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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】新規抗HSA抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220829BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220829BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220829BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220829BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/63 Z ZNA
C12P21/08
C07K16/46
C07K16/18
A61K39/395 N
A61K38/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019566084
(86)(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2018064622
(87)【国際公開番号】W WO2018224439
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/515,293
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17195783.0
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515310984
【氏名又は名称】ヌマブ セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】テーア グンデ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン マイアー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヘス
(72)【発明者】
【氏名】テッサ ビエリ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-522267(JP,A)
【文献】特表2012-503638(JP,A)
【文献】特表2013-505923(JP,A)
【文献】特表2010-518062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12P 21/00-08
C07K 16/00-46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下:
a)可変軽鎖、
ここで、前記可変軽鎖は、N末端からC末端まで、領域LFW1-LCDR1-LFW2-LCDR2-LFW3-LCDR3-LFW4を含み、ここで、各LFWは軽鎖フレームワーク領域を示し、かつ各LCDRは軽鎖相補性決定領域を示し、並びに、ここで、前記LCDRは、配列番号1によるVL配列の対応するLCDRと同一である;
並びに
b)可変重鎖、
ここで、前記可変軽鎖は、N末端からC末端まで、領域HFW1-HCDR1-HFW2-HCDR2-HFW3-HCDR3-HFW4を含み、ここで、各HFWは重鎖フレームワーク領域を示し、かつ各HCDRは重鎖相補性決定領域を示し、並びに、ここで、前記HCDRは、配列番号2によるVH配列の対応するHCDRと同一である、
を含むあるいは、
(iia)可変軽鎖、
ここで、前記可変軽鎖は、N末端からC末端まで、領域LFW1-LCDR1-LFW2-LCDR2-LFW3-LCDR3-LFW4を含み、ここで、各LFWは軽鎖フレームワーク領域を示し、かつ各LCDRは軽鎖相補性決定領域を示し、並びに、ここで、前記LCDRは、配列番号3によるVL配列の対応するLCDRと同一である;
並びに
(iib)可変重鎖、
ここで、前記可変軽鎖は、N末端からC末端まで、領域HFW1-HCDR1-HFW2-HCDR2-HFW3-HCDR3-HFW4を含み、ここで、各HFWは重鎖フレームワーク領域を示し、かつ各HCDRは重鎖相補性決定領域を示し、並びに、ここで、前記HCDRは、配列番号4によるVH配列の対応するHCDRと同一である、
を含む、抗体又はその機能的断片。
【請求項2】
前記可変軽鎖がVκ1軽鎖であり、及び/又は前記可変重鎖がVH3鎖である、請求項1に記載の抗体又はその機能的断片。
【請求項3】
前記可変軽鎖が、配列番号1又は配列番号3によるVL配列に対して少なくとも90%の配列同一性を示し、及び/又は前記可変重鎖がVH3鎖であり、配列番号2又は配列番号4によるVH配列に対して少なくとも90%の配列同一性を示す、請求項1又は2に記載の抗体又はその機能的断片。
【請求項4】
前記抗体又はその機能的断片が、以下(i)配列番号1によるVL配列に対して少なくとも90%の配列同一性を示す可変軽鎖、及び配列番号2によるVH配列に対して少なくとも90%の配列同一性を示すVH鎖、又は(ii)配列番号3によるVL配列に対して少なくとも90%の配列同一性を示す可変軽鎖、及び配列番号4によるVH配列に対して少なくとも90%の配列同一性を示すVH鎖、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片であって、以下のパラメータ:
(i)特に表面プラズモン共鳴によって測定されるように、50nM未満、具体的には3nM未満、より具体的には1nM未満のヒト血清アルブミンへの結合についてのKD値;
(ii)特に表面プラズモン共鳴によって測定されるように、約5.5及び約7.4のpH値の両方で、50nM未満、具体的には3nM未満、より具体的には1nM未満のヒト血清アルブミンへの結合についてのKD値;
(iii)特に表面プラズモン共鳴によって測定されるように、250nM未満、具体的には100nM未満、より具体的には50nM未満の非ヒト霊長類及び/又はげっ歯類血清アルブミンへの結合についてのKD値、;
(iv)FcRnに結合する抗体結合HSAの保存された能力;
(v)特に、試料が、3.5~7.5の範囲のpH値、具体的にはpH6.4のクエン酸リン酸緩衝液であって、0.15~0.25MのNaCl、具体的には0.15MのNaCl、さらに0.25MのNaClを含有するクエン酸リン酸緩衝液に希釈される場合、示唆走査蛍光定量法によって決定されるように、scDb(単鎖ダイアボディ形式)又はscFv(単鎖可変断片形式)抗体形式で表される場合、好ましくはscFv抗体形式で表される場合に、少なくとも60℃を超える熱変性温度(thermal unfolding temperature)(Tm)の平均中点;及び
(vi)特に、本発明の抗体が10mg/mlの出発濃度である場合に、ストレス安定性試験において37℃、28日間で単量体含有量の3%未満の損失、具体的には2%未満の損失、
の1つ又は複数によって特徴づけられる、抗体又はその機能的断片。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片、並びに任意により薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片をコードする核酸又は核酸の集合(collection)。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸又は核酸の集合を含むベクター又はベクターの集合。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片の製造方法であって、請求項に記載の核酸又は核酸の集合、あるいは請求項に記載のベクター又はベクターの集合を発現するステップを含む、方法。
【請求項10】
多重特異性構築物を生成する方法であって、以下のステップ
(a)1つ又は複数のステップにおいて、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片をコードする1つ又は複数の核酸配列を、多重特異性構築物にクローニングすること、前記多重特異性構築物は、少なくとも第2の生物活性ドメイン、及び任意により、1つ又は複数の付加的な生物活性ドメインを含む、
を含む、方法。
【請求項11】
前記第2の生物活性ドメインが、第2の抗体又はその機能的断片である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下:(i)請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片;及び(ii)第2の生物活性ドメイン;及び、任意により、(iii)1つ又は複数の付加的な生物活性ドメイン、を含む、多重特異性ポリペプチド構築物。
【請求項13】
前記第2の生物活性ドメインが、第2の抗体又はその機能的断片である、請求項12に記載の多重特異性ポリペプチド構築物。
【請求項14】
医薬として使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片、あるいは請求項6に記載の医薬組成物、あるいは請求項12又は13に記載の多重特異性ポリペプチド構築物。
【請求項15】
医薬の製造における、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片、あるいは請求項6に記載の医薬組成物、あるいは請求項12又は13に記載の多重特異性ポリペプチド構築物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的な新規抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、ヒト血清アルブミンに対する結合特異性を有する新規な抗体に関し、これは、高い安定性、減少した凝集性向、及び改善した結合親和性などの利点を有し、特に多重特異性抗体構築物の生成に適している。
【0003】
最初のモノクローナル抗体(「mAbs」;Kohler & Milstein、Nature、256(1975)495-7)の開発以来、過去40年間で、抗体は、研究、診断及び治療目的のための生体分子のますます重要なクラスとなった。当初、抗体は専ら、対応する目的の抗原で動物を免疫することによって得られた。非ヒト由来の抗体は研究及び診断に使用することができるが、治療アプローチにおいて人体は非ヒト抗体を異物として認識する可能性があり、非ヒト抗体薬物に対して免疫応答を起こして、その有効性を減らすか無効にする。したがって、非ヒト抗体の免疫原性を低下させるために、組換え方法が構築された。
【0004】
任意の選択されたアプローチにより得られたmAb又は機能的断片は、ドナーmAbの所望の薬力学的特性を理想的に保持しながら、薬物様生物物理学的特性及び最小限の免疫原性を示す。
【0005】
抗体の機能的断片の生物物理学的特性に関しては、完全なIgG抗体と比較してより短い血漿中半減期が治療分子の発展性のための主要な関心事となっている。
【0006】
抗体断片の半減期を延長するために、過去にいくつかのアプローチが開発されている。これらアプローチは、以下のものを含む:特定の徐放製剤の使用(Mainardes及びSilva、2004)、断片の血清プロテアーゼに対する感受性の低減(Werle及びBernkop-Schnurch、2006)、又はアミノ酸置換による抗体断片のクリアランスの固有速度の低下、当該アミノ酸置換は、細胞内エンドソーム区画における受容体結合親和性を低下させ、それによってリガンド選別プロセスにおけるリサイクルの増加につながり、結果として細胞外培地での半減期が長くなる(Sarkar et al.、2002)。
【0007】
加えて、固有の長い血清半減期を有する第2の分子への治療用タンパク質のコンジュゲーションが、異なる状況で行われた。そのような方法の1つは、ポリエチレングリコール(PEG)の化学結合によってタンパク質の流体力学的サイズを大きくすることであり(Chapman、2002;Pockros et al.、2004;Veronese及びPasut、2005)、これは、最大で14日のヒトにおける終末相半減期を有する薬物を生成することができる(Choy et al.、2002)、あるいはアミノ酸Pro、Ala、及び/又はSerからなる立体構造的に不定形な(conformationally disordered)ポリペプチド配列(「PASylation」; Binder & Skerra(2017)Curr. Opin. Colloid Int. 31(2017)10-17参照)。あるいは、治療用タンパク質は、長い血清半減期を有する天然タンパク質との遺伝的融合として生成されている;斯かる天然タンパク質は、67kDaの血清アルブミン(SA)(Syed et al.、1997;Osborn et al.、2002)又は抗体のFc部分のいずれかであり、これはグリコシル化に応じてその天然二量体型でさらに60~70kDaを追加する(Mohler et al.、1993)。これにより、ヒトで数日の終末相半減期を有する薬物が得られる(例えばFc領域に融合したTNF受容体(p75)について4日(Lee et al.、2003))。
