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特許7130620ネジ山カットを備えるロックネジを有する椎弓根ネジシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ネジ山カットを備えるロックネジを有する椎弓根ネジシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61B17/70
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019503201
(86)(22)【出願日】2017-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017068332
(87)【国際公開番号】W WO2018015482
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】102016113495.3
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514129877
【氏名又は名称】エースクラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】リンドナー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】クリューガー,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ハース,アレクサンダー
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036736(JP,A)
【文献】特開2013-255794(JP,A)
【文献】特開2003-180707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する骨ネジの外科的接続用の長手支持体用のシートを形成するとともに、チューリップネジ山を備えるチューリップを有する骨ネジを含む骨ネジシステム用の締め付けネジであって、
前記締め付けネジが前記シートへの締め付けによって前記長手支持体をロックする締め付けネジネジ山を有し、
前記締め付けネジネジ山が、ランイン側において、当該締め付けネジネジ山の径方向寸法が減少する、或いは、締め付けネジネジ山が径方向において取り除かれた、径方向ネジ山カット部を有し、当該径方向ネジ山カット部が周面を有し、
前記径方向ネジ山カット部が、前記周面が前記締め付けネジの長手軸心から径方向において変化する径方向距離を有する移行部分を有するものにおいて、
前記周面の前記移行部分のランアウト側での前記長手軸心からの前記径方向距離は、外側ネジ山半径に対応し、そして、前記周面の前記移行部分のランイン側での前記長手軸心からの前記径方向距離はネジ山コア半径よりも小さい締め付けネジ。
【請求項2】
前記移行部分の前記周面の前記長手軸心からの前記径方向距離は、周方向に沿って連続的および/又は一定に変化する請求項1に記載の締め付けネジ。
【請求項3】
前記移行部分は周方向において、約20度~約180度の角度部分αに亘って延出している請求項1または2に記載の締め付けネジ。
【請求項4】
前記径方向ネジ山カット部は、前記長手軸心から一定の径方向距離を有するピッチ円筒形状に構成されているサブ領域を有する請求項1~3の何れか一項に記載の締め付けネジ。
【請求項5】
前記一定の径方向距離を有する前記サブ領域での前記周面の前記径方向距離は、前記ネジ山コア半径以下である請求項4に記載の締め付けネジ。
【請求項6】
前記一定の径方向距離を有する前記サブ領域は、周方向において、少なくとも90度の角度領域βで延出している請求項4または5に記載の締め付けネジ。
【請求項7】
前記径方向ネジ山カット部は、前記締め付けネジネジ山の先端の幅が変わらないところで終端している請求項1~6の何れか一項に記載の締め付けネジ。
【請求項8】
前記径方向ネジ山カット部は、前記締め付けネジネジ山と同じリードを有する請求項1~7の何れか一項に記載の締め付けネジ。
【請求項9】
骨ネジシステムであって、
隣接する骨ネジの外科的接続用の長手支持体用のシートを形成するとともに、チューリップネジ山を備えるチューリップを有する骨ネジと、
