IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノバルティス アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-注射器装置 図1
  • 特許-注射器装置 図2
  • 特許-注射器装置 図3
  • 特許-注射器装置 図4
  • 特許-注射器装置 図5
  • 特許-注射器装置 図6
  • 特許-注射器装置 図7
  • 特許-注射器装置 図8
  • 特許-注射器装置 図9
  • 特許-注射器装置 図10
  • 特許-注射器装置 図11
  • 特許-注射器装置 図12
  • 特許-注射器装置 図13
  • 特許-注射器装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】注射器装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A61M5/20 570
A61M5/20 550
A61M5/20 500
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019550828
(86)(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018052482
(87)【国際公開番号】W WO2018166699
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】62/471,981
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17164212.7
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アラン シュミトリン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ イオッビ
(72)【発明者】
【氏名】エーリッヒ シュトゥーダー
(72)【発明者】
【氏名】アンドルー ブライアント
(72)【発明者】
【氏名】チンマイ デオダー
(72)【発明者】
【氏名】ラジャン パテル
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/033496(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/091765(WO,A1)
【文献】特表2012-501771(JP,A)
【文献】特表2014-516634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0313395(US,A1)
【文献】特表2009-525111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/178
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)であって、
カートリッジ(120)を収容および保持するように構成されたカートリッジ収容ユニット(110)と、
前記カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から取り外されることを選択的に許容しかつ防止するように構成された駆動手段(115)と、
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)の電子部品および電子アセンブリのうちの少なくとも一方の自己試験を行うように構成された自己試験ユニット(130)と、
前記自己試験が不合格だった場合に前記カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から取り外されることを許容するように前記駆動手段(11)を制御するように構成された制御ユニット(140)と、
を備え
前記制御ユニット(140)は、前記自己試験が不合格だった場合に、前記カートリッジ(120)を前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から取り外すことができるように、該注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)のドアまたはシャッタを自動的に開放するように前記駆動手段(115)を制御するように構成されている、注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項2】
前記制御ユニット(140)は、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)に挿入されたカートリッジ(120)に関するカートリッジデータを取得し、該カートリッジデータが、挿入された前記カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)と共に使用されるべきでないことを示しているか否かをチェックし、チェックされた前記カートリッジデータが、挿入された前記カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)と共に使用されるべきでないことを示している場合、前記カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から取り外されることを許容するように前記駆動手段(115)を制御するように構成されている、請求項1記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項3】
前記制御ユニット(140)は、前記自己試験が合格し、チェックされたカートリッジデータが、挿入された前記カートリッジ(120)を前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)と共に使用することができることを示している場合、前記カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から取り出されることを防止するように前記駆動手段(115)を制御するように構成されている、請求項2記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項4】
カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)に挿入されているか否かを判定するように構成されたカートリッジ検出器(150)をさらに備え、
前記制御ユニット(140)は、カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)に挿入されていないと前記カートリッジ検出器(150)が判定した場合、カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)に挿入されることを許容するように前記駆動手段(115)を制御するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項5】
前記駆動手段(115)は、カートリッジ(120)を収容および保持するように構成されたカートリッジ収容ユニット(110)を有しており、
前記制御ユニット(140)は、前記自己試験が不合格だった場合に、前記カートリッジ収容ユニット(110)に保持されたカートリッジ(120)を前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から取り外すことができるように、前記カートリッジ収容ユニット(110)を、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)のハウジングから少なくとも部分的に突出させるように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項6】
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から押し出されるように構成された中空の皮膚針(165)と、
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)が人間または動物の体の皮膚に配置されていることを示す近接信号を生成するように構成された近接センサ(170,172)と、
