(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】歯科用ミルブランク
(51)【国際特許分類】
A61C 13/08 20060101AFI20220829BHJP
A61C 13/09 20060101ALI20220829BHJP
A61C 5/70 20170101ALI20220829BHJP
【FI】
A61C13/08 Z
A61C13/09
A61C5/70
(21)【出願番号】P 2019525526
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2018022766
(87)【国際公開番号】W WO2018230657
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2017116789
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100174779
【氏名又は名称】田村 康晃
(72)【発明者】
【氏名】平松 尚悟
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 剛大
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161440(JP,A)
【文献】特表2016-535610(JP,A)
【文献】特表平04-505113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0106308(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0069264(US,A1)
【文献】国際公開第2002/009612(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/154301(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/08
A61C 13/09
A61K 6/80
A61K 6/884
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の積層構造を有する角柱状のミルブランク部を有する歯科用のミルブランクであって、前記ミルブランク部は少なくとも1つの湾曲した界面を有する側面(P)を複数有し、当該側面(P)のうちの少なくとも2つは互いに平行でない(ただし、1つの前記側面(P)における界面の湾曲が一方向であるものを除く)、ミルブランク。
【請求項2】
前記ミルブランク部が前記側面(P)を4つ以上有する、請求項1に記載のミルブランク。
【請求項3】
前記角柱状が四角柱状である、請求項1又は2に記載のミルブランク。
【請求項4】
前記互いに平行でない2つの側面(P)が互いに直交する、請求項1~3のいずれか1項に記載のミルブランク。
【請求項5】
前記ミルブランク部が、積層構造を等しく分割する仮想第一対称面を有し、前記仮想第一対称面は少なくとも1つの湾曲した界面を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のミルブランク。
【請求項6】
前記ミルブランク部が、前記仮想第一対称面に垂直な面であって前記積層構造を等しく分割する仮想第二対称面を有し、前記仮想第二対称面は少なくとも1つの湾曲した界面を有する、請求項5に記載のミルブランク。
【請求項7】
前記側面(P)が有する界面における湾曲の形状が、円弧状、楕円弧状、放物線状、懸垂線状、及び、これらの形状のうちの複数を組み合わせた形状からなる群から選ばれる、請求項1~6のいずれか1項に記載のミルブランク。
【請求項8】
積層構造において隣接した各層の色調及び/又は透明性が互いに異なる、請求項1~7のいずれか1項に記載のミルブランク。
【請求項9】
前記ミルブランク部が4層以上の積層構造を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のミルブランク。
【請求項10】
全ての層に無機充填材(a)が含まれる、請求項1~9のいずれか1項に記載のミルブランク。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のミルブランクの製造方法であって、前記側面(P)が有する湾曲した界面が機械的圧力によって形成される(ただし、1つの前記側面(P)における界面の湾曲が一方向であるものを除く)、製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載のミルブランクを切削加工する工程を含む、歯科用補綴物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用のミルブランク、その製造方法、及びそれを用いる歯科用補綴物の製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、歯科用CAD/CAMシステムでの切削加工による、インレー、アンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ、支台歯、歯科用ポスト、義歯、義歯床、インプラント部材(フィクスチャー、アバットメント)等の歯科用補綴物の作製に好適に用いることのできる歯科用のミルブランク、その製造方法、及びそれを用いる歯科用補綴物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インレー、クラウン等の歯科用補綴物を、コンピューターによって設計し、ミリング装置により切削加工して作製するCAD/CAMシステムが普及している。CAD/CAMシステムに用いられる被切削材料であるミルブランクとしては、切削加工に供される角柱状のミルブランク部(ブロック体)と、ミルブランク部から突出し、ミルブランクをミリング装置に固定するための支持部とを含むものがある。
【0003】
歯冠歯列修復治療では、可能な限り天然歯の色調に近い外観を付与することが要求される。しかしながら、単一成分からなるミルブランク部を有するミルブランクでは上記のような審美的要求を十分には満足できないことも多い。このような課題を解決するため、異なる色調の層が積層された積層構造のミルブランク部を有するミルブランクが提案されている。
【0004】
積層構造のミルブランク部として、単純に各層を積層しただけでは、層間の色調の差が目立つなどして、天然歯の色調に近い外観を付与できない場合がある。そのため、ミルブランク部の層形状を特定のものとする技術がこれまでに知られている(特許文献1~3等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2011-528597号公報
【文献】特表2016-535610号公報
【文献】特表2014-534018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ミルブランクの層形状を特定した従来のミルブランクでは、積層構造を有さない単層部分を多く含んでいることにより、広範な部分から積層構造を有する歯科用補綴物となる部分を切り出すことができず、ミリング加工に制限が生じたり、周縁部の材料が無駄になったりする問題があり、一方、単層部分を含むように歯科用補綴物となる部分を切り出した場合には、単層部分において圧縮強さが低下する問題があった。また、従来のミルブランクは、その得られる歯科用補綴物の外観の面でも改善の余地があり、特に上記特許文献2のような層形状を有する場合には、多方向からみた場合の自然な色調変化を再現しにくい問題があった。さらに、従来の積層構造のミルブランク部を有するミルブランクは、それを工業的に製造するのが煩雑でコスト高に繋がりやすい問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、より天然歯の色調に近い外観を有すると共に機械的強度にも優れる歯科用補綴物を製造することができ、また広範な部分から所望の形状を切り出すことができて加工性に優れ、しかも、それ自体を簡便に製造することのできる歯科用のミルブランク、当該ミルブランクの製造方法、及び当該ミルブランクを用いる歯科用補綴物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を包含する。
〔1〕 2層以上の積層構造を有する角柱状のミルブランク部を有する歯科用のミルブランクであって、前記ミルブランク部は少なくとも1つの湾曲した界面を有する側面(P)を複数有し、当該側面(P)のうちの少なくとも2つは互いに平行でない、ミルブランク。
