(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】少なくとも1つの油圧消費装置に流体を供給するための制御装置
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
F15B11/02 M
F15B11/02 C
(21)【出願番号】P 2019555460
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2018060866
(87)【国際公開番号】W WO2018210550
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】102017004634.4
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505468200
【氏名又は名称】ハイダック システムズ アンド サービシズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ-ペーター フート
(72)【発明者】
【氏名】マルク アントン
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-266274(JP,A)
【文献】米国特許第04559965(US,A)
【文献】特開2013-044398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷検知圧力(LS)によって作動可能な可変容量ポンプ(10)を有する、流体を少なくとも1つの油圧消費装置に流体を供給するための制御装置において、
油圧消費装置の流入路(22)内の体積流を場合に応じて増加させるために、前記負荷検知圧力(LS)が制御管路(28)を介して制御装置(2)に転送され、
前記制御装置(2)は、第1の制御弁(30)と第2の制御弁(32)を有し、前記第1の制御弁(30)は前記制御管路(28)内の前記負荷検知圧力(LS)により作動可能であり、前記第2の制御弁(32)はオペレータによって作動可能であり、
オペレータが前記制御装置(2)を
介して
前記第2の制御弁(32)を遮断位置に操作することによってブースト機能を引き起こすとすぐに、固定容量ポンプ(16)
の全体積流を前記流入路(22)に送り込むことによって前記流入路(22)
内の
体積流の増加を行うことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第1の制御弁は、比例弁であり、特にその一方の制御側ではばね付勢(36)に加えて前記負荷検知圧力(LS)で負荷され、他方の制御側ではそれぞれの前記油圧消費装置の前記流入路(22)内の流入圧力で負荷されている2/2方向比例弁(30)であることを特徴とする、請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第2の制御弁は、電磁的に操作可能な切換弁、特にその操作されない位置では前記固定容量ポンプ(16)から貯蔵タンク(12、T)への流体経路を開放し、オペレータによって引き起こされる操作された位置ではそのような流体経路を遮断する2/2方向切換弁(32)であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2の制御弁(32)は、前記第1の制御弁(30)の入口(42)と出口(54)が前記第2の制御弁(32)の入口(44)もしくは出口(52)に流体連通的に接続されていることにより、前記第1の制御弁(30)のバイパスに配置されていることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記固定容量ポンプ(16)の出口(14)は、分岐点(40)を介して、第1の制御弁(30)と第2の制御弁(32)の入口(42もしくは44)に接続されていることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記固定容量ポンプ(16)の出口(14)は接続管路(46)を介して前記可変容量ポンプ(10)の出口(8)に接続されており、前記接続管路(46)には遮断弁が、特に前記可変容量ポンプ(10)の方向では開きかつ前記固定容量ポンプ(16)の方向では閉じる、ばね付勢された逆止弁(48)の形で接続されていることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記可変容量ポンプ(10)とそれぞれの前記油圧消費装置との間の供給管路(26)に、最初に逆止弁(48)を有する接続管路(46)が接続されており、続いて第1の制御弁(30)を流入圧力で付勢する制御管路(38)が接続されていることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
バイパス管路内の第2の制御弁(32)に対して平行に圧力制限弁(50)が接続されており、前記圧力制限弁(50)が応答すると前記固定容量ポンプ(16)の体積流は第1の制御弁(30)と第2の制御弁(32)を迂回して貯蔵タンク(12、T)に転送されることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
第1の制御弁(30)及び第2の制御弁(32)と、
遮断弁(48)と、
