(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】構成部材が設けられた固体層を薄化する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220829BHJP
B26F 3/06 20060101ALI20220829BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220829BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20220829BHJP
B23K 26/04 20140101ALI20220829BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20220829BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220829BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20220829BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20220829BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20220829BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
B26F3/06
B23K26/53
B23K26/067
B23K26/04
B23K26/364
B23K26/00 N
B23K26/03
B23K26/073
B23K26/064 Z
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2019556933
(86)(22)【出願日】2018-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2018050902
(87)【国際公開番号】W WO2018192691
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】102017003830.9
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017007585.9
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511153080
【氏名又は名称】ジルテクトラ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Manfred-von-Ardenne-Ring 7,01099 Dresden,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルコ スヴォボダ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ リースケ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン バイアー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン リヒター
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-516672(JP,A)
【文献】特開2017-041482(JP,A)
【文献】国際公開第2016/083610(WO,A2)
【文献】特開2016-225536(JP,A)
【文献】特開2016-215231(JP,A)
【文献】特開2011-060862(JP,A)
【文献】特開2008-098465(JP,A)
【文献】特開2007-275920(JP,A)
【文献】特開2011-051011(JP,A)
【文献】特開2010-267639(JP,A)
【文献】特開2014-014825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B26F 3/06
B23K 26/53
B23K 26/067
B23K 26/04
B23K 26/364
B23K 26/00
B23K 26/03
B23K 26/073
B23K 26/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの固体物(1)から少なくとも1つの固体層(4)を分離する方法であって、
レーザビームを用いて複数の改質(9)を固体物(1)の内部に形成して、剥離領域(8)を形成するステップと、
最初は露出している前記固体物(1)の表面(5)に、または前記表面(5)の上方に、少なくとも1つの金属層および/または電気的な構成部材(150)を配置または形成することによって、複合構造物を形成するステップであって、露出している前記表面(5)は、分離すべき前記固体層(4)の構成部分であるステップと、
前記固体物(1)に外部からの力を及ぼして、前記固体物(1)に応力を生成する、または前記固体物(1)に内部の力を生成するステップであって、前記外部からの力または前記内部の力は、前記力
によって、前記剥離領域(8)に沿って亀裂伝播が生じるような強さであるステップと、
を少なくとも含む方法において、
相前後して続く2つの改質の間に伝播する亀裂は、第1の改質の中心の下方にある領域から、第2の改質の中心の上方にある領域へと延在し、鋸歯パターンを形成し、
前記剥離領域(8)を形成するための前記改質を、前記複合構造物の前に形成することを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記外部からの力を及ぼすために、前記複合構造物または分離すべき前記固体層(4)の露出した表面(5)に受容層(140)を配置し、
前記受容層(140)は、ポリマー材料を有し、特に機械的に、前記固体物(1)に応力を生成するために、前記受容層(140)に熱的衝撃を印加し、
ここで前記熱的衝撃印加とは、前記受容層(140)を周囲温度よりも低い温度まで冷却することであり、前記冷却を、前記受容層(140)のポリマー材料がガラス転移を引き起こすようにして行い、
前記応力によって、前記剥離領域(8)に沿って前記固体物(
1)内に亀裂が伝播し、前記亀裂によって、第1の前記固体層(4)を前記固体物(
1)から分離する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
レーザ放射の経路において、ドナー基板(1)にレーザ放射を導入する前に回折光学素子(DOE)が配置されており、複数の焦点を生成するために前記レーザ放射を前記回折光学素子によって複数の光路に分割し、
前記回折光学素子は、好ましくは、200μmの長さにわたり像面湾曲を引き起こし、前記像面湾曲は、50μm以下であり、特に30μm以下であり、または10μm以下であり、または5μm以下であり、または3μm以下であり、
前記ドナー基板の材料特性を変化させるために前記回折光学素子によって、少なくとも2つの焦点を同時に生成し、好ましくは少なくともまたは厳密に3つの、あるいは少なくともまたは厳密に4つの、あるいは少なくともまたは厳密に5つまたは5つまでの、あるいは少なくともまたは厳密に10個または10個までの、あるいは少なくともまたは厳密に20個または20個までの、あるいは少なくともまたは厳密に50個または50個までの、あるいは100個までの焦点を同時に生成する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記固体物をレーザ印加装置に対し相対的に移動させるステップであって、そのつど少なくとも1つの改質を生成するために、前記レーザ印加装置を用いて複数のレーザビームを相前後して生成するステップを含み、前記ステップにおいて、前記レーザビームを規定どおりに集束するために、かつ/またはレーザエネルギーを整合させるために、特に連続的に、少なくとも1つのパラメータ、特に複数のパラメータに依存して、前記レーザ印加装置を調整する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記レーザビームは、ドナー基板の平坦な表面を介して前記ドナー基板(2)中に侵入し、前記レーザビームは前記ドナー基板の平坦な表面に対し、前記レーザビームが前記ドナー基板の長手軸線に対し0°または180°とは異なる角度で前記ドナー基板に侵入するように傾斜しており、前記レーザビームを、前記改質を前記ドナー基板に生成するために集束させるステップ、または
前記ドナー基板の材料を、前記ドナー基板の周方向で延在する表面から出発して、前記ドナー基板の中心に向かう方向で切除するステップであって、前記材料を好ましくは研磨工具またはアブレーションレーザビームによって切除するステップ、
を含む、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記固体物は、平坦な主表面に対し傾斜した結晶格子面を有し、前記固体物の前記主表面は、前記固体物の長手方向において一方の側で境界を成し、結晶格子面法線は、主表面法線に対し第1の方向で傾斜し、前記改質は、ドナー基板の材料特性の変化であり、
前記材料特性の変化は、前記固体物におけ
るレーザ放射の侵入
箇所の変化により、少なくとも部分的に線状造形物を形成し、
前記材料特性の変化を、生成面上に、特に少なくとも1つの生成面上に、または厳密に1つの生成面上に、または前記剥離領域内に、生成し、
前記固体物の前記結晶格子面は、前記生成面または前記剥離領域に対し、傾斜して配向されており、
前記線状造形物は、前記生成面または前記剥離領域と前記結晶格子面との間の界面に生じる分割線に対し傾斜しており、
変化させられた材料特性によって、前記固体物(1)に臨界未満の亀裂の形態で亀裂が入り、
前記ドナー基板に外部からの力を及ぼして、前記臨界未満の亀裂を結合させることにより、前記固体層を分離させ、または前記臨界未満の亀裂を結合させながら前記固体層が前記ドナー基板から剥離する程度
の量だけ、前記生成面上または前記剥離領域内の材料をレーザ放射により変化させる、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
レーザ放射を、5ns未満の、または2ns未満の、または1ns未満の、特に700ps未満の、または500ps未満の、または400ps未満の、または300ps未満の、または200ps未満の、または150ps未満の、または100ps未満の、または50ps未満の、または10ps未満のパルス長で生成し、かつ
前記レーザ放射を、100nJ~1mJ、または500nJ~100μJ、または1μJ~50μJ、または0.1μJ~50μJにあるパルスエネルギーで生成する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記改質は、少なくとも1つの剥離領域を予め定め、ここで前記剥離領域は、少なくとも1つの3次元輪郭を表し、または
前記固体物の内部に、非平坦な、特に湾曲した、剥離領域を形成するために、複数の改質を生成する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
第1のパラメータは、前記固体物(1)の材料の平均屈折率であり、または規定された改質(2)を生成するためにレーザビーム(10)を横断させるべき前記固体物(1)の領域内の前記固体物(1)の材料の屈折率であり、
第2のパラメータは、規定された改質(2)を生成するためにレーザビーム(10)を横断させるべき前記固体物(1)の領域内の加工処理深さであり、
前記第1のパラメータを、屈折率特定手段を用いて、特に分光反射を用いて、特定し、かつ/または
前記第2のパラメータを、トポグラフィ特定手段を用いて、特にクロマティック共焦点距離センサを用いて、特定し、
前記パラメータのためのデータを、特に前記第1のパラメータおよび前記第2のパラメータのためのデータを、データ記憶装置(12)において準備し、少なくとも前記改質(2)の生成前に制御装置(14)に供給し、前記制御装置(14)は、生成すべき前記改質(2)の個々の
箇所に応じて、レーザ印加装置(8)を調整し、
前記制御装置(14)は、前記レーザ印加装置(8)を調整するために、距離パラメータに関する距離データも処理し、前記距離パラメータは、個々の前記改質(2)を前記固体物(1)中に生成するために改質生成時点にレーザビーム(10)が導入される個々の
箇所から前記レーザ印加装置(8)までの間隔を表し、前記距離データを、センサ装置(16)を用いて捕捉し、
前記レーザ印加装置(8)の調整を、それぞれ1つのセンサ手段を用いて、特に屈折率特定手段とトポグラフィ特定手段とを用いて、改質生成中に行われる前記第1のパラメータおよび前記第2のパラメータの特定に応じて行う、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの、特に複数の第2の剥離面を予め定めるために、レーザビームを用いて第2のグループの改質を生成し、第1の剥離面と第2の剥離面とは互いに直交して配向されており、
前記固体物から分離された前記固体層を、前記第2の剥離面に沿って分割して固体素子を個別化する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記表面に応力生成層を押圧するために、圧力印加装置の少なくとも1つの圧力印加部材を、前記応力生成層の少なくとも1つの予め定められた部分に押圧するステップを含み、
前記圧力印加部材を、少なくとも、前記応力生成層への熱的衝撃印加中および/または亀裂伝播中、前記応力生成層に押圧する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記固体物へ導入する前に前記レーザビームのビーム特性を変化させるステップを含み、前記ビーム特性は、焦点における強度分布であり、前記ビーム特性の変化または整合を、少なくともまたは厳密に1つの空間光変調器によって、かつ/または少なくともまたは厳密に1つの回折光学素子によってもたらし、前記空間光変調器および/または前記回折光学素子は
、レーザ放射のビーム路において前記固体物と放射源との間に配置されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記固体物中の改質を、金属コンタクト層を生成または配置する前に生成する、
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法に従い製造された固体物(1)であって、
前記固体物(1)は、少なくとも、
レーザ放射により生成された改質(9)から成る、前記固体物(1)内部の剥離領域(8)と、
高温処理法により結果として生じた領域(145)と、
を有し、
前記領域(145)に、前記少なくとも1つの金属層および/または前記電気的な構成部材(150)が配置または形成されている、
固体物。
【請求項15】
マルチコンポーネント集成体であって、
前記マルチコンポーネント集成体は、少なくとも、固体層と、前記固体層の第1の表面に形成された金属層および/または前記固体層の第1の表面に形成された電気的な構成部材(150)と、を有し、
前記固体層は、(質量の点で)50%よりも多くが、特に(質量の点で)75%よりも多くが、または(質量の点で)90%よりも多くが、または(質量の点で)95%よりも多くが、または(質量の点で)98%よりも多くが、または(質量の点で)99%よりも多くが、SiCから成り、
前記固体層は第1の表面の領域において、圧縮応力を生成する改質または改質構成部分を有し、
前記改質は、前記固体層の非晶化された構成部分であり、
前記改質は、第2の表面よりも前記第1の表面の近くに離間されており、または前記第1の表面をいっしょに形成し、前記第2の表面は、前記第1の表面に対し平行にまたは実質的に平行に形成されており、
前記第1の表面は平坦または実質的に平坦であ
り、
相前後して続く2つの改質の間に伝播する亀裂は、第1の改質の中心の下方にある領域から、第2の改質の中心の上方にある領域へと延在し、鋸歯パターンを形成する、
マルチコンポーネント集成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1によれば少なくとも1つの固体層を少なくとも1つの固体物から分離する方法、および請求項16によれば固体物、特に半導体ウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業における一連の構成要素が、薄化された固体層もしくは基板において必要とされる。ただし薄い基板は通常のプロセスの場合には取り扱うのが難しく、ウェハは慣用のワイヤーソープロセスによっても特定の厚さまでしか製造することができないので、このような構成部材を薄い基板上で製造する最も頻度の高い形態は、処理完了後に基板を研削すること、または基板の背面を薄化することである。
【0003】
この場合、慣用のウェハが最後まで処理されてから、最後に研磨ステップまたはポリッシングステップにおいて、最終的に望ましい基板の厚さが、過剰の材料の除去によって製造される。この状況は、2つの理由から不都合である。すなわち一方では、価値の高い材料の一部分が研磨ステップにおいて失われてしまい、他方では研磨/ポリッシングステップは、基板の損傷によって、ウェハの付加価値の大部分をすでに含む処理済みの構成部材全体を損失する可能性を孕んでいる。
【0004】
刊行物国際公開第2014/177721号により、固体物を薄化するさらに別の方法が開示されている。この方法によれば、ポリマー層が固体物上に被着される。次いでポリマー層の温度制御によって固体物に応力が生成され、この応力によって固体層が残りの固体物から分離される。
【0005】
独国特許出願公開第102012001620号明細書には、固体物とポリマーフィルムとの間に付加的な犠牲層を用いることが記載されており、これは分離ステップ後にポリマーフィルムの除去を改善する役割を果たし、その際に犠牲層がたとえば適切な反応物の添加により化学的に分解または剥離される。しかしながらこの方法の欠点は長い時間がかかることであり、ポリマー層の完全な除去までに経過する時間が数時間に及ぶ可能性がある。これによって産業上の利用が著しく制限されてしまう。ポリマー除去プロセスを加速するための可能性として挙げられるのは、それ相応の予備処理によって、室温でも作用する適切な張力の形態で付加的な推進力をもたらすようにすることである。このようにすることによって、反応物または溶剤のための侵蝕面が拡大し、これによって分解または剥離および溶解が促進される。
【0006】
さらに国際公開第2010/072675号から、熱膨張係数または弾性係数に局所的に作用をもたらすことができるように、ポリマーに充填剤を設けることが知られている。ただしこの種の充填剤は、分割すべき固体物の表面上でのポリマーの付着を劣化させることが多く、その結果、十分な力の伝達がもはや得られなくなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、特に材料がそのまま維持されてウェハの損失(いわゆる歩留まり損失)が低減されるようにして、半導体基板の薄化を改善することにあり、かつ/または電気コンポーネントをいっそう有利に製造できるようにする可能性および/または有利なマルチコンポーネント集成体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題は本発明によれば、少なくとも1つの固体物から少なくとも1つの固体層を分離する請求項1記載の方法によって解決される。この方法は、好ましくは少なくとも以下のステップを含む。
【0009】
レーザビームを用いて複数の改質を固体物の内部に生成して、剥離面を形成するステップと、最初は露出している固体物表面に、またはこの表面の上方に、層および/または構成部材を配置または生成することによって、複合構造物を生成するステップであって、露出している表面は、分離すべき固体層の構成部分であるステップと、固体物に外部からの力を及ぼして、固体物に応力を生成するステップであって、外部からの力は、応力により剥離面に沿って亀裂伝播が引き起こされるような強さであるステップ。
【0010】
剥離面を形成するための改質が、特に好ましくは複合構造物の生成前に生成される。
【0011】
したがって本発明によれば、構成素子の処理の前に、固体物もしくは基板もしくはワークピースにおいて、のちの薄い面もしくは剥離面を規定するレーザ改質層の生成が行われる。その後、層を構築もしくは生成するために、かつ/または構成部材を製造するために、さらなるプロセス(リソグラフィなど)が行われる。
【0012】
固体層と共に複合構造物を形成する層および/または構成部材は、好ましくはリソグラフィを用いて、特にたとえば金属化合物によるコーティング、ラッカ、光の照射(たとえばフォトマスクを通したスキャン)、(70℃よりも低い、特に50℃よりも低い、または30℃よりも低い、または周囲温度よりも低い、または20℃よりも低い、または5℃よりも低い、または0℃よりも低い温度のように、特に低い温度における)フォトレジストの現像、構造物のエッチングによって、もたらされる。回路を生成するために、特に完成した回路を生成するために、これらのプロセス、特にリソグラフィプロセス、のうちのいくつかを、多数を、またはすべてを、何度も、特に10回よりも多く、または10回まで、または20回よりも多く、または20回まで、または40回よりも多く、または40回まで、または80回よりも多く、または80回まで、繰り返すことができる。
【0013】
固体層の分離後に残る固体物は好ましくは、分離された固体層の厚さよりも大きい、特に数倍大きい、厚さを有する。固体材料は好ましくは、半導体材料であり、または半導体材料を有する。
【0014】
ここで理解されたいのは、分離すべき固体層「にまたはその上に」とは、以下のように理解することもできる、ということである。すなわち、改質を生成するためのレーザ処理の前におかれた高温ステップのケースでは、高温法により生成された表面のコーティングを行うことができ、複合構造物を生成するためこの表面に、さらに別の1つの層または複数の層および/または構成部材を配置または生成することができる、ということである。複合構造物は、定義に従えば、レーザ処理の後に初めて生成され、場合によってはレーザ処理の前に存在する多層の集成体は、本願においては複合構造物とは呼ばれず、多層の集成体と呼ばれる。
【0015】
この場合に薄化は、好ましくはウェハである固体物の厚さを、構成部材が設けられた固体物、特にウェハ、の慣用の製造方法であるならば、研磨で除去される、つまりたとえば切削、研磨、またはポリッシング除去されることになるであろう材料部分だけ、低減することを意味する。
【0016】
これに加えて本発明によれば、以下のことが可能である。すなわち、固体物から固体層を分離することによって露出させられた表面に、残された改質構成部分の圧縮応力により引き起こされる固体層の変形を少なくとも部分的に、好ましくは大部分、特に好ましくは完全に、補償するために、または圧縮応力を少なくとも部分的に、好ましくは大部分、または完全に補償するために、金属層が生成される、かつ/または好ましくはスパッタリングまたは電気化学的析出により金属層が生成される。
【0017】
別の選択肢として、本発明による方法を少なくとも、以下に挙げるステップによって定義することができ、それらのステップは実施形態ごとに、そのステップによって開示された特徴のうちの1つまたは複数を有する。すなわち、固体物を準備するステップ、特にレーザ放射を用いて固体物内に改質を生成して、剥離領域もしくは剥離面もしくは亀裂誘導領域を形成もしくは生成するステップ、および剥離領域もしくは剥離面もしくは亀裂誘導領域に沿って亀裂伝播に基づき固体層を固体物から分離するステップ、または剥離領域もしくは剥離面もしくは亀裂誘導領域に沿って固体物を分割するステップ。
【0018】
従属請求項および以下で詳述する明細書の部分には、さらに別の好ましい実施形態が示されている。
【0019】
上述の課題は、付加的または択一的に、固体物から分離される少なくとも1つの固体層を準備する方法によって解決される。本発明による方法はこの場合、好ましくは少なくとも以下のステップを含む。すなわち、剥離面を形成するために、複数の改質を、レーザビームを用いて固体物の内部に生成するステップ。この場合、改質によって圧縮応力が固体物中に生成される。固体層を、残りの固体物と固体層とを改質により形成された剥離面に沿って切り離すことにより分離するステップ。この場合、圧縮応力を生成する改質の少なくとも一部分は固体層のところに残り、この場合、固体層が改質に起因して固体物から剥離する程度の個数の改質が生成され、またはこの場合、さらなる応力を固体物において生成するために、固体物に外部からの力を及ぼし、その際に外部からの力は、改質により形成された剥離面に沿って応力が亀裂伝播を引き起こす程度に強い。本発明によれば、本明細書で開示した方法各々は、付加的または択一的に以下のステップを有することができる。すなわち、固体物から固体層を分離することによって露出された表面に、残された改質構成部分の圧縮応力により引き起こされる固体層の変形を少なくとも部分的に、好ましくは大部分、特に好ましくは完全に、補償するために、または圧縮応力を少なくとも部分的に、好ましくは大部分、または完全に補償するために、材料層、特に金属層、を生成するステップ、を有することができる。
【0020】
この解決手段が有利であるのは、固体層の切削加工を行う必要なく、著しく平坦な固体層を準備できるからである。このことは特に、固体材料がSiCであるときに有用である。なぜならば、SiCの製造は著しく高価であり、したがって材料損失をできるかぎり回避しなければならないからである。さらにSiCは著しく硬く、それによって著しく高価な研磨工具を使用しなければならず、そのような工具は、SiCの硬度が高いことから著しく早く摩耗してしまう。この解決手段がさらに有用であるのは、準備された固体層がすでに材料層を装備しているからであり、特に電気接点を形成するための材料層、および/または放熱のための界面を形成するための材料層を、すでに装備しているからである。好ましくは、最初は露出している固体物表面に、またはその上方に、層および/または構成部材を配置または生成することによって、複合構造物を生成することも行われ、この場合、露出している表面は、分離すべき固体層の構成部分である。好ましくは、剥離面を形成するための改質が、複合構造物の生成前に生成される。さらに、固体物に外部からの力を及ぼして、固体物に応力を生成することができ、この場合、外部からの力は、応力により剥離面に沿って亀裂伝播が引き起こされるような強さである。
【0021】
上述の課題は、付加的または択一的に、電気コンポーネントを生成するための方法によって解決される。本発明による方法はこの場合、好ましくは少なくとも以下のステップを含む。すなわち、剥離面もしくは剥離領域もしくは亀裂誘導層もしくは生成面を形成するために、複数の改質を、レーザビームを用いて固体物の内部に生成するステップ。この場合、改質によって圧縮応力が固体物に生成される。最初は露出している固体物表面に、またはその上方に、層および/または構成部材を配置または生成することにより、複合構造物を生成するステップ。この場合、露出した表面は、分離すべき固体層の構成部分である。固体層を、残りの固体物と固体層とを改質により形成された剥離面に沿って切り離すことにより分離するステップ。この場合、圧縮応力を生成する改質の少なくとも構成部分は固体層のところに残り、この場合、固体層が改質に起因して固体物から剥離する程度の個数の改質が生成され、またはこの場合、さらなる応力を固体物において生成するために、固体物に外部からの力を及ぼし、この場合、外部からの力は、改質により形成された剥離面に沿って応力が亀裂伝播を引き起こす程度に強い。分離された固体層に好ましくは、固体層を変形させるための圧縮応力が生じ、この場合、圧縮応力は、固体層に残された改質の構成部分によって生成される。さらに、固体層を固体物から分離することにより露出させられた表面に、材料層、特に金属層を生成し、残された改質構成部分の圧縮応力により引き起こされる固体層の変形を少なくとも部分的に補償する、または改質構成部分により生成された圧縮応力を補償するステップ。好ましくは、最初は露出している固体物表面に、またはその上方に、層および/または構成部材を配置または生成することによって、複合構造物を生成することも行われ、この場合、露出している表面は、分離すべき固体層の構成部分である。好ましくは、剥離面を形成するための改質が、複合構造物の生成前に生成される。さらに、固体物に外部からの力を及ぼして、固体物に応力を生成することができ、この場合、外部からの力は、応力により剥離面に沿って亀裂伝播が引き起こされるような強さである。
【0022】
分離に起因して露出させられた固体層表面は、本発明の1つの好ましい実施形態によれば、第1の表面部分を有し、この部分は、1未満の、特に0.9未満の、または0.7未満の、または0.5未満の、特に0.01~0.4の、Ra値(平均粗さ)を有する。さらに、露出させられた固体層表面は好ましくは第2の表面部分を有し、この部分は、1よりも大きい、特に1~5のRa値(平均粗さ)を有する。この場合、第1の表面部分の割合は、第2の表面部分の割合よりも好ましくは大きく、その際に第2の表面部分は、第1の表面部分と第2の表面部分とから成る全面積のうちの少なくとも1%、または少なくとも2%、または少なくとも5%、または少なくとも10%、または1%~49%、または1%~40%、または1%~30%、または1%~20%、である。この解決手段が有利であるのは、固体層自体を1~5のRa値を有する部分で、特に、たとえば研磨または擦り合わせなどのさらなる表面コンディショニングを行うことなく、引き続き処理できるからである。
【0023】
材料層、特に金属層は、本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、第1の凝集状態において室温よりも高い温度で固体層に生成され、これは室温において第2の凝集状態で存在し、この場合、第1の凝集状態から第2の凝集状態へ移行することによって、金属層が固体層を印加し、これによって残された改質構成部分の圧縮応力によって引き起こされた変形もしくは圧縮応力が、少なくとも部分的に補償され、好ましくは完全に補償される。別の選択肢として、金属層を室温よりも高い温度領域で固体層に生成することができ、その際に温度領域は、室温よりも高い少なくとも100℃、または150℃、または200℃、または250℃、または300℃、または350℃、または400℃にあり、特に好ましくは最大で2000℃、または固体材料の溶融温度または気化温度よりも低く、この場合、金属層が室温まで冷却されることによって、固体層が印加されて、残された改質構成部分の圧縮応力により引き起こされた変形が少なくとも部分的に補償され、好ましくは完全に補償され、もしくは圧縮応力が補償される。したがって金属層が冷えることおよび/または硬化することによって、力、特に引張力が発生し、この力によって固体層が、圧縮応力により引き起こされた変形に対し好ましくはネガ型に変形させられ、またはこの力によって圧縮応力が補償される。圧縮応力は好ましくは、バウと呼ばれる変形を引き起こす。ここで室温として好ましくは20℃が定義され、その際に室温は処理室内の温度を表すこともでき、この温度を好ましくは0℃~100℃または20℃~200℃にあるものとすることができる。
【0024】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、金属層はスパッタリングまたは電気化学的析出によって生成される。好ましくは、たとえば改質構成部分を有するSiC固体層の場合、公知のスパッタリング材料、または電気化学的析出のために使用可能な材料、たとえばチタン、チタン-タングステン、ニッケル、白金、TaSi2、および/または金が使用されることになる。この場合、金属層の厚さは好ましくは、固体層の厚さ、固体層の材料、固体層の面積、改質の個数および種類というパラメータによって決定される。
【0025】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、固体物は炭化ケイ素(SiC)から成り、または炭化ケイ素(SiC)を有し、その際に好ましくは、200μm未満の厚さを有する固体層が、特に150μm未満、または125μ未満、または110μ未満、または100μm未満、または90μm未満、または75μ未満の厚さを有する固体層が、固体物から分離される。この解決手段が有利であるのは、ここで提案した方法を用いてSiCを極めて良好に制御可能であり、つまりは著しく僅かな材料損失で、かつ処理装置の著しく僅かな摩耗で、電気コンポーネントを製造できるからである。
【0026】
電気コンポーネントは、本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば縦型構成素子であり、特にショットキーダイオードおよび/または金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であり、その際に金属層は電気接点、特にオーミックコンタクト、を成し、かつ/または放熱のための界面を成す。この実施形態が有利であるのは、縦型構成素子を本発明によって、比較的僅かな材料損失および摩耗損失で(たとえばSiCを用いることにより)著しく平坦に、ひいてはいっそう容易に製造できるからである。これによって、著しくエネルギー効率がよくかつ安価な電気構成部材を生成することが可能となる。
【0027】
電気コンポーネントは、本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば横型構成素子であり、特に高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、その際に金属層は好ましくは放熱のための界面を成す。この実施形態が有利であるのは、この構成部材をいっそう小型でいっそう容易に、かついっそう安価に製造できるからである。
【0028】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、固体層の平坦な表面側のcm2あたりの平均で、複数の、特に少なくとも4つの、または少なくとも9つの、または少なくとも36個の、または少なくとも100個の、電気コンポーネントが生成され、この場合、電気コンポーネントはそれらの製造後、ダイシングによって互いに分離される。これらの実施形態が有利であるのは、個々の電気コンポーネントを高速にかつ損傷することなく大切に扱われながら、互いに分離することができるからである。好ましくは、個々の電気コンポーネントは、矩形の、特に正方形の、底面を有する。電気コンポーネントは好ましくは、0.1mm~5mmの外縁を有する。
【0029】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、外部からの力を及ぼすために、複合構造物の露出した表面に受容層が配置され、この受容層はポリマー材料を有し、特に機械的に、固体物に応力を生成するために、受容層に熱的衝撃が印加され、ここで熱的衝撃印加とは、受容層を周囲温度よりも低い温度まで冷却することであり、この冷却は、受容層のポリマー材料が部分的または完全な結晶化および/またはガラス転移を引き起こすようにして行われ、応力によって、剥離面に沿って固体物内に亀裂が伝播し、この亀裂によって第1の固体層が固体物から分離される。
【0030】
本発明によれば好ましくは、音響、特に超音波を、固体物に印加することによって、外部からの力を固体物中に取り入れることができ、その際に固体物はここでは好ましくは、液体が充填された容器内に配置されている。音響、特に超音波を、20kHz~100kHzの周波数範囲で使用することができ、ただし100kHz~1MHzの周波数範囲を有する高周波音響領域においても使用することができる。これらの周波数に基づき好ましくは液体媒体中の固体物において、たとえばキャビテーション気泡の崩壊などの後続現象を伴うキャビテーションプロセスが発生する。特に界面領域にある液体媒体においてナノ秒の範囲で、動的に形成されるキャビテーション気泡およびマイクロジェットの形成により爆縮および変形が生じる。好ましくは、著しく狭いスペースにおいて気体が著しく急速に圧縮されることによって、断熱昇温の形態で、局所分解されたエネルギー送出が行われる。その際に5000Kまでの極度に高い温度と500barまでの圧力が発生し、さもなければ発生していない境界層領域における物理反応を新たに生じさせることができる。このように非常に大きい圧力差は、外に向かう気泡先端の反動の結果として生じる(爆縮による衝撃波)。これによってこの領域において、強く高められた反応速度が生じる。本発明によれば特に好ましくは、局所分解されたCNC制御による印加が超音波ピーク(ソノトロード)によって行われ、これによって所期のように亀裂誘発および/または亀裂誘導の作用をもたらすことができる。局所分解された圧力印加を、所期のように亀裂誘発および/または亀裂誘導のために利用することができる。
【0031】
均一なおよび/または局所分解された実施形態が有利であるのは、特に受容層を使用した場合に、著しく精密な力の導入ひいては亀裂誘発および/または亀裂誘導を引き起こすことができるからである。
【0032】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、剥離面を生成する前に少なくとも1つの高温法で固体物が処理され、その際に高温法は70℃から固体物の材料の溶融温度または気化温度までの温度で実施される。
【0033】
したがって部分的に処理されたウェハにおいてレーザステップを実施することはさらなる可能性を表すものであり、これは本発明によれば特に好ましくは高温ステップの後に、ただし残りのプロセスの前に実施される。この解決手段が有利であるのは、まだすべての構造物が形成されてはおらず、それらはレーザ法によって損傷させられるおそれがあるからである。
【0034】
この場合、レーザ法のパラメータを以下のように最適化することができる。すなわち、固体物における応力ができるかぎり最小化されるように最適化することができ、このような最小化はたとえば、固体物を複数回にわたり慎重に印加すること、線間隔を拡げること、および通り過ぎるたびにエネルギーを小さくすること、によって行われる。
【0035】
レーザプロセスは、好ましくは基板の結晶組織配向に依存して実施され、つまりレーザ改質は特に好ましくは、できるかぎり以下のようにして実施される。すなわち、処理中に発生する微細亀裂がリソグラフィを妨げることもなく、また、超臨界的に改質面からはみ出てしまい、分離亀裂の剥離後に基板損失が引き起こされることもないようにする。これによれば、たとえばSiCにおいて、亀裂面を規定する目的で、第1の線を好ましくは亀裂方向に対し平行に導くことができ、その後、第2のステップにおいて、これに対し90°の方向の線によって亀裂が最終的に誘発させられ、分離面が規定される。
【0036】
剥離面を生成する前に高温ステップを実施するのは極めて有利であり、それというのも、70℃を超える著しい温度上昇に付随して、ドーパント原子の移動度の上昇、金属汚染原子、および転移またはその他の結晶構造欠陥が生じるからである。剥離面が高温ステップ前に生成されてしまったとしたならば、または部分的に生成されてしまったとしたならば、たとえばそれによって発生した微細亀裂が、固体物中にまたは分離すべき固体層中にさらに入って延びていき、もしくは中に入って成長し、それによっていっそう多くの材料を切除しなければならなくなり、ひいてはいっそう大きな損失が発生してしまうことになる。
【0037】
少なくとも1つの高温法は、本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、エピタキシ法、ドーピング法、またはプラズマを使用する方法である。高温法とは、70℃を超える温度で実施されるすべての方法、特に材料積層法のことであると解される。発生する温度は好ましくは、2000℃よりも低く、または固体材料の溶融温度または気化温度よりも低い。高温法によって好ましくは、固体材料および1つまたは少なくとも1つの生成されたもしくは配置された層から成る多層の集成体が作り出される。
【0038】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、高温法により少なくとも1つの層が固体物上に生成され、その際に少なくとも1つの生成された層は、予め定義されたパラメータを有し、この場合、少なくとも1つの予め定義されたパラメータによって、レーザ光波の屈折および/または吸収および/または反射および/または光効果による電荷キャリア生成の最大の度合いが予め定められ、ここで屈折および/または吸収および/または反射および/または光効果による電荷キャリア生成の度合いは5%未満であり、好ましくは1%未満、特に好ましくは0.1%未満である。この実施形態が有利であるのは、回路のすべての金属素子とレーザ光との相互作用が阻止されるからである。金属層または金属構成部材とレーザ光もしくはレーザ放射との間の相互作用に起因して、金属層および/または構成部材、特に電気的な導体接続部、が損傷してしまうおそれがある。
【0039】
さらにこの実施形態によれば、以下のようなさらなる問題点が解決される。すなわち、すでに金属の構造物または構成部材(たとえばレーザ侵入方向で20nmよりも大きい長手方向寸法もしくは広がり)が基板上に配置または生成されているときに、レーザ面を作り込む場合、レーザプロセスは、構造物における後方反射により、または構造物自体により妨害される。なぜならばたとえば伝達が理想的ではないからである。好ましくは、材料改質を生成するために多光子プロセスが利用されるので、できるかぎり妨害されない波面を同時に生じさながら必要とされる高い強度を実現するためには、材料中の焦点が極めて厳密でなければならず、特に理想的でなければならない。したがってこの利点も、最終的な構造物、特に層および/または構成部材、を処理もしくは生成する前にレーザ処理を行うのがよいことを示すものである。
【0040】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、改質は多光子励起によって、特に2光子励起によって、生成される。
【0041】
好ましくは、最初に複数の基本改質が、少なくとも部分的に均一に延在する特に湾曲した線上に、特に均一に延在する区間上に、生成される。これらの基本改質は好ましくは、予め定義されたプロセスパラメータによって、もしくはそれらに依存して、生成される。予め定義されたパラメータには好ましくは少なくとも、パルス持続時間、パルスエネルギー、1つの線内のパルス間隔、線相互間の間隔、深さおよび/または開口数が含まれる。好ましくは、これらのプロセスパラメータのうち少なくとも1つの値、およびこれらのプロセスパラメータのうちの好ましくは複数の値またはすべての値、あるいはこれらのプロセスパラメータのうち2つよりも多くの値が、固体物の結晶格子安定性に応じて設定される。その際にこの値は特に好ましくは、個々の基本改質周囲の結晶格子が損なわれないまま残り、すなわち好ましくは20μm未満、または10μm未満、または5μm未満、または1μm未満で亀裂が入るように選定される。
【0042】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、レーザ放射が、5ns未満の、または2ns未満の、特に1ns未満の、または700ps未満の、または500ps未満の、または400ps未満の、または300ps未満の、または200ps未満の、または150ps未満の、または100ps未満の、または50ps未満の、または10ps未満のパルス長で生成される。
【0043】
好ましくは、材料特性の変化もしくは改質はそれぞれ、5nsよりも短い、特に2nsまたは1nsよりも短いレーザパルスで生成される。
【0044】
特に好ましくは個々のレーザパルスの持続時間は、50ps~4000ps、または50ps~2000ps、または50ps~1000ps、特に50ps~900ps、または50ps~7000ps、または50ps~500ps、または50ps~300ps、または300ps~900ps、または500ps~900ps、または700ps~900ps、または300ps~500ps、または500ps~700ps、または300ps~700psにあり、あるいは900psよりも短く、または700psよりも短く、または500psよりも短く、または300psよりも短く、または100psよりも短く、または50psよりも短い。
【0045】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、レーザ放射は、100nJ~1mJまたは500nJから100μJまたは1μJ~50μJにあるパルスエネルギーによって生成される。好ましくは個別照射あたりのパルスエネルギーは、対物レンズから出射した後もしくは最後の光学的準備処理手段から出射した後でありかつ固体物にレーザ放射が侵入する前では、0.1~50μJ付近にある。たとえばDOEを用いて複数の焦点を生成すべき場合であれば、個々の焦点各々に対応づけられたレーザ放射は、対物レンズから出射した後もしくは最後の光学的準備処理手段から出射した後でありかつ固体物にレーザ放射が侵入する前では、0.1~50μJのパルスエネルギーを有する。
【0046】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、規定された温度制御のために、もしくは改質を生成するために、もしくはドナー基板の材料特性を変化させるために、特に局所的に変化させるために、レーザ放射が、0.1nJ/μm2~10000nJ/μm2、好ましくは1nJ/μm2~1000nJ/μm2、特に好ましくは3nJ/μm2~200nJ/μm2のパルス密度で、固体物中に導入される。
【0047】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、臨界未満の亀裂を誘発するための誘発改質が生成され、この場合、誘発改質を生成するための少なくとも1つのプロセスパラメータは、基本改質を生成するための少なくとも1つのプロセスとは異なっており、好ましくは複数のプロセスパラメータ同士が異なっている。これに加え、または別の選択肢として、基本改質が生成される際に辿る線の推移方向に対し傾斜したまたは離間された方向で、誘発改質を生成することができる。
【0048】