〔2〕 前記ミルブランク部が前記側面(P)を4つ以上有する、〔1〕に記載のミルブランク。
〔3〕 前記角柱状が四角柱状である、〔1〕又は〔2〕に記載のミルブランク。
〔4〕 前記互いに平行でない2つの側面(P)が互いに直交する、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のミルブランク。
〔5〕 前記ミルブランク部が、積層構造を等しく分割する仮想第一対称面を有し、前記仮想第一対称面は少なくとも1つの湾曲した界面を有する、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のミルブランク。
〔6〕 前記ミルブランク部が、前記仮想第一対称面に垂直な面であって前記積層構造を等しく分割する仮想第二対称面を有し、前記仮想第二対称面は少なくとも1つの湾曲した界面を有する、〔5〕に記載のミルブランク。
〔7〕 前記側面(P)が有する界面における湾曲の形状が、円弧状、楕円弧状、放物線状、懸垂線状、及び、これらの形状のうちの複数を組み合わせた形状からなる群から選ばれる、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載のミルブランク。
〔8〕 積層構造において隣接した各層の色調及び/又は透明性が互いに異なる、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載のミルブランク。
〔9〕 前記ミルブランク部が4層以上の積層構造を有する、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載のミルブランク。
〔10〕 全ての層に無機充填材(a)が含まれる、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載のミルブランク。
〔11〕 〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載のミルブランクの製造方法であって、前記側面(P)が有する湾曲した界面が機械的圧力によって形成される、製造方法。
〔12〕 〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載のミルブランクを切削加工する工程を含む、歯科用補綴物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より天然歯の色調に近い外観を有すると共に機械的強度にも優れる歯科用補綴物を製造することができ、また広範な部分から所望の形状を切り出すことができて加工性に優れ、しかも、それ自体を簡便に製造することのできる歯科用のミルブランク、当該ミルブランクをより簡便に製造することのできるミルブランクの製造方法、及びより天然歯の色調に近い外観を有すると共に機械的強度にも優れる歯科用補綴物を製造することのできる、歯科用補綴物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るミルブランク部の実施形態の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明に係るミルブランク部及びそれを形成するための対応する成形体における層形状についての種々の例を概略的に示す斜視図である。
【
図3】本発明に係るミルブランク部を仮想第一対称面2で割断した際の断面図(概略図)である。
【
図4】本発明に係るミルブランク部を仮想第二対称面3で割断した際の断面図(概略図)である。
【
図5】実施例及び比較例における圧縮強さ測定用試験片の切り出し位置及び色度測定用色度板の切り出し位置を示す概略図である。
図5には、圧縮強さの測定結果を併せて示す。
【
図6】実施例1のミルブランク部(1)についての色度の測定結果である。
【
図7】実施例2のミルブランク部(2)についての色度の測定結果である。
【
図8】実施例3のミルブランク部(3)についての色度の測定結果である。
【
図9】実施例4のミルブランク部(4)についての色度の測定結果である。
【
図10】実施例5のミルブランク部(5)についての色度の測定結果である。
【
図11】比較例1のミルブランク部(6)についての色度の測定結果である。
【
図12】比較例2のミルブランク部(7)についての色度の測定結果である。
【
図13】比較例3のミルブランク部(8)についての色度の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の歯科用のミルブランクは、2層以上の積層構造を有する角柱状のミルブランク部を有する。そして、当該ミルブランク部は少なくとも1つの湾曲した界面(積層構造の層間に基づく界面)を有する側面(P)を複数有し、当該側面(P)のうちの少なくとも2つは互いに平行でない。典型的には前記湾曲した界面は、側面(P)上において曲線を形成する。
【0012】
〔ミルブランク部〕
本発明に係るミルブランク部の実施形態の一例を、概略図として
図1に示す。
図1に示される直方体状のミルブランク部5は、4層の積層構造を有する。当該ミルブランク部5は、その4つの側面の全てにおいて、積層構造の層間に基づく界面を有し、これらの界面はいずれも湾曲している。したがって、当該ミルブランク部5は側面(P)を4つ有する。そして、
図1に示されるミルブランク部5では、隣接する側面(P)同士が互いに平行でなく、したがって、4つの側面(P)のうちの少なくとも2つが互いに平行でない。
【0013】
ミルブランク部5が湾曲した界面4を有する側面(P)を有することにより、より天然歯の色調に近い外観を有する歯科用補綴物を製造することができ、また、得られる歯科用補綴物において層が積層される方向から力が加わった際に、力を周囲に分散させることができてその圧縮強さが向上する。またそのような側面(P)を複数有し、且つ、それらのうちの少なくとも2つが互いに平行でないことにより、広範な部分から歯科用補綴物とするための所望の形状を切り出すことができて加工性に優れたものとなり、得られる歯科用補綴物がより天然歯に近い色調を有するようになり、しかも、このようなミルブランク部を有するミルブランクを簡便に製造することが可能となる。
【0014】
前記側面(P)が有する界面における湾曲の形状に特に制限はなく、例えば、円弧状、楕円弧状、放物線状、懸垂線状、これらの形状のうちの複数を組み合わせた形状などが挙げられる。当該複数を組み合わせた形状には、例えば、異なる円弧状を複数組み合わせた形状も包含される。なお、側面(P)が有する湾曲した界面は、プレス等の機械的圧力によって形成することができる。具体的には後述する方法によって容易に形成することができる。
【0015】
本発明に係るミルブランク部は角柱状であり、例えば、三角柱状、四角柱状、五角柱状、六角柱状などが挙げられる。これらの中でもそれ自体の製造のし易さや、取り扱い性などの観点から、四角柱状であることが好ましく、直方体状であることがより好ましい。
【0016】
本発明に係るミルブランク部が有する側面(P)の数は2つ以上であれば、角柱状のミルブランク部の形状が許容する範囲内で、その数に特に制限はないが、より天然歯の色調に近い外観を有すると共に機械的強度にも優れる歯科用補綴物となる部分を、より広範な部分から切り出すことができ、また、ミルブランク部自体をより簡便に製造することができることなどから、側面(P)の数は3つ以上であることが好ましく、特に4つ以上であることがより好ましい。ミルブランク部は、四角柱状(好ましくは直方体状)であり、その4つの側面全てが側面(P)であることが特に好ましい。
【0017】
本発明に係るミルブランク部において、互いに平行でない2つの側面(P)が互いに直交することが好ましい。すなわち、ミルブランク部が互いに直交する少なくとも2つの側面を有し、それらの側面のいずれもが湾曲した界面を有する側面(P)であることで、より天然歯の色調に近い外観を有すると共に機械的強度にも優れる歯科用補綴物となる部分を、より広範な部分から切り出すことができ、また、ミルブランク部自体をより簡便に製造することができる。互いに直交する2つの側面(P)は隣接していることが好ましい。
【0018】
本発明に係るミルブランク部は、積層構造を等しく分割する仮想上の仮想第一対称面を有し、その仮想第一対称面が少なくとも1つの湾曲した界面を有することが好ましい。また、この場合において、ミルブランク部は、仮想第一対称面に垂直な仮想上の面であって、積層構造を等しく分割する仮想第二対称面をさらに有し、その仮想第二対称面が少なくとも1つの湾曲した界面を有することが好ましい。ここで、典型的には前記湾曲した界面は、仮想第一対称面上、又は仮想第二対称面上において曲線を形成する。
【0019】
図1の概略図に、仮想第一対称面2と仮想第二対称面3とを示す。
