(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】マイクロレンズアレイを有する、個々に照明される斜面を観察するための顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20220829BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20220829BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/06
G02B3/00 A
(21)【出願番号】P 2019511985
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2017071941
(87)【国際公開番号】W WO2018041988
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】102016116403.8
(32)【優先日】2016-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017102001.2
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ファールバッハ
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008031412(DE,A1)
【文献】国際公開第2012/099034(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209821(US,A1)
【文献】特開2009-128485(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143375(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(3)において散乱光および/または蛍光光(61)を検出するための光学装置(1)であって、
前記光学装置(1)は、
物体側(17)からチューブ側(19)への散乱光および/または蛍光光(61)を捕捉および透過するための、光軸(15a)を有する対物系(7)と、
前記対物系(7)によって捕捉された前記散乱光および/または蛍光光(61)を仮想的なチューブ検出器平面(33)に集束させるための、前記対物系(7)の前記チューブ側(19)に配置された、光軸(15b)を有するチューブ系(11)と、
を含む光学装置(1)において、
前記チューブ系(11)と前記仮想的なチューブ検出器平面(33)との間に
、マイクロレンズアレイ(25)として構成された複数の光学レンズ(23)が
前記光軸(15a、15b)に直交する方向に配置されており、
前記複数のレンズ(23)は、前記散乱光および/または蛍光光(61)を実質的に同時に透過させ、前記仮想的なチューブ検出器平面(33)から離間した検出器平面(39)に集束させ、
前記複数のレンズ(23)のうちのそれぞれのレンズ(75)は、前記チューブ系(11)よりも小さい開口数(NA)を有し、
前記チューブ系の光軸(15b)は、前記対物系の光軸(15a)に対して平行にオフセットされて配置されている、
ことを特徴とする光学装置(1)。
【請求項2】
顕微鏡(3)において散乱光および/または蛍光光(61)を検出するための光学装置(1)であって、
前記光学装置(1)は、
物体側(17)からチューブ側(19)への散乱光および/または蛍光光(61)を捕捉および透過するための、光軸(15a)を有する対物系(7)と、
前記対物系(7)によって捕捉された前記散乱光および/または蛍光光(61)を仮想的なチューブ検出器平面(33)に集束させるための、前記対物系(7)の前記チューブ側(19)に配置された、光軸(15b)を有するチューブ系(11)と、
を含む光学装置(1)において、
前記チューブ系(11)と前記仮想的なチューブ検出器平面(33)との間に
、マイクロレンズアレイ(25)として構成された複数の光学レンズ(23)が
前記光軸(15a、15b)に直交する方向に配置されており、
前記複数のレンズ(23)は、前記散乱光および/または蛍光光(61)を実質的に同時に透過させ、前記仮想的なチューブ検出器平面(33)から離間した検出器平面(39)に集束させ、
前記複数のレンズ(23)のうちのそれぞれのレンズ(75)は、前記チューブ系(11)よりも小さい開口数(NA)を有し、
前記複数の光学レンズ(23)には、それぞれ異なる焦点距離(31)の複数のレンズ(75)が含まれる、
ことを特徴とする光学装置(1)。
【請求項3】
顕微鏡(3)において散乱光および/または蛍光光(61)を検出するための光学装置(1)であって、
前記光学装置(1)は、
物体側(17)からチューブ側(19)への散乱光および/または蛍光光(61)を捕捉および透過するための、光軸(15a)を有する対物系(7)と、
前記対物系(7)によって捕捉された前記散乱光および/または蛍光光(61)を仮想的なチューブ検出器平面(33)に集束させるための、前記対物系(7)の前記チューブ側(19)に配置された、光軸(15b)を有するチューブ系(11)と、
を含む光学装置(1)において、
前記チューブ系(11)と前記仮想的なチューブ検出器平面(33)との間に
、マイクロレンズアレイ(25)として構成された複数の光学レンズ(23)が
前記光軸(15a、15b)に直交する方向に配置されており、
前記複数のレンズ(23)は、前記散乱光および/または蛍光光(61)を実質的に同時に透過させ、前記仮想的なチューブ検出器平面(33)から離間した検出器平面(39)に集束させ、
前記複数のレンズ(23)のうちのそれぞれのレンズ(75)は、前記チューブ系(11)よりも小さい開口数(NA)を有し、
前記複数の光学レンズ(23)の、隣り合って配置されたレンズ(75)同士は、それぞれ異なる焦点距離(31)を有する、
ことを特徴とする光学装置(1)。
【請求項4】
前記顕微鏡(3)は、斜面顕微鏡(5)である、
請求項1から3までのいずれか1項記載の光学装置(1)。
【請求項5】
前記対物系(7)と前記チューブ系(11)との間にビームスプリッタ(21)が設けられている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の光学装置(1)。
【請求項6】