【0008】
Holtらは、 短寿命薬物の半減期を延長するために抗血清アルブミンドメイン抗体を用いることによって後者のアプローチを拡張した(Holt et al.、Protein Engineering, Design and Selection 21(2008)283-288)。そのような薬物の抗HSA VHドメイン抗体との融合が、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)の血清半減期の延長をもたらすことが示された。しかしながら、Holtらは、単一ドメイン抗体を専ら使用し、したがってヘテロ会合ドメインとしての相補的VL及びVHドメインの相互作用に基づくアプローチのためのそのような技術の使用を制限している。
【0009】
抗HSA抗体又はその断片の使用は興味深い選択肢を提供するように思われたが、任意のそのような抗体は、そのようなアプローチがもたらす未解決の問題にうまく対処するために以下の複雑なパターンの特徴を示さなければならないであろう:(i)抗HSA抗体又はその断片は、HSAに対して高い親和性を有さなければならない;(ii)抗HSA抗体又はその断片は、生理学的に関連する条件で安定した結合を保護するために約5.5及び約7.4のpH値で高い親和性を有さなければならない;(iii)抗体はHSAに特異的でなければならないが、非ヒト霊長類及び/又はげっ歯類血清アルブミンに交差反応性を提供しなければならず、これは、そのような抗HSA抗体又はその断片を含む構築物の適切な前臨床試験の実施を可能にするためである;(iv)HSAへの抗HSA抗体又はその断片の結合は、抗体結合HSAのFcRnに結合する能力を保持しなければならず、抗HSA抗体又はその断片を、HSAとFcRnとの間の相互作用を介してHSAによりリサイクルすることができる;(v)抗体断片形式で使用される場合、断片は、熱変性において高い融解温度によって証明されるように安定でなければならない;並びに(vi)抗体断片形式で使用される場合、断片は、ストレス安定性試験において、限られた量の分解産物及び/又は凝集物あるいはそれらの不存在によって証明されるように安定でなければならない。成功の合理的な期待を持って、免疫化により、ライブラリースクリーニング又は選抜により、及び/又は親抗体のそのようなパラメータの最適化によって、所望のパラメータ、例えば抗体の親和性を有する抗体を得られることは当業者に良く知られているが、そのようなパラメータ(i)~(vi)の複雑なパターンによって特徴づけられる抗体を得る又は生成することが可能であるかはかなり予測不可能である。
【0010】
したがって、抗体断片ベースの構築物の血清半減期を増加するという問題に対処するために多くの試みが成されてきたという事実にも関わらず、多重特異性抗体構築物の構築に使用することができ、かつそのような構築物の半減期の延長をもたらす新規なアプローチ及び/又は構築物を開発するという満たされていない大きな必要性が依然として存在する。
【0011】
本発明、すなわち新規な抗HSA抗体及びその断片によって提供されたこの問題の解決は、これまでに先行技術によって達成も示唆もされていない。
【発明の概要】
【0012】
発明の概要
本発明は、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的である新規抗体に関する。
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下:
可変軽鎖、ここで、前記可変軽鎖は、N末端からC末端まで、領域LFW1-LCDR1-LFW2-LCDR2-LFW3-LCDR3-LFW4を含み、ここで、各LFWは軽鎖フレームワーク領域を示し、かつ各LCDRは軽鎖相補性決定領域を示し、並びに、ここで、前記LCDRは共に、配列番号1又は配列番号3によるVL配列から取られた対応するLCDRに対して少なくとも90%の配列同一性を示す;
並びに
可変重鎖、ここで、前記可変軽鎖は、N末端からC末端まで、領域HFW1-HCDR1-HFW2-HCDR2-HFW3-HCDR3-HFW4を含み、ここで、各HFWは重鎖フレームワーク領域を示し、かつ各HCDRは重鎖相補性決定領域を示し、並びに、ここで、前記HCDRは共に、配列番号2又は配列番号4によるVH配列から取られた対応するHCDRに対して少なくとも90%の配列同一性を示す、
を含む、抗体又はその機能的断片に関する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその機能的断片、並びに任意により薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【0015】
第3の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその機能的断片をコードする核酸配列又は核酸配列の集合(collection)に関する。
【0016】
第4の態様では、本発明は、本発明の核酸配列又は核酸配列の集合を含むベクター又はベクターの集合に関する。
【0017】
第5の態様では、本発明は、本発明の核酸配列又は核酸配列の集合、又は本発明のベクター又はベクターの集合を含む宿主細胞、具体的には発現宿主細胞に関する。
【0018】
第6の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその機能的断片の製造方法であって、本発明の核酸配列又は核酸配列の集合、又は本発明のベクター又はベクターの集合、又は本発明の宿主細胞、具体的には発現宿主細胞を発現するステップを含む、方法に関する。
【0019】
第7の態様では、本発明は、多重特異性構築物を生成する方法であって、以下のステップ:1つ又は複数のステップにおいて、本発明による抗体又はその機能的断片をコードする1つ又は複数の核酸配列を、少なくとも第2の生物活性ドメイン、及び任意により、1つ又は複数の付加的な生物活性ドメインを含む多重特異性構築物にクローニングすること、を含む、方法に関する。
【0020】
第8の態様では、本発明は、以下:(i)請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体又はその機能的断片;及び(ii)第2の生物活性ドメイン;及び、任意により、(iii)1つ又は複数の付加的な生物活性ドメインを含む、多重特異性ポリペプチド構築物に関する。
【0021】
第9の態様では、本発明は、医薬として使用するための、本発明の抗体又はその機能的断片、あるいは本発明の抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物に関する。
【0022】
第10の態様では、本発明は、医薬の製造における、本発明の抗体又はその機能的断片、あるいは本発明の抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物の使用に関する。
【0023】
第11の態様では、本発明は、疾患、具体的にはヒト疾患を患っている対象を治療する方法であって、前記対象に、有効量の本発明の抗体又はその機能的断片、あるいは本発明の抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物を投与すること、を含む、方法に関する。
【0024】
第12の態様では、本発明は、疾患、具体的にはヒト疾患の治療における、本発明の抗体又はその機能的断片、あるいは本発明抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、カニクイザルへの静脈内投与(3mg/ml)後のPRO462の薬力学パラメータを示す(1群につき3匹、平均を図示;データは表8、実施例7を参照)。血液試料を21日の期間にわたって採取した。グラフは、PRO462の平均群血漿濃度を示す。後の時点は抗薬物抗体の発生のために省略されている。
図2図2は、実施例6で論じられているマウスPK試験の結果を示す(5mg/kgの試験品を静脈内投与した雄のCD-1マウスにおけるPRO497の平均群血漿濃度;データは表9参照)。
図3図3は、多重特異性構築物PRO497の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本開示は、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的な新規抗体に関する。
【0027】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0028】
用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」は、特に断りの無い限り、そのオープンエンドかつ非限定的な意味で本明細書において使用される。したがって、そのような後者の実施形態に関して、用語「含む(comprising)」は、より狭い用語「からなる(consisting of)」を含む。
【0029】
用語「a」及び「an」及び「the」及び類似の参照は、発明を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)、本明細書に特に示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を網羅するものと解釈されるべきである。例えば、用語「細胞(a cell)」はその混合物を含む複数の細胞を含む。化合物、塩等について複数形が使用される場合、単一の化合物、塩等も意味すると解釈される。
【0030】
用語「HSA」は、特に、UniProt IDナンバーP02768を有するヒト血清アルブミン、又はその変異体を指す。ヒト血清アルブミン(Human Serum Albumin)(HSA)は、585個のアミノ酸からなる66.4kDaのヒト血清に豊富なタンパク質(総タンパク質の50%)である(Sugio、Protein Eng、vol. 12、1999、439-446).多機能HSAタンパク質は、多くのの代謝産物、例えば脂肪酸、金属イオン、ビリルビン及びいくつかの薬物に結合及び輸送することができる構造に関連している(Fanali、Molecular Aspects of Medicine、vol. 33、2012、209-290)。血清中のHSA濃度は約3.5~5g/dLである。アルブミン結合抗体及びその断片は、例えばそれにコンジュゲートした薬物又はタンパク質のインビボでの血清半減期を延長するために使用することができる。
【0031】
したがって、第1の態様では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下:
可変軽鎖、ここで、前記可変軽鎖は、N末端からC末端まで、領域LFW1-LCDR1-LFW2-LCDR2-LFW3-LCDR3-LFW4を含み、ここで、各LFWは軽鎖フレームワーク領域を示し、かつ各LCDRは軽鎖相補性決定領域を示し、並びに、ここで、前記LCDRは共に、配列番号1又は配列番号3によるVL配列から取られた対応するLCDRに対して少なくとも90%の配列同一性を示す;
並びに
可変重鎖、ここで、前記可変軽鎖は、N末端からC末端まで、領域HFW1-HCDR1-HFW2-HCDR2-HFW3-HCDR3-HFW4を含み、ここで、各HFWは重鎖フレームワーク領域を示し、かつ各HCDRは重鎖相補性決定領域を示し、並びに、ここで、前記HCDRは共に、配列番号2又は配列番号4によるVH配列から取られた対応するHCDRに対して少なくとも90%の配列同一性を示す、
を含む、抗体又はその機能的断片に関する。
【0032】
本発明の文脈において、用語「抗体」は、「免疫グロブリン」(Ig)の同義語として使用され、これはクラスIgG、IgM、IgE、IgA、IgY又はIgD(あるいはその任意のサブクラス)に属するタンパク質として定義され、かつ従来知られている全ての抗体を含む。天然に存在する「抗体」はジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLからなる。VH及びVL領域は、より保存されたフレームワーク領域(FW)と称される領域に散在した超可変性の相補性決定領域(CDR)と称される領域にさらに細分化することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFWからなり、これらはアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で配置されている:FW1-CDR1-FW2-CDR2-FW3-CDR3-FW4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
【0033】
