(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ステープラビーム構造
(51)【国際特許分類】
A61B 17/072 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61B17/072
(21)【出願番号】P 2019513355
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(86)【国際出願番号】 US2017050735
(87)【国際公開番号】W WO2018049198
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-01
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ラゴスタ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ウィクシー,マシュー エー.
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104739469(CN,A)
【文献】特開平11-239619(JP,A)
【文献】特開平08-033716(JP,A)
【文献】特表2015-525612(JP,A)
【文献】特開2007-252921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0221059(US,A1)
【文献】特表2006-501954(JP,A)
【文献】特開2005-193061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0296231(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側ジョー部および下側ジョー部を有するエンドエフェクタと:
器具シャフトと;
前記エンドエフェクタを前記器具シャフトに移動可能に接続する手首部アセンブリであって、前記手首部アセンブリは、前記器具シャフトに対して
直交する2つ
の軸周りに前記器具シャフトに対して前記エンドエフェクタを関節運動させるように動作可能であり、前記手首部アセンブリは、内部通路を有する内部シースを有し、前記内部シースは、前記手首部アセンブリの動きとともに曲がるように可撓性であるが、軸方向には動かない、手首部アセンブリと;
前記上側ジョー部および前記下側ジョー部内で並進するように配置されているビーム部材であって、前記上側ジョー部に移動可能に結合するための第1の部分および前記下側ジョー部に移動可能に結合するための第2の部分を有
し、前記第1の部分は前記上側ジョー部のレール機構内でスライドするように構成され、前記第2の部分は前記下側ジョー部のレール機構内でスライドするように構成される、ビーム部材と;
押圧アセンブリおよび引張アセンブリを有する作動アセンブリであって、前記引張アセンブリは
、引張力を前記ビーム部材に伝達するように構成され、前記押圧アセンブリは
、圧縮力を前記ビーム部材に伝達するように構成され、
前記引張アセンブリおよび前記押圧アセンブリは、前記引張アセンブリを介して引張力をおよび前記押圧アセンブリを介して圧縮力を伝達することによって、前記ビーム部材に遠位および近位の運動を提供するように相補的な方法で動作し、前記作動アセンブリは前記内部通路を通って延び、
前記作動アセンブリは、前記内部シースに対する前記作動アセンブリの移動の間に
、前記内部シース内で軸方向にスライドする、作動アセンブリと;
を有する、
手術装置。
【請求項2】
前記引張アセンブリは、細長いケーブルを有し、
前記押圧アセンブリは、前記細長いケーブルを囲む内腔を有する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項3】
前記押圧アセンブリは、密巻ばねを有する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項4】
前記密巻ばねは、円筒形の外面を有する、又は、境界を接する凸面および凹面を有する、又は、螺旋状に切断されたチューブを含む、
請求項3に記載の手術装置。
【請求項5】
前記押圧アセンブリは、凹部のパターンを有するチューブを有する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項6】
前記押圧アセンブリは、張力下で分離する複数の押圧要素を有する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項7】
前記押圧アセンブリは、複数の球形部材を有し、
前記引張アセンブリは、前記球形部材を収容する内腔を画定する、
請求項6に記載の手術装置。
【請求項8】
前記球形部材は、可撓性ロッドによって連結される、
請求項7に記載の手術装置。
【請求項9】
前記押圧アセンブリは、複数の別々の要素であって、前記別々の要素間の横方向の相対的滑りを一方向に制限する境界面を有する、複数の別々の要素を有する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項10】
前記押圧アセンブリは、複数の別々の要素であって、前記別々の要素間の相対的なねじれを防止する境界面を有する、複数の別々の要素を有する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項11】
前記押圧アセンブリは、平ワッシャの積み重ねを有する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項12】
前記押圧アセンブリは、円環ディスクの積み重ねを有する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項13】
前記引張アセンブリは、複数の板金バンドを有し、
前記押圧アセンブリは、前記複数の板金バンドがそれを通って延在する管腔を画定する矩形ワッシャの積み重ねを有する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項14】
前記押圧アセンブリは、可撓性ロッドの一次元アレイを有し、
前記引張アセンブリは、前記可撓性ロッドの一次元アレイを有し、
前記可撓性ロッドの一次元アレイは、前記引張力を前記ビーム部材に伝達し、