臨界未満の亀裂、特に、誘発改質によって、かつ/または誘発領域もしくは誘発面により規定された改質によって、もしくは線上造形物により形成された改質によって、生成された臨界未満の亀裂は、本発明によれば好ましくは、5mm未満、特に3mm未満、または1mm未満、または0.5mm未満、または0.25mm未満、または0.1未満だけ、伝播する。適切な配向をこの場合には、たとえば0°~90°の角度に相応させることができ、好ましくは85°~90°の角度に、特に好ましくは90°の角度に、相応させることができる。
【0049】
これは、臨界強度(つまり面積あたりのパワー)を超えると誘発される閾値プロセスである。つまり短いパルスは、パルスあたりいっそう僅かなエネルギーしか必要とせず、いっそう大きい開口数は、いっそう小さいポイントにエネルギーを集中させ、したがって閾値強度を達成するために必要とされるエネルギーもいっそう低い。
【0050】
深さが深くなるということは、たいていは吸収損失を意味し、よって、エネルギーを以下のように再び整合させなければならない。すなわち、SiCの例によればNA=0.4、180μmの深さ、3nsのパルス長であり、パルスエネルギーは約7μJ、350μmの深さではむしろ9μJである。
【0051】
一般的に、いっそう硬い材料(サファイア、酸化アルミニウムセラミック、SiC、GaN)は、複数の線においていっそう多くのパルスオーバラップを、つまりはいっそう狭いパルス間隔(≦1μm)を必要とし、これとは引き換えに線間隔がいっそう広く選定される傾向にある一方(たとえば>5μm)、GaAsおよびSiなどの柔らかい材料は、どちらかといえばいっそう広いパルス間隔(>1μm)を必要とし、これとは引き換えにいっそう狭い線間隔(<5μm)を必要とする。
【0052】
例示的なサンプルとしてSiCの場合、以下のようなfsパルスが用いられる。すなわち、パルスエネルギーは約800nJ、パルス間隔は50nm以上で200nmまで。線のパターンは以下のとおりである。すなわち1μmの間隔で30本の線、次いで20μmのギャップ、次いで再び30本の線、次いで96μmのギャップ、さらに次いで最初から30本の線、20μmのギャップおよび30本の線と交差させられ(各線間の間隔は常に1μm)、次いで300μmのギャップ、そして再び30/20/30の線ブロック。深さ180μm、SiCのドーピング濃度(これは21mOhm cmよりも大きい面抵抗で特徴づけられる)、パルス長は400fs、開口数は0.65である。
【0053】
1つの好ましい実施形態によれば、固体材料はケイ素であり、この場合、開口数は0.5~0.8、特に0.65付近にあり、入射深さは150μm~1500μm、特に300μm付近にあり、パルス間隔は1μm~5μm、特に2μm付近にあり、線間隔は1μm~5μm、特に2μm付近にあり、パルス持続時間は50ns~400ns、特に300ns付近にあり、さらにパルスエネルギーは3μJ~30μJ、特に10μJ付近にある。
【0054】
1つの好ましい実施形態によれば、固体材料はSiCであり、この場合、開口数は0.4~0.8、特に0.4付近にあり、入射深さは50μm~500μm、特に180μm付近にあり、パルス間隔は0.1μm~3μm、特に1μm付近にあり、線間隔は10μm~100μm、特に75μm付近にあり、パルス持続時間は100fs~10ns、特に3ns付近にあり、さらにパルスエネルギーは0.5μJ~30μJ、特に7μJ付近にある。
【0055】
例示的なサンプルとして酸化アルミニウムセラミックの場合、パルス間隔は500nm、線間隔は10μm、パルス持続時間は3ns、パルスエネルギーは22μJ、NA=0.4である。
【0056】
例示的なサンプルとしてサファイアの場合、それぞれ1.5μmの線間隔により0°、45°、90°で3重に書き込まれた線であり、パルス間隔は300nm、パルスエネルギーは1つめの通過では350nJ、2つめの通過では300nJ、さらに3つめの通過では250nJであり、この場合、NAは0.65のNA、パルス持続時間は250fsである。
【0057】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、線間隔は、特に線状造形物の線間隔は、好ましくは5μm~200μm、特に10μm~100μm、特に40μm~80μm、特に60μm~80μm、特に70μm付近または厳密に70μm、または70±10μm、または±8μm、または±6μm、または±5μm、または±4μm、または±3μm、または±2μm、または±1μm、または特に75μm付近または厳密に75μm、または75μm±10μm、または±8μm、または±6μm、または±5μm、または±4μm、または±3μm、または±2μm、または±1μmである。
【0058】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、線状造形物の個々の改質は、同じ線状造形物の他の改質に対し0.05μm~40μmの間隔で、特に0.1μm~20μm、特に0.5μm~15μmの間隔で、生成される。1つの線状構造物の直接隣り合う2つの改質の間隔は、好ましくは10μmになり、または厳密に10μm、または10μm±8μm、または±6μm、または±5μm、または±4μm、または±3μm、または±2μm、または±1μmになる。
【0059】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、改質を生成するためのレーザビームは、固体物に侵入する前、少なくとも0.35の開口数(NA)を有する光学系を通り抜け、特に少なくともまたは厳密に0.6、または少なくともまたは厳密に0.75、または少なくともまたは厳密に0.8、または少なくともまたは厳密に0.85、または少なくともまたは厳密に0.9、または少なくともまたは厳密に0.95を有する光学系を通り抜ける。一般に、パルスが短くなると表面粗さが減少し、フェムト秒パルスを用いれば、ナノ秒パルス(むしろ3μmよりも大きい粗さ)よりも良好な表面(3μmよりも小さい粗さ)を生成することができるが、これとは引き換えにプロセスが高価になり、時間が長くかかるようになる。ピコ秒パルスはその中間の手法である。いっそう短いパルスの場合の利点は、相転移が断熱で生じること、つまりレーザパルスと結晶格子との結合が生じることであり、これによっていっそう僅かな振動(光子)が励起されるようになり、つまりプロセスが全体としていっそう低い温度で経過することになる。これとは引き換えに、いっそう大きい領域が非晶化(相転移)されてしまうことになり、このことから臨界的応力が発生し、それによって亀裂が誘発される。
【0060】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、臨界未満の亀裂は固体中を5μm~200μmで伝播し、特に10μm~100μm、または10μm~50μm、または10μm~30μm、または20μm~100μm、または20μm~50μm、または20μm~30μmで伝播する。この実施形態が有利であるのは、いっそう小さい亀裂伝播であればいっそう僅かな後処理コストしか必要とされないからである。臨界未満の亀裂は結晶格子境界に沿って伝播するが、ただしその理由は、固体物の結晶格子は好ましくは剥離面に対し、特に0°~6°の角度で傾斜しているからであり、その結果、断面で見ると鋸波状の表面が生じる。亀裂が進行すればするほど、この鋸波状の表面の谷と先端との間の間隔がいっそう大きくなり、それによって、80nm未満の表面粗さ、または50nm未満、または20nm~50nmの表面粗さを生成すべき場合には、材料をいっそう多く除去しなければならなくなる。したがって臨界未満の亀裂の亀裂伝播は、本発明のさらに別の実施形態によれば、レーザビームの入射方向に対し90°とは異なる角度で傾斜した方向で推移し、特に伝播方向は好ましくは93°~99°であり、特に厳密に94°または98°、入射方向に対して傾斜している。
【0061】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、臨界未満の亀裂が伝播した複数の線の領域の間の区間に、応力に起因して、もしくはたとえばガラス転移または超音波印加により生成される外部からの力の導入に起因して、亀裂が入る。この実施形態が有利であるのは、固体物の内部に事前にもたらされた予備損傷に基づいて、特に臨界未満の亀裂に基づいて、必要とされる応力をいっそう僅かにすることができるからである。さらに亀裂が著しく精密に導かれる。
【0062】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、複合構造物を形成するための層および/または構成部材が配置されている固体物表面とは反対側に位置する固体物表面に、受容層が配置され、またはそこに生成される。
【0063】
亀裂の誘発前に、好ましくは別の層および/または構成部材が配置されていない固体物の側に、本発明の方法による受容層が、特にポリマーフィルムの形態で、被着される。
【0064】
外部からの力を生成するために、本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ポリマー材料が主表面に配置される。ポリマー材料は好ましくは、20℃未満のガラス転移温度を有し、特に10℃未満または0°未満のガラス転移温度を有する。ポリマー材料は特に好ましくは、ガラス転移温度よりも低い温度まで冷却され、その際に生じたガラス転移によってドナー基板に機械的応力が生成され、さらにその際に機械的応力によって、臨界未満の亀裂が互いに結合され、それによって固体層がドナー基板から剥離される。好ましくは固体物からの固体層の分離は、以下のようにして行われる。すなわち、固体物が亀裂誘導領域において改質によって、固体層が材料切除に起因して固体物から剥離するように弱められ、または材料切除後、固体層が固体物から剥離するように固体物が亀裂誘導領域において弱められるような個数の改質が生成され、または周囲を取り囲む表面に対し傾斜して配向された、特に平坦な、固体物表面に、応力生成層が生成または配置され、応力生成層への熱的衝撃印加によって、固体物に機械的応力が生成され、その際に機械的応力によって、固体層を分離するための亀裂が発生し、この亀裂は、材料切除により露出させられた固体物表面から出発して改質に沿って伝播し、または改質生成後、固体物に熱的衝撃が印加され、特に冷却され、熱激衝撃の印加に起因して、固体層が固体物から亀裂誘導領域に沿って剥離する。
【0065】
したがって受容層を固体物に配置または生成するステップは、好ましくは以下の特徴を有する。すなわち、受容層はポリマー材料であり、特にポリジメチルシロキサン、またはエラストマー、またはエポキシ樹脂、またはこれらの組み合わせを有し、またはかかる材料から成り、ポリマー材料は、特に機械的に、固体物において亀裂伝播応力を生成するために、受容層に熱的衝撃を印加したことに起因してガラス転移し、その際に亀裂伝播応力によって、亀裂が固体物において亀裂誘導領域に沿って伝播する。
【0066】
本発明のさらに別の好ましい実施形態による受容層は、質量の点で少なくとも大半が、好ましくは全体が、ポリマー材料から成り、ここでポリマー材料のガラス転移は、-130℃~0℃にあり、特に-85℃~-10℃、または-80℃~-20℃、または-65℃~-40℃、または-60℃~-50℃にある。
【0067】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、受容層のポリマー材料は、ポリマーハイブリッド材料から成り、もしくはかかる材料を有し、これはポリマーマトリックスを形成し、その際にポリマーマトリックス内には充填剤が設けられており、この場合、ポリマーマトリックスは好ましくはポリジメチルシロキサンマトリックスであり、さらにこの場合、ポリマーハイブリッド材料におけるポリマーマトリックスの質量分率は、好ましくは80%~99%であり、特に好ましくは90%~99%である。
【0068】
したがって本発明によれば、分割プロセスにおいて使用するためのポリマーハイブリッド材料について記載され、これによれば固体物出発材料から少なくとも2つの固体物セクションが生成される。本発明によるポリマーハイブリッド材料は、ポリマーマトリックスと、その中に埋め込まれた少なくとも1つの第1の充填剤とを含む。以下では、1つの充填剤もしくは上述の充填剤について言及するかぎりは、同様に複数の充填剤の可能性も加えられるべきである。たとえば充填剤は、様々な材料の混合物を含むことができ、たとえば金属酸化物、金属粒子および無機繊維を含むことができる。
【0069】
ポリマーマトリックスとして、ポリマー各々を、または様々なポリマーの混合物を利用することができ、これを用いて、固体物出発材料の分割に必要とされる応力を生成することができる。たとえばポリマーマトリックスを、エラストマーマトリックスとして、好ましくはポリジオルガノシロキサンマトリックスとして、特に好ましくはポリジメチルシロキサンマトリックスとして、形成することができる。この種のポリマー材料は、充填剤と組み合わせられたマトリックス材料として、特に簡単に使用することができる。それというのも、可変の架橋度に基づき特性をフレキシブルに調整することができ、個々の充填剤に、ならびに分割すべき固体物出発材料に、整合させることができるからである。1つの変形実施形態によれば、ポリマーハイブリッド材料におけるポリマーマトリックスの質量分率は、80%~99%であり、好ましくは90%~99%である。
【0070】
第1の充填剤を、有機性または無機性とすることができ、化学元素からも化合物からも、または混合物質たとえば合金からも、形成することができる。
【0071】
第1の充填剤は以下のように構成されている。すなわち第1の充填剤は、分割後の固体物セクションからのポリマーハイブリッド材料の剥離中、反応物質、開始剤、触媒、または促進剤として作用し、それによって第1の充填剤のないポリマー材料に比べて、分割後にポリマーハイブリッド材料が固体物セクションからいっそう迅速に剥離するようになる。
【0072】
この場合、第1の充填剤の具体的な化学的組成および構成ならびにその質量分率は、特に、剥離すべきポリマーマトリックスの具体的な材料、そのために利用される溶剤、ならびに使用される反応物質に左右される。さらにこの場合、固体物出発材料の物質および分割すべき固体物出発材料の寸法も重要である。
【0073】
ポリマーマトリックスにおける第1の充填剤の具体的な分率は、充填剤の材料とその作用とに大きく左右される。ポリマーマトリックスは一方では、充填剤にもかかわらず応力を生成するというその課題を依然として果たすことができなければならない。他方、第1の充填剤の割合は、ポリマー除去の所期の作用を達成するために十分に高くなければならない。当業者は、濃度に依存して簡単な試験を実施することで、第1の充填剤のそのつど最適な質量分率を求めることができる。
【0074】
たとえばポリマー中の無機ネットワークの形態の発熱性ケイ酸など別の充填剤を、機械的特性の改善に付加的に役立たせることができる。ネットワークの形態のこのような強い相互作用の他、単純に流体力学的な増強によるあまり強くない相互作用も、改善に寄与させることができる。たとえばここでは粘性の所期の上昇を挙げることができ、これによって分割プロセスにおいて処理を改善することができ、したがって製造偏差の改善に役立たせることができる。さらに上述の相互作用によって、構造的な再配向に関して内部の自由度の低減が、補強が増すにつれて難しくなる。
【0075】
その結果、ポリマーハイブリッド材料において使用されるポリマーのガラス転移温度を所望のように低減できるようになり、このことによって分割プロセスにおいていっそう低い温度の利点が得られるようになる。本発明によれば、固体物セクションからのポリマーハイブリッド材料の剥離を加速するために、ポリマーハイブリッド材料において第1の充填剤が用いられ、ここで固体物セクションは、固体物出発材料を少なくとも2つのセクションに分割する分割プロセスによる分割によって得られる。
【0076】
第1の充填剤をポリマーマトリックスにおいて、以下のように分布させておくことができる。すなわち、第1の充填剤の質量分率が、分割プロセス中は固体物出発材料と結合されているポリマーハイブリッド材料の外側のすなわち下方の界面から出発して、この下方の界面に対し平行に配置されたポリマーハイブリッド材料の別の界面に向かう方向で減少するように、分布させることができる。このことは、固体物出発材料もしくはセクション付近の充填剤の質量分率は、ポリマーハイブリッド材料の残りの領域よりも大きい、ということを意味する。第1の充填剤をこのように分布させることによって、分離後のポリマーハイブリッド材料の特に効果的な除去が可能になる。それというのも、第1の充填剤は固体物セクションに対する界面近くに存在しており、そこにおいてその作用を発揮することができるからである。これと同時に、ポリマーハイブリッド材料の残りの領域は、ほとんどまたはまったく第1の充填剤の分率がなく、したがってポリマーの機能ができるかぎり僅かにしか作用しない。
【0077】
1つの実施形態によれば、ポリマーハイブリッド材料は層状に構成されており、その際に固体物出発材料に向いた側の層だけが第1の充填剤を有する一方、残りのポリマーハイブリッド材料には第1の充填剤は設けられていない。
【0078】
さらに、下方の界面にじかに隣接するポリマーハイブリッド材料の下方の領域には、第1の充填剤が設けられないようにすることができる。このようにすることで、以下のような一連の領域を生じさせることができる。すなわち、固体物出発材料に隣接して、最初に第1の充填剤が設けられていない領域が存在し、それに続いて高い分率で第1の充填剤が設けられた領域が、その後、低い分率で第1の充填剤が設けられた領域または第1の充填剤が設けられていない領域が存在している。
【0079】
これらの領域および以下で説明するすべての領域を、層の形態で形成されているようにすることができ、つまり領域は大部分が、ポリマーハイブリッド材料が被着される固体物出発材料の界面に対し平行に延在し、少なくともこの界面の領域において長手方向および横断方向の広がりを有する。
【0080】
第1の充填剤が設けられていない下方の領域を、特に、第1の充填剤により固体物出発材料上でのポリマーハイブリッド材料の付着が劣化するケースのために設けることができる。このような劣化を避ける目的で、最初に第1の充填剤のない領域が配置され、この領域の上に、高い分率の第1の充填剤を有する領域が続き、これによって第1の充填剤がその機能を果たすことができるようになる。第1の充填剤が設けられていない下方の層はたとえば、10μm~500μm、たとえば100μm、の厚さを有することができる。
【0081】
さらに、上方の界面にじかに隣接するポリマーハイブリッド材料の上方の領域には、第1の充填剤が設けられていないようにすることができる。ここで上方の界面とは、下方の界面および固体物出発材料とは反対側で、周囲に対しポリマーハイブリッド材料の境界を画定する界面のことであると解されたい。上方および下方の界面は、互いに平行に配置されているようにすることができる。
【0082】
第1の充填剤が設けられていない上述のような上方の領域を特に設けることができるのは、第1の充填剤が、周囲とポリマーハイブリッド材料との間の伝熱に不都合な影響を及ぼす場合であり、たとえばポリマーハイブリッド材料の冷却が遅延させられてしまう場合である。
【0083】
第1の充填剤は、反応剤と反応して、好ましくは酸化剤と反応して、ガス状生成物を放出させることができる材料を含むことができ、またはかかる材料から成るものとすることができる。
【0084】
これによってポリマーマトリックス内にキャビテーションを生成することができ、それらのキャビテーションによって、反応物質および溶剤がポリマーマトリックスおよび場合によっては設けられている犠牲層にいっそう早く接近することができ、しかも遊離体および溶解させられた構成部分のいっそう迅速な搬出がもたらされる。
【0085】
ガス状反応生成物の発生によって、ポリマーハイブリッド材料の除去をさらに支援する付加的な駆動力をもたらすことができる。
【0086】
付加的なキャビテーションの形成およびガス状反応生成物の発生は、ポリマー除去を加速させ、したがって分割プロセスの全体的な歩留まりの増加に役立つ。第1の充填剤の分率を変化させることによって、固体物セクションとポリマーハイブリッド材料との間もしくは犠牲層とポリマーハイブリッド材料との間の境界領域におけるキャビテーション密度に、所期のように作用をもたらすことができる。
【0087】
第1の充填剤は、金属、特にアルミニウム、鉄、亜鉛、および/または銅を含むことができ、または金属、特に上述の金属、から成るものとすることができる。
【0088】
「から成る」とは、ここで挙げたすべての材料に関して、技術的に必要とされる不純物または技術的に必要とされる混入物が含有されている可能性がある、ということを含むものであり、そのような不純物または混入物は、たとえば充填剤の製造ならびにその分布またはポリマーマトリックスへの結合に役立つ。
【0089】
金属の充填剤は、酸化剤、たとえば塩酸、硝酸、クエン酸、ギ酸、またはスルファミン酸、と反応して、ガス状生成物を放出させることができ、それによって充填剤をポリマーハイブリッド材料から除去することができる。
【0090】
たとえばアルミニウムは次式に従い、濃縮された塩酸と反応して、溶媒和金属イオンおよび水を形成する。
6 HCl+2 Al+12 H2O → 2[AlCl3 * 6 H2O]+3 H2
【0091】
同様に充填剤としての亜鉛の反応は、濃縮された塩酸との反応により付加的なキャビテーションを形成する。すなわちZn+2 HCl→ZnC2+H2。上述の例によれば、水素の発生によって、ポリマーハイブリッド材料の除去をさらに支援する付加的な駆動力がもたらされる。しかも第1の充填剤によって、ポリマーハイブリッド材料内部の温度伝導率を改善することができ、たとえばこれは、第1の充填剤がポリマーマトリックスのポリマーよりも高い温度伝導率を有することによって可能になる。このことがたとえば該当し得るのは、第1の充填剤が金属を含むケースにおいて、さらなる利点がポリマーハイブリッド材料内部の温度伝導率の改善にある場合である。温度伝導率を改善することによって、固体物出発材料の分割のために冷却によって生成された応力をいっそう効果的にすることができ、つまりいっそう迅速に、かつ冷却剤の消費を減らしながら、生成可能とすることができる。これによって、分割プロセスの全体的な歩留まりを高めることができる。
【0092】
さらにポリマーハイブリッド材料に第2の充填剤が設けられているようにすることができ、この充填剤によって、固体物出発材料上でのポリマーハイブリッド材料の付着が、第2の充填剤が設けられていないポリマーハイブリッド材料よりも高められる。好ましくはこの付着は、充填剤のないポリマー材料よりも高められる。
【0093】
たとえば第2の充填剤を、プラズマによって活性化可能な充填剤とすることができる。プラズマによる活性化の結果、新たな表面種が発生し、固体物出発材料の表面との相互作用がいっそう強くなる結果となり、結局のところはポリマーハイブリッド材料の付着が改善されるように、この表面種を作り出すことができる。
【0094】
この場合、プラズマ処理により達成可能な表面種の種類は、プラズマプロセスのプロセス処理に優先的に依存する。たとえば、プラズマ処理中に窒素、酸素、シランまたはクロロシランなどのガスを供給することができ、それによってたとえば、固体物出発材料の表面といっそう強く相互作用することのできる極性基が発生する。
【0095】
第2の充填剤の質量分率が下方の界面に向かう方向で減少するように、第2の充填剤をポリマーマトリックス内に分布させることができる。たとえばポリマーハイブリッド材料は、下方の界面に隣接した領域内だけに第2の材料を含むことができ、その際にこの領域は、上述の定義に即して層として形成することもできる。
【0096】
これによって第2の充填剤を、好ましくはポリマーハイブリッド材料と固体物出発材料との間の界面の近くに配置することができ、このことで付着が改善され、ひいては分割すべき固体物出発材料への力の伝達を増大させることができる。たとえば第2の充填剤は、コアシェルポリマー粒子を含むことができる。
【0097】
その際に粒子は、特にコアシェル粒子の表面すなわちシェルをたとえば低温プラズマによっていっそう強く活性化可能である点で、ポリマーハイブリッド材料のポリマーマトリックスとは異なるポリマー組成を有する粒子である。
【0098】
これに関する例によれば、コアシェル粒子は、アクリル塩酸シェルを有するポリシロキサンコアを含み、またはエポキシシェルを有するナノスケールのケイ酸塩コアを含み、またはエポキシシェルを有するゴム粒子コアを含み、またはエポキシシェルを有するニトリルゴム粒子コアを含む。第2の充填剤を、低温プラズマ、たとえば冷間プラズマ、によって活性化可能とすることができる。たとえばプラズマを、誘電体バリア放電(DBE)によって生成することができる。この場合、電子密度を1014~1016m-3の範囲内で生成することができる。DBEによって生成される「冷間の」非平衡プラズマ(プラズマボリューム)の平均温度は、大気圧において約300±40Kとなる。DBEによって生成される非熱プラズマの平均温度は、大気圧において約70℃となる。
【0099】
DBE処理において、たとえば単極性または双極性のパルスが表面に印加され、これらのパルスは、数μsから数10nsまでのパルス持続時間と1桁から2桁までのKV領域の振幅ものである。この場合、放電室内に金属電極が存在せず、つまりは金属による汚染または電極摩耗を見込まなくてよい。
【0100】
しかも有利には、電極において電荷キャリアが出入りする必要がないことから、高効率である。
【0101】
誘電体の表面を、低温で改質させ化学的に活性化することができる。表面改質を、たとえばイオン衝撃による表面種の相互作用および反応によって生じさせることができる。
【0102】
さらに、たとえば特定の化学基を表面に生成する目的で、たとえば窒素、酸素、水素、シラン、またはクロロシランなどのプロセスガスを、所期のようにプラズマ処理において加えることができ、たとえばSixHyEz、ただしE=F,Cl,Br,l,O,Hおよびx=0~10、z=0~10、SiH4、Si(EtO)4、またはMe3SiOSiMe3を加えることができる。さらに第2の充填剤を、コロナ処理、火炎処理、フッ素化、オゾン化、またはUV処理、もしくはエキシマ処理によって、活性化可能なものとすることができる。このような活性化によってたとえば、第2の充填剤の表面に極性基が生成され、これらによって固体物出発材料の表面との相互作用が可能となり、したがって付着が改善される。ポリマーハイブリッド材料はさらに付加的に、第1の充填剤を有するポリマーハイブリッド材料とは異なり、または第1および第2の充填剤を有するポリマーハイブリッド材料とは異なり、第3の充填剤を含むことができる。第3の充填剤は、ポリマーマトリックスのポリマーよりも高い温度伝導率および/または弾性係数を有する。
【0103】
たとえばポリマーの弾性係数は、低温条件において1桁の低いギガパスカル領域(約1~3GPa)にある一方、たとえば金属の充填剤は、2桁~3桁のギガパスカル領域にある弾性係数を有する。充填剤の分率が相応に高い場合には、浸透性の充填剤ネットワークが可能であり、これによって固体物出発材料への「力の入力結合」を改善することができる。
【0104】
浸透は実質的に、個々の充填剤の体積充填度によって作用が及ぼされる(アスペクト比に応じてたとえば0.1体積%、1体積%~10体積%)。力の導入が大きくなるにつれて、ポリマー構造の粘弾性の層構成を浸透させることができ、いっそう大きい浸透経路を有効にすることができる。この場合、充填剤と固体物出発材料の表面との接触を改善できるようになることから、熱伝達を改善することができる。
【0105】
ポリマーハイブリッド材料の機械的安定性が、低温においてもいっそう迅速に達成される。全体として、たとえばポリマーハイブリッド材料の破壊応力および破壊ひずみなど、対応する構造特性プロフィルの標準偏差が小さくなり、ひいては分割プロセスの全体的な歩留まりが高められる。局所分解された特性プロフィルの変化(ポリマーハイブリッド材料における応力ピーク)がこれと共に固体物において小さくなり、その結果、分割プロセスの全体的な歩留まりが高まり、生成される固体物セクションの品質が改善される。
【0106】
第3の充填剤によって、周囲とポリマーハイブリッド材料との間の熱伝達が改善され、さらにポリマーハイブリッド材料内部での熱伝導が迅速になるので、ポリマーハイブリッド材料をいっそう急速に冷却することができ、分割プロセスを全体としていっそう高速に、ひいてはいっそう効果的に実施できるようになる。
【0107】
弾性係数が高められることによって、固体物出発材料を分割するための応力を高めることができ、したがって特に高い応力が必要とされる固体物出発材料であっても分割できるようになる。
【0108】
しかも第3の充填剤を、熱膨張係数に作用をもたらすために用いることもできる。この場合の目的は、ポリマーハイブリッド材料の熱膨張係数と分割すべき固体物出発材料の熱膨張係数との差をできるかぎり大きくすることであり、これによって分割に必要とされる付加的な応力を生成することができる。好ましくは第3の充填剤は、高い熱膨張係数を有し、すなわちポリマーマトリックスの熱膨張係数よりも高い熱膨張係数を有する。たとえば第3の充填剤の熱膨張係数を、300ppm/Kよりも大きくなるようにすることができる。
【0109】
第3の充填剤の質量分率が上方の界面に向かう方向で増大するように、第3の充填剤をポリマーマトリックスに分布させることができ、これによって特に周囲に対する界面においていっそう迅速な熱伝達を実現することができる。
【0110】
第3の充填剤は、金属、特にアルミニウム、鉄、亜鉛、および/または銅を含むことができ、または上述の金属から成るものとすることができる。金属は一般に、熱伝導率および温度伝導率が高いことで優れている。
【0111】
既述の充填剤(第1、第2および第3の充填剤)を、粒子の形態でポリマーマトリックス内に分配して存在させることができ、その際に粒子サイズを、粒子の少なくとも1つの次元に関してμm領域およびnm領域にあるものとすることができる。充填剤粒子は、球状の形態の他、たとえば棒状または板状の形態など他の形状をとることもできる。
【0112】
充填剤粒子は、たとえば単峰性分布または2峰性分布、狭い分布、特に単分散、または広分布など、あらゆる粒子サイズ分布を有することができる。充填剤は、たとえばポリマーネットワークへ埋め込むことによるなど物理的に、または化学的にも、ポリマーマトリックスに結合されているようにすることができる。さらに、既述の充填剤のうちの1つまたは複数は、上述の機能が以下のものと両立し得るかぎりは、無機ファイバまたは有機ファイバ、たとえば炭素ファイバ、グラスファイバ、玄武岩ファイバ、またはアラミドファイバ、を含むことができ、またはかかるファイバから成るものとすることができる。任意選択的に、上述のファイバを含むかまたはかかるファイバから成るさらに別の充填剤を追加することもできる。
【0113】
ファイバは通常、強い異方性の特性を有する。充填剤を方向に依存してポリマーハイブリッド材料内にポジショニングすることによって、固体物出発材料の分割に必要とされる応力に所期のように作用をもたらすことができる。このことを、分割プロセスの全体的な歩留まりの上昇に役立たせることができる。有機または無機の充填剤が強い異方性構造を有するファイバ材料として使用されるケースにおいて得られる付加的な利点とは、このようにすることでポリマーハイブリッド材料内部の機械的特性の改善を達成できる、ということである。
【0114】
しかも既述の充填剤は、コアシェル粒子を含むか、またはかかる粒子から成るものとすることができる。これに加え、または別の選択肢として、コアシェル粒子を含むか、またはかかる粒子から成る、さらに別の充填剤をポリマーハイブリッド材料内に設けることができる。
【0115】
コアシェル粒子を使用することによって、活性化の改善の他、エネルギー吸収メカニズムの新たな形態も付加的に実現され、これは全体として、分割プロセスにおいて使用した場合に、ポリマーハイブリッド材料の衝撃強度および破壊強度の増加、特に低温衝撃強度の増加を生じさせることができ、ひいては分割プロセスの全体的な歩留まりを高めるのに寄与し得るものである。たとえば、ポリマーハイブリッド材料から成るフィルムの機械的破壊はいっそう低い確率でしか発生し得ず、したがってフィルムの再利用の可能性を促進できるようになる。
【0116】
たとえば、コアシェルポリマー粒子に基づく亀裂伝播の阻止によって、分割プロセスにおけるシートの破壊を回避することができ、これによってリサイクリングの道を開くことができる。
【0117】
この場合、含まれているエラストマー粒子は塑性変形を受けて空洞を形成する可能性があり、それによってさらなる付加的なエネルギーを受容することができる。付加的なエネルギー受容を、マトリックスの剪断流によって補償することもでき、このことにより全体として機械的特性が改善される。コアシェル粒子は、ある材料から成る通常は球状のコアが、第2の材料から成るシェルによって取り囲まれている、という点で優れている。シェルは、コアを完全に包囲することができ、またはとはいえ浸透性であってもよい。ここで材料を、たとえば金属などの無機材料とすることができ、またはたとえばポリマーなどの有機材料とすることができる。たとえば、2つの異なる金属を互いに結合することができる。ただしポリマーから成るコアを、金属または第2のポリマーから成るシェルによって取り囲むことも可能である。
【0118】
コアシェル粒子によって、第1の材料と第2の材料の特性を組み合わせることができる。たとえば、安価なポリマーのコアを介して、充填粒子のサイズおよび密度を設定することができる一方、金属のシェルが上述のように反応することができる。しかも、単分散であることが多いそれらの粒子サイズ分布に基づき、コアシェル粒子の特性を正確に予測して調整することができる。
【0119】
さらに、1つまたは複数の充填剤(第1、第2および/または第3の充填剤)は、カーボンブラックの形態の炭素、グラファイト、細断された炭素ファイバ(細断カーボンファイバ)、好ましくはカーボンナノチューブ(CNT)の形態のカーボンナノファイバ、たとえば多層カーボンナノチューブ(NWCNT)ならびに単層カーボンナノチューブ(SWCNT)など、を含むことができ、またはこれらから成るものとすることができる。カーボンナノチューブは、種々の個数の円筒により構築された円筒状のグラファイトレイヤである。
【0120】
これらのチューブがただ1つの円筒から成るならば、これを単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と称する。2つまたはそれ以上の円筒が設けられているならば、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)または多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と称する。これらを好ましくは、互いに同心円状に入れ子構造で存在させることができる。
【0121】
種々の実施形態によれば、第3の充填剤はMWCNTを含むことができ、またはMWCNTから成るものとすることができ、それというのも、これは特に高い熱伝導率(300W*(m*K)-1)を有し、同時に5~60Gpaの領域の著しく高い耐裂性を有するからである。この場合、高い機械的安定性は、高い亀裂値、著しく高い弾性率および著しく良好な耐久性に現れている。
【0122】
このための基礎は、3つの隣接する炭素原子に対するπ結合として非局在化されたp軌道と結合された、sp2混成軌道にされた強いσ-C-C結合である。この場合、90°までの曲げが可能である。
【0123】
SWCNTを用いれば、さらに高い特性値を達成することができる(弾性係数は410Gpa~4150Gpa、これに対しグラファイトは1000Gpa、SWCNTの熱伝導率は約6000W*(m*K)-1)。ただしこの場合、MWCNTに比べてコストパフォーマンスは明らかに悪くなる。MWCNTの円筒直径は、長さ500nm~1000μmのときに一般的には1nm~100nmにあり、好ましくは5~50nmである。
【0124】
さらに別の変形実施形態によれば、第3の充填剤はMWCNTを含み、かつ同時に第2および/または第1の充填剤はカーボンブラックを含むかまたはカーボンブラックから成る。それというのもこの場合も、(たとえば200W*(m*K)-1までの)熱伝導率の改善を達成できるからである。たとえばカーボンブラックの使用は、0.4GPaよりも小さい値の著しく僅かな耐裂性を有するので、2つまたはさらに多くの充填剤を組み合わせることができ、これによって全体的な分割の歩留まりが高まり、さらに分割プロセスにおけるコスト全体を改善することができる。
【0125】
この場合、カーボンブラックの平均直径は5nm~500nmの範囲内にあり、好ましくは20nm~200nm、特に好ましくは40nm~100nmの範囲内にある。
【0126】
さらに充填剤は、ケイ酸、たとえば発熱性ケイ酸、を含むことができ、またはケイ酸から成るものとすることができる。これに加え、または別の選択肢として、ケイ酸を含むか、またはケイ酸から成る、さらに別の充填剤をポリマーハイブリッド材料内に設けることができる。
【0127】
発熱性ケイ酸は3次元ネットワークを形成することができ、これによって発熱性ケイ酸を機械的安定性に役立たせることができる。このためかかる充填剤を、ポリマーハイブリッド材料の機械的特性の所期の調整に用いることができる。既述の充填剤(第1、第2、第3の充填剤)のうちの1つまたは複数を、それらに付与された機能と両立可能であるかぎり、同じ材料から成るものとすることができる。たとえば第1の充填剤も第3の充填剤もアルミニウムを含むことができ、またはアルミニウムから成るものとすることができる。上述のようにアルミニウムを、キャビテーションの生成に利用することができ、つまりは固体物セクションからのポリマーハイブリッド材料の剥離を加速させるためにも、温度伝導率を高めるためにも、利用することができる。かかる実施形態によって製造プロセスが簡単になる。その理由は、すべての機能を満たすために1つまたは2つの充填剤だけを添加すれば十分であるとすることができるからである。
【0128】
第1および第2の充填剤ならびに場合によっては第3の充填剤を、それぞれ異なる材料から成るものとすることができる。これによって充填を所望の機能に合わせて個別に整合させることができ、つまりはいっそう良好に整合させることができる。
【0129】
本発明によるフィルムは、上述のようにポリマーハイブリッド材料を含む。フィルムは、たとえば0.5~5mmの厚さを有することができる。
【0130】
少なくとも上述の表面上に、本発明によるポリマーハイブリッド材料または本発明によるシートを被着することができ、これによってそれ相応の結合構造が実現される。被着されたポリマーハイブリッド材料もしくは被着されたシートを、以下では受容層とも称する。かかる受容層の厚さを、たとえば0.5mm~5mm、特に1mm~3mm、にあるものとすることができる。任意選択的に、ポリマーハイブリッド材料またはシートを、複数の露出した表面上に被着することもでき、特に互いに平行に配置された表面上に被着することもできる。
【0131】
熱的衝撃印加は好ましくは、受容層を周囲温度よりも低くなるまで冷却することであり、好ましくは10℃よりも低くなるまで、特に好ましくは0℃よりも低くなるまで、さらに好ましくは-10℃または-40℃よりも低くなるまで、冷却することである。
【0132】
受容層の冷却は最も好ましくは、受容層の少なくとも一部分がガラス転移を引き起こすように、または部分的または完全な結晶化を引き起こすように、行われる。この場合、冷却を、-130℃よりも低くなるまでの冷却とすることができ、これをたとえば液体窒素によって生じさせることができる。この実施形態が有利であるのは、受容層は温度変化に依存して収縮し、かつ/またはガラス転移し、その際に発生する力が固体物出発材料に伝達されるからであり、それによって固体物において機械的応力を生成可能であり、その結果、亀裂の誘発および/または亀裂伝播が引き起こされ、その際に亀裂は最初に第1の剥離面に沿って伝播して、固体層を分割させる。
【0133】
さらなるステップにおいて、ポリマーハイブリッド材料またはフィルムが固体物セクションから、たとえば化学反応、物理的剥離プロセスおよび/または機械的切除によって、除去される。
【0134】
固体物セクションからのポリマーハイブリッド材料の剥離プロセスを、たとえば20℃~30°の範囲内の中庸な周囲温度で行うことができ、好ましくは30℃~95℃の比較的高い温度範囲、たとえば50℃~90℃の温度範囲で行うことができ、またはそうではなくたとえば1℃~19℃の低い温度範囲で行うこともできる。
【0135】
高められた温度範囲によって、反応速度が高くなることから化学的剥離反応を短くすることができ、これはたとえばポリマーハイブリッド材料と固体物との間に犠牲層を用いたケースなどである。犠牲層を用いたケースでは、有利には2~6の範囲のpH値において、水溶液中で剥離を行うことができる。様々な変形実施形態によれば、たとえば剥離プロセスを、適切な無極性溶剤から成る溶液を用いた処理の形態で行うことができ、この場合、1℃~50℃の範囲内の中庸な周囲温度が好ましく、20℃~40℃の範囲内の中庸な周囲温度が特に好ましい。
【0136】
この場合に特に有利であるのは、フィルムに温度作用を及ぼさない剥離である。ここで有利には、トルエン、nペンタン、nヘキサンなど脂肪族および芳香族の炭化水素を適用することができ、ただしたとえば四塩化炭素などのハロゲン化溶剤を適用することもできる。これによれば、剥離すべきポリマーハイブリッド材料および固体物セクションに対する界面に付加的な力をもたらすことができる。それというのも、溶剤処理によって、ポリマーハイブリッド材料の著しく強い可逆的な膨化を発生させることができ、それによって剥離が全体的に容易になるからである。
【0137】
さらに別の変形実施形態によれば、犠牲層の上述の剥離メカニズムと、適切な無極性溶剤を用いた処理との組み合わせを、やはりフィルムに温度作用をもたらすことなく、行うことができる。
【0138】
生成された複合構造物の露出した層または露出した構成部材に安定化層を配置または生成して、露出した層または露出した構成部材の変形を制限することができ、この場合、変形は、受容層により導入された機械的応力の結果として生じる。これにより構成部材を備えた面は好ましくは、(たとえば基板もしくは固体物の湾曲およびグレールーム条件に対し)保護され保持される。このことを、可溶性ポリマー(有機)または保持層を介して行うことができる。この実施形態は、これによってたとえば小さいMEMS構造との相互作用が制限されることから、有利である。構成部材が実装されたウェハの表面特性は、通常は規則的ではなく、このことは強いまたは急な運動の際にフィールドの過度な突出および局所的な表面損傷を引き起こす可能性がある。したがってこの実施形態は、固体層およびそこに配置および/または生成された層および/または構成部材を、特に機械的な損傷または破壊から良好に保護する作用をもたらす解決手段となる。
【0139】
この方法は好ましくは同様に、または択一的に、以下のステップのうちのいくつかまたは多数のステップを含むことができる。すなわち、少なくとも1つの固体層を分離するために固体物を準備するステップ。この場合、固体物は、第1の平坦な面部分と第2の平坦な面部分とを有し、その際に第1の平坦な面部分は好ましくは、第2の平坦な面部分に対し実質的にまたは厳密に平行に配向されている。
【0140】
少なくとも1つの放射源、特にレーザ、を用いて、固体物の内部構造に欠陥を生成して、固体層を固体物から分離する際の出発点となる亀裂誘発源を予め定めるステップ。
【0141】
少なくとも1つのレーザのレーザビームを用いて、固体物の内部構造に欠陥または改質を生成して、固体層が固体物から分離される際に辿る亀裂誘導を予め定めるステップ。この場合、レーザビームは、第2の平坦な面部分を介して固体物中に侵入する。
【0142】
本発明による方法のさらに別の好ましい実施形態によれば、安定化層は、好ましくは水溶性のセラミック、特にDetaktaのFortafix、から成り、もしくはこれを有し、かつ/または可溶性のポリマー、特にそれぞれ異なるかつ/または整合された連鎖長を有する、特にポリ(エチレングリコール)(PEG)から成り、もしくはこれを有する。Fortafixは1成分系および2成分系のセラミックセメントであり、これは接着剤、腐食および化学的作用から保護するためのエナメル、金型構造または隔離のための注型材料、たとえば金属またはセラミックグリップにナイフブレードを入れるために、加熱ワイヤを補強するための浸漬用塗料として、用いられる。ポリマー(PEG)は、水および一連の有機溶剤において可溶性である。ヘキサン、ジエチルエーテルおよびtert-ブチルメチルエーテルにおいては、つまり他の有機溶剤においては、不可溶性である。したがって保護層を被着する前に、表面構造/構成部材をPEGで埋め戻すことができる。安定化層は好ましくはその場で生成され、またはシートとして準備される。これに加えて、または別の選択肢として、安定化層が注入され、もしくは層および/または露出した構成部材に液体材料が印加され、これが硬化もしくは固化して初めて、安定化層になる。安定化層は、付加的または択一的に、溶剤の被着により、または溶剤中への浸漬により、層または露出した構成部材から除去される。このため安定化層はセラミック材料を有し、またはセラミック材料から成り、かつ/または安定化層はポリマー材料を有し、またはポリマー材料から成る。
【0143】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、改質は相前後して少なくとも1つの行または列または線において生成され、この場合、1つの行または列または線において生成された改質は、好ましくは間隔Xをおいて高さHで生成され、これによって相前後して続く2つの改質の間に伝播する亀裂が、特に、剥離面に対し角度Wで配向された亀裂伝播方向を有する、結晶格子方向で伝播する亀裂が、それら両方の改質を互いに結合するようになる。ここで角度Wは好ましくは0°~6°であり、特に4°付近にある。好ましくは亀裂は、第1の改質の中心の下方にある領域から、第2の改質の中心の上方にある領域へと伝播していく。したがってこの場合、基本的な関係は、改質のサイズは、改質の間隔と角度Wとに依存して変化し得る、もしくは必ず変化する、というものである。
【0144】
