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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】積層造形のための多材料分離層
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/255 20170101AFI20220829BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20220829BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220829BHJP
【FI】
B29C64/255
B29C64/124
B33Y30/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019545902
(86)(22)【出願日】2017-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 US2017060679
(87)【国際公開番号】W WO2018089526
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】62/419,375
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516373915
【氏名又は名称】フォームラブス,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】FORMLABS,INC.
【住所又は居所原語表記】35 Medford Street, Suite No.1, Somerville, Massachusetts 02143 U. S. A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】スラクツカ,マルチン
(72)【発明者】
【氏名】フランツデール,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ワイトン,シェイン
(72)【発明者】
【氏名】リヴィングストン,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】フェルグソン,イアン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0200052(US,A1)
【文献】国際公開第2016/149104(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193786(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177247(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0149127(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0303795(US,A1)
【文献】国際公開第2016/123499(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176112(US,A1)
【文献】国際公開第2016/053512(WO,A1)
【文献】特開平6-226863(JP,A)
【文献】永井一清,"高分子膜の気体分離機能の制御",高分子論文集,日本,高分子学会,2004年08月,第61巻,第8号,p.420-432
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体フォトポリマーを硬化させて硬化フォトポリマーの層を形成することによって、部品を製造するように構成された積層造形装置に使用するためのコンテナであって、該コンテナは:
内底面を有し、内底面の少なくとも1つの領域が、少なくとも1つの波長の化学線に対して透過である、オープントップ容器と;および、
容器の内底面に接合され、積層多材料層の露出面からの硬化フォトポリマーの分離を容易にするように構成された積層多材料層とを含み、
積層多材料層は:
内底面の領域の少なくとも一部に接合されている第1の材料層であって、弾性であり、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、前記第1の材料層と、および
第1の材料層の少なくとも一部に接合されている、第2の材料層であって、少なくとも10Barrerの酸素浸透性を有し、ポリメチルペンテン(PMP)を含み、コンテナの露出面を形成する、前記第2の材料層とを含む、
前記コンテナ。
【請求項2】
第2の材料層が、液体フォトポリマーのいずれの化合物よりも酸素に対してより高い選択性を有する、請求項1に記載のコンテナ。
【請求項3】
第1の材料層が、少なくとも200Barrerの酸素浸透性を有する、請求項1または2に記載のコンテナ。
【請求項4】
第2の材料層が、20Barrer~50Barrerの酸素浸透性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項5】
第1および第2の材料層との間に第3の材料層をさらに含み、第2の材料層が、第1の材料層の少なくとも一部に接合されている第3の材料層に接合されることによって、第1の材料層の少なくとも一部に接合される、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項6】
第1の材料層と内底面との間に第4の材料層をさらに含み、第1の材料層が、内底面に接合されている第4の材料層に接合されることによって、内底面に接合される、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項7】
液体フォトポリマーを硬化させて硬化フォトポリマーの層を形成することによって、部品を製造するように構成された積層造形装置であって:
第1の波長の放射線を含む化学線を生成するように構成された少なくとも1つの化学線源と;
フォトポリマーコンテナであって、
内底面を有し、内底面の少なくとも1つの領域が、化学線の第1の波長に対して透過である、オープントップ容器;および、