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)のユーザが該注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)による注射をトリガしたことを示すイグニション信号を生成するように構成されたイグニション手段(180)と、
をさらに備え、
前記制御ユニット(140)が前記近接信号および前記イグニション信号を取得し、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)の電源オンから前記イグニション信号が取得されるまで前記近接信号が連続的に取得されている場合、前記制御ユニット(140)は、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)からの前記皮膚針(165)の押出しを行わないように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項7】
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から押し出されるように構成された中空の皮膚針(165)と、
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)が人間または動物の体の皮膚に配置されていることを示す近接信号を生成するように構成された近接センサ(170,172)と、
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)のユーザが該注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)による注射をトリガしたことを示すイグニション信号を生成するように構成されたイグニション手段(180)と、
をさらに備え、
前記制御ユニット(140)が前記近接信号および前記イグニション信号を取得し、前記近接信号が取得された後の所定の期間内に前記イグニション信号が取得された場合、前記制御ユニット(140)は、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)からの前記皮膚針(165)の押出しを行わないように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項8】
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から押し出されるように構成された中空の皮膚針(165)と、
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)が人間または動物の体の皮膚に配置されていることを示す近接信号を生成するように構成された近接センサ(170,172)と、
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)のユーザが該注射器装置(100)による注射をトリガしたことを示すイグニション信号を生成するように構成されたイグニション手段(180)と、
をさらに備え、
前記制御ユニット(140)が前記近接信号および前記イグニション信号を取得し、カートリッジ(120)が前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から取り出されることを前記駆動手段(115)が防止した時点の後の所定の期間内に前記近接信号が取得された場合、前記制御ユニット(140)は、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)からの前記皮膚針(165)の押出しを行わないように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項9】
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)が人間または動物の体の皮膚に配置されたことを示す第1の近接信号を生成するように構成された第1の近接センサ(170)と、
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)が人間または動物の体の皮膚に配置されたことを示す第2の近接信号を生成するように構成された第2の近接センサ(172)と、
をさらに備え、
前記制御ユニット(140)は、前記第1の近接信号および前記第2の近接信号に基づき、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)が人間または動物の体の皮膚に配置されたことを判定するように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項10】
前記制御ユニット(140)は、前記第1の近接信号および前記第2の近接信号が同時に取得されたとき、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)が人間または動物の体の皮膚に配置されたことを判定するように構成されている、請求項9記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項11】
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から押し出されるように構成された中空の皮膚針(165)をさらに備え、
前記第1の近接センサ(170)と前記第2の近接センサ(172)とを接続する仮想線が、押し出された状態の前記皮膚針(165)と交差しない、請求項9または10記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項12】
前記第1の近接センサ(170)および前記第2の近接センサ(172)は前記皮膚針(165)から同じ距離に配置されており、かつ/または
前記第1の近接センサ(170)および前記第2の近接センサ(172)は前記皮膚針(165)よりも前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)の中心の近くに配置されている、請求項11記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項13】
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から押し出されるように構成された中空の皮膚針(165)をさらに備え、
前記制御ユニット(140)は、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)が人間または動物の体の皮膚から取り除かれたか否かを前記第1の近接信号および前記第2の近接信号に基づき判定し、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)が人間または動物の体の皮膚から取り除かれたという判定に応答して、前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)内への前記皮膚針(165)の引込みを行うように構成されている、請求項9または10記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項14】
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)から押し出されるように構成された中空の皮膚針(165)と、
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)に挿入されたカートリッジ(120)の隔壁(123)を貫通するように構成された隔壁針(190)と、
をさらに備え、
前記制御ユニット(140)は、前記皮膚針(165)の押出しを行い、該皮膚針(165)の押出しの直前または前記皮膚針(165)の押出しと同時に、前記隔壁針(190)による前記隔壁(123)の貫通を行うように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【請求項15】
前記注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)の電子部品および電子アセンブリのうちの少なくとも一方が、電気モータ、近距離通信システム、バッテリ、近接センサ、プロセッサ、針押出し機構および針引込み機構のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から14までのいずれか1項記載の注射器装置(100;100a;100b;100c;100d)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器装置に関する。特に、本発明は、注射器装置の安全面に関する。
