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  • 特許-付加硬化型シリコーンゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220829BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220829BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20220829BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20220829BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20220829BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220829BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220829BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20220829BHJP
   B32B 25/20 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/56
C08K5/54
C08K5/01
C08K3/00
C08L21/00
B32B25/08
B32B25/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019534086
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017067503
(87)【国際公開番号】W WO2018119029
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】16206587.4
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】チァン,フイピン
(72)【発明者】
【氏名】マリムス,スリヴィディヤ
(72)【発明者】
【氏名】ホフミューラー,ガンナー
(72)【発明者】
【氏名】ハギンズ,ジョン・ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ミカルスキー,エニセ
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-020718(JP,A)
【文献】特開2002-020719(JP,A)
【文献】特開2014-037507(JP,A)
【文献】特表2010-539308(JP,A)
【文献】特開2005-068431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B32B 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル残基を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、
(B)少なくとも1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサン、
(C)遷移金属を含む、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒、
(D)化合物(B)とは異なる、ケイ素原子に直接結合していない少なくとも1つの多価芳香族基、および少なくとも1つのSi-H基を含む少なくとも1つの有機ケイ素化合物、
(E)少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物であって、シロキサン基を含まず、そしてエステル基を含まない芳香族化合物、
(F)任意選択的に1つ以上の補強充填剤、
(G)任意選択的に1つ以上の補助添加剤、
を含む、付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
成分(A)は、一般式(1)の1つ以上のポリオルガノシロキサンから選択され、
[M (1)
ここで
a=0-10
b=0-2000
c=0-50
d=0-10
e=0-300
m=1-1000、ここで
a+b+c+d+e≧2、そして
M=RSiO1/2、またはM
D=RSiO2/2、またはD
T=RSiO3/2、またはT
Q=SiO4/2
Zは2個のシロキシ基の間に14個までの炭素原子を有する二価の任意選択的に置換されたヒドロカルビル架橋基であり、
ここでRは、30個までの炭素原子を有する任意選択的に置換されたヒドロカルビル基および1000個までのアルキレンオキシ単位を有するポリ(C-C)-アルキレンエーテル基から選択され、基Rは脂肪族不飽和を含まず、そしてここで
=R 3-pSiO1/2
=R 2-qSiO2/2
=RSiO3/2
ここで
p=1-3、
q=1-2、および
は、30個までの炭素原子を有する不飽和の任意選択的に置換されたヒドロカルビル基から選択され、
但し、M、DおよびTから選択される少なくとも2つの基があるという条件である、
請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
b≧300でありa+b+c+d+e≧300である、請求項2に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
成分(B)が一般式(2)の1つ以上のポリオルガノハイドロジェンシロキサンから選択され、
[M a2 b2 c2d2e2m2 (2)
ここでシロキシ単位は、
=MまたはM**
=DまたはD**
=TまたはT**
M=RSiO1/2、またはM
D=RSiO2/2、またはD
T=RSiO3/2、またはT
Q=SiO4/2
は2個のシロキシ基の間に14個までの炭素原子を有する二価の任意選択的に置換されたヒドロカルビル架橋基であり、
ここでRは、30個までの炭素原子を有する任意選択的に置換されたヒドロカルビル基および1000個までのアルキレンオキシ単位を有するポリ(C-C)-アルキレンエーテル基から選択され、基Rは脂肪族不飽和を含まず、そしてここで
=R 3-pSiO1/2
=R 2-qSiO2/2
=RSiO3/2
ここで
p=1-3、
q=1-2、および
は、30個までの炭素原子を有する不飽和の任意選択的に置換されたヒドロカルビル基から選択され、
**=HRSiO1/2、D**=HRSiO2/2、T**=HSiO3/2
a2=0.01-10
b2=0-1000
c2=0-50
d2=0-5 e2=0-3
m2=1-1000、
但し、M**、D**およびT**から選択される少なくとも2つの基があるという条件である、
請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
成分(C)が白金を含むヒドロシリル化触媒から選択される、請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
成分(D)は、1から30個のケイ素原子、少なくとも1個のSi-H基、およびケイ素原子に直接的に結合していない少なくとも1個の多価芳香族基を含有する1個以上の直鎖状または環状の任意選択的に置換されたオルガノシロキサン部分を含む有機ケイ素化合物である、請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
化合物(E)は、式(3)の芳香族化合物、
【化1】

ここでRからRは、互いに同一または異なっており、そして、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-R、ここでRは20個までの炭素原子を有する飽和または不飽和の任意選択的に置換されたヒドロカルビル基である、
-O-R、ここでRは、20個までの炭素原子を有する飽和または不飽和の任意選択的に置換されたヒドロカルビル基である、からなる群から選択され、
但し、式(3)の化合物は少なくとも2個の不飽和ヒドロカルビル基を含むという条件であり、ならびに
式(4)の芳香族化合物、
【化2】

ここでR11からR20は、互いに同一または異なっており、そして、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-R21、ここでR21は20個までの炭素原子を有する飽和または不飽和の任意選択的に置換されたヒドロカルビル基である、-O-R22、ここでR22は、20個までの炭素原子を有する飽和または不飽和の任意選択的に置換されたヒドロカルビル基である、および下記式のシリルオキシ基、
-OSiR242526、ここでR24、R25およびR26は、互いに同一または異なっており、20個までの炭素原子を有する任意選択的に置換されたヒドロカルビル基から選択され、
Xは、群
単結合、
-R27-、ここでR27は、20個までの炭素原子を有する二価の直鎖状または環状の飽和の任意選択的に置換されたヒドロカルビル基である、
-C(O)-、
-S(O)-、
-S(O)-、
-S-、
-O-Si(R28-O-、ここでR28は、独立して、ハロゲン、および6個までの炭素原子を有する飽和または不飽和のヒドロカルビル基の群から選択される、
-O-、からなる群から選択され、
但し、式(4)の化合物は少なくとも2個の不飽和ヒドロカルビル基を含むという条件である、
からなる群から選択される、請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
化合物(E)は、下記式の化合物
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

