(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-26
(45)【発行日】2022-09-05
(54)【発明の名称】網場及び魚道
(51)【国際特許分類】
E02B 15/00 20060101AFI20220829BHJP
E02B 8/08 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
E02B15/00 Z
E02B8/08
(21)【出願番号】P 2020063638
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2020-03-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111395
【氏名又は名称】株式会社テクアノーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 信剛
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-180733(JP,A)
【文献】実開昭63-036530(JP,U)
【文献】特開平05-192693(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0032874(KR,A)
【文献】特開2005-036453(JP,A)
【文献】特開2003-129456(JP,A)
【文献】実公昭46-005314(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 15/00
E02B 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定水域に架け渡されたロープと、
同ロープに連結された複数のフロートと、
前記ロープ又は前記フロートに連結されて少なくとも一部が水中に位置するシート状のネットと、を備えた網場であって、
前記網場は、水中に位置する魚道を有し、
同魚道は、
上方に前記ネットの少なくとも一部が位置して、前記ネット又はその下に、前記ネットを挟んで開口する開口部と、前記開口部に連通する通路を有し、
前記開口部及び前記通路のうちの最狭部の面積が前記ネットの網目の面積よりも大きく、
前記魚道の位置する部分の水深が、前記魚道が水底に着底しておらず水中に位置する状態での水面から前記魚道の上端までの距離より浅くなった状態で、
かつ前記ネットのうち前記魚道より上方に位置する少なくとも一部が弛んで前記弛んだネットが前記魚道の上に重なった状態で、前記魚道の前記開口部が前記ネットを挟んで区切られた両側の水中に開口することを特徴とする網場。
【請求項2】
前記魚道は合成樹脂製の円筒体である、請求項1に記載の網場。
【請求項3】
前記魚道はロープから吊り下げられている、請求項1又は2に記載の網場。
【請求項4】
所定水域に架け渡されたロープと、
同ロープに連結された複数のフロートと、
前記ロープ又は前記フロートに連結されて少なくとも一部が水中に位置するシート状のネットと、を備えた網場に設けられる魚道であって、
前記魚道は、水中に位置し、
同魚道は、
上方に前記ネットの少なくとも一部が位置して、前記ネット又はその下に、前記ネットを挟んで開口する少なくとも2つの開口部と、前記開口部同士を繋ぐ通路を有し、
前記開口部及び前記通路のうちの最狭部の面積が前記ネットの網目の面積よりも大きく、
前記魚道の位置する部分の水深が、前記魚道が水底に着底しておらず水中に位置する状態での水面から前記魚道の上端までの距離より浅くなった状態で、
かつ前記ネットのうち前記魚道より上方に位置する少なくとも一部が弛んで前記弛んだネットが前記魚道の上に重なった状態で、前記魚道の前記少なくとも2つの開口部が前記ネットを挟んで区切られた両側の水中に開口することを特徴とする魚道。
【請求項5】
