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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ポリアルコキシル化ポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/331 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
C08G65/331
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019502671
(86)(22)【出願日】2017-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2017068190
(87)【国際公開番号】W WO2018015417
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】16180395.2
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グアルダ, ピエール アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】スパタロ, ジャンフランコ
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-149533(JP,A)
【文献】特開昭62-164641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の-OH基を含む(過)ハロゲン化ポリマーのアルコキシル化誘導体[ポリマー(PALK-OH)]の製造方法であって、前記方法が、
(a)次式(1)
E(Q) (1)
(式中、
Eは、IV族金属、ポスト遷移金属およびケイ素から選択される元素であり、
Qは、塩素、臭素、ヨウ素、または任意選択的にフッ素化されたアルコキシもしくはアリールオキシ基であり、
tは、Eの原子価に対応する整数である)
に従う少なくとも1つのプレ触媒[プレ触媒C]を、
(a-i)少なくとも1個の-OH基を含む少なくとも1つの(過)ハロゲン化ポリマー[ポリマー(POH)]と接触させ、
このようにして、前記ポリマーPOHと、前記プレ触媒Cおよび前記ポリマー(POH)の間の反応によって得られる生成物[生成物(C-POH)]とを含む混合物[混合物(Ma-1)]を提供する工程、または
(a-ii)少なくとも1つのヨウ素源[化合物I]と接触させ、
このようにして、前記プレ触媒Cと前記化合物(I)とを含む混合物[混合物(Ma-2)を提供する工程;
(b)前記混合物(Ma-1)を少なくとも1つのヨウ素源[化合物I]と接触させるか、または
前記混合物(Ma-2)を少なくとも1つのポリマー(POH)と接触させ、
このようにして、前記ポリマー(POH)、前記生成物(C-POH)および前記化合物(I)を含む混合物(M)を得る工程;
(c)前記混合物(M)を少なくとも1つのアルキレンオキシドと接触させ、
このようにして、任意選択的に前記ポリマー(POH)、前記生成物(C-POH)および/または前記化合物(I)との混合物[混合物(M)]で、ポリマー(PALK-OH)を得る工
含み、
前記(過)ハロゲン化ポリマー(POH)が、次式(I):
A-O-(R)-(CFXz1-D-O-(Rz3H (I)
(式中、
Aは、1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖または式H-(Rz4-O-D-(CFXz2-の基であり;
互いに等しいかもしくは異なる、z1およびz2は1以上であり;
互いに等しいかもしくは異なる、z3およびz4は、0または1であり;
互いに等しいかもしくは異なる、Rのそれぞれは、式-[CHCH(J)O]na[CH(J)CHO]na’-(式中、Jのそれぞれは独立して、水素原子、線状もしくは分岐アルキル鎖、またはアリール基から選択され、naおよびna’のそれぞれは独立して、ゼロまたは15以下の整数であり、ただし、na+na’は1~15であることを条件とする)の基であり;
互いに等しいかもしくは異なる、XおよびXは、-Fまたは-CFであり、
ただし、z1および/またはz2が1より大きい場合、XおよびXは-Fであることを条件とし;
互いに等しいかもしくは異なる、DおよびDは、1~6個の炭素原子を含むアルキレン鎖であり、前記アルキル鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1つのパーフルオロアルキル基で任意選択的に置換されており;
(R)は、繰り返し単位R°を含み、前記繰り返し単位は独立して、
(i)-CFXO-(式中、XはFまたはCFである);
(ii)-CFXCFXO-(式中、出現ごとに等しいかもしくは異なる、Xは、FまたはCFであり、ただし、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とする);
(iii)-CFCFCWO-(式中、互いに等しいかもしくは異なる、Wのそれぞれは、F、ClまたはHである);
(iv)-CFCFCFCFO-;
(v)-(CF-CFZ-O-(式中、jは0~3の整数であり、Zは、一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、ここで、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含み、前記繰り返し単位は、下記:Xのそれぞれが独立してFまたはCFである、-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-の中から選択され、かつTは、C~Cパーフルオロアルキル基である)
からなる群から選択される)
に従う、(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(POH-PFPE)]である、方法。
【請求項2】
Qが、式-O-T(式中、Tは、1~12個の炭素原子を有する線状もしくは分岐アルキル鎖であって、前記アルキル鎖が1個以上のフッ素原子で任意選択的に置換されているアルキル鎖、または5もしくは6員環の任意選択的にフッ素化されたアリール基である)の、任意選択的にフッ素化されたアルコキシまたはアリールオキシ基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレ触媒Cが、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)プロポキシド、チタン(IV)tert-ブトキシド、チタン(IV)メトキシド、ジルコニウム(IV)プロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、テトラエチルオルトシリケート、インジウムアルコキシドおよびガリウムアルコキシドを含む群において選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プレ触媒Cが、ポリマー(POH)中の-OH基の当量数当たりのプレ触媒Cのモルとして表される0.01~10%の範囲の量で使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物(I)が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ヨウ化物;アンモニウムまたはアルキルアンモニウムヨウ化物;元素状ヨウ素;ならびにそれらの組み合わせを含む群において選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物(I)が、ポリマー(POH)中の-OH基の当量数当たりのヨウ素源のモルとして表される0.01~8%の範囲の量で使用される、請求項1または5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー(POH-PFPE)が、ここで下の式(I-A):