【背景技術】
【0002】
注射器装置は、医薬品を注射によって人間または動物の体に注入するように設計された医療装置である。安全性の理由から、注射器装置が正しく作動することが保証されなければならない。
【0003】
国際公開第2016/033496号は、駆動制御機構への入力として使用される電子皮膚センサを組み込んだ、薬剤送達用の自動注射装置に関する。電子皮膚センサのステータスは、駆動制御機構の機能を使用可能および使用不能にしかつ駆動制御機構の機能を起動させるために使用される。しかしながら、電子皮膚センサが誤作動し、電子皮膚センサの誤ったステータスが、駆動制御機構の機能を使用可能および使用不能にしかつ駆動制御機構の機能を起動させるために使用される場合、問題が生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、改良された安全性能を有する注射器装置を提供するという目的に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に規定された注射器装置によって達成される。
【0006】
注射器装置は、カートリッジが注射器装置から取り外されることを選択的に許容しかつ防止するように構成されたアクセス手段と、注射器装置の電子部品および電子アセンブリのうちの少なくとも一方の自己試験を行うように構成された自己試験ユニットと、自己試験が不合格だった場合にカートリッジが注射器装置から取り外されることを許容するようにアクセス手段を制御するように構成された制御ユニットと、を備える。
【0007】
カートリッジは、医薬品を収容し、かつ医薬品を注射器装置によって投与するように適応された、容器である。「医薬品」という用語は、液体、溶液、ゲルまたは微細懸濁液などの、制御された形式で注射器装置の中空針を通過するように構成された流動可能な薬品を含んだあらゆる薬物を包含することが意図されている。
【0008】
アクセス手段は、カートリッジが注射器装置に挿入されかつ注射器装置から取り外されることを許容するあらゆる機械的要素または構造を含んでよい。例えば、アクセス手段は、ドアまたはシャッタがアンロックされた後にカートリッジを注射器装置に挿入することができるまたは注射器装置から取り外すことができるようにロックまたはアンロックすることができるドアまたはシャッタを含んでもよい。好ましい実施形態では、アクセス手段は、カートリッジを収容および保持するように構成されたカートリッジ収容ユニットを有しており、カートリッジ収容ユニットは、カートリッジ収容ユニットに保持されたカートリッジを注射器装置から取り外すことができるように、注射器装置のハウジングから少なくとも部分的に突出するように構成されている。注射器装置のハウジングからのカートリッジ収容ユニットの突出は、カートリッジ収容ユニットを閉鎖状態から開放状態へかつその逆に回転またはスライドさせる回転またはスライド機構を含んでもよい。
【0009】
好ましい実施形態では、アクセス手段は、カートリッジを注射器装置へ挿入することができない状態からカートリッジを注射器装置へ挿入することができる状態へアクセス手段を移行させるように適応された駆動手段を有している。例えば、駆動手段は、ドア、シャッタまたはカートリッジ収容ユニットを開放させるための力を生じる電気モータを含んでもよい。特に、電気モータによって、付勢したばねがばね力を解放させて、ドア、シャッタまたはカートリッジ収容ユニットが自動的に開放されてもよい。
【0010】
自己試験ユニットは、注射器装置の電子部品および電子アセンブリのうちの少なくとも一方を試験するように適応されたあらゆる種類の処理ユニットを含んでもよい。例えば、自己試験ユニットは、制御信号をそれらに送ったときに電子部品および電子アセンブリのうちの少なくとも一方が適切な応答信号を提供するか否かをチェックするソフトウェアを動作させるマイクロプロセッサを含んでもよい。
【0011】
好ましい実施形態では、注射器装置の電子部品および電子アセンブリのうちの少なくとも一方は、電気モータ、近距離通信システム、バッテリ、近接センサ、プロセッサ、針押出し機構および針引込み機構のうちの少なくとも1つを含む。例えば、自己試験ユニットは、電源オン自己試験、電源オン自己試験以来装置が危険になっていないか否かをチェックする周期的試験および/または注射器装置のセンサおよび/またはアクチュエータが正しく作動しているか否かをチェックする個別試験を行うように構成されていてもよい。
【0012】
制御ユニットは、自己試験が不合格だった場合にカートリッジが注射器装置から取り外されることを許容するようにアクセス手段を制御するように構成されたあらゆる種類の電子制御手段、例えばマイクロプロセッサであってもよい。
【0013】
好ましい実施形態では、制御ユニットは、カートリッジを注射器装置から取り外すことができる状態へ注射器装置が自動的に移行するようにアクセス手段を制御する。例えば、自己試験が不合格だったとき、制御ユニットは、カートリッジが注射器装置から取り外されてもよいようにドアまたはシャッタを自動的に開放してもよい。さらに、アクセス手段が、カートリッジを収容および保持するように構成されたカートリッジ収容ユニットを有する場合、制御ユニットは、自己試験が不合格だったときにカートリッジ収容ユニットに保持されたカートリッジを注射器装置から取り外すことができるように、カートリッジ収容ユニットを、注射器装置のハウジングから自動的に少なくとも部分的に突出させるように構成されていてもよい。
【0014】
一実施形態では、制御ユニットは、注射器装置に挿入されたカートリッジに関するカートリッジデータを取得し、カートリッジデータが、挿入されたカートリッジが注射器装置と共に使用されるべきでないことを示しているか否かをチェックし、チェックされたカートリッジデータが、挿入されたカートリッジが注射器装置と共に使用されるべきでないことを示している場合、カートリッジが注射器装置から取り外されることを許容するようにアクセス手段を制御するように構成されている。このために、カートリッジは、通信タグ、例えば、医薬品に関する情報(例えば、製品名、バッチ番号、使用期限など)を記憶した近距離無線通信(NFC)タグを有していてもよい。注射器装置は、通信タグに記憶された情報を無線で読み取るように適応された、対応する読取り手段、例えばNFCリーダユニットを有していてもよい。例えば、チェックされたカートリッジデータが、医薬品の使用期限が切れていることを示した場合、ユーザがカートリッジを注射器装置から取り外すことを許容するために注射器装置のドアを自動的に開放してもよい。
【0015】
別の好ましい実施形態では、注射器装置は、カートリッジが注射器装置に挿入されているか否かを判定するように構成されたカートリッジ検出器を有していてもよく、制御ユニットは、カートリッジが注射器装置に挿入されていないことをカートリッジ検出器が判定した場合、カートリッジが注射器装置に挿入されることを許容するようにアクセス手段を制御するように構成されている。カートリッジ検出器は、カートリッジが注射器装置に挿入されているか否かを判定するように適応されたあらゆる種類のスイッチまたはセンサであってもよい。例えば、カートリッジ検出器は、カートリッジに提供されたNFCタグを読み取るように適応されたNFCリーダユニットであってもよい。NFCタグに記憶された情報をNFCリーダによって読み取ることができない場合、カートリッジ検出器は、カートリッジが注射器装置に挿入されていないと仮定する。この場合、アクセス手段は、例えば、カートリッジ収容ユニットを自動的に開放することによって、カートリッジが注射器装置に挿入されることを許容する。
【0016】
別の好ましい実施形態では、制御ユニットは、自己試験が合格し、チェックされたカートリッジデータが、挿入されたカートリッジを注射器装置と共に使用することができることを示した場合、カートリッジが注射器装置から取り出されることを防止するようにアクセス手段を制御するように構成されている。これらの条件が満たされた場合、注射器装置が、操作される準備ができた状態にあることが仮定されてもよい。例えば、自己試験が合格し、チェックされたカートリッジデータが、挿入されたカートリッジを注射器装置と共に使用することができることを示した場合、ドア、シャッタまたはカートリッジ収容ユニットをロックすることができる。
【0017】