前記チューリップネジ山にねじ込まれ、前記シートへの締め付けによって前記長手支持体をロックする、請求項1~8の何れか一項に記載の締め付けネジと、を有する骨ネジシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する骨ネジ、特に隣接する椎弓根ネジ、の外科的接続用の長手支持体用のシートを形成するとともに、チューリップネジ山を備える受入スリーブ又は特にネジヘッドで提供されるチューリップを有する骨ネジ、特に椎弓根ネジと、前記受入スリーブの前記チューリップネジ山にねじ込まれるように構成されるとともに前記シートに締め付けることによって前記長手支持体をロックするための締め付けネジ山を有する締め付けネジ、とを有して、前記締め付けネジ山が、ネジ山カット部/ネジ山面取り部を備える、骨ネジシステム、特に、椎弓根ネジシステムに関する。更に、本発明は、前記骨ネジシステムのための対応の締め付けネジにも関する。
【背景技術】
【0002】
骨および椎弓根ネジは従来技術から知られている。それらは、経椎弓根ネジ止めによって脊椎の背部安定化のために機能する。従って、椎弓根ネジは各隣接する椎骨の椎弓に配置され、これにより、軸心方向に重なり合う椎弓根ネジと骨ネジ又は椎弓根ネジに対して締め付けネジによってロックされる軸心方向に延出する長手支持体又はランドとの間に角度安定した接続が形成される。前記椎弓根ネジと長手支持体とは脊椎安定化システムを構成する。
【0003】
通常、椎弓根ネジは、軸心方向に延出するとともに、それに対して受入スリーブ、所謂、チューリップ、がネジヘッド側で接続されるオスネジ山を備えるネジシャンクを有する。前記チューリップは、両側の壁部(スリーブフランク)と、前記長手支持体又はランドとして、これらの間に形成されるとともに径方向に延出する空隙とを有する実質的にU形状である。前記チューリップは、軸心方向に延出するチューリップネジ山を備えている。前記長手支持体は、前記チューリップの前記空隙に径方向に挿入され、ロックネジ又はセットネジとも呼ばれる前記チューリップネジ山とネジ止めされる締め付けネジによって固定される。
【0004】
前記椎弓根ネジシステムにおいて、締め付けネジをチューリップヘッドに挿入することが必ずしも容易ではないことが問題であると知られている。その理由は、特に、椎弓根ネジのチューリップネジ山と締め付けネジの締め付けネジ山との間のわずかなネジ山バックラッシュにある。ネジ山バックラッシュは二つのネジ山部分の小さな包囲と、安全な締め付け作用により小さくしなければならないので、もっと多くのネジ山バックラッシュを提供することによっては前記問題を解決することはできない。そうでなければ、機能上の安全性と締め付け性が損なわれてしまう。
【0005】
前記問題は、通常、器具力によるマニピュレーションがインプラントに加えられるという事実によって更に悪化する。それらによって、チューリップヘッドが弾性変形、特に、内側に変形する。例えば、前記長手支持体を固定するために前記締め付けネジを椎弓根ネジに取り付ける時、例えば、椎体が操作される時又は前記長手支持体がプレスされる時に、チューリップが椎弓根ネジ、特に、そのチューリップに作用する力によって変形される可能性がある。これにより、チューリップネジ山の形状が変化する。例えば、その内径が減少して、それによって、締め付けネジのネジ止めが更に妨げられたり又は不可能になる。
【0006】
基本的に、二つのタイプの変形が起こりうる。即ち、チューリップネジ山が締め付けネジネジ山の方向に変化する変形と、反対方向に変化する変形である。最初に述べた変形の場合、セットネジのチューリップネジ山への取り付けを妨げるそのような変形は特に困難である。なぜなら両ネジ山はもはや噛合うようにはなっていないからである。しかしながら、たとえまだネジ止めが可能な小さな変形の場合においても、チューリップの変形によって、セットネジのチューリップ軸心に対する傾斜が生じる可能性がある。これによって、ネジ山カット部/ネジ山面取り部、特に、セットネジのネジ山カット部/ネジ山面取り部、が損傷を受ける。所謂「交差ネジ山」が生じる可能性がある、つまり、セットネジがネジシャンクとそのオスネジ山の長手軸心に向けて傾斜し、セットネジのネジ山の開始部、即ち、単数又は複数のラン・インピッチが、チューリップのメスネジ山の誤ったピッチと係合し、それによって、ネジ山が損傷を受けてセットネジおよび/又は椎弓根ネジが使用不能となる可能性がある。
【0007】