前記可撓性ロッドの一次元アレイは、前記圧縮力を前記ビーム部材に伝達する、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項15】
前記押圧アセンブリは、ニッケル-チタンロッドを有し、
前記引張アセンブリは、前記ニッケル-チタンロッドを有し、
前記ニッケル-チタンロッドは、前記引張力を前記ビーム部材に伝達し、
前記ニッケル-チタンロッドは、前記圧縮力を前記ビーム部材に伝達する、
請求項1に記載の手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願データの相互参照)
本出願は、2016年9月9日に出願された米国仮出願第62/385,636号の利益を主張し、その全開示はその全体が全ての目的に対して参照により本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
低侵襲手術技術は、診断または手術処置中に損傷を受ける無関係の組織の量を減らし、それによって患者の回復時間、不快感、および有害な副作用を減らすことを目的としている。結果として、標準的な手術のための入院期間の平均長は、低侵襲手術技術を使用して著しく短縮され得る。また、患者の回復時間、患者の不快感、手術副作用、および仕事からの離脱時間もまた、低侵襲手術で短縮され得る。
【0003】
低侵襲手術の一般的な形態は内視鏡法であり、内視鏡法の一般的な形態は腹腔鏡検査であり、これは腹腔内の低侵襲検査および/または手術である。再装填可能なステープリング装置は、腹腔鏡手術と併せて使用することができる。遠隔手術制御式ステープリング装置(Telesurgically controlled stapling devices)は、比較的大きい角度(例えば、90度までおよび90超)でヨー回転(yaw)およびピッチ回転する(pitch)サーボ制御式手首部ジョイントを含むことができる。そのような手首部ジョイントの関節運動は、手首部を通って延びる作動構成要素に大きな歪みを加える可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示される実施形態は、比較的大きな角度でヨー回転およびピッチ回転することができる手首部を有する手術装置に関する。そのような手首部は、ピッチ軸から空間的に離間されたヨー軸を有することができ、ヨー軸およびピッチ軸は、互いに対して並びに遠隔手術制御式装置のアームまたはシャフトの延長部を画定する長手方向軸に対して垂直である。場合によっては、ヨー角およびピッチ角は最大45、60、または90度であることができる。
【0005】
多くの実施形態では、比較的大きな角度でヨーおよび/またはピッチすることができる手首部を通って延びる可撓性作動アセンブリは、引張アセンブリおよび押圧アセンブリを含む。可撓性作動アセンブリは、手術装置のジョー部を開閉するために、および/または切断および/またはステープリング装置のような他の器具を作動させるために使用することができる。多くの実施形態では、押圧要素は、手首部の大きなヨー角および/または手首部のピッチ角を介して誘発される著しい量の湾曲を有しながらも、圧縮力を伝達することができる。多くの実施形態では、押圧アセンブリは、著しい量の引張力を伝達せず、引張要素は、手術装置の近位移動および作動のために引張力を伝達するために使用される。同様に、引張構成要素は、著しい量の圧縮力を伝達しない可能性がある。多くの実施形態では、可撓性作動アセンブリへの押圧アセンブリおよび引張アセンブリの組み合わせは、手術装置のエンドエフェクタの構成要素を作動させるための圧縮力および引張力の両方の適用(すなわち、押し引き)のための可撓性作動アセンブリの使用を可能にする。
【0006】
押圧アセンブリおよび引張構成要素は、押圧構成要素が引張構成要素の周りに同心円状に配置された状態で、共有軸に沿って一体化されることができる。いくつかの実施形態では、押圧構成要素はコイルばねを含み、引張構成要素は編組ケーブルを含む。代替的には、引張構成要素は、押圧構成要素の周りに同心円状に配置されることができる。
【0007】
高度な手首部の柔軟性を可能にするために、手首部アセンブリは、手首部アセンブリのためのヨーおよびピッチジオメトリ(geometry)を画定する外側リンクから構成されることができる。外側リンクは、作動機構の可撓性部分を収容することができる。しかし、手首部内の作動機構の圧縮は座屈を引き起こし、力伝達の効率を低下させる可能性がある。そのような問題を軽減するのを助けるために、外側リンクを互いに接続する内側リンクが設けられることができる。内側リンクは、作動機構の横方向の動きを拘束および制限し、それによって座屈を軽減する通路を画定することができる。
【0008】
したがって、一態様では、エンドエフェクタ、ビーム(梁)部材、引張アセンブリ、および押圧アセンブリを含む装置が説明される。エンドエフェクタは、上側ジョー部と下側ジョー部とを含む。手首部がエンドエフェクタを細長いシャフトに接続する。ビーム部材は、上側ジョー部および下側ジョー部内で並進するように配置されている。ビーム部材は、上側ジョー部に移動可能に結合するための第1の部分と、下側ジョー部に移動可能に結合するための第2の部分とを有する。引張アセンブリはビーム部材に接続されている。引張アセンブリは手首部内に柔軟に収容されており、引張力をビーム部材に加える。押圧アセンブリはビーム部材に接続されている。押圧アセンブリは手首部内に柔軟に収容され、ビーム部材に圧縮力を加える。多くの実施形態において、手首部は、その中に収容された引張アセンブリおよび押圧アセンブリとともにピッチ回転およびヨー回転するように構成される。
【0009】
装置の引張アセンブリは、任意の適切な構成を有することができる。例えば、引張アセンブリは細長いケーブルを含むことができる。引張アセンブリは、編組シースを含むことができる。引張アセンブリは、複数の板金バンド(sheet metal bands)を含むことができる。引張アセンブリの曲げ剛性は、細長いシャフトに対してエンドエフェクタをピッチ回転させる手首部の作動、および細長いシャフトに対してエンドエフェクタをヨー回転させる手首部の作動に対して同じであることができる。
【0010】
