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特許7130644高温溶液重合プロセスでポリエチレンコポリマーを製造する為の新規な触媒系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】高温溶液重合プロセスでポリエチレンコポリマーを製造する為の新規な触媒系
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20220829BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F210/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019531971
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017082434
(87)【国際公開番号】W WO2018108918
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】16204328.5
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】アジェラル,ノウレディン
(72)【発明者】
【氏名】ファイト,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】レスコニ,ルイジ
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-008711(JP,A)
【文献】特開2015-147862(JP,A)
【文献】特表2009-504901(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4-246、C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温溶液プロセスでエチレンコポリマーを製造する為の触媒系であって、該触媒系は、
(i)下記の式(I)のメタロセン錯体、
【化1】
ここで、
Mは、Hf、又はZrとの混合物であり、但し、式(I)の錯体の50モル%超がM=Hfを有し、
Xは、シグマリガンドであり、
Rは、互いに同じであるか又は異なっており、且つ飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C10アルキル、C6~C10アリール、C4~C10ヘテロアリール、C6~C20アルキルアリール又はC6~C20アリールアルキル基であり得、それらは2つまでのヘテロ原子又はケイ素原子を含んでいてもよく
R1は、C6~C10アリール又はC6~C20アルキルアリール基、ここで、それらは2つまでのヘテロ原子又はケイ素原子含んでいてもよい、又はC4~C10ヘテロアリール基であり、
R2は、アルキル置換基をベータ位有していてもよい、下記の式(II)のC4~C20シクロアルキル基であり、
【化2】
(II)
ここで、R’は、互いに同じであるか又は異なり得、且つ水素原子であり得、又はRとして定義され、及びnは1~17であり、
並びに、
(ii)ホウ素含有助触媒
を含む、上記触媒系。
【請求項2】
式(I)において、
MはHfであり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、R3、OR3、OSO2CF3、OCOR3、SR3、NR3 2又はPR3 2基であり、ここで、R3は、直鎖状若しくは分岐状の、環状又は非環状のC1~C20-アルキル、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C6~C20-アリール、C7~C20-アルキルアリール又はC7~C20-アリールアルキル基であり、14~16族に属するヘテロ原子含んでいてもよく、又はSiR3 3、SiHR3 2又はSiH2R3であり、
Rは、互いに同じであるか又は異なっており且つ飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル、C6~C10アリール、C6~C20アルキルアリール又はC6~C20アリールアルキル基であり得、それらはヘテロ原子又はケイ素原子を含まず、
R1は、C6~C10アリール又はC6~C12アルキルアリール基、それらはヘテロ原子又はケイ素原子を含まず、又はC4~C8ヘテロアリール基であり、
R2は、式(II)のC4~C10シクロアルキル基であり、
ここで、R’は、互いに同じであるか又は異なり得、且つ水素原子、又は飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル又はC6-C10アリールであり得、及びnは1~7である、
請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
式(I)において、
MはHfであり、
Xは互いに独立して、ハロゲン原子又はR3若しくはOR3基であり、ここで、R3は、C1~6-アルキル、フェニル又はベンジル基であり、
Rは互いに同じであり、且つ飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル又はC6~C10アリールであり
R1は、非置換のフェニル、又は1又は2のC1~C6アルキル基によって置換されたフェニルであり、
R2は、式(II)のC4~C10シクロアルキル基であり、
ここで、全てのR’は、互いに同じであるか又は異なり得、且つ水素原子、又は飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C4アルキルであり得、及びnは1~7である、
請求項2に記載の触媒系。
【請求項4】
式(I)において、
MはHfであり、
Xは互いに独立して、メチル、ベンジル又は塩素基であり、
Rは互いに同じであり、且つ全てC1アルキル基であり、
R1は、フェニル、パラ-トリル又はパラ-イソプロピルフェニルであり、
R2は、式(II)のC4~C8シクロアルキル基であり、
ここで、全てのR’は水素原子であり、及びnは1~5である、
請求項2に記載の触媒系。
【請求項5】
式(I)のメタロセン錯体が、
(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジベンジル、
(フェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
(フェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
(フェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジベンジル、
(フェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
(フェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
(4-イソプロピルフェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
(4-イソプロピルフェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
(4-イソプロピルフェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
(4-イソプロピルフェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
(4-イソプロピルフェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
(4-イソプロピルフェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
(3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
(3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
(3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
(3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
(3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、若しくは
(3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル
又は、対応するジベンジル錯体
からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒系。
【請求項6】
該触媒系が均一系又は非担持型の触媒系であり、それは、固体として又は溶液としての式(I)のメタロセン錯体を、炭化水素希釈剤中の又は芳香族溶媒中に予め溶解された助触媒と接触させることによって調製され得、又はそれは、上記触媒成分を重合反応器内に直接に逐次添加することによって形成され得る、請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒系。
【請求項7】
上記ホウ素含有助触媒が下記の式のアニオンを含み、
(Z)4B- (III)
ここで、Zは置換されていてもよいフェニル誘導体であり、該置換基はハロ-C1~6-アルキル又はハロ基であ
請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒系。
【請求項8】
上記ホウ素含有助触媒が、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
である、請求項に記載の触媒系。
【請求項9】
エチレンとC4~10アルファー-オレフィンコモノマーとの共重合の為に、100℃超の温度での高温溶液プロセスで、請求項1~のいずれか1項に記載の触媒系を使用する方法。
【請求項10】
エチレンコポリマーの調製の為の方法であって、触媒の存在下で、100℃超の温度での高温溶液プロセスで、エチレンとC4~10アルファー-オレフィンコモノマーとを重合することを含み、該触媒は
(i)請求項1~5のいずれか1項に記載の、式(I)のメタロセン錯体、及び
(ii)ホウ素含有助触媒
を含む、上記方法。
【請求項11】
上記重合は、
a)少なくとも110℃の重合温度で、
b)10~100バールの範囲の圧力で、及び
c)非置換であるか又はC1~4アルキル基によって置換されていてもよいC5~12-炭化水素の群から選択される液体炭化水素溶媒中で
行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の重合方法によって得られたエチレンコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温溶液重合プロセスでポリエチレンコポリマーを製造することができる新規な触媒系に関する。該新規な触媒系は、ホウ素系助触媒とともに、シクロペンタジエニル(Cp)リガンド、フルオレニル(Flu)リガンド及び2つの該リガンドを連結する共有結合架橋を含む、特異的に置換された架橋ハフノセン触媒錯体を含む。この組み合わせは、高い溶解性、分子量能力及びコモノマー取り込み能力と組み合わせて高い生産性を有する触媒系を著しくもたらす。
【背景技術】
【0002】
メタロセン触媒は、長年にわたり、ポリオレフィンを製造する為に使用されてきている。数え切れないほどの学術文献及び特許公報が、オレフィン重合におけるこれら触媒の使用を記載している。メタロセンは現在工業的に使用されており、且つポリプロピレン並びにポリエチレンはしばしば、異なる置換パターンを有するシクロペンタジエニル系触媒系を使用して製造されている。
【0003】
これらメタロセン触媒の幾つかは、ポリエチレンのホモポリマー又はコポリマーを製造する為の溶液重合における使用について記載されている。
【0004】
例えば、国際公開第2000/024792号パンフレットは、i)少なくとも1つの、非置換シクロペンタジエニルリガンド、又は芳香族縮合環で置換されたシクロペンタジエニルリガンドであって、当該リガンド上に追加の置換基を有していないシクロペンタジエニルリガンド、ii)1つの、置換された又は非置換の、芳香族縮合環で置換されたシクロペンタジエニルリガンド、及びiii)上記の2つのシクロペンタジエニルリガンドを結合する共有結合架橋を有するA)ビスシクロペンタジエニルハフニウム有機金属化合物から誘導されるハフノセン触媒錯体を含む触媒系を記載する。
【0005】
この架橋は、2つのアリール基で置換された単一の炭素であることができ、これらのアリール基のそれぞれは、C1~C20ヒドロカルビル又はヒドロカルビルシリル基で置換され、ここで、これらの置換基の少なくとも1つは直鎖C3以上の置換基である。
【0006】
加えて、該触媒系は活性化助触媒を含み、それは好ましくは、ハロゲン化されたテトラアリールで置換された13族アニオンを含む前駆体イオン化合物である。
【0007】
また、欧州特許出願2511305号は、架橋されたCp-Fluメタロセン錯体に関する。実施例に示されているC系架橋は置換メチレン架橋であり、それにより、置換基は、互いに同じであるか(例えば、ジメチル、ジフェニル、ジベンジルなど)、又は互いに結合して環を形成する(例えば、シクロヘキシリデン)。
【0008】
Yano及びその同僚(下記の文献1~4)は、様々なCp-Fluメタロセンとの高温エチレン単独重合及び共重合に対するリガンド構造の影響を調べた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】1.A.Yano,M.Sone,S.Hasegawa,M.Sato,A.Akimoto,Macromol.Chem.Phys.1999,200,933.
