 尿素水タンク(還元剤タンク)
57 残量センサ(還元剤残量検出部)
59 コントローラ
63 稼働態様判定部(稼働態様選択部)
65 作業機関制御部(作業制御部)
101 土砂(材料)
102 固化材(土質改良材)
104 改良土(加工がされた材料)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11