容器の内底面に接合され、積層多材料層の露出面からの硬化フォトポリマーの分離を容易にするように構成された積層多材料層を含む、前記フォトポリマーコンテナとを含み、
積層多材料層は:
内底面の透過領域の少なくとも一部に接合されている第1の材料層であって、弾性であり、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、前記第1の材料層、および
第1の材料層の少なくとも一部に接合されている、第2の材料層であって、少なくとも10Barrerの酸素浸透性を有し、ポリメチルペンテン(PMP)を含み、コンテナの露出面を形成する、前記第2の材料層を含む、
前記積層造形装置。
【請求項8】
第2の材料層が、液体フォトポリマーのいずれの化合物よりも酸素に対してより高い選択性を有する、請求項に記載の積層造形装置。
【請求項9】
第1の材料層が、少なくとも200Barrerの酸素浸透性を有する、請求項7または8に記載の積層造形装置。
【請求項10】
第2の材料層が、20Barrer~50Barrerの酸素浸透性を有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項11】
第1の材料層が、1mm~10mmの間の厚さを有する、請求項7~10のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項12】
第2の材料層が、0.001インチ~0.01インチの間の厚さを有する、請求項7~11のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項13】
第1および第2の材料層との間に第3の材料層をさらに含み、第2の材料層が、第1の材料層の少なくとも一部に接合されている第3の材料層に接合されることによって、第1の材料層の少なくとも一部に接合される、請求項7~12のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項14】
第1の材料層と内底面との間に第4の材料層をさらに含み、第1の材料層が、内底面に接合されている第4の材料層に接合されることによって、内底面に接合される、請求項7~13のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項15】
第1の材料層および/または第2の材料層が、繊維複合フィルムである、請求項7~14のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項16】
第1の材料層および第2の材料層が、化学線の第1の波長に対して透過である、請求項7~15のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、積層造形(例えば、3次元印刷)中に部品を表面から分離するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形、例えば、3次元(3D)印刷は、典型的には、構築材料の部分を特定の場所で固化させることによって、オブジェクトを造形する技術を提供する。積層造形技術は、ステレオリソグラフィー、選択的または熱溶解積層法、直接複合材製造(direct composite manufacturing)、薄膜積層法、選択相領域堆積、多相ジェット固化、弾道粒子製造、粒子堆積、レーザ焼結またはそれらの組み合わせを含み得る。多くの積層造形は、所望のオブジェクトの典型的な断面である連続する層を形成することによって部品を構築する。典型的には、各層は、予め形成された層またはオブジェクトが構築される基板のいずれかに接着するように形成される。
【0003】
ステレオリソグラフィーとして知られている積層造形の1つのアプローチでは、固体オブジェクトは、典型的には硬化性ポリマー樹脂の薄い層を、最初に基材上に、次にひとつを別の薄い層上に、連続的に形成することによって生成される。化学線への露光は液体樹脂の薄い層を固化させ、それによって薄い層は硬くなり、また、これまでに硬化させた層または構築プラットフォームの底面に接着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかの態様によれば、液体フォトポリマーを硬化させて硬化フォトポリマーの層を形成することによって、部品を製造するように構成された積層造形装置に使用するためのコンテナが提供され、そのコンテナは:内底面を有し、内底面の少なくとも1つの領域が、少なくとも1つの波長の化学線に対して透過である、オープントップ容器と;および、容器の内底面に接合され、積層多材料層の露出面からの硬化フォトポリマーの分離を容易にするように構成された積層多材料層とを含み、積層多材料層は:内底面の領域の少なくとも一部に接合されている、第1の材料層と、および第1の材料層の少なくとも一部に接合されている、第2の材料層であって、少なくとも10Barrerの酸素浸透性を有し、コンテナの露出面を形成する、前記第2の材料層とを含む。
【0005】
いくつかの態様によれば、液体フォトポリマーを硬化させて硬化フォトポリマーの層を形成することによって、部品を製造するように構成された積層造形装置が提供され、積層造形装置は、第1の波長の放射線を含む化学線を生成するように構成された少なくとも1つの化学線源と;フォトポリマーコンテナであって、内底面を有し、内底面の少なくとも1つの領域が、化学線の第1の波長に対して透過である、オープントップ容器;および、容器の内底面に接合され、積層多材料層の露出面からの硬化フォトポリマーの分離を容易にするように構成された積層多材料層を含む、前記フォトポリマーコンテナとを含み、積層多材料層は:内底面の透過領域の少なくとも一部に接合されている、第1の材料層、および第1の材料層の少なくとも一部に接合されている、第2の材料層であって、少なくとも10Barrerの酸素浸透性を有し、コンテナの露出面を形成する、前記第2の材料層を含む。
【0006】
前述の装置および方法の実施形態は、上記または以下にさらに詳細に説明される態様、特徴、および行為の任意の適切な組み合わせによって実施され得る。本教示のこれらおよび他の態様、実施形態、および特徴は、添付の図面と併せて以下の説明からより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面は一定の縮尺で描かれることを意図しない。わかりやすくするために、各図面にはすべての構成要素にラベルを付けているわけではない。