からなる群から選択される、請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項9】
成分(F)は、50m/g以上のBET表面積を有する補強充填剤から選択される、請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項10】
成分(G)は、制御剤;可塑剤または柔軟剤;非補強充填剤;繊維材料、からなる群から選択される、請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項11】
成分(A)100重量部、
成分(B)0.01から100重量部
遷移金属の重量に基づいて、および成分(A)および成分(B)の全重量に基づいて、成
分(C)0.5から1000ppm
成分(D)0.01から10重量部、
成分(E)0.01から10重量部、
成分(F)0から100重量部、および
成分(G)0から100重量部を含む、
請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項12】
成分(A)100重量部に対して、
成分(D)0.05から2重量部、
および/または
成分(E)0.02から1重量部、を含む、請求項1に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化してなる硬化シリコーンゴム組成物。
【請求項14】
基材と、前記基材の表面の少なくとも一部の上の硬化シリコーンゴム組成物とを含む複合材料の製造のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物の使用。
【請求項15】
基材と、前記基材の表面上に請求項13に記載の硬化シリコーンゴム組成物とを含む複合材料である、複合材料。
【請求項16】
請求項15に記載の複合材料を製造する方法であって、残存ヒドロシリル反応基を含有する基材を請求項1から12のいずれか一項に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物で被覆し、その後、前記付加硬化型シリコーンゴム組成物は、前記基材の表面上で硬化され、そして熱可塑性樹脂を成形すること、その後同一の成形装置内で熱可塑性部品上に請求項1から12のいずれか一項に記載の付加硬化型シリコーンゴム組成物をオーバーモールディングし硬化させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、特に自己接着能力を有する付加硬化型シリコーンゴム組成物に関する。本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物(以下では液体シリコーンゴム組成物(LSR)と呼ぶことがある)は、様々な熱可塑性基材に対して自己接着能力を示す。付加硬化型LSRを熱可塑性樹脂に接着するには、通常、基材表面にプライマーを塗布する必要がある。本発明による新しい自己接着性LSR組成物は、プライマーレスの解決策を提供し、別個の二次操作プロセスの必要性を排除し、そして直接ツーショットまたはマルチショットオーバーモールディングプロセスを可能にする。近年、プライマーを使用せずに付加硬化型LSRを熱可塑性樹脂に結合させる異なる方法を扱った刊行物が多くある。これらのアプローチのほとんどは、自己接着性LSR組成物中に少なくとも1つのフェニレン基および少なくとも1つのヒドロシリル(SiH)基を含有する有機ケイ素化合物(OSC)の使用を含む。たとえば、代表的なOSC(OSC-1)を以下に示す。
【化1】
【0002】
しかしながら、典型的な付加硬化LSR配合物にOSCを単独で添加することは、強固な接着性能を生み出すのに十分ではない。金属からの良好な剥離を維持しながら熱可塑性樹脂への強固な接着を提供し、滑らかなツーショット射出成形プロセスで一体化シリコーン/熱可塑性物品を製造することを可能にするために、追加成分が通常LSR組成物に必要である。フェニレンとSiHに加えて、第3の官能基をOSC分子に組み込んで、LSRの接着性能を向上させることもできる。US6780518(US2002132891A1)は、LSRにおける接着剤としてのエポキシ官能化OSCの使用を開示している。US6645638(US2002028335A1)は、その自己接着性LSR組成物中にOSCと共にエステル化合物の選択基を使用している。US2002028335A1の実施例では、比較的大量のOSCおよびエステル化合物が使用されている。US6887932(US2002032270A1)は、LSR組成物中にOSCと共に官能性シロキサンポリマーを利用している。特許請求の範囲に記載の官能性シロキサンポリマーはLSRと不混和性であり、そしてヒドロシリル化を通してLSR中のシリコーン材料と反応することができる。US8916646は、LSRにおいて二官能性オルガノハイドロジェンポリシロキサンとOSCとの組み合わせを使用している。この二官能性ポリマーが存在しないと、接着性が損なわれる。US7,273,911は、少なくとも2つの接着促進剤を含む付加架橋性シリコーン組成物に関する。
【発明の概要】
【0003】
型中でゴム組成物を加硫して硬化生成物を形成する際によく見られる問題は、添加剤がゴム組成物から移動して型に付着する傾向があることである。型内でゴム組成物を繰り返し硬化させると、それによって材料が型上に蓄積する。型上への材料の蓄積は一般に「型汚れ」と呼ばれる。型汚れは成形品の美的価値を低下させ、成形品の物理的特性を低下させる可能性がある。型の清掃はかなり費用がかかり、型を損傷および/または品質を落とす傾向がある。さらに型を洗浄するときには生産が失われる。本発明はまた、型汚れを減らし、それによって型を洗浄しなければならない頻度を減らすことを試みる。
【0004】
OSCのような多価芳香族化合物および芳香族ジアリル化合物(DAC)のような芳香族化合物は、高温でのエージング中および日光を含むUV光への暴露後の酸化による色形成および黄変を受けることがよく知られている。従って本発明の他の目的は、シリコーンゴムが離型工程中にプラスチックから剥がれ、不良品が生じるという可能性がある典型的な多成分成形プロセス中の層間剥離問題を回避するために、低レベルの使用にて、特に120℃のような高温でも有機基材への強い結合を提供することである。また、OSCおよびDAC添加剤の芳香族特性は、シロキサンマトリックスとの相溶性が限られているため、その後の硬化ゴム製品に濁りおよび曇りが生じる。濁りおよび曇りは、光学的に透明な物品の製造にとって有害であり、そしてまた顔料を使用して物品を着色する能力に悪影響を及ぼす可能性がある。シリコーン組成物に高レベルの非シロキサン添加剤を配合すると、加硫シリコーンゴムが脆化する可能性があることも知られている。硬化した物品は柔軟性を失いそして脆くなる。
【0005】
上記の問題を克服する試みにおいて、本発明は、驚くべきことに、少なくとも1つの多価芳香族基を含む有機ケイ素化合物(OSC)と少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル基を含む芳香族化合物との相乗作用を明らかにし、その芳香族化合物は、シロキサン基を含まず、特に、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリスルホン、ポリ(ビニルアルコール)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロースおよびガラスを含む、その表面に残存ヒドロキシル基を含む任意の基材、またはポリアミドおよびポリエーテルイミドを含む、SiHと反応することができる残存官能基を含む任意の基材へのLSRの結合を可能にするジアリル化合物(DAC)である。これらの芳香族化合物はLSRと混和せず、LSR表面に移動することがあり得る。
【0006】
本発明によれば、
(A)少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル残基を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、
(B)少なくとも1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサン、
(C)遷移金属を含む、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒、
(D)化合物(B)とは異なる、ケイ素原子に直接結合していない少なくとも1つの多価芳香族基、および少なくとも1つのSi-H基を含む少なくとも1つの有機ケイ素化合物、
(E)シロキサン基を含まず、そしてエステル基を含まない、少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル残基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、
(F)任意選択にて1つ以上の充填剤、
(G)任意選択にて1つ以上の補助添加剤、
を含む付加硬化型シリコーンゴム組成物が提供される。
【0007】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物の好ましい実施形態において、成分(A)は、一般式(1)の1つ以上のポリオルガノシロキサンから選択され、
[M (1)
ここで
a=0-10
b=0-2000
c=0-50
d=0-10
e=0-300
m=1-1000、ここで、
a+b+c+d+e≧2、そして
M=RSiO1/2、またはM
D=RSiO2/2、またはD
T=RSiO3/2、またはT
Q=SiO4/2
Zは、前に定義したように2個のシロキシ基の間に14個までの炭素原子を有する二価の任意選択的に置換されたヒドロカルビル架橋基であり、
ここでRは、30個までの炭素原子を有する任意選択的に置換されたヒドロカルビル基および1000個までのアルキレンオキシ単位を有するポリ(C-C)-アルキレンエーテル基から選択され、基Rは脂肪族不飽和を含まず、そしてここで
=R 3-pSiO1/2
=R 2-qSiO2/2
=RSiO3/2
ここで
p=1-3、
q=1-2、そして
は、30個までの炭素原子を有する不飽和の任意選択的に置換されたヒドロカルビル基から選択され、但しM、DおよびTから選択される少なくとも2つの基があるという条件である。
【0008】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物の好ましい実施形態において、成分(B)は、一般式(2)の1つ以上のポリオルガノハイドロジェンシロキサンから選択され、
[M a2 b2 c2d2e2m2 (2)
ここでシロキシ単位の
=M、上記定義通り、またはM**
=D、上記定義通り、またはD**
=T、上記定義通り、またはT**
Qは上記定義通り、
Zは上記定義通り、
**=HRSiO1/2、D**=HRSiO2/2、T**=HSiO3/2
a2=0.01-10、好ましくは=2-5、最も好ましくは=2
b2=0-1000、好ましくは=10-500
c2=0-50、好ましくは=0
d2=0-5、好ましくは=0
e2=0-3、好ましくは=0
m2=1-1000、好ましくは=1-500、最も好ましくは=1、
但し、M**、D**およびT**から選択される少なくとも2つの基があるという条件である。
【0009】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物の好ましい実施形態において、成分(C)は白金を含むヒドロシリル化触媒から選択される。
【0010】
成分(D)は、ケイ素原子に直接結合していない少なくとも1つの多価芳香族基、および少なくとも1つのSi-H基を含有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物であり、化合物(B)とは異なる。「ケイ素原子に直接結合していない」という用語は、多価芳香族基の一部である炭素原子へのSi原子の結合がないこと、特にSi-フェニレン-Si基がないことを意味することを意図している。
【0011】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物の好ましい実施形態において、成分(D)は、1から30個のケイ素原子、少なくとも1個のSiH基、およびケイ素原子に直接結合していない少なくとも1個の多価芳香族基を含有する、直鎖または環状の任意選択的に置換されたオルガノシロキサン部分を含む有機ケイ素化合物である。
【0012】
少なくとも1つの芳香族化合物(E)は、少なくとも2個、好ましくは2個、3個または4個、より好ましくは2個の不飽和ヒドロカルビル基、好ましくはアリル基を有する芳香族化合物である。芳香族化合物(E)は、シロキサン基を含まない、すなわち、Si-O-Si部分を含まない。芳香族化合物(E)もエステル基(-C(=O)-O-または-O-C(=O)-)を含まない。エステル基を含まない芳香族化合物(E)の使用は、120℃のような高温で、ポリカーボネートのようなプラスチックへの接着を驚くほど向上させる。これにより、離型工程中にシリコーンゴムがプラスチックから剥がれ、不良品が生じる可能性があるという典型的な多成分成形プロセス中の離層の問題が回避される。
【0013】
エステル官能性化合物は型汚れを引き起こす可能性があるので、好ましくは本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物は、分子内に少なくとも1つのエステル基と少なくとも1つの脂肪族不飽和基を有する化合物を含まない。さらに好ましくは、付加硬化型シリコーンゴム組成物は、分子内に少なくとも1つのエステル基を有する化合物を含まない。
【0014】
不飽和ヒドロカルビル基は、特に、好ましくは20個まで、好ましくは6個までの炭素原子および任意選択的に1個以上のヘテロ原子を有する不飽和脂肪族基である。最も好ましくは、不飽和ヒドロカルビル基は、例えば炭素原子または酸素原子(-O-)を介して芳香族基に結合することができるアリル基を含む。芳香族化合物(E)は、少なくとも1個の芳香族基、好ましくは6から10個の炭素原子を有する、最も好ましくは少なくとも1個または2個のフェニル部分(これはリンカー基により結合され得るかまたはビフェニル基としても存在し得る)を含む。芳香族化合物(E)中の芳香族基は、不飽和ヒドロカルビル基とは別に、追加の、好ましくは1または2個の置換基を有していてもよい。そのような追加の置換基は、例えば、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-アルコキシ、およびトリ(C1-C6-ヒドロカルビル)シロキシから選択することができる。
【0015】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物の特に好ましい実施形態では、芳香族化合物(E)は、少なくとも2個、3個または4個のアリル基、好ましくは2個のアリル基を含む化合物である。特に好ましくは、ジアリル化合物(E)であって、これは式(3)の芳香族化合物、
【化2】

ここでRからRは、互いに同一または異なっており、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-R、ここでRは、20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を有する飽和または不飽和の、任意選択にて置換されたヒドロカルビル基である、-O-R、ここでRは、20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を有する飽和または不飽和の任意選択にて置換されたヒドロカルビル基である、からなる群から選択され、
但し、式(3)の化合物は、少なくとも2個の不飽和、特に脂肪族ヒドロカルビル基、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは2個のアリル基を含むという条件であり、ならびに
式(4)の芳香族化合物、
【化3】