前記対物系(7)と前記チューブ系(11)との間に絞り(67)が設けられており、
前記絞り(67)は、前記対物系の光軸(15a)に対して垂直方向にオフセットされた中心(67a)を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の光学装置(1)。
【請求項7】
前記対物系(7)と前記チューブ系(11)との間に反射系(85)が配置されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の光学装置(1)。
【請求項8】
前記反射系(85)の少なくとも1つの反射要素(86)は、少なくとも1つの傾斜軸(45a)を中心にして傾斜可能である、
請求項7記載の光学装置(1)。
【請求項9】
隣り合って配置された個々のレンズ(75)の焦点距離(31)は、前記チューブ系の光軸(15b)に対して実質的に垂直に延在する幅方向(57)に沿って連続的に増加または連続的に減少する、
請求項2または3記載の光学装置(1)。
【請求項10】
前記複数の光学レンズ(23)のうちの少なくとも2つの個々のレンズ(75)は、前記物体側(17)からそれぞれ異なる距離(76)を置いて配置されている、
請求項2、3、9のいずれか1項記載の光学装置(1)。
【請求項11】
幅方向(57)における前記物体側(17)から前記個々のレンズ(75)までの前記距離(76)は、連続的に変化する、
請求項10記載の光学装置(1)。
【請求項12】
前記個々のレンズ(75)は、それぞれ前記物体側(17)から距離(76)を置いて配置されており、前記距離(76)は、それぞれの前記レンズ(75)の焦点距離(31)に応じて規定されており、
前記物体側(17)からそれぞれの前記個々のレンズ(75)までの前記距離(76)は、前記個々のレンズ(75)の焦点距離(31)に実質的に正比例する、
請求項10または11記載の光学装置(1)。
【請求項13】
顕微鏡(3)であって、
前記顕微鏡(3)は、
光学照明装置(47)であって、当該光学照明装置(47)によって画定された検出体積(49)内に位置する試料を照明するための光学照明装置(47)と、
前記検出体積(49)からの散乱光および/または蛍光光(61)を検出するための光学装置(1)と、
を含む顕微鏡(3)において、
前記検出するための光学装置(1)は、
マイクロレンズアレイ(25)として構成され、前記光学装置(1)の光軸(15a、15b)に直交する方向に配置された複数の光学レンズ(23)を有し、
前記複数のレンズ(23)は、前記検出体積(49)からの前記散乱光および/または蛍光光(61)を実質的に同時に透過させ、
前記複数のレンズ(23)のうちのそれぞれのレンズ(75)は、前記検出するための光学装置(1)よりも小さい開口数(NA)を有し、
前記複数の光学レンズ(23)には、それぞれ異なる焦点距離(31)の複数のレンズ(75)が含まれる、
ことを特徴とする顕微鏡(3)。
【請求項14】
顕微鏡(3)であって、
前記顕微鏡(3)は、
光学照明装置(47)であって、当該光学照明装置(47)によって画定された検出体積(49)内に位置する試料を照明するための光学照明装置(47)と、
前記検出体積(49)からの散乱光および/または蛍光光(61)を検出するための光学装置(1)と、
を含む顕微鏡(3)において、
前記検出するための光学装置(1)は、
マイクロレンズアレイ(25)として構成され、前記光学装置(1)の光軸(15a、15b)に直交する方向に配置された複数の光学レンズ(23)を有し、
前記複数のレンズ(23)は、前記検出体積(49)からの前記散乱光および/または蛍光光(61)を実質的に同時に透過させ、
前記複数のレンズ(23)のうちのそれぞれのレンズ(75)は、前記検出するための光学装置(1)よりも小さい開口数(NA)を有し、
前記複数の光学レンズ(23)の、隣り合って配置されたレンズ(75)同士は、それぞれ異なる焦点距離(31)を有する、
ことを特徴とする顕微鏡(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡、とりわけ斜面顕微鏡において散乱光および/または蛍光光を検出するための光学装置であって、この光学装置は、物体側からチューブ側への散乱光および/または蛍光光を捕捉および透過するための、光軸を有する対物系と、対物系によって捕捉された散乱光および/または蛍光光を仮想的なチューブ検出器平面に集束させるための、対物系のチューブ側に配置された、光軸を有するチューブ系と、を含む光学装置に関する。本発明はさらに、顕微鏡、とりわけ斜面顕微鏡であって、この顕微鏡は、光学照明装置であって、当該光学照明装置によって画定された検出体積内に位置する試料を照明するための光学照明装置と、検出体積からの散乱光および/または蛍光光を検出するための光学装置と、を含む顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
ライトフィールド顕微鏡法をライトシート照明と組み合わせる場合には、典型的に、検出用対物レンズに加えて、試料を照明するための少なくとも1つの第2の対物レンズが必要となる。この第2の対物レンズにより、用途分野および使用可能な試料が制限されてしまう。
【0003】
ライトシート顕微鏡法では、検出用対物レンズの焦点平面の領域を照明する、照明のための第2の対物レンズを使用しなければならないという問題も存在する。
【0004】
従来技術では、とりわけ斜面顕微鏡(oblique plane microscopeとも呼ばれる)の場合には、大きい開口数を有するただ1つの対物レンズを利用して、対物レンズの焦点平面に対して傾斜されたライトストリップまたは二次元のライトシートを用いて試料を照明し、これにより、傾斜された照明平面を形成し、この照明平面に対してできるだけ垂直に、同一の対物レンズを用いて散乱光および/または蛍光光を再び回収している。照明平面は、対物レンズの光軸に対して垂直に設けられていないので、この照明平面を二次元センサ上に直接的に集束させることはできない。なぜなら、これによって、照明平面の不鮮明な領域が生成されるか、または照明平面の像の歪みが生成される可能性があるからである。照明平面は、傾斜軸を中心にして対物レンズの焦点平面に対して傾斜されている。
【0005】