【文献】2.A.Yano,S.Hasegawa,T.Kaneko,M.Sone,M.Sato,A.Akimoto,Macromol.Chem.Phys.1999,200,1542.
【文献】3.A.Yano,M.Sone,S.Yamada,S.Hasegawa,M.Sato,A.Akimoto,Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 2000,156,133.
【文献】4.S.Hasegawa,M.Sone,M.Tanabiki,M.Sato,A.Yano,Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry 2000,38,4641.
【0010】
この研究からの主な教示は下記の通りである:
i) Zr及びHf類似体錯体の両方について、C2単独重合及びC2/C6共重合において、Ph2C架橋はMePhC又はMe2C架橋と比較してより高い活性及びより高いMwを提供する、
ii) Cpリガンドに対する置換基の付加は、触媒性能を有意に変更しない、
iii) 金属としてZrの場合、C2/C6共重合において、Fluリガンドの2,7位におけるメチル又はtert-ブチル置換基の付加は、コポリマーの分子量を増加するが、コモノマー反応性にも触媒生産性にも影響を及ぼさない、
iv) 金属としてHfの場合、C2/C6共重合において、Fluリガンドの2,7位におけるtert-ブチル置換基の付加は、触媒生産性をわずかに増加するが、コポリマーの分子量及びコモノマー反応性はほとんど影響を及ぼさない、
v) Zr錯体は、Hf錯体よりも活性が高いが、Ph2C(Cp)(Flu)ZrCl2錯体は、そのHf類似体と比較してより低いコポリマーMwを与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の引用された文献及び特許出願のいずれにおいても、触媒系の高い溶解性、分子量能力及びコモノマー取り込み能力との組み合わせにおける高い生産性は言及されていない。
【0012】
その上、上記の引用された文献及び特許出願は、アリール基によって置換されたC原子からなる架橋の立体障害の影響を扱っていないが、ハフニウム錯体の触媒性能に対するより高い重合温度での非アリール置換基である第2の置換基の立体障害の影響を扱っている。
【0013】
しかしながら、エチレンコポリマーを製造する為の方法が効率的である為には、使用される触媒系が一組の非常に厳格な要件を満たすことが重要である。より高いコモノマー(コモノマー取り込み)、触媒分子量能力(所与のポリマー密度、モノマー濃度及び重合温度に対して最低の達成可能なメルトインデックス)及び触媒熱安定性の為の反応性は、(可能な限り少ない量の触媒で最大限のポリエチレンを製造する為に)~0.850g/cm3までの密度及び0.3g/10分までのメルトインデックスMI2(190℃,2.16kg)を有し且つ高い生産性を有するコポリマーの製造を確実にしなければならない。
【0014】
脂肪族炭化水素における遷移金属錯体の溶解性がまた、溶液プロセスにおける錯体の最適な使用を確実にするために重要である。
【0015】
多くの研究がメタロセン触媒の分野において行われてきたけれども、所望の特性を有するポリマーを製造することができ且つそれは高い溶解性、分子量能力及びコモノマー取り込み能力と組み合わされた高い生産性を有する、エチレン共重合の為の新規な触媒系を見つける必要がまだある。
【0016】
その結果、本発明者等は、生産性、溶解性、分子量能力及びコモノマー取り込み能力に関して、上記された重合触媒系よりも優れた重合挙動を有する新規な触媒系を開発することを試みた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記に開示された問題を解決することができる新しいクラスのオレフィン重合触媒系を見出した。特に、本発明は、特別なメタロセン錯体の使用をホウ素助触媒と組み合わせる。
【0018】
すなわち、一つの観点から見ると、本発明は、高温溶液プロセスで、エチレンコポリマーを生成する為の触媒系であって、該触媒系は、
(i)下記の式(I)のメタロセン錯体
【0019】
【化1】
【0020】
ここで、
Mは、Hf、又はZrとの混合物であり、但し、式(I)の錯体の50モル%超がM=Hfを有し、
Xは、シグマリガンドであり、
Rは、互いに同じであるか又は異なっており、且つ飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C10アルキル、C6~C10アリール、C4~C10ヘテロアリール、C6~C20アルキルアリール又はC6~C20アリールアルキル基であり得、それらは2つまでのヘテロ原子又はケイ素原子を任意的に含み得、
R1は、C6~C10アリール又はC6~C20アルキルアリール基、ここで、それらは2つまでのヘテロ原子又はケイ素原子を任意的に含んでいてもよい、又はC4~C10ヘテロアリール基であり、
R2は、アルキル置換基をベータ位に任意的に有していてもよい、下記の式(II)のC4~C20シクロアルキル基であり、
【0021】
【化2】
ここで、R’は、互いに同じであるか又は異なり得、且つ水素原子であり得、又はRとして定義され、及びnは1~17であり、
並びに、
(ii)ホウ素含有助触媒
を含む、上記触媒系に関する。
【0022】
他の観点から見ると、本発明はエチレンコポリマーの調製の為の方法であって、触媒の存在下で、100℃超の温度での高温溶液プロセスで、エチレンとC4~10アルファー-オレフィンコモノマーとを重合することを含み、該触媒は、
(i)上記に定義された通りの式(I)のメタロセン錯体、及び
(ii)ホウ素含有助触媒
を含む、上記方法を提供する。
【0023】
さらに他の観点から見ると、本発明は、上記に定義された通りの方法によって製造されたエチレンコポリマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、助触媒としてボレートABを使用して活性化した場合の生産性の結果を示す。
図2図2は、同じC8含量(又は同じ平均C8/C2)について、分子量能力及び反応性に有意な明確な違いが、3つの錯体の間で観察されることができなかったことを示す。
図3図3は、同じC8含量(又は同じ平均C8/C2)について、分子量能力及び反応性に有意な明確な違いが、3つの錯体の間で観察されることができなかったことを示す。
図4図4は、同じC8含量(又は同じ平均C8/C2)について、分子量能力及び反応性に有意な明確な違いが、3つの錯体の間で観察されることができなかったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
メタロセン錯体
エチレンコポリマーの製造の為に使用されるシングルサイトメタロセン錯体、特に本発明において特定された式(I)によって定義された錯体、は、非対称性であり、それは、該メタロセン錯体を形成する2つのリガンドが異なっていることを意味する。
【0026】
本発明は、下記の式(I)のメタロセン錯体によってもたらされることができる。
【0027】
【化3】
【0028】
ここで、
Mは、Hf、又はZrとの混合物であり、但し、式(I)の錯体の50モル%超がM=Hfを有し、
Xは、シグマリガンドであり、
Rは、互いに同じであるか又は異なっており、且つ飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C10アルキル、C5~C10アリール、C6~C20アルキルアリール又はC6~C20アリールアルキル基であり得、それらは2つまでのヘテロ原子又はケイ素原子を任意的に含み得、
R1は、C6~C10アリール又はC6~C20アルキルアリール基、ここで、それらは2つまでのヘテロ原子又はケイ素原子を任意的に含んでいてもよい、又はC4~C10ヘテロアリール基であり、
R2は、アルキル置換基をベータ位に任意的に有していてもよい、下記の式(II)のC4~C20シクロアルキル基であり、
【0029】
【化4】
【0030】
ここで、R’は、互いに同じであるか又は異なり得、且つ水素原子であり得、又はRとして定義され、及びnは1~17である。
【0031】
式(I)において、各Xは同じであっても異なっていてもよく、シグマリガンド、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、R3、OR3、OSO2CF3、OCOR3、SR3、NR3 2又はPR3 2基であり、ここで、ここで、Rは、直鎖状若しくは分岐状の、環状又は非環状のC1~C20-アルキル、C2~C20-アルケニル、C2~C20-アルキニル、C6~C20-アリール、C7~C20-アルキルアリール又はC7~C20-アリールアルキル基、であり、14~16族に属するヘテロ原子を任意的に含んでいてもよく、又はSiR3 3、SiHR3 2又はSiH2R3である。R3は好ましくは、C1-6-アルキル、フェニル又はベンジル基である。
【0032】
語 ハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード基、好ましくはクロロ基、を包含する。
【0033】
より好ましくは、各Xは互いに独立して、ハロゲン原子又はR3若しくはOR3基であり、ここで、R3は、C16-アルキル、フェニル又はベンジル基である。
【0034】
より好ましくは、Xは、メチル、ベンジル又は塩素基である。好ましくは、両方のX基は同じである。
【0035】
Mは好ましくは、Hfである。
【0036】
Rは、互いに同じであるか又は異なっており、且つ飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C10アルキル、C5~C10アリール、C6~C20アルキルアリール又はC6~C20アリールアルキル基であり得、それらは2つまでのヘテロ原子又はケイ素原子を任意的に含み得る。
【0037】
好ましくは、Rは、互いに同じであるか又は異なっており、且つ飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル、C6~C10アリール、C6~C20アルキルアリール又はC6~C20アリールアルキル基であり得、それらはヘテロ原子又はケイ素原子を含まない。
【0038】
より好ましくは、全てのRは、は同じであり、且つ飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル又はC6~C10アリールであり、及びさらにより好ましくは全てのRは互いに同じであり、且つ飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキルである。
【0039】
より好ましくは、全てのRは互いに同じであり、且つ全てC1アルキル基である。
【0040】
R1は、C6~C10アリール又はC6~C20アルキルアリール基、ここで、それらは2つまでのヘテロ原子又はケイ素原子を任意的に含んでいてもよい、又はC4~C10ヘテロアリール基又はC4~C10ヘテロアリール基である。C6~C20アルキルアリール基は、互いに同じであっても異なっていてもよい1以上のアルキル基によって置換されるC6~C10アリール基であることを意味し、ここで、アルキル基置換基中のC原子の数は、C6~C20アルキルアリール基となる範囲である。
【0041】
R1についての非制限的な例は、フェニル、パラ-トリル、パラ-イソプロピルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、ベータ-ナフチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル、4-ピリジル、ベータ-チオフェニル、4-メチル-チオフェニルなどである。
【0042】
好ましくは、R1は、C6~C10アリール又はC6~C12アルキルアリール基であり、ここで、それらは2つまでのヘテロ原子又はケイ素原子を含まない、又はC4-C8ヘテロアリール基である。