本発明のさらに別の実施形態によれば、第1のステップにおいて、1つの線において好ましくは互いに等間隔で改質が生成される。さらにこの場合に想定可能であるのは、第1のステップにおいて生成された複数のこれらの線を、生成することである。これらの第1の線は特に好ましくは、亀裂伝播方向に対し平行に、さらに好ましくは直線状または円弧状に、特に同じ平面内で生成される。これらの第1の線の生成後、好ましくは臨界未満の亀裂を引き起こすために、かつ/または促進するために、好ましくは第2の線が生成される。これらの第2の線も、好ましくは直線状に生成される。特に好ましくは、第2の線は第1の線に対して傾斜しており、特に直交して配向されている。第2の線は、好ましくは第1の線と同じ平面内に延在しており、または特に好ましくは、第1の線が延在している平面に対し平行な平面内に延在している。次いで好ましくは、臨界未満の亀裂を結合するために第3の線が生成される。
【0145】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、-130℃~-10℃の温度まで、特に-80℃~-50℃の温度まで、受容層を冷却する冷却装置が設けられている。冷却装置は好ましくは、液体窒素を霧化するための霧化手段、特に穿孔が設けられた少なくともまたは厳密に1つの管路、を有し、特に好ましくは霧化された窒素によって、冷却作用が生成される。別の選択肢として考えられるのは、冷却装置が窒素槽を有し、この場合、受容層は、窒素槽内に予め保持された液体窒素から離間されて、ポジショニングされることである。別の選択肢として考えられるのは、冷却装置に、特に液体状または霧状の窒素を好ましくは一様に供給するスプレイ手段が設けられていることであり、この場合、スプレイ手段は好ましくは、受容層の上方または側方に配置されている。この実施形態が有利であるのは、液体窒素は物体を規定どおりに冷却するために著しく良好に適しているからである。さらにこの実施形態が有利であるのは、-80℃よりも低い、または-90℃よりも低い温度プロセスに対し、それよりもかなり効率化されたプロセスがもたらされるからである。
【0146】
冷却装置は好ましくは、窒素槽と、受容層のポジションから窒素槽内に予め保持されている液体窒素までの間隔を規定どおりに調整するためのポジショニング装置とを有し、この場合、窒素槽およびポジショニング装置は好ましくは、周囲に対して少なくとも部分的に、好ましくは完全に区切られた空間内に配置されている。
【0147】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、1つまたは複数の温度測定装置が設けられている。好ましくは、温度測定装置により温度測定が実施され、その際に捕捉された温度値が好ましくは、温度コントロールのために窒素バルブを介した位置もしくは貫流を調整するために用いられる。
【0148】
これに加え均一な温度制御のために、チャンバ内部に通風機を投入することができ、これによって強制的な対流が生成され、したがって温度勾配が低減される。
【0149】
図示されていないさらに別の冷却の可能性は、温度制御された冷却物体との接触冷却であり、たとえば閉じられた循環路内でこの冷却物体に冷却剤が貫流され、これが固体物と接触した状態にされる。
【0150】
温度測定は好ましくは固体物において行われ、特に受容層および/または固体物の下側で行われ、好ましくは固体物下側はチャンバ低部に対し間隔をおいて配置されており、この場合、固体物のポジショニングのために好ましくはポジショニング装置が設けられており、このポジショニング装置によって特に好ましくは、固体物からチャンバ低部までの間隔、または受容層から液体窒素までの間隔を、特に温度に依存して、変化させることができる。
【0151】
さらに好ましくは、窒素とポジショニング装置を収容するチャンバが設けられており、この場合、チャンバを好ましくは閉鎖可能であり、かつ/または周囲に対し熱的に絶縁されている。
【0152】
本明細書によれば固体物出発材料とは好ましくは、単結晶、多結晶、または非晶質の材料のことであると解される。好ましくは、強い異方性の原子の結合力ゆえに、強い異方性構造を有する単結晶が適している。固体物出発材料は好ましくは、元素周期系の主族3、4、5および/または副族12のうち1つの族からの材料または材料の組み合わせを有し、特に第3、第4、第5主族および副族12の元素からの組み合わせ、たとえば酸化亜鉛またはテルル化カドミウムを有する。
【0153】
炭化ケイ素の他、半導体出発材料をたとえば、ケイ素、ヒ化ガリウムGaAs、窒化ガリウムGaN、炭化ケイ素SiC、リン化インジウムInP、酸化亜鉛ZnO、窒化アルミニウムAlN、ゲルマニウム、酸化ガリウム(III)Ga2O3、酸化アルミニウムAl2O3(サファイア)、リン化ガリウムGaP、ヒ化インジウムInAs、窒化インジウムInN、ヒ化アルミニウムAlAs、またはダイヤモンド、から成るものとすることもできる。
【0154】
固体物もしくはワークピース(たとえばウェハ)は、好ましくは元素周期系の主族3、4および5のうち1つの族からの材料または材料の組み合わせを有し、たとえばSiC、Si、SiGe、Ge、GaAs、InP、GaN、Al2O3(サファイア)、AlNを有する。特に好ましくは固体物は、周期系の第4族、第3族および第5族に現れる元素の組み合わせを有する。その際に考えられる材料または材料の組み合わせはたとえば、ヒ化ガリウム、ケイ素、炭化ケイ素などである。さらに固体物はセラミック(たとえば酸化アルミニウムAl2O3)を有することができ、またはセラミックから成るものとすることができ、その際に好ましくはセラミックは、一般的にはたとえばベロフスカイトセラミック(たとえばPb含有、O含有、Ti/Zr含有のセラミック)であり、特別にはマグネシウムニオブ酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、イットリウムアルミニウムガーネット、特に固体レーザ用途のためのイットリウムアルミニウムガーネット結晶、SAWセラミック(表面音響波)、たとえばニオブ酸リチウム、オルトリン酸ガリウム、石英、チタン酸カルシウムなどである。したがって固体物は好ましくは、半導体材料またはセラミック材料を有し、もしくは特に好ましくは固体物は、少なくとも1つの半導体材料またはセラミック材料から成る。固体物は、好ましくはインゴットまたはウェハである。特に好ましくは固体物は、レーザビームに対し少なくとも部分的に透過性の材料である。したがってさらに考えられるのは、固体物は透過性材料を有し、または部分的に透過性材料たとえばサファイアから成り、もしくはかかる材料から製造されているようにすることである。この場合、固体物材料として単独で、または他の材料との組み合わせで、考慮の対象となるさらに別の材料は、たとえば「ワイドバンドギャップ」材料、InAlSb、高温超電導体、特にレアアース銅酸化物(たとえばYBa2Cu3O7)である。これに加えて、または別の選択肢として考えられるのは、固体物がフォトマスクであるということであり、この場合、フォトマスク材料としてこのケースでは好ましくは、出願日において公知のどのようなフォトマスク材料であっても用いることができ、特に好ましくはそれらの組み合わせを用いることができる。さらに固体物は付加的または択一的に、炭化ケイ素(SiC)を有することができ、または炭化ケイ素(SiC)から成るものとすることができる。
【0155】
改質を、固体材料の相転移、特に炭化ケイ素からケイ素と炭素への相転移とすることができ、これによって固体物において体積膨張が生成され、さらにこのことによって固体物において圧縮応力が生成される。
【0156】
本発明によるレーザ印加によって好ましくは、材料固有の局所分解されたエネルギー注入の累積がもたらされ、その結果、規定された1つの個所において、または規定された複数の個所において、さらに規定された時間に、固体物の規定された温度制御が生じる。具体的な用途において、固体物を炭化ケイ素から成るものとすることができ、これによって好ましくは、固体物の強く局所的に制限された温度制御が、たとえば2380±40℃よりも高い温度まで行われる。この温度制御の結果、新たな材料または相が発生し、特に結晶および/または非晶質の相が発生し、その際に結果として生じた相は、好ましくはSi(ケイ素)相およびDLC(ダイヤモンド状炭素)相であり、これらは強度が著しく低減されて発生する。次いで、強度が低減されたこの層によって、剥離領域もしくは剥離面が生じる。
【0157】
さらに前述の課題は、前述の方法のうちの1つに従い製造され、内部に少なくとも1つの剥離面を有する固体物によって解決される。この場合、剥離面は、レーザ放射によって生成された改質から成る。さらに固体物は、高温処理法により結果として生じた領域を有する。
【0158】
さらに別の好ましい実施形態によれば、この領域に1つまたは複数の層および/または1つまたは複数の構成部材が配置または生成される。別の選択肢として、1つまたは複数の層および/または1つまたは複数の構成部材が、分離すべき固体層の表面に配置または生成されているようにすることができる。固体物は好ましくは、1000μmよりも薄い平均厚さを有し、特に800μmよりも薄い、または700μmまたは600μmまたは500μmまたは400μmまたは300μmまたは200μmまたは100μmまたは80μmまたは50μmよりも薄い平均厚さを有する。
【0159】
したがって本発明は、このようにして前処理/改質されたウェハ上に構成素子を製造すること、および構成部材基板として改質されたウェハ自体にも関する。
【0160】
さらに本発明は付加的または択一的に、マルチコンポーネント集成体に関する。本発明によるマルチコンポーネント集成体はその際に好ましくは、本明細書で述べられている方法によって生成され、特に好ましくは少なくとも1つの固体層を有する。その際に固体層は、(質量の点で)50%よりも多くが、特に(質量の点で)75%よりも多くが、または(質量の点で)90%よりも多くが、または(質量の点で)95%よりも多くが、または(質量の点で)98%よりも多くが、または(質量の点で)99%よりも多くが、SiCから成り、固体層は第1の表面の領域において、圧縮応力を生成する改質または改質構成部分を有し、この場合、改質は、固体層の非晶化された(相転移された)構成部分であり、改質は、第2の表面よりも第1の表面の近くに離間されており、または第1の表面をいっしょに形成し、第2の表面は、第1の表面に対し平行にまたは実質的に平行に形成されており、かつ/または第2の表面は平坦または実質的に平坦である。さらに本発明によるマルチコンポーネント集成体は、固体層の第1の表面に生成された金属層も有する。さらにこの場合に可能であるのは、特に、横型構成素子または縦型構成素子として使用可能な電気コンポーネントを形成する目的で、第2の表面に1つまたは複数の別の層および/または1つまたは複数の別の構成部材が配置されているようにすることである。
【0161】
好ましくは、最初は露出している固体物表面に、またはその上方に、層および/または構成部材を配置または生成することによって、複合構造物を生成することが行われ、この場合、露出している表面は、分離すべき固体層の構成部分である。好ましくは、剥離面を形成するための改質が、複合構造物の生成前に生成される。さらに、固体物に外部からの力を及ぼして、固体物に応力を生成することができ、この場合、外部からの力は、応力により剥離面に沿って亀裂伝播が引き起こされるような強さである。
【0162】
好ましくは改質は第2の表面から、200μmよりも僅かに離間されており、特に150μmよりも僅かに、または110μmよりも僅かに、または100μmよりも僅かに、または75μmよりも僅かに、または50μmよりも僅かに、離間されている。
【0163】
表面は、本発明の意図するところによれば、この表面が理想的に滑らかでかつ理想的に平坦な1つの表面に当接したときに、この表面の1cm2各々が、少なくとも1つの構成部分で理想的に滑らかでかつ理想的に平坦な表面と接触するならば、実質的に平坦であると見なすことができる。
【0164】
表面は、本発明の意図するところによれば好ましくは、この表面が理想的に滑らかでかつ理想的に平坦な1つの表面に当接したときに、この表面の1cm2各々が、特に1mm2各々が、少なくとも複数の構成部分で、特に少なくとも2つ、3つ、4つまたは5つの構成部分で、理想的に滑らかでかつ理想的に平坦な表面と接触するならば、実質的に平坦であると見なすことができる。
【0165】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、レーザ放射の経路中、レーザ放射がドナー基板もしくは固体物に侵入する手前に、回折光学素子(DOE)が配置されている。レーザ放射はDOEにより複数の光路に分割され、これによって複数の焦点が生成される。DOEは好ましくは、200μmの長さにわたり像面湾曲を引き起こし、この像面湾曲は、50μm以下であり、特に30μm以下であり、または10μm以下であり、または5μm以下であり、または3μm以下であり、この場合、ドナー基板の材料特性を変化させるためにDOEによって、少なくとも2つの焦点が同時に生成され、好ましくは少なくともまたは厳密に3つの、あるいは少なくともまたは厳密に4つの、あるいは少なくともまたは厳密に5つの、あるいは少なくともまたは厳密に10個または10個までの、あるいは少なくともまたは厳密に20個または20個までの、あるいは少なくともまたは厳密に50個または50個までの、あるいは100個までの焦点が同時に生成される。この実施形態が有利であるのは、著しいプロセス加速を達成できるからである。
【0166】
したがって本発明の範囲内で認識されたのは、高い出力が回折光学素子(DOE)によって焦点平面内で複数の焦点に分割される、ということである。DOEは、焦点面の手前ですでに干渉現象を示し、ここで認識されたのは、干渉によって表面において焦点面の手前で局所的最大値が生成される可能性があり、これによって表面に損傷が引き起こされ、深部で処理するためのレーザ放射のための透過性が低減される可能性がある、ということである。さらに認識されたのは、少なからぬ材料(たとえばSiC)が、たとえば材料のドーピング(頻繁に発生するのはドーピング斑点)によって、局所的な屈折率の差および他の材料特性の差(たとえば吸収、透過、散乱)を有する、ということである。さらに認識されたのは、レーザ入射表面における材料の表面粗さに依存して、レーザの波面が材料の深部において著しく損なわれる可能性があり、それによって焦点の強度が低減し(多光子遷移の確率が低減し)、このことによりやはり、高められた強度が上述の問題点と共に引き起こされてしまう、ということである。
【0167】
ブルースター角での固体物もしくはドナー基板の上もしくは中へのレーザビームの入射は複雑であり、もしくは要求が多い可能性があり、それというのも、それぞれ異なるビーム成分は、高屈折の媒体においてそれぞれ異なる長さの経路を辿るからである。このため焦点を、いっそう高いエネルギーおよび/またはビーム成形によって整合させなければならない。この場合、ビーム成形は好ましくは、たとえば1つまたは複数の回折光学素子(DOE)を介して行われ、このことによって上述の差がレーザビームプロフィルに依存して補償される。ブルースター角は比較的大きく、このことは開口数が大きい場合には、光学系およびその質量ならびに動作距離に要求が課される。ただしこの解決手段は、光強度がいっそう良好に材料の中に入射されることから、表面における反射が低減し、これが表面損傷の低減にも役立つことから、有利である。本発明の意図するところによれば、本明細書で開示される他のすべての実施形態においても、レーザビームをブルースター角で、または実質的にブルースター角で、入射させることができる。ここでブルースター角での入射については文献"Optical Properties of Spin-Coated ΤiO2 Antireflection Films on Textured Single-Crystalline Silicon Substrates" (Hindawi Publishing Corporation International Journal of Photoenergy, Volume 2015, Article ID 147836, p. 8, http://dx.doi.org/10.1155/2015/147836)を参照されたい。この文献は、ここで参照したことで本特許出願の内容に完全に取り込まれるものとする。上述の引用した文献には特に、様々な材料つまりは様々な屈折率に対し最適な入射角を得るための計算について開示されている。レーザもしくはレーザ印加装置のエネルギーは、材料にはそれほど依存させず、むしろ特定の角度のもとで可能な透過率に依存させて、整合される。つまり最適な透過率がたとえば93%であるならば、これらの損失を垂直な入射およびこのときたとえば17%となる損失による実験と対比して考慮し、レーザ出力を相応に整合しなければならない。
【0168】
一例を挙げると、所定の角度では93%であるのに対し垂直では83%の透過率とは、同じエネルギーを深部で達成するためには、垂直な入射において用いられるエネルギー出力の89%だけしか必要とされない(0.83/0.93=0.89)ということを意味する。つまり本発明の意図するところによれば、傾斜した入射の一部分が好ましくは、表面反射によっても光を僅かにしか損失せず、いっそう深部にもたらすために用いられる。これによって特定の配置構成において発生する可能性のある、場合によっては付随して生じる問題点とは、焦点が深部において「斜めの」プロフィルとなる可能性があり、ひいては達成される強度すなわち多光子処理のキーとなる量がやはり小さくなり、したがって場合によってはそれどころか、すべてのビーム成分が材料中で同じ光学経路を辿る垂直の入射よりも小さくなる、ということである。この場合にこのことを好ましくは、1つの回折光学素子によって、または複数の回折光学素子によって、または1つの透過性楔または複数の透過性楔、および/または他の光学素子によって、ビーム路中で対処することができ、これらによってこの付加的な経路および/または個々のビームに及ぼされる作用が、特にビームプロフィルについて種々の球面収差が、補償される。これらのDOEを、適切なソフトウェアソリューション(たとえばLighttrans, JenaのVirtuallab)により数値計算し、次いで製造もしくは提供することができる。
【0169】
本発明は好ましくは付加的または択一的に、固体物内に改質を生成する方法に関し、この場合、改質によって、亀裂を誘導して固体物部分を、特に固体層を、固体物から分離するための亀裂誘導領域もしくは剥離面が予め定められる。好ましくは本発明による方法は少なくとも以下のステップを含む。すなわち、固体物をレーザ印加装置もしくはレーザに対し相対的に移動させるステップ、そのつど少なくとも1つの改質を生成するために、レーザ印加装置を用いて複数のレーザビームを相前後して生成するステップを有し、この場合、レーザビームを規定どおりに集束するために、かつ/またはレーザエネルギーを整合させるために、特に連続的に、少なくとも1つのパラメータに依存して、特に複数のパラメータ、特に2つ、少なくとも2つ、または厳密に2つ、または最大で2つのパラメータに依存して、レーザ印加装置が調整される。
【0170】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、流体、特にガス、特に空気が、レーザ印加装置と固体物との間を移動する。好ましくは、固体物とレーザ印加装置との間に、特に放射経路の領域に、存在する流体の流動特性が、レーザ放射領域に粉塵が蓄積するのを回避するために調整される。流動特性の調整は、本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、流体、特にイオン化ガス、を対物レンズと固体物との間のビーム推移領域に供給することによって行われ、または流動特性の調整は、負圧、特に真空、を対物レンズと固体物との間のビーム推移領域に生成することによって行われる。
【0171】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、固体物は少なくとも1つのコーティングを有し、またはコーティングによって被層され、この場合、コーティングの屈折率は、コーティングが配置されている固体物表面の屈折率とは異なり、またはこの場合、固体物にコーティングが生成され、このコーティングの屈折率は、コーティングが配置されている固体物表面の屈折率とは異なる。コーティングの生成もしくは配置の前または後に、好ましくは、レーザ印加装置のレーザビームを用いて固体物の内部に改質を生成するステップが行われ、この場合、改質によって好ましくは亀裂誘導領域が予め定められ、この領域に沿って固体物からの固体層の分離が行われる。
【0172】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、コーティングはスピンコーティングを用いて生成され、または生成されており、この場合、コーティングはナノ粒子を有し、特に、少なくともケイ素、炭化ケイ素、酸化チタン、ガラスまたはAl2O3から成るリストから選択された、少なくとも1つの材料のナノ粒子を有する。
【0173】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、複数のコーティングが上下に配置されており、または上下に生成され、この場合、それらの屈折率は互いに異なっており、好ましくは、固体物に配置されているまたは生成される第1のコーティングは、第1のコーティングのところに生成される付加的なコーティングよりも、大きい屈折率を有する。
【0174】
したがってコーティングは好ましくは、個々の層の屈折率が、個々の層から固体物までの間隔と共に好ましくは小さくなる、もしくは減少するように、選定されて生成もしくは配置される。したがって、1.固体物、2.第1のコーティング、3.第2のコーティング、4.第3のコーティング、という層の場合、固体物の屈折率は第1のコーティングの屈折率よりも好ましくは大きく、第1のコーティングの屈折率は第2のコーティングの屈折率よりも好ましくは大きく、さらに第2のコーティングの屈折率は第3のコーティングの屈折率よりも好ましくは大きい。この場合、これらの屈折率の間の段階を、連続的にまたは非連続的に推移させることができる。さらに、それぞれ異なるコーティングはそれぞれ異なる厚さを有することができる。ただしここで考えられるのは、これらのコーティングのうちの2つまたは3つまたはそれよりも多くのコーティングが等しい厚さを有することである。好ましくはコーティングはそれぞれ、50~400nmの範囲内の厚さを有する。つまり、たとえば第1のコーティングは、100nmの厚さ(もしくは平均厚さ)を有することができる。第2のコーティングおよび第3のコーティングの厚さを、これと実質的に一致させることができ、またはこれと完全に一致させることができ、この場合、コーティングのうちの少なくとも1つは、好ましくはそれらのうちの2つは、互いに異なる厚さを有する。したがって第2のコーティングはたとえば、150nmの厚さ(もしくは平均厚さ)を有することができる。さらに第3のコーティングを、第1のコーティングおよび/または第2のコーティングよりも厚くまたは薄くすることができ、第3のコーティングはたとえば、75nm、110nmまたは300nmの厚さ(もしくは平均厚さ)を有することができる。
【0175】
本発明による方法は好ましくは、ドナー基板の周方向に延在する表面から出発してドナー基板の中心に向かう方向で、ドナー基板の材料を切除して、特に周囲を取り巻く凹部を生成するステップも含む。好ましくは材料の切除によって、剥離領域が露出させられる。つまり、剥離領域もしくは剥離面を規定する改質を事前に生成しておくことができる。したがって以下のことが可能である。すなわち、固体レイヤもしくは固体層が材料切除に起因してドナー基板から剥離するように、ドナー基板が剥離領域において、または剥離面に沿って、改質により弱められ、または材料切除後、固体レイヤがドナー基板から剥離するようにドナー基板が剥離領域において弱められるような個数の改質が生成され、または周囲を取り囲む表面に対し傾斜して配向された、特に平坦な、ドナー基板の表面に、応力生成層が生成または配置され、応力生成層への熱的衝撃印加によって、ドナー基板に機械的応力が生成され、その際に機械的応力によって、固体レイヤを分離するための亀裂が発生し、この亀裂は、材料切除により露出させられたドナー基板の表面から出発して改質に沿って伝播する。
【0176】
この解決手段が有利であるのは、ドナー基板の周縁部の領域では、剥離領域をさらに形成するために著しく手間をかけることでしか改質を生成できず、そのようなドナー基板の周縁部が除去または低減または改質されるからである。したがってこれにより半径方向の材料切除が行われ、この切除によって、周囲を取り囲む表面から剥離領域までの間隔が低減される。
【0177】
従属請求項および/または以下の明細書の部分には、さらに別の好ましい実施形態が示されている。
【0178】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、改質により予め定められた剥離領域は、材料切除前、ドナー基板の周囲を取り囲む表面に対し、材料切除後よりも離れて離間されている。この実施形態が有利であるのは、このようにすれば剥離領を簡単に生成することができ、それにもかかわらず剥離領域は、材料切除後、好ましくは、ドナー基板の周囲を取り囲む外側の表面に隣接しているからである。
【0179】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、剥離領域を予め定めるための改質が材料切除前に生成され、材料切除により少なくとも部分的に、剥離領域の間隔が10mmより小さくなるまで、特に5mmより小さくなるまで、好ましくは1mmより小さくなるまで、低減され、または剥離領域を予め定めるための改質が材料切除後に生成され、その際に剥離領域が、少なくとも部分的に10mmよりも小さく、特に5mmよりも小さく、好ましくは1mmよりも小さく、材料切除により露出させられた表面に対し離間されているように、改質が生成される。特に好ましくは、剥離領域の少なくともいくつかの改質は、材料切除により露出させられ、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、周囲を取り囲む、ドナー基板の表面の構成部分である。
【0180】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、材料はアブレーションビームによって、特にアブレーションレーザビームによって、またはアブレーション流体によって、除去され、あるいは材料切除により非対称な形態の凹部が生成され、あるいは材料切除は少なくとも部分的に、ドナー基板の周方向で、剥離領域と剥離領域に対し均一に離間されたドナー基板表面との間の領域全体において、ドナー基板の半径方向の広がりの低減として、行われる。
【0181】
本発明による方法は好ましくは、少なくとも1つのレーザビームを用いてドナー基板の内部に少なくとも1つの改質を生成するステップも含み、その際にレーザビームはドナー基板の表面を介して、特に平坦な表面を介して、ドナー基板中に侵入し、この場合、レーザビームは、このビームがドナー基板の長手軸線に対し0°または180°とは異なる角度でドナー基板中に侵入するように、ドナー基板の平坦な表面に対し傾斜しており、その際にレーザビームは、ドナー基板内に改質を生成するために集束させられる。固体層もしくは固体ディスクは、好ましくは生成された改質によりドナー基板から剥離し、または応力生成層がドナー基板の平坦な表面に生成または配置され、応力生成層に熱的な衝撃を印加することによって、ドナー基板に機械的応力が生成される。機械的応力によって好ましくは、固体層を分離するための亀裂が発生し、この亀裂が改質に沿って伝播する。好ましくはレーザビームの第1の部分が、ドナー基板の平坦な表面に対し第1の角度でドナー基板中に侵入し、レーザビームの少なくとも1つの別の部分が、好ましくはドナー基板の平坦な表面に対し第2の角度でドナー基板中に侵入し、ここで第1の角度の値と第2の角度の値とは異なり、その際にレーザビームの第1の部分およびレーザビームの別の部分は、ドナー基板内に改質を生成するために好ましくは集束させられる。
【0182】
好ましくは、ドナーウェハもしくはドナー基板もしくは固体物は、および/またはレーザビームを送出するレーザ装置は、改質生成中、回転軸線を中心に回転させられる。特に好ましくは、ドナーウェハの回転に加えて、またはこれに対する代案として、ドナーウェハの中心までのレーザビームの間隔が変えられる。
【0183】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ドナー基板の中心領域に改質を生成するために、およびドナー基板の半径方向に現れる周縁部の領域に改質を生成するために、レーザビーム全体がドナー基板の平坦な表面に対し同じ向きで配向されている。
【0184】
この解決手段が有利であるのは、レーザビームの横断面全体が、固体物への入射時に1つの平坦な面に当射するからであり、なぜならばそのようにすれば深部において均一な損傷が現れるからである。特に平坦な表面に対し直交して延在する、ドナー基板の外側の周縁部にまで、この均一な損傷を生成することができる。したがってドナー基板の周縁領域周囲とドナー基板の中心領域内とに、1つの処理ステップによって改質を生成することができる。
【0185】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ドナー基板の中心領域に改質を生成するために、さらにドナー基板の半径方向に現れる周縁部の領域に改質を生成するために、レーザビームの第1の部分は、ドナー基板の表面に対し第1の角度でドナー基板に侵入し、レーザビームの別の部分は第2の角度で侵入し、ここで第1の角度の値は第2の角度の値とは常に異なる。好ましくは第1の角度および第2の角度は、改質の生成中、一定もしくは不変であり、もしくは変更されない。
【0186】
本発明による方法は好ましくは、ドナー基板の周方向に延在する表面から出発してドナー基板の中心に向かう方向で、ドナー基板の材料を切除して凹部を生成するステップも含む。好ましくは、材料はアブレーションレーザビームによって除去され、かつ/または凹部が非対称に生成される。この場合に可能であるのは、剥離面もしくは剥離領域を生成もしくは形成する、いくつかの、複数の、大多数の、またはすべての改質が、材料切除の前または後に生成される、ということである。したがって、改質の第1の部分を材料切除前に生成し、改質の別の部分を材料切除後に生成することもできる。ここで可能であるのは、改質が材料切除前に、切除後とは異なるレーザパラメータで生成される、ということである。したがって材料切除後、改質を別のレーザビームを用いてドナー基板の内部に生成することができ、その際に改質は好ましくは、それらが凹部に続くようにポジショニングされる。固体ディスクもしくは固体層は好ましくは、生成された改質によってドナー基板から剥離し、または周囲を取り囲む表面に対し傾斜して配向された、特に平坦な、表面に、応力生成層が生成または配置される。好ましくは、応力生成層に熱的衝撃を印加することによって、ドナー基板に機械的応力が生成され、その際に機械的応力によって、固体層を分離するための亀裂が発生し、この亀裂は凹部から出発して改質に沿って伝播する。
【0187】
この場合、改質は、好ましくはできるかぎり短いパルスを用い、できるかぎり狭い垂直方向領域に大きい開口数で材料中に集束させることにより、達成される。
【0188】
アブレーションの場合にはアブレーションレーザビームが、比較的小さい開口数で、たいていは材料により線吸収される波長で、材料の表面に集束させられる。材料表面においてアブレーションレーザビームが線吸収されることによって材料が気化し、構造変化だけでなくアブレーションつまり材料切除が生じる。
【0189】
この解決手段が有利であるのは、ドナー基板の周縁領域が材料切除処理によって加工処理され、これによりドナー基板の外側の周縁部が、亀裂が伝播する面領域においてドナー基板の中心に向かう方向に移動させられるからである。この移動は好ましくは、レーザビームの侵入深さおよび/またはレーザビーム相互間の角度に依存して、すべてのレーザビームが同じ平坦な表面を介してドナー基板中に侵入できるかぎり、中心に向かう方向で行われる。
【0190】
従属請求項および/または以下の明細書の部分には、さらに別の好ましい実施形態が示されている。
【0191】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、凹部はドナー基板を周方向で完全に取り囲む。この実施形態が有利であるのは、亀裂をドナー基板の周囲全体にわたり規定どおりにドナー基板中に導入できるからである。
【0192】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、凹部は、中心に向かう方向で凹部終端まで狭くなっていくように、特に楔状またはノッチ状に推移し、その際に凹部終端は、亀裂が伝播する面内に位置している。この実施形態が有利であるのは、凹部終端によりノッチが形成され、このノッチにより亀裂伝播方向が予め定められるからである。
【0193】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、非対称の凹部が、この凹部に対し少なくとも部分的にネガ型に成形された研磨工具を用いて生成される。この実施形態が有利であるのは、生成すべきエッジもしくは凹部に従って研磨工具を製造できるからである。
【0194】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、研磨工具は少なくとも2つのそれぞれ異なるように成形された加工処理部分を有し、その際に第1の加工処理部分は、分離すべき固体ディスクの下面領域においてドナー基板を加工処理するためのものであり、第2の加工処理部分は、ドナー基板から分離すべき固体ディスクの上面領域においてドナー基板を加工処理するためのものである。この実施形態が有利であるのは、研磨工具を用いて、亀裂誘導の改善をもたらす変形の他、取り扱いの改善をもたらす変形も、ドナー基板において、もしくは1つまたは複数の固体ディスクを形成するドナー基板の部分において、同時にまたは時間をずらして、生じさせることができるからである。
【0195】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、第1の加工処理部分は、第2の加工処理部分よりも深いまたは体積の点で大きい凹部をドナー基板に生成し、その際に第1の加工処理部分および/または第2の加工処理部分は、湾曲した研磨面または直線状の研磨面を有する。好ましくは第1の加工処理部分は湾曲した主研磨面を有し、第2の加工処理部分は好ましくはやはり湾曲した副研磨面を有し、ここで主研磨面の半径は副研磨面の半径よりも大きく、好ましくは主研磨面の半径は、副研磨面の半径の少なくとも2倍の大きさであり、または第1の加工処理部分は直線状の主研磨面を有し、第2の加工処理部分は直線状の副研磨面を有し、この場合、主研磨面によって副研磨面よりも多くの材料がドナー基板から除去され、または第1の加工処理部分は直線状の主研磨面を有し、第2の加工処理部分は湾曲した副研磨面を有し、または第1の加工処理部分は湾曲した主研磨面を有し、第2の加工処理部分は直線状の副研磨面を有する。
【0196】
好ましくは研磨工具は複数の加工処理部分を有し、特に2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10個の加工処理部分を有し、これによって相応の個数のそれぞれ異なる固体ディスクに対応づけ可能なドナー基板の部分を、切削加工もしくは材料除去により加工処理することができるようになる。
【0197】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、アブレーションレーザビームは、300nm(周波数3倍化Nd:YAGレーザまたは他の固体レーザによるUVアブレーション)~10μm(CO2ガスレーザ、グラビアおよび切断プロセスのために用いられることが多い)の範囲内の波長を用い、100μsよりも短いパルス持続時間で、好ましくは1μsよりも短い、特に好ましくは1/10μsよりも短いパルス持続時間で、1μJよりも大きいパルスエネルギーによって、好ましくは10μJよりも大きいパルスエネルギーによって、生成される。この実施形態が有利であるのは、レーザ装置を用いることで、摩耗させられる研磨工具を用いることなく凹部を生成できるからである。
【0198】
ドナー基板における改質は、材料に応じて好ましくは以下で述べるコンフィギュレーションもしくはレーザパラメータによって生成される。すなわち、ドナー基板がケイ素から成り、またはドナー基板がケイ素を有するならば、好ましくはナノ秒パルスまたはそれよりも短いパルス(<500ns)と、マイクロジュール領域(<100μJ)のパルスエネルギーと、1000nmよりも長い波長とが用いられる。
【0199】
他のすべての材料および材料の組み合わせにおいて、好ましくは5ピコ秒よりも短いパルスと、マイクロジュール領域(<100μJ)のパルスエネルギーと、300nm~2500nmの可変の波長とが用いられる。
【0200】
ここで特に好ましくは、材料中もしくは固体中に深く到達させる目的で、大きい開口が設けられる。したがってドナー基板の内部に改質を生成する開口は好ましくは、凹部を生成するためにアブレーションレーザビームにより材料をアブレーションする開口よりも大きい。好ましくは開口は、凹部を生成するためのアブレーションレーザビームにより材料をアブレーションする開口よりも少なくとも数倍大きく、特に少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍大きい。改質を生成する焦点サイズは特にその直径に関して、好ましくは10μmよりも小さく、好ましくは5μmよりも小さく、特に好ましくは3μmよりも小さい。
【0201】
本発明による方法は、好ましくは以下に挙げるステップのうち1つまたは複数のステップも含む。すなわち、ドナー基板を準備するステップ、もしくは平坦な主表面に対し傾斜した結晶格子面を有するドナー基板(もしくは固体物)を準備するステップ。この場合、ドナー基板の主表面は好ましくは、ドナー基板の長手方向において一方の側の境界を成しており、その際、結晶格子面法線は主表面法線に対し第1の方向で傾斜している。少なくとも1つのレーザを準備するステップ。固体物の内部に好ましくは主表面を介してレーザ放射を導入し、少なくとも1つのレーザ焦点の領域において固体物の材料特性を変化させるステップ。レーザ焦点は、好ましくはレーザから送出されるレーザのレーザビームにより形成される。材料特性の変化は、ドナー基板へのレーザ放射の侵入個所を変化させることにより線状造形物を形成する。材料特性の変化は好ましくは1つの生成面上で生成され、この面は好ましくは主表面に対し平行に推移する。線状造形物は、好ましくは少なくとも部分的に直線状に、または湾曲して、延在する。ドナー基板の結晶格子面は、生成面に対し好ましくは傾斜して配向されている。線状造形物は、特に少なくとも直線状に延在する区間または湾曲して延在する区間は、生成面と結晶格子面との間の界面に生じる分割線もしくは交線に対し傾斜しており、これによって変化させられた材料特性が、臨界未満の亀裂の形態でドナー基板に亀裂を入れる。好ましくは、ドナー基板に外部からの力を及ぼして臨界未満の亀裂を結合することによって、固体層を分離するステップが行われ、または臨界未満の亀裂を結合させながら固体層がドナー基板から剥離する程度に、生成面における材料がレーザ放射によって変化させられる。ここで主表面は、好ましくは理想的に平坦な表面として見なされる/定義される。
【0202】
この方法が有利であるのは、これによって線状造形物が、生成面と結晶格子面との間の界面に生じる分割線もしくは交線に対し傾斜することで、書き込み方向に対し垂直な亀裂の成長が制限されるからである。したがって書き込み線ごとの改質は、同じ結晶格子面には生成されない。このためたとえば、書き込み線ごとの最初の1~5%の改質は、同じ書き込み線の最後の1~5%の改質の結晶格子面のごく一部分とだけしか、特に75%未満、または50%未満、または25%未満、または10%未満とだけしか交差することができず、あるいはまったく交差することはできない。ここで書き込み線は、好ましくは1cmよりも長く、または10cmよりも長く、または20cmよりも長く、または20cmまでの長さ、または30cmまでの長さ、または40cmまでの長さ、または50cmまでの長さである。したがって書き込み線ごとに、同じ結晶格子面においてごく僅かな改質だけしか生成されず、これによってこの結晶格子面に沿った亀裂伝播が制限される。ここで傾斜しているとは、平行ではないまたは重なり合ってはいないことであると解され、したがってたとえばすでに0.05°の角度から存在する可能性があり、この場合、ごく小さい角度であっても、特に1°よりも小さい角度であっても、線状造形物が延在する長さにわたって、互いに異なる結晶格子面が、特にすべり面が、1つの改質もしくは複数の改質によって局所的に切断もしくは改質され、もしくは変化させられる。
【0203】
これにより本発明の重要な第2の利点がもたらされ、つまりさらに生成される亀裂が直前に生成された亀裂と重なり合わなければならないように、書き込み方向を必ずしも実施する必要がない、という利点がもたらされる。このため、書き込み方向が逆方向であることも可能となる。つまり本発明による方法によって短い亀裂が可能になることから、直前に行われた亀裂を陰にしてしまうことがない。これによって、逆方向の書き込み方向であるにもかかわらず、たとえば100μmよりも短い線間隔を実現することができ、特に75μmよりも短い、または50μmよりも短い、または30μmよりも短い、または20μmよりも短い、または10μmよりも短い、または5μmよりも短い、または2μmよりも短い線間隔を実現することができる。
【0204】
ここで材料特性の変化とは好ましくは、材料改質の生成もしくは結晶格子欠陥の生成のことであると解することができ、特に局所的に制限された相転移を生じさせることであると解することができる。
【0205】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、線状造形物もしくは書き込み線は分割線に対し、0.05°~87°の角度範囲で傾斜しており、特に3°または5°~60°の角度範囲で、好ましくは10°~50°、特に10°~30°、たとえば12°~20°または13°~15°の角度範囲で、または20°~50°、特に25°~40°または30°~45°または28°~35°の角度範囲で、傾斜している。この解決手段が有利であるのは、十分に多くのそれぞれ異なる結晶格子面が、同じ線状造形物もしくは書き込み線のさらに別の改質各々の構成部分であるような大きさで、傾斜しているからである。
【0206】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、固体層の分離により露出させられた個々の結晶格子面の終端および材料変化からモアレパターンが発生する程度に、1つの線状造形物または複数の線状造形物を形成しながらドナー基板の材料が変化させられ、その際にこの目的で、線状に、好ましくは直線状に延在し、互いに平行に配向された複数の材料変化領域が生成される。
【0207】
ここで線状造形物を好ましくは、直線または湾曲線を形成する点の集合と見なすことができる。その際に個々の点の中心同士の間隔は、好ましくは250μmよりも僅かに隔たったものであり、特に150μmよりも僅かに、または50μmよりも僅かに、または15μmよりも僅かに、または10μmよりも僅かに、または5μmよりも僅かに、または2μmよりも僅かに、隔たったものである。
【0208】
好ましくは、複数の線状造形物が同じ生成面上に生成され、好ましくは線状造形物の少なくとも複数が互いに同じ間隔で配置されている。好ましくは線状造形物が、アーチ状に、特に円弧状に、または直線状に、形成されているようにすることができる。
【0209】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、複数の第1の線状造形物が生成され、この場合、線状造形物各々によって1つの臨界未満の亀裂または複数の臨界未満の亀裂が生成され、この場合、第1の線状造形物の臨界未満の亀裂は、規定された間隔A1で互いに離間されており、ここで間隔A1は、臨界未満の亀裂がドナー基板の軸線方向で重なり合わないような大きさであり、特に少なくとも2μmまたは2μmまで、または少なくとも5μmまたは5μmまで、または少なくとも10μmまたは10μmまで、または少なくとも20μmまたは20μmまで、または少なくとも30μmまたは30μmまで、または少なくとも50μmまたは50μmまで、または少なくとも75μmまたは75μmまで、または少なくとも100μmまたは100μmまで、互いに離間されているような大きさであり、さらに第1の線状造形物の生成後、少なくとも2つの第1の線状造形物の間で、好ましくは2つよりも多くの第1の線状造形物の間で、それぞれ少なくとも1つの別の線状造形物がレーザビームによって、特に材料特性の変化により、生成される。顕微鏡で観察すれば、好ましくは改質各々または改質の蓄積各々によって、特に結晶すべり面の延在方向において、周囲を取り囲むドナー基板材料に亀裂が入る。したがって線状造形物の長さ方向の広がりにわたって、複数の臨界未満の亀裂を誘発することができる。線状造形物ごとに複数の臨界未満の亀裂は、好ましくは互いに結合されており、もしくは外部からの力により結合可能であり、これによって線状造形物ごとに1つの臨界未満の主亀裂を形成する。
【0210】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ドナー基板は、ウルツ鉱構造またはコランダム構造を備えた六方晶格子を有し、この場合、線状造形物は交線に対し、15°~60°の予め定められた角度で生成され、特にウルツ鉱構造の場合には25°~35°の角度で、好ましくは30°の角で、コランダム構造の場合には10°~60°の角度で、好ましくは45°の角度で生成され、あるいはドナー基板は立方晶格子を有し、この場合、線状造形物は交線に対し、7.5°~60°の予め定められた角度で生成され、特に単結晶の立方晶構造の場合には17.5°~27.5°の角度で、好ましくは22.5°の角度で、またはイットリウムアルミニウムガーネットの場合には8°~37°で、好ましくは22.5°の角度で生成され、あるいはドナー基板は三斜晶格子構造を有し、この場合、線状造形物は交線に対し、5°~50°の予め定められた角度で生成され、特に10°~45°で、または10°または45°で生成され、あるいはドナー基板は閃亜鉛鉱構造を有し、この場合、線状造形物は交線に対し、15°~60°の予め定められた角度で生成され、特にヒ化ガリウムの場合には18°~27°の予め定められた角度で、好ましくは22.5°の角度で、またはリン化インジウムの場合には18°~27°で、好ましくは22.5°の角度で生成される。