図1においては、仮想第一対称面2と、これに垂直な仮想第二対称面3の双方において、少なくとも1つの湾曲した界面(図示せず)を有する。このような層形状のミルブランク部を有するミルブランクによれば、より天然歯の色調に近い外観を有すると共に機械的強度にも優れる歯科用補綴物となる部分を、より広範な部分から切り出すことができ、また、ミルブランク部自体をより簡便に製造することができ、しかも対称性に基づきミルブランク部自体やそれから得られる歯科用補綴物の強度が向上する。仮想第一対称面及び仮想第二対称面が有する界面における湾曲の形状に特に制限はなく、例えば、円弧状、楕円弧状、放物線状、懸垂線状、これらの形状のうちの複数を組み合わせた形状などが挙げられる。当該複数を組み合わせた形状には、例えば、異なる円弧状を複数組み合わせた形状も包含される。
【0020】
本発明に係るミルブランク部が有する積層構造における層の数は、2層以上であれば特に限定されないが、より自然なグラデーションを有し、かつ、天然歯冠に対応する色彩調和を図るためには、3層以上であることが好ましく、特に、4層以上であることがより好ましい。また当該積層構造において、隣接した各層の色調及び/又は透明性は、互いに異なることが好ましい。色調を示す尺度としては、例えば、L*a*b*表色系におけるL*、a*、b*などを用いることができる。透明性を示す尺度としては、例えば、L*a*b*表色系におけるΔL*などを用いることができる。
【0021】
本発明に係るミルブランク部が有する積層構造において、全ての層に無機充填材(a)が含まれることが好ましい。このような構成とすることで、機械的強度により優れる歯科用補綴物が得られる。なお、このような構成を有するミルブランク部は後述する方法などによって製造することができる。
【0022】
本発明に係るミルブランク部の好適な実施形態としては、例えば、レジンブロックから構成されるものが挙げられる。レジンブロックから構成されるミルブランク部は、典型的には、無機充填材(a)と、重合性単量体(b)が重合してなる重合体とを含む。なお別の実施形態として、本発明に係るミルブランク部は、ジルコニア、ガラス等のセラミックブロックから構成されていてもよい。
【0023】
レジンブロックから構成されるミルブランク部は、例えば、無機充填材(a)をプレス成形するなどして得られる、無機充填材(a)を含み目的の層形状を有する成形体(X)に、重合性単量体(b)を含む組成物(Y)を含浸させた後、重合硬化させることで製造することができる。組成物(Y)は、重合性単量体(b)を重合させるための重合開始剤(c)をさらに含むことが好ましい。
【0024】
また、レジンブロックから構成されるミルブランク部は、無機充填材(a)と重合性単量体(b)を含む組成物(Y)とを混練するなどして、無機充填材(a)及び重合性単量体(b)を含むペースト(Z)を作製した後に、このペースト(Z)を用いて、プレス成形したり押出成形したりするなどして、目的の層形状とした後、重合硬化させることによっても製造することができる。この場合、湾曲した金型を用いて目的の層形状としてもよい。ペースト(Z)においても、重合性単量体(b)を重合させるための重合開始剤(c)を含むことが好ましい。
【0025】
前記目的の層形状を有する成形体(X)を得るための方法に特に制限はないが、無機充填材(a)を単独で含むか又はそれに顔料(d)等の他の成分が配合された粉体(無機充填材(a)を含む粉体)を複数用意し、金型中でパンチを用いてプレス成形する方法を好ましく採用することができる。このような方法を採用することにより、より簡便に本発明に係るミルブランク部を得ることができる。
【0026】
使用される粉体について、顔料(d)等の他の成分の種類や量などを適宜調整することで、各粉体の色調、ひいては得られるミルブランク部や歯科用補綴物における各層の色調を調整するこができる。また2種類の粉体を用意し、配合比を変えてこれらを混合することで色調の異なる複数の粉体を得ることもできる。例えば、4層以上の積層構造を有するミルブランク部を製造する場合、無機充填材(a)、及び顔料(d)等の他の成分の量を変えて2つの最外層用の粉体をそれぞれ作製し、次いで配合比を変えてこれらの2つの粉体を混合することで各中間層用の粉体を得ることができる。
【0027】
金型中でパンチを用いてプレス成形する際における湾曲した界面を形成する方法としては、例えば、第一の粉体を金型に充填した後、凸状、又は凹状の形状を付与したパンチを用いてプレス成形し、次いで第二の粉体を充填するという、充填工程とプレス工程とを交互に繰り返す方法;各粉体を順次充填し終わった後、パンチ(好ましくは平らな形状のパンチ)でプレス成形して湾曲した界面を形成する方法などが挙げられる。より自然なグラデーションを実現するためには、界面において粉体同士が混合されやすい後者の方法がより好ましい。
【0028】
前記各粉体を順次充填し終わった後、パンチでプレス成形して湾曲した界面を形成する方法の一例について、以下により詳細に説明する。まず金型内に、複数用意した無機充填材(a)を含む粉体を順次充填して積層体とする。各粉体から形成される層は平面状とすることができる。次いで、この積層体に対してパンチでプレスして積層体の側面に湾曲した界面を形成する。この際に、プレス装置やパンチ速度などに基づき、プレスによる圧力が金型中心部において優先して高くなるようにしたり、プレスに伴う空気抜けが中心から周囲へ向かうようにしたりすることで、湾曲した界面を形成することができる。形成される湾曲の方向は、プレスにおけるパンチの移動方向に依存しやすく、多くの場合、パンチが移動する方向に凸の形状を有する湾曲が形成されやすい。
【0029】
具体的には、用いる金型枠を支持台に固定するなどして、金型枠と下パンチとの相対位置を変化させずに上パンチの相対移動のみでプレス成形すると、湾曲は下に凸の形状となりやすく、層間に基づく界面は中央の頂点から周囲に向かってドーム状に湾曲しやすい。例えば、2層の積層体に対して、上パンチの相対移動のみでプレス成形した場合、
図2Aに概略図を示すような層形状となりやすい。一方、用いる金型枠を支持台に固定しないなどして、金型枠に対する上パンチと下パンチのそれぞれの相対位置を変化(好ましくは同速で変化)させてプレス成形すると、層間に基づく界面は、積層体の上半分では下に凸にドーム状に湾曲しやすく、下半分では上に凸にドーム状に湾曲しやすい。例えば、3層の積層体に対して、金型枠に対する上パンチと下パンチのそれぞれの相対位置を同速で変化させてプレス成形した場合、
図2Bに概略図を示すような層形状となりやすい。積層体の層数や移動させるパンチを選択することで、
図2C及び
図2Dに概略図を示すような層形状とすることもできるし、界面の湾曲が全て同一方向(全て上に凸)である4層構造の層形状(E;
図1に示すような層形状を有するもの)とすることもできる。
図2A~
図2Dの層形状及び界面の湾曲が全て同一方向(全て上に凸)である4層構造の層形状(E)を有する成形体(X)からそれぞれ得られるミルブランク部について、仮想第一対称面2で割断した際の断面図を概略図として、それぞれ、
図3A~
図3Eに示し、仮想第二対称面3で割断した際の断面図を概略図として、それぞれ、
図4A~
図4Eに示す。
【0030】
ペースト(Z)を用いてプレス成形する場合においても、成形体(X)を得る場合と同様にして目的の層形状とすることができ、例えば、第一のペーストを金型に充填した後、凸状、又は凹状の形状を付与したパンチを用いてプレス成形し、次いで第二のペーストを充填するという、充填工程とプレス工程とを交互に繰り返す方法;各ペーストを順次充填し終わった後、パンチ(好ましくは平らな形状のパンチ)でプレス成形して湾曲した界面を形成する方法などを採用することができる。
【0031】
・無機充填材(a)
無機充填材(a)の種類は、特に限定されず、公知の無機粒子を使用できる。無機粒子としては、例えば、各種ガラス類(例えば、二酸化ケイ素(石英、石英ガラス、シリカゲル等)、ケイ素を主成分とし各種重金属と共にホウ素及び/又はアルミニウムを含有するものなど)、アルミナ、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、シリカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化チタン(チタニア)、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。また、無機充填材(a)は、前記無機粒子に重合性単量体を添加し、重合硬化させた後に粉砕することによって得られる有機無機複合粒子(有機無機複合フィラー)であってもよい。なお、無機充填材(a)は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0032】