一実施形態では、注射器装置は、さらに、注射器装置から押し出されるように構成された中空の皮膚針と、注射器装置が人間または動物の体の皮膚に配置されていることを示す近接信号を生成するように構成された近接センサと、注射器装置のユーザが注射器装置による注射をトリガしたことを示すイグニション信号を生成するように構成されたイグニション手段と、を備えている。中空の皮膚針は、人間または動物の体の皮膚を貫通するように適応されている。中空の皮膚針を通じて、カートリッジに収容された医薬品を人間または動物の体内へ投与することができる。近接センサは、好ましくは、近接センサと人間または動物の体の皮膚との間の距離を求めるために容量型検知技術を使用する。制御ユニットは、注射器装置が人間または動物の体の皮膚に配置されたか否かを判定するために近接センサからの距離データを処理してもよい。イグニション手段は、注射器装置の注射を開始するために注射器装置のユーザによって操作することができる、注射器装置の表面に設けられたスイッチまたはボタンであってもよい。
【0018】
カートリッジを注射器装置へ装填するためにユーザが注射器装置を手に持ち、同時に皮膚針が注射器装置から押し出されるときに通る開口または開放可能な要素を指で塞いでいる状況を誤って解釈することを防止するために、制御ユニットは、制御ユニットが近接信号およびイグニション信号を取得しており、注射器装置の電源オンからイグニション信号が取得されるまで連続的に近接信号が取得されていた場合、注射器装置からの皮膚針の押出しを行わないように構成されていてもよい。この状況では、皮膚針が注射器装置から押し出されるときに通る開口または開放可能な要素からユーザが指をどかした後に初めて、注射器装置が作動を開始してもよく、これは近接信号を中断させる。注射器装置の電源オンは、注射器装置の電気構成部材への電力の初期供給、または注射器装置に作動を開始させるイベント、例えば、カートリッジが注射器装置に挿入された後のドア、シャッタまたはカートリッジ収容ユニットの閉鎖で行われてもよい。
【0019】
皮膚針が注射器装置から押し出されるときに通る開口または開放可能な要素をユーザがうっかりと指で塞いでいる状況を誤って解釈することを防止するために、制御ユニットは、制御ユニットが近接信号およびイグニション信号を取得し、かつ近接信号を取得した後の所定の期間内にイグニション信号を取得した場合、注射器装置からの皮膚針の押出しを行わないように構成されていてもよい。好ましい実施形態では、所定の期間は約1秒である。つまり、約1秒より長い連続する期間にわたって近接信号を受け取らない場合、制御ユニットは、ユーザが、皮膚針が押し出されるときに通る開口または開放可能な要素を指でうっかり塞いでいたと仮定する。
【0020】
ユーザが注射器装置のドア、シャッタまたはカートリッジ収容ユニットを閉めたとき、皮膚針が注射器装置から押し出されるときに通る開口または開放可能な要素をユーザが指でうっかりと塞いでいる状況を誤って解釈することを防止するために、制御ユニットが近接信号およびイグニション信号を取得し、かつ、カートリッジが注射器装置から取り外されることをアクセス手段が防止した時点の後の所定の期間内に近接信号を取得した場合、制御ユニットは、注射器装置からの皮膚針の押出しを行わないように構成されていてもよい。好ましい実施形態では、所定の期間は約2秒である。例えば、制御ユニットは、注射器装置のドア、シャッタまたはカートリッジ収容ユニットが閉鎖された後、約2秒以内に受け取った近接信号を無視してもよい。このために、注射器装置は、ドア、シャッタまたはカートリッジ収容ユニットが閉鎖されたか否かを判定するように構成された判定ユニットを備えていてもよい。
【0021】
注射器装置が人間または動物の体の皮膚に配置されたか否かのより正確な判定を可能にするために、注射器装置は、注射器装置が人間または動物の体の皮膚に配置されたことを示す第1の近接信号を生成するように構成された第1の近接センサと、注射器装置が人間または動物の体の皮膚に配置されたことを示す第2の近接信号を生成するように構成された第2の近接センサとを備えていてもよく、制御ユニットは、第1の近接信号および第2の近接信号に基づき、注射器装置が人間または動物の体の皮膚に配置されたことを判定するように構成されている。
【0022】
好ましい実施形態では、制御ユニットは、第1の近接信号および第2の近接信号が同時に取得されたとき、注射器装置が人間または動物の体の皮膚に配置されたと判定するように構成されている。特に、第1の近接信号および第2の近接信号のうちの一方のみが同じ時点に取得された場合、制御ユニットは、注射器装置が人間または動物の体の皮膚に正しく配置されていない、例えば、注射器装置の底側の1つの領域のみが人間または動物の体の皮膚に配置されていると仮定する。
【0023】
注射器装置が人間または動物の体の皮膚に正しく配置されたか否かの改良された判定を可能にするために、第1の近接信号と第2の近接信号とを接続する仮想線は、押し出された状態の皮膚針と交差しない。
【0024】
好ましくは、第1の近接センサおよび第2の近接センサは、皮膚針から同じ距離に配置されていてもよい。
【0025】
さらに好ましくは、第1の近接センサおよび第2の近接センサは、皮膚針よりも注射器装置の中心に近く配置されていてもよい。
【0026】
一実施形態では、制御ユニットは、注射器装置が人間または動物の体の皮膚から取り除かれたか否かを第1の近接信号および第2の近接信号に基づき判定し、注射器装置が人間または動物の体の皮膚から取り除かれたという判定に応答して注射器装置内への皮膚針の引込みを行うように構成されている。この判定の場合、制御ユニットは、注射器装置内での別の操作、例えばカートリッジからの医薬品の投与を中断してもよい。
【0027】
別の好ましい実施形態では、注射器装置は、注射器装置に挿入されたカートリッジの隔壁を貫通するように構成された隔壁針を備えている。中空の皮膚針、隔壁針および/またはカートリッジを中空の皮膚針と接続するあらゆる流体通路内で医薬品が詰まることを回避するために、制御ユニットは、皮膚針の押出しを行い、隔壁針による隔壁の貫通を、皮膚針の押出しの直前または皮膚針の押出しと同時に行うように構成されていてもよい。
【0028】
ここで、本発明の好ましい実施形態を、添付の概略的な図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】注射器装置の第1実施形態を概略的に示している。
図2】注射器装置の第2実施形態を概略的に示している。
図3】注射器装置の第2実施形態を概略的に示している。
図4】注射器装置の第2実施形態を概略的に示している。
図5】注射器装置の第2実施形態を概略的に示している。
図6】注射器装置の第2実施形態を概略的に示している。
図7】注射器装置の第3実施形態を概略的に示している。
図8】注射器装置の第3実施形態を概略的に示している。
図9】注射器装置の第4実施形態を概略的に示している。
図10】注射器装置の第4実施形態を概略的に示している。
図11】注射器装置の第5実施形態を概略的に示している。
図12】注射器装置の第5実施形態を概略的に示している。
図13】針押出し機構と針引込み機構とを備える注射器装置の第6実施形態を概略的に示している。
図14】注射器装置のための典型的な安全スキームの流れ図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、注射器装置100の第1実施形態を概略的に示している。注射器装置100は、医薬品122が収容されたカートリッジ120が装填されるように適応されている。このために、注射器装置は、カートリッジ収容ユニット110を備えている。カートリッジ120をカートリッジ収容ユニット110に挿入することができ、カートリッジ収容ユニット110は、カートリッジ120をカートリッジ収容ユニット110に挿入しかつカートリッジ収容ユニット110から取り出すことができるように、開放および閉鎖することができる(図1には示されていない)。
【0031】
注射器装置100は、さらに、針押出し機構160および針引込み機構161を備えている。針押出し機構160は、中空の皮膚針165を注射器装置から押し出すように適応されており、針引込み機構161は、押し出された皮膚針165を注射器装置内へ引き込むように適応されている。皮膚針165は、注射器装置100のハウジング105内に収容されている。ユーザによるイグニションボタン180の押下によって、針押出し機構160は、皮膚針165をハウジング105から押し出し、中空の皮膚針165を通じてカートリッジ120から医薬品122を投与する。このために、ハウジング105は、開口166を有しており、この開口166を通じて皮膚針165をハウジング105から押し出すことができる。加えて、開放可能な要素(例えば、ドア)が、開口166を覆っていてもよい。