特許文献1(米国2014/0350605A1)から、締め付けネジが、チューリップ内に形成されたメスネジ山への取付を容易にするカット/面取りヘッド領域を有する椎弓根ネジシステムが知られている。更に、前記チューリップのメスネジ山は、締め付けネジを挿入し、最初に、チューリップにネジ係合することなく、前記面取りヘッド領域によってセンタリング可能となるように短い第1ネジ山ピッチを有し、その後は、締め付けネジはこの位置で、ネジ係合させて回転される。ある種の状況下においてネジ山ピッチを短くすることは、ネジ山の脆弱化となりうる。
【0008】
特許文献2(米国7,780,706B2)から、類似の椎弓根ネジシステムが知られ、ここでは、締め付けネジはそのランイン領域に段部を備えている。この段部は、締め付けネジネジ山のネジ山内径よも小さな直径を有する。締め付けネジネジ山に向けて、前記段部は締め付けネジの長手軸心および/又はネジ軸心を横断して延出するショルダによって終端されている。当該ショルダのこのアラインメントによって、ネジ山は締め付けネジの長手軸心に対して直交して面取りされている。このようにすることで、第1ネジ山ピッチがランイン側で面取りされ、径方向外方に延出するネジ山プロファイル(ネジ山フランクによって規定されるネジ山立面部)は、ショルダが前記第1ネジ山ピッチのいずれのネジ山フランクとも交差しなくなるまで、その厚みがクレストから始まって、周方向において楔形状に連続して増大する(図1にそのような公知締め付けネジが側面で図示されている)。この締め付けネジにおいては、周方向で見て、前記ネジ山面取り部は締め付けネジに対して一定の深さで径方向に導入され、軸心方向でネジ山ピッチへと進行していると言うことができる。ネジ山のそのような面取りは、面取りされたネジ山立面部の部分、特に、クレストに近い部分が非常に薄く、従って、非常に傷つきやすいことが特に欠点である。例えば、それはネジ込み時に容易に変形しうる。
【0009】
特許文献3(米国8,257,402B2)から、オスネジ山を備える締め付けネジの形態のロッドを受け入れる外科インプラント用のクロジャ構造が知られており、ここでは、前記オスネジ山のランイン側に面取り部が形成されている。この面取り部によって、前記締め付けネジは、その端面に、インプラントのメスネジ山への挿入を容易にする周方向斜角部を備えている。この場合においても、第1ネジ山ピッチは、ランイン側で面取りされ、これによって、径方向外側に延出するネジ山プロファイル(ネジ山フランクによって規定されるネジ山立面部)は、面取り部が前記第1ネジ山ピッチのいずれのネジ山フランクとも交差しなくなるまで、周方向においてクレストから始まって楔形状にその厚みが増大している(図2にそのような公知締め付けネジが側面で図示されている)。この場合においても、ネジ山面取り部は一定の径方向深さで導入又は形成されていると言うことができる。面取りされたネジ山立面部の部分、特に、クレストに近い部分が非常に薄く、従って、非常に傷つきやすいことが特に欠点である。例えば、それはネジ込み時に容易に変形しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国出願公開特許第2014/0350605号明細書
【文献】米国特許第7,780,706号明細書
【文献】米国特許第8,257,402号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記椎弓根ネジ、特に、チューリップ、の変形は、上述した従来技術によっては常に安全に回避することができないので、本発明の課題は、そのような変形に関してロバストで、骨ネジ又は椎弓根ネジに対する締め付けネジの取り付けを、容易にし、かつ、この取り付けを、その目的のために要求されるガイドスリーブ等の追加の要素又は器具をなんら必要とすることなく、または、手術外科医の視界を妨げることなく、更に容易なものにする骨ネジシステム、特に、椎弓根ネジシステム、を提供することにある。たとえチューリップヘッドが外側から作用する力によって内側に弾性的に変形したとしても、締め付けねじは容易にねじ込まれるようになっている。更に、前記システムは、ロバストで安定的なものとして構成され、特に、ネジ込み中の、締め付けネジネジ山、特に、そのネジ山ランインの、損傷のリスクが低減される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に依れば、この課題は、請求項1の締め付けネジ、特に、独立請求項に記載の骨ネジ又は椎弓根ネジシステムによって達成される。本発明に依れば、締め付けネジネジ山はランイン側で、締め付けネジ山(2)が減少する、或いは、特に、径方向において完全に退避される、ネジ山カット/面取り部を有する。
【0013】
本説明は骨ネジに関してなされる。しかしながら、本発明は、特に椎弓根ネジに関するものである。従って、「骨ネジ」という用語は、椎弓根ネジに焦点を当てたものとして理解される。