装置の押圧アセンブリは任意の適切な構成を有することができる。例えば、押圧アセンブリは、引張アセンブリを囲む内腔を含むことができる。押圧アセンブリは、密巻ばね(close-coiled spring)を含むことができる。密巻ばねは、円筒形の外面を有することができる。密巻ばねは、境界を接する(interfacing)凸面および凹面を有することができる。密巻ばねは、螺旋状に切断されたチューブ(spiral cut tube)を含むことができる。押圧アセンブリは、圧縮力をビーム部材に伝達するのに十分な軸方向剛性を維持しながら、チューブの曲げ剛性を低減する凹部のパターンを有するチューブを含むことができる。押圧アセンブリは、張力下で分離する複数の押圧要素を含むことができる。押圧アセンブリは複数の球形部材を含むことができる。引張アセンブリは、複数の球形部材を収容する内腔を画定することができる。球形部材は、可撓性ロッドによって連結されることができる。押圧アセンブリは、要素間の横方向の相対的滑りを一方向に制限する境界面(interfacing surfaces)を有する複数の別々の要素を含むことができる。押圧アセンブリは、要素間の相対的なねじれを防止する境界面を有する複数の別々の要素を含むことができる。押圧アセンブリは、平ワッシャの積み重ね(スタック)(stack)を含むことができる。押圧アセンブリは、円環ディスクの積み重ねを含むことができる。押圧アセンブリは、複数の板金バンドがそれを通って延在する管腔を画定する矩形ワッシャの積み重ねを含むことができる。押圧アセンブリの曲げ剛性は、細長いシャフトに対してエンドエフェクタをピッチ回転させる手首部の作動および細長いシャフトに対してエンドエフェクタをヨー回転させる手首部の作動と同じであり得る。
【0011】
別の態様では、エンドエフェクタ、ビーム部材、および作動アセンブリを含む手術ツールが説明される。エンドエフェクタは、上側ジョー部と下側ジョー部とを含む。手首部がエンドエフェクタを細長いシャフトに接続する。ビーム部材は、上側ジョー部および下側ジョー部内で並進するように配置されている。ビーム部材は、上側ジョー部に移動可能に結合するための第1の部分と、下側ジョー部に移動可能に結合するための第2の部分とを有する。作動アセンブリは、圧縮力をビーム部材に伝達する押圧アセンブリと、引張力をビーム部材に伝達する引張アセンブリとを含む。多くの実施形態では、手首部は、その中に収容された作動アセンブリとともにピッチ回転およびヨー回転するように構成される。
【0012】
手術ツールの作動アセンブリは、任意の適切な構成を有することができる。例えば、引張アセンブリは細長いケーブルを含むことができる。引張アセンブリは、編組シースを含むことができる。引張アセンブリは、複数の板金バンドを含むことができる。引張アセンブリの曲げ剛性は、細長いシャフトに対してエンドエフェクタをピッチ回転さる手首部の作動、および細長いシャフトに対してエンドエフェクタをヨー回転させる手首部の作動に対して同じであることができる。押圧アセンブリは、引張アセンブリを囲む内腔を含むことができる。押圧アセンブリは、密巻ばねを含むことができる。密巻ばねは、円筒形の外面を有することができる。密巻ばねは、境界を接する凸面および凹面を有することができる。密巻ばねは、螺旋状に切断されたチューブを含むことができる。押圧アセンブリは、圧縮力をビーム部材に伝達するのに十分な軸方向剛性を維持しながら、チューブの曲げ剛性を低減する凹部のパターンを有するチューブを含むことができる。押圧アセンブリは、張力下で分離する複数の押圧要素を含むことができる。押圧アセンブリは複数の球形部材を含むことができる。引張アセンブリは、複数の球形部材を収容する内腔を画定することができる。球形部材は、可撓性ロッドによって連結されることができる。押圧アセンブリは、要素間の横方向の相対的滑りを一方向に制限する境界面を有する複数の別々の要素を含むことができる。押圧アセンブリは、要素間の相対的なねじれを防止する境界面を有する複数の別々の要素を含むことができる。押圧アセンブリは、平ワッシャの積み重ねを含むことができる。押圧センブリは、円環ディスクの積み重ねを含むことができる。押圧アセンブリは、複数の板金バンドがそれを通って延在する管腔を画定する矩形ワッシャの積み重ねを含むことができる。押圧アセンブリの曲げ剛性は、細長いシャフトに対してエンドエフェクタをピッチ回転させる手首部の作動および細長いシャフトに対してエンドエフェクタをヨー回転させる手首部の作動と同じであり得る。可撓性ロッドの一次元アレイが、引張アセンブリおよび押圧アセンブリの両方として使用されることができる。ニッケル-チタンロッドが、引張アセンブリおよび押圧アセンブリの両方として使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】いくつかの実施形態による手術ツールの図を示す。
【
図2】いくつかの実施形態による手術ツールの図を示す。
【
図3】いくつかの実施形態による手術ツールの図を示す。
【
図4】いくつかの実施形態による手術ツールの図を示す。
【
図5】いくつかの実施形態による手術ツールの図を示す。
【
図6】いくつかの実施形態による手術ツールの図を示す。
【
図9】いくつかの実施形態による
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの実施形態を示す。
【
図11】
図9の作動アセンブリの遠位部分の断面図を示す。
【
図12】
図9の作動アセンブリの近位部分の断面図を示す。
【
図13】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの実施形態を示す。
【
図14】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの実施形態を示す。
【
図15】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図16】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図17】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの実施形態を示す。
【
図18】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図19】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図20】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの別の実施形態の図を示す。
【