無機充填材(a)として使用される無機粒子の形状は特に限定されず、例えば、破砕状、板状、鱗片状、繊維状(短繊維、長繊維)、針状、ウィスカー、球状である。無機粒子は、前記形状の一次粒子が凝集したものであってもよく、異なる形状の一次粒子が複数混合されたものであってもよい。また、前記形状となるように、無機粒子は何らかの処理(例えば、粉砕等)を施されたものであってもよい。
【0033】
・顔料(d)
前記成形体(X)、組成物(Y)及びペースト(Z)の少なくとも1つに顔料(d)を含ませるなどして、ミルブランク部を構成する各層に所望の種類及び/又は量の顔料(d)を含ませることにより、これらの各層の色度、色調、透明性などを調整することができる。成形体(X)に組成物(Y)を含浸させた後、重合硬化させることでミルブランク部を製造する場合において、顔料(d)は成形体(X)に含ませることが好ましい。
【0034】
前記顔料(d)としては、歯科用組成物に用いられている公知の顔料を用いることができる。当該顔料(d)は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
【0035】
無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;亜鉛華、酸化チタン、酸化鉄赤(ベンガラ)、酸化鉄黒、酸化鉄黄、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素などが挙げられる。
【0036】
有機顔料としては、例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料などが挙げられる。
【0037】
これらの顔料(d)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの顔料(d)の中でも、耐熱性、耐光性等に優れることから、無機顔料が好ましく、酸化チタン、ベンガラ、酸化鉄黒、酸化鉄黄がより好ましい。
【0038】
顔料(d)の使用量は、各層における所望の色度、色調、透明性などに応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、最終的に得られるミルブランク部の顔料(d)が配合される層において、無機充填材(a)100質量部に対して、顔料(d)の含有量が好ましくは0.000001~5質量部、より好ましくは0.00001~1質量部となるように使用するのがよい。
【0039】
成形体(X)に顔料(d)を含ませる場合、成形体(X)に含まれる無機充填材(a)と顔料(d)とが均一に分散していることが好ましい。成形体(X)において無機充填材(a)と顔料(d)とを均一に分散させるための両者の混合方法に特に制限はなく、粉末を混合分散するための公知の混合方法を適宜採用することができる。当該混合方法は、乾式法及び湿式法のいずれであってもよいが、無機充填材(a)と顔料(d)とをより均一に混合分散させることができることなどから、溶媒の存在下で無機充填材(a)と顔料(d)とを分散させ、その後に溶媒を留去するなどして除去する方法が好ましい。前記分散は公知の方法を適宜採用して行うことができ、例えば、サンドミル、ビーズミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、超音波破砕機、ホモミキサー、ディゾルバー、ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。好ましい分散条件としては、無機充填材(a)及び顔料(d)の粒子径、使用量;溶媒の種類、使用量;分散機の種類などによって異なり、無機充填材(a)及び顔料(d)の分散状況に応じて、分散時間、撹拌具、回転数等の分散条件を適宜選択すればよい。前記溶媒としては、水及び/又は水と相溶する溶剤が好ましい。前記溶剤としては、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール等)、エーテル類、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)などの有機溶剤や、無機酸類(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等)などの無機溶剤が挙げられる。
【0040】
・重合性単量体(b)
重合性単量体(b)としては、歯科用コンポジットレジン等に使用される公知の重合性単量体を用いることができ、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。ラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、α-シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α-ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸のエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド誘導体;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;モノ-N-ビニル誘導体;スチレン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、カルボン酸のエステル、(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド誘導体がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがさらに好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体の例を以下に示す。
【0041】
(i)一官能性の(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体
例えば、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロリド、10-メルカプトデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
(ii)二官能性の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-〔3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(通称Bis-GMA)、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2-ビス〔3-(メタ)アクリロイルオキシ2-ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ペンチルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
(iii)三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7-ジアクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル-4-オキシヘプタンなどが挙げられる。
【0044】
なお、重合性単量体(b)としては、前記ラジカル重合性単量体の他に、オキシラン化合物、オキセタン化合物等のカチオン重合性単量体を使用することもできる。
【0045】
重合性単量体(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合性単量体(b)は液体状であることが好ましいが、常温で液体状である必要は必ずしもなく、固体状の重合性単量体であっても、その他の液体状の重合性単量体と混合溶解させて使用することができる。
【0046】
重合性単量体(b)の粘度(25℃)は、10Pa・s以下が好ましく、5Pa・s以下がより好ましく、2Pa・s以下がさらに好ましい。一方、2種以上の重合性単量体(b)を混合して用いる場合、又は溶剤に希釈して用いる場合は、個々の重合性単量体(b)の粘度が上記範囲内にある必要はなく、使用される状態(混合・希釈された状態)において、その粘度が上記範囲内にあることが好ましい。
【0047】
・重合開始剤(c)
重合開始剤(c)としては、一般工業界で使用されている重合開始剤を用いることができ、特に歯科用途に用いられる重合開始剤を好ましく用いることができる。重合開始剤(c)としては、例えば、加熱重合開始剤(c-1)、光重合開始剤(c-2)及び化学重合開始剤(c-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用できる。