【0008】
図1A図1Aは、いくつかの実施形態による、部品の複数の層を形成するステレオリソグラフィープリンタの概略図を示す。
図1B図1Bは、いくつかの実施形態による、部品の複数の層を形成するステレオリソグラフィープリンタの概略図を示す。
図1C図1Cは、いくつかの実施形態による、部品の複数の層を形成するステレオリソグラフィープリンタの概略図を示す。
図2図2は、いくつかの実施形態による、積層二重材料分離層を有する例示的なコンテナを示す図である。
図3A図3Aは、いくつかの実施形態による、例示的な積層造形装置を示す図である。
図3B図3Bは、いくつかの実施形態による、例示的な積層造形装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
積層造形中に部品を表面から分離するためのシステムおよび方法が提供される。上述したように、積層造形においては、構築プラットフォーム上に複数の材料層を形成することができる。場合によっては、1以上の層が、他の層または構築プラットフォーム以外の表面と接触するように形成されてもよい。例えば、ステレオリソグラフィー技術は、液体樹脂が配置されているコンテナのような追加の表面と接触するように樹脂の層を形成することができる。
【0010】
部品が他の層または構築プラットフォーム以外の表面と接触して形成される1つの例示的な積層造形技術を説明するために、逆ステレオリソグラフィープリンタを図1A~Cに示す。例示的なステレオリソグラフィープリンタ100は、部品の層が予め硬化された層または構築プラットフォームに加えてコンテナの表面と接触して形成されるように、構築プラットフォーム上に下向きの方向に部品を形成する。
【0011】
図1A図1Cの例では、ステレオリソグラフィープリンタ100は、構築プラットフォーム104、コンテナ106、軸108、および液体樹脂110を含む。下向きの構築プラットフォーム104は、液体フォトポリマー110で満たされているコンテナ106の床に対向している。図1Aは、構築プラットフォーム104上に部品のいずれかの層を形成する前のステレオリソグラフィープリンタ100の構成を表す。
【0012】
図1Bに示すように、部品112は、初期層が構築プラットフォーム104に取り付けられた状態で層状に形成されてもよい。コンテナの床は化学線に対して透過性であってもよく、それはコンテナの床に載っている液体光硬化性樹脂の薄層の部分を標的とすることができる。化学線への曝露は液体樹脂の薄層を固化させ、それは硬くなる。層114は、以前に形成された層と、それが形成されたときのコンテナ106の表面との両方と少なくとも部分的に接触している。
【0013】
硬化した樹脂層の上面は、典型的には、コンテナの透過な床に加えて、構築プラットフォーム4の底面または以前に硬化した樹脂層のいずれかに接合する。層114の形成に続いて部品の追加の層を形成するためには、コンテナの透過な床と層との間に生じるいかなる接合も破壊されなければならない。例えば、層114の表面の1つまたは複数の部分(または表面全体)はコンテナに接着するが、次の層の形成に先立って接着を除去しなければならないようにすることができる。
【0014】
本明細書で使用されるとき、表面からの部品の「分離」は、部品を表面に接続する接着力の除去を指す。したがって、本明細書で使用されるように、分離直後に、部品および表面は、本明細書に記載の技法を介して分離され互いに接着されなくなっている限り、互いに接触(例えば、縁部および/または角で)していてもよい。
【0015】
部品と表面との間の接合の強度を低下させるための技術は、硬化プロセスを抑制すること、またはコンテナの内側に非常に滑らかな表面を提供することを含み得る。しかしながら、多くの使用事例では、コンテナから硬化した樹脂層を除去するために少なくともある程度の力を加えなければならない。
【0016】
図1Cは、コンテナを部品から機械的に分離するためにコンテナを回転させることによって部品に力を加えることができる1つの例示的な手法を示す。図1Cでは、ステレオリソグラフィープリンタ100は、コンテナの一方の側の固定軸108を中心にコンテナを回転させることによって部品112をコンテナ106から分離し、それによってコンテナの端部を固定軸より遠位に距離118(どんな適切な距離でもよい)だけ変位させる。この工程は、直前に生成された層をコンテナから分離するための、コンテナ106の部品112から離れる方向への回転を含むものであり、コンテナの部品に近づく方向への戻り回転がそれに引き続いてもよい。
【0017】
いくつかの実装形態では、構築プラットフォーム104は、部品とコンテナとの間に形成される液体樹脂の新しい層のための空間を作り出すためにコンテナから離れるように移動することができる。構築プラットフォームは、上記のコンテナ106の回転運動の前、最中、および/または後に、このようにして移動することができる。
【0018】
構築プラットフォームが動くときに関係なく、構築プラットフォームの動きに続いて、液体樹脂の新しい層が形成される部品への露光および追加に利用可能である。前述の硬化および分離プロセスの各ステップは、部品が完全に作成されるまで続けられてもよい。上述のステップのように部品とコンテナベースとを漸進的に分離することによって、部品とコンテナとを分離するのに必要なピーク力および/または合力を最小にすることができる。
【0019】
しかしながら、上述のプロセス中に力を加えることにより、複数の問題が生じる可能性がある。いくつかの使用例では、分離プロセスは部品自体におよび/または部品自体を通して力を加えることができる。部品に力が加わると、場合によっては、コンテナではなく部品が構築プラットフォームから外れることがある。これにより、製造プロセスが中断することがある。一部の使用例では、部品に力が加わると、部品自体の変形や機械的故障が発生する可能性がある。
【0020】
場合によっては、分離プロセス中に部品に加えられる力は、コンテナの内底面に適切な材料の層を付けることによって減らすことができる。そのような層は時に「分離層」と呼ばれる。分離層を形成するのに適した材料はしばしば弾性を示し、分離中に部品がコンテナと接触することによって部品に加わる力を減少させる。このようにして、この分野で一般に使用されている1つの例示的な材料は、PDMSとしても知られているポリジメチルシロキサンである。
【0021】