前記魚道は合成樹脂製の円筒体である、請求項4に記載の魚道。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網場及び魚道に係り、詳しくは河川、湖沼、ダム湖等において流木止め設備として使用される網場、及びこれに使用する魚道に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼、ダム湖等において、流木等のごみのせき止めを目的として網場が用いられている。この網場は、例えばダムであればダム湖を横断して架け渡されたロープと、同ロープに対して連結された複数のフロート(浮き)と、隣接するフロート間、またフロート下の水中に展開されたネットとを有する。そして、このネットによりダム上流から流れてきた流木等のごみをせき止め、回収を可能とするものである(特許文献1)。
【0003】
ところで、
図9に示すように、水中で展開されるネットは水面から一定高さ(深さ)を有するため、ダム湖の満水時等であればネット下端からダム湖の湖底までに距離があり、ネットがダム湖に生息する水性生物、例えば魚介類の移動の妨げとはならない。なお、
図9では湖底を図示するためネットと湖底との間を狭く図示しているが、ダム湖が満水状態であればネット下端と湖底との間には10m以上の間隔がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ダム湖の貯水量はダムへの流入量やダムからの放水量等によって変動し、またダム湖が渇水期にある場合などダム湖の貯水量が低下すると水位が低下するため、ネットの下端がダム湖の湖底に着底することもある。
【0006】
そうすると、
図10に示すように、着底したネットがダム湖を区切ることとなり、ダム湖に生息している水性生物、特にネットの目を超える大きさの生物がネットを挟んで往来することができなくなる。
【0007】
そこで、本発明は、水位が低下した場合であっても生物の往来を可能とすることができる網場及び魚道を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1は、所定水域に架け渡されたロープと、同ロープに連結された複数のフロートと、前記ロープ又は前記フロートに連結されて少なくとも一部が水中に位置するネットと、を備えた網場であって、前記網場は、水中に位置する魚道を有し、同魚道は、前記ネット又はその下に、前記ネットを挟んで開口する開口部と、前記開口部に連通する通路を有し、前記開口部及び前記通路のうちの最狭部の面積がネットの網目の面積よりも大きいことを特徴とする。これにより、ネットの網目の面積よりも大きな開口部がネットを挟んで位置し、また開口部に連通する通路を有する魚道が位置するため、ネットが湖底に着座した場合でも生物は魚道を通って往来することができる。
【0009】
請求項2は、前記魚道は合成樹脂製の円筒体である。これにより、簡易に魚道を形成することができる。
請求項3は、前記魚道はロープから吊り下げられている。これにより、簡易に魚道を配置することができる。
【0010】
請求項4は、所定水域に架け渡されたロープと、同ロープに連結された複数のフロートと、前記ロープ又は前記フロートに連結されて少なくとも一部が水中に位置するネットと、を備えた網場に設けられる魚道であって、前記魚道は、水中に位置し、同魚道は、前記ネット又はその下に、前記ネットを挟んで開口する少なくとも2つの開口部と、前記開口部同士を繋ぐ通路を有し、前記開口部及び前記通路のうちの最狭部の面積がネットの網目の面積よりも大きいことを特徴とする。これにより魚道を網場に取り付けることによって請求項1と同様の作用を有する。
【0011】
請求項5は、前記魚道は合成樹脂製の円筒体である。これにより魚道を網場に取り付けることによって請求項2と同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の網場及び魚道によれば、水位が低下した場合であっても生物の往来を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図8】aは魚道の変更例を示す側面図、bは背面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化したダム湖用の網場の一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。
図1にダム湖に配置された網場1の模式図を示す。同図に示すように網場1はダム湖を横断して架け渡されたロープとしての上部メインロープ10及び下部メインロープ20とを備える。また、網場1は上部メインロープ10と下部メインロープ20との間に各ロープの長さ方向に一定間隔毎に配置されたフロート30と、隣接するフロート30間に張られたネットとしての上部ネット40と、下部メインロープ20からダム湖の水中に吊り下げられたネットとしての下部ネット50と、下部ネット50の下に配置された魚道60とを備える。