図21】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図22】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図23】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図25】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの押圧アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図27】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの別の実施形態の断面図を示す。
【
図28】手術ツールの手首部に配置された
図27の作動アセンブリの一部の上面図を示す。
【
図29】手術ツールの手首部に配置された
図27の作動アセンブリの一部の上面図を示す。
【
図30】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図31】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの別の実施形態の図を示す。
【
図32】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの別の実施形態の図を示す。
【
図33】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの別の実施形態を示す。
【
図34】
図1乃至6の手術ツールの作動アセンブリの別の実施形態の断面図を示す。
【
図35】
図1乃至6の手術ツールの手首部アセンブリの図を示す。
【
図37】本発明のいくつかの実施形態による、外側リンクアセンブリの斜視図を示す。
【
図38】本発明のいくつかの実施形態による、手首部アセンブリを組み立てる方法を示す。
【
図39】本発明のいくつかの実施形態による、手首部アセンブリを組み立てる方法を示す。
【
図40】本発明のいくつかの実施形態による、手首部アセンブリを組み立てる方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、様々な実施形態が説明される。説明の目的で、実施形態の完全な理解を提供するために特定の構成および詳細が説明される。しかし、実施形態は具体的な詳細なしで実施され得ることも当業者に明らかであろう。さらに、記載されている実施形態を曖昧にしないために、よく知られている特徴を省略または簡略化することがある。
【0015】
図1-3は、近位シャシー12、器具シャフト14、および患者の組織を把持するように関節運動されることができる上側ジョー部18を有する遠位エンドエフェクタ16を含む手術ツール10を示す。近位シャシー12は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0183244号明細書に開示されているシステムのような、遠隔手術システムの対応する出力カプラとインタフェース接続し且つそれによって駆動され得る入力カプラ22を含む。入力カプラ22は、器具シャフト14内に配置されている1つまたは複数の入力部材と駆動的に結合されている。入力部材は、エンドエフェクタ16と駆動的に結合されている。
図2および3に示すように、近位シャシー12の入力カプラ22は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,912,746号に開示されているステープラ専用のモータパック、または米国特許第8,529,582号に開示されている汎用モータパックのような、様々な種類のモータパック13と接続する(mate with)ように構成されることができる。
【0016】
図4-6は、エンドエフェクタ16を含む手術ツール10の遠位端部の斜視図、側面図、および上面図を示す。エンドエフェクタ16は、手首部アセンブリ24によって器具シャフト14に移動可能に接続されている。手首部アセンブリ24は、少なくとも2自由度を有し、器具シャフト14に対して直交する2つの軸回りのエンドエフェクタ16の関節運動のために、細長い器具シャフト14へのエンドエフェクタ16の取り付けを提供する。手首部アセンブリ24は、器具シャフト14が沿って延びる軸1に対して垂直である軸2の周りで器具シャフト14に対してエンドエフェクタ16をヨー回転させるように構成されている。手首部アセンブリ24はまた、軸1および軸2に垂直である軸3の周りで器具シャフト14に対してエンドエフェクタ16をピッチ回転させるように構成されている。図示のように、ヨー軸2はピッチ軸3に対して近位(エンドエフェクタ16からより遠い)であるが、これは必要条件ではなく、いくつかの実施形態では、ヨー軸2はピッチ軸3の遠位にある。
【0017】
図7および8は、上側ジョー部18および下側ジョー部26を含むエンドエフェクタ16の詳細を示す断面図である。下側ジョー部26は、取り外し可能または非取り外し可能ステープルカートリッジを収容および支持するように構成されることができる。上側ジョー部18は、組織をクランプするために下側ジョー部26に対して関節運動するように下側ジョー部26と枢動可能に結合されている。ビーム部材28が、上側ジョー部を関節運動させるために
図7に示す近位状態から
図8に示す遠位状態に駆動される。ビーム部材28の移動は、下側ジョー部26に対して組織上に上側ジョー部18を強制的に固定するように働くことができる。オプションで、ビーム部材28はまた、組織を切断し、カートリッジから切断された組織にステープルを展開することを可能にし得る。
【0018】
ビーム部材28は、上側ジョー部18のレール機構32内でスライドするように構成された上側ビーム部30を含む。レール機構32は、上側ビーム部分30が最近位ガレージ領域36から係合するための傾斜路34を含む。
図7に示す開位置は、ばねのような弾性装置によって維持されることができる、または二次機構(図示せず)によって開閉されることができる。上側ジョー部18の部分的な閉鎖は、傾斜路34上への上側ビーム部分30の遠位移動に影響され得る。上側ジョー部18の完全な閉鎖は、上側ビーム部分30が傾斜路34を越えてレール機構32上を遠位に動かされるときに達成される。傾斜路34から離れる上側ビーム部分30の近位移動は、ビーム部材28によって上側ジョー部18に加えられた閉鎖力を取り除く。次いで、弾性装置または二次機構が、閉じたまたは部分的に閉じた上側ジョー部18を開かせることができる。したがって、傾斜路34に沿った上側ビーム部分30の前後移動は、エンドエフェクタ16の開閉を切り替えることができる。