【0014】
上述した従来技術と異なり、前記ネジ山カット/面取り部は、第1ネジ山ピッチが軸心方向で面取りされるようには構成されず、この第1ネジ山ピッチが径方向に面取りされるように構成されている。更に、前記ネジ山、特に、ネジ山立面部は、前記(径方向)ネジ山面取り部によって平坦化又は退避形成、特に、締め付けネジの中央長手軸心に向けて径方向に平坦化又は退避形成されているともいえる。他方、本発明による前記ネジ山面取り部は、軸心方向で延出終端(run out)するように構成されているのに対し、上述した従来技術ではそれはその周方向延出が軸心方向において一定である。本発明に依れば、前記軸心方向における前記ネジ山面取り部の最小延出長さは、好ましくは、0.5mm以上(no less than 0.5mm)である。
【0015】
本発明によれば、ネジ山山部材、特に、ネジ山面取り部の領域におけるネジ山フランク間の距離が、テーパ―しないので脆弱化しないという利点を達成することが可能となる。むしろ、軸心方向におけるネジ山断面がネジ山面取り部の領域においても完全に維持される。従って、締め付けネジが骨ネジのチューリップにねじ込まれる時にチューリップのネジ山に最初に係合する締め付けネジネジ山の部分が特に安定しロバストなものとなり、これによってその変形を防止、又はすくなくとも大幅に低減することができる。それにも拘らず、本発明による前記骨ネジシステムにおいて、チューリップネジ山への締め付けネジのネジ込みは、前記ネジ山面取り部によって特に容易なものとなる。
【0016】
本発明に依れば、前記チューリップネジ山のランイン側に、そのガイドによってネジ山を脆弱化させることなく、締め付けネジをネジ山へネジ込むためのガイドが設けられる。当該ガイドは、たとえチューリップが変形したとしても、締め付けネジをそのネジ山ランインに容易に位置決め可能で、これにねじ込むことが可能なように構成される。これにより、変形にも拘らず、チューリップネジ山と締め付けネジネジ山との間の相互係合が確保される。換言すると、前記ネジ山面取り部によって、規定された径方向バックラッシュを有し、なんら相互のネジ山係合のない部分が締め付けネジとチューリップとの間に設けられ、それにより、チューリップの変形を補償することが可能となる。これにより、締め付けネジをチューリップ上に、たとえこのチューリップが変形していても、容易かつ安全に配置することが可能となり、チューリップネジ山に対して位置決めすることが可能となる。特に有利な利点は、締め付けネジが、手術外科医によって、たとえこの外科医の視覚が遮られていても、椎弓根ネジ上に正しく位置決めされ、かつ、両ネジ山が相互係合される前に案内され支持されることにある。従って、締め付けネジをチューリップネジ山に取り付ける時に、締め付けネジを必要な精度でチューリップにねじ込むために規定された位置に入れるためになんら特殊な努力又は追加の器具を必要としない。又、手術外科医はネジ山面取り部によって規定され定義される締め付けネジのシートを手探りで見つけることができ、それによって、意図されるネジ込み操作が容易になり、椎弓根ネジに対する締め付けネジの取り付けエラーが安全に回避される。手術外科医は、もはや、セットネジの取り付けに特殊な注意を払う必要が無くなり、これによって、手術の大いなる容易性と時間の利点が得られる。ネジ山面取り部によって案内される締め付けネジがそのネジ山軸心周りで回転すると、この締め付けネジとチューリップとのネジ山が係合される。締め付けネジは、そのネジ込操作によって軸心方向にも進行される。椎弓根ネジの方向における締め付けネジの軸心方向変位によって、椎弓根ネジ、特に、スリーブフランク、の変形をリセットすることができる。その結果、本発明に依れば、締め付けネジを、装填され、それによって変形されている椎弓根ネジに容易に取り付け、それとネジ止めすることができる。
【0017】
本発明の好適な実施例は従属請求項に記載されているが、それらについて以下に詳述する。
【0018】
本発明の一実施例は、前記ネジ山カット面取り部が周面を有していることを特徴とする。この周面は、特に、締め付けネジの中央軸心に対して平行に形成することができる。本発明による前記周面は、それによって締め付けネジを、チューリップネジ山との実際の相互ネジ係合の前に、チューリップに対して位置決めし案内して、特に、チューリップが変形している場合においてもシートに挿入することが可能となる一種のガイド面として作用、又は構成されている。
【0019】