通常、従来技術による斜面顕微鏡では、いわゆる起立ユニットが使用され、この起立ユニットは、傾斜軸を中心にして傾斜された照明平面の、対物レンズによって生成された実中間像を、鮮明に歪みなく二次元検出器上に結像させるものであり、このことは、起立ユニットを傾斜させることにより、二次元検出器の焦点平面を、照明平面の傾斜された実中間像と一致させることによって実施される。
【0006】
しかしながら、起立ユニットは、像を起立させるためと、球面収差を補正するためと、にしか役立たない。しかも、コマ収差や色収差等のような他の光学誤差は、起立ユニットの追加的な光学コンポーネントによっては補償されず、むしろ加算されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、従来技術による起立ユニットを省略することができ、さらには、所要のスペースが小さく、とりわけ所要の光学コンポーネントが少なく、したがって低コストであり、さらには、検出のために複数の対物レンズを用いて問題なく動作させることができるような、散乱光および/または蛍光光を検出するための光学装置または顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
冒頭に述べた形式の光学装置は、チューブ系と仮想的なチューブ検出器平面との間に複数の光学レンズが配置されており、複数のレンズは、散乱光および/または蛍光光を実質的に同時に透過させ、仮想的なチューブ検出器平面から離間した検出器平面に集束させ、複数のレンズのうちのそれぞれのレンズは、チューブ系よりも小さい開口数を有することによって、上記の課題を解決する。
【0009】
複数のレンズのうちのそれぞれのレンズが、チューブ系と比較してより小さい開口数を有することにより、その結果、チューブ系と比較して拡大された、“depth of field(DOF)”とも呼ばれる被写界深度範囲がもたらされ、これにより、光学装置の光軸に沿って延在する鮮明に結像可能な領域が拡大する。個々のレンズによって鮮明に結像可能な領域の全体を、検出体積として見なすことができる。光軸に沿った検出体積の大きさは、DOFを変更することによって変化させることができ、これに対して、光軸に対して垂直方向における大きさは、複数のレンズの寸法および/または個数、もしくは対物系またはチューブ系の寸法によって規定することができる。
【0010】
したがって、本発明による光学装置は、検出体積内で傾斜して延在する照明平面、すなわち、対物レンズの光軸に対して垂直に設けられていない照明平面を二次元検出器上に結像させるために、別個の起立ユニットを使用する必要がないという利点を有する。
【0011】
したがって、本発明による光学装置はさらに、照明平面のうちの、照明方向に沿って照明光線の被写界深度(DOF)内に位置する領域を、検出系の被写界深度内に位置するようにセンサ上に結像させることが可能となるという利点を有する。
【0012】
このことはまた、検出される散乱光および/または蛍光光の透過率が、起立ユニットの複数の追加的なレンズによって低減されず、光学装置の構造を全体的に単純化し、小型化し、ひいては低コストに構成することが可能となるという利点を有する。本発明による解決策はさらに、試料における対物レンズまたは対物系の交換を可能にする。このことは、従来技術による起立ユニットを使用した場合には困難である。なぜなら、起立ユニットは、試料における対物レンズに合わせて調整および調節されているからである。
【0013】
冒頭に述べた顕微鏡は、検出するための光学装置が、複数の光学レンズを有し、複数のレンズが、検出体積からの散乱光および/または蛍光光を実質的に同時に透過させ、複数のレンズのうちのそれぞれのレンズが、検出するための光学装置よりも小さい開口数を有することによって上記の課題を解決する。検出するための光学装置は、例えば、複数のレンズと同じ開口数のチューブ系の単レンズとすることができる。したがって、本発明による顕微鏡も、複数のレンズの開口数の低減に起因するDOFの増加から利益を得るものである。したがって、本発明による顕微鏡を、少数の個々のコンポーネントからより簡単に、より省スペースに、ひいてはより低コストに製造することも可能となる。したがって、本発明は、照明および検出のためにただ1つの対物レンズしか必要とされない、ライトシート照明を有するライトフィールド顕微鏡であるとして理解することもできる。
【0014】
光学装置の対物系は、少なくとも1つの光学レンズからなる配列として理解することができ、好ましくは、少なくとも2つの光学レンズが設けられており、したがって、対物系によって色誤差の大部分を補償することが可能となる。
【0015】
チューブ系は、散乱光および/または蛍光光の純粋な伝播経路として理解することができるが、好ましくは、対物系に従ってコリメートすることが可能な、対物系によって捕捉された散乱光および/または蛍光光を集束させるために、少なくとも1つのチューブレンズが設けられている。光学装置の光路に別の光学素子が挿入されない限り、散乱光および/または蛍光光の集束は、いわゆる仮想的なチューブ検出器平面に位置することができる。
【0016】
しかしながら、チューブ系と仮想的なチューブ検出器平面との間に配置することができる複数の光学レンズは、散乱光および/または蛍光光の収束を変化させ、したがって、複数の光学レンズを挿入することによって焦点の位置が変化する。この配列では、複数の光学レンズは、対物レンズによって形成された虚像を結像する。
【0017】
複数の光学レンズを、試料から見て向こう側に、すなわち、光軸に沿って仮想的なチューブ検出器平面の後方に配置することもできる。この配列では、複数の光学レンズは、対物レンズによって形成された実像を結像する。
【0018】
複数の光学レンズのうちの個々のレンズは、好ましくは正の屈折力のレンズ、すなわち集束レンズであり、したがって、光学装置は、物体側からの散乱光および/または蛍光光を、複数の光学レンズと仮想的なチューブ検出器平面との間に位置する検出器平面に集束させる。検出器平面は、本発明による光学装置の像側焦点平面と一致する。
【0019】
したがって、本発明は、ライトフィールド顕微鏡をライトシートによる試料照明と組み合わせるための技術的に有利な解決策であるが、試料を照明するため、かつ試料から発せられる蛍光を検出するために、ただ1つの対物レンズしか必要ない。
【0020】
本発明による光学装置および本発明による顕微鏡を、それぞれの場合において有利である以下の実施形態によってさらに改善することができる。以下の実施形態の技術的特徴を、任意に相互に組み合わせること、または省略することができる。
【0021】