【0048】
(加熱重合開始剤(c-1))
加熱重合開始剤(c-1)としては、例えば、有機過酸化物類、アゾ化合物類などが挙げられる。
【0049】
有機過酸化物類としては、例えば、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
【0050】
ケトンペルオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどが挙げられる。
【0051】
ヒドロペルオキシドとしては、例えば、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。
【0052】
ジアシルペルオキシドとしては、例えば、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。
【0053】
ジアルキルペルオキシドとしては、例えば、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンなどが挙げられる。
【0054】
ペルオキシケタールとしては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン、4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレリン酸n-ブチルエステルなどが挙げられる。
【0055】
ペルオキシエステルとしては、例えば、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2,4-トリメチルペンチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジ-t-ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシマレエートなどが挙げられる。
【0056】
ペルオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ-3-メトキシペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジアリルペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
【0057】
これらの有機過酸化物類の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましく用いられる。
【0058】
アゾ化合物類としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(イソブチラート)、2,2’-アゾビス(2-アミノプロパン)ジヒドロクロリドなどが挙げられる。
【0059】
(光重合開始剤(c-2))
光重合開始剤(c-2)としては、歯科用硬化性組成物に広く使用されているものを好ましく使用することができ、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ジケトン類、クマリン類などが挙げられる。
【0060】
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ-(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0061】
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,3,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0062】
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩が好ましい。
【0063】
α-ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、9,10-フェナントレンキノン、4,4’-オキシベンジル、アセナフテンキノンなどが挙げられる。これらの中でも、カンファーキノンが好ましい。
【0064】
クマリン類としては、例えば、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-チエニルクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-6-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-8-メトキシクマリン、3-ベンゾイルクマリン、7-メトキシ-3-(p-ニトロベンゾイル)クマリン、3-(p-ニトロベンゾイル)クマリン、3,5-カルボニルビス(7-メトキシクマリン)、3-ベンゾイル-6-ブロモクマリン、3,3’-カルボニルビスクマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3-カルボキシクマリン、3-カルボキシ-7-メトキシクマリン、3-エトキシカルボニル-6-メトキシクマリン、3-エトキシカルボニル-8-メトキシクマリン、3-アセチルベンゾ[f]クマリン、3-ベンゾイル-6-ニトロクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、7-ジメチルアミノ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、7-ジエチルアミノ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、7-ジエチルアミノ-3-(4-ジエチルアミノ)クマリン、7-メトキシ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-(4-ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3-(4-エトキシシンナモイル)-7-メトキシクマリン、3-(4-ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3-(4-ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3-[(3-ジメチルベンゾチアゾール-2-イリデン)アセチル]クマリン、3-[(1-メチルナフト[1,2-d]チアゾール-2-イリデン)アセチル]クマリン、3,3’-カルボニルビス(6-メトキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-アセトキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-ジメチルアミノクマリン)、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジブチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾイミダゾイル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジオクチルアミノ)クマリン、3-アセチル-7-(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)、3,3’-カルボニル-7-ジエチルアミノクマリン-7’-ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10-[3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1-オキソ-2-プロペニル]-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11オン、10-(2-ベンゾチアゾイル)-2,3,6、7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オンなどが挙げられる。
【0065】
これらのクマリン化合物の中でも、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)が好ましい。
【0066】
(化学重合開始剤(c-3))
化学重合開始剤としては、例えば、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。当該レドックス系重合開始剤としては、有機過酸化物類-アミン系、有機過酸化物類-アミン-スルフィン酸(又はその塩)系などを好ましく用いることができる。レドックス系重合開始剤を使用する場合、酸化剤と還元剤とを別々に包装しておき、使用する直前に両者を混合するのが好ましい。