本発明の一実施例において、前記ネジ山面取り部は、見る方向に応じて、ランイン部分又はランアウト部分、として作用する移行部分(前記面取りネジ山と非面取りネジ山との間)を備えることができる。この移行部分において、前記周面は、前記締め付けネジの前記中央長手軸心から変化する径方向距離を備えるものとすることができる。従って、それは前記ネジ山面取り部から締め付けネジネジ山への一種の移行部分を形成し、特に、締め付けネジネジ山に向けられたネジ山面取り部の側に配置されている。
【0020】
前記中央長手軸心からの前記周面の前記径方向距離は、好ましくは、前記移行部分のランアウト側の外側ネジ山半径に対応する。これにより、ネジ山面取り部から締め付けネジネジ山へのスムースな移行が形成され、それによって、締め付けネジを、ロックしたり詰まったりすることなくねじ込むことが可能となる。前記移行部分のランイン側での前記中央長手軸心からの前記周面の前記径方向距離(特に角度範囲)は、特に、前記ネジ山コア半径以下とすることができる。換言すると、前記ネジ山コアは、オスネジ山の面取り部(移行面取り部)の前方で周方向において、好ましくは、最大で90-180度以下の範囲で、平坦化されている。これにより、締め付けネジは、その直径が前記チューリップネジ山のコア直径よりも小さなネジ山面取り部によって形成されるガイド部を備え、それによって、たとえ前記チューリップが変形しても、締め付けネジを容易に取り付け、二つのネジ山を互いに係合することが可能となる。
【0021】
本発明の一実施例は、前記中央長手軸心からの前記移行部分の前記周面の前記径方向距離が、周方向延出において連続および/又は一定、に変化することを特徴とする。これによって、チューリップの変形時に、このチューリップが徐々に矯正されることが促進される。前記バリエーションは、特に、リニア又は湾曲又は円弧形状とすることができる。
【0022】
一好適実施例において、前記締め付けネジは、前記周面の前記長手軸心からの前記径方向距離の前記変化によって、前端部において非円形(断面)プロファイルを形成することができる。この非円形プロファイルにより、締め付けネジは、挿入機能を有する挿入位置と広げ機能を有する広げ位置とを備えたものとなる。特に、前記移行部分のランアウト側での前記周面の前記径方向距離は、外側ネジ山半径(ネジ山の公称半径)に対応し、移行部分のランイン側における前記中央長手軸心からの前記周面の径方向距離よりも大きい。その結果、締め付けネジの前端部において、径方向において対角配置された前記周面のポイント、特に、周面上の一つのポイントの第1ネジ山立面部の外側ネジ山径の表面上のポイントへの、距離が異なるものとなる。ポイントの各接続線のそれぞれは中心長手方向軸と交差する。以後、二つの径方向反対側のポイントの距離を、直径、と呼ぶ。従って、前記締め付けネジは前端部において少なくとも二つの異なる直径を有する。好ましくは、最大直径は、最小直径に対して直交する。椎弓根ネジのチューリップと相互作用する時、前記締め付けネジは、二つの異なる機能を有する二つの異なる位置を示す。第1位置又は挿入機能を有する挿入位置において、前記周面は(変形した)チューリップ、特に、前記移行領域の外側のチューリップアーム、のフランクの近傍に位置する。締め付けネジは、それに伴う小さな直径(最大直径よりも小さい)でチューリップに挿入することができる。その後、締め付けネジは、前記第2位置、または、広げ機能を有する広げ位置、において、回転によってチューリップにねじ込まれる。前記周面の増大する径方向距離を有する前記移行領域は、回転運動によってチューリップの二つのフランク間にねじ込まれる。チューリップのフランク間の直径の増大によって、チューリップの両フランクは広げられる。従って、前記第2位置において、前記移行領域、特に、ランアウト側の移行領域、又は、前記第1ネジ山立面部の径方向外側面がチューリップのフランクに近接する。広げ位置は、好ましくは、前記挿入位置に対して90度回転されている。これによって、許容誤差の小さな締め付けネジ、を、特に、最大直径(「広げ直径」)を減らすことなく非常に小さなネジ山バックラッシュで、ねじ込むことが容易になる。
【0023】
前記移行部分は、特に周方向において、約20度~約80度、好ましくは、約40度~約135度、より好ましくは、約60度~約90度、の角度範囲αで延出することができる。これにより、締め付けネジの比較的大きな変形の場合においてもこの締め付けネジを取り付けることを可能にする、十分に大きなガイド領域が形成される。
【0024】