米国特許出願第14/734,141号に記載されているように、より硬い基板の上に化学線的に透過な剥離層を設けるために、Sylgard184として市販されているPDMS配合物などのいくつかの種類のPDMSが使用されている。PDMSは、かなりの程度の酸素透過性、ならびにかなりの程度の化学線透過性を提供することが知られている。PDMSはまた、分離層にとって有利であると理解されている実質的な弾性および機械的性質を提供する。しかしながら、PDMSの1つの欠点は、ある種の物質にさらされると望ましくない反応または変化を受ける傾向があることである。このように、PDMSはこれらの物質と非適合性であると言われている。
【0022】
PDMSおよび他の弾性材料と特定の物質との非適合性は、これらの非適合性の物質を含むフォトポリマーと共に利用されると、弾性層の機械的または光学的特性の劣化など、分離層に様々な望ましくない変化をもたらす。例えば、イソボルニルアクリレートなどの特定の物質は、PDMSを膨張、「膨潤」(swell)または他の材料から分離させることさえあることが見出されている。
【0023】
この挙動は、ステレオリソグラフィープリンタのコンテナの内部に塗布されたPDMS分離層を使用不可能にする可能性がある。結果として、フォトポリマーに使用するための潜在的には興味深かった特定の物質は、そのような分離層が有する低コストおよび他の利点にもかかわらず、PDMS分離層を含むステレオリソグラフィー樹脂コンテナでの使用に適しているとは考えられていない。
【0024】
フォトポリマーに使用するための潜在的に興味のあった上述の物質と適合性のあるコンテナ内に分離層を形成するために使用できる他の材料があるが、それらの材料は一般に積層造形法に使用するための他の望ましい特性を示さない。例えば、材料は適合性であり得るが、部品に加えられる力を減少させながらコンテナからの部品の分離を容易にするために使用されるときには弾性のような望ましい機械的特性を有さないかもしれない。特に、酸素浸透性は、材料の酸素浸透性が少なくともいくつかのフォトポリマーの硬化を阻害すると思われるので、分離層にとって非常に望ましい性質である。
【0025】
硬化抑制によるコンテナの表面での未硬化樹脂の薄層の製造は、層が新たに形成された固体樹脂(solid resin)の層とコンテナとの間の接着力を減少させるので、コンテナからの硬化樹脂の分離を助ける。しかしながら、一般的に言えば、酸素浸透性の高い材料は、フォトポリマーに使用するための潜在的に興味のある上述の物質と適合性ではなく、そしてあり得るものはいずれも法外に高価である。
【0026】
本発明者らは、異なる材料の積層から形成された分離層が、PDMSのような弾性材料の上述の利点を提供しながら、弾性材料自体と適合性ではないフォトポリマーと共に使用する潜在的な関心のある物質と適合性があることを認識し理解した。このように、積層多材料分離層は、層から部品を分離するのに望ましい機械的性質および樹脂の硬化を抑制するのに十分な酸素浸透性を示すことができ、同時に多様な物質と適合性がある。
【0027】
一般に、本発明の実施形態は、2以上の材料のうちのいずれかによってもたらされる利点が増大または獲得されるように分離層を形成するために2以上の材料を有利に利用し得る一方で、2つ以上の材料のうちのいずれかに典型的に関連する不利益は軽減または最小化される。本明細書に記載の分離層は、既存のコンテナに取り付けられてもよく、および/またはコンテナの一部を形成してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、PDMSなどの第1の材料は、フォトポリマーと第1の材料との間の「バリア層」として作用するように配置された第2の材料によって積層造形装置の通常の動作中にフォトポリマーと接触するのを防止されている。液体フォトポリマーコンテナの内部へのそのような積層分離層の適用は、他の解決法よりも効率的にそして潜在的に低コストで、機械的、光学的、および化学的性質を含む性質の組み合わせを提供し得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の材料層を1つまたは複数のバリア層と組み合わせて積層多材料層を形成することができ、それによって積層造形装置に使用されるコンテナの内底面が形成される(例えば、図1A~1Cのコンテナ106として)。
【0029】
場合によっては、第1の材料とバリア層とを含む積層多材料層は、バリア層としてフッ素化エチレンプロピレン(FEP)などの不浸透性材料を使用することができる。しかしながら、FEPはフォトポリマーと第1の材料との間に適切なバリアを提供することができるが、その不浸透性のために、それはその表面で樹脂の硬化を妨げず、硬化の抑制は、固体フォトポリマーの新たに硬化した層からのコンテナの分離を助けることができるので望ましい。そのように、FEPよりも高い酸素浸透性および/または酸素選択性を有するバリア層は、これらの特性の一方または両方がフォトポリマー硬化の抑制をもたらし、それが今度は分離を助けるのでより望ましい。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、積層造形装置のコンテナに接合された、またはその一部である積層多材料層は、コンテナが配置される積層造形装置によって使用される化学線の少なくともそれらの波長に対して実質的に透過であり得る。例えば、フォトポリマーを硬化させるために405nmの波長を有するレーザービームを利用する積層造形装置は、コンテナおよび多材料層が405nmの光に対して透明な部分(これらの部分は他の波長でも同様に透明であり得るが)を含む、積層された多材料層を有するコンテナを利用することができる。コンテナおよび/または多材料層の任意の1以上の層は、コンテナ内に保持されているフォトポリマーの領域上に光が投射されることを可能にする各構成要素を通る透明窓がある限り、それほど透明ではない部分を含み得ることに留意されたい。
【0031】
積層造形の間に表面から部品を分離するためのシステムおよび方法に関連する様々な概念およびその実施形態のより詳細な説明を以下に示す。本明細書に記載された様々な態様は、多数の方法のいずれかで実施され得ることを理解されたい。特定の実施形態の例は、例示的な目的のためだけに本明細書に提供される。さらに、以下の実施形態で説明される様々な態様は、単独で、または任意の組み合わせで使用されてもよく、本明細書に明示的に記載された組み合わせに限定されない。