【0211】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、複数のドナー基板が材料特性の変化中、回転装置上に、特に回転台上に、同時に並置されて、1つの共通の回転軸線を中心に回転可能である。回転速度は、好ましくは毎分10回転よりも速く、さらに好ましくは毎分50回転よりも速く、特に好ましくは毎分150回転よりも速く、特に毎分600回転までである。この場合、線状造形物は好ましくは湾曲している。湾曲した線状造形物が、生成面と結晶格子面との間の界面に生じる交線に対し傾斜している角度は、ここでは好ましくは平均角度と見なすことができ、特に好ましくは湾曲した線状造形物が生成されるときのみ平均角度が定義/使用される。その際に平均角度は、湾曲した個々の線状造形物の延在長さの中程の80%にもっぱら関連づけられ、つまり延在長さの最初の10%の傾斜もしくは角度および最後の10%の傾斜もしくは角度は、この場合には平均角度の算出のためには好ましくは考慮されない。好ましくは、湾曲した線状造形物の関連する改質各々について、交線に対する傾斜もしくは角度が求められ、累算され、累算した角度値の個数で除算される。
【0212】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、印加されるレーザ放射の特性を変化させるビーム成形装置が設けられており、特に、レーザビームの偏光を変化させる装置が、特に回転型λ/2板またはポッケルスセルの形態で、設けられており、かつ/またはビーム成形装置は好ましくは、レーザ放射を円偏光または楕円偏光するように構成されており、その際にドナー基板には、特にλ/4板の形態で、円偏光または楕円偏光されたレーザ放射が印加される。
【0213】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、印加されるレーザビームの特性を変化させるビーム成形装置が設けられている。レーザビームのこの特性は特に、レーザビームの偏光特性、集束前および集束後のレーザビームの空間的プロフィル、および印加されるレーザビームの個々の波長の空間的および時間的な位相分布であり、これは集束光学系などビーム路のいくつかの素子における波長依存性の分散によって影響が及ぼされる可能性がある。
【0214】
この目的でビーム成形装置に,進行するレーザビームの偏光を変化させるために、たとえば回転型λ/2板または類似の複屈折素子が備えられているようにすることができる。これによって、印加するレーザビームの偏光を、受容部分の回転速度に依存して変化させることができる。これによって付加的に、受容部分における固体物の結晶方向に対し特定の角度で偏光方向を変化させることもできる。λ/2板に加えて、またはその代替として、ビーム成形装置内においてポッケルスセルのような素子によっても、このことを生じさせることができる。かかる装置の場合、外部からの電界によって、電界に依存する材料中の複屈折に作用が及ぼされ、これはいわゆるポッケルス効果または線形の光電効果であって、印加された電圧に依存してレーザビームの偏光を変化させるために、このことを利用することができる。この解決手段によれば、回転板よりも速い切換時間を有し、したがって台もしくは固体物の運動にいっそう良好に同期させることができる、という利点がもたらされる。
【0215】
別の選択肢としてビーム成形装置を、固体物を印加する前にレーザビームが円形偏波されているように構成することもできる。レーザ放射はたいていは直線偏光されているが、λ/4板などの複屈折光学素子によって、円偏光された光に変換することができる。これに対し円偏光されている光は、まさにかかる素子によって、直線偏光された光に再び変換される。この場合、円偏光されたレーザ放射と直線偏光されたレーザ放射の混合形態もしくは組み合わせ、いわゆる楕円偏光されたレーザ放射、を用いることも可能である。
【0216】
基本的にこのことによって、多光子吸収の場合に作用断面が、結晶方向に、もしくは光の偏光方向と結晶配向との間の角度に、極めて強く依存する、という問題点に対する解決手段が提供される。それというのも、固体物が回転すると、レーザビームを基準にして結晶方向が常に変化してしまうからであり、このことをレーザ偏光の同期された回転または円偏光または楕円偏光されたレーザ光によって解消することができ、多光子吸収のための作用断面を一定に保持することができる。
【0217】
これに加え、レーザビームの空間的プロフィルが、集束前にまたは焦点において変化するように、ビーム成形装置を構成することができる。このことは、一方の空間方向のみにおいてスリットまたはテレスコープといった簡単な素子によって達成することができる。かかるテレスコープはたとえば、円筒レンズと円筒散乱レンズとの組み合わせによって達成することができ、その相対的な焦点距離によって、一方の空間方向におけるレーザビームサイズの変化が予め規定される。ただしレーザビームの交差を避ける目的で、テレスコープを複数の素子から成るものとすることができる。集束前のレーザビームの空間的ビームプロフィルに応じて、固体物に印加するときの焦点の形状も変化させ、有利に選定することができる。このためビーム成形装置を付加的に、レーザビーム焦点の形状を受容部分の回転速度に依存して、または固体物の配向にも依存して、変化させることができるように、構成することができる。したがってたとえば、回転軸線のいっそう近くに位置する固体物の領域において固体物に印加するときに、その領域に整合された空間的プロフィルを、ビーム成形装置により焦点に生成することができ、たとえば外側に向かって先細りするレーザビームプロフィルを生成することができる。
【0218】
数多くの材料、特にガラスや結晶など透過性材料は、波長依存性の複屈折率の点で優れている。パルス形状のレーザビームは、特にフェムト秒領域のレーザビームは、以下のような複数の波長のスペクトルから成り、すなわちそれらの波長はビーム成形装置または集束光学系において、固体物に印加される前にそれぞれ異なる屈折率の作用を受ける可能性がある。このような分散の結果、フェムト秒パルスが長くなり、これによってそのピーク強度が低下し、このことは多光子プロセスの用途には望ましくない。したがってビーム成形装置を、ビーム路中の他の光学素子の分散を集束前または集束後に補償するように、構成することができる。これらの分散は、空間において色収差として、または時間においてパルス伸長またはパルス圧縮として、作用を及ぼす可能性がある。特に分散を、レーザパルスに存在する波長の予め規定された色分布が焦点において発生するように、ビーム成形装置によって変化させて利用することもできる。
【0219】
補償を行うための、およびたとえば分散が補償されるようにレーザパルスに人工的な位相分布を導入するための慣用の手段は、複数のプリズムまたは回折格子の組み合わせ、液晶をベースとするいわゆる空間光変調器(SLM)、または屈折率がそれぞれ異なり特別な順序で配置された誘電層を有するチャープミラーである。レーザビームの拡開後、レーザビームの個々の領域に、つまりレーザビームにより照射されるSLMの個々のピクセルに、それぞれ異なる位相を設定する目的で、空間光変調器(SLM)を投入することができる。これらの位相差によって、加工処理光学系または対物レンズの焦点において、レーザ放射の強度分布の変化がもたらされる。このようにして変化させられた強度分布により複数の焦点を形成できるようになり、回折光学素子を置き換えることができるが、レーザのビームプロフィルすなわち強度分布を複数の次元で変化させることもでき、したがってたとえば楕円形状の強度分布を、またはガウス形状とは異なる強度分布も、生成することができ、たとえばいわゆるトップハットプロフィルを生成することができ、これはレーザ強度プロフィルの中心において、等しい強度の幅の広い領域を有する。特に、ビームプロフィルのz方向の広がりが小さくなることによって、レーザ損傷領域の減少を達成することができる。
【0220】
特に分散を補償するための、この解決手段が有利であるのは、これによって、短いパルス(たとえば100fsよりも短いパルス)が通過したときに強く分散が発生する問題が、つまりいくつかの光の部分が他の部分よりも速いことからパルスが滲む問題が、補償されるからである。さもないとパルスが長くなってしまい、それによってそのピーク強度が低下してしまい、このことは多光子プロセスの用途には望ましくない。
【0221】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、主表面は、固体層の分離後、固体層の構成部分であり、分離後、好ましくは残された残留ドナー基板よりも薄い厚さを有する。この実施形態が有利であるのは、残されたドナー基板を準備処理して、固体層として、または別の固体層を分離するために、利用できるからである。
【0222】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、この方法は付加的に、レーザに対し相対的にドナー基板を動かすステップを有する。その際にレーザは、レーザ放射を規定どおりに集束させるために、かつ/またはレーザエネルギーを整合させるために、少なくとも1つのパラメータに依存して、好ましくは複数のパラメータ、特に少なくとも2つのパラメータ、に依存して、好ましくは連続的に調整される。このため好ましくは、試料もしくは固体物もしくは基板の均一性に合わせて整合するために、ポジションに依存したレーザ出力調整が行われる。
【0223】
製造方法によっては、たとえば固体物におけるドーピングの非均一性が発生し、これを既述の解決手段を用いて有利に補償することができる。例を挙げると、炭化ケイ素(SiC)は、ドーピングガス(N2)を吹き込むことにより気相析出において製造され、その際に肉眼ではっきりと見えるドーピングの斑点が発生する。この不均一性によって、必要とされるレーザ改質(特に好ましくは亀裂誘導のない十分な損傷)のために、他の点では均一とされたワークピース/試料に対する平均的なレーザパラメータとは異なるレーザパラメータが要求されることが多い。大半の試料については、プロセスパラメータはロバストであり(つまりプロセス窓が十分に大きい)、平均的に均一な試料に対する平均的なレーザパラメータによって、うまく改質させることができる。局所的な材料特性の偏差が比較的大きい場合には、局所的に整合されたレーザパラメータを用いなければならない。したがって、インラインの整合または予備知識を用いた整合が考えられる。
【0224】
この解決手段が有利であるのは、たいていの材料(たとえばSiC)は、局所的な屈折率特性の差および他の材料特性の差(たとえば吸収、透過、散乱)を有し、ポジションに依存するレーザ印加調整を用いることで、これらを補償または相殺することができるからである。好ましくは、吸収、透過、散乱、屈折率等の材料特性のうちのいくつかまたは多数が、それぞれ可能なパラメータとして用いられる。ここでポジションに依存してとは、処理すべき固体物をレーザ印加装置に対し相対的に移動させることを意味する。したがってここで考えられるのは、レーザ印加装置および/または固体物を移動させることである。少なくとも1つのパラメータが、好ましくはレーザビームを固体物へ印加する前に、分析ステップの枠内で捕捉される。入射表面および/または印加される固体物の体積に関するパラメータの変化は、好ましくはデータとして特性プロフィルデータの形態で呼び出し可能に予め保持され、特に好ましくはレーザ印加装置の動作を制御し、ポジションに依存して固体物にレーザを印加するために用いられる。これに加えて考えられるのは、固体物が載置される走行装置を、特にX/Yテーブルまたは回転テーブルを、特性プロフィルデータに依存して動作制御もしくは駆動することである。別の選択肢として考えられるのは、特性プロフィルデータを生成し、リアルタイムで評価することであり、つまりレーザ印加装置および/または走行装置の動作制御にそのまま用いることである。
【0225】
したがってインライン整合は好ましくは、(加工処理ポジションの前をセンサが通過することで)リアルタイムに捕捉可能な変化に基づいている。その際に特に、無接触の一方の側からの(つまり透過性ではなく反射性の)測定方法、たとえばスペクトル反射、が適している。予備知識を用いた整合のために好ましくは、予備知識として補正係数K(x,y)を有するマップを加工処理前に読み込み、これを用いてレーザパラメータを局所的に(x,y)調整するレーザ装置が必要とされる。好ましくは走行装置に、特にチャック/キャリアに、固定されたときに、試料に好ましくは正確な配向が与えられるので、この予備知識をチャック/キャリアと共に機械に登録することができる。局所的なエネルギー密度を整合させるために、たとえば出力を追従すること、書き込みパターンを整合すること(別の穿孔密度)、またはそれぞれ異なる書き込みパターンにより何度も上書き走行すること、が適している。
【0226】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、付加的または択一的なパラメータは、固体材料のドーピング濃度であり、これは好ましくは後方散乱光(好ましくはラマン散乱)の分析により特定され、ここで散乱光は、後方散乱を引き起こすために規定どおりに入射される光とは異なる波長または異なる波長範囲を有し、この場合、ラマン機器は好ましくは装置の構成部分であり、ドーピング濃度は好ましくはラマン機器によって特定され、その際にこれらのパラメータのうち1つまたは複数またはすべてが、好ましくは1つの共通の検出ヘッドによって、特に同時に、捕捉される。ラマン分光法は、好ましくはガラス、サファイア、酸化アルミニウムセラミックにおいても使用される。ラマン法が有利であるのは、材料の深部において測定を行うが、これは一方の側からだけであり、高い透過性を必要とせず、ラマンスペクトルに適合させることによって、レーザパラメータを用いて補正可能な電荷キャリア密度/ドーピングを送出するからである。
【0227】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、付加的または択一的なパラメータは、固体物の予め定められた個所における、または予め定められた領域内の、特に内部の、特に固体物表面に対し離間されたところでの、固体物のドーピング濃度である。好ましくは処理マップが作成されるように、もしくは局所分解された処理指示が提供されるように、ドーピング濃度が位置情報と結合され、これにより個所に依存してレーザパラメータ、特にレーザ焦点、および/またはレーザエネルギー、および/またはさらに別の機械パラメータ、特に送り速度、が予め定められる。
【0228】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ドーピング濃度は、非弾性散乱(ラマン散乱)による後方散乱光の分析により特定され、ここで後方散乱光は、後方散乱をトリガするために規定どおりに入射される光とは異なる波長または波長範囲を有し、この場合、後方散乱光は、予め規定された個所から、または予め規定された領域から、後方散乱させられる。
【0229】
この実施形態が有利であるのは、レーザ法の場合、特にSiCにおいて(ただし他の材料においても)、プロセスを位置整合して実施しなければならないからである(たとえば他のレーザエネルギー等)。本発明によって認識されたのは、たとえばSiCの場合にはこれに関して特にドーピングが決定的役割を成す、ということであり、それというのもドーピングによって、加工処理波長に対する材料の透過性が変化し、いっそう高いレーザエネルギーが必要になるからである。
【0230】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ドーピング濃度は、偏光解析測定(たとえば裏面反射によるミュラーマトリックス偏光解析法)によって特定される。偏光解析測定は、好ましくは材料の光学的透過性に基づく。
【0231】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ドーピング濃度は、単に光学的に較正された透過率測定を用いて特定され、この場合、較正はホール測定および4点測定によってなされる。これらの方法は、材料中のドーピング/自由電荷キャリア数を求めることもでき、これらによってプロセスに必要とされるレーザエネルギーを求めることができる。
【0232】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ドーピング濃度が渦電流測定によって特定され、これによれば好ましくは、固体材料中の導電率の差が特定されて評価される。
【0233】
渦電流測定の場合、もしくは渦電流センサを使用した場合、もしくは渦電流技術において、好ましくは、局所的な導電率の差を検出するために送受信コイルが用いられる。送信コイルにおいて、1次側の高周波電磁界が生成される。次いで、導電性材料において渦電流(局所的に流れる電流)が誘導され、さらにこの電流によって、逆方向の2次側の電磁界が引き起こされる。これらの電磁界の重畳を測定し、分離し、さらに評価することができる。このようにして、主として薄い導電層についてであるがバルク材料についても、種々の品質特徴(層厚、層抵抗、材料均一性)を測定することができる。透過集成体(送信コイルと受信コイルとの間の試験体)において最適な分解能が達成され、ただし反射測定の場合には両方のコイルを試料の一方の側に配置することも可能である。コイルの整合された設計および周波数選択によって、様々な侵入深さおよび感度を使用することができる。
【0234】
したがって、原理的にドーピングを測定することのできる多数の測定方法が基本的に存在する。ここで重要であるのは、高速であり無接触で非破壊の方法である。
【0235】
この場合、第1のパラメータを、ドナー基板材料の平均屈折率、または規定された材料変化を生成するためにレーザ放射を横断させるべきドナー基板領域内のドナー基板材料の屈折率、とすることができ、さらにこの場合、第2のパラメータまたは択一的な第1のパラメータを、規定された材料変化を生成するためにレーザ放射を横断させるべきドナー基板領域内の加工処理深さ、とすることができる。第1のパラメータは、好ましくは屈折率特定手段を用いて、特にスペクトル反射を用いて、特定され、かつ/または第2のパラメータは、好ましくはトポグラフィ特定手段を用いて、特に共焦点色距離センサを用いて、特定される。
【0236】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、第1のパラメータは、固体物材料の平均屈折率であり、または規定された改質を生成するためにレーザビームを横断させるべき固体物領域内の固体物材料の屈折率であり、または固体物の規定された個所における、好ましくは規定された固体物深さについての、固体物の透過率である。本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、第2のパラメータまたは択一的な第1のパラメータは、規定された改質を生成するためにレーザビームを横断させるべき固体物領域内の加工処理深さである。本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、第1のパラメータは、屈折率特定手段を用いて、特にスペクトル反射を用いて、特定され、かつ/または第2のパラメータは、トポグラフィ特定手段を用いて、特に共焦点色距離センサを用いて、特定される。
【0237】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、これらのパラメータ、特に第1のパラメータおよび第2のパラメータのためのデータは、データ記憶装置において準備され、少なくとも材料変化生成前に制御装置に供給され、その際に制御装置は、生成すべき材料変化の個々の個所に応じてレーザを調整し、さらにその際に制御装置は、レーザを調整するために好ましくは距離データも処理して距離パラメータを形成し、ここで距離パラメータは、材料変化を生成させるために材料変化時点にドナー基板中にレーザ放射が導入される個々の個所からレーザまでの距離を表し、その際に距離データはセンサ装置によって捕捉される。
【0238】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、パラメータ、特に第1のパラメータおよび第2のパラメータのためのデータは、データ記憶装置において準備され、少なくとも改質生成前に制御装置に供給され、その際に制御装置は、生成すべき改質の個々の個所に応じて、レーザ印加装置を調整する。
【0239】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、改質の個数を、周縁部または中心部までの間隔に応じて、かつ/または書き込み線ごとに、もしくは線状造形物ごとに、変化させることができる。たとえば半径方向で固体物の中心領域において、周縁領域よりも多いまたは少ない改質を生成することができる。周縁領域とは、好ましくは以下のような周囲を取り囲む領域のことであると解される。すなわち、好ましくは0.1mmまで、または0.5mmまたは1mmまたは5mmまたは10mmまたは20mmまで、半径方向で中心に向かって延在する領域であると解される。好ましくは周縁領域において少なくとも1つの個所で、または複数の個所で、特に均一にまたは異なるように分散されて、改質の蓄積が生成され、この場合、改質の蓄積は固体物の周囲すぐ近くの部分よりも、特に、周縁部まで、もしくは蓄積の中心まで、0.1mmまでの半径方向間隔において、または0.5または1mmまたは2mmまたは3mmまたは5mmまたは10mmまたは20mmまたは30mmまたは40mmまでの半径方向間隔において、改質が増やされており、あるいは蓄積の周縁部から離間された部分は、僅かな改質を有する。この蓄積をたとえば、亀裂を誘発させる目的で付加的な局所的応力を生成するために、用いることができる。これに加えて、または別の選択肢として、誘発装置を用いて、特に機械的接触または音波印加、特に超音波印加、またはエネルギー注入により、特にレーザまたはマイクロ波または加熱を用いることで、亀裂、特に主亀裂、を誘発するための応力上昇をもたらすことができる。
【0240】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、固体物は、固体物表面を介して、特にレーザ印加もしくはレーザ処理もしくは改質生成の間、冷却装置と接続されており、この場合、冷却装置と接続されている固体物表面は、レーザビームが固体物中に侵入する際に通過する表面に対し平行にまたは実質的に平行に形成されており、その際に冷却装置は、レーザ印加に依存して、特にレーザ印加により生じる固体物の温度制御に依存して、駆動される。特に好ましくは、固体物が冷却装置と接続されている表面は、レーザビームが固体物中に侵入する際に通過する表面に、厳密に対向して位置している。この実施形態が有利であるのは、改質生成時に生じる固体物の温度上昇を制限または低減できるからである。好ましくは冷却装置は、レーザビームにより固体物中に取り込まれる熱注入が、冷却装置によって固体物から取り去られるように駆動される。これが有利であるのは、これによって熱により誘導される応力または変形の発生を著しく低減することができるからである。したがってこの冷却装置は好ましくは、改質生成中にレーザビームにより固体物中に取り込まれる熱を放熱させるもしくは取り去る冷却装置である。
【0241】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、冷却装置は、固体物の温度を捕捉する少なくとも1つのセンサ装置を有し、予め定められた温度経過特性に応じて固体物の冷却を生じさせる。この実施形態が有利であるのは、センサ装置によって極めて精密に固体物の温度変化を捕捉できるからである。好ましくは温度変化は、冷却装置の動作を制御するためのデータ入力として用いられる。
【0242】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、冷却装置は回転装置に結合されており、冷却装置はそこに配置された固体物と共に、改質生成中、回転装置によって回転し、特に毎分100回転よりも速く、または毎分200回転よりも速く、または500回転よりも速く、回転する。
【0243】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、レーザ、特にfsレーザ(フェムト秒レーザ)またはpsレーザ(ピコ秒レーザ)またはnsレーザ(ナノ秒レーザ)、のレーザビームのエネルギーは、固体物もしくは液晶における物質転移が少なくとも一方の方向で、レイリー長の30倍、または20倍、または10倍、または9倍、または8倍、または7倍、または6倍、または5倍、または4倍、または3倍、よりも小さくなるように、または大きくなるように、選定される。
【0244】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ビーム品質はM2<1.6である。
【0245】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、レーザ、特にfsレーザまたはpsレーザまたはnsレーザ、のレーザビームの波長は、固体物もしくは材料の線吸収が、10cm-1よりも小さくなるように、好ましくは1cm-1よりも小さくなるように、特に好ましくは0.1cm-1よりも小さくなるように、選定される。
【0246】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、改質もしくは欠陥の生成前に、浸漬液が固体物の露出表面に塗布される。次いで改質生成のために、好ましくはワークピースもしくは固体物の印加が、浸漬液を通して行われる。本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、浸漬液の屈折率は好ましくは、固体物の屈折率と少なくとも実質的に一致しており、または一致しており、または正確に一致している。この解決手段が有利であるのは、浸漬液、特にオイルまたは水、を用いることによって、分割または他の表面処理の際に生じる固体物表面の粗さが補償されるからである。したがって浸漬液を使用することによって、特に、欠陥生成前であり固体層の最初の分割後に通常一般的である露出表面の研磨を行うことなく、欠陥もしくは改質を、特にレーザビームを用いて、固体物内に極めて厳密に取り込むことができる。
【0247】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、浸漬液は好ましくは、少なくとも露出表面の半分よりも多くが、好ましくは露出表面全体が、浸漬液によって湿らされるような量で、露出表面上に塗布される。
【0248】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、浸漬液はカバープレートによって以下のように覆われる。すなわち、生成すべき亀裂誘導層とカバープレートとが同じ屈折率を有するように、特に露出表面とカバープレートとの間に空気が含まれないように、覆われる。
【0249】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、カバープレートは少なくとも、固体物の露出表面とは反対側で、露出表面の表面粗さよりも僅かな表面粗さを有する。
【0250】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、浸漬液は液滴として露出表面に塗布され、固体物と改質生成装置との間の相対運動により液滴のポジション変更がもたらされるように、液滴が改質生成装置もしくはレーザ装置の一部分、特に光学素子と接触させられる。別の選択肢として、固体物をウェル内に配置することができ、浸漬液が部分的に、好ましくは完全に、固体物を取り囲み、もしくは固体物の周囲を流れ、特に浸漬液が露出表面の上に完全に重なった層または液体レイヤを形成する。
【0251】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、改質もしくはレーザビームによって固体物の内部に生成される改質は、少なくとも1つの亀裂誘導層もしくは剥離面もしくは剥離領域を予め定め、その際に剥離誘導層は少なくとも3次元の輪郭を描く。外部からの力をもたらす/生成する/導入することで、ワークピースもしくは固体物の内部において亀裂伝播が引き起こされる。亀裂伝播によって好ましくは、3次元の固体層または3次元の固体物が、亀裂誘導層に沿って固体物から分離される。この場合、固体層または固体物の少なくともまたは厳密に1つの表面が、亀裂誘導層の3次元の輪郭もしくは剥離領域によって描かれた輪郭に対応する。したがって本発明によれば、平坦な固体層だけでなく同様に非平坦な固体物もしくは非平坦な固体層も、割れ目または亀裂誘導に起因してワークピースもしくは固体物から取り外すまたは剥離させることができる。
【0252】
したがって本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、亀裂誘導層の形態は、少なくとも部分的に、3次元物体の輪郭、特にレンズまたは平行六面体の輪郭を有する。
【0253】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、欠陥もしくは改質を生成するために、欠陥生成装置もしくは改質生成装置、特にイオン注入装置またはレーザが用いられる。
【0254】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、改質生成前に固体物の露出表面に受容層が被着または生成され、その際に受容層は少なくとも1つの局所的に変化する特性を有し、この場合、改質はレーザのレーザビームにより生成され、その際にレーザビームに対し、改質が少なくとも1つの局所的に変化する特性に依存して生成されるように、受容層によって作用が及ぼされる。したがってこの実施形態によれば、レーザビームは好ましくは受容層を通って直接案内される。受容層を適切に選択すれば、少なくとも1つの輪郭を描く亀裂誘導層を、最初に受容層が特にフィルム状で所望の態様により3D形状において、もしくは3D構造で製造されるように(たとえば射出成形)、生成することができる。その際に受容層は好ましくはポリマーから成り、特に、たとえばいくつかの代表的なシリコーンなどのように、好ましくは光学的に安定した1つのエラストマーまたは複数のエラストマーから成る。固体物上に被着された、特に接着された、受容層によって、欠陥形成時もしくは改質生成時に、すなわちレーザビーム印加時に、この受容層の3D構造もしくは3D形状によって、レーザの光路が適切な態様で変化して、亀裂誘導層を形成する所望の欠陥もしくは改質が生成されるようになる。その際に受容層の局所的に変化する特性は、好ましくは受容層の厚さである。
【0255】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は付加的または択一的に、改質手段を用いて固体物の結晶格子を改質するステップを含むことができる。その際に好ましくは、非平坦な、特に湾曲した、剥離領域を固体物の内部に形成するために、複数の改質が生成される。その際にこれらの改質は好ましくは、予め定められたパラメータに依存して生成される。この場合、予め定められたパラメータは好ましくは、固体物部分の変形と、固体物部分の規定されたさらなる処理との間の関係を表す。
【0256】
この解決手段が有利であるのは、固体物部分が好ましくは、後で行われる加工処理に起因してこの固体物部分が望ましい形状をとるように生成されるからである。したがって固体物部分の材料特性および固体物部分のコーティングに依存して、固体物部分が以下のような形状で生成される。すなわちこの形状によって、少なくとも一方の側に、好ましくは両方の側に、好ましくは平坦なまたは実質的に平坦な多層集成体の表面を作り出す目的で、コーティングの結果として生じた変形が利用される。
【0257】
上述の課題は、付加的または択一的に、多層集成体を製造する方法によって解決される。この場合、多層集成体を製造する方法は好ましくは、以下に挙げるステップのうちの1つ、いくつか、または多数、またはすべてのステップを含む。すなわち、第1の非平坦な形状を有する、特に湾曲した、ウェハを準備するステップ。ウェハの少なくとも1つの表面に別の層を配置または生成するステップ。この場合、別の層とウェハとはそれぞれ異なる熱膨張係数を有し、その際に別の層は、目標温度とは異なるコーティング温度で、ウェハの表面に配置され、またはそこに生成され、さらにこの場合、別の層は、目標温度に到達したときに、ウェハが第1の非平坦な形状から、第1の形状とは異なる第2の形状に変形させられるように、ウェハを印加するように構成されており、その際に第2の形状は好ましくは平坦な形状である。好ましくは、非平坦な固体物は反りを有し、もしくは反りを形成し、この反りは、コーティングにより引き起こされる固体物部分の変形に対しネガ型であり、または実質的にネガ型である。
【0258】
この解決手段が有利であるのは、ウェハの規定された形態によって、好ましくは少なくとも一方の側で好ましくは平坦な多層集成体が得られるように、有利にはコーティングに起因して発生する変形が利用されるからである。特に好ましくは、別の層はエピタキシにより生成される。
【0259】
これに加えて考えられるのは、別の層の配置前または生成前に、ウェハにすでにコーティングが設けられているようにすることである。
【0260】
さらに本発明は付加的または択一的に、非平坦な固体物部分、特に非平坦な、特に湾曲した、ウェハに関する。この場合、非平坦な、特に湾曲した、固体物部分は、好ましくは本明細書で提案される方法に従って製造されたものである。好ましくはこの方法は、以下に挙げるステップのうちの1つ、いくつか、または多数、またはすべてのステップを含む。
【0261】
非平坦な固体物部分を分離するために固体物を準備するステップ。改質手段を用いて、特にレーザ、特にピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザを用いて、固体物の結晶格子を改質するステップ。この場合、結晶格子内に非平坦な剥離領域を形成するために、複数の改質が生成される。これらの改質は好ましくは、予め定められたパラメータに依存して生成される。その際に予め定められたパラメータは好ましくは、非平坦な固体層、もしくは非平坦な分離されたまたは分離すべき固体物、もしくは固体物部分、もしくは非平坦な固体物部分、の変形と、非平坦な固体層、もしくは非平坦な分離されたまたは分離すべき固体物、もしくは固体物部分、もしくは非平坦な固体物部分の規定されたさらなる処理との関係、を表す。次いで、特に1つまたは複数の処理ステップ、特に材料取り付けステップまたは材料被着ステップ、特に1つまたは複数のエピタキシステップ、および/または1つまたは複数のイオン注入ステップ、および/または1つまたは複数のエッチングステップ、の後に間をおいて、または直後に、固体物から固体物部分を剥離するステップが続く。
【0262】
好ましくは、レーザが固体物に取り込まれたときに通過した表面を有する、かつ/または金属層または安定化層および/または電気構成部材を有する、第1の固体物と、第2の固体物もしくは固体物部分とに、固体物を分割した結果、第2の固体物もしくは固体物部分が好ましくは準備処理される。第2の固体物または固体物部分は好ましくは、電気構成部材および/または金属構造物および/または1つまたは複数のエピ層を、そこに生成または配置または形成できるように、処理される。好ましくは、第2の固体物または固体物部分に対し表面処理が施され、この表面処理には、グラインディング、固体物エッジもしくはウェハエッジを準備処理するための、特に固体物エッジもしくはウェハエッジを変形するための、エッジプロセス、および/または化学機械的研磨プロセスが含まれる。次いで1つまたは複数のさらなるステップにおいて、準備処理されたウェハもしくは固体物に、1つまたは複数の層、特に金属層、が配置または形成され、かつ/または電気構成部材が配置または生成される。
【0263】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は付加的または択一的に、少なくとも1つの固体層、特に薄いウェハ、を分割するために、固体物、特に厚いウェハ、を準備するステップと、レーザを用いて、もしくはレーザビームを用いて、第1のグループの欠陥もしくは改質を生成し、固体層が固体物から分離されるときに辿る第1の剥離面を予め定めるステップとを含む。
【0264】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は付加的または択一的に、別の改質を生成し、またはレーザを用いて、もしくはレーザビームを用いて、第2のグループの改質を生成し、少なくとも1つの第2のまたは別の剥離面を予め定めるステップを含む。その際に第1の剥離面と第2の剥離面とは、好ましくは傾斜して、特に直交して、互いに配向されている。固体層は好ましくは、外部からの力を印加もしくは導入した結果として、第1の剥離面に沿って残りの固体物から剥離される。分離された固体層は、特に、別の層または構造物、特に電気構成部材、がそこに配置されることなく、またはそこに配置されて、別の、特に後続のステップにおいて、第2の剥離面に沿って分割され、固体素子が個別化される。
【0265】
この方法が有利であるのは、互いに直交する複数の平面に改質が生成されることによって、重大な材料損失を伴うことなく、固体構造物もしくは固体層構造物が規定どおりに弱められるようになるからであり、このことから有利な態様で目標破断個所が規定され、この個所に沿って、応力を用いて誘導される亀裂を導くことができる。
【0266】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの第3のグループもしくはさらに別のグループの欠陥もしくは改質が生成されて、少なくとも1つの、好ましくは複数の、第3の剥離面が、レーザもしくはレーザビームを用いて予め定められる。好ましくは第3の剥離面各々は、第1の剥離面に対し直交して、かつ上述の第2の剥離面もしくは1つの第2の剥離面に対し直交して、配向されている。固体層は分離後、好ましくは固体素子の個別化のために、第2の剥離面に沿って、さらに第3の剥離面に沿って、分割もしくは分離される。好ましくは、複数の第3の剥離面が生成され、これらの剥離面は、複数の第2の剥離面と共働して、1つの好ましくは格子状のパターンを形成し、これによって固体物を形成するもしくは共に形成する個々の固体素子相互の境界が定められる。この実施形態が有利であるのは、格子状のパターンは格子状の目標破断個所を成し、この個所に沿って、多数の個々の固体素子を簡単かつ規定どおりに互いに分離できるからである。その際に可能であるのは、第2の剥離面同士が常に同じ間隔を有するように、または部分的にまたは完全に異なる間隔を有するようにすることである。その際に可能であるのは、第3の剥離面同士が常に同じ間隔を有するように、または部分的にまたは完全に異なる間隔を有するようにすることである。ただし好ましくは、第2の剥離面同士は常に同じ間隔を有し、かつ好ましくは第3の剥離面同士は常に同じ間隔を有する。好ましくは、第2の剥離面同士の間隔は、第3の剥離面同士の間隔よりも大きいか、またはそれと等しい。
【0267】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、固体層を剥離するための応力は、固体物に配置された少なくとも1つの受容層に、特にポリマー層に、熱的衝撃を印加することによって固体物から生成される。熱的衝撃印加は好ましくは、受容層もしくはポリマー層を周囲温度まで、または周囲温度よりも低くなるまで冷却することであり、好ましくは10℃よりも低くなるまで、特に好ましくは0℃よりも低くなるまで、さらに好ましくは-10℃よりも低くなるまで、冷却することである。ポリマー層の冷却は最も好ましくは、好ましくはPDMSから成るポリマー層の少なくとも一部分にガラス転移が起こるように行われる。この場合、冷却を、-100℃よりも低くなるまでの冷却とすることができ、これをたとえば液体窒素によって生じさせることができる。この実施形態が有利であるのは、ポリマー層は温度変化に依存して収縮し、かつ/またはガラス転移し、その際に発生する力が固体物に伝わるからであり、それによって固体物において機械的応力を生成可能であり、その結果、亀裂の誘発および/または亀裂伝播が引き起こされ、その際に亀裂は最初に第1の剥離面に沿って伝播して、固体層を分割させる。
【0268】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ポリマー層は、この層が第1の方向および/または第2の方向で形状変化を受けるようにして印加され、ここで第1の方向における形状変化は、第2の剥離面に沿った固体素子相互の剥離を引き起こし、第2の方向における形状変化は、第3の剥離面に沿った固体素子の剥離を引き起こす。この実施形態が有利であるのは、いずれにせよすでに分離された固体層に配置されている、もしくは付着されているポリマー層が、固体物から固体層を分離する役割および分離された固体層を受容する役割を果たすだけでなく、固体素子の個別化のためにもさらに利用されるからである。したがってこのことは、著しいプロセス単純化および著しいプロセス加速を意味し、これによって個々の固体素子を著しく安価にかつ迅速に製造することができる。
【0269】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、ポリマー層の形状変形は、第1の方向および/または第2の方向において半径方向の伸長を表し、これは機械的負荷および/または熱的衝撃印加に起因して引き起こされる。したがってポリマー層の形状を、好ましくは様々な態様で変化させることができ、このことによって高いプロセスフレキシビリティがもたらされる。好ましくはポリマー層は、1つまたは複数の方向に引っ張られ、押圧され、かつ/または曲げられる。ただしこれに加えて、または別の選択肢として、ポリマー層が伸長するようにこの層を温度制御することも考えられる。
【0270】
好ましくは、第2の剥離面を形成するための、かつ/または第3の剥離面を形成するための改質は、好ましくは部分的に第1の剥離面の下方に、かつ/または部分的にこの剥離面の上方に、特に第1の剥離面と、固体物中に第1の剥離面を生成するためにレーザビームが侵入したときに通過した表面との間の領域に、生成もしくは取り込まれる。好ましくは第2の剥離面および場合によっては第3の剥離面は、第1の剥離面に対し直交して延在する。したがって特に好ましくは、分離すべき固体層の好ましくは露出した表面に対し、もしくは固体物中に第1の剥離面を生成するためにレーザビームが侵入したときに通過した表面に対し、様々な間隔で改質が生成される。ここで部分的に下方ということが意味するのは、第2の剥離面および場合によっては第3の剥離面を形成するための改質が、大半は第1の剥離面の上方に生成される、ということであり、もしくはこの領域において、剥離面の下方よりも多くの、好ましくは少なくとも2倍の、または少なくとも3倍の、または少なくとも5倍の個数の改質を有する、ということである。この場合、第2および/または第3の剥離面の改質を、第1の剥離面の下方、好ましくは200μmまでに、特に100μmまでに、または75μmまでに、または50μmまでに、または25μmまでに、または10μmまでに、または5μmまでに、生成することができる。この場合、第2および/または第3の剥離面の改質を、第1の剥離面の下方、好ましくは少なくとも1μmに、または少なくとも5μmに、または少なくとも10μmに、または少なくとも15μmに、または少なくとも25μmに、または少なくとも50μmに、生成することができる。
【0271】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は付加的または択一的に、圧力印加装置の少なくとも1つの圧力印加部材を、応力生成層もしくは受容層の少なくとも1つの予め定められた部分に押圧して、応力生成層もしくは受容層を表面に押圧するステップを含む。その際に固体レイヤもしくは固体層をドナー基板もしくは固体物から分離するステップは、好ましくは応力生成層に熱的衝撃を印加することによって行われる。その際に好ましくは、機械的応力がドナー基板に生成される。この機械的応力によって、固体レイヤもしくは固体層を分離するための亀裂が発生する。好ましくは圧力印加部材は、応力生成層への熱的衝撃印加中、応力生成層に押圧される。これによって好ましくは、亀裂伝播速度の低減が達成されるようになる。
【0272】
この解決手段が有利であるのは、応力生成層により生成された機械的応力が他の力に抗してはたらくならば、亀裂が極めていっそう厳密に1つの望ましい剥離領域もしくは1つの望ましい剥離面もしくは1つの望ましい剥離輪郭に沿って推移する、ということが認識されたからである。その結果、垂直方向の亀裂成分が圧力印加によって低減され、もしくは抑圧されることになる。つまり、平面から出た、もしくは剥離面から出た亀裂の突発が低減され、つまりは著しく平坦な亀裂推移が生じ、このことによって全体的な有用性もしくは歩留まりもしくは産出高が上昇し、かつ/またはレーザ改質もしくはレーザ印加の個数を低減することができる。つまり同じもしくは同等のレーザ印加によって材料損失が低減され、またはレーザ加工処理時間もしくはレーザ利用を、産出高を変えることなく低減することができる。この解決手段がさらに有利であるのは、分割プロセスすなわち温度制御の開始からウェハもしくは固体ディスクが完全に剥離されるまでの期間を、大幅に短縮できるからである。熱的結合が著しく改善された結果として、このことが得られる。この場合、好ましくは、圧力印加部材を介してドナー基板に熱的衝撃を印加した結果として、著しく改善された熱的結合が得られる。その際に圧力印加部材は好ましくは、ドナー基板および/または受容層から、特にポリマー層から、熱を取り去るためにも、もしくはそれらを冷却するためにも、用いられる。分割プロセスを、10分を超える時間から1分を下回る時間まで短縮することができ、もしくは著しく低減することができる。しかも、短縮された分割プロセス時間が有利であるのは、ライン制御が、すなわち相前後して行われる処理のライン制御が著しく改善されるからであり、特にそれらの処理は、レーザ印加、ドナー基板における受容層の配置もしくはラミネート、分割プロセスの実施、さらには分離の結果として生成されたもしくは露出した1つまたは複数の表面の表面処理、特にグラインディング、から成る。