本発明による光学装置の1つの実施形態では、複数のレンズは、マイクロレンズアレイとして構成されている。マイクロレンズアレイは、複数の光学レンズのうちの個々のレンズを光学装置において別々に配置する必要がなくなり、マイクロレンズアレイの全てのレンズを光学装置において一緒に配置および/または調整することが可能となるという利点を有する。マイクロレンズアレイはさらに、個々のマイクロレンズが、一般的に別々の光学レンズの開口数よりも小さい開口数(NA)を有するという利点を有する。NAはDOFに反比例するので、マイクロレンズアレイのマイクロレンズは、一般的に個々の別々のレンズよりも高いDOFを有する。
【0022】
マイクロレンズアレイを、とりわけ矩形に構成すること、かつ/または検出器に適合させることが可能である。マイクロレンズアレイによる照明平面の結像は、好ましくは、使用される二次元検出器と同じ二次元寸法を有することができる。
【0023】
光学装置のさらなる実施形態では、対物系とチューブ系との間にビームスプリッタが設けられている。ビームスプリッタの使用は、ビームスプリッタを介して照明光路を光学装置に入射させることが可能となるという利点を有する。とりわけ、照明光路が対物系を貫通して延在するように、照明光路を光学装置に入射させることができる。したがって、対物系は、ビームスプリッタを介して入射された照明光路の光によって、対物系の物体側に配置された試料を照明するために利用可能であると共に、試料から発せられた散乱光および/または蛍光光を、同一の対物系を介して物体側からチューブ側に透過させるために利用可能である。
【0024】
ビームスプリッタを、とりわけダイクロイックビームスプリッタとすることができ、このダイクロイックビームスプリッタは、照明の入射光を実質的に完全に反射し、試料から発せられた散乱光および/または蛍光光を実質的に完全に透過させる。光学装置のこの実施形態では、照明光と、試料から発せられた散乱光および/または蛍光光と、が相互に異なる波長を有する。すなわち、この実施形態は、照明光の非弾性散乱の場合にも使用可能である。とりわけ、ビームスプリッタを、45°の入射角のために構成することができ、したがって、ビームスプリッタは、照明光の伝播方向を実質的に90°偏向することが可能である。
【0025】
光学装置のさらなる実施形態では、対物系とチューブ系との間に絞りが設けられており、絞りは、対物系の光軸に対して垂直方向にオフセットされた中心を有する。このように配置された絞りは、絞りによって設けられた、散乱光および/または蛍光光の光路を、照明の光路から空間的に分離することが可能となるという利点を有する。
【0026】
とりわけ斜面顕微鏡では、検出される散乱光および/または蛍光光の光路は、物体側において、すなわち試料において照明光の光路と鋭角で交差する。顕微鏡の横方向分解能を改善するために、この角度を、好ましくは45°~90°の間になるように、とりわけこの角度が直角となり得るように選択することができる。照明平面から発せられた散乱光は、試料の散乱特性に従って散乱円錐に放射され、これに対して、蛍光光は、等方的に半空間または全空間に放射される。絞りは、照明の方向に対して逆平行の方向を有する散乱光および/または蛍光光を遮蔽することができる。
【0027】
大きな開口数を有するただ1つの対物レンズが使用される場合、この開口数が、対物レンズを通って光が内部で伝播することができる受光円錐を決定する。この受光円錐の内部には検出円錐および照明円錐が位置しており、これらは、それぞれ検出または照明するための光学装置の開口数によって画定されている。
【0028】
本発明による絞りは、検出円錐を画定し、したがって、検出軸に沿って測定される検出円錐と照明円錐との間のオーバーラップ領域を、小さなオーバーラップ長さに制限することができる。小さなオーバーラップ長さとは、集束される照明円錐の桁数であると理解されるべきである。ライトシートを用いた照明の場合、このようなオーバーラップは、例えばライトシートの厚さの一桁の倍数、例えば1~4倍とすることができる。
【0029】
しかしながら、とりわけSCAPE顕微鏡法では、検出のより高い収集効率を達成するために、より大きなオーバーラップが望まれることがある。したがって、SCAPE顕微鏡では、検出の最大収集効率を調整することができ、この場合、絞りは、対物レンズにおいて検出円錐と照明円錐とがオーバーラップすることを阻止する。したがって、絞りによって、対物レンズの受光円錐の最適な利用と、十分に高い収集効率と、達成可能な横方向分解能と、の間の妥協点を調整することができる。
【0030】
絞りは、好ましくは円形に構成することができ、固定の直径を有することができる。中心は、円形の開口部の中心点であるとして見なすべきである。絞り、とりわけ絞り開口部を可変に、すなわち調整可能にすることも可能であり、これによって、透過光量またはDOFのような結像パラメータを可変の絞りによって調整することが可能である。
【0031】
絞りは、好ましくはビームスプリッタとチューブ系との間に配置することができる。このことは、照明光路が絞りによって影響されないという利点を有する。
【0032】
光学装置のさらなる実施形態では、チューブ系の光軸は、対物系の光軸に対して平行にオフセットされて配置されている。この実施形態も、照明光の光路と、捕捉される散乱光および/または蛍光光の光路と、が物体側において鋭角で交差するという利点を有する。この実施形態のオフセットは、上述した絞りと同一の技術的効果を達成し、このオフセットは、さらに有利には、いわゆる点拡がり関数(point spread function、略してPSF)を真っ直ぐに結像する。
【0033】
対物系は、対物系の光軸に対して垂直に配置された焦点平面(物体側の幾何学的な焦点平面)を画定することができる。とりわけ斜面顕微鏡では、形成される照明平面が焦点平面に対して傾斜されるように、照明光路が光学装置に入射される。焦点平面に対する照明平面の傾斜は、傾斜軸を中心にして実施され、この傾斜軸を、焦点平面に対して実質的に平行に方向決めすることができる。
【0034】
チューブ系の光軸を、対物系の光軸に対して平行なオフセット方向にオフセットすることができ、このオフセット方向は、対物系の光軸に対して垂直に、かつ照明平面の傾斜軸に対して垂直に方向決めされている。
【0035】