【0019】
ビーム部材28はまた、下側ジョー部18のレール機構内でスライドするように構成された下側ビーム部分38を含む。下側ビーム部分38は、ビーム部材28の遠位移動中に下側ジョー部26からステープルを排出するように構成された(米国特許出願公開第2014/0183244号に開示されているような)スレッド(sled)を作動させることができる。代替的には、下側ビーム部分38はそのようなスレッドと一体化されることができる。
【0020】
図9は、ビーム部材28の図を示す。ここで、上側ビーム部分30は、組織を切断するように構成された一体型切断部材40を含む。しかし、他の実施形態では、組織切断装置は、ビーム部材28から分離されることができ、または異なる方法でビーム部材28内に実装されることができる。上側ビーム部分30は、一体型切断部材40から横方向に延びる上側フランジ42を含む。上側フランジ部分42は、レール機構32および傾斜路34と直接連結するように構成されている。同様の方法で、下側フランジ44が、下側ジョー部26のレール機構でスライドするように設けられる。細長い作動アセンブリ46が、ビーム部材28に遠位方向および近位方向への移動を提供するために、ビーム部材28に取り付けられている。
【0021】
図10-12は、ビーム部材28および作動アセンブリ46の断面図を示す。作動アセンブリ46は、押圧アセンブリ48および引張アセンブリ50を含む。図示された実施形態では、押圧アセンブリ48は、密巻コイルばねとして構成され、ビーム部材28への駆動ロッド52からの圧縮力を伝えるように適合されている。押圧アセンブリ48は、例えば、PTFEのような潤滑性ポリマー材料のような任意の適切な材料から構成することができるシース54によって外側から拘束されることができる。押圧アセンブリ48のコイル状設計は、ビーム部材28を遠位方向に押すために圧縮力がビーム部材28に効率的に伝えられることを可能にする。押圧アセンブリ48は、任意の適切な方法で構成されることができる。例えば、幾つかの実施形態では、押圧アセンブリ48は、コイル状ワイヤから構成されることができる。幾つかの実施形態では、押圧アセンブリ48は、チューブから螺旋状に切断される。場合によっては、押圧アセンブリの圧縮要素(例えば、コイル)は、張力下で分離するため、そのような場合、押圧アセンブリは主に圧縮力を伝達するために用いられ得る。
【0022】
引張アセンブリ50は、任意の適切な材料又は引張荷重に対抗することができる要素(例えば、編組ケーブルまたは可撓性ロッド)から構成されることができる。いくつかの実施形態では、引張アセンブリ50は、圧着部分(crimp portion)56によってビーム部材28内に保持され得る。場合によっては、引張アセンブリ50は、それ自体がつぶれたり座屈したりする傾向を有し得るので、ビーム部材28への駆動ロッド52からの圧縮力を伝達することに比較的効果がない可能性があり、したがって、そのような場合、引張アセンブリ50は主に引張力を伝達するために用いられ得る。引張アセンブリ50は、駆動ロッド52によってビーム部材28に加えられた引張力を伝達するように適合されている。駆動ロッド52は器具シャフト14内に配置され、
図1に示される入力カプラ22の1つまたは複数に駆動可能に結合される。引張アセンブリ50は、引張力が駆動ロッド52からビーム部材28に効果的に伝達され、ビーム部材28を近位方向に引っ張ることを可能にする。押圧アセンブリ48および引張アセンブリ50は、引張アセンブリ50を介して引張力をおよび押圧アセンブリ48を介して圧縮力を伝達することによって、ビーム部材28に遠位および近位の運動を提供するように相補的な方法で動作する。引張アセンブリ50を介して引張力をおよび押圧アセンブリ48を介して圧縮力を伝達することは、作動アセンブリ46の非常に柔軟かつコンパクトな設計を可能にし、動作中に比較的大きいヨー角度およびピッチ角度で配置されることができる手首部24内で作動アセンブリ46が並進運動することを可能にする特性を可能にする。
【0023】
押圧アセンブリ48は、所与の固定内径および外径に対して実質的に連続的な外形およびより大きく/より硬いワイヤ部分を提供するために円筒形の外径を有することができる。例えば、
図13および14は、円筒形外面48aosを有する押圧アセンブリ48aを示す。コイルばねを研削して円筒形外面48aosを形成するような、任意の適切な手法が押圧アセンブリ48aを製造するために使用されることができる。
【0024】
押圧アセンブリ48は、境界を接する凸面/凹面を有する密巻ばねを含むことができる。例えば、
図15および16は、分布接触応力を増大させかつ丸ワイヤコイルばねに対してコラム安定性(column stability)を向上させるためにコイルの隣接する部分と一緒にぴったり重なる境界を接する凸/凹面を有する押圧アセンブリ48bを示す。
【0025】
押圧アセンブリ48は、
図10-16に示されるような密巻コイルばね設計に限定されない。例えば、
図17-19は、実質的に圧縮剛性を低下させることなく、手首部24で押圧アセンブリの曲げ柔軟性を増加させるために、手首部24の近傍において中実チューブにパターンを局所的に切り込むことによって中実チューブから形成されることができる可撓性の押圧アセンブリ48c、48d、48eを示す。押圧アセンブリ48c、48d、48eは、任意の適切な材料(例えば、適切な金属、適切なポリマーベースの材料)から作られたチューブにパターンをレーザーカットすることにより形成されることができる。
図17に示す押圧アセンブリ48cでは、パターンは、ギャップがチューブに形成されるところでの可撓性を高めるとともに材料が適所に残されるところでの軸方向の剛性を保つ。
図18に示す押圧アセンブリ48dは、らせん状パターンに配置された複数の円周方向スリットを有する。
図19に示す押圧アセンブリ48eでは、パターンは、組み合い(interlocking)セグメントの相対的な変位を抑制しながら柔軟性を提供する別々の組み合いセグメントを形成する。
【0026】
押圧アセンブリ48は、別々の境界を接するセグメントの任意の適切な構成から形成することができる。例えば、
図20は、平ワッシャの積み重ねから作られた押圧アセンブリ48fを示す。
図21および22は、円環ディスクの積み重ねから作られた押圧アセンブリ48gを示す。