【0273】
本発明による解決手段がさらに有利であるのは、ドナー基板に電子的な構成部材を配置または生成しておくことができ、それらが分割の際に固体層もしくはウェハの変形によって損傷させられる可能性がなく、もしくは損傷のリスクを大幅に低減できるからである。したがって分割時の固体層もしくはウェハの撓みが低減され、特に完全に回避される。つまり固体層もしくはウェハは、好ましくは20°よりも僅かにしか撓まず、または15°よりも僅かに、または10°よりも僅かに、または5°よりも僅かに、または1°よりも僅かに、または0.5°よりも僅かにしか撓まない。好ましくはウェハもしくは固体層の撓みは、少なくとも圧力印加手段により印加された領域もしくは部分において、好ましくは20°よりも僅かに制限され、または15°よりも僅かに、または10°よりも僅かに、または5°よりも僅かに、または1°よりも僅かに、または0.5°よりも僅かに、制限される。
【0274】
応力生成層は、熱的衝撃印加の結果、収縮し、これによって応力生成層からドナー基板に引張力が導入される。この場合、加えられる圧力は引張力に対抗してはたらき、それによって力のピークが低減され、亀裂が極めて規定どおりに伝播する。
【0275】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、圧力印加部材は圧力印加中、少なくとも部分的に平面的に応力生成層と接触した状態にある。その際に好ましくは圧力印加部材は、20%よりも多く、または30%よりも多く、または50%よりも多く、または75%よりも多く、または90%よりも多く、または完全に、軸線方向でドナー基板の境界を形成する表面と重なり合っており、この表面は分離後に固体レイヤの構成部分となる。その際に好ましくは圧力印加部材は、この表面に配置または生成された応力生成層に当接している。その際に好ましくは圧力印加部材は、ドナー基板と軸線方向で重なり合っている応力生成層の表面の20%よりも多くと接触しており、または30%よりも多くと、または50%よりも多くと、または75%よりも多くと、または90%よりも多くと、接触している。
【0276】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの圧力印加部材は、周縁領域に圧力を生成し、この場合、周縁領域は好ましくは、ドナー基板に配置された応力生成層の表面のうち、半径方向で外側の、もしくは中心から離れた、もしくは周縁部に近い、5%または10%または15%または20%または30%または40%または50%または60%または70%または80%を含み、かつ/または少なくとも1つの圧力印加部材は、中心領域に圧力を生成し、この場合、中心領域は好ましくは、ドナー基板に配置された応力生成層の表面のうち、半径方向で内側の、もしくは中心に近い、もしくは中心まで延在する、5%または10%または15%または20%または30%または40%または50%または60%または70%または80%を含み、または少なくとも1つの圧力印加部材は、圧力生成層が配置されたドナー基板の表面の平坦な部分全体にわたり、圧力を生成する。この実施形態が有利であるのは、亀裂伝播に作用を及ぼすための圧力を必要に応じて印加できるからである。
【0277】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、圧力印加部材は基板の直径に応じて、少なくとも10N、特に100N~3000N、または3000N~10000N、または100kNまでの圧縮力を、応力生成層にもたらす。
【0278】
この解決手段が有利であるのは、一方では応力生成層により生成される力に対し所期のように対抗させることができるが、他方では亀裂伝播および亀裂誘発が可能だからである。
【0279】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、圧力印加部材が可動に配置されており、好ましくは応力生成層への熱的衝撃印加に起因して、応力生成層によりドナー基板に対し相対的に偏向させられ、またはドナー基板が可動に配置されており、応力生成層への熱的衝撃印加に起因して、応力生成層により圧力印加部材に対し相対的に偏向させられる。好ましくは、圧力印加部材および/またはドナー基板は、ドナー基板の軸線方向で偏向可能もしくは変位可能である。本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、圧力印加部材の偏向は、予め規定された最小力を超過してから初めて生じる。この実施形態が有利であるのは、発生する力のピークをどのくらい強く低減すべきであるのかを、予め規定された最小力によって著しく精密に調整できるからである。
【0280】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、複数の圧力印加部材が設けられており、この場合、個々の圧力印加部材は、局所的に異なる圧力をもたらすために用いられ、かつ/またはそれぞれ異なる形状および/または接触面寸法を有し、かつ/またはそれぞれ異なる大きさで偏向可能であり、もしくはそれぞれ異なる大きさで偏向させられ、かつ/またはそれぞれ異なる力で偏向可能であり、もしくは偏向させられる。この実施形態が有利であるのは、圧力印加の最適な調整のために複数のパラメータを利用できるからである。
【0281】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、1つの圧力印加部材または複数の圧力印加部材を、予め規定された押圧力推移を生成するために、応力生成層に押圧可能であり、この場合、押圧力推移は少なくとも部分的に、圧力がもたらされた個所からドナー基板の軸線方向中心までの距離、および/または亀裂伝播速度、および/または熱的衝撃印加、および/またはドナー基板の材料、および/または特にレーザビームを用いたドナー基板のコンディショニング、に依存する。
【0282】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、圧力印加部材はそれぞれ、少なくとも10N、特に100N~3000N、または3000N~10000N、または100kNまでの圧縮力を、応力生成層にもたらす。好ましくは、時間的に同時に2つの圧力印加部材を使用した場合の圧力印加は、最大または少なくとも0.1の係数だけ、あるいは最大または少なくとも0.3、あるいは最大または少なくとも0.5、あるいは最大または少なくとも0.75、あるいは最大または少なくとも1.5、あるいは最大または少なくとも2、あるいは最大または少なくとも5、あるいは最大または少なくとも10、あるいは最大または少なくとも20の係数だけ、互いに隔たっている。したがって圧力印加部材の偏向は好ましくは、予め規定された最小力を超過してから初めて生じる。この実施形態が有利であるのは、個々の圧力部材によって発生する力のピークをどのくらい強く低減すべきであるのかを、予め規定された最小力によって著しく精密に調整できるからである。
【0283】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は付加的または択一的に、以下のステップのうちの1つまたは複数を含む。すなわち、軸線方向でドナー基板の境界を成す、特に平坦な、ドナー基板の表面に、応力生成層を生成または配置するステップ。分離中に応力生成層と接触状態にするために、応力生成層に対し予め定められた間隔で、または剥離領域に対し予め定められた間隔で、圧力印加装置の圧力印加部材を配置するステップ。応力生成層に熱的衝撃を印加することにより固体レイヤをドナー基板から分離するステップ。その際に好ましくは、機械的応力がドナー基板に生成される。好ましくは、機械的応力により固体レイヤの一部分が偏向させられる。その際に好ましくは、固体レイヤを分離するための亀裂が発生する。好ましくはこれによって、固体レイヤの少なくとも1つの分離された部分が、応力生成層に基づき圧力印加部材の方向に偏向させられ、もしくは圧力印加部材に対して押圧される。好ましくは、圧力印加部材は固体レイヤの最大偏向を制限する。
【0284】
好ましくは圧力印加部材の接触面は、軸線方向で応力生成層の表面に対し、ドナー基板の軸線方向中心とドナー基板の(半径方向)周囲面との間の最短距離よりも短い間隔で、配置されている。好ましくはこの間隔は、ドナー基板の軸線方向中心とドナー基板の(半径方向)周囲面との最短距離の長さの0.001倍~0.9倍にあり、特に0.001倍から0.5倍、または0.001倍~0.1倍にある。特に好ましくは、圧力印加部材の接触面と応力生成層の表面との間の間隔は、5cmよりも短く、特に2cmよりも短く、または1cmよりも短く、または0.5cmよりも短く、または0.1cmよりも短い。
【0285】
少なくとも部分的に処理されたウェハ(電子デバイスの前段階)を分離する場合には、表面の曲げを回避するのが有利になり得る。特に有利であるのは、ドナー基板の処理された表面もしくは処理された層、特にデバイスレイヤ層が曲げられないこと、またはごく僅かにしか曲げられないこと、ポリマーもしくは受容層は別のドナー基板表面に配置されていること、もしくはポリマーもしくは受容層は処理される層には配置されていないことである。したがって受容層もしくはポリマー層の温度制御は、ドナー基板から複数の固体層もしくはウェハが分離される場合には少なくとも、処理すべき層に対し最小間隔で行われ、その際にこの最小間隔は好ましくは、受容層もしくはポリマー層の厚さの数倍であり、特に少なくとも2倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍である。このことが有利であるのは、処理される層の熱的負荷が著しく低減されるからである。
【0286】
さらに有利になり得るのは、発生した薄い構成素子ウェハもしくは処理された層を、さらなる処理のために搬送ウェハ上にじかにボンディングすることである(この搬送ウェハをたとえば、さらなる安定化のためにやはり保持装置によって保持することができる)。その際にこのボンディングは、好ましくは直接的なボンディングによって、または一時的にボンディングテープを用いて行われ、この場合、たとえば放射を用いて、特にUV放射を用いて、または熱を用いて、特に20℃よりも高い、または50℃よりも高い、または100℃よりも高い、特に110℃までの、または200℃までの、または500℃までの温度を用いて、あるいは択一的な処理によって、接合を解除することができる。この解決手段は好ましくは、これまで説明してきた実施形態のうちのいくつかまたはすべてと、特に請求項1に関する好ましい実施形態と、組み合わせることができる。
【0287】
冒頭で述べた課題は、固体ディスクをドナー基板から分離する装置によっても解決される。その際にこの装置は好ましくは、ドナー基板の内部に改質を生成して剥離領域を形成し分離亀裂を誘導するための、少なくとも1つのレーザ装置と、ドナー基板上に被着された応力生成層を冷却して分離亀裂を誘発するための、温度制御装置と、分離亀裂伝播中にドナー基板に配置された応力生成層に圧力を印加するための、少なくとも1つの圧力印加部材を備えた圧力印加装置とを含む。このようにすれば好ましくは、垂直方向の亀裂成分が抑圧される。これによって、平面から出て亀裂が突発することが僅かになり、その結果としていっそう高い歩留まりが生じ、かつ/または僅かなレーザ印加しか必要なくなる。さらに力の印加によって、著しく改善された熱的結合がもたらされ、他方、このことによって、大幅に短縮された分割時間がもたらされる。短縮された分割時間によって、他のプロセスといっそう良好にタイミングを合わせられるようになる。その理由は、このような力の印加がなければ分割時間は分割ごとに10分を超えていたが、力を印加することで1分よりも短くなったからである。したがって全体として、ライン制御を著しく改善させることができ、この場合、ライン制御には、以下の処理ステップのうちの2つまたはそれよりも多くのステップが含まれる。すなわち、レーザを用いて固体物もしくはドナー基板の内部に改質を生成するステップ、および/または特にラミネート装置を用いて、ドナー基板にポリマーフィルムを被着するステップ、および/または特に冷却装置または超音波装置を用いて、外部からの力をドナー基板中に及ぼすことによって、改質により生成された剥離面もしくは剥離領域の範囲内で、またはこれに沿って、ドナー基板を分割するステップ、および/または特にグラインダなどの切削加工装置および/または化学的な特にエッチングによる表面処理を用いて、分割により露出させられた残された残留ドナー基板の表面の表面処理もしくは表面準備処理を実施するステップ。
【0288】
本発明による解決手段がさらに有利であるのは、力の印加によって、分離すべきもしくは分離された固体層の曲がりが最小限に抑えられ、もしくは完全に回避されるからである。これによって、半製品または完成品の機能コンポーネント、特に、たとえばトランジスタまたは抵抗またはプロセッサといった手段(デバイス)が配置もしくは生成されている固体層を、特に複合構造物を、ドナー基板から分割することも可能になる。さらに手段平面(デバイス平面)においていっそう高い温度が可能であり、これによって手段が損傷するリスクも低減される。よって、MEMSおよび/または化合物ウェハを処理するためのプロセスの大幅な改善がもたらされる。
【0289】
圧力印加部材は、応力生成層の表面と接触させるための接触表面を有する。温度制御装置は、好ましくは冷却装置であり、特に、少なくとも1つまたは厳密に1つの機能液、特に液体窒素または霧状窒素、を供給する装置である。少なくとも1つの圧力印加部材に、加熱素子が設けられている。
【0290】
さらに、2016年12月7日にドイツ特許商標庁に提出された特許出願第2016123679.9号の内容全体が、ここで参照したことにより本明細書の内容に取り込まれるものとする。
【0291】
本発明のさらに別の利点、目的および特徴は、本発明による分離方法が例示的に描かれている添付の図面についての以下の記述に基づき説明される。この場合、本発明による方法において好ましくは使用される、かつ/または各図面において機能の点で少なくとも実質的に一致している構成部材または要素は、同じ参照符号を用いて表されている場合があり、ただしそれらの構成部材または要素には、すべての図面において参照符号が必ずしも振られているわけではなく、または必ずしもそれらの構成部材または要素ついて説明されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0292】
【
図1】
図1a~
図1fは本発明による処理手順を示す図である。
【
図2】
図2a~bは、本発明に従って準備可能であるような固体物集成体に関する2つの概略的な例を示す図である。
【
図3】
図3a~iは、本発明による固体物集成体、もしくは本発明による方法において中間生成物として生成可能な固体物集成体に関するさらに別の概略的な例を示す図である。
【
図4】改質により形成された2つの線を概略的に示す図である。
【
図5】
図5a~
図5dは、好ましくは冷却のために本発明による方法において使用可能な種々の冷却装置を示す図である。
【
図6】
図6a~cは、改質間の亀裂伝播に関する種々の例を概略的に示す図である。
【
図7】種々の機能を生じさせるためにそれぞれ異なるように配向された改質線を示す図である。
【
図8】ショットキーダイオードの例を示す図である。
【
図10】
図10a~cは、周縁部から固体物内部へと延在する凹部の生成について示す図であって、これらの凹部が好ましくは改質9によって規定された剥離面に沿って延在する様子を示す図である。
【
図11】本発明による固体ディスク製造もしくは固体層製造において周縁部を処理するための第1の例を示す図である。
【
図12】本発明による固体ディスク製造もしくは固体レイヤ製造において周縁部を処理するための例を示す図である。
【
図13】本発明による固体ディスク製造もしくは固体レイヤ製造において周縁部を処理するためのさらに別の例を示す図である。
【
図14】レーザビームにより改質が生成される場合に、改質生成において固体物において発生する問題を示す図である。
【
図16】
図16a/
図16bは、改質生成ステップを示す図および生成された改質を概略的に示す図である。
【
図18】光学収差整合を伴う改質生成について示す図である。
【
図19】応力生成層によって覆われるもしくは重畳されるもしくは閉鎖される凹部を有する固体物を概略的に示す図である。
【
図20】
図20a~
図20dは、本発明による固体ディスク製造において周縁部を処理するためのさらに別の例を示す図である。
【
図21】長手軸線に対し90°とは異なる角度で配向された結晶格子面および生成されたレーザ書き込み線を有するドナー基板を示す図である。
【
図22】長手軸線に対し90°とは異なる角度で配向された結晶格子面および生成されたレーザ書き込み線を有するさらに別のドナー基板を示す図であって、レーザ書き込み線もしくは線状造形物が複数の平面によって規定されている様子を示す図である。
【
図23】線状造形物の改質が複数の種々の結晶格子面と交差している様子を示す図である。
【
図24】4HSiCに関してすべり面と共に結晶格子の一例を示す図である。
【
図25a】Siに関してすべり面110と共に結晶格子の一例を示す図である。
【
図25b】Siに関してすべり面100と共に結晶格子の一例を示す図である。
【
図25c】Siに関してすべり面111と共に結晶格子の一例を示す図である。
【
図26a】レーザ装置の下で回転装置によりドナー基板が前方へ移動させられたときに、結晶面の終端に対し線状造形物の傾斜が変化する様子を示す図である。
【
図26b】レーザ装置の下で回転装置によりドナー基板が前方へ移動させられたときに、結晶面の終端に対し線状造形物の傾斜が変化する様子を示す図である。
【
図27a】レーザ装置の下で回転装置によりドナー基板が前方へ移動させられたときに、結晶面の終端に対し線状造形物の傾斜が変化する様子を示す図である。
【
図27b】例示的な回転装置を上から見た図である。
【
図27c】好ましくは直線的に走行可能なレーザ素子と、複数のドナー基板が上に載置された回転装置とを有する、処理装置の側面図である。
【
図28a】3次元の亀裂誘導層を生成する様子を示す図である。
【
図28b】3次元の固体物を生成するためにさらに別の亀裂誘導層を生成する様子を示す図である。
【
図29a】固体物に欠陥を生じさせるための概略的な構造を示す図である。
【
図29b】固体物から固体層が分離される前の層集成体を概略的に示す図である。
【
図29c】固体物から固体層が分離された後の層集成体を概略的に示す図である。
【
図30a】レーザ放射を用いた欠陥検出の第1のバリエーションを概略的に示す図である。
【
図30b】レーザ放射を用いた欠陥検出の第2のバリエーションを概略的に示す図である。
【
図31a】本発明による非平坦なウェハを概略的に示す側面図である。
【
図31b】上にコーティングが配置または生成された本発明による非平坦なウェハを概略的に示す側面図である。
【
図31c】規定された温度制御後の本発明による多層集成体の好ましい形態を概略的に示す側面図である。
【
図32】本発明によるレーザ印加装置の一例を示す図である。
【
図33a】本発明による装置の一例を示す図である。
【
図33b】固体物に配置されたポリマー層に機能流体を印加する様子を示す図である。
【
図34a】固体物の表面プロフィルとこの表面プロフィルの屈折率とを例示的に示す図である。
【
図34b】表面プロフィルを示す複数のダイアグラムである。
【
図35a】レーザヘッドの正規ポジションの変化を示す複数のダイアグラムである。
【
図35b】それぞれ異なる改質分布のプロフィルを表す2つの経過特性を示す図である。
【
図36a】好ましくは本発明に従い用いられるような、特に好ましくは本発明による装置の構成部分であるような、ラマン機器の概略的な構造を示す図である。
【
図36b】SiCの格子振動の種々の例示的な振動状態を示す図である。
【
図37】
図37a/bは、固体物中のドーピング濃度を描いた2つのグラフを示す図である。
【
図38a】本発明によるフィードフォワードプロセスを示す図である。
【
図38b】本発明によるフィードバックプロセスを示す図である。
【
図40a】固体物の概略的上面図および概略的側面図である。
【
図41】剥離面を規定する欠陥のさらに別の配置を概略的に示す図である。
【
図42a】複数の第2の剥離面が形成される一例を概略的に示す図である。
【
図42b】第2の剥離面および第3の剥離面の形成に関するさらに別の例を概略的に示す図である。
【
図43】ポリマー層に配置された第2の剥離面を有する固体層を示す図である。
【
図44a】固体素子に分割される前の固体層を示す図である。
【
図44b】固体素子に分割された後の固体層を示す図である。
【
図45a】応力生成層が設けられたドナー基板に、圧力印加装置により圧力を印加する装置を概略的に示す図である。
【
図45b】
図45aによる装置を概略的に示す図であって、ドナー基板がその内部でレーザビームによって改質された様子を示す図である。
【
図46】分離された固体層部分の撓み運動を制限する装置を概略的に示す図である。
【
図47】複数の圧力印加部材を備えた圧力印加装置を概略的に示す図である。
【
図48a】応力生成層の種々の表面部分にそれぞれ異なる圧力を印加する装置を概略的に示す図である。
【
図48b】応力生成層の種々の表面部分にそれぞれ異なる圧力を印加し、かつ固体ディスクの撓み運動を制限する装置を概略的に示す図である。
【
図49】すべてが同じ直径を有する複数の固体層を分離するための厚いウェハを概略的に示す断面図である。
【
図50】すべてがそれぞれ異なる直径を有する複数の固体層を分離するための厚いウェハを概略的に示す断面図である。
【
図51】
図51a~dは、それぞれ異なる直径を有する複数のウェハを様々な描き方で示す図である。
【
図52】1つの関数を示す図であって、この関数に依存して、金属によりコーティングされた表面を通して固体物中にレーザビームを導入させることを示す図である。
【
図53】改質生成中の書き込み経路の2つの例を示す図である。
【
図54】
図54a~bは、構成部材、注入領域、ドーピング、エッチングトレンチなどが焦点スポットにもたらす作用を説明するための例を示す図である。
【
図55】構成部材、注入領域、ドーピング、エッチングトレンチなどが焦点スポットにもたらす作用を説明するためのさらに別の例を示す図である。
【
図56】構成部材、注入領域、ドーピング、エッチングトレンチなどが焦点スポットにもたらす作用を説明するためのさらに別の例を示す図である。
【
図57】構成部材、注入領域、ドーピング、エッチングトレンチなどが焦点スポットにもたらす作用を説明するためのさらに別の例を示す図である。
【
図58】レーザビームを用いて固体物の内部に改質を生成する時点を示す図であって、それらの改質がフロントサイドプロセスにおいて生成される様子を示す図である。
【
図59】レーザビームを用いて固体物の内部に改質を生成する時点を示す図であって、それらの改質がバックサイドプロセスにおいて生成される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0293】
図1aには、固体物1、特にウェハを準備する様子が示されている。
【0294】
図1bによれば、準備された固体物1が工具支持体(チャック)3に、結合もしくは接着または溶接または螺合またはクランプまたは表面乾燥または凍結されており、あるいは真空により吸引されており、その際に工具支持体は好ましくは冷却機能を含み、それによって好ましくは冷却装置3となる。この場合、凍結は、流体の固化を介して行われ、特に液体、特に水、あるいは(すべてのケースにおいて1barの周囲圧力に関して)50℃未満、または30℃未満、または20℃未満、または10℃未満、または5℃未満、または0℃未満、または-10℃未満、または-20℃未満、または-50℃未満の固化温度または凝固温度を有する1つまたは複数の材料の固化を介して行われる。さらにこの場合、表面乾燥とは好ましくは、湿気の放出または湿気の除去による固化のことを意味する。さらにこの場合、2つの作用または2つよりも多くの作用により、たとえば吸引とクランプ、またはクランプと接着、またはクランプと螺合と表面乾燥とにより、固体物をチャックに固定することも可能である。チャックもしくは工具支持体は、特に好ましくは真空チャックとして形成されている。固体物1は好ましくは長手方向において、好ましくは長手方向で表面5とは反対側に位置するこの固体物1の下面で、冷却装置3に固定されており、特に接着されている。したがって、分離すべき固体層の構成部分である表面5を介して改質9を生成するために、レーザビームが冷却装置3の方向で固体物1中に導かれる。特に好ましくは、さらに表面5の高温処理が行われ、特に固体物表面5にエピタキシャル材料が配置され、その結果として好ましくは、1つの別の層145または複数の別の層145が生じる。少なくとも1つの高温方法は好ましくは、エピタキシ法、ドーピング法、またはプラズマを使用して行われる方法であって、この場合、高温方法によって、特にエピタキシ法のケースでは、少なくとも1つの層145が固体物1上に生成され、その際に少なくとも1つの生成された層145は、予め定義されたパラメータを有し、ここで少なくとも1つの予め定義されたパラメータによって、レーザ光波の屈折および/または吸収および/または反射の最大の度合いが予め与えられ、ただし屈折および/または吸収および/または反射の度合いは5%未満であり、好ましくは1%未満であり、特に好ましくは0.1%未満である。さらに、生成された層145もしくは生成された複数の別の層145を、好ましくは無金属とすることができる。
【0295】
図1cには、レーザビームを用いた改質9の生成が概略的に示されている。この場合、レーザビームは、好ましくは事前に高温方法によって生成された層145を介して、固体物1中に侵入する。ただし別の選択肢として、開放されている、すなわち別の層145によって被層されていない固体物1の表面を介して、特に下方から、レーザビームを固体物1中に侵入させる、ということも考えられる。この場合、固体物1は、好ましくは側方で、または外側の端部(幅方向および/または深さ方向)で保持される。
【0296】
図1dには、改質9生成後の固体物1の断面が概略的に示されている。この例によれば、4つの亀裂部分25、27、28、29を引き起こす改質9から、4つのブロックを見分けることができる。改質9を伴うブロックと隣り合って、参照符号41、42、43、44および45はそれぞれ、改質9のない領域を表し、または改質9においてブロックが生成されている領域内よりも改質9が僅かにしか生成されていない領域を表す。
【0297】
図1eに示されている状態によれば、表面5に配置された、または表面5において事前にエピタキシャル成長により生成された別の層に配置された別の構成部材(図示せず)のところに、特にポリマー材料を有する受容層が配置または生成される。受容層は好ましくはフィルムとして生成されたものであり、それらの生成後、表面5に結合され、特に接合されたものであるか、または接着されたものである。ただし、液状のポリマーを表面5に塗布し、次いで固化することによって、受容層を形成することもできる。
【0298】
改質を生成するステップと受容層を取り付けるステップとの間において、好ましくは別の層150および/または構成部材150が、表面5に、または事前に行われた高温方法中にすでに表面5に生成された別の層145に、配置もしくは生成される。
【0299】
図1fには、受容層の温度制御の様子が概略的に示されている。好ましくは受容層は、周囲温度よりも低い温度まで、特に20℃未満、または1℃未満、または0℃未満、または-10℃未満、または-50℃未満または-60℃未満の温度まで、温度制御され、特に冷却される。この場合、冷却の結果として受容層140の材料に、ガラス転移または結晶化が引き起こされる。好ましくは受容層の温度制御は、液体窒素によって、特に霧状の液体窒素によって行われる。温度制御に起因して、特にガラス転移に起因して、受容層が収縮し、それによって固体物1において機械的応力が生成される。機械的応力に起因して、亀裂部分25、27、28、29を結合する亀裂が引き起こされ、これによって固体物部分12が固体物1から分離される。
【0300】
図2aに示されている実施形態によれば、受容層140が固体物表面に配置されており、この表面は、これに対し平行な、または好ましくは実質的に平行な、または完全に平行な表面5よりも、改質からいっそう離れたところに離間されている。好ましくは表面は、(
図1b~
図1fと同様に)別の層145を有する。別の層145または露出した表面5に、好ましくは構成部材150または別の材料層150が配置される。好ましくは、別の材料層150または構成部材150の露出した表面に、安定化層および/または保護層142が配置または生成される。この場合、構成部材150をたとえば鋳造することができ、特にポリマー材料および/またはセラミック材料によって鋳造することができる。これに加えて想定可能であるのは、安定化層および/または保護層142に安定化機構を、特に別のウェハを、たとえばガラスウェハなどを、結合することであり、特に接着もしくは接合することである。この場合、安定化層および/または保護層142、あるいは安定化層および/または保護層142および安定化機構によって、構成部材150もしくは別の材料層150が分離の際に、または分離後に、ほとんどまたはまったく変形しない、という作用がもたらされる。分離の際には、受容層140によって生成される力によって変形が引き起こされる可能性があり、分離後は、残された改質によって、特に物質の転移によって、変形が引き起こされる可能性がある。それらの改質は、物質の転移が生じるケースでは、圧縮力を発生させる作用をもたらし、このことから、安定化層/安定化機構がなければ、分離された固体層の湾曲(BOW)が結果として生じてしまうであろう。このため安定化層142を、付加的または択一的に、ガラスウェハまたはケイ素ウェハとして、または金属層として、形成しておくことができ、あるいは安定化層142に付加的または択一的に、ガラスウェハを配置しておくことができ、もしくは配置することができる。安定化層142が金属層として実装されるならば、これを接合することができ、特に接着することができる。別の選択肢として、金属層142を特にスパッタリングにより複合構造物のところに生成することができる。
【0301】
その後、分離された固体層と、そこに配置された安定化層および/または保護層142と、場合によってはそこに配置された安定化機構とから成るユニットが、好ましくは応力除去のためにさらに処理される。特に好ましくは、安定化層142または安定化機構によって保持機構が形成され、この保持機構を用いて、分離された固体層を、材料切除処理のために材料切除装置に対し、特に研磨装置および/またはポリッシング装置に対し、固定可能である。次いで材料切除装置によって、分離された固体層に残された改質部分が切除され、特に切削により除去される。
【0302】
本発明のコンテキストにおいて、固体層は好ましくは、残された固体物部分よりも常に薄い。ただしさらに考えられるのは、のちの固体層表面に受容層を配置または生成するのではなく、残された固体物部分の表面に配置または生成することである。固体材料がケイ素であるならば、分離された固体層は残された固体物に対し、好ましくは、残された固体物の高さの40%よりも低い高さを有し、特に、残された固体物の30%または20%よりも低い高さを有する。ケイ素の場合に好ましくは、改質生成のために予め定められたパラメータが設けられ、開口数は好ましくは0.5~0.8、特に0.65付近にあり、入射深さは150μm~1000μm、特に300μm付近にあり、パルス間隔は1μm~5μm、特に2μm付近にあり、線間隔は1μm~5μm、特に2μm付近にあり、パルス持続時間は50ns~400ns、特に付近300nsにあり、さらにパルスエネルギーは3μJ~30μJ、特に10μJ付近にある。
【0303】
材料がSiCであるならば、分離された固体層は残された固体物に対し、好ましくは、残された固体物の高さの50%よりも低い高さを有し、特に、残された固体物の45%または40%または35%または30%または25%よりも低い高さを有する。SiCの場合に好ましくは、改質生成のために予め定められたパラメータが設けられ、開口数は好ましくは0.4~0.8、特に0.4付近にあり、入射深さは好ましくは50μm~500μm、特に180μm付近にあり、パルス間隔は好ましくは0.1μm~3μm、特に1μm付近にあり、線間隔は好ましくは10μm~200μm、特に10μm~100μm、特に75μm付近にあり、パルス持続時間は好ましくは1fs~10ns、特に3ns付近にあり、さらにパルスエネルギーは好ましくは0.5μJ~30μJ、特に7μJ付近にある。
【0304】
図2bの場合にも、この図には示さなかったけれども、
図1b~
図1fと同様に別の層145が生成されているようにすることができる。よって、別の材料層または構成部材150は、好ましくは別の層145に、または固体物の露出した表面に、生成もしくは配置される。
【0305】
さらに
図2bには、残された固体物の表面に受容層が配置されているようにすることができること、ならびに構成部材または別の材料層150に別の受容層146が配置されているようにすることができることが示されている。この場合、構成部材には付加的に安定化層142を設けておくことができ、これにより別の受容層146は好ましくは安定化層および/または保護層142に配置または生成されている。別の受容層146は、好ましくはフィルムとして準備され、好ましくはやはり少なくとも部分的にポリマー材料から成る。特に好ましくは、別の受容層146は、受容層140もしくは142と同じ材料を有する。この実施形態が有利であるのは、亀裂を生じさせる応力を2つの側から固体物に及ぼすことができるからである。
【0306】
図3a~
図3iには、別の材料層もしくは構成部材150の生成後、亀裂を引き起こすために設けることができる様々な集成体が示されている。
【0307】
図3a~
図3iには、亀裂誘導応力および/または亀裂誘発応力を引き起こすために有利であるような、様々な固体物集成体176が示されている。
【0308】
この場合、
図3aには、処理された固体物1もしくはウェハが、構造物もしくは構成部材150と共に示されている。
【0309】
図3aに示した固体物1とは異なり、
図3bに示されている固体物1の場合、受容層140が構成部材の側に、特に構成部材150もしくは別の材料層150のところに、配置または生成されている。この場合、受容層140は、好ましくは分離すべき固体層に配置されている。この場合、受容層140をスプリットフィルムと称することもでき、したがって好ましくは構造物側にラミネートされている。次いで後続のステップにおいて、この集成体全体の冷却が行われ、これによって分割もしくは亀裂誘発および/または亀裂誘導が引き起こされる。
【0310】
図3bに示したものとは異なり、
図3cによれば、固体物の下側に、もしくは固体物の露出した表面に、保持層/接合されたウェハが配置されている。この保持層を、工具支持体もしくはチャック3とすることもできる。次いで後続のステップにおいて、この集成体全体の冷却が行われ、これによって分割もしくは亀裂誘発および/または亀裂誘導が引き起こされる。
【0311】
図3bとは異なり、
図3dに示されている集成体によれば、固体物の両側に受容層140、146が設けられている。その際に別の受容層146は、あとで残される残留固体物の表面に配置されており、この場合、別の受容層146と固体物1との間に、付着促進層148および/または犠牲層149および/または保護層142が配置または生成されているようにすることができる。両方の受容層140および146は、好ましくはラミネートされている。次いで後続のステップにおいて、この集成体全体の冷却が行われ、これによって分割もしくは亀裂誘発および/または亀裂誘導が引き起こされる。
【0312】
図3eに示されている集成体によれば、
図3dから既知の集成体とは異なり、別の受容層146と固体物1との間に、付着促進層148および/または犠牲層149および/または保護層142は配置または生成されていない。次いで後続のステップにおいて、この集成体全体の冷却が行われ、これによって分割もしくは亀裂誘発および/または亀裂誘導が引き起こされる。
【0313】
図3fには、
図3dから既知の集成体とは逆の構造の集成体が示されており、すなわち、付着促進層148および/または犠牲層149および/または保護層142が、別の受容層146と固体物1との間に配置または生成されているのではなく、受容層140と固体物1との間に、つまりは分離すべき固体層のところに、配置または生成されている。この場合、構成部材150または構造物の上に、たとえばスピンコーティングによって、1つまたは複数の層を生成することができる。次いで後続のステップにおいて、この集成体全体の冷却が行われ、これによって分割もしくは亀裂誘発および/または亀裂誘導が引き起こされる。
【0314】
図3gには、
図3dおよび
図3fの集成体から成る組み合わせに対応する集成体もしくは形態が示されている。固体物には、好ましくは両側でスプリットフィルムがラミネートされており、やはり両側でスプリットフィルムの下に保護層および/または付着促進層および/または犠牲層を設けることができ、これらの構造物上にさらにたとえばスピンコーティングすることが可能である。次いで後続のステップとして、この集成体全体の冷却が行われ、これによって分割もしくは亀裂誘発および/または亀裂誘導が引き起こされる。
【0315】
図3hには、
図3bに示した集成体と類似した集成体が示されており、ただしこの場合、受容層は、分離すべき固体層の表面ではなく、分離後に残される残留固体物の上に、一方の側で配置もしくはラミネートされている。次いで、インゴットの分離と類似して、もしくはインゴットプロセスの場合のように、冷却の結果として分離が行われる。
【0316】
図3iには、
図3cから既知の集成体と類似した集成体が示されており、ただしこの場合、以下に挙げる層または機構のうちの1つまたは複数が、固体物の構成部材側に、もしくは構成部材150に、またはその上方に、配置または生成される。ここでこれらの層または機構は、好ましくは以下のとおりである。すなわち、少なくともまたは厳密に1つの付着促進層148、および/または少なくともまたは厳密に1つの犠牲層149、および/または少なくともまたは厳密に1つの保護層142、および/または少なくともまたは厳密に1つの安定化機構3、特に工具支持体またはチャックまたは別のウェハ。次いで後続のステップとして、この集成体全体の冷却が行われ、これによって分割もしくは亀裂誘発および/または亀裂誘導が引き起こされる。
【0317】
図4には、X-Y加工処理における書き込みパターンに関する1つの例が描かれている。
【0318】
矢印170、172はレーザの前進方向を表し、黒丸は種々のレーザショットもしくは改質9を表し、それらの損傷作用は材料中で重なり合っていない。ここで好ましいのは、レーザが、最初に一方の方向に進んで改質9を生成してから、向きを変えて、第2の(下方の)方向で改質9を書き込む場合である。
【0319】
図5a~
図5dには、種々の冷却装置174が示されている。これらの冷却装置174において処理される固体物集成体176は、
図1a~
図3iに示し説明した、1つまたは複数の受容層140、146が設けられた固体物1の構造もしくは形態から、結果として得られたものである。ここに示されている冷却装置174は、すべて冷却のために液化ガス178を出力冷却媒体として使用する。この出力冷却媒体は、実施形態に応じて霧化または気化される。好ましくは、出力冷却媒体は液体窒素である。たとえばペルチエ素子を用いた択一的な冷却方法も、想定可能であり実現可能である。
【0320】
この場合、冷却装置174は好ましくは、-130℃~-10℃の温度まで、特に-80℃~-50℃の温度まで、受容層140、146を冷却する役割を果たす。
【0321】
図5aによれば、冷却装置174は窒素槽を有し、この場合、受容層は、特に調整可能なポジショニング装置180によって、窒素槽内に予め保持された液体窒素から離間されて、ポジショニングされる。このため固体物集成体は好ましくは、ポジショニング装置上に、もしくは窒素槽上方のホルダに配置される。したがって結果として、チャンバの高さにわたり温度勾配が生じ、固体物集成体における温度を、出力冷却媒体の充填レベルまたは固体物集成体176のポジション(チャンバ底部までの間隔)を介して調整可能である。
【0322】
図5b~
図5dの実施形態によれば、冷却装置は好ましくは、液体窒素を霧化するための霧化手段、特に穿孔が設けられた少なくともまたは厳密に1つの管路、を有することができ、または液体窒素を霧化するための霧化手段を有することができ、霧化または気化された窒素によって冷却作用を生じさせることができる。
【0323】
図5bによれば好ましくは、噴霧または霧化のための均一な噴霧装置/霧化装置が提供される。噴霧または霧化は、好ましくは固体物集成体176の上方で行われる。さらに好ましくは、温度コントロールのために温度測定が行われ、これによりバルブ、特に窒素バルブ、を調整するための出力データが送出される。この温度測定は好ましくは、基板もしくは固体物1または受容層140のところで行われる。
【0324】
基板もしくは固体物1もしくは固体物集成体176は、チャンバ底部の窒素の沈殿を避ける目的で、好ましくはチャンバ底部の上に置かれる。
【0325】
図5cによれば好ましくは、穿孔が設けられた管路が均一な噴霧装置として用いられる。さらに好ましくは、温度コントロールのために温度測定が行われ、これによりバルブ、特に窒素バルブ、を調整するための出力データが送出される。この温度測定は好ましくは、基板もしくは固体物1または受容層140のところで行われる。
【0326】
基板もしくは固体物1もしくは固体物集成体176は、チャンバ底部の窒素の沈殿を避ける目的で、好ましくはチャンバ底部の上に置かれる。
【0327】
図5dによれば、好ましくは複数の側もしくは各側から冷却するための均一な噴霧装置/霧化装置182を有する冷却装置176が示されている。さらに好ましくは、温度コントロールのために温度測定が行われ、これによりバルブ、特に窒素バルブ、を調整するための出力データが送出される。この温度測定は好ましくは、基板もしくは固体物1または受容層140のところで行われる。
【0328】
基板もしくは固体物1または固体物集成体176は、チャンバ底部の窒素の沈殿を避ける目的で、好ましくはチャンバ底部の上に置かれる。
【0329】
冷却装置174のチャンバ184は、できるかぎり隔離することにより温度勾配を小さくする目的で、好ましくは閉鎖されている。
【0330】
図6には、結晶格子配向と改質生成との間の好ましい関係に関する3つの例が示されている。この方法は、SiCから成るまたはSiCを有する固体物から固体層を分離するために、特に有用である。これらの関係によって、さらに別の本発明による方法が得られる。このさらに別の本発明による方法は好ましくは、少なくとも1つの固体物1から少なくとも1つの固体層4を分離するために、特にインゴッドからウェハを分離するために、またはウェハを薄化するために、用いられる。この場合、さらに別の本発明による方法は、好ましくは少なくとも以下のステップを含む。すなわち、剥離面8を形成するためにレーザビームを用いて固体物1の内部に複数の改質9を生成するステップ、および固体物1に外部からの力を及ぼして、固体物1に応力を生成するステップ、ただし外部からの力は、応力により剥離面8に沿って亀裂伝播が引き起こされるような強さである。
【0331】
本発明によれば、改質は相前後して少なくとも1つの行または列または線において生成され、この場合、1つの行または列または線において生成された改質9は、好ましくは間隔Xをおいて高さHで生成され、これによって相前後して続く2つの改質の間で伝播する亀裂が、特に、剥離面に対し角度Wで配向された亀裂伝播方向を有する、結晶格子方向で伝播する亀裂が、それら両方の改質同士を結合するようになる。ここで角度Wは好ましくは0°~6°であり、特に4°付近にある。好ましくは亀裂は、第1の改質の中心の下方にある領域から、第2の改質の中心の上方にある領域へと伝播していく。したがってこの場合、基本的な関係は、改質のサイズは、改質の間隔と角度Wとに依存して変化し得る、もしくは必ず変化する、というものである。
【0332】
さらにこの方法は、最初は露出している固体物1の表面5に、またはその上方に、層および/または構成部材150を配置または生成することによって、複合構造物を生成するステップも有することができ、この場合、露出している表面5は、好ましくは分離すべき固体層4の構成部分である。特に好ましくは、剥離面8を形成するための改質が、複合構造物の生成前に生成される。
【0333】
外部からの力を及ぼすために、たとえば前述の方法と同様に、複合構造物もしくは固体物の露出した表面5に受容層140を配置することができる。
【0334】
図6a~
図6cの3つの図面によって明確にしようとしているのは、レーザにより非晶化/相転移させられる損傷/改質ゾーンのサイズが、亀裂の鋸歯パターンが辿る高さにどのような影響を及ぼすのか、ということである。一般に亀裂は結晶面に沿って、つまり結晶の個々の原子の間を推移する。改質されたゾーンにおいては、このようにはっきりとした面はもはや存在せず、したがって亀裂は停止することになる。
【0335】
好ましくはできるかぎり大きい開口数によって、ビーム方向に沿って、また、焦点面において横方向においても、損傷ゾーンを小さくすることができる。閾値強度に到達しさえすればよいので、この場合にはいっそう小さいパルスエネルギーでも十分である。
【0336】
そこで損傷ゾーンが適度にいっそう小さく形成されているならば、レーザ改質をいっそう密にセットすることができ、このことによって鋸歯がいっそう短く推移させられ、改質された面の高さ方向の広がりが全体としていっそう小さくなる(最初の図面)。
【0337】
これに対して、損傷ゾーンがいっそう大きく形成されていると(いっそう高いエネルギーおよび/またはいっそう小さい開口数、
図6b)、非晶化されたゾーンの圧力が高まることにより、いっそう大きな微細亀裂が引き起こされ、このような亀裂を、損傷ゾーンの寸法を大きくし間隔を広げることによって捉える(つまり制御しながら停止させる)ことができる。