【0067】
レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、例えば、有機過酸化物類などが挙げられる。当該有機過酸化物類としては、公知のものを使用することができ、具体的には、加熱重合開始剤(c-1)において例示した有機過酸化物類を使用することができる。当該有機過酸化物類としては、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましく用いられる。
【0068】
レドックス系重合開始剤の還元剤としては、通常、芳香環に電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンが用いられる。芳香環に電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジイソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリンなどが挙げられる。
【0069】
重合開始剤(c)は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。特に重合開始剤(c)として、加熱重合開始剤(c-1)と光重合開始剤(c-2)とを併用することが好ましく、ジアシルペルオキシドと(ビス)アシルホスフィンオキシド類とを併用することがより好ましい。
【0070】
重合開始剤(c)の使用量は特に限定されないが、硬化性等の観点から、重合性単量体(b)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。重合開始剤(c)の使用量が上記下限値以上であることにより、重合開始剤自体の重合性能が低い場合であっても、重合が十分に進行して得られるミルブランク部ひいてはそれから得られる歯科用補綴物の強度が向上する。一方、重合開始剤(c)の使用量は、重合性単量体(b)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。重合開始剤(c)の使用量が上記上限値以下であることにより、重合開始剤(c)の析出を抑制することができる。
【0071】
・重合促進剤(e)
重合開始剤(c)を使用するにあたっては、重合促進剤(e)を併用してもよい。当該重合促進剤(e)としては、一般工業界で使用されている重合促進剤を用いることができ、特に歯科用途に用いられる重合促進剤を好ましく用いることができる。重合促進剤(e)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
光重合開始剤(c-2)に好適な重合促進剤(e)としては、例えば、第3級アミン、アルデヒド類、チオール類、スルフィン酸及びその塩などが挙げられる。光重合開始剤(c-2)を使用する際に重合促進剤(e)を併用することで、光重合をより短時間で効率的に行うことができる。
【0073】
光重合開始剤(c-2)の重合促進剤(e)として用いられる第3級アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジイソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸(2-メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸ブチル、N-メチルジエタノールアミン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレートなどが挙げられる。
【0074】
光重合開始剤(c-2)の重合促進剤(e)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。
【0075】
光重合開始剤(c-2)の重合促進剤(e)として用いられるチオール基化合物としては、例えば、2-メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸などが挙げられる。
【0076】
光重合開始剤(c-2)の重合促進剤(e)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p-トルエンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸カリウム、p-トルエンスルフィン酸カルシウム、p-トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0077】
また化学重合開始剤(c-3)に好適な重合促進剤(e)としては、例えば、アミン類、スルフィン酸及びその塩、銅化合物、スズ化合物などが挙げられる。
【0078】
化学重合開始剤(c-3)の重合促進剤(e)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香環に電子吸引性基を有する芳香族アミンに分けられる。
前記脂肪族アミンとしては、例えば、n-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N-メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンがより好ましい。
【0079】
前記芳香環に電子吸引性基を有する芳香族アミンとしては、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸ブチル等の第3級芳香族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、優れた硬化性を付与できる観点から、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル及び4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0080】
化学重合開始剤(c-3)の重合促進剤(e)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、上記した光重合開始剤(c-2)の重合促進剤(e)として例示したものなどが挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
【0081】
化学重合開始剤(c-3)の重合促進剤(e)として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅などが挙げられる。
【0082】
化学重合開始剤(c-3)の重合促進剤(e)として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ-n-ブチル錫ジマレエート、ジ-n-オクチル錫ジマレエート、ジ-n-オクチル錫ジラウレート、ジ-n-ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ-n-オクチル錫ジラウレート及びジ-n-ブチル錫ジラウレートである。
【0083】
目的の層形状を有する成形体(X)に組成物(Y)を含浸させる方法に特に制限はなく、両者を接触させることにより行うことができる。当該含浸は常圧下で行ってもよいが、減圧下で行うことにより、より効果的に含浸を行うことができる。含浸後には、必要に応じて、熱風乾燥機を用いるなどして乾燥することができる。
【0084】
上記のようにして成形体(X)に組成物(Y)を含浸させた後、重合硬化させることにより本発明に係るミルブランク部を形成することができる。また、ペースト(Z)を用いてミルブランク部を形成する場合にも、目的の層形状とした後、重合硬化させることにより本発明に係るミルブランク部を形成することができる。
【0085】
重合硬化の方法に特に制限はなく、使用される重合開始剤(c)の種類などに応じて、加熱重合、光重合、化学重合などの重合方法を適宜採用することができる。加熱重合する場合、加熱温度に特に制限はなく、例えば40~150℃の範囲内とすることができる。また、加熱時間にも特に制限はなく、例えば1~70時間の範囲内とすることができる。一方、光重合する場合、用いられる光に特に制限はなく、可視光であっても、紫外線であっても、その他の光であってもよい。光重合の時間にも特に制限はなく、例えば、1~20分間の範囲内とすることができる。
【0086】
〔ミルブランク〕
本発明のミルブランクは前記ミルブランク部を有し、当該ミルブランク部と支持部とを有することが好ましい。当該支持部によってミルブランクをミリング装置に固定することができる。支持部をミルブランク部に取り付ける方法に特に制限はなく、例えば、接着剤等によりミルブランク部と支持部とを接着することができる。
【0087】