ここでR11からR20は互いに同一でも異なっていてもよく、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-R21、ここでR21は、20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を有する飽和または不飽和の任意選択にて置換されたヒドロカルビル基である、-O-R22、ここでR22は、20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を有する飽和または不飽和の任意選択にて置換されたヒドロカルビル基である、および式-OSiR242526のシリルオキシ基、ここでR24、R25、およびR26は、互いに独立して、20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を有する任意選択にて置換されたヒドロカルビル基から選択される、からなる群から選択され、
Xは、
単結合、
-R27-、ここでR27は、20個までの炭素原子を有する二価の直鎖または環状の飽和の任意選択にて置換されたヒドロカルビル基である、
-C(O)-、
-S(O)-、
-S(O)-、
-S-、
-O-Si(R28-O-、ここでR28は、独立して、ハロゲン、および6個までの炭素原子を有する飽和または不飽和のヒドロカルビル基の群から選択される、ならびに
-O-、からなる群から選択され、
但し、式(4)の化合物は、少なくとも2個の不飽和、特に脂肪族ヒドロカルビル基、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは2個のアリル基を含むという条件である、からなる群から選択される。
【0016】
式(3)または(4)の化合物(E)はまた、アリル基およびビニル基(すなわち、-CH基に結合していない-CH=CH-基)を含み得る。そのようなビニル基を含む基の例は、式-O-Si(-CH(-CH=CH)の基、または芳香族基に結合したビニル基が挙げられる。
【0017】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物のさらに好ましい実施形態では、ジアリル化合物(E)は、下記式の化合物からなる群から選択される。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】
【0018】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物のさらに好ましい実施形態では、成分(F)は、50m/g以上のBET表面積を有する補強充填剤から選択される。
【0019】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物のさらに好ましい実施形態において、それは
100重量部の(A)成分、
0.01から100重量部の(B)成分、
遷移金属の重量に基づいて、および成分(A)および(B)の総重量に基づいて、0.5から1000、好ましくは1から100ppmの成分(C)、
0.01から10重量部の(D)成分、
0.01から10重量部の成分(E)、
0から100重量部の成分(F)、ならびに
0から100重量部の成分(G)、を含む。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物は、成分(A)100重量部あたり
0.05から2重量部の成分(D)、好ましくは0.1から1.75重量部の成分(D)、
および/または
0.02から1重量部の(E)成分、好ましくは0.03から0.75重量部の成分(E)、更に好ましくは0.05から0.5重量部の成分(E)を含む。
【0021】
本発明はさらに、本明細書で定義した付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化することによって得られる硬化シリコーンゴム組成物に関する。
【0022】
本発明はさらに、基材と、基材の表面の少なくとも一部の上の硬化シリコーンゴム組成物とを含む複合材料の製造のための、本明細書で定義された付加硬化型シリコーンゴム組成物の使用に関する。
【0023】
本発明はさらに、基材と、このような基材の表面上に本明細書で定義される硬化シリコーンゴム組成物とを含む複合材料に関する。好ましくはこのような複合材料において、基材はポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、セルロース、ガラス、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
本発明はさらに、複合材料の製造方法に関し、ここで残存ヒドロシリル反応性基(例えば、ヒドロキシル基)を含有する基材または担体を、前述の請求のいずれかに定義したように付加硬化型シリコーンゴム組成物で被覆または埋め込んだ後、付加硬化型シリコーンゴム組成物を前記基材の表面上で硬化する。そのような方法の好ましい態様において、基材は熱可塑性樹脂であり、この方法は最初に熱可塑性樹脂の成形を含み、その後本明細書で定義した付加硬化型シリコーンゴム組成物を同じ成形装置内で熱可塑性部品上にオーバーモールドしそして硬化する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は提案されたLSRと基材との間の結合メカニズムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
成分(A)
本発明の組成物は、少なくとも2個の不飽和ヒドロカルビル残基を有する少なくとも1つのポリオルガノシロキサン(成分(A))を含む。成分(A)は、平均して少なくとも2個のアルケニル基を有する1つ以上のポリオルガノシロキサンを含み得る。適切な成分(A)は、一般式(1)によって表すことができ、
[M (1)
ここで式(1)中の指数はシロキシ単位M、D、TおよびQの比を表し、これはポリシロキサン中にブロック状またはランダムに分布することができる。ポリシロキサン内では、各シロキサン単位は同一でも異なっていてもよく、そして
a=0-10
b=0-2000
c=0-50
d=0-10
e=0-300
m=1-1000
a+b+c+d+e≧2、および
M=RSiO1/2、またはM
D=RSiO2/2、またはD
T=RSiO3/2、またはT
Q=SiO4/2
Zは上述にて定義したように2個のシロキシ基の間に14個までの炭素原子を有する二価の任意選択にて置換されたヒドロカルビル架橋基であり、
ここでRは、30個までの炭素原子を有する任意選択にて置換されたヒドロカルビル基および1000個までのアルキレンオキシ単位を有するポリ(C-C)-アルキレンエーテル基から選択され、基Rは脂肪族不飽和を含まず、そしてここで、
=R 3-pSiO1/2
=R 2-qSiO2/2
=RSiO3/2
ここで
p=1-3、
q=1-2、そして
は、30個までの炭素原子を有する不飽和の任意選択にて置換されたヒドロカルビル基から選択され、不飽和の任意選択にて置換されたヒドロカルビルは、好ましくはアルケニル基であり、
但し、M、DおよびTから選択される少なくとも2つの基があるという条件である。
【0027】
好ましくは、a、b、c、dおよびmは、25℃での成分(A)の粘度が100000mPa.s未満(25℃でD=10s-1の剪断速度で測定)であるようなものである。
【0028】
成分(A)の粘度は、単一成分(A)または成分(A)の混合物の粘度を示す。後者の混合物の場合には、25℃で100000mPa.sを超える粘度を有し得る個々の成分(A)、例えばQおよび/またはT単位を含む樹脂成分(A)の存在が含まれる。
【0029】
式(1)において、指数は、平均数分子量Mに基づく平均重合度Pを適切に表すべきである。
【0030】
式(1)において、
M=RSiO1/2、またはM
D=RSiO2/2、またはD
T=RSiO3/2、またはT
Q=SiO4/2
上記のシロキシ基間の架橋基である二価のZ、
ここで各Rは、同じでも異なっていてもよく、好ましくは、30個までの炭素原子を有する任意選択にて置換されたアルキル、30個までの炭素原子を有する任意選択にて置換されたアリール、1000個までのアルキレンオキシ単位を有するポリ(C-C)-アルキレンエーテルから選択され、基Rは脂肪族不飽和を含まず、そして
ここでM=R 3-pSiO1/2、D=R 2-qSiO2/2、T=RSiO3/2
ここで
p=0-3、好ましくは1-3、
q=1-2、そして
Zは以下の通りである。
【0031】
Rは、好ましくは、n-、isoもしくはtertアルキル、アルコキシアルキル、C-C30-環状アルキル、またはC-C30-アリール、アルキルアリール、これらの基はさらに1以上のO-、N-、S-、またはF-原子で置換されていてよく、または500個までのアルキレンオキシ単位を有するポリ(C-C)-アルキレンエーテルから選択され、基Rは脂肪族不飽和を含まない。
【0032】
適切な一価炭化水素ラジカルの例には、アルキルラジカル、好ましくは、例えばCH-、CHCH-、(CHCH-、C17-、およびC1021-、ならびに、脂環式ラジカル、例えばシクロヘキシルエチル、アリールラジカル、例えばフェニル、トリル、キシリル、アラルキルラジカル、例えばベンジルおよび2-フェニルエチルが含まれる。好ましい一価ハロ炭化水素ラジカルは式C2n+1CHCH-を有し、ここでnの値は1から10であり、例えば、CFCHCH-、CCHCH-、C13CHCH-、C-O(CF-CF-O)1-10CF-、F[CF(CF)-CF-O]1-5-(CF0-2-、C-OCF(CF)-およびC-OCF(CF)-CF-OCF(CF)-がある。
【0033】
Rについての好ましい基は、メチル、フェニル、3,3,3-トリフルオロプロピル、特に好ましいのはメチルである。
【0034】
は、C=C-基含有基(アルケニル基)、例えば、n-、iso-、tertもしくは環状アルケニル、C-C30-シクロアルケニル、C-C30-アルケニルアリール、シクロアルケニルアルキル、ビニル、アリル、メタアリル、3-ブテニル、5-ヘキセニル、7-オクテニル、エチリデン-ノルボルニル、スチリル、ビニルフェニルエチル、ノルボルネニル-エチル、リモネニル、任意選択にて1以上のO-またはF-原子で置換される、またはC≡C-基含有基(アルキニル基)、任意選択にて1以上のO-またはF-原子で置換される、を含む脂肪族不飽和基から選択される。
【0035】
アルケニルラジカルは、好ましくは末端ケイ素原子に結合し、オレフィン官能基は高級アルケニルラジカルのアルケニル基の末端にあり、アルケニルシロキサンの製造に使用されるアルファ-、オメガ-ジエンの入手容易性のためである。
【0036】
についての好ましい基は、ビニル、5-ヘキセニル、シクロヘキセニル、リモニル、スチリル、ビニルフェニルエチルである。最も好ましい基Rはビニルである。
【0037】
Zは、例えば、14個までの炭素原子を有する二価の脂肪族または芳香族のn-、iso-、tert-またはシクロ-アルキレン、アリーレンまたはアルキレンアリール基を含む。Zは2つのシロキシ単位の間に架橋要素を形成する。Z基の含有量は、全シロキシ単位の30モル%を超えず、好ましくは20モル%を超えない。好ましくはZはない。適切な二価炭化水素基Zの好ましい例には、任意のアルキレン残基、好ましくは例えば、-CH-、-CHCH-、-CH(CH)CH-、-(CH-、-CHCH(CH)CH-、-(CH-、-(CH-、および-(CH18-;シクロアルキレンラジカル、例えばシクロへキシレン;アリーレンラジカル、例えばフェニレン、キシレン、および炭化水素ラジカルの組み合わせ、例えば、ベンジレン、すなわち、-CHCH-C-CHCH-、-CCH-が挙げられる。好ましい基は、アルファ,オメガ-エチレン、アルファ,オメガ-ヘキシレンまたは1,4-フェニレンが含まれる。
【0038】
さらなる例としては、二価のハロ炭化水素ラジカルZ、例えば1個以上の水素原子が、フッ素、塩素または臭素のようなハロゲンで置き換えられた二価の炭化水素基Zが挙げられる。好ましい二価ハロ炭化水素残基は式-CHCH(CF1-10CHCH-、例えば、-CHCHCFCFCHCH-を有し、または適切な二価炭化水素エーテルラジカルおよびハロ炭化水素エーテルラジカルの他の例には、-CHCHOCHCH-、-C-O-C-、-CHCHCFOCFCHCH-、および-CHCHOCHCHCH-が含まれる。
【0039】
好ましくはR、Rおよび/またはZラジカルを含有する成分(A)としてのそのようなポリマーは、例えば、アルケニル-ジメチルシロキシまたはトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンあり、それは鎖中に他のシロキサン単位、例えばアルケニルメチルシロキシ基、ジフェニルシロキシ基を含むことができ、例えばジメチルシロキシ基またはトリメチルシロキシ基を末端とするポリ(ジメチル-co-ジフェニル)シロキサン鎖を形成する。
【0040】
本発明の組成物の広く記載される成分(A)は、酸素および/または二価の基Zによって結合された2個以上のケイ素原子を含有する任意のポリオルガノシロキサン化合物であり得、ここでケイ素はケイ素原子1個当たり0から3個の一価の基に結合し、但しポリオルガノシロキサン化合物が少なくとも2個のケイ素結合不飽和炭化水素残基を含むという条件である。
【0041】
ラジカルRおよび/またはRを有するシロキサン単位は、各ケイ素原子について等しいかまたは異なり得る。好ましい実施形態では、構造は下記の通りである。
3-pSiO[RSiO]m1[RRSiO]SiR 3-p
p=0-3、好ましくは1、
m1=10-2000、好ましくは100-1000、
n=0-500、好ましくは0-200。
【0042】
本発明の組成物のための1つの好ましいポリオルガノシロキサン成分(A)は実質的に直鎖のポリオルガノシロキサン(A1)である。「実質的に直鎖」という表現は、0.2モル%以下(微量)のタイプTまたはQのシロキシ単位を含有するポリオルガノシロキサン(A1)を含む。これは、ポリマー(A)が好ましくは直鎖の、好ましくは流動性の流体(A1)であることを意味し、
3-pSiO(RSiO)m1SiR3-p (1a)
ここでR、R、pおよびm1は、上で定義した通りであり、但し1分子あたり少なくとも2個のアルケニル基が存在するという条件である。好ましい構造としては以下が含まれる。
ViMe3-pSiO(MeSiO)10-2000SiMe3-pVi (1b)
PhMeViSiO(MeSiO)10-2000SiPhMeVi (1c)
【0043】
アルケニル含有シロキサン(A)の群において、成分(A2)および/または(A3)としての第二または第三のシロキサンの添加が好ましい。成分(A2)および(A3)いわゆるビニル豊富ポリマーの目的は、機械的性質および架橋密度を変えることである。
【0044】
ポリマー(A2)は、式(1d)から(1i)のポリマー、すなわち、T基およびQ基の濃度が0.2モル%未満である追加のアルケニル側基を有する直鎖ポリオルガノシロキサンまたは上記ポリマータイプ(A1)または(A2)よりも高濃度のT基およびQ基を有するポリオルガノシロキサンからなる群から選択される。
【0045】
ポリマー(A2)は、6の式で表される。
3-p(RSiO)b1(RRSiO)b1xSiR3-p (1d)
MeSiO(MeSiO)b1(MeRSiO)b1xSiMe (1e)
MeSiO(MeSiO)b1(MeRSiO)b1xSiMe (1f)
ここで
b1=>0-2000
b1x=>0-500
b1+b1x=>10-100
、R、pは上記で定義した通りである。
【0046】
=好ましくはビニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、リモニル、スチリル、ビニルフェニルエチル。最も好ましいRはビニルである。
Rについての好ましい基は、メチル、フェニル、3,3,3-トリフルオロプロピルであり、最も好ましいのはメチルである。
b1xの好ましい値は0.5*b1未満、好ましくは0.0001*b1から0.25*b1、より好ましくは0.0015*b1から0.2*b1である。
【0047】
(A2)のさらに好ましい構造は、下記のものである。
ViMe3-pSiO(MeSiO)10-2000(MeViSiO)1-1000SiMe3-pVi (1g)、
MeSiO(MeSiO)10-2000(MeViSiO)1-1000SiMe (1h)、
PhMeViSiO(MeSiO)10-2000(MePhSiO)1-1000SiPhMeVi (1i)そして
ここで、Me=メチル、Vi=ビニル、Ph=フェニル、およびp=0から3、好ましくはp=1である。
【0048】
好ましい態様において、成分(A)は成分(A1)と(A2)の混合物であり、より好ましくは
3-pSiO(RSiO)m1SiR3-p (1a)
および
3-p(RSiO)b1(RRSiO)b1xSiR3-p (1d)
の混合物であり、
ここで、R、R、p、q、m1、b1およびb1xは上で定義された通りであり、そしてRは好ましくはメチルでありそしてRは好ましくはビニルである。
【0049】
第三の好ましく任意選択的に使用される成分のポリマー(A)は、分岐のポリマー(A3)を含み、これは式(4a)のものから選択されるのが好ましく、ここでアルケニル基を含むポリオルガノシロキサン(A3)は0.2モル%を超えるT=RSiO3/2またはQ=SiO4/2-単位を有する。
[M0.4-40-10000-500-101-1000 (4a)
ここで
M=RSiO1/2、またはM
D=RSiO2/2、またはD
T=RSiO3/2、またはT
Q=SiO4/2
ここでM、D、およびTは上記定義通りであり、不飽和基Rを有する。このようなM、DおよびT単位の量は、全シロキシ単位を基準として、好ましくは0.001から20モル%、より好ましくは0.01から15モル%、最も好ましくは0.1から10モル%である。
【0050】
好ましい分岐ポリマー(A3)は、少なくとも1つの分岐単位(T=RSiO3/2、またはT、Q=SiO4/2)を含むシリコーン樹脂を含み、それは、とりわけ組成物に引張強度などの強度を付与すると同時にその硬度を増加させるのに好ましい。より具体的には、シリコーン樹脂は、M=RSiO1/2またはMと、T=RSiO3/2、TおよびQ=SiO4/2から選択される少なくとも1つの単位と、D=RSiO2/2またはDから選択される任意選択的なD単位とを含む。
【0051】
T単位およびQ単位に対するM単位の組み合わせの場合のモル比は、好ましくは、
M/(Q+T)=0.6から1.2、好ましくは0.7から1.1である。
【0052】
シリコーン樹脂は、例えば、適切なアルコキシシランまたはクロロシランを上記組成を満たすような比率で加水分解することによって合成することができる。
【0053】
付加硬化型シリコーンゴム組成物の好ましい態様は、(A1)および(A2)から選択される少なくとも1つのポリオルガノシロキサンと、(A3)から選択される少なくとも1つのポリオルガノシロキサンとを含む。
【0054】
副指数の範囲は、数平均分子量Mに応じて可能な平均重合度Pの範囲を規定する。
【0055】
指数は、後に定義されるような適切な粘度に対応し、そして粘度調整のための溶媒を全く含まないポリマーを記載する。
【0056】
好ましい分岐ポリオルガノシロキサン(A2)および(A3)は通常、より高濃度の不飽和基Rを有する。分岐ポリマー(A3)は、例えば、US5109095に記載されている。好ましくは、分岐ビニル豊富ポリマー(A3)は、D:T>10:1、好ましくは>33:1、および/またはそれぞれ(M:Q)=0.6-4:1、例えば[M0.7 0.05Q]10-500 (1j)の範囲を有する。
【0057】
これら全てのポリマーは、トリオルガノシロキサン末端ポリジオルガノシロキサンを製造するための慣用の方法のいずれかにより製造することができる。例えば、適切な割合の適切な加水分解性シラン、例えば、ビニルジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシランおよびジメチルジクロロシラン、またはその対応するアルコキシシランは、共加水分解および縮合することができる。他の反応経路は、1,3-ジビニルテトラオルガノジシロキサン、例えば、対称ジビニルジメチルジフェニルシロキサンまたはジビニルテトラメチルシロキサン、これはポリジオルガノシロキサンの末端基を備えている、これは適切なポリジオルガノシロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンで、酸性または塩基性触媒の存在下で平衡化され得る、の平衡化反応に亘って交互に進行し得る。
【0058】
好ましい実施形態では、ポリマー成分(A)は、式(1a)および/または式(1d)および/または(1j)のポリマーの混合物であり、これにより混合物は、混合物(A)の全シロキシ単位の平均で好ましくは2モル%未満のアルケニル含有量を有し、これによりポリマー(A1)は(A2)または(A3)よりも多い量で存在する。
【0059】
本発明の目的のために上記で定義されたポリジオルガノシロキサン(A)の粘度は、好ましくは環状ポリジオルガノシロキサンを本質的に含まないポリオルガノシロキサン(1時間150℃20ミリバールについて測定して1重量%未満、好ましくは0.5重量%)を指す。
【0060】
GPC測定により測定されたポリマー(A)のシロキサン単位(M、D、T、Q)の平均重合度P対平均数モル重量Mに基づくポリスチレン標準は、P>10から2000の範囲内であることが好ましく、40から1000の範囲内であることがさらに好ましい。このようなポリマーの粘度は、25℃、剪断速度D=10s-1で、好ましくは10から100,000mPa・sの範囲、より好ましくは40から70,000mPa・sの範囲である。
【0061】
好ましくは、成分(A)のアルケニル含有量は、ケイ素原子に結合した全有機基を基準にして0.001から20モル%、特に0.01から10モル%の範囲内である。
【0062】
成分(A)のアルケニル含有量は、本明細書ではHNMRによって決定することができる-A.L. Smith (ed.): The Analytical Chemistryof Silicones, J. Wiley & Sons 1991 Vol. 112 pp. 356 et seq. in ChemicalAnalysis ed. by J.D. Winefordner参照。
【0063】
成分(B)-架橋剤
SiH単位を含む好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサン(B)は、一般式(2)で表すことができる。
[M a2 b2 c2d2e2m2 (2)
ここでシロキシ単位
=M、上記定義通り、またはM**
=D、上記定義通り、またはD**
=T、上記定義通り、またはT**
Q、上記定義通り、
Z、上記定義通り、
**=HRSiO1/2、D**=HRSiO2/2、T**=HSiO3/2
a2=0.01-10、好ましくは=2-5、最も好ましくは=2、
b2=0-1000、好ましくは=10-500
c2=0-50、好ましくは=0
d2=0-5、好ましくは=0
e2=0-3、好ましくは=0
m2=1-1000、好ましくは=1-500、最も好ましくは=1、
但し、M**、D**、およびT**から選択される少なくとも2つの基があることを条件とする。
【0064】
好ましくは、成分(B)は、メチルまたはフェニル基のみ、さらにより好ましくは有機基としてメチル基のみを有するポリシロキサンから選択される。
【0065】
好ましくは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(B)は、少なくとも10個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは少なくとも20個、さらにより好ましくは少なくとも25個、最も好ましくは少なくとも30個のケイ素原子を有する。
【0066】
シロキシ単位は、ポリマー鎖中にブロックまたはランダムに分布することができる。
【0067】
上記指数は、平均数分子量Mに基づく平均重合度Pを表すものとする。
【0068】
分子中に存在するM、D、TおよびQ単位の範囲は、流体、流動性ポリマー、液体および固体樹脂を表すほぼ全ての値をカバーすることができる。液体直鎖、環状または分岐のシロキサンを使用することが好ましい。場合により、これらのシロキサンは、合成から残っている微量のC-C-アルコキシまたはSi-ヒドロキシ基をさらに含むことができる。
【0069】
本発明の組成物中の成分(B)の好ましい構造は式(2a)から(2e)のシロキサンである。
a1(R)3-a1Si[RHSiO][RSiO][RRSiO]Si(R)3-a1a1 (2a)
より詳細には;
HRSiO(RSiO)(RRSiO)(RHSiO)SiRH (2b)
HMeSiO(MeSiO)(RRSiO)(MeHSiO)SiMeH (2c)
MeSiO(MeHSiO)SiMe (2d)
MeSiO(MeSiO)(RRSiO)(MeHSiO)SiMe (2e)
ここでRおよびRは上記で定義した通りであり、Rは、好ましくはメチルおよび/またはフェニルであり、Rは好ましくはビニルであり、指数a1は0-1、好ましくは0であり、そして好ましくは
x=2-1000、好ましくは=2-500、
y=0-650、好ましくは=0-100、
z=0-65、好ましくは=0
2≦x+y+z<1000、好ましくは10≦x+y+z<650である。
【0070】
最も好ましくは、
MeSiO(MeSiO)(RRSiO)(MeHSiO)SiMe (2e)
ここでx、y、zは上記定義通りであり、即ち、zは好ましくは0である。
【0071】
さらに、下記式の樹脂状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの使用も可能である。
{[T][R291/2n2m2 (2f)
{[SiO4/2}][R291/2n2[M0,01-10[T0-50[D0-1000m2 (2g)
ここで
、M、Dは上記定義通りであり、
n2=0から3
m2は上記定義通りであり、
29は、水素、C-C25-アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-、iso-、およびtert-ブチル、アルカノール、例えば、アシル、アリール、-N=CHR、例えば、ブタノノキシム、アルケニル、例えばプロペニルであり、
ここで各式(2e)-(2f)において、全Si原子に対するSiH基のモル比は、好ましくは0.01を超え、好ましくは最大0.7であり、そしてSi原子の総数は、好ましくは少なくとも7個、より好ましくは少なくとも15個、さらにより好ましくは少なくとも20個である。
【0072】
化合物(2f)の1つの好ましい実施形態は、例として、モノマー化合物からポリマー化合物によって提供され、それは、式[(MeHSiO0.5SiO4/21,5-1000(式中、指数kは0.3から4)により記載され得る。そのような液体または樹脂状分子は、ケイ素原子に対して10モル%までの有意な濃度のSiOH-および/または(C-C)-アルコキシ-Si基を含有することができる。
【0073】
本発明の組成物中の成分(B)のための好ましい好適な化合物の具体例には以下が含まれ、
MeSiO-(MeHSiO)2-50-SiMe
MeSiO-(MeHSiO)2-50(MeSiO)1-100SiMe
(MeHSiO)
HMeSiO-(MeHSiO)0-60(MeSiO)1-250SiMeH、
HMeSiO-(MeSiO)0-30(MePhSiO)0-30(MeHSiO)2-50SiMeH、
MeSiO-(MeSiO)0-30(MePhSiO)0-30(MeHSiO)2-50SiMe
MeSiO-(MeSiO)0-30(PhSiO)0-30(MeHSiO)2-50SiMe
ここで各式において、全Si原子に対するSiH基のモル比は、好ましくは0.01を超え、そしてSi原子の総数は、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも10、さらに好ましくは少なくとも15、最も好ましくは少なくとも20の原子である。
【0074】
最も好ましくは、式MeSiO-(MeHSiO)2-50(MeSiO)0-100SiMeの化合物であり、ここでSiH含有量は、少なくとも0.2mmol/g、好ましくは少なくとも1.5mmol/g、さらにより好ましくは2mmol/gである。
【0075】
成分(B)は、1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサンポリマーの単一成分又はそれらの混合物として使用することができる。
【0076】
硬化速度の増加が必要な場合、硬化速度をより短い時間に調整するために、HMeSiO0,5-単位またはホモMeHSiO-ポリマーを有するいくつかのオルガノポリシロキサン(B)を使用することが好ましい。
【0077】
硬化速度をさらに増加させる必要がある場合、これは、例えば、SiH対Si-アルケニルのモル比を増加させること、または触媒(C)の量を増加させることによって達成することができる。
【0078】
成分(B)は、好ましくは、25℃において、2から2000mPa・s、好ましくは2から1000mPa・s、さらにより好ましくは5から100mPa・s(好ましくは剪断速度D=10s-1で測定)の粘度を有する。
【0079】
好ましくは、架橋剤(B)は、1分子当たり少なくとも2個以上、より好ましくは3個以上、ある場合では15個以上、および20個以上のSiH基を有するべきである。
【0080】
成分(B)は成分(D)とは異なる化合物である。
【0081】
成分(C)-触媒
本発明の組成物は、US3,159,601、US3,159,662、US3,419,593、US3,715,334、US3,775,452およびUS3,814,730に教示の、金属が、Ni、Ir、Rh、Ru、Os、PdおよびPt化合物の群から選択される、ヒドロシリル化を触媒する能力を有する有機金属化合物、塩または金属の群から選択される成分(C)として少なくとも1つのヒドロシリル化触媒を含有する。
【0082】
本発明の組成物のヒドロシリル化反応のための成分(C)は触媒化合物であり、これは、成分(B)のケイ素結合水素原子と成分(A)のケイ素結合オレフィン系炭化水素置換基との反応を促進する。金属または有機金属化合物は一般に白金族金属をベースとしている。理論に縛られることを望むものではないが、触媒(C)は、シグマ-およびパイ-結合炭素配位子、ならびにS、NまたはP原子を有する配位子、金属コロイドまたは前述の金属の塩との錯体を含むものと考えられる。触媒は、金属、またはその金属の化合物もしくは錯体を担持したシリカゲルまたは粉末木炭のような担体上に存在することができる。好ましくは、成分(C)の金属は任意の白金錯体化合物である。
【0083】
本発明のポリオルガノシロキサン組成物中の典型的な白金含有触媒成分は、錯体を形成することができるあらゆる形態の白金(0)、(II)または(IV)化合物である。好ましい錯体は、ポリオルガノシロキサン組成物中へのその容易な分散性のために、Pt-(O)-アルケニル錯体、例えばアルケニル、シクロアルケニル、アルケニルシロキサン、例えばビニルシロキサンである。
【0084】
白金錯体の特に有用な形態は、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン(ビニル-M2またはKarstedt 触媒:
【化8】