【0338】
最後に
図6cには、損傷ゾーンが十分な大きさではなく、レーザ改質により過度に離れて推移する亀裂が引き起こされる場合のリスクについて示されている。この場合、亀裂は一方では、過度に離れて進み、つまり亀裂により生じる高さの差が、所望のものよりも大きくなり、他方、亀裂は別の損傷ゾーンの下を通り抜けて進み、非晶化された材料によっても停止されない。その結果として、やはり材料損失が生じる。なぜならば、亀裂が入ったすべての材料層は、最終製品のためには、または新たなレーザ加工処理のためには、取り除かなければならないからである。
【0339】
図7には、さらに別の本発明による方法からのスナップショットが概略的に示されている。このさらに別の方法は好ましくは、少なくとも1つの固体物1から少なくとも1つの固体層4を分離するために、特にインゴッドからウェハを分離するために、またはウェハを薄化するために、用いられる。この場合、さらに別の本発明による方法は、好ましくは少なくとも以下のステップを含む。すなわち、剥離面8を形成するためにレーザビームを用いて固体物1の内部に複数の改質9を生成するステップ、および固体物1に外部からの力を及ぼして、固体物1に応力を生成するステップ、ただし外部からの力は、応力により剥離面8に沿って亀裂伝播が引き起こされるような強さである。
【0340】
本発明によれば第1のステップにおいて、線103上において好ましくは互いに等間隔で改質が生成される。さらにこの場合に想定可能であるのは、第1のステップにおいて生成されたこれら線を複数、生成することである。これらの第1の線は特に好ましくは、亀裂伝播方向に対し平行に、さらに好ましくは直線状または円弧状に、特に同じ平面内に生成される。これらの第1の線の生成後、好ましくは臨界未満の亀裂を引き起こすために、かつ/または促進するために、好ましくは第2の線105が生成される。これらの第2の線も、好ましくは直線状に生成される。特に好ましくは、第2の線は第1の線に対して傾斜しており、特に直交して配向されている。第2の線は、好ましくは第1の線と同じ平面内に延在しており、または特に好ましくは、第1の線が延在している平面に対し平行な平面内に延在している。次いで好ましくは、臨界未満の亀裂を結合するために第3の線が生成される。
【0341】
この方法は、SiCから成るまたはSiCを有する固体物から固体層を分離するために、特に有用である。
【0342】
さらに、改質を相前後して少なくとも1つの行または列または線において生成することができ、この場合、1つの行または列または線において生成された改質9は、好ましくは間隔Xにおいて高さHで生成され、これによって相前後して続く2つの改質の間に伝播する亀裂が、特に、剥離面に対し角度Wで配向された亀裂伝播方向を有する、結晶格子方向で伝播する亀裂が、2つの改質を互いに結合するようになる。ここで角度Wは好ましくは0°~6°であり、特に4°付近にある。好ましくは亀裂は、第1の改質の中心の下方にある領域から、第2の改質の中心の上方にある領域へと伝播する。したがってこの場合、基本的な関係は、改質のサイズは、改質の間隔と角度Wとに依存して変化し得る、もしくは必ず変化する、というものである。
【0343】
さらにこの方法は、最初は露出している固体物1の表面5に、またはその上方に、層および/または構成部材150を配置または生成することによって、複合構造物を生成するステップも有することができ、この場合、露出している表面5は、好ましくは分離すべき固体層4の構成部分である。特に好ましくは、剥離面8を生成するための改質が、複合構造物の生成前に生成される。
【0344】
外部からの力を及ぼすために、たとえば前述の方法と同様に、複合構造物もしくは固体物の露出した表面5に受容層140を配置することができる。
【0345】
このようにすることで、さらに別の本発明によるレーザ方法において、好ましくはSiC(ただし他の材料でもよい)上に、亀裂伝播方向に平行な線(好ましくは横方向線と称せられる)が生成され、これによってまずは好ましい亀裂誘発のための平面が規定され(亀裂初期化)、その後、長手方向線が亀裂を促進する。これによれば亀裂は最初は横方向に、次いで長手方向に発生し始め、その後、亀裂を完全に誘発する目的で、最終ステップによって、第2のステップの長手方向線の間に線がセットされる。これによりいっそう短い亀裂経路を実現することができ、このことによって最終的な表面の粗さが最小化される。これは(鋸歯を有する)横方向線および(鋸歯の波頭上の)亀裂誘発線に関する例のイメージである。
【0346】
図8には、ショットキーダイオード200が例示的に示されている。この場合、このダイオード200は好ましくは固体層4を有し、他方、この固体層4はレーザビームにより改質された部分、特に改質9を有する。その際に改質9は、固体層4の第1の表面近くに生成されている。固体層4のこの第1の表面に、この場合には好ましくは金属層20が、特にスパッタリングまたは化学的堆積によって生成された。固体層4は、第1の表面とは反対側に第2の表面を有し、この第2の表面に特にエピタキシ法により別の層145が生成されている。その際に固体層4は、好ましくは高濃度ドーピングされたSiCから成り、もしくは高濃度ドーピングされたSiCを有し、生成された層145は好ましくは、低濃度ドーピングされたSiCから成り、または低濃度ドーピングされたSiCを有する。ここで低濃度ドーピングとは好ましくは、高濃度ドーピングよりも僅かにしかドーピングされていない、ということを意味する。よって、生成された層145は好ましくは、体積単位あたり固体層4よりも僅かにしかドーピングされていない。参照符号150は、ショットキーコンタクトを表す。
【0347】
図9には、MOSFET250の構造が例示されている。この場合、このMOSFET250は好ましくは固体層4を有し、他方、この固体層4はレーザ放射により改質された部分、特に改質9を有する。その際に改質9は、固体層4の第1の表面近くに生成されている。この場合、固体層4のこの第1の表面に好ましくは金属層20が、特にスパッタリングまたは化学的堆積によって生成されている。その際に金属層20によって、好ましく接続端子259を介してドレイン(高電位)が形成される。固体層4は、第1の表面とは反対側に第2の表面を有する。第2の表面に別の層が、特にn型SiCが形成されており、特に生成または配置されている。参照符号256は、別の材料または要素、特にp型SiCを表す。参照符号254はn+を表す。参照符号255は好ましくは、特に電流を案内するための、1つまたは2つのチャネルを表す。参照符号253で表されたレイヤ/層は、好ましくはSiO
2から成り、またはこれを有する。参照符号251はソース(低電位)を表し、参照符号252はゲートを表す。
【0348】
よって、本発明を、固体物1から分離される少なくとも1つの固体層4を準備する方法に関するものとすることができる。この場合、本発明による方法は、好ましくは以下のステップを含む。
【0349】
剥離面8を形成するために、複数の改質9をレーザビームを用いて固体物1の内部に生成するステップ。この場合、改質9によって圧縮応力が固体物1中に生成される。固体層4を、残りの固体物1と固体層4とを改質9により形成された剥離面8に沿って切り離すことにより分離するステップ。この場合、圧縮応力を生成する改質9の少なくとも構成部分は固体層4のところに残り、この場合、固体層4が改質9に起因して固体物1から剥離する程度の個数の改質9が生成され、またはこの場合、さらなる応力を固体物1において生成するために、固体物1に外部からの力を及ぼし、その際に外部からの力は、改質により形成された剥離面8に沿って応力が亀裂伝播を引き起こす程度に強い。残された改質構成部分の圧縮応力により引き起こされる固体層4の変形を、少なくとも部分的に、好ましくは大部分で、特に好ましくは完全に、補償するために、あるいは少なくとも部分的に、好ましくは大部分で、または完全に、圧縮応力を補償するために、固体層4が固体物1から分離されたことにより露出させられた表面に金属層を生成するステップ。
【0350】
別の選択肢として本発明を、電気的コンポーネントを生成する方法に関するものとすることができる。この方法は、好ましくは以下のステップを含む。すなわち、剥離面8を形成するために、複数の改質9をレーザビームを用いて固体物1の内部に生成するステップ。この場合、改質9によって圧縮応力が固体物1中に生成される。最初は露出している固体物1の表面5に、またはその上方に、層および/または構成部材150を配置または生成することにより、複合構造物を生成するステップ。この場合、露出した表面5は、分離すべき固体層4の構成部分である。固体層4を、残りの固体物1と固体層4とを改質9により形成された剥離面8に沿って切り離すことにより分離するステップ。この場合、圧縮応力を生成する改質9の少なくとも構成部分は固体層4のところに残り、この場合、固体層4が改質9に起因して固体物1から剥離する程度の個数の改質9が生成され、またはこの場合、さらなる応力を固体物1において生成するために、固体物1に外部からの力を及ぼし、この場合、外部からの力は、改質により形成された剥離面8に沿って応力が亀裂伝播を引き起こす程度に強い。改質構成部分により引き起こされた圧縮応力を少なくとも部分的に補償するために、固体層4が固体物1から分離されたことにより露出させられた表面に金属層20を生成するステップ。
【0351】
図10aには、所定の輪郭を有する研磨工具22を示す図が描かれている。研磨工具に関連して、平坦な、直線状の、または湾曲した部分について言及するときは、常に、図示された輪郭の一部分のことであると理解されたい。当然ながら、研磨工具22をたとえば回転研磨工具として形成しておくことができ、これによって輪郭に周方向で隣接する部分は、周方向において好ましくは湾曲して延在することになる。
図10aの第1の図に描かれた研磨工具22は、湾曲した主研磨面32を有する第1の加工処理部分24と、湾曲した副研磨面34を有する第2の加工処理部分26を有し、この場合、主研磨面32の半径は副研磨面34の半径よりも大きく、好ましくは主研磨面32の半径は、副研磨面34の半径の少なくとも2倍、3倍、4倍、または5倍の大きさである。
【0352】
したがって本発明によれば、付加的または択一的に、ドナー基板1または固体物から、少なくとも1つの固体レイヤ4、特に固体ディスクまたは固体層を分離する方法が提供される。本明細書においては、ドナー基板および固体物という用語を、好ましくは同義語として用いることができる。この方法はこの場合、好ましくは以下のステップを含む。
【0353】
ドナー基板1を準備するステップ、レーザビームを用いてドナー基板1の内部に改質9を生成するステップ。この場合、改質9により剥離領域が予め定められ、この剥離領域に沿ってドナー基板1から固体レイヤの分離が行われる。ドナー基板1の周方向に延在する表面から出発してドナー基板1の中心方向(Z)に、特に周囲を取り巻く凹部を生成するために、ドナー基板1の材料を切除するステップ。この場合、材料の切除により剥離領域8もしくは剥離面が露出させられる。固体レイヤ4をドナー基板1から分離するステップ。この場合、ドナー基板は剥離領域において改質によって、固体レイヤ4が材料切除に起因してドナー基板1から剥離するように弱められ、または材料切除後、固体レイヤ4がドナー基板1から剥離するようにドナー基板1が剥離領域において弱められる程度の個数の改質9が生成され、または応力生成層140もしくは受容層が、周囲面に対し傾斜して配向された、特に平坦な、ドナー基板1の表面に、生成または配置され、応力生成層140に熱的衝撃を印加することによって、機械的応力がドナー基板1に生成され、この場合、機械的応力によって、固体レイヤ4を分離するための亀裂が発生し、この亀裂は、材料切除により露出させられたドナー基板の表面から出発して改質9に沿って伝播する。この場合、改質9を部分的にまたは完全に材料切除前または材料切除後に生成する、ということも可能である。したがって凹部6は、好ましくは中心方向Zで凹部終端18に向かって狭くなる。好ましくは凹部は楔形であり、その際に凹部終端18は好ましくは、亀裂が伝播する平面内に、または改質9が生成される平面内に、厳密に位置する。さらに、最初は露出している固体物1の表面5に、またはその上方に、層および/または構成部材150を配置または生成することによって、複合構造物を生成することが可能であり、この場合、露出している表面5は、分離すべき固体層4の構成部分である。その際、剥離面8を形成するための改質9が、好ましくは複合構造物の生成前に生成される。
【0354】
複合構造物の生成後、好ましくは固体物1に外部からの力を及ぼして、固体物1に応力を生成し、ただし外部からの力は、応力により剥離面8に沿って亀裂伝播が引き起こされるような強さである。
【0355】
図10bは、特に結晶格子の非晶質部分を成す
図10aに示した改質9が、エッチングにより処理された様子を示す。したがって好ましくは、固体物1の非結晶構成部分のエッチング処理が行われる一方、固体物の結晶構成部分はエッチング処理によっても変化させられず、または実質的に変化させられない。よって、好ましくは、選択的に結晶領域と非結晶領域とに合わせてエッチング法を設定できる、という作用が利用される。このため参照符号19は、固体層4が改質9のエッチング処理により残りの残留固体物から分離されている領域を表す。この解決手段が有利であるのは、機械的な亀裂開口が、エッチングもしくはエッチング開始によって結晶中にいっそう深く導かれるからである。これにより、いっそう精密に規定された亀裂の発端が得られる。好ましくは、凹部もしくはノッチがいっそう細くかついっそう深く固体物の内部へと延びれば延びるほど、固体層の割裂に起因して露出させられた表面が表面品質に関して良好になる。この場合、エッチングパラメータは好ましくは、非晶質ではない部分、特に場合によってはポリッシングされる上側5および/または改質されていない周縁部7はエッチングされない、というように選定される。したがって本発明による方法を、特に
図10aに関して説明した方法を、たとえば、剥離領域を少なくとも部分的に予め定める改質9をエッチング処理もしくはエッチングにより除去するステップによって補うことができる。この場合、固体物1は、特に複合構造物を生成する前には、好ましくはSiCから成るかまたはSiCを有し、好ましくは固体物は、(質量の点で)少なくとも95%、または(質量の点で)少なくとも99%、または(質量の点で)少なくとも99.99%のSiCを有する。
【0356】
さらに述べておくと、本明細書によって開示されたいずれの方法においても、固体物周縁部における材料切除を、特にこれに続くエッチングステップによって補うことができる。
【0357】
図10cによる第3の図面によれば、研磨工具22の第1の加工処理部分24は直線状の主研磨面32を有し、第2の加工処理部分26は直線状の副研磨面34を有し、この場合、主研磨面32によって、副研磨面34よりもいっそう多くの材料がドナー基板2から除去される。
【0358】
図11には5つの図面が示されており、これらの図面によって、本発明による固体ディスク製造もしくはウェハ製造に関する例が示される。この場合、1番目の図面は研磨工具22を示し、これは互いに離間された2つの加工処理部分24を有し、これらの加工処理部分はそれぞれ主研磨面32を形成する。この場合、主研磨面32は、これによってドナー基板2に凹部6が生成されるように形成されている。研磨工具22は好ましくは、回転研磨工具として、または帯状研磨工具として、形成されている。
【0359】
図11の2番目の図面は、研磨工具22により凹部6が生成されたドナー基板2を示す。この場合、凹部6は、ドナーウェハ2の長手方向において、好ましくは均等に互いに離間されており、ただし間隔をそれぞれ異なる大きさとすることも考えられる。
図2の2番目の図面によればさらに、レーザ装置46を用いてドナー基板2に改質10が生成される。レーザ装置46は、この目的でレーザビーム12を送出し、それらのレーザビーム12は、好ましくはドナー基板2の平坦な表面16を介してドナー基板2中に侵入し、焦点48のところに、特に多光子励起によって、固体物もしくはドナー基板2の格子構造の改質10が生成され、もしくは引き起こされる。この場合、改質10とは好ましくは、材料の転移のことであり、特に別の相への材料の移行のことであり、または材料の破壊のことである。
【0360】
3番目の図面には、応力生成層14が表面16に生成または配置されたことが示されており、この場合、改質10を生成するために、表面16を介してレーザビーム12がドナー基板2に導かれた。機械的応力をドナー基板2において生成するために、応力生成層14に熱的衝撃が印加されるか、もしくは応力生成層14が温度制御され、特に冷却される。応力生成層14に熱的衝撃を印加することによって応力生成層14が収縮し、これによって機械的応力がドナー基板2に発生する。その際、事前に生成された凹部6によってノッチが形成され、このノッチによって、応力により発生した亀裂20が所期のように改質10により予め定められた亀裂誘導領域において伝播するように、機械的応力を及ぼすことができる。ゆえに凹部終端18は好ましくは、改質10により予め定められた個々の亀裂誘導領域に隣接している。好ましくは、応力生成層14から最も僅かにしか離間されていない凹部6を有する固体層1だけが、常に厳密に割裂させられる。
【0361】
4番目の図面には、亀裂伝播が生じた後の状態が示されている。固体ディスク1がドナー基板2から割裂させられており、応力生成層14はさしあたり引き続き固体ディスク1の表面16に残っている。
【0362】
参照符号28は、固体ディスク1のいずれの側がここでは固体ディスクの下側と呼ばれるのかを表し、参照符号30は、固体ディスク1のいずれの側がここでは固体ディスク1の上側と呼ばれるのかを表す。
【0363】
5番目の図面は、応力生成層14がなくてもドナー基板2からの固体層1の剥離が引き起こされる方法が示されている。この場合に好ましくは、凹部6の形成後、固体層1がドナー基板2から剥離する程度の個数の改質10がレーザビーム12により生成される。ここで破線Zは好ましくは、ドナー基板2の中心もしくは回転軸線を表す。ドナー基板2は、好ましくは回転軸線Zを中心に回転可能である。
【0364】
図12には4つの図面が示されている。
図12の1番目の図面には、レーザビーム12が印加されるドナー基板2が示されている。レーザビーム12はその全体が、レーザビームがドナー基板2に侵入する際に通過する表面16に対し、傾きが90°とは異なるように傾斜している。好ましくは、レーザビーム12のうち第1の部分36は、表面16に対し第1の角度38で配向されており、レーザビーム12のうち別の部分40は、表面16に対し第2の角度42で配向されている。レーザビーム部分36および40は、好ましくは特定の固体層1を分離するために生成されるすべての改質10を生成するために、これらのレーザビーム部分36、40がドナー基板2に侵入する際に通過する表面16に対し、好ましくは常に等しく傾斜している。
図12の1番目の図面からさらに読み取ることができるのは、傾斜したレーザビーム部分36、40ゆえに、改質10を生成するための焦点48をドナー基板2内で周縁部44まで、またはダイレクトに周縁部44まで案内することができる、ということである。
【0365】
図12の2番目の図面からさらに読み取ることができるのは、傾斜して配向されたレーザビーム部分36、40によれば、ドナー基板2の周縁部44の材料を切除する処理は必要とされない、またはほとんど必要とされない、ということである。表面16に配置または生成された応力生成層14によって、ドナー基板2において機械的応力が生成されるようになり、これによって周縁部44まで生成された改質10に起因して、亀裂20が極めて精密に周縁部44からドナー基板2中に入り込んで伝播する。
【0366】
図12の3番目の図面には、ドナー基板2から完全に割裂させられた固体ディスク1が示されており、この場合、固体ディスク1にはこの実施形態によれば好ましくはエッジ処理は施されなかった。
【0367】
図12の4番目の図面によって表されているのは、(応力生成層14がなくても)やはりレーザビーム36、40による改質10の生成によって、固体ディスク1をドナー基板2から取り外すことができる、ということである。
【0368】
よって、本発明は、固体ディスク1をドナー基板2から分離する方法に関する。この場合、本発明による方法は以下のステップを含む。
【0369】
ドナー基板2を準備するステップ。レーザビーム12を用いてドナー基板2の内部に改質10を生成するステップ。この場合、レーザビーム12は、ドナー基板2の平坦な表面16を介してドナー基板2中に侵入し、この場合、レーザビーム12全体は、ドナー基板2の平坦な表面16に対し以下のように傾斜しており、すなわちレーザビーム12の第1の部分36が、ドナー基板2の平坦な表面16に対し第1の角度38でドナー基板2中に侵入し、レーザビーム12の少なくとも1つの別の部分40が、ドナー基板2の平坦な表面16に対し第2の角度42でドナー基板2中に侵入し、この場合、第1の角度38の値は第2の角度42の値とは異なり、この場合、レーザビーム12の第1の部分36およびレーザビーム12の別の部分40は、ドナー基板2内に改質10を生成するために集束させられ、この場合、固体ディスク1は、生成された改質10によってドナー基板2から剥離させられ、または応力生成層14がドナー基板2の平坦な表面16に生成または配置され、応力生成層14に熱的衝撃を印加することによってドナー基板2に機械的応力が生成され、この場合、機械的応力によって固体層1を分離するための亀裂20が発生し、この亀裂20は改質10に沿って伝播する。
【0370】
図13には、本発明よる方法のさらに別の変形実施形態が示されている。第1の図面と第5の図面との比較を通して見分けることができるのは、レーザビーム12によって生成される改質10を、表面16が平坦なケースでは、第5の図面に示されているように表面16のエッジ17が取り除かれている場合よりも、周縁部44の近くまで生成できる、ということである。この場合、レーザビーム12は、
図12を参照しながら説明した改質生成のように、ドナー基板2中に侵入する。
【0371】
図13の第2の図面には、周囲面4から出発してドナー基板2の中心Zの方向で、凹部6が生成されることが示されており、この場合、凹部は、アブレーションレーザ(図示せず)のアブレーションレーザビーム8を用いて生成される。この場合、好ましくはアブレーションレーザビーム8は、凹部6を生成するためにドナー基板2の材料を気化させる。
【0372】
図13の3番目の図面に示されているように、凹部の形状は非対称ではなく対称に生成される。したがってこの図によればやはり応力生成層14がドナー基板2に生成または配置され、亀裂20を誘発させるための機械的応力を生成するために、特に液体窒素を用いて応力生成層14に熱的衝撃が印加される。
【0373】
図13の4番目の図面には、ドナー基板2から割裂させられた固体ディスク1が示されており、これには引き続き応力生成層が配置されている。
【0374】
図13の5番目の図面からさらに読み取ることができるのは、エッジ17が加工処理されているドナー基板2の場合、アブレーションレーザビーム8によって生成すべき凹部6を、エッジ17が加工処理されていない場合よりも、ドナー基板2の中心方向でいっそう中の方まで到達させなければならない、ということである。ただしこの場合、アブレーションレーザビーム8を用いるのではなく、(たとえば
図1から既知であるような)研磨工具22を用いて凹部を生成することも想定可能である。
【0375】
図14aおよび
図14bには、レーザビーム12を用いた改質の生成にあたりドナー基板2の周縁領域において発生する問題点が示されている。空気中の屈折率とドナー基板における屈折率とがそれぞれ異なることから、レーザビーム12のレーザビーム部分38、40は厳密には重ならず、これによって不所望な個所での欠陥の生成、不所望な局所的加熱、または改質生成の妨害などのような不所望な作用が引き起こされる。
【0376】
図14bに示されているのは、両方のレーザビーム部分38、40がそれぞれ同じ屈折率を有する物質を通って、好ましくは等しい経路長で屈折させられる程度まで、生成すべき改質10がドナー基板2の周囲面から隔てられているときに初めて、改質10を問題なく生成することができる、ということである。ただしこのようにすることによって、周縁領域に対し離間された領域において行われるような改質生成を、そのままでは周縁領域に向けて伸ばすことができなくなる。
【0377】
図15に示されている集成体によれば、レーザビーム12は長手軸線Lに対し平行に配向されている。さらにこの図には、付加的または択一的に、長手軸線Lに対し角度α1だけ傾斜したレーザビーム60が示されている。この場合、両方のレーザビーム12および60を、改質10を生成するために用いることができ、それらの改質10によって剥離領域11が予め定められる。この場合に考えられるのは、長手軸線Lに対し傾斜していないレーザビーム12によって大半の改質10を生成し、周縁領域において、すなわち周囲を取り巻く表面(周囲面)に対し、10mm未満の間隔をおいて、特に5mm未満または2mm未満または1mm未満または0.5mm未満の間隔をおいて、長手軸線Lに対し傾斜したレーザビーム60により改質10を生成することである。
【0378】
別の選択肢としてさらに、剥離領域のすべての改質10または剥離領域11の大半の改質10を、長手軸線Lに対し角度α1だけ傾斜したレーザビーム60によって生成することが考えられる。
【0379】
これに加え、または別の選択肢として、本発明の意図するところによれば、周縁領域における改質10は、ドナー基板2の長手軸線Lに対し傾斜した別のレーザビーム62、64によって生成され、その際にこのレーザビームは、好ましくはドナー基板2の周囲面を介してドナー基板2に侵入する。この図から読み取ることができるのは、周縁領域に改質10を生成するために剥離領域11に対したとえば0°よりも大きくかつ90°よりも小さい角度α2で、周囲面を介してドナー基板2へレーザビーム62を導くことができることである。さらにこの図から読み取ることができるのは、改質10を生成するために剥離領域11の延在方向において、ドナー基板2の周囲面を介してドナー基板2へレーザビーム64を導くことができることである。レーザビーム64はこの場合、好ましくは80°~100°、特に90°または実質的に90°の角度α3だけ、ドナー基板2の長手軸線Lに対し傾斜している。
【0380】
このようにしてレーザビーム60、62、64によって、周縁部の領域において改質生成10を行うことができる。
【0381】
さらに本発明によれば、
図12について言及したことを、
図15に示した対象にも同様に適用または転用することができる。
【0382】
図16aには、周縁領域に至るまで生成される剥離領域11が示されている。さらに
図16aには、レーザビーム64を用いた改質生成について示されている。レーザビーム64によって、好ましくは半径方向において複数の改質10が、特に1つの線上に、ドナーウェハ2の中心もしくは回転軸線(これは好ましくはドナー基板2の平坦な表面16に対し直交して延在している)までの間隔を拡げながら生成される。
【0383】
図16bには、改質10が生成された後の状態が概略的に示されている。剥離領域11はこの図によれば、完全にドナーウェハ2の内部において延在する改質レイヤの形態で形成されている。
【0384】
図17aおよび
図17bには、周囲面を介して導かれるレーザビームを用いて改質10を生成するための2つの変形実施形態が示されている。
【0385】
図17aによれば、複数の改質10の生成が同じ侵入個所を介して行われ、この侵入個所を通ってレーザビーム64がドナー基板2に侵入する。レーザビームは改質10を生成するために、半径方向において種々の深さでドナー基板2中に集束させられる。好ましくは改質10は、レーザビームの侵入深さを減少させながら、もしくは焦点から侵入個所までの間隔を短くしながら生成される。
【0386】
図17bには、フィラメント状の改質生成について示されている。この場合、フィラメント状に生成された改質10は、その断面の広がりの数倍よりも長く、特にたとえば10倍、20倍または50倍よりも長い。
【0387】
図18には、レーザ装置46、光学収差手段47およびドナー基板2の断面図が示されている。
図18の詳細図には、ドナーウェハ2の湾曲した周囲面を介してドナーウェハ2に侵入するレーザビーム12が示されており、この場合、光学収差手段47を用いて整合されたビーム経過特性が破線で描かれている。
【0388】
よって、本発明は、固体ディスク1をドナー基板2から分離する方法に関する。この場合、本発明による方法は以下のステップを含む。すなわち、ドナー基板2を準備するステップ。少なくとも1つのレーザビーム12を用いてドナー基板2の内部に少なくとも1つの改質10を生成するステップ。この場合、レーザビーム12は、ドナー基板2の平坦な表面16を介してドナー基板2中に侵入し、この場合、レーザビーム12はドナー基板2の平坦な表面16に対し、レーザビーム12がドナー基板の長手軸線に対し0°または180°とは異なる角度でドナー基板に侵入するように傾斜しており、この場合、レーザビーム12は、ドナー基板2内に改質10を生成するために集束させられ、この場合、固体ディスク1は、生成された改質10によって基板2から剥離させられ、または応力生成層14がドナー基板2の平坦な表面16に生成または配置され、応力生成層14に熱的衝撃を印加することによってドナー基板2に機械的応力が生成され、この場合、機械的応力によって固体層1を分離するための亀裂20が発生し、この亀裂20は改質10に沿って伝播する。
【0389】
図19に示されている集成体によれば、応力生成層14は好ましくは、平坦なもしくは実質的に平坦な表面16から出発して平坦な表面16に対し好ましくは平行な固体物2の別の表面の方向へと延在する、少なくとも1つの凹部6の上に、特に溝またはトレンチの上に、重なっており、もしくはこれを覆いもしくは閉鎖している。
【0390】
応力生成層14は好ましくはポリマー層として生成され、もしくは大部分の質量分率および/または体積分率について少なくとも1つのポリマー材料から成る層として生成される。応力生成層14が上に載置される表面16は、好ましくは処理された部分を有する。この場合、処理された部分とは好ましくは、材料が切除された部分のことであると解される。したがって好ましくは、応力生成層14が配置されかつ改質10から成る亀裂誘導層に対し好ましくは実質的もしくは完全に平行に延在する表面16から出発して、1つまたは複数の凹部、特に溝6および/またはトレンチ6が、表面および/または亀裂誘導層に対し好ましくは直交して延在している。この場合、別の選択肢として考えられるのは、1つの凹部6だけが、特に1つのトレンチおよび/または溝だけが、材料切除によって生成され、かつ/または形成されているようにすることである。材料切除は好ましくは、表面16に応力生成層14を生成する前または被着する前に、特にレーザアブレーションによって行われる。応力生成層14は、固体物2と結合されたもしくは接合された状態において、1つまたは複数の凹部6、特に1つまたは複数のトレンチもしくは1つまたは複数の溝を覆う。
【0391】
好ましくは、凹部6、特に溝および/またはトレンチの生成と、応力生成層の被着との間に、さらなる積層、特にさらなる材料堆積は行われない。さもないと材料が溝/トレンチに溜まってしまいかねないので、このことは有利である。
【0392】
好ましくは、応力生成層の被着はプラズマラミネーションプロセスによって行われる。このようにすれば、凹部6、特に溝/トレンチを越えて、固体物1、特にのちの固体層1の主表面16と応力生成層14との間で接合を生成できることから、このことは有利である。この接合は、好ましくはラミネートまたは接着である。好ましくは、これはコールドプラズマを用いて実現される。
【0393】
これに加え、または別の選択肢として、本発明によれば、事前に生成されたレーザ面もしくは亀裂誘導面および深部改質を用い、材料切除ステップ、特にレーザアブレーションによって、「自発分割」を引き起こすことができる。好ましくはこのことは、応力生成層14なしで引き起こされる。
【0394】
応力生成層14を、ストレッサ層、特に自己支持型ストレッサ層と称することもできる。
【0395】
本発明によればさらに、自己支持型ストレッサ層が、蒸着されたまたは他の手法で析出により被着されたストレッサ層よりも、技術的に極めて有利である、ということが認識された。それというのも、かかるストレッサ層を、一方ではいっそう大きな体積でいっそう簡単な方法によって、特化された設備において高いスループットで製造でき、他方ではやはりいっそう高いプロセス速度を可能にするラミネートプロセスにおいて使用できるからである。これに加え、自己支持型ストレッサ層を、ラミネートプロセス後に僅かな手間で基板から再び剥離することもでき、このことによってたとえば再利用も可能となり、すなわちストレッサ層もしくは応力生成層の再利用も可能となり、これは析出した層では不可能である。
【0396】
特に有利であるのは、ラミネートプロセスを、接着方法または同等の方法を用いなくても、単純に基板の表面活性化、表面処理または表面改質によって実現可能である、ということである。したがって応力生成層と、固体物、特にのちの固体層1の表面16との結合もしくは接合が、特に好ましくは、固体物もしくはのちの固体層1の表面16の表面活性化および/または表面処理および/または表面改質によって行われる。
【0397】
したがって表面をたとえば好ましくは、特にチャンバ内で生成されたオゾンとの接触により、かつ/または特定の波長の紫外線光により、かつ/または基板および/またはストレッサ層の表面に形成される様々な種を用いたプラズマ法により、かつ/またはプロセスガス中において、特にラジカル種、アルデヒド種、およびアルコール種において、活性化することができる。この場合、特にホットプラズマ法が好ましく、この方法によれば、自由電荷キャリアおよびラジカルをプラズマ中で生成する目的で高温が用いられ、このことにより、基板およびストレッサ層の表面においてその結果として生じる反応に対して、低温の場合とは異なる反応経路および化学的表面反応が可能となる。したがって表面改質のメカニズムを、様々な基板の間でも温度に依存して異ならせることができ、たとえばSiCの場合にはSiとは異なり、関与する炭素原子によって、ラミネートプロセスにおいて付着促進作用も生じさせることのできる別の表面種を、プラズマ処理中に形成することができる。
【0398】
別の選択肢として、コールドプラズマ法を使用することもでき、これによればプラズマは、熱電子放出によって、および高温のタングステンフィラメントまたは同様の方法を介して生成されるのではなく、圧電トランスを介して大気圧において好ましくは温度を上昇させずに生成される。このような比較的低い温度によって、基板もしくは固体物においてもストレッサ層においても、ラミネートプロセスにおける付着促進のために、表面活性化および表面改質に対して利用可能な反応経路も低減および/または変更される。つまり発生する表面種は、複数のパラメータおよび表面活性化法に特に左右される。
【0399】
表面処理もしくは表面改質にはたとえば、コロナ処理、および/または火炎処理、および/または電気バリア放電を用いた処理、および/またはフッ素化、および/またはオゾン化、および/またはエキシマ処理、および/またはプラズマを用いた処理を、処理すべき表面に少なくとも部分的に加えることが含まれ、その際に好ましくは、プラズマの形式、プラズマ処理におけるトラックピッチ、ノズル形式、ノズル間隔、および/またはプラズマ処理の持続時間のようないくつかのまたは多数の物理的パラメータが変更される、もしくはこれらを変更可能である。
【0400】
好ましくは、洗浄のためにも、ならびにそれに続く表面種の均質化のためにも、プラズマ前処理もしくはプラズマ処理が利用される(たとえば疎水化など)。
【0401】
所期の個別のプラズマ処理によって、表面活性化の局所分解されたバリエーションを生成可能もしくは調整可能であり、これによって引き続き、望まれるのであれば個所に応じて可変の特性も用いて、ストレッサ層のラミネートが可能となる。
【0402】
ストレッサ層を基板にラミネートした後、所望の細分化された付着もしくは力の伝達を、規定された対称または非対称の形態で広い面積においてももたらす目的で、プラズマ表面活性化もしくはプラズマ表面処理のプロセスによって、いっそう大きな作用をもたらすことができる。この場合、プロセスのバリエーションにより、所期のように特に局所的に、変更された粘着または凝集を調整することができる。種々の固体物材料、特に半導体材料の初期特性に依存して、層を被着することができ、かつ/またはさらなる段階的なプロセスガス(酸素など)によって、1つまたは複数の所望の補助層、特に犠牲層/損傷層、または基板表面および/またはストレッサ層表面を、所期のように改質することができる(疎水、吸水、湿潤など)。その結果、局所分解されて整合された段階的な固着もしくは局所分解されて整合されたまたは調整された力の伝達による接合が、ストレッサ層のための接着および析出の解決手段による接合と比べると均質なだけであり局所分解されないラミネートプロセスであっても生じる。
【0403】
既述のように、種々の物理的パラメータをプラズマ処理中に使用することができる(たとえばプラズマの形式、プラズマ処理におけるトラックピッチ、ノズル形式、ノズル間隔、プラズマ処理の持続時間)。これらの制御パラメータに加え、(他にもある中で)たとえば窒素、酸素、水素、SiH4、Si(EtO)4、またはMe3SiOSiMe3のような段階的なプロセスガスを所期のように混合することによって、必要とされる表面特性のいっそう大きな帯域幅をもたらすことができる。このことは好ましくは、新たな化学的表面種から結果として得られ、この化学的表面種によれば、半導体表面および/または隣接する犠牲層および/またはストレッサ層が析出され、したがってそれぞれ異なるように形成される表面機能特性およびラミネートプロセス特性が実現される。その結果、たとえば、半導体表面および/または隣接するストレッサ層および/または他の層の局所分解されたそれぞれ異なる付着特性および凝集特性のような、所望の目的プロフィルが得られる。
【0404】
コロナ処理は、プラスチックの表面処理もしくは表面改質のための電気化学的方法である。これによれば表面が高電圧放電に晒される。コロナ処理はたとえば、プラスチック、フィルムなど(PE,PP)における付着促進のために用いられる。
【0405】
火炎処理の場合には、特に個々の接合部の表面付近の酸化が効果を発揮する。実質的に酸化プロセスが行われ、このプロセスによれば材料および試験条件に従い、様々な有極性の官能基が形成される(たとえば酸化物、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エステル、エーテル、過酸化物)。
【0406】
誘電体バリア放電(DBE、交流電圧ガス放電、dieelectric barrier discharge、DBD処理とも称する)による処理は、低温プラズマもしくはグロー放電(たとえばGDMS)と類似している。DBE処理の場合、単極性または双極性のパルスが表面に印加され、これらのパルスは、数μsから数10ns以下に及ぶパルス持続時間と1桁のKV領域の振幅とを有する。誘電体バリア放電が有利であるのは、この場合には放電室内に金属電極を設ける必要がないからであり、つまりは金属による汚染または電極摩耗を見込まなくてよいからである。
【0407】
誘電体バリア放電のさらなる利点を、用途に応じてたとえば、電極において電荷キャリアが出たり入ったりする必要がない(陰極降下がない、熱電子放出が不要である)ことから、誘電体バリア放電は高い効率を有する点、または誘電体表面を低温で改質可能であり化学的に活性化可能である点、とすることができる。その際に表面改質は好ましくは、イオン衝撃による表面種の相互作用および反応、ならびに表面種への紫外線放射の作用(たとえば80nm~350nm、高性能高周波発生器による非コヒーレント光のUVおよびVUV)によって行われる。誘電体バリア放電はたとえば、飲料水/下水の処理においてオゾンを現場で製造するために用いられ、その際にオゾンによって水のオゾン化が行われる。これと同様に、本発明による表面処理または表面改質の場合にはオゾン化によって、処理すべき表面にオゾンが印加される。
【0408】
ハロゲン化、特にフッ素化、による表面処理もしくは表面改質によって、元素または化合物がハロゲン化物に移行させられる。このためフッ素化によって、フッ素化手段を用いてフッ素が好ましくは有機化合物へ導入される。
【0409】
UV処理を用いた表面処理もしくは表面改質は、好ましくはエキシマ照射によって、またはたとえば窒化アルミニウムをベースとする紫外線発光ダイオード源によって行われる。エキシマ照射は、少なくとも1つのエキシマレーザを使用することによって行われる。エキシマレーザは、紫外線波長範囲の電磁放射を生成可能なガスレーザである。したがってその際に行われるガス放電は、高周波電磁界によって引き起こされる。よって、ガス放電において電極は不要である。生成されたUV放射は、好ましくは120nm~380nmの波長範囲内にある。
【0410】
図20aには、固体層1または固体レイヤ1をドナー基板2から分離するための本発明による付加的または択一的な解決手段が示されている。
図20aによれば、ドナー基板2の内部に剥離領域11が生成される。この場合、改質10は好ましくは、ドナー基板2の周囲を取り囲む境界面50から離間されている。好ましくは改質10は、
図11の2番目の図面と同様に生成される。その際に考えられるのは、レーザビーム12を上方から、すなわち表面16を介してドナー基板2中へ導くこと、または下方からドナー基板2中へ導くことであり、ただし下方は「上方」とは反対側である。したがって好ましくは「下方」からのレーザの印加は、表面16に対し好ましくは平行または少なくとも実質的に平行な固体物もしくはドナー基板の表面を介して行われる。「下方」からの照射の場合、改質生成個所に至るまでのレーザビームの経路は、改質生成個所から表面16までの経路よりも好ましくは長い。当然ながら固体物を回転させることもでき、すなわちたとえば水平軸線を中心に180°だけ旋回させることができ、次いで表面16に対し平行な表面を介して改質をもたらすことができる。このケースでは、生成される改質が好ましくは表面16にさらにいっそう近づいて生成されるので、この変形実施形態は、「下方」からの変形実施形態の改質生成もしくは欠陥生成に相応する。
【0411】
図20bには、アブレーション工具22、特にドナー基板2を切削加工処理するための工具、たとえば研磨工具22などを用いた、ドナー基板2の加工処理について概略的に示されている。この加工処理によって、ドナー基板2の周方向において少なくとも部分的に、剥離領域と、剥離領域に対し好ましくは均一に特に平行に離間されたドナー基板2の表面との間の領域全体において材料が切除されて、ドナー基板2の半径方向の広がりが低減される。好ましくは材料はリング状に、特に一定または実質的に一定の半径方向寸法で、除去される。
【0412】
図20cには、材料切除後の状態に関する一例が示されている。この場合にたとえば考えられるのは、材料をドナー基板2の軸線方向で剥離面に至るまで、あるいはその下または上まで、切除することである。
【0413】
図20dには、固体レイヤ1をドナー基板2から分離もしくは剥離した後の状態が示されている。
【0414】
本発明による方法は、以下のステップのうちの1つまたは複数またはすべてを含むことができる。
【0415】
固体物をレーザ印加装置に対し相対的に移動させること。そのつど少なくとも1つの改質を生成するために、レーザ印加装置を用いて複数のレーザビームを相前後して生成すること。この場合、レーザビームを規定どおりに集束するために、かつ/またはレーザエネルギーを整合させるために、特に連続的に、少なくとも1つのパラメータに依存して、特に複数のパラメータに依存して、レーザ印加装置が調整される。
【0416】
レーザビームは、好ましくはドナー基板の平坦な表面を介してドナー基板中に侵入する。好ましくはレーザビームは、このビームがドナー基板の長手軸線に対し0°または180°とは異なる角度でドナー基板中に侵入するように、ドナー基板もしくは固体物の特に平坦な表面に対し傾斜している。好ましくはレーザビームは、ドナー基板内に改質を生成するために集束させられる。
【0417】
固体物は好ましくは、平坦な主表面に対し傾斜した結晶格子面を有し、この場合、固体物の主表面は、固体物の長手方向において一方の側の境界を成しており、その際に結晶格子面法線は主表面法線に対し第1の方向で傾斜しており、この場合、改質はドナー基板の材料特性の変化である。材料特性の変化は、固体物におけるレーザ放射の侵入個所を変えることによって、少なくとも部分的に線状造形物を成しており、この場合、線状造形物を点線、破線または実線として形成することができる。好ましくは、1つの線状造形物または複数の線状造形物あるいはすべてまたは大半の線状造形物は、1mmよりも長い、または5mmよりも長い、または10mmよりも長い、または20mmよりも長い、または30mmよりも長い長さを有し、あるいは1mmまでの、または5mmまでの、または10mmまでの、または20mmまでの、または30mmまでの、または50mmまでの、または100mmまでの長さを有する。材料特性の変化は、好ましくは生成面において、特に少なくとも1つの生成面において、または厳密に1つの生成面において、または1つのもしくは前述の剥離領域において、生成される。固体物の結晶格子面は、生成面もしくは剥離領域に対し好ましくは傾斜して配向されている。線状造形物は、生成面または剥離領域と結晶格子面との間の界面に生じる分割線に対し、好ましくは傾斜している。
【0418】
変化させられた材料特性によって、固体物に好ましくは臨界未満の亀裂の形態で亀裂が入る。さらに好ましくは、ドナー基板に外部からの力を及ぼして臨界未満の亀裂を結合することによって、固体層の分離が行われ、または臨界未満の亀裂を結合させながら固体層がドナー基板から剥離する程度に、生成面または剥離領域における材料がレーザ放射によって変化させられる。
【0419】
図21には、レーザから送出されるレーザのレーザビームによって形成される少なくとも1つのレーザ焦点の領域で、固体物1の材料特性を変化させるために、レーザのレーザ放射14(