A-O-(R)-CFCHO-(Rz3H (I-A)
(式中:
- Rは、請求項1に記載の通りであり;
- Aは、-CF、-C、-C、-CFCl、-CFCFCl、-CClまたは式-CFCHO-(Rz4-Hの基から選択され;
- 互いに等しいかもしくは異なる、z3およびz4は、0または1であり;
- 互いに等しいかもしくは異なる、(R)のそれぞれは、式-[CHCH(J)O]na[CH(J)CHO]na’-(式中、Jのそれぞれは独立して、水素原子またはメチルであり、naおよびna’のそれぞれは独立して、ゼロまたは1~7の整数であり、ただし、na+na’は1~7であることを条件とする)の基である)
に従う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー(POH-PFPE)が、次式(I-B):
A-O-(R)-CFCH-OH (I-B)
(式中、
- Rは、請求項1に記載の通りであり、
- Aは、-CFCH-OH、または1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖である)
に従い、
ここで、前記工程(a-i)の前に、式(I-B)のポリマー(POH-PFPE)を塩基と接触させ、このようにして、ポリマー(POH-PFPE)の対応するアルコキシドを提供することを含む工程(a-i-0)が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記生成物(C-POH)が、次式(II-A)または(II-B):
II-O-(R)-(CFXz1-D-O-(Rz3-E(Z)n-1 (II-A)
-O-(R)-CFCH-O-E(Z)n-1 (II-B)
(式中、
Rf、X、D、(R)、z1およびz3は、請求項1に定義された通りであり;AIIは、1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖であるか、またはそれは、式
(Z)n-1E-(Rz4-O-D-(CFXz2
(式中、X、D、(R)、z2およびz4は、請求項1に定義された通りである)
の基であり;
は、1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖であるか、またはそれは、式
(Z)n-1E-(Rz4-O-CHCF
(式中、(R)およびz4は、請求項1に記載の通りである)
の基であり;
Eは、請求項1に記載された通りであり;
nは、Eの原子価に対応する整数であり;
Zは独立して、
式-O-T(式中、Tは、1~12個の炭素原子を有する線状もしくは分岐アルキル鎖であって、前記アルキル鎖が1個以上のフッ素原子で任意選択的に置換されているアルキル鎖、または5もしくは6員環の任意選択的にフッ素化されたアリール基である)の、任意選択的にフッ素化されたアルコキシまたはアリールオキシ基である基Q、
または別のポリマー(POH-PFPE)との反応に由来する基、すなわち、式(Z-I)もしくは(Z-II):
II-O-(R)-(CFXz1-D-O-(Rz3- (Z-I)
-O-(R)-CFCH-O- (Z-II)
(式中、Aは、1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖であり、AIIは、1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖であり、Rf、X、D、(R)、z1およびz3は、上に定義された通りである)
の基である)
に従う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(c)が、次の通り:
(c-i)2つ以上のアルキレンオキシドを同時に供給し、すなわち、少なくとも第1アルキレンオキシドと、前記第1アルキレンオキシドと異なる化学式を有する第2アルキレンオキシドとが工程(c-i)の反応環境に同時に供給され、このようにして、少なくとも前記第1および第2アルキレンオキシドに由来するランダムに配列した繰り返し単位を含むポリマー(PALK-OH)を得る工程によって;
または
(c-ii)第1アルキレンオキシドを供給し、前記第1アルキレンオキシドの供給を終え/停止し、前記第1アルキレンと異なる化学式を有する第2アルキレンオキシドを供給し、前記第2アルキレンオキシドの供給を終え/停止し、任意選択的に前記第2アルキレンオキシドと異なる化学式を有する第3アルキレンオキシドを供給し、かつ反応の完了まで前記工程を繰り返し、このようにして、ブロックで配列した少なくとも前記第1および第2アルキレンオキシドに由来する繰り返し単位を含むポリマー(PALK-OH)を得る工程によって
行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー(PALK-OH)が、次式(IV):
IV-O-(R)-(CFXz1-D-O-(Ra-IV)-H (IV)
(式中、
Rf、X、D、(R)およびz1は、請求項1に記載の通りであり、
IVは、1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖、または式H-(Ra-IV*)-O-D-(CFXz2-(式中、(R)、およびz2は、請求項1に記載の通りである)の基であり、
(Ra-IV)および(Ra-IV*)のそれぞれは独立して、式-[CHCH(J)O]na*[CH(J)CHO]na#-(式中、Jのそれぞれは独立して、水素原子またはメチルであり、na*およびna#のそれぞれは独立して、ゼロまたは1~100の整数であり、
ただし、na*およびna#の少なくとも1つは、ポリマー(POH)における、それぞれ、naおよびna’の値よりも大きい値を有する整数にあることを条件とする)の基から選択される)
に従う、請求1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1または11に記載のポリマー(PALK-OH)と、請求項1、7および8のいずれか一項に記載のポリマー(POH)と、任意選択的に請求項1または9に記載の生成物(C-POH)ならびに/または請求項5に記載の化合物(I)とを含む混合物[混合物(M)]の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月20日出願の、欧州特許出願第16180395.2号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ポリアルコキシル化ポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