【0015】
ダム湖の両岸にはコンクリート製のアンカーブロック71が設置されており、両アンカーブロック71はダム湖に向かう位置に上下に約50cmの間隔を空けてアンカー金具72が埋め込まれている。そして、各アンカー金具72には長さ約2mの金属チェーン(図示しない)がそれぞれ連結されている。上側のアンカー金具72に連結された金属チェーンに上部メインロープ10が連結され、下側のアンカー金具72に連結された金属チェーンに下部メインロープ20が連結されることにより、上部メインロープ10及び下部メインロープ20はそれぞれダム湖を横断する形でダム湖に架け渡されている。
【0016】
上部メインロープ10及び下部メインロープ20は、ポリエステルをポリエチレンで被覆した素線を撚り合わせたストランドを複数本撚り合わせたワイヤーロープであり、直径約30mmである。また、上部メインロープ10及び下部メインロープ20の長さは、アンカーブロック71間の距離に応じて適宜決定される。ただし、ダム湖では水位の変化によりダム湖に架け渡されるロープの必要長さも変化するため、ロープ長さは個々のダム湖の状況等に応じて個別に決定されることとなる。
【0017】
図2に示すように、上部メインロープ10及び下部メインロープ20の延びる方向に沿って上部メインロープ10及び下部メインロープ20との間にはフロート30と上部ネット40とが交互に配置されている。
【0018】
図2及び
図3に示すように、フロート30は、長さ約1m、直径約60cmの略円筒状に形成された中空ポリエチレン製の浮きであり、内部には図示しない発泡スチロールが充填されている。フロート30の外周面には、同外周面を周回する環状凹部31がフロート30の軸方向に略均等に5本形成されている。また、フロート30の軸方向両端面には同端面の中心を通って径方向に延びる取付板32が形成されており、各取付板32の上下両端には端部取付孔33が、中央寄りの2箇所には中央取付孔34が、それぞれ貫通形成されている。
【0019】
各フロート30は上部メインロープ10と下部メインロープ20の間に位置して、フロート30の上側の端部取付孔33と上部メインロープ10とが結束ロープ35で連結され、下側の端部取付孔33と下部メインロープ20とが結束ロープ35で連結されている。また、フロート結束ロープ36がフロート30の軸方向両端に位置する環状凹部31と上部メインロープ10及び下部メインロープ20を通って巻き回されており、この部分でもフロート30と上部メインロープ10及び下部メインロープ20とが連結されている。なお、フロート30は、
図1ないし
図3に示す状態で下部約1/5が水中に位置する。
【0020】
上部ネット40は長さ約1.5m、高さ50cmの長方形状のネットである。上部ネット40は直径4mmのポリエチレン糸を用いた無結節網であり、目合は5cm、角目合いである。上部ネットは角目合のため網目形状は縦約5cm、横約5cmのほぼ正方形であり個々の網目の面積は約25平方cmとなる。
【0021】
上部ネット40は、その側辺41がフロート30に連結され、上辺42が上部メインロープ10に、また下辺43が下部メインロープ20に連結されて、水上及び水中に展開されている。具体的には、
図2、
図3に示すように、上部ネット40の側辺41とフロート30の取付板32とが隣接する位置関係になっている。そして、上部ネット40の側辺41に形成されている網目のうち、フロート30の取付板32に形成されている端部取付孔33と中央取付孔34にそれぞれ隣接する網目が、それぞれ端部取付孔33或いは中央取付孔34と結束ロープ44で連結されている。
【0022】
また、上部ネット40の上辺42と上部メインロープ10、及び上部ネット40の下辺43と下部メインロープ20とがそれぞれ隣接する位置関係になっている。そして、上部ネット40の上辺42及び下辺43に形成されている網目のうち一定間隔、例えば一つおきの網目と上部メインロープ10或いは下部メインロープ20とが結束ロープ44で連結されている。なお、
図2及び
図3では結束ロープ44の数が多いため一部の結束ロープ44にのみ符号を付している。