用語「抗体断片」は、インタクトな抗体又はその組換え変異体の少なくとも一部分を指し、用語「機能的断片」又は「機能的抗体断片」は、少なくとも抗原結合ドメイン、例えばインタクトな抗体の抗原決定可変領域を含む抗体断片を指し、これは抗原などの標的への機能的抗体断片の認識及び特異的結合を付与するのに十分である。機能的抗体断片の例としては、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、scFv抗体断片、線形抗体(linear antibodies)、単一ドメイン抗体、例えばsdAb(VL又はVHのいずれか)、ラクダ科VHHドメイン、及び抗体断片から形成された多重特異性分子、例えばヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つ以上の、例えば2つのFab断片を含む二価の断片、又は2つ以上の、例えば2つの単離されたCDR、又は連結された抗体の他のエピトープ結合断片が挙げられる。抗体断片はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR及びbis-scFvに組み込むことができる(例えば、Hollinger及びHudson、Nature Biotechnology 23:1126-1136、2005参照)。抗体断片はまた、フィブロネクチンtype III(Fn3)のようなポリペプチドに基づく足場に移植することもできる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディについて記載している米国特許第:6,703,199号明細書を参照)。抗体の「抗原結合領域」又は「抗原結合ドメイン」は典型的には、抗体の1つ又は複数の超可変領域、すなわち、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3領域に見られる;しかしながら、可変「フレームワーク」領域もまた、例えばCDRのための足場を提供することによって、抗原結合に重要な役割を果たし得る。抗体の定常領域は、宿主組織又は因子(免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の最初の成分(Clq)を含む)への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。用語「抗体」は、例えば、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ科抗体、又はキメラ抗体を含む。抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスの抗体であり得る。
【0034】
「相補性決定領域」(「CDR」)は、多くの周知の方式のいずれかを用いて決定された境界を有するアミノ酸配列であり、斯かる方式にはKabatら、(1991)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest,」 5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(「Kabat」ナンバリング方式)、Al-Lazikaniら、(1997)JMB 273、927-948(「Chothia」ナンバリング方式)及びImMunoGenTics(IMGT)numbering(Lefranc, M. -P., The Immunologist、7、132-136(1999);Lefranc、M. -P. ら、Dev. Comp. Immunol., 27、55-77(2003)(「IMGT」ナンバリング方式)によって記載されたものを含む。例えば、Kabatによる古典的な形式の場合、重鎖可変ドメイン(VH)中のCDRアミノ酸残基は、31-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)、及び95-102(HCDR3)とナンバリングされ;そして軽鎖可変ドメイン(VL)中のCDRアミノ酸残基は、24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)、及び89-97(LCDR3)とナンバリングされる。Chothiaの下では、VH中のCDR アミノ酸は、26-32(HCDR1)、52-56(HCDR2)、及び95-102(HCDR3)とナンバリングされ;そしてVL中のアミノ酸残基は、24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)、及び89-97(LCDR3)とナンバリングされる。Kabat及びChothia両方の CDR定義を合わせることによって、CDRは、ヒトVHにおいてアミノ酸残基26-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)、及び95-102(HCDR3)からなり、及びヒトVLにおいてアミノ酸残基24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)、及び89-97(LCDR3)からなる。IMGTの下では、VH中のCDRアミノ酸残基は、おおよそ26-35(HCDR1)、51-57(HCDR2)及び93-102(HCDR3)とナンバリングされ、そしてVL中のCDRアミノ酸残基は、おおよそ27-32(LCDR1)、50-52(LCDR2)、及び89-97(LCDR3)とナンバリングされる(「Kabat」によるナンバリング)。IMGTの下では、抗体のCDRは、プログラムIMGT/DomainGap Alignを用いて決定することができる。
【0035】
本発明の文脈では、別段断りの無い限り、Honegger & Pluckthunによって提案されたナンバリングシステム(「AHoナンバリング」)が使用され(Honegger & Pluckthun、J. Mol. Biol.309(2001)657-670)、さらに、以下の残基がCDRとして定義される:LCDR1(CDR-L1とも呼ばれる):L24-L42;LCDR2(CDR-L2とも呼ばれる):L58-L72;LCDR3(CDR-L3とも呼ばれる):L107-L138;HCDR1(CDR-H1とも呼ばれる):H27-H42;HCDR2(CDR-H2とも呼ばれる):H57-H76;HCDR3(CDR-H3とも呼ばれる):H108-H138。
【0036】
好ましくは、「抗原結合領域」は、少なくとも可変軽(VL)鎖のアミノ酸残基4~138及び可変重(VH)鎖の5~138を含み(それぞれの場合においてHonegger & Pluckthunによるナンバリング)、より好ましくは、VLのアミノ酸残基3~144及びVHの4~144を含み、特に好ましくは完全なVL及びVH鎖(VLのアミノ酸位置1~149及びVHの1~149)である。フレームワーク領域及びCDRは表7に示されている。本発明に使用するのに好ましいクラスの免疫グロブリンはIgGである。本発明の「機能的断片」は、F(ab’)2断片、Fab 断片、Fv及びscFvのドメインを含む。F(ab’)2又はFabは、CH1及びCLドメイン間で起こる分子間ジスルフィド相互作用を最小化するか又は完全に除去するように操作され得る.本発明の抗体又はその機能的断片は、セクション[0079]~[0082]にさらに記載されるように、二機能性又は多機能性構築物の一部であり得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、結合特異性は絶対的なものではなく相対的な性質であるため、結合分子が、標的生体分子と1つ又は複数の参照分子とを区別することができる場合に、結合分子は、標的、例えばヒト血清アルブミン「に対して/に特異的である」、「を特異的に認識する」、又は「に特異的に結合する」。その最も一般的な形態(かつ定義された参照が言及されていない場合)において、「特異的結合」は、目的の標的生体分子と無関係の生体分子とを区別する結合分子の能力を指し、斯かる能力は、当該技術分野で既知の特異性アッセイ方法に従って決定される。斯かる方法は、これらに限定されるものではないが、ウェスタンブロット、ELISA、RIA、ECL、IRMA、SPR(表面プラズモン共鳴)試験及びペプチドスキャンを含む。例えば、標準的なELISAアッセイが行われてもよい。スコアリングは標準的な発色法によって行われてもよい(例えば西洋ワサビ過酸化物を有する二次抗体及び過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン)。特定のウェルにおける反応は、例えば450nmでの光学密度によってスコアリングされる。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は、約0.1ODであり得;典型的な陽性反応は約1ODであり得る。これは、陽性スコアと陰性スコアとの比が10倍以上になる可能性があることを意味する。さらなる例では、SPRアッセイを行うことができ、当該アッセイでは、バックグラウンドとシグナルとの間の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍の差が、特異的結合に対して示される。
典型的には、結合特異性の決定は、単一の参照生体分子ではなく、約3~5つの無関係な生体分子、例えば粉乳、トランスフェリンなどのセットを用いることによって行われる。
【0038】
しかしながら、「特異的結合」はまた、標的生体分子と1つ又は複数の密接に関連する生体分子とを区別する結合分子の能力を指すことができ、斯かる密接に関連する生体分子は、参照点、例えば異なる種由来の血清アルブミン、例えばウシ血清アルブミンとして使用される。さらに、「特異的結合」は、その標的抗原の異なる部分、例えば標的生体分子の異なるドメイン、領域又はエピトープ間、あるいは標的生体分子の1つ又は数個の重要なアミノ酸残基又はアミノ酸残基のストレッチ間を区別する結合分子の能力に関し得る。
【0039】
本発明の文脈において、用語「エピトープ」は、標的生体分子と結合分子との間の特異的結合に必要とされる所与の標的生体分子の一部を指す。エピトープは、連続的、すなわち標的生体分子に存在する隣接する構造要素によって形成されてもよく、あるいは不連続、すなわち標的生体分子の一次配列中、例えば標的としてのタンパク質のアミノ酸配列中の異なる位置にあるが、標的生体分子が採用する三次元構造に近接して、例えば体液中で、構造要素によって形成されてもよい。
【0040】
特定の実施形態では、前記可変軽鎖はVκ1軽鎖であり、及び/又は前記可変重鎖はVH3鎖である。別の特定の実施形態では、前記可変軽鎖は、Vκフレームワーク領域I~III及びVλフレームワーク領域IVを含むキメラ軽鎖である。一実施形態では、軽鎖はキメラ軽鎖であって、以下:(i)配列番号1又は配列番号3によるVL配列から取られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;
(ii)ヒトVκフレームワーク領域FW1~FW3、具体的にはヒトVκ1フレームワーク領域FW1~FW3;
(iii)FW4、これは、(a)FW4についてのヒトVλ生殖細胞系配列、具体的には配列番号6及び配列番号7、好ましくは配列番号7から選択されるVλ生殖細胞系配列;並びに(b)Vλベースの配列、これは、配列番号6及び配列番号7、好ましくは配列番号7から選択されるアミノ酸配列を含むFW4についての最も近いヒトVλ生殖細胞系配列と比較して、1つ又は2つの突然変異、具体的には1つの突然変異を有する、
を含む、キメラ軽鎖である。
【0041】
本発明の文脈において、用語「VH」(可変重鎖)、「Vκ」及び「Vλ」は、配列同一性及び相同性に従ってグルーピングされる抗体重鎖及び軽鎖配列のファミリーを指す。配列相同性の決定のための方法、例えば相同性検索マトリックス、例えばBLOSUM(Henikoff、S. & Henikoff、J. G., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89(1992)10915-10919)を用いる方法、及び相同性に従って配列をグルーピングするための方法は、当業者に良く知られている。例えば、VH1A、VH1B及びVH2~VH6におけるVH、Vκ1~Vκ4におけるVκ、及びVλ1~Vλ3におけるVλとグルーピングする、Knappikら、J. Mol. Biol. 296(2000)57-86において示されるように、VH、Vκ及びVλについて、異なるサブファミリーが同定され得る。インビボでの抗体Vκ鎖、Vλ鎖、及びVH鎖は、それぞれ生殖細胞系κ鎖V及びJセグメント、生殖細胞系λ鎖V及びJセグメント、及び重鎖V、D及びJセグメントのランダム再配置の結果である。所与の抗体可変鎖がどのサブファミリーに属するかは、対応するVセグメントによって、特にフレームワーク領域FW1~FW3によって決定される。したがって、フレームワーク領域HFW1~HFW3のみの特定のセットによって本願において特徴づけられる任意のVH配列は、任意のHFW4配列、例えば重鎖生殖細胞系Jセグメントの1つから取られたHFW4配列、又は再配置されたVH配列から取られたHFW4配列と組み合わされてもよい。特定の実施形態では、HFW4配列はWGQGTLVTVSSである。
【0042】
好適には、本発明の抗体又は機能的断片は、単離された抗体又はその機能的断片である。用語「単離された抗体」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチド又はタンパク質を意味し、当該ポリペプチド又はタンパク質は、その起源又は操作により:(i)発現ベクターの一部の発現産物として宿主細胞中に存在し、又は(ii)それが自然界で結合しているもの以外のタンパク質又は他の化学成分に結合され、又は(iii)自然界で発生しない。「単離された」とは、さらに以下のことを意味する:タンパク質が:(i)化学合成され;又は(ii)宿主細胞で発現され、ゲルクロマトグラフィーによるように関連タンパク質から精製される。用語「単離された抗体」はまた、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する単離された抗体は、ヒト血清アルブミン以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原、例えば他の種由来の血清アルブミン分子(例えば、非ヒト霊長類及び/又はげっ歯類血清アルブミン)に交差反応性を有し得る。また、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない可能性がある。