【0032】
本明細書の実施形態は、本出願の譲受人であるFormlabs,Inc.によって販売されている”Form 2” 3Dプリンターおよびステレオリソグラフィーに関して主に開示されているが、本明細書に記載の技術は、他のシステムに応用可能である。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるような1以上の積層造形技術を介して製造される構造は、複数の層から形成されてもよく、または複数の層を含んでもよい。
【0033】
例えば、層ベースの積層造形技術は、オブジェクトの観察によって検出可能な一連の層を形成することによってオブジェクトを製造することができ、このような層は、10ミクロンと500ミクロンの間の任意の厚さを含む任意のサイズとすることができる。いくつかの使用例では、層ベースの積層造形技術は、異なる厚さの層を含むオブジェクトを製造することができる。
【0034】
図2は、いくつかの実施形態による、二重材料積層分離層を有する例示的なフォトポリマーコンテナを示す図である。図2の例では、コンテナ200(例えば、図1A図1Cのシステムのコンテナ106として使用することができる)は、第1の層201とバリア層202を含む分離層が適用される本体206を含む。
【0035】
第1の材料とバリア層は一緒になって、積層多材料分離層を構成する。図から分かるように、コンテナ200内に配置された液体フォトポリマーは、その表面203でバリア層202と接触するが、第1の層201とは接触しないであろう。コンテナ本体206は、アクリル、ガラス、および/または少なくともその一部が化学線的に透過である任意の材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コンテナ本体206は剛性材料から形成されている。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、(204で)第1の層とバリア層の対向する表面は、互いに界面を形成してもよい。例えば、第1の層とバリア層の表面は互いに接合されていても、そうでなければ接着されていてもよい。第1の層201の表面208は、コンテナ206の下の部分を形成する材料の表面、および/またはその光学的に透過な部分に接合または他の方法で接着することができる。
【0037】
図2の例に示すように、第1の層201の表面204は、コンテナ200によって保持されているフォトポリマーとは接触せず、代わりにバリア層202とコンテナ206の境界を形成する材料とだけ接触している。結果として、第1の層201がフォトポリマー206内の各物質と化学的に適合性である必要はないかもしれない。バリア層202が所与の物質に対して比較的不浸透性である限りにおいて、フォトポリマー内の物質は、起こり得るあらゆる望ましくない相互作用または反応によって、第1の層201またはその内部で利用可能ではないであろう。
【0038】
いくつかの実施形態において、第1の層201は、機械的基板層を提供するものとして説明され得る。そのような実施形態では、機械的基板層は、エラストマー特性を有する比較的柔らかい固体材料で形成されてもよく、一方で、バリア層は、液体フォトポリマーと機械的基板層との間にバリアを設けながら、基板層の動きを制限しないように十分に可撓性であればよい。
【0039】
特定の好ましい実施形態では、バリア層202が形成される材料は、PMPとしても知られるポリメチルペンテンを含み得るか、それから実質的になり得るか、またはそれからなり得る。PMPは、例えば、三井化学アメリカ社からTPXブランドで入手可能である。本発明者らは、PMP材料が、より低い分離力を可能にする非常に低い表面張力(50mN/m未満)、化学線に対する高い透過度、低い屈折率、高いガス(特に酸素)浸透性、および液体フォトポリマーに使用するために潜在的に興味がある多種多様な物質への優れた耐性を含む、ステレオリソグラフィー用途に関していくつかの有利な特性を有することを認識した。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、バリア層202は、0.001インチ~0.010インチの間、0.005インチ~0.025インチの間、0.0025インチ~0.0075インチの間、0.002インチ~0.006インチの間、または0.003インチ~0.005インチの間の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、バリア層は薄膜である。例えば、バリア層は、0.003インチ~0.005インチの間の厚さを有するPMPの薄膜であり得る。
【0041】
上述したように、酸素浸透性はフォトポリマーの硬化を阻害するので、そのような硬化の抑制を達成するのに十分な酸素浸透性を有するようにバリア層の1以上の材料を選択することが好ましい。さらに、多材料層を広範囲のフォトポリマー物質と適合性にするために、フォトポリマー内の望ましい物質に対して比較的不浸透性であるバリア層を選択することができる(少なくともいくつかの場合において、それはまた、第1の層の材料と非適合性であり得る)。
【0042】
本発明者らは、これらの望ましい特性を示すいくつかの適切な材料を認識した。したがって、いくつかの実施形態によれば、バリア層は、PMP、フルオロシリコーン、フルオロシリコーンアクリレート、ポリメチルペンテン、ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)、ポリテトラフルオロエチレン系もしくは非晶質フルオロプラスチック、PTFEまたはデュポン社のテフロン(登録商標)またはテフロン(登録商標)AF、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール変性(PETG)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、第1の層201の1以上の材料は、コンテナ200内に保持されている液体フォトポリマー中の物質との材料の化学的適合性についての懸念を少なくして選択され得る。いくつかの実施形態において、第1の層201の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。例えば、Dow CorningからSylgard 184として市販されている、同じくDow Corningから市販されているSylgard 527と3:1の比で混合されたPDMS材料が第1層の材料として使用されてきた。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、第1の層は、コンテナの底部に約1~10mmの深さまで注がれ、そして弾性の固体に硬化された材料のキャスト層(例えば、PDMS)であり得る。他の実施形態では、一般的な液体フォトポリマー材料との化学的非適合性のために分離層に使用することがこれまで考慮されていなかった材料を含む、PDMS以外の材料を第1の層に利用できる。