【0023】
下部ネット50は長さ約25m、高さ約1.5mの長方形状のネットである。下部ネット50はその側辺51が隣接する下部ネット50の側辺51に図示しない結束ロープにより連結されて、全体として長尺状に形成されている。なお、下部ネット50とは個々の下部ネット50のみならず、これらが複数連結された長尺状の集合体を意味することもある。
【0024】
下部ネット50は、フロート30の軸方向中央の鉛直下方に側辺51が位置して、隣接する下部ネット50同士が連結されている。下部ネット50の上辺52は下部メインロープ20及びフロート30に連結されている。下部メインロープ20との連結は、下部ネット50の上辺に形成されている網目のうち一定間隔、例えば一つおきの網目と下部メインロープ20とが結束ロープ44で連結されている。
【0025】
また、上部メインロープ10及び下部メインロープ20とフロート30とを連結するフロート結束ロープ36が下部ネット50の上辺52の網目を通って巻回されている。下部ネット50は、上部ネット40と同様に、直径4mmのポリエチレン糸を用いた無結節網であり、目合は5cm、角目合いで網目の面積も下部ネット50と同じく約25平方cmである。魚道60は直径約42cm(内径40cm)、長さ約2mの硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管)61から構成され、この塩ビ管61を4本並列させて図示しないボルトにより隣接する塩ビ管61の側面同士を連結して一体化している。なお、個々の塩ビ管61が魚道60を構成する。
【0026】
図2、
図3、
図4に示すように各塩ビ管61は下部メインロープ20から吊り下げロープ62aにより吊り下げられて下部ネット50の下辺53より下側に配置されている。具体的には、吊り下げロープ62aは、その上部が下部メインロープ20に結び付けられて吊り下げられており、下部が塩ビ管61の周囲に巻き回す形で塩ビ管61を吊り下げている。吊り下げロープ62aの中間部分は、下部ネット50の網目をジグザグに経由し、下部ネット50の下辺53を周回して巻き付いた上で塩ビ管61に至っている。
【0027】
また、塩ビ管61の縦揺れ及び横揺れ防止のための揺れ防止ロープ62bが、中間部を下部メインロープ20に周回した状態で吊り下げられて、その両端が塩ビ管61の両端に結び付けられている。各塩ビ管61は両端に開口部63を有する円筒状であり、一方の開口部63は下部ネット50を挟んで
図3中手前側に突出した位置に開口しており、もう一方の開口部63は下部ネット50に対して図中奥側に突出した位置に開口している。したがって、塩ビ管61の2つの開口部63は下部ネット50を挟んで両側に開口している。
【0028】
なお、下部ネット50を挟んで開口とは、実際に吊り下げられている下部ネット50を貫通して挟んだ状態で開口している場合(
図7aに示す変更例の態様)のみならず、下部ネット50を下方に延長したと仮定した仮想ネット55(
図4の破線)を挟んで開口する場合も含む概念である。
図1ないし
図5に示す本実施形態の魚道60は、下部ネット50を下方に延長したと仮定した仮想ネット55を挟んで開口する2つの開口部63を有する態様であり、これも下部ネット50を挟んで開口する概念に含まれる。
【0029】
そして、塩ビ管61における手前の開口部63と奥の開口部63との内部が両開口部63を繋ぐ通路64となる。各塩ビ管61の内径は40cmの一定形状であり、その面積(断面積をいう。以下同様)は約1260平方cmである。ここで、手前、奥とは相対的な表現であり、
図3の向きが水平方向に180度異なれば手前、奥も入れ替わることとなる。
【0030】
次に、本実施形態の網場1の作用を説明する。
図4は、ダム湖に水が十分にある高水位時の状態を示しており、網場1と図示しない湖底との間には十分な距離があるため、水生生物が網場1を挟んで移動する場合でも網場1の下側を通ればよく、網場1が水性生物の往来の障害となることはない。
【0031】
一方、
図5に示すようにダム湖が渇水状態となり低水位時になると、これに伴って網場1全体も下降し、水位が約1.5~2m以下になると本実施形態の網場1の下端が湖底に着底することとなる。
【0032】