【0043】
より好ましくは、R1は、非置換フェニル(すなわち、C6アリール)、又は1つから2つのC1~C6アルキル基(すなわち、C7~C18アルキルアリール基)によって置換されたフェニルである。
【0044】
さらにより好ましくは、R1は、フェニル、パラ-トリル又はパラ-イソプロピルフェニルである。より好ましくは、R1は、フェニル又はパラ-イソプロピルフェニルである。
【0045】
R2は、アルキル置換基をベータ位に任意的に有していてもよい、下記の式(II)のC4~C20シクロアルキル基であり、
【0046】
【化5】
【0047】
ここで、R’は、互いに同じであるか又は異なり得、且つ水素原子であり得、又はRとして定義され、及びnは1~17であり得る。好ましくは、R2は、式(II)のC4~C10シクロアルキル基であり、ここで、nは1~7であり、及びR’は、互いに同じであるか又は異なり得、且つ水素原子、又は飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル又はC6~C10アリールであり得る。
【0048】
より好ましくは、R2は、式(II)のC4~C10シクロアルキル基であり、ここで、nは1~7であり、及びR’は、互いに同じであるか又は異なり得、且つ水素原子、又は飽和の、直鎖状若しくは分岐状のC1~C4アルキル基であり得る。
【0049】
R2についての非制限的な例は、シクロブチル、3,3-ジメチルシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルなどである。
【0050】
より好ましくは、R2は、式(II)のC4~C8シクロアルキル基であり、ここで、nは1~5であり、及び全てのR’は水素である。
【0051】
式(I)の錯体の非制限的な例は下記のとおりである。
1. (フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
2. (フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
3. (フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジベンジル、
4. (フェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
5. (フェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
6. (フェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジベンジル、
7. (フェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
8. (フェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
9. (4-イソプロピルフェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
10. (4-イソプロピルフェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
11. (4-イソプロピルフェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
12. (4-イソプロピルフェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
13. (4-イソプロピルフェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
14. (4-イソプロピルフェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
15. (3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
16. (3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
17. (3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、
18. (3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロペンチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル、
19. (3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド、又は
20. (3,5-ジ-イソプロピルフェニル)(シクロブチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル。
【0052】
さらに好ましい例は、ジメチル又はジクロリドの代わりに、X置換基としてジベンジルを有する上記の錯体である。
【0053】
さらにより好ましくは、ジメチルジベンジル錯体である。
【0054】
助触媒
活性な触媒種を形成するために、当業界で周知のように、通常、助触媒を用いることが必要である。本発明は、ホウ素含有助触媒の使用を必要とする。
【0055】
対象のホウ素系助触媒は、ボレート3+イオンを含むホウ素化合物、すなわちボレート化合物、を包含する。これらの化合物は一般に、下記の式のアニオンを包含する:
(Z)4B- (III)
ここで、Zは任意的に置換されていてもよいフェニル誘導体であり、該置換基は、ハロC1-6-アルキル又はハロ基である。好ましい選択は、フルオロ又はトリフルオロメチルである。より好ましくは、フェニル基は過フッ素化されている。
【0056】
そのようなイオン性助触媒は好ましくは、非配位性アニオン、例えばテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、を包含する。
【0057】
適切な対イオンは、プロトン化されたアミン若しくはアニリンの誘導体、又はホスホニウムイオンである。これらは、下記の一般式(IV)又は一般式(V):
NQ4 + (IV)、又はPQ4 + (V)
を有し得る。
ここで、Qは独立して、H、C16-アルキル、C38シクロアルキル、フェニルC16-アルキレン、又は任意的に置換されていてもよいPhである。任意的な置換基は、C1~6-アルキル、ハロ又はニトロであり得る。そのような置換基は1以上存在し得る。それ故に、好ましい置換されたPh基は、パラ置換フェニル、好ましくはトリル又はジメチルフェニル、を包含する。
【0058】
少なくとも1つのQ基がHであると好ましく、すなわち、好ましい化合物は下記の式:
NHQ3 + (VI) 又は PHQ3 + (VII)
の化合物である。
【0059】
好ましいフェニルC16-アルキル基は、ベンジルを包含する。
【0060】
それ故に、適切な対イオンは、メチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム又はp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウム、特にジメチルアンモニウム又はN,N-ジメチルアニリニウムを包含する。イオンとしてのピリジニウムの使用は、さらなる選択肢である。
【0061】
対象のホスホニウムイオンは、トリフェニルホスホニウム、トリエチルホスホニウム、ジフェニルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム及びトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムを包含する。
【0062】
より好まし対イオンは、トリチル(CPh3 +)又はその類似体(Ph基が1以上のアルキル基を有するように官能化されている)である。それ故に、本発明での使用に非常に好ましいボレートは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンを包含する。
【0063】
本発明に従って使用されることができる好ましいイオン性化合物は、
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ-(4-フルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
を包含する。
【0064】
好ましいのは、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
である。
【0065】
より好ましいボレートは、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0066】
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが最も好ましい。
【0067】
アルミニウムアルキル化合物を添加することがさらにできる。適切なアルミニウムアルキル化合物は、下記の式(VIII)の化合物 AlR3(Rは直鎖状又は分岐状のC2~C8-アルキル基である)である。
【0068】
好ましいアルミニウムアルキル化合物は、トリエチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウム、トリ-イソヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム及びトリ-イソオクチルアルミニウムである。
【0069】
助触媒の適切な量は、当業者に周知であろう。
【0070】
メタロセンの金属イオンに対するホウ素のモル比は、0.5:1~10:1モル/モル、好ましくは1:1~10:1、特に1:1~5:1モル/モル、の範囲であり得る。
【0071】
さらにより好ましくは、メタロセンの金属イオンに対するホウ素のモル比は、1:1~2:1未満のモル/モル、例えば1:1~1.8:1又は1:1~1.5:1、である。
【0072】
触媒製造
本発明のメタロセン錯体は、高温溶液重合プロセスで、エチレンとC4~10アルファー-オレフィンコモノマーの重合の為の触媒系として、1以上の上記の助触媒と組み合わせて使用される。
【0073】
本発明の触媒系は、均一系触媒又は不均一系触媒として、好ましくは均一系触媒系として、使用されうる。
【0074】
本発明に適切な均一系又は非担持型の触媒系は、メタロセン(固体として又は溶液として)を1以上の助触媒、例えば炭化水素希釈剤中のスラリーとしての又は芳香族溶媒中で予め溶解されたボラン又はホウ酸塩、を接触させることによって、溶液中、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ライトナフサ又はトルエンのような炭化水素溶媒中、で調製されることができるか、あるいは好ましくは、上記触媒成分を重合反応器内に直接に逐次添加することによって形成されることができる。
【0075】
ポリマー
本発明の触媒系を用いて製造されるべきポリマーは、エチレンとC4~10アルファー-オレフィンコモノマー、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなど、とのコポリマーである、好ましくは、ブテン、ヘキセン又はオクテン、及びより好ましくはオクテン、がコモノマーとして使用される。
【0076】
そのようなポリマー中のコモノマー含量は、最大で45モル%、好ましくは1~40モル%、より好ましくは1.5~35モル%、及びさらにより好ましくは2~25モル%、であり得る。
【0077】
ポリマーの密度(ISO 1183-187に従って測定される)は、0.850g/cm3~0.930g/cm3の範囲、好ましくは0.850g/cm3~0.920g/cm3の範囲、及びより好ましくは0.850g/cm3~0.910g/cm3の範囲、である。
【0078】
本発明のポリマーのMw/Mn値は、5未満、例えば2.0~4.5の範囲、である。