チューブ系の光軸のオフセットは、とりわけ上述した固定の絞りまたは可変に調整可能な絞りと組み合わせることができる。そのようなオフセットは、散乱光および/または蛍光光がチューブ系を(斜めにではなく)軸対称に貫通して透過されるという利点を有する。このことはさらに、簡単に上述したように、点拡がり関数(PSF)がチューブ系の光軸に沿って整列され、したがって、センサに対して傾斜されていない、またはセンサに対して傾斜された状態で結像または投影されないという利点を有する。
【0036】
光学装置のさらなる実施形態では、対物系とチューブ系との間に反射系が配置されている。散乱光および/または蛍光光の照明光路および/または光路を入射または偏向するための反射系は、広波長範囲のための反射系を構想することが可能となるという利点を有する。さらに、反射系の反射率は、反射されるべき光の入射角とは実質的に無関係である。
【0037】
反射系は、ミラーおよび/またはミラー装置および/またはプリズムまたはプリズム装置を含むことができる。
【0038】
反射系はさらに、散乱光および/または蛍光光の照明光路および光路の両方のために利用される1つの共通の反射要素を含むことができ、この場合、散乱光および/または蛍光光の照明光路と光路とは、この共通の反射要素の局所的に相互に分離された領域において、この共通の反射要素に衝突する。
【0039】
さらなる反射要素は、散乱光および/または蛍光光の照明光路または光路にのみ位置することができる。
【0040】
この実施形態を、反射系の少なくとも1つの反射要素が、少なくとも1つの傾斜軸を中心にして傾斜可能であることによってさらに改善することができる。このことは、少なくとも1つの反射要素を傾斜させることによって、仮想的なライトシートとも呼ばれるいわゆる仮想的な照明平面を生成することが可能となるという利点を有する。
【0041】
仮想的な照明平面とは、時間的に連続して生成される照明光の焦点から構成される実質的に二次元の照明された領域を意味すると理解されるべきである。この場合、傾斜可能な反射要素の走査方向は、第一に、焦点の大きさ、照明平面の別の幾何学的な大きさを決定する。
【0042】
反射系の少なくとも1つの反射要素は、2つの傾斜軸を中心にして傾斜可能とすることができ、この場合、第1の傾斜軸は、検出器の記録レートと比較して高い周波数で反射要素を傾斜させることを可能にし、仮想的な照明平面を形成する。
【0043】
したがって、第1の傾斜軸を中心として照明光路を傾斜させることにより、照明平面を生成することができる。第2の傾斜軸を中心とした傾斜は、第1の傾斜軸を中心とした傾斜よりも低い周波数で実施することができ、したがって、物体側において生成される照明平面を移動させることができ、これにより、試料を貫通して走査することができる。好ましくは、両方の傾斜軸は、実質的に相互に対して垂直に方向決めされている。
【0044】
光学装置のさらなる実施形態では、複数の光学レンズには、それぞれ異なる焦点距離のレンズが含まれる。それぞれ異なる焦点距離のレンズを使用することは、このようにして、物体側におけるそれぞれのレンズの被写界深度範囲の位置を変化させることが可能となり、とりわけ、傾斜された照明平面に適合させることが可能となるという利点を有する。
【0045】
複数のレンズのうちのそれぞれの個々のレンズの焦点距離、とりわけマイクロレンズの焦点距離は、それぞれのレンズまたはマイクロレンズに対応する光路の光軸に沿って、物体側における、すなわち試料における焦点の位置を決定する。焦点は、光軸の方向において、物体空間内の鮮明な領域の大きさの範囲内の中心に位置している。
【0046】
複数の光学レンズそれぞれが同じ焦点距離のレンズを有する場合には、それぞれのレンズまたはマイクロレンズの焦点は、対物系の光軸に対して垂直に方向決めされた平面に位置する。したがって、複数のレンズは、それぞれのレンズまたはマイクロレンズのDOFに基づいて、十分に鮮明に結像され得る検出体積を形成する。
【0047】
とりわけ斜面顕微鏡では、照明平面は、対物系の光軸に対して垂直に形成された平面に対して傾斜されているので、本発明による光学装置の1つの実施形態では、それぞれのレンズまたはマイクロレンズに対応する光路の光軸に沿ったそれぞれの焦点の位置を、傾斜された照明平面に適合させることが有利である。
【0048】
このことは、個々のレンズまたはマイクロレンズの焦点距離を変化させることによって実現することができる。比較的小さい焦点距離を有するレンズまたはマイクロレンズは、物体側において、比較的大きい焦点距離を有するレンズまたはマイクロレンズの焦点よりも対物系からより距離を置いて形成される焦点を有する。
【0049】
本発明による光学装置のさらなる実施形態では、複数の光学レンズの、隣り合って配置されたレンズ同士が、それぞれ異なる焦点距離を有する。このような配列では、個々のレンズまたはマイクロレンズの焦点の位置を、傾斜された照明平面に適合させることができる。
【0050】
このことは、さらなる実施形態において有利には、隣り合って配置された個々のレンズの焦点距離が、チューブ系の光軸に対して実質的に垂直に延在する幅方向に沿って連続的に増加または連続的に減少することによって実現されている。幅方向は、チューブ系の光軸に対して垂直に、かつ照明平面の傾斜軸に対して垂直に方向決めされた方向であると理解されるべきである。幅方向は、オフセット方向と一致することができる。
【0051】
この場合、「連続的」という用語は、個々のレンズの焦点距離が幅方向に沿って増加または減少するという意味で、すなわち、焦点距離の変化の方向が幅方向に沿ってまたは幅方向に対して変化しないという意味で理解されるべきである。
【0052】
光学装置のさらなる実施形態では、複数の光学レンズのうちの少なくとも2つの個々のレンズが、物体側からそれぞれ異なる距離を置いて配置されている。このことは、複数のレンズのうちの全ての個々のレンズまたはマイクロレンズに関して結像倍率を同じにすることが可能となるという利点を有する。
【0053】
光学装置は、好ましくは斜面顕微鏡において使用され、斜面顕微鏡では、既に上述したように照明平面が、対物系の焦点平面に対して傾斜された状態で試料体積内に生成される。したがって、傾斜された照明平面のそれぞれ異なる領域は、対物系からそれぞれ異なる距離で離間しており、すなわち、これらのそれぞれ異なる領域は、それぞれ異なる物体距離を有する。
【0054】