図27c参照)が主表面8を介して固体物1の内部にもたらされることが、概略的に示されている。材料特性の変化は、ドナー基板1へのレーザ放射の侵入個所を変化させることにより線状造形物103を成しており、この場合、材料特性の変化は、少なくとも1つの特に同じ生成面4において生成される。さらにこの場合、ドナー基板1の結晶格子面6は生成面4に対し傾斜しており、特に3°~9°の角度で、好ましくは4°または8°の角度で、配向されている。その際に線状造形物103もしくは書き込み線は、生成面4と結晶格子面6との間の界面に生じる分割線10に対し傾斜している。変化させられた材料特性によって、ドナー基板1は臨界未満の亀裂の形態で裂ける。ドナー基板1に外部からの力を及ぼして臨界未満の亀裂を結合させることにより固体層2を分離するステップは、ここには描かれていない。これに対する代案として、臨界未満の亀裂を結合させながら固体層2がドナー基板1から剥離する程度に、生成面4における材料をレーザ放射によって変化させることができる。
【0420】
線状造形物103もしくは書き込み線もしくは線の形状で加工処理が行われ、これは個々のレーザショットを規定された間隔でセットすることにより形成される。
【0421】
具体的にはたとえば、結晶軸において0°よりも大きい偏角(業界標準は主軸の方向を中心に4°または8°)を有するドーピングされた/されていない0001表面を備えた、ポリタイプ4Hの炭化ケイ素から成るウェハを製造することができる。六方晶の結晶構造のすべり面は0001面に対し平行に延在しているので、0001結晶面とウェハ表面との交線が生じる。なぜならば0001結晶面はウェハ表面に対し相対的に偏角だけ傾斜しているからである。
【0422】
よって、新規の方法の基本的な考察は、レーザ線103の加工処理方向はこの交線の方向から逸れる、という点である。同様に加工処理方向は好ましくは、結晶の主方向には沿わずに延在するのが望ましく、または結晶の優先すべり面と結晶表面との交線に沿って延在するのが望ましい。
【0423】
さらにたとえば、ポリタイプ4Hの炭化ケイ素から成るウェハを製造することができる。ポリタイプ4Hの炭化ケイ素は、ウルツ鉱構造および0001面における6回対称を伴う六方晶の結晶系を有する。したがって60°ごとに結晶の新たな主軸が現れる。加工処理レーザが加工処理すべき材料部分に侵入する際に通過する表面が、0001面に沿ってカットされている場合には、表面法線を中心に回転させると6回対称が再び現れる。この場合には、個々の主軸に対し30°だけ回転し、つまりは2つの主軸の間に配向された線書き込み方向が生じる。このようにすれば、書き込まれた線が結晶の単位格子と可能なかぎり交差し、いっそう広い領域を含み複数の単位格子に一度に関わる亀裂がほとんど形成される可能性はない、ということが保証される。ポリタイプ4Hの炭化ケイ素は、以降の加工処理においてエピタキシステップを簡単にする目的で、0001面に対し相対的に4°の偏角でカットされることが多い。その際に明らかになったのは、結晶の主軸相互の投影は引き続き互いにほぼ60°を有し、それゆえ本発明による加工処理のためには30°+/-3°の優先書き込み角となる、ということである。
【0424】
さらにたとえば、立方晶のSiC(いわゆる3C)から成るウェハを製造することができる。立方晶のSiCは立方晶系のように振る舞い、つまり優先すべり面として111面を有し、その結果、22.5°+/-3°の優先線書き込み方向が生じる。
【0425】
さらにたとえば、0°の結晶軸の偏角を有するドーピングされた/されていない100表面を備えた、ケイ素から成るウェハを製造することができる。
【0426】
立方晶構造(ダイヤモンド構造)を備えたケイ素の優先すべり面は111面であり、この面は結晶主軸に対し45°の角度でウェハ表面と交差している。したがってその結果、結晶主軸ならびに互いに45°の角度で配向されたすべり面とウェハ表面との交線に対し、22.5°+/-3°の目標線書き込み角度が得られる。
【0427】
ケイ素基板も偏角でカットされている可能性があるので、その場合にはやはり別の加工処理角度が優先される可能性がある。主軸を中心に角度aだけ傾斜させると、この傾斜によって基板の表面において4回対称から2回対称へと対称性が低減される。傾斜の中心とされていない主軸の投影長さは、cos(a)に比例してスケーリングされ、その結果、主軸と、すべり面と表面との交線との間において、理想的な角度の変化が生じる。対称性の低減に起因して可能となる2つの線書き込み角bは、b1=tan-1(cos a)/2またはb2=tan-1(1/cos a)/2となる。
【0428】
0001面において6回結晶対称である六方晶のウルツ鉱構造を有し、その優先すべり面が0001面である窒化ガリウムの場合、これにより結晶主軸について60°の角度となることから、主軸に対し30°+/-3°の優先線方向が生じる。
【0429】
0001面において6回結晶対称である六方晶のコランダム構造を有する酸化サファイアまたは酸化アルミニウムの場合、これにより結晶主軸について60°の角度となることから、いわゆるC面サファイアの主軸に対し30°+/-3°の優先線方向が生じる。
【0430】
A面でカットされたサファイアの場合、180°の対称性を有する90°の角度の主軸配向であり、これにより45°+/-3°の優先線書き込み角が生じる。
【0431】
サファイアのC面基板は、表面に6回対称が現れ、この表面はすべり面と一致し、したがって30°+/-3°の角度が優先されるように、カットされている。
【0432】
M面でカットされたサファイアの場合、180°の対称性を有する90°の角度の主軸配向であり、これにより45°+/-3°の優先線書き込み角が生じる。
【0433】
R面サファイアは回転対称を有さないが、すべり面の投影直線に対し45°の主軸投影を有し、そのためにこの場合も22.5°+/-3°の書き込み方向が優先されている。
【0434】
六方晶の結晶系と共に用いられる三斜晶構造を有するタンタル酸リチウムの場合、基板の配向に依存して、個々の主軸および基板表面へのそれらの投影に対し相対的に、10°+/-3°~45°+/-3°の書き込み方向が生じる。
【0435】
100面において4回結晶対称である閃亜鉛鉱構造を有し、その優先すべり面が111面であるヒ化ガリウムの場合、これにより結晶主軸について90°の角度となることから、100表面を有する基板もしくはドナー基板1の主軸に対し、22.5°+/-3°の優先線方向が生じる。
【0436】
100面において4回結晶対称である単斜晶の立方晶構造を有し、その優先すべり面が111面である酸化ガリウムの場合、これにより結晶主軸について90°の角度となることから、100表面を有する基板の主軸に対し、22.5°+/-3°の優先線方向が生じる。
【0437】
100面において4回結晶対称であるダイヤモンド構造を有し、その優先すべり面が111面であるゲルマニウムの場合、これにより結晶主軸について90°の角度となることから、100表面を有する基板の主軸に対し、22.5°+/-3°の優先線方向が生じる。
【0438】
100面において4回結晶対称である閃亜鉛鉱構造を有し、その優先すべり面が111面であるリン化インジウムの場合、これにより結晶主軸について90°の角度となることから、100表面を有する基板の主軸に対し、22.5°+/-3°の優先線方向が生じる。
【0439】
100面において4回結晶対称である立方晶構造を有し、その優先すべり面が111面であるイットリウムアルミニウムガーネットの場合、これにより結晶主軸について90°の角度となることから、100表面を有する基板の主軸に対し、22.5°+/-3°の優先線方向が生じる。
【0440】
図22には、少なくとも1つの固体層2をドナー基板1から分離するための本発明による方法の基本的なステップと、書き込み線103の配向もしくは線状造形物の配向の幾何学的導出とが示されている。
【0441】
この図面によれば、本発明による方法は以下のステップも含み、または択一的に以下のステップを含む。
【0442】
ドナー基板1を準備するステップ。この場合、ドナー基板1は、平坦な主表面8に対し傾斜した結晶格子面6を有し、この場合、主表面8は、ドナー基板1の長手方向Lにおいて一方の側でドナー基板1の境界を成し、この場合、結晶格子面法線60は、主表面法線80に対し第1の方向で傾斜している。少なくとも1つのレーザ29を準備するステップ。レーザのレーザ放射14を固体物もしくはドナー基板1の内部へ主表面8を介してもたらし、少なくとも1つのレーザ焦点の領域で固体物の材料特性を変化させるステップ。この場合、レーザ焦点は、レーザから放出されたレーザのレーザビームによって形成され、この場合、材料特性の変化は、ドナー基板1中へのレーザ放射の侵入個所を変化させることにより、線状造形物を成し、この場合、線状造形物は、好ましくは少なくとも部分的に直線状に延在し、さらにこの場合、線状造形物は、特に少なくとも直線状に延在する区間は、主表面8に対し平行に生成され、その際に第1の方向に対し90°とは異なる角度で傾斜している第2の方向で延在し、この場合、変化させられた材料特性によって、ドナー基板1に臨界未満の亀裂の形態で亀裂が入る。ドナー基板に外部からの力を及ぼして臨界未満の亀裂を結合させることにより固体層を分離するステップ、または臨界未満の亀裂を結合させながら固体層がドナー基板から剥離する程度に、生成面における材料をレーザ放射により変化させるステップ。この場合、主表面は好ましくは、分離された固体層2の構成部分である。
【0443】
この場合、第2の方向は好ましくは、45°~87°の角度範囲で、特に70°~80°の角度範囲で、さらに好ましくは76°で、第1の方向に対し傾斜している。
【0444】
図23には、線状造形物103もしくは書き込み線が、結晶格子面の終端に対し、または
図22に示されているように、生成面4と結晶格子面6との間の界面に生じる分割線10もしくは交線に対し、傾斜していることが示されている。この配向によって、結晶格子面6(特にすべり面)の方向への亀裂の成長が制限される。したがって書き込み線ごとの改質9は、同じ結晶格子面6には生成されない。このためたとえば、書き込み線103ごとの最初の1~5%の改質は、基板長手方向Lにおいて、同じ書き込み線103の最後の1~5%の改質の結晶格子面のごく一部分とだけしか、特に75%未満、または50%未満、または25%未満、または10%未満とだけしか交差することができず、あるいはまったく交差することはできない。この関係は特に、改質9aは結晶格子面6a~6cと交差し、改質9bは結晶格子6a、6dおよび6eと交差していることによって、概略的に示唆される。したがって2つの改質9aおよび9bは、それらが同じ線状造形物103もしくは書き込み線の構成部分であるにもかかわらず、それぞれ異なる結晶格子面と交差している。さらにこの図からわかるのは、たとえば改質9cおよび9dは好ましくは、改質9a(6a、6b、6c)とは異なる、特に大半が異なる、または完全に異なる、結晶格子面(6d、6f、6g;6f、6h、6i)と交差していることである。
【0445】
主表面8上にある結晶格子面6の終端7は、顕微鏡による断面図で見ると、好ましくは鋸歯パターンを成している。
【0446】
個々の結晶格子面6a~6iは好ましくは、2°~10°、特に3°~9°、たとえば4°または8°の角度で、長手軸線Lに対して傾斜している。好ましくはドナー基板1の個々の結晶格子面は、互いに平行に配向されている。
【0447】
図24には、4HSiCに関してすべり面と共に結晶格子の一例が示されている。
図25aには、Siに関してすべり面110と共に結晶格子の一例が示されている。
図25bには、Siに関してすべり面100と共に結晶格子の一例が示されている。さらに
図25cには、Siに関してすべり面111と共に結晶格子の一例が示されている。
【0448】
好ましくは結晶格子面6は、特定のタイプのすべり面である。結晶構造が面心立方であるならば、すべり面は好ましくは面{111}であり、すべり方向は方向<110>である。結晶構造が体心立方であるならば、すべり面は好ましくは面{110}であり、すべり方向は方向<111>であり、またはすべり面は好ましくは面{112}であり、すべり方向は方向<111>であり、またはすべり面は好ましくは面{123}であり、すべり方向は方向<111>である。結晶構造が六方晶であるならば、すべり面は好ましくは面{0001}であり、すべり方向は方向<1120>であり、またはすべり面は好ましくは面{1010}であり、すべり方向は方向<1120>であり、またはすべり面は好ましくは面{1011}であり、すべり方向は方向<1120>である。
【0449】
図26a~
図27aには、線状造形物103をレーザもしくはレーザ装置を用いてドナー基板1に生成することが、概略的に示されている。この場合、線状造形物103は、アーチ状にもしくは湾曲して生成される。レーザ装置もしくは改質生成個所は、この場合には好ましくは変化しない。つまり改質生成個所および回転装置45の回転中心50は、好ましくは互いに同じ配向のまま留まる。したがって好ましくは、ドナー基板1がレーザ装置29のところを通過して、もしくはレーザ放射の出口32のところを通過して、動くだけである。ドナー基板1は好ましくは、以下のように回転装置に配置されている。すなわち、回転装置45の回転中心50とドナー基板1の中心49とを結ぶ区間51に対し直交して延在する方向52に対し、結晶格子面6の線を成す終端7が、特に3°~87°の角度で、好ましくは10°~60°の角度で、または14°~45°の角度で、傾斜して配向されるように、配置されている。
【0450】
図26a~27a全体を考察すれば、回転装置45の回転が進むと、ドナー基板1がレーザ装置のところを通過するように案内され、線状造形物103が生成され、もしくは長く伸ばされる、ということがわかる。線状造形物の始端では(
図26a)、この線状造形物は分割線10に対し、または結晶格子面の終端により形成された線に対し、角度eで生成される。線状造形物の中間では(
図26b)、この線状造形物は分割線10に対し、または結晶格子面の終端により形成された線に対し、角度mで生成される。線状造形物の終端では(
図27a)、この線状造形物は分割線10に対し、または結晶格子面の終端により形成された線に対し、角度sで生成される。この場合、角度eは好ましくは角度mよりも大きく、角度mは好ましくは角度sよりも大きい。ただしこの場合、角度sの絶対値が角度mよりも大きくなるようにすることも、考えることができる。
【0451】
これらの角度は好ましくは、2つの隣り合う改質相互間の中心が観念上で結ばれ、結果として生じる区間の角度が、分割線10に対して、または結晶格子面6の終端7により形成される線に対して、求められるようにして定められる。
【0452】
図26a~
図27aによれば、基板が回転する装置における理想的な書き込み角度が、ウェハ周縁部における接線の角度とウェハ中央部における接線の角度との間の平均角度として選定され、つまりSiCの場合には30°の平均角度は、たとえば回転台の半径と基板半径とに依存して、25°~35°の角度インターバルを意味するものとすることができ、これによって、たとえば六方晶系のために好ましい30°の書き込み角度が平均的に保持される。
【0453】
図27bには単なる例示として、回転装置45を上から見た図が示されている。この回転装置45上に、複数の、特に2個よりも多い、または3個よりも多い、または5個よりも多い、または10個よりも多い、好ましくは15個までの、または20個までの、または30個までのドナー基板を、特にブールまたはインゴットまたはウェハを、同時に配置しておくことができる。
【0454】
図27cには、改質9をドナー基板1もしくは固体物の内部に生成するための装置の側面図が概略的に示されている。好ましくは、レーザ装置の部材29が、特にレーザヘッドが、またはレーザと結合されたビームガイドが、好ましくは空間に固定されて配置された移動装置もしくは位置変更装置30のところに配置されている。移動装置もしくは位置変更装置30によって好ましくは、レーザ装置の部材29を、もしくはレーザ装置を、好ましくは直線方向で、特に回転装置45の半径方向で、運動させることができる。このようにしてレーザ装置の部材29は、もしくはレーザ装置は、1つまたは複数の規定された書き込み線103の生成後、好ましくは複数のまたはすべてのドナー基板1上において位置変更される。位置変更によって、個々のドナー基板1中に改質を生成するために、送出されるレーザビームが別の個所5において導かれる。
【0455】
図28aによれば、欠陥生成装置18もしくは改質生成装置が示されており、ただしこの装置は、以下のように構成されている。すなわちこの装置は、改質34を好ましくは少なくとも部分的に互いに異なる平面に生成し、これによって少なくとも部分的に、1つまたは複数の亀裂誘導層8が生成され、この層は3次元の物体の表面もしくは表面の輪郭に相応する。
【0456】
したがって本発明によれば、平坦な固体層4だけでなく同様に非平坦な固体物40も、割れ目または亀裂誘導に起因してワークピースもしくは固体物1から剥離させることができる。さらに、部分的に平坦に部分的に3次元に広がる固体物1から固体物40を剥離することも考えられる。
【0457】
さらに考えられるのは、浸漬液54を液滴として、または図示されているように液体層として、固体物1の露出した表面に被着することである。浸漬液54が液体層として設けられている場合には、好ましくは、液体が所望のポジションに保持されるように、収容ウェルを形成するための壁部装置50も設けられている。さらにカバープレート52を液体の上に被着することができ、特に載置または浸漬することができる。浸漬液54は好ましくは、固体物1と実質的に同じまたは厳密に同じ屈折率を有する。カバープレートの屈折率を、浸漬液の屈折率とは異ならせることができ、またはやはりそれと一致させることができる。このようにすることで特に好ましくは、特に表面の粗さを補償するために、浸漬液54を通して、さらに好ましくは浸漬液54とカバープレート52とを通過させて、欠陥生成を生じさせることが考えられる。レーザ18の焦点は、欠陥生成のために好ましくはコンピュータ制御されて案内される。
【0458】
図28bにはさらに別の集成体が示されており、これによれば適切な固体物1において、特にインゴットにおいて、非平坦な固体層4もしくは非平坦な固体物40を剥離するために、亀裂誘導層8が生成される。亀裂誘導層8を精密に生成するために、好ましくは浸漬液54が準備される。これは液滴として、または図示されているように液体層として、固体物1の露出した表面に被着される。浸漬液54が液体層として設けられている場合には、好ましくは、液体が所望のポジションに保持されるように、収容ウェルを形成するための壁部装置50も設けられている。さらにカバープレート52を液体の上に被着することができ、特に載置または浸漬することができる。浸漬液54は好ましくは、固体物1と実質的に同じまたは厳密に同じ屈折率を有する。浸漬液54によって、カバープレート52と生成すべき亀裂誘導層8との間の経路において、常に同じ屈折率が存在するようになり、これによって改質生成をできるかぎり誤差なく行うことができるようになる。
【0459】
図29aには、放射源18、特にレーザの領域に配置された固体物2もしくは基板が示されている。固体物2は好ましくは、第1の平坦な面部分14と第2の平坦な面部分16とを有し、この場合、第1の平坦な面部分14は好ましくは、第2の平坦な面部分16に対し実質的にまたは厳密に平行に配向されている。第1の平坦な面部分14および第2の平坦な面部分16は、好ましくはY方向で固体物2に隣接しており、Y方向は好ましくは垂直もしくは鉛直に配向されている。平坦な面部分14および16は、好ましくはそれぞれX-Z平面に延在しており、ここでX-Z平面は好ましくは水平に配向されている。ただし別の選択肢として考えられるのは、第1および/または第2の面部分14、16が非平坦な、特に湾曲した形状を有することである。
【0460】
さらにこの図から読み取れるのは、放射源18が固体物2に向けてビーム6を放射することである。ビーム6は、コンフィギュレーションに応じて、もしくは予め定められたパラメータに依存して規定された深さで、固体物2中に侵入し、個々のポジションのところで、もしくはそれぞれ予め定められたポジションのところで、結晶格子改質19を、特に欠陥を生成する。好ましくは、改質によって少なくとも1つの剥離領域8が予め定められる程度の個数の改質もしくは結晶格子改質19が生成される。好ましくは、剥離領域8は非平坦な輪郭もしくは非平坦な形状を有し、この場合、剥離領域8は、特に好ましくは少なくとも部分的に球面の、特に起伏のある、かつ/または湾曲した、かつ/またはアーチ状の形状を有する。さらにビーム6をたとえば、集束または収束のために光学系を通して案内することができ、この光学系は好ましくは、放射源18と固体物2との間に配置されている(図示せず)。
【0461】
参照符号9は、固体物2における別の剥離領域を表す。本発明によれば、別の剥離領域9も剥離領域8の生成中に生成することができる。別の選択肢として考えられるのは、別の剥離領域9を剥離領域8の生成後または生成前に生成することである。好ましくは、別の剥離領域9は、固体物部分4の分離後、または固体物部分4の分離前に生成される。好ましくは、固体物2における複数の剥離領域8、9によって、複数の固体物部分4、5が規定され、これらを好ましくは相前後して固体物2から分離することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、固体物2に厳密に1つの、または少なくとも1つの、または最大で1つの剥離領域8が生成される。本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、2つの、少なくとも2つの、または厳密に2つまたは3つの、少なくとも3つの、または厳密に3つまたは4つの、少なくとも4つの、または厳密に4つまたは5つの、少なくとも5つの、または厳密に5つまたはそれよりも多くの、特にたとえば10個または25個または50個または100個または500個までの、剥離領域が固体物2に生成される。
【0462】
図29bには多層の集成体が示されており、この場合、固体物2は剥離領域8を含み、この固体物2には第1の面部分14の領域に保持層12が設けられており、他方、この保持層12は、好ましくは別の層20によって重畳されていて、この場合、別の層20は好ましくは安定化機構、特に金属プレートである。固体物2の第2の面部分16に、好ましくは受容層が、特にポリマー層10が配置されている。受容層10および/または保持層12は、好ましくは少なくとも部分的に、特に好ましくは完全に、ポリマーから成り、特にPDMSから成る。
【0463】
別の選択肢として考えられるのは、受容層10をたとえばエピタキシにより固体物2の表面上に生成することである。好ましくは、生成された受容層10および固体物2は互いに異なる熱膨張係数を有する。このケースではコーティング50と解することもできる受容層10が生成された後、好ましくは作成された多層集成体の冷却が行われ、これによりそれぞれ異なる熱膨張係数に起因して応力が発生し、この応力によって固体物部分4が固体物2から剥離領域8に沿って分離もしくは剥離される。
【0464】
図29cには、亀裂が誘発され、それに続いて亀裂が誘導された後の状態が示されている。固体層4はポリマー層10に固着しており、固体物2の残された残留部から離間されており、または離間可能である。
【0465】
さらに本発明によれば、種々の剥離領域8、9がそれぞれ異なる形状もしくは輪郭を有することができる。さらに考えられるのは、たとえば、あとで分離される固体物部分4、5の表面である第2の面部分16を、固体物部分4、5を分離する前に別の形状にすることである。この形状変更を、固体物部分4、5の分離と同じようにして行うことができ、または切削加工処理、特に研磨プロセスによって、生じさせることができる。
【0466】
したがって本発明は、固体層を製造する方法に関する。この場合、本発明による方法は、少なくとも1つの固体層4を分離するために固体物2を準備するステップ、少なくとも1つの改質手段を用いて、特に放射源、特に少なくとも1つのレーザ、特に少なくとも1つのfsレーザまたはpsレーザまたはnsレーザを用いて、固体物の内部構造に結晶格子欠陥などの改質を生成し、少なくとも1つの剥離領域8、9を予め定め、この剥離領域8、9に沿って固体層4、5を固体物2から分離するステップ、を少なくとも含む。さらに本発明による方法は好ましくは、固体物2に配置されたポリマー層10に熱的衝撃を印加して、固体物2に特に機械的に応力を生成するステップを含み、この場合、応力により、固体物2内で剥離領域8に沿って亀裂が伝播し、この亀裂によって固体層4が固体物2から分離される。
【0467】
図30aおよび
図30bには、レーザビーム6を用いて固体物2中に改質19、特に欠陥または損傷を導入することによる、
図33aに示した剥離領域8の生成に関する例が示されている。
【0468】
したがって
図30aには、放射源18を用いて、特に1つまたは複数のレーザ、特に1つまたは複数のfsレーザを用いて、特に剥離領域8を生成するために、改質19を固体物2においてどのようにして生成可能であるのかが、概略的に示されている。この場合、放射源18は、第1の波長30と第2の波長32とを有する放射6を送出する。波長30、32はその際に、以下のようにして互いに調整されており、もしくは放射源18と生成すべき剥離領域8との間の距離が、以下のようにして調整されている。すなわち波30、32が、固体物2内で実質的にまたは厳密に剥離領域8において合流し、それによって合流個所34のところに、両方の波30、32のエネルギーに起因して欠陥が生成されるように調整されている。この場合、欠陥生成を、たとえば昇華または化学反応など種々のまたは組み合わせられた分解メカニズムによって行うことができ、この場合、分解をここではたとえば熱的に、かつ/または光化学的に引き起こすことができる。
【0469】
図30bには、集束された光ビーム6が示されており、この光ビーム6の焦点は好ましくは剥離領域8にある。その際に考えられるのは、集束作用を有する1つまたは複数の物体、特に1つまたは複数のレンズ(図示せず)を介して光ビーム6を集束させることである。
【0470】
図31aには、本発明による非平坦な固体物部分4または非平坦なウェハが描かれており、この場合、固体物部分4またはウェハ4は、1つの図面によれば反りを形成し、もしくは断面が反った形状を示す。ここで考えられるのは、固体物部分4が互いにネガ型に形成された2つの表面輪郭もしくは表面形状を有することである。ただし同様に考えられるのは、固体物部分4の互いに反対側に位置する2つの主表面40、42の表面輪郭もしくは表面形状が、互いにネガ型に形成されているのではなく、互いに異なる輪郭もしくは形状を有することである。
【0471】
図31bにはコーティング50の生成が示されており、特にエピタキシにより生成された層が示されている。コーティング50は好ましくは、50℃よりも高い温度において、特に100℃よりも高い、または150℃よりも高い、または200℃よりも高い、または300℃よりも高い、または400℃よりも高い温度において、固体物部分4上に配置され、または生成される。この場合に考えられるのは、コーティング50を実質的に一定の厚さで、または一定の厚さで、固体物部分4上に配置または生成することである。ただし別の選択肢として、コーティング50が局所的に異なる厚さを有することも考えられる。したがってさらなる処理は好ましくは、規定されたコーティング50を固体物部分4の少なくとも一方の表面40、42上に配置または生成することである。この場合、予め定められたパラメータは、好ましくは少なくとも以下のデータを含む。すなわちこのデータによって、少なくとも間接的に固体物部分4およびコーティング50の材料の熱膨張係数が算入され、またはこのデータによって、コーティング50が設けられた固体物部分4の規定された温度制御に起因する固体物部分4の変形が算入され、または予め定められる。
【0472】
図31cには、固体物部分4の少なくとも一方の表面40、42にコーティング50が生成または配置された後の状況が示されており、この場合、生成されたマルチコンポーネント集成体39の形状が、それぞれ異なる熱膨張係数に基づき変化させられている。好ましくは、マルチコンポーネント集成体39もしくは多層集成体の主表面40および44のうち少なくとも一方が、平坦なまたは実質的に平坦な形状に移行させられている。この変形は好ましくは、多層集成体39の好ましくは規定された温度制御の結果として、特に加熱または冷却の結果として生じる。
【0473】
したがって固体物部分4は本発明によれば、あとで行われる処理方法に応じて、特にコーティング法に応じて、以下のように構成されている。すなわち、固体物部分4の一方または両方の主表面40、42の形状が、この処理に起因して、特にコーティング法に起因して、規定どおりに変化するように、特に平坦化するように、または平坦に形成されるように、構成されている。特に好ましくはコーティングは、金属層または半導体層であり、特に窒化ガリウム層(GaN)またはケイ素層であり、これはケイ素、サファイア、炭化ケイ素(SiC)またはヒ化ガリウム(GaAs)から成る固体物部分の上に配置または生成される。
【0474】
図32には、本発明によるレーザ印加装置8が示されており、これは好ましくは本発明による方法および本発明による装置30において、固体物1に改質2を生成するために設けられている。
【0475】
この場合、レーザ印加装置8は、特に焦点マーキングを備えた少なくとも1つのレーザビーム源32を有する。したがってレーザビーム源32を好ましくは具体的には、焦点マーキングを備えた同軸光源とすることができる。レーザビーム源32により生成された光ビーム10は好ましくは、予め定められた経路上をレーザビーム源32から集束装置44まで、もしくは固体物1における焦点サイズおよび焦点ポジションを調整する調整装置44まで、案内される。調整装置44をここでは好ましくは、特にZ方向もしくはレーザビーム推移方向での高精度集束装置とすることができる。好ましくは調整装置44を、圧電高精度集束装置として構成することができる。調整装置44を通り抜けて進むレーザビーム10は、好ましくは長い動作距離を有する顕微鏡46を通過する。特に好ましくは、長い動作距離を有する顕微鏡46および調整装置44は、改質2が予め規定された個所に生成されるように、レーザ放射を整合もしくは調整もしくは修正する。ここで考えられるのは、たとえば5μm未満、好ましくは2μm未満、特に好ましくは1μm未満だけしか、予め規定された個所から隔たっていない、もしくは予め規定された個所から離間されていない個所に、改質2を生成することである。調整装置44は好ましくは制御装置14によって制御され、この場合、制御装置14は好ましくは、レーザ印加装置8に対する固体物1の相対ポジションおよび配向を、またはレーザ放射を導くべき目下の表面部分からレーザ印加装置8までの間隔を、ならびに個々の個所における固体物1の固体材料の局所的な屈折率または平均屈折率および加工処理深さを、レーザ印加装置8を調整するために、特に少なくとも調整装置44を調整するために、計算もしくは特定もしくは使用する。制御装置14は、対応するつまりは通信するように接続されたセンサ装置もしくはセンサ手段を介して、必要とされるデータをリアルタイムで捕捉もしくは受信することができる。ただし別の選択肢として同様に考えられるのは、たとえば屈折率と加工処理深さの2つのパラメータのうち一方または両方について、改質2を生成するためにレーザビーム10が固体物1中に侵入する際に通過する表面の分析が、加工処理開始前に行われる、もしくは実施される。このようにすれば、これらのパラメータを、個所に依存する相応のデータの形式で記憶装置もしくはデータストレージ12に予め保持することができ、もしくはそこに読み込むことができる。データストレージ12をここでは交換型媒体として、特にメモリカードとして、または固定的に組み込まれた記憶装置として、レーザ印加装置8の一部分とすることができる。
【0476】
ただし別の選択肢として同様に考えられるのは、データストレージ12をレーザ印加装置8の外部に配置し、少なくとも一時的に通信するようにレーザ印加装置8と接続可能にすることである。これに加え、または別の選択肢として、制御装置14に対しユーザ52が、動作シーケンスまたは動作シーケンスの変更を予め与えることができる。さらに考えられるのは、データストレージ12を制御装置14の構成部分として構成することである。これに加えて、または別の選択肢として、センサ装置16によって、固体物1の予め定められた表面ポイントとレーザ印加装置8との間の間隔のための距離データを捕捉することができる。この距離データは好ましくは、処理のために制御装置14にも供給される。
【0477】
さらに想定できるのは、レーザ印加装置8がカメラ34を、特に同軸焦点カメラを有することである。カメラ34は好ましくは、レーザ印加装置8から出射したレーザビーム10のビーム路の方向に配置されている。ここで考えられるのは、光学素子36、特に部分的に透光性のミラーを、カメラ34の光学視野内に配置することである。好ましくは光学素子34によって、レーザ放射10がカメラの光学視野内に送り込まれる。
【0478】
さらに想定できるのは、さらに別の光学素子38もしくは回折性の光学素子、特にビームスプリッタ38を設けることである。この場合、ビームスプリッタ38によって、レーザビーム10の一部分が主ビームから分岐して導かれる、もしくは分離される。さらにレーザ放射の分離されたもしくは分岐して導かれた部分を、任意選択的な球面状の光学収差補償部40によって、かつ/または任意選択的なビーム拡開部42もしくはビーム経路拡張部によって、修正することができる。
【0479】
さらに参照符号48は、特に冷却液を供給するために好ましくは設けられている液体供給装置48を表す。好ましくは液体供給装置48を用いることによって、固体物1および/または顕微鏡の温度制御、特に冷却を生じさせることができる。
【0480】
参照符号50は屈折率特定手段を表し、この手段も好ましくは透過性かつ反射性の表面を分析することができる。好ましくは屈折率特定手段50による屈折率の特定は、改質生成に先立って行われる。この場合、別の選択肢として考えられるのは、屈折率の特定を別の装置によって実施し、捕捉されたデータを本発明によるレーザ印加装置8へデータ伝送によって供給することである。
【0481】
図32に描かれている矢印終端を含む点線は、この場合には好ましくはデータおよび/または信号の伝送を表す。
【0482】
図33aには、装置30の装置コンポーネントであるレーザ印加装置8、収容装置18および駆動装置もしくは走行装置22の好ましい配置について、概略的に示されている。この図から、この配置に従い好ましくは収容装置18とレーザ印加装置8との間に固体物1が配置されていることがわかる。好ましくは、固体物1は収容装置18に固着されており、その際に固体物1を収容装置18に押圧することも考えられる。
【0483】
図33bには、改質2の生成後もしくは亀裂誘導領域4の完全な生成後の集成体が示されている。レーザビーム10が固体物1に侵入させられるときに通過する固体物1の表面24に、この図によれば受容層もしくはポリマー層26が配置もしくは形成されている。さらに装置54によって、機能液56を送出する機能液源が表されている。機能液56は好ましくは液体窒素である。したがって機能液56によって、受容層26が20℃を下回る温度まで冷却され、特に10℃を下回る温度まで、または0℃を下回る温度まで、または受容層26のポリマー材料のガラス転移温度を下回る温度まで冷却される。受容層26の冷却によって高い機械的応力が生成され、この応力により亀裂誘導領域4に沿って亀裂伝播が行われる。
【0484】
図34aには単なる例示として、固体物1の表面プロフィルと固体材料の屈折率との関係が示されている。水平軸上に記載された値は、単位μmで示されている。
【0485】
図34bには、レーザを印加すべき材料の例示的な偏差(表面プロフィルおよび横方向の屈折率推移)ならびにレーザ焦点位置が示されている(no AF:オートフォーカスを行わず、表面プロフィルが逆比例で屈折率だけ増幅されて材料に書き込まれ、標準AFはこの反転を逆に戻して、表面プロフィルがn倍だけ増幅されて伝達されるようにする。nAF:基板屈折率もしくは屈折率を一定の係数として考慮し、これによって表面プロフィルが1:1で材料に伝達されるようにする。AAF:望ましい先進的オートフォーカス機能は、平均基板屈折率と目標深さとを把握することで、正確に水平な平面を材料に書き込むことができる)。
【0486】
図35aには単なる例示として、レーザ焦点の様々な調整ポジションが示されている。水平軸上に記載された値は、単位μmで示されている。したがって様々なケースにおけるレーザヘッドのポジションのための調整入力量として、これらの波形を特定することができる。
【0487】
nAF (n-aware AF):表面のオートフォーカス基準量を平均基板屈折率(n)だけ補正する。これによって表面偏差を1:1でボリューム中に伝達することができる。よって、割裂すべきウェハは、理論的には厚さ変動(TTV)をもたないことになる。ただしトポグラフィつまりは不十分な平坦性は、ウェハについても残されたインゴットについてもそのまま維持される。
【0488】
AAF (advanced AF):平均基板屈折率および表面の補償平面を把握して表面のオートフォーカス基準量を補正する。したがって平均屈折率からの偏差がない均一な試料であれば、平坦なレーザ平面が得られ、これによって安価な研磨ステップでさらなる分割のために半導体結晶が著しく平坦に準備される。これに対し、割裂されたウェハは分割直後、一方の側では平坦になるが、比較的大きな厚さの偏差を有することになる。
【0489】
AnAF (Advanced n-aware AF):局所的な基板屈折率および表面の補償平面を把握して表面のオートフォーカス基準量を補正する。したがって非均一な試料であることが予めわかっている場合であっても、平坦なレーザ平面が得られ、これによって安価な研磨ステップでさらなる分割のために半導体結晶が著しく平坦に準備される。
【0490】
したがって本発明は、固体物内に改質を生成する方法に関し、この場合、改質によって、亀裂を誘導して固体物部分を、特に固体層を、固体物から分離するための亀裂誘導領域が予め定められる。その際に本発明による方法は、好ましくは以下に挙げるステップのうちの1つまたは複数またはすべてのステップを含む。すなわち、固体物をレーザ印加装置に対し相対的に移動させるステップ。そのつど少なくとも1つの改質を生成するために、レーザ印加装置を用いて複数のレーザビームを相前後して生成するステップ。この場合、複数のパラメータ、特に少なくとも2つのパラメータに依存して、連続的にレーザビームを規定どおりに集束するために、レーザ印加装置が調整される。好ましくは、本発明による方法によって、ボリューム内における多光子材料加工処理のための平坦なマイクロフォーカスが実現される。
【0491】
図35bには、それぞれ異なる改質分布のプロフィルを表す2つの経過特性が示されている。
【0492】
図36aには、ラマン機器が示されている。この図に示されているラマン機器58は、放射を送出するレーザ60を有する。この放射は好ましくは、少なくとも1つの光ファイバ61を用いて励起のために好ましくは光学系に供給され、この光学系、特にレンズ64により好ましくは集束され、特に固体物に集束される。この放射は、少なくとも部分的に散乱させられ、その際に好ましくはフィルタ装置もしくは励起フィルタ62を用いて、レーザから送出された放射と同じ波長を有する光成分がフィルタリングされて取り出される。次いで、その他の放射成分が分光器68に供給され、カメラ装置、特にCCD検出器70を用いて捕捉され、制御装置14、72、特にコンピュータによって評価もしくは準備処理される。
【0493】
したがって好ましくは結晶中の原子振動が、好ましく外部のレーザによって、または特に好ましくは別のレーザによって、励起される。これらの振動は、結晶原子において光が散乱することによって生成され、その結果、観察可能な散乱光が発生し、これは振動エネルギーの値だけ変化した光子エネルギーを有する。励起可能な複数の振動がある場合には、散乱光のスペクトルにおいて複数のピークも発生する。この場合には、分光計(格子分光計)を用いて、発生したラマン散乱スペクトルをいっそう詳細に検査することができる(いわゆるラマン分光法)。この方法の場合、個々のラマン線の形状に結晶中の局所的な条件の影響が現れ、ラマン線の形状を分析することにより、ドーピング濃度を推定することができる。
【0494】
図36bには、SiCにおいて発生する可能性のある格子振動がどのように見えるのかが示されており、その際、このモードは結晶の対称性と方向とによって予め定められており、同時に励起しておくこともできる。図示されている見え方は、結晶軸Aに沿って延在したものである。この場合、原子の振動は特定の方向のみで可能であり、それらの方向は結晶の対称性によって予め定められている。
【0495】
図37aには、窒素でドーピングされた4Hの炭化ケイ素固体物のラマン経過特性の一部の区間が示されている(ドーピングされたSiCにおけるラマンに関する例示的なスペクトル)。この場合、ドーピング濃度を測定するためにLO(PC)モードの形状が利用され、フィッティングされる。下方の枠はフィッティング残渣である。
【0496】
図37bには、ラマン経過特性のさらに短い区間が示されている。
【0497】
図示されているように、ラマン測定を用い形状の測定およびそれに続くLO(PC)モードへのフィッティングから、ドーピング濃度を求めるための、直接的な方法がもたらされる。
【0498】
よって、総じて目的は、レーザパラメータを調整することによって最適な(できるかぎり小さい、できるかぎり短い)亀裂の推移を材料中にセットすることであり、この亀裂の推移は、それでもなお亀裂伝播に起因して分離を成功させるものであり、ただし他方では、あらゆる材料損失を(研磨ステップにおいても)最小化する、もしくは低減する。
【0499】
図38aおよび
図38bには、ブール/インゴットからの個々のウェハの取り出しを具体化する2つの可能性が示されている。
【0500】
これは
図38aによればフィードフォワードループとして構成されており、
図38bによればフィードバックループとして構成されている。
【0501】
フィードフォワードの場合、レーザプロセスの前に分布が特徴づけられ、それによってマップが計算され、特に高さマップおよび/またはエネルギーマップ、もしくは処理指示もしくはパラメータ整合が、特に個所に応じて、レーザプロセスのために、特に改質生成のために、計算される。フィードフォワードは、好ましくはインゴット/ブールにおいて実施される。
【0502】
別の選択肢として、
図38bに描かれているように、フィードバックループを実装することができ、これによれば分離ステップごとに結果として生じたウェハが特徴づけられ、次のウェハのためのモデルとして用いられる。
【0503】
したがって材料およびドーピングに応じて、レーザプロセス中にそれぞれ異なる整合を行うことができる。すなわち、材料がSiCであれば、それぞれ異なる深さにおいて、生じているドーピングに依存して、レーザパラメータのそれぞれ異なる整合を行うことができる。これによって、以下に挙げる境界条件の場合に、やはり以下に挙げる機能をもたらすことができる。
【0504】
深さ180μm、パルス持続時間3ns、開口数0.4
低濃度のドーピング:7μJ-21mOhmcm
高濃度のドーピング:8μJ-16mOhmcm
【0505】
深さ350μm、パルス持続時間3ns、開口数0.4
低濃度のドーピング:9.5μJ-21mOhmcm
高濃度のドーピング:12μJ-16mOhmcm
【0506】
180μmの深さに対する式:
E 単位μJのエネルギー
E0 最低濃度のドーピングのときのオフセットエネルギー
K エネルギースケーリングの係数
R 測定されたドーピング濃度
B 基本ドーピング濃度(21mOhmcm)
E=E0+(B-R)*K
ここで
K=1/(21-16)μJ/mOhmcm=0.2μJ/mOhmcm
E0=7μJ
B=21mOhmcm
例:測定されたドーピング濃度が19mOhmcm:E=7.4μJ
【0507】
350μmの深さに対する式:
E 単位μJのエネルギー
E0 最低濃度のドーピングのときのオフセットエネルギー
K エネルギースケーリングの係数
R 測定されたドーピング濃度
B 基本ドーピング濃度(21mOhmcm)
E=E0+(B-R)*K
ここで
K=2.5/(21-16)μJ/mOhmcm=0.5μJ/mOhmcm
E0=9.5μJ
B=21mOhmcm
例:測定されたドーピング濃度が19mOhmcm:E=10.5μJ
【0508】
図39には、それぞれ異なる欠陥密度82、84、86もしくは改質密度もしくは改質蓄積を有する領域を備えた剥離面8が示されている。ここで考えられるのは、それぞれ異なる改質密度を有する複数の領域によって1つの剥離面8を形成することであり、その際にやはり想定できるのは、剥離面8における改質34を実質的にまたは厳密に等しく面全体にわたり分布させることである。それぞれ異なる改質密度を、面全体にわたり等しい大きさで、またはそれぞれ異なる大きさで、形成することができる。好ましくは、第1の高められた改質密度は亀裂誘発密度82を表し、これを好ましくは周縁領域において、または周縁部に向かうように延在させて、もしくは周縁部に隣接させて、生成することができる。これに加え、または別の選択肢として、固体層4を固体物2から分離する亀裂をコントロールできるように、もしくは制御できるように、亀裂誘導密度84を形成することができる。さらにこれに加えて、または別の選択肢として、中心密度86を生成することができ、これによって好ましくは、固体物2の中心領域において著しく平坦な表面を実現することができる。好ましくは亀裂誘導密度84は、部分的にまたは完全にリング状に、もしくは周囲を取り囲むように形成されており、したがって好ましくは部分的に、特に好ましくは完全に、固体物2もしくは固体層4の中心を取り囲んでいる。さらに考えられるのは、亀裂誘導密度84を、固体物2の周縁部から出発して固体物2の中心方向に、段階的にまたは連続的にもしくは滑らかに減少させることである。さらに考えられるのは、亀裂誘導密度84を帯状にかつ均一に、もしくは実質的にまたは厳密に均一に形成することである。
【0509】
図40aには概略的に、上部の図に固体物2の上面図が示されており、下部の図には側面図が、特に断面図が、示されている。固体物2にはこの図面では直線が設けられており、これらの直線は互いに並置された個々の固体素子40、特に支持体素子たとえばコンピュータチップまたはソーラチップなどの境界を成している。これらの線はここでは単なる例示として、また、説明のために、固体素子40の外形を描くことができるのであって、これらは実際の固体物2においては、目に見えなくてももしくは存在していなくてもよく、または必ずしも目に見えなくてももしくは存在していなくてもよい。さらに固体物2は、特に直線部分を含む別の外形を有することができる。