【0043】
「親和性」は、単一の結合部位又は分子、例えば、抗体又はその機能的断片と、その結合パートナー、例えば抗原との間の全ての非共有相互作用の合計の強度を指す。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー間の1:1相互作用、例えば単一抗体結合ドメインとその抗原との相互作用を反映する内因性結合親和性を指す。親和性は、一般に解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されたものを含む当該技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができ、特に、親和性は、表面プラズモン共鳴によって測定することができる。特定の実施形態では、本発明の抗体又は機能的断片は、1~50,000pM、1~40,000pM、1~30,000pM、1~25,000pM、1~20,000pM、1~10,000pM、1~7,500pM、1~5,000pM、1~4,000pM、1~3,000pM、1~2,000pM、1~1,500pM、1~1,000pMのKDを有し得る、これは好ましくは表面プラズモン共鳴によって測定され;より具体的には実施例2.1に示された方法によって決定される。特定の実施形態では、好ましくは表面プラズモン共鳴により測定されるように;より具体的には実施例2.1に示された方法により決定されるように、本発明の抗体又はその機能的断片は、50nM未満、具体的には3nM未満、より具体的には1nM未満のヒト血清アルブミンへの結合についてのKD値を有する。さらなる実施形態では、本発明の抗体又は機能的断片は、約5.5及び約7.4のpH値の両方で、ヒト血清アルブミンへの結合についてのそのようなKD値を有する。特定の実施形態では、好ましくは表面プラズモン共鳴により測定されるように;より具体的には実施例2.1に示された方法により決定されるように、本発明の抗体又は機能的断片は、1~250,000pM、1~200,000pM、1~150,000pM、1~100,000pM、1~75,000pM、1~50,000pM、1~40,000pM、1~30,000pM、1~20,000pM、1~10,000pM、1~7,500pM、1~5,000pMの非ヒト霊長類及び/又はげっ歯類血清アルブミンへの結合についてのKD値を有し得る。特定の実施形態では、特に表面プラズモン共鳴によって測定されるように;より具体的には実施例2.1に示された方法により決定されるように、本発明の抗体又は機能的断片は、250nM未満、具体的には100nM未満、より具体的には50nM未満の非ヒト霊長類及び/又はげっ歯類血清アルブミンへの結合についてのKD値を有する。
【0044】
特定の実施形態では、前記可変軽鎖は、配列番号1又は配列番号3によるVL配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示し、及び/又は前記可変重鎖は、配列番号2又は配列番号4によるVH配列に対して、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示すVH3鎖である。
【0045】
以下の用語は、2つ以上のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列間の配列関係を説明するために使用される:「配列同一性」又は「配列同一性のパーセンテージ」、及び「配列類似性」又は「配列類似性のパーセンテージ」。用語「配列同一性」は、本明細書で使用される場合、2つのポリペプチド配列間で同一であるアミノ酸残基の最大数を計算することによって決定され、ここで、最大の程度の配列重複を可能にするためにギャップ及び/又は挿入が考慮される。例えば、完全に同一である2つの100merポリペプチドは、100%の配列同一性を有する。それらが単一突然変異によって異なる場合、又は1つのポリペプチドが1つのアミノ酸欠失を含む場合、配列同一性は99%である(100個の位置のうち99個が同一)。換言すれば、「配列同一性のパーセンテージ」は、以下のように計算される:比較のウインドウにわたって最適に整列された2つの配列を比較し、両方の配列で同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U又はI)又はアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、一致した位置の数を求め、一致した位置の数を比較ウインドウの位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割り、結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを求める。「配列類似性」は、2つの配列を比較した際の配列間の類似性の度合いである。必要又は望ましい場合、比較のための配列の最適な整列を行うことができる、例えば、Smith及びWatermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482(1981))によって、Needleman及びWunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J. MoI. Biol. 48:443-53(1970))によって、Pearson及びLipman類似性方法の検索(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444-48(1988))によって、これらアルゴリズムの実装(例えば、GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr., Madison、Wis.)によって、あるいは目視によって行うことができる(一般に Ausubelら(eds.) 、Current Protocols in Molecular Biology、4th ed., John Wiley及びSons、New York(1999)参照)。本明細書で特に明示しない限り、本明細書で言及される配列類似性の程度は、Dayhoff PAMマトリックスの使用によって決定される(M.O. Dayhoff、R.Schwartz, B.C. Orcutt:A model of Evolutionary Change in Proteins, pages 345-352; in:Atlas of protein sequence and structure, National Biomedical Research Foundation, 1979)。
【0046】
用語「アミノ酸」は、天然及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされたアミノ酸、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンである。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。当該用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸に適用される。特に明記しない限り、特定のポリペプチド配列は、保存的に修飾されたその変異体も黙示的に包含する。
【0047】
特定の実施形態では、前記抗体又はその機能的断片は、以下のものを含む(i)配列番号1によるVL配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変軽鎖、及び配列番号2によるVH配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示すVH鎖、又は(ii)配列番号3によるVL配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変軽鎖、及び配列番号4によるVH配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示すVH鎖。
【0048】
一実施形態では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下:(i)配列番号1によるVL配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変軽鎖、ここで、前記可変軽鎖は、配列番号1によるVL配列から取られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む;並びに(ii)配列番号2によるVH配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変重鎖、ここで、前記可変重鎖は、配列番号2によるVH配列から取られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む、を含む、抗体又はその機能的断片に関する。より具体的な実施形態では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下:(i)配列番号1によるVL配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変軽鎖、ここで、前記可変軽鎖は、配列番号1によるVL配列から取られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含み、並びに、ここで、前記可変軽鎖はK50Q及びA51P(AHoナンバリング)を含む;並びに(ii)配列番号2によるVH配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変重鎖、ここで、前記可変重鎖は、配列番号2によるVH配列から取られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む、並びに、ここで、前記可変重鎖は、W54Y、V103T及びY105F(AHoナンバリング)を含む、を含む、抗体又はその機能的断片に関する。
【0049】
特定の実施形態では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下(i)配列番号1によるアミノ酸配列又はその保存的に修飾された変異体を含む可変軽鎖、並びに(ii)配列番号2によるアミノ酸配列又はその保存的に修飾された変異体を含む可変重鎖、を含む、抗体又はその機能的断片に関する。より具体的な実施形態では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、(i)配列番号1によるアミノ酸配列を含む可変軽鎖、並びに(ii)配列番号2によるアミノ酸配列を含む可変重鎖、を含む、抗体又はその機能的断片に関する。
【0050】
一実施形態では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下:(i)配列番号3によるVL配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変軽鎖、ここで、前記可変軽鎖は、配列番号3によるVL配列から取られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む;並びに(ii)配列番号4によるVH配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変重鎖、ここで、前記可変重鎖は、配列番号4によるVH配列から取られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む、を含む、抗体又はその機能的断片に関する。より具体的な実施形態では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下:(i)配列番号3によるVL配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変軽鎖、ここで、前記可変軽鎖は、配列番号3によるVL配列から取られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含み、並びに、ここで、前記可変軽鎖は、I2V、Q3V、K50Q及びA51P(AHoナンバリング)を含む;並びに(ii)配列番号4によるVH配列に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性を示す可変重鎖、ここで、前記可変重鎖は、配列番号4によるVH配列から取られたCDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3を含む、並びに、ここで、前記可変重鎖は、I55V、V103T、Y105F(AHoナンバリング)を含む、を含む、抗体又はその機能的断片に関する。