典型的には2~10の範囲である、低アルコキシル化度を有するフッ素化アルコールのアルコキシル化誘導体、特に(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)アルコールのエトキシル化誘導体は、さらなる官能性誘導体および混合コポリマーの合成のための有用な基礎的要素である。実際に、ポリマー末端での短いポリエチレンオキシ鎖の存在は、含水素反応剤との相溶性を向上させ、それは、含水素ブロックを持ったコポリマーの合成において特に望ましい。含水素化合物との相溶性は、PFPEアルコールが含水素成分と混合される組成物の製造においてもまた利点であり得る。
【0004】
しかしながら、1~約2のエトキシル化度を有するPFPEアルコールのエトキシル化誘導体は、触媒量の対応するPFPEアルコキシドの存在下でのPFPEアルコールとエチレンオキシドとの反応によって合成することができるが、2以上のエトキシル化度を有するエトキシル化誘導体は合成することができない。
【0005】
この欠点を克服するために、代替方法を開発する試みが行われてきた。
【0006】
多数の先行技術文書が、フッ素化アルコールのエトキシル化誘導体の製造でのホウ素ベース触媒の使用を開示している(例えば、国際公開第95/35272号パンフレット(DU PONT)、国際公開第96/28407号パンフレット(DU PONT)、米国特許第8039677号明細書(DU PONT)、国際公開第2009/073641号パンフレット(CHEMGUARD LTD)、国際公開第2010/127230号パンフレット(DU PONT)および国際公開第2012/139070号パンフレット(E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY)において)。
【0007】
特に、国際公開第2010/127230号パンフレット(DU PONT)は、ホウ素ベース触媒の存在下でアルキレンエポキシドを使用するアルコールのアルコキシル化方法を指向する。その記載において、当技術分野において以前に公知の触媒系およびフッ素化アルコールのアルコキシル化方法は、金属水素化物、フッ化物、アルキルまたはアルコキシドと組み合わせて単独で、三フッ化ホウ素または四フッ化ケイ素などのルイス酸を使用することを含んだことが述べられている。しかしながら、そのような酸性物質は、アルキルアルコキシル化中にアルキレンエポキシドが二量化してジオキサンを形成するなどの副反応をまた触媒する。このような訳で、アルコールをアルコキシル化するための強塩基性触媒が提案された。しかしながら、いくつかのアルコールは、強塩基に安定ではない。比較例1および2は、C13CHCHOHなどの、(過)ハロゲン化アルコールが、アルコキシドエトキシル化触媒を生成するために、とりわけNaHおよびKOHなどの強塩基で処理される場合に、フッ素化アルコールがフルオリドを脱離し、オレフィンを形成する傾向があるので、この反応が失敗することを示した。
【0008】
国際公開第2014/090649号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)は、次の工程:
1)PFPEアルコールと触媒量の対応するアルコキシド(本明細書では以下、「PFPE-alk」)とを含む、混合物[M1]を個別に提供する工程;
2)混合物[M1]を、同じPFPEアルコールのホウ酸トリエステル(本明細書では以下、「PFPE-triBor」)と、PFPE-alk:PFPE-triBorのモル比が少なくとも1であるような量で接触させて混合物[M2]を得る工程;
3)混合物[M2]を、触媒量のヨウ素源と接触させて混合物[M3]を得る工程;
4)混合物[M3]をアルコキシル化剤で処理してPFPEアルコールのアルコキシル化誘導体を含有する混合物[M4]を提供する工程
を含む方法を開示している。
【0009】
この特許出願において開示された実施例全てにおいて、精製工程は必然的に、PFPEアルコールのアルコキシル化誘導体を提供するために、塩基、とりわけ20%炭酸カリウム水溶液の存在下で行われた。
【0010】
フッ素化アルコールのアルコキシル化に有用なさらなる触媒が、当技術分野において開示されている。
【0011】
例えば、米国特許第4490561号明細書(CONOCO INC.)は、約90℃~約260℃の温度で、触媒の存在下でフッ素化アルコールをアルコキシル化剤と接触させる工程を含むフッ素化アルコールのアルコキシル化方法であって、その触媒が、とりわけ、一般式
(1)(R)q-vMX
(式中、Mは、ガリウム、インジウム、タリウム、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムおよびチタンからなる群から選択される金属であり;
vは、1~q-1であり、
qは、Mの原子価であり、
Rは独立して、水素、フッ素、アルキル基、1~20個の炭素原子を含有するアルコキシド基であり、
Xはハロゲンである)
を有するものから選択される方法に関する。
【0012】
チタンおよびジルコニウムをベースとする触媒は、例えば米国特許第4,983,778号明細書(HENKEL KOMMANDITGESELLSCHAFT AUF AKTIEN)に開示されており、それは、活性H原子を含有する化合物のエトキシル化またはプロポキシル化方法であって、前記方法が、チタン酸および/またはジルコン酸と、1~4個の炭素原子を含有するモノアルコールとのエステルを、硫酸および/または1~6個の炭素原子を含有するアルカンスルホン酸および/またはヒドロキシアリールスルホン酸と一緒に使用する方法を開示している。好ましい触媒は、HSO、HO-C-SOHと組み合わせたTi(OiC、およびCHSOHと組み合わせたZr(OiCである。
【0013】
異なるアルコキシレート生成物、とりわけアルカノールアルコキシレートのさらなる調製方法は、欧州特許出願公開第0228121A号明細書(SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ B.V.)に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
最近、ホウ酸およびその誘導体の毒性プロフィールに関する懸念が高まっている。結果として、本出願人は、PFPEポリマーのアルコキシル化のための便利な方法に使用することができ、かつ、ホウ酸およびその誘導体と比較される場合に、より良好な毒性プロフィールを有する代替触媒を提供するという課題に直面した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、第1態様において、本発明は、少なくとも1個の-OH基を含む含水素または(過)ハロゲン化ポリマーのアルコキシル化誘導体[ポリマー(PALK-OH)]の製造方法であって、前記方法が、
(a)次式(1):
E(Q) (1)
(式中、
Eは、IV族金属、ポスト遷移金属およびケイ素から選択される元素であり、
Qは、塩素、臭素、ヨウ素、またはアルコキシもしくはアリールオキシ基であり、
tは、Eの原子価に対応する整数である)
に従う少なくとも1つのプレ触媒[プレ触媒C]を、
(a-i)少なくとも1個の-OH基を含む少なくとも1つの含水素または(過)ハロゲン化ポリマー[ポリマー(POH)]と接触させ、
このようにして、前記ポリマー(POH)と、前記プレ触媒Cおよび前記ポリマー(POH)の間の反応によって得られる生成物[生成物(C-POH)]とを含む混合物[混合物(Ma-1)]を提供する工程、または