【0045】
化学線に対する必要な透過性を有する様々なエラストマー材料は、このような分離層での使用に適したものにすることができる。一例として、許容可能な程度の弾性および透過性を提供するために様々な形態の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を選択することができる。いくつかの実施形態によれば、第1の層用の有利な材料は、約10~50の間のショアータイプ(Shore Type)A測定によるデュロメーター値を有することができ、20-30の範囲が最も成功している。
【0046】
さらに、酸素に対して比較的浸透性であるように選択された材料を利用する実施形態は、第1の層またはバリア層のいずれかがそのような特性を欠く実施形態に対して特定の利点を示す。上述したように、酸素はある種のフォトポリマー化学において光重合反応を阻害する傾向がある。この抑制効果は、分離層の表面に沿って未硬化の液体フォトポリマーの薄層をもたらし、潜在的に分離性能を改善する可能性がある。一例として、分離層を形成するために典型的に使用されるPDMS材料は、500Barrer程度の比較的高い酸素浸透性を有し得る。
【0047】
比較的低い酸素浸透性を有するバリア層を利用する実施形態では、分離層の表面上のそのような抑制層は確実に形成されない可能性がある。上述したように、FEP材料から形成されたバリア層はその化学的弾力性に関して一定の利点を提供するが、その低い酸素浸透性(典型的には5Barrer未満)は分離層表面近くの液体フォトポリマー内の酸素抑制効果を減少または排除する。
【0048】
他方、PDMSのような比較的高い程度の酸素浸透性を有する材料は、十分な化学的弾力性を欠いているかまたはフォトポリマー化合物に対する不適切なバリアを提供し得る。したがって、バリア層のための適切な材料の選択は、第1の層材料の化学的非感受性と酸素浸透性および/または選択性とのバランスをとることを目的とし得る。コスト、機械的堅牢性、および製造可能性を含む他の要因もそのような決定に影響を及ぼし得る。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、液体フォトポリマーの化合物とも適合性のある最大の酸素浸透性を有するバリア層のための材料を選択することが有利であり得る。様々な実験において、本発明者らは、上記のようなPMPが、優れた化学的適合性および弾力性を有する一方で、35Barrer程度の適切な酸素浸透性を提供することを見出した。
【0050】
しかしながら、10~20Barrerより大きいBarrer値および許容される適合性を有する他の材料もまた有利であり得、その例は上記で論じられている。そして、当業者によって理解され得るように、酸素以外の抑制材料が特定のフォトポリマー化学に関連し得る。そのような場合、酸素に関する浸透性特性に関する前述の観察は、代替抑制材料および選択された材料を通るその浸透性に適用可能である。
【0051】
液体フォトポリマーおよび選択された材料が互いに対して高度の湿潤性を有するように、液体フォトポリマーと接触するようにバリア層中の1つまたは複数の材料を選択することがさらに有利であり得る。特に、積層造形装置が、化学線へのその後の露光のために、材料の表面に対して一定の厚さを有する液体フォトポリマーの薄膜を形成できることが望ましい場合がある。
【0052】
低い部分湿潤性を有するバリア層材料に塗布された液体フォトポリマーは、材料の表面を横切って実質的に均一な薄い層に容易に広がるよりもむしろビーズを形成する傾向、あるいは凝集する傾向がある。そのようなものとして、FEP、テフロン(登録商標)AF、および典型的には低い表面エネルギーを有する表面を含む他のそのような「非粘着」表面は、液体フォトポリマーに関して低い湿潤性の表面を提供する。
【0053】
この低い表面エネルギーは、硬化したフォトポリマーの分離には有利であり得るが、液体フォトポリマーの薄膜の形成に関しては望ましくない。対照的に、本発明者らは、PMPは、広範囲の液体フォトポリマーに関してFEPよりも実質的により湿潤性であり、その結果、PMPは硬化フォトポリマーに関して優れた分離性を有するという事実にもかかわらず、フォトポリマーの薄膜がPMPで形成された第1の材料に対してより確実に形成され得るということを突き止めた。
【0054】
本明細書に記載されている積層多材料分離層は、PDMS単独での使用など、従来の分離層を超える多数のさらなる利点を提供する。一例として、PDMS単独で形成された分離層は、「曇り」または「かぶり」として知られる方法で劣化する周知の傾向を有する。特定の理論に限定されることを望むものではないが、本発明者らは、この形態の劣化は実質的にフォトポリマー物質のPDMS材料への拡散および/または吸収ならびにそれに続くPDMS材料内の化学反応によるものであると仮定する。
【0055】
しかしながら、PMPのようなバリア層材料の比較的な不浸透性は、本明細書に記載されるようにフォトポリマーコンテナの有効使用寿命を劇的に増加させる。これは、部分的には、バリア層材料を通って分離層の大部分へのフォトポリマー物質の移動が実質的に減少したことによると考えられる。マイグレーションのこの減少および/または分離層劣化プロセスの減少は、さらに有利には、本発明の実施形態を使用して形成された部品の有効解像度および精度の大幅な向上を可能にする。
【0056】
これは、一部には、フォトポリマー物質の分離層への移行の減少およびそれに続く分解プロセスから生じる、分離層を通る化学線の透過における一貫性の改善によるものと考えられる。さらに、本発明者らは、積層多材料分離層を通過する化学線の散乱が著しく少ないことを観察した。
【0057】