本実施形態の網場1は魚道60である塩ビ管61を有するため、網場1が着底した場合でも下部ネット50が塩ビ管61の上に重なるだけで塩ビ管61の両開口部63は閉塞されない。このため、水生生物は塩ビ管61の一方の開口部63から塩ビ管61内に入った後に、通路64を通って下部ネット50を挟んだ他方の開口部63から塩ビ管61の外に出ることができ、網場1を挟んだ往来が可能となる。
【0033】
上記実施形態の網場1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、網場1に下部ネット50を挟んで開口する開口部63及び開口部63に連通する通路64を有する魚道60を設けている。このため、ダム湖の水位が低下し、網場1が着底する事態になっても水生生物は魚道60を通ることにより網場1を挟んだ往来が可能となる。
【0034】
(2)上記実施形態では、魚道60として塩ビ管61を使用している。塩ビ管61はサイズが豊富で入手も容易なため、魚道60を安価に作成することができる。
(3)上記実施形態では、魚道60を下部ネット50の下に位置するように吊り下げロープ62aで吊り下げている。このため、魚道60を簡易に配置することができ、また、魚道60のない網場1に対して後付け構成として魚道60を設けることができる。
【0035】
(4)上記実施形態では、吊り下げロープ62aを下部ネット50の網目にジクザクに通し、下部ネット50の下辺53を周回して巻き付け、その下部が塩ビ管61を巻回して吊り下げている。このため、吊り下げロープ62aを下部ネット50の網目に通すことにより、塩ビ管61の自重を利用して下部ネット50を水中でたるむことなく展開することができる。
【0036】
(5)既存の網場では、ネットを水中で展開させるために下部ネット50の下端に重りとして金属チェーンを取り付けていたが、塩ビ管61が重りを兼ねるため金属チェーンを取り付ける必要がなくなる。
【0037】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○魚道60として塩ビ管61を使用する場合、使用する本数や塩ビ管61の直径、長さは本実施形態に限られず、変更することが可能である。
【0038】
○魚道60は本実施形態で説明した塩ビ管61に限られず、他の樹脂、例えばアクリル、ポリエステル、ABS等を使用した管体でもよい。また、樹脂以外にステンレス等の金属、カーボン、コンクリート、これらの複合体でもよい。
【0039】
また、そのまま魚道に用いることができる既存品として、フォークリフトに用いる輸送用パレットがある。輸送用パレットは側面にフォークリフトのフォーク差込口が形成されており、この差込口は対向する側面に貫通しているため、魚道60として使用し得る。なお、輸送用パレットの材質は木製、樹脂製、金属製等があるが、取り扱いや耐久性等の点から樹脂製が好ましい。
【0040】
○また、魚道60は、比重が1を超えるものが水中で自重沈下するため好ましいが、比重が1を下回る材料であっても魚道60に重りを取り付けることにより魚道60を沈下させることができる。
【0041】
○魚道60の形状は本実施形態で説明した円筒状に限られない。
図6aに示すように開口部63の形状は矩形状でもよく、また
図6bに示すように開口部63が複数(図では4つ)存在してもよい。さらに、
図6cに示すように魚道60を枠だけで形成し六面が開口している形状でもよく、図示しないが金網を円筒状や多角形筒状の筒体として魚道60としてもよい。魚道60がネットを挟んで開口する開口部63を有し、その開口部63に連通する通路64を有していればよい。
【0042】
なお、
図6cに示す構成では、側面に形成された開口も下部ネット50の着底時に下部ネット50で覆われていない部分から水生生物が出入りできるため、開口部63として機能する。
【0043】
○魚道60の形状は本実施形態で説明した構成に限らず、
図6dに示すように断面コ状をなすように側部、上部、底部のいずれかが形成されていないものであってもよい。このような形状であっても、ネット(仮想面含む)を挟んで開口する開口部63を有し、開口部63が通路64に連通しているため、下部ネット50を挟んだ水性生物の往来が可能となる。なお、
図6dの構成では両端面と側面とが開口しているため、開口部63は全体として一つともいえるが、下部ネット50を挟んで開口する開口部63を有し、その開口部63に連通する通路64を有している構成である。その他、図示しないが断面H字形、断面U字形等でもよい。