(a-ii)少なくとも1つのヨウ素源[化合物I]と接触させ、
このようにして、前記プレ触媒Cと前記化合物(I)とを含む混合物[混合物(Ma-2)]を提供する工程;
(b)前記混合物(Ma-1)を少なくとも1つのヨウ素源[化合物I]と接触させるか、または
前記混合物(Ma-2)を、上で定義された少なくとも1つのポリマー(POH)と接触させ、
このようにして、前記ポリマー(POH)、前記生成物(C-POH)および前記化合物(I)を含む混合物(M)を得る工程;
(c)前記混合物(M)を少なくとも1つのアルキレンオキシドと接触させ、
このようにして、任意選択的に前記ポリマー(POH)、前記生成物(C-POH)および/または前記化合物(I)との混合[混合物(M)]で、ポリマー(PALK-OH)を得る工程
の工程を含む方法に関する。
【0016】
本出願人は意外にも、プレ触媒Cが、同じ反応環境内で、異なるアルコキシル化基に由来する繰り返し単位を含むポリマー(PALK-OH)を提供することが可能であるように、幾つかのアルキレンオキシド源の存在下で働くことを見いだした。
【0017】
加えて、本出願人は、本発明による方法が、とりわけNaH、KOHなどの、強塩基と接触させられる場合に分解を受ける基を含む含水素および(過)ハロゲン化ポリマーの両方のアルコキシル化のために用いることができることを見いだした。
【0018】
有利にも、本出願人は、本発明による方法が、高収率でポリマー(PALK-OH)を提供することを見いだした。
【0019】
いかなる理論にも制約されることなく、本出願人は、上で定義されたプレ触媒CがポリマーPOHと接触させられる場合に、生成物[生成物(C-POH)]をもたらすエステル化反応が、プレ触媒Cの前記元素EおよびポリマーPの前記少なくとも1個のOH基の間で起こると考える。前記生成物(C-POH)は、ポリマーPOHのその後のアルコキシル化反応において(すなわち、工程cにおいて)触媒種として働くと考えられる。エステル化反応、すなわち、工程(a-i)は、式HQの化合物の形態で反応環境から除去される、プレ触媒Cの基Qの脱離で進行する。
【0020】
したがって、第2態様において、本発明は、プレ触媒Cの元素Eと、ポリマーPOHの少なくとも1個の-OH基との間の反応によって得られる生成物[生成物(C-POH)]に関する。
【0021】
加えて、第3態様において本発明は、ポリマー(PALK-OH)、ポリマー(POH)ならびに任意選択的に生成物(C-POH)および/または前記化合物(I)を含む混合物[混合物(M)]に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本記載のおよび以下の特許請求の目的のためには:
- 例えば「ポリマー(P)」のような表現などにおける、式を特定する記号または数字を囲む括弧の使用は、本文の残りから記号または数字をより良く区別するという目的を有するにすぎず、それ故に、前記括弧はまた省略することができ;
- 頭字語「PFPE」は、「(パー)フルオロポリエーテル」を表し、名詞として用いられる場合、文脈に依存して、単数形かまたは複数形かのいずれかを意味することを意図し;
- 用語「(パー)フルオロポリエーテル」は、完全にもしくは部分的にフッ素化されたポリエーテルポリマーを示すことを意図し;
- 用語「プレ触媒」は、触媒反応の経過中に触媒種へ変換される化合物を示すことを意図し;
- その結果表現「触媒種」は、「触媒」の同義語として用いられる。
【0023】
好ましくは、Eは、チタンおよびジルコニウムを含む、より好ましくはそれらからなる群から選択されるIV族金属;ガリウム、インジウム、スズおよびアルミニウムを含む、より好ましくはそれらからなる群から選択されるポスト遷移金属;ならびにケイ素を含む、より好ましくはそれらからなる群において選択される。
【0024】
好ましくは、Qは、任意選択的にフッ素化されたアルコキシまたはアリールオキシ基である。より好ましくは、Qは、式-O-T(式中、Tは、1~12個の炭素原子を有する線状もしくは分岐アルキル鎖(前記アルキル鎖は、1個以上のフッ素原子で任意選択的に置換されている)、または5もしくは6員環の任意選択的にフッ素化されたアリール基である)に従う。さらにより好ましくは、Qは、式-O-T(式中、Tは、1~6個の炭素原子を有する線状もしくは分岐アルキル鎖または-Cである)の基である。
【0025】
さらにより好ましくは、前記プレ触媒Cは、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)プロポキシド、チタン(IV)tert-ブトキシド、チタン(IV)メトキシド、ジルコニウム(IV)プロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、テトラエチルオルトシリケート、インジウムアルコキシドおよびガリウムアルコキシドを含む群において選択される。
【0026】
チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)プロポキシド、チタン(IV)tert-ブトキシド、チタン(IV)メトキシドおよびジルコニウム(IV)プロポキシドが特に好ましい。
【0027】
好ましくは、プレ触媒Cは、ポリマー(POH)中の-OH基の当量数当たりのプレ触媒のモルとして表される、より好ましくは0.01~10%、より好ましくは0.1~5%の範囲の触媒量で使用される。
【0028】
化合物(I)は好ましくは、例えばNaI、KI、CaIなどの、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ヨウ化物;NHIおよび(R)NI(式中、各Rは、1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐アルキル鎖である)などの、アンモニウムおよびアルキル-アンモニウムヨウ化物;元素状ヨウ素;ならびにそれらの組み合わせを含む群において選択される。良好な結果は、KIを使用して得られている。
【0029】
化合物(I)は有利には、触媒量で使用される。好ましくは、化合物(I)は、ポリマー(POH)中の-OH基の当量数当たりのヨウ素源のモルとして表される、0.01~8%、より好ましくは0.5~2.5%の範囲の量で使用される。
【0030】
好ましくは、出発原料として使用される前記含水素ポリマー(POH)は、式R-OH(式中、Rは、3~12個の炭素原子を含む線状もしくは分岐アルキル鎖である)のポリマーから選択される。
【0031】
好ましくは、出発原料として使用される前記(過)ハロゲン化ポリマー(POH)は、
- 一般式RFH-CFCHCHOH(式中、RFHは、1~12個の炭素原子を含む線状もしくは分岐アルキル鎖である)に従うポリマー、ならびに
- 少なくとも2つの鎖末端を有する部分的にもしくは完全にフッ素化された、線状もしくは分岐の、ポリオキシアルキレン鎖[鎖(R)]を含む(パー)フルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(POH-PFPE)]であって、少なくとも1つの鎖末端が、式-CFCHO-の少なくとも1つの基と少なくとも1つのヒドロキシ基とを含むポリマーから選択される。
【0032】