圧力制限弁(50)とを含み、かつ、可変容量ポンプとして設けられている旋回ポンプ(10)、固定容量ポンプ(16)、それぞれの消費装置、貯蔵タンク(12、T)及び負荷検知制御管路(28)の流体連通接続のためのポート(6、13、20、24、18)を有する制御ブロック(4)として構成されていることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの油圧消費装置に、負荷検知圧力出作動可能な可変容量ポンプにより流体を供給するための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプの圧力及び/又は体積流を消費装置が要求する条件に適合させることを可能にする負荷検知システムは従来技術である。非特許文献1(フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の「負荷検知」の章)を参照されたい。LSシステムは公知のように固定容量ポンプを備えたいわゆるオープンセンターシステムとして、又は上記の出願対象をなす制御装置の場合のように可変容量ポンプを備えたいわゆるクローズドセンターシステムとして実施されてよい。LSシステムはその省エネ動作方式のために、移動式作業機器の作動油圧装置の構成要素を制御するのに有利に使用される。そのような機器、例えば農業用トラクターや耕運機は、通常、推進、パワーステアリング、ホイスト駆動などの複数の油圧消費装置を有する。そのような機器を運転する際は、圧倒的に多くの運転段階で存在するすべての消費装置に同時に全体積流を供給することはないので、特にコスト上の理由から通常は旋回ポンプとして設けられている可変容量ポンプを最大ケースで発生する体積流に合わせて設計することは度外視できる。特別又は極端な作業状況が発生した場合、例えばトラクターを畑仕事に使用する場合は、畑の終点で進行方向を変える際に走行運転に加えてステアリング及び昇降装置を備えた作業機器が同時に最大体積流を必要とする可能性があり、その場合に供給不足をきたす恐れがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の「負荷検知」の章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題に基づいて、本発明の課題は、特に信頼性の高い油圧消費装置への供給を可能にする、冒頭に記載したタイプの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば上記の課題は、特許請求項1の特徴をその全体において有する制御装置によって解決される。
【0006】
請求項1の特徴部によれば、本発明の重要な特徴は、油圧消費装置の流入路内の体積流を場合に応じて増加させるために、負荷検知圧力が制御管路を介して制御装置に転送され、オペレータが制御装置を操作して相応の機能を引き起こすとすぐに、固定容量ポンプのスイッチが入って流入量の増加を行うことにある。それにより本発明は、極端な作業状況に対して一種のブースト機能を提供するだけでなく、固定容量ポンプのスイッチを入れる際に運転特性の急激な変化によって引き起こされかねない作業安全に対する可能なリスクに対する防護も提供する。流入する体積流の増加はオペレータが実行する制御装置の操作に依存していることにより、ブースト機能がオペレータ側からのみ導入可能ではなくなるので、ステアリング角の変化、走行運転又は昇降運動の加速などオペレータが予期しない性能変化が発生する危険が回避される。
【0007】
制御装置は、有利には第1の制御弁と第2の制御弁を有し、そのうち第1の制御弁は制御管路内の負荷検知圧力により作動可能であり、第2の制御弁はオペレータによって作動可能である。
【0008】
好ましい実施形態では、第1の弁は比例弁であり、特にその一方の制御側ではばね付勢に加えて負荷検知圧力で負荷され、他方の制御側ではそれぞれの油圧消費装置の流入路内の流入圧力で負荷されている2/2方向比例弁である。
【0009】
オペレータによって操作される第2の弁として、有利には電磁的に操作可能な切換弁、特にその操作されない位置では固定容量ポンプから貯蔵タンクへの流体経路を開放し、オペレータによって引き起こされる操作された位置ではそのような流体経路を遮断する2/2方向切換弁が設けられており、この操作された状態で固定容量ポンプの体積流が流入量を増加させるために利用可能になる。
【0010】
この場合、第1の弁の入口と出口が第2の弁の入口もしくは出口に流体連通的に接続されていることにより、第2の弁は第1の弁へのバイパスを形成できる。
【0011】
ここで固定容量ポンプの出口は、分岐点を介して第1の弁と第2の弁の入口に接続できる。
【0012】
固定容量ポンプの体積流を流入路に送り込むために、固定容量ポンプの流入路は接続管路を介して可変容量ポンプの出口に接続でき、接続管路には遮断弁が、特に可変容量ポンプの方向では開き固定容量ポンプの方向では閉じる、ばね付勢された逆止弁の形で接続されている。
【0013】
可変容量ポンプとそれぞれの油圧消費装置との間の供給管路(26)に、最初に遮断弁を有する接続管路を接続し、続いて第1の弁を流入圧力で付勢する制御管路を接続することができる。
【0014】
固定容量ポンプを保護するために、バイパス管路内の第2の制御弁に対して平行に圧力制限弁が接続されており、圧力制限弁が応答すると固定容量ポンプの体積流は第1の弁と第2の弁を迂回して貯蔵タンクに転送される。
【0015】
特別有利には、制御装置は、第1の弁及び第2の弁と、遮断弁と、圧力制限弁とを含み、可変容量ポンプとして用いられる旋回ポンプ、固定容量ポンプ、それぞれの消費装置、貯蔵タンク及び負荷検知制御管路の流体連通接続のためのポートを有する制御ブロックとして構成できる。
【0016】
以下に本発明を図面に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明による制御装置の実施形態の回路のシンボル図であり、必要性を伝えるLS信号がなく、制御装置が操作されていない動作状態が示されている。
【
図2】
図2は、
図1に対応する表現であり、必要性を伝えるLS信号があり、制御装置が操作されていない動作状態が示されている。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2に対応する表現であり、必要性を伝えるLS信号がなく、制御装置が操作された動作状態が示されている。
【
図4】
図3は、
図1~