【0079】
製造されるべきポリマーの融点(ISO 11357-3:1999に従ってDSCを用いて測定される)は、130℃未満、好ましくは120℃未満、より好ましくは110℃未満、及びより好ましくは100℃未満、である。
【0080】
重合
本発明の触媒系は、上記で定義されたエチレンコポリマーを100℃超の温度での高温溶液重合プロセスで製造する為に使用される。
【0081】
本発明を鑑みて、そのような方法は、本質的に、得られるポリマーが可溶である液体炭化水素溶媒中でモノマーと適切なコモノマーとを重合させることに基づく。重合は、ポリマーの融点より高い温度で実施され、その結果として、ポリマー溶液が得られる。この溶液は、ポリマーを未反応モノマー及び溶媒から分離するために、フラッシュされる。次に、該溶媒が回収され、そして上記方法に再循環される。
【0082】
溶液重合プロセスは、(気相法又はスラリー法と比較して)その短い反応器滞留時間で知られており、短い製造サイクルでの広範な生成物範囲の製造における非常に迅速なグレード遷移及び有意な柔軟性を可能にする。
【0083】
本発明に従って、使用される溶液重合プロセスは、100℃超の重合温度を用いる高温溶液重合プロセスである。好ましくは、該重合温度は、少なくとも110℃、より好ましくは少なくとも150℃、である。該重合温度は、250℃までであり得る。
【0084】
本発明に従う溶液重合プロセスにおいて用いられる圧力は好ましくは、10~100バール、好ましくは15~100バール、及びより好ましくは20~100バール、の範囲である。
【0085】
使用される液体炭化水素溶媒は好ましくは、非置換であるか又はC14アルキル基によって置換されていてもよいC512-炭化水素、例えばペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及び水素化されたナフサ、である。より好ましくは、非置換のC610-炭化水素溶媒が使用される。
【0086】
利点
成分(i)及び(ii)を含む新規な触媒系は、高温溶液重合プロセスでのエチレン共重合の為に有利に使用されることができる。
【0087】
本発明に従う触媒系は、高温溶液重合プロセスでのエチレン共重合のために使用されると、高い溶解性、分子量能力及びコモノマー取り込み能力と組み合わされた高い生産性を示す。
【0088】
用途
本発明の触媒系によって製造されたポリマーは、あらゆる種類の最終物品、例えばパイプ、フィルム(キャストフィルム、インフレーションフィルム)繊維、成形品(例えば、射出成形品、ブロー成形品、回転成形品)、押出コーティングなどに有用である。
【0089】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによって例示されるだろう。
【0090】
実施例:
方法
【0091】
DSC
温度変調DSC実験が変調モードで動作され且つISO 11357-1に従ってインジウム、スズ及び亜鉛で較正されたTA Instruments Q2000 DSCで行われた。約5mgの試料がアルミニウムパン中に入れられた。温度が、標準DSCと同様に最初は180℃まで上げられ、そしてその後10℃/分で、-88℃まで下げられた。その後、昇温速度2℃/分、60秒ごとに0.32℃の変調での温度変調スキャンによって温度が上げられた。ガラス転移温度は、転移時の反転点として可逆熱流サーモグラムから測定された。
【0092】
ポリマー組成がTg(DSC)によって推定されており、下記の内部相関が用いられている:C8(重量%)=(Tg(℃)+19.16)/-1.059
【0093】
Zr及びHf決定(ICP方法)
触媒の元素分析が、質量Mの固体サンプルを採取し、ドライアイス上で冷却することによって行われた。サンプルが、硝酸(HNO3,65%,Vの5%)及び新鮮な脱イオン(DI)水(Vの5%)中に溶解することによって、溶解されて既知の体積Vにされた。次に、該溶液がフッ化水素酸(HF,40%,Vの3%)に加えられ、DI水で最終体積Vまで希釈され、そして2時間放置して安定化された。
【0094】
上記分析が、Thermo Elemental iCAP 6300誘導結合プラズマ-光放射分光計(ICP-OES)を使用して室温で実行された。上記分光計は、ブランク(DI水中の5% HNO3,3% HFの溶液)及びDI水の5% HNO3,3% HFの溶液中の、0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppm、100ppm及び300ppmのAl及び0.5ppm、1ppm、5ppm、20ppm、50ppm及び100ppmのHf及びZrの6基準によって較正された。
【0095】
分析の直前に、上記較正が、上記ブランク及び100ppmのAl、50ppmのHf、Zr基準を使用して「再傾斜され(resloped)」、品質管理(quality control)サンプル(DI水中の5% HNO3,3% HFの溶液20ppmのAl、5ppmのHf、Zr)が、上記再傾斜を確認するために実行される。上記QCサンプルがまた、5つ目のサンプルの後ごとに及び計画された分析の組の終わりに実行される。
【0096】
ハフニウムの含量は282.022nm及び339.980nmの線を使用して、且つジルコニウムの含量は339.198nmの線を使用してモニターされた。アルミニウムの含量が、ICPサンプル中のAl濃度が0~10ppm(100ppmにのみ較正されている)の間であるときには167.079nmの線を介して、且つ10ppm超の濃度について396.152nmの線を介してモニターされた。
【0097】
報告された値は、同じサンプルから取られた3つの連続するアリコート(aliquots)の平均であり、そして、サンプルの初期質量及び希釈体積をソフトウェアに入力することによって、元の触媒に戻って関係付けられる。
【0098】
NMRスペクトル分析によるコモノマー含量の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析が、ポリマーのコモノマー含量を定量するために使用された。
【0099】
定量的13C{1H} NMRスペクトルが、1H及び13Cについてそれぞれ500.13及び125.76MHzで動作するBruker Advance III 500 NMR分光計を使用して、溶融状態で記録された。全てのスペクトルは、すべての空気駆動系(pneumatics)について窒素ガスを用いて、150℃で、13C最適化7mmマジック角回転(MAS:magic-angle spinning)プローブヘッドを使用して記録された。約200mgの物質が、7mm外径のジルコニアMASローター中に充填され、そして4kHzで回転された。この構成は、主として、迅速な同定および正確な定量に必要な高感度のために選択された[1],[2],[3],[4]。3sの短い再循環遅延での過渡的NOE及びRS-HEPTデカップリングスキームを利用して、標準単一パルス励起が用いられた[6],[7]。スペクトル当たり合計1024(1k)の過渡応答(transients)が得られた。この構成は、低いコモノマー含量に対するその高感度のために選択された。
【0100】
定量的13C{1H} NMRスペクトルが処理され、積分され、そして定量的特性が、カスタムスペクトル分析自動化プログラムを用いて決定された。すべての化学シフトは、30.00ppmでのバルクメチレンシグナル(δ+)を内部標準的に参照される[8]
【0101】
1-オクテンの取り込みに対応する特徴的シグナルが観測され[8],[9],[10],[11],[12]、そして全てのコモノマー含量が、ポリマー中に存在する他の全てのモノマーに関して計算された。
【0102】
分離された(isolated)1-オクテン取り込み、すなわちEEOEEコモノマーシーケンスから得られる特徴的シグナルが観測された。分離された1-オクテン取り込みは、38.32ppmでのシグナルの積分を用いて定量化された。この積分は、それぞれ分離された(EEOEE)及び分離された二重非連続(EEOEOEE)1-オクテンシーケンスのB6部位およびβB6B6部位の両方に対応する分解されていないシグナルに割り当てられる。上記2つのβB6B6部位の影響について補償するために、24.7ppmでのββB6B6部位の積分が使用される。
O=I*B6+*βB6B6-2ββB6B6
【0103】
連続1-オクテン取り込み、すなわちEEOOEEコモノマーシーケンスから得られる特徴的シグナルも観察された。そのような連続1-オクテン取り込みは、コモノマー当たりの報告部位の数を説明するααB6B6部位に割り当てられた40.48ppmでのシグナルの積分を用いて定量化された。
OO=2ααB6B6
【0104】
分離された非連続1-オクテン取り込み、すなわちEEOEOEEコモノマーシーケンスから得られる特徴的シグナルも観察された。そのような分離された非連続1-オクテン取り込みは、コモノマー当たりの報告部位の数を説明するββB6B6部位に割り当てられた24.7ppmでのシグナルの積分を用いて定量化された。
OEO=2ββB6B6
【0105】
分離された三重連続1-オクテン取り込み、すなわちEEOOOEEコモノマーシーケンスから得られる特徴的シグナルも観察された。そうした分離された三重連続1-オクテン取り込みは、コモノマー当たりの報告部位の数を説明するααγB6B6B6部位に割り当てられた41.2ppmでのシグナルの積分を用いて定量化された。
OOO=3/2ααγB6B6B6
【0106】
他のコモノマーシーケンスを示す他のシグナルが観察されない場合には、全1-オクテンコモノマー含量は、分離された(EEOEE)、分離された二重連続(EEOOEE)、分離された非連続(EEOEOEE)および分離された三重連続(EEOOOEE)1-オクテンコモノマーシーケンスの量だけに基づいて計算された。
合計=O+OO+OEO+OOO
【0107】
飽和末端基から得られる特徴的シグナルが観察された。そのような飽和末端基は、22.84及び32.23ppmでの2つの分解されたシグナルの平均積分値を使用して定量化された。22.84ppmの積分値は、それぞれ1-オクテン及び飽和鎖末端の2B6部位および2S部位の両方に対応する分解されていないシグナルに割り当てられる。32.23ppmの積分値は、それぞれ1-オクテン及び飽和鎖末端の3B6部位および3S部位の両方に対応する非分解シグナルに割り当てられる。2B6および3B6 1-オクテン部位の影響を補償するために、全1-オクテン含量が使用される。
S=(1/2)(I2S+2B6+I3S+3B6-2total
【0108】
エチレンコモノマー含量は、30.00ppmでのバルクメチレン(バルク)シグナルの積分を使用して定量化された。この積分値は、1-オクテンからのγ及び4B6部位並びにδ部位を含んだ。全エチレンコモノマー含量はバルク積分値に基づき、観察された1-オクテンシーケンスおよび末端基について補償を行って計算された。
合計=(1/2)[Iバルク+2O+1OO+3OEO+0OOO+3S]
【0109】
なお、分離された三重取り込み(EEOOOEE)1-オクテンシーケンスの存在についてのバルク積分値の補償は、過少に評価されたエチレン単位の数と、過度に評価されたエチレン単位の数が等しいので、必要ないことに留意されるべきである。
【0110】
次いで、ポリマー中の1-オクテンの全モル分率は、下記のように計算された。
fO=(O合計/(E合計+O合計
【0111】
重量パーセントでの1-オクテンの全コモノマー取り込みは、標準的なやり方で上記モル分率から計算された。
O[重量%]=100(fO112.21)/((fO112.21)+((1-fO)28.05))
【0112】
[1] Klimke,K.,Parkinson,M.,Piel,C.,Kaminsky,W.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Macromol.Chem.Phys.2006;207:382.