図23および24は、円錐ワッシャの積み重ねから作られた押圧アセンブリ48hを示している。円錐ワッシャの夫々は、円錐ワッシャの相対的な横方向の動きを抑制して円錐ワッシャの中心を通って延びる引張アセンブリ50との円錐ワッシャの整列を強化するように相互作用する非平面状のインタフェース(境界を接する)面(例えば球状インタフェース面)を有する。円錐ワッシャの形状の結果として、押圧アセンブリ48hは、隣接する円錐ワッシャ間の任意の方向の相対的な滑動を介して、作動アセンブリ46の局所軸方向を横切る任意の方向の押圧アセンブリ48hの曲がりに適応する。
【0027】
押圧アセンブリ48は、任意の適切な非軸対称の境界を接するセグメントの積み重ねから形成することができる。例えば、
図25は、別個の非軸対称部材70の積み重ねから作られた押圧アセンブリ48iを示す。
図26は、部材70のうちの1つの異なる図を示す。図示の実施形態では、部材70は、横方向に向けて突出する領域72と、隣接部材70の突出する領域72を収容し且つこれと接するように成形された横方向に向けて凹んだ領域74とを有する。突出する領域72および凹んだ領域74は、隣接する部材70間の相対的な滑りを、領域72、74が押圧アセンブリ48iの局所的な延在方向に対して横方向に延在する方向に制限するように形作られている。インタフェース(境界を接する)領域72、74はまた、押圧アセンブリ48iの局所的な延在方向の周りの隣接部材70間の相対的なねじれを抑制するように働き、それによって、押圧アセンブリ48iの近位端部と遠位端部との間の押圧アセンブリ48iのねじれを抑制する。
【0028】
作動アセンブリ46は、細長い板金ストリップのスタックを含み得る。例えば、
図27は、
図1-6の手術ツールの作動アセンブリ46jの断面図を示す。作動アセンブリ46jは、板金ストリップ76の平面を横切る作動アセンブリ46jの撓み(flexure)、ならびに作動アセンブリ46jの長さに沿った作動アセンブリ46jのねじれに適応しながら、圧縮荷重および引張荷重の両方に対抗する(react)ように構成された細長い板金ストリップ76を含む。作動アセンブリ46jは、それを通って板金ストリップ76が作動アセンブリ46jの近位端部から作動アセンブリ46jの遠位端部まで延びる長方形のチャネル80を有する外側シース78を含む。外側シース78は、ビーム部材28の遠位前進中に板金ストリップが圧縮で負荷を与えられるときに板金ストリップ76の横方向の座屈を防止するように板金ストリップ76の積み重ねを拘束する。
図28は、器具シャフト14に対するエンドエフェクタ16の回転に応答して引き起こされ得る作動アセンブリ46jのねじれおよびそれに関連する板金ストリップ76のねじれを示す。
図29は、器具シャフト14に対するエンドエフェクタ16の再配向(reorientation)に応答して引き起こされ得る手首部アセンブリ24の近傍における板金ストリップ76の撓みを示す。
【0029】
作動アセンブリ46は、駆動ロッド52とビーム部材28との間で引張荷重を伝達するための細長い板金バンドの積み重ねと、駆動ロッド52とビーム部材28との間で圧縮荷重を伝達するための矩形ワッシャの積み重ねとを含むことができる。例えば、
図30は、駆動ロッド52とビーム部材28との間に取り付けられそれらの間に延在する板金ストリップ76の積み重ねを含む作動アセンブリ46kの等角図を示す。作動アセンブリ46kでは、板金ストリップ76は、ビーム部材28の近位後退中に駆動ロッド52からビーム部材28へ引張荷重を伝達する。作動アセンブリ46kはさらに、ビーム部材28の遠位前進中に駆動ロッド52からビーム部材28へ圧縮荷重を伝達する矩形ワッシャ82の積み重ねを含む。作動アセンブリ46kはさらに、矩形ワッシャ82を収容する管腔を有する内側シース84と、内側シース84を収容する管腔を有する外側シース86とを含む。図示された実施形態では、外側シース86は、手首部24を介した器具シャフト14に対するエンドエフェクタ16の再配向に応答して、板金ストリップ76の平面を横切って曲がるように外側シース86の可撓性を高めるために、手首部アセンブリ24の近くに一連の凹部88を有する。
【0030】
作動アセンブリ46は、複数の可撓性作動ロッドを含むことができる。例えば、
図31は、
図1-6の手術ツールの作動アセンブリ46mの遠位部分の側面図を示す。作動アセンブリ46mは、駆動ロッド52からビーム部材28mへの張力と駆動ロッド52からビーム部材28mへの圧縮力との両方を伝達するように適合された3つの可撓性作動ロッド90を含む。3つの可撓性作動ロッド90は、共通平面内に整列され、それによって共通平面を横切る作動ロッド90の撓みに適応する。3つの可撓性作動ロッド90は、駆動ロッド52とビーム部材28mとの間で別々に経路を定められ、それによって器具シャフト14に対するエンドエフェクタ16の回転に応答して引き起こされ得る作動ロッド90のねじれに適応する。
図32は、それを介して作動ロッド90がビーム部材28mに結合されるビーム部材28mの開口部92を示す作動アセンブリ90gのビーム部材28mの端面図を示している。
【0031】
作動アセンブリ46は、引張アセンブリ50の代わりに、圧縮荷重および引張荷重の両方を駆動ロッド52からビーム部材28に伝達する要素を使用することができる。例えば、
図33は、引張アセンブリ50の代わりにニチノールワイヤ50aを含む作動アセンブリ46nを示す。ニチノールワイヤ50aは、ビーム部材28を遠位方向に前進させかつ近位方向に後退させる両方を行うために駆動ロッド52からビーム部材28に圧縮荷重および引張荷重の両方を伝達する。図示の実施形態では、作動アセンブリ46nはばね48nを含み、これは密巻ばね(closed coil spring)であり得るが、そうである必要はない。ばね48nは、ビーム部材28の遠位前進中に駆動ロッド52からビーム部材28への圧縮荷重の伝達をニチノールワイヤ50aと共有するように構成することができる。ばね48nは、ビーム部材28の遠位前進中に駆動ロッド52からビーム部材28への圧縮荷重の伝達をニチノールワイヤ50aと共有しないように構成することもできる。多くの実施形態では、バネ48nの主な機能は、ニチノールワイヤが駆動ロッド52の直径に一致する直径を有することができるようにニチノールワイヤ50aへの半径方向の支持を提供することである。ニチノールワイヤ50aをビーム部材28および駆動ロッド52のそれぞれに取り付けるために、例えばカシメ、ハンダ付け、溶接などの任意の適切な手法を使用することができる。