複数のレンズのうちの個々のレンズまたはマイクロレンズの低減された開口数に基づき、個々のレンズまたはマイクロレンズの各々は、好ましくは照明平面の1つの領域のみを結像し、この場合、それぞれ異なる個々のレンズまたはマイクロレンズの結像された領域は、相互に異なり得る。個々のレンズまたはマイクロレンズの全てに関して、同一の個々のレンズまたはマイクロレンズから1つの検出器までの距離が1つの共通の値に規定される場合には、個々のレンズまたはマイクロレンズによってそれぞれ結像される領域の結像倍率は、照明平面の個々の領域の物体距離によって変化する。したがって結像倍率は、幅方向にまたは幅方向とは反対に変化する。
【0055】
したがって、複数の光学レンズの全てに関して結像倍率を実質的に1つの共通の値に規定するために、光学装置のこの実施形態では、照明平面の各領域を結像する、比較的大きい物体距離を有する個々のレンズまたはマイクロレンズが、照明平面の各領域を結像する、比較的小さい物体距離を有する個々のレンズまたはマイクロレンズよりも、物体側の方により近くに、すなわちチューブ系または対物系の方により近くに配置される。
【0056】
本発明による光学装置のさらなる実施形態では、幅方向における物体側から個々のレンズまでの距離が、連続的に変化する。このことは、像幅が連続的に変化することによって、すなわち個々のレンズによって生成されたそれぞれの像から個々のレンズまたはマイクロレンズまでの距離が連続的に変化することによって、傾斜された照明平面の全ての領域に関して結像倍率が実質的に同じになるという利点を有する。
【0057】
とりわけ、さらなる実施形態では、個々のレンズを、それぞれ物体側から距離を置いて配置することができ、この距離は、それぞれのレンズの焦点距離に応じて規定されており、物体側からそれぞれの個々のレンズまでの距離は、個々のレンズの焦点距離に実質的に正比例する。したがって同時に、個々のレンズとチューブ系と対物系とが含まれた部分系の中心の焦点領域を、傾斜された照明平面の結像させるべき領域とオーバーラップさせることができ、傾斜された照明平面の結像させるべき領域の結像倍率を所定の値に調整することができる。これにより、試料の傾斜された照明平面からの散乱光および/または蛍光光を、像にわたって一定の実質的に一定の結像倍率で、高い鮮明度で結像させることが可能になる。
【0058】
鮮明度は、結像されるべき細部の識別可能性として理解されるべきであり、とりわけ、複数のレンズのそれぞれのレンズまたはマイクロレンズとチューブ系と対物系とが含まれた光学部分系の開口数に依存していると共に、部分系の物体側焦点平面から傾斜された照明平面の結像されるべき領域までの距離に依存している。
【0059】
冒頭に述べた本発明による顕微鏡は、照明光路を有することができ、この照明光路は、光学照明装置によって、検出するための光学装置を通る検出光路に対して非共線的に延在する。さらに、追加的または代替的に、少なくとも1つの光学素子を同時に照明光路と検出光路とに配置することができる。
【0060】
本発明による顕微鏡のさらなる実施形態では、複数のレンズは、マイクロレンズアレイとして構成されている。このことは、複数の光学レンズのうちの個々のレンズを一緒に配置および/または調整することが可能となり、個々のレンズまたはマイクロレンズの各々が、マイクロレンズアレイと同じ開口数を有する別々の光学レンズの開口数よりも一般的に小さい開口数を有するという利点を有する。開口数の低減は、DOFの増加をもたらす。
【0061】
顕微鏡は、ビームスプリッタを有することができるか、または少なくとも1つの軸を中心にして傾斜可能な反射要素を有することができる。ビームスプリッタまたは反射要素は、散乱光および/または蛍光光の照明光路および検出光路の両方に配置することができる。
【0062】
以下では、それぞれの場合において有利である本発明の実施形態を、添付の図面に基づいてより詳細に説明する。この場合、実施形態の技術的特徴は、これらの技術的特徴によって達成される技術的効果が問題でない場合には、任意に相互に組み合わせること、および/または省略することが可能である。同じ技術的特徴および同じ機能を有する技術的特徴には、同じ参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明による光学装置の第1の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による光学装置の第2の実施形態を示す図である。
【
図3a】本発明による光学装置の第3の実施形態を示す図である。
【
図3b】本発明による光学装置の第4の実施形態を示す図である。
【
図4】本発明による光学装置の第5の実施形態を示す図である。
【
図5】本発明による光学装置の第6の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1には、本発明による光学装置1の第1の実施形態が概略的に示されている。光学装置1は、顕微鏡3、とりわけ斜面顕微鏡5おいて発生する可能性のある光路を示す。顕微鏡3または斜面顕微鏡5自体は、図面に示されていないが、本発明による光学装置1の実施形態を含むことができる。
【0065】
光学装置1は、対物系7を含み、この対物系7は、図示の実施形態では1つの対物レンズ9のみを含むが、他の実施形態では複数のレンズを含むことができる。光学装置1はさらに、チューブ系11を含み、このチューブ系11は、図示の実施形態では1つのチューブレンズ13のみを含む。チューブ系11は、他の実施形態では2つ以上のチューブレンズ13を含むこともできる。
【0066】
対物系7およびチューブ系11は、両方とも光軸15を有し、この場合、対物系の光軸15aがチューブ系の光軸15bと一致している。
【0067】
対物系7は、物体側17およびチューブ側19を有し、チューブ系11は、対物系7のチューブ側19に位置している。
【0068】
対物系7とチューブ系11との間には、光軸15に対して実質的に45°の角度でビームスプリッタ21が配置されている。
【0069】
光学装置1はさらに、マイクロレンズアレイ25として構成された複数の光学レンズ23を有する。
【0070】
対物レンズ9と、チューブレンズ13と、マイクロレンズアレイ25の個々のレンズ75と、はそれぞれ開口数NAを有し、個々のレンズ75の開口数NAは、通常、対物レンズ9またはチューブレンズ13の開口数NAよりも小さい。
【0071】
以下では、説明を簡単にするために薄いレンズが前提とされ、したがって、レンズの焦点距離は、レンズの位置のみに関連して示され、レンズの主平面の位置に関連して示されるのではない。
【0072】