[2] Parkinson,M.,Klimke,K.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Macromol.Chem.Phys.2007;208:2128.
[3] Castignolles,P.,Graf,R.,Parkinson,M.,Wilhelm,M.,Gaborieau,M.,Polymer 50 (2009) 2373
[4] NMR Spectroscopy of Polymers:Innovative Strategies for Complex Macromolecules,Chapter 24,401 (2011)
[5] Pollard,M.,Klimke,K.,Graf,R.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Sperber,O.,Piel,C.,Kaminsky,W.,Macromolecules 2004;37:813.
[6] Filip,X.,Tripon,C.,Filip,C.,J.Mag.Resn.2005,176,239
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[8] J.Randall,Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys.1989,C29,201.
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[11] Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,1128
[12] Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187 (2007) 225
【0113】
GPC:平均分子量、分子量分布及び多分散性指数(Mn、Mw、Mw/Mn)
ポリマーの、平均分子量(Mw,Mn)、分子量分布(MWD)及び多分散性指数によって記されるその幅広さ、PDI=Mw/Mn(ここで、Mnは数平均分子量であり、且つMwは重量平均分子量である)は、直列の3PLgel Olexis(300×7.5mm,Polymer Laboratories)カラムを用いて、160℃で、Polymer Laboratories PLXT-20 Rapid GPC Polymer Analysis System(ポンプ、屈折率検出器及び粘度検出器を含む)上で、高温サイズ排除クロマトグラフィー(HT-SEC:high temperature size exclusion chromatography)によって決定された。ブチル化ヒドロキシトルエン(0.5g/L)及びIrganox 1010(20mg/L)を含む1,2,4-トリクロロベンゼンが、1.0mL/分の流速で溶離液として用いられた。分子量は、ポリエチレン標準(Polymer Laboratories,Mp=5.310からMp=1.510.000g/モルまで)に関して計算された。Polymer Laboratories PL XT-220ロボットサンプルハンドリングシステムがオートサンプラーとして使用された。サンプルの濃度が、TCBの2~4mgポリマー/mlであった。
【0114】
相対コモノマー反応性比Rの決定
重合中にエチレンを供給することによって全圧が一定に保たれるので、液相中のエチレン濃度は一定と見なすことができる。重合の終了時の溶液中のC8/C2比は、測定された後者の組成からポリマー中に含まれるオクテンの量を差し引くことによって計算される(1-オクテン重量%)。各触媒の反応性比Rは下記のように計算される。
R=[(C8/C2)pol]/[(C8/C2)液相における平均]
ここで、(C8/C2)液相における平均は、((C8/C2)最終+(C8/C2)供給)/2として計算される。
【0115】
ヘキサン中のハフニウム錯体の溶解性
溶解性試験についての手順:
全ての実験はセプタムボトル中の不活性雰囲気下で行われた。
1.グローブボックス内に、10.5mgの錯体がセプタムボトル内に秤量された。
2.1gのヘキサンが、固体の錯体に添加された。
3.室温で20時間撹拌された後、溶液がチェックされる。
4.不溶物が観察されなかった場合は、飽和するまで且つ不溶物が観察されるまで工程1及び3を繰り返す。
【0116】
化学薬品
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(AB)(CAS 118612-00-3)は、Boulderから購入された。
【0117】
コモノマーとしての1-オクテン(99%,Sigma Aldrich)は、使用前に、分子ふるいで乾燥され、そして窒素で脱ガスされた。
【0118】
ヘプタン及びデカン(99.9%,Sigma Aldrich)は、使用前に、分子ふるいで乾燥され、そして窒素で脱ガスされた。
【0119】
触媒調製の実施例
【0120】
a)錯体調製:
本発明の錯体(IC):
【0121】
【化6】
【0122】
(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル
工程1:6-フェニル-6-シクロヘキシルフルベン
【0123】
【化7】
【0124】
6.11g(267.7mmol)のナトリウム金属及び160mlの乾燥エタノールから得られたナトリウムエトキシドの溶液に、22.0g(332.8mmol)のシクロペンタジエンが10分にわたって滴下で添加され、そして結果として得られた赤色溶液が、0.5時間、室温で撹拌された。次に25.0g(132.8mmol)のフェニルシクロヘキシルケトンが添加され、そして結果として得られた暗赤色の混合物が22時間、室温で撹拌された。次に、それは1000mlの水中に注ぎ込まれた。2M HClで、約6.5のpHに酸性化後に、生成物が500mlのジクロロメタンで抽出された。有機層が分離され、Na2SO4で乾燥され、そして減圧下で濃縮された。生成物が、シリカゲル60(40~63μm,800ml;溶出液:ヘキサン)上でフラッシュクロマトグラフィーによって分離された。この手順は、淡紅色の油としての22.09g(70%)の6-フェニル-6-シクロヘキシルフルベンを与え、それは-30oCで保存されると完全に固化された。
【0125】
C18H20についての計算値:C,91.47;H,8.53 実測値:C,91.79;H,8.72
1H NMR(CDCl3):δ7.35~7.29(m,3H),7.19~7.14(m,2H),6.71(dt,J=5.4Hz,J=1.6Hz,1H),6.54(dt,J=5.4Hz,J=1.6Hz,1H),6.36(dt,J=5.3Hz,J=1.5Hz,1H),5.74(dt,J=5.3Hz,J=1.7Hz,1H),3.10(tt,J=11.8Hz,J=3.2Hz,1H),1.85~1.73(m,4H),1.66(dm,J=13.2Hz,1H),1.37(qt,J=12.9Hz,3.2Hz,2H),1.30(qd,J=12.4Hz,3.2Hz,2H),1.06(qt,J=12.9Hz,3.7Hz,1H)
【0126】
工程2:フェニル-シクロヘキシル-シクロペンタジエニル-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)メタン
【0127】
【化8】
【0128】
-50oCに冷やされた250mlのTHF中の26.0g(93.38mmol)の2,7-ジ-tert-ブチルフルオレンの溶液に、ヘキサン中の38.4ml(93.31mmol)の2.43M nBuLiが、一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌された。結果として得られた橙色の溶液に、200mlのTHF中の22.09g(93.46mmol)の6-フェニル-6-シクロヘキシルフルベンの溶液が、室温で一度に添加された。一晩、室温で撹拌後、暗赤色の反応混合物が氷浴中で冷やされ、そして次に、100mlの水中の8.8mlの12M HClの溶液でクエンチされた。結果として得られた橙色の混合物は1000mlの水で希釈され、そして次に、500mlのエーテルで抽出された。有機層が分離され、そしてNa2SO4で乾燥された。溶媒の真空下での除去は橙色の油を与え、それは250mlのn-ヘキサン中に溶解され、そして結果として得られた溶液が約50mlの体積までゆっくりと蒸発された。得られた懸濁物が200mlのn-ヘキサンで希釈され、そして(G3)で濾別され、白色の粉末として33.17g(69%)の1-フェニル-1-シクロヘキシル-1-シクロペンタジエニル-1-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレンイル)メタンを与えた。
【0129】
C39H46についての計算値:C,90.99;H,9.01 実測値:C,91.34;H,9.38
1H NMR(CDCl3):δ8.18~6.16(マルチプレットのセット,合計12H),6.02~4.86シングレットのセット,合計3H),3.57~0.13シングレット及びマルチプレットのセット,合計31H)
【0130】
工程3:(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド
【0131】
【化9】
【0132】