【0032】
作動アセンブリ46のいくつかの実施形態では、押圧部材48は、引張部材50の管腔内に配置されている。例えば、
図34は、押圧アセンブリ48oと、押圧アセンブリ48oが配置されている管腔を有する引張アセンブリ50oとを含む作動アセンブリ46oを示す。作動アセンブリ46oの構成は、押圧アセンブリ48が引張アセンブリ50を同心円状に取り囲む本明細書に記載の他の実施形態とは異なる。作動アセンブリ46oでは、引張アセンブリ50oは、押圧アセンブリ48oを封入するシース(例えば編組シース)を有する。押圧アセンブリ48oは、可撓性ロッド66によって接合された複数の球状部材(例えば、ボールベアリング)を含む。押圧アセンブリ48oおよび引張アセンブリ50oの両方は、
図1に示す入力カプラ22の1つまたは複数に駆動可能に結合されている駆動ロッド52によって作動される。
【0033】
図35および36は、手首部アセンブリ24の斜視図および断面図を示す。手首部アセンブリ24は、近位外側リンク100、中間外側リンク102、および遠位外側リンク104を含む。これら3つのリンクは、手首部アセンブリ24の運動学的ピッチおよびヨー運動を決定する。図示のように、近位外側リンク100と中間外側リンク102との間の接点部(interface)は、手首部アセンブリ24のヨー運動を決定する。外側遠位リンク104と中間外側リンク102との間の接点部は、手首部アセンブリ24のピッチ運動を決定する。しかし、代替の手首部構成では、この関係は、(例えば、手首部アセンブリ24に対してエンドエフェクタ16を90度回転させることによって)手首部アセンブリ24が近位外側リンク100と中間外側リンク102との間でピッチ回転し、遠位外側リンク100と中間外側リンク102との間でヨー回転するように逆にされることができる。
【0034】
ケーブル部分106は、手首部アセンブリ24に張力を加え、手首部アセンブリに動きを与えるように作動される。一実施形態では、ケーブル部分106は、遠位外側リンク104の一部分に個々に固定されることができる。機能的に均等な代替実施形態では、
図35に示されるように、ケーブル部分106は、示されるように遠位外側リンク104の一部分の周りにループにされる。ケーブル部分106を遠位外側リンク104にループさせることは、ケーブル部分106を遠位外側リンク104に固定し、ケーブル部分106がスリップすることを防ぐ。どちらの実施形態でも、張力が、手首部を関節運動させるように引っ張られることになる個々のケーブル部分106に加えられる。ケーブル部分106に加えられる差動力(Differential forces)は、様々な角度でピッチ回転およびヨー回転させるように手首部アセンブリを作動させることができる。ケーブル部分106は、
図1に示される入力カプラ22のうちの1つまたは複数に駆動可能に結合されることができる。手首部アセンブリはまた、近位内側リンク108および遠位内側リンク110を含み、これらは以下で詳細に論議される。
【0035】
図37に注目すると、
図35および36Bに示す外側リンク間の接点部を表すジョイント112の例示的実施形態が示されている。ジョイント112は、第1リンク114および第2のリンク116を含む。第1リンク114は、歯116、118およびベアリング(支持)突出部(bearing projection)122を含み得る。ディスク720は、ピン124、126、128およびベアリング突出部130を含む。例示的な実施形態によれば、第1および第2のリンク114、116の突出部122、130は、ケーブル部分106が通過することを可能にする通路を含み得る。ベアリング突出部122、130は中央開口部134、136に対して外側位置に配置されているので、ベアリング突出部122、130に隣接する通路を通って延びるケーブル部分106もまた外側位置に配置されている。これは、中央開口部134、136を通る他の機構の経路設定(routing)を可能にする。リンク間の作動運動学は、運動中に係合および係合解除するピンおよび歯の形状によって決定される。ベアリング突出部122、130は、ピンおよび歯への圧縮歪みを減少させるのを助けるために全ての角運動を通していくつかのポイントで係合する曲面を含んでいた。
【0036】
ジョイント112によって提供される拡大された運動範囲により、ジョイント112を含む手首部は、より少ない部品によるより効率的な方法で、ピッチまたはヨー方向に±90度のような所望の量の運動を提供し得る。各ジョイントが約45度の最大ロール角に制限される従来の手首部構造では、直列のいくつかのそのようなジョイントが、手首部機構全体のための比較的大きなロール角に必要とされる。図示のように実施形態では、単一のジョイントが最大90度のロール角制限を提供することができる。その結果、1つまたは複数のジョイント112を含む手首部の製造コストおよび複雑さが低減される一方依然として関節運動に対する所望の制御を達成することができる。加えて、ジョイント112のリンク114、116に含まれる複数の歯および対応する複数のピンは、例えば、ディスクを中立位置(例えば、ゼロ角度ロールアラインメント)に戻すことを含む、リンク114、116を正確に位置決めするのを助けるために、および、リンク114、116が互いに対する方向に回転されるときのように、リンク114、116間の動きの滑らかさを高めるために、向上されたタイミングを提供することができる。例示的な実施形態によれば、手首部は、例えば、ピッチまたはヨー方向の最大±180度の運動範囲を有する手首部のような、より高い運動範囲(ロール限界角度まで)を達成するために複数のジョイント112を含み得る。ジョイント112、および本明細書に開示された実施形態と共に使用可能な他のジョイントのさらなる詳細は、国際公開第2015/127250号に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