本発明の一実施例に依れば、サブ領域において、前記ネジ山面取り部は、前記中央長手軸心から一定の径方向距離を有するピッチ円筒形状に形成される。このサブ領域において、前記中央長手軸心からの前記径方向距離は、特に、前記ネジ山コア半径よりも小さなものとすることができる。一定の径方向距離を有する前記サブ領域は、周方向において、特に、少なくとも90度、好ましくは、90度~180度、の角度領域βで延出することができる。
【0025】
本発明の一実施例は、前記ネジ山面取り部が、前記ネジ山ピッチの第1の完全なネジ山立面部が始まる、特に、前記ネジ山のクレストがその全幅/通常幅、を有するところで終端するという特徴を有する。これにより、チューリップネジ山とのネジ係合を形成する前記締め付けネジの第1領域は、非常にロバストで不意に変形しないように構成される。
【0026】
前記ネジ山面取り部が、締め付けネジネジ山のリードに沿うように構成されると特に有利である。その場合、前記ネジ山面取り部は、締め付けネジネジ山と同じリードを有して形成されると言うことができる。これにより、締め付けネジネジ山は、軸心方向においてどこにおいても面取りされて脆弱化されることがなくなり、それにより、それは特にロバストなものとなる。
【0027】
以上要約すると、本発明に依れば、ネジ山ランアウトの位置、従って、そこからネジ山のフランク幅が減少するポイント、においてその開始ポイントを有することができるネジ山面取り部を提供するものであると言うことができる。前記ネジ山面取り部は、面取り部が無いならば、ネジ山ランアウトによってそこからフランク幅が減少するであろうポイントからスタートすることができる。前記ネジ山面取り部は、前記移行領域によって、前記ネジ山コア直径よりも小さなコア直径へと減少することができる。前記(減少した)コア直径は、少なくとも90度の部分に亘って延出することができる。前記コア直径は、円形である必要はなく、むしろ、この直径に関連して、すべての部分は、前記ネジ山コア直径よりも小さくなるように意図される。
【0028】
本発明は特に以下の利点を提供する。
- ロバストなネジ山面取り部
- ロックネジの簡単なネジ込み、
- ネジ山の脆弱化が無い。
【0029】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照した骨ネジシステムの一例としての椎弓根ネジシステムを例とする本発明の以下の例示的かつ非限定的記載から明らかになるであろう。これら図面は単に略示的なものであって、本発明の理解の為にのみ供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来技術による第1の締め付けネジの前面図である。
図2】従来技術による第2の締め付けネジの前面図である。
図3】本発明によるシステムの椎弓根ネジとマーキングされた変形の、側面図である。
図4】取り付けられた締め付けネジを含む図3の椎弓根ネジを示した図である。
図5】本発明による締め付けネジの斜視図である。
図6図5の締め付けネジの底面図である。
図7図5の締め付けネジの変形例を示した図である。
図8図5の締め付けネジの別の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、従来技術による締め付けネジ(セットネジ)1の側面図を示している。前記締め付けネジ1は、セットネジとして構成され、オスネジ山形状の締め付けネジネジ山2を有している。それは単一スタートネジ山であって、ネジ山カット部3とネジ山立面(elevation)部4とを有する。前記ネジ山カット部3と前記ネジ山立面部4とは締め付けネジベース5の周りを空間的に延出している。図1は、更に、前記締め付けネジ1の中央長手軸心6も図示している。締め付けネジネジ山2のランイン側において、前記締め付けネジは、ネジ山面取り部7を備えている。これは段部8の形状であり、締め付けネジネジ山2のネジ山コア直径Dよりも小さな直径dを有している。締め付けネジネジ山2に向かって、前記段部8は、前記締め付けネジ1の前記長手軸心/ネジ軸心6を横断して延出するショルダ9によって終端されている。当該ショルダ9のこのアラインメントにより、ネジ山2は、締め付けネジ1の前記長手軸心6に対し直交して面取りされている。従って、前記第1ネジ山ピッチは、ランイン側で面取りされ、それにより、前記ショルダ9が第1ネジ山ピッチのいずれのネジ山フランク10,11とも交わらなくなるまで、前記径方向外方に延出するネジ山プロファイル(ネジ山フランク10,11によって規定されるネジ山立面部4)は、その厚みがクレスト12から始まって周方向において楔状に連続的に増大している。