【0032】
こうして、注射器装置100のユーザは、以下のように注射器装置100を操作することができる。ユーザは、カートリッジ収容ユニット110を開放し、開放されたカートリッジ収容ユニット110へカートリッジ120を挿入するかまたは開放されたカートリッジ収容ユニット110からカートリッジ120を取り出し、(カートリッジ120がカートリッジ収容ユニット110に挿入された状態または挿入されない状態で)カートリッジ収容ユニット110を閉じ、注射器装置100を人間または動物の体の皮膚上に置き、注射器装置100の操作を開始するためにイグニションボタン180を押下することができる。
【0033】
鋭い皮膚針165の押出しが関係するので、注射器装置100は、洗練された安全機構を備えていなければならない。さらに、カートリッジ120に収容された医薬品122はコストが高いことがあるので、注射器装置100が、針押出しプロセス、医薬品投与プロセスおよび針引込みプロセスの全体を行うための条件にある場合にのみ、カートリッジ120が開封されることが保証されるべきである。
【0034】
図1を参照して、より詳細に説明するために、注射器装置100は、さらに、駆動手段115、自己試験ユニット130、制御ユニット140、カートリッジ検出器150、カートリッジ収容ユニット検出器155、NFCリーダユニット127、第1の近接センサ170、第2の近接センサ172、注射器装置100の電気素子に電力を供給するバッテリ185、中空の隔壁針190および流体通路195を備えている。
【0035】
制御ユニット140は、注射器装置100の操作を制御する。このために、制御ユニット140は、駆動手段115、自己試験ユニット130、カートリッジ検出器150、カートリッジ収容ユニット検出器155、NFCリーダユニット127、第1の近接センサ170および第2の近接センサ172から信号を受信しかつ制御信号をこれらに送信するように適応されたマイクロプロセッサとして実現されてもよい。
【0036】
カートリッジ120は、一端に、中空の隔壁針190によって貫通することができる隔壁123を有している。隔壁123が隔壁針190によって貫通されると、カートリッジ120に収容された医薬品122は、カートリッジ120の投与ポートから隔壁針190および流体通路195を通って中空の皮膚針165へと流れることができる。カートリッジ120から医薬品122を押し出すために、カートリッジ120は、カートリッジ120内で軸方向に可動なピストン(図1には示されていない)を有している。制御ユニット140の制御下で駆動手段115によって駆動されるプランジャ(図1には示されていない)により、ピストンは、カートリッジ120から医薬品122を押し出す。
【0037】
カートリッジ120は、NFCタグ125をさらに有している。NFCタグ125は、カートリッジ120の周囲に巻き付けられていてもよい。NFCタグ125は、医薬品122に関する情報(例えば、製品名、バッチ番号、使用期限など)を記憶している。NFCリーダユニット127は、NFCタグ125に記憶された情報を無線で読み取り、制御ユニット140に情報を提供するように適応されている。例えば、制御ユニット140は、カートリッジ120に収容された医薬品122の使用期限が切れているという情報をNFCリーダユニット127から受け取り、この情報を制御ユニット140へ送信してもよい。受信した情報に基づき、制御ユニット140は注射器装置100を制御する。
【0038】
駆動手段115は、注射器装置100の機械的要素を直接的または間接的に駆動するように適応されたあらゆるアクチュエータであってよい。好ましくは、駆動手段115は、電気モータ、例えば、パルス幅変調(PWM)制御方式を用いてモータ制御ユニットによって制御される直流(DC)電気モータを含む。例えば、駆動手段115は、針押出し機構160に皮膚針165を押し出させることができ、針引込み機構161に、押し出された皮膚針165を引っ込ませることができる。さらに、駆動手段115は、隔壁針190を隔壁123に貫通させることができる。さらに、駆動手段115は、カートリッジ収容ユニット110を開放および閉鎖することができる。
【0039】
カートリッジ検出器150は、カートリッジ120がカートリッジ収容ユニット110内に挿入されているか否かを判定するように適応されている。このために、カートリッジ検出器150は、カートリッジ120がカートリッジ収容ユニット110に挿入されたときに押し付けられるスイッチとして実現されてもよい。代替的に、カートリッジ検出器150は、リーダユニット127と同様に実現されていてもよいし、またはリーダユニット127に組み込まれていてもよく、これにより、NFCタグ125に記憶された情報を読み取ることができるときにのみ、カートリッジ120がカートリッジ収容ユニット110内に挿入されていると仮定される。次いで、カートリッジ検出器150は、判定された情報を制御ユニット140へ提供する。
【0040】
カートリッジ収容ユニット検出器155は、カートリッジ収容ユニット110が閉鎖されたとき、すなわち、開放状態から閉鎖状態へ移行したときに検出するように適応されたセンサまたはスイッチであってもよい。この場合、カートリッジ収容ユニット検出器155は、それぞれの信号を制御ユニット140へ送信する。
【0041】
第1の近接センサ170および第2の近接センサ172はそれぞれ、近接センサと人間または動物の体の皮膚との間の距離を示す近接信号を生成するために容量型検知技術を使用する。第1の近接センサ170は、第1の近接信号を制御ユニット140に提供し、第2の近接センサ172は、第2の近接信号を制御ユニット140に提供する。制御ユニット140は、例えば、第1の近接信号および第2の近接信号が同時に取得されたとき、第1の近接信号および第2の近接信号に基づき、注射器装置100が人間または動物の体の皮膚に配置されたか否かを判定するように構成されている。さらに、第1の近接信号および第2の近接信号に基づき、制御ユニット140は、注射器装置100が人間または動物の体の皮膚から取り除かれたか否かを判定してもよい。この場合、制御ユニット140は、針引込みユニット161に、皮膚針165を再び注射器装置100内へと引っ込めさせてもよい。
【0042】
自己試験ユニット130は、注射器装置100の電子部品および電子アセンブリのうちの少なくとも一方の自己試験を行うように構成されている。特に、自己試験ユニット130は、駆動手段115、制御ユニット140、カートリッジ検出器150、カートリッジ収容ユニット検出器155、NFCリーダユニット127、第1の近接センサ170、第2の近接センサ172およびバッテリ185のうちのいずれか1つが正しく作動しているか否かを試験してもよい。自己試験が不合格だった場合、自己試験ユニット130は、この情報を制御ユニット140に提供する。次いで、制御ユニット140は、カートリッジ120をカートリッジ収容ユニット110から取り外すことができるようにカートリッジ収容ユニット110を開放させてもよい。
【0043】
例えば、第1の近接センサ170が故障しており、誤った第1の近接信号を制御ユニット140へ送信する場合、人間または動物の体の皮膚への皮膚針165の押出し中に、第1の近接センサ170は、注射器装置100が人間または動物の体の皮膚から取り除かれたことを示す第1の近接信号を制御ユニット140へ送信するというリスクがある。注射器装置が人間または動物の体の皮膚から取り除かれたというこの判定は、注射器装置100が人間または動物の体の皮膚の上に正しく配置されているにもかかわらず、ハウジング105内への皮膚針165の引込み、および人間または動物の体の皮膚内への医薬品122の投与の失敗が生じる。このような状況を回避するために、第1の近接センサ170の自己試験が不合格だった場合、自己試験ユニット130はそれぞれの情報を制御ユニット140へ送信する。次いで、制御ユニット140は、カートリッジ120をカートリッジ収容ユニット110から取り外すことができるようにカートリッジ収容ユニット110を開放し、注射操作は、第1の近接センサ170が自己試験に合格するまで開始されない。さらに、自己試験が不合格となった後、注射器装置100の操作を永久的に不能にすることが可能である。この場合、注射器装置100は、注射器装置100の製造者が装置をアンロックした後に初めて再び操作することができる。
【0044】