本発明のミルブランクは歯科用途に使用され、例えば、歯科用CAD/CAMシステムでの切削加工による、インレー、アンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ、支台歯、歯科用ポスト、義歯、義歯床、インプラント部材(フィクスチャー、アバットメント)等の歯科用補綴物の作製などに好適に用いることができる。本発明のミルブランクから歯科用補綴物を作製する方法に特に制限はなく、公知の方法を適宜採用することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0089】
〔製造例1〕 組成物(Y)の調製
重合性単量体(b)としての[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(UDMA)70質量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)30質量部に、加熱重合開始剤(c-1)であるベンゾイルペルオキシド1質量部を溶解させることによって、重合性単量体(b)を含む組成物(Y)を調製した。
【0090】
〔製造例2〕 無機充填材(a)を含む粉体の調製
市販の無機超微粒子(日本アエロジル株式会社製、アエロジル(登録商標)OX 50、平均一次粒子径40nm、BET比表面積50m2/g)100gを水500mLに分散し、これにγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7g、及び微量の顔料を加えて室温で2時間撹拌した。顔料としては、日局酸化チタン、酸化鉄黒、酸化鉄赤(ベンガラ)及び酸化鉄黄を用いた。これをスプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社製 ミニスプレードライヤー B290)を用いて噴霧乾燥した後、90℃で3時間乾燥することによって、表面処理された無機充填材(a)を含む粉体を得た。顔料の微量配合量を変化させることにより、エナメル層に対応する粉体(1)及び象牙質層に対応する粉体(2)を得た。得られた2つの粉体(1)及び粉体(2)を、それぞれ、粉体(1):粉体(2)(質量比)が60:40、20:80、及び50:50となるように乾式混合し、中間層用の粉体(3)、粉体(4)及び粉体(5)をそれぞれ得た。
【0091】
〔実施例1〕 4層の積層構造を有するミルブランク部(上下湾曲)の製造
粉体(1)、粉体(3)、粉体(4)及び粉体(2)を、それぞれ1.09gずつ、14.7mm×18.2mmの長方形のプレス用金型の下パンチ棒の上に、この順で順次充填して積層体とした。この段階で各層はいずれも平面状とした。タッピングにより各粉体をならした。次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、金型枠を支持台に固定せずに金型枠に対する上パンチと下パンチのそれぞれの相対位置が同速で変化するようにプレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:60MPa、時間:1分間)を行った。その後、上パンチ及び下パンチを金型から外し、4層の層形状を有する成形体(X-1)を取り出した。
その後、前記成形体(X-1)をポリエチレン製の袋体の内部に設置し、製造例1で得られた重合性単量体(b)を含む組成物(Y)を袋体の内部に導入し、袋体内部を減圧することによって、成形体(X-1)に組成物(Y)を含浸させた。これを減圧下、室温で1日間静置した後、熱風乾燥機を用いて55℃で18時間加熱した。
その後、これに対して110℃で3時間加熱処理を行って重合性単量体(b)を重合硬化させて目的とするミルブランク部(1)を得た。このミルブランク部(1)は直方体状で4層の積層構造を有し、そのサイズは14.9mm×18.4mm×15.5mmであった。また、このミルブランク部(1)は、仮想第一対称面と、これに垂直な仮想第二対称面とを有し、これらの双方において、
図3C及び
図4Cに示されるような湾曲した界面を有していた。
【0092】
〔実施例2〕 4層の積層構造を有するミルブランク部(一方向湾曲)の製造
実施例1において、金型枠を支持台に固定し金型枠と下パンチとの相対位置を変化させずに上パンチの相対移動のみで一軸プレスしたこと以外は実施例1と同様にして、4層の層形状を有する成形体(X-2)を得た。この成形体(X-2)を用いて、実施例1と同様の方法で、目的とするミルブランク部(2)を得た。このミルブランク部(2)は直方体状で4層の積層構造を有し、そのサイズは14.9mm×18.4mm×15.5mmであった。また、このミルブランク部(2)は、仮想第一対称面と、これに垂直な仮想第二対称面とを有し、これらの双方において、
図3E及び
図4Eに示されるような湾曲した界面を有していた。
【0093】
〔実施例3〕 3層の積層構造を有するミルブランク部(上下湾曲)の製造
粉体(1)、粉体(5)及び粉体(2)を、それぞれ1.45gずつ、14.7mm×18.2mmの長方形のプレス用金型の下パンチ棒の上に、この順で順次充填して積層体とした。この段階で各層はいずれも平面状とした。タッピングにより各粉体をならした。次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、金型枠を支持台に固定せずに金型枠に対する上パンチと下パンチのそれぞれの相対位置が同速で変化するようにプレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:60MPa、時間:1分間)を行った。その後、上パンチ及び下パンチを金型から外し、3層の層形状を有する成形体(X-3)を取り出した。
得られた成形体(X-3)を用いて、実施例1と同様の方法で、目的とするミルブランク部(3)を得た。このミルブランク部(3)は直方体状で3層の積層構造を有し、そのサイズは14.9mm×18.4mm×15.5mmであった。また、このミルブランク部(3)は、仮想第一対称面と、これに垂直な仮想第二対称面とを有し、これらの双方において、
図3B及び
図4Bに示されるような湾曲した界面を有していた。
【0094】
〔実施例4〕 3層の積層構造を有するミルブランク部(一方向湾曲)の製造
実施例3において、金型枠を支持台に固定し金型枠と下パンチとの相対位置を変化させずに上パンチの相対移動のみで一軸プレスしたこと以外は実施例3と同様にして、3層の層形状を有する成形体(X-4)を得た。この成形体(X-4)を用いて、実施例1と同様の方法で、目的とするミルブランク部(4)を得た。このミルブランク部(4)は直方体状で3層の積層構造を有し、そのサイズは14.9mm×18.4mm×15.5mmであった。また、このミルブランク部(4)は、仮想第一対称面と、これに垂直な仮想第二対称面とを有し、これらの双方において、
図3D及び
図4Dに示されるような湾曲した界面を有していた。
【0095】
〔実施例5〕 2層の積層構造を有するミルブランク部(一方向湾曲)の製造
粉体(1)及び粉体(2)を、それぞれ2.18gずつ、14.7mm×18.2mmの長方形のプレス用金型の下パンチ棒の上に、この順で順次充填して積層体とした。この段階で各層はいずれも平面状とした。タッピングにより各粉体をならした。次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、金型枠を支持台に固定した。この状態で、プレス機を用いて、金型枠と下パンチとの相対位置を変化させずに上パンチの相対移動のみで一軸プレス(プレス圧:60MPa、時間:1分間)を行った。その後、上パンチ及び下パンチを金型から外し、2層の層形状を有する成形体(X-5)を取り出した。
得られた成形体(X-5)を用いて、実施例1と同様の方法で、目的とするミルブランク部(5)を得た。このミルブランク部(5)は直方体状で2層の積層構造を有し、そのサイズは14.9mm×18.4mm×15.5mmであった。また、このミルブランク部(5)は、仮想第一対称面と、これに垂直な仮想第二対称面とを有し、これらの双方において、
図3A及び
図4Aに示されるような湾曲した界面を有していた。
【0096】
〔比較例1〕 4層の積層構造を有するミルブランク部の製造