【0051】
特定の実施形態では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下(i)配列番号3によるアミノ酸配列又はその保存的に修飾された変異体を含む可変軽鎖、並びに(ii)配列番号4によるアミノ酸配列又はその保存的に修飾された変異体を含む可変重鎖、を含む、抗体又はその機能的断片に関する。より具体的な実施形態では、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的な抗体又はその機能的断片であって、以下(i)配列番号3によるアミノ酸配列を含む可変軽鎖、並びに(ii)配列番号4によるアミノ酸配列を含む可変重鎖、を含む、抗体又はその機能的断片に関する。
【0052】
用語「保存的に修飾された変異体(conservatively modified variant)」又は「保存的変異体」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体は、同一又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指し、又は、アミノ酸配列をコードしていない場合には、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同一な核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全てアミノ酸のアラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される全ての位置において、コドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく記載された対応するコドンのいずれかへと変更することができる。そのような核酸変異は「サイレント変異(silent variations)」であり、これは保存的に修飾された変異体の一種である。本明細書においてポリペプチドをコードする全ての核酸配列はまた、あらゆる可能な核酸のサイレント変異を記載している。当業者は、核酸中の各コドン(AUG(通常はメチオニンのための唯一のコドンである)、及びTGG(通常はトリプトファンのための唯一のコドンである)を除く)は、修飾されて機能的に同一の分子を得ることができることを認識するであろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列に暗黙的に含まれる。
【0053】
ポリペプチド配列について、「保存的に修飾された変異体」又は「保存的変異体」は、ポリペプチド配列に対する個々の置換、欠失又は付加を含み、これらは化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野で良く知られている。そのような保存的に修飾された変異体は、多型変異体、種間ホモログ、及び本発明の対立遺伝子に加えられ、除外されない。 以下の8つの群には、互いに保存的置換であるアミノ酸が含まれる:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、Proteins(1984)参照)。一実施形態では、用語「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意な影響又は変更を与えないアミノ酸修飾を指すために使用される。
【0054】
特定の実施形態では、本発明の抗体又はその機能的断片は、以下のパラメータの1つ又は複数によって特徴づけられる:
(i)当該抗体又はその機能的断片が、特に表面プラズモン共鳴によって測定されるように;より具体的には実施例2.1に示された方法で決定されるように、50nM未満、具体的には3nM未満、より具体的には1nM未満のヒト血清アルブミンへの結合についてのKD値を有する;
(ii)当該抗体又はその機能的断片が、特に表面プラズモン共鳴によって測定されるように、約5.5及び約7.4のpH値の両方で、そのようなヒト血清アルブミンへの結合についてのKD値を有する;
(iii)当該抗体又はその機能的断片が、特に表面プラズモン共鳴によって測定されるように;より具体的には実施例2.1に示された方法で決定されるように、250nM未満、具体的には100nM未満、より具体的には50nM未満の非ヒト霊長類及び/又はげっ歯類血清アルブミンへの結合についてのKD値を有する;
(iv)HSAへの抗HSA抗体又はその断片の結合は、実施例2.2で使用したアッセイによって決定されるように、抗HSA抗体又はその断片が、HSAとFcRnとの間の相互作用を介してHSAによりリサイクルされることを可能にするために、抗体結合HSAのFcRnに結合する能力を保持しなければならない;
【0055】
(v)当該抗体又はその機能的断片が、特に、試料が、3.5~7.5の範囲のpH値の5リン酸クエン酸緩衝液に希釈され、かつ当該リン酸クエン酸緩衝液が0.15~0.25MのNaCl、具体的には0.15MのNaClを含有する場合、先に記載した示唆走査蛍光定量法(DSF)(Egan、et al.、MAbs、9(1)(2017)、68-84;Niesen、et al.、Nature Protocols、2(9)(2007)2212-2221)によって決定されるように、scDb(単鎖ダイアボディ形式)又はscFv(単鎖可変断片形式)抗体形式で表される場合、好ましくはscFv形式で表される場合に、少なくとも60℃を超える熱変性温度(Tm)の平均中点を有する。scFv構築物の熱変性の遷移の中点は、蛍光色素SYPRO(登録商標)Orangeを用いる示唆走査蛍光定量法によって決定される(Wong & Raleigh、Protein Science 25(2016)1834-1840参照)。関連する賦形剤条件における試料は、関連する緩衝液で調製したストック賦形剤でスパイク(spiking)することによって、50μgml-1の最終タンパク質濃度に調製する。緩衝液スカウティング(scouting)実験のために、100μlの総量で5x SYPRO(登録商標)Orangeの最終濃度を含有する、異なるpH値(pH3.4、4.4、5.4、6.4及び7.2)を有する最終scFv緩衝液で希釈する。未知の試料と共に、scFv DSF参照を内部対照として測定する。25マイクロリットルの調製試料を、三連で白壁AB遺伝子PCRプレートに添加する。サーマルサイクラーとして使用されるqPCRマシンでアッセイを行い、蛍光放出をソフトウェアのカスタム色素キャリブレーションルーチン(software’s custom dye calibration routine)を用いて検出する。試験試料を含むPCRプレートを、1℃刻みで各温度上昇後に30秒休止して25℃~96℃の温度勾配に供する。合計のアッセイ時間は約2時間である。Tmを、数学的な2次導関数法を使用してソフトウェアGraphPad Prismによって計算して、曲線の変曲点が計算される;報告されたTmは3回の測定値の平均である;特定の実施形態では、Tmの決定は、実施例4.1に記載されたように行われ、ここでは、試料は、0.25MのNaClを含有する6.4のpH値のリン酸クエン酸緩衝液に希釈される;及び
(vi)抗体断片形式で使用される場合、断片は、限られた量の分解産物及び/又は凝集物、あるいはそれらの不存在によって証明されるように安定でなければならず、斯かる安定性は、特に、本発明の抗体が10mg/mlの出発濃度である場合に、ストレス安定性試験において、特に、実施例4.2に従って行われるストレス安定性試験において、37℃、28日間で単量体含有量の3%未満の損失、具体的には単量体含有量の2%未満の損失によって証明される。
【0056】
好ましい実施形態では、前記抗体又はその機能的断片は、少なくとも65℃、好ましくは少なくとも69℃を超える熱変性温度(Tm)の平均中点を有する。タンパク質は、SE-HPLCによるオリゴマー化に関して、50mMのクエン酸リン酸pH6.4、150mMのNaCl中に37℃での保存の14日間にわたって分析される。試験の前に、試料を10g/lに濃縮し、d0時点を決定する。単量体含有量を、Shodex KW-402.5-4Fカラム上での試料の分離及び得られたクロマトグラムの評価によって定量化する。タンパク質単量体の相対パーセンテージの計算のために、単量体ピークの面積を、試料マトリックスに寄与することができないピークの総面積で割る。好ましい実施形態では、前記抗体又はその機能的断片は、37℃、50mMのクエン酸リン酸pH6.4、150mMのNaCl中で、10g/lの濃度で12週間保存された場合に、15%、12%、10%、7%、5%、又は2%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満の単量体含有量の損失を示す。
【0057】
本発明の一実施形態では、単離された抗体又はその機能的断片は:IgG抗体、Fab及びscFv断片から選択される。好適には、本発明の抗体又はその機能的断片はscFv抗体断片である。「単鎖Fv」又は「scFv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドはさらに、VHとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを含み、斯かるリンカーは、sFvが標的結合に望ましい構造を形成することを可能にする。「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は抗体のVH及びVLドメインを含み、ここで、これらドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドはさらに、VHとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを含み、斯かるリンカーは、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にする(例えば、Pluckthun、The pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol. 113、Rosenburg及びMoore eds., Springer-Verlag、New York、1994、pp.269-315参照)。
【0058】
特定の実施形態では、前記機能的断片は、配列番号5によるリンカーを含むscFv形式である。
【0059】
本発明の別の特定の実施形態では、単離された抗体又はその機能的断片は、多重特異性構築物、例えば、二重特異性構築物、又は多価構築物、例えば、二価構築物であり、これは、任意の好適な多重特異性、例えば二重特異性から選択された抗体形式であり、当該技術で知られている形式としては、非限定的な例として、以下のものに基づく形式が挙げられる:単鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、線形二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞誘導(engager)(BiTE;タンデムジ-scFv)、タンデムトリ-scFv、トリボディ(Fab-(scFv)2)又はバイボディ(bibody)(Fab-(scFv)1)、トリアボディ(triabody)、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジ-ミニ(di-mini)抗体、テトラボディ、scFv-Fc-scFv融合、ジ-ダイアボディ(di-diabody)、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合、例えばbsAb(軽鎖のC末端に連結したscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に連結したscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に連結したscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に連結したscFv)、Ts1Ab(重鎖及び軽鎖の両方のN末端に連結したscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に連結したdsscFv)、及びノブ-イントゥ-ホール(Knob-into-Hole)抗体(KiHs)(KiH技術によって調製された二重特異性IgGs)、MATCH(国際公開第2016/0202457号に記載;Egan T., ら、mAbs 9(2017)68-84)及びデュオボディ(DuoBodies)(Duobody技術によって調製された二重特異性IgGs)(MAbs. 2017 Feb/Mar;9(2):182-212. doi:10.1080/19420862.2016.1268307)。本明細書における使用に特に適したものは、単鎖ダイアボディ(scDb)、特に、二重特異性単量体scDbである。より具体的には、本明細書における使用に適しているものは、scDb-scFv又はMATCH、好ましくはscDb-scFvである。