対物系7は、物体側焦点平面27および像側焦点平面29を有し、これらの物体側焦点平面27および像側焦点平面29は、それぞれ対物レンズ9から対物レンズ9の焦点距離31を置いて離間して位置している。
【0073】
対物レンズ9の像側焦点平面29は、同時に、チューブレンズ13の物体側焦点平面27でもあり、このチューブレンズ13の物体側焦点平面27は、チューブレンズからチューブレンズの焦点距離31aを置いて離間して位置している。
【0074】
チューブレンズ13の像側焦点平面29も同様に、チューブレンズからチューブレンズの焦点距離31aを置いて離間して位置しており、仮想的なチューブ検出器平面33を形成している。
【0075】
チューブレンズの焦点距離31aは、チューブ系11の像側35において複数の光学レンズ23によって短縮され、これによって公称焦点距離37が形成される。チューブレンズ13から公称焦点距離37を置いて離間して、検出器平面39が配置されている。
図1に示された実施形態では、検出器平面39に検出器41が配置されている。
【0076】
図1にはさらに、テレセントリック4f光学系43と、傾斜ミラー45と、が示されている。これらは、顕微鏡3の照明装置47の構成部分であり、対物系7、すなわち対物レンズ9もまた照明装置47の一部である。
【0077】
試料(図示せず)の照明は、ダイクロイックビームスプリッタ21aとすることができるビームスプリッタ21を介して入射され、対物系7によって焦点体積49内で集束され、これによって照明平面51またはライトシートが形成される。
【0078】
図1には、3つの照明光路53が示されており、これら3つの照明光路53は、傾斜ミラー45が傾斜軸45aを中心にして傾斜されると形成される。
【0079】
傾斜ミラー45とテレセントリック4f光学系43とによって照明光路53を対物レンズ9の物体側焦点平面27に、すなわち後方の焦点平面27aに傾斜させることができ、これによって、照明平面51が試料(図示せず)内で移動される。このことは、第1の照明平面51aと、第2の照明平面51bと、第3の照明平面51cと、によって
図1に概略的に示されている。
【0080】
図1には、複数の焦点55が、対物系の光軸15aに沿って理想的には焦点体積49の中心に位置することが示されている。このことは、照明光路53が、対物系7に事前集束または脱焦されて入射されることによって達成することができる。
【0081】
図1には、焦点体積49から発せられた散乱光および/または蛍光光61がまだ示されていない。散乱光および/または蛍光光61の光路は、
図3aおよび
図3bに示されている。
【0082】
図2には、本発明による光学装置1の第2の実施形態が概略的に示されており、この実施形態では、
図1の実施形態とは異なり、対物系の光軸15aがチューブ系の光軸15bと一致していない。
【0083】
チューブ系の光軸15bは、幅方向57に沿って対物系の光軸15aに対してオフセットされている。幅方向57は、光軸15a,15bに対して垂直に、かつ照明平面51の傾斜軸58に対して垂直に方向決めされている。傾斜軸58は、図平面から突出しているかまたは図平面に突入しており、第1の照明平面51aに関してのみ点として図示されている。
【0084】
光学装置1の
図2に示された実施形態では、照明光路53に関して光線の延在具合は、
図1の実施形態と同一のままである。散乱光および/または蛍光光(図示せず、これに関しては
図3aおよび
図3b参照のこと)の検出に関してのみ、構造的な違いが生じている。なぜなら、例えば、散乱光および/または蛍光光61の光線成分59は、マイクロレンズアレイ25ならびに検出器41の側方を通過し、例えば、チューブレンズ13、マイクロレンズアレイ25、または検出器41の図示されていない保持部において遮断されるからである。
【0085】
焦点体積49における試料(図示せず)が照明される方向とほぼ同じ方向から観察されるこれらの光線成分59は、像のコントラストを低下させ得るので斜面顕微鏡5では望ましくない。
【0086】
試料が照明される方向とほぼ同じ方向から試料を観察した場合には、分解能および/またはコントラストは、照明平面に対して垂直に観察される場合ほどには良好にならない。すなわち、照明方向にほぼ一致する方向からの結像を回避するべきである。
【0087】
図3aおよび
図3bには、焦点体積49から捕捉された散乱光および/または蛍光光の光路63が、それぞれの主光線65に基づいて概略的に示されている。
【0088】
実質的に
図1の光学装置に基づいている、光学装置1の
図3aに示された第3の実施形態においても、実質的に
図2の光学装置に基づいている、光学装置1の
図3bに示された第4の実施形態においても、それぞれの光路63に絞り67が挿入されている。主光線65は、それぞれの絞り67の中心67aを通ってそれぞれ延在している。
図3aには光線成分59が示されており、この光線成分59は、対応する照明平面51が照明される方向とほぼ同じ方向から観察した場合に対応している。しかしながら、この光線成分59は、絞り67によって遮断される。
【0089】
説明のために、上述した光線成分59の理論上の光路69が2つの主光線65に基づいて示されている。これらの主光線65は、光学装置1に絞り67が挿入されない場合に形成され得るものである。理論上の光路69は、複数のレンズ23、すなわちマイクロレンズアレイ25を貫通して検出器41に衝突し、そこで、別の主光線65、例えば主光線65aおよび主光線65bと共に、共通の焦点位置71において検出器41に衝突することとなろう。これらの焦点位置71では、照明平面51によって照明された試料(図示せず)は、もはや横方向に分解されないであろう。
【0090】
しかしながら、本発明による光学装置の第3および第4の実施形態の絞り67は、そのような光線成分59が検出器41に到達することを阻止する。したがって、この絞り67は、照明方向に対して、すなわち照明平面51の向きに対して実質的に垂直に方向決めされている検出方向73から実質的に観察される散乱光および/または蛍光光61の光路63を選択する。
【0091】
本発明による光学装置1の
図3aに示された実施形態と、
図3bに示された実施形態と、はさらに、以下の点においてそれぞれ異なっており、すなわち、
図3aの第3の実施形態では、
図1の第1の実施形態のチューブレンズ13が使用されており、したがって、絞り67を通って選択された主光線65が、チューブレンズ13を斜めに貫通するという点において、それぞれ異なっている。このことは、例えば非点収差またはコマ収差のような収差をもたらす可能性がある。