-78℃に冷やされた250mlのエーテル中の10.17g(19.76mmol)の1-フェニル-1-シクロヘキシル-1-シクロペンタジエニル-1-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)メタンの溶液に、ヘキサン中の15.8ml(39.5mmol)の2.5M nBuLiが一度に添加された。この混合物が一晩、室温で、撹拌された。結果として得られた、橙色の沈殿物を有する淡橙色の溶液が-50℃に冷やされ、そして6.33g(19.76mmol)のHfCl4が添加された。形成された混合物が24時間、室温で撹拌され、そして次に蒸発乾固された。残留物が100mlの温トルエンで撹拌され、形成された懸濁物がガラスフリット(G4)を通じて濾過され、そして該濾過物が約35mlに蒸発された。一晩、室温で沈殿され、白色の固体が(G4)で濾別され、そして破棄された。母液が約20mlに蒸発され、そして20mlのn-ヘキサンが残留物に添加された。一晩、-30℃で沈殿された黄色固体が(G3)で濾別され、そして真空で乾燥されて、3.20gの(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリドを与えた。母液が蒸発乾固され、そして残留物が25mlのn-ヘキサン中に溶解された。この溶液から一晩、-30℃で沈殿された固体が集められ、そして真空で乾燥された。この手順は、追加の0.60gの目的の錯体を与えた。すなわち、この合成において分離された(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリドの総収量は3.80g(25%)であった。
【0133】
C39H44Cl2Hfについての計算値:C,61.46;H,5.82 実測値:C,61.37;H,6.10
1H NMR(CDCl3):δ8.02(d,J=8.8Hz,1H),7.95(d,J=8.8Hz,1H),7.76(d,J=7.8Hz,1H),7.68(s,1H),7.63(dd,J=8.8Hz,J=1.2Hz,1H),7.57~7.51(m,2H),7.48(dd,J=8.8Hz,J=1.6Hz,1H),7.45~7.41(m,1H),7.39(ddd,J=7.5Hz,J=7.5Hz,J=1.0Hz,1H),6.36~6.31(m,1H),6.21~6.16(m,1H),5.96(s,1H),5.76~5.71(m,1H),5.55~5.50(m,1H),3.26(t,J=11.5Hz,1H),2.33(d,J=12.9Hz,1H),2.14(d,J=12.3Hz,1H),1.94~1.83(m,2H),1.16(d,J=13.2Hz,1H),1.66~1.56(m,1H),1.53~1.40(m,1H),1.41(s,9H),1.40~1.30(m,1H),1.12~1.01(m,1H),0.96(s,9H),0.91~0.79(m,1H)
【0134】
工程4:(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル
【0135】
【化10】
【0136】
50mLのトルエン及び50mlのエーテルの混合物中の3.80g(4.99mmol)の(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリドの溶液に、エーテル中の7.0ml(14.77mmol)の2.11M MeMgBrが添加された。結果として得られた混合物が30分間、撹拌され、そして次に、約25mlに蒸発された。得られた混合物が80~90℃に加熱され、そして不溶のマグネシウム塩を除くために、ガラスフリット(G4)を通じて熱い間に濾過された。濾過ケークが、5x20mlの温n-ヘキサンでさらに洗われた。組み合わされた濾過物がほとんど乾固するまで蒸発され、そして次に20mlのn-ヘキサンが残留物に添加された。結果として得られた混合物がガラスフリット(G4)を通じて再び濾過された。母液が蒸発乾固され、そして残留物が7mlのn-ヘキサン中に溶解された。この溶液から一晩、-30℃で沈殿された黄色粉末が集められ、そして真空で乾燥された。
【0137】
この手順は、3.05g(88%)の純粋な(フェニル)(シクロヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチルを与えた。
【0138】
C41H50Hfについての計算値:C,68.27;H,6.99 実測値:C,68.49;H,7.22
1H NMR(CDCl3):δ8.08(d,J=8.6Hz,1H),7.98(d,J=8.9Hz,1H),7.73(d,J=7.6Hz,1H),7.58~7.48(m,3H),7.45(td,J=7.6Hz,J=1.5Hz,1H),7.38~7.28(m,3H),6.28~6.21(m,1H),6.12~6.06(m,1H),5.86(s,1H),5.62~5.55(m,1H),5.33~5.27(m,1H),3.06(t,J=11.5Hz,1H),2.28(d,J=12.8Hz,1H),2.10(d,J=12.3Hz,1H),1.90~1.75(m,2H),1.70(d,J=13.3Hz,1H),1.65~1.20(m,1H),1.48~1.33(m,1H),1.40(s,9H),1.31~1.16(m,1H),1.08~0.92(m,1H),0.95(s,9H),0.77~0.62(m,1H),-1.79(s,3H),-1.93(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3,):δ150.30,147.62,140.00,132.05,129.17,127.31,126.95,126.75,124.03,123.70,122.93,122.79,120.91,120.54,119.29,117.90,116.35,115.93,112.41,111.17,109.62,101.41,99.72,76.78,57.85,43.58,38.06,37.13,35.47,34.72,31.56,30.72,29.02,28.27,27.36,26.91,26.70
【0139】
比較例の錯体1(CC1):
【0140】
【化11】
【0141】
(フェニル)(1-ヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル
工程1:6-フェニル-6-ヘキシルフルベン
【0142】
【化12】
【0143】
氷浴中で冷やされた50mlのTHF中の23.8g(125.1mmol)の1-フェニルヘプタン-1-オンの溶液に、150mlのTHF中の25.4g(150mmol,1.2当量)のシクロペンタジエニルマグネシウムブロミドの溶液が滴下で添加された。結果として得られた混合物が3時間、還流され、次に一晩、室温で撹拌され、次に、氷浴中で冷やされ、そして次に、10% HClでpH5~6にクエンチされた。この混合物が3x150mlのヘキサンで抽出され、組み合わされた有機抽出物がNa2SO4で乾燥され、そして次に蒸発乾固されて、暗赤色の油を与えた。生成物がシリカゲル60(40~63μm;溶出液:ヘキサン-酢酸エチル=100:1,容量)上でフラッシュクロマトグラフィーによって分離された。この手順は、赤みがかった油としての14.25g(48%)の6-フェニル-6-ヘキシルフルベンを与えた。
【0144】
C18H22についての計算値:C,90.70;H,9.30 実測値:C,90.87;H,9.27
1H NMR(CDCl3):δ7.37~7.30(m,5H),6.63(ddd,J=5.3Hz,J=2.0Hz,J=1.5Hz,1H),6.55(ddd,J=5.3Hz,J=2.0Hz,J=1.5Hz,1H),6.46(ddd,J=5.3Hz,J=2.0Hz,J=1.5Hz,1H),6.10(ddd,J=5.3Hz,J=2.0Hz,J=1.5Hz,1H),2.90(t,J=7.6Hz,2H),1.47~1.36(m,2H),1.34~1.15(m,6H),0.83(t,J=6.9Hz,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ154.81,143.31,140.87,131.71,131.32,129.42,127.97,127.73,123.86,120.90,36.25,31.51,29.54,29.13,22.46,13.97
【0145】
工程2:(フェニル)(1-ヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド
【0146】
【化13】
【0147】
【化14】
【0148】
-50℃に冷やされた200mlのTHF中の14.88g(53.44mmol)の2,7-ジ-tert-ブチルフルオレンの溶液に、ヘキサン中の21.4ml(53.5mmol)の2.5M nBuLiが一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌された。結果として得られた赤みがかった溶液が-50℃に冷やされ、そして200mlのTHF中の14.25g(59.78mmol)の6-フェニル-6-ヘキシルフルベンの溶液が、一度に添加された。一晩、室温で撹拌後、暗赤色の反応混合物が氷浴中で冷やされ、そして次に、200mlの水中の5mlの12M HClの溶液でクエンチされた。結果として得られた黄色の混合物が、400mlのジクロロメタンで抽出された。有機層が分離され、そして水性物が150mlのジクロロメタンで抽出された。組み合わされた有機抽出物がNa2SO4で乾燥され、シリカゲル60(40~63μm)のパッドを通じて濾過され、それは2x50mlのジクロロメタンンによってさらに洗われた。組み合わされた濾過物は蒸発乾固されて、29.1gのフェニル-(1-ヘキシル)-シクロペンタジエニル-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)メタンを与え、それはさらなる精製なしに使用された。-78℃に冷やされた250mlのエーテル中の16.2g(31.35mmol)のフェニル-(1-ヘキシル)-シクロペンタジエニル-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレンイル)メタン(上記で調製された通り)の溶液に、ヘキサン中の25.0ml(62.5mmol)の2.5M nBuLiが、一度に添加された。形成された混合物が一晩、室温で撹拌され、そして次に、-50℃に冷やされ、そして10.04g(31.35mmol)のHfCl4が添加された。得られた混合物が24時間、室温で撹拌され、そして次に蒸発乾固された。残留物が200mlの温トルエンで撹拌され、そして形成された懸濁物がガラスフリット(G4)を通じて濾過された。該濾過物が約40mlに蒸発された。1週間、-30℃でこの混合物から沈殿された黄色の結晶物質が分離され、トルエン及びヘキサンの3x15mlの混合物(1:3,容量)で洗われ、そして、真空で乾燥された。この手順は、14.2g(59%)の(フェニル)(1-ヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)-]ハフニウムジクロリドを与えた。