【0060】
用語「ダイアボディ(diabodies)」は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、その断片は、同じポリペプチド鎖内でVLに接続されたVHを含む(VH-VL)。同一鎖上での2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対形成することとなり、2つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは二価又は二重特異性であってもよい。 ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号、国際公開第1993/01161号、Hudsonら、Nat. Med. 9:129-134(2003)、及びHollinger et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993)により十分に説明されている。 トリアボディ及びテトラボディも、Hudsonら、Nat. Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0061】
二重特異性scDb、特に、二重特異性単量体scDbは、具体的には、リンカーL1、L2及びL3によって接続された2つの可変重鎖ドメイン(VH)又はその断片、及び2つの可変軽鎖ドメイン(VL)又はその断片を以下の順序で含み:VHA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VLA、VHA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VLA、VLA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VHA、VLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA、VHB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VLB、VHB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VLB、VLB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VHB又はVLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHB、ここで、VLA及びVHAドメインは共同で第1の抗原の抗原結合部位を形成し、VLB及びVHBは共同で第2の抗原の抗原結合部位を形成する。
【0062】
リンカーL1は具体的には、2~10アミノ酸、より具体的には3~7アミノ酸、及び最も具体的には5アミノ酸のペプチドであり、及びリンカーL3は具体的には、1~10アミノ酸、より具体的には2~7アミノ酸、及び最も具体的には5アミノ酸のペプチドである。中間リンカーL2は具体的には、10~40アミノ酸、より具体的には15~30アミノ酸、及び最も具体的には20~25アミノ酸のペプチドである。
【0063】
本発明の一実施形態では、単離された抗体又はその機能的断片は、国際公開第2016/0202457号;Egan T.ら、mAbs 9(2017)68-84に記載されたMATCH形式における多重特異性及び/又は多価抗体である。
【0064】
本発明の二重特異性、二価、多重特異性及び/又は多価構築物は、当該技術で知られている任意の簡便な抗体製造方法を用いて製造することができる(例えば、二重特異性構築物の製造に関しては、Fischer、N. & Leger、O., Pathobiology 74(2007)3-14; 二重特異性ダイアボディ及びタンデムscFvsに関してはHornig、N. & Farber-Schwarz、A., Methods Mol. Biol. 907(2012)713-727、及び国際公開第99/57150号を参照のこと)。本発明の二重特異性構築物の調製に適した方法の特定の例としてはさらに、とりわけ、Genmab(see Labrijn et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110(2013)5145-5150)及びMerus(see de Kruif et al.、Biotechnol. Bioeng. 106(2010)741-750)技術が挙げられる。機能的抗体Fc部を含む二重特異性抗体の産生方法も当該技術で知られている(例えば、Zhuら、Cancer Lett. 86(1994)127-134);及びSureshら、Methods Enzymol.121(1986)210-228参照)。
【0065】
これら方法は典型的には、モノクローナル抗体の生成を伴い、例えばハイブリドーマ技術を使用して所望の抗原で免疫されたマウスから脾臓細胞と骨髄腫細胞とを融合することによって(例えば、Yokoyamaら.、Curr. Protoc. Immunol. Chapter 2、Unit 2.5、2006参照)又は組換え抗体操作によって(レパートリークローニング又はファージディスプレイ/酵母ディスプレイ)(例えば、Chames & Baty、FEMS Microbiol.Letters 189(2000)1-8参照)、及び既知の分子クローニング技術を用いて二重特異性構築物を与えるための2つの異なるモノクローナル抗体の抗原結合ドメイン又は断片あるいはその一部の組み合わせによって行われる。
【0066】
第2の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその機能的断片、並びに任意により薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【0067】
語句「薬学的に許容される」とは、化合物、物質、組成物、及び/又は剤形を指し、これらは健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題又は合併症を伴わずに人間又は動物の組織と接触させて使用するのに適したものである。
【0068】
本開示による医薬組成物はさらに日常的に、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、補助的な免疫増強剤、例えばアジュバント及びサイトカイン、及び任意により他の治療剤を含み得る。組成物はまた、抗酸化剤及び/又は保存剤を含み得る。抗酸化剤として以下のものが挙げられる:チオール誘導体(例えば、チオグリセロール、システイン、アセチルシステイン、シスチン、ジチオエリスレイトール、ジチオスレイトール、グルタチオン)、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、亜硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム)およびノルジヒドログアイアレチン酸。好適な保存剤は、例えば、フェノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウムおよび塩化セチルピリジニウムであり得る。
【0069】
本明細書に提供される特定の実施形態では、前記抗体又はその機能的断片は、組換え手法によって単離、調製、発現、又は作製することができ、例えば、抗体は、宿主細胞にトランスフェクトした組換え発現ベクターを用いて発現され、抗体は組換えの組み合わせ抗体ライブラリから単離され、あるいは抗体は、作製を伴う任意の他の手法によって調製、発現、作製又は単離され、そのような手法は、例えば、ヒト免疫グロブリン配列をコードするDNA配列の合成遺伝的操作を介するか、又はヒト免疫グロブリンをコードする配列、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子配列を、他のそのような配列へとスプライシングすることによる。
【0070】
したがって、第3の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその機能的断片をコードする核酸配列又は核酸配列の集合に関する。
【0071】
用語「核酸」は、用語「ポリヌクレオチド」と互換的に本明細書で使用され、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及び一本鎖又は二本鎖形態でのそれらのポリマーを指す。当該用語は、既知のヌクレオチドアナログ又は修飾された骨格残基又は結合を含む核酸を包含し、これは合成、天然、及び非天然であり、参照核酸と類似の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと類似の方法で代謝される。そのようなアナログの例としては、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホレート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。特に明示されない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)及び相補配列、並びに明示的に示された配列も暗黙的に包含する。特に、以下に詳述するように、1つ又は複数の選択された(又は全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって、縮重コドン置換が達成され得る(Batzer et al.、Nucleic Acid Res. 19:5081、1991;Ohtsuka et al.、J. Biol. Chem. 260:2605-2608、1985;及びRossolini et al.、Mol. Cell.Probes 8:91-98、1994)。
【0072】
第4の態様では、本発明は、本発明の核酸配列又は核酸配列の集合を含むベクター又はベクターの集合に関する。用語「ベクター」又は「発現ベクター」は、ポリヌクレオチド、最も一般的にはDNAプラスミドを意味し、斯かるプラスミドは、宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞における組み換え発現のために本発明の抗体又はその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。ベクターは、細胞内で複製されてもされなくてもよい。本明細書に記載の抗体、又はその断片の可変重鎖及び/又は可変軽鎖をコードするポリヌクレオチドが得られたら、抗体分子の産生のためのベクターを、当該技術で周知の技術を用いて組換えDNA技術によって生成することができる。したがって、ヌクレオチド配列をコードする抗体を含むポリヌクレオチドを発現することによりタンパク質を調製する方法が本明細書に記載される。当業者に良く知られている方法は、抗体コード配列並びに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築するために使用することができる。これら方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組み換えが含まれる。
【0073】
発現ベクターは、従来技術によって宿主細胞へと移され、得られた細胞は従来技術によって培養されて、本明細書に記載の抗体又はその断片を製造する。したがって、本発明は、本発明の核酸配列又は核酸配列の集合、又は本発明のベクター又はベクターの集合を含む宿主細胞、具体的には発現宿主細胞に関する。特定の実施形態では、宿主細胞は、本発明の抗体、又はその断片の可変重鎖及び可変軽鎖の両方をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。特定の実施形態では、宿主細胞は、2つの異なるベクターを含み、第1のベクターは、前記抗体又はその断片の可変重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、前記抗体又はその断片の可変軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。他の実施形態では、第1の宿主細胞は第1のベクターを含み、当該第1のベクターは、前記抗体又はその断片の可変重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第2の宿主細胞は第2のベクターを含み、当該第2のベクターは、前記抗体又はその機能的断片の可変軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0074】
ウサギ抗体又はげっ歯類抗体のヒト化のための方法は当業者に良く知られている(例えば、Borras、loc. cit. ;Rader et al、The FASEB Journal、express article 10.1096/fj.02-0281fje、published online October 18、2002;Yu et al(2010)A Humanized Anti-VEGF Rabbit Monoclonal Antibody Inhibits Angiogenesis及びBlocks Tumor Growth in Xenograft Models. PLoS ONE 5(2):e9072. doi:10.1371/journal.pone.0009072参照)。ウサギ又はげっ歯類の免疫化は、例えばタンパク質のような目的の抗原を用いて行うことができ、あるいは、ペプチド又はタンパク質抗原の場合、目的のペプチド又はタンパク質をコードする核酸、例えばプラスミドを用いたウサギのDNA免疫化によって行うことができる。