図3に対応する表現であり、必要性を伝えるLS信号があり、制御装置が操作された動作状態が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による制御装置は、図において2で示される制御装置を有しており、その構成要素は制御ブロック4に組み合わされている。制御ブロック4は、第1の入口ポート6を有しており、入口ポート6は入口側で貯蔵タンク12と接続されている旋回ポンプ10の形態の可変容量ポンプの出口8と連通している。制御ブロック4の第2の入口ポート13は、固定容量ポンプ16の出口14と連通しており、固定容量ポンプ16は旋回ポンプ10と同様にモーターで駆動でき、入口側で貯蔵タンク12と連通している。この例では、固定容量ポンプ16はギアポンプによって形成されている。制御ブロック4の第3の入口ポート18には、必要性を伝えるLS信号が送られている。より正確に言えば、複数の供給される消費装置がある場合はそれぞれ最も高いLS信号がシャトル弁を介して送られている。制御ブロック4の第1の出口ポート20は、消費装置流入部22につながり、第2の出口ポート24は貯蔵タンク1につながっている。
【0019】
旋回ポンプ10は、それ以外は図示されていないクローズドセンターシステムの一部であり、旋回角度はLS信号に従って圧力調整器DRを介して設定される。
図1~
図4に示されている種々の動作状態で油流の経路を明確にするために、それぞれ油流を案内する管路は太い線で表示されている。制御ブロック4内で、第1の入口ポート6から第1の出口ポート20に、したがって流入路22につながる供給管路が26で表示されている。第3の入口ポート18から制御装置2にLS圧力を送る制御管路は28で表わされている。別の構成要素として制御ブロック4は、第1の制御弁30及び第2の制御弁32を含んでおり、それらのうち第1の弁30は2/2方向比例弁であり、第2の弁32は2/2方向切換弁である。後者はオペレータによって引き起こされて電磁的に操作可能であり、戻しばね34の力に抗して貫流位置に対応する操作されていない切り替え位置から、弁32が遮断されている操作された切り替え位置にもたらすことができる。第1の弁30は、一方では圧縮ばね36と、制御管路28を通して送られるLS圧力で付勢されており、他方では別の制御管路38を介して供給管路26内に存在する流入圧力で付勢されている。固定容量ポンプ16の出口14は、第2の入口ポート13と分岐点40を介して、第1の弁30の入口42及び第2の弁32の入口44に接続されている。そうすることによって第2の弁32の操作されていない切り替え位置では流体経路は固定容量ポンプ16の出口14から出て制御ブロック4の第2の出口ポート24へ、したがって貯蔵タンク12へ向かって開いている。それゆえ第2の弁32操作されていない切り替え位置にあると、固定容量ポンプ16の体積流は絞られることなくタンクへと誘導される。
【0020】
固定容量ポンプ16の出口14は、接続管路46を介しても旋回ポンプ10から流入路22に続く供給管路26と連通しており、接続管路46内には供給管路26に向かって開く逆止弁48が挿入されている。この接続管路46は流動方向で見て制御管路38の手前で供給管路26に接続されている。第1の弁30は第2の弁32と同様に出口側で制御ブロック4の第2の出口ポート24、したがって貯蔵タンク12と連通している。制御ブロック4は圧力制限弁50によって完成し、圧力制限弁50は固定容量ポンプ16を貯蔵タンク12に向かって閉鎖し、その入口44と、タンクと連通している出口52との間の第2の弁32へのバイパスとして挿入されている。
【0021】
図1は、第2の弁32が操作されていない切換位置、すなわち通過位置にある動作状態を示している。それゆえ上述のように固定容量ポンプ16の体積流は第1の弁30の弁位置に関係なく、分岐点40からタンクに向かって誘導される。
図1の状態では、第1の弁30は管路38を介して必要性を伝えるLS圧力によっても付勢されていない。それゆえ固定容量ポンプ16と共にオープンセンターシステムの圧力補償器を構成する第1の弁30は、制御管路38内に存在する旋回ポンプ10の供給圧力によって遮断位置からの圧縮ばね36の作用に抗して制御されるので、この状態で第1の弁30の出口54を通ってもタンクへの流体経路が形成されている。
図1では、この油の流れが太い線で描かれた管路で明確にされている。
【0022】
図2は、第2の弁32が再び操作されていないため、固定容量ポンプ16が同様に流入量の増加に寄与しない動作状態を示しており、固定容量ポンプ16の体積流がタンクに向かって誘導される。しかし
図1とは異なり第1の弁30でLS圧力が作用して、流入路22の追加供給の必要性を信号で伝える。それゆえ第1の弁30は圧縮ばね36の作用と共に遮断状態に制御される。それによって旋回ポンプ16の体積は弁30を通って誘導されないが、第2の弁32は操作されていないのでこの弁を介して誘導が行われ、固定容量ポンプ16は再び供給に寄与しない。
【0023】
図3の動作状態では、第2の弁32はオペレータ側で遮断状態に切り替えられており、この弁32を通して固定容量ポンプ16の体積の流出は行われない。ただし、それ同時に第1の弁30には、制御管路38を通して作用する流入圧力に抗して第1の弁30を遮断位置に制御して、比例弁30がタンクに向かう圧力流を可能にするのに十分なLS圧力が制御管路28を介して作用していない。それゆえ第2の弁32が操作されていてもブースト機能は引き起こされない。
【0024】
図4に示す状態では、制御管路28を介して第1の弁30に追加供給を知らせるLS圧力が作用しており、第1の弁30は遮断位置に制御されている。同時にオペレータ側で第2の弁32を遮断位置に操作することによりブースト機能が引き起こされている。これらの弁位置では、固定容量ポンプ16の全体積流が分岐点40、第1の逆止弁48及び接続管路46を通して供給管路26に送り込まれ、流入路22内の体積流を増加させる。追加供給を要求するLS圧力においても、したがって
図2に示すように第1の弁30が遮断されていても、オペレータが
図4に示すように第2の弁32を操作する場合のみブースト機能を誘発できるので、本発明は安全性を向上させるブースト機能の油圧ロックを提供する。