【0092】
レンズを斜めに通って延在する光線に起因して発生するこのような追加的な収差は、チューブ系の光軸15bが幅方向57に沿って対物系の光軸15aに対してオフセットされるようにチューブレンズ13を構成すること、または方向決めすることによって回避することができる。このことは、絞り67によって選択された主光線65がチューブレンズ13を実質的に真っ直ぐに貫通して延在するので、発生し得る収差を低減すること、またはそれどころか阻止することが可能となるという利点を有する。
【0093】
図4には、本発明による光学装置1の第5の実施形態が示されている。第5の実施形態は、
図3bに示された第4の実施形態のように、対物レンズ9からなる対物系7と、絞り67と、チューブレンズ13からなるチューブ系11と、検出器平面39に配置された検出器41上に散乱光および/または蛍光光61を結像させるマイクロレンズアレイ25と、を含む。マイクロレンズアレイ25は、対物レンズ9の物体側から距離76を置いて配置されている。
【0094】
図4に示された実施形態は、使用されているマイクロレンズアレイ25が、同一の焦点距離31の個々のレンズ75を有するのではなく、複数の異なる個々のレンズ75の焦点距離31がマイクロレンズアレイ25にわたって変化しているという点で、上述した実施形態とは異なっている。このことは、個々のレンズ75a~75hに基づいて
図4に概略的に示されており、個々のレンズ75aは、個々のレンズ75bの焦点距離31bよりも小さい焦点距離31aを有する。見やすくするために、個々のレンズ75b~75hおよびそれらの焦点距離31b~31hの全てが
図4に示されているわけではない。
【0095】
これにより、焦点距離31a~31iは、幅方向57における対応する個々のレンズ75a~75iの位置に応じて連続的に減少する。
【0096】
図4にはさらに、散乱光および/または蛍光光61の図示された光路63が主光線65aおよび周縁光線65bの両方を含むことが示されており、主光線65aおよび周縁光線65bには、照明平面51の第1の領域77に関してのみ参照番号が付されている。
【0097】
照明平面51の第1の領域77は、対物レンズ9から第1の距離79aを有し、この第1の距離79aは、照明平面51の第3の領域81の第3の距離79cよりも大きい。
【0098】
個々のレンズ75a~75iの焦点距離31a~31iは、本発明による光学装置1の
図4に示された実施形態では、物体側焦点83が、対応する焦点距離31に反比例するように構成されている。このことは、個々のレンズ75b,75e,および75hに基づいて
図4に示されている。個々のレンズ75bは、焦点距離31dよりも小さい焦点距離31bを有し、焦点距離31b自体は、個々のレンズ75aの焦点距離31aよりも小さい。したがって、個々のレンズ75bは、対物レンズ9から第1の距離79aを置いて離間している物体側焦点83bを有する。個々のレンズ75hは、比較的短い焦点距離31hを有しており、これによって、物体側焦点83hは、対物レンズ9から第3の距離79cを置いて離間して形成されることとなる。
【0099】
物体側焦点83の位置は、照明平面51の対応する領域に、例えば第1の領域77または第3の領域81に実質的に対応しており、したがって、物体側焦点83は、傾斜した照明平面51に適合されている。
【0100】
図面に示されたマイクロレンズアレイ25は、複数の個々のレンズ75を含むことができ、これらの個々のレンズ75を、正方形パターンに配置することができるが、有利には六角形格子に配置することも可能である。隣り合う個々のレンズ75の段階付けは、別々のステップで実施することができる。とりわけ、個々のレンズ75、すなわちそれぞれ個々のマイクロレンズ(図示せず)をそれぞれ異なる平面に配置することができ、すなわち、複数の個々のレンズ75を、チューブレンズ13または検出器41に対してそれぞれ異なる距離を置いて光学装置1に配置することができる。その結果、個々のレンズ75からチューブレンズ13または検出器41までの距離を変化させることによって、幅方向57における結像倍率を、マイクロレンズアレイ25全体にわたって一定になるよう調整することが可能となる。
【0101】
図5には、本発明による光学装置1の第6の実施形態が示されている。第6の実施形態では、ビームスプリッタ21の代わりに反射系85が光学装置1に設けられている。
図5に示された実施形態の反射系85は、反射要素86として構成されたミラー87を含み、このミラー87は、傾斜軸45aを中心にして傾斜可能であり、これにより、一方では、焦点体積49を貫通して照明光路53を走査させることが可能であり(このことは
図5の3つの異なる照明光路53に基づいて示されている)、他方では、検出光路89が変化されることなく維持される。
【0102】
図5には、ミラー87の第1の傾斜位置91aにおいて第1の照明光路53aが得られ、第2の傾斜位置91bにおいて第2の照明光路53bが得られ、第3の傾斜位置91cにおいて第3の照明光路53cが得られることが示されている。
図5には、第1の傾斜位置91aと第3の傾斜位置91cとが破線のみによって示されている。
【0103】
ミラー87を傾斜させることにより、第1の検出光路89aと、第2の検出光路89bと、第3の検出光路89cと、が1つの同一の検出光路89上へとそれぞれ偏向され、したがって、チューブレンズ13もマイクロレンズアレイ25または検出器41も、ミラー87の傾斜位置91に応じて再調整する必要がなくなる。したがって、ミラー87を傾斜させることにより、照明平面51および検出領域の両方が平行に移動される。
【0104】
概して、本発明による光学装置1の重要な観点、とりわけマイクロレンズアレイ25を使用することの重要な観点は、個々のレンズ75が、低減された開口数を有することにある。このことによって一方では、球面収差に対する結像の脆弱性が著しく低下するが、他方では分解能も低下する。したがって、適切な画像処理の重要な観点は、適切な構造を有する個々のレンズ75によって受光される散乱光および/または蛍光光の像を計算することにある。このことはとりわけ、いわゆるマルチビューデコンボリューション(multiview deconvolution)によって、すなわち個々の部分像のそれぞれ異なる視線方向を考慮に入れた展開によって実施することができる。