)のような脂肪族不飽和有機ケイ素化合物とのPt(0)錯体であり、
参照により本明細書に組み入れられる例えばUS3,419,593に開示されるように、シクロヘキセン-Pt、シクロオクタジエン-Ptおよびテトラビニルテトラメチルテトラテトラシロキサン(ビニル-D4)-Pt、例えばAshbyの触媒、実験式Pt[(CSiO)を有するテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン中のPt(0)錯体、が特に好ましい。
【0085】
いわゆるLamoreaux触媒もまた好ましく、これは、塩化白金酸六水和物とオクチルアルコールから得られる白金(II)錯体化合物である(例えばUS3,197,432またはUS3,220,972に記載)。好ましくはPt(0)またはPt(II)触媒であり、AshbyおよびLamoreaux白金触媒が好ましい。
【0086】
本発明の組成物に使用される白金含有触媒成分の量は、本発明の組成物の他の全ての成分の存在下で必要な時間(B)で所望の温度で(A)と(B)の間のヒドロシリル化を促進するのに十分な量がある限り、狭く限定されない。該触媒成分の正確な必要量は、特定の触媒、他の抑制化合物の量およびSiH対オレフィン比に依存しそして容易に予測できない。しかしながら、白金触媒の場合、前記量はコスト上の理由からできるだけ少なくすることができる。他の不明な抑制痕跡の存在下での硬化を確実にするために、有機ケイ素成分(A)および(B)の100万重量部ごとに1重量部を超える白金を添加するのが好ましい。本発明の組成物のために、適用される白金含有触媒成分の量は、ポリオルガノシロキサン成分(A)と(B)の重量当たり1から200ppm、好ましくは2から100ppm、特に好ましくは4から60ppmの白金を与えるのに十分な量であるのが好ましい。好ましくは前記量は(A)と(B)の合計当たり少なくとも4重量ppmの白金である。
【0087】
ヒドロシリル化触媒はまた、光活性化され得る触媒の群から選択され得る。これらの光活性化触媒は、Pt、Pd、Rh、Co、Ni、IrまたはRuからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有することが好ましい。光活性化することができる触媒は、好ましくは白金化合物を含む。光活性化可能な触媒は、好ましくは、有機金属化合物の中から選択され、すなわち、炭素含有配位子、またはそれらの塩を含む。好ましい実施形態では、光活性触媒(C)はシグマ結合およびパイ結合を含む金属炭素結合を有する。好ましくは、光活性化可能な触媒(C)は、少なくとも1つの金属炭素シグマ結合を有する有機金属錯体化合物、さらにより好ましくは1つ以上のシグマ結合アルキルおよび/またはアリール基、好ましくはアルキル基を有する白金錯体化合物である。シグマ結合配位子は、特に、シグマ結合有機基、好ましくはシグマ結合C-Cアルキル、より好ましくはシグマ結合メチル基、シグマ結合アリール基、例えばフェニル、SiおよびOで置換されたシグマ結合アルキルまたはアリール基、例えば、トリスオルガノシリルアルキル基、シグマ結合シリル基、例えばトリアルキルシリル基を含む。最も好ましい光活性化触媒は、シグマ結合配位子、好ましくはシグマ結合アルキル配位子を有するη-(任意選択的に置換された)-シクロペンタジエニル白金錯体化合物を含む。
【0088】
光活性化することができるさらなる触媒としては、(η-ジオレフィン)-(シグマ-アリール)-白金錯体が挙げられる(例えば、US4,530,879を参照のこと)。
【0089】
光活性化することができる触媒は、それ自体で使用することができ、または担体上に担持することができる。
【0090】
光活性化することができる触媒の例としては、US4,530,879、EP122008、EP146307(US4,510,094および本明細書に引用の従来技術書に対応)、またはUS2003/0199603に記載の、η-ジオレフィン-σ-アリール-白金化合物、および、例えばUS4,640,939に記載のアゾジカルボン酸エステルまたはジケトネートを用いて反応性を制御することができる白金化合物が挙げられる。
【0091】
使用可能な光活性化することができる白金化合物は、さらに、ジケトン、例えば、ベンゾイルアセトンまたはアセチレンジカルボン酸エステル、および光分解性有機樹脂に埋め込まれた白金触媒から選択される配位子を有する群から選択されるものである。他のPt-触媒は、例えば、US3,715,334またはUS3,419,593、EP1 672 031 A1、およびLewis, Colborn, Grade, Bryant, Sumpter, およびScottによる Organometallics, 1995, 14, 2202-2213に言及されており、これらは参照によりすべてが本明細書に組み込まれる。
【0092】
Pt-オレフィン錯体を使用し、それに適切な光活性化可能な配位子を添加することによって、光活性化することができる触媒を、成形されるシリコーン組成物にてその場で形成することもできる。
【0093】
しかしながら、ここで使用可能な光活性化することができる触媒は、これらの上記の例に限定されない。
【0094】
本発明の方法で使用される光活性化することができる最も好ましい触媒は、(η-シクロペンタジエニル)-トリメチル-白金、(η-シクロペンタジエニル)-トリフェニル-白金錯体、特に、(η-メチルシクロペンタジエニル)-トリメチル-白金である。
【0095】
光活性化可能な触媒の量は、好ましくは1から500ppmであり、そして好ましくは上述の熱活性化ヒドロシリル化触媒について定義されたのと同じより低い範囲内である。
【0096】
成分(D)-有機ケイ素化合物(OSC)
成分D)は、ケイ素原子に直接結合していない少なくとも1つの多価芳香族基、および少なくとも1つのSi-H基を含有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物である。「ケイ素原子に直接結合していない」という用語は、多価芳香族基の一部である炭素原子へのSi原子の結合がないこと、特にSi-フェニレン-Si基がないことを意味することを意図している。
【0097】
成分(D)は化合物B)とは異なる。成分(D)は特に接着促進剤として作用しそして架橋剤としても作用することができる。
【0098】
成分(D)は、1分子中に少なくとも1個のSiH基(ケイ素原子に結合した水素原子)およびケイ素原子に直接的に結合していない少なくとも1個の多価芳香族基を有し、そして典型的には1分子当たり1から60個のケイ素原子を有するオルガノシランまたはオルガノポリシロキサンのような有機ケイ素化合物である。本発明において、多価芳香族基という用語は、特に、フェニレン構造、ナフタレン構造、およびアントラセン構造などの二価から四価の芳香族構造を含む。成分(D)は、1から30個、好ましくは2から20個、最も好ましくは3から10個のケイ素原子を含有する1個以上の直鎖状または環状の任意選択的に置換されたオルガノシロキサン部分を含む有機ケイ素化合物が好ましい。これらのオルガノシロキサン部分はさらに、1分子当たり少なくとも1個、好ましくは1から20個、最も好ましくは2から10個のSiH基、および少なくとも1個、好ましくは1から4個の多価芳香族基を含有する。さらに、これらのオルガノシロキサン部分は、任意選択的に、1つ以上の付加の官能基、例えば、アルコキシ基、エポキシ基、例えばグリシドキシ基、アルコキシシリル基、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、およびメチルジメトキシシリル基、エステル基、アクリル基、メタクリル基、カルボキシ基、カルボキシ無水物基、イソシアネート基、アミノ基、またはアミド基を含む。そのような化合物の具体例としては、以下が挙げられる。
【化9】