粉体(1)1.09gを、14.7mm×18.2mmの長方形のプレス用金型の下パンチ棒の上に充填し、タッピングにより粉体をならした。次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:15MPa)を行った。その後、上パンチ棒を取り除き、粉体(3)1.09gを、一軸プレスを行った上記粉体(1)の上に充填し、次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:15MPa)を行った。その後、上パンチ棒を取り除き、粉体(4)1.09gを、同様に一軸プレスを行った上記粉体(3)の上に充填し、次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:15MPa)を行った。その後、上パンチ棒を取り除き、粉体(2)1.09gを、同様に一軸プレスを行った上記粉体(4)の上に充填し、次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:60MPa、時間:1分間)を行った。その後、上パンチ及び下パンチを金型から外し、4層の層形状を有する成形体(X-6)を取り出した。
得られた成形体(X-6)を用いて、実施例1と同様の方法で、目的とするミルブランク部(6)を得た。このミルブランク部(6)は直方体状で4層の積層構造を有し、そのサイズは14.9mm×18.4mm×15.5mmであった。
【0097】
〔比較例2〕 3層の積層構造を有するミルブランク部の製造
粉体(1)1.45gを、14.7×18.2mmの長方形のプレス用金型の下パンチ棒の上に充填し、タッピングにより粉体をならした。次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:15MPa)を行った。その後、上パンチ棒を取り除き、粉体(5)1.45gを、一軸プレスを行った上記粉体(1)の上に充填し、次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:15MPa)を行った。その後、上パンチ棒を取り除き、粉体(2)1.45gを、同様に一軸プレスを行った上記粉体(5)の上に充填し、次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:60MPa、時間:1分間)を行った。その後、上パンチ及び下パンチを金型から外し、3層の層形状を有する成形体(X-7)を取り出した。
得られた成形体(X-7)を用いて、実施例1と同様の方法で、目的とするミルブランク部(7)を得た。このミルブランク部(7)は直方体状で3層の積層構造を有し、そのサイズは14.9mm×18.4mm×15.5mmであった。
【0098】
〔比較例3〕 2層の積層構造を有するミルブランク部の製造
粉体(1)2.18gを、14.7×18.2mmの長方形のプレス用金型の下パンチ棒の上に充填し、タッピングにより粉体をならした。次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:15MPa)を行った。その後、上パンチ棒を取り除き、粉体(2)2.18gを、一軸プレスを行った上記粉体(1)の上に充填し、次に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:60MPa、時間:1分間)を行った。その後、上パンチ及び下パンチを金型から外し、2層の層形状を有する成形体(X-8)を取り出した。
得られた成形体(X-8)を用いて、実施例1と同様の方法で、目的とするミルブランク部(8)を得た。このミルブランク部(8)は直方体状で2層の積層構造を有し、そのサイズは14.9mm×18.4mm×15.5mmであった。
【0099】
[圧縮強さの測定]
各実施例及び比較例で得られたミルブランク部の圧縮強さを以下の方法により測定した。まず、14.9mm×18.4mm×15.5mmの直方体状のミルブランク部の中央部(
図5の圧縮強さの欄で破線で図示した部分)から、3mm×3mm×3mmの立方体の試験片をダイヤモンドカッターにより切り出した。該試験片について、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を用いて、クロスヘッドスピードを2mm/分に設定して、その圧縮強さを測定した。なお、層が積層される方向から力が加わるように試験片をセットして上記の測定を行った。測定は同様に作製した10個のミルブランク部から得た各試験片について行い、その平均値を求めた。結果を
図5に示す。
【0100】
2層以上の積層構造を有するミルブランク部は各層の集合体であるため、層が積層される方向からの力(典型的には歯科用補綴物における咬合面からの力)は層から層へ伝わっていくが、層間に基づく界面が湾曲している場合には、湾曲している方向、つまりミルブランク部の外側、ひいてはミルブランク部から得られるクラウン等の歯科用補綴物の外側へ向かって力を分散させることができる。また湾曲した界面を有する側面(P)を複数有し、当該側面(P)のうちの少なくとも2つが互いに平行でないことにより、一方向のみならず他方向(好ましくはそれと直交する方向)にも力を分散させることができる。そのため、本発明の構成を有するミルブランク部、ひいてはそれから得られる歯科用補綴物は高い圧縮強さを示し、咬合における機械的強度を向上させることができると考えられる。また、層間に基づく界面の湾曲による力の分散は、界面の三次元的な対称性が高いほどより有効に働くことができると考えられため、実施例1~5のミルブランク部(1)~(5)では、より高い圧縮強さを示しており、特に上下両側から湾曲させた層形状を有する実施例1及び3のミルブランク部(1)及び(3)ではこの効果が顕著であった。上記圧縮強さは、600MPa以上であることが好ましく、620MPa以上であることがより好ましく、640MPa以上であることがさらに好ましい。上記圧縮強さの上限に特に制限はないが、上記圧縮強さは、例えば800MPa以下とすることができる。
【0101】
[色度の測定]
各実施例及び比較例で得られた、14.9mm×18.4mm×15.5mmの直方体状のミルブランク部における長辺方向の一方の端部より7mmの位置(
図5において、色度の欄で破線で図示した部分)から、14.9mm×15.5mm、厚さ1.6mmの色度板をダイヤモンドカッター(ISOMET-1000)を用いて切り出し、耐水研磨紙(#1000、#2000、#3000)3枚を用いて厚さ1.2mmに仕上げた。作製した色度板を試験片とし、界面を横断するように1.4mm間隔で直線状に配列した11箇所を測定地点として選定し(第1測定地点~第11測定地点)、これらの測定地点における各色度を色差計(日本電色工業株式会社、分光色差計SE 6000、オプティカルファイバーφ4mm)を用いて測定し、各測定地点におけるΔL
*、a
*及びb
*の各値を求めた。なお、a
*及びb
*は分光色差計にて測定したCIE 1976表色系(L
*a
*b
*色空間;以下、「L
*a
*b
*表色系」と称する)でのクロマティクネス指数であり、L
*は明度指数である。△L
*は透明性を表し、下記式;
△L
*=L
*W-L
*B
(式中、L
*Wは、白背景で測定されるL
*a
*b
*表色系における明度指数L
*を表し、L
*Bは、黒背景で測定されるL
*a
*b
*表色系における明度指数L
*を表す。)
によって算出される値である。また、求めた各測定地点におけるΔL
*、a
*及びb
*の各値を用いて、隣り合う2つの測定地点間における色度変化(ΔE
*)を求めた。なお、ΔE
*は、下記式;
ΔE
*=〔(ΔΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2〕
1/2
によって算出した。
【0102】
実施例1~5及び比較例1~3のミルブランク部(1)~(8)についての色度の測定結果を、それぞれ、
図6~
図13に示す。なお、
図6~
図10における
図Aは測定地点を模式的に示しており、
図6~
図13における
図B~
図Eの各グラフの横軸は、11箇所の測定地点の番号(
図Eについては、2つの測定地点のうちの小さい方の番号)を示す。
実施例1~5に係る
図6~
図10に示される色度の測定結果は、比較例1~3に係る
図11~
図13に示される色度の測定結果に比べて色度の変化が緩やかであり、実施例1~5に係るミルブランク部(1)~(5)を有するミルブランクを用いることによって、より天然歯の色調に近い外観を有する歯科用補綴物を製造できることが分かる。
【0103】
また、実施例1~5のミルブランク部(1)~(5)のように、湾曲した界面を有する側面(P)を複数(4つ)有し、当該側面(P)のうちの少なくとも2つが互いに平行でないことにより、広範な部分から所望の形状を切り出すことができて加工性に優れたミルブランクとすることができた。さらに、このような構成を有するミルブランクは、その製造が容易でミルブランク自体を簡便に製造することができた。
【符号の説明】
【0104】
1 色度の測定開始位置(第1測定地点)
11 色度の測定終了位置(第11測定地点)
2 仮想第一対称面
3 仮想第二対称面
4 湾曲した界面
5 ミルブランク部