図36に示すように、近位内側リンク108および遠位内側リンク110は、軸1に沿って空間的に分離され、互いに90度オフセットされている(ずれている)。したがって、近位内側リンク108は部分的にしか示されていない。近位および遠位内側リンク108、110の半径方向表面は、突出部を含む(例えば、クレビスピン(clevis pins)140として構成されている)。クレビスピンは、外部リンクの内側表面で(例えばクレビスジョイント(clevis joints)142として構成された)くぼみの間を接続する。クレビスピン140およびジョイント142は、外側リンクのジョイント間の距離を設定するが、そうでなければ受動的であり、歯とピンの幾何学的形状によって決定される外側リンクのジョイント運動学を変えない。近位および遠位内側リンク108、110の各側部は、内側リンク108、110あたり合計4つのクレビスピン140のための外側リンクへの各接続部に対する共通に整列した(commonly aligned)クレビスピンのペアを含む。クレビスピン140の各ペアは、作動アセンブリ46のための内部通路144を提供するために分離される。
【0038】
追加の内部シース146が、作動アセンブリ46をさらに支持するために使用されることができる。作動アセンブリ46は、内部シース146内で軸方向にスライドする。内部シース146は、手首部アセンブリ24の遠位端部分に固定され、手首部アセンブリ24の動きとともに曲がるように可撓性であるが、軸方向には動かない。内側リンクによって提供される内部シース146および内部通路144は、軸方向移動中に作動アセンブリ46を案内し且つ拘束するように働く。内部シース146および内部通路144は、圧縮荷重(すなわち、切断およびステープル留め中の遠位運動)下で作動アセンブリが座屈するのを防止する。前述の国際公開第2015/127250号に開示されているような従来の手首部のデザインは、外側リンクを定位置に維持するために張力をかけたケーブルに頼っている。作動アセンブリ46が遠位方向に移動するとき、結果として生じる圧縮力はケーブルにたるみを誘発し得るので、ここではそれは不十分である。しかし、作動アセンブリ46が遠位方向に移動するとき、内側リンク108、110のクレビスピン140は有利に外側リンクを所定の位置に維持し、そのため、手首部アセンブリ24の構造を維持する。
【0039】
各内側リンクは、
図38乃至40に示すようにツーピース構造を有することができ、これらの図は、内側リンクを外側リンクに組み立てるための技法も示している。
図38において、近位内側リンク108の第1のリンク部分108aおよび第2のリンク部分108bは、クレビスピン140を中間外側リンク102のクレビスジョイント142内に配置するように位置決めされる。第1のリンク部分108aおよび第2のリンク部分108bは、各部分のギア歯148が互いに噛み合って、その部分を
図39に示す構造に整列させるように、斜めに挿入される。ギア歯148は、ピンまたは他の留め具の必要性を排除する組み立て補助具であり、組み立ての他に運動のためには使用されない。しかし、いくつかの実施形態では、留め具がギア歯の代わりに使用されることができる。リンク部分108a、108bが完全な内側近位リンク108に組み立てられた後、近位外側リンク100が残りの露出したクレビスピン140の上に組み立てられて
図40に示す構造になる。一実施形態では、
図40に示されるように、近位外側リンク100もまたツーピース構造である。
【0040】
他の変形は本発明の精神の範囲内である。説明した実施形態の様々な態様、実施形態、実装形態または特徴は、別々にまたは任意の組み合わせで使用することができる。遠隔手術ツールの動作に関連する記載された実施形態の様々な態様は、ソフトウェア、ハードウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実施することができる。したがって、本発明は様々な修正形態および代替構成を受け入れる余地があるが、その特定の例示の実施形態は図面に示されており、上で詳細に説明されてきた。しかし、開示された特定の形態に本発明を限定する意図はないが、それどころか、その意図は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の精神および範囲内にあるすべての修正形態、代替構造、および均等物を包含することであることが理解されるべきである。
【0041】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語“a”および“an”および“the”および類似の指示対象の使用は、そうでないことが本明細書に示されるか、または文脈により明らかに否定される場合を除き、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。用語「備える」、「有する」、「含む」、および「含有する」は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。「接続された」という用語は、たとえ介在するものがあったとしても、部分的にまたは全体的にその中に含まれる、それに取り付けられる、または一緒に接合されると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指定がない限り、単にその範囲内に含まれる各個別の値を個々に指す簡潔な方法として役立つことを意図しており、各個別の値は、あたかも本明細書に個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限りまたは文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「のような」)の使用は、単に本発明の実施形態をよりよく明らかにすることを意図しており、特に請求項に記載されない限り本発明の範囲の限定をもたらさない。本明細書中のいかなる言語も、請求項に記載されていない要素を本発明の実施に必須であると示すと解釈されるべきではない。
【0042】
本発明を実施するために本発明者らが知っている最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に使用することを期待し、そして本発明者らは本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で本発明を実施することを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙されている主題のすべての修正形態および均等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形形態における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書中に別段の指示がない限りまたは文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。