【化10】

【化11】
【0099】
成分(E)-少なくとも2個の不飽和ヒドロカルビル残基を有する芳香族化合物
少なくとも1つの芳香族化合物(E)は、少なくとも2個、好ましくは2個、3個または4個、より好ましくは2個の不飽和ヒドロカルビル基、好ましくはアリル基を有する芳香族化合物である。芳香族化合物(E)は、シロキサン基を含まない、すなわち、Si-O-Si部分を含まない。さらに芳香族化合物(E)はエステル基(-C(=O)-O-または-O-C(=O)-)も含まず、これは本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物の型汚れ特性に好ましい影響を与えると考えられる。不飽和ヒドロカルビル基は、特に、好ましくは20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子、および任意選択的に1個以上のヘテロ原子を有する不飽和脂肪族基である。最も好ましくは、不飽和ヒドロカルビル基は、例えば炭素原子または酸素原子(-O-)を介して芳香族基に結合することができるアリル基を含む。芳香族化合物E)は、好ましくは6から10個の炭素原子を有する少なくとも1個の芳香族基、最も好ましくは少なくとも1個または2個のフェニル部分(これはリンカー基によって結合されてもよく、またはビフェニル基として存在してもよい)を含む。芳香族化合物(E)中の芳香族基は、不飽和ヒドロカルビル基とは別に、任意選択的に、追加の、好ましくは1または2個の置換基を有していてもよい。そのような追加の置換基は、例えば、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-アルコキシ、およびトリ(C1-C6-ヒドロカルビル)シロキシから選択することができる。
【0100】
成分(E)は、好ましくは30個までの炭素原子を有する芳香族化合物であり、それは、6から14個の炭素原子を有し、そして少なくとも2個(例えば、2、3または4、好ましくは2)の不飽和、好ましくは脂肪族(すなわち、非芳香族)ヒドロカルビル残基を有する、少なくとも1つの芳香族、好ましくは炭素環式芳香族を含む。最も好ましくは、不飽和、好ましくは脂肪族ヒドロカルビル残基は、少なくとも2個、好ましくは2個のアリル基、および任意選択的に他の不飽和、好ましくは脂肪族ヒドロカルビル残基、特にビニル基(すなわち、-CH-に結合していない)を含む。
【0101】
好ましくは、そのような化合物は式(3)の芳香族化合物からなる群から選択され:
【化12】