別の例として、NFCタグ125に記憶された情報が、カートリッジ120が注射器装置100と共に使用されるべきでないことを示した場合(例えば、医薬品125が、注射器装置100のセットアップと適合しないため)、制御ユニット140は、カートリッジ120をカートリッジ収容ユニット110から取り出し、正しいカートリッジ120と交換することができるように、カートリッジ収容ユニット110を開放してもよい。
【0045】
このようにして、ユーザがイグニションボタン180を押下したとき、自己試験ユニット130、カートリッジ検出器150、カートリッジ収容ユニット検出器155、第1の近接センサ170、第2の近接センサ172、およびNFCリーダユニット127によって読み取られた情報から受け取られたデータをポジティブに評価した後に初めて、制御ユニット140は注射を開始してもよい。さらに、制御ユニット140が、自己試験ユニット130、カートリッジ検出器150、カートリッジ収容ユニット検出器155、第1の近接センサ170、第2の近接センサ172、およびNFCリーダユニット127によって読み取られた情報から受け取ったデータをポジティブに評価した場合、カートリッジ収容ユニット110をユーザが開放することができないようにカートリッジ収容ユニット110をロックしてもよい。
【0046】
皮膚針165によってユーザがうっかり刺されないことを保証するために、複数の別の安全スキーム/機構が注射器装置100に含まれていてもよい。
【0047】
特に、カートリッジ120を注射器装置100へ装填するためにユーザが注射器装置100を手に持ち、かつ同時に皮膚針165が注射器装置100から押し出されるときに通る開口166を指で塞いでいる状況を誤って解釈することを防止するために、制御ユニット140は、制御ユニット140が、第1の近接信号、第2の近接信号およびイグニションボタン180からのイグニション信号を取得し、かつイグニション信号が取得されるまで第1の近接信号および第2の近接信号が注射器装置100の電源オンから連続的に取得された場合、皮膚針165の押出しを生じさせない。この場合、皮膚針165が注射器装置100から押し出されるときに通る開口166からユーザが一旦指をどかして、第1の近接信号および第2の近接信号が一旦中断された後に初めて、注射器装置100が作動を開始するようにしてもよい。
【0048】
さらに、皮膚針165が注射器装置100から押し出されるときに通る開口166をユーザがうっかりと指で塞いでいる状況を誤って解釈することと防止するために、制御ユニット140が、第1の近接信号、第2の近接信号、およびイグニションボタン180からのイグニション信号を取得し、かつ第1の近接信号および第2の近接信号を取得した後の所定の期間内に、例えば1秒以内にイグニション信号を取得した場合、制御ユニット140は、皮膚針165の押出しを行わない。この場合、制御ユニット140は、ユーザがうっかりと指で開口166を塞いでいると仮定する。
【0049】
さらに、ユーザがカートリッジ収容ユニット110を閉じたとき、皮膚針165が注射器装置100から押し出されるときに通る開口166をユーザがうっかりと指で塞いでいる状況を誤って解釈することを防止するために、制御ユニット140が、第1の近接信号、第2の近接信号、およびイグニションボタン180からのイグニション信号を取得し、かつカートリッジ収容ユニット110が閉鎖された時点の後の所定の期間内に、例えば2秒以内に第1の近接信号および第2の近接信号を取得した場合、制御ユニット140は、皮膚針165の押出しを行わない。この場合、カートリッジ収容ユニット110の閉鎖の信号は、カートリッジ収容ユニット検出器155によって制御ユニット140へ送信される。
【0050】
注射器装置100の別の安全態様は、医薬品122の詰まりに関する。医薬品122は、液体、溶液、ゲルまたは微細懸濁液などの流動可能な薬剤であるので、医薬品122が、容器120から隔壁針190、流体通路195および皮膚針165内へと分配されるが、皮膚針165の先端部から投与されないとき、医薬品122が詰まり、これは、隔壁針190、流体通路195および皮膚針165のいずれかを閉塞し、注射器装置100の故障を引き起こすことがある。このような問題を防止するために、制御ユニット140は、針押出し機構160に皮膚針165を押し出させ、皮膚針165の押出しの直前またはそれと同時に隔壁針190により隔壁123を貫通させる。このようにして、皮膚針165が実際に注射器装置100から押し出されたときにのみ、カートリッジ120のシール123が破られる。例えば、ユーザがイグニションボタン180を押下したが、自己試験ユニット130が、自己試験は不合格であると判定したために注射が開始されない場合、カートリッジ120を、開放されたカートリッジ収容ユニット110から取り出して、後で使用することができる。なぜならば、隔壁針190は隔壁123を貫通していないからである。
【0051】
図2図6は、注射器装置100aの第2実施形態を概略的に示している。同じ参照符号は同じ要素に関係しており、したがってそれらの繰り返しの説明は省略する。特に、第2実施形態の注射器装置100aは、第1実施形態の注射器装置100であってもよい。
【0052】
図2は、カートリッジ収容ユニット110の閉鎖状態における注射器装置100aを示している。注射器装置100aを人間または動物の体の皮膚に安定して配置することができるように、注射器装置100aのハウジング105は、コンピュータマウスのような形状であり、平坦な底部を有しており、この平坦な底部を通って皮膚針165が押し出される(図2には示されていない)。イグニションボタン180の周囲には、発光素子181が設けられている。発光素子181は、注射器装置100aが注射の準備ができていない場合、赤い光を示し、注射器装置100aが注射の準備ができている場合、緑の光を示す。
【0053】
カートリッジ収容ユニット110には開口24が設けられており、カートリッジ120に設けられた印刷されたラベルを外側から見ることができない場合に(図2には示されていない)、ユーザは、この開口24を通して、カートリッジ120を回転させることができる。
【0054】
図3は、カートリッジ120がカートリッジ収容ユニット110へ挿入される前の開放状態におけるカートリッジ収容ユニット110を示している。カートリッジ120は、実質的に円筒形であり、円筒状の本体部分120Aと、本体部分120Aよりも大きな直径を有する円筒状の近位部分120Bと、本体部分120Aよりも小さな直径を有する円筒状の遠位部分120Cとを有している。本体部分120Aには、NFCタグ125が設けられている。
【0055】
図4は、カートリッジ120がカートリッジ収容ユニット110へ挿入された後の開放状態におけるカートリッジ収容ユニット110を示している。図5は、さらに、カートリッジ120がカートリッジ収容ユニット110へ挿入された後の閉鎖状態におけるカートリッジ収容ユニット110を示している。
【0056】
カートリッジ収容ユニット110が、図6にさらに詳細に示されている。カートリッジ収容ユニット110は、近位開口22と遠位開口23とを有する実質的に管状の管部材21を備えている。管部材21は、カートリッジ120に適合するサイズおよび形状を有している。すなわち、カートリッジ120の本体部分120Aをしっかりと保持するが、円筒状の近位部分120Bの近位端部に押付力が加えられたときにカートリッジ120が遠位方向へ移動することを依然として許容するサイズを有している。
【0057】
近位開口22および遠位開口23のうちの少なくとも一方は、カートリッジ120の移動を停止させるように適応された直径を有している。例えば、カートリッジ収容ユニット110の近位開口22は、カートリッジ120の近位部分120Bよりも小さな直径を有していてもよいし、または、カートリッジ収容ユニット110の遠位開口23は、カートリッジ120の本体部分120Aよりも小さな直径を有していてもよい。特に、遠位開口23の縁34が、カートリッジ120の移動を停止させるための停止部材として機能してもよい。
【0058】
カートリッジ収容ユニット110は、さらに、ロック部材25、案内要素27およびヒンジ要素28を有している。ロック部材25は、注射器装置100aに設けられた対応するフック要素62と係合するように構成された第1のフック要素26を有している(図3参照)。カートリッジ収容ユニット110が閉鎖位置にあるとき、第1のフック要素26と第2のフック要素62との係合が、カートリッジ収容ユニット110が開放位置へ移動することを防止する。案内要素27は、開放位置と閉鎖位置との間でのカートリッジ収容ユニット110の移動を案内する。ヒンジ要素28は、孔29を有している。孔29内には、ねじりばねを備えるピン(図6には示されていない)が設けられていてもよい。ねじりばねは、ピンを中心とする閉鎖位置から開放位置へのカートリッジ収容ユニット110の回転を生じさせるように適応されている。