多材料分離層を含むコンテナは様々な方法で製造することができる。一例として、PMPフィルムバリア層および第1のPDMS層から形成された分離層は、以下の工程で形成され得る:最初に、Sylgard184のような約120mlの未硬化PDMS材料を217mm×171mmの底寸法を有する透明アクリル容器に導入し、そしてPDMS材料を硬化させる:続いて、20~25mlの追加の未硬化PDMS材料を、以前に硬化したPDMS材料の上のコンテナに導入する:PDMS領域と同じサイズのPMPフィルムの薄膜を次にPDMS層の上に配置して、未硬化PDMSがPMPフィルムと以前に硬化したPDMS材料の領域にわたって広がるようにする:そして、PDMS材料の平坦な表面へのPMPフィルムの面一の塗布および硬化プロセスの完了を確実にするために、平らな塗布装置を利用して、PMPフィルムとPDMSとの間の接合およびPDMSとアクリル容器との間の結合を形成することができる。
【0058】
他の例では、多材料分離層を含むコンテナは、後続の堆積において第1の材料上にバリア材料をキャスティングすること、第1の材料上にバリア材料をスピンコーティングすること、第1の材料上にバリア材料を蒸気またはプラズマ堆積すること、および/または、選択された第1の材料およびバリア材料に適し得る他の方法などの、他の技術を用いて製造することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、積層分離層を形成するために2以上の材料を選択することができる。多材料分離層は、例えば、3層、4層またはそれ以上の積層層を含むことができる。追加的にまたは代替的に、多材料分離層の1以上の層は、層の材料内に存在する添加材料を含み得る。いくつかの実施形態において、多材料分離層の層(例えば、PMP層)は、タルクまたはガラス鉱物充填物などの材料を組み込んでもよい。
【0060】
一般に、そのような添加剤はフィルム材料の不透過性を増加させることができるが、露光の光学面のすぐ近くで不透過性を増加させても形成プロセスの精度または正確さはごくわずかに低下する。いくつかの実施形態では、第1の層および/またはバリア層は、2016年12月22日に出願された「Systems and Methods of Flexible Substrates for Additive Fabrication」というタイトルの米国特許出願第15/388,041号に開示されるような繊維複合フィルムであり得、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
いくつかの実施形態では、多材料分離層の第1の層を形成するために、複数の形態のPDMSを互いに組み合わせることができる。一例として、Sylgard184をSylgard527と3対1の比率で組み合わせて、上述のように第1の層に形成することができる。別の例として、第1の層とバリア層との間、または第1の層とコンテナの表面との間に形成された接合は、第1の層とバリア層との間および/または第1の層とコンテナの表面との間に実質的に配置された第3の材料の適用によって強度が増強され得る。このようにして、そうでなければ強くまたは全く接着しない可能性がある潜在的に非適合性の材料をうまく利用することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、第1の層は、100Barrer、150Barrer、200Barrer、250Barrerまたは300Barrer以上の酸素浸透性を有し得る。いくつかの実施形態において、第1の層は、800Barrer、750Barrer、600Barrerまたは400Barrer以下の酸素浸透性を有し得る。上記範囲の任意の適切な組み合わせもまた可能である(例えば、300Barrer以上600Barrer以下の酸素浸透性など)。好ましくは、第1の層は、100Barrer~800Barrerの範囲、250Barrer~750Barrerの範囲、または300Barrer~600Barrerの範囲、または400Barrer~600Barrerの範囲の酸素浸透性を有することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、バリア層は、5Barrer、10Barrer、15Barrer、20Barrerまたは25Barrer以上の酸素浸透性を有し得る。いくつかの実施形態において、バリア層は、100Barrer、80Barrer、60Barrer、40Barrerまたは35Barrer以下の酸素浸透性を有し得る。上述の範囲の任意の適切な組み合わせも可能である(例えば、10Barrer以上40Barrer以下の酸素浸透性など)。好ましくは、バリア層は、10Barrer~100Barrerの範囲、または15Barrer~60Barrerの範囲、または10Barrer~40Barrerの範囲、または20Barrer~35Barrerの範囲の酸素浸透性を有することができる。
【0064】
バリア層が、フォトポリマー中の化合物よりも酸素、または代替の抑制材料に対してかなりの程度の選択性を有することがさらに有利であり得る。特に、PMPポリマーフィルムのような材料は、異なる化合物に対して所望の浸透性を有する膜を形成し得る。このような膜の浸透性は、少なくとも部分的には材料を浸透する特定の化合物に依存し得る。
【0065】
比較的不浸透性の材料に関しては、化合物の分子サイズによる変動が、いかなる限定された浸透性に関しても支配的な要因となり得る。しかしながら、より浸透性の材料については、その透過性は、化合物の他の化学的性質に部分的に基づいて変わり得る。所与の材料が第2の化合物に対してよりも第1の化合物に対してより透過性である限りにおいて、その材料は第2の化合物に対して第1の化合物に対して「選択性」を有すると言われる。
【0066】
そのような選択性は、第1の化合物についての浸透性の測定値と第2の化合物に対する浸透性の測定値との間の比で表され得、この比は1.0より大きい。上記の例を使用すると、FEPは全ての化合物に対して比較的等しく不浸透性であるので、FEPについての異なる材料に対する所与の材料の選択性はおそらく1に近いであろう。対照的に、PMPは、1よりも大きい(またははるかに大きい)フォトポリマー化合物に対する酸素に対する選択性を有し得る。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、分離層は、フォトポリマー樹脂中の化合物よりも酸素または他の関連する硬化抑制剤に対してより高い選択性を有する透過性材料を含み得る。このような分離層は、フォトポリマー樹脂中の化合物が分離層内または分離層を透過するのを防止しながら、抑制化合物(例えば、酸素)がフォトポリマー中に拡散することを有利に可能にする。例えば、バリア層は、フォトポリマーの1以上の化合物に対して酸素に対して高い選択性を有し得る。そのような選択性は、1~10の間、または2~20の間、または少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも50であり得る。