ここでRからRは、互いに同一または異なっており、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-R、ここでRは飽和または不飽和の、任意選択的に置換された、20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基である、-O-R、ここでRは飽和または不飽和の、任意選択的に置換された、20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基である、からなる群から選択され、
但し、式(3)の化合物は、少なくとも2つの不飽和の、特に脂肪族のヒドロカルビル基、好ましくは少なくとも2つのアリル基を含むという条件であり、
【化13】

ここで- - -(破線)は単結合を示し、そしてここで不飽和ヒドロカルビル基は、特に酸素原子を介して芳香族に結合され得る。好ましい実施形態では、式(3)の化合物は2つのアリルオキシ基を有する。
【0102】
さらに、化合物(E)は式(4)の芳香族化合物を含み:
【化14】

ここでR11からR20は、互いに同一または異なっており、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-R21、ここでR21は、飽和または不飽和の、任意選択的に置換された、20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基である、-O-R22、ここでR22は、飽和または不飽和の、任意選択的に置換された、20個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基である、および式-OSiR242526のシリルオキシ基、ここでR24、R25、およびR26は、互いに独立して、任意選択的に置換された20個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される、からなる群から選択され、
Xは、下記群:
単結合
―R27-、ここでR27は二価の直鎖状または環状の、任意選択的に置換された20個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基である、
-C(O)-、
-S(O)-、
-S(O)-、
-S-、
-O-Si(R28-O-、ここでR28は、独立して、ハロゲン、および飽和または不飽和の6個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基、ならびに
-O-からなる群から選択され、
但し、式(4)の化合物は、少なくとも2つの不飽和ヒドロカルビル基、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは2つのアリル基、および任意選択的に1以上のビニル基を含むという条件である。
【0103】
不飽和ヒドロカルビル基は、酸素原子を介して芳香族部分に結合していてもよい。
【0104】
式(4)の好ましい芳香族化合物は、例えば下記が挙げられ:
【化15】

【化16】

ここでR11からR20はそれぞれ上記定義通りであり、好ましくは水素、ヒドロキシ、アリル、アリルオキシ、トリアルキルシロキシ、例えばトリメチルシロキシが挙げられ、そして
30はシクロヘキシル基におけるC1-C4アルキル置換基であり、それはこのましくはメチルであり、そしてxは0(R30基がない)から3である。2個の基R30は、同じ炭素原子にあってもよい。式4-5の好ましい化合物としては以下が挙げられる。
【化17】
【0105】
化合物(E)の例としては、例えば、下記式が挙げられる。
【化18】

【化19】

【化20】

および
【化21】
【0106】
成分(F) 補強充填剤
付加硬化型ポリオルガノシロキサン組成物は任意選択的に1つ以上の補強充填剤、適切であれば、表面改質された補強充填剤(F)を含む。補強充填剤(F)は、特に50m/g以上のBET表面積を特徴とする。
【0107】
充填剤には、例として、全ての微粒子充填剤、すなわち100μmより小さい粒子を有するもの、すなわち好ましくはそのような粒子からなるものが含まれる。これらは、ケイ酸塩、炭酸塩、窒化物、酸化物、またはシリカなどの鉱物充填剤であり得る。充填剤は好ましくは補強シリカとして知られているものであり、それはまた照射に対して十分な透明性を有するエラストマーの製造を可能にする。補強シリカ、特に強度を増加させるものが好ましい。例は、そのBET表面積が50から400m/g、好ましくは80から350m/gであるシリカ、特にヒュームドシリカまたは沈降シリカである。好ましくはこれらの充填剤は表面疎水化されている。成分(E)が使用される場合、その量は、成分(A)および(B)の100重量部に対して、好ましくは1から100重量部、より好ましくは0から70重量部、さらにより好ましくは0から50重量部、さらにより好ましくは5から45重量部である。
【0108】
BET表面積が50m/gを超える充填剤は、改良された性質を有するシリコーンエラストマーの製造を可能にする。強度および透明性の観点から、ヒュームドシリカが好ましく、さらにより好ましいシリカは、例えば、200m/gを超えるBET表面積を有する、Aerosil(登録商標)200、300、HDK(登録商標)N20またはT30、Cab-O-Sil(登録商標) MS7またはHS5である。BET表面積が増大するにつれて、これらの材料が存在するシリコーン混合物の透明度もまた増大する。沈降シリカ、または湿式シリカとして知られる材料の商品名の例は、Evonik(以前はDegussa)製のVulkasil(登録商標)VN3, or FK 160、またはNippon Silica K.K.製のNipsil(登録商標)LP、その他である。
【0109】
50m/g以上のBET表面積、好ましくは少なくとも150m/gのBET表面積を有するシリカ充填剤を使用するのが好ましい。そのような組成物はまた、十分な透明性のために所望ならば光活性化することもできる。
【0110】
充填剤(F)は、適切な疎水化剤による疎水化処理に属する適切な表面処理剤による任意の適切な従来の表面処理、充填剤とシリコーンポリマーとの相互作用に影響を与える、例えば肥厚作用に影響を与える適当な分散剤を用いた分散処理を受け得る。充填剤の表面処理は、好ましくはシランまたはシロキサンによる疎水化である。例として、水を添加しながら、ヘキサメチルジシラザンおよび/または1,3-ジビニルテトラメチルジシラザンなどのシラザンを添加することによってその場で行うことができ、「その場(in situ)」での疎水化が好ましい。架橋反応のための反応部位を提供することを目的として、鎖長が2から50であり、不飽和有機ラジカルを有するポリオルガノシロキサンジオールを有する他のよく知られている充填剤処理剤を使用することもできる。
【0111】
様々なシランで予備疎水化された市販のシリカの例は、Aerosil(登録商標) R 972、R 974、R 976、もしくはR 812、または例えばHDK 2000もしくはH30である。疎水化沈降シリカまたは湿式シリカとして知られる材料の商品名の例は、例えば、Evonik(以前はDegussa)製のSipernat D10もしくはD15である。
【0112】
未硬化シリコーンゴム混合物のレオロジー特性、すなわち技術的加工特性は、充填剤の種類の量、その量、および疎水化の性質の選択によって影響され得る。
【0113】
成分(G)-補助添加剤
本発明による付加硬化型ポリオルガノシロキサン組成物はまた従来の補助添加剤を含んでもよい。
【0114】
そのような補助添加剤としては、例えば、WO2011/107592に記載されているものなどのさらなる接着促進剤が挙げられる:
(化合物(D1)-(D3)、例えば、すなわち
(D1):少なくとも1つのアルコキシシリル基を含む少なくとも1つのオルガノシロキサン、
(D2):少なくとも1つのアルコキシシリル基を含む少なくとも1つのオルガノシラン、
(D3):少なくとも2個の芳香族部分と少なくとも1個のヒドロシリル化反応性基を有する少なくとも1つの芳香族有機化合物、
これら化合物は、本発明の組成物の成分A)からF)のいずれとも異なっているものである。好ましいものは、WO2011/107592を参照することにより本明細書に含まれ(以下において、置換基の定義は、WO2011/107592に与えられた定義を指す):
成分(D1)は、好ましくは、
RHSiO2/2および
(R)SiO2/2
からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含むポリオルガノシロキサンであり、
ここでRは上記定義通りであり、同一でも異なっていてもよく、Rは、14個までの炭素原子を有する不飽和脂肪族基、14個までの炭素原子を有するエポキシ基含有脂肪族基、シアヌレート含有基、およびイソシアヌレート含有基からなる群から選択され、そして
さらに式(3)の少なくとも1つの単位を含み、
2/2(R)Si-R-SiR(OR3-d (3)
ここで
Rは、30個までの炭素原子を有する任意選択的に置換されたアルキル、30個までの炭素原子を有する任意選択的に置換されたアリールから選択され、そして同一でも異なっていてもよく、
は、H(水素)および1から6個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、そして同一でも異なっていてもよく、
は、15個までの炭素原子を有する二官能性の任意選択的に置換されたヒドロカルビルラジカルであり、これはO、NおよびS原子から選択される1以上のヘテロ原子を含み得、そしてこれは、Si-C結合を介してケイ素原子に結合しており、そして
dは0から2である。
【0115】
成分(D1)の例には、式(3a-3d)の化合物
【化22】

11はRまたはRであり、ここでR、R、RおよびRは上記定義通りであり、同一でも異なっていてもよく、
s1=0-6、好ましくは1
t1=0-6、好ましくは1または2
s1+t1=2-6、好ましくは2または3
但し、化合物中に-(OSi(R)H)-または-(OSi(R)(R11)-の少なくとも1つの基があるという条件であり、好ましくは下記式の化合物
【化23】

ここでR、R、RおよびR11は上記定義通りである、およびその環位置異性体、下記式の化合物
【化24】

および環位置異性体、下記式の化合物、
下記式のさらなる化合物:
【化25】

ここで
R、R、R、Rは上記定義通りであり、
s=0-10、好ましくは=0-5、
t=0-50、好ましくは=2-30、
u=1-10、好ましくは=1
s+t+U≦70
但し化合物中に-(OSi(R)H)-または-(OSi(R)(R)-の少なくとも1つの基があるという条件である、を含む。これらの化合物は、D単位を置換して、特定の含有量のQまたはT分岐基を含み得る。
【0116】
は例えば下記から選択される:
【化26】
【0117】
成分(D2)は好ましくは式(4)の化合物から選択され、
X-(CR -Y-(CHSiR(OR3-d
ここで
Xは、ハロゲン、疑ハロゲン、14個までの炭素原子を有する不飽和脂肪族基、14個までの炭素原子を有するエポキシ基含有脂肪族基、シアヌレート含有基、およびイソシアヌレート含有基からなる群から選択され、
Yは、単結合、COO-、-O-、-S-、-CONH-、-HN-CO-NH-から選択されるヘテロ原子群からなる群から選択され、
は水素および上記定義通りのRから選択され、
eは0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、同一でも異なっていてもよく、
Rは上記定義通りであり、同一でも異なっていてもよく、
は上記定義通りであり、同一でも異なっていてもよく、
dは0、1、または2である。
【0118】
成分(D2)の好ましい例としては、下記が挙げられ:
【化27】

ここでRおよびdは上記定義通りである。
【0119】
成分(D2)は、接着促進剤として作用すること以外に、充填剤(F)のためのその場での表面処理剤としてさらに役立つことができる。低減したコストで許容される接着特性を得るために、成分(D2)のシランの混合物を使用することが好ましい。
【0120】
成分(D3)は、好ましくは式(3i)の化合物から選択され、
【化28】