好ましくは、前記ポリマー(POH-PFPE)は、次式(I):
A-O-(R)-(CFXz1-D-O-(Rz3-H (I)
(式中、
Aは、1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖、または式H-(Rz4-O-D-(CFXz2-の基であり;
互いに等しいかもしくは異なる、z1およびz2は、1以上であり;
互いに等しいかもしくは異なる、z3およびz4は、0または1であり;
互いに等しいかもしくは異なる、(R)のそれぞれは、式-[CHCH(J)O]na[CH(J)CHO]na’-(式中、Jのそれぞれは独立して、水素原子、線状もしくは分岐アルキル鎖、またはアリール基から選択され、naおよびna’のそれぞれは独立して、ゼロまたは15以下の整数であり、ただし、na+na’は1~15であることを条件とする)の基であり;
互いに等しいかもしくは異なる、XおよびXは、-FまたはCFであり、
ただし、z1および/またはz2が1より大きい場合、XおよびXは、-Fであることを条件とし;
互いに等しいかもしくは異なる、DおよびDは、1~6個、さらにより好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキレン鎖であり、前記アルキル鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1つのパーフルオロアルキル基で任意選択的に置換されており;
(R)は、繰り返し単位R°を含み、好ましくはそれからなり、前記繰り返し単位は独立して、
(i)-CFXO-(式中、Xは、FまたはCFである);
(ii)-CFXCFXO-(式中、出現ごとに等しいかもしくは異なる、Xは、FまたはCFであり、ただし、Xの少なくとも1つは、-Fであることを条件とする);
(iii)-CFCFCWO-(式中、互いに等しいかもしくは異なる、Wのそれぞれは、F、Cl、Hである);
(iv)-CFCFCFCFO-;
(v)-(CF-CFZ-O-(式中、jは0~3の整数であり、Zは、一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、ここで、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、下記:Xのそれぞれが独立してFまたはCFである、-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-の中から選択され、かつTは、C~Cパーフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される)
に従う。
【0033】
好ましくは、1~6個の炭素原子を含む前記線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖は、-CF、-C、-C、-CFCl、-CFCFClおよび-CClから選択される。
【0034】
好ましくは、互いに等しいかもしくは異なる、z1およびz2は、1~10、より好ましくは1~6、さらにより好ましくは1~3である。
【0035】
好ましくは、Jは、水素原子、メチル、エチルまたはフェニルである。
【0036】
好ましくは、naおよびna’のそれぞれは、ゼロまたは1~12、より好ましくは2~12、さらにより好ましくは2~10の整数である。
【0037】
より好ましくは、各(R)は、エトキシル化および/またはプロポキシル化繰り返し単位を含む。さらにより好ましくは、各(R)は、次式(R-I)~(R-III):
(R-I) -(CHCHO)j1-、
(R-II) -[CHCH(CH)O]j2-、
(R-III) -[(CHCHO)j3-(CHCH(CH)O)j4j(x)
(式中、
j1およびj2は、それぞれ独立して、1~15、好ましくは2~15、より好ましくは3~15、さらにより好ましくは4~15、一層より好ましくは4~10の整数であり;
j3、j4、およびj(x)は、j3とj4との合計が2~15、より好ましくは3~15、さらにより好ましくは4~15、一層より好ましくは4~10であるような、1より大きい整数である)
の1つに従う。
【0038】
より好ましくは、互いに等しいかもしくは異なる、DおよびDは、式-CH-または-CH(CF)-の鎖である。
【0039】
好ましくは、鎖(R)は、次式:
(R-I)
-[(CFXO)g1(CFXCFXO)g2(CFCFCFO)g3(CFCFCFCFO)g4]-
(式中、
- Xは独立して、-FおよびCFから選択され;
- 互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、X、Xは独立して、-F、-CFであり、ただし、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とし;
- 互いに等しいかもしくは異なる、g1、g2、g3、およびg4は独立して、g1+g2+g3+g4が2~300、好ましくは2~100の範囲であるような、0以上の整数であり;g1、g2、g3およびg4の少なくとも2つがゼロと異なる場合、異なる繰り返し単位は、鎖に沿って概して統計的に分布している)
に従う。
【0040】
より好ましくは、鎖(R)は、式:
(R-IIA) -[(CFCFO)a1(CFO)a2]-
(式中:
a1およびa2は独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0以上の整数であり;a1およびa2は両方とも好ましくはゼロと異なり、比a1/a2は好ましくは0.1~10に含まれる);
(R-IIB) -[(CFCFO)b1(CFO)b2(CF(CF)O)b3(CFCF(CF)O)b4]-
(式中:
b1、b2、b3、b4は独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0以上の整数であり;好ましくはb1は0であり、b2、b3、b4は0より大きく、比b4/(b2+b3)は1以上である);
(R-IIC) -[(CFCFO)c1(CFO)c2(CF(CFcwCFO)c3]-
(式中:
cw=1または2であり;
c1、c2、およびc3は独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるように選択される0以上の整数であり;好ましくはc1、c2およびc3は全て0より大きく、比c3/(c1+c2)は概して0.2より小さい);
(R-IID) -[(CFCF(CF)O)]-
(式中:
dは、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0より大きい整数である);
(R-IIE) -[(CFCFC(Hal*)O)e1-(CFCFCHO)e2-(CFCFCH(Hal*)O)e3]-
(式中:
- 出現ごとに等しいかもしくは異なる、Hal*は、フッ素および塩素原子から選択されるハロゲン、好ましくはフッ素原子であり;
- 互いに等しいかもしくは異なる、e1、e2、およびe3は独立して、(e1+e2+e3)合計が2~300に含まれるような0以上の整数である)
の鎖から選択される。
【0041】
一層より好ましくは、鎖(R)は、ここで下の式(R-III):
(R-III) -[(CFCFO)a1(CFO)a2]-
(式中:
- a1、およびa2は、数平均分子量が400~10,000、好ましくは400~5,000であるような0より大きい整数であり、比a1/a2は概して0.1~10、より好ましくは0.2~5に含まれる)
に従う。
【0042】
ポリマーPOH-PFPEにおいて、1つの鎖末端が、1個のヒドロキシル基を有し、1つの鎖末端が、-CF、-C、-C、-CFCl、-CFCFClおよび-CClから選択される中性基を有する場合、ポリマーPOH-PFPEはまた、「一官能性PFPEアルコール」とも言われる。
【0043】
ポリマーPOH-PFPEにおいて、両鎖末端が1個のヒドロキシル基を有する場合、ポリマーPOH-PFPEはまた、「二官能性PFPEアルコール」および
「PFPE-ジオール」とも言われる。
【0044】
より好ましくは、ポリマーPOH-PFPEは、ここで下の式(I-A):
A-O-(R)-CFCHO-(Rz3-H (I-A)
(式中:
- Rは、上で定義された通りであり、好ましくは 上の式(R-III)に従い;
- Aは、-CF、-C、-C、-CFCl、-CFCFCl、-CCまたは式-CFCHO-(Rz4-Hの基から選択され;
- 互いに等しいかもしくは異なる、z3およびz4は、0または1であり;
- 互いに等しいかもしくは異なる、(R)のそれぞれは、式-[CHCH(J)O]na[CH(J)CHO]na’-(式中、Jのそれぞれは独立して、水素原子またはメチルから選択され、naおよびna’のそれぞれは独立して、ゼロまたは7以下の整数であり、ただし、na+na’は1~7であることを条件とする)の基である)
に従う。
【0045】
さらにより好ましくは、naおよびna’のそれぞれは独立して、ゼロまたは3以下の整数であり、ただし、na+na’は1~3であることを条件とする。
【0046】
Aが式CFCHO-(Rz4-H(式中、(R)およびz4は、上で定義された通りである)の基である二官能性ポリマー(POH-PFPE)が特に好ましい。
【0047】
上の式(I)または式(I-A)に従った好ましいポリマーPOH-PFPEは、NaBHなどの還元剤を使用する、当技術分野において公知の幾つかの方法に従って、または、例えば、米国特許第6509509号明細書(AUSIMONT S.P.A.)2001年7月5日、米国特許第6573411号明細書(AUSIMONT SPA)2002年11月21日、国際公開第2008/122639号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS SPA)2008年10月16日に開示されているように、接触水素化によって対応するPFPEカルボン酸またはエステルの化学的還元によって製造することができる。PFPEカルボン酸のまたはPFPEエステルの前駆体は、異なる方法に従って、例えば、米国特許第3847978号明細書(MONTEDISON SPA)1974年11月12日、米国特許第3766251号明細書(MONTEDISON SPA)1973年10月16日、米国特許第3715378号明細書(MONTEDISON SPA)1973年2月6日、米国特許第3665041号明細書(MONTEDISON SPA)1972年5月23日、米国特許第4647413号明細書(MINNESOTA MINING & MFG)1987年3月3日、欧州特許出願公開第151877A号明細書(MINNESOTA MINING & MFG)1985年8月21日、米国特許第3442942号明細書(MONTEDISON SPA)1969年5月6日、米国特許第577291号明細書(AUSIMONT SPA)1998年7月7日、米国特許第5258110号明細書(AUSIMONT SRL)1993年11月2日または米国特許第7132574B号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)2006年11月7日に教示されているように、例えばフルオロオレフィンのオキシ重合によって、またはHFPO(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)の開環重合によって製造することができる。
【0048】
例えば、本発明による方法において出発原料として有用な、好適なポリマーは、商品名Fluorolink(登録商標)でSolvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から商業的に入手可能である。
【0049】
好ましくは、工程(a-i)は、例えば約50℃~約150℃の温度で、加熱下に行われる。
【0050】
好ましくは、工程(a-i)は、真空下で行われる。
【0051】
一実施形態によれば、前記ポリマー(POH-PFPE)が、次式(I-B):
A-O-R-CF-CH-OH (I-B)
(式中、
- Rは、上に定義された通りであり、
- Aは、-CFCH-OH、または1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖である)
に従う場合、前記工程(a-i)の前に、式(I-B)のポリマー(POH-PFPE)を塩基と接触させ、このようにして、ポリマー(POH-PFPE)の対応するアルコキシドを提供することを含む工程(a-i-0)が行われる。
【0052】
結果として、この実施形態によれば、工程(a-i)は、前記プレ触媒Cを、式(I-B)のポリマー(POH-PFPE)のアルコキシドと接触させることを含む。
【0053】
好ましくは、前記塩基は、NaH、NaOH、KOHから選択される。
【0054】
好ましくは、前記塩基は、ポリマー(POH-PFPE)と比べて準化学量論的量で使用される。
【0055】
好ましくは、塩基とプレ触媒Cとの間の比率は、1より大きく、より好ましくは1~2である。
【0056】
生成物(C-POH)は、次式(II-A)または(II-B):
II-O-(R)-(CFXz1-D-O-(Rz3-E(Z) (II-A)
-O-(R)-CFCH-O-E(Z) (II-B)
(式中、
Rf、X、D、(R)、z1およびz3は、ポリマーPOHについて上で定義された通りであり;
IIは、Aについて上で定義されたように1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖であるか、またはそれは、式
(Z)E-(Rz4-O-D-(CFXz2-(式中、
、D、(R)、z2およびz4は、ポリマーPOHについて上で定義された通りである)
の基であり;
は、Aについて上で定義されたように1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖であるか、またはそれは、式
(Z)E-(Rz4-O-CHCF-(式中、
(R)およびz4は、ポリマーPOHについて上で定義された通りであり;
Eは、プレ触媒Cについて上で定義された通りであり;
nは、Eの原子価に対応する整数であり;
Zは独立して、プレ触媒Cについて上で定義された基Qであるか、または別のポリマー(POH-PFPE)との反応に由来する基、すなわち、式(Z-I)もしくは(Z-II):
II-O-(R)-(CFXz1-D-O-(Rz3- (Z-I)
-O-(R)-CFCH-O- (Z-II)
(式中、A、AII、Rf、X、D、(R)、z1およびz3は、上で定義された通りである)
の基である)
に従う。
【0057】
好ましくは、Zは、式(II-A)における式(Z-I)および式(II-B)における式(Z-II)の基である。