【0075】
第5の態様では、本発明は、本発明の核酸配列又は核酸配列の集合、又は本発明のベクター又はベクターの集合を含む、宿主細胞、具体的には発現宿主細胞に関する。
【0076】
用語「宿主細胞」は、発現ベクターが導入された細胞を指す。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も意味することを意図することを理解されたい。特定の修飾は、後代で突然変異又は環境の影響のいずれかによって生じてもよいため、そのような子孫は実際には、親細胞と同一でない可能性があるが、本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。
【0077】
第6の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその機能的断片の製造方法であって、本発明の核酸配列又は核酸配列の集合、又は本発明のベクター又はベクターの集合、又は本発明の宿主細胞、具体的には発現宿主細胞を発現するステップを含む、方法に関する。
【0078】
第7の態様では、本発明は、多重特異性構築物を生成する方法であって、1つ又は複数のステップにおいて、本発明による抗体又はその機能的断片をコードする1つ又は複数の核酸配列を、多重特異性構築物にクローニングするステップを含み、当該多重特異性構築物は、少なくとも第2の生物活性ドメイン、及び任意により、1つ又は複数の付加的な生物活性ドメインを含む、方法に関する。
【0079】
第8の態様では、本発明は、以下:(i)本発明による抗体又はその機能的断片;及び(ii)第2の生物活性ドメイン;及び、任意により、(iii)1つ又は複数の付加的な生物活性ドメイン、を含む多重特異性ポリペプチド構築物に関する。
【0080】
第7又は第8の態様の特定の実施形態では、第2の生物活性ドメインは、第2の抗体又はその機能的断片である。
【0081】
特定の実施形態では、前記任意の付加的な生物活性ドメインの少なくとも1つが存在し、具体的には前記付加的な生物活性ドメインは第3の抗体又はその機能的断片である。
【0082】
特定の実施形態では、多重特異性ポリペプチド構築物はさらに、1つ又は複数のポリペプチドリンカーを含む。
【0083】
特定の実施形態では、前記多重特異性ポリペプチドは、単量体ポリペプチドであり、具体的には、本発明による抗体又はその機能的断片が、リンカーを介して前記第2の生物活性ドメインに連結されたscFv抗体断片である単量体ポリペプチドであり、具体的には、前記第2の生物活性ドメインは、第2のscFv抗体断片である。
【0084】
特定の実施形態では、前記多重特異性ポリペプチドは、二量体ポリペプチドであり、具体的には、2つのポリペプチドの会合が、前記多重特異性ポリペプチドに含まれる抗体断片の相補的VL及びVHドメインの会合によって引き起こされる二量体ポリペプチドである。そのような特定の実施形態では、多重特異性ポリペプチドは、国際公開第2016/202457号の教示に従った多重特異性抗体構築物である。他の特定の実施形態では、多重特異性ポリペプチドは単鎖ダイアボディ構築物(scDb)である。他の特定の実施形態では、多重特異性ポリペプチドは(Fab-scFv)n構築物(nは1、2、3、又は4から選択される整数である)であり、これは、1つ又は複数のscFv断片が柔軟性リンカーを介して結合されている足場を形成する定常ドメインのいずれかを有するVL-CL及びVH-CH1からなるFab断片のヘテロ二量体アセンブリを採用する。
【0085】
第9の態様では、本発明は、医薬としての使用のための、本発明の抗体又はその機能的断片、あるいは本発明の抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物に関する。一実施形態では、本発明は、疾患、具体的にはヒト疾患の治療における使用のための、本発明の抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物に関し、前記多重特異性ポリペプチド構築物は、第2の生物活性ドメインを含み、前記第2の生物活性ドメインは、対応する疾患における治療関連性の標的と特異的に相互作用することができる。
【0086】
用語「治療」、「治療すること」、「治療する」、「治療された」などは、本明細書で使用される場合、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。当該効果は、疾患及び/又は疾患に起因する有害作用の部分的又は完全な治癒又は疾患進行の遅延の観点から治療的であり得る。「治療」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、例えば、ヒトにおける疾患の任意の治療を網羅し、かつ以下を含む:(a)疾患を阻害すること、例えば、その発症を阻止すること;及び(c)疾患を緩和すること、例えば、疾患の退行を引き起こすこと。
【0087】
第10の態様では、本発明は、医薬の製造における、本発明の抗体又はその機能的断片、あるいは本発明の抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物の使用に関する。
【0088】
第11の態様では、本発明は、疾患、具体的にはヒト疾患を患っている対象を治療する方法であって、前記対象に、有効量の本発明の抗体又はその機能的断片あるいは本発明の抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物を投与すること、を含む、方法に関する。一実施形態では、本発明は、疾患、具体的にはヒト疾患を患っている対象を治療する方法であって、前記対象に、有効量の本発明の抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物を投与すること、を含み、ここで、前記多重特異性ポリペプチド構築物は第2の生物活性ドメインを含み、前記第2の生物活性ドメインは、対応する疾患における治療関連性の標的と特異的に相互作用することができる、方法に関する。
【0089】
用語「対象」は、ヒト及び非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類を含む。好ましい実施形態では、前記対象はヒトである。特に明記しない限り、用語「患者」又は「対象」は本明細書で互換的に使用される。
【0090】
用語「有効量(effective amount)」又は「治療上有効量」又は「効果的量(efficacious amount)」は、疾患を治療するために哺乳動物又は他の対象に投与された場合に、そのような疾患の治療に影響を与えるのに十分な薬剤の量を指す。「治療上有効量」は、薬剤、疾患及びその重症度、並びに治療されるべき対象の年齢、体重などに応じて変化することになる。
【0091】
第12の態様では、本発明は、疾患、具体的にはヒト疾患の治療における、本発明の抗体又はその機能的断片、あるいは本発明の抗体又はその機能的断片を含む多重特異性ポリペプチド構築物の使用に関し、具体的には前記多重特異性ポリペプチド構築物は第2の生物活性ドメインを含み、前記第2の生物活性ドメインは、対応する疾患に関する治療関連性の標的と特異的に相互作用することができる。
【実施例
【0092】
実施例
以下の実施例はその範囲を限定することなく本発明を例示する。
【0093】
実施例1:選択及びヒト化
HSA結合ドメインのリード候補(Lead Candidate)生成のために。15個のウサギモノクローナル抗体クローンを選択した。
【0094】
選択したクローンのヒト化は、国際公開第2014/206561号に記載のように、VλフレームワークIV配列を含むVκ1/VH3型のscFvアクセプターフレームワーク上へのウサギCDRの転移を含んだ。このプロセスにおいて、6つのCDR領域のアミノ酸配列は、ドナー配列(ウサギmAb)で同定され、アクセプター足場配列に移植された。
【0095】
CDR位置に、したがって抗原結合に潜在的に影響を与えることが記載された特定のフレームワーク位置におけるウサギドナーからの付加的なアミノ酸(Borrasら、2010;J. Biol. Chem., 285:9054-9066)が、最終構築物に含まれた(表1参照)。これら構築物についての特性データの比較により、CDR移植単独を超える有意な利点が明らかとなった。得られた可変ドメインの配列を表2に示す。
【0096】
先のセクションで記載したインシリコ(in-silico)構築物の設計が完了したら、対応する遺伝子を合成し、細菌発現ベクターを構築した。発現構築物の配列をDNAのレベルで確認し、構築物を遺伝子発現及び精製プロトコルに従って製造した。
【0097】
タンパク質の異種発現を、不溶性封入体として大腸菌(E.coli)で行った。発現培養物に、指数関数的に増殖する開始培養を接種した。市販の豊富培地を用いてオービタルシェイカーで振とうフラスコ中で培養を行った。細胞を、定義されたOD600=2まで増殖させ、1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて一晩発現させることにより誘導した。発酵の最後に、細胞を遠心分離により回収し、超音波処理によってホモジナイズした。この時点で、異なる構築物の発現レベルを、細胞溶解物のSDS-PAGE分析によって決定した。細胞塊及び他の宿主細胞不純物を除去するための数回の洗浄ステップを含む遠心分離プロトコルによって、封入体をホモジナイズした細胞ペレットから単離した。精製した封入体を、変性バッファー(100mMのTris/HCl、pH8.0、6MのGdn-HCl、2mMのEDTA)で可溶化し、ミリグラム量のネイティブにフォールディングした単量体scFvを生成する拡張可能なリフォールディングプロトコル(scalable refolding protocol)によって、scFvsをリフォールディングした。以下のステップを含む標準化されたプロトコルを使用してscFvsを精製した。リフォールディング後の生成物を、Capto Lアガロース(GE Healthcare)を用いる親和性クロマトグラフィーにより捕捉して、精製scFvsを得た。 初期テストで親和性及び効力の基準を満たしたリード候補をさらに、HiLoad Superdex75カラム(GE Healthcare)を用いる最終(polishing)サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。精製プロトコルに続いて、タンパク質を緩衝生理食塩水で製剤化し、特性評価した。
【0098】
実施例2:ヒト化scFvsの特性評価
2.1 pH7.4及びpH5.5での血清アルブミンに対する親和性
異なる種の血清アルブミン(SA)に対するヒト化scFvsの親和性を、MASS-1装置(Sierra Sensors)を用いたSPR測定によって決定した。SAは、アミンカップリング化学を用いて大容量アミンセンサーチップ(Sierra Sensors)に直接カップリングされた。再生スカウティング及び表面性能試験を行って、最良のアッセイ条件を見つけた後、scFv用量応答を測定し、得られた結合曲線を二重参照し(空の参照チャネル及びゼロ分析物注入)1:1 Langmuirモデルを用いて動態パラメータを得た。アッセイは異なるpH値で2回行った:1回はpH5.5の1 X PBS-Tween緩衝液、もう1回はpH7.4の1 X PBS-Tween緩衝液。
【0099】
ヒト化構築物についての結合動態の測定は、2つのクローンの種間反応性の違い、及びCDR及びSTR移植試験における量的な違いを示している。両方の構築物ペアについて、記載された構造残基の組み込みは親和性の改善をもたらした。クローン19-01-H04の構築物について、親和性の改善は、試験された種に応じて最大で20~300倍であった。クローン23-13-A01の構築物については、約3倍と適度な改善が達成された(表3参照)。
【0100】
種間交差反応性に関して、クローン19-01-H04は、ヒト及び非ヒト霊長類血清アルブミンへの高い親和性結合が示されているが、げっ歯類SAについては結合は観察されていない。クローン23-13-A01については、高親和性結合が、ヒト及び非ヒト霊長類SAについて観察され、さらに分子は減少した親和性でげっ歯類SAに結合した(表4参照)。
【0101】
2.2 抗体結合HSAのFcRn結合
scFv結合HSAが依然としてFcRnに結合することができるかを確認するためにpH5.5でアッセイを設定した。これは、抗HSA scFv又はその誘導体が、HSAとFcRnとの間の相互作用を介してHSAによりリサイクルできるようにするために必要である。アッセイを、HSA固定化チップを用いて開発した:1. 90nMのscFvを注入し、相互作用を低pHで測定した;2. 90nMのFcRnを注入し、相互作用を低pHで測定した;3. scFv及びFcRn(それぞれ90nM)の1:1混合物を注入して、混合物が注入された場合に、個々の注入の結合レベルの合計が、結合レベルに近似するかを確認した。scFv結合HSAがもはやFcRnに結合しなければ、混合物の結合レベルはscFv単独の結合レベルと同じになるであろう。