【0149】
C39H46Cl2Hfについての計算値:C,61.30;H,6.07 実測値:C,61.53;H,6.26
1H NMR(CDCl3):δ8.01(d,J=8.9Hz,1H),7.95(d,J=8.9Hz,1H),7.82(dm,J=7.9Hz,1H),7.70(s,1H),7.66~7.58(m,2H),7.58~7.52(m,1H),7.52~7.46(m,1H),7.44~7.36(m,2H),6.36~6.30(m,1H),6.23~6.17(m,1H),6.13(s,1H),5.80~5.74(m,1H),5.55~5.49(m,1H),3.13~2.97(m,1H),2.80~2.65(m,1H),1.64~1.44(m,3H),1.40(s,9H),1.36~1.18(m,5H),0.99(s,9H),0.85(t,J=7.9Hz,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ152.11,149.53,143.32,130.53,128.46,128.26,127.17,127.05,124.17,124.14,123.97,123.49,122.63,120.25,119.84,119.65,118.84,118.79,117.87,116.58,114.58,99.64(2つの共鳴),77.83,53.68,41.28,35.42,34.84,31.88,31.11,30.51,29.75,24.03,22.63,14.05
【0150】
工程3:(フェニル)(1-ヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル
【0151】
【化15】
【0152】
50mLのトルエン及び50mlのエーテルの混合物中の3.82g(5.0mmol)の(フェニル)(1-ヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリドの溶液に、エーテル中の7.0ml(14.77mmol)の2.11M MeMgBrが添加された。結果として得られた混合物が30分間、撹拌され、そして次に、約25mlに蒸発された。得られた溶液が80~90℃に加熱され、そして不溶のマグネシウム塩を除くために、ガラスフリット(G3)を通じて熱い間に濾過された。濾過ケークが、2x20mLのトルエンでさらに洗われた。組み合わされた濾過物が蒸発乾固され、そして20mlのヘキサンが残留物に添加された。結果として得られた懸濁物がガラスフリット(G4)を通じて再び濾過された。該濾過物が蒸発乾固され、そして残留物が7mlのヘキサン中に溶解された。この溶液から一晩、-40℃で沈殿された黄色粉末が集められ、そして、真空で乾燥された。この手順は、2.55g(71%)の純粋な(フェニル)(1-ヘキシル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチルを与えた。
【0153】
C41H52Hfについての計算値:C,68.08;H,7.25 実測値:C,68.11;H,7.46
1H NMR(CDCl3):δ8.07(d,J=8.9Hz,1H),7.98(d,J=8.9Hz,1H),7.81(dm,J=7.9Hz,1H),7.63~7.56(m,2H),7.53~7.43(m,2H),7.38~7.30(m,3H),6.28~6.21(m,1H),6.14~6.08(m,1H),6.03(s,1H),5.65~5.59(m,1H),5.34~5.28(m,1H),2.92~2.81(m,1H),2.59~2.48(m,1H),1.52~1.40(m,3H),1.38(s,9H),1.34~1.17(m,5H),0.97(s,9H),0.84(t,J=7.0Hz,3H),~1.76(s,3H),~1.90(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ150.18,147.73,144.31,130.72,128.04,127.90,127.20,126.59,124.49,123.74,122.90,122.73,121.01,120.61,119.11,117.56,116.32,115.83,112.85,111.08,109.58,100.94,100.57,76.51,53.50,41.19,38.16,37.39,35.32,34.75,31.93,31.35,30.75,29.86,24.12,22.68,14.08
【0154】
比較例の錯体2(CC2):
【0155】
【化16】
【0156】
(フェニル)(イソプロピル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル
工程1:6-イソプロピル-6-フェニルフルベン
【0157】
【化17】
【0158】
氷浴中で冷やされた40mlのTHF中の14.82g(100mmol)のイソプロピルフェニルケトンの溶液に、120mlのTHF中の20.3g(120mmol,1.2当量)のシクロペンタジエニルマグネシウムブロミドの溶液が滴下で添加された。結果として得られた混合物が3時間、還流されて、次に一晩、室温で撹拌され、最終的に氷浴中で冷やされ、そして10% HClでpH5~6にクエンチされた。この混合物が3x150mlのヘキサンで抽出され、そして組み合わされた有機抽出物がNa2SO4で乾燥された。溶媒の真空下での除去は暗赤色の油を与えた。生成物が、シリカゲル60(40~63μm;溶出液:ヘキサン)上のフラッシュクロマトグラフィーによって分離された。この手順は、淡橙色の油として8.32g(42%)の6-イソプロピル-6-フェニルフルベンを与え、それは-30oCで保存されると完全に固化された。
【0159】
C15H16についての計算値:C,91.78;H,8.22 実測値:C,92.00;H,8.41
1H NMR(CDCl3):δ7.36~7.30(m,3H),7.21~7.15(m,2H),6.70(ddd,J=5.3Hz,J=1.9Hz,J=1.5Hz,1H),6.54(ddd,J=5.3Hz,J=1.9Hz,J=1.5Hz,1H),6.37(ddd,J=5.3Hz,J=1.9Hz,J=1.5Hz,1H),5.77(ddd,J=5.3Hz,J=1.9Hz,J=1.5Hz,1H),3.50(sept,J=7.0Hz,1H),1.14(d,J=7.0Hz,6H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ159.82,143.03,138.92,132.14,130.72,129.20,127.19,126.98,124.36,120.22,33.72,22.13
【0160】
工程2:(フェニル)(イソプロピル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド
【0161】
【化18】
【0162】
-50℃に冷やされた250mlのエーテル中の11.77g(42.27mmol)の2,7-ジ-tert-ブチルフルオレンの溶液に、ヘキサン中の17.4ml(42.28mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌された。結果として得られた橙色の溶液が-50℃に冷やされ、そして150mlのエーテル中の8.30g(42.29mmol)の6-イソプロピル-6-フェニルフルベンの溶液が一度に添加された。一晩、室温で撹拌後、暗赤色の反応混合物が-50℃に冷やされ、そしてヘキサン中の17.4ml(42.28mmol)の2.43M nBuLiが、一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌された。結果として得られた暗赤色の溶液が-50℃に冷やされ、そして13.55g(42.3mmol)のHfCl4が添加された。形成された混合物が、24時間、室温で撹拌され、次にそれは蒸発乾固され、そして残留物が150mlの温トルエンで処理された。この混合物は、ガラスフリット(G4)を通じて熱い間に濾過され、濾過物が約50mlに蒸発され、そして80mlのn-ヘキサンが残留物に添加された。沈殿した固体が濾過され、そして破棄された。母液がほとんど乾固するまで蒸発され、そして残留物が70mlのn-ヘキサンで粉砕された。橙黄色の沈殿物が濾過されて、約90%の純度で5.80g(約19%)の(フェニル)(イソプロピル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリドを与えた。分析的に純粋なサンプル(2.51g,8%)は、トルエンから粗生成物を再結晶することによって得られた。
【0163】
C36H40Cl2Hfについての計算値:C,59.88;H,5.58 実測値:C,60.07;H,5.73