【0510】
図40bの上面図および側面図から、複数の欠陥34をそれぞれ読み取ることができる。改質もしくは欠陥34を、上面図に描かれているように、均等に分布させることができ、または特定の領域だけ増やしてもしくは減らして生成することができる。低密度の欠陥34とは異なり高密度の改質もしくは欠陥34によって、たとえば規定された亀裂誘発および/または固体層4のいっそう簡単な剥離を、個々の領域において実現することができる。好ましくは、亀裂を誘発させたい固体物2の個所の領域には、高められた密度の欠陥34が設けられている。さらに好ましくは、亀裂伝播の向きを操る目的で亀裂の推移を制御するために、高められた密度で欠陥34が設けられる。さらに好ましくは、第1の剥離面8の中央もしくは中心において、付加的または択一的に、第1の剥離層8の他の領域よりも高められた密度の欠陥もしくは改質34が生成される。剥離面8が好ましくは1つの平面に生成された欠陥34により形成されることを、側面図から読み取ることができる。
【0511】
図41の上面図には、第1の剥離層8を成す欠陥34のほか、第2の剥離面50に生成された欠陥が示されており、これらの欠陥は破線で描かれており、Z方向に延在している。さらにX方向に配向された破線が示されており、これらの破線も欠陥を表しており、第3の剥離面52に位置している。したがって第1の剥離面8は好ましくはX-Z平面に位置しており、第2の剥離面50は好ましくはY-Z平面に位置しており、さらに第3の剥離面52は好ましくはX-Y平面に位置している。
図41の側面図もしくは断面図から読み取れるのは、欠陥すなわち第1の剥離層8を生成するための欠陥、および第2の剥離層50を生成するための欠陥、ならびに第3の剥離層52は、固体物2の平坦な表面に対し、特に固体物2のX-Z平面に位置する表面に対し、それぞれ異なる隔たりで離間されていることである。
【0512】
図42aに示されている図によれば、1つまたは複数の第2の剥離面50を生成するための欠陥34がすでに生成されている。ただし、1つまたは複数の第3の剥離面52を形成するための欠陥34は、まだ生成されてない。したがって考えられるのは、1つまたは複数の第2および第3の剥離面50、52を、同時に、時間的にずらして、または完全に相前後して生成することである。さらに側面図もしくは断面図から読み取ることができるのは、1つまたは複数の第2の剥離面50を生成するための欠陥を、X-Z平面に延在する表面に対しそれぞれ異なる間隔で生成できることである。
【0513】
図42bから読み取れるのは、第1の剥離層50および第2の剥離層52を生成するための欠陥をそれら全体で、X-Z平面に延在する表面に対し同じ間隔で生成することもできることである。
【0514】
図43に示されている実施形態によれば、固体層4がポリマー層10のところに配置されている。この場合に考えられるのは、第2の剥離層50および第3の剥離層52を生成するための欠陥をすでに固体層4に生成しておくことである。さらに別の選択肢として考えられるのは、第2の剥離層50および第3の剥離層52を生成するための欠陥を、固体物2から固体層4を割裂した後に初めて、固体層4に生成することである。
【0515】
図44aに示されている集成体によれば、固体層4がポリマー層10の上に配置されており、もしくは固体層4がポリマー層10と特に接着により結合されている。その際にポリマー層10は、第1の方向60および/または第2の方向62において偏向させられ、かつ/または少なくとも1つの軸線を中心に湾曲させられる。ポリマー層10の偏向を、熱による作用および/または外部からの力を及ぼすことによって、特に伸長、圧縮および/または曲げによって、引き起こすことができる。
【0516】
図44bには、
図44aを参照しながら説明したポリマー層10の偏向に対する反応が示されている。この場合、個々の固体素子40の剥離は、第2の剥離面50および/または第3の剥離面52の領域において、もしくはこれらの面に沿って、行われる。剥離はこの場合には好ましくは、個々の固体素子40を互いに折るまたは剥ぎ取ることに相応する。
【0517】
図45aには、固体レイヤ1(
図46参照)をドナー基板2から分離する装置が示されている。その際にこの装置は好ましくは、ドナー基板2を固定するための保持装置14を有する。ドナー基板2上に、特にポリマー材料から成るかまたはポリマー材料を有する、応力生成層4が配置されている。応力生成層4の、ドナー基板2とは反対側の表面は、図示の変形実施形態においては、圧力印加装置8の圧力印加部材6の接触面に接触している。圧力印加装置8はこの場合、圧力印加部材6を応力生成層4に押圧する力を生成するための、たとえば電気式または液圧式または空気圧式または機械式の力生成装置、特にアクチュエータを有することができ、またはこれと結合しておくことができる。好ましくは、圧力印加を力生成装置によって調整可能である。温度制御装置26によって好ましくは、熱的衝撃印加、特に応力生成層4の冷却が行われる。この場合、応力生成層4への熱的衝撃印加を間接的に、またはもっぱら間接的に行うことができ、つまりたとえばまずは圧力印加部材6を温度制御し、次いでこれによって応力生成層4が温度制御される。さらに考えられるのは、応力生成層4の直接的および間接的な温度制御を一時的に行うことである。温度制御装置26は好ましくは、機能液28、特に窒素を、好ましくは液状または霧状で供給する。さらに圧力印加部材6を、応力生成層4の予め定められた部分に押圧させることができ、これと同時に、同じ応力生成層4の予め定められた別の部分を、温度制御装置26によって温度制御することができる。
【0518】
熱的衝撃印加によって応力生成層4が収縮し、これによって機械的応力がドナー基板2に生成される。圧力印加装置8は同時に応力を生成するために、応力生成層4の一部分に、または圧力印加部材6とドナー基板2との間に配置された応力生成層4全体に、圧力印加を生じさせる。
【0519】
したがって圧力印加装置8は、応力生成層4がガラス転移に到達したときに発生する力のピークに対抗して作用する。さらに圧力印加装置8は好ましくは、固体レイヤ1の割裂される部分の偏向も減少させ、これにより亀裂伝播の際に発生する楔作用が著しく小さくなった角度で発生し、これにより亀裂が著しく安定して予め規定された剥離面12(
図1b参照)内を推移するようになる。
【0520】
参照符号Dは、好ましい圧力印加方向を表す。
【0521】
図45bに示されている図面は、
図1aに示した図面に実質的に対応し、この場合、ドナー基板2は、レーザビームにより生成された改質10を有する。その際に改質10によって、固体レイヤ1をドナー基板2から分離するための亀裂を誘導する剥離領域12が予め定められる。
【0522】
図46に示されているように、圧力印加部材6は、機能液を案内する1つまたは複数の排出部材18もしくは導管部材18を有することができる。さらにこの図面には、分離される固体レイヤ部分の偏向運動を制限するために、圧力印加部材6が用いられる状況が示されている。その際に圧力印加部材6の接触面16は好ましくは、応力生成層4の露出した表面に対し、または剥離面12に対し、間隔ASだけ離間されている。この場合、間隔ASは好ましくは、半径方向の周囲面Oと軸方向中心Lとの間の最短区間の分数であり、またはこの最短区間の規定された分数よりも小さい。さらにこの実施形態は、単なる例示として、偏向が発生したケースにおいて圧力印加装置8の運動方向を予め定めるためのガイド装置30を有する。かかるガイド装置を、本明細書で説明するすべての実施形態において設けておくことができる。
【0523】
図47aに概略的に示されているのは、それぞれ異なるように構成された複数の圧力印加部材6a、6b、6cを圧力印加装置8の構成部分とすることができる、ということである。ここに示されている圧力印加部材6a、6b、6cは、それぞれ異なる高さを有する。したがって6aが応力生成層4に押圧されると、6cが押圧されたときよりも応力生成層4が大きく圧縮する。よって、6aとドナー基板2との間の領域には、6cとドナー基板2との間よりも大きい圧力が生じる。つまり中心部では好ましくは、周縁領域よりも大きい圧力が加わり、ただしここのことを逆に構成することもできる。領域6bはこの実施形態によれば、ほとんどまたはまったくドナー基板4に押圧されない。
【0524】
図47bには、「いっそう厚い」側からの圧力印加が可能であることが概略的に示されており、この場合、薄い側は保持装置14によって(たとえば真空ホルダ、または保持テープなどによっても)、曲がってしまうのが阻まれる。この場合、剥離領域12は好ましくは、ドナー基板2を複数のウェハに分割する際に行われる分離ステップの少なくとも大半において、圧力印加部材が接触させられる表面よりも処理される層の近くに離間されて位置している。この場合、処理される表面40は、ドナー基板長手方向において一方の側でドナー基板2の境界を成しており、圧力印加部材が接触させられる表面は、ドナー基板長手方向において他方の側でドナー基板2の境界を成している。これにより少なくとも部分的に製造されたウェハ上のデバイスにおいて、そのデバイスが曲げられない、または制限された範囲でしか曲げられない、ということが保証される。さらに、デバイスの側の表面を印加しなければならないことが避けられる。
【0525】
図47cに示されている変形実施形態によれば、処理される表面40がボンディング層もしくはボンディング界面42によって、搬送基板もしくはウェハ(技術的にはトランスファウェハ)と接合されている。この場合、ボンディング層もしくはボンディング界面42を、たとえば接着層、特に接着テープによって、または相転移物質、特に流体、特に液体によって、形成することができる。ボンディング界面42が相転移物質によって形成される場合、相転移物質は好ましくは周囲圧力において、20℃よりも低い、または10℃よりも低い、または5℃よりも低い、または0℃の凝固点を、または0℃よりも低い、または-5℃よりも低い、または-20℃よりも低い凝固点を有する。相転移物質は好ましくは水であり、特に純水(VE水)である。その際にボンディング基板44および/または処理される表面40は、好ましくは相転移物質によって湿らされ、もしくは濡らされ、この場合、相転移物質は第1の凝集状態にある。次いで処理される表面40はボンディング基板44に置かれ、または載置され、特にそれに対し押圧される。さらに好ましくは、相転移物質の凝固点を下回る相転移物質の温度制御が行われ、この場合、相転移物質はそれによって、特に液体である第1の凝集状態から特に固体である第2の凝集状態へ移行させられる。この場合、受容層の温度制御のために行われる冷却によって、冷却を生じさせることができる。これに加えて、または別の選択肢として可能であるのは、相転移物質を受容層の温度制御の前に相転移物質の凝固点を下回る温度にまで温度制御することである。このことが有利であるのは、これによってボンディング界面を可逆的に生成可能かつ保持可能であるからである。さらにこの場合、特に好ましくは、有毒物質も不要である。
【0526】
図48aに示されている実施例によれば、圧力印加装置8は、互いに運動する複数の圧力印加部材6a、6bおよび6cを有する。この圧力印加部材6a,6b,6cを、それぞれ力伝達手段20、22、24を介して、同じまたは異なる押圧力を供給する1つまたは複数のアクチュエータと結合することができる。本発明によれば、個々の圧力印加部材6a、6b、6cを、互いに別個に偏向させることができ、特にこれは、個々の圧力印加部材6a、6b、6cに作用する力が、個々の圧力印加部材6a,6b,6cに対して規定された閾値力もしくは最小力を超えたときである。
【0527】
図48bに示されている実施形態によれば、圧力印加部材6bは、他の圧力印加部材6aおよび6cよりもさらに応力生成層4の中に入るように動かされる。
【0528】
図48cには、圧力印加装置8が円形の接触面16を有することができる、ということが単なる例示として示されている。その際に圧力印加部材6a、6b、6cは、それ相応に形成されている。ただし別の選択肢として、本発明の範囲内において同様に可能であるのは、接触面16が円形とは異なる形状を有することができる、特に1つまたは複数の直線のエッジを有する形状、特に矩形の形状を有することができる、ということである。
【0529】
図49には、ウェハ1000の概略的な断面図が示されている。このウェハ1000を、好ましくは少なくともまたは厳密に2つまたは2つよりも多くの固体ディスクに分割可能である。この場合、ウェハ1000を厚いウェハと呼ぶことができる。ウェハ1000は好ましくは、ウェハ作成プロセスにおいて固体物から、特にインゴットまたはブールから分離されたものである。ウェハ1000の分割は好ましくは、薄化処理の枠内で、もしくは1つの薄化ステップまたは複数の薄化ステップの枠内で行われる。
【0530】
したがってこの方法は本発明によれば好ましくは、以下に挙げるステップのうちの1つまたは複数のステップを含む。
【0531】
固体ディスク1001または固体層またはウェハ、特に厚いウェハを準備または分離するステップ。1つまたは複数の別の層を被着または生成するステップ、および/または電気構成部材1006をウェハ1000の少なくともまたは厳密に1つの表面に配置または生成するステップ。改質を固体ディスクまたは固体層またはウェハに導入して、剥離領域1005を形成するステップ、または固体ディスクまたは固体層またはウェハの内部に改質を生成するステップ。その際に改質は、好ましくはレーザビームによって生成される、または引き起こされる。固体ディスクまたは固体層またはウェハの周囲面において周縁部加工処理1004、特に材料除去ステップを実施するステップ。周縁部加工処理および/または改質生成は、好ましくは金属層の被着前に行われる。好ましくは周縁部加工処理によって、事前に生成された剥離領域1005が露出させられ、もしくは剥離領域と固体ディスクまたは固体層またはウェハの外側周囲面との間隔が低減される。分離された固体ディスクまたは固体層または分離されたウェハはその際に好ましくは、残留固体物の残された残留厚さよりも僅かな厚さを有する。好ましくは固体ディスクまたは固体層またはウェハの厚さは、残留固体物の厚さ(1002+1003)の最大で99%、または最大で95%、または最大で90%、または最大で85%、または最大で80%、または最大で75%、または最大で65%、または最大で55%である。残留固体物は好ましくは、1つまたは複数の表面準備処理法によって引き続き利用され、特にグラインディング、エッジプロセスもしくはエッジ切除、化学機械的研磨、および/または準備された表面における電気構成部材の新たな配置または生成によって、引き続き利用される。好ましくは、分離された固体ディスク1001の直径と、特に電気構成部材の生成後または配置後の、準備処理された残留固体物の直径は、同一であり、またはごく僅かにしか隔たっておらず、特に5%未満、または1%未満、または0.1%未満、または0.01%未満だけしか隔たっていない。
【0532】
したがって固体ディスク1001または固体層またはウェハの分離後に好ましくは、分離により露出させられた残留固体物の表面が、材料切除により、特に表面準備処理により、処理される。その際に好ましくは、部分1002が分離され、特にグラインディングまたは研磨により除去される。次いで、材料切除による処理の結果として生じた第2の固体層1003に、好ましくはさらに別の層、特に少なくとも1つまたは複数の金属層、および/または電気構成部材が、配置または生成または形成される。
【0533】
図50には、ウェハ1000の概略的な断面図が示されている。このウェハ1000を、好ましくは少なくともまたは厳密に2つまたは2つよりも多くの固体ディスクに分割可能である。この場合、ウェハ1000を厚いウェハと呼ぶことができる。ウェハ1000は好ましくは、ウェハ作成プロセスにおいて固体物から、特にインゴットまたはブールから分離されたものである。ウェハ1000の分割は好ましくは、薄化処理の枠内で、もしくは1つの薄化ステップまたは複数の薄化ステップの枠内で行われる。
【0534】
したがってこの方法は本発明によれば好ましくは、以下に挙げるステップのうちの1つまたは複数のステップを含む。
【0535】
固体ディスク1001または固体層またはウェハ、特に厚いウェハを準備または分離するステップ。1つまたは複数の別の層を被着または生成するステップ、および/または電気構成部材1006をウェハ1000の少なくともまたは厳密に1つの表面に配置または生成するステップ。改質を固体ディスクまたは固体層またはウェハに導入して、剥離領域1005を形成するステップ、または固体ディスクまたは固体層またはウェハの内部に改質を生成するステップ。その際に改質は、好ましくはレーザビームによって生成される、または引き起こされる。固体ディスクまたは固体層またはウェハの表面において周縁部加工処理1004、特に材料除去ステップを実施するステップ。周縁部加工処理および/または改質生成は、好ましくは金属層の被着前に行われる。好ましくは周縁部加工処理によって、事前に生成された剥離領域1005が露出させられ、もしくは剥離領域と固体ディスクまたは固体層またはウェハの表面との間隔が低減される。その際に剥離領域は、シャーレ状またはポット状に延在しており、または3D輪郭を形成している。したがってこの実施形態によれば、第2のウェハもしくは第2の固体層もしくは固体レイヤが出発ウェハ1000から製造され、この場合、出発ウェハ1000は、第2の固体レイヤもしくは第2の固体層1009よりも厚い。このため好ましくは、亀裂の方向がその伝播中に変化する。ここで可能であるのは、最初に第1の固体層1001を残留固体物(1002+1003)から分離することである。これに加えて次に、改質1007を露出させるための周縁部加工処理を行うことができる。別の選択肢として、最初に、第2の固体レイヤ1003を含む残留固体物1007を、ウェハ1007から分割して取り出すことができ、もしくは割裂させて取り出すことができる。これに続いて次に、好ましくは、書き込まれた領域1007に沿って、もしくは場合によっては生成された改質1007に沿って、固体層1001の分離が行われる。したがってこの分離を、たとえば分割によって、または切削加工法、特に鋸引きによって、行うことができる。次いで残留固体物1007は、特に第2の固体レイヤ1003を作り出す目的で、好ましくは1つまたは複数の表面準備処理ステップによって処理される。たとえばこのようにして、直径150mmの出発ウェハから、(直径150mmの)第1の固体レイヤと、直径100mmの第2の固体レイヤ1003とを生成することができる。たとえばこのようにして、直径200mmの出発ウェハから、(直径200mmの)第1の固体レイヤと、直径150mmの第2の固体レイヤ1003とを生成することができる。たとえばこのようにして、直径300mmの出発ウェハから、(直径300mmの)第1の固体レイヤと、直径200mmの第2の固体レイヤ1003とを生成することができる。
【0536】
図49および
図50に示したエッジ加工処理を、たとえば切削加工法またはエッチング法またはレーザアブレーション法によってもたらすことができる。
【0537】
図51aには、
図50に示したコンセプトの別の例が示されている。この場合、改質面1005もしくは剥離領域1005は、好ましくは平坦に形成されている。ここで参照符号1004は好ましくは、トレンチ加工処理もしくはトレンチ生成を表している。ここでトレンチ生成を、たとえば切削加工法またはエッチング法またはレーザアブレーション法によってもたらすことができる。さらに
図50の実施形態と同様に、領域1007および/または改質1007を設けておくことができる。さらに第1の固体層1001の表面および/または第2の固体層1003の表面に、特に金属から成る、または金属を有する1つまたは複数の層および/または電気構成部材が、配置または生成されているようにすることができる。
【0538】
図51bに示されている例によれば、ウェハ1000aから2つの別のウェハ1000b、1000cが分割して取り出される。次いでウェハ1000aから、好ましくは固体層1001が分離され、ウェハ1000bから次いで好ましくは固体層1003が分離される。ウェハ1000cを、さらなる分離取り出しのために利用することもできる。ウェハ1000cからさらに別のウェハ(図示せず)を分離して取り出せば、固体層1010を分離することができる。ただし別の選択肢として同様に考えられるのは、電気構成部材を生成するためにウェハ1000cを利用することである。好ましくは電気構成部材は、ウェハもしくは個々の固体層に生成または配置される。
【0539】
図51cには、厚いウェハ1000の上面図が示されている。この厚いウェハ1000は、少なくとも第1の固体層1001および第2の固体層1003を生成するために用いられる。この目的で、厚いウェハ1000は好ましくは、周囲を取り巻く凹部1004、特にトレンチを有する。さらに厚いウェハ1000は好ましくは、第1の平坦部1011および/または第2の平坦部1012を有する。
【0540】
図51dには、
図51cに示したウェハ1000の概略的な断面図が示されている。この図面によれば、凹部1004は特別なもしくは規定された形状を有することがわかる。
【0541】
図52には、特に1つまたは複数の金属層による、および/または1つまたは複数の電気構成部材による、固体層のコーティングが概略的に描かれている。この場合、特に1つまたは複数の構成部材の層もしくは構造物の寸法は、好ましくは式Min(CDx,CDy)<100μmに従う。この場合、CDxは、x方向、特に幅方向における臨界的広がりを表す。さらにこの場合、CDyは、y方向、特に深さ方向における臨界的広がりを表す。条件Min(CDx,CDy)<100μmが層および/または構造物ごとに遵守されるならば、レーザビームを用いて生成された改質を好ましくは、1つまたは複数の層および/または1つまたは複数の構造物の生成後に行うこともできる。構造物の伝播(臨界的な寸法CD)が1つの方向で十分に小さいならば、レーザ放射による損傷が回避される。この場合、面積単位あたりに吸収されるエネルギーは、周囲に送出されるには十分に小さい。したがって本発明によれば、すでに1つまたは複数の層および/または1つまたは複数の構造物が固体層表面に生成されてしまった時点で、レーザビームを用いて固体物内部に改質を生成することができる、という可能性が提供される。その際にレーザビームの入射方向は、1つまたは複数の層または1つまたは複数の構造物が配置または生成されている固体層表面を介して、固体物中に入って推移する。
【0542】
図53には、固体物1内に改質を生成するための2つの例が、湾曲された線状造形物、特に曲線状の線または非直線または湾曲線の形態で示されている。固体物およびレーザの光学素子は、好ましくは移送経路1014に従って互いに動かされる。したがってレーザビームを、固体物を覆う経路部分1014に沿って、固体物中に導入することができる。よって、好ましくは部分的に、経路1014の部分的な形態に相応する形態を有する線状造形物を生成することができる。それゆえ改質はこの実施形態によれば、好ましくは非線形の書き込み方法を用いて生成される。
【0543】
その際に経路1014もしくは書き込み推移の形状が好ましくは、1つの渦を表すことができ、または渦状をとることができ、または円形の運動から導出された1つまたは複数の形状を表すことができる。好ましくは、たとえば放物線状のジグザクを結果として生じさせるような形態を有する書き込み推移または経路が選定される。この解決手段によって、大部分がまたは常に、連続的な相対運動がX方向とY方向とにおいて同時に行われるようになり、もしくは曲線トラックの連続的な移動走行が行われるようになる。したがって好ましくは、第1の方向のみの相対運動は行われない。このため好ましくは、分割ステップまたはインデクスステップまたはオフセットステップも生じない。さらに好ましくは、第1の方向に対し垂直な第2の方向において相対運動は行われない。
【0544】
その際にドナー基板(もしくは固体物)は好ましくは、平坦な主表面に対し傾斜した結晶格子面を有する。この場合、ドナー基板の主表面は好ましくは、ドナー基板の長手方向において一方の側の境界を成しており、その際、結晶格子面法線は主表面法線に対し第1の方向で傾斜している。本発明の1つの好ましい実施形態によれば、ただ1つまたは複数の線状造形物もしくは書き込み線の、またはすべての線状造形物もしくは書き込み線のうち大半の、またはすべての線状造形物もしくは書き込み線の、長手区間の少なくとも20%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも90%は、分割線に対し0.05°~87°の角度範囲で傾斜しており、特に3°または5°~60°の角度範囲で、好ましくは10°~50°、特に10°~30°、たとえば12°~20°または13°~15°の角度範囲で、または20°~50°、特に25°~40°または30°~45°または28°~35°の角度範囲で傾斜している。この解決手段が有利であるのは、十分に多くのそれぞれ異なる結晶格子面が、同じ線状造形物もしくは書き込み線のさらに別の改質各々の構成部分であるような大きさで、傾斜しているからである。ここでドナー基板は、好ましくはSiCから成り、または好ましくはSiCを有する。
【0545】
図54aに示されている例によれば、入射妨害物に起因して光学特性が局所的に異なり、それゆえレーザ放射が固体物に侵入するときに通過する表面に対するレーザ放射の焦点の距離が変化し、もしくは局所的に変化し、もしくは直接的に依存して変化する。その結果、改質が1つの平面内に生成されず、もしくは所望の平面内に位置せず、もしくは所望の輪郭もしくは形状を表さないようになる可能性がある。したがって生産が減少し、もしくは後処理コストが高まる可能性がある。この場合、入射妨害物をたとえば、注入領域および/または電気構成部材および/または電気構成部材のコンポーネント、および/または固体物周縁部もしくはウェハ周縁部、および/または1つまたは複数のEPI層、構造化部(たとえばエッチングトレンチ)、および/またはチップデザインによるその他の通常の変化とすることができる。この場合、注入領域1541は好ましくは、たとえばリン、ホウ素などの不純物原子により高濃度にドーピングされた領域を表す。これらの不純物原子は光学特性を変化させ、たとえばいっそう大きな吸収を引き起こす可能性があり、このことはさらに材料中の亀裂形成を阻止する可能性がある。この場合、参照符号1544は亀裂伝播を表し、さらにこの場合、参照符号1545は、入射妨害領域において停止させられたまたは偏向させられた亀裂伝播1545を表す。
【0546】
したがって本発明によれば、入射妨害物を捕捉および/または分析するステップを設けることができ、その際に好ましくは、捕捉された1つまたは複数の入射妨害物に依存して、エネルギー整合が行われる。この解決手段は、光学特性の横方向の不均一な変化各々がエネルギー閾値に影響を及ぼす、という認識に支えられたものである。この変化をいっそう良好に検出して補正できるようになればなるほど、レーザ面もしくは改質面もしくは剥離面もしくは剥離領域をいっそう均一に生成することができる。
【0547】
図54bにおいて、参照符号1543は、深さ補正を伴わない改質生成もしくはレーザ面を表し、参照符号1542は、深さ補正を伴う改質生成もしくはレーザ面を表す。
【0548】
図55には、
図54aおよび
図54bを参照しながら説明した関連事項の詳細を表した図が示されている。この実施例によれば、複数のもしくは交互に現れる入射障害物に起因して、エネルギー整合が行われる。図示されている入射障害物によって、対物レンズ5503から出射した後の固体物1、1000もしくは複合構造物におけるレーザビーム5504のビーム路5501が変化し、このような入射障害物にはこの場合、他にもある中でたとえば、EPI層5502、注入領域5505、ダイシングストリート5506、金属構造物5507、エッチングされたトレンチ5508、高濃度ドーピングされた領域5509、およびチップ5510が含まれる可能性がある。
【0549】
図56には、
図54および
図55に関してすでに説明した関連事項を説明するためのさらに別の図が示されている。
【0550】
この図には、4つの異なる状態(X,A,B,C)が示されている。状態Xは基準状態を表現している。レーザエネルギー調整および深さ調整はこの場合、規定された材料に対して定められている。
【0551】
状態Aによれば、光路中のEPI層および注入領域に起因して、レーザエネルギー調整および深さ調整の整合が必要とされている。これはたとえば、高められた吸収によって、および/またはシフトされた光学定数nによって、引き起こされている可能性がある。
【0552】
状態Bによれば、注入領域、EPI層および金属構造物が光路中に存在しており、これによって著しく大きな吸収が引き起こされる。しかも光路中に高濃度ドーピングゾーンが存在しており、これによってたとえば吸収が大きくなり、かつ光学定数nのシフトが小さくなる。これによって、レーザエネルギー調整および深さ調整の整合が必要とされている。
【0553】
状態Cによれば、注入領域、EPI層、金属構造物、およびエッチングされたトレンチ(これによって焦点シフトおよび大きい吸収が引き起こされる)が光路中に存在している。これによって、レーザエネルギー調整および深さ調整の整合が必要とされている。
【0554】
これについて一般的には本発明によれば、レーザ改質の形成はかくして、超えると相転移が発生するレーザエネルギー閾値を上回ることによって達成される、ということが認識された。レーザパルスにおけるエネルギーが高められると、集束されたときにビーム方向に沿って閾値を早めに上回り、その結果、実際の幾何学的焦点位置にかかわらず、レーザもしくはレーザ放射により相転移または材料改質が早めに発生することになる。つまり、閾値を超えたレーザパルスエネルギーによって連続的に加工処理すると、材料中のレーザ改質面の位置が材料表面に近づいて移動し、したがって光学的焦点を介して規定されるよりもいっそう高いところに位置する。
【0555】
たとえば屈折率の強度依存性を表すカー効果など、さらに別の効果によっても、または自由電荷キャリアによって引き起こされる自己集束によっても、レーザ改質面の高さが強度に依存してシフトするようになる。これらの効果は決定論的なものであり、適切な方法を介して定量化することができ、これに従って、予め定められたレーザ面の位置と、実際のレーザ面の位置との差をできるかぎり小さくすることを目的として、これらの効果をそれ相応に補償することができる。
【0556】
たとえばドーピングされた炭化ケイ素において400μmの加工処理深さの場合、必要とされる最小閾値エネルギーよりも10μJだけ高められたレーザパルスエネルギーによって、改質面が約20μmだけ固体物表面に近づいて遷移する効果が及ぼされる。
【0557】
この効果は測定可能なものであるので、ワークピース表面に対し相対的にレーザ焦点を追従制御するために、1つまたは複数の高さマップおよび/またはドーピングマップおよび/またはエネルギーマップを作成する際に、局所分解されたレーザ出力制御と、使用される高さマップとの相互作用によって、この効果を補償することができる。
【0558】
図57aには、入射コーンビーム5700が示されており、このコーンビーム5700を介して固体物1、1000中に焦点5701が生成される。この図には、ガウスビームプロフィルを有するレーザによって照射された対物レンズの焦点像が描かれている。
【0559】
図57bには、たとえばSLMによりビームが変化させられた後の、非ガウスビームプロフィルを有するレーザにより照射された対物レンズの焦点像5702が概略的に描かれている。この場合、空間光変調器(SLM)は、光のための空間的な変調器であり、したがって光に空間変調を加える機器である。ガウスビームプロフィルに対し、焦点のZ方向寸法が著しく低減されており、もしくは低減可能である。
【0560】
図57cには、たとえば回折光学素子(DOE)によりビームが変化させられた後の、非ガウスビームプロフィルを有するレーザにより照射された対物レンズの焦点像5703が概略的に描かれている。この場合、ビームは好ましくは、DOEにより複数の焦点を形成するために分割されている。DOEはこの場合、好ましくは、レーザビームの回折を焦点の空間的像だけ変化させるために用いられる。
【0561】
回折光学素子(DOE)は、回折によりレーザ放射に作用を及ぼす。この場合、レーザ波長のサイズスケールにある構造が用いられる。回折構造における光の回折の数値シミュレーションを用いて、1つの素子が計算され、次いでこれをいっそう多くの個数で製造することができる。一般的に、レーザビームプロフィルにおける光の空間分布は、この素子の出射側でただちに、または集束素子の出射側の焦点において、変化させられる。つまり、たとえば1つのビームを複数のビームに分割することができ、通常のように発生するガウスビーム強度プロフィルが別の形状に移行させられ、または焦点におけるレーザ放射の強度分布が慣用のレンズでは達成できないように変化させられ、たとえば、所望のレーザ相互作用のために必要とされる2次極大値を意図的に取り入れることまたは抑圧することによって、変化させられる。
【0562】
これに対して、空間光変調器(英語ではSpatial Light Modulator (SLM))は、光に空間変調を加える機器である。
【0563】
通常、SLMは光ビームの強度を変調するが、位相を、または位相と強度とを同時に、変調することも可能である。
【0564】
この空間変調は、DOEの場合には素子における構造によって行われ、これに対しSLの場合にはSLMにおける個々のピクセルによって行われる。特に、強度変調されかつ位相変調されたビームの結像または集束後、それによってプログラミング可能な強度分布を焦点において達成することができる。したがってDOEは静的かつ再現可能にレーザビームに作用を及ぼすのに対し、たとえばSLMを用いることによって、ビームの個数を、またはレーザ加工処理装置において使用されるレーザビームプロフィルも、ダイナミックに切り替えることができる。たとえばプロセスの進捗を同時に監視してフィードバックすることによって、プロセスが推移していく中でダイナミックな整合も可能である。
【0565】
ここで提案される方法は本発明によれば、固体物への侵入前にレーザビームのビーム特性を変化させるステップを有し、この場合、ビーム特性は焦点における強度分布であり、この場合、ビーム特性の変化または整合は、少なくともまたは厳密に1つの空間光変調器によって、かつ/または少なくともまたは厳密に1つのDOEによってもたらされ、この場合、空間光変調器および/またはDOEは、レーザ放射のビーム路において固体物と放射源との間に配置されている。
【0566】
DOEおよび空間光変調器の機能の説明については、以下で挙げる文献を参照されたい。すなわち、Flexible beam shaping system for the next generation of process development in laser micromachining, LANE 2016, 9th International Conference on Photonic Technologies LANE 2016, Tobias Klerks, Stephan Eifel
【0567】
通常の一般的なガウス形状とは異なるレーザビーム強度プロフィルは、非ガウスビームプロフィルと称され、異なる加工処理結果を達成するために使用することができる。したがってたとえば線状焦点が考えられ、これはビーム伝播方向に対し垂直な次元で、第2の次元よりも著しく異なる寸法を有する。これによって、加工処理ステップにおいてレーザビームにより、ワークピースのいっそう広い領域を掃引できるようになる。「トップハット」プロフィルも知られており、これはビーム中心で一定の強度を有し、このことでもたらされる利点とは、加工処理において強度の異なる領域が焦点には存在せず、または少なくとも、レーザ加工処理閾値を超えた同じ強度の複数の領域だけが焦点に位置する。これをたとえば、分離後の研磨損失を最小化するために用いることができる。
【0568】
図58には、いわゆるフロントサイドプロセスが示されている。この場合、レーザビームが固体物表面を介して固体物中に導入され、この表面は、反対側の端部で固体物の境界を成す別の表面よりも、生成すべき剥離面もしくは改質面の近くに位置している。このフロントサイドプロセスが有利であるのは、レーザの深さ(好ましくは100μm未満)が、バックサイドプロセス(たとえば250μmよりも大きい、もしくは400μmまたはそれ以上まで)よりも著しく小さい(
図59参照)からである。これによっていっそう僅かなレーザビームエネルギーが、いっそう良好な深さコントロールが、さらにはいっそう良好なレーザビーム品質が、レーザ面において、もしくは剥離面上で、もしくは剥離面の領域で生じる。しかも、固体物の背面をさらに付加的に加工処理する必要がない。
【0569】
したがって本発明によればフロントサイドプロセスにおいて、金属コンタクト層の生成前に固体物内で改質の生成が行われる。さらに別の好ましい実施形態によれば、研磨(5801)の後、かつ/またはEPI層の生成(5802)の前またはEPI層の生成(5802)の後、かつ/または固体物における注入領域の生成(5803)の前または注入領域の生成(5803)の後、かつ/または第1の金属層の生成または配置(5804)の前に、改質の生成が行われる。第1の金属層(5804)の特性に依存して、特にサイズ(
図52の実施例参照)および/または組成に依存して、第1の金属層の生成または配置(5804)の後、かつ/または金属コンタクト層の生成または配置(5805)の前に、付加的または択一的に、フロントサイドプロセスを実施することができ、つまり分離すべき固体層の表面を介した固体物中へのレーザビームの導入を実施することができる。
【0570】
図59には、いわゆるバックサイドプロセスが示されている。この場合、レーザビームが固体物表面を介して固体物中に導入され、この表面は、反対側の端部で固体物の境界を成す表面もしくは主表面よりも、生成すべき剥離面もしくは改質面からいっそう離間されている。このバックサイドプロセスが有利であるのは、構成部材、特に電気構成部材、特に金属を有する、または金属から成る電気構成部材を配置または生成している間、フロントサイドにおいてチップデザインを整合する必要がなく、またはごく僅かにしか整合する必要がないからである。
【0571】
したがって本発明によればバックサイドプロセスにおいて、金属コンタクト層の生成前に固体物内で改質の生成が行われる。さらに別の好ましい実施形態によれば、研磨(5901)の後、かつ/またはEPI層の生成(5902)の前またはEPI層の生成(5902)の後、かつ/または固体物における注入領域の生成(5903)の前または注入領域の生成(5903)の後、かつ/または第1の金属層の生成または配置(5904)の前に、改質の生成が行われる。第1の金属層(5904)の特性に依存して、特にサイズ(
図52の実施例参照)および/または組成に依存して、第1の金属層の生成または配置(5904)の後、かつ/または金属コンタクト層の生成または配置(5905)の前、付加的または択一的に、バックサイドプロセスを実施することができ、つまり分離すべき固体層の表面を介した固体物中へのレーザビームの導入を実施することができる。
【0572】
この方法は、SiCから成るまたはSiCを有する固体物もしくはドナー基板から固体層を分離するために、特に有用である。
【0573】
さらに、改質を相前後して少なくとも1つの行または列または線において生成することができ、この場合、1つの行または列または線において生成された改質9は、好ましくは間隔Xにおいて高さHで生成され、これによって相前後して続く2つの改質の間で伝播する亀裂が、特に、剥離面に対し角度Wで配向された亀裂伝播方向を有する、結晶格子方向で伝播する亀裂が、それら両方の改質を互いに結合するようになる。ここで角度Wは好ましくは2°~6°であり、特に4°付近にある。好ましくは亀裂は、第1の改質の中心の下方にある領域から、第2の改質の中心の上方にある領域へと伝播していく。したがってこの場合、基本的な関係は、改質のサイズは、改質の間隔と角度Wとに依存して変化し得る、もしくは必ず変化する、というものである。
【0574】
しかもレーザプロセスのために有利であるのは、使用されるレーザ放射の偏光を特別に形成することである。書き込み方向との依存性をできるかぎり僅かにする目的で、たとえば直線偏光されたレーザ光源の出射側でλ/4板を使用することによって、レーザを円偏光させることができる。
【0575】
ただし特に有利であるのは、直線偏光されたレーザ光を加工処理に使用することである。加工処理プロセスにおいて、材料中の当初の電荷キャリア密度が、最初に多光子吸収によって生成される。材料中で多光子吸収が発生する確率は、特に結晶の場合、レーザ放射の電界方向に対する結晶軸の姿勢に依存する。材料内部におけるレーザプロセスを特に効率的に実施し、できるかぎり均一に構成する目的で、多光子吸収のこの角度依存性を利用することができる。
【0576】
さらにこの方法は、最初は露出している固体物1の表面に、またはその上方に、層および/または構成部材150を配置または生成することによって、複合構造物を生成するステップも有することができ、この場合、露出している表面は、好ましくは分離すべき固体層の構成部分である。特に好ましくは、剥離面を形成するための改質が、複合構造物の生成前に生成される。
【0577】
外部からの力を及ぼすために、たとえば前述の方法と同様に、複合構造物もしくは固体物の露出した表面に受容層140を配置することができる。
【0578】
このようにすることで、さらに別の本発明によるレーザ方法において、好ましくはSiC(ただし他の材料でもよい)上に、亀裂伝播方向に平行な線(好ましくは横方向線と称せられる)が生成され、これによってまずは優先的な亀裂誘発のための平面が規定され(亀裂初期化)、その後、長手方向線が亀裂を促進する。これによれば亀裂は最初は横方向に、次いで長手方向に発生し始め、その後、亀裂を完全に誘発する目的で、最終ステップによって第2のステップの長手方向線の間に線がセットされる。これによりいっそう短い亀裂経路を実現することができ、このことによって最終的な表面の粗さが最小化される。
【0579】
これは(鋸歯を有する)横方向線および(鋸歯の波頭上の)亀裂誘発線に関する例のイメージである。
【0580】
したがって本発明は好ましくは、少なくとも1つの固体層2をドナー基板1から分離する方法に関する。その際にこの方法は好ましくは少なくとも以下のステップを含む。すなわち、ドナー基板1を準備するステップ。この場合、ドナー基板1は、平坦な主表面8に対し傾斜した結晶格子面6を有し、この場合、主表面8は、ドナー基板1の長手方向において一方の側でドナー基板1の境界を成し、この場合、結晶格子面法線は、主表面法線に対し第1の方向で傾斜している。少なくとも1つのレーザ29を準備するステップ。レーザ29のレーザ放射14を固体物1の内部へ主表面8を介してもたらし、少なくとも1つのレーザ焦点の領域で固体物1の材料特性を変化させるステップ。この場合、レーザ焦点は、レーザから放出されたレーザのレーザビームによって形成され、この場合、材料特性の変化は、ドナー基板1中へのレーザ放射の侵入個所を変化させることにより、線状造形物103を成し、この場合、材料特性の変化は、少なくとも1つの生成面4において生成され、この場合、ドナー基板1の結晶格子面6は、生成面4に対し傾斜して配向されており、この場合、線状造形物103は、生成面4と結晶格子面6との間の界面に生じる分割線10に対し傾斜しており、この場合、材料特性が変化することによって、ドナー基板1に臨界未満の亀裂の形態で亀裂が入る。ドナー基板1に外部からの力を及ぼして臨界未満の亀裂を結合させることにより固体層2を分離するステップ、または臨界未満の亀裂を結合させながら固体層2がドナー基板1から剥離する程度に、生成面4における材料をレーザ放射により変化させるステップ。
【0581】
本発明によれば、本明細書で説明した方法各々が付加的または択一的に、固体物1に外部からの力を及ぼして、固体物1に応力を生成するステップを有することができ、ただし外部からの力は、応力により剥離面8に沿って亀裂伝播が引き起こされるような強さである。
【0582】
本発明によれば、本明細書で述べた方法各々は付加的または択一的に、レーザビームを用いて第2のグループの改質を生成し、少なくとも1つの、特に複数の第2の剥離面を予め定めるステップを有することができる。この場合、第1の剥離面と第2の剥離面とは、互いに直交して配向されている。さらに特に好ましくは、固体層を固体物から分離した後、ただちにまたは間をあけてから、固体物から分離された固体層を第2の剥離面に沿って分割し、固体素子を個別化するステップが行われる。
【0583】
本発明によれば、本明細書で述べた方法各々は付加的または択一的に、圧力印加装置の少なくとも1つの圧力印加部材を、応力生成層の少なくとも1つの予め定められた部分に押圧して、応力生成層を表面に押圧するステップを有することができる。好ましくは圧力印加部材は、少なくとも応力生成層への熱的衝撃印加中および/または亀裂伝播中、応力生成層に押圧される。
【0584】
好ましくは、固体レイヤもしくは固体層の少なくとも1つの分離された部分は、応力生成層に起因して、もしくはポリマー層に起因して、圧力印加部材の方向に偏向させられ、もしくは圧力印加部材に対して押圧される。その際に圧力印加部材は好ましくは、固体レイヤもしくは固体層の最大偏向を制限する。
【0585】
したがって本発明による方法は好ましくは、少なくとも1つの固体層4を少なくとも1つの固体物1から分離する方法に関する。この場合、本発明による方法は以下のステップを含む。
【0586】
レーザビームを用いて複数の改質9を固体物1の内部に生成し、剥離面8を形成するステップ。
【0587】
最初は露出している固体物1の表面5に、またはその上方に、層および/または構成部材150を配置または生成することによって、複合構造物を生成するステップ。この場合、露出している表面5は、分離すべき固体層4の構成部分である。
【0588】
固体物1に外部からの力を及ぼして、固体物1に応力を生成するステップ。この場合、外部からの力は、応力により剥離面8に沿って亀裂伝播が引き起こされるような強さであり、この場合、剥離面8を形成するための改質が、複合構造物の生成前に生成される。