ここで
rは0または1であり、
は、同一でも異なっていてもよく、これは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基およびアリール基、および
式-E-Si(OR)3-dの基、ここでRは同一または異なっており、そしてdは上記定義通りであり、
式-O-Si(R)の基、ここでRおよびRは上記定義通りであり、
式-E-Si(R)Hの基、ここでRは上記定義通りである、からなる群から選択され、
ここでEは、8個までの炭素原子および-O-、-NH-、C=O、および-C(=O)O-から選択される0個から3個までのヘテロ原子基を有する二価の有機基であり、そして
fは0または1であり、
そしてZは以下の群から選択され:
【化29】

ここでRは、水素原子、ハロゲン原子、または置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基およびアルキニル基の群から選択され、そして
gは少なくとも2の正の数であり、
ここでRおよびRから選択される群の少なくとも1つがヒドロシリル化反応性である。
【0121】
好ましい成分(D3)としては、以下のものが挙げられ:
【化30】

ここでZ、R、R、Rおよびdはそれぞれ上記定義通りである。
【0122】
補助または従来の添加剤は、熱風に対する安定剤、油および溶媒、加工助剤、離型剤、湿潤剤、顔料、補強充填剤成分(F)とは異なるあらゆる種類の充填剤、例えば熱や電気の伝導性を高めるための機能性充填剤、低表面または不活性充填剤、いわゆる増量用増量剤、溶媒、任意にて補強用の天然または合成繊維(これら繊維は成分(F)に含まれず、例えばポリエステル繊維、セルロース繊維(綿繊維)、ナイロン繊維などのポリアミド繊維、スパンデックス繊維などのポリウレタン繊維、ガラス繊維など、発泡を開始するための発泡剤、抗菌剤、殺菌剤または防カビ性を高めるための添加剤をさらに含むことができる。
【0123】
補助または従来の添加剤はさらに可塑剤または柔軟剤を含むことができ、それは好ましくはシリコーン油、好ましくは[RSiO]単位を含み、RがC-Si結合有機基であるジオルガノポリシロキサンから選択される。シリコーン油は、通常、透明、無色、無毒、不活性、無臭、化学的に不活性、熱安定性、好ましくは162-150000g/molの数平均分子量、0.76-1.07g/cmの密度および0.6-1,000,000mPa・s(20°C)粘度を有する疎水性液体である。好ましいシリコーン油としては、ポリジメチルシロキサン油が挙げられる。そのようなシリコーン油の使用は、≦20のショアA硬度を達成するために好ましい。
【0124】
充填剤または増量剤(BET表面積<50m/g)として役立つ材料の例は、非補強充填剤として知られている。それらは例えば粉末石英、珪藻土、粉末クリストバライト、雲母、酸化アルミニウム、および水酸化アルミニウムを含む。BET表面積が0.2から50未満m/gである二酸化チタンまたは酸化鉄、酸化亜鉛、チョークまたはカーボンブラックも熱安定剤として使用することができる。これらの充填剤は様々な商品名で入手可能であり、その例はSicron(登録商標)、Min-U-Sil(登録商標)、Dicalite(登録商標)、Crystallite(登録商標)である。50m/g未満のBET表面積を有する不活性充填剤または増量剤として知られている材料は、さらなる処理が下流の処理中、例えばふるいまたはノズルを通過すること、またはそれから製造される物品の機械的性質が悪影響を受けるなどの問題を生じないようにするために、有利にはシリコーンゴムに使用するために100μmを超える粒子を含まない(<0.005重量%)。
【0125】
不透明化充填剤の中には、特に不透明、特に無機、顔料またはカーボンブラックもある。
【0126】
これらの不透明化充填剤の使用は、着色が必要であるとき、または熱もしくは電気の伝導性のような物理的機能が必要とされるときにのみ好ましい。
【0127】
不透明で非透明な充填剤の使用は、プロセスにおける活性化および成形工程の通常の順序を変えることを必要とする。通常、充填剤を使用しない場合、または透明な充填剤を使用する場合、照射による光活性化は最終成形工程の後に行われる。光活性化触媒の光活性化を阻害することになる不透明で非透明な充填剤が使用されるならば、不透明で非透明な充填剤が組み込まれそして混合物が成形される前に光活性化工程が行われる。
【0128】
当業者に知られているように、充填剤は顔料、例えば有機染料または顔料または無機顔料でもあり得る。
【0129】
補助または従来の添加剤にはさらに、例えば、25℃で好ましくは0.001-10Pa.sの粘度を有するポリジメチルシロキサン油のような可塑剤、または剥離油、または疎水化油を含む。追加の離型剤または流動性向上剤も使用することができ、その例は脂肪酸誘導体または脂肪アルコール誘導体、フルオロアルキル界面活性剤である。ここで有利に使用される化合物は迅速に分離しそして表面に移動するものである。例えば、Fe-、Mn-、Ti-、Ce-またはLa-化合物、およびこれらの有機塩、好ましくはそれらの有機錯体などの既知の熱風安定剤を使用して、熱風への暴露後の安定性を高めることができる。
【0130】
補助添加剤は、架橋反応を制御するためのいわゆる抑制剤も含み得る。それは、成形されるシリコーン組成物の可使時間を延ばすことを意図している。そのような抑制剤の使用は硬化速度を低下させるのに適し得る。有利な抑制剤の例には、例えば1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンまたはテトラビニル-テトラメチル-テトラシクロシロキサンのようなビニルシロキサンが含まれる。他の既知の抑制剤、例えばエチニルシクロヘキサノール、3-メチルブチノール、またはジメチルマレエートを使用することも可能である。本発明の好ましい実施形態では、付加硬化型シリコーンゴム組成物は、架橋反応を制御して硬化速度を低下させ、そして付加硬化型シリコーンゴム組成物の可使時間を延ばすための少なくとも1つの抑制剤を含有する。
【0131】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物の好ましい実施形態では、成分G)は、抑制剤;可塑剤または柔軟剤、好ましくはシリコーン油から選択され、より好ましくはポリジメチルシロキサン油から選択される;非補強充填剤、好ましくは微粉砕シリカまたは石英から選択される;繊維材料、例えばポリエステル繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維、例えばナイロン繊維、ポリウレタン繊維、例えばスパンデックス繊維、およびガラス繊維の群から選択される。
【0132】
さらなる特定の実施形態では、本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物は少なくとも1つの繊維材料を含む。特にそれらの繊維材料がヒドロキシル基のような残留SiH反応性基を含む場合、そのような材料への接着は担体材料と同様に改善される。
【0133】
さらなる特定の実施形態では、本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物は少なくとも1つの抑制剤を含む。
【0134】
さらなる特定の実施形態では、本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物は少なくとも1つの可塑剤または軟化剤を含む。
【0135】
さらなる特定の実施形態では、本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物は、上記のように少なくとも1つのポリオルガノシロキサン樹脂成分(A3)を含む。
【0136】
良好な接着性をヒドロキシル基含有基材に付与するために、組成物中の全SiH基対組成物中の全アルケニル基のモル比は、0.8から5、好ましくは0.9から4、より好ましくは1から2.5、さらに好ましくは1.1から2.2の間である。
【0137】
本発明の組成物は、スパチュラ、ドラムローラー、メカニカルスターラー、三本ロールミル、シグマブレードミキサー、ドウミキサー、プラネタリーミキサー、水平ミキサー、スクリュー、溶解装置、バタフライミキサー、プレスミキサー、または真空ミキサーなどの適切な混合手段を用いて、成分(A)-(G)を均一に混合することによって調製することができる。
【0138】
成分(A)-(G)を混合する順序は重要ではないが、特定の成分を混合して2つ以上のパッケージを形成することができ、これは必要に応じて貯蔵することができ、次いでその意図する使用の直前に最終段階で混合することができることが好ましい。
【0139】
本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物は、好ましくは
成分(A)100重量部、
成分(B)0.01から100重量部、好ましくは0.5から50重量部、
遷移金属の重量を基準として、および成分(A)および(B)の総重量を基準として、成分(C)0.5から1000ppm、好ましくは1から100ppm、
成分(D)0.01から10重量部、好ましくは成分(D)0.02から5重量部、より好ましくは成分(D)0.05から2重量部、より好ましくは成分(D)0.1から1.75重量部、
成分(E)0.01から10重量部、好ましくは成分(E)0.01から5重量部、より好ましくは成分(E)0.02から1重量部、より好ましくは成分(E)0.03から0.75重量部、より好ましくは成分(E)0.05から0.5重量部、
成分(F)0から100重量部、好ましくは成分(F)1から50重量部、および
成分(G)0から100重量部、好ましくは0.001から15重量部、好ましくは0.002から6重量部、
を含む。
【0140】
好ましい実施形態では、本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物は、成分(A)100重量部あたり
成分(D)0.05から2重量部、好ましくは成分(D)0.1から1.75重量部、
および/または
成分(E)0.02から1重量部、好ましくは成分(E)0.03から0.75重量部、より好ましくは成分(E)0.05から0.5重量部
を含む。
【0141】
本発明はさらに、上記にて定義した付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化することによって得られる硬化シリコーンゴム組成物に関する。硬化は、熱または照射を提供することによってもたらされ得る。好ましくは、付加硬化型シリコーンゴム組成物を少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃の温度に、好ましくは少なくとも2分間、好ましくは少なくとも5分間加熱することによって硬化が行われる。
【0142】
本発明はさらに、基材と、基材の表面の少なくとも一部の上の硬化シリコーンゴム組成物とを含む複合材料の製造のための、上で定義された付加硬化型シリコーンゴム組成物の使用に関する。基材はまた完全に被覆されていてもよい。サンドイッチ構造も可能であり、それは1つより多い基材を互いに接続する。
【0143】
本発明はさらに、基材と、このような基材の表面の少なくとも一部の上に上記で定義したような硬化シリコーンゴム組成物とを含む複合材料に関する。
【0144】
基材の表面の少なくとも一部の上の硬化シリコーンゴム組成物の厚さは、例えば、1μmから10cm、好ましくは1mmから5cmの範囲であり得る。
【0145】
被覆される基材は、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、セルロース、ガラスおよびそれらの混合物から選択される。
【0146】
被覆される基材は、その表面にヒドロキシル基のような残存ヒドロシリル反応基(すなわちSi-H反応基)を有する材料から選択されるのが好ましい。そのような基材は、例えば、その製造においてアルコール、特にポリオールが使用され、基材の表面に未反応のヒドロキシル基をもたらすポリマーを含む。そのようなポリマーとしては、特にポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、好ましくはポリカーボネートが挙げられる。
【0147】
さらに、ガラスおよびセルロースは、本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物で被覆するのに適した基材である。
【0148】
本発明はさらに、前記複合材料の製造方法に関し、ここでその表面上に残存官能基、好ましくはヒドロキシル基のようなSi-H反応性基を含む基材を、上で定義したような付加硬化型シリコーンゴム組成物で被覆し、その後、付加硬化型シリコーンゴム組成物は、好ましくは前記基材の表面上で熱硬化される。前記残存官能基、好ましくはヒドロキシル基のようなSiH反応性基は、シリコーンゴム組成物からのSiH基と反応することになる。そのような方法の好ましい実施態様において、それは熱可塑性樹脂の成形を含み、その後上記で定義された付加硬化型シリコーンゴム組成物は同じ成形装置内で熱可塑性部品上にオーバーモールドされそして硬化される。そのような方法は、例えば、ツーショットまたはマルチショットオーバーモールディング法を含む。最も好ましい本発明による付加硬化型シリコーンゴム組成物は、基材の表面上に直接被覆されており、すなわち、基材上に最初に適用されたプライマーは存在しない。
【0149】
理論に縛られるものではないが、本発明は、有機ケイ素化合物(D)(OSC)と芳香族ジアリル化合物(E)(DAC)との間の相乗作用を明らかにすることになり、これは特に、例えばポリカーボネート、ポリエステルおよびガラスを含む、その表面上に残存ヒドロキシル基を含む任意の基材へのLSRの結合を可能にする。芳香族ジアリル化合物(E)は、LSRと混和しないため、LSR表面に移動することになる。芳香族ジアリル化合物(E)は、LSRバルク中に分散した白金触媒をキレート化することができるので、芳香族ジアリル化合物(E)のLSRとの非混和性のために、それをLSR/基材界面に集中させる。界面における白金の富化は、有機ケイ素化合物(D)からのSi-H基と基材表面上の残存OH基との間の脱水素縮合反応を促進する。その間に、有機ケイ素化合物(D)および芳香族ジアリル化合物(E)の両方がヒドロシリル化によってシリコーンマトリックス(例えばPDMS)に結合することになり、その結果、LSRと基材の間に共有結合が生成される(図1を参照)。この理解によれば、金属表面上のOH基の欠如のために、結合はシリコーン/金属界面では本質的に生じないことになる。芳香族ジアリル化合物(E)とPtとの間のキレート強度は、結合反応に対する抑制剤として作用するように、それほど強くはないこととなる。芳香族ジアリル化合物(E)が存在しない場合、界面での触媒Pt濃度は、反応を効果的に促進するには低すぎることになり得る。したがって、本発明の推定メカニズムは、LSR不適合芳香族ジアリル化合物(E)を介した触媒白金の表面富化にあり、これは、LSRと基材との間の結合反応を促進するが、本質的にヒドロシリル化触媒抑制剤としては作用せず、それによって射出成形またはオーバーモールディング法中のプライマー使用の必要性を排除する。
【0150】
本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物は、例えば携帯電話ケース、携帯ガスケット、安全マスク、電子アクセサリー、工具、航空宇宙、包装および自動車の製造などの様々な用途に使用することができる。特定の適用分野は、特にプライマーレス溶液(これまでにプライマーが適用されていない場合)における、PC用の自己接着性LSRとしての使用である。本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物は、美的デザインにするために、電子機器を保護するために、物品を防水にするのに使用することができる。さらなる用途としては、機械工学におけるシールのための被覆物品、自動車用途、絶縁体などの電気製品、キーボード、食品包装、たとえばボトルキャップ、コーヒーカプセル、閉鎖または用量キャップまたは閉鎖または計量バルブのそれぞれ、食品容器、キッチン用途、たとえば生地スクレーパー、プレート、ボウル、ダイビングマスク、フェイスマスク、歯がため、ベビーサッカー、家具、棚、シリコーンエラストマーで触覚的にデザインされたデザインオブジェクト、繊維や靴のための用途、ブランドエンブレム、スポーツおよび娯楽機器、たとえば時計ストラップ、工具、工具ハンドル、シリンジプランジャ、静脈バルブ、スクレーパーまたはスパチュラ、インプラント、任意選択的に一体型フランジ要素を備えたチューブまたはバルブ、一体型パイプベンドを備えたチューブが挙げられる。
【0151】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に説明される。
【実施例
【0152】
合成例1
OSC-1分子を製造する一般的方法は以下の通りである。
【化31】