1H NMR(CDCl3):δ8.01(d,J=8.8Hz,1H),7.95(d,J=8.9Hz,1H),7.78(dm,J=7.8Hz,1H),7.69(s,1H),7.62(d,J=8.9Hz,1H),7.59~7.51(m,2H),7.49(dd,J=8.8Hz,J=1.2Hz,1H),7.47~7.36(m,2H),6.37~6.30(m,1H),6.22~6.16(m,1H),5.99(br.s,1H),5.75~5.69(m,1H),5.57~5.51(m,1H),3.69(sept,J=6.7Hz,1H),1.39(s,9H),1.31(d,J=6.7Hz,3H),1.05(d,J=6.7Hz,3H),0.97(s,9H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ152.22,149.49,137.95,131.85,129.31,127.77,127.42,124.11,124.06,123.96,123.43,122.28,120.46,119.93,119.81,118.99,118.56,118.52,116.70,115.03,100.10,99.06,78.64,58.17,35.40,34.84,32.74,31.11,30.51,18.34,17.89
【0164】
工程3:(フェニル)(イソプロピル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル
【0165】
【化19】
【0166】
30mLのトルエン及び15mlのエーテルの混合物中の3.3g(約4.6mmol)の粗(フェニル)(イソプロピル)メチレン(シクロ-ペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリド(トルエンからの再結晶後の残留物)の溶液に、エーテル中の6.5ml(17.55mmol)の2.7M MeMgBrが添加された。結果として得られた混合物が、一晩、室温で撹拌された。エーテルの大部分は留去され、そして結果として得られた混合物は、不溶のマグネシウム塩を除くためにガラスフリット(G4)を通じて濾過された。濾過物が約15mlに蒸発され、そしてガラスフリット(G4)を通じて再び濾過された。母液が約5mlに蒸発され、15mlのn-ヘキサンが添加され、そして結果として得られた少し濁った溶液がガラスフリット(G4)を通じて濾過された。該濾過物から一晩、-30℃で沈殿された黄色粉末が集められ、そして真空で乾燥された。この手順は、1.46g(約47%)の(フェニル)(イソプロピル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチルを与えた。
【0167】
C38H46Hfについての計算値:C,66.99;H,6.81 実測値:C,67.14;H,7.02
1H NMR(CDCl3):δ8.09(d,J=8.8Hz,1H),7.99(d,J=8.8Hz,1H),7.75(dm,J=7.9Hz,1H),7.57(br.s,1H),7.56~7.44(m,3H),7.39~7.29(m,3H),6.27~6.23(m,1H),6.13~6.08(m,1H),5.88(br.d,J=1.0Hz,1H),5.59~5.55(m,1H),5.33~5.29(m,1H),3.55~3.43(m,1H),1.38(s,9H),1.22(d,J=6.7Hz,3H),0.97~0.93(s及びd,合計12H),-1.79(s,3H),-1.92(s,3H)
【0168】
【0169】
比較例のC0
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチル
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリドが、下記の文献に従って合成された:Hopf,A,Kaminsky,W.,Catalysis Communications 2002;3:459。
【0170】
【化20】
【0171】
50mLのトルエン及び50mlのエーテルの混合物中の3.78g(5.0mmol)のジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジクロリドの溶液に、エーテル中の7.0ml(14.77mmol)の2.11M MeMgBrが添加された。結果として得られた混合物は30分間、還流され、そして次に、約25mlに蒸発された。得られた混合物は、80~90℃に加熱され、そして不溶のマグネシウム塩を除くために、ガラスフリット(G4)を通じて熱い間に濾過された。濾過ケークが、5x20mlの温ヘキサン.でさらに洗われた。組み合わされた濾過物が約5mlに蒸発され、そして次に、20mlのヘキサンが残留物に添加された。この溶液から沈殿された黄色粉末が集められ、そして真空で乾燥された。この手順は、3.14g(88%)の純粋なジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ハフニウムジメチルを与えた。
【0172】
C41H44Hfについての計算値:C,68.85;H,6.20 実測値:C,69.10;H,6.37
1H NMR(CDCl3):δ8.07(d,J=8.9Hz,2H),7.95(br.d,J=7.9Hz,2H),7.85(br.d,J=7.9Hz,2H),7.44(dd,J=8.9Hz,J=1.5Hz,2H),7.37(td,J=7.6Hz,J=1.2Hz,2H),7.28(td,J=7.6Hz,J=1.2Hz,2H),7.24~7.17(m,2H),6.26(s,2H),6.20(t,J=2.7Hz,2H),5.45(t,J=2.7Hz,2H),1.03(s,18H),~1.90(s,6H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ148.46,145.75,129.69,128.63,128.46,126.73,126.54,123.29,122.62,120.97,118.79,116.09,111.68,107.76,101.56,76.47,57.91,37.61,34.88,30.84
【0173】
b)重合手順
重合試験は、底部弁を備えた125mLの反応器中で、160℃及び全圧として30 バールgで行われた。液相中の種々のC8/C2重量比及び種々の触媒ローディングが10分間の重合中にほぼ一定の温度及び圧力を保証する為の最適量を見出す為に試験された。
【0174】
活性化手順
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが、全ての実験の為に使用された。TEA(Isopar E中の7x10-2mol/kg)が、全ての実験の為のスカベンジャーとして使用され、そしてその量は特定の実験計画法(DoE:design of experiments)に基づいてB/Hf比と共に最適化されている。
【0175】
活性化は、錯体及び活性化剤を4mLのトルエン中に別々に溶解することによって行われる。次に、ボレート溶液が、反応器供給ラインに注入され、引き続き錯体溶液が注入され、そして2つが窒素過圧により該反応器内に注入する前に数秒間接触される。
【0176】
重合手順
該反応器が、所望の量の溶媒(isopar E)、スカベンジャー(最適化量0.035mmol TEA)及び1-オクテンで満たされる。溶媒及びモノマー量が、重合条件で80mLの初期液量を有するように選ばれる。
【0177】
次に、該反応器が加熱され、そしてエチレン(25~28バール-g)で慎重に加圧される。条件が安定した場合に、エチレン圧力が30バール-gに調製され、そして残留エチレン取り込みを測定する為に、混合物が10分間、750rpmで撹拌することを許される。
【0178】
その後、該触媒(4mLのトルエンで希釈される)及び助触媒(4mLのトルエンでまた希釈される)が注入ラインにおいて組み合わせられ、そして直ちに窒素過圧によって該反応器内に注入される。次に、圧力がエチレンを供給することによって一定に保たれ、そして10分の重合後、キリング剤(killing agent)(EtOH又はCO2のいずれか)を添加することによって重合がクエンチされた。次に該反応器が排気され、温度が下げられ、そして次に、容器が開かれた。溶液が数ミリグラム(生成されたコポリマーに関して~500ppm)のIrganox 1076を含むアルミニウムパン内に排出される。次に、揮発性物質が蒸発するまで、該パンは、換気の良いドラフトの下に置かれる。集められた残留物が、ポリマーのキャラクタリゼーションの段落に報告されている方法に従って、HT-SEC及びDSCによって分析される。
【0179】
【表1】
【0180】
表1は、助触媒としてボレートABを使用して活性化した場合(図1)、生産性の結果に基づいて、架架橋(IC)中の置換基としてのシクロヘキシルが、該架橋中の置換基としてのヘキシル(CC1)又はイソプロピル(CC2)と比較してより高い生産性を結果として生じることを示す。該触媒系IC/ABは、触媒ローディング.07mg及び滞留時間10分で111kg-PO/g-触媒と最も高い生産性を示した。
【0181】
同じC8含量(又は同じ平均C8/C2)について、分子量能力及び反応性に有意な明確な違いが、3つの錯体の間で観察されることができなかった(図2~4)。
【0182】
IC/AB触媒系の性能が、実験計画法(DoE design of Experiments)の方法論に従って一連の実験を行うことによって、さらに調べられた。2つの因子であるTEA量及びB/Hf比が用いられた(表2を参照)。これらの一連の実験において、生産性及びポリマー特性(Mw及びC8取り込み)に対する効果が評価された。
【0183】
重合温度は160℃であり、且つ全圧は30バールgであった。結果が表2に報告されており、最良の生産性が35μmolのTEA及び1.5B/Hfモル比について得られた。
【0184】
【表2】
【0185】
該錯体は好ましくはそのような溶媒中の溶液として該反応器内に供給されるのが好ましい故に、該錯体の脂肪族炭化水素への溶解性はまた重要な特性である。この供給方式は、該反応器中の触媒濃度におけるより高い精度及びより良い活性化効率を確実にする。
【0186】
本発明の錯体のヘキサンへの溶解性が表3に示されている。
【0187】
【表3】
【0188】
表3において示されている通り、錯体ICは錯体C0と比較してより高い溶解性を有する。
図1
図2
図3
図4