【0058】
好ましくは、工程(a-ii)は、加熱下の室温で、例えば約50℃~約150℃の温度で行われる。
【0059】
好ましくは、工程(a-ii)は、真空下で行われる。
【0060】
好ましくは、工程(b)は、工程(a-i)において得られた混合物(Ma-1)と前記化合物(I)とを一緒に混合することによって、または工程(a-ii)において得られた混合物(Ma-2)と前記ポリマー(POH)とを一緒に混合することによって行われる。
【0061】
好ましくは、前記少なくとも1つのアルキレンオキシドは、下式(III):
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R1、R2、R3およびR4は、水素、1~4個の炭素原子を含む線状もしくは分岐アルキル鎖から選択される)
のものから選択される。
【0062】
好ましくは、前記アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびそれらの混合物から選択される。
【0063】
ある実施形態によれば、工程(c)は、1つのアルキレンオキシドを供給することによって一度に行われる。
【0064】
代わりの実施形態によれば、工程(c)は、同じプロセス内で異なる式を有する2つ以上のアルキレンオキシドを供給することによって行われる。
【0065】
この場合には、工程(c)は、次の工程:
(c-i)2つ以上のアルキレンオキシドを同時に供給し、すなわち、少なくとも第1アルキレンオキシドと、第1アルキレンオキシドと異なる化学式を有する第2アルキレンオキシドとが工程(c-i)の反応環境に同時に供給され、このようにして、少なくとも前記第1および第2アルキレンオキシドに由来するランダムに配列した繰り返し単位を含むポリマー(PALK-OH)を得る工程;
(c-ii)第1アルキレンオキシドを供給し、第1アルキレンオキシドの供給を終え/停止し、第1アルキレンと異なる化学式を有する第2アルキレンオキシドを供給し、第2アルキレンオキシドの供給を終え/停止し、任意選択的に第2アルキレンオキシドと異なる化学式を有する第3アルキレンオキシドを供給し、かつ反応の完了まで前記工程を繰り返し、このようにして、ブロックで配列した少なくとも前記第1および第2アルキレンオキシドに由来する繰り返し単位を含むポリマー(PALK-OH)を得る工程
を含むことができる。
【0066】
好ましくは、工程(c)において供給されるアルキレンオキシドの量は、最終ポリマー(PALK-OH)において望まれる最終アルコキシル化度に応じて、および出発ポリマー(POH)中の-OH基の当量数に応じて容易に計算することができる。
【0067】
好ましくは、工程(c)は、アルキレンオキシドの消費および/またはアルコキシル化ポリマーの形成を監視することによって行われる。典型的には、反応は、工程(c)が行われる反応器内のアルキレンオキシドの圧力をチェックすることによって監視される。
【0068】
エチレンオキシドがアルキレンオキシドとして使用される場合、工程(c)は好ましくは、約0.1~6気圧、好ましくは約1~5気圧の圧力を維持することによって実施される。
【0069】
好ましい実施形態によれば、ポリマー(PALK-OH)は、次式(IV)
IV-O-(R)-(CFXz1-D-O-(Ra-IV)-H (IV)
(式中、
Rf、X、D、(R)およびz1は、ポリマーPOHについて上で定義された通りであり、
IVは、1~6個の炭素原子を含む線状もしくは分岐(パー)フルオロアルキル鎖、または式H-(Ra-IV*)-O-D-(CFXz2-(式中、(R)、およびz2は、ポリマーPOHについて上で定義された通りである)の基であり、
(Ra-IV)および(Ra-IV*)のそれぞれは独立して、式-[CHCH(J)O]na*[CH(J)CHO]na#-(式中、Jのそれぞれは独立して、水素原子またはメチルであり、naおよびnaのそれぞれは独立して、ゼロまたは1~100の整数であり、
ただし、naおよびnaの少なくとも1つは、ポリマー(POH)における、それぞれ、naおよびna’の値より大きい値を有する整数にあることを条件とする)の基から選択される)
に従う。
【0070】
より好ましくは、(Ra-IV)およびRa-IV*)のそれぞれは独立して、エトキシル化、プロポキシル化、ブトキシル化繰り返し単位から選択される。さらにより好ましくは、(Ra-IV)および(Ra-IV*)のそれぞれは、次式(R-I)~(R-III):
(R-I) -(CHCHO)j1*-、
(R-II) -[CHCH(CH)O]j2*-、
(R-III) -[(CHCHO)j3*-(CHCH(CH)O)j4*j(x)*
(式中、j1、j、j3、j4およびj(x)は、それぞれ独立して、
j1、j、j3、j4およびj(x)のそれぞれの値が、出発ポリマー(POH)における-それぞれ-j1、j2、j3、j4およびj(x)の値より大きいように、2より大きい、さらにより好ましくは2~100の整数である)
の1つに従う。
【0071】
好ましい実施形態によれば、(Ra-IV)および(Ra-IV*)の両方は、上の式(R-I)の繰り返し単位である。
【0072】
別の好ましい実施形態によれば、(Ra-IV)および(Ra-IV*)はそれぞれ独立して、式(R-I)、(R-II)および(R-III)の少なくとも2つに従うランダムに配列して繰り返し単位を含む。
【0073】
さらに別の実施形態によれば、(Ra-IV)および(Ra-IV*)はそれぞれ独立して、式(R-I)、(R-II)および(R-III)の少なくとも2つに従う繰り返し単位のブロックを含む。
【0074】
ポリマー(PALK-OH)は、工程(c)の終わりに得られる。
【0075】
好ましくは、工程(a)、(b)および(c)は、ポリマー(PALK-OH)へのポリマー(POH)の転化率が、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも97%のものであるような条件下で行われる。
【0076】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、工程(c)の終わりに、ポリマー(PALK-OH)は、98%超の転化率で得られる、すなわち、出発ポリマー(POH)の少なくとも98%は、ポリマー(PALK-OH)へ変換される。
【0077】
しかしながら、ポリマー(PALK-OH)が99%未満の転化率で得られる実施形態もまた、本発明によって包含される。
【0078】
この実施形態によれば、ポリマー(PALK-OH)は、未反応ポリマー(POH)との、および任意選択的に未反応生成物(C-POH)および/または未反応化合物(I)との混合で工程(c)の終わりに得られる。
【0079】
したがって、混合物(M)は、前記混合物(M)の総重量を基準として少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも97重量%のポリマー(PALK-OH)を含み、100%までの残りの重量パーセントは、未反応ポリマー(POH)および任意選択的に未反応生成物(C-POH)および/または未反応化合物(I)を含む。
【0080】
好ましくは工程(c)後に、ポリマー(PALK-OH)を抽出するまたは精製するために前記混合物(M)と溶媒とを接触させる工程(d)が行われる。
【0081】