【0102】
このアッセイを用いて、クローン19-01-H04及び23-13-A01のscFvsによって結合された場合に、HSAが完全にFcRnに結合することができることを確認することができた。
【0103】
実施例3:単鎖ダイアボディ(scDb)形式の生成
αHSAドメイン特性のさらなる特性評価のために、好ましいドメインを多重特異性構築物に組み込んだ。
【0104】
両方のドメインについて、単鎖ダイアボディにおける二重特異性構築物を作製した。単鎖ダイアボディ(scDb)形式における構築物設計は、先に記載されたように行った[Holliger ら、「Diabodies」:small bivalent and bispecific antibody fragments . Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90、6444-6448]。簡潔には、表1に列挙された可変ドメインをVLA-S1-VHB-L1-VLB-S2-VHA様式で配置した、ここで、S1及びS2は短G4Sリンカーであり、L1は長(G4S)4リンカーである。αHSAドメイン及び第2の抗原に対する第2の特異性を有する得られた構築物を、ドメイン19-01-H04-sc02の場合、PRO462と称し、ドメイン23-13-A01-sc02の場合、PRO480と称する。
【0105】
ヌクレオチド配列をデノボ(de novo)合成し、pET26b(+)骨格(Novagen)に基づく大腸菌発現のための適合ベクターにクローニングした。発現構築物を大腸菌株BL12(DE3)(Novagen)に形質転換し、細胞を開始培養として2YT培地で培養した(Sambrook、J., et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual)。発現培養物を接種し、37℃及び200rpmで振とうフラスコ中でインキュベートした。OD600nm=1に達したら、0.5mMの最終濃度でのIPTGの添加によってタンパク質発現を誘導した。一晩の発現後、4000gでの遠心分離によって細胞を回収した。封入体の調製のために、細胞ペレットを、IB Resuspension Buffer(50mMのTris-HCl、pH7.5、100mMのNaCl、5mMのEDTA、0.5%のTriton X-100)中に再懸濁した。細胞スラリーに、1mMのDTT、0.1mg/mLのリゾチーム、10mMのロイペプチン、100μMのPMSF及び1μMのペプスタチンを補充した。細胞を、氷上で冷却しながら、3サイクルの超音波均質化によって溶解した。その後、0.01mg/mLのDNAseを添加し、ホモジネートを室温で20分間インキュベートした。封入体を15000g及び4℃での遠心分離によって沈降させた。IBをIB Resuspension Bufferに再懸濁し、再度の遠心分離前に超音波処理によってホモジナイズした。合計で、IB Resuspension Bufferを用いて最低3回の洗浄ステップを行い、その後2回IB Wash Buffer(50mMのTris-HCl、pH7.5、100mMのNaCl、5mMのEDTA)で洗浄して最終IBを得た。
【0106】
タンパク質のリフォールディングのために、単離したIBを、可溶化緩衝液(100mMのTris/HCl、pH8.0、6MのGdn-HCl、2mMのEDTA)中に、湿潤IBの1g当たり5mLの比で再懸濁した。DTTが20mMの最終濃度で添加されるまで、可溶化物を30分間室温でインキュベートし、インキュベーションをさらに30分間続けた。可溶化が完了した後に、21500g及び4℃で10分の遠心分離によって溶液を清澄化した。リフォールディング緩衝液(典型的には:100mMのTris-HCl、pH8.0、5.0MのUrea、5mMのシステイン、1mMのCystine)に、可溶化タンパク質の0.3g/Lの最終タンパク質濃度で急速に希釈することによって、リフォールディングを行った。リフォールディング反応物は、最低でも14時間の定期的にインキュベートした。得られたタンパク質溶液を8500g及び4℃での10分間遠心分離によって清澄化した。リフォールドしたタンパク質を、Capto L樹脂(GE Healthcare)での親和性クロマトグラフィーによって精製した。単離した単量体画分を、サイズ排除HPLCで、純度についてSDS-PAGE、そしてタンパク質含有量についてUV/Vis分光法によって分析した。緩衝液を、透析によりネイティブ緩衝液(50mMのクエン酸リン酸、pH6.4、200mMのNaCl)に交換したタンパク質濃度を、安定性分析の目的の値に調整した。
【0107】
実施例4:単鎖ダイアボディ(scDb)構築物の機能的特性評価
4.1 熱変性
試験された構築物の熱変性(thermal unfolding)についての遷移の中点を、本質的にNiesenによって記載されたように、示唆走査蛍光定量法(DSF)によって決定した(Niesenら、Nat Protoc. 2(2007)2212-21)。DSFアッセイは、qPCRマシン(例えばMX3005p、Agilent Technologies)で行う。25μLの総量で5x SYPROの最終濃度を含有する緩衝液(クエン酸リン酸、pH6.4、0.25MのNaCl)で試料を希釈する。試料を三連で、及びプログラムされた25~96℃の温度勾配で測定する。蛍光シグナルを取得し、生データをGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.)で分析する。
【0108】
本願に開示されたものに密接に関連した構築物を用いて作成された代表的なデータを表5に示す。
【0109】
4.2 ストレス安定性試験
サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によりオリゴマー化について、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分解について、4週間及び37℃での保存にわたってタンパク質を分析する。試験前に、試料を1に濃縮し及び開始時点を決定する。単量体含有量を、Shodex KW-402.5-4F(Showa Denko)上での試料の分離及び得られたクロマトグラムの評価によって定量化する。タンパク質単量体の関連するパーセンテージの計算のために、単量体ピークの面積を、試料マトリックスに起因し得ないピークの総面積で割る。タンパク質分解を、Any kD Mini-Protean TGX gels(Bio-Rad Laboratories)でSDS-PAGE分析によって評価し、Coomassie brilliant blueで染色した。Nanoquantプレートを備えたInfinity reader M200 Pro(Tecan Group Ltd.)でのUV-Vis分光法によって異なる時点でタンパク質濃度をモニタリングする。
【0110】
SPRによる抗原結合の確認と組み合わせたPRO462及びPRO480の安定性データは、多重特異性抗体形式の文脈における各αHSAドメインの安定性及び構造的完全性を示している(表6参照)。
【0111】
実施例5:構築物PRO497(Fab-scFv)2の生成
Fab-(scFv)2形式は多機能組換え抗体誘導体であり、当該誘導体は、足場を形成するいずれかの定常ドメインを有するVL-CL及びVH-CH1からなるFab断片のヘテロ二量体アセンブリを採用し、その上に柔軟性リンカーを介して付加的な結合ドメイン、例えばscFvsが組み込まれ得る(Schoonjans、Willemsら、 2001)(Schoonjans、Willemsら、 2000)。この分子は、結合免疫グロブリンシャペロンが、鎖延長の存在下であってもVL-CL及びVH-CH1ドメインのヘテロ二量体化を駆動する哺乳動物の宿主細胞、例えばCHO-Sで共発現することができる。これらヘテロ二量体は安定であり、結合剤の各々はその特異的親和性を保持している。Fab-(scFv)2分子の位置CL及びCH1でのScFv融合は同等とみなされる。分子中の非天然配列断片のみがscFvドメイン内の可変ドメインを接続するペプチドリンカーであり、Fab定常ドメインを有するscFvドメインは、抗原性も免疫原性もないと考えられるグリシン-セリン-ポリマーからなる。PRO497はFab-(scFv)2分子であり、当該分子は、CLドメインに融合した抗HSA特異的scFvドメイン(23-13-A01-sc02)を有する抗CD3特異的(09-24-H09-sc04)Fab部分と、CH1ドメインに融合した抗IL23R特異的scFvドメイン(14-11-D07-sc04)とを含む。scFvドメイン内のドメインは、20アミノ酸の(G4S)4リンカーを介して接続されており、一方で個々のscFvドメインは、15アミノ酸の(G4S)3ペプチドリンカーを介してFab断片に融合されている。
【0112】
Schoonjans、R., A. Willems、J. Grooten及びN. Mertens(2000). Efficient heterodimerization of recombinant bi- and trispecific antibodies." Bioseparation 9(3):179-183。
【0113】
Schoonjans、R., A. Willems、S. Schoonooghe、W. Fiers、J. Grooten及びN. Mertens(2000). " Fab chains as an efficient heterodimerization scaffold for the production of recombinant bispecific and trispecific antibody derivatives." J Immunol 165(12):7050-7057。
【0114】
実施例6:インビボPK試験による構築物PRO497の機能的特性評価
マウスにおけるPRO497の薬物動態
本試験の目的は、雄のCD-1マウスへの静脈内投与後のPRO497の薬物動態を測定することであった。12匹の動物に静脈内経路によって5mg/kgのPRO497を投与した。投与前、投与後10分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、96時間及び144時間に血液試料を採取した。採取後に、血清用の全血を血清分離チューブに入れて凝固させた。試料を、血餅収縮(clot retraction)の存在について観察し、遠心分離した[周囲温度で10分間2200x g]。血清試料を個別のポリプロピレンバイアルに移し、すぐにドライアイス上に置いた後、-70±10℃で保存した。
【0115】
血清中のPRO497の濃度を、マウス血清中のPRO479の検出のために定量的ELISAを用いて分析した(図2)。薬物動態パラメータを、静脈内経路の投与と一致してノンコンパートメント(non-compartmental)アプローチを用いる薬物動態ソフトウェア(Thermo Electron Corporation、Version No.7.2.0.02)を用いて推定した。
【0116】
実施例7:インビボPK試験による構築物PRO462の機能的特性評価
カニクイザルにおけるPRO462の薬物動態
PRO462の薬物動態を、雄のカニクイザルへの静脈内投与後に決定した。合計3匹の外来(non-naive)動物に、PRO462の単回投与を3mg/kgの標的投与量レベルで投与した。血清を、以下の時点で採取した血清試料から調製した:投与前、投与後10及び30分、並びに1、2、4、6、8、12、24、36、48、72、96、144、192、240、288、336、384、432及び504時間。
【0117】
血清中のPRO462の濃度を、定量的ELISAを使用して分析した(図1)。薬物動態パラメータを、ノンコンパートメントアプローチを用いるWinNonlin薬物動態ソフトウェア(Phoenix version 1.4)を用いて推定した。
【0118】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0119】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態による範囲に限定されるものではない。実際に、本明細書に記載されたものに加えて様々な本発明の修飾が、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾は添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【0120】
それぞれの特許法の下で可能な範囲で、本明細書で引用された全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、及び他の材料が、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
【配列表】
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