【0044】
○魚道60を配置する位置等を変更してもよい。具体的には
図7aに示すように魚道60は下部ネット50を貫通した位置で挟んでもよく、
図7bに示すように魚道60は下部ネット50の下に長さ方向にずらせて配置してもよい。また、
図7cに示すように魚道60の長さは短くてもよく、
図7dに示すように魚道60を高さの異なる複数箇所に配置しても良い。
【0045】
なお、
図7aに示すように、魚道60が下部ネット50を貫通する場合には、下部ネット50の下端に重り用金属チェーン54を結束ロープ(図示しない)で連結すれば、下部ネット50を水中でたるむことなく展開することができる。
【0046】
○上記実施形態では、魚道60として塩ビ管61をそのまま使用する例を説明したが、
図8aに示すように塩ビ管61を魚道として使用する際に側面及び底面となる箇所に内部に貫通する孔を形成し、これも開口部63としてもよい。このようにすると、塩ビ管61の端面の開口部63のみではなく、側面や底面にも開口部63が存在することとなって、塩ビ管61が着底した場合に生物が侵入することができる開口部63が増加する。着底時に塩ビ管61端面の開口部63が何らかの理由により塞がれていても、生物は塩ビ管61の側面や底面の開口部63から塩ビ管61内の通路64に入ることができ、生物はネットを挟んだ往来がしやすくなる。
【0047】
また、
図8bは、
図8aに記す塩ビ管61を複数本(図では4本)連結した構成である。この構成では、塩ビ管61の側面の開口部63が隣接する塩ビ管61の開口部63と対向するため、複数の塩ビ管61をまたいで生物が移動することができ、生物はネットを挟んだ往来がよりしやすくなる。
【0048】
○魚道60が水中で重りとして機能しにくい場合、例えば魚道60の比重が水に近い場合なども、同様に下部ネット50の下端に重り用金属チェーン54を連結すれば、下部ネット50を水中でたるむことなく展開することができる。
【0049】
○魚道60は直線状でなくとも曲線状(例えば円弧状)や複数の直線が組み合わさった形状(例えばへ字状)でもよい。
○魚道60は開口部63や通路64の太さが一定でなく変化する形状、具体的にはジャバラ管でもよい。ただし、魚道60を通っての水生生物の往来を可能とするため、開口部63及び通路64のうち最も狭い箇所の面積がネットの網目の面積より大きいことを要する。なお、水生生物が往来する部分について網目の面積が複数ある場合には最も大きな網目の面積が対象となる。
【0050】
○魚道60の長さは限定されない。ただし、開口部63が両端面にある筒体を使用する場合などで筒体が短いと、魚道60が着底した際に筒体が倒れて開口部63が湖底を向いたり、或いはたるんだ下部ネット50が魚道60を覆った際に開口部63を塞ぐ可能性があるため、そのような事態が生じない程度の長さとすることが好ましい。
【0051】
○魚道60の開口部63の上にひさしを形成してもよい。下部ネット50の着底時などに下部ネット50が魚道60の開口部63を覆うような場合でも、ひさしにより開口部63の閉塞を防ぐことができる。
【0052】
○魚道60を吊り下げロープ62aにより下部メインロープ20から吊り下げる構成としているが、上部メインロープ10、フロート30、上部ネット40、下部ネット50、重り用金属チェーン54等のいずれかから吊り下げてもよい。なお、魚道60を、上部ネット40、下部ネット50、重り用金属チェーン54等から吊り下げる場合には、上部ネット40或いは下部ネット50に魚道60の重量が作用する。ネットに掛かる魚道60の重量を軽減するため、上部メインロープ10、下部メインロープ20、フロート30等から補助ロープを魚道60に連結してもよい。
【0053】
○揺れ防止ロープ62bを下部メインロープ20から吊り下げているが、塩ビ管61の揺れを防止することができれば、異なる箇所から吊り下げてもよい。
○網場は、ダム湖に限らず、河川、湖沼等に用いるものでもよい。
【符号の説明】
【0054】
1・・・網場
10・・・上部メインロープ(ロープ)
20・・・下部メインロープ(ロープ)
30・・・フロート
40・・・上部ネット(ネット)
50・・・下部ネット(ネット)
60・・・魚道
63・・・開口部
64・・・通路