500mLの4つ口丸底フラスコに冷却器、添加漏斗および温度計およびオーバーヘッドスターラーを備え付けた。38.9gの環状テトラメチルテトラシロキサンおよび80mLのトルエンを室温でフラスコに入れた。油浴を用いて温度を80℃に上げた。次いで、2ppmの塩化白金酸を溶液に添加した。オーバーヘッドスターラーを用いて混合物を350rpmで撹拌した。10gのビスフェノールAビスアリルエーテルを40mLのトルエンで希釈し、添加漏斗に入れた。希釈したビスフェノールビスアリルエーテルを10時間かけて撹拌しながら2滴/分の速度で混合物に滴下した。反応混合物を80℃でさらに6時間撹拌した。HNMRスペクトルは、5-6.5ppmの間のアルケンピークの消失を示した。次に3gの木炭を混合物に加え、80℃で30分間撹拌した。水アスピレーターを使用して3gのセライトを詰めたWhatmann濾紙を用いて溶液をブフナー漏斗で濾過した。トルエンを、20mbarの真空下、90℃のロータリーエバポレーターで濾液から蒸留した。淡黄色の液体生成物が得られた。NMRおよびFTIRスペクトルの両方がOSC-1構造を確認した。
【0153】
例1-9および比較例1-5
シリコーンゴム系化合物を、最先端技術に従って、2組のニッティング攪拌機を含むミキサー中で、粘度10Pa・sを有するジメチルビニルシリル末端ポリジメチルシロキサン(Momentive Performance Materials製のSilopren*U10)7部、粘度65Pa・sを有するジメチルビニルシリル末端ポリジメチルシロキサン(Silopren*U65)46部、ヘキサメチルジシラザン5.25部、ジビニルテトラメチルジシラザン0.35部、Brunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積が300m/gのヒュームドシリカ(Evonik製のAerosil(登録商標)300)22.5部、および水から、最初に100℃で混合し、次に真空下(<80mbar)で150℃にてストリッピングして、均一に混合された材料を得ることにより、調製した。次に混合物を冷却し、11.5部のSilopren* U10で希釈して、約89.7部のシリコーン系化合物を生成した。
【0154】
シリコーン系化合物を表1に挙げた他の成分とさらに混合して種々のゴム配合物を製造した(部および数値は、重量または100当たりの重量部(pph)を指す)。Silopren* V5000は、0.85mmol/gのビニル含有量および5Pa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルビニルシロキサン)である。H-架橋剤1は、2.4mmol/gのSiH含有量および0.02Pa・sの粘度を有するトリメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルヒドロシロキサン)である。H-架橋剤2は、7.3mmol/ gのより高いSiH含有量および0.04Pa・sの粘度を有する別のトリメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルヒドロシロキサン)である。H-増量剤は、1.4mmol/gのSiH含有量および0.015Pa・sの粘度を有するジメチルヒドロシリル末端ポリジメチルシロキサンである。ECHは抑制剤エチニルシクロヘキサノールである。OSC-1は、合成例1で製造された有機ケイ素化合物であり、約7mmol/gのSiHを含有する。例において試験されたDAC化合物は、2,2’-ジアリルビスフェノールA、およびビスフェノールAジアリルエーテルを含む。比較のために試験された不飽和ヒドロカルビル基を有するエステル基含有化合物は、ジアリルマレエート、テトラアリルピロメリテート、2,2’-ジアリルビスフェノールAジアセテートエーテル、アリルベンゾエートおよびドデシルアクリレートを含んだ。例で使用したPt触媒は、2重量%のPtを含有するAshby触媒、10重量%のPtを含有するKarstedt触媒、および3.3重量%のPtを含有するLamoreaux触媒を含む。他の全ての成分が混合されたときに最後にPt触媒を添加した。例の組成物中の全SiH対全ビニル基(SiVi中およびDAC中)のモル比は1.1-2.7の範囲に制御した。
【0155】
各ゴム配合物を、Lexan(商標)121(SABICから供給)ポリカーボネート(PC)バーとアルミニウム(Al)金属バーとの間に約1mmの厚さで適用し、次に120℃のオーブンに10分間入れて硬化させた。サンドイッチしたアセンブリを加硫直後にオーブン中で力をかけて分解し、120℃でPCおよびAl基材の両方への接着性を試験した。120℃でAlまたはPCの表面に明らかなゴムが残らずに、AlバーまたはPCバーを硬化シリコーンゴムから引き剥がすことができた場合、ゴム配合物は120℃でそれぞれAlまたはPCに接着しないと見なされる。各配合物を少なくとも5回試験し、120°での各基材への接着の成功率(%)を表1に示した(>90%=接着破壊なし)。サンドイッチされたアセンブリもまた室温(約23℃)まで冷却され、次いで室温で力により分解された。約23℃での各基材への接着の成功率(%)もまた表1に示した(>90%=接着破壊なし)、ここで各配合につき標本サイズは少なくとも5であった。
【0156】
20℃でPCと接着しないゴムサンプルについて、120℃での離型工程中に硬化したシリコーンゴムがPC基材から剥離し、製造上の欠陥が生じる可能性があるため、多成分成形プロセスには適用できないと考えられる。一方、120℃では金属基材への接着がないことが、多成分成形プロセスには望ましい。なぜなら、ゴムサンプルはプロセス中に金型から完全に離型する必要があるからである。
【0157】
0.6-1.2重量%のOSC-1を含むがDAC化合物を含まないゴム配合物(比較例1および5)は、サンプルが完全に室温まで冷却されたときに接着性が得られたが、120℃ではPCへの接着性を与えなかった。追加のエステル基含有化合物を実施しても、120℃でのPCへのその結合は全く改善されなかった(比較例2、3、4、6、7、8および9参照)。これらの配合物のほとんど(比較例7および8を除く)は、室温でPCへの接着力をもたらしたが、120℃で十分な接着を生じなかった。これらの比較例は、典型的な多成分成形プロセス中に層間剥離し、したがって欠陥のある物品を生成する可能性が高いことになる。
【0158】
DAC化合物を含むがOSC-1を含まない(比較例10)、または不飽和ヒドロカルビル基を有するエステル基含有化合物を含むがOSC-1を含まない(比較例11)ゴム配合物は、120℃および室温の両方でPCに接着を与えなかった。
【0159】
例1から8に明らかに示されているように、OSC-1と0.12重量%から1.0重量%のDAC化合物の添加の両方を有するゴム配合物は、120℃および室温の両方でPCへの優れた接着性を与えた。これらの芳香族および非エステル含有DAC化合物には、2,2’-ジアリルビスフェノールAおよびビスフェノールAジアリルエーテルが含まれる。明らかに、OSC-1とDACの両方の化合物が120℃でPCとの十分な結合を生成するために必要とされる。理論に縛られるものではないが、OSC-1およびDAC化合物の両方の存在下での接着結合についての可能な相乗的メカニズムを図1に示す。
【0160】
OSC-1およびエステル基含有化合物を既に含んでいる比較例3、4、8および9に追加の0.24重量%から1.0重量%のDAC化合物を添加すると、120℃でPCに対して優れた接着性が得られた(例9-13参照)。この結果はさらに、シリコーンゴム組成物が相乗的に作用して高温でPCへの接着を生じさせるためにOSC-1とDACの両方を必要とすることを証明している。
【0161】
より高い架橋密度を有するゴム組成物(H-架橋剤2を使用する例6、7、8、11、12および13)については、PCへの十分な接着を生じさせるためには、より多量のDAC(例えば0.5重量%)が好ましい。しかしながら、DAC含有量が1重量%以上であると、サンプルは脆くなる可能性がある(例8および比較例7参照)。脆化は多成分成形プロセス中に不良品を生じることになる。さらに、シリコーンゴム組成物中により多量の非相溶性添加剤(例えば、DAC)を使用すると、型汚れの問題が生じやすくなる。
【表1】
図1