好ましくは、前記溶媒は、水または水-アルコール混合物、好ましくは水と、エタノール、i-プロパノールおよびi-ブタノールから選択されるアルコールとの間の混合物であり、ここで、アルコールは、水-アルコール混合物の総重量を基準として10重量%未満の量にある。
【0082】
したがって、本発明による方法は、最終ポリマーポリマー(PALK-OH)が、先行技術から公知の方法に使用される伝統的な有機溶媒を含まない溶媒を使用して容易に回収されるという大きな利点を提供する。水のまたは水-アルコール混合物の使用は、有機溶媒および廃水の低減の観点から環境上の利点を提供する。
【0083】
好ましくは、工程(d)後に、水層と、最終ポリマー(PALK-OH)を含む有機層とを分離するという工程(e)が、当技術分野において公知の方法に従って行われる。
【0084】
好ましくは、工程(e)後に、工程(e)から得られた有機層を濾過するという工程(f)が行われる。
【0085】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0086】
本発明は、以下に報告される実験セクションおよび非限定的な実施例でより詳細に例示される。
【実施例
【0087】
材料および方法
下記は、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から入手した:
- m/n=1.2、p=1.79、平均分子量M=1,765および当量Ew=962を有する式HO(CH2CH2O)CHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHO(CH2CH2O)HのFluorolink(登録商標)E10H PFPE[PFPE-1];
- m/n=1.2、平均分子量M=1,550および当量Ew=861を有する式
HOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOH
の二官能性PFPEジオール[PFPE-2]。
【0088】
他の試薬および溶媒は、Sigma-Aldrichから購入し、そのまま使用した。
【0089】
H-NMR、13C-NMRおよび19F-NMRスペクトルは、Hについては499.86MHz、12Cについては125.70MHzおよび19Fについては470.30MHzで動作するAgilent System 500で記録した。
【0090】
誘導結合プラズマ(ICP)分析は、Perkin Elmer ICP-OESスペクトロメーター、モデルOptima 4300 DVで実施した。
【0091】
実施例1
工程1-エトキシル化PFPEジオールの合成
2.9kgのPFPE-1を、機械撹拌機、機械的真空ポンプおよびポンプ前の低温トラップを備えた、2L反応器に装入した。
【0092】
16.65g(58.6ミリモル)のチタン(IV)プロポキシドを添加し、結果として生じた混合物を撹拌し、油浴を使って100℃で加熱し、その後反応器を減圧にし、約10mbarの圧力に保ち;混合物中の全ての固形分が消失し、透明な溶液が得られた(約1時間)。低温トラップ中のノルマルプロピルアルコールの量は、チタン(IV)プロポキシドとPFPE-1とが反応して対応するチタンエステルを形成することによって予期されるものと一致した(約14グラム)。
【0093】
得られた溶液を10Lの反応器へ装入し、10.5gの乾燥ヨウ化カリウムを添加した。結果として生じた混合物を撹拌しながら100℃で加熱し、窒素流でストリッピングして微量の水を除去した。温度を140℃まで上げ、反応器を脱気した。
【0094】
エチレンオキシド(EO)を、3.5気圧の圧力まで反応器に供給し、EOの消費が圧力低下によって容易に観察された。圧力を3~3.5気圧の間に維持するためにEOを連続的に供給した。
【0095】
1.5時間後に約368.5gのEOを供給した。EO供給を停止し、50分内に反応器内の圧力は3.5気圧から1気圧まで低下した。反応混合物を冷却し、窒素でストリッピングして溶解した残留EOを排除し、約3,250gの生成物を回収した。
【0096】
工程2-エトキシル化PFPEジオールの精製および分析
工程1において得られた生成物の100gを、イソブチルアルコール(8%w/w)の水溶液上に供給し、1時間還流温度で激しく攪拌した。下方の有機層を集め、溶媒(水、イソブタノール)を除去するために蒸留にかけた。
【0097】
固体生成物を、沈澱した二酸化チタンを除去するために0.45μmのPTFE膜を使用することによって濾過し、97gの透明な淡黄色液体からなる残留物をNMR分析にかけた。
【0098】
H-NMR(A113/CDOD中の溶液)および19F-NMR分析は、4.6の平均エトキシル化度(p)および約0.3%の二官能性PFPE-1の含量(99%超の転化率)の次の構造:
HO(CHCHO)CHCFO(CFCFO)(CFO)CFCH(OCHCHOH
を裏付けた。
【0099】
13C-NMR分光法は、H-NMRによって得られたエトキシル化度値を裏付けた。
【0100】
誘導結合プラズマ(ICP)分析は、チタンの無視できる含量(5ppm)を明らかにした。
【0101】
実施例2
工程1-エトキシル化PFPEジオールの合成
3.8kgのPFPE-2を10L反応器に装入し、60.0gの30%KOH水溶液(325ミリモルのKOH)を添加した。混合物を撹拌し、水の完全な排除まで減圧(50mbarから10mbarまで)下、80℃で加熱した。
【0102】
反応器を60℃で冷却した。その後、46.0gのチタン(IV)プロポキシド(162ミリモル)を添加し、混合物をわずかな窒素超過圧力(0.2バール)下で30分間攪拌した。その後反応器を減圧にし、プロピルアルコールの完全排除まで温度を再び80℃に上げた。
【0103】
200gの出発PFPEとのスラリー中に分散した17.2gのKIを混合物に添加し、反応器を15分間窒素流でストリッピングした。
【0104】
温度を約110℃まで上げ、反応器を脱気した。EOを3.4気圧の圧力まで供給し(約270g)、エチレンオキシドの消費は、圧力低下によって容易に観察された。自動圧力制御を用いて、圧力を3~3.5気圧の間に維持するためにEOを連続的に供給した。
【0105】
1.5時間後に約310gのEO(理論的平均エトキシル化度p=1.69)を反応器に供給したが、その後消費速度は減速し、1時間後にEOのさらなる供給は全く観察されなかった。
【0106】
その後、温度を約30分かけて140℃まで上げ、EOの消費が再び観察された。消費速度はより速くなり、約6時間後に、全体613gのEO(13.9モル)(理論的平均エトキシル化度p=3)を反応器に供給した。供給を停止し、45分内で反応器内の圧力は、3.5気圧から1気圧まで低下した。反応混合物を冷却し、窒素でストリッピングすることによって残留溶解EOを除去し、反応器から約4620gの生成物を回収した。
【0107】
工程2-エトキシル化PFPEジオールの精製および分析
工程1において得られたポリマーの一部を、それを触媒から精製させるために実施例1の手順に従って処理し、分析した。
【0108】
H-NMR(A113/CDOD中の溶液)および19F-NMR分析は、3.1の平均エトキシル化度(p)および1.0%に近い残留ZDOL鎖末端の含量(転化率99%)の次の構造:
HO(CHCHO)CHCFO(CFCFO)(CFO)CFCH(OCHCHOH
を裏付けた。