【0068】
内部に配置された積層多材料分離層を有するコンテナを利用することができる別の例示的な積層造形装置を図3A図3Bに示す。例えば、コンテナ200は、図3A図3Bのシステム300に採用されてもよい。例示的なステレオリソグラフィープリンタ300は、支持ベース301、ディスプレイおよびコントロールパネル308、ならびにフォトポリマー樹脂の貯蔵および分配のための貯蔵所および分配システム304を含む。支持ベース301は、システムを使用して物体を製造するように動作可能であり得る様々な機械的、光学的、電気的、および電子的構成要素を含み得る。
【0069】
動作中、フォトポリマー樹脂は、分配システム304からコンテナ302内に分配されてもよい。コンテナ302は、例えば図2に示されるコンテナ200内のもののような、積層された多材料分離層を含んでもよい。
【0070】
構築プラットフォーム305は、製造中の物体の底面層、または構築プラットフォーム305自体の底面層(最も低いz軸位置)が、コンテナ302の底部311からz軸に沿って所望の距離になるように、垂直軸303(図3A-Bに示されるようにz軸方向に沿って配向される)に沿って配置されてもよい。所望の距離は、構築プラットフォーム上または製造中の物体の予め形成された層上に製造されるべき固体材料の層の所望の厚さに基づいて選択することができる。
【0071】
図3A図3Bの例では、コンテナ302の底部311は、支持ベース301内に配置された放射線源(図示せず)によって生成された化学線に対して透過であり得る。コンテナ302および構築プラットフォーム305の底面部分に面する部分、またはその上に製造されている物体は、放射線に曝される可能性がある。
【0072】
そのような化学線に露光されると、液体フォトポリマーは、時には「硬化」と呼ばれる化学反応を受けて、露光された樹脂を実質的に凝固させて構築プラットフォーム305の底面部またはその上に製造される物体に付着させる。図3A図3Bは、構築プラットフォーム305上に物体の任意の層を形成する前のステレオリソグラフィープリンタ301の構成を表しており、明確にするために、描写されたコンテナ302内に液体フォトポリマー樹脂も示されていない。
【0073】
材料層の硬化に続いて、新たな層を形成するために構築プラットフォーム305を再配置するため、および/またはコンテナ302の底部311とのあらゆる結合に分離力を加えるために、構築プラットフォーム305は垂直運動軸303に沿って移動されてもよい。さらに、コンテナ302は、ステレオリソグラフィープリンタ301が水平運動軸310に沿ってコンテナを移動させることができるように支持ベース上に取り付けられ、それによって、少なくともいくつかの場合において、追加の分離力を有利に導入する。ワイパー306がさらに設けられ、水平運動軸310に沿って動くことができ、309において取り外し可能にまたは他の方法で支持ベース上に取り付けることができる。
【0074】
本明細書では、「透過性」である材料について言及する。コンテナの透過性およびその上に配置された多材料分離層の透過性は、化学線がコンテナ内のフォトポリマーに伝達されるために適切であることが理解されよう。そのように、「透過性」は化学線に対する透過性を意味し、それは全ての可視光に対する透過性を意味してもしなくてもよい。いくつかの実施形態では、化学線は可視スペクトルの放射線を含むことができ、したがって、そのような化学線に対して透過な材料は少なくとも1つの波長の可視光に対して透過である。
【0075】
さらに、様々な程度のガス浸透性、特に酸素浸透性を示す元素について本明細書で論じる。上に提供された浸透性値は、差圧法(真空法を含むがこれに限定されない)および等圧法を含む、ガス浸透性についての任意の適切な試験プロトコルの結果であり得る。例えば、上に提供された浸透性値は、材料のガス浸透性を測定するためのISO15105標準試験プロトコルの結果であり得る。
【0076】
そのような変更、修正および改良はこの開示の一部であることを意図しておりそして本発明の精神および範囲内にあることを意図している。さらに、本発明の利点が示されているが、本明細書に記載の技術のすべての実施形態がすべての記載された利点を含むわけではないことを理解されたい。いくつかの実施形態は、本明細書で有利であると説明されたいかなる特徴も実装しなくてもよく、場合によっては、説明された特徴のうちの1つまたは複数がさらなる実施形態を達成するために実装されてもよい。したがって、前述の説明および図面は例示にすぎない。
【0077】
本発明の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または前述の実施形態で具体的に説明されていない様々な構成で使用することができ、したがって、その適用において、前述の説明に記載されるかまたは図面に示される構成要素の詳細および配置に限定されない。例えば、一実施形態に記載の態様は、他の実施形態に記載の態様と任意の方法で組み合わせることができる。
【0078】
クレームの要素を変更するためのクレームでの「第1」、「第2」、「第3」などの序数の用語の使用は、それ自体で優先順位、序列、または、あるクレーム要素と別のクレーム要素の順序、またはメソッドの動作が実行される時間的順序を暗示するものではないが、クレーム要素を区別するために、特定の名前を持つ1つのクレーム要素と同じ名前を持つ別の要素(ただし序数用語を使用する場合)を区別するためのラベルとして使用されている。
【0079】
また、本明細書で使用されている表現および用語は説明を目的としており、限定と見なされるべきではない。本明細書における「含む」、「含む」、または「有する」、「含有する」、「包含する」、およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B