【0032】
図2は、ネジ山面取り部7が前記中央長手軸心6に対して直交して延出するショルダ9を備えず、周方向斜角部13を備えている別の、但し類似の公知の締め付けネジ1を図示している。この場合においても、前記第1ネジ山ピッチは、ランイン側で面取りされ、これにより、周方向斜角部13が第1ネジ山ピッチのいずれのネジ山フランク10,11とも交わらなくなるまで、前記径方向外方に延出するネジ山プロファイル(ネジ山フランク10,11によって規定されるネジ山立面部4)は、その厚みがクレストから始まって周方向において楔状に連続的に増大している。
【0033】
図3および4は、椎弓根ネジ15のチューリップ14又は受け入れスリーブ14の変形の問題を図示している。後者は、前記受入スリーブ14と反対側において、それによってそれが脊椎の脊椎管(骨の一例)にねじ込み可能な、骨ネジ山16とも称される、オスネジ山16を備えている。前記チューリップ14の側において、前記椎弓根ネジ15は、この目的のためのネジ込み工具係合部17を備えている。前記チューリップ14は、軸心方向に導入されチューリップネジ山18を有する穴又はスリット19を備える実質的にU形状である。換言すると、前記チューリップ14は、軸心方向の径方向両側において中空円筒から材料を除去することによって形成することができ、前記中空円筒の前記穴は、前記チューリップネジ山18を備えている。その互いに対面する内面が前記穴19を規定するとともに前記チューリップネジ山18を備える二つの径方向に対向するスリーブ壁部分又はスリーブフランク20,21が前記中空円筒に保持されている。前記スリーブ壁部分20,21は、特に、取扱い工具(図示せず)のための工具接触表面として作用し、それらのスリムな形状により、特に、前記工具によって加えられる力によって径方向に変形する可能性がある。このタイプの変形が図3に示されており、図4から推察しうるように、締め付けネジ1の取り付けとネジ込みを妨げる。
【0034】
図5は、本発明による椎弓根ネジシステム又は骨ネジシステムの締め付けネジ1の斜視図を示し、ここで、下端面22が見える。前記締め付けネジ1はスタッドネジであって、図5においては明らかではない端面22の反対側の端面において、ネジ込工具のための工具係合部を備えている。前記締め付けネジ1は、オスネジ山の形状の単一スタート締め付けネジネジ山2を有する。そのネジ山立面部4(第1ネジ山立面部4aと第2ネジ山立面部4bとを含む)とそのネジ山カット部3(第1ネジ山カット3aと第2ネジ山カット3bとを含む)とが図5においてマーキングされている。前記ネジ山立面部4は前記ネジ山カット部3との協働で前記ネジ山ピッチを形成する。
【0035】
本発明に依れば、前記締め付けネジ1は、ランイン側にネジ山面取り部7を備えている。前記周面23は、図5,7および8においてクロスハッチングによってマーキングされ、前記締め付けネジ1の前記中央長手軸心6に対して平行に形成されている。前記ネジ山面取り部7は、移行部分24と、前記中央長手軸心6から一定の径方向距離のサブ領域25とを有している。前記移行部分24、即ち、前記移行部分24から面取りされない前記ネジ山立面部4のランアウト側の中央長手軸心6からの周面23の径方向距離は、外側ネジ山半径に対応する。前記移行部分24、即ち、前記移行部分24から前記サブ領域25への一定の半径を有する移行部分27、のランアウト側の中央長手軸心6からの周面23の径方向距離は、前記ネジ山コア半径以下である。
【0036】
図6において、前記移行部分24と一定の半径を有する前記サブ領域25とは、別々にマーキングされている。図示の実施例において、前記移行部分24は約90度の角度部分αに亘って延出している。一定の半径を有する前記サブ領域25は、約270度の角度部分βに亘って延出している。図6も、ランイン側における中央長手軸心6からの径方向Rにおける前記周面の距離の変化を図示している。これによって、前記端面22の領域における締め付けネジ1の径方向外面(図5も参照)上の中央長手軸心6に対して径方向に対向する二つのポイントの距離の相違が生じる。以後、これらの距離を直径と称する。締め付けねじ1の端面22における周面23の図6に見られる水平直径、すなわち移行部分24における周面23上のポイントと、一定の半径25を有するサブ領域内の周面23上のポイントとの間の距離は、垂直方向の直径、即ち、円面23の図6で見た場合における、締め付けネジ1の端面22での一定の半径25を有する前記サブ領域での前記周面23上の二つのポイント間の距離、よりも大きい。