【0059】
このように、制御ユニット140の制御下で、駆動手段115はねじりばねのばねを解放することができ、これがカートリッジ収容ユニット110を開放位置へ移動させる。
【0060】
図7および図8は、注射器装置100bの第3実施形態を概略的に示している。第3実施形態の同じ要素は、第1および第2実施形態の同じ要素に関連している。特に、第3実施形態の注射器装置100bは、第1実施形態の注射器装置100aまたは第2実施形態の注射器装置100bであってもよい。
【0061】
図7は、開放位置におけるカートリッジ収容ユニット110を示している。図7において、カートリッジ120は、カートリッジ収容ユニット110に装填されている。対応するフック要素62が、ばね63によって可動に支持されている。図7において、対応するフック要素62はばね63に向かって移動しており、これがばね63の圧縮を生じている。このように、カートリッジ収容ユニット110を、図8に示した閉鎖位置に回転させることができ、この閉鎖位置において、ばね63の解放後に、第1のフック要素26との対応するフック要素62が係合する。ばね63に向かう方向での対応するフック要素62の移動は、駆動手段115によって生じている。したがって、駆動手段115は、ばね63に向かう方向での対応するフック要素62の移動も防止することができる。
【0062】
このように、対応するフック要素62は、カートリッジ収容ユニット110が閉鎖位置から開放位置へ移動することを防止するように適応されている。このために、駆動手段115を介して対応するフック要素62を制御するように適応された決定手段90が設けられている。特に、決定手段90は、カートリッジ収容ユニット110が閉鎖位置から開放位置へ移動することを永久的に防止するために、駆動手段115を介して対応するフック要素62を制御するように適応されている。
【0063】
図7および図8は、さらに、壁要素85に支持されたコイルばね50を示している。カートリッジ120がカートリッジ収容ユニット110に挿入されると、カートリッジ120の遠位部分120Cがコイルばね50に当接し、これにより、カートリッジ120が、カートリッジ収容ユニット110内で壁要素85に向かって移動することができ、これがコイルばね50を圧縮する。コイルばね50内には隔壁針190(図7および図8には示されていない)が設けられており、隔壁針190は、カートリッジ120が壁要素85に向かって移動するとき、カートリッジ120の隔壁123を貫通する。壁要素85に向かうカートリッジ120の移動は、制御ユニット140の制御下で駆動手段115によって行われる。
【0064】
駆動手段115は、親ねじ58に機械的に接続されている。親ねじ58は、駆動手段115によって駆動、すなわち回転させることができる駆動歯車(図7および図8には示されていない)を有している。ナット74が親ねじ58に設けられている。ナット74は、雄ねじ山としての親ねじ58に係合する内側の雌ねじ山を有しており、これにより、駆動手段115による駆動歯車の回転が、親ねじ58に沿ったナット74の移動を生じさせる。このために、ナット74の移動を案内する案内要素がさらに設けられている(図7および図8には示されていない)。反対方向での駆動手段115による駆動歯車の回転は、親ねじ58に沿って反対方向のナット74の移動を生じさせる。
【0065】
ナット74が、カートリッジ収容ユニット110が閉鎖された位置から、駆動手段115から離れる方向へ移動するとき、ナット74は、ピボットロックホイール(図7および図8には示されていない)をトリガする。ロックホイールは、第2のフック要素62をばね63に向かって押し付け、その結果、第2のフック要素62および第1のフック要素26の係合が解除される。これにより、カートリッジ収容ユニット110を開放することができる。その後、カートリッジ収容ユニット110が閉鎖されると、第2のフック要素62が第1のフック要素26にスナップ式に係合し、これにより、カートリッジ収容ユニット110はもはや開放することができない。
【0066】
図9および図10は、注射器装置100cの第4実施形態を概略的に示している。第4実施形態の同じ要素は、第1実施形態から第3実施形態までの同じ要素に関連している。特に、第4実施形態の注射器装置100cは、第1実施形態の注射器装置100、第2実施形態の注射器装置100aまたは第3実施形態の注射器装置100bであってもよい。
【0067】
図9は、注射器装置100cを底側から概略的に示しており、図10は、注射器装置100cの側面図を概略的に示している。特に、図10は、人間または動物の体の皮膚200に配置された注射器装置100cを示している。破線は、人間または動物の体の皮膚200から部分的に取り除かれた注射器装置100cを示している。
【0068】
注射器装置100cは、底部に、ハウジング105から延びた突出部167を有している。突出部167は、円のセグメントの断面形状を有している。突出部167を通って、皮膚針165がハウジング105から押し出される。皮膚針165がハウジング105内へと引き込まれると、皮膚針165はハウジング105から突出せず、これにより、注射器装置100cのユーザが皮膚針165によって負傷する可能性がない。
【0069】
図9および図10に見られるように、第1の近接センサ170および第2の近接センサ172は、皮膚針165の位置よりも中央の位置に配置されている。特に、第1の近接センサ170と第2の近接センサ172とを接続する仮想線(図9に破線で示されている)は、押し出された状態の皮膚針165と交差しない。さらに、第1の近接センサ170および第2の近接センサ172は、皮膚針165から同じ距離に配置されている。
【0070】
このようにして、注射器装置100cが人間または動物の体の皮膚に正しく配置されたときにのみ、第1の近接センサ170は第1の近接信号を送信し、第2の近接センサ172は第2の近接信号を送信する。制御ユニット140によって1つの近接信号のみが同じ時点に受信されると、制御ユニット140は、注射器装置100cが人間または動物の体の皮膚200に正しく配置されていないことが分かる。さらに、図10に破線によって示された状況では、注射器装置100cは、突出部167が皮膚200に配置された位置を中心に時計回りで45°の角度だけ回転されている。この場合、制御ユニット140は、第1の近接信号も第2の近接信号も受信しない。
【0071】
さらに、注射器装置100cが皮膚200に正しく配置されていない場合、発光素子181(図2参照)は、赤色を示してもよい。さらに、注射器装置100cが皮膚200に正しく配置されている場合、発光素子181は、緑色を示してもよい。
【0072】
図11および図12は、隔壁貫通機構を有する注射器装置100dの第5実施形態を概略的に示している。第5実施形態の同じ要素は、第1実施形態から第4実施形態までの同じ要素に関する。特に、第5実施形態の注射器装置100dは、第1実施形態の注射器装置100、第2実施形態の注射器装置100a、第3実施形態の注射器装置100bまたは第4実施形態の注射器装置100cであってもよい。
【0073】
注射器装置100dは、カートリッジ120と、カートリッジ収容ユニット110(図1および図12には示されていない)と、中空の隔壁針190と、プランジャロッド40(図11および図12中に矢印によって概略的に示されている)と、コイルばね50とを備えている。図11および図12は、さらに、注射器装置100dのハウジング105を概略的に示している。制御ユニット140の制御下で、駆動手段115は、プランジャロッド40(図11および図12には示されていない)を駆動する。
【0074】
カートリッジ120は、図11に示した近位位置から、図12に示した遠位位置へと可動なピストン12を備えている。カートリッジ120は、遠位端部に、流体投与ポート15を被覆する隔壁123を有している。近位位置から遠位方向へ遠位位置に向かってピストン12が移動することにより、投与ポート15が開放している場合、薬剤が投与ポート15から遠位方向へ押し出される。しかしながら、投与ポート15が隔壁123によって閉鎖されておりかつ薬剤がカートリッジ120に貯蔵されている場合、近位位置から遠位方向への遠位位置に向かうピストン12の移動は、カートリッジ120全体に対して遠位方向に力を生じる。図11および図12は、さらに、遠位方向へのカートリッジ120の移動を終端位置で停止させるように適応された停止部材34を示している。図11および図12は、注射を開始するためにユーザによって押下されるように適応された開始ボタン180も示している。