前記小さい直径(図6でみて垂直方向の直径)が変形したチューリップ(14)の二つのフランク間に設けられる第1位置又は挿入位置において、締め付けネジ1を挿入することができる。換言すると、一定の半径25を有する前記サブ領域の前記周面23は、前記チューリップ14の両フランクに隣接する。その後、前記締め付けネジ1を約90度回転させて第2位置又は、広げ位置へと移動させる。これにより、前記周面23の増大する距離を有する前記移行領域24は、チューリップ14の両フランクの間にネジ込まれ、チューリップ14の両フランクは押し広げられる。前記移行領域24、と前記第1ネジ山立面部4aの径方向外面がチューリップ14のフランクに隣接する。
【0037】
図7は、本発明による前記ネジ山面取り部7の変形例を図示している。この場合も、前記第1ネジ山立面部4aは、径方向Rに面取りされ、前記移行部分24は第1ネジ山立面部4aの非面取り部に向けてほとんど直線状に、又はスムースにランアウトするように形成されている。図5および6の実施例と異なり、前記ネジ山面取り部7は締め付けネジネジ山2のリードに沿わず、前記中央長手軸心6に対して横断方向にアラインメントされている。この理由により、前記第2ネジ山立面部4bは、径方向Rにおいてのみならず、軸心方向Aにおいても面取りされている。従って、前記ネジ山面取り部7の前記移行部分24の反対側に位置し前記移行部分24と等しい第2移行部分29が形成されている。図8の実施例は類似しているが、ここでは、前記移行部分24と前記移行部分29とが湾曲している。図7および図8の実施例において、締め付けネジ1の取り付けとネジ込みとにおいて特に重要な前記第1ネジ山立面部4aは軸心方向において脆弱化されずロバストである。前記第2ネジ山立面部4bは軸心方向Aにおいて面取りされてはいるが、この点に関してはそれほど重要ではない。但し、これら図示の変形性は、前記ネジ山面取り部7を設計する時において製造上での利点を提供する。
【0038】
図5,7および8はそれぞれ、本発明に依れば、前記ネジ山立面部4はテーパされず、従って、軸心方向Aにおいて前記ネジ山面取り部7によって脆弱化されないことを明確に示している。むしろ、前記第1ネジ山立面部7aは径方向Rにおいて面取りされ、これによって、締め付けネジ1の前記中央長手軸心6に向けて径方向Rにおいて前記ネジ山面取り部7によって平坦化されている。前記ネジ山面取り部7は第1ネジ山立面部4aを径方向Rに面取りするだけであり、これに対して第2ネジ山立面部4bは面取りされていないことが明らかである。両ネジ山立面部4a,4bとも軸心方向には面取りされていない。別の見方をすると、前記ネジ山面取り部7は、軸心方向Aにおいて大きな高さを有する前記移行部分25からスタートし、その後、ランアウトして端面22に向けて徐々に薄くなるように形成されている。従って、前記ネジ山面取り部は締め付けネジネジ山2のリードに沿う、又は、それと同じリードを有するように形成されているということができる。軸心方向Aにおける前記ネジ山面取り部7の最小延出部28が図5にマーキングされ、これは0.5mm未満である。
【0039】
一方において、本発明により前記ネジ山面取り部7によって、チューリップヘッド14が外側から作用する力によって内側に弾性変形している場合においてもロックネジ1をねじ込むことが可能であるという利点が達成される。他方においては、これにより前記ネジ山面取り部7は、幅広に構成することが可能であり、それによって当該面取り部7のダメージ、特に、前記第1ネジ山立面部4aのネジ込み中におけるダメージのリスクが低減される。
【符号の説明】
【0040】
1:締め付けネジ
2:締め付けネジネジ山
3:ネジ山カット部
3a:第1ネジ山カット部
3b:第2ネジ山カット部
4:ネジ山立面部
4a:第1ネジ山立面部
4b:第2ネジ山立面部
5:締め付けネジベース
6:中央長手軸心
7:ネジ山カット/ネジ山面取り部
8:段部
9:ショルダ
10:ネジ山フランク
11:ネジ山フランク
12:クレスト
13:斜角部
14:チューリップ、受入スリーブ
15:椎弓根ネジ
16:オスネジ山、骨ネジ山
17:工具係合部
18:チューリップネジ山
19:穴
20:スリーブ壁部
21:スリーブ壁部
22:端面
23:周面
24:移行部分
25:一定半径のサブ領域
26:4から24への移行
27:24から25への移行
28:最小延出部
29:第2移行部分
A:軸心方向
R:径方向
U:周方向
α:角度領域
β:角度領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8