【0075】
隔壁針190は、遠位端31および近位端32を有しており、注射器装置100dに不動に固定されている。近位端32は、投与ポート15が開放するように隔壁123を貫通するように適応された鋭い先端部を有している。ピストン12を備えるカートリッジ120、カートリッジ収容ユニット110(図11および図12には示されていない)、隔壁針190、プランジャロッド40およびコイルばね50は全て、同じ軸線に沿って配置されている。
【0076】
コイルばね50は、遠位端および近位端を有しており、図12に見られるように、遠位方向へのカートリッジ120の移動がコイルばね50を圧縮するように、遠位端が注射器装置100dに固定されている。カートリッジ120が遠位方向に移動する前、コイルばね50が隔壁針190の近位端32と隔壁123との間に所定の距離を保持するように、コイルばね50は隔壁針190を包囲している。すなわち、図11に示した遠位方向へのカートリッジ120の移動前の状態では、隔壁針190の遠位端31はコイルばね50の遠位端部から遠位方向に突出しているのに対し、コイルばね50の近位端部は隔壁針190の近位端32から近位方向に突出している。
【0077】
プランジャロッド40が、図11に示した第1の位置から遠位方向に移動すると、プランジャロッド40はピストン12を遠位方向に押し付ける。特に、隔壁針190が隔壁123を貫通しない限り、遠位方向へのピストン12の移動は、カートリッジ120全体と一緒にピストン12の遠位方向への移動を生じさせる。すなわち、カートリッジ120は、隔壁針190の近位端32が隔壁123を貫通する貫通状態を介して遠位方向へカートリッジ収容ユニット110(図11および図12には示されていない)内でスライドされる。
【0078】
隔壁123が隔壁針190によって貫通され、これにより、薬剤が隔壁針190の遠位端31を通ってカートリッジ120から投与された後、カートリッジ120の移動が停止部材34によって停止されるまで、カートリッジ120およびピストン12はさらにほぼ同じ速度で移動する。特に、遠位方向へのカートリッジ120の移動は、図12に示した状態で終了し、この状態では、隔壁針190の近位端32は隔壁123を貫通しており、コイルばね50は、カートリッジ120の遠位端部による押し付けの後、圧縮されており、ピストン12は最も遠位の位置に配置されており、プランジャロッド40は最も遠位の位置(図12には示されていない)に配置されており、薬剤は、投与ポート15を介して中空の隔壁針190を通って投与されている。したがって、隔壁貫通プロセスの終了時、隔壁針190の近位端32がコイルばね50の近位端部から突出するように、コイルばね50は圧縮されている。
【0079】
したがって、隔壁針190による隔壁123の貫通は、制御ユニット140によって独立して、すなわち、皮膚針165の押出しとは独立して制御されてもよい。このようにして、制御ユニット140は、針押出し機構160に皮膚針165を押し出させることができ、皮膚針165の押出しの直前またはそれと同時に、隔壁針190により隔壁123を貫通させることができる。
【0080】
図13は、第6実施形態による、針押出し機構と針引込み機構とを備える注射器装置100eを概略的に示している。注射器装置100eは、第1実施形態から第5実施形態までのいずれかと同じ要素を有していてもよい。したがって、同じ参照符号は同じ要素に関連しており、それらの繰り返しの説明は省略される。
【0081】
特に、図13は、針押出し機構および針引込み機構を注射器装置100eにどのように取り付けることができるか、および、薬剤がカートリッジ120から導管380を介して中空の皮膚針165を通って投与される前に、中空の皮膚針165を人間または動物の体の皮膚内へどのように押し出すことができるかを示している。注射器装置100eにおいて、皮膚針165の押出しおよび引込みは、駆動手段115を介して制御ユニット140(図13には示されていない)によって制御される。
【0082】
針押出し機構および針引込み機構は、ベースプレート310および上部プレート320を有する注射器装置100eのハウジングに設けられている。ベースプレート310と上部プレート320との間には、2つの鉛直方向ロッド360および370が設けられている。ベースプレート310の外面は、人間または動物の体の皮膚に配置されるように適応されている。
【0083】
注射器装置100eは、人間または動物の体の皮膚を貫通するように適応された針先端部313を有する中空の皮膚針165と、注射器装置100eから皮膚針165を押し出すための2つの圧縮された第1のばね316Aおよび316Bと、注射器装置100e内へ皮膚針165を引き込むための第2の圧縮されたばね318とを備えている。2つの第1のばね316Aおよび316Bは、皮膚針165が押し出される軸線に対して平行に延びており、上部プレート320と、皮膚針165の近位端部に接続された第1の支持要素340との間に設けられている。特に、ナット74(図13には示されていない。図7および図8参照)の移動は、2つの圧縮された第1のばね316Aおよび316Bのばね力を解放し、これにより、皮膚針165は、2つの第1のばね316Aおよび316Bによって注射器装置100eから押し出される。例えば、ナット74の移動により、第1のばね316Aおよび316Bを保持するレバー(図13には示されていない)が取り除かれ、これにより、2つの第1のばね316Aおよび316Bは、皮膚針165と一緒に第1の支持要素340を押し出す。
【0084】
皮膚針165の押出し時に、針先端部313は、ベースプレート310(図13には示されていない)の外面から突出する。第2のばね318は、ベースプレート310と第2の支持要素350との間に設けられており、皮膚針165を注射器装置300内へ引き込むように適応されている。
【0085】
図13は、さらに、導管380を介して中空の皮膚針165の近位端に接続されたカートリッジ120を示している。このように、導管380は、皮膚針165の近位端とカートリッジ120との間に流体通路を確立するように適応されている。特に、導管380は、図1に示された流体通路195であってもよい。
【0086】
図13は、針押出し機構と針引込み機構とを有する注射器装置100eを示している。しかしながら、変形実施形態では、注射器装置100eは、針押出し機構のみを有していてもよい。このために、第2のばね318は、注射器装置100eから取り外されてもよい。
【0087】
図14は、典型的な安全スキームの流れ図を示している。安全スキームは、第1実施形態から第6実施形態までによる注射器装置のいずれかまたは任意のその他の注射器装置によって実行されてもよい。
【0088】
流れ図は、3つの列を有している。第1列は、注射器装置のユーザによる行動を示しており、第2列は、ユーザによる行動に応答した注射器装置による内部プロセスを示しており、第3列は、注射器装置による動作を示している。
【0089】
このように、注射器装置の1つの典型的な作動は、ユーザがカートリッジを注射器装置に挿入することから始まる。その後、ユーザは、注射器装置のドアを閉める。ドアの閉鎖に応答して、注射器装置の電源が入る。その後、注射器装置は、自己チェック、例えば自己試験を行う。自己チェックが合格でない場合、ユーザがカートリッジを取り出すことができるようにドアが開く。自己チェックに合格すると、注射器装置は、NFCアンテナチェックを行う、すなわちカートリッジに提供されたNFCタグに記憶されたデータをチェックする。NFCアンテナチェックが、誤ったカートリッジが注射器装置に挿入されているという結果を出した場合、カートリッジを注射器装置から取り出すことができるように、注射器装置のドアが開く。NFCアンテナチェックがポジティブである場合、プロセスは待機モードへ続く。待機モードから、注射器装置は「注射準備」状態に入ることができる。
【0090】
ユーザが注射器装置を人間または動物の体の皮膚に誤って配置した場合、皮膚センサ安全アルゴリズムが注射器装置において呼び出され、その結果、注射器装置は始動されない。
【0091】
ユーザが注射器装置を人間または動物の体の皮膚に正しく配置した場合、皮膚針の押出しおよび薬剤送達プロセスが開始され、その結果、注射が開始される。
【0092】
さらに、注射器装置が人間または動物の体の皮膚から取り除かれた(特に、突然取り除かれた)場合、皮膚針引込みプロセスが開始